平成26(行ウ)11 生存権を守るための行政処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年2月10日 宮崎地方裁判所
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判決文本文84,841 文字)

主文 1 宮崎市福祉事務所長が平成25年7月23日付けで原告らに対してした生活保護法25条2項に基づく各保護変更決定をいずれも取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要厚生労働大臣は、生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号。以下「保護基準」という。)が定める生活扶助に関する基準(以下「生 活扶助基準」という。)について、平成25年5月16日付け厚生労働省告示第174号(以下「本件告示」という。)により改定した(以下「本件改定」という。)。 本件は、宮崎市内において生活保護法に基づく生活扶助の支給を受けている原告らが、宮崎市福祉事務所長が本件改定を受けて平成25年7月23日付け で原告らに対してした各保護変更決定(以下「本件各変更決定」という。)について、本件改定が憲法25条並びに生活保護法3条及び8条等に違反する違憲、違法なものである旨主張して、被告に対し、本件各変更決定の取消しを求める事案である。 1 関連法令の定め ⑴ 憲法憲法25条1項は、すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有すると定め、同条2項は、国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないと定める。 ⑵ 生活保護法 ア基本原理等 (ア) 目的生活保護法は、憲法25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする(1条)。 (イ) 無差別平等すべて国民は、生活保護法の定める要件を満たす限り、同法による保護 要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする(1条)。 (イ) 無差別平等すべて国民は、生活保護法の定める要件を満たす限り、同法による保護(以下単に「保護」ということがある。)を、無差別平等に受けることができる(2条)。 (ウ) 最低生活 生活保護法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない(3条)。 (エ) 保護の補足性保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件と して行われる(4条1項)。 イ保護の原則(ア) 基準及び程度の原則保護は、厚生労働大臣の定める保護基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない 不足分を補う程度において行うものとし(8条1項)、同基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない(同条2項)。 (イ) 必要即応の原則 保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実 際の必要の相違を考慮して、有効かつ適切に行うものとする(9条)。 (ウ) 世帯単位の原則保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。ただし、これにより難いときは、個人を単位として定めることができる(10条)。 ウ保護の種類及び生活扶助の方法等(ア) 保護の種類保護の種類は、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助及び葬祭扶助とし(11 とができる(10条)。 ウ保護の種類及び生活扶助の方法等(ア) 保護の種類保護の種類は、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助及び葬祭扶助とし(11条1項)、これらの扶助は、要保護者の必要に応じ、単給又は併給として行われる(同条2項)。 (イ) 生活扶助の方法生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの(12条1号)及び移送(同条2号)の範囲内において行われる(同条柱書)。 また、生活扶助は、金銭給付によって行うものとし、ただし、これに よることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、現物給付によって行うことができる(31条1項)。 エ保護の変更等(ア) 職権による保護の変更 保護の実施機関は、常に、被保護者の生活状態を調査し、保護の変更を必要とすると認めるときは、速やかに、職権をもってその決定を行い、書面をもって、これを被保護者に通知しなければならない(25条2項)。 (イ) 不利益変更の禁止 被保護者は、正当な理由がなければ、既に決定された保護を不利益に 変更されることがない(56条)。 ⑶ 保護基準(乙1、2、5、10、20)厚生労働大臣は、生活保護法8条1項に定める基準として保護基準を定め、上記⑵ウ(ア)の種類ごとに別表第1から第8までの基準を定め、要保護者に特別の事由があって、上記基準により難いときは、厚生労働大臣が特別の基準を 定める。 ア地域の級地区分保護基準は、生活扶助、住宅扶助、出産扶助及び葬祭扶助(保護基準別表第1、3、6、及び8)について、被保護者の居住地の地域の級地区分 厚生労働大臣が特別の基準を 定める。 ア地域の級地区分保護基準は、生活扶助、住宅扶助、出産扶助及び葬祭扶助(保護基準別表第1、3、6、及び8)について、被保護者の居住地の地域の級地区分に応じて基準額を定め、地域の級地区分として、全国の市町村を1級地-1、1 級地-2、2級地-1、2級地-2、3級地-1及び3級地-2の6区分に分類している(保護基準別表第9)。 イ生活扶助基準(ア) 生活扶助基準(保護基準別表第1)は、衣食等のいわゆる日常生活に必要な基本的かつ経常的経費についての最低生活費を定めたものであ り、基準生活費(第1章)と加算(第2章)に大別される。 (イ) 居宅で生活する者の基準生活費は、個人単位に消費される経費(飲食費、被服費等)に対応する第1類費(級地及び年齢の区分別に世帯人員ごとで基準額が定められ、これらを合算する。)と、世帯全体としてまとめて支出される経費(光熱水費、家具什器費等)に対応する第2類費(級地 区分ごとに世帯人員別の基準額及び地区別冬季加算額が定められる。)がある。基準生活費は、世帯を単位として算定され、第1類費の額と第2類費の合計額であり、また、12月の基準生活費の額は、期末一時扶助費を加えた額である。 (ウ) 加算は、基準生活費において配慮されていない個別的な特別需要を補 填することを目的として設けられているものであり、妊産婦加算、障害者 加算、介護施設入所者加算、在宅患者加算、放射線障害加算、児童養育加算、介護保険料加算及び母子加算がある。 ウ生活扶助基準の設定(ア) 世帯人員の年齢、世帯構成、所在地域等によって様々な基準額が定められているところ、これら相互の関係の基軸となるのは、標準世帯(一般 の標準的な世帯を想定して定められた世帯であ 準の設定(ア) 世帯人員の年齢、世帯構成、所在地域等によって様々な基準額が定められているところ、これら相互の関係の基軸となるのは、標準世帯(一般 の標準的な世帯を想定して定められた世帯であり、昭和61年4月1日以降は、33歳男、29歳女、4歳子どもの3人世帯となっている。)の基準額(1級地-1の額)であり、まず、標準世帯の生活扶助基準額を具体的な額として定め、次に、標準世帯の生活扶助基準額を一般所得世帯の消費実態における第1類費に相当する支出額と第2類費に相当する支出 額の構成割合を参考として第1類費と第2類費に分ける。 その上で、標準世帯の第1類費に指数を乗じることで1人当たりの第1類費と標準世帯とは異なる年齢階級の第1類費の基準額を設定する。また、標準世帯の第2類費に指数を乗じることで、標準世帯とは異なる世帯人員の第2類費の基準額と他の級地の第2類費の基準額を設定する。 (イ) 世帯ごとの基準生活費は、上記(ア)により得られた第1類費の基準額と第2類費の基準額を当該世帯の属する級地、世帯人員の年齢及び世帯人員に応じて組み合わせることで算定される。 2 前提事実(争いのない事実、顕著な事実並びに掲記証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実) ⑴ 原告ら原告らは、平成25年7月23日当時、いずれも宮崎市内(2級地-1)の居宅に居住し、生活扶助を受けている者である。 ⑵ 生活扶助基準の改定方式の沿革ア生活扶助基準(基準生活費)の算定方法は、生活保護法が施行された昭和 25年から昭和36年3月31日までは、マーケットバスケット方式(最低 生活を営むために必要な飲食物費や衣類、家具什器、入浴料といった個々の品目を積み上げて最低生活費を算出する方式)が採用され、同年4月1日から昭 3月31日までは、マーケットバスケット方式(最低 生活を営むために必要な飲食物費や衣類、家具什器、入浴料といった個々の品目を積み上げて最低生活費を算出する方式)が採用され、同年4月1日から昭和40年3月31日まではエンゲル方式(栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて計算し、別に低所得世帯の実態調査から、この飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理 論値を求め、これから逆算して総生活費を算出する方式)が、同年4月1日から昭和59年3月31日までは格差縮小方式(一般国民の消費水準の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ、結果的に一般国民と被保護世帯との消費水準の格差を縮小させようとする方式)が採用されていた。 (乙7の2、乙10) イ厚生省(当時)の審議会である中央社会福祉審議会は、昭和58年12月23日、「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」(以下「昭和58年意見具申」という。)を取りまとめ、昭和58年意見具申において、当時の生活扶助基準について、一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとの所見を得たとするとともに、生活扶助基準の改定方 式につき、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものとして設定すべきものであり、生活扶助基準の改定に当たっては、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に前年度までの一般国民の消費水準との調整が図れるよう適切な措置を講じる必要があり、また、当該年度に予想される国民 の消費動向に対応する見地から、政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当であり、賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料に される国民 の消費動向に対応する見地から、政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当であり、賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきであるとの意見を示した。 厚生労働大臣は、昭和58年意見具申を受け、昭和59年4月1日からの 生活扶助基準について、当時の生活扶助基準が、一般国民の消費実態との均 衡上ほぼ妥当であるとの評価を踏まえ、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図る方式である水準均衡方式を採用した。 (以上につき、乙7の2、乙8、10)⑶ 生活扶助基準に係る検証の経緯 ア厚生労働省の審議会である社会保障審議会(厚生労働省設置法7条1項に定める厚生労働大臣の諮問機関)は、平成15年7月、同審議会の福祉部会の下に、保護基準の在り方を始めとする生活保護制度全般についての検討を目的として「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」(以下「専門委員会」といい、専門委員会による検証を「平成16年検証」という。)を 設置した。 専門委員会は、平成15年12月16日付け「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ」(乙13。以下「平成15年中間取りまとめ」という。)で専門委員会の生活扶助基準についての考え方を示した後、平成16年12月15日に平成16年検証の結果として「生活保護制度の在り方に 関する専門委員会報告書」(乙4。以下「平成16年報告書」という。)を取りまとめた。 (以上につき、甲3、40、111、乙4、12の1、2、乙13)イ平成16年報告書において、今後、生活扶助基準と一般低所得者世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、 以上につき、甲3、40、111、乙4、12の1、2、乙13)イ平成16年報告書において、今後、生活扶助基準と一般低所得者世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全 国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある旨の指摘がされたことを踏まえ、級地を含む生活扶助基準の見直しについて専門的な分析・検討を行うため、平成19年10月、厚生労働省社会・援護局長の下に、学識経験者等による「生活扶助基準に関する検討会」(以下「検討会」といい、検討会による検証を「平成19年検証」という。)が設置され た。 検討会は、平成19年11月30日、平成19年検証の結果として、「生活扶助基準に関する検討会報告書」(以下「平成19年報告書」という。)を取りまとめた。 (以上につき、乙5、14の1、2)ウ平成23年2月、生活扶助基準の水準について、学識経験者による専門的 かつ客観的な検証を行うため、社会保障審議会の下に、常設部会として生活保護基準部会(以下「基準部会」という。)が設置された。 基準部会は、平成21年全国消費実態調査の特別集計データ等を用いて、国民の消費動向、特に一般低所得世帯の生活実態を勘案しながら、生活扶助基準と一般低所得者世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否か 等(年齢階級別、世帯人員別、級地別に基準額と消費実態との乖離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数)について検証(以下「平成25年検証」という。)を行った。 基準部会は、平成25年1月18日、平成25年検証の結果として、「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(以下「平成25年報告書」という。) を取りまとめた。 平成25年検証においては、生活扶助基準と 25年1月18日、平成25年検証の結果として、「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(以下「平成25年報告書」という。) を取りまとめた。 平成25年検証においては、生活扶助基準と対比する一般低所得者世帯として、年間収入階級第1・十分位層(収入の低い方から順番に並べ、世帯数が等しくなるように十等分し、収入の低い層から順次第1から第10までの数字を付したもの。以下「第1・十分位層」といい、他の階層や等分数 の場合も、同様の方法により表記する。)を設定した。 (以上につき、甲114、乙6、21)⑷ 本件改定ア本件改定の概要厚生労働大臣は、保護基準につき、本件告示による本件改定、平成26年 3月31日付け厚生労働省告示第136号(以下「平成26年告示」とい う。)による改定及び平成27年3月31日付け厚生労働省告示第227号(以下「平成27年告示」という。)による改定を順次行った。 上記各改定の概要は、①平成25年報告書に基づき、第1・十分位層の世帯の消費実態と、生活扶助基準の年齢、世帯人員及び居住地域別の較差を是正するとともに(以下、生活扶助基準の調整のうち、上記各較差の是正を目 的とするものを「ゆがみ調整」という。)、②物価動向を勘案して生活扶助基準を見直し(以下、生活扶助基準の調整のうち、物価の動向を勘案して行われたものを「デフレ調整」という。)、③これらの調整を、本件改定、平成26年告示による改定及び平成27年告示による改定により3回にわたり段階的に実施するとともに、上記各改定前の生活扶助基準からの増減幅が± 10%を超えないように行う(以下「激変緩和措置」という。)というものである。 (以上につき、乙3、16、17)イゆがみ調整の概要ゆがみ調整は、第1類費基準額の 準からの増減幅が± 10%を超えないように行う(以下「激変緩和措置」という。)というものである。 (以上につき、乙3、16、17)イゆがみ調整の概要ゆがみ調整は、第1類費基準額の逓減率(世帯人員が1人増加するごとに 第1類費基準額の合計額に乗じる割合)の割合や第2類費基準額につき、世帯人員の増加に応じた各世帯人員別の基準額の増額幅を大きくするとともに、各級地区分間の基準額の差を小さくするものである。厚生労働大臣は、ゆがみ調整に際し、全ての生活保護受給世帯について、平成25年検証の結果を反映させる比率を一律に2分の1とする処理を行った(以下「2分の1 処理」という。)。 (甲7、乙3、16、17)ウデフレ調整の概要デフレ調整は、総務省から公表されている消費者物価指数(以下「総務省CPI」という。)を基に、全ての消費品目から、①家賃、教育費、医療費 等の生活扶助以外の他の扶助で賄われる品目、②自動車関係費やNHK受 信料等の原則として保有が認められておらず又は免除されるため生活保護受給世帯において支出されることが想定されていない品目(以下、上記①及び②の品目を「除外品目」という。)を除いた品目(以下「生活扶助相当品目」という。)に係る消費者物価指数(以下「生活扶助相当CPI」という。)の動向を勘案するものであり、具体的には、平成20年から平成23年まで の生活扶助相当CPIの変化率(-4.78%)が、生活扶助基準額に一律に乗じられた。 (甲7、乙3、16、17)⑸ 本件各変更決定宮崎市福祉事務所長は、本件改定に基づき、原告らに対し、平成25年7月 23日付けで、本件各変更決定をし、その頃、同通知を原告らに対してした。 (甲9の1、2、4、5)⑹ 審査請求及び本件訴 崎市福祉事務所長は、本件改定に基づき、原告らに対し、平成25年7月 23日付けで、本件各変更決定をし、その頃、同通知を原告らに対してした。 (甲9の1、2、4、5)⑹ 審査請求及び本件訴訟の提起ア原告らは、平成25年9月18日付けで、宮崎県知事に対し、本件各変更決定を不服として審査請求したところ、同知事は、同年11月5日付けで、 原告らの各審査請求をそれぞれ棄却する旨の裁決をし、その頃、同通知を原告らに対してした。 原告らは、平成25年12月3日付けで、厚生労働大臣に対し、再審査請求をしたところ、同大臣は、平成26年4月18日付けで、原告らの各再審査請求を棄却する旨の各裁決をし、その頃、同通知を原告らに対してした。 (以上につき、甲10の1、2、4、甲11の1の1、2、甲11の2の1、2、甲11の4の1、2、甲12の1、2、4、甲13の1の1、2、甲13の2の1、2、甲13の4の1、2)イ原告らは、平成26年9月17日、本件訴えを提起した。 4 争点 本件の争点は、本件各変更決定の適法性であり、具体的には、次の各点が争 点となる。 ⑴ 本件改定の適法性⑵ 本件各変更決定に係る理由付記の瑕疵の有無 5 争点に関する当事者の主張の要旨⑴ 本件改定の適法性 (原告らの主張の要旨)ア判断枠組み(ア) 憲法25条は、国民に対し健康で文化的な最低限度の生活を営む権利として生存権を保障し、その内容は生活保護法により具体化されており、厚生労働大臣によって改定された保護基準が原告らを含む被保護者の健 康で文化的な最低限度の生活を下回るものとなった場合には、当該保護基準の改定が、憲法25条に反するものとして違憲となる。 ところで、生存権は、国民の生命・健康という らを含む被保護者の健 康で文化的な最低限度の生活を下回るものとなった場合には、当該保護基準の改定が、憲法25条に反するものとして違憲となる。 ところで、生存権は、国民の生命・健康という生存に直結する重要な権利であり、保護基準も、被保護者に対する保護費の金額を定めるものであると共に、社会保障制度の共通の基準として国民の生活水準を示すナシ ョナルミニマム(国民的最低限)にもなる重要なものである。また、厚生労働大臣による保護基準の設定(改定)は、生活保護法8条1項の委任に基づくものであるところ、同条2項では保護基準の考慮要素として要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別、その他保護の種類に応じて必要な事情を具体的に列挙し、その裁量の範囲を制限していることか らすれば、その判断も同条1項及び2項の委任の範囲内かどうかという観点で判断すべきである。 (イ) このように、厚生労働大臣に認められる保護基準の改定に係る裁量は極めて限定的であるから、厚生労働大臣の裁量権の逸脱・濫用の有無を判断するに当たっては、保護基準の改定の前提となる本件改定前の生活扶 助基準が衣食その他日常生活について最低限度の生活におけるそれらの 需要を満たすに足りる程度を超えるものとなっていたか否か、及び改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かがその判断の対象となり、それらがいずれも認められるとした厚生労働大臣の判断に係る過程及び手続について統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等の観 点から厳格に判断するのが妥当である。 他方、上記判断に当たっては、①生活保護法8条2項、9条に列挙された要素は義務的考慮要素であり、必ず考慮し、かつ、優先的に考慮しなけ の整合性の有無等の観 点から厳格に判断するのが妥当である。 他方、上記判断に当たっては、①生活保護法8条2項、9条に列挙された要素は義務的考慮要素であり、必ず考慮し、かつ、優先的に考慮しなければならないし、②国の財政事情や国民感情等の生活外的要素は考慮要素から排除すべきである。 (ウ) 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下「社会権規約」という。)は、9条において、社会保障についての全ての者の権利を、11条において、食料、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準等についての全ての者の権利を、12条において、全ての者の到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利等を定め、2条1項において、締約 国が権利の実現を漸進的に達成する目的をもって措置を講じる旨を規定しているほか、社会権規約委員会が社会権規約一般的意見19パラグラフ42において、社会保障に対する権利に関連して講じられた後退的な措置は、規約に基づいて禁じられているとの強い推定が働く旨などを指摘していることから、いわゆる制度後退禁止原則が認められ、この原則 は、憲法25条の解釈に充填されること、生活保護法8条の関連規定である生活保護法1条、3条、7条、24条及び56条の趣旨、生活保護法の立法経緯等を勘案すると、合理的理由のない保護基準の引下げは許されず、保護基準を引き下げる場合には、被告において厚生労働大臣の判断の過程を明らかにし、事実の調査方法が合理性を有することや、必要な考慮 要素を適切な考慮バランスで考慮したことを主張立証する必要があり、 被告がそのような主張立証を尽くさない場合には厚生労働大臣の判断に不合理な点があると事実上推認され、その裁量を逸脱濫用したものとして違法となる。 (エ) 現在の生活扶助基準の改定方 あり、 被告がそのような主張立証を尽くさない場合には厚生労働大臣の判断に不合理な点があると事実上推認され、その裁量を逸脱濫用したものとして違法となる。 (エ) 現在の生活扶助基準の改定方式である水準均衡方式の運用については、専門委員会の指摘に基づき、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実 態との均衡が図られているか否かについて定期的に検証を行うこととされ、定期的な検証は、平成19年に検討会で行われたほか、平成23年以降は、基準部会において行うものとされていた。このような経緯を踏まえると、基準部会の設置以降における生活扶助基準の改定について、改定前の生活扶助基準が健康で文化的な最低限度の生活に係る需要を超過して いること及び改定後の水準が同生活の維持に足りることに係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否かを判断するに当たっては、当該改定が、基準部会による審議検討を経て行われたものである場合には、そこでいかなる審議検討が行われたのかを踏まえ、その検証手法等の合理性に関し、客観的な数値との合理的関連性等の観点から審理 判断すべきであり、他方、基準部会等による審議検討を経ないで行われたものである場合には、当該改定が専門的知見に基づく高度の専門技術的な考察を経て合理的に行われたものであることについて、被告において十分な説明をすることを要し、その説明の内容に基づき、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無を審理判断す べきである。 