令和5(ヨ)1 老朽美浜3号機運転禁止仮処分

裁判年月日・裁判所
令和6年3月29日 福井地方裁判所 却下
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判決文本文78,110 文字)

令和5年(ヨ)第1号老朽美浜3号機運転禁止仮処分決定主文 1 本件申立てをいずれも却下する。 2 申立費用は債権者らの負担とする。 理由 (目次)第1 申立ての趣旨 第2 事案の概要 第3 前提事実 1 当事者 2 本件原発の概要等 3 福島第一原子力発電所事故を契機とした新規制基準の制定 4 地震に関する規制基準の概要等 5 高経年化対策制度及び運転期間延長認可制度 第4 争点 第5 争点に対する当事者の主張 1 司法審査の在り方(争点1) 2 基準地震動が地震観測記録において低水準であること(争点2―1) 3 検討用地震に係る想定地震動が低水準であること(争点2―2) 4 ばらつき条項の不遵守(争点2-3) 5 震源が敷地に極めて近い場合に求められる考慮を怠っていること(争点2-4) 6 基準地震動以下の地震動による事故の危険性(争点3) 7 劣化管理の困難性(争点4) 8 避難計画の不備による人格権侵害の具体的危険性(争点5-1) 9 避難計画の不備の有無(争点5-2) 10 保全の必要性(争点6) 第6 争点に対する判断 1 司法審査の在り方(争点1) 2 基準地震動の合理性(争点2) ⑴ 認定事実 ⑵ 基準地震動が地震観測記録において低水準であること(争点2-1) ⑶ 検討用地震に係る想定地震動が低水準であること(争点2-2) ⑷ ばらつき条項の不遵守(争点2-3) ⑸ 震源が敷地に極めて近い場合に求められる考慮を怠っていること(争点2-4) 3 基準地震動以下の地震動による事故の危険性(争点3) 4 劣化管理の困難性(争点4) 5 避難計画等(争点5) ⑴ 避難計画の不備による人 れる考慮を怠っていること(争点2-4) 3 基準地震動以下の地震動による事故の危険性(争点3) 4 劣化管理の困難性(争点4) 5 避難計画等(争点5)⑴ 避難計画の不備による人格権侵害の具体的危険性(争点5-1)⑵ 避難計画の不備の有無(争点5-2)第7 結論第1 申立ての趣旨債務者は、福井県三方郡美浜町(略)において、美浜発電所3号機を運転してはならない。 第2 事案の概要本件は、債権者らが、債務者において福井県三方郡美浜町(略)に設置、運転している美浜発電所3号機(以下「本件原発」という。)について、地震に対する安全性を欠いていること、原子力発電所は劣化管理が困難であること、避難計画に不備があることから、その運転により重大な事故が発生し、債権者らの生命、身体等の重大な法益に対する侵害が生ずる具体的な危険性があると主 張して、債務者に対し、人格権に基づく妨害予防請求権を被保全権利として、本件原発の運転の差止めを命ずる仮処分命令を申し立てた事案である。 第3 前提事実(争いのない事実並びに掲記の疎明資料及び審尋の全趣旨により容易に認められる事実) 1 当事者⑴ 債権者らは、本件原発から約56kmの範囲内にある別紙1当事者目録(省略)記載の各肩書所在地に居住する者らである。 ⑵ 債務者は、大阪市に本店を置き、発電事業等を目的とする株式会社である。 2 本件原発の概要等⑴ 本件原発の概要ア本件原発は、福井県三方郡美浜町(略)に位置する美浜発電所に設置される3号機である。 債務者は、本件原発の設置に先立ち、美浜発電所1号機は昭和45年11月28日から、同2号機は昭和47年7月25日から、それぞれ営業運転を開始したところ、債務者は、昭和46年4月には、福井県及び美 債務者は、本件原発の設置に先立ち、美浜発電所1号機は昭和45年11月28日から、同2号機は昭和47年7月25日から、それぞれ営業運転を開始したところ、債務者は、昭和46年4月には、福井県及び美浜町に対して本件原発の増設について協力を要請し、同年5月に福井県は増設を了解した。 イ本件原発の電気出力は82万6千kwであり、昭和47年3月13日に原子炉設置変更(3号炉増設)許可を受けて、昭和51年12月1日営業運転を開始した。 ⑵ 原子力発電の仕組みと本件原発の種類(答弁書48頁以下)ア原子力発電の仕組み原子力発電は、原子炉においてウラン235等を核分裂させることにより熱エネルギーを発生させ、発電を行っている。原子力発電では、原子炉において取り出した熱エネルギーによって蒸気を発生させ、この蒸気でタービンを回転させて発電を行う。 イ本件原発の種類本件原発は、1次冷却設備を流れる高圧の軽水(1次冷却材、軽水とは、原子核が陽子1 個のみで構成される水素原子2個と酸素原子1個からなる水をいい、普通の水のことである。)を原子炉で高温水とし、これを蒸気発生器に導き、蒸気発生器において、高温水の持つ熱エネルギーを、2次冷却設備を流れている軽水(2次冷却材)に伝えて蒸気を発生させ、この蒸気をタービンに送って発電する加圧水型原子炉である。 ⑶ 本件原発の構造等ア主な設備本件原発の主な設備としては、燃料から取り出した熱エネルギーを2次冷却材に伝達する1次冷却設備、蒸気発生器で蒸気となった2次冷却材でタービンを回転させるための2次冷却設備、電気を供給するための電気施設、原子炉停止の際に原子炉内の熱を除去するための設備等があり、これに加えて、緊急時の安全性を確保するための工学的安全施設等 却材でタービンを回転させるための2次冷却設備、電気を供給するための電気施設、原子炉停止の際に原子炉内の熱を除去するための設備等があり、これに加えて、緊急時の安全性を確保するための工学的安全施設等が設けられている。また、使用済燃料を貯蔵する設備として使用済燃料ピットを備えている。 イ 1次冷却設備1次冷却設備は、原子炉、加圧器、蒸気発生器、1次冷却材ポンプ、1次冷却材管等から構成されており、原子炉内で生じたウラン235等の核分裂による熱エネルギーで1次冷却材を高温水とした上で、これを蒸気発生器に導き、蒸気発生器内において2次冷却材に熱を伝えて蒸気にする機能を果たしている。なお、蒸気発生器内で温度が下がった1次冷却材は、1次冷却材ポンプで再び原子炉に戻される。 (ア) 原子炉原子炉は、原子炉容器、燃料集合体、制御材、1次冷却材等から構成されており、核分裂連鎖反応を制御しながら安定的に持続させ、それに より発生する熱エネルギーを取り出す設備である。原子炉容器内の燃料集合体が存在する部分を炉心という。 原子炉において核分裂連鎖反応を安定的に持続させ制御するためには、核分裂を起こす中性子の数を調整することが必要であり、制御材はこの調整に用いられる。本件原発では、制御材として制御棒及びほう素を用いている。 本件原発の通常運転時には、制御棒駆動装置により、制御棒を炉心からほぼ全部引き抜いた状態で保持しているが、緊急時には、自重で炉心に落下することで、すみやかに原子炉を自動で停止できる仕組みとなっている。 (イ) 加圧器加圧器は、原子炉で高温(約300℃)になった1次冷却材が沸騰しないよう高い圧力をかけ、かつ、1次冷却材の熱膨張及び収縮による 停止できる仕組みとなっている。 (イ) 加圧器加圧器は、原子炉で高温(約300℃)になった1次冷却材が沸騰しないよう高い圧力をかけ、かつ、1次冷却材の熱膨張及び収縮による圧力変動を調整し、1次冷却材の圧力を一定に制御するための設備である。 (ウ) 蒸気発生器蒸気発生器は、1次冷却材の熱エネルギーを2次冷却材に伝えるための熱交換器である。 (エ) 1次冷却材ポンプ1次冷却材ポンプは、1次冷却材を循環させるための設備であり、蒸気発生器の1次冷却材出口側に設置される。 (オ) 1次冷却材管1次冷却材管は、1次冷却材が通るステンレス鋼製配管である。 ウ 2次冷却設備2次冷却設備は、タービン、復水器、主給水ポンプ及びそれらを接続する配管(主蒸気管等)等から構成されている。2次冷却設備では、蒸気発生器で蒸気となった2次冷却材をタービンに導き、蒸気の力でタービンを 回転させて発電する。また、タービンを回転させた蒸気を復水器において海水で冷却して水に戻し、主給水ポンプ等で再び蒸気発生器に送っている。 復水器で蒸気から熱を伝えられた海水は、放水口から海に放出される。 エ電気施設電気施設は、常用電源設備として発電機及び外部電源を備えるとともに、常用電源を喪失した場合の非常用電源設備として、非常用ディーゼル発電機を備えている。 オ原子炉停止の際に原子炉内の熱を除去する設備原子炉が停止し、核分裂連鎖反応が止まった後も、燃料集合体に内包される放射性物質の発熱は継続するため、原子炉停止後も冷却手段を確保する必要がある。 原子炉停止作業開始後の冷却手段については、まず、原子炉を停止する初期段階では主 止まった後も、燃料集合体に内包される放射性物質の発熱は継続するため、原子炉停止後も冷却手段を確保する必要がある。 原子炉停止作業開始後の冷却手段については、まず、原子炉を停止する初期段階では主給水設備(主給水設備が機能喪失した場合等は補助給水設備)により冷却する。そして、1次冷却材の圧力及び温度が所定のレベルまで低下した段階で余熱除去設備による冷却に切り替えて原子炉内の残留熱を除去する。 (ア) 主給水設備原子炉停止の際は、まず2次冷却設備の主給水ポンプ等で蒸気発生器への給水を継続することにより、蒸気発生器で1次冷却材の熱を2次冷却材に伝えて原子炉内の熱(残留熱を含む)を除去する。なお、熱を伝えられて蒸気となった2次冷却材は、復水器において海水に熱を伝えて(海水で冷却されて)水に戻り、熱を伝えられた海水は、放水口から海に放出される。 (イ) 補助給水設備(電動補助給水ポンプ、タービン動補助給水ポンプ)主給水ポンプ等による給水機能が故障その他何らかの原因で失われた場合等には、補助給水設備を用いて、復水タンク(補助給水設備用の貯 水槽)を水源として蒸気発生器への給水を維持する。このうち、タービン動補助給水ポンプは、動力源として電力を必要とせず、2次冷却設備である主蒸気管から分岐して取り出した蒸気の力で駆動する。1次冷却材の熱を伝えられて蒸気になった2次冷却材は大気に直接放出して熱を排出する。 カ工学的安全施設原子炉施設の故障や破損等による、炉心の著しい損傷及びそれに伴う多量の放射性物質放出防止又は抑制のため、工学的安全施設が設置されている。 工学的安全施設には、非常用炉心冷却設備(ECCS、1次冷却材の喪失等が発生した場合であっても、ほう酸水を原子炉容器内に注入して原子炉を冷却すること 抑制のため、工学的安全施設が設置されている。 工学的安全施設には、非常用炉心冷却設備(ECCS、1次冷却材の喪失等が発生した場合であっても、ほう酸水を原子炉容器内に注入して原子炉を冷却することで、炉心の著しい損傷を防止する装置であり、蓄圧注入系、高圧注入系及び低圧注入系で構成される。)、原子炉格納施設(1次冷却設備を格納する原子炉格納容器と鉄筋コンクリート製の格納容器外周コンクリート壁で構成される。)、原子炉格納容器スプレ設備(原子炉格納容器内にほう酸水を噴霧して圧力上昇を抑えるとともに、原子炉格納容器内の放射性ヨウ素を除去する。)等がある。これらの設備は、同時にその機能を喪失しないよう、多重性、独立性を持たせ、互いに独立した2系統以上の設備で構成させる設計としている。 キ使用済燃料ピット使用済燃料ピットとは、原子炉から取り出された使用済燃料を貯蔵する設備である。使用済燃料ピットでは、使用済燃料の冷却のために使用済燃料ピット水で満たされており、具体的には、使用済燃料の長さが約4mであるのに対して、使用済燃料ピットの水深は約12mあり、使用済燃料の上端から水面まで約8mの深さを確保している。 3 福島第一原子力発電所事故を契機とした新規制基準の制定 ⑴ 福島第一原子力発電所事故の概要平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、原子炉が運転中であった福島第一原子力発電所1号機から3号機において、地震動を検知して直ちに全ての制御棒が挿入され、原子炉が正常に自動停止したものの、地震発生から約50分後に津波が襲来したことにより、全ての電源が喪失した結果、原子炉の冷却を継続できなくなったことで炉心の著しい損傷に至り、さらに原子炉格納容器の破損や、炉心の損傷等により発生した水素の爆発によって 分後に津波が襲来したことにより、全ての電源が喪失した結果、原子炉の冷却を継続できなくなったことで炉心の著しい損傷に至り、さらに原子炉格納容器の破損や、炉心の損傷等により発生した水素の爆発によって原子炉建屋の破損が生じ、放射性物質が大量に放出される事態に陥った(以下「福島第一原子力発電所事故」という。)。 ⑵ 福島第一原子力発電所事故の原因福島第一原子力発電所事故の経過を踏まえ、同事故に係る事故調査委員会の報告書等においては、事故の直接的原因が、津波によって全交流動力電源と直流電源とを喪失し、原子炉を安定的に冷却する機能が失われたことであったことや、事故前の対策として、特に、津波想定、過酷事故(シビアアクシデント)対策、複合防災対策に問題があったこと等の指摘がなされた。 ⑶ 原子力規制行政の変化ア原子力規制委員会の設置平成24年6月、原子力規制委員会設置法(以下「設置法」という。)が成立して、原子力安全規制を担う新たな行政機関として原子力規制委員会が発足し、また、同法附則15条ないし18条に基づき、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)の改正、施行が順次行われた。 原子力規制委員会は、国家行政組織法3条2項に基づく、いわゆる3条委員会であり(設置法2条)、従来の原子力安全委員会及び原子力安全・保安院の事務のほか、文部科学省及び国土交通省の所掌する原子力安全の規制等に関する事務を集約して、原子炉に関する規制をはじめ原子力利用に おける安全の確保を図るために必要な施策の策定・実施を一元的につかさどり(同法4条)、その運営にあたっては、情報の公開を徹底する(同法25条)こととされた。 イバックフィット制度の導入原子炉設置許可に係る 要な施策の策定・実施を一元的につかさどり(同法4条)、その運営にあたっては、情報の公開を徹底する(同法25条)こととされた。 イバックフィット制度の導入原子炉設置許可に係る規制基準が変更された場合等において、発電用原子炉施設の位置、構造又は設備が、原子炉等規制法43条の3の6第1項4号の設置許可基準に適合しないと認められるとき、原子力規制委員会は、その発電用原子炉設置者に対して、当該発電用原子炉施設を設置許可基準に適合させるべく必要な措置を講じるよう命じることができるとの定め(バックフィット制度)が置かれた(同法43条の3の23)。 バックフィット制度の導入により、原子力規制委員会は、既に許可を与えた発電用原子炉施設について、最新の科学的、専門技術的知見を踏まえた新たな基準を定めた場合には、当該施設を当該基準に適合させるよう命じることができるようになった。 ⑷ 新規制基準ア新規制基準の制定経緯(乙29)新規制基準とは、平成25年7月8日及び同年12月18日施行の改正原子炉等規制法に基づき、原子力規制委員会規則、告示及び内規等が制定又は改定され、その後も必要に応じ、内規等が制定されているところ、それらの内規等を総称するものをいう(「新規制基準」という用語は、法令上の用語ではなく、行政実務上の通称である。)。 設置法に基づき原子力規制委員会が設置されるとともに、同法附則15条ないし18条に基づき原子炉等規制法の改正及び施行が順次行われ、発電用原子炉施設等に関する規制基準の見直しが進められることとなった。 原子力規制委員会は、その発足後に新たな規制基準の制定作業に着手し、同委員会の下に「発電用軽水型原子炉の新規制基準に関する検討チーム」 (以下「基準検討チーム」という。 められることとなった。 原子力規制委員会は、その発足後に新たな規制基準の制定作業に着手し、同委員会の下に「発電用軽水型原子炉の新規制基準に関する検討チーム」 (以下「基準検討チーム」という。)、「発電用原子炉施設の新安全規制の制度整備に関する検討チーム」及び「発電用軽水型原子炉施設の地震・津波に関わる規制基準に関する検討チーム」(以下「地震・津波検討チーム」という。)を設置して検討を進めた。 原子力規制委員会は、各チームの検討結果を踏まえ、新規制基準の骨子案を作成し、次いで、基準案を取りまとめた。骨子案及び基準案の各段階においては、行政手続法39条1項に基づく意見公募手続(パブリックコメント)を行い、これらの意見公募手続で寄せられた意見を検討し、必要な見直しを行った上で、平成25年6月に新規制基準が制定され、同年7月に施行された。 イ従来の規制からの変更点新規制基準では、共通要因故障の原因となる事象を、福島第一原子力発電所事故の原因となった津波に限らず、むしろ幅広く捉えて、かつその考慮を手厚くし、炉心の著しい損傷を確実に防止して、発電用原子炉施設の安全確保をより確実なものとするべく、地震、津波、火山活動、竜巻及び森林火災等の自然現象の想定や、電源喪失、発電所内部での火災、溢水等に対する考慮をより厳格に求めるに至った。 地震に関していえば、新規制基準施行前の耐震設計審査指針に定められていた、基準地震動の策定方法の基本的な枠組みや、耐震設計上の重要度分類に応じた耐震性の要求は概ね維持しつつ、新規制基準における「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に会する規則(以下「設置許可基準規則」という。)では、①基準地震動の策定過程で考慮される地震動の大きさに影響を与えるパラメータにつ ける「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に会する規則(以下「設置許可基準規則」という。)では、①基準地震動の策定過程で考慮される地震動の大きさに影響を与えるパラメータについてのより詳細な検討や、②津波防護施設等を耐震設計上の重要度分類のSクラスと分類することが求められることとなった。 4 地震に関する規制基準の概要等 ⑴ 耐震設計審査指針の改訂本件原発建設後の昭和53年に、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(以下「耐震設計審査指針」という。)が策定され、同年に原子力委員会から分離独立した原子力安全委員会は、昭和56年に、同耐震設計審査指針を改訂した。 平成18年改訂後の耐震設計審査指針(乙43、以下「平成18年耐震設計審査指針」という。)では、従来、「基準地震動S1」と「基準地震動S2」の2種類の基準地震動を策定することとなっていたものが「基準地震動Ss」に一本化され、基準地震動の策定にあたって震源として考慮する活断層を評価する際の評価対象年代が拡張されるとともに、基準地震動の策定方法も高度化された(乙78、79)。 また、新規制基準においては、「震源特性」や「伝播特性」及び「地盤の増幅特性(サイト特性)」を、詳細な調査に基づき、地域性を踏まえて詳細に考慮する、という地震動評価の基本的な考え方は、平成18年耐震設計審査指針から変更されていないものの、「伝播特性」及び「地盤の増幅特性(サイト特性)」の考慮に関わる記載が充実したりするなど、要求水準が高度化し、より詳細な調査や確認等が求められるところとなった。 ⑵ 新規制基準の定め(乙36の1及び2)基準地震動は、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」について、解放基盤表面(基準地 められるところとなった。 ⑵ 新規制基準の定め(乙36の1及び2)基準地震動は、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」について、解放基盤表面(基準地震動を策定するために、基盤面上の表層及び構造物がないものとして仮想的に設定する自由表面であって、著しい高低差がなく、ほぼ水平で相当な拡がりを持って想定される基盤の表面をいい、基盤とは、おおむねせん断波速度がVs=700m/s以上の硬質地盤であって、著しい風化を受けていないものをいう。)における水平方向及び鉛直方向の地震動としてそれぞれ策定する(設置許可基準規則の解釈・別記2(以下、設置許可基準規則の解釈の別記については、 「解釈別記2」の例で表記する。)4条5項1号)。 ア 「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」(ア) 解釈別記2の定め「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」は、内陸地殻内地震、プレート間地震及び海洋プレート内地震について、敷地に大きな影響を与えると予想される地震(以下「検討用地震」という。)を複数選定し、選定した検討用地震ごとに、不確かさを考慮して応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価を、解放基盤表面までの地震波の伝播特性を反映して策定する。なお、「内陸地殻内地震」とは、陸のプレートの上部地殻地震発生層に生ずる地震をいい、海岸のやや沖合で起こるものを含む。「プレート間地震」とは、相接する二つのプレートの境界面で発生する地震をいう。「海洋プレート内地震」とは、沈み込む(沈み込んだ)海洋プレート内部で発生する地震をいい、海溝軸付近又はそのやや沖合で発生する「沈み込む海洋プレート内の地震」と、海溝軸付近から陸側で発生する「沈み込んだ海洋プレート内の地震」の2種類に 沈み込んだ)海洋プレート内部で発生する地震をいい、海溝軸付近又はそのやや沖合で発生する「沈み込む海洋プレート内の地震」と、海溝軸付近から陸側で発生する「沈み込んだ海洋プレート内の地震」の2種類に分けられる。(解釈別記2第4条5項2号)① 内陸地殻内地震、プレート間地震及び海洋プレート内地震について、活断層の性質や地震発生状況を精査し、中・小・微小地震の分布、応力場及び地震発生様式(プレートの形状・運動・相互作用を含む。)に関する既往の研究成果等を総合的に検討し、検討用地震を複数選定すること(同号①)。 ② 内陸地殻内地震に関しては、次に示す事項を考慮すること(同号②)。 Ⅰ 震源として考慮する活断層の評価に当たっては、調査地域の地形及び地質条件に応じ、既存文献の調査、変動地形学的調査、地質調査、地球物理学的調査等の特性を活かし、これらを適切に組み合わせた調査を実施した上で、その結果を総合的に評価し活断層の位置、 形状、活動性等を明らかにすること(同号②ⅰ)。 Ⅱ 震源モデルの形状及び震源特性パラメータ等の評価に当たっては、孤立した短い活断層の扱いに留意するとともに、複数の活断層の連動を考慮すること(同号②ⅱ)。 ③ (略)④ 検討用地震ごとに、以下の応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価を実施して策定すること。 なお、地震動評価に当たっては、敷地における地震観測記録を踏まえて、地震発生様式及び地震波の伝播経路等に応じた諸特性(その地域における特性を含む。)を十分に考慮すること(同号④)。 Ⅰ 応答スペクトルに基づく地震動評価は、検討用地震ごとに、適切な手法を用いて応答スペクトルを評価のうえ、それらを基に設計用応答スペクトルを を含む。)を十分に考慮すること(同号④)。 Ⅰ 応答スペクトルに基づく地震動評価は、検討用地震ごとに、適切な手法を用いて応答スペクトルを評価のうえ、それらを基に設計用応答スペクトルを設定し、これに対して、地震の規模及び震源距離等に基づき地震動の継続時間及び振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性を適切に考慮して地震動評価を行うこと(同号④ⅰ)。 Ⅱ 断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価は、検討用地震ごとに、適切な手法を用いて震源特性パラメータを設定し、地震動評価を行うこと(同号④ⅱ)。 ⑤ 前記④の基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさ(震源断層の長さ、地震発生層の上端深さ・下端深さ、断層傾斜角、アスペリティ(強震動生成領域)の位置・大きさ、応力降下量、破壊開始点等の不確かさ、並びにそれらに係る考え方及び解釈の違いによる不確かさ)については、敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析した上で、必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を用いて考慮すること(同号⑤)。 ⑥ 内陸地殻内地震について選定した検討用地震のうち、「震源が敷地に 極めて近い場合」は、地表に変位を伴う断層全体を考慮した上で、震源モデルの形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係、並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討するとともに、これらの検討結果を踏まえた評価手法の適用性に留意の上、前記⑤の各種の不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価し、震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえた上で、さらに十分な余裕を考慮して基準地震動を策定すること(同号⑥。以下「本件特別考慮規定」という。)。 ⑦ 検討用地震の選定や基 源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえた上で、さらに十分な余裕を考慮して基準地震動を策定すること(同号⑥。以下「本件特別考慮規定」という。)。 ⑦ 検討用地震の選定や基準地震動の策定に当たって行う調査や評価は、最新の科学的・技術的知見を踏まえること。また、既往の資料等について、それらの充足度及び精度に対する十分な考慮を行い、参照すること。なお、既往の資料と異なる見解を採用した場合及び既往の評価と異なる結果を得た場合には、その根拠を明示すること(同号⑦)。 (イ) 基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド(甲31、以下「地震ガイド」という。令和4年6月改正前のもの。以下同様。)の定め前記(ア)を受けて、地震ガイドは、基準地震動として、以下のとおり定めている。 ① 検討用地震の選定―震源特性パラメータの設定(3.2.3)震源モデルの長さ又は面積、あるいは1回の活動による変位量と地震規模を関連づける経験式を用いて地震規模を設定する場合には、経験式の適用範囲が十分に検討されていることを確認する。その際、経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある(以下、同項全体を「本件ばらつき条項」という。)。 ② 地震動評価―応答スペクトルに基づく地震動評価(3.3.1)検討用地震ごとに適切な手法を用いて応答スペクトルが評価され、 それらを基に設定された応答スペクトルに対して、地震動の継続時間、振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性が適切に設定され、地震動評価が行われていることを確認する。 ③ 地震動評価―断層モデルを用いた手法による地震動評価―震源が敷地に極めて近い場合 間、振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性が適切に設定され、地震動評価が行われていることを確認する。 ③ 地震動評価―断層モデルを用いた手法による地震動評価―震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価(3.3.2⑷④)震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価においては、地表に変位を伴う断層全体(地表地震断層から震源断層までの断層全体)を考慮した上で、震源モデルの形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係、並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討されていることを確認する。 これらの検討結果を踏まえた評価手法の適用性に留意の上、各種の不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価し、震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえた上で、さらに十分な余裕を考慮して地震動が評価されていることを確認する。 特に、評価地点近傍に存在する強震動生成領域(アスペリティ)での応力降下量などの強震動の生成強度に関するパラメータ、強震動生成領域同士の破壊開始時間のずれや破壊進行パターンの設定において、不確かさを考慮し、破壊シナリオが適切に考慮されていることを確認する。 なお、震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を取り込んだ手法により、地表に変位を伴う国内外被害地震の震源極近傍の地震動記録に対して適切な再現解析を行い、震源モデルに基づく短周期地震動、長周期地震動及び永久変位を十分に説明できていることを確認する。この場合、特に永久変位・変形についても実現象を適切に再現できていることを確認する。さらに、浅部における断層のずれの進展の不均質性が地震動評価へ及ぼす影響を検討するとと もに、浅部における断層のずれの不確かさが十分に 形についても実現象を適切に再現できていることを確認する。さらに、浅部における断層のずれの進展の不均質性が地震動評価へ及ぼす影響を検討するとと もに、浅部における断層のずれの不確かさが十分に評価されていることを確認する。 震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価においては、破壊伝播効果が地震動へ与える影響について、十分に精査されていることを確認する。また、水平動成分に加えて上下動成分の評価が適切に行われていることを確認する。 ④ 地震動評価―不確かさの考慮(3.3.3)Ⅰ 応答スペクトルに基づく地震動の評価過程に伴う不確かさについて、適切な手法を用いて考慮されていることを確認する。地震動評価においては、用いる距離減衰式の特徴や適用性、地盤特性が考慮されている必要がある。 Ⅱ 断層モデルを用いた手法による地震動の評価過程に伴う不確かさについて、適切な手法を用いて考慮されていることを確認する。併せて、震源特性パラメータの不確かさについて、その設定の考え方が明確にされていることを確認する。 ⅰ 支配的な震源特性パラメータ等の分析震源モデルの不確かさ(震源断層の長さ、地震発生層の上端深さ・下端深さ、断層傾斜角、アスペリティの位置・大きさ、応力降下量、破壊開始点等の不確かさ、並びにそれらに係る考え方、解釈の違いによる不確かさ)を考慮する場合には、敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析し、その結果を地震動評価に反映させることが必要である。特に、アスペリティの位置・応力降下量や破壊開始点の設定等が重要であり、震源モデルの不確かさとして適切に評価されていることを確認する。 ⅱ 必要に応じた不 映させることが必要である。特に、アスペリティの位置・応力降下量や破壊開始点の設定等が重要であり、震源モデルの不確かさとして適切に評価されていることを確認する。 ⅱ 必要に応じた不確かさの組合せによる適切な考慮 地震動の評価過程に伴う不確かさについては、必要に応じて不確かさを組み合せるなど適切な手法を用いて考慮されていることを確認する。 地震動評価においては、震源特性(震源モデル)、伝播特性(地殻・上部マントル構造)、サイト特性(深部・浅部地下構造)における各種の不確かさが含まれるため、これらの不確実さ要因を偶然的不確実さと認識論的不確実さに分類して、分析が適切になされていることを確認する。 (ウ) 地震ガイドの改正地震ガイドは令和4年6月8日に改正されているところ(甲65)、本件ばらつき条項の記載はこの改正で見直されている。 ① 審査の方針(3.1)「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の策定に係る審査は、以下の方針で行う。 Ⅰ 略Ⅱ 「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の策定において経験式が用いられている場合には、経験式の適用条件、適用範囲について確認した上で、当該経験式が適切に選定されていることを確認する。 Ⅲ 略〔解説〕Ⅰ 地震動評価において、経験式として距離減衰式を参照する場合には、震源断層の拡がりや不均質性、断層破壊の伝播や震源メカニズム等の影響が考慮された上で、当該距離減衰式に応じた適切なパラメータが設定されていることに留意する必要がある。 Ⅱ 複雑な自然現象の観測データにばらつきが存在するのは当然であ り、経験式とは、観測データに基づいて複数の物理量等の相関を式として表現するものである。したがって、評価時点 する必要がある。 Ⅱ 複雑な自然現象の観測データにばらつきが存在するのは当然であ り、経験式とは、観測データに基づいて複数の物理量等の相関を式として表現するものである。したがって、評価時点で適用実績が十分でなく、かつ、広く一般に使われているものではない経験式が選定されている場合には、その適用条件、適用範囲のほか、当該経験式の元となった観測データの特性、考え方等に留意する必要がある。 ② 不確かさの考慮に関する記載の明確化地震ガイドにおいて、「不確かさについては、敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析した上で、必要に応じて不確かさを組み合わせる」としていたものは削除され、「基準地震動が、地震動評価に大きな影響を与えると考えられる不確かさを考慮して適切に策定されていることを、地震学及び地震工学的見地に基づく総合的な観点から判断する」と改正された。 イ 「震源を特定せず策定する地震動」「震源を特定せず策定する地震動」は、震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測記録を収集し、これらを基に、各種の不確かさを考慮して敷地の地盤物性に応じた応答スペクトルを設定して策定すること。なお、震源を特定せず策定する地震動については、次に示す方針により策定すること(解釈別記2第4条5項3号)。 (ア) 解放基盤表面までの地震波の伝播特性を必要に応じて応答スペクトルの設定に反映するとともに、設定された応答スペクトルに対して、地震動の継続時間及び振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性を適切に考慮すること(同号①)。 (イ) 「震源を特定せず策定する地震動」として策定された基準地震動の妥当性については、申請時における最新の科学的・ 時間及び振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性を適切に考慮すること(同号①)。 (イ) 「震源を特定せず策定する地震動」として策定された基準地震動の妥当性については、申請時における最新の科学的・技術的知見を踏まえて個別に確認すること。その際には、地表に明瞭な痕跡を示さない震源断 層に起因する震源近傍の地震動について、確率論的な評価等、各種の不確かさを考慮した評価を参考とすること(同号②)。 5 高経年化対策制度及び運転期間延長認可制度⑴ 高経年化対策制度発電用原子炉の設置者は、発電用原子炉施設の保全について、原子力規制委員会規則で定めるところにより、保安のために必要な措置を講じることが要求されている(原子炉等規制法43条の3の22第1項1号)。 上記措置のうち、高経年化対策については、①運転を開始した日以後30年を経過していない発電用原子炉に係る発電用原子炉施設について、30年を経過する日までに原子力規制委員会が定める発電用原子炉施設の安全を確保する上で重要な機器及び構造物並びに実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則(以下「実用炉規則」という。)82条1項各号に掲げられた機器及び構造物の経年劣化に関する技術的な評価(以下「高経年化技術評価」という。)を行い、この評価の結果に基づき、10年間に実施すべき施設管理に関する方針(以下「長期施設管理方針」という。)を策定することが要求されている(実用炉規則82条1項)。また、②運転を開始した日以後30年を経過した発電用原子炉施設(後述する運転期間延長認可を受けたものが対象となる)について、運転を開始した日以後40年を経過する日までに高経年化技術評価を行い、この評価の結果に基づき、認可を受けた延長する期間が満了する日までの期間において実施すべき長期施設管理方針 対象となる)について、運転を開始した日以後40年を経過する日までに高経年化技術評価を行い、この評価の結果に基づき、認可を受けた延長する期間が満了する日までの期間において実施すべき長期施設管理方針を策定することが要求されており(実用炉規則82条2項)、③運転を開始した日以後40年を経過した発電用原子炉施設(後述する運転期間延長認可を受けた延長する期間が10年を超えるものが対象となる)については、運転を開始した日以後50年を経過する日までに高経年化技術評価を行い、この評価結果に基づき、認可を受けた延長する期間が満了する日までの期間において実施すべき長期施設管理方針を策定することが要求されている(実用炉規則82条3項)。 ⑵ 運転期間延長認可制度原子炉等規制法は、発電用原子炉設置者がその設置した発電用原子炉を運転することができる期間を、当該原子炉の設置の工事について最初に同法43条の3の11第3項の使用前事業者検査について原子力規制委員会の確認を受けた日から起算して40年とした上で(同法43条の3の32第1項)、当該運転の期間は、その満了に際し、原子力規制委員会の認可を受けて、1回に限り20年を超えない期間で延長することができると規定している(同法43条の3の32第2項、第3項、同法施行令20条の6)。 運転期間延長認可を受けようとする者は、同法43条の3の32第1項に定める期間(発電用原子炉の設置の工事について最初に使用前事業者検査について確認を受けた日から起算して40年)の満了1年前までに所定の申請書を原子力規制委員会に提出しなければならず、当該申請書には、①申請に至るまでの間の運転に伴い生じた原子炉その他の設備の劣化の状況の把握のための点検(特別点検)の結果を記載した書類、②延長しようとする期間における運 会に提出しなければならず、当該申請書には、①申請に至るまでの間の運転に伴い生じた原子炉その他の設備の劣化の状況の把握のための点検(特別点検)の結果を記載した書類、②延長しようとする期間における運転に伴い生ずる原子炉その他の設備の劣化の状況に関する技術的な評価(劣化状況評価)の結果を記載した書類、及び③延長しようとする期間における原子炉その他の設備に係る施設管理方針を記載した書類を添付しなければならない(同法43条の3の32第4項、実用炉規則113条1項、2項)。 第4 争点 1 司法審査の在り方(争点1) 2 基準地震動の合理性(争点2)⑴ 基準地震動が地震観測記録において低水準であること(争点2-1)⑵ 検討用地震に係る想定地震動が低水準であること(争点2-2)⑶ ばらつき条項の不遵守(争点2-3)⑷ 震源が敷地に極めて近い場合に求められる考慮を怠っていること(争点2 -4) 3 基準地震動以下の地震動による事故の危険性(争点3) 4 劣化管理の困難性(争点4) 5 避難計画等(争点5)⑴ 避難計画の不備による人格権侵害の具体的危険性(争点5-1)⑵ 避難計画の不備の有無(争点5-2) 6 保全の必要性(争点6)第5 争点に関する当事者の主張 1 司法審査の在り方(争点1)(債権者らの主張)原発は、巨大なリスクを内在しており、リスクを制御できなくなった時の被害は図り知れない。被害を受ける可能性がある住民が提起した裁判について、最高裁平成4年10月29日第一小法廷判決(民集46巻7号1174頁、以下「伊方最高裁判決」という。)は、公平の見地から、本来、原告住民側が負担すべき客観的立証責任を事実上被告側に転換し、住民の立証の負担を軽減させる一つの判断枠組 廷判決(民集46巻7号1174頁、以下「伊方最高裁判決」という。)は、公平の見地から、本来、原告住民側が負担すべき客観的立証責任を事実上被告側に転換し、住民の立証の負担を軽減させる一つの判断枠組みを示した。伊方最高裁判決は行政訴訟の判決ではあるが、当事者の実質的公平を確保すべく、原発運転差止め民事訴訟においても、同様の判断枠組みが使用できる。 (債務者の主張)債権者らが人格権に基づき本件原発の運転禁止を求める以上、本件原発の運転に伴い、いかなる機序でどのような人格権の侵害の具体的危険性が生じ、これにより、いずれの債権者にどのような被害が生じるのかが具体的に明らかにされなければならない。 また、伊方最高裁判決は、行政処分取消訴訟において、被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から審理判断がなされた行政訴訟の判決であり、その主張立証責任に関する判示が、本件のような民事裁判にそのまま 妥当するものとはいえないし、 そもそも、伊方最高裁判決は客観的立証責任を被告行政庁に転換したものではない。 2 基準地震動が地震観測記録において低水準であること(争点2―1)(債権者らの主張)⑴ 基準地震動と実際の地震観測記録との対比基準地震動は原発の安全性確保の要であって、解放基盤表面にもたらされる合理的に考え得る最強の地震動をいうのであって、これを超える地震動はまず考えられない地震動を意味する。 本件原発の基準地震動993ガルについては、それを超える地震動が全国各地で数多く発生していることからすれば、地震観測記録において低水準のものである。 耐震性の判断要素としては、加速度のほかに、速度(カイン)、振幅の大きさ、地震の継続時間、地盤の変位の有無、繰り返しの強い揺れに対する備え等が挙げられるが 震観測記録において低水準のものである。 耐震性の判断要素としては、加速度のほかに、速度(カイン)、振幅の大きさ、地震の継続時間、地盤の変位の有無、繰り返しの強い揺れに対する備え等が挙げられるが、耐震性の低さを指摘するにはすべての要素を取り上げる必要はなく一要素だけを取り上げれば足りることから、債権者らは、耐震性の低さを指摘するために加速度を取り上げている。 ⑵ 一般住宅及びハウスメーカーの耐震性との比較基準地震動993ガルが低水準であることは、一般住宅を含む建物の耐震性との比較においても指摘できる。 一般建物は、建築基準法(昭和25年法律第20号)20条により、その構造耐力についての基準に適合しなければならないものとされ、同法の委任を受けて上記基準を定めている建築基準法施行令の規定(昭和55年政令第196号による改正後のもの)は、国土交通省によれば、「大規模の地震動(阪神淡路大震災クラス、震度6強~震度7に達する程度)で倒壊・崩壊しない」ことを求めている。 震度と最大加速度との関係からしても、最大加速度993ガル程度の揺れ が震度7に該当することは考えがたく、ハウスメーカーの住宅では、3000ないし5000ガルの地震動まで耐えることができることが確認されている。 ⑶ 債務者が想定した地震動が高水準なものであるか、低水準のものであるかは客観的に判明するものであって、地域特性によって左右されるものではない。仮に、低水準の地震動であっても本件原発敷地に限ってはそれを超える地震動は到来し難いというのならそれを裏付ける地域特性は施設管理者である債務者において立証されなければならない。 (債務者の主張)⑴ 基準地震動と実際の地震観測記録との対比債務者は、基準地震動の策定にあたり、 を裏付ける地域特性は施設管理者である債務者において立証されなければならない。 (債務者の主張)⑴ 基準地震動と実際の地震観測記録との対比債務者は、基準地震動の策定にあたり、最新の科学的、専門技術的知見を踏まえ、本件原発敷地周辺における地震発生状況、活断層の分布状況等を含めた地質・地質構造、敷地及び敷地周辺の地下構造等に関して、詳細な調査・評価を実施し、発電所周辺の地域特性を評価のうえ、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」と「震源を特定せず策定する地震動」を保守的な条件設定や不確かさの適切な考慮を行って評価しており、本件原発に基準地震動を超える地震動が到来することはまず考えられない。 原子力発電所の地震に対する安全確保対策においては、当該地点の地域的な特性を踏まえつつ、原子力発電所敷地に到来し得る地震動の評価を適切に行うことが基礎となる。特定の地点における地震動がどのようなものになるかは、①地震の震源特性(震源の規模(震源断層の長さ・幅)、震源断層の位置・傾き、放出される地震波の強さ等)、②地震波の伝播特性、③敷地及びその周辺の地盤の増幅特性(サイト特性)によって大きく影響を受ける。 債権者らが、地域特性を無視して、本件原発の基準地震動24波のうち水平方向の最大加速度が993ガルの基準地震動と、過去に別の地域で発生した地震の際に本件原発以外の観測地点で観測された地震動とを、最大加速度 の数値の大小のみで単純に比較し、本件原発の基準地震動が過小評価であるかのような上記主張は、科学的、専門技術的知見に照らして誤っている。 ⑵ 一般住宅及びハウスメーカーの耐震性との比較債権者らは、震度と最大加速度との間に対応関係があることを前提として上記主張を構成しているが、震度の大きさは 知見に照らして誤っている。 ⑵ 一般住宅及びハウスメーカーの耐震性との比較債権者らは、震度と最大加速度との間に対応関係があることを前提として上記主張を構成しているが、震度の大きさは単に加速度の値のみで判断できるものではない。また、債権者らのいう「建築基準法では震度6強~震度7に達する地震動で倒壊・崩壊しないことが求められている」というのは、最大級の地震動に対して「保有水平耐力計算」を行うことに対応するところ、建築基準法が「保有水平耐力計算」で用いる標準せん断力係数Coを1.0と定めていることは、最大加速度300ガルから400ガル程度の地震動に対する設計を要求していることになるとされている。 