イゆがみ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があること(ア) 検証方法が特異であることゆがみ調整は平成25年検証を踏まえて行われているところ、生活扶助 基準の改定は、従前、標準世帯の生活扶助基準の水準について び手続に過誤、欠落があること(ア) 検証方法が特異であることゆがみ調整は平成25年検証を踏まえて行われているところ、生活扶助 基準の改定は、従前、標準世帯の生活扶助基準の水準について検証を行い、 これにより適切と認められた水準をあらゆる世帯類型に応用できるように展開していたのに対し、平成25年検証では、厚生労働省の担当者の提起した年齢別、世帯人員別、級地別に、本件改定前の生活扶助基準と第1・十分位層に属する世帯の消費実態を比較してそのゆがみを是正する方法が採用されたが、その方法は、統計学辞典等にも掲載されていない独自の ものであり、基準部会の委員においても、一定の時間内に理解するのが困難なものであった。 また、厚生労働省の担当者は、必需的な耐久消費財について、第1・十分位層の保有状況は、中位所得階層と比べて概ね遜色ないとしているが、厚生労働省社会・援護局保護課が実施した平成22年家庭の生活実態及び 生活意識に関する調査によれば、第1・十分位層の耐久消費財の普及率は、第3・五分位層における普及率と比較すると、9割未満の項目が全体の3分の2に及び、とりわけ、文化や教養、社会生活にかかわる項目での較差が顕著であるのであり、上記の厚生労働省の担当者の説明は上記調査と整合しない。 (イ) 比較対象の選定を誤っていること基準部会は、平成25年検証において、これまでの検証に倣い、一般低所得世帯を生活扶助基準との比較対象としているが、水準均衡方式において比較対象となるのは、一般国民生活における消費水準であったことは明らかであり、平成25年検証は、ゆがみ調整における比較対象の選定にお いて明らかに誤っている。 (ウ) 基準部会の委員の意見に反し、かつ、統計学上誤った比較を行っていること統計学に は明らかであり、平成25年検証は、ゆがみ調整における比較対象の選定にお いて明らかに誤っている。 (ウ) 基準部会の委員の意見に反し、かつ、統計学上誤った比較を行っていること統計学においては、比較する2つの集団を比較対象とする要因に対して厳密に区別しなければならないという原則があり、この原則に例外はな い。ゆがみ調整に当たっては、生活扶助基準の水準と第1・十分位層の消 費実態を比較しているが、その過程で第1・十分位層を抽出する際、第1・十分位層から生活保護受給世帯を除外しておらず、いずれの比較対象の集団にも生活保護受給世帯が含まれていることになるから、統計学の上記原則に反しており、ゆがみ調整は、統計学上の正当性がない。 また、基準部会の大多数の委員が、第1・十分位層から生活保護受給世 帯を除外すべき旨の意見を述べていたのであり、平成25年検証は、専門的知見と整合しない。 (エ) 最下位層との比較は際限ない生活扶助基準の引下げを招くこと生活扶助基準以下の生活を余儀なくされている漏給層(生活保護制度の利用資格を有する者のうち、現に生活保護を受給していない者)が大量に 存在する現状において、低所得世帯の消費実態が生活扶助基準以下となるのは当然であるが、そのような状況で最下位層である第1・十分位層の消費水準との比較を根拠に生活扶助基準の引下げを許せば、生活扶助基準を際限なく引き下げていくことにつながるのであり、合理性がないことは明らかである。 (オ) 2分の1処理がゆがみ調整の趣旨を没却するものであること厚生労働大臣は、ゆがみ調整をするに当たり、平成25年報告書に記載された乖離率を2分の1にして改定率を算出している(2分の1処理)が、2分の1処理は、基準部会の検証結果を恣意的に改変した あること厚生労働大臣は、ゆがみ調整をするに当たり、平成25年報告書に記載された乖離率を2分の1にして改定率を算出している(2分の1処理)が、2分の1処理は、基準部会の検証結果を恣意的に改変したという点で明らかに不合理であるし、その内容としても、ゆがみ調整による生活扶助基準 の改定の内容に重大な影響を及ぼし、その本質部分を改変する措置であり、ゆがみ調整の趣旨を没却するものである。 それにもかかわらず、厚生労働大臣は、2分の1処理をするに当たって、基準部会における審議を経ておらず、その判断に専門的知見との整合性は認められない。 さらに、2分の1処理により、ゆがみ調整により生活扶助費が増額とな る世帯の増額幅を大幅に圧縮する一方で、減額となる世帯においては、既に激変緩和措置として最大の引下幅が設定されていたのであるから、2分の1処理は、激変緩和措置になっていないし、実際に、2分の1処理をすることにより、国は、約97億9500万円の生活扶助費の削減効果を得ているなど、多くの世帯へ不利益を与える処理になっており、不合理なも のである。 ウデフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があること(ア) 専門家による検証を経ていないこと生活保護法の制定以来、生活扶助基準の改定方式の決定ないしその基本 的な枠組みの設定は、中央社会福祉審議会の下に置かれた生活保護専門分科会の審議検討を通じて行われ、昭和59年から採用された水準均衡方式の運用についても、専門委員会や検討会において、その運用の在り方についての審議検討が行われ、平成23年以降は、基準部会において定期的な検証が行われており、そのような検証を踏まえた生活扶助基準の改定にお いて、デフレ調整のような物価の変動が考慮されたことはな いての審議検討が行われ、平成23年以降は、基準部会において定期的な検証が行われており、そのような検証を踏まえた生活扶助基準の改定にお いて、デフレ調整のような物価の変動が考慮されたことはない。 昭和59年度以降、生活扶助基準の改定方法として採用されてきた水準均衡方式は、一般国民の消費実態との比較により生活扶助基準を設定するものであり、その改定において参照される民間最終消費支出では、物価も影響するものの、あくまでも消費と関連する諸要素の一つにすぎない。そ のため、従前の水準均衡方式の下で最低限度の生活を測定するための基礎とされてきた一般国民の消費実態に代えて物価の変化率を採用するのであれば、そのような新たな測定方式の採用の是非やこれを採用するとした場合の具体的手法(水準均衡方式における改定との連続性、整合性は維持されるのか、物価の変化率により最低限度の生活を的確に測定するために はどのような手法を用いるべきか等)について、専門技術的な見地からの 検討を要するものというべきである。 それにもかかわらず、デフレ調整において用いられたような物価の変動を考慮する生活扶助基準の改定方法について、専門家の関与の下で議論、検討しておらず、デフレ調整は、何ら専門家による検討を経ることなく、厚生労働大臣の独自の判断により行われたものである。 (イ) ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行ったこと基準部会は、平成25年検証において、生活保護受給世帯間の相対比較のみならず、生活扶助基準の絶対水準の検証を行うことを前提として検証を重ねており、その結果を反映したゆがみ調整は、絶対水準の調整も行うものであった。そして、デフレ調整は、ゆがみ調整の結果として生じた絶 対水準の減額分を考慮して減額分を計算しておらず、ゆがみ調整とデ ており、その結果を反映したゆがみ調整は、絶対水準の調整も行うものであった。そして、デフレ調整は、ゆがみ調整の結果として生じた絶 対水準の減額分を考慮して減額分を計算しておらず、ゆがみ調整とデフレ調整で不当な重複引下げとなっている。 (ウ) デフレ調整を行う必要性がないこと平成19年検証の結果、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比べて高いとされているが、その差は、1627円(約1.1%)にすぎな かったこと、平成19年検証後、平成23年にかけて食料費や光熱水費といった一般低所得世帯の家計に重要な費目に係る物価はむしろ上昇していることに照らすと、生活扶助基準と一般低所得世帯との均衡が崩れ、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高くなっていたとは、にわかに認め難い状況であったこと、ゆがみ調整による生活扶助基準額へ の影響を考慮してもなおデフレ調整を行う必要があるのか、あるとしてもどのように行うのかについて、専門技術的見地から検討が必要であるが、そのような検討をしていないことからすると、デフレ調整の必要性に係る厚生労働大臣の判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠く。 (エ) デフレ調整の起点を平成20年とする根拠がないこと 被告らは、平成19年報告書において、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比べて高いと評価されたから、本来であれば、平成20年度以降速やかに生活扶助基準を見直すべきであったとし、平成20年をデフレ調整の起点としているが、平成19年検証では、生活扶助基準の水準について、夫婦子1人(有業者有り)世帯と単身世帯(60歳以上)につい てのみ評価・検証したものにとどまる上、あくまでも生活扶助基準に関する評価・検証の結果を示すものであり 、生活扶助基準の水準について、夫婦子1人(有業者有り)世帯と単身世帯(60歳以上)につい てのみ評価・検証したものにとどまる上、あくまでも生活扶助基準に関する評価・検証の結果を示すものであり、生活扶助基準を見直すべき旨の提案が示されたものではなく、平成19年報告書が取りまとめられたことをもって、平成20年時点で生活扶助基準を見直すべきであったとはいえない。 また、平成19年検証は、平成16年全国消費実態調査の結果を用いたものであり、4年後である平成20年における生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態の均衡状態を直ちに示すものでない。さらに、平成20年は、世界的な原油価格や穀物価格の高騰を受けて、石油製品や多くの食料品の物価が上昇した年であり、同年の全国平均の総合の総務省CPIは1 1年ぶりに前年比で1%を超えて1.4%上昇し、特に一般低所得世帯の家計に重要な食料費や光熱水費が上昇しており、平成20年を起点とした場合には同年の特異な物価上昇が織り込まれて物価の下落が過大に評価されることは本件改定時である平成25年には明らかであったこと、デフレ調整と同時に行われたゆがみ調整においては、平成21年の全国消費実 態調査の結果に基づいて改定率が定められているなど、平成20年という時点が現れないことからすると、デフレ調整の起点を平成20年とし、同年からの物価の下落を考慮した点において、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものである。 (オ) 生活扶助相当CPIの変化率の算定方法が誤っていること a 厚生労働大臣は、平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIを 算定するに当たり、平成22年を基準時としているが、消費者物価指数に関する国際基準では、年別の消費者物価指数を算定 a 厚生労働大臣は、平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIを 算定するに当たり、平成22年を基準時としているが、消費者物価指数に関する国際基準では、年別の消費者物価指数を算定する場合には、一定の期間内の期首に相当する年が基準時となり、期首と期末との間の各年が比較時となる、つまり、基準時は比較時よりも過去の時点でなければならないとされているから、平成20年の生活扶助相当CPIを算定 するに当たって、同年より将来である平成22年を基準時としたことは、国際基準から逸脱している。 生活扶助相当CPIの算定に係る基準時を平成22年としたことにより、平成20年から平成22年まではパーシェ式、平成22年から平成23年まではラスパイレス式という異なる計算原理に基づく指数を 比較することになるが、そのような変化率の算定方法は論理的に誤っており、不合理である。特に、平成20年から平成22年までの算定方式であるパーシェ式は、対象期間内に物価が大きく下落する一方、購入数量が高い品目があると同品目の下落幅が過大になるという欠点があり、本件では、パソコン(ノート型)やテレビ等の家電製品の価格指数の変 化幅が異様なほど大きくなっていた。 b 物価指数の変化を調査するためには、基準時と比較時で物価以外の要素である品目が同一である必要がある。しかしながら、総務省CPIでは、5年おきに基準品目が変更されており、実際に平成22年に基準品目が変更され、欠測値が生じている。そのため、平成20年の総務省C PIは平成17年に設定された基準品目を前提とする物価指数であり、基準時となる平成22年の基準品目とは品目数が異なっており、また、各品目のウエイトも異なっている。 基準品目の改定に伴う欠測値について、総務省CPIは、旧基準品目 準品目を前提とする物価指数であり、基準時となる平成22年の基準品目とは品目数が異なっており、また、各品目のウエイトも異なっている。 基準品目の改定に伴う欠測値について、総務省CPIは、旧基準品目の価格とウエイトを新基準品目のウエイトを100に置き換えるため の係数(以下「接続係数」という。)を用いて調整を行っているが、生活 扶助相当CPIについてはこのような処理が行われておらず、その結果、-4.78%という実態に沿わない変化率が算定されている。実際に総務省CPIと同様の接続係数を用いて平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率を算定すると、-2.26%となる。 c 生活扶助相当CPIの算出に当たって用いられたウエイトは、総務省 CPIのウエイト合計1万から、除外品目のウエイトを除いたものであり、総務省CPIと比べて生活扶助相当品目の物価の変動の影響が増幅されている。実際に、平成20年から平成23年までの物価の下落は、生活扶助相当品目に含まれる教養娯楽用耐久財、特にテレビ、ビデオレコーダー、パソコン及びカメラの価格指数の顕著な下落が見られてお り、総務省CPIにおいても、-2.35%であったが、生活扶助相当CPIではその影響が増幅されたため、-4.78%という高い下落を示す変化率となっている。 (カ) 生活扶助相当CPIが生活保護受給世帯の消費構造を反映していないこと 生活扶助相当CPIは、総務省CPIのうち、生活扶助相当品目についての消費者物価指数であるから、その指数品目自体は、生活扶助による消費支出の対象となる品目と合致しているものの、品目のウエイトと生活保護受給世帯の消費構造が大きく異なる場合には、そのようなウエイトを前提に算定された物価の変化率は、生活保護受給世帯における可処 る消費支出の対象となる品目と合致しているものの、品目のウエイトと生活保護受給世帯の消費構造が大きく異なる場合には、そのようなウエイトを前提に算定された物価の変化率は、生活保護受給世帯における可処分所得の 実質的増加の有無やその程度を正しく評価するものとはいえない。 すなわち、生活扶助相当CPIのウエイトの基礎となる総務省CPIのウエイトは、家計調査に基づいて行われており、国民一般の消費構造を代表しているといえる。しかし、一般に、低所得世帯は、その余の世帯と比べ、食費や光熱水費等、日常生活の維持のために必要不可欠な品目に係る 消費支出額の消費支出総額に占める割合が大きく、教養娯楽費などの日常 生活の維持のために必要不可欠ではない品目に係る消費支出額の消費支出総額に占める割合が低くなるのであり、全国の生活保護受給世帯を対象として実施されている社会保障生計調査においても、同様の傾向が確認さている。このように、生活扶助相当CPIのウエイトと生活保護受給世帯のウエイトとは、テレビ等の教養娯楽用耐久財のウエイトにおいて大きく 乖離しており、テレビ等の価格の下落が大きな要因となって物価が下落した場合おいて、生活保護受給世帯の消費に対する影響の程度は、一般世帯の消費に対する影響の程度に比べて小さいといえる。そのような影響の程度を考慮せずに、生活扶助相当CPIの変化率を根拠に生活保護受給世帯において4.78%もの可処分所得の実質的増加があったことを前提とす る厚生労働大臣の判断には誤りがある。 エ本件改定の影響が重大であること本件改定は、デフレ調整に係る減額率(-4.78%)が過去の減額例(-0.9%、-0.2%)と比べて突出しており、生活保護受給世帯の96%の世帯の生活扶助費が減額されること、生活扶助が生活保護 と本件改定は、デフレ調整に係る減額率(-4.78%)が過去の減額例(-0.9%、-0.2%)と比べて突出しており、生活保護受給世帯の96%の世帯の生活扶助費が減額されること、生活扶助が生活保護法の定める各 種扶助の中でも、食費や光熱水費等の日常生活に不可欠な支出に係る需要を満たす基礎的な生計にかかわるものであることなどから、本件改定の影響は重大であるにもかかわらず、激変緩和措置の程度は限定的である。 オ不可考慮事項を考慮していること自由民主党(以下「自民党」という。)は、平成24年12月の衆議院議 員総選挙において、生活保護の「給付水準の原則1割カット」を政権公約(マニフェスト)に明記した。この政権公約は、「生活保護利用者は優遇されていて生活保護基準は高すぎる」という一部の国民感情や財政再建のために生活保護費をはじめとする社会保障費を削減すべしとする財務省(財政制度審議会)の意見に則ったものである。 上記総選挙の結果、自民党が大勝して政権を奪取した直後、基準部会での 平成25年報告書の取りまとめ直前に、厚生労働省の当時の社会・援護局長及び保護課長は、自民党の生活保護問題プロジェクトチームの座長であった世耕弘成内閣官房副長官(当時)に対し、「取扱厳重注意」と注記された説明文書を持参し、基準部会では全く検討されなかった物価動向を勘案するとともに、2分の1処理を行うことで、最大10%の生活扶助基準の引下 げを行うことを説明した。その後、実際にその通りの予算編成がされたことからすれば、厚生労働大臣が「給付水準の原則1割カット」という自民党の政権公約の実現を最優先事項として考慮したことは明らかである。すなわち、厚生労働大臣は、本件改定に当たって、政権与党の政権公約や、その背後にある国民感情、国家の財政 の原則1割カット」という自民党の政権公約の実現を最優先事項として考慮したことは明らかである。すなわち、厚生労働大臣は、本件改定に当たって、政権与党の政権公約や、その背後にある国民感情、国家の財政事情という、本来考慮してはならない事項を 考慮しており、裁量権の範囲を逸脱濫用した違法がある。 (被告の主張の要旨)ア判断枠組み(ア) 厚生労働大臣には保護基準の改定について専門技術的かつ政策的な観点からの裁量権が認められること 憲法25条、生活保護法3条及び8条2項にいう「最低限度の生活」は抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における経済的、社会的条件や一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、国の財政状況を無視することができず、また、多方面にわたる複 雑多様な、しかも高度な専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。 したがって、保護基準の改定については、厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められる。 (イ) 裁量判断の適法性に係る判断枠組み 上記(ア)のような専門技術的知見に基づいた政策的判断として行われる 保護基準の改定については、①当該改定後の保護基準の内容が被保護者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであり、かつ、これを超えないものであるとした厚生労働大臣の判断に最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると認められる場合、あるいは、②激変緩 和等の措置を採るか否かについての方針又はこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣 無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると認められる場合、あるいは、②激変緩 和等の措置を採るか否かについての方針又はこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると認められる場合に違法となるというべきである(いわゆる判断過程審査)。 そのため、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断について、その当 不当が直ちに裁判所の司法審査の対象となるわけではなく、当該判断が著しく合理性を欠き、明らかに裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したと認められるような場合でなければ、その判断は違法とはなり得ない。 そして、一般に、行政裁量が認められる行政処分の適否が問題となる場合における判断過程審査は、裁判所が、原告が納得できないと主張する点 について、被告(行政機関)の説明する判断過程が一応の説得力を持つか否かを審査する形で、いわば行政機関の説明する判断過程をできるだけ生かす審査方式であると解されており、同審査では、被告が説明する論証過程を追試的に検証し、それが一応納得できるものか否か、すなわち、被告が挙げる理由に論理の飛躍や連関を欠くところがあるか否かという観点 から、その適否が判断されることになる。 そして、厚生労働大臣が保護基準の改定に当たり、基準部会等の専門機関に諮問し又はその意見を求めることなどを定める法令上の規定はなく、基準部会の設置の趣旨及び審議事項は、あくまで現在の保護基準の定期的な評価及び検証に限られているのであるから、厚生労働大臣は、保護基準 の改定に当たっての基準部会等の専門機関の関与の在り方や専門機関の 検証結果等をどのように考慮するかについての専門技術的かつ政策的裁量を有しているというべき 、厚生労働大臣は、保護基準 の改定に当たっての基準部会等の専門機関の関与の在り方や専門機関の 検証結果等をどのように考慮するかについての専門技術的かつ政策的裁量を有しているというべきである。 そのため、厚生労働大臣が専門機関の審議検討を経ることなく判断した場合には、その判断の前提となる課題に対する事実認識やそれに対する評価、対策の課題解決手段としての適合性に一定の合理性が認められれば、 裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは言えないというべきである。 また、専門機関による審議検討を経て判断した場合であっても、同大臣の判断が、上記審議検討に係る結果ないし意見等と積極的に抵触することが明らかであり、かつ、同大臣の判断過程について一定の合理的理由すら認められないよう場合でない限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がある とはいえないというべきである。 (ウ) 憲法25条及び社会権規約が制度後退原則を定めるとはいえないこと社会権規約9条は、締約国において、社会保障についての権利が国の社会政策により保護されるに値するものであることを確認し、この権利の実 現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものであって、個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない。そして、社会権規約委員会の一般的意見に法的拘束力はない。 イゆがみ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落がある とはいえないこと(ア) ゆがみ調整に係る検討経緯が相当であること専門委員会による平成16年報告書では、現行の生活扶助基準が必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映していないなどとされ、検討会による平成19年報告書では、展開部分について、一般低所得世帯と比較すると、 よる平成16年報告書では、現行の生活扶助基準が必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映していないなどとされ、検討会による平成19年報告書では、展開部分について、一般低所得世帯と比較すると、 消費実態からやや乖離していると認められるなどと生活扶助基準と一般 低所得世帯の消費実態との間の乖離を是正する必要が指摘されていた。 そして、平成16年報告書は、生活扶助基準の検証に当たっては、世帯構成などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られるべきであり、そのためには、全国消費実態調査を基本とし、国民の消費実態を収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々 な角度から詳細に分析することが適当である旨が指摘され、平成19年検証においても、同様の考えが示されていた。 