債権者らが主張するハウスメーカーの事例(振動試験)は全て建築物の設計耐力ではなく実耐力を示したものであり、実耐力は設計耐力よりも大きな地震動に耐えることが可能である。債権者らは、設計耐力と実耐力とを混同して比較している。 そもそも、基準地震動に対する耐震安全性を論ずる場合には、経時特性や周期特性といった最大加速度以外の特性も考慮しなければならず、この点は、ハウスメーカーによる振動実験の結果と比較する場面においても同様であるため、債権者らがハウスメーカーによる振動実験の結果と比較するにあたって、最大加速度の値のみを比較していることは不適切である。 3 検討用地震に係る想定地震動が低水準であること(争点2―2)(債権者らの主張)⑴ 検討用地震の地震動想定債務者は、本件原発の検討用地震について、C断層、三方断層、白木―丹生断層、大陸棚外縁~B~野坂断層、安島岬沖~和布―干飯崎沖~甲楽城断層、甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ケ瀬山断層という6つの地震 を想定している。 想定された複数の地 層、白木―丹生断層、大陸棚外縁~B~野坂断層、安島岬沖~和布―干飯崎沖~甲楽城断層、甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ケ瀬山断層という6つの地震 を想定している。 想定された複数の地震動のうち最大の地震動を基準地震動とするのであるから、いずれの地震動もそれぞれの活断層で想定される最強の地震動として正確で信頼できるものでなければならないし、地震ガイドの規定に照らして地震観測記録と適合するものでなければならない。ところが、各活断層に係る地震の想定地震動はそのいずれもが低水準で不合理である。 上記の不合理性は、安島岬沖~和布―干飯崎沖~甲楽城断層の地震動想定において特に顕著であるから、以下では、安島岬沖~甲楽城断層の地震動想定に絞って検討する。 ⑵ 安島岬沖~和布―干飯崎沖~甲楽城断層の地震動想定安島岬沖~甲楽城断層が動いた場合の地震規模の想定はマグニチュード8であり、これは巨大地震と言える。それにも拘わらず、地震動想定は東西方向で279ガルであり、これは全く平凡な地震動である。この279ガルという数値が安島岬沖~和布―干飯崎沖~甲楽城断層が活動した地震における最強の地震動であるということは、その地震規模、アスペリティや路頭までの距離からするとほとんど考えがたい。 安島岬沖~和布―干飯崎沖~甲楽城断層において、マグニチュード8にも及ぶ巨大地震が起きたとしても279ガルを超える地震動は到来しないというのなら、それを裏付ける地域性、地盤特性は債務者において主張、立証する必要がある。 (債務者の主張)地震規模は震源において評価するものである一方で、地震観測記録は地震計が設置された場所において観測されたものであり、後者は、前者とは異なり伝播特性及び地盤の増幅特性(サイト特性)の影響を受けたものである 規模は震源において評価するものである一方で、地震観測記録は地震計が設置された場所において観測されたものであり、後者は、前者とは異なり伝播特性及び地盤の増幅特性(サイト特性)の影響を受けたものであるから、地震動の最大加速度と地震規模が単純に比例するものではないことは当然である。また、特定の地点で観測される地震動は、必ずしも地震規模の大きさに単 純に比例して大きくなるとは限らない。 債務者は、検討用地震の地震動評価において、震源断層の大きさ等の震源断層パラメータについて保守的な条件で基本ケースを設定し、さらに、様々な「不確かさの考慮」を適切に行って敷地での地震動が大きくなる複数のケースを評価しており、その上で基準地震動を策定している。 4 ばらつき条項の不遵守(争点2-3)(債権者らの主張)⑴ 本件ばらつき条項ア地震ガイドは、本件ばらつき条項として、「震源モデルの長さ又は面積、あるいは1回の活動による変位量と地震規模を関連づける経験式を用いて地震規模を設定する場合には、経験式の適用範囲が十分に検討されていることを確認する(以下「第1文」という。)。その際、経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある。(以下「第2文」という。)」と定めた。 地震規模(M)の特定におけるばらつきといわれる問題は、地震規模(M)が0.2上がるごとに2倍、4倍、8倍とエネルギー量が増すという次元の問題なのであり、地震動策定における他の要素によって調整すれば足りる問題ではない。地震規模におけるばらつきの問題を地震動の問題に反映して解消しようとすることは、地震断層の長さ又は震源断層の面積に応じた最大の地震規模を基準地震動策定にあたって特定するのに比べてはるかに ではない。地震規模におけるばらつきの問題を地震動の問題に反映して解消しようとすることは、地震断層の長さ又は震源断層の面積に応じた最大の地震規模を基準地震動策定にあたって特定するのに比べてはるかに迂遠である。 地震規模と地震動の特定の各段階において客観的な検証を可能とすることには高い合理性がある。本件ばらつき条項の第2文は以上のような趣旨に基づくものと考えられる。 イ地震ガイドは、改正され、本件ばらつき条項の第2文が削除されたものの、同第2文は、基準地震動が科学性と客観性を担保するための規定であ って、本来、規定の有無にかかわらず、その遵守が求められる基本的な要請である。 ⑵ 基準地震動策定に当たって用いられた経験式ア本件原発の基準地震動(震源を特定して策定する地震動)を策定するに当たり、債務者は、応答スペクトルに基づく地震動評価においては、地震の規模(マグニチュード)を算出するために松田式を、断層モデルを用いた手法による地震動評価では、地震の規模(地震モーメント)を算出するために、入倉・三宅式を用いている。 松田式については、いかなる資料を用いて、いかなる手法で導き出された数式かが不明であり、「地震断層の長さと地震規模との関係は大体このようなものではないか」との松田教授の感覚に基づいて導き出されたものであり、数理的な根拠を有しないから、松田式を用いることに正当性は見出しがたい。 イ松田式や入倉・三宅式が活断層の状況に応じた地震規模の平均値をほぼ正確に示すものであったと仮定しても、基準地震動策定の場面においてばらつきの考慮をすることなくこれらの経験式をそのまま用いることに合理性はない。 ⑶ 以上のとおり、本件原発の審査手続は、本件ばらつき条項に違反している。 (債務者 準地震動策定の場面においてばらつきの考慮をすることなくこれらの経験式をそのまま用いることに合理性はない。 ⑶ 以上のとおり、本件原発の審査手続は、本件ばらつき条項に違反している。 (債務者の主張)⑴ 本件ばらつき条項ア本件ばらつき条項の第1文は、経験式の適用範囲について十分な検討を求めるものであり、同第2文は経験式を用いて地震規模を設定する場合の当該経験式の適用範囲を確認する際の留意点として、経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、当該経験式の適用範囲を単に確認するのみではなく、より慎重に、当該経験式の前提とされた観測データとの間の乖離の度合いまでを踏まえる必要があることを意味しているも のである。 本件ばらつき条項の第2文の「経験式が有するばらつき」とは、当該経験式とその前提とされた観測データとの間の乖離の度合いのことである。 同第2文は、確認的に、当該経験式の適用範囲を確認する際の留意点を記載したものであって、地震規模の上乗せを求める趣旨ではない。 イまた、地震ガイドは令和4年6月8日に改正されているところ、本件ばらつき条項の記載はこの改正で見直され、第2文は削除されているところ、その経緯は、従来からの趣旨をより明確に記述するためのものであり、審査の内容を変更するものではない。 ⑵ 基準地震動策定に当たって用いられた経験式松田式や入倉・三宅式等の経験式は、地震という複雑な自然現象のデータに基づいて複数の物理量等の相関関係を式として表現するものであり、過去に発生した地震ないし地震動のデータの集まり(データセット)をもとに、経験的に導き出されたものである。経験式から算出される値からの偏差は、観測値としてみると「ばらつき」であり、他方、基準地震動の策定過 発生した地震ないし地震動のデータの集まり(データセット)をもとに、経験的に導き出されたものである。経験式から算出される値からの偏差は、観測値としてみると「ばらつき」であり、他方、基準地震動の策定過程において経験式を用いてパラメータ設定をする際に検討すべきものと考えれば「不確かさ」であるということができる。 基準地震動策定の実務においては、「ばらつき」は「不確かさ」を考慮することによって解決するという関係にあるものと理解されている。原子力規制委員会も、経験式に対するデータが「ばらつき」を有することを前提に、新規制基準においては、支配的なパラメータの「不確かさ」を考慮することで保守的な地震動評価を行うべきものとしている。 入倉・三宅式を用いて地震規模を評価する際には、こうした「不確かさ」を踏まえて、断層長さ、上端・下端深さ、断層傾斜角を保守的に大きく評価することにより、保守的に大きな地震モーメント(Mo)の値を得ることで、保守的な地震動評価を行うことができる。 震源断層面積(S)の値の「不確かさ」はSとMoの関係を示す観測データの「ばらつき」をもたらす一要因であるところ、Sの値で「不確かさ」を考慮して大きな値を設定した場合に、その「不確かさ」を反映して算出したMoの値に対して、更に「ばらつき」の考慮としてMoの値を上乗せすることは、少なくともSの「不確かさ」について二重に考慮することになるという意味で過剰な上乗せとなる。 ⑶ 以上のことから、「不確かさ」の考慮とは別に、経験式に対するデータの「ばらつき」の考慮として、経験式で得られた地震規模の上乗せをするべきとの債権者らの主張は、地震学、地震工学等の科学的・専門技術的知見に照らして不合理であり、理由がない。 5 震源が敷地に極めて近い場合に求められる考 て、経験式で得られた地震規模の上乗せをするべきとの債権者らの主張は、地震学、地震工学等の科学的・専門技術的知見に照らして不合理であり、理由がない。 5 震源が敷地に極めて近い場合に求められる考慮を怠っていること(争点2-4)(債権者らの主張)⑴ 新規制基準の定め新規制基準においては、震源が敷地に極めて近い場合に、地震動に影響を与える要素(震源モデルの形状や位置、敷地及び施設との位置関係、震源特性パラメータ等)について詳細に検討すること、最新の科学的・技術的知見を踏まえること、十分な余裕を考慮すること、不確かさを考慮すること等、基準地震動策定についての一般的な注意喚起をしているが、それ以外に、震源極近傍活断層に特有の考慮要素が指摘されている。 地震ガイドが、震源が敷地に極めて近い場合に「地表に変位を伴う断層全体」の考慮を求めた趣旨は、「地表に変位を伴う場合は、浅部断層も動いていてそこから地震波が出ているから、深部断層だけでなく浅部断層から出る地震波も考慮すべきである」という点にある。 そうすると、「震源が敷地に極めて近い場合」の特別考慮を必要とするか否かのメルクマールは、浅部断層が長周期のみならず短周期の地震波を出す可 能性を考慮した上で、それでもなお原子力発電所への影響が小さいとみなせるかどうかによって判断すべきである。 ⑵ 白木―丹生断層及びC断層が、「震源が敷地に極めて近い場合」に該当すること本件原発敷地の地下構造モデルによれば、地震発生層の上部に位置する浅部の地盤は、地震発生層と大きく変わらない硬さがあり、その場合、一般に地震発生層にあるとされているアスペリティ(強震動生成域)が浅部の地盤にあってもおかしくない。 本件原発における基準地震動の策定では、白木 、地震発生層と大きく変わらない硬さがあり、その場合、一般に地震発生層にあるとされているアスペリティ(強震動生成域)が浅部の地盤にあってもおかしくない。 本件原発における基準地震動の策定では、白木―丹生断層及びC断層について、アスペリティを含む3km以深の深部断層から地震波が生じることを想定しているところ、白木―丹生断層及びC断層のいずれについても、その浅部断層と本件原発が至近距離に位置していることから、浅部断層で生成される地震波が、距離が近い分、本件原発に大きな影響を及ぼす恐れがある。 そのため、白木―丹生断層及びC断層は、本件原発にとって「震源が敷地に極めて近い場合」に当たるというべきである。 ⑶ 以上のことから、本件原発の適合性審査において、震源が敷地に極めて近い場合の考慮が欠如しているのに、これを是正させることなく設置変更許可処分をした原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程には、看過し難い過誤、欠落があるというべきである。 (債務者の主張)⑴ 新規制基準の定め地震ガイドが、震源が敷地に極めて近い場合に「地表に変位を伴う断層全体」の考慮を求めた趣旨は、断層付近の地表面では、地震に伴う断層のすべり(ずれ)の影響により、地震の揺れが収まった後も地表面の位置が元に戻らずにずれたままとなる場合があり、このように地表面が元の位置に戻らない変位(永久変位)が地震動に及ぼす影響を考慮することにある。 そうすると、「震源が敷地に極めて近い場合」とは、表出する地表変位の影響が近傍に立地する原子力施設にとって無視できないほど大きい場合である。 ⑵ 白木―丹生断層及びC断層債権者らが指摘する白木―丹生断層及びC断層についていえば、債務者は、より影響の大きいC断層の活動に伴い生じる地盤の傾斜に できないほど大きい場合である。 ⑵ 白木―丹生断層及びC断層債権者らが指摘する白木―丹生断層及びC断層についていえば、債務者は、より影響の大きいC断層の活動に伴い生じる地盤の傾斜について、1/5200にとどまることを確認した。一般に建築構造物では1/100以下の傾斜なら人間の感覚としてそれが生じていることを知覚しないとされており、基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価に係る審査ガイドでは評価の目安として1/2000を採用していることも踏まえると、本件原発におけるプラントに対する地表変位の影響は十分に小さいと言える。 各断層の活動により生じ得る地表変位の規模、及び当該地表変位の影響が基準地震動に寄与する程度を概ね推し量った結果、本件原発と白木-丹生断層及びC断層との関係について表出する地表変位の影響が近傍に立地する原子力施設にとって無視できないほど大きい場合に当たらない。 ⑶ 債務者は、本件原発の「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の評価にあたって選定した検討用地震について、いずれも「震源が敷地に極めて近い場合」として特別な考慮、検討が必要となるものではないと判断した。 6 基準地震動以下の地震動による事故の危険性(争点3)(債権者らの主張)⑴ 原発の老朽化過酷な環境下で稼働を続ける原発は、「バスタブ」状に稼働年数が進むにつれて故障・トラブルが増加していくことが知られている。また、1970年代に作られた原発は当時の設計・材質・製造技術、いずれの点でもレベルの高いものとはいえず、型が「旧い」ことによる問題も大きい。 また、金属材料は様々な要因により経年劣化する。金属材料は原発で使用される構造材や配管の素材であり、その劣化は耐震性能や配管の破断などに 重要な影響を及ぼ 」ことによる問題も大きい。 また、金属材料は様々な要因により経年劣化する。金属材料は原発で使用される構造材や配管の素材であり、その劣化は耐震性能や配管の破断などに 重要な影響を及ぼす。原発で使われる金属材料の経年劣化で重要なのは、照射脆化(中性子照射脆化)、金属疲労、腐食の3つである。原発で使用される構造材や配管等の経年劣化は、現在の高経年化に関する規制や、運転期間延長認可等の制度によって評価はできたとしても、その影響を無くすことはできない。 ⑵ 老朽化による危険性本件原発の基準地震動は、昭和51年12月1日の運転開始時、400ガルであった。その後、平成18年新耐震設計審査指針に基づくバックチェックの結果750ガルに上積みされ、福島原発事故後の新規制基準に基づく設置変更許可申請の段階で、更に993ガルに上積みされた。当初、400ガルの揺れに耐えるように設計され建築された巨大設備が、その2倍以上の993ガルの揺れに確実に耐えることができるか疑問がある。 40年以上も経過すれば、すべての部品が老朽化して劣化しており、検査によって部品を取り替えるにも限界がある。 ⑶ 運転期間延長認可制度の不遵守原発の稼働については法律によって原則40年間に限られており、その延長は例外として位置づけられている。その大きな理由のひとつは、原発という施設が地震等に際して単に運転を止めるだけでその被害拡大の要因の多くが除去される火力発電所、自動車、家電等と異なり、運転を止めた後においても少なくとも冷温停止まで厳格な管理を続けなければならないところにある。 原発の稼働期間40年を経過した後においては、「基準地震動以下の地震によって主給水ポンプが破損又は故障した場合においても炉心損傷前に冷却に至ることが確実にできるか ければならないところにある。 原発の稼働期間40年を経過した後においては、「基準地震動以下の地震によって主給水ポンプが破損又は故障した場合においても炉心損傷前に冷却に至ることが確実にできるから、基準地震動に満たない地震動に対しては原発の安全性が確保されている」という信頼を維持することはできない。 ⑷ 主給水ポンプ破損時の危険 ア主給水ポンプの耐震性はSクラスとされていないため、基準地震動に満たない地震動によって損壊又は故障する可能性がある。そして、その場合には複数の工程を踏まなければ冷却に成功しない。その間の手順の一つを失敗しただけで緊急事態に陥ることになるが、余震が予想される状況下において従業員は強い精神的緊張を伴う作業を強いられることになる。加圧水型の原子炉はこのような基本的な弱点を抱えているのであり、そのような事態が基準地震動を下回る地震によってさえ生じる。 イ本件において問題とすべきは、主給水ポンプの機能が喪失した上、補助給水ポンプに係るイベントツリー記載の行程が関連する機器類の老朽化によって機能しなくなる場合である。その場合には、冷却までの過程ないし手順が少なく、その手順が失敗した場合に何段階もの救済シナリオが用意されている場合に比べて、冷却成功まで困難が多く、従業員が時間に追われ強い精神的緊張を強いられることになるから、高い信頼性を保持しているとはいえない。 (債務者の主張)⑴ 老朽化による危険性新規制基準においては、あくまで原子力発電所における安全性を確保するための「性能」が要求事項とされており、運転期間の経過によって単純に故障頻度が増加するとの債権者らの主張は、高経年化技術評価を含む、各種点検による劣化状況の把握や機器の取替え・補修等の保守管理に関する原子力事業者に 求事項とされており、運転期間の経過によって単純に故障頻度が増加するとの債権者らの主張は、高経年化技術評価を含む、各種点検による劣化状況の把握や機器の取替え・補修等の保守管理に関する原子力事業者による取り組みを理解しないものである。 債務者は、実用発電用原子炉施設における高経年化対策実施ガイドに従って、本件原発において、運転開始後60年時点で耐震安全性に影響する可能性がある経年劣化事象を抽出し、評価対象機器・構造物について経年劣化を加味して耐震重要度クラスに応じた地震力を用いた評価を行い、評価対象機器・構造物の機能維持に対する経年劣化事象の影響評価を実施し、運転開始 後60年時点においても本件原発の耐震安全性が確保されていることを確認している。 よって、債権者らの上記主張は具体的危険性を指摘するものではない。 ⑵ 運転期間延長認可制度の不遵守運転を開始した日以後30年を経過した発電用原子炉については、高経年化対策制度が設けられており、さらに発電用原子炉の設置の工事に対し、最初に使用前事業者検査について原子力規制委員会の確認を受けた日から起算して40年を超えて運転することができる期間を延長するに際しては、運転期間延長認可制度が設けられている。 債務者は、本件原発の運転期間延長認可を申請するにあたり、運転開始から申請に至るまでの間に生じた原子炉その他の設備の劣化状況の把握のための点検(特別点検)、運転開始から60年の間に生じる原子炉その他の設備の劣化状況に関する評価(劣化状況評価)、60年間の運転を踏まえた原子炉その他の設備についての保守管理に関する方針(施設管理方針)の策定を行った。 債務者は、原子力規制委員会に対して、平成27年11月26日に本件原発の高経年化対策に関する保安規定変更認可申請とともに、運転期 設備についての保守管理に関する方針(施設管理方針)の策定を行った。 債務者は、原子力規制委員会に対して、平成27年11月26日に本件原発の高経年化対策に関する保安規定変更認可申請とともに、運転期間延長認可申請を行った。かかる高経年化対策に関する保安規定変更認可及び運転期間延長認可により、本件原発について運転期間延長審査基準の要求事項を満足していることが確認された。 ⑶ 主給水ポンプ破損時の危険ア原子力発電所のプラント全体としての安全性を確保するためには、重要度に応じて要求の程度を変化させる方法(グレーディッドアプローチ)が有効であり、このような安全規制の方法は、国際原子力機関(IAEA)の安全基準や米国の安全規制等、多くの国で広く採用されている。そして、我が国の原子力規制においてもこの考え方は採用されており、①設計基準 対象施設を耐震重要度分類により分類し(設置許可基準規則解釈別記2第4条2項)、②耐震重要施設(耐震重要度分類Sクラスに属する。設置許可基準規則解釈別記1第3条1項)は、基準地震動による地震力に対して機能喪失しないこと(設置許可基準規則第4条3項)等を求めている。 イ債務者は、全交流動力電源喪失を起因事象とし、非常用炉心冷却設備の高圧注入系及び低圧注入系が作動せず、補助給水設備もすべて作動しないこと等をあえて仮定したケースを想定した場合、炉心溶融が開始する時間は、事象発生から3.4時間後となった。 ウ 「2次冷却系からの除熱機能喪失」を想定した対策では、2次冷却設備中の2次冷却材の枯渇(ドライアウト)により2次冷却設備における除熱機能が完全に失われたタイミングで、非常用炉心冷却設備(ECCS)である充てん/高圧注入ポンプを起動して燃料取替用水タンクのほう酸水を原子炉容器に連続的に送り アウト)により2次冷却設備における除熱機能が完全に失われたタイミングで、非常用炉心冷却設備(ECCS)である充てん/高圧注入ポンプを起動して燃料取替用水タンクのほう酸水を原子炉容器に連続的に送り込み、加圧器逃がし弁を開放して、蒸気となった1次冷却材を放出することで熱を除去し、炉心の冷却を行う(フィードアンドブリード)こととされている。この対策では、事象発生から約25分で蒸気発生器内がドライアウトし、このタイミングでフィードアンドブリードを開始する操作を5分以内に行うとしている。 操作時間についていえば、フィードアンドブリード開始の具体的操作は単純であり、5分もあれば十分な余裕を持って行える操作であるし、仮にこの操作時間が10分を要したとしても対策が有効であることも確認している。そして、一旦フィードアンドブリードを開始してしまえば、順調に余裕が生まれ、次の操作まで十分に時間があることからすれば、炉心損傷を防止する対策は、運転操作の完了時間も含め実現可能である。 7 劣化管理の困難性(争点4)(債権者らの主張)原発の劣化管理の本質的な問題は、どこがどう劣化するかを予想できないこ とである。原子力発電所は、基本的には一つ一つ新しく設計され、毎回設計改善やスケールアップを繰り返しているプラントにあっては、どの部位に集中的な劣化が発生するかは予見できない。しかしながら、原発の内部点検には、一般産業プラントにない原発固有の、開放点検ができない、品質検査の限界がある、装置の破壊に至らない傷は補修しないという困難な問題がある。 また、原発に張り巡らされている配管や振動が生じるような場所においては、様々な要因により経年劣化し、減肉や亀裂が生じる。原子力発電事業者が行う劣化管理評価は、評価対象機器・構造物をグループ ある。 また、原発に張り巡らされている配管や振動が生じるような場所においては、様々な要因により経年劣化し、減肉や亀裂が生じる。原子力発電事業者が行う劣化管理評価は、評価対象機器・構造物をグループ化した上で、代表機器の評価を行っているに過ぎず、欠陥の見落としは避けられない。 (債務者の主張)⑴ 高経年化技術評価を含む、各種点検による劣化状況の把握や機器の取替え・補修等の保守管理を適切に講じることで、原子力発電所自体は安全性を確保しつつ運転を継続することが可能であり、そのために必要な科学的・専門技術的知見も、債務者又は国内外で発生した事故・トラブル等の経験や各種研究成果により集積され、保守管理の継続的な改善の取組みに活用されている。 最新知見及び運転経験をもとに経年劣化事象とそれが発生する部位を広く抽出し、それらのうち評価上厳しくなる部位を評価代表箇所として選定し、十分な保守性を踏まえて劣化評価しているため、劣化管理が困難であり、適切な管理をすることが不可能であるかの如く述べる債権者らの主張は明らかに誤りである。 ⑵ 原子力発電所においては、原子炉容器を含むほぼ全ての設備で開放点検を行うことが可能であり、原子炉容器の内部等、放射線量が多いため人が近付いての直接的な目視点検が困難な設備も一部存在するが、かかる設備については、水中カメラによる間接的な目視点検、超音波探傷試験、渦流探傷試験等、直接的な目視点検以外の適切な方法によって点検を実施し、適切に劣化状況を把握しており、本件原発においても同様である。 本件原発において、点検の結果に関わらず原子炉容器に大きな亀裂が存在することをあえて仮定して、高応力の発生を想定した場合であっても、原子炉容器が脆性破壊により破損しないことをPTS評価(加圧熱衝撃評 本件原発において、点検の結果に関わらず原子炉容器に大きな亀裂が存在することをあえて仮定して、高応力の発生を想定した場合であっても、原子炉容器が脆性破壊により破損しないことをPTS評価(加圧熱衝撃評価)により確認している。 債務者が本件原発における原子炉容器の健全性評価において亀裂の存在を仮定したのは、脆性破壊の発生可能性について保守的な条件設定をするためであり、債権者らの主張は、上記評価手法を理解しないものである。 8 避難計画の不備による人格権侵害の具体的危険性(争点5-1)(債権者らの主張)⑴ 原発では、自然災害等の事象の予測の不確実さに対処しつつ、生命、身体に重大かつ深刻な被害のリスクの顕在化を防いで安全性を確保するために、原発施設自体のみならず原発敷地外の避難計画にわたる、深層防護(第1の防護階層から第5の防護階層)の考え方を適用することが必要とされている。 深層防護とは、不確かさへの備えとして、多種の防護策を組み合わせることによって全体として防護の信頼性をできるだけ向上させるための概念であり、第1層から第3層までの対策でも放射性物質が外部に放出される可能性をゼロにできない(ゼロリスクはあり得ない)以上、第4層及び第5層についても万全な対策が講じられていなければ、原発に内在する膨大な危険を社会通念上容認できないことに基づく考え方である。 そして、実効性ある避難計画が策定されているといえるか否かを判断するにあたっては、他の安全確保対策の存在を前提にしてはならない。あくまでも、策定された避難計画だけで独立して有効に機能するといえなければならない。 ⑵ 避難計画の策定は、IAEAの安全基準である「原子力発電所の安全:設計」(SSR-2/1(Rev.1))では、「放射性物質が大量に放出 だけで独立して有効に機能するといえなければならない。 ⑵ 避難計画の策定は、IAEAの安全基準である「原子力発電所の安全:設計」(SSR-2/1(Rev.1))では、「放射性物質が大量に放出された場合における放射線影響の緩和」(第5の防護レベル)に係る安全確保対策に 位置付けられる。 ⑶ 深層防護の第1から第5の防護レベルのいずれか一つが欠落し又は不十分な場合には、原発が安全であるとはいえず、人格権侵害の具体的危険がある。これを避難計画についてみると、第5の防護レベルである避難計画に欠落又は不十分な場合には、原発が安全であるとはいえず、人格権侵害の具体的危険がある。 (債務者の主張)⑴ 深層防護の考え方の基礎となる「前段否定・後段否定」の概念は、異常や事故の発生・拡大を防止し、その影響を低減するため多段的な安全確保対策を立案・計画するに当たって、各防護レベルにおける対策をそれぞれ充実した十分な内容とするために、あえて、各々を独立した対策として捉え、前段階の対策は奏功せず、後続の段階の対策には期待できない、との前提を無条件に置くものである。 上記で述べた深層防護の考え方に対し、本件仮処分は人格権に基づく妨害予防請求権を根拠として本件原発の運転差止めを求める民事上の差止請求であり、かかる請求が認められるためには、本件原発において債権者らの人格権侵害、すなわち放射性物質の異常放出を伴う重大事故等が発生し、債権者らの生命、身体又は健康が害される具体的危険性が存在することが必要である。 ⑵ 本件原発において、各層の防護レベルのうちいずれかに不備があったとしても、それのみをもって直ちに具体的危険性が認められるのではなく、いかなる欠陥に起因して、どのような機序で、債権者らの人格権を侵害するような放射性物質 層の防護レベルのうちいずれかに不備があったとしても、それのみをもって直ちに具体的危険性が認められるのではなく、いかなる欠陥に起因して、どのような機序で、債権者らの人格権を侵害するような放射性物質の異常放出を伴う重大事故等が生じるに至るのかが具体的に示されなければ、具体的危険性の存在が認められるべきものではない。 9 避難計画の不備の有無(争点5-2)(債権者らの主張) ⑴ 複合災害を想定した上での実現可能な避難計画ではないア本件原発に関して、地震や原子力災害など災害ごとの地域防災計画はあるものの、災害ごとに別々に規定されている地域防災計画からは、地震と原発事故の同時発災(複合災害)の想定が抜け落ちている。 地震による原発事故が起きた場合に、住民らは自宅で屋内退避をすることができない。それにもかかわらず、避難計画には、地震時に自宅で屋内退避できない場合の住民らの避難先が具体的に規定されていない。 (ア) 「美浜地域の緊急時対応」には、地震による家屋倒壊等により屋内退避が困難な場合には市町が開設する指定避難所等へ避難すると記載されているものの、防災計画には、地震による家屋倒壊等により屋内退避が困難な場合に関する規定がないか、又は、「国が屋内退避指示を出している中で、自然災害を原因とする緊急の避難等が必要となった場合には、市は(町は)、人命最優先の観点から、当該地域の住民に対し避難指示を行うことができる。」と抽象的に規定するのみで、どの建物に何人避難できるのか等について定められていない。 (イ) 仮に、地震時の指定避難所を用いるとしても、地震時の指定避難所は、地震による建物倒壊の危険を避けるため、学校の校庭等の屋外であることが多く、住民らは屋外に長時間滞在することによって大量の (イ) 仮に、地震時の指定避難所を用いるとしても、地震時の指定避難所は、地震による建物倒壊の危険を避けるため、学校の校庭等の屋外であることが多く、住民らは屋外に長時間滞在することによって大量の被ばくを強いられる。 イ本件原発ではその周辺約30kmから約45kmの地点に他の原発が位置していることから、これらの原発が同時多発的に事故を起こすことは十分に想定できる。 しかしながら、本件避難計画では、本件原発、大飯原発、高浜原発が同時多発的に原発事故を起こす可能性を想定した上での実現可能な避難計画は策定されていない。 ⑵ 屋内退避による放射線防護の効果はごくわずか 屋内退避をすることによる、放射性プルームからの外部被ばくに対する防護効果は、多くの住民が居住する木造家屋の場合にはわずか10%低減でしかない。原子力災害対策指針では500Sv/hが観測されたら数時間以内に避難をするとされていることから、屋内退避をしている間及び屋内退避から避難をしている間の被ばく量を累積すると、平常時の被ばく限度1mSv/yを優に超えてしまう。国内法では、1mSv/yが公衆被ばく限度として規定されているところ、国内法に基づいて、「国民の生命、身体を保護」(原子力災害対策特別措置法(以下「原災法」という。)1条)を目的として策定しなければならない避難計画について、国内法と全く整合していない。 また、放射性プルーム通過後に換気をしなければ、家屋の開口部から入り込んだ汚染空気が屋内に残っているため、屋内退避の効果がない。放射性プルーム通過後に換気をするタイミングを判断するためには、放射性プルームが通過し、しばらくは放射性プルームが来ないことを判断しなければならない。 ⑶ 避難先すら周知されていない市民団体(オー 過後に換気をするタイミングを判断するためには、放射性プルームが通過し、しばらくは放射性プルームが来ないことを判断しなければならない。 ⑶ 避難先すら周知されていない市民団体(オール福井反原発連絡会)は、令和3年6月19日、同月20日に美浜町内3669世帯中、約3400世帯にアンケートを配布し、7月10日までに郵送で215通の回答があった。 避難計画の内容を知っているかとの問いについて、「おおい町か大野市に避難することになっている」ことを知っている住民はわずか147名だった。 美浜町は、本件原発が立地する地元であり、他の地域と比べて原発事故の被害を大きく受けやすいにもかかわらず、避難先というごく基本的な事項を約3割の住民が避難先を把握していない。 避難計画は単に策定されているだけでは意味がなく、住民への周知徹底を欠いている現状では、原発事故時に計画通りに住民らが避難する実現可能性はない。 ⑷ 安定ヨウ素剤の服用安定ヨウ素剤は、様々な放射性物質によって起こる内部被曝(体内に取り込んでしまった放射性物質による被曝)のうち、放射性ヨウ素(ヨウ素131)による内部被曝の影響を低減するものである。 安定ヨウ素剤の服用によって、甲状腺への放射性ヨウ素の取り込みを抑制できる効果は、多くても取り込んだ量の半分にも満たないし、わずか8時間のうちに服用しなければその効果も得られないという極めて限られた場合である。 原子力災害対策指針では、緊急時モニタリングとして現地で放射線量を実測した値を基に防護措置の判断材料とすると定めている。これでは、予測値を用いないため、放射性物質の挙動を後追いするに過ぎない。放射性物質は風向き、風の強さによって刻一刻と変化するのであり、実測値に頼ってい 値を基に防護措置の判断材料とすると定めている。これでは、予測値を用いないため、放射性物質の挙動を後追いするに過ぎない。放射性物質は風向き、風の強さによって刻一刻と変化するのであり、実測値に頼っていては、住民一人一人に安定ヨウ素剤の服用指示が適時にきちんと伝わるための時間的余裕を持った時期に安定ヨウ素剤の服用指示を出すことができない。 ⑸ コロナ禍での避難原発事故が起きた際の避難計画は、住民らが自家用車やバス、自衛隊車両等に乗り合って避難することが求められており、密集・密接・密閉の環境である。また、避難退域時検査、除染、安定ヨウ素剤の配布・服用の場面では、人の密集、密接が発生し、放射性物質を避けて屋内でこれらの作業を行なう場合には密閉空間になる。 避難所は、まさに放射性物質が屋内に流入しないように密閉した空間に人が密集・密接する3密の空間であり、たとえ被ばくからの防護ができるとしても、新型コロナウイルス感染症の感染が連鎖し、大規模な集団感染が発生する危険が大きい。 ⑹ 被ばくを前提にした避難計画UPZ(屋内退避などの防護措置を行う区域)においては、空間放射線量 の測定結果につき、毎時500μSvが計測される前は避難せずに屋内退避をし、毎時500μSvが計測されてからようやく数時間内を目途に避難を実施する。また、毎時20μSv超過した時から概ね1日が経過した時の空間放射線量率が毎時20μSv超過している区域の住民は、1週間程度内に一時移転を行うこととされている。 高い空間放射線量率が計測されて初めて避難等を実施するということは、その地域の住民に対して放射線量が高くなるまで待たせた上でその放射線を浴びながら避難することを強いることを意味するものであり、被ばくすることを前提とした避 されて初めて避難等を実施するということは、その地域の住民に対して放射線量が高くなるまで待たせた上でその放射線を浴びながら避難することを強いることを意味するものであり、被ばくすることを前提とした避難計画であるといえる。 (債務者の主張)⑴ 総論原子力災害対策は、原子力事業者、国、地方公共団体が各々の責務に応じて相互に連携して実施している。債権者らが問題点を指摘する住民の避難等に関しても、地方公共団体が作成する地域防災計画(原子力災害対策編)に基づいて実施されるが 、住民の避難等に関する専門的・技術的事項については、原子力規制委員会の策定した原災指針によるものとされている 。 原災指針は、福島第一原子力発電所事故の経験を踏まえ、緊急事態における原子力発電所周辺の住民等に対する放射線の影響を最小限に抑える防護措置を確実なものにすることを目的とし、①住民の視点、②継続的情報提供、③最新の国際的知見の積極的活用を基本的な考え方として、原子力災害における放射性物質の拡散態様や被ばくの経路等を考慮した防護措置を規定している。その内容は、福島第一原子力発電所事故の経験を踏まえ、国際原子力機関(IAEA)の安全基準等を参考にした、合理的で実効的なものとなっている。 ⑵ 複合災害を想定した上での実現可能な避難計画ではないア災害対策基本法(以下「災対法」という。)に基づく防災基本計画には原 子力災害対策編以外にも、地震災害対策編、津波災害対策編、風水害対策編、雪害対策編等が定められている。これらを踏まえ、地域防災計画では、それぞれの地方公共団体に必要となる地震災害等の自然災害への対策等の定めがなされており、複合災害を想定していないとする債権者らの主張には理由がない。 避難開始前の段階で 域防災計画では、それぞれの地方公共団体に必要となる地震災害等の自然災害への対策等の定めがなされており、複合災害を想定していないとする債権者らの主張には理由がない。 避難開始前の段階で、避難計画で避難経路として定められている道路等が、自然災害等により使用できない場合は、美浜町及び敦賀市は、代替経路を設定するとともに、当該道路等の管理者は復旧作業を実施することにしている。 イ震源となる断層において発生した地震波は距離に応じて大きく減衰する性質を有することから、仮に百歩譲って、本件原発の近傍で地震が発生し、本件原発の安全機能を喪失するような大きさの地震動が襲うようなことがあったとしても、その震源となる断層で発生した地震波が本件原発から直線距離で約30kmも遠く離れた大飯発電所や、約45k も遠く離れた高浜発電所に伝わったときには地震動は相当小さくなるため、これらの発電所も同時に地震によって安全機能を喪失することは益々考えられない。 ⑶ 屋内退避による放射線防護の効果はごくわずか木造家屋への屋内退避は、内部被ばくに対しては大きな効果を有している。 また、原子力規制委員会は、「原子力災害発生時における防護措置の基本的な考え方は、重篤な確定的影響を回避するとともに、確率的影響のリスクを合理的に達成可能な限り低く保つことである。このためには、放射性物質の吸入による内部被ばくをできる限り低く抑えることが重要である」との見解を示している。 ⑷ 避難先すら周知されていない債権者らの主張は、市民団体等による独自の調査結果に基づいているところ、その内容についての信憑性は明らかでない。それを措くとしても、各地 方公共団体は自身のウェブサイトや防災パンフレットによって継続的に広報活動を行っており、ま 自の調査結果に基づいているところ、その内容についての信憑性は明らかでない。それを措くとしても、各地 方公共団体は自身のウェブサイトや防災パンフレットによって継続的に広報活動を行っており、また、大規模な防災訓練を実施し、住民自身にも防災活動への参加を促すことで、避難計画の周知徹底を図っている。 ⑸ 安定ヨウ素剤の服用安定ヨウ素剤の服用においては、放射性ヨウ素へのばく露後2時間以内であれば90%以上、またばく露後8時間以内であっても約40%以上、放射性ヨウ素の甲状腺への集積を抑制できるとされている。 安定ヨウ素剤の服用は、原則として、原子力規制委員会が服用の必要性を判断し、その判断に基づき、直ちに、原子力災害対策本部又は地方公共団体は指示を行い、住民は当該指示に従って服用を行うこととなっている。 ⑹ コロナ禍での避難「美浜地域の緊急時対応」は、新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた感染症等の流行下における各種防護措置の具体化が図られているものであり、債権者らの主張は当を得ない。 内閣府は、令和2年5月15日、新型コロナウイルスの感染が収束しない中で災害が発生した場合の避難行動の在り方を公表しており、それによれば、「新型コロナウイルス感染症が収束しない中でも、災害時には、危険な場所にいる人は避難することが原則です」と記載されている。このように、国の基本姿勢は「防護措置」と「感染防止対策」を可能な限り両立させ、「感染拡大・予防対策を十分考慮した上で、避難や屋内退避等の各種防護措置を行うこと」である。 福井県は、「高浜地域の緊急時対応」及び「大飯地域の緊急時対応」等に基づき、同年8月27日に、新型コロナウイルス感染症の流行中に大飯発電所及び高浜発電所で同時に事故が起きた場合を である。 福井県は、「高浜地域の緊急時対応」及び「大飯地域の緊急時対応」等に基づき、同年8月27日に、新型コロナウイルス感染症の流行中に大飯発電所及び高浜発電所で同時に事故が起きた場合を想定した広域避難訓練を、全国で初めて実施したなお、国は新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行を正式に決定 した。 ⑺ 被ばくを前提にした避難計画我が国の原災指針上、被ばく防護措置は、重篤な確定的影響を回避するとともに、確率的影響のリスクを合理的に達成可能な限り低く保つため実施されるものである。この考え方は、国際放射線防護委員会(ICRP)による勧告等の国際的な知見に則るものでもあるところ、債権者らの主張は、放射線被ばくに関する防護措置を正解せずになされたものであり、失当である。 10 保全の必要性(争点6)(債権者らの主張)本件原発が重大事故を起こすことにより、債権者らの人格権が侵害される事態を回避するためには、本件原発の運転を差し止める以外に方法がない。運転を差し止めても、原子炉内に核燃料が装荷されている以上、人格権侵害のリスクをゼロにすることはできないが、運転が差し止められた結果核燃料が冷温停止状態にあれば、冷却機能を喪失しても、メルトダウンに至るまでの時間的余裕は大きく、メルトダウンを回避するための各種の対策をとることができ、重大事故に至る可能性を大幅に軽減することができる。そして他に、原発事故による債権者らの人格権侵害を回避する的確な方法はない。 (債務者の主張)被保全権利の存否について一旦おくとしても、本件仮処分について、債権者らにおいて、債務者を被告とする本件原発の運転差止請求訴訟の判決(本案判決)による救済を待っていたのでは本件原発の運転差止請求権が実質 全権利の存否について一旦おくとしても、本件仮処分について、債権者らにおいて、債務者を被告とする本件原発の運転差止請求訴訟の判決(本案判決)による救済を待っていたのでは本件原発の運転差止請求権が実質的に満足されなくなるという具体的な事情が疎明されているとはいえない。 第6 争点に対する判断 1 司法審査の在り方(争点1)⑴ 本件は、民事保全法23条2項に基づき、本件原発の運転差止めの仮処分を求めるものであり、債権者らが主張する被保全権利は、人格権に基づく妨 害予防請求権としての差止請求権であるところ、個人の生命、身体等の重大な保護法益が侵害される具体的危険がある場合には、当該個人は、人格権に基づく妨害予防請求として、侵害行為を予防するため、当該侵害行為の差止めを請求することができる。 ⑵ 原子炉等規制法は、その目的において、核原料物質、核燃料物質及び原子炉による災害を防止し、及び核燃料物質を防護して、公共の安全を図ることを掲げ(同法1条)、発電用原子炉施設の位置、構造及び設備が、発電用原子炉による災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること(同法43条の3の6第1項4号)等と定めて、原子力規制委員会に対して、原子力発電所の安全性を確保するための安全基準の策定とその適合性の判断を委ねている。 発電用原子炉施設の安全性に関する審査は、当該発電用原子炉施設そのものの工学的安全性、平常時及び事故時における周辺住民及び周辺環境への放射線の影響等を、当該発電所の地形、地質、気象等の自然的条件等との関連において、多角的、総合的見地から検討するものであり、さらに、将来の予測に係る事項も含まれていることから、審査の基礎となる基準の策定及び基準への適合性の審査においては、原子力工 自然的条件等との関連において、多角的、総合的見地から検討するものであり、さらに、将来の予測に係る事項も含まれていることから、審査の基礎となる基準の策定及び基準への適合性の審査においては、原子力工学はもとより、多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づく総合的判断が必要とされるものであり、原子力規制委員会が安全基準に適合するものとして安全性を認めた発電用原子炉施設は、当該審査に用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、又は当該発電用原子炉施設が当該具体的審査基準に適合するとした原子力規制委員会の判断に不合理な点が認められない限り、当該発電用原子炉施設が確保すべき安全性を具備するものというべきである。 そして、一般に、被保全権利の主張疎明責任は債権者側が負うものと解されるから、本件原発が前記の安全性を欠き、債権者らの生命、身体及び健康を侵害する具体的危険が存することは、本件原発の運転差止めを求める債権 者らが主張、疎明すべきである。