上記の指摘を踏まえ、基準部会は、平成21年全国消費実態調査のデータを用いて、年齢階級別、世帯人員別、級地別に生活扶助基準額と一般低所得世帯(年間収入階級が第1・十分位層に属する世帯)の消費実態の乖 離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数についての検証を行った(平成25年検証)。 (イ) 平成25年検証において生活扶助基準と第1・十分位層を比較した基準部会の判断の過程に過誤、欠落がないこと平成25年検証は、生活扶助基準の展開のための指数が必ずしも適切な ものでなかったことから、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態による指数の分布を把握し、その消費実態を生活扶助基準の展開のための指数に反映することにより、世帯構成などが異なる生活保護受給者間における公平を図ることを目的とするものである。 そして、生活扶助基準の妥当性の検証は、昭和39年12月16日付け で取りまとめられた中間報告(以下「 り、世帯構成などが異なる生活保護受給者間における公平を図ることを目的とするものである。 そして、生活扶助基準の妥当性の検証は、昭和39年12月16日付け で取りまとめられた中間報告(以下「昭和39年中間報告」という。)や、昭和58年意見具申、平成16年報告書、平成19年報告書において、従前から低所得世帯の消費実態に着目して行われている。 そのため、基準部会は、これまでの検証に倣い、生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的であると判断し ておりその内容に問題はない。 さらに、第1・十分位層の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること、国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位層に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されている状況にあること、全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位層の年間収入総額の構成割合は やや減少傾向ではあるものの、特に第1・十分位層のみが減少しているわけではないこと、分散分析等の統計的手法による検証では、各十分位層間のうち、第1・十分位層と第2・十分位層の間において消費が大きく変化しており、ほかの十分位層の世帯に比べて消費の動向が大きく異なると考えられることからも、生活扶助基準の検証において、第1・十分位層の消 費実態を用いるのは相当である。 (ウ) ゆがみ調整において使用されたデータに問題はないこと基準部会は、一般低所得世帯(第1・十分位層)の消費構造を把握するために全国消費実態調査の特別集計のデータを用いており、このデータには生活保護受給世帯と推測される世帯も含まれている。 もっとも、上記(イ)のとおり、平成25年検証は、生活扶助基準の水準の妥当性を 国消費実態調査の特別集計のデータを用いており、このデータには生活保護受給世帯と推測される世帯も含まれている。 もっとも、上記(イ)のとおり、平成25年検証は、生活扶助基準の水準の妥当性を検証するものではなく、展開のための指数を検証するものであることから、従前の検証とは異なり、第1・十分位層から生活保護受給世帯を除外する統計上の必要はなく、このような判断の過程に過誤、欠落はない。 (エ) 2分の1処理がゆがみ調整に係る厚生労働大臣の判断過程に過誤、欠落があることを裏付けるものではないこと厚生労働大臣は、ゆがみ調整による検証の結果をそのまま生活扶助基準に反映させると、生活扶助基準額の減額割合が10%を大幅に超える世帯が相当数生じ、特に子どものいる世帯での減額割合が大きくなることが想 定されたことから、従前の生活扶助基準によって具体化されていた被保護 者の期待的利益を一定程度保護するための激変緩和措置として、2分の1処理を行った。 ゆがみ調整について、個別の指数ごとに、減額幅(減額の改定比率)については2分の1とし、増額幅(増額の改定比率)についてはそのまま反映させるといったように反映の程度を部分的に変えることは理論的には あり得るものの、このようなことは、生活保護受給世帯間の公平を図るために「生活扶助基準の展開部分の適正化」を図るというゆがみ調整の本質的部分を改変することになるものであり相当でない。 そして、平成25年検証の検証手法には一定の限界が認められ、生活扶助基準の展開部分については、今後更なる検証が予定されていた。 厚生労働大臣は、上記の事情を踏まえて2分の1処理を採用しており、その判断過程に過誤、欠落がある、あるいは明らかに合理性を欠くとは認められない。 ウデフレ調整に係る が予定されていた。 厚生労働大臣は、上記の事情を踏まえて2分の1処理を採用しており、その判断過程に過誤、欠落がある、あるいは明らかに合理性を欠くとは認められない。 ウデフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえないこと (ア) デフレ調整の必要があったこと平成19年検証の結果、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いとされながら、減額改定が行われなかったことにより、平成20年当時、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が崩れ、生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態に比較して高くなっ ていた。このような状況の中、同年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって賃金、物価及び家計消費が落ち込み、一般国民の消費水準が下落する一方、生活扶助基準については、その間の経済動向を踏まえた減額改定が行われずに据え置かれた結果、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加した(生活扶助基準の水準が実質的に引き 上げられた。)と評価することができる状況にあり、生活扶助基準の水準 と一般国民の消費実態との不均衡はより一層顕著となっていた。そして、平成24年6月の自民党、公明党及び民主党の三党の合意に基づき国会に提出され、同年8月に成立した社会保障制度改革推進法附則2条1項により、生活扶助基準の適正化を早急に行うことが明記された。 上記の経緯を踏まえ、厚生労働大臣は、平成20年以降の生活保護受給 世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加により生じた生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図るため、同年以降の物価変動を生活扶助基準の水準に反映させるデフレ調整を行うこととしたのであり、この判断の過程及び手続に過誤、欠落がないこと 生じた生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図るため、同年以降の物価変動を生活扶助基準の水準に反映させるデフレ調整を行うこととしたのであり、この判断の過程及び手続に過誤、欠落がないことは明らかである。 (イ) ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことに問題はないこと 上記イ(イ)のとおり、ゆがみ調整は、生活扶助基準の水準を調整するものではないから、ゆがみ調整とデフレ調整で物価下落を二重に反映するものではなく、これらを同時に行うことに何ら問題はない。 (ウ) 物価を基準として生活扶助基準を改定することに問題がないことa 上記ア(ア)のとおり、厚生労働大臣には、保護基準の設定及び改定に ついて広範な裁量権が認められており、保護基準を決定する際に用いる手法や考慮要素についても、その合目的的裁量に委ねられているというべきである。そして、本件改定に際して、消費者物価指数の動向を勘案することとしたのも、上記(ア)の政策的判断の下、その裁量の範囲内で行ったものである。 b 昭和58年意見具申以降採用されている水準均衡方式は、法令上定められたものでなく、事実上の生活扶助基準の改定指針の一つにすぎないのであるから、厚生労働大臣の生活扶助基準の改定の判断を拘束するものではない。 c 平成25年報告書において、「厚生労働省において生活扶助基準の見 直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上 で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。」との意見が取りまとめられていることからすると、厚生労働大臣が根拠を明示して物価等の経済指標を活用すること自体については、基準部会の委員全員の了承を得ていたものとみることができる。 い。」との意見が取りまとめられていることからすると、厚生労働大臣が根拠を明示して物価等の経済指標を活用すること自体については、基準部会の委員全員の了承を得ていたものとみることができる。 これは、平成25年報告書で示された上記の結論は、厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際、同報告書の検証結果を考慮した上で、更に平成25年検証以外の合理的な経済指標等を総合的に勘案することをも含めて厚生労働大臣の合目的的裁量に委ねる趣旨であると解するのが相当である。 (エ) デフレ調整の起点を平成20年とすることが合理的であることデフレ調整は、上記(ア)のとおり、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加により生じた生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図るために行うものである。 そして、厚生労働大臣は、上記のデフレ調整の目的を踏まえ、デフレ調 整の起点を平成20年としたものであって、合理的である。 (オ) 生活扶助相当CPIの算出方法に問題はないことa 生活扶助相当CPIにおける指数品目の選定は、生活扶助以外の他の扶助で賄われる品目及び原則として保有が認められておらず又は免除されるため生活保護受給世帯において支出されることが想定されてい ない品目(除外品目)を除くという恣意性を排除した客観的な条件設定に基づいて行われたものである上、専門委員会が生活扶助の老齢加算の廃止を提言するに当たっては、生活扶助相当消費支出額として、一般低所得者の消費支出全体額から、生活保護制度において生活扶助以外の扶助に該当するもの、生活保護において基本的に是認されない支出に該当 するもの、生活保護受給世帯は免除されているもの及び最低生活費の範 疇になじまないものを除外した額を算出し 扶助以外の扶助に該当するもの、生活保護において基本的に是認されない支出に該当 するもの、生活保護受給世帯は免除されているもの及び最低生活費の範 疇になじまないものを除外した額を算出した上で検討されており、生活扶助相当品目に係る選定方法は、専門家により構成された専門委員会において是認された方法であったことからすると、生活扶助相当CPIの指数品目の選定に係る厚生労働大臣の判断に論理の飛躍や連関を欠くところはない。 b 厚生労働大臣は、平成20年の生活扶助相当CPI及び平成23年の生活扶助相当CPIを算出するに際し、平成22年家計調査の全国平均の品目別支出金額に基づいて算出された品目別ウエイトを使用しているところ、平成20年から平成23年の3年間という短期間における消費構造の変化による影響は比較的小さいと考えられたため、消費構造の 変化による影響を最小限に抑え、最新の国民の消費構造を反映する観点から、平成20年及び平成23年と直近の平成22年家計調査における品目別ウエイトを使用することが最も合理的である。 他方、原告らが採用すべきと主張する社会保障生計調査は、保護基準の改定等に用いられる資料ではあるものの、調査世帯の選定において地 域等による偏りが生じる可能性があることや、サンプル数が必ずしも多くないことなどを踏まえると、生活保護受給世帯全体の家計支出の状況を推測する精度に一定の限界があることを否定できない。その上、同調査は、生活保護受給世帯の生活実態を把握する調査であって、生活保護受給世帯の詳細な支出先や支出額を把握するものではないから、調査手 法として個別品目の消費支出の割合等を正確かつ詳細に記載させるための措置が講じられておらず、その調査結果を分析しても大まかなウエイトしか把握できない。そ 額を把握するものではないから、調査手 法として個別品目の消費支出の割合等を正確かつ詳細に記載させるための措置が講じられておらず、その調査結果を分析しても大まかなウエイトしか把握できない。そのため、社会保障生計調査のウエイトを用いた場合には、総務省CPIの詳細な品目ごとの価格データが存在するにもかかわらず、その詳細な品目ごとの消費支出の割合を反映した物価を 算出できなくなる。 上記を踏まえ、厚生労働大臣は、社会保障生計調査の結果を分析したウエイトを用いて物価変動率を算出することが可能であったとしても、家計調査の統計資料としての精度や適格性等を総合的に勘案し、家計調査により算出された消費者物価指数のウエイトを用いる判断をしたものであり、その判断の過程及び手続に過誤、欠落はない。 c 原告らは、総務省CPIのうち生活扶助相当品目のウエイトを用いて生活扶助相当CPIを算定した結果、テレビ等の寄与度の増幅が起きたと主張するところ、確かに、特定の品目を除外することにより、除外されなかった品目(テレビ等を含む。)のウエイトが相対的に上昇し、その意味においてテレビ等についての物価下落の影響が増幅される面が あることは否定できない。しかし、このようなウエイトの相対的な上昇は、生活扶助相当品目の全てについて同じ割合で発生するのであるから、殊更にテレビ等を取り上げて増幅を強調するのは相当でない。 また、厚生労働省が平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」によれば、生活保護受給世帯のパソコン普及率は約 4割、ビデオレコーダーは約7割、電子レンジや洗濯機は約9割、カラーテレビや冷蔵庫はほぼ10割となっており、このような調査結果に照らせば、生活保護受給世帯においても、テレビやパソコン等の教養娯楽 4割、ビデオレコーダーは約7割、電子レンジや洗濯機は約9割、カラーテレビや冷蔵庫はほぼ10割となっており、このような調査結果に照らせば、生活保護受給世帯においても、テレビやパソコン等の教養娯楽用耐久財は一般世帯と同様に普及しているということができ、生活保護受給世帯において教養娯楽用耐久財を生活扶助で購入することも十分 予想される。そして、生活保護費のうち、どの程度を教養娯楽用耐久財にあてるかは当該世帯ごとの個別の事情によるものであり、このことは他の生活扶助相当品目と同様である。 生活扶助基準の水準は、これまでも一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚して改定 が行われており、一般国民の消費を表す家計調査に基づき算出された消 費者物価指数のウエイトを用いて生活扶助相当CPIを算出したことは、従来の考え方とも整合するものである。 生活扶助相当CPIの算定に当たり、除外品目以外の品目の物価の変化率が大きいことから、総務省CPIに比べてその変化率が大きくなることについては、上記のとおり、合理的な指数品目の選定を行った結果 であって、かかる結果に拘泥して厚生労働大臣の判断が不合理であるとはいえない。 d 平成20年の生活扶助相当CPIは物価変動後の比較時点のウエイトを使用して指数を算出するパーシェ式により、平成23年の生活扶助相当CPIは物価変動前の基準時点のウエイトを使用して指数を算出 するラスパイレス式により、それぞれ算出したものと評価できるところ、この算出方法は、国際基準として原告らが引用する消費者物価指数マニュアルにも掲載されているロウ指数の算出方法と同様の考え方に依拠したものである。 また、ラスパイレス式は基準時後の消費構造の変化による影響が加味 国際基準として原告らが引用する消費者物価指数マニュアルにも掲載されているロウ指数の算出方法と同様の考え方に依拠したものである。 また、ラスパイレス式は基準時後の消費構造の変化による影響が加味 されないために指数の上昇率が高くなる傾向(上方バイアス)が生じ、パーシェ式は、逆に指数の上昇率が低くなる傾向(下方バイアス)が生じるものの、このようなバイアスは、生活扶助相当CPIを算定する場合はもちろん、消費者物価指数を算定する場合においても不可避的に生ずるものであり、上記のようなバイアスが生じることをもって、生活扶 助相当CPIの算定方法が不合理であるとするのは誤りである。この点は、消費者物価指数マニュアルにおいても消費者物価指数の選択に関し、「あらゆる状況に向いている算式は1つもないかもしれない」などと説明されているところである。 エ激変緩和措置に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落が あるとはいえないこと 厚生労働大臣は、平成25年検証における展開のための指数の分析手法の持つ統計上の限界が指摘されていたことや平成25年検証の結果を前提に更なる評価、検証が行われることが予定されていたことに加え、平成25年検証の結果をそのまま反映させた場合、子どもがいる世帯への影響が大きくなることが見込まれたことから、貧困の世代間連鎖を防ぐなどの観点 を実現しつつ、ゆがみ調整の本質的部分を改変しないようにするため、2分の1処理をするとともに、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行った場合、生活扶助基準額が大幅な引下げとなる世帯が生じることが想定されたため、その負担を軽減するとの観点から減額幅の上限を10%として、その結果の反映を平成25年8月以降、3年にわたって段階的に実施することとし たものであり、この る世帯が生じることが想定されたため、その負担を軽減するとの観点から減額幅の上限を10%として、その結果の反映を平成25年8月以降、3年にわたって段階的に実施することとし たものであり、このような厚生労働大臣の判断に著しい過誤、欠落がある、あるいは、当該判断が明らかに合理性を欠くとは認められない。 オ本件改定の影響の重大性は厚生労働大臣の判断の違法性を基礎づけるものではないこと原告らの指摘する本件改定の影響は、本件改定の結果でしかなく、改定に 至るまでの判断の過程及び手続の要素となることはあり得ないから、厚生労働大臣の判断の過程及び手続の過誤、欠落を基礎づける理由は不明といわざるを得ず、結果そのものを判断要素とすること自体、判断過程審査を逸脱するものである。 カ政権公約の実現に係る原告らの主張に理由がないこと 本件改定は、①基準部会の検証結果に基づき、第1・十分位層の消費実態と生活扶助基準の年齢別、世帯人員別、級地別の較差を是正する(ゆがみ調整)とともに、②近年デフレ傾向が続いてきた中で生活扶助基準額が据え置かれてきたことを踏まえ、客観的な経済指標である消費者物価指数の近年の動向を勘案して必要な適性化を図る(デフレ調整)ことを意図して行われ たものであるところ、上記ウ(ア)のとおり、生活扶助基準の見直しの必要性 は、平成19年報告書の検証結果により既に明らかとなっており、原油価格の高騰や世界金融危機の影響等を考慮して、その見直しが見送られてきたにすぎない。 また、本件改定当時の厚生労働大臣は、生活扶助基準の見直しについて、基準部会等による報告等を踏まえて、その内容を検討する必要性があるこ とを強調して、生活保護費の1割引下げという自民党の政権公約に盲従するものではないことを明らかにして 助基準の見直しについて、基準部会等による報告等を踏まえて、その内容を検討する必要性があるこ とを強調して、生活保護費の1割引下げという自民党の政権公約に盲従するものではないことを明らかにしており、実際にも、本件改定は、3年間で生活保護費全体の2.3%を削減するものにとどまっている。 したがって、本件改定が政治的な意図で行われたものでないことは明らかである。 キ本件改定後の検証から本件改定に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落がないことが裏付けられていること基準部会は、本件改定後の平成29年にも生活扶助基準について評価・検討し(以下「平成29年検証」という。)、同年12月14日付け「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(以下「平成29年報告書」という。)を取 りまとめた。平成29年検証では、本件改定を含むこれまでの保護基準の見直しによる影響を把握した上で生活扶助基準に関する検証等が行われたが、その際の議論の基礎とされた統計資料によれば、本件改定によるデフレ調整の対象期間(平成20年から平成23年まで)における経済指標については、消費(2人以上世帯(全体及び第1・十分位層)の消費支出及び生活 扶助相当支出)、物価(消費者物価指数、生活扶助相当CPI(ウエイト参照時点は平成27年))及び賃金(一般労働者及びパートタイム労働者(いずれも事業者規模5人以上))の全ての変化率がマイナスとなっており、収入及び生活維持に必要な金額が実質減少していると評価される状況にあった。 また、平成29年検証では、本件改定後の生活扶助基準の水準が妥当なも のか否かについても評価・検証が行われたところ、そこでは、本件改定後の生活扶助基準の水準が一般低所得世帯(第1・十分位層)の消費実態と概ね均衡するこ 本件改定後の生活扶助基準の水準が妥当なも のか否かについても評価・検証が行われたところ、そこでは、本件改定後の生活扶助基準の水準が一般低所得世帯(第1・十分位層)の消費実態と概ね均衡することが確認されたと評価されており、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところもない。 このことは、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断過程に過誤、欠落がな かったことを事後的にも裏付けるものというべきである。 ⑵ 本件各変更決定に係る理由付記の瑕疵の有無(原告らの主張の要旨)本件各変更決定に係る原告らに対する通知書には、概ね「基準改定による」としか記載されておらず、原告らからすれば、どのような基準がどのように適 用されたのかを知ることができない。 本件各変更決定の際に提示された理由は、名宛人である原告らにとって理由の提示がないに等しいか、著しく不十分というべきであるから、行政手続法14条1項本文に違反する。 (被告の主張の要旨) 本件各変更決定は、同決定より前の平成25年5月16日時点で既に官報により一般に周知されていた本件告示に伴って、本件告示どおりの処分を行うものであり、本件各変更決定の時点においてその内容は確定していたから、行政庁による恣意的な判断が介入するおそれはない。また、本件告示が事前に周知され、本件各変更決定に係る通知書とそれ以前の通知書を見比べること によっても、本件各変更決定の通知を受けた時点で、保護基準の改定により生活扶助支給額が減額されたことは理解可能であることからすれば、被保護者による不服申立ての便宜を損なうものではない。 そうすると、本件各変更決定に係る通知書における保護変更理由の記載は、行政手続法の規定の趣旨に反するものではないから、この点をもって本件 れば、被保護者による不服申立ての便宜を損なうものではない。 そうすると、本件各変更決定に係る通知書における保護変更理由の記載は、行政手続法の規定の趣旨に反するものではないから、この点をもって本件各 変更決定が違法となるものではない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ⑴ 水準均衡方式が採用される前の改定方式 ア生活保護法は、昭和25年5月4日成立し、即日施行されたところ、同日時点の生活扶助基準は、昭和23年8月1日に採用されていたマーケットバスケット方式をそのまま採用しており、その後の昭和36年4月1日にエンゲル方式を採用した。 (乙7の2、乙10) イ生活保護法の施行に関する事項を調査審議するために中央社会福祉審議会内に設置された生活保護専門分科会(以下「生活保護専門分科会」という。)は、昭和39年12月16日付けで、昭和39年中間報告を厚生大臣(当時)に提出した。昭和39年中間報告には、概要、以下の内容が記載されている。 (ア) 一般国民の生活水準の向上に伴って生活保護基準の改善が図られてきた結果、生活保護勤労者世帯の消費水準は、全都市勤労者世帯の消費水準との間の格差も縮小していると推計されるなど、生活保護水準は大幅に改善されてきたものの、全都市勤労者世帯の平均水準と比較すると、いまだ50%に満たない低い水準に置かれており、また、最近の一般国民の 生活内容が急速に高度化し、かつ、所得階層間の格差が縮小しつつある現状に鑑み、これに対応した生活水準とするためには更に相当の改善を行うことが必要である。 そして、相当の改善を図ることこそ、低所得階層間の格差縮小を一つの目標とし、ひずみ是正を企図する しつつある現状に鑑み、これに対応した生活水準とするためには更に相当の改善を行うことが必要である。 そして、相当の改善を図ることこそ、低所得階層間の格差縮小を一つの目標とし、ひずみ是正を企図する国民所得倍増計画の目的に沿うのみなら ず、経済の高度成長下にあって、その恩恵に浴し難い人々に対し、繁栄の 成果を分かち合うことこそ社会連帯の根本を成すものであり、国民福祉向上の立場から最も優先的に取り上げなければならない基本的施策である。 (イ) 一般国民の平均消費水準に比較して低所得階層の消費水準の上昇が大きく、消費水準の階層別格差縮小の傾向が見られる現状を前提として、最低生活保障水準としての生活保護水準の改善を考える限りにおいて は、一般国民の平均的消費水準の動向を追うのみではその目的を達し得ないものであって、低所得階層の消費水準、特に生活保護階層に隣接する全都市勤労者世帯第1・十分位層の消費水準の動向に着目した改善を行うことが必要である。すなわち、第1・十分位層における消費水準の最近の上昇率に加えて、第1・十分位層と生活保護階層との格差縮小を見込ん だ改善を行うべきである。この場合、見込むべき格差縮小の度合いについては、第1・十分位層と生活保護階層との格差縮小の動向についても参酌すべきである。 (以上につき、乙32)ウ厚生大臣は、昭和39年中間報告を踏まえ、昭和40年4月1日(昭和4 0年度)から、生活扶助基準の改定方式をエンゲル方式から格差縮小方式に変更した。 (乙7の2、乙10)⑵ 水準均衡方式の採用に至る経緯ア生活保護専門分科会は、格差縮小方式による改定を踏まえた生活保護水 準の評価、格差縮小方式の適否等について検討を行い、昭和55年12月付けで検討状況及び今後の検討の方向性を 用に至る経緯ア生活保護専門分科会は、格差縮小方式による改定を踏まえた生活保護水 準の評価、格差縮小方式の適否等について検討を行い、昭和55年12月付けで検討状況及び今後の検討の方向性を明らかにするため、「生活保護専門分科会審議状況の中間的とりまとめ」(以下「昭和55年中間取りまとめ」という。)を作成した。昭和55年中間取りまとめには、概要、以下の内容が記載されている。 (ア) 昭和40年度以降、格差縮小方式によって生活扶助基準が改定されて きた結果、当時の水準に比して相当の改善が図られてきた点は評価されるべきである。しかし、栄養摂取の態様については主食の比率が高いこと等いまだ貧困性が強く認められ、また、地域社会の成員としてふさわしい生活を営むために不可欠な交通費、教養費、交際費等社会的経費は一般世帯のみならず全国勤労者世帯第1・十分位層の世帯と比較しても著しい 開きがあることなどを勘案すると、生活保護受給世帯の消費支出の水準は今後更に改善を要する。 (イ) 生活保護の目的は、国民の最低生活、すなわち、最低限度の消費支出を保障することであり、その具体的保障水準を表す生活扶助基準は、当該年度に予想される一般国民の消費生活の動向に対応して設定されなけれ ばならない。それゆえ、生活保護基準の改定方式としては、消費支出を指標とし、かつ、予想される生活水準に対応できるものであることが前提となる。現行の生活扶助基準の改定方式である格差縮小方式は、格差縮小が十分でない現状においては、その考え方は妥当性を有するものと認められる。 (以上につき、乙9)イ中央社会福祉審議会は、生活保護専門分科会における検討を踏まえ、昭和58年12月23日付けで、昭和58年意見具申を取りまとめた。昭和58年意見具申に られる。 (以上につき、乙9)イ中央社会福祉審議会は、生活保護専門分科会における検討を踏まえ、昭和58年12月23日付けで、昭和58年意見具申を取りまとめた。昭和58年意見具申には、概要、以下の内容が記載されている。 (ア) 生活扶助基準の評価 生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであることは、既に認められているところである。国民の生活水準が著しく向上した今日における最低生活の保障の水準は、単に肉体的生存に必要な最低限の衣食住を充足すれば十分というものではなく、一般国民の生活水準と均衡のとれた最低限度 のもの、すなわち家族全員が必要な栄養量を確保するのはもちろんのこ と、被服及びその他の社会的費用についても、必要最低限の水準が確保されるものでなければならない。 総理府家計調査を所得階層別に詳細に分析検討した結果、現在の生活扶助基準は、一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとの所見を得た。しかしながら、国民の生活水準は、今後も向上すると見込 まれるので、生活保護受給世帯及び低所得世帯の生活実態を常時把握しておくことはもちろんのこと、生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要がある。 (イ) 生活扶助基準の改定方式生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民生活における 消費水準との比較における相対的なものとして設定すべきものであり、生活扶助基準の改定に当たっては、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費水準との調整が図られるような適切な措置を講じる必要がある。また、当該年度に予想される国民の消費動向に対応する見地から、政府経済見通 一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費水準との調整が図られるような適切な措置を講じる必要がある。また、当該年度に予想される国民の消費動向に対応する見地から、政府経済見通しの民間最終消費支出 の伸びに準拠することが妥当である。なお、賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきである。 (以上につき、乙8)ウ昭和58年意見具申において、当時の生活扶助基準が一般国民の消費実 態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとされたのは、変曲点の概念を用いて検証した結果、昭和54年家計調査特別集計結果による収入階級別消費支出額(勤労者4人(有業1人)世帯)によれば、変曲点の分位が収入階級50分位中、2.99位(第2.99・五十分位層)にあると判断されたことに基づく。 (乙31) エ厚生大臣は、昭和58年意見具申を受け、昭和59年4月1日以降の生活扶助基準の改定方法を水準均衡方式に変更した。 水準均衡方式は、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図るという方式であり、政府見通しにおける個人消費の伸びに準拠して翌年度の改定率を算 定する点で格差縮小方式と同様であるが、格差縮小分を上乗せしていない点、個人消費の伸びに関する指標の実績値との調整を図ることとしている点で格差縮小方式と異なる。 (以上につき、甲4の2、乙7の2)⑶ 平成16年検証等の経緯 ア衆議院厚生委員会は、「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案」の審議において、平成12年5月10日付けで、社会福祉基礎構造改革を踏まえた今後の社会福祉の状況変化や規制緩和、地方分権の進展、 「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案」の審議において、平成12年5月10日付けで、社会福祉基礎構造改革を踏まえた今後の社会福祉の状況変化や規制緩和、地方分権の進展、介護保険の施行状況等を踏まえつつ、介護保険制度の施行から5年後を目途とした同制度全般の見直しの際に生活保護の在り方につい て、十分検討を行う旨の附帯決議をした。 また、社会保障審議会は、平成15年6月16日付け「今後の社会保障改革の方向性に関する意見」において、生活保護については、その在り方についてより専門的に検討していく必要がある旨指摘した。 そして、平成15年6月27日に閣議決定された「経済財政運営と構造改 革に関する基本方針2003」では、生活保護その他福祉の各分野において、制度・執行の両面から各種の改革を推進し、年金・医療・介護・生活保護などの社会保障サービスを一体的に捉え、制度の設計を相互に関連付けて行い、生活保護についても、物価、賃金動向、社会経済情勢の変化、年金制度改革などとの関係を踏まえ、老齢加算等の扶助基準など、制度・運営の 両面にわたる見直しが必要であるとの方針が示された。 (以上につき、乙12の1、2)イ上記アの状況を踏まえ、平成15年7月28日、保護基準の在り方を始めとする生活保護制度全般について検討することを目的として、社会保障審議会福祉部会の下に生活保護制度の在り方に関する専門委員会(専門委員会)が設置された。専門委員会は、学識経験者を中心とする12名の委員で 構成され、同年8月から同年12月まで月1回程度の頻度で開催された。 (乙12の1、2)ウ専門委員会は、平成15年12月16日付け「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ」(平成15年中間取りまとめ)を作成・発 年12月まで月1回程度の頻度で開催された。 (乙12の1、2)ウ専門委員会は、平成15年12月16日付け「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ」(平成15年中間取りまとめ)を作成・発表した。 平成15年中間取りまとめには、概要、以下の内容が記載されている。 (ア) 生活扶助基準についての評価a 生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであり、具体的には、年間収入階級第1・十分位層の消費水準に着目することが適当である。 b 第1・十分位層の勤労者3人世帯の消費水準について詳細に分析して 3人世帯(勤労)の生活扶助基準額と比較した結果は以下のとおりである。 (a) 第1・十分位層の消費水準と生活扶助基準額とを比較すると、生活扶助基準額が高い。 (b) 第1・十分位層(第1~第5・五十分位層)のうち、食費、教養娯 楽費等の減少が顕著な第1~第2・五十分位層の消費水準と生活扶助基準額とを比較すると、生活扶助基準額が高い。 (c) 第1・十分位層(第1~第5・五十分位層)のうち、第3~第5・五十分位層の消費水準(結果として第1・五分位層の消費水準に近似)と勤労控除額を除いた生活扶助基準額とを比較すると、均衡が図られ ている。しかし、生活保護受給世帯の消費可能額である勤労控除額を 含めた生活扶助基準額と比較すると、生活扶助基準額が高い。 (イ) 生活扶助基準の第1類費及び第2類費の設定の在り方標準3人世帯を基準として具体的な世帯類型別にこれを展開してみると、次の問題が見られる。 a 第1類費の年齢別格差 マーケットバスケット方式時の栄養所要量を基準として設定されている現行の第1類費の年齢別格差について、直近の年齢別栄養 これを展開してみると、次の問題が見られる。 a 第1類費の年齢別格差 マーケットバスケット方式時の栄養所要量を基準として設定されている現行の第1類費の年齢別格差について、直近の年齢別栄養所要量及び一般低所得世帯の年齢別消費支出額を比較して検証したところ、概ね妥当であるが、年齢区分の幅の在り方については引き続き検討することが必要である。また、0歳児については、人工栄養費の在り方を含めた 見直しが必要である。 b 世帯人員別生活扶助基準生活扶助基準の第1類費と第2類費の割合は、一般低所得世帯の消費実態と比べると第1類費が相対的に大きい。相対的に大きな第1類費が年齢別に組み合わされるために、多人数世帯ほど生活扶助基準額が割高 になることが指摘される。これを是正するため、3人世帯の生活扶助基準額の第1類費と第2類費の構成割合を一般低所得世帯の消費実態に均衡させるよう第2類費の構成割合を高めることが必要である。また、世帯人員別に定めた第2類費の換算率については、一般低所得世帯における世帯人員別第2類費相当支出額の格差を踏まえ、多人数世帯の換算 率を小さくする方向で見直しを行うことが必要である。 c 単身世帯の生活扶助基準現在の3人世帯を基軸とする基準設定では、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとはなっていないため、一般に単身世帯数が増加している中で、とりわけ生活保護受給世帯の約7割が単身世帯であ ること、単身世帯における第1類費と第2類費については一般世帯の消 費実態からみて、これらを区分する実質的な意味が乏しいことも踏まえ、単身世帯については、一般低所得世帯との均衡を踏まえて別途の生活扶助基準を設定することについて検討することが望ましい。 (ウ) 生活扶助基準の改定方式の在り方 する実質的な意味が乏しいことも踏まえ、単身世帯については、一般低所得世帯との均衡を踏まえて別途の生活扶助基準を設定することについて検討することが望ましい。 (ウ) 生活扶助基準の改定方式の在り方昭和59年度以降採られてきた水準均衡方式については、概ね妥当であ ると認められてきたが、最近の経済情勢はこの方式を採用した当時と異なることから、例えば5年間に一度の頻度で、生活扶助基準の水準について定期的に検証を行うことが必要である。 また、定期的な検証を行うまでの毎年の改定については、近年、民間最終消費支出の伸びの見通しがプラス、実績がマイナスとなるなど安定して おらず、また、実績の確定も遅いため、これによる生活保護受給世帯への影響が懸念されることから、改定の指標の在り方についても検討が必要である。この場合に、国民にとってわかりやすいものとすることが必要なので、例えば、年金の改定と同様に消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。 なお、急激な経済変動があった場合には、機械的に改定率を設定するのではなく、最低生活水準確保の見地から別途対応することが必要である。 (以上につき、甲111、乙13)エ専門委員会は、平成15年中間取りまとめを報告した後も引き続き生活保護基準の妥当性の検証・評価等生活保護の制度・運用の在り方に関する検 討を続け、その改善の方向を示すものとして、平成16年12月15日付け「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書」(平成16年報告書)を作成・公表した。平成16年報告書には、概要、以下の内容が記載されている。 (ア) 生活扶助基準の評価検証等について a 評価・検証 水準均衡方式を前提とする手法により、勤労3人世帯の生活扶助基準につ 年報告書には、概要、以下の内容が記載されている。 (ア) 生活扶助基準の評価検証等について a 評価・検証 水準均衡方式を前提とする手法により、勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であったが、今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行 う必要がある。なお、生活扶助基準の検証に当たっては、平均的に見れば、勤労基礎控除も含めた生活扶助基準額が一般低所得世帯の消費における生活扶助相当額よりも高くなっていること、また、各種控除が実質的な生活水準に影響することも考慮する必要がある。 そして、これらの検証に際しては、地域別、世帯類型別等に分けると ともに、調査方法及び評価手法についても専門家の知見を踏まえることが妥当である。同時に、捕捉率(生活保護の受給要件を満たす世帯がどれだけ実際に生活保護を受けているか)についても検証を行う必要がある。 b 設定及び算定方法 現行の生活扶助基準の設定は3人世帯を基軸としており、また、算定については、世帯人員分を単純に足し上げて算定される第1類費(個人消費部分)と、世帯規模の経済性、いわゆるスケールメリットを考慮し、世帯人員数に応じて設定されている第2類費(世帯共同消費部分)とを合算する仕組みとされているため、世帯人員別にみると、必ずしも一般 低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていない。このため、特に次の点について改善が図られるよう、設定及び算定方法について見直しを検討する必要がある。 (a) 多人数世帯基準の是正かねてより、生活扶助基準は多人数になるほど割高に っていない。このため、特に次の点について改善が図られるよう、設定及び算定方法について見直しを検討する必要がある。 (a) 多人数世帯基準の是正かねてより、生活扶助基準は多人数になるほど割高になるとの指摘 がされているが、これは人数が増すにつれ第1類費の比重が高くな り、スケールメリット効果が薄れるためである。このため、第2類費の構成割合及び多人数世帯の換算率に関する見直しのほか、世帯規模の経済性を高めるような設定等について検討する必要がある。 (b) 単身世帯基準の設定平成15年中間取りまとめで指摘したとおり、単身世帯の生活扶助 基準についても、多人数世帯の基準と同様、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていない。また、被保護世帯の7割は単身世帯が占めていること、近年、高齢化の進展や扶養意識の変化に伴って高齢単身世帯の増加が顕著となっており、今後も更にその傾向が進むと見込まれる。これらの事情に鑑み、単身世帯については、 一般低所得世帯との均衡を踏まえて別途の生活扶助基準を設定することについて検討する必要がある。 (c) 第1類費の年齢別設定の見直し人工栄養費の在り方も含めた0歳児の第1類費や、第1類費の年齢区分の幅の拡大などについて見直しが必要である。 (イ) 級地現行級地制度については、昭和62年度から最大格差22.5%、6区分制とされているが、現在の一般世帯の生活扶助相当消費支出額をみると、地域差が縮小する傾向が認められたところである。このため、市町村合併の動向にも配慮しつつ、さらに今後詳細なデータによる検証を行った 上、級地制度全般について見直しを検討する必要がある。 (ウ) その他上記(ア)の定期的な評価を次回行う際には、今回行われた基準の見直しに つつ、さらに今後詳細なデータによる検証を行った 上、級地制度全般について見直しを検討する必要がある。 (ウ) その他上記(ア)の定期的な評価を次回行う際には、今回行われた基準の見直しに係る事項についても評価の対象とし、専門家による委員会等において詳細な分析や検証を行い、生活保護受給世帯の生活への影響等も十分調査の 上、必要な見直しを検討することが求められる。 (以上につき、甲3、4の2、乙4)⑷ 平成19年検証等の経緯ア上記⑶エ(ア)のとおり、平成16年報告書においては、生活扶助基準の定期的な検証を行う必要があるとされ、また、平成18年7月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」においては、生活 扶助基準及び級地について早急に見直しに着手し、可能な限り平成19年度に、間に合わないものについても平成20年度には確実に実施することとされるなど、現行の生活保護制度は抜本的改革が迫られているとし、早急に総合的な検討に着手し、改革を実施することとされた。 (乙5、14の1、2) イ上記アの状況を踏まえ、平成19年10月19日、級地を含む生活扶助基準の見直しについて専門的な分析・検討を行うことを目的として、厚生労働省社会・援護局長の下に生活扶助基準に関する検討会(検討会)が設置された。検討会は、学識経験者5名の委員で構成されており、同日から同年11月30日までの間、合計5回にわたり開催され、直近に実施された平成16 年の全国消費実態調査等に基づき、平成16年報告書において提言された定期的な検証のほか、生活扶助基準に関し、水準の妥当性、体系の妥当性、地域差の妥当性等について検討を行った。 (乙5、14の1、2)ウ検討会は、平成19年検証の結果に基づき、平成19 言された定期的な検証のほか、生活扶助基準に関し、水準の妥当性、体系の妥当性、地域差の妥当性等について検討を行った。 (乙5、14の1、2)ウ検討会は、平成19年検証の結果に基づき、平成19年11月30日付け 「生活扶助基準に関する検討会報告書」(平成19年報告書)を作成・公表した。平成19年報告書には、概要、以下の内容が記載されている。 (ア) 位置付け等検討会では、直近の全国消費実態調査(平成16年全国消費実態調査。 平成17年7月から平成18年11月まで随時公表されていた。検討会で は、平成19年3月以降に特別集計作業も行っている。)の結果等を用い て、主に統計的な分析を基に、専門的、かつ、客観的に評価・検証を実施した。厚生労働省において生活扶助基準の見直しを行う場合には、平成19年報告書の評価・検証の結果を参考とされるよう期待する。 (イ) 生活扶助基準の評価・検証a 評価・検証の方法 生活扶助基準の評価・検証を適切に行うためには、国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別及び地域別等の様々な角度から詳細に分析することが適当である。 なお、実際の生活扶助基準の設定に当たっては、実情に応じて、全国 消費実態調査以外のデータ等も適時適切に参照することも必要である。 b 生活扶助基準の水準(a) 基本的な考え方生活扶助基準の水準は、健康で文化的な最低限度の生活を維持することができるものでなければならず、その具体的内容は、経済的・文 化的な発達の程度のほか、国民の公平感や社会通念等に照らして総合的に決まる。実際の生活扶助基準の設定に当たっては、水準均衡方式が採用されていることから、その水準は、国民の消 容は、経済的・文 化的な発達の程度のほか、国民の公平感や社会通念等に照らして総合的に決まる。実際の生活扶助基準の設定に当たっては、水準均衡方式が採用されていることから、その水準は、国民の消費実態との関係、あるいは本人の過去の消費水準との関係で相対的に決まるものと認識されている。したがって、生活扶助基準の水準に関する評価・検証 に当たっては、これらの点を総合的にみて妥当な水準となっているかという観点から行うことが必要である。 平成16年検証では、生活扶助基準を改定する際に従前から3人世帯(33歳、29歳、4歳)を標準としてきたことを踏まえ、夫婦子1人の勤労3人世帯の第1・十分位層の消費水準と生活扶助基準額と を比較し、均衡が図られているかどうかの検討が行われたが、平成1 9年検証では、生活保護受給世帯のうち、3人世帯が5.5%(平成18年度平均)にすぎないことを踏まえ、夫婦子1人世帯だけでなく、生活保護受給世帯の74.2%(同)を占める単身世帯にも着目し、同様に評価・検証を実施した。 (b) 消費実態との比較による評価・検証 夫婦子1人(有業者あり)世帯の第1・十分位層における生活扶助相当支出額(消費支出額から生活扶助に相当しないものを除いたもの。以下同じ。)は、世帯当たり14万8781円であったのに対して、それらの世帯の平均の生活扶助基準額は、世帯当たり15万0408円であり、生活扶助基準額がやや高めとなっている。なお、第1・ 五分位層で比較すると、前者が15万3607円、後者が15万0840円であり、やや低めとなっている。 単身世帯(60歳以上の場合)の第1・十分位層における生活扶助相当支出額は、世帯当たり6万2831円であったのに対して、それらの世帯の平均の生活扶助基準額は、世帯当 であり、やや低めとなっている。 単身世帯(60歳以上の場合)の第1・十分位層における生活扶助相当支出額は、世帯当たり6万2831円であったのに対して、それらの世帯の平均の生活扶助基準額は、世帯当たり7万1209円であ り、生活扶助基準額が高めとなっている。なお、第1・五分位層で比較すると、前者が7万1007円、後者が7万1193円であり、均衡した水準となっている。 生活扶助基準額は、これまで第1・十分位層の消費水準と比較することが適当とされてきたが、①第1・十分位層の消費水準は、平均的 な世帯の消費水準に照らして相当程度に達していること、②第1・十分位層に属する世帯における必需的な耐久消費財の普及状況は、平均的な世帯と比べて大きな差はなく、また、必需的な消費品目の購入頻度は、平均的な世帯と比較しても概ね遜色ない状況にあることから、平成19年検証において、これを変更する理由は特段ないと考える (ただし、これまで比較の対象としてきた夫婦子1人世帯の第1・十 分位層の消費水準は、第3・五分位層の7割に達しているが、単身世帯(60歳以上)については、その割合が5割(第1・五分位層でみると約6割)にとどまっている点に留意する必要がある。)。なお、これまでの給付水準との比較も考慮する必要がある。 c 生活扶助基準の体系 (a) 基本的な考え方生活扶助基準の体系に関する評価・検証に当たっては、世帯構成等が異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要である。 (b) 消費実態との比較による評価・検証① 世帯人員別の基準額の水準第1・五分位層における世帯人員別の生活扶助相当支出額と比較すると、仮 要な見直しを行っていくことが必要である。 (b) 消費実態との比較による評価・検証① 世帯人員別の基準額の水準第1・五分位層における世帯人員別の生活扶助相当支出額と比較すると、仮に世帯人員が1人の世帯の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額を、それぞれ1とした場合、4人世帯は生活扶助基準額 が2.27であり、生活扶助相当支出額の1.99に比べて相対的にやや高め、5人世帯でも生活扶助基準額は2.54であり、生活扶助相当支出額の2.14に比べて相対的にやや高めとなっており、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であり、世帯人員が少ない世帯に不利になっている実態が見られる。 ② 年齢階級別の基準額の水準単身世帯の第1~第3・五分位層における年齢階級別の生活扶助相当支出額と比較すると、仮に60歳台の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額を、それぞれ1とした場合、20歳~39歳では生活扶助基準額は1.05と生活扶助相当支出額の1.09に比べて 相対的にやや低め、40歳~59歳では生活扶助基準額は1.03 と生活扶助相当支出額の1.08に比べて相対的にやや低めになっている。