ただし、当該発電用原子炉を設置、運用する事業者である債務者は、原子力規制委員会が策定した審査基準の内容が合理的であるか否か及び原子力規制委員会が示した発電用原子炉施設に係る審査基準への適合性判断が合理的であるか否かについての専門技術的な知見及び資料を十分に保有していると認められることからすれば、債務者の設置、運用する本件原発が具体的審査基準に適合する旨の判断が原子力規制委員会により示されている本件においては、まず、債務者において、当該具体的審査基準に不合理な点のないこと、及び、本件原発が当該具体的審査基準に適合するとした原子力規制委員会の判断について、その調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落がないなど、不合理な点がないことを、相当の根拠、資料に基づき、主張、疎明す 原発が当該具体的審査基準に適合するとした原子力規制委員会の判断について、その調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落がないなど、不合理な点がないことを、相当の根拠、資料に基づき、主張、疎明する必要があり、債務者がこの主張、疎明を尽くさない場合には、当該事項については本件原発の安全性に欠けるところがあり人格権侵害の具体的な危険の存在が事実上推認されるものと解するのが相当である。 他方、債務者が前記の主張、疎明を尽くした場合には、債権者らにおいて、本件原発の安全性に欠ける点があり、債権者らの生命、身体等の人格的利益が侵害される具体的危険が存在することについて、主張、疎明する必要があるというべきである。 ⑶ よって、以下においては、原子力規制委員会が本件原発の審査に用いた具体的審査基準に不合理な点がないか否か、及び、原子力規制委員会のした適合性判断について、その調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落がないなど不合理な点がないかという観点から、債務者が前記の主張、疎明を尽くしているか否かについて判断していく。 2 基準地震動の合理性(争点2)⑴ 認定事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、後掲疎明資料及び審尋の全趣旨 により一応認められる。 ア本件原発に関する基準地震動の策定(ア) 「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の評価a 検討用地震の選定債務者は、本件原発敷地周辺の地震発生状況、活断層の分布状況等を含む地質・地質構造に関して、調査・評価を実施した上で、それらの調査・評価結果に基づき、敷地に影響を及ぼしたと考えられる過去の地震11個と、震源として考慮する活断層のうち、敷地に影響を及ぼすと考えられる活断層による地震15個を検討用地震の候補とした 、それらの調査・評価結果に基づき、敷地に影響を及ぼしたと考えられる過去の地震11個と、震源として考慮する活断層のうち、敷地に影響を及ぼすと考えられる活断層による地震15個を検討用地震の候補とした(乙32添付資料六〔6-4―32、6-4-33頁〕)。 そして、それらを対象に、地震の規模及び本件原発敷地までの距離に基づいて敷地に与える影響を評価し、敷地への影響が大きいと考えられる地震として、C断層、三方断層、白木-丹生断層、大陸棚外縁~B~野坂断層、安島岬沖~和布-干飯崎沖~甲楽城断層及び甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層(以下「各断層」という。)それぞれによる6個の地震を検討用地震として選定した。本件原発周辺に分布する主な断層は、別紙2(省略)のとおりである。 (乙32添付資料六〔6-4―10頁〕、乙98〔3頁〕)。 前記検討用地震は、いずれも内陸地殻内地震に分類され、本件原発敷地に関して、プレート間地震及び海洋プレート内地震については、敷地への影響が大きいものはなく、上記3種類の地震のいずれにも分類されない特徴的な地震は発生していなかった(乙32添付資料六〔6-4―6、6-4-7頁〕)。 b 各断層の具体的な評価(a) 震源特性① 断層の位置・長さ 債務者は、各断層の位置、長さを以下のとおり評価した。 Ⅰ C断層C断層は、本件原発の西側の若狭湾内の沖合い海域に、南北方向に延びる逆断層である。既存文献では長さ約2km~11kmの小断層が複数示されていた。 海上音波探査記録により、断層活動による地層の変位・変形の有無を確認することで、断層の分布を把握した。これにより確認できた断層は、既存文献に示さ kmの小断層が複数示されていた。 海上音波探査記録により、断層活動による地層の変位・変形の有無を確認することで、断層の分布を把握した。これにより確認できた断層は、既存文献に示されているように、互いに連続しない複数の小断層であったが、これらは近接して分布していることから、一連の断層(C断層)と評価し、その長さを約18kmと評価した。 (乙32添付資料六〔6-1―125~6-1-128頁〕、乙98〔312~328頁〕)Ⅱ 白木-丹生断層白木-丹生断層は、本件原発の東側の陸域及び海域に位置し(陸域は敦賀半島の西側に位置し、両端とも海域に延びている)、南北方向に延びる逆断層である。既存文献では、陸域及び海域に約2km~4kmの複数の断層として図示されていたが、いずれも後記更新世以降の地層に断層活動による痕跡が認められ、これらの断層が連続的に位置し、走向・傾斜も調和的であることなどから、一連の断層と評価し、その長さを約15kmと評価した。 (乙32添付資料六〔6-1―113~6-1-118頁〕、乙98〔293~311頁〕)Ⅲ 安島岬沖断層、和布-干飯崎沖断層及び甲楽城断層とその連動 安島岬沖断層は、本件原発の50km程度北方の日本海の沖合い海域に、北-南方向(の逆断層)から北西-南東方向(の横ずれ断層)に向きを変えて延びる断層である。 平成25年に産業技術総合研究所・福井大学が発表した報告書において安島岬沖断層が示されたことから、債務者は、この報告の基となった海上音波探査のデータの提供を受けて検討した結果、安島岬沖断層の長さを約22kmと評価した。 (乙32添付資料六〔6-1―25~6-1-45頁〕、乙98〔1 とから、債務者は、この報告の基となった海上音波探査のデータの提供を受けて検討した結果、安島岬沖断層の長さを約22kmと評価した。 (乙32添付資料六〔6-1―25~6-1-45頁〕、乙98〔16~28頁〕)和布-干飯崎沖断層は、本件原発の北方の越前岬付近のほぼ海岸線に沿った海域に、北東-南西方向から北-南方向に向きを変えて延びる逆断層である。和布-干飯崎沖断層は、既存文献では長さ約13kmとされていた。 債務者は、和布-干飯崎沖断層について、海上音波探査等の調査で得られた記録を検討した結果、その長さを約41kmと評価した。 (乙32添付資料六〔6-1―25~6-1-45頁〕、乙98〔30~56頁〕)甲楽城断層は、和布-干飯崎沖断層の南側のほぼ海岸線に沿った海域に、北西から南東方向に延び、南東端付近は陸域に位置する左横ずれ断層である。甲楽城断層は、既存文献では長さ約15kmとされていた 。 債務者は、甲楽城断層について、陸域は地表地質調査等、また、海域は海上音波探査等の調査で得られた記録を検討した結果、その長さを約19kmと評価した。 (乙32添付資料六〔6-1―25~6-1-45頁〕、乙9 8〔57~98頁〕)債務者は、安島岬沖断層(の南東部)と和布-干飯崎沖断層について、横ずれ断層と逆断層というずれ方の異なる断層であり、その境界では断層の分布が連続していないことから、両断層は異なる断層と評価した。 また、和布-干飯崎沖断層と甲楽城断層についても、逆断層と横ずれ断層というずれ方の異なる断層であり、その境界では鉛直変位量の終息や食い違いが認められたこと、段丘面の分布に相違が認められたこと等から、両断層は異なる断層であると評価した。 このように、 と横ずれ断層というずれ方の異なる断層であり、その境界では鉛直変位量の終息や食い違いが認められたこと、段丘面の分布に相違が認められたこと等から、両断層は異なる断層であると評価した。 このように、安島岬沖断層と和布-干飯崎沖断層、和布-干飯崎沖断層と甲楽城断層は、異なる断層であることを示す調査結果が得られているが、債務者は、それぞれの断層が近接していることや、断層の分布が連続していること等から、別々に活動すると完全に言い切れないと判断し、地震動評価にあたっては、十分に保守的な評価を行う観点から、安島岬沖断層と和布-干飯崎沖断層と甲楽城断層が同時活動(連動)して地震を引き起こすケースを想定して、全長約76kmのひとつながりの断層となる安島岬沖~和布-干飯崎沖~甲楽城断層による地震を考慮することとした。 (乙32添付資料六〔6-1―44頁〕、乙98〔136、406頁〕)Ⅳ 三方断層三方断層は、本件原発の南西側の陸域及び海域に位置し、南北方向に延びる逆断層であり、その長さを約27kmと評価した。 (乙32添付資料六〔6-1―85~6-1-94頁〕、乙98〔353~398頁〕)Ⅴ 大陸棚外縁断層、B断層及び野坂断層とその連動大陸棚外縁断層は、本件原発の北西側の若狭湾内の沖合い海域に、北東から南西方向に延びる右横ずれ断層であり、その長さを約14kmと評価した。 B断層は、本件原発の西側の若狭湾内の沖合い海域に、北西から南東方向に延びる左横ずれ断層であり、その長さを約21kmと評価した。 野坂断層は、本件原発の南側に位置し、陸域と海域にまたがって北西から南東方向に延 の沖合い海域に、北西から南東方向に延びる左横ずれ断層であり、その長さを約21kmと評価した。 野坂断層は、本件原発の南側に位置し、陸域と海域にまたがって北西から南東方向に延びる左横ずれ断層であり、その長さを約12kmと評価した。 これらの断層については異なる断層であることを示す調査結果は得られているが、債務者は、これらの断層が連動する可能性が否定できないとして、全長約49kmのひとつながりの断層となる大陸棚外縁~B~野坂断層による地震を考慮することとした。 (乙32添付資料六〔6-1―77~6-1-85頁〕、乙98〔330~352、421頁〕)Ⅵ 甲楽城沖断層、浦底断層、池河内断層及び柳ヶ瀬山断層とその連動甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層は、本件原発の東側の陸域及び海域に分布する左横ずれ断層であり、甲楽城沖断層、浦底-内池見断層、ウツロギ峠北方-池河内断層について、それぞれの長さを約13km、約21km、約24kmと評価した。また、柳ヶ瀬山断層について、既存文献に おいて活断層とされた位置では積極的に活断層を示唆するデータは得られなかったものの、活断層であることを否定するデータもなかったことから、同断層を約4kmの活断層と評価した。 債務者は、当初、これらの断層が連動する可能性は極めて低いと評価したが、それぞれの断層が近接していることなどから、最終的には、全長約36kmのひとつながりの断層となる甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層による地震を考慮することとした。 (乙32添付資料六〔6-1―57~6-1-69頁〕、乙98〔195~233、407~ となる甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層による地震を考慮することとした。 (乙32添付資料六〔6-1―57~6-1-69頁〕、乙98〔195~233、407~409、421頁〕)② 断層の傾き債務者は、断層傾斜角の評価方法について、「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」)」(乙37、以下、単に「レシピ」という。)を参照して(乙37〔本文4頁〕)、逆断層であるC断層、三方断層及び白木-丹生断層、右横ずれ断層である大陸棚外縁断層、左横ずれ断層であるB断層(北部)は、それぞれ60度(水平面から下向きの角度。以下同様。)、左横ずれ断層であるB断層(南部)及び野坂断層は、それぞれ90度、逆断層である安島岬沖断層及び和布-干飯崎沖断層は、それぞれ45度、左横ずれ断層である甲楽城断層及び甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層は、それぞれ90度と評価した。 なお、債務者は、C断層について、本件原発の敷地に近い断層であるため、地震動評価では断層の傾きを敷地側により傾斜させた不確かさを考慮し、C断層及び白木-丹生断層が地表(海底)で最も近い位置にある場合でも、地震発生層の下端で両断層が交差しない限度にまで最大限傾斜させた55度のケースも想定する こととした。 (乙32添付資料六〔6-1―95~6-1-96、6-1-103~104頁〕、乙94の2〔16~28頁〕)③ 断層の幅(地震発生層の深さ)債務者は、まず、断層の上端深さについて、文部科学省の大都市大震災軽減化特別プロジェクトによる地下構造探査の結果によれば、近畿地方北部の浅い地震活動はP波速度(Vp)=5.8~6.3 債務者は、まず、断層の上端深さについて、文部科学省の大都市大震災軽減化特別プロジェクトによる地下構造探査の結果によれば、近畿地方北部の浅い地震活動はP波速度(Vp)=5.8~6.3km/sの層に集中し、その深さは約5~16km程度であったこと、地震波速度トモグラフィによる検討によれば、若狭湾周辺における地震発生層の上限はおおむね4km以深であったことといった、既往の研究成果を参照して若狭湾周辺における地下の速度構造を把握した上で、地震発生層の上限はP波速度と良い相関があるという既往の知見や、本件原発の敷地内で取得した観測データに基づき地下構造モデルを検討した結果として、Vp=5.8m/s層の上面深度は5kmよりも深く評価されたことなどの地盤速度構造による検討に加えて、若狭地域の微小地震の発生状況調査によれば、地震の発生は深さ5~20kmに見られたことなどを踏まえて、上端深さを4kmと評価した。もっとも、債務者は、原子力規制委員会における議論も踏まえ、より一層の保守的な評価という観点から、更に浅く、上端深さを3kmとして地震動評価を行うこととした。 また、断層の下端深さについては、敷地周辺の微小地震の発生状況の記録の統計的な評価によると、D90(その値より震源深さが浅い地震の数が全体の90%となる深さ)が約15kmであり、地震本部はD90を地震発生層の下端としているが、債務者は、D90は地震発生層の下限より2~3km浅いとする文献を 参照し、下端深さを18kmと設定した。 (乙94の1〔48~53頁〕、乙100〔89~98頁〕)(b) 伝播特性震源で発生した地震波は、地中の硬い岩盤を伝播し、震源からの距離が遠くなるほど、小さくなっていく。このような地震波の 頁〕、乙100〔89~98頁〕)(b) 伝播特性震源で発生した地震波は、地中の硬い岩盤を伝播し、震源からの距離が遠くなるほど、小さくなっていく。このような地震波の伝わり方(減衰)に関する特性を伝播特性という。地震波の伝播特性には、幾何減衰と内部減衰がある。 債務者は、幾何減衰(震源距離とともに地震波の振幅が減少すること)について、震源として考慮する活断層の位置から敷地までの距離によって評価した。 また、内部減衰(地震波は、媒質(岩石等)を伝わる間に地震波のエネルギーの一部が摩擦熱等に変換されることで、若干小さくなっていくこと)については、媒質に固有の値(Q値)で表されるところ、若狭湾付近のQ値の既存の研究結果や、本件原発における測定結果を基に、Q値を50f1.1(fは地震波の周波数)と設定した。 (乙74〔73頁〕、乙94の2〔33頁以下〕、乙102)(c) サイト特性地震波は、硬い(地震波の伝わる速さが大きい)地層から相対的に軟らかい(地震波の伝わる速さが小さい)地層へ伝播する際に増幅されるため、相対的な硬さ(地震波の速度)の差があると、地震波は、相対的に軟らかい地層に伝播する際に増幅される。 ① 浅部地盤の速度構造に関する調査債務者は、本件原発敷地の地表面近くの浅部地盤の速度構造について、ボーリング調査により地盤の特徴を調査した上で、PS検層、試掘坑弾性波探査、反射法地震探査等を行い、それらの調 査結果を総合して評価した。 これらの調査結果により、敷地浅部にP波速度及びS波速度がそれぞれ約4.0km/s、約1.65km/sの硬質な岩盤が広がっていることを確認した。 査結果を総合して評価した。 これらの調査結果により、敷地浅部にP波速度及びS波速度がそれぞれ約4.0km/s、約1.65km/sの硬質な岩盤が広がっていることを確認した。 (乙94の1〔20頁〕、乙100〔32頁〕、審尋の全趣旨)その上で、反射法地震探査によって、本件原発敷地の地下に、地層の極端な起伏等の地震波の伝播に影響を与えるような特異な構造が認められないことを確認した。 (乙94の1〔22~23頁〕、乙100〔32頁〕)② 深部地盤の速度構造に関する調査債務者は、微動アレイ観測により、本件原発敷地内や周辺地点において、非常に小さな地震・波浪・風や、産業活動・交通に伴う振動等によって常時存在する地面の小さな揺れ(常時微動)の観測を行い、その観測記録を解析して、深部までの地盤の速度構造を評価した。 (乙94の1〔31頁〕、乙100〔53頁〕)c 応答スペクトルに基づく地震動評価(a) 債務者が採用した地震動評価の手法応答スペクトルとは、ある地震動が、固有周期を異にする種々の構造物に対して、それぞれどの程度の大きさの揺れ(応答)を生じさせるかを、縦軸に加速度や速度の最大応答値、横軸に固有周期をとって描いたものをいい、構造物の固有周期が分かれば、応答スペクトルにより、その地震動によって当該構造物に生じる揺れ(応答)の大きさを把握することが可能となる。 応答スペクトルに基づく地震動評価とは、地震の規模と震源から敷地までの距離との関係式(距離減衰式)から、地震が発生したと きの敷地における地震動の応答スペクトルを求める手法を用いて行う、地震動特性を評価する手法である。 距離減衰式は、様々な観測地点で得られた多くの地震観 式(距離減衰式)から、地震が発生したと きの敷地における地震動の応答スペクトルを求める手法を用いて行う、地震動特性を評価する手法である。 距離減衰式は、様々な観測地点で得られた多くの地震観測記録を回帰分析等によって統計的に処理するという経験的な手法によって作成されている。そのため、距離減衰式を用いる際には、その元となった地震観測記録群の範囲(地震規模、震源からの距離等)を踏まえ、評価地点における地震動評価に用いることが適当かどうかを確認した上で用いる必要がある。 債務者は、検討用地震のうち、大陸棚外縁~B~野坂断層を除く各断層による地震については、距離減衰式として一般社団法人日本電気協会の原子力発電耐震設計専門部会(耐専)が岩盤における観測記録を基に取りまとめた算定式である耐専式(Nodaetal.(2002))を適用することとした。 (甲31〔本文4頁〕、乙81、乙94の1〔56、57頁〕)しかし、耐専式は、観測記録に基づいて作成されているが、これらの記録には、等価震源距離(震源断層面の各部から放出され敷地に到達する地震波のエネルギーの総計が、特定の1点(点震源)から放出されたものと仮定した場合に到達するエネルギーと等しくなるときの点震源から敷地までの距離)が「極近距離」(マグニチュード8なら25km、マグニチュード7なら12km等)よりも著しく短い場合の地震観測記録は含まれておらず(乙32添付書類六〔6-4-102頁〕、乙104〔14頁〕)、等価震源距離が「極近距離」より著しく短い場合、耐専式では、等価震源距離が短くなるにつれて過大評価になる傾向があるとされている(乙105)ため、検討用地震のマグニチュードが7.7で等価震源距離が10.3kmである大陸棚外縁~B~野坂断層(乙94の1〔57頁〕)につい なるにつれて過大評価になる傾向があるとされている(乙105)ため、検討用地震のマグニチュードが7.7で等価震源距離が10.3kmである大陸棚外縁~B~野坂断層(乙94の1〔57頁〕)につい ては、耐専式を適用せず、耐専式以外の各種の距離減衰式により応答スペクトルを求めることとした(乙94の1〔58頁〕)。 (b) C断層、三方断層、白木-丹生断層、安島岬沖~和布-干飯崎沖~甲楽城断層及び甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層の地震動評価耐専式により応答スペクトルに基づく地震動評価を行う際には、地震の規模と等価震源距離等のパラメータを入力することになる。 耐専式に入力する地震の規模(M)については、松田時彦東京大学名誉教授が提案している、活断層長さ(L)と地震の規模(M)との関係を表す経験式である松田式(logL=0.6M-2.9)を用いた。 債務者は、松田式に、前記b(a)①の断層の長さをあてはめ、白木-丹生断層はM6.9、C断層はM6.9、三方断層はM7.2、安島岬沖~和布-干飯崎沖~甲楽城断層はM8.0、甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層はM7.4と設定した。 (甲62、乙94の1〔56頁〕、乙32添付書類六〔6-4-42頁〕)また、債務者は、等価震源距離について、断層の上端(地震発生層の上端)の深さやアスペリティの配置、断層傾斜角等を保守的に条件設定することで、等価震源距離が短くなり、ひいては地震動が大きくなるように評価した。 まず、断層の上端の深さについては、前記b(a)③のとおり評価し、深さ3kmと設定した。 また、震源断層面におけるアスペリティの配置については、断層面の中央付近に設定すること まず、断層の上端の深さについては、前記b(a)③のとおり評価し、深さ3kmと設定した。 また、震源断層面におけるアスペリティの配置については、断層面の中央付近に設定することが基本とされている(乙37〔9頁〕)が、債務者は、いずれの断層についても、断層面のうち本件原発敷 地に近い位置にアスペリティを配置した。 (乙32添付資料六〔〔6-4-11頁〕、乙94の1〔60頁〕)さらに、断層傾斜角については、前記b(a)②のとおり評価し、C断層については、水平面から55度下向きにしたケースについても、不確かさを考慮するケースの一つとして設定した。 このような条件設定により、等価震源距離は、C断層について、基本ケースで7.8km、断層傾斜角を55度にしたケースで8. 2km、三方断層、白木-丹生断層、安島岬沖~和布-干飯崎沖~甲楽城断層及び甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層について、それぞれ11.8km、8.8km、31.1km及び12.2kmとなった。 (乙32添付資料六〔〔6-4-42頁〕)債務者が選定した検討用地震はいずれも内陸地殻内地震であり、内陸地殻内地震について耐専式を用いる場合には低減係数である内陸補正係数を用いるものとされている(乙81〔22頁〕、乙106〔47~48頁〕)が、債務者は、内陸補正係数を乗じないことで地震動を大きく見積もる地震動評価をした。 (乙32添付資料六〔6-4-12頁〕)(c) 大陸棚外縁~B~野坂断層の地震動評価前記(a)のとおり、大陸棚外縁~B~野坂断層の地震動評価には耐専式を適用せず、他の複数の距離減衰式を採用し、応答スペクトルを求め (c) 大陸棚外縁~B~野坂断層の地震動評価前記(a)のとおり、大陸棚外縁~B~野坂断層の地震動評価には耐専式を適用せず、他の複数の距離減衰式を採用し、応答スペクトルを求めた。 (乙32添付書類六〔6-4-12~6-4-13頁〕d 断層モデルを用いた手法による地震動評価断層モデルを用いた手法による地震動評価とは、震源断層面を設定し、その震源断層面にアスペリティを配置し、ある1点の破壊開始点 から、これが次第に破壊し、揺れが伝わっていく様子を解析することにより地震動を計算する評価手法である。 (a) 震源断層面積(S)震源となる断層の長さ(L)及び断層の幅(W)から、震源断層面積(S)を求めた(S=L×W)。 各断層の長さについては、前記前記b(a)①のとおり設定した。また、各断層の幅については、地震発生層の上端深さを3km、下端深さを18kmと設定して地震発生層の厚さを15kmと設定し上で、それぞれの断層傾斜角(前記b(a)②)からそれぞれ設定した。 さらに、C断層については、不確かさを考慮し、断層傾斜角を55度にしたケースも設定した。 (乙32添付書類六〔6-4-45、6-4-47~6-4-49、6-4-51、6-4-53頁〕)(b) 地震モーメント地震モーメント(Mo)とは、地震の規模を表す指標の一つで、断層運動の大きさ(エネルギー)を表す値である。 債務者は、入倉・三宅(2001)で提案されている、震源断層面積と地震モーメント(Mo)の関係式である入倉・三宅式(Mo≧7.5×10の18乗N・mの場合はS=4.24×10の-11乗×Moの1/2乗)を用いて、震源断層面 01)で提案されている、震源断層面積と地震モーメント(Mo)の関係式である入倉・三宅式(Mo≧7.5×10の18乗N・mの場合はS=4.24×10の-11乗×Moの1/2乗)を用いて、震源断層面積から地震モーメントを求めた。さらに、C断層については、不確かさを考慮し、断層傾斜角を55度にしたケースを設定した。 (甲63、乙32添付書類六〔6-4-45、6-4-47~6-4-496-4-51、6-4-53頁〕)(c) その他のパラメータ債務者は、各断層について、短周期レベル(A)、アスペリティ面 積(Sa)、震源断層全体の応力降下量(Δσ)、アスペリティの応力降下量(Δσa)、破壊伝播速度(Vr)、すべり量(D)、アスペリティの配置、破壊開始点(C断層、三方断層、白木-丹生断層及び甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層は5箇所、大陸棚外縁~B~野坂断層は7箇所、安島岬沖~和布-干飯崎沖~甲楽城断層は10箇所)、断層傾斜角及びすべり角等の震源特性パラメータを設定した。 破壊伝播速度(Vr)については、横ずれを伴う長い断層である大陸棚外縁~B~野坂断層及び安島岬沖~和布-干飯崎沖~甲楽城断層については、破壊伝播速度の不確かさを考慮し、基本ケース(地震発生層におけるS波速度βの0.72倍(0.72β)よりも大きな0.87倍(0.87β)としたケースを設定した。 また、短周期レベル(A)については、新潟県中越沖地震の短周期レベルが平均的な短周期レベルの1.5倍であったとの新たな知見があったことから、すべての検討用地震の断層について、不確かさを考慮し、短周期レベルを基本ケースの1.5倍とするケースを設定した。 (乙32添付書 の1.5倍であったとの新たな知見があったことから、すべての検討用地震の断層について、不確かさを考慮し、短周期レベルを基本ケースの1.5倍とするケースを設定した。 (乙32添付書類六〔6-4-43~6-4-53頁〕、乙94の2〔33頁以下〕)(d) 地震動評価結果以上のとおり、震源断層をモデル化し、地震波の伝播特性と地盤の増幅特性(サイト特性)を設定した上で、これらをもとに、債務者は、統計的グリーン関数法等を用いて「断層モデルを用いた手法による地震動評価」を行った。 震源断層パラメータについて様々な不確かさを考慮することとした結果、C断層については15のケース、三方断層、白木-丹生 断層及び甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層については10のケース、大陸棚外縁~B~野坂断層については21のケース、安島岬沖~和布-干飯崎沖~甲楽城断層については30のケースを設定して評価した。 (乙32添付書類六〔6-4-43、6-4-44頁〕、乙94の1〔60~72頁〕)。 e 震源が敷地に極めて近い場合債務者は、本件原発の検討用地震が、いずれも「震源が極めて敷地に近い場合」として特別な考慮が必要となるものではないと判断し、原子力規制委員会による本件原発の新規制基準適合性審査においてもこれと異なる見解が示されることなく、新規制基準への適合性が確認された。 (乙69の2〔13~18頁〕)(イ) 「震源を特定せず策定する地震動」の評価新規制基準では、発電所敷地周辺の状況等を十分考慮した詳細な調査を実施しても、なお敷地近傍において発生する可能性のある内陸地殻内地震の全てを事前に評価し得るとは言い切れないとの観点から、「震源を特定せず策 では、発電所敷地周辺の状況等を十分考慮した詳細な調査を実施しても、なお敷地近傍において発生する可能性のある内陸地殻内地震の全てを事前に評価し得るとは言い切れないとの観点から、「震源を特定せず策定する地震動」 を評価することが求められている(乙36の1〔136、137頁〕)。 債務者は、Aほか(2004、乙82)で示されている、震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内地震の震源近傍での観測記録に基づいて策定された応答スペクトルを、本件原発の敷地地盤に対応した応答スペクトルに補正して採用した。 また、債務者は、地震ガイド(甲31)において記載されている、「震源を特定せず策定する地震動」において考慮すべき地震の例として選定された16の地震(乙32添付書類六〔6-4-55頁〕、甲31〔8頁〕) から、モーメントマグニチュード(Mw)6.5以上の地震については、震源域周辺と本件原発の敷地周辺の地域性等の異同を検討して鳥取県西部地震の地震動の観測記録を採用し、Mw6.5未満の地震については、上記Aほか(2004)の応答スペクトルを超える記録が得られており、かつ、詳細な地盤調査及び基盤地震動の推定が行われていた北海道留萌支庁南部地震の地震動の観測記録を採用した。 その上で、債務者は、地震動の評価結果が大きくなるような保守的な条件で評価を行った。 (乙32添付書類六〔6-14-14~6-4-16頁〕、乙94の2〔89~169頁〕)(ウ) 基準地震動の策定債務者は、上記の「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」の評価結果を総合し、基準地震動を策定した。 債務者は、上記の各評価結果から、それぞれ最も厳しい評価結果となったものを採用して、本件原発の基準地震動(S 震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」の評価結果を総合し、基準地震動を策定した。 債務者は、上記の各評価結果から、それぞれ最も厳しい評価結果となったものを採用して、本件原発の基準地震動(Ss-1~Ss-19、Ss-23、Ss-24)を策定した。さらに、原子力規制委員会における議論も踏まえ、十分保守的な評価を行う観点から、全長約137kmのひとつながりの断層となる、安島岬沖~和布-干飯崎沖~甲楽城断層~甲楽城沖断層~浦底断層~池河内断層~柳ヶ瀬山断層~柳ヶ瀬断層南部~鍛冶屋断層~関ヶ原断層による地震を追加的に考慮することとし、この断層による地震について「断層モデルを用いた手法による地震動評価」を行った結果から、本件原発の基準地震動(Ss-20~Ss-22)を策定した。 以上より策定した、本件原発の基準地震動Ss-1~Ss-24の加速度時刻歴波形は別紙3(省略)のとおりである。最大加速度は、水平 方向が基準地震動Ss-3の993ガル、鉛直方向が基準地震動Ss-8の577ガルである。また、安島岬沖~和布-干飯崎沖~甲楽城断層が活動した場合は、最大加速度は、水平方向が基準地震動Ss-19の279ガルである。 (乙32添付書類六〔6-4-60、6-4-137、6-4-189~6-4-212頁〕、乙94の1〔83、91~98頁〕、乙98〔410~414、426頁〕)イ原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は、本件原発の新たな基準地震動、及び耐震安全性についての耐震設計方針に関し、新規制基準への適合性を認め、平成28年10月5日に本件原発に係る原子炉設置変更許可を行い、耐震設計に関して、工事計画認可申請に対する審査を経て、同月26日に工事計画の認可を行った。 (乙69の1及び2、乙93)⑵ 基準地 28年10月5日に本件原発に係る原子炉設置変更許可を行い、耐震設計に関して、工事計画認可申請に対する審査を経て、同月26日に工事計画の認可を行った。 (乙69の1及び2、乙93)⑵ 基準地震動が地震観測記録において低水準であること(争点2-1)ア基準地震動と実際の地震観測記録との対比債権者らは、防災科学研究所の資料によれば、平成12年から令和5年5月までの最高位の最大加速度が993ガル以上を記録した地震が多数存在するにもかかわらず、債務者が策定した基準地震動は、その最大加速度が基準地震動Ss-3の993ガル(水平方向)に過ぎないことをもって、基準地震動が低水準であると主張する。 しかしながら、前記認定事実ア及びイのとおり、本件原発の基準地震動は、新規制基準に基づいて、伝播特性やサイト特性といった、本件原発敷地周辺の地域特性を踏まえ策定され、原子力規制委員会において新規制基準の適合性が認められているところ、原子力規制委員会の具体的審査基準に不合理な点はなく、また、債務者のした調査及びこれに基づく原子力規 制委員会の調査審議及び判断の過程に看過しがたい過誤、欠落があったような事情は見当たらず、基準地震動の策定が適切であるとの債務者の疎明は尽くされていると評価することができる。 前記前提事実4⑵のとおり、ある特定の地点における地震動を適切に評価するには、地震の震源特性、地震波の伝播特性、及び地盤の増幅特性に関して、地域性の違いを十分に考慮することが必要であるところ、債権者らが指摘する地震観測記録についてみれば、その観測地点は全国に点在しており、地域特性が異なる各地点で計測されており、しかも、前記認定事実ア(ア)aのとおり、本件原発の検討用地震はいずれも内陸地殻内地震に分類されるにもかかわらず、同地震観測記録に 地点は全国に点在しており、地域特性が異なる各地点で計測されており、しかも、前記認定事実ア(ア)aのとおり、本件原発の検討用地震はいずれも内陸地殻内地震に分類されるにもかかわらず、同地震観測記録には地震発生様式の異なるものが含まれている。 債権者らの主張は、過去のいずれかの地点で観測された地震動の数値と単純に比較するというものであって、その地域特性を踏まえたものではないころからすれば、上記債務者の疎明を覆すものではない。 イ一般住宅及びハウスメーカーの耐震性との比較債権者らは、建築基準法改正後の建物は震度6強から震度7に達する程度の大規模な地震動で倒壊・崩壊しないことが求められていること、ハウスメーカーの住宅における振動試験の結果によれば3000ないし5000ガルの地震動に耐えられることからすれば、993ガルを基準地震動とする本件原発の基準地震動は、一般住宅及びハウスメーカーの耐震性と比較しても低水準であると主張する。 この点、国土交通省国土技術政策総合研究所が示した対応表によれば、震度7に対応する最大加速度は1500ガルとされている(甲42〔121頁〕)。 しかしながら、国土交通省国土技術政策総合研究所等が監修した「2020年版建築物の構造関係技術基準解説書」(乙221)によると、建築基 準法において、耐震計算を行うための地震力の大きさとしては、水平方向に980ガルの弾性挙動を仮定して、300ガルから400ガル程度の地震動に対する設計を要求しているとされていること、気象庁は、計測地震度の計算には、加速度の大きさの他に、揺れの周期や継続時間を考慮することに加えて、実際の地震波はさまざまな波が含まれていることから、震度7が加速度で何ガルに相当するとはいえないとしていること(乙226)からすれ 加速度の大きさの他に、揺れの周期や継続時間を考慮することに加えて、実際の地震波はさまざまな波が含まれていることから、震度7が加速度で何ガルに相当するとはいえないとしていること(乙226)からすれば、改正後の建築基準法における耐震基準をもって、基準地震動Ss-3の993ガル(水平方向)が低水準であるとはいえない。 また、債権者らが主張するハウスメーカーの住宅における振動試験の結果(甲43、46)について見ても、各ハウスメーカーにおける振動実験の詳細は明らかではない。また、振動試験の結果に係る数値は、そもそも設計耐力ではなく実耐力を示したものであると考えられるところ、実際の建築物では計算上考慮していない部材が力を負担すること、一部の部材の破壊が直ちにしても周辺の部材が代わりに力を負担でき、直ちに建築物全体の崩壊につながる危険性が低いことなどから、建築物全体としては計算以上の余力がある(乙221〔72頁〕)ため、設計用の地震動よりも大きな地震力に耐えることができる(設計耐力よりも実耐力の方が大きい)から、実耐力を求める際の最大加速度の数値と設計耐力である基準地震動の最大加速度の数値とを単純に比較することはできない。 そうすると、一般住宅及びハウスメーカーの耐震性との比較によっても、上記債務者の疎明を覆すものではなく、重大な事故が発生する危険性があることについての疎明はない。 ⑶ 検討用地震に係る想定地震動が低水準であること(争点2-2)ア債権者らは、防災科学研究所の資料によれば、平成12年から令和5年5月までの最高位の最大加速度が300ガル以上を記録した地震が多数存在していること、安島岬沖~甲楽城断層が動いた場合の地震規模の想定は M8であるにもかかわらず、地震動想定が279ガル(東西方向)となっている 最大加速度が300ガル以上を記録した地震が多数存在していること、安島岬沖~甲楽城断層が動いた場合の地震規模の想定は M8であるにもかかわらず、地震動想定が279ガル(東西方向)となっていることをもって、検討用地震に係る想定地震動が低水準であると主張する。 しかしながら、前記前提事実4⑵のとおり、ある特定の地点における地震動を適切に評価するには、地震の震源特性、地震波の伝播特性、及び地盤の増幅特性に関して、地域性の違いを十分に考慮することが必要であるところ、債権者らが主張するように、地震動の最大加速度と地震規模とを単純に比較することはできない。 また、前記認定事実ア(ア)及び(ウ)のとおり、債務者は、安島岬沖~和布-干飯崎沖~甲楽城断層における地震の規模としてはM8.0であると設定した上で、地域性の違いを考慮して基準地震動を策定したものであるところ、債権者らの主張は、耐専式等に入力する地震の規模の値を指摘するのみであって、地域性の違いについて触れるところがない。 イ以上によれば、債権者らの主張は上記債務者の疎明を覆すものではなく、重大な事故が発生する危険性があることについての疎明はない。 ⑷ ばらつき条項の不遵守(争点2-3)ア認定事実前記前提事実及び前記2⑴認定事実に加え、後掲疎明資料及び審尋の全趣旨によれば、次の事実が一応認められる。 (ア) 松田式a 松田式は、「断層変位および地震発生は地殻にたくわえられた歪エネルギーの急激な解放である。その歪エネルギーの大小はその歪領域の大小による。そして歪領域の大小は断層のディメンジョンの大小に反映している」との理論的背景を踏まえ、日本の内陸で過去に生じた地震のデータに基づき、断層長さと地震規模という物理量の間の はその歪領域の大小による。そして歪領域の大小は断層のディメンジョンの大小に反映している」との理論的背景を踏まえ、日本の内陸で過去に生じた地震のデータに基づき、断層長さと地震規模という物理量の間の相互関係に着目して導かれた経験式である(甲62〔270頁〕)。 b 地震調査研究推進本部地震調査委員会が作成したレシピ(震源断層を特定した地震の強振動予測手法)」は、同委員会が、強震動評価に関する検討結果から、強震動予測手法の構成要素となる震源特性、地下構造モデル、強震動計算、予測結果の検証の現状における手法や震源特性パラメータの設定に当たっての考え方を取りまとめたものであるところ、松田式は、レシピにおいて地震規模を求める関係式として示されている(乙37〔1、5頁〕)。 c 平成15年に気象庁によりマグニチュード(M)の算出方法が改訂されるなど、最新の知見に基づいて過去の地震のマグニチュード(M)が再評価されており、債務者は、松田式の元となった過去に生じた地震について、気象庁が、最新の知見に基づいて再評価したマグニチュード(M)の数値を用いて図を描き直したところ、再評価後の元データと松田式との偏差は小さくなり、より整合することを確認した(乙234)。 (イ) 入倉・三宅式入倉・三宅式は、震源断層面積(S)と地震モーメント(Mo)との関係式であり、レシピにおいて、地震規模を求める関係式として示されている(甲62、乙37〔5、6頁〕)。 (ウ) 本件ばらつき条項の趣旨令和4年6月改正前の地震ガイドには、本件ばらつき条項第1文(「震源モデルの長さ又は面積、あるいは1回の活動による変位量と地震規模を関連づける経験式を用いて地震規模を設定する場合には、経験式の適用範囲が十分に検討さ の地震ガイドには、本件ばらつき条項第1文(「震源モデルの長さ又は面積、あるいは1回の活動による変位量と地震規模を関連づける経験式を用いて地震規模を設定する場合には、経験式の適用範囲が十分に検討されていることを確認する。」)と第2文(「その際、経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある。」)が設けられていたところ、原子力規制委員会は、要旨、「本件ばらつき条項第1文は経験式 の適用範囲について十分な検討を求めるものであり、本件ばらつき条項第2文は経験式を用いて地震規模を設定する場合の当該経験式の適用範囲を確認する際の留意点として、経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、当該経験式の適用範囲を単に確認するのみではなく、より慎重に、当該経験式の前提とされた観測データとの間の乖離の度合いまでを踏まえる必要があることを意味しているものである。 本件ばらつき条項第2文の規定の『経験式が有するばらつき』とは、当該経験式とその前提とされた観測データとの間の乖離の度合いのことである。本件ばらつき条項第2文の規定も、地震ガイドの経験式の適用に係る規定としては初出となることから、確認的に、当該経験式の適用範囲を確認する際の留意点を記載したものである」と解説している。 (甲31、乙29〔297~299頁〕)本件ばらつき条項第2文は令和4年6月の改正により削除されているが、審査実績等を踏まえた表現の改善等を行ったものであり、規制要求や審査の方法に変更はない(乙241)。 イ以上の事実を前提に判断する。 (ア) 前記ア(ア)及び(イ)によれば、松田式及び入倉・三宅式は、レシピにおいて地震規模を求める関係式として使用されていること、また、松田式についていえ イ以上の事実を前提に判断する。 (ア) 前記ア(ア)及び(イ)によれば、松田式及び入倉・三宅式は、レシピにおいて地震規模を求める関係式として使用されていること、また、松田式についていえば、最新の知見を基に検証すると、元データとより整合することが認められることからすれば、現在においても一般的に信頼性を有するものといえる。したがって、これらの経験式が、基準地震動の策定の際に用いられるべき経験式として不適切なものであるとはいえない。 (イ) 債権者らは、基準地震動の策定の場面において、経験式の適用結果に対して、ばらつきを考慮することなくこれらの経験式をそのまま用いることはできないと主張し、その言わんとするところは、経験式の適用結果に対して更なる上乗せをすべきものと理解される。 確かに、地震ガイドの本件ばらつき条項第2文や本件ばらつき条項に関する原子力規制庁の解説にもあるとおり、経験式は平均値としての地震規模を与えるものであり、経験式によって求められる平均値と経験式の元となった観測データを比較すると、観測データと平均値との間には乖離、すなわち本件ばらつき条項でいうところの「ばらつき」がみられ(松田式につき甲62〔270頁〕、入倉・三宅式につき甲63〔858頁〕)、中には観測データで観測された地震規模が経験式によって求められる値を超えているものも存在することは事実である。 しかしながら、債務者は、松田式及び入倉・三宅式へ代入する断層の長さ、断層の幅、断層傾斜角等の値について、前記2⑴認定事実ア(ア)bのとおり、断層の長さについていえば、安島岬沖断層と和布―干飯崎沖断層と甲楽城断層につき、異なる断層であることを示す調査結果が得られているが、別々に活動するとは完全に言い切れないことから、全長約76kmのひと 層の長さについていえば、安島岬沖断層と和布―干飯崎沖断層と甲楽城断層につき、異なる断層であることを示す調査結果が得られているが、別々に活動するとは完全に言い切れないことから、全長約76kmのひとつながりの断層として考慮する、断層の幅についていえば、上端深さにつき、地下構造の調査結果から約4km程度と評価した上で、更に浅く3kmと設定する、断層傾斜角についていえば、C断層につき、レシピを参照して60度と評価した上で、断層の傾きを本件原発の敷地側により傾斜させた55度のケースも想定するなど、不確かさを考慮した上で保守的な値を設定して地震動評価を行っているところ、債権者らが主張するように、保守的な値を設定して行った経験式の適用結果に対して更なる上乗せを行うとすれば、各種の不確かさを二重に評価することとなり、その結果は、松田式及び入倉・三宅式により算出した地震規模からの乖離が大きくなり、個々のパラメータ間の相関に着目して導かれた経験式によって地震規模を算出するとした科学的根拠との間で齟齬が生じる。 そうすると、上記のばらつきは、不確かさを考慮して保守的にパラメ ータを設定して地震動の評価を行うことにより解決すべき問題であると解するのが相当であり、本件ばらつき条項の第2文が、経験式の適用結果に対して更なる上乗せを求める趣旨であるとはいえない。前提事実4⑵ア(ウ)②記載のとおり、新規制基準(解釈別記2第4条5項2号⑤)が「基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさ(中略)については、敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析した上で、必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を用いて考慮すること」としていること、前記ア(ウ)記載の本件ばらつき条項についての原子力規制委員会の解釈にも不確か パラメータについて分析した上で、必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を用いて考慮すること」としていること、前記ア(ウ)記載の本件ばらつき条項についての原子力規制委員会の解釈にも不確かさを考慮した上で、更にばらつきを考慮した上乗せを求める文言がないことに加え、旧原子力安全委員会の「原子力安全基準・指針専門部会地震・津波関連指針等検討小委員会」に関与した委員の意見書(乙232、236)も踏まえれば、本件ばらつき条項は上記の趣旨をいうものと理解される。 そして、債務者及び原子力規制委員会が、本件ばらつき条項を前記の趣旨であると理解した上で、基準地震動の策定において、経験式の適用結果に対して、更なる上乗せをしていないことが、不合理なものとはいえない。 (ウ) 以上によれば、基準地震動の策定が適切であるとの債務者の疎明は尽くされていると評価することができ、債権者らの主張は上記債務者の疎明を覆すものではなく、重大な事故が発生する危険性があることについての疎明はない。 ⑸ 震源が敷地に極めて近い場合に求められる考慮を怠っていること(争点2-4)ア認定事実前記前提事実及び前記2⑴認定事実に加え、後掲疎明資料及び審尋の全 趣旨によれば、次の事実が一応認められる。 (ア) 本件原発の敷地に近い断層本件原発において基準地震動策定の検討用地震とされた断層のうち本件原発の敷地に特に近い断層は、C断層と白木-丹生断層である。 C断層は、本件原発の約3km西側の海域に位置し、傾斜角は水平面から下向きに60度(不確かさを考慮すれば55度)であり、東側に傾斜している。白木-丹生断層は、本件原発から約1.3km東側の陸域及び海域に位置しており、傾斜角は水平面から下向きに60度であり、東側に傾 向きに60度(不確かさを考慮すれば55度)であり、東側に傾斜している。白木-丹生断層は、本件原発から約1.3km東側の陸域及び海域に位置しており、傾斜角は水平面から下向きに60度であり、東側に傾斜している(乙94の2〔18~23頁〕、266)。 (イ) 本件特別考慮規定が設けられた経緯検討用地震の震源が敷地に極めて近い場合について、本件特別考慮規定を設けて、特別の考慮を求めており、これを受けて、地震ガイドも、その具体的な考慮、検討事項を定めている(前記前提事実4⑵ア(イ))。 「震源が敷地に極めて近い場合」の考慮に関する議論の状況は、以下のとおりである。 a 地震・津波検討チームの平成24年12月7日開催の会合において、敦賀発電所において、耐震設計上考慮する活断層である浦底断層の露頭が1号機及び2号機からおよそ250mの至近距離にあり、同断層は、基準地震動Ssを策定する際の検討用地震の対象となっていることを背景に、活断層がサイトの至近距離にある場合の地震動評価においては、現在の断層モデルを用いた手法の枠組みで評価できない現象や効果等が存在する可能性があるとか、地表まで断層が露頭していることから事業者が評価した地震発生層上端深さはもっと浅いのではないかなどの問題が指摘され、「震源が敷地に極めて近い場合」の考慮に関する検討が始まった(乙253〔7頁〕)。 b 地震ガイドの条項について、地震・津波検討チームの第5回会合(平 成24年12月27日開催)時点の骨子素案では、「敷地内に活断層の露頭がある等、震源が敷地に近接している場合」は、各種データの不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価することと記載されていた(乙254)。 c 前記骨子素案に対して、地震・ の露頭がある等、震源が敷地に近接している場合」は、各種データの不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価することと記載されていた(乙254)。 c 前記骨子素案に対して、地震・津波検討チームの外部有識者であったBは、露頭などが敷地内にある場合には地盤の安定性のところに関連する記述があり、基準地震動評価における地震発生層の上端深さを考えると、ここの記述で重要なのは震源断層が敷地に近い場合の基準地震動の保守的な評価であるとして、「敷地内に活断層の露頭がある等」を削除し、「敷地に近接する」を「敷地に近い」にすべきであるとの意見書を提出し、地震・津波検討チームの第6回会合(平成25年1月15日開催)においても同旨の意見を述べた(甲120、甲121〔44~45頁〕)。 d 原子力規制委員会は、地震・津波検討チームの第7回会合(平成25年1月22日)において、前記骨子素案について、「⑥内陸地殻内地震について選定した検討用地震のうち、震源が敷地に極めて近い場合は、震源として想定する断層の形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係、並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討するとともに、これらの検討結果を踏まえた評価手法の適用性に留意の上、前記⑤の各種の不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価し、震源が敷地に極めて近い場合の地震動の特徴に係る最新の知見を踏まえても十分な裕度を考慮して基準地震動Ssを策定すること」と修正した案が示された(甲122、甲123)。 e 原子力規制委員会は、地震・津波検討チームの第8回会合(平成25年1月29日)において、前記修正案を改訂し、「地表に変位を伴 う断層全体を考慮した上で」との記載を追加することとして、本件特別考慮規定 制委員会は、地震・津波検討チームの第8回会合(平成25年1月29日)において、前記修正案を改訂し、「地表に変位を伴 う断層全体を考慮した上で」との記載を追加することとして、本件特別考慮規定とほぼ同じ規定が出来上がった(甲124)。 震源が敷地に極めて近い場合について、それを具体的な数値で定量的に示す基準は設けられなかった。 (ウ) Cの意見書国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所、港湾空港技術研究所地震防災研究領域の領域長であるCの意見書(令和5年5月7日付け。 甲137の1)によれば、敷地極近傍地震動に対して特別な考慮が必要とされた趣旨は、要旨、以下のとおりである。 a 通常は深部断層で生成される地震波のみを考慮し、その上部の浅部断層で生成される地震波は考慮しない。 b しかし、震源が敷地に極めて近い場合は、浅部断層で生成される地震波の影響が相対的に大きくなる(深部断層で生成される地震波が減衰して敷地に到達するのに対し、浅部断層で生成される地震波はほとんど減衰することなく敷地に到達する。)ため、これを考慮する必要がある。 c 地震ガイドが、「地表に変位を伴う断層全体(地表地震断層から震源断層までの断層全体)を考慮した上で」と定めたのはその趣旨である。 d そうすると、「震源が敷地に極めて近い場合」の特別考慮を必要とするか否かのメルクマールは、浅部断層が長周期のみならず短周期の地震波を出す可能性を考慮した上で、それでもなお原子力発電所への影響が小さいとみなせるかどうかによって判断すべきである。 (エ) Dの意見書Dの意見書(令和5年9月付け。乙271)によれば、敷地極近傍地震動に対して特別な考慮が必要とされた趣旨は、 いとみなせるかどうかによって判断すべきである。 (エ) Dの意見書Dの意見書(令和5年9月付け。乙271)によれば、敷地極近傍地震動に対して特別な考慮が必要とされた趣旨は、要旨、以下のとおりで ある。 a 「震源が敷地に極めて近い場合」には、地表に変位を伴う断層運動の表出があることを考慮する必要があるために、短周期の地震動を生成する震源断層を地震発生層に設定するだけでなく、その浅部断層における断層運動からの長周期地震動の生成にも考慮を払うべきだとして、特別の規定がなされたものである。 b 地震ガイドにおける「浅部における断層のずれの進展の不均質性が地震動評価へ及ぼす影響を検討する」との記載は、専ら手法の検証およびその際のモデル設定上の留意点についての記述であり、震源が敷地に極めて近い場合に特に地震動設定上考慮すべき点に限った記述ではなく、「震源が敷地に極めて近い場合」に当たる場合に考慮すべき事項を述べたものであり、「震源が敷地に極めて近い場合」に当たるか否かの判断の方法や基準を定めたものではない。 同記載は、地表変位に影響を及ぼすパラメータである滑り量について、その不均質性を浅部断層において考慮した上で、震源極近傍の地点における地震動を評価することを要求していると解すべきであり、「不均質性」との文言のみをもってこの要求を短周期地震動と結び付けて、浅部領域からの短周期地震動の評価を要請したものと解釈することはできない。 (オ) 浅部領域から生成される短周期地震動の考慮a 浅部領域から短周期地震動が生成されるかどうかについては、専門家の間でも意見が分かれており、新規制基準策定段階の議論等においても、その可能性を指摘する意見が出されている(甲123 慮a 浅部領域から短周期地震動が生成されるかどうかについては、専門家の間でも意見が分かれており、新規制基準策定段階の議論等においても、その可能性を指摘する意見が出されている(甲123〔45頁〕、甲158〔20頁〕)。 b 地震調査研究推進本部地震調査委員会強震動評価部会は、令和4年3月14日のおける中間報告において、平成28年の熊本地震の観測 記録に基づく強震動評価手法の検証を行い、その本文においては、浅部断層に短周期地震動の生成を想定しない震源モデルによって観測記録の再現性が改善されたことを確認しながら(甲130〔19頁)〕)も、その付録において、浅部領域における短周期地震動の発生能力について意見が分かれていることから、予備的に、浅部領域への短周期震源の設定が地震動に与える影響について考察している(甲130〔付-1以下〕)。 (カ) 本件原発における検討状況a 債務者は、C断層や白木-丹生断層を含め、本件原発の検討用地震について、「震源が敷地に極めて近い場合」には当たらないと判断し、本件特別考慮規定の適用について検討しなかった。 b 原子力規制委員会は、令和4年5月26日に開催された検討会において、「震源が敷地に極めて近い場合」の考慮に関して、「既存のところについては、もう既に地震動評価行ったサイトがたくさんありますけれども、それは極近傍ではないという判断をしている」と回答し、その後、同年6月22日においても、原子力規制委員会が基準地震動の審査・評価を終えた原子力発電所(本件原発を含む)について、「既に地震動評価を行ったサイトは極近傍ではないという判断をしている」との見解を明らかにしている(乙255の1〔16頁〕、乙255の2)。 cC断層における地殻変動による基礎地盤 て、「既に地震動評価を行ったサイトは極近傍ではないという判断をしている」との見解を明らかにしている(乙255の1〔16頁〕、乙255の2)。 cC断層における地殻変動による基礎地盤の変形の影響評価債務者は、設置許可基準規則3条2項が「耐震重要施設・・・は、変形した場合においてもその安全機能が損なわれるおそれがない地盤に設けなければならない」と規定していることから、地震発生に伴う地殻変動による建物・構築物を支持する基礎地盤の傾斜等の評価を行った。 債務者は、断層と敷地との距離、断層長さ、断層のずれ方向と敷地の位置との関係を考慮して選定したC断層及び白木―丹生断層のうち、影響の大きいC断層による地震に伴い生ずる地盤の傾斜について、食い違い弾性論により解析的に推定される敷地への永久変位を計算した結果をみると、断層の変位量の評価結果は、最大約60cmであり、この永久変位の生成で副次的に生じる傾きは1/5200であった(乙273の1〔23頁〕)。 地震力に対する基礎地盤の安定性評価については、一般建築物の構造的な障害が発生する限界(亀裂の発生率、発生区間等により判断)として建物の変形角を施設の傾斜に対する評価の目安に、1/2000以下となる旨の評価をしている(乙272〔本文2、3頁〕)。 イ以上の事実を前提に判断する。 (ア) 前記前提事実4⑵ア(ア)及び(イ)のとおり、本件特別考慮規定は、震源が敷地に極めて近い場合には、通常要求される不確かさの考慮にとどまらず、各種不確かさが地震動評価に与える影響のより詳細な評価し、震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえること等を求めたものである。前記ア(イ)のとおり、本件特別考慮規 まらず、各種不確かさが地震動評価に与える影響のより詳細な評価し、震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえること等を求めたものである。前記ア(イ)のとおり、本件特別考慮規定及び同規定が策定されるまでの議論経過をみても、その適用範囲を画する定量的な定めはなされておらず、敷地極近傍地震動に対して特別な考慮が必要であるかどうかは、専門的技術的知見に基づき、本件特別考慮規定が設けられた趣旨等を踏まえながら、個々の検討用地震の震源と当該原子力発電所の敷地との位置関係等に照らして判断することが前提とされているものと解される。 (イ) そして、①本件特別考慮規定が発電所から250mの至近距離に断層の露頭が存在している敦賀発電所における地震動評価の在り方を前提に議論されたものであること、②当初案にあった「敷地内に活断層の露頭 がある等、」という文言は最終的には削除されているが、その趣旨は震源断層が敷地に近い場合には基準地震動の保守的な評価が必要であるという、当然のことを明らかにするものに過ぎないこと、③C断層は、本件原発の西側約3kmの位置にあり、水平面から60度から55度の角度で東側に傾斜しているため震源断層面は本件原発の真下に位置することになるが、震源断層の上端深さは約3kmであること、④白木―丹生断層は本件原発の東側約1.3kmの位置にあるが、本件原発とは反対方向の東側に傾斜していること、⑤C断層による地震に伴い生ずる地盤の傾斜が一般建築物の構造的な障害が発生する限界を下回っていることからすれば、債務者が、C断層及び白木―丹生断層による地震は「震源が敷地に極めて近い場合」に当たらないとして本件特別考慮規定の適用を検討しなかったこと、原子力規制委員会においても、各断層による地震動が、いずれも敷地極近 C断層及び白木―丹生断層による地震は「震源が敷地に極めて近い場合」に当たらないとして本件特別考慮規定の適用を検討しなかったこと、原子力規制委員会においても、各断層による地震動が、いずれも敷地極近傍地震動に当たらないとの判断を示したことは不合理とはいえない。 (ウ) 債権者らは、「震源が敷地に極めて近い場合」の特別考慮を必要とするか否かのメルクマールは、浅部断層が長周期のみならず短周期の地震波を出す可能性を考慮した上で、それでもなお原子力発電所への影響が小さいとみなせるかどうかによって判断すべきであると主張する。 しかしながら、前記ア(オ)のとおり、浅部断層において短周期地震動が生じるかどうかは、専門家の間においても議論が分かれているところであり、平成28年の熊本地震に関する強震動評価手法の検証に際しても、断層近傍の地震動について、浅部断層に短周期地震動の生成を想定しない震源モデルによって、断層パラメータを調整することで観測値の再現性が改善されていること(甲130〔19頁〕)からしても、現時点においては、浅部断層からの短周期地震動が地震動評価に与える影響に関しては、いまだ検討段階にあるといえる。そうすると、本件特別考慮規 定が、債権者らが主張するように、浅部断層から生成される短周期地震動が発生することを前提にして、その影響を考慮するよう求めているとまでいうことはできない。 C断層及び白木―丹生断層についてみても、債権者らの主張は、浅部断層から生成される短周期地震動の影響を考慮して、アスペリティ上端深さを3kmよりも浅くした場合(少なくとも1kmまで浅くなる可能性があるとする)には、その影響が無視できないとするものであるが、前記2⑴認定事実ア(ア)b(a)③のとおり、債務者は、既往の知見、本件原発の敷地内で取得 した場合(少なくとも1kmまで浅くなる可能性があるとする)には、その影響が無視できないとするものであるが、前記2⑴認定事実ア(ア)b(a)③のとおり、債務者は、既往の知見、本件原発の敷地内で取得した観測データに基づく地下構造モデルや若狭地域の微小地震の発生状況の調査結果から、地震発生層の上端を保守的に3kmと設定しており、この設定に不合理な点はないことをも踏まえると、3kmよりも浅部の断層から生成される短周期地震動の影響を考慮しなかったとしても、不合理なものということはできない。 (エ) よって、債務者が本件特別考慮規定の適用を検討しなかったこと及び原子力規制委員会が、本件原発について「震源が敷地に極めて近い場合」に該当すると判断せずに債務者に対して本件特別考慮規定の適用について検討させなかったことが適切であるとの債務者の疎明は尽くされていると評価することができ、債権者らの主張は上記債務者の疎明を覆すものではなく、重大な事故が発生する危険性があることについての疎明はない。 3 基準地震動以下の地震動による事故の危険性(争点3)⑴ 認定事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、後掲疎明資料及び審尋の全趣旨により一応認められる。 ア基準地震動の見直しと耐震安全性の確認について(ア) 本件原発建設に際しての基準地震動の策定 債務者は、昭和46年7月、本件原発の建設時に、安全上の重要度の最も高いAクラスの施設の耐震安全性評価に用いる地震動(建屋基礎底面の最大加速度270ガル以上)を策定した。加えて、Aクラスの施設のうち公衆災害を防ぐ上で最終的に重要な原子炉格納容器及び原子炉安全停止機構の耐震安全性評価に用いる地震動(建屋基礎底面の最大加速度405ガル)も策定した。 (乙 した。加えて、Aクラスの施設のうち公衆災害を防ぐ上で最終的に重要な原子炉格納容器及び原子炉安全停止機構の耐震安全性評価に用いる地震動(建屋基礎底面の最大加速度405ガル)も策定した。 (乙75[6-66~6-69、8-4、8-137~8-139頁])(イ) 新たな基準地震動策定と耐震安全性の確認a 本件原発は、昭和53年に耐震設計審査指針が策定される前に建設されているところ、債務者は、同指針に照らし耐震安全性が確保されていることを確認し、平成7年9月、国によってその内容が妥当なものであり、耐震安全性が確保されているとの報告がなされた(乙77)。 b 原子力安全・保安院から各原子力事業者に対し、既設の原子力発電所等について、平成18年耐震設計審査指針に照らした耐震安全性評価を実施するよう指示がなされ、かかる指示を受けて、債務者は、本件原発敷地及び敷地周辺の地質調査や地下構造の評価・検討等を行った上で、原子力安全委員会及び原子力安全・保安院における専門家による審議結果も踏まえながら、新たに本件原発の基準地震動Ssを策定した。 その結果、新たに策定した基準地震動Ssの最大加速度は750ガル(Ss-1・水平方向)となり、債務者は、この新たに策定した基準地震動Ss(Ss-1~Ss-8)に対して、本件原発の主要施設がいずれも耐震安全性を有していることを確認した。 (乙80、乙83の1、2)c その後、債務者は、前記2⑴認定事実アのとおり、本件原発の基準地震動(Ss-1~Ss-24)を策定した。 イ主給水ポンプの耐震性と損傷時の対策について(ア) 主給水ポンプの耐震性本件原発においては、原子炉停止時、2次冷却設備の主給水ポンプで蒸気発生 定した。 イ主給水ポンプの耐震性と損傷時の対策について(ア) 主給水ポンプの耐震性本件原発においては、原子炉停止時、2次冷却設備の主給水ポンプで蒸気発生器への給水を継続することにより、蒸気発生器で1次冷却材の熱を2次冷却材に伝えて原子炉内の熱を除去して炉心の損傷を防いでいる。 主給水ポンプの耐震重要度(解釈別記2第4条2項)はCクラスであり、基準地震動による地震力に対して機能喪失しないことまでは求められておらず、主給水ポンプは基準地震動以下の地震動により損傷する可能性がある。 (乙32添付資料八〔8-1-695頁〕)(イ) 補助給水設備によるバックアップしかし、仮に、主給水ポンプが損傷した場合でも、補助給水設備が正常に機能していれば、これにより2次冷却系の機能を維持することが可能となる。補助給水設備は耐震重要施設(解釈別記1第3条1項)として耐震重要度はSクラスであり、基準地震動による地震力でも安全性が損なわれないことが求められている。 (乙32添付資料八〔8-1-695頁〕)また、前提事実2⑶オ(イ)記載のとおり、補助給水設備には動力源として電力を利用しないタービン動補助給水ポンプがあり、全交流電源喪失時にも、タービン動補助給水ポンプにより2次冷却系の機能を維持することが可能である。 (乙32添付資料十〔10-7-50頁〕)(ウ) 主給水ポンプがその機能を喪失するだけでなく、補助給水設備をもその機能を喪失するという事象(以下「2次冷却系からの除熱機能喪失」という。)が発生した場合における炉心損傷を防止する対策とその所要 時間a 炉心損傷を防止する対策の内容2次冷却系からの除熱機能喪 う事象(以下「2次冷却系からの除熱機能喪失」という。)が発生した場合における炉心損傷を防止する対策とその所要 時間a 炉心損傷を防止する対策の内容2次冷却系からの除熱機能喪失が生じた場合、1次冷却材の熱エネルギーを2次冷却材に伝えるための熱交換器である蒸気発生器に、復水タンクを水源とする2次冷却材が供給されなくなる一方で、蒸気発生器で熱せられた2次冷却材は主蒸気逃がし弁から蒸気となって逃げて行くので、蒸気発生器を含む2次冷却設備中の2次冷却材はいずれ枯渇し(ドライアウト)、2次冷却設備における除熱機能は失われる。 その場合の対策としては、ドライアウトにより2次冷却設備における除熱機能が完全に失われたタイミングで、非常用炉心冷却設備(ECCS)である充てん/高圧注入ポンプを起動して燃料取替用水タンクのほう酸水を原子炉容器に連続的に送り込み、加圧器逃がし弁を開放して、蒸気となった1次冷却材を放出することで熱を除去し、炉心の冷却を行う(フィードアンドブリード)。 b 炉心損傷を防止する対策の所要時間2次冷却系からの除熱機能喪失が生じた場合、事象発生から約25分で蒸気発生器内がドライアウトし、このタイミングでフィードアンドブリードを開始する操作を5分以内に行うとしている。なお、フィードアンドブリードの開始が蒸気発生器内のドライアウトの10分後となっても上記対策が有効であることを確認している。 フィードアンドブリードを開始することができれば、炉心が徐々に冷却され、炉心損傷までの時間は延びていく。 c 炉心損傷を防止する対策の操作手順まず、中央制御室での操作により非常用炉心冷却設備作動信号を手動で発信する。この発信操作は、スイッチを操作することにより行う。 次に、この信号の発信により充てん/高圧注入ポ を防止する対策の操作手順まず、中央制御室での操作により非常用炉心冷却設備作動信号を手動で発信する。この発信操作は、スイッチを操作することにより行う。 次に、この信号の発信により充てん/高圧注入ポンプが起動したことを、 中央制御室の制御盤で目視により確認する。そして、中央制御室での操作により加圧器逃がし弁を開く。この操作もスイッチを操作することにより行う。 他方、フィードアンドブリードの水源は、注入開始のタイミングでは燃料取替用水タンクとしているが、燃料取替用水タンクが枯渇した場合は、格納容器内の再循環サンプに切り替える操作(再循環切替操作)が必要となる。