一方、70歳以上では生活扶助基準額は0.95と生活扶助相当支出額の0.88より相対的にやや高めであるなど消費実態からやや乖離している。 ③ 第1類費と第2類費の区分 現在の生活扶助基準は、第1類費と第2類費に分けられているが、実際の消費実態が、こうした考え方に当てはまるか評価検証を行った結果、第1類費相当支出額についても世帯人員によるスケールメリットがみられ、また、第2類費相当支出額についてもその世帯員の年齢階級別で差が見られた。したがって、第1類費と第2類 費に区分された生活扶助基準額が実際の消費実態を反映している スケールメリットがみられ、また、第2類費相当支出額についてもその世帯員の年齢階級別で差が見られた。したがって、第1類費と第2類 費に区分された生活扶助基準額が実際の消費実態を反映しているとはいえない状況となっている。 d 生活扶助基準の地域差現行の級地制度における地域差を設定した当時(昭和59年)の消費実態と直近(平成16年)の消費実態を比較すると、地域差が縮小して いる傾向が見られ、世帯類型、年齢階層等で実際の生活様式は異なるとしても、平均的には、現行の地域差を設定した当時と比較して、地域間の消費水準の差は縮小してきているといえる。 (以上につき、甲4の1、乙5)エ検討会の委員5名は、連名で、平成19年12月11日付け「『生活扶助 基準に関する検討会報告書』が正しく読まれるために」と題する書面を作成・公表した。同書面には、平成19年報告書の「これまでの給付水準との比較も考慮する必要がある」との付記(上記ウ(イ)b(b))について、生活扶助基準額の引下げについて、慎重であるべきとの意図から、検討会委員の総意により確認されたものであるものの、こうした政策的判断については、統 計分析により専門的な評価・検証を行うとの検討会の目的(上記イ)の範囲 を超えるものであるとして、今後、行政当局、あるいは政治の場において、総合的に判断されるべきものである旨記載されている。 (甲5)⑸ 基準部会による平成25年検証等ア生活扶助基準の水準について、平成16年報告書において、今後、生活 扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある旨の指摘がされ(上記⑶エ(ア))、これを受けて平成19年検 得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある旨の指摘がされ(上記⑶エ(ア))、これを受けて平成19年検証が行われたことを踏まえ、平成19年検証に引き続き、学識経験者による専門的かつ客観的な検証を行うため、平成23年2月10日、 社会保障審議会の了承を経て、同審議会の下に常設の部会として基準部会が設置された。 (甲6、乙6、21)イ基準部会は、学識経験者8名で構成されており、平成23年4月19日から平成25年1月18日までの間、合計13回にわたって開催され(平 成25年検証)、同日付け「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(平成25年報告書)を取りまとめた。平成25年報告書には、概要、以下の内容が記載されている。 (ア) 基準部会の役割と検証概要a 今回の検証方法に至る経緯と今回の基準部会の役割 平成16年検証及び平成19年検証における検討を踏まえ、基準部会としては、年齢階級別、世帯人員別、級地別に生活扶助基準額と消費実態の乖離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行った。 b 検証方針と検証概要 (a) 平成25年検証においては、生活保護において保障すべき健康で 文化的な最低限度の生活水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものとされてきたことから、生活扶助基準と対比する一般低所得世帯として、第1・十分位層を設定した。 その上で、様々な世帯構成の基準額を算出する際に基本となる年齢、世帯人員及び地域別の基準額が第1・十分位層の消費実態を十分 反映しているかについて、より詳細な検証を行うことにした。その際、仮に第1・十分位層の全てが生活保護 額を算出する際に基本となる年齢、世帯人員及び地域別の基準額が第1・十分位層の消費実態を十分 反映しているかについて、より詳細な検証を行うことにした。その際、仮に第1・十分位層の全てが生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして、年齢、世帯人員体系及び級地の生活扶助基準額の水準への影響を評価する方法を採用した。 (b) 平成25年検証では、全国消費実態調査の調査客体には10代以 下の単身世帯がほとんどおらず、10代以下の世帯の消費を正確に計測できないという限界があり、平成25年検証の結果につき回帰分析を用いた結果と概ね遜色がないかどうかを確認するものとしたことから、一部統計的分析手法である回帰分析を採用していた。 (イ) 検証に使った統計データ 平成25年検証では、国民の消費実態を世帯構成別に細かく分けて分析する必要があるため、平成21年全国消費実態調査の個票データを用いた。 平成25年検証は、様々な世帯構成に対する基準の展開の妥当性を指数によって把握しようとするものである。この指数は、第1・十分位層の世 帯の生活扶助相当支出を用いて算出した。第1・十分位層の世帯を用いた理由は以下のとおりである。 a 生活扶助基準を国民の健康で文化的な最低限度の生活水準として考えた場合、指数を全分位の所得階層(全世帯)あるいは中位所得階層(第3・五分位層)等から算出することも可能だが、これまでの検証に倣い、 生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いること が現実的であると判断したことb 第1・十分位層の平均消費水準は、中位の所得階層の約6割に達していることc 国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位層における普及状況は、中 断したことb 第1・十分位層の平均消費水準は、中位の所得階層の約6割に達していることc 国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位層における普及状況は、中位所得階層と比べて概ね遜 色なく充足されている状況にあることd 全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位層の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向であるものの、高所得階層を除くその他の十分位層の傾向をみても等しく減少しており、特に第1・十分位層が減少しているわけではないこと eOECD(経済協力開発機構)の国際基準によれば、等価可処分所得(世帯の可処分所得を、スケールメリットを考慮して世帯人員の平方根で除したもの)の中位値(全データの真中の値)の半分に満たない世帯は相対的貧困層であるとされる。平成21年全国消費実態調査における等価可処分所得の中位値は約270万円であるが、第1・十分位層の等 価可処分所得は平均92万円、最大135万円となっている。これは、第1・十分位層の大部分はOECDの基準では相対的貧困層以下にあることを示していることf 分散分析等の統計的手法により検証したところ、各十分位層間のうち、第1・十分位層と第2・十分位層の間において消費が大きく変化し ており、他の十分位層の世帯に比べて消費動向が大きく異なると考えられること(ウ) 検証手法a 生活扶助基準の体系(年齢・世帯人員)(a) 年齢階級別の基準額の水準 年齢階級別に設定されている生活扶助基準の第1類費について、異 なる年齢階級間の比率(指数)が、消費実態と比べてどれほどの乖離があるかを検証した。その際、10代以下の消費を正確に把握できないことを踏まえ、今回の検証では、10代以下の者がいる複数人世帯のデー なる年齢階級間の比率(指数)が、消費実態と比べてどれほどの乖離があるかを検証した。その際、10代以下の消費を正確に把握できないことを踏まえ、今回の検証では、10代以下の者がいる複数人世帯のデータも用いて、10代以下の者も含めた各年齢階級の消費水準を計測できるよう統計的分析手法である回帰分析を採用した。 分析に際しては、スケールメリットが最大に働く場合と最少に働く場合のそれぞれの想定に応じた2種類の第1・十分位層を設定し、それぞれを用いて算出された指数の平均値を採用した。 (b) 世帯人員別の基準額の水準平成25年検証では、第1類費相当支出及び第2類費相当支出ごと に、各世帯人員別の平均消費水準を指数化し(単身世帯を1とする。)、現行の基準額を同様に指数化したものと比較した。なお、第1類費相当支出のスケールメリットについては、上記(a)で求められた年齢階級に応じた消費の指数を用いて、世帯人員全員が実際の年齢にかかわらず平均並みの消費をする状態に補正することにより、年齢の影響を 除去し、世帯人員による影響のみを評価できるようにした。 b 生活扶助基準の地域差平成25年検証では、世帯人員別の検証と同様に、平成19年検証の考え方を用いて集計データより平均値を求め、各級地別に1人当たり生活扶助相当の平均消費水準を指数化(1級地-1を1とする。)したも のと、現行の基準額を同様に指数化したものとを比較した。なお、指数化に当たっては、第1類費相当支出部分については世帯人員体系の検証と同様に年齢の影響を除去するとともに、上記a(b)の過程で求められる世帯人員に応じた消費の指数で第1類費相当支出及び第2類費相当支出の合計の消費を調整することにより世帯人員による消費水準の相 違の影響を除去し、地域差による影響 上記a(b)の過程で求められる世帯人員に応じた消費の指数で第1類費相当支出及び第2類費相当支出の合計の消費を調整することにより世帯人員による消費水準の相 違の影響を除去し、地域差による影響のみを評価できるようにした。 (エ) 検証結果と留意事項a 検証結果(a) 年齢階級別(第1類費)の基準額の水準0歳~2歳の生活扶助相当支出額を1としたときの各年齢階級別の指数は、生活扶助基準額では0歳~2歳が0.69、3歳~5歳が 0.86、6歳~11歳が1.12、12歳~19歳が1.37、20歳~40歳が1.31、41歳~59歳が1.26、60歳~69歳が1.19、70歳以上が1.06となっている。他方、生活扶助相当支出額は、同じ順に1.00、1.03、1.06、1.10、1.12、1.23、1.28、1.08となっている。このように、 年齢階級別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位層の消費実態による指数を比べると、各年齢階級間の指数に乖離が認められた。 (b) 世帯人員別(第1類費及び第2類費)の基準額の水準第1類費の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの各世帯人員別の指数は、生活扶助基準額では単身世帯が0.88、2 人世帯が1.76、3人世帯が2.63、4人世帯が3.34、5人世帯が3.95となっている。他方、生活扶助相当支出額では同じ順に1.00、1.54、2.01、2.34、2.64となっている。 このように、第1類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位層の消費実態による指数とを比べると、世帯人員が 増えるにつれて乖離が拡大する傾向が認められた。 同様に、第2類費の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの各世帯人員別の指数は、生活扶助基準 態による指数とを比べると、世帯人員が 増えるにつれて乖離が拡大する傾向が認められた。 同様に、第2類費の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの各世帯人員別の指数は、生活扶助基準額では単身世帯が1. 06、2人世帯が1.18、3人世帯が1.31、4人世帯が1.35、5人世帯が1.36となっている。他方、生活扶助相当支出額で は同じ順に1.00、1.34、1.67、1.75、1.93とな っている。このように第2類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位層の消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるにつれて乖離が拡大する傾向が認められた。 (c) 級地別の基準額の水準1級地-1の生活扶助相当支出額を1としたときの各級地別の指 数は、生活扶助基準額では1級地-1が1.02、1級地-2が0. 97、2級地-1が0.93、2級地-2が0.88、3級地-1が0.84、3級地-2が0.79となっている。他方、生活扶助相当支出額では同じ順に1.00、0.96、0.90、0.90、0. 87、0.84となっている。このように、級地別の生活扶助基準額 による指数と第1・十分位層の消費実態による指数とを比べると、消費実態の地域差の方が小さくなっている。 (d) 年齢・世帯人員・地域の影響を考慮した場合の水準① 上記(a)から(c)までの検証結果を踏まえ、年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数を反映した場合の影響は以下のとおり、世帯員の 年齢、世帯人員、居住する地域の組み合わせにより、さまざまなものとなる。 例えば、現行の生活扶助基準額(各種加算部分を含む。)と検証結果を完全に反映した場合の平均値を個々の世帯構成ごとにみると、夫婦と18歳未満の子1人世帯では、年齢による影響が現行の なものとなる。 例えば、現行の生活扶助基準額(各種加算部分を含む。)と検証結果を完全に反映した場合の平均値を個々の世帯構成ごとにみると、夫婦と18歳未満の子1人世帯では、年齢による影響が現行の基準 額に比べて-2.9%、世帯人員による影響が-5.8%、地域による影響が0.1%でこれらを合計した影響が-8.5%となった。 同様に夫婦と18歳未満の子2人世帯では同じ順に-3.6%、-11.2%、0.2%で合計-14.2%となった。60歳以上の単身世帯では同じ順に2.0%、2.7%、-0.2%で合計4. 5%となった。共に60歳以上の高齢夫婦世帯では同じ順に2. 7%、-1.9%、0.7%で合計1.6%となった。20代~50代の若年単身世帯では同じ順に-3.9%、2.8%、-0.4%で合計-1.7%となった。母親と18歳未満の子1人の母子世帯では同じ順に-4.3%、-1.2%、0.3%で合計-5.2%となった。 ② 厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、平成25年報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。なお、その際には現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響につ いても慎重に配慮されたい。 b 検証結果に関する留意事項(a) 平成25年検証における検証手法は、平成19年報告書において指摘があった年齢階級別、世帯人員別、級地別に、生活扶助基準の展開と一般低所得世帯の消費実態の間にどの程度乖離が生じているか を詳細に分析したものである。これにより、個々の生活保護受給世帯を構成する世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の様々な組合せによる生活扶助基準の 帯の消費実態の間にどの程度乖離が生じているか を詳細に分析したものである。これにより、個々の生活保護受給世帯を構成する世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の様々な組合せによる生活扶助基準の妥当性について、よりきめ細やかな検証が行われたことになる。しかし、年齢、世帯人員の体系、居住する地域の組合せによる基準の展開の相違を消費実態に基づく指数に合わせたとし てもなお、その値と一般低所得世帯の消費実態との間には、世帯構成によって様々に異なる差が生じ得る。こうした差は金銭的価値観や将来見込みなど、個々人や個々の世帯により異なり、かつ、消費に影響を及ぼす極めて多様な要因により生ずると考えられる。そして、具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは現時点では 明確に分析ができないこと、特定の世帯構成等に限定して分析する際 にサンプルが極めて少数になるといった統計上の限界があることなどから、全ての要素については分析・説明に至らなかった。 (b) 平成25年検証で採用した年齢、世帯人員、地域の影響を検証する手法についても、委員による専門的議論の結果得られた透明性の高い一つの妥当な手法である一方、これまでの検証手法との継続性、整 合性にも配慮したものであることから、これが唯一の手法ということでもない。さらに、基準部会の議論においては、国際的な動向も踏まえた新たな最低基準についての探索的な研究成果の報告もあり、将来の基準の検証手法を開発していくことが求められる。今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を 考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある。 (c) 全所得階層における年間収入総額に占める各所得五分位及び十分位の年間収入総額の構 、今回の検証結果を 考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある。 (c) 全所得階層における年間収入総額に占める各所得五分位及び十分位の年間収入総額の構成割合の推移を見ると、中位所得階層である第3・五分位層の占める割合及び第1・十分位層の占める割合が共に減 少傾向にあり、その動向に留意しつつ、これまで生活扶助基準の検証の際参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については、なお今後の検証が必要である。とりわけ、第1・十分位層にとっては、全所得階層における年間収入総額に占める当該分位の年間収入総額の構成割合にわずかな減少があっても、その影響は相対的に大きいと考えら れることに留意すべきである。また、現実には第1・十分位層には保護基準以下の所得水準で生活している者も含まれることが想定される点についても留意が必要である。 (d) 今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代 間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する 必要がある。 (以上につき、甲6、乙6)ウ平成25年報告書のうち、上記イ(エ)a(d)②の記載は、平成25年1月16日に開催された第12回基準部会において、原案における「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結 果を考慮した上で、他に合理的説明が可能な経済指標などがあれば、それらについても根拠を明確にして改定されたい」との記載について、厚生労働省の職員から、政府が発表する経済指標(例えば、消費者物価指数や賃金の動向等)、誰がみても数字として固まっているものを加味することが認められる旨の説明がされたが、基準部会の委 記載について、厚生労働省の職員から、政府が発表する経済指標(例えば、消費者物価指数や賃金の動向等)、誰がみても数字として固まっているものを加味することが認められる旨の説明がされたが、基準部会の委員らから、平成25年検証において検 討した要素(年齢、世帯人員、級地)ではなく、消費者物価指数や賃金の動向については何も検討しておらず、消費品目で物価指数が変わってくることへの留意も必要であるため、全国一律である消費者物価指数を当てはめて生活扶助基準を改定することには非常に慎重に考える必要があるとし、「改定されたい」との記載を報告書に記載できない旨の意見が出されるな どしたことから、平成25年報告書においては、上記原案の記載は修正・変更された上で取りまとめられた。 (甲36、121、乙24、57)⑹ 本件改定に至る経緯等ア生活扶助基準の改定状況等 (ア) 厚生労働大臣は、昭和59年4月に水準均衡方式を採用した後、同方式に基づいて生活扶助基準の改定を行い、昭和59年度から平成12年度までは生活扶助基準額を増額する改定をし、平成13年度及び平成14年度は前年度のまま据え置くこととし、平成15年度及び平成16年度は生活扶助基準額を減額する改定(改定率は、平成15年度が99. 1%、平成16年度が99.8%である。)をし、平成17年度から平成 24年度までは、前年度のまま据え置くこととした。 (イ) 厚生労働省社会・援護局保護課は、平成17年度から平成24年度まで、生活扶助基準額を据え置くこととした理由について、各年度に発行された「生活と福祉」において、以下のとおり説明している。 a 平成17年度から平成19年度まで 当該年度の政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの 年度に発行された「生活と福祉」において、以下のとおり説明している。 a 平成17年度から平成19年度まで 当該年度の政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、据え置くこととした。 b 平成20年度平成19年検証の結果(平成19年報告書)を基礎としつつ、現下の 原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めるため、据え置くこととした。 c 平成21年度平成20年度に生活扶助基準額を据え置いた上で、その後の物価、家計消費の動向を見ると、平成20年2月以降の生活関連物資を中心とし た物価上昇は、国民の家計に大きな影響を与えており、また、「百年に一度」と言われる同年9月以降の世界的な金融危機は実体経済へ深刻な影響を及ぼしており、国民の将来不安が高まっている状況にあると考えられ、このような現下の社会経済情勢に鑑み、平成21年度も、平成20年度に引き続き生活扶助基準の見直しを行わないこととし、生活扶助 金額を据え置くこととした。 d 平成22年度完全失業率が高水準で推移するなど、現下の厳しい経済・雇用状況を踏まえ、国民生活の安心が確保されるべき状況にあることに鑑み、据え置くこととした。 e 平成23年度及び平成24年度 これまでの基準の経緯を踏まえ、現在の経済、雇用情勢等を総合的に勘案した上で、据え置くこととした。 (以上につき、乙10、乙72から79まで)イ平成17年以降の経済指標等(ア) 完全失業率は、平成17年が4.4%、平成18年が4.1%、平成 19年が3.8%、平成20年が4.0%、平成21年が5.1%、平成22年が5.0%、平成23年が4.6%、平成24年が4.3%である。 (イ) 一般勤労者 .4%、平成18年が4.1%、平成 19年が3.8%、平成20年が4.0%、平成21年が5.1%、平成22年が5.0%、平成23年が4.6%、平成24年が4.3%である。 (イ) 一般勤労者世帯(事業所規模5人以上)の1人平均月間現金支給総額に係る前年比指数割合は、平成17年が0.6%、平成18年が0.3%平成19年が-1.0%、平成20年が-0.3%、平成21年が-3. 9%、平成22年が0.5%、平成23年が-0.2%、平成24年が-0.7%である。 (ウ) 消費者物価上昇率(全国)の前年比指数割合は、平成17年が-0. 3%、平成18年が0.3%、平成19年が0.0%、平成20年が1. 4%、平成21年が-1.4%、平成22年が-0.7%、平成23年が -0.3%、平成24年が0.0%である。 (エ) 全国勤労者世帯家計収支(前年(同期)比、名目値)は、平成17年が-1.3%、平成18年が0.2%、平成19年が0.6%、平成20年が1.0%、平成21年が-3.0%、平成22年が0.5%、平成23年が-2.0%、平成24年が1.6%である。 (以上につき、乙11)ウ厚生労働省内の説明厚生労働省社会・援護局保護課は、平成25年1月頃、「生活保護制度の見直しについて」と題する書面を作成し、同書面を用いて内閣官房副長官に説明した。同書面には、概要、現行の基準に平成25年検証の結果をそのま ま反映した場合には、夫婦子1人世帯や夫婦子2人世帯、単身世帯、母子世 帯で減額となるが、高齢単身世帯及び高齢夫婦世帯で増額となるとし、平成25年検証の結果を2分の1の比率で反映させた上で平成20年から平成23年までの物価動向を勘案すると、夫婦子1人世帯や夫婦子2人世帯、単身世帯、母子世帯のほか、高齢単 夫婦世帯で増額となるとし、平成25年検証の結果を2分の1の比率で反映させた上で平成20年から平成23年までの物価動向を勘案すると、夫婦子1人世帯や夫婦子2人世帯、単身世帯、母子世帯のほか、高齢単身世帯及び高齢夫婦世帯も減額となり、生活扶助基準の見直しによる財政効果が3年間で847億円に上る旨が記載 されている。 厚生労働省は、平成25年2月19日、全国厚生労働関係部局長会議を実施し、概要、以下の内容が記載されている「生活保護基準の見直しについて」と題する書面を配布した。同書面には、概要、以下の内容が記載されている。 (ア) 生活保護基準の見直しの考え方 ①基準部会における検証結果を踏まえた年齢・世帯人員・地域差による影響を調整し、②前回見直し(平成20年)以降、デフレ傾向が続いているため、物価の動向を勘案し、その起点は、平成19年検証の結果を踏まえ、平成20年以降とし、生活扶助基準額の見直しを行い、③その見直しに当たっては、激変緩和措置として、現行基準からの増減幅は±10%を 限度とし、その見直しは平成25年度から3年間をかけて実施することとする。 (イ) 生活扶助基準等の見直しの影響額①今回の基準部会における検証結果を踏まえ、年齢・世帯人員・地域差による影響を調整(財政効果:90億円)し、②前回見直し(平成20年) 以降の物価の動向を勘案(財政効果:510億円)し、別途、期末一時扶助についての見直し(財政効果:約70億円)をすることで、平成25年から平成27年までの3年間の効果額が約670億円になる(平成25年度効果額:約150億円)。 (ウ) 個々の世帯に着目した見直しの概要 物価の下落を勘案した調整については、受給者全員に影響する。 しかし、体系・級地等の「歪み」についてゆが 5年度効果額:約150億円)。 (ウ) 個々の世帯に着目した見直しの概要 物価の下落を勘案した調整については、受給者全員に影響する。 しかし、体系・級地等の「歪み」についてゆがみ調整が行われることにより、70%の該当世帯における見直し幅は、物価の下落幅(平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIとの変化率-4.78%)を下回る。また、ゆがみ調整及びデフレ調整を実施することにより、生活扶助基準額見直しによる影響分布は、現行の生活扶助基準額 に対して5%~10%の減額となるのが該当世帯の25%、0%~5%の減額となるのが該当世帯の71%、0%~2%の増額となるのが該当世帯の3%となる。 (エ) 生活扶助に係る物価の動向について生活扶助は、食費や水道光熱費といった基礎的な日常生活費を賄うもの であるため、生活扶助に相当する消費品目のCPI(物価指数)をみる必要がある。具体的には、品目別の消費者物価指数のうち、①家賃、教育費、医療費等の生活扶助以外の他扶助で賄われる品目、②自動車関係費、NHK受信料等の原則として生活保護受給世帯には生じない品目(除外品目)を除いた品目(生活扶助相当品目)を用いて、生活扶助相当CPIを算出 する。平成20年平均の生活扶助相当CPIは104.5で、平成23年平均の生活扶助相当CPIは99.5であるから、生活扶助相当CPIの変化率を算定すると、-4.78%となる。 (以上につき、甲7、57の3、甲73、乙59)エ本件改定 厚生労働大臣は、平成25年5月16日付けで本件告示を発し、これにより、本件改定をした。 また、厚生労働大臣は、平成26年告示及び平成27年告示を発し、本件改定に続いて、激変緩和措置としての生活扶助基準の改定をした。 年5月16日付けで本件告示を発し、これにより、本件改定をした。 また、厚生労働大臣は、平成26年告示及び平成27年告示を発し、本件改定に続いて、激変緩和措置としての生活扶助基準の改定をした。 (以上につき、乙1、3、29) ⑺ 本件改定の内容 本件改定は、主としてゆがみ調整及びデフレ調整を行い、その改定に当たっては激変緩和措置を講じるというものである。それぞれの内容は以下のとおりである。 アゆがみ調整平成25年検証においては、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に、第1・ 十分位層の消費実態と生活扶助基準のそれぞれについて、第1・十分位層の全ての世帯が保護を受給したと仮定した場合における1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして指数を算出し、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に、生活扶助基準額と第1・十分位層の生活扶助相当消費支出額とを指数を用いて比較することにより、生活扶助基準と消費実態の乖離につい て検証した。 ゆがみ調整は、平成25年検証の結果を、生活扶助基準の展開部分に反映させるものであるところ、厚生労働大臣は、ゆがみ調整を行うに当たり、平成25年検証において採用された手法が、専門的議論の結果から得られた透明性の高い合理的なものであると評価できるものの、当該手法が唯一の ものであると評価することはできないし、特定の世帯構成等に限定して分析する際にサンプルが極めて少数になるといった統計上の限界があると認められたこと、ゆがみ調整の影響は世帯員の年齢、世帯人員、居住地域の組合せによって様々であると見込まれ、平成25年検証の結果をそのまま反映させた場合、子どものいる世帯への影響が大きくなると予想されたこと から、2分の1処理を行った。 (以上につき、甲6、乙6)イデフレ調整 と見込まれ、平成25年検証の結果をそのまま反映させた場合、子どものいる世帯への影響が大きくなると予想されたこと から、2分の1処理を行った。 (以上につき、甲6、乙6)イデフレ調整デフレ調整は、平成20年以降、一般国民の消費水準が下落する一方で、生活扶助基準については改定が行われなかった結果、同年以降の物価下落 (デフレ)によって、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増 加したという経済状況に鑑み、一般国民との間の不均衡を是正するため、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIを用いて物価の変化率(-4.78%)を算定し、この数値をゆがみ調整がされた生活扶助基準額に乗じることにより行うものである。 (ア) 平成20年の生活扶助相当CPI 平成20年の生活扶助相当CPIは、平成22年を基準時とする総務省CPIの指数品目のうち、平成20年(平成17年基準)においても総務省CPIの指数品目とされていた品目から、除外品目を除いた485品目の生活扶助相当品目を指数品目としており、これらの指数品目のウエイトの総和は6189である。 また、上記の指数品目について基準時である平成22年の価格を100とした場合の平成20年の価格指数に当該品目のウエイト(平成22年基準)を乗じたものの総和は64万6627.9であり、これを上記のウエイトの総和(6189)で除することにより、平成20年の生活扶助相当CPIが104.5(小数点第二位四捨五入。以下同じ)と算出された。 (イ) 平成23年の生活扶助相当CPI平成23年の生活扶助相当CPIは、平成22年を基準時とする総務省CPIの指数品目から、除外品目を除いた517品目の生活扶助相当品目を指数品目としており、これらの指数品目 3年の生活扶助相当CPI平成23年の生活扶助相当CPIは、平成22年を基準時とする総務省CPIの指数品目から、除外品目を除いた517品目の生活扶助相当品目を指数品目としており、これらの指数品目のウエイトの総和は6393である。 また、上記の指数品目について基準時である平成22年の価格を100とした場合の平成23年の価格指数に当該品目のウエイト(平成22年基準)を乗じたものの総和は63万5973.1であり、これを上記のウエイトの総和(6393)で除することにより、平成23年の生活扶助相当CPIが99.5と算出された。 (以上につき、乙27、28) ウ激変緩和措置生活保護受給世帯に対する激変緩和措置として、ゆがみ調整につき平成25年検証の反映比率を2分の1としたほか、平成25年度から3年間をかけて段階的に実施し、見直しの影響を一定程度に抑える観点から、現行の生活扶助基準からの増減幅を±10%を限度とする措置を講じた。 (甲7、73、乙59)⑻ 本件改定後の基準部会による検証基準部会は、平成28年5月から平成29年12月までの間、合計15回開催し、①生活扶助基準に関する検証、②有子世帯の扶助・加算に関する検証、③勤労控除及び就労自立給付金の見直し効果の検証、④級地制度に関する検 証、⑤その他の扶助・加算に関する検証、⑥これまでの基準見直しによる影響の把握を主たる検討事項として議論を重ね(平成29年検証)、平成29年報告書を取りまとめた。平成29年報告書には、概要、以下の内容が記載されている。 アこれまでの基準見直しによる影響の把握 (ア) 本件改定による影響額の把握平成25年から平成27年までの生活扶助基準の見直し(本件改定)に伴う生活扶助基準額(生活扶助本体及び加算 アこれまでの基準見直しによる影響の把握 (ア) 本件改定による影響額の把握平成25年から平成27年までの生活扶助基準の見直し(本件改定)に伴う生活扶助基準額(生活扶助本体及び加算)への影響について、影響額の割合を世帯類型別にみると、高齢者世帯では「-1%以上-2%未満」が約4割を、母子世帯では「-6%以上-7%未満」が約4割を、 傷病者・障害者世帯及びその他の世帯では「-1%以上-2%未満」が約3割をそれぞれ占めていた。特に母子世帯への影響は大きく、多人数の世帯についても影響が大きい傾向が見られた。 (イ) 生活保護受給世帯の家計に与えた影響の把握生活保護受給世帯と一般世帯における平成24年度から平成26年 度にかけての各支出費目の比較については、支出割合が生活保護受給世 帯と一般世帯との間では異なるものの、経年の支出割合の推移は大きな差が見られず、本件改定による家計への影響を評価するまでには至らなかった。 イ生活扶助基準の検証(ア) 生活扶助基準の検証方針 水準均衡方式に基づき、改めて生活扶助基準と対比する一般低所得世帯として相応しい所得階層の検証を行った上で、生活扶助基準の給付水準の検証を行うとともに、平成25年検証を踏襲して、年齢、世帯人数、級地別に見た一般低所得世帯の消費実態との関係について検証を行う。 (イ) 検証に用いる統計データ 平成26年全国消費実態調査の個票データを用いた。 (ウ) 検証方法a 生活扶助基準の水準の検証については、全国消費実態調査の消費支出データを基に、変曲点の理論を用いて消費支出の変動について分析を行った。 消費支出の変動の分析に当たっては、消費に与える決定要因には所得や貯蓄等様々な要因が考えらえることを踏まえ、貯蓄の影 データを基に、変曲点の理論を用いて消費支出の変動について分析を行った。 消費支出の変動の分析に当たっては、消費に与える決定要因には所得や貯蓄等様々な要因が考えらえることを踏まえ、貯蓄の影響は消費そのものに反映されているとの考えに立った消費支出階級別の分析と、従来通りの年間収入階級別の分析の両面から分析を行い、生活扶助基準の比較対象として適切な一般低所得世帯を設定することとし た。 b モデル世帯の設定消費支出は、世帯人員数や年齢構成等によって消費の特性等が異なると考えられることから、モデル世帯を設定して、その消費支出の変動について分析を行った。 モデル世帯としては、夫婦子1人世帯と高齢夫婦世帯(65歳以上 の高齢者2人から構成される世帯)を設定した。 c データ分析消費支出階級五十分位別の消費支出データ(年間収入階級五十分位と区別するため、以下「消費第1・五十分位」などと表記する。)を分析し、支出弾力性(消費支出額が1%変化する際に、財・サービスの 各費目の消費が何%変化するかを示す指標)が1未満の消費支出費目を「固定的経費」とし、統計的分析手法である折れ線回帰分析を用いて固定的経費の支出割合が急激に変化する点を検証した。 ウ検証結果(ア) 夫婦子1人世帯の検証結果 年間収入階級別及び消費支出階級別の折れ線回帰分析の結果を基に、現行の生活扶助基準額と第1・十分位層の生活扶助相当支出額との比較を行った結果、夫婦子1人世帯の生活扶助基準額13万6495円に対し、夫婦子1人世帯の第1・十分位層の生活扶助相当支出額は、外れ値±2σ(標本全体の平均との差の絶対値が当該標本の標準偏差の2倍よ りも大きくなる標本値を外れ値として除外する。)の場合13万4254円、外れ値±3σの 十分位層の生活扶助相当支出額は、外れ値±2σ(標本全体の平均との差の絶対値が当該標本の標準偏差の2倍よ りも大きくなる標本値を外れ値として除外する。)の場合13万4254円、外れ値±3σの場合13万6638円となり、概ね均衡していた。 (イ) 高齢者世帯の検証結果消費第6・五十分位値で、固定的経費の支出割合が有意に上方に変化していることが確認され、年間収入階級五十分位別の消費支出の分析で は、第9・五十分位値を境として、その前後の回帰直線の傾きに有意な差があることが認められた。これらの分析結果には乖離が見られるが、これは、貯蓄を年収換算する方法等に何らかの課題があることに起因するものと考えられ、高齢夫婦世帯の年間収入階級別の分析の評価については課題が残る結果となった。 (ウ) 生活扶助基準の年齢、世帯人員、級地別の検証結果 夫婦子1人世帯を展開の基軸とすることとし、年齢区分別、世帯人数別及び級地別に見た生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費水準について、回帰分析を用いて指数化した上で比較を行ったところ、世帯人数別の指数について実データによる場合と回帰分析による場合との結果が異なり、この違いは理論値を導き出すための回帰式の立て方に起因す るものと考えられるが、その原因について十分に解明するには至らなかった。 エ水準均衡方式の課題夫婦子1人世帯や高齢者世帯について、展開により機械的に得られる基準額をそれぞれ世帯別の第3・五分位の平均生活扶助相当支出額と比較す ると、夫婦子1人世帯の展開後の基準額は中間所得層の消費水準の6割を超える見込みの一方で、高齢者世帯の展開後の基準額では5割台になってしまうことが見込まれることに留意が必要である。 (以上につき、乙82)⑼ 消費者物価指数の算出 は中間所得層の消費水準の6割を超える見込みの一方で、高齢者世帯の展開後の基準額では5割台になってしまうことが見込まれることに留意が必要である。 (以上につき、乙82)⑼ 消費者物価指数の算出方法等 ア消費者物価指数(CPI)(ア) 消費者物価指数は、全国の世帯が購入する財及びサービスの価格変動を総合的に測定し、物価の変動を時系列的に測定するものであり、具体的には、基準時点における家計の消費構造(品目及び各品目の消費支出の割合。ウエイトともいう。)を一定の指数(100)に固定し、これに要す る費用が物価の変動によってどう変化するかを指数値で示すものであって、消費者が購入する財とサービスの種類、品質及び購入数量の変化を伴った生計費の変化を測定するものではない。 (イ) 物価指数の代表的な指数には、ロウ指数、ラスパイレス指数、パーシェ指数等がある。 a ロウ指数は、広く普及した一般的な指数算式の一つであり、物価比較 の対象とされる時点間において、「買い物かご」と呼ばれる消費構造(物価を測定する財及びサービスの種類及び数量)において、ある一定量の財及びサービスを購入するために要する費用の割合の変化を表す指数である。 b ラスパイレス指数は、基準時点(期首)のウエイトを用いて算出され る指数であり、比較時点において数量情報を調査する必要がないため、速報性に優れる反面、その後の消費構造の変化による影響が加味されないため、物価上昇等を過大評価する傾向(上方バイアス)があるとされる。 c パーシェ指数は、比較時点(期末)のウエイトを用いて算出される指 数であり、経済の変化に応じて常に最新のウエイトが反映される点で優れる反面、調査コストや速報性で劣り、物価上昇等を過小評価する傾向(下方バイアス 較時点(期末)のウエイトを用いて算出される指 数であり、経済の変化に応じて常に最新のウエイトが反映される点で優れる反面、調査コストや速報性で劣り、物価上昇等を過小評価する傾向(下方バイアス)があるとされている。 (以上につき、甲132、乙25、33、34、60、62、84)イ総務省CPI 総務省の作成する消費者物価指数(総務省CPI)は、基準時をウエイト参照時とする固定基準年方式のラスパイレス指数が用いられ、全国について、以下のとおり、総合及び品目別の指数が作成されるほか、勤労者世帯について年間収入階級五分位階級別に算出されたウエイトに基づき、各中分類の指数が作成される。 (ア) 指数品目総務省CPIの算出に採用される品目(指数品目)は、家計の消費支出の中における重要性、価格変動の代表性の有無、継続調査の可能性等の観点から選定されており、平成22年の総務省CPIの品目は、合計588品目である。これらの品目は、10大費目(食料、住居、光熱・水道、家 具・家事用品、被服及び履物、保健医療、交通・通信、教育、教養娯楽、 諸雑費)に分類され、それぞれの費目内において更に中分類に分類され、中分類から更に小分類に分類される。 また、10大費目のうち「家具・家事用品」の費目の中には、中分類として、「家庭用耐久財」があり、その中の小分類として「電子レンジ」、「電気冷蔵庫」等の品目があり、「教養娯楽」の費目の中には、中分類として、 「教養娯楽用耐久財」があり、その中の小分類として、「テレビ」、「パソコン(デスクトップ型)」、「パソコン(ノート型)」、「カメラ」等の品目がある。 (イ) ウエイト総務省CPIを算出するに当たって用いられる品目別のウエイトは、主 に家計調査によって得られた1世 スクトップ型)」、「パソコン(ノート型)」、「カメラ」等の品目がある。 (イ) ウエイト総務省CPIを算出するに当たって用いられる品目別のウエイトは、主 に家計調査によって得られた1世帯当たり品目別消費支出金額を用いて作成する。ウエイト参照時(基準時)における総消費支出額を1万として、各品目の支出額を比例換算した値(1万分比)により表示し、5年に一度、基準時及び指数品目の改定の際に併せて改定される。 (ウ) 価格 品目の価格には、原則として、小売物価統計調査によって得られた市町村別、品目別の小売価格を用いる。ただし、「パソコン(デスクトップ型)」、「パソコン(ノート型)」及び「カメラ」の3品目については、全国の主要な家電量販店のPOS情報から得られる全製品の販売価格を用いる。 (エ) 品質調整 小売物価統計調査では、毎月継続して調査しているものの、現実には、商品の製造中止や出回りの変化などに伴う銘柄の改正、あるいは調査地区の変更などが行われ、このような場合には、当月価格と前月価格との間に生ずる価格差の中には、品質の変化など物価変動以外の要因による価格差が含まれることがある。そのため、消費者物価指数の算出に当たっては、 物価変動以外の要因による価格差を除去して比較時価格を算出する必要 があり、この調整を品質調整という。 品質調整には複数の方法があるが、平成22年指数品目のうち、「パソコン(デスクトップ型)」、「パソコン(ノート型)」及び「カメラ」の3品目については、技術革新が著しく、市場の製品サイクルが短いため、従来の価格収集方法では同質の製品を継続的に調査することが困難であるこ とから、上記(ウ)の方法により得られた販売価格のほか、販売台数、各機種の特性などを用いて、ヘドニック法 イクルが短いため、従来の価格収集方法では同質の製品を継続的に調査することが困難であるこ とから、上記(ウ)の方法により得られた販売価格のほか、販売台数、各機種の特性などを用いて、ヘドニック法により品質調整を行って品目別価格指数を算出している。具体的には、上記3品目のそれぞれについて、各機種の平均販売価格を被説明変数とし、ハードディスクの容量や実装メモリ容量、光学ズームの倍率など各機種の特性及び販売時点などを説明変数と する片対数型の回帰モデルを設定し、全国で当月と前月に販売された全機種について、同回帰モデルにより各機種の総販売台数をウエイトとして回帰計算を行って各月の価格推計式を求め、この価格推計式から、前月を基準とする連環指数(ある時点についてその直前の時点を基準とする指数をいう。)を算出し、これを前月の指数(基準時の指数〔=100〕に前月 までの連環指数を順次乗じた指数)に乗じて当月の連鎖指数を算出する。 (オ) 欠測値の処理特定の指数品目について、比較時価格がやむを得ず「欠」となった場合は、その品目の指数(比較時価格が「欠」となっているので計算できない。)及びウエイトは除外して計算する。 比較時価格が「欠」となった品目の価格変動は、品目から類への合算段階では、結果として類内の他の品目より求められた類指数によって代替されることとなる。 なお、下位類から上位類への計算では、各類のウエイトが変動しないように、「欠」となった品目のウエイトも含めた類ウエイトを用いる。 (カ) 指数の接続 総務省CPIは、5年ごとに基準時や指数品目等の改定がされるところ、基準時等の改定に併せて同改定前の指数を同改定後の指数に換算し、接続している。同換算は、地域並びに総合、類及び品目ごとに、各基準年を10 CPIは、5年ごとに基準時や指数品目等の改定がされるところ、基準時等の改定に併せて同改定前の指数を同改定後の指数に換算し、接続している。同換算は、地域並びに総合、類及び品目ごとに、各基準年を100とする指数を当該基準系列の下における次の基準年に当たる年の平均指数で除した上で100を乗ずることにより行われる。 (以上につき、甲132、乙25、33)ウ総務省CPIの推移(ア) 平成22年の総務省CPIを100とすると、平成16年から平成23年までの総務省CPIの推移は次のとおりとなり、平成20年の総務省CPIと平成23年の総務省CPIの変化率は、-2.35%となる。 総合食料光熱・水道家具・家事用品被服及び履物教養娯楽平成16年100.797.793.7114.299.5108.8平成17年100.496.894.4111.6100.2107.9平成18年100.797.397.8109.3101.0106.3平成19年100.797.698.6107.5101.6104.9平成20年102.1100.1104.5107.1102.1104.3平成21年100.7100.3100.2104.8101.2101.7平成22年100.0100.0100.0100.0100.0100.0平成23年99.799.6103.394.499.796.0(イ) 総務省が作成した「平成23年平均消費者物価指数の動向」と題する書面には、上記(ア)の総務省CPIの推移について、次の内容の記載がさ .6103.394.499.796.0(イ) 総務省が作成した「平成23年平均消費者物価指数の動向」と題する書面には、上記(ア)の総務省CPIの推移について、次の内容の記載がされている。 a 平成20年は、世界的な原油価格や穀物価格の高騰を受けて、石油製品を始め、多くの食料品目が上昇したことにより、11年ぶりに1%を 超える上昇となった。 b 平成21年は、原油価格が下落し、ガソリン及び灯油が大きく下落し、耐久消費財が引き続き下落したことなどから、1.4%の下落と、比較可能な昭和46年以降最大の下落幅となった。 c 平成22年は、ガソリン、灯油、たばこ、傷害保険料などが上昇したものの、4月から公立高等学校の授業料無償化・高等学校等就学支援金 制度が導入されたため、公立高校授業料及び私立高校授業料が大幅に下落し、耐久消費財も引き続き下落したことなどにより、総合指数は0. 7%の下落となった。食料(酒類を除く。)及びエネルギーを除く総合は1.2%の下落と、比較可能な昭和46年以降最大の下落幅となった。 d 平成23年は、原油価格の値上がりなどにより、ガソリン、電気代な どが上昇したものの、耐久消費財が引き続き下落していることなどにより、総合指数は0.3%の下落となった。主な内訳を見ると、耐久消費財については、地上デジタル放送への移行で需要が減ったことなどにより、テレビは30.9%の下落、技術革新や性能向上などにより、パソコン(デスクトップ型)は39.9%、パソコン(ノート型)は24. 0%、カメラは28.0%の下落となった。 (以上につき、甲144、乙27)⑽ 家計調査及び社会保障生計調査ア家計調査家計調査は、「家計統計」を作成するため総務省統計局が毎月実施してい メラは28.0%の下落となった。 (以上につき、甲144、乙27)⑽ 家計調査及び社会保障生計調査ア家計調査家計調査は、「家計統計」を作成するため総務省統計局が毎月実施してい る統計調査であり、国民生活における家計収支の実態を把握し、国の経済政策・社会政策の立案のための基礎資料を提供することを目的とするものである。 家計調査の対象は、一部の世帯を除く全国の一般世帯であり、全国の市町村をその特性に応じて168のグループに分け、その各グループから1市 町村ずつ抽出された市町村から無作為に選定された約9000世帯(調査 対象世帯)に対し調査票を配布、回収する方法によって行われ、各世帯の支出(各支出品目並びにその数量及び金額)のほか、各世帯の収入や世帯構成が調査される。 (以上につき、乙86)イ社会保障生計調査 社会保障生計調査は、厚生労働省が実施する一般統計調査であり、生活保護受給世帯の生活実態を明らかにすることによって、保護基準の改定等、生活保護制度の企画運営のために必要な基礎資料を得るとともに、厚生労働行政の企画運営に必要な基礎資料を得ることを目的とするものである。 社会保障生計調査は、全国を地域別に10ブロックに分け、ブロックごと に都道府県・指定都市・中核市のうち1~3箇所を調査対象自治体として選定し、そこから1110世帯を抽出し、当該世帯に家計簿を記入等してもらい世帯状況や家計状況を調査するものである。生活保護受給世帯の家計収支の状況内容としては、級地、世帯類型、世帯業態(勤労、その他)及び世帯人員別に、消費支出総額とその内訳(総務省CPIにおける10大費目ご と及び中分類ごとのもの)の調査が行われている。 (以上につき、甲33の1、2、乙88)⑾ 生活扶助相当 の他)及び世帯人員別に、消費支出総額とその内訳(総務省CPIにおける10大費目ごと及び中分類ごとのもの)の調査が行われている。 (以上につき、甲33の1、2、乙88) 生活扶助相当CPIのウエイトと社会保障生計調査の結果 ア生活扶助相当CPI平成20年の生活扶助相当CPI及び平成23年の生活扶助相当CPIの算定に当たっては、平成22年の家計調査の結果に基づくウエイトが算定で用いられているところ、各年の生活扶助相当CPIの算定における10大費目のウエイト及びその割合は以下のとおりである。 