この再循環切替操作までは数時間の余裕がある。 また、この操作は、一旦充てん/高圧注入ポンプを停止して、注入経路を変更して、余熱除去ポンプと充てん/高圧注入ポンプを起動するというものであるが、この操作は通常時の操作と大きく変わらず、これらもすべて中央制御室から遠隔で操作可能である。 d 前記cにおける再循環切替操作後のフィードアンドブリード以外の炉心損傷防止のための手順は、余熱除去設備による炉心冷却、及び蓄圧タンクの出口電動弁閉操作の2つである。 (乙32添付資料十〔10―7―1~10-7-41頁〕、乙32添付資料十追補1〔1.2-13頁〕)(エ) 原子力規制委員会は、2次冷却系からの除熱機能喪失を想定した対策に関して、新規制基準への適合性を確認した。 (乙69の2〔155~182頁〕)⑵ 以上の事実を前提に判断する。 ア債権者らは、当初、400ガルの揺れに耐えるように設計され建築された本件原発が、その2倍以上の993ガルの揺れに確実に耐えることができるか疑問があると主張する。 前記認定事実アのとおり、確かに、本件原発の建設時の耐震安全評価に ように設計され建築された本件原発が、その2倍以上の993ガルの揺れに確実に耐えることができるか疑問があると主張する。 前記認定事実アのとおり、確かに、本件原発の建設時の耐震安全評価に用いられた基準地震動は、最重要設備である原子炉格納容器及び原子炉安全停止機構においても最大加速度405ガルであったものであるが、その 後、基準地震動は順次見直されていっており、その都度、耐震安全性を確認されていることからすれば、債権者らの主張は抽象的な危惧の域を出ない。 イ債権者らは、本件原発が老朽化していること、主給水ポンプの耐震性がSクラスとされていないことからすれば、基準地震動以下の地震によって主給水ポンプが破損又は故障した場合においても炉心損傷前に冷却に至ることが確実にできるといえなければ、原発の安全性が確保されているとはいえないと主張する。 しかしながら、前記認定事実イによれば、基準地震動以下の地震によって主給水ポンプが損傷しても、基準地震動による地震力でも安全性を損なわないことが求められる補助給水設備が存在し、それにより2次冷却系の機能を維持することが可能である。 しかも、仮に、補助給水設備も機能せず2次冷却系の除熱機能が喪失した場合においても、フィードアンドブリードにより炉心損傷を防止するための対策が取られており、かかる対策の操作手順としては、まず、中央制御室での操作により非常用炉心冷却設備作動信号を手動で発信するというものであり、ドライアウトが発生してから5分以内に行うことが困難であるとはいえないこと、その後の操作手順についてみても、原子力発電施設に勤務する職員において困難な操作であるとはいえず、フィードアンドブリードを開始することができれば時間的余裕が確保されていくことからすれば、炉 いこと、その後の操作手順についてみても、原子力発電施設に勤務する職員において困難な操作であるとはいえず、フィードアンドブリードを開始することができれば時間的余裕が確保されていくことからすれば、炉心損傷防止の手段として不合理な点があるものとは認められない。 ウ債権者らは、そのほかにも、本件原発が老朽化して危険であることについて種々主張するが、抽象的な一般論の域を出ない。 エよって、本件原発における炉心損傷対策の内容が十分であることについての債務者の疎明は尽くされており、基準地震動以下の地震動による事故の危険性に関する債権者らの主張によっても上記疎明は覆されず、重大事 故が発生する具体的危険があることの疎明はない。 4 劣化管理の困難性(争点4)⑴ 認定事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、後掲疎明資料及び審尋の全趣旨により一応認められる。 ア本件原発における債務者の対応債務者が本件原発に対して実施した高経年化対策としての保安規定変更認可申請における高経年化技術評価と、運転期間延長認可申請における劣化状況評価は同一内容であり、当該評価結果に基づいて定められる長期施設管理方針も同一内容である。 イ運転期間延長認可申請に伴う点検・評価等債務者は、本件原発の運転期間延長認可を申請するにあたり、運転開始から申請に至るまでの間に生じた原子炉その他の設備の劣化状況の把握のための点検(特別点検)、運転開始から60年の間に生じる原子炉その他の設備の劣化状況に関する評価(劣化状況評価)、60年間の運転を踏まえた原子炉その他の設備についての保守管理に関する方針(施設管理方針)の策定を行った。 (ア) 特別点検特別点検では、通常の点検・検査に 劣化状況評価)、60年間の運転を踏まえた原子炉その他の設備についての保守管理に関する方針(施設管理方針)の策定を行った。 (ア) 特別点検特別点検では、通常の点検・検査に追加して、①原子炉容器について目視試験、超音波探傷試験及び渦流探傷試験による欠陥の有無の確認、②原子炉格納容器について目視試験による塗膜状態の確認、③コンクリート構造物について採取したコアサンプル(試料)による強度等の確認により、対象部位ごとに着目する劣化事象に応じ、点検を行った。 その結果、①原子炉容器について有意な欠陥は認められず、②原子炉格納容器について構造健全性又は気密性に影響を与える恐れのある塗膜の劣化や腐食も認められなかった。また、③コンクリート構造物につい ても、健全性に影響を与える恐れのある劣化は認められなかった。 本件原発においては、原子炉容器を含む特別点検の対象機器について目視点検を行うことが可能であり、原子炉容器の内部等、放射線量が多いため人が近付いての直接的な目視点検が困難な設備も一部存在するが、かかる設備については、水中カメラによる間接的な目視点検、超音波探傷試験、渦流探傷試験等、直接的な目視点検以外の方法によって点検を実施することができる。 (乙173〔6~11頁〕)(イ) 劣化状況評価劣化状況評価は、「発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針」(乙174)等に基づき抽出した機器を対象に、①経年劣化事象に対する機器・構造物の健全性評価、②耐震安全性評価(運転開始後60年時点で想定される経年劣化を加味した、基準地震動等に対する耐震安全性評価)を実施した。 ①経年劣化事象に対する機器・構造物の健全性評価については、原子炉容器の中性子照射脆化(鋼材が中性子の 後60年時点で想定される経年劣化を加味した、基準地震動等に対する耐震安全性評価)を実施した。 ①経年劣化事象に対する機器・構造物の健全性評価については、原子炉容器の中性子照射脆化(鋼材が中性子の照射を受けることによって靭性が低下する現象)、低サイクル疲労割れ、照射誘起型応力腐食割れ、2相ステンレス鋼の熱時効、電気・計装品の絶縁低下、コンクリートの強度低下及び遮蔽能力低下を対象に行った。 その結果、債務者は、現在行っている保全活動の継続及び一部の機器・構造物の追加保全を講じることで、プラント全体の機器・構造物の60年までの健全性が確保されることを確認した。 (乙175〔9~15頁、参考9~19頁〕)②耐震安全性評価については、まず、「発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針」(乙174)における安全機能の重要度のクラス1、2及び高温・高圧の環境下にあるクラス3の機器 並びに常設重大事故等対処設備に属する機器・構造物の全てを評価対象機器として選定した。その上で、評価対象機器を、構造、材料及び使用環境等により、当該機器の安全機能の重要度、材料及び使用環境等によりグループ化し、グループごとに耐震重要度を考慮して代表機器を選定した。 (乙176〔3~4頁〕)次に、選定した各代表機器について、想定される経年劣化事象のうち顕在化した場合に当該代表機器の構造・強度又は振動に対する応答特性上、その影響が有意なものを耐震安全上考慮する必要のある経年劣化事象として抽出した。その結果、本件原発においては、応力腐食割れ、疲労割れ、中性子照射脆化、熱時効等が耐震安全上考慮する必要のある経年劣化事象となった。 (乙176〔4~5、7頁〕)そして、かかる経年劣化事象ごとに経年劣化を保守的に想定した上で、代表機器の耐震重 れ、中性子照射脆化、熱時効等が耐震安全上考慮する必要のある経年劣化事象となった。 (乙176〔4~5、7頁〕)そして、かかる経年劣化事象ごとに経年劣化を保守的に想定した上で、代表機器の耐震重要度に応じた耐震安全性評価を行い、さらに代表機器の評価結果に基づきグループ内の機器全体に対する評価も行い、本件原発の耐震安全性が確保されていることを確認した。 (乙176〔8~29頁〕、乙177)(ウ) 保守管理に関する方針策定債務者は、劣化状況評価の結果を踏まえ、原子炉その他の設備が、運転期間60年時点においても確実に健全性を維持できるよう、原子炉容器の胴部(炉心領域部)の中性子照射脆化については、原子炉の運転時間及び照射量を勘案して第5回監視試験を実施すること等を保守管理に関する方針(追加保全策)として定めた。また、これと同内容の方針を高経年化対策の長期施設管理方針としても定めた。 (乙173〔26頁〕、乙175〔16頁〕) (エ) 原子力規制委員会による審査結果原子力規制庁は、平成28年11月、本件原発について、高経年化対策に関する保安規定変更認可及び運転期間延長認可申請の審査を行い、運転期間延長審査基準に適合していることを確認した。 (乙179)⑵ 以上の事実を前提に判断する。 ア前記前提事実5及び前記認定事実イによれば、新規制基準は、発電用原子炉の設置者に対し、保安のために必要な措置として、運転を開始した日以後40年を経過した発電用原子炉施設について、運転を開始した日以後50年を経過する日までに高経年化技術評価を行い、この評価の結果に基づき、許可を受けた延長する期間が満了するまでの期間において10年間に実施すべき施設管理に関する方針を策定することを要求しており、債務者は、これらの規制の内容を 化技術評価を行い、この評価の結果に基づき、許可を受けた延長する期間が満了するまでの期間において10年間に実施すべき施設管理に関する方針を策定することを要求しており、債務者は、これらの規制の内容を踏まえた対応を行っていることが認められ、合理的なものと認められる。 イ債権者らは、原発においては開放点検ができない、代表機器の評価を行っているに過ぎず欠陥の見落としは避けられないと主張する。 しかしながら、前記認定事実イのとおり、原子炉容器を含む特別点検の対象機器について目視点検を行うことが可能であり、直接的な目視点検が困難な設備については、水中カメラによる間接的な目視点検、超音波探傷試験、渦流探傷試験等、直接的な目視点検以外の方法で点検することが可能である。 また、債務者は、劣化状況評価については、前記イ(イ)のとおり、構造、材料及び使用環境等により、当該機器の安全機能の重要度、材料及び使用環境等によりグループ化し、グループごとに耐震重要度を考慮して代表機器を選定して評価するものであるところ、原子力発電所を構成する機器は、構造、材料及び使用環境が類似の機器が多数存在するため、類似機器をグ ループ化し、このグループから評価の代表機器を選定する手法は合理的なものといえる(乙166〔56、111頁〕)。 しかも、債務者は、経年劣化事象ごとに経年劣化を保守的に想定した上で、代表機器の耐震重要度に応じた耐震安全性評価を行っているものである。 そうすると、債権者らが主張する問題点については、債務者が行っている点検の合理性や原子力規制委員会の判断が合理的であるとの債務者の疎明を覆すものではなく、本件原発において、重大事故が発生する具体的危険があることの疎明はない。 5 避難計画等(争点5) る点検の合理性や原子力規制委員会の判断が合理的であるとの債務者の疎明を覆すものではなく、本件原発において、重大事故が発生する具体的危険があることの疎明はない。 5 避難計画等(争点5)⑴ 避難計画の不備による人格権侵害の具体的危険性(争点5-1)ア認定事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、後掲疎明資料(特に記載のない限り枝番を含む。)及び審尋の全趣旨により一応認められる。 (ア) 国際原子力機関における深層防護の考え方国際原子力機関(IAEA)は、IAEA憲章第Ⅲ条の規定により、健康を守るため及び生命や財産に対する危険を最小限に抑えるために安全基準を策定又は採択する権限並びに(IAEA自らの活動に対して)基準に適合する措置をとる権限が与えられている(乙125の2〔表紙裏〕)。 深層防護とは、一般に、安全に対する脅威から人を守ることを目的として、ある目標を持った幾つかの障壁(防護レベル)を用意して、各々の障壁が独立して有効に機能することを求めるという考え方であり、IAEAの最上位の安全基準である「基本安全原則」(SF-1)においては、原子力発電所において事故を防止し、かつ、発生時の事故の影響を緩和する主要な手段として位置づけられている(乙29〔64頁〕)。 深層防護は、複数の連続かつ独立したレベルの防護の組合せによって主に実現されるとし、ひとつの防護レベル又は障壁が万一機能しなくても、次の防護レベル又は障壁が機能するとされている。そして、各防護レベルが独立して有効に機能することが、深層防護の不可欠な要素であるとされている(基本安全原則3.31.)。 IAEAの安全基準の一つである「原子力発電所の安全:設計」(SSR-2/1(Rev.1) ベルが独立して有効に機能することが、深層防護の不可欠な要素であるとされている(基本安全原則3.31.)。 IAEAの安全基準の一つである「原子力発電所の安全:設計」(SSR-2/1(Rev.1))では、深層防護の考え方を設計に適用し、以下のとおり5つの防護レベルとして具体化されている。 (乙29〔本文64頁〕、乙125の1、2)a 第1の防護レベルは、通常運転状態からの逸脱と安全上重要な機器等の故障を防止することを目的として、品質管理及び適切で実証された工学的手法に従って、発電所が健全でかつ保守的に立地、設計、建設、保守及び運転されることを要求するものである。 b 第2の防護レベルは、発電所で運転期間中に予期される事象(設置許可基準規則では「運転時の異常な過渡変化」)が事故状態に拡大することを防止するために、通常運転状態からの逸脱を検知し、管理することを目的として、設計で特定の系統と仕組みを備えること、それらの有効性を安全解析により確認すること、さらに運転期間中に予期される事象を発生させる起因事象を防止するか、さもなければその影響を最小に留め、発電所を安全な状態に戻す運転手順の確立を要求するものである。 c 第3の防護レベルは、運転期間中に予期される事象又は想定起因事象が拡大して前段のレベルで制御できず、また、設計基準事故に進展した場合において、固有の安全性及び工学的な安全の仕組み又はその一方並びに手順により、事故を超える状態に拡大することを防止するとともに発電所を安全な状態に戻すことができることを要求するもの である。 d 第4の防護レベルは、第3の防護レベルでの対策が失敗した場合を想定し、事故の拡大を防止し、重大事故の影響を緩和することを要求するものである。重大事故等に対する安全上の目的は である。 d 第4の防護レベルは、第3の防護レベルでの対策が失敗した場合を想定し、事故の拡大を防止し、重大事故の影響を緩和することを要求するものである。重大事故等に対する安全上の目的は、時間的にも適用範囲においても限られた防護措置のみで対処可能とするとともに、敷地外の汚染を回避又は最小化することである。また、早期の放射性物質の放出又は大量の放射性物質の放出を引き起こす事故シーケンスの発生の可能性を十分に低くすることによって実質的に排除できることを要求するものである。 e 第5の防護レベルは、重大事故に起因して発生しうる放射性物質の放出による影響を緩和することを目的として、十分な装備を備えた緊急時対応施設の整備と、所内と所外の緊急事態の対応に関する緊急時計画と緊急時手順の整備が必要であるというものである。 (イ) IAEAの「原子力発電所の安全:設計」等における避難計画の位置づけ避難計画の策定は、IAEAの安全基準の一つである「原子力発電所の安全:設計」(SSR-2/1(Rev.1))では、第5の防護レベルにおける「所内と所外の緊急事態の対応に関する緊急時計画と緊急時手順の整備」に含まれるが、上記IAEAの基準は深層防護の概念を原子力発電所の設計に適用すべきとされているにとどまり、必ずしもその第1から第5の防護レベルに係る全ての対応を設置許可基準規則等の原子力事業者に対する規制に規定することが求められているわけではない。 また、IAEAの安全基準「原子力又は放射線の緊急事態に対する準備と対応」(GSRPart 7)においても、政府は、規定を設け、原子力又は放射線源による緊急事態に対する準備と対応に関する役割と 責任を明示し、割り当てることを確実なものとしなければならないとされており、避難計画に関 7)においても、政府は、規定を設け、原子力又は放射線源による緊急事態に対する準備と対応に関する役割と 責任を明示し、割り当てることを確実なものとしなければならないとされており、避難計画に関する事項を含む緊急事態に対する準備と対応について原子力事業者に対する規制として規定することは求められていない。 (乙29〔67頁〕)(ウ) 原子力規制委員会の新規制基準における深層防護の考え方原子力規制委員会は、深層防護の考え方を踏まえて新規制基準を策定しており、設置許可基準規則第2章「設計基準対象施設」の規定は第1から第3までの防護レベルに相当する事項を、同規則第3章「重大事故等対処施設」の規定は主に第4の防護レベルに相当する事項をそれぞれ規定している。もっとも、新規制基準においては、所内及び所外の緊急事態の対応に関する緊急時計画等の整備(深層防護のうち第5の防護レベル)等は要求事項とされていない。 第5の防護レベルに関する事項については、我が国の法制度上、「災害」の一形態としての「原子力災害」に対し、国、地方公共団体、原子力事業者等がそれぞれの責務を果たすこととされており、災対法及び原災法によって措置されている。 (乙29〔66、68~69頁〕)(エ) 原子力災害に係る避難計画に関する関連法令国や地方公共団体の避難計画を含む原子力災害対策について、災対法に基づく防災基本計画(原子力災害対策編)(災対法2条8号、34条1項)、及び原災法に基づく原災指針(原災法6条の2第1項)が定められる。 まず、原子力事業者は、原子力災害の発生の防止に関し万全の措置を講ずるとともに、原子力災害の拡大の防止及び復旧に関し、誠意をもって必要な措置を講ずる責務を有するとされ(原 められる。 まず、原子力事業者は、原子力災害の発生の防止に関し万全の措置を講ずるとともに、原子力災害の拡大の防止及び復旧に関し、誠意をもって必要な措置を講ずる責務を有するとされ(原災法3条)、原災指針に基 づき、原子力事業所毎に、原子力災害予防対策(原災法2条6号)、緊急事態応急対策(原災法2条5号)及び原子力災害事後対策(原災法2条7号)に関し、原子力事業者防災業務計画(原災法7条1項)を作成し、原子力防災組織の整備、原子力防災資機材の確保等を行うこととされている。 また、国は、国民の生命、身体及び財産を原子力災害から保護するため、防災に関し万全の措置を講ずる責務を有するとされ、原子力災害対策本部の設置、地方公共団体への必要な指示その他緊急事態応急対策の実施のために必要な措置並びに原子力災害予防対策及び原子力災害事後対策の実施のために必要な措置を講じることとされている(原災法4条1項、災対法3条1項)。 そして、地方公共団体は、住民の生命、身体及び財産を原子力災害から保護するため、関係機関及び他の地方公共団体の協力を得て、地域防災計画(原子力災害対策編)を作成するなどの責務を有するとされ(原災法5条、災対法4条1項及び5条1項)、防災基本計画(原子力災害対策編)及び原災指針に基づき、地域防災計画(原子力災害対策編)を作成し、応急対策を実施するための体制構築、緊急時における情報連絡体制の整備等を行うこととされている。 イ以上を前提に判断する。 (ア) 上記認定事実(ア)及び (イ)によれば、原子力発電所の安全設計においては、ある目標を持った幾つかの障壁(防護レベル)を用意して、各々の障壁が独立して有効に機能することを求める深層防護の考え方に基づき、5つの防護階層として具体化に設定されてい 発電所の安全設計においては、ある目標を持った幾つかの障壁(防護レベル)を用意して、各々の障壁が独立して有効に機能することを求める深層防護の考え方に基づき、5つの防護階層として具体化に設定されているところ、その最後の層である第5の防護レベルが、放射性物質が原子力施設外に放出されることを前提とした避難計画である。 この点について、上記認定事実(ウ)のとおり、原子力規制委員会は、深層防護の考え方を踏まえて新規制基準を策定していることからしても、設置許可基準規則が策定したある防護レベルの安全対策を講ずるに当たっては、その前に存在する防護レベルの対策を前提とせず、また、その後に存在する防護レベルの対策にも期待しないことが求められるものといえる。 しかしながら、深層防護の考え方は、事前の計画としては、各防護レベルの十分な対策を前提にして、あえてその効果が十分でなかった場合に備えて対策を多層にするというものであり(乙126〔本文4頁〕参照)、人格権侵害による被害が生ずる具体的危険が存在するか否かにおいて、第1から第4までの各防護レベルの存在を捨象して無条件に放射性物質の異常放出が生ずるとの前提を置くことは相当でなく、放射性物質の異常放出が生ずるとの疎明を欠くにもかかわらず、第5の防護レベル(避難計画)に不備があれば直ちに地域住民に放射線被害が及ぶ具体的危険があると認めることはできない。 (イ) したがって、避難計画の不備を理由に人格権侵害の具体的危険を疎明する場合においては、その前提として、債権者らが避難を要するような事態(放射性物質が外部に放出される事態)が発生する具体的危険を具体的に疎明する必要があるものと解される。 そうすると、本件について、前記2から4までにおいて検討したとおり するような事態(放射性物質が外部に放出される事態)が発生する具体的危険を具体的に疎明する必要があるものと解される。 そうすると、本件について、前記2から4までにおいて検討したとおり、債権者らが避難を要するような事態が発生する具体的危険について十分な疎明があるとはいえないから、当該債権者らの主張は理由がない。 ⑵ 避難計画の不備の有無(争点5-2)前記⑴イ(イ)のとおりであるから、争点5-2については判断するまでもない。 6 その他、債権者が種々主張する点は、本件の結論を左右するものではない。 第7 結論以上によれば、本件では被保全権利の疎明があるとはいえないから、保全の必要性について判断をするまでもなく、債権者らの本件仮処分命令申立ては理由がない。よって、本件申立てをいずれも却下することとし、主文のとおり決定する。 令和6年3月29日福井地方裁判所民事部裁判長裁判官加藤靖 裁判官摸利純史 裁判官瀧田慎太郎

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