平成20年生活扶助相当CPI ウエイト割合 食料 2415 39.0% 住居 0.2% 光熱・水道 11.4% 家具・家事用品 5.3% 被服及び履物 6.1% 保険医療 3.0% 交通・通信 8.7% 教育 1.6% 教養娯楽 1024 16.5% 諸雑費 8.1% 合計 6189 100.0% (以上につき、乙28) イ社会保障生計調査に基づく消費構造 社会保障生計調査の結果に基づく平成22年度(平成22年4月1日から平成23年3月31日まで)の生活保護受給世帯の10大費目の消費支出金額(実数)及び構成割合は以下のとおりである。 2人以上世帯単身世帯 づく平成22年度(平成22年4月1日から平成23年3月31日まで)の生活保護受給世帯の10大費目の消費支出金額(実数)及び構成割合は以下のとおりである。 2人以上世帯単身世帯 消費支出構成割合消費支出構成割合食料51,912 円29.9%31,535 円29.3%住居30,766 円17.7%33,732 円31.3%光熱・水道17,718 円10.2%9,190 円8.5%家具・家事用品8,511 円4.9%4,221 円3.9%被服及び履物8,333 円4.8%2,790 円2.6%保険医療3,602 円2.1%2,156 円2.0% 交通・通信16,700 円9.6%7,319 円6.8%教育5,838 円3.4%--教養娯楽11,030 円6.4%6,057 円5.6%その他19,210 円11.1%10,619 円9.9%合計173,620 円100.0%107,618 円100.0%(以上につき、甲33の4) 2 争点⑴(本件改定の適法性)について⑴ 判断枠組みア生活保護法3条は、同法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないものとし、 同法8条2項は、厚生労働大臣の定める保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであるのみならず、これを超えないものでなければならないものとしている。もっとも、上記各規定にい 成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであるのみならず、これを超えないものでなければならないものとしている。もっとも、上記各規定にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その時々におけ る経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである(最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁、最高裁平成22年(行ツ)第392号、 同年(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁、最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁参照)。 したがって、生活扶助基準を改定するに際し、改定後の生活扶助基準の内容が最低限の生活の需要を満たすに十分であるか否かを判断するに当たっ ては、厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁 量権が認められるものというべきである(前掲最高裁平成24年4月2日第二小法廷判決参照)。 イまた、生活扶助基準が改定され、基準額が減額された場合、改定前の生活扶助基準に基づく生活扶助が支給されることを前提として現に生活設計を立てていた被保護者に関しては、保護基準によって具体化されていたその 期待的利益の喪失を来すものがあることも否定し得ないところである。そうすると、上記のような場合においても、厚生労働大臣は、被保護者間の公平や国の財政事情といった見地に基づく生活扶助基準の改定の必要性を踏まえつつ、被保護者のこのような期待的利益について ろである。そうすると、上記のような場合においても、厚生労働大臣は、被保護者間の公平や国の財政事情といった見地に基づく生活扶助基準の改定の必要性を踏まえつつ、被保護者のこのような期待的利益についても可及的に配慮する必要があるところ、その改定に係る具体的な方法等について、激変緩和措置 を講ずることなどを含め、上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているものというべきである(前掲最高裁平成24年4月2日第二小法廷判決参照)。 ウ生活扶助基準の改定の前提となる最低限度の生活の需要に係る評価や被保護者の期待的利益についての可及的な配慮は、上記ア及びイのような専 門技術的な考察に基づいた政策的判断であって、生活扶助基準の改定については、それまでも各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて検討がされてきたところである。これらの経緯等に鑑みると、生活扶助基準の引下げを内容とする生活扶助基準の改定は、①当該改定の時点において、改定前の生活扶助基準が最低限度の生活の需要を満たすに足りる程度を超える ものとなっており、改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、②激変緩和措置を採るか否かについての方針及びこれを採る 場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保 護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合には、生活保護法3条、同法8条2項の規定に違反して違法になるというべきであり、上記①及び②の同大臣の裁量判断 利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合には、生活保護法3条、同法8条2項の規定に違反して違法になるというべきであり、上記①及び②の同大臣の裁量判断の適否に係る裁判所の判断に当たっては、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等の観点から審理される べきものと解される(前掲最高裁平成24年4月2日第二小法廷判決参照)。 エこの点について、原告らは、憲法、生活保護法又は社会権規約によりいわゆる制度後退禁止原則が定められており、被告において厚生労働大臣の裁量判断の過程を明らかにし、調査方法の合理性や必要な考慮要素を考慮し たことについて主張立証を尽くさない場合には、厚生労働大臣の裁量判断が不合理であることが推定されるかのような主張をする。 しかしながら、憲法25条1項及び2項は、いったん立法により権利が具体化した場合であっても、当該具体的権利の内容が権利者に不利益に変更される場合があることも当然に予定していると解されるし、生活保護法も、 保護基準が引き下げられることを前提にしている(同法8条2項参照)ことからすれば、憲法又は生活保護法において制度後退禁止原則が定められていると解することはできない。また、社会権規約2条1項は、社会権規約11条1項を始めとする各規定が定める権利について、各締結国の社会政策による保護に値するものであることを確認し、各締結国がその実現に向け て積極的に社会政策を推進すべき政治的責任を負担することを宣明するものと解され、社会権規約2条1項等を根拠に原告らが主張するような制度後退禁止原則を定めたものということもできない。 ⑵ ゆがみ調整の適否ア上記⑴アからウまでの枠組みに従って厚生労働大臣が本件改定において 会権規約2条1項等を根拠に原告らが主張するような制度後退禁止原則を定めたものということもできない。 ⑵ ゆがみ調整の適否ア上記⑴アからウまでの枠組みに従って厚生労働大臣が本件改定において ゆがみ調整を行った判断について、統計等の客観的な数値等との合理的関連 性や専門的知見との整合性の有無について検討するに、上記1の認定事実のとおり、厚生労働大臣は、平成25年検証の結果に基づき、生活保護受給世帯間の公平を図り、生活扶助基準の展開部分の適正化を図るためにゆがみ調整を行うこととし、生活扶助基準の展開部分に反映比率を2分の1として反映する内容の調整を行うこととしたものであり(認定事実⑺ア)、その具体 的手法については、平成25年検証において議論された手法を基礎にしたものといえる。 イすなわち、上記1の認定事実のとおり、平成25年検証に先立って専門委員会が取りまとめた平成16年報告書においては、世帯人員別にみると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっておらず、また、生 活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるために全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要があるとされていた(認定事実⑶エ)。そして、検討会が取りまとめた平成19年報告書においては、生活扶助基準の展開部分を第1・十分位層の世帯の消費実態と比較した場合、世帯人員別の生活扶助基準 額の水準について、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であり、世帯人員が少ない世帯に不利になっている実態が見られ、年齢階級別の基準額の水準については、20歳~39歳及び40歳~59歳では生活扶助基準額が相対的にやや低めとなっている一方で、70歳以上では相対的にやや高めであるなど消費実態と乖離し 実態が見られ、年齢階級別の基準額の水準については、20歳~39歳及び40歳~59歳では生活扶助基準額が相対的にやや低めとなっている一方で、70歳以上では相対的にやや高めであるなど消費実態と乖離しており、地域別にみると、地域間の消費水準の差は縮 小してきているとされた(認定事実⑷アからウまで)。基準部会は、平成16年報告書及び平成19年報告書の指摘を踏まえ、生活扶助基準の展開部分の適正化を図ることを目的として、平成25年検証を行ったものであり、その検証手法としても、平成21年全国消費実態調査の個票データ等を用いて、年齢階級別、世帯人員別、級地別に生活扶助基準額と消費実態の乖離を 詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数についての検証を行っ た(認定事実⑸イ)。基準部会は、平成25年検証において、年齢階級別の生活扶助基準額の指数と第1・十分位層の消費実態による指数との間に乖離が、世帯人員別の生活扶助基準額の指数と第1・十分位層の消費実態による指数との間では、世帯人員が増えるにつれて乖離が拡大する傾向を、級地別の生活扶助基準額の指数と第1・十分位層の消費実態による指数を比較する と、消費実態の地域差の方が小さくなっていることをそれぞれ確認した(認定事実⑸ア及びイ)。 厚生労働大臣は、平成25年検証における上記結果を踏まえ、生活保護受給世帯間の公平を図るべく、一般低所得世帯の消費実態を展開のための指数に反映し、生活扶助基準の展開部分の適正化を図るために同部分に算出 された改定率を乗じるものとしたのであり、その際に反映比率を2分の1とする処理を行った(ゆがみ調整)のであるから、ゆがみ調整の必要性やその基本的な手法に係る厚生労働大臣の判断が統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠く に反映比率を2分の1とする処理を行った(ゆがみ調整)のであるから、ゆがみ調整の必要性やその基本的な手法に係る厚生労働大臣の判断が統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くとは認められない。 ウところで、厚生労働大臣は、ゆがみ調整を行うに当たり、平成25年検証 の結果から算出される改定率をそのまま乗じる方法で反映させず、反映比率を2分の1とする処理(2分の1処理)を行っているところ、原告らは、ゆがみ調整のうち2分の1処理の部分について、基準部会の検証結果を恣意的に改変したという点で明らかに不合理であるし、その内容としても、ゆがみ調整による生活扶助基準の改定の内容に重大な影響を及ぼし、その本質部分 を改変する措置であって、ゆがみ調整の趣旨を没却するものであり、また、多くの世帯へ不利益を与える処理になっており、不合理である旨主張する。 しかしながら、基準部会における検証結果は、厚生労働大臣の判断を法的に拘束するものではなく、同大臣が判断する際の考慮事情として位置付けられるものであって、平成25年検証の結果に基づいて生活扶助基準の改 定を行う場合に、その結果をどの範囲で、あるいは、どの程度反映するかに ついては、同大臣の専門技術的かつ政策的な見地からの裁量判断に委ねられている。 また、上記1の認定事実のとおり、基準部会は、平成25年報告書において、平成25年検証の結果をそのまま反映した場合には、現行の基準額と比べ、夫婦と18歳未満の子1人世帯では-8.5%、夫婦と18歳未満の子 2人世帯では-14.2%、母親と18歳未満の子1人の母子世帯では-5.2%となる(認定事実⑸イ(エ)a(d)①)など、子どものいる世帯に対する減額の影響が大きくなると予想されるとし、留意事項として、平成25 は-14.2%、母親と18歳未満の子1人の母子世帯では-5.2%となる(認定事実⑸イ(エ)a(d)①)など、子どものいる世帯に対する減額の影響が大きくなると予想されるとし、留意事項として、平成25年検証では、具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは現時点では明確に分析ができないこと、また、特定の世帯構成等に限定して分 析する際にサンプルが極めて少数になるといった統計上の限界があることなどから、全ての要素については分析・説明に至らなかったとし、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある旨指摘していたこと(認 定事実⑸イ(エ)b(a)及び(d))が認められる。 そもそも、基準部会は、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行うために社会保障審議会の下に設置された常設部会であり、2分の1処理により、生活扶助基準に不当な影響が出た場合には、その際の基準部会による検証によって是正される可能性があったといえ、厚生労働大臣は、 上記各事情を前提にゆがみ調整を行うに当たり、激変緩和措置として2分の1処理を行ったものであるから、その判断が統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くとは認められない。 エ原告らの主張について(ア) 原告らは、平成25年検証が、生活扶助基準と比較する一般低所得世 帯として、平成21年全国消費実態調査の個票データを用いて算出した 第1・十分位層の世帯を用いていることについて、水準均衡方式において比較対象となるのは一般国民生活における消費水準であったことは明らかであり、比較対象の選定に合理性がなく、また いて算出した 第1・十分位層の世帯を用いていることについて、水準均衡方式において比較対象となるのは一般国民生活における消費水準であったことは明らかであり、比較対象の選定に合理性がなく、また、最下位層との比較は、際限ない生活扶助基準の引下げを招くため、不合理である旨主張する。 しかしながら、上記1の認定事実のとおり、格差縮小方式の採用時に参 照された昭和39年中間報告においては、生活扶助基準について、第1・十分位層と生活保護階層との格差縮小を見込んだ改善を行うべきであると指摘されており(認定事実⑴イ)、また、昭和55年中間取りまとめにおいても、第1・十分位層の世帯と比較しても著しい開きがあることなどを勘案すると生活保護受給世帯の消費支出の水準は今後さらに改善を要 するとされ(認定事実⑵ア(ア))、その後の昭和58年意見具申においても、現在の生活扶助基準が一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとの所見を得た旨取りまとめられたのは、変曲点の概念を用いて検証したところ、昭和54年家計調査特別集計結果による収入階級別消費支出額(勤労者4人(有業1人)世帯)によれば、変曲点の分位が収入 階級第2.99・五十分位層にあると判断されたことに基づくとされていることからすると(認定事実⑵ウ)、平成25年検証以前の生活扶助基準の検証の際においても、第1・十分位層やこれに類する所得階層を比較対象として採用し、検証に用いていたといえる。 さらに、平成15年中間取りまとめは、生活保護において保障すべき最 低生活の水準について、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであり、具体的には、第1・十分位層の世帯の消費水準に着目することが適当であるとし、平成16年検証では、生活扶助基準との比較対象を いて、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであり、具体的には、第1・十分位層の世帯の消費水準に着目することが適当であるとし、平成16年検証では、生活扶助基準との比較対象を第1・十分位層として検証を行い(認定事実⑶ウ(ア)a及びエ)、平成19年検証においても、平成16年検証と同様に生活扶助基準 との比較対象を第1・十分位層として検証を行っている(認定事実⑷ウ(イ) b)。 このように、昭和38年中間報告以降、生活扶助基準の検証に際しては、一般低所得世帯の消費実態との比較対象について、第1・十分位層又はこれに類する所得階層としていたのであり、このような経緯を踏まえると、平成25年検証が生活扶助基準との比較対象を第1・十分位層としたこと によって専門的知見との整合性を欠くとはいえない。 (イ) また、原告らは、平成25年検証が第1・十分位層から比較対象となる生活保護受給世帯を除外せずに検証を行っていることについて、比較する2つの集団が比較の対象とする要因に関して厳密に区別されなければならないという統計学の原則に反しており、統計学上の正当性がない 旨主張する。 しかしながら、上記1の認定事実のとおり、平成25年検証は、生活扶助基準額と第1・十分位層の生活扶助相当支出額を直接に比較するものではなく、生活扶助基準額と第1・十分位層の生活扶助相当支出額をそれぞれ年齢階級別、世帯人員別(第1類費及び第2類費の別を含む。)及び級 地別に指数化した上でその消費構造を比較するものであり(認定事実⑸イ(ウ))、第1・十分位層から生活保護受給世帯を除外していなかったとしても、一般低所得世帯の消費構造の把握に支障が生じるとはいえず、上記除外をしなかったことにより統計学上の正当性が失われるともいえない。 ))、第1・十分位層から生活保護受給世帯を除外していなかったとしても、一般低所得世帯の消費構造の把握に支障が生じるとはいえず、上記除外をしなかったことにより統計学上の正当性が失われるともいえない。 (ウ) 原告らは、平成25年において採用された検証方法について、統計学 辞典等にも掲載されていない独自のものであり、基準部会の委員においても、一定の時間内に理解するのが困難なものであった旨主張する。 しかしながら、上記1の認定事実のとおり、平成25年検証は、平成19年検証における限界(全国消費実態調査の調査客体に10代以下の単身世帯がほとんどいないため、10代以下の消費を正確に把握できない)を 踏まえ、10代以下の者がいる複数人世帯のデータも用いて、10代以下 の者も含めた各年齢階級の消費水準を計測できるよう統計的分析手法である回帰分析を採用し、分析に際しては、スケールメリットが最大に働く場合(単純に世帯年収に着目)と最少に働く場合(1人当たりの世帯年収に着目)のそれぞれの想定に応じた2種類の第1・十分位層を設定し、それぞれを用いて算出された指数の平均値を採用したものであるし(認定事 実⑸イ(ウ)a(a))、同検証手法については、専門家である基準部会の委員において、従前の検証手法との継続性、整合性にも配慮した専門的議論を経た上で、それが透明性の高い一つの妥当な手法と一定の肯定的評価がされているから(認定事実⑸イ(エ)b(b))、上記方法を用いたことをもって、平成25年検証における検証方法が統計等の客観的な数値等との合理的 関連性や専門的知見との整合性を欠くともいえない。 エ小括以上によれば、平成25年検証の結果に基づきゆがみ調整を行った厚生労働大臣の判断には、2分の1処理がされていることを考慮して 関連性や専門的知見との整合性を欠くともいえない。 エ小括以上によれば、平成25年検証の結果に基づきゆがみ調整を行った厚生労働大臣の判断には、2分の1処理がされていることを考慮しても、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠いている とはいえず、その判断の過程及び手続における過誤、欠落があるともいえないから、ゆがみ調整を行った厚生労働大臣の判断について、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえない。 ⑶ デフレ調整の適否についてアデフレ調整に係る必要性 (ア) デフレ調整の必要性に関する厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるかについて検討するに、上記1の認定事実のとおり、厚生労働大臣は、平成19年検証において、夫婦子1人世帯の生活扶助基準額が同一構成世帯の第1・十分位層における生活扶助相当支出額と比べてやや高めになっていることなどが確認されたものの、平成20年度に は、原油価格の高騰が消費に与える影響を見極めるため、生活扶助基準を 改定することなく据え置いたこと(認定事実⑹ア(イ)b)、平成20年9月以降の世界的な金融危機の影響により、同年から平成21年の完全失業率、一般勤労者世帯(事業所規模5人以上)の1人平均月間現金支給総額に係る前年比指数割合、総務省CPI、全国勤労者世帯家計収支のいずれも大幅に悪化し、その傾向は平成23年まで継続し(認定事実⑹イ)、平 成20年以降の物価下落(デフレ)により、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したことから、同年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による一般国民との間の不均衡を是正するため、平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIを用いて算定した物価の変化率(- したことから、同年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による一般国民との間の不均衡を是正するため、平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIを用いて算定した物価の変化率(-4.78%)を根拠に、生活扶助基準を見直し た(認定事実⑺イ)ものといえる。 確かに、上記1の認定事実のとおり、平成16年全国消費実態調査の結果等を用いて行われた平成19年検証において、夫婦子1人(有業者あり)世帯の第1・十分位層における生活扶助相当支出額は、世帯当たり14万8781円であったのに対して、それらの世帯の平均の生活扶助基準額 は、世帯当たり15万0408円であり、生活扶助基準額がやや高めとなっており、単身世帯(60歳以上の場合)の第1・十分位層における生活扶助相当支出額は、世帯当たり6万2831円であったのに対して、それらの世帯の平均の生活扶助基準額は、世帯当たり7万1209円であり、生活扶助基準額が高めとなっているといえる(認定事実⑷ウ(イ)b(b))。 また、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界的金融危機が、実体経済に大きな影響を与え、完全失業率、一般勤労者世帯の1人平均月間現金支給総額に係る前年比指数割合、全国勤労者世帯家計収支のいずれも同年から平成21年にかけて大幅に悪化している(認定事実⑹イ)。 しかしながら、上記1の認定事実のとおり、平成20年は、同年2月以 降の生活関連物資を中心とした物価上昇(原油価格や穀物価格の高騰によ るもの)があり、石油製品を含め食品の価格高騰が引き起こされていたものであり(認定事実⑹ア(イ))、これに加えて、同年9月以降の世界金融危機といった事情により、一般勤労者世帯(事業所規模5人以上)の1人平均月間現金支給総額や全国勤労者世帯家計収支( こされていたものであり(認定事実⑹ア(イ))、これに加えて、同年9月以降の世界金融危機といった事情により、一般勤労者世帯(事業所規模5人以上)の1人平均月間現金支給総額や全国勤労者世帯家計収支(前年(同期)比、名目値)がいずれも悪化する事態が生じたものであり(認定事実⑹イ(イ)及び(エ))、 これらの影響から、平成20年の総務省CPIの総合指数は、前年比1. 4%上昇したものの、平成21年に-1.4%、平成22年に-0.7%、平成23年に-0.3%といずれも下落していたものであり、個別には、食料が、平成20年に前年比2.5%、平成21年に0.2%と上昇し、平成22年に前年比-0.3%、平成23年に-0.4%と下落し、平成 19年から平成23年までを比較すれば2%の上昇があったといえるし、光熱・水道についても、平成20年に前年比5.9%上昇した後、平成21年に前年比-4.3%、平成22年に-0.2%下落し、平成23年に前年比3.3%上昇していることから、平成19年から平成23年までを比較すると4.7%上昇したものといえる(認定事実⑼ウ)。 そうすると、総務省CPIの総合指数の単純な比較において、平成19年から平成23年にかけて下落傾向が確認できたとしても、食料費や光熱水費については、平成20年の生活必需的な品目(食料、光熱・水道)の物価上昇による影響から上昇していたといえ、これらの事情によれば、一般低所得世帯における消費実態は、平成19年検証が前提としている平成 16年全国消費実態調査時の状況とは異なっていた可能性があるといわざるを得ない。 (イ) ところで、上記1の認定事実のとおり、生活扶助基準の改定方法は、生活保護専門分科会による昭和39年中間報告を踏まえた格差縮小方式の採用や、同分科会による昭和55年 るといわざるを得ない。 (イ) ところで、上記1の認定事実のとおり、生活扶助基準の改定方法は、生活保護専門分科会による昭和39年中間報告を踏まえた格差縮小方式の採用や、同分科会による昭和55年中間取りまとめとそれを踏まえた 中央社会福祉審議会による昭和58年意見具申を踏まえた水準均衡方式 の採用等、専門家による検証を踏まえて行われ(認定事実⑴ウ及び⑵エ)、水準均衡方式の採用後、その運用や基準の在り方について、専門委員会や検討会において検討が行われたほか(認定事実⑶イ及び⑷イ)、平成23年以降は、基準部会において、定期的な検証が行われるようになる(認定事実⑸ア)など、生活扶助基準の改定方式の変更や、生活扶助基準の検討・ 検証は、生活保護制度の専門部局である厚生労働省社会・援護局だけでなく、外部の専門家においても行われていたと認められるのに対し、上記(ア)のとおり、厚生労働大臣は、本件改定に当たり、従前の改定方法と異なる指標である物価に着目した改定方法(デフレ調整)に基づく生活扶助基準の改定を基準部会等の外部の専門家による検討を経ずに行ってお り、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無の判断に当たり、外部の専門家の検討等を理由に上記合理的関連性や整合性が担保されているとはいえない。 もちろん、厚生労働大臣には生活扶助基準の設定等に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められており、また、保護基準や生活扶助基 準の改定に当たっては、基準部会に対する諮問が法律等で義務付けられてはいないものの、いかなる専門家がどのような形で関与したか、あるいは関与しなかったか、また、専門的知見の収集がどのように行われたかは、上記厚生労働大臣の裁量権に基づく判断の過程及び手続における過誤、欠落 いものの、いかなる専門家がどのような形で関与したか、あるいは関与しなかったか、また、専門的知見の収集がどのように行われたかは、上記厚生労働大臣の裁量権に基づく判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無を判断するに当たって重要な意味を帯びるものといわざるを得 ない。 (ウ) そして、上記(ア)のような社会経済状況や平成19年検証の前提となった一般低所得世帯の消費実態に相違があるところ、上記(イ)のとおり、平成20年以降の物価下落(デフレ)により生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加していたかについて、基準部会等における専門 的知見による検証・検討が行われていないことも考慮すると、デフレ調整 の必要性に係る厚生労働大臣の判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くといわざるを得ない。 (エ) この点について、被告は、平成25年報告書において、「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的 に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。」との意見が取りまとめられていることからすると、厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際、平成25年報告書の検証結果を考慮した上で、更に平成25年検証以外の合理的な経済指標等を総合的に勘案することをも含めて厚生労働大臣の合目的的裁量に委ねる趣旨であると解 するのが相当である旨主張する。 しかしながら、上記1の認定事実のとおり、平成25年報告書における上記記載は、消費者物価指数や賃金の動向など政府が発表する経済指標を根拠にした生活扶助基準の見直しを肯定的に捉える平成25年報告書の原案の記載部分について、基準部会の委員 、平成25年報告書における上記記載は、消費者物価指数や賃金の動向など政府が発表する経済指標を根拠にした生活扶助基準の見直しを肯定的に捉える平成25年報告書の原案の記載部分について、基準部会の委員から、平成25年検証において は、年齢、世帯人員、級地という3要素しか議論しておらず、消費者物価指数や賃金の動向について何も議論してないことを明確にすべきであり、また、消費品目で物価指数が変わってくることに留意が必要で、全国一律である消費者物価指数をあてはめて生活扶助基準を改定することは非常に慎重に考えなければならないなどとして否定的な意見が出されたこと を踏まえ、平成25年報告書の上記記載に訂正された上で取りまとめられたものであって(認定事実⑸ウ)、平成25年報告書の上記記載を根拠に、基準部会において、平成25年検証以外の経済指標等を総合的に勘案することを含めて厚生労働大臣の合目的的裁量に委ねる趣旨であると解することはできない。 (オ) また、被告は、平成20年には生活扶助基準の水準と一般低所得世帯 の消費実態との均衡が崩れ、同年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって賃金、物価及び家計消費が落ち込み、一般国民の消費水準が下落する一方、生活扶助基準については、減額改定がされずに据え置かれたため、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加し、生活扶助基準の水準と一般国民との消費実態との不均衡はより一層 顕著になっていたとし、平成24年6月には三党の確認書が合意され、社会保障制度改革推進法においても、必要な見直しを早急に行うことが明記されるなどしており、そのような実態は、全国消費実態調査(乙98、99)においても、平成16年から平成21年にかけて夫婦子1人世帯を含む二人以上世帯の消費支出 も、必要な見直しを早急に行うことが明記されるなどしており、そのような実態は、全国消費実態調査(乙98、99)においても、平成16年から平成21年にかけて夫婦子1人世帯を含む二人以上世帯の消費支出が約6.0%下落するなどしていたとし、そ のような経緯を踏まえ厚生労働大臣が、平成20年以降の物価変動を生活扶助基準に反映させる改定(デフレ調整)を行うことにした旨主張する。 しかしながら、全国消費実態調査は5年ごとに実施されているため、平成16年と平成21年の調査結果を単純に比較して、約6.0%低い数値 が確認されたとしても、各年における増減が反映されているわけではなく、平成20年の時点における一般低所得世帯の消費実態と生活扶助基準の水準との不均衡が一層顕著になっていたかはなお不明といわざるを得ない。また、政党間における合意や社会保障制度改革推進法の文言をもって、平成20年以降の物価変動を生活扶助基準に反映させることの必 要性を裏付けるものともいえず、上記(ウ)における統計等の数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を補うものでもない。 イデフレ調整に係る相当性(デフレ調整の起点を平成20年とすることの適否)(ア) 上記ア(ア)のとおり、厚生労働大臣は、平成19年検証の結果を踏ま え、平成20年以降の物価下落(デフレ)によって、生活保護受給世帯の 可処分所得が相対的、実質的に増加し、これにより生じた生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図るため、同年以降の物価変動を生活扶助基準に反映させるべく、その変化率を生活扶助基準に反映するため平成20年を起点とする物価変動率を反映させるデフレ調整をしたものである。 (イ) しかしながら、全国消費実態調査は5年ごとに実施されるため、平成 く、その変化率を生活扶助基準に反映するため平成20年を起点とする物価変動率を反映させるデフレ調整をしたものである。 (イ) しかしながら、全国消費実態調査は5年ごとに実施されるため、平成20年当時の一般低所得世帯における消費実態に対する調査は実施されておらず、平成19年検証が前提とする平成16年全国消費実態調査の検証結果をもって、平成20年における生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態とが同様の状況であったかは不明というほかない。 また、上記ア(ア)のとおり、総務省CPIの総合指数は、平成20年に前年比1.4%上昇し、食料や光熱・水道を個別に見れば、平成19年から平成23年まで上昇しているなど、平成16年全国消費実態調査時以降に生じた収入の低下や生活必需的な品目(食料、光熱・水道)の物価上昇により、平成20年当時の一般低所得世帯における消費実態が変容し ていた可能性もある。 これらの事情からすると、平成20年を起点としてデフレ調整を行ったとする厚生労働大臣の判断について合理的な理由が示されているとはいえず、また、デフレ調整の起点について基準部会等における専門的知見による検証・検討が行われていないことも考慮すると、本件改定のデフレ調 整の起点に関する厚生労働大臣の判断も、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くといわざるを得ない。 (ウ) この点について、被告は、デフレ調整の目的が平成20年以降のデフレ傾向によって生じた生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による同世帯と一般国民との間の不均衡を是正することにあった ことからすると、物価変動率を算定する起点を平成20年としたことは 上記目的に沿うものであり合理的である旨主張する。 しかしながら、 と一般国民との間の不均衡を是正することにあった ことからすると、物価変動率を算定する起点を平成20年としたことは 上記目的に沿うものであり合理的である旨主張する。 しかしながら、上記ア(エ)のとおり、平成20年の時点における一般低所得世帯の消費実態と生活扶助基準の水準との不均衡が一層顕著になっていたかはなお不明といわざるを得ないのであるから、被告の上記主張をもってその合理性が補完されることもない。 ウデフレ調整に係る相当性(生活扶助相当CPIを用いる合理性)(ア) 上記1の認定事実のとおり、厚生労働大臣は、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIを基礎に物価の変化率(-4.78%)を算定し、同数値が平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による一般国民との不均衡を是正 するのに相当なものと評価し、同数値をゆがみ調整がされた生活扶助基準額に一律に乗じる調整(デフレ調整)を行ったものであるところ、各年の生活扶助相当CPIの算定に当たっては、総務省CPIにおける指数品目から除外品目を除いた生活扶助相当品目を指数品目とし、平成22年を基準時とする品目別ウエイトを使用している(認定事実⑺イ)。 そうすると、物価の変化率を算出する前提とされた消費構造と生活保護受給世帯の消費構造が大きく異なるとすれば、そのようにして算出された物価の変化率は、生活保護受給世帯における可処分所得の実質的増加の有無、程度を正しく評価するものとはいえないこととなる。 (イ) そこで、物価の変化率を算出する前提とされた消費構造(ウエイト) の合理性を検討するに、上記1の認定事実のとおり、平成20年から平成23年の総務省CPI(ウエイト合計1万)の変化率は、-2.35%であっ の変化率を算出する前提とされた消費構造(ウエイト) の合理性を検討するに、上記1の認定事実のとおり、平成20年から平成23年の総務省CPI(ウエイト合計1万)の変化率は、-2.35%であったが、生活扶助相当CPIの変化率は-4.78%に及ぶところ、その原因としては、総務省CPIにおいて用いられている指数品目から除外品目を除いた生活扶助相当品目について総務省CPIの算出に用いら れる品目別のウエイトがそのまま使用されたことによる。 すなわち、平成23年の物価指数の下落は、教養娯楽に分類される教養娯楽用耐久財であるパソコン(デスクトップ型及びノート型)やカメラの下落が主な要因であったといえるところ(認定事実⑼ウ(イ)d)、生活扶助相当CPIに係る品目別のウエイトの合計は、総務省CPIの合計値(1万)から除外品目に係るウエイトが除去された数値となるため、平成20 年の生活扶助相当CPIは6189、平成23年の生活扶助相当CPIは6393になっていた。このように、品目別のウエイトの合計値が総務省CPIのそれよりも少ないことから、個別の生活扶助相当品目の価格の変化による全体の数値への影響が増幅して算出されることとなるのであり、上記のパソコンやカメラの下落による教養娯楽用耐久財の価格下 落の影響が増幅された結果、平成20年と平成23年の生活扶助相当CPIの変化率(-4.78%)が総務省CPIの変化率(-2.35%)よりも大きくなったといえる。 ところで、総務省CPIの算出の際に用いられるウエイトは、主に家計調査によって得られる無作為に選定された世帯における品目別消費支出 基準を基礎に作成されているところ(認定事実⑽ア及び⑾ア)、一般に、低所得世帯においては、食費や光熱費・水道代など日常生活に必要不 によって得られる無作為に選定された世帯における品目別消費支出 基準を基礎に作成されているところ(認定事実⑽ア及び⑾ア)、一般に、低所得世帯においては、食費や光熱費・水道代など日常生活に必要不可欠な品目の消費支出が総消費支出を占める割合が高く、教養娯楽費など日常生活の維持に必ずしも不可欠とまではいえない品目の消費支出が総消費支出を占める割合が低いと考えられ、この点は、社会保障生計調査に基 づく2人以上世帯や単身世帯における消費構造において、食料、住居、光熱・水道が占める割合が高く、教養娯楽が占める割合が低いことからも裏付けられる(認定事実⑾イ)。 そして、生活保護受給世帯を対象とする平成22年度の社会保障生計調査に基づく10大費目の支出割合を見ると、2人以上世帯の教養娯楽 が6.4%、単身世帯の教養娯楽が5.6%と(認定事実⑾イ)、それぞ れ生活扶助相当CPIの割合(平成20年が16.5%、平成23年が17.1%)と比較すると、教養娯楽のための消費支出が総消費支出を占める割合が低くなっており、その点においては、生活保護受給世帯では、テレビ及びパソコンを含む教養娯楽の消費支出が総消費支出に占める割合が、生活扶助相当CPIで前提とされている割合よりも低く、テレビやパ ソコンの価格の下落によって可処分所得が増加するという影響を受けにくく評価されるべきであるにもかかわらず、生活扶助相当CPIの算出に当たっては、テレビやパソコンの価格下落による影響を過大に評価した可能性がある。 したがって、平成20年の平成23年の生活扶助相当CPIの変化率 が生活保護受給世帯の消費実態を適切に反映したものではない可能性があるから、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIの変化率(-4.78% の生活扶助相当CPIの変化率 が生活保護受給世帯の消費実態を適切に反映したものではない可能性があるから、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIの変化率(-4.78%)を根拠に、同数値に相当する生活保護受給世帯における可処分所得の実質的増加が存在していたとはいえない。 (ウ) そして、上記(イ)の平成22年度の社会保障生計調査によって把握できる生活保護受給世帯の消費構造と生活扶助相当CPIの前提とされた消費構造との乖離については、本件改定を行う際には把握し得たのにもかかわらず、本件改定における生活扶助相当CPIのウエイトの相当性の判断に当たり、何らかの検証・検討がされたかは明らかではなく、上記 ア(イ)のとおり、厚生労働大臣がデフレ調整に基づく本件改定に当たり基準部会等の外部の専門家による検討を経ずに行っており、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無について、外部の専門家の検討等により担保されているとはいえないことも考慮すると、デフレ調整を行う際の指標となる生活扶助相当CPIの設定に係 る厚生労働大臣の判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や 専門的知見との整合性を欠くといわざるを得ない。 (エ) これに対し、被告は、生活扶助相当CPIにおける指数品目の選定や、除外品目を除くという恣意性を排除した客観的な条件設定に基づいて生活扶助相当消費支出額を算出する方法が、従前から専門委員会においても是認されていた方法であることから、生活扶助相当CPIの指数品目 の選定に係る厚生労働大臣の判断に論理の飛躍や連関を欠くところはなく、また、社会保障生計調査が、地域等の偏りやサンプル数が多くなく、生活保護受給世帯全体の家計支出の状況を推測する精度に限界 目 の選定に係る厚生労働大臣の判断に論理の飛躍や連関を欠くところはなく、また、社会保障生計調査が、地域等の偏りやサンプル数が多くなく、生活保護受給世帯全体の家計支出の状況を推測する精度に限界があるなどとして、厚生労働大臣による生活扶助相当CPIのウエイトの選定に係る判断の過程及び手続に過誤、欠落はない旨主張する。 しかしながら、上記(イ)のとおり、被告が指摘する専門委員会において是認されていた生活扶助相当消費支出額を算出する方法において、本件改定に用いられた生活扶助相当CPIの変化率の算定に当たり前提とされた消費構造(ウエイト)の合理性について検討されているとは考え難く、単に過去に生活扶助相当消費支出額を算出する過程において、生活扶助相 当品目の選定等を専門委員会において是認していたことをもって、本件改定に用いられたウエイトの合理性が裏付けられるとはいえない。 また、生活保護受給世帯の可処分所得の増減の把握のために、社会保障生計調査では把握できない詳細な品目別のウエイトを用いる必要性があることや同調査の精度の問題から厚生労働大臣が生活扶助相当CPIの 算出に当たり、総務省CPIの算出に用いられたウエイトを使用するべきと判断していたとしても、厚生労働大臣の同判断に至る過程において、保護基準の改定等生活保護制度の企画運営のための基礎資料である社会保障生計調査の支出割合と生活扶助相当CPIで使用するウエイトとの上記乖離をいかに評価・検討していたかは明らかではなく、ウエイトの選定 について基準部会等における専門的知見による検証・検討が行われていな いことも考慮すると、厚生労働大臣の生活扶助相当CPIのウエイトに係る判断についても、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くとい 見による検証・検討が行われていな いことも考慮すると、厚生労働大臣の生活扶助相当CPIのウエイトに係る判断についても、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くといわざるを得ない。 エデフレ調整の影響の重大性上記イ及びウのとおり、厚生労働大臣が本件改定に当たりデフレ調整と して、平成20年以降の物価変動を生活扶助基準に反映させるべく、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIの変化率(-4.78%)を一律に乗ずる減額改定をしたことは、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものといわざるを得ないものであるところ、本件改定は、ゆがみ調整とデフレ調整を一体とし て減額改定するものであるため、デフレ調整による影響を切り離すことはできない。そして、本件改定による影響は、デフレ調整により一律に-4. 78%が減じられるものであり、昭和59年以降採用されている水準均衡方式の下での改定に当たり、同変化率を超える割合で減額される改定がされたことはなく、生活保護受給世帯の約96%の生活扶助費が減額される こととなることに照らせば、その影響も重大といえる。 オ平成29年検証との均衡に係る評価(ア) 被告は、本件改定後に行われた平成29年検証において、本件改定が反映された生活扶助基準の水準の妥当性に関する検証がされ、その結果、本件改定後の生活扶助基準の水準が一般低所得世帯(第1・十分位層)の 消費実態と概ね均衡する旨評価されたとして、本件改定後の生活扶助基準の水準が基準部会の検証によって妥当性が検証されたとし、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断過程に、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがない旨主張する。 基準の水準が基準部会の検証によって妥当性が検証されたとし、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断過程に、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがない旨主張する。 (イ) しかしながら、そもそも、上記⑴イのとおり、生活扶助基準の引下げ を内容とする生活扶助基準の改定に係る厚生労働大臣の判断が違法とな るのは、当該改定の時点における当該判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合であるから、事後的な検証の結果によって本件改定時の厚生労働大臣の判断の過程及び手続における過誤、欠落が治ゆされるものではない。 この点を措くとしても、上記1の認定事実のとおり、本件改定は、デフレ調整だけでなく、ゆがみ調整が一体として行われたものであるが、ゆがみ調整が平成25年検証の結果を2分の1のみ反映させていることからすれば(2分の1処理)、デフレ調整による標準世帯以外の類型(高齢者単身世帯や母子世帯など)の影響の有無やその程度については、上記世帯 類型について、生活扶助基準と一般低所得世帯との消費実態との均衡の有無を検証しない限り、正しく評価することは困難である。また、平成29年報告書においては、標準世帯について生活扶助基準額と第1・十分位層の生活扶助相当支出額との均衡は確認されたものの、その他の世帯類型(高齢夫婦世帯)については、均衡の有無の検証には至らず、その他の世 帯類型についてはその検討もされていない(認定事実⑻)。 したがって、平成29年検証によっては、ゆがみ調整と一体的に行われたデフレ調整の影響が明らかになったとはいえず、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断に統計等の客観的な数値等 ていない(認定事実⑻)。 したがって、平成29年検証によっては、ゆがみ調整と一体的に行われたデフレ調整の影響が明らかになったとはいえず、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断に統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性があったということもできない。 カ小括上記アからオまでのとおり、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による一般国民との間の不均衡を是正するため、平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIを用いて算定した物価の変化率(-4.78%)をゆがみ調整後の生活扶助基準額に一律に乗 じる方法で生活扶助基準を改定した厚生労働大臣の判断は、統計等の客観 的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠いているといわざるを得ず、その影響の重大性を考慮すれば、本件改定後の生活扶助基準の内容が被保護者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした厚生労働大臣の判断には、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落があるというべきである。 第4 結論以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、本件改定の時点において、本件改定後の生活扶助基準の内容が被保護者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした厚生労働大臣の判断は、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したといえるから、本件改定は、生活保護法3 条及び8条2項の規定に違反するものであり、本件改定に基づく本件各変更決定はいずれも違法である。 よって、原告らの請求はいずれも理由があるから、これらを認容することとして、主文のとおり判決する。 宮崎地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官小島清二 よって、原告らの請求はいずれも理由があるから、これらを認容することとして、主文のとおり判決する。 主文 宮崎地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官小島清二 裁判官小泉敬祐 裁判官浅川浩輝 (別紙は掲載省略)

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