平成12(ネ)5178 損害賠償請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成13年10月1日 東京高等裁判所
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判決文本文41,082 文字)

(原審・東京地方裁判所平成8年(ワ)第8915号損害賠償請求事件(原審言渡日平成12年9月22日)) 主文 1 原判決を次のとおり変更する。 (1) 一審被告は,一審原告に対し,6325万3514円及びこれに対する平成8年7月31日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2) 一審原告のその余の請求を棄却する。 2 一審被告の控訴を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを5分し,その1を一審原告の,その余を一審被告の各負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 一審原告の控訴の趣旨(1) 原判決を次のとおり変更する。 一審被告は,一審原告に対し,8085万4105円及びこれに対する平成元年6月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2) 一審被告の控訴を棄却する。 2 一審被告の控訴の趣旨(1) 原判決中一審被告敗訴の部分を取り消す。 (2) 一審原告の請求を棄却する。 (3) 一審原告の控訴を棄却する。 3 一審原告の本訴請求の趣旨一審被告は,一審原告に対し,8085万4105円及びこれに対する平成元年6月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 本件事案の概要及び当事者双方の主張本件は,一審被告を運送人とする国際海上物品運送契約について,運送中に運送品(袋詰魚粉)の一部に損害が発生したため,荷受人との間で当該運送品につき貨物海上保険契約を締結していた一審原告が,上記損害について荷受人に保険金を支払い,運送契約上の債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求権を保険代位により取得したとして,一審被告に対し,上記損害の賠償を求めた事案である。 1 前提事実(証拠の摘示のない項目は,当事者間に争いがない事実である。)(1 行又は不法行為に基づく損害賠償請求権を保険代位により取得したとして,一審被告に対し,上記損害の賠償を求めた事案である。 1 前提事実(証拠の摘示のない項目は,当事者間に争いがない事実である。)(1) 当事者ア一審原告は,貨物海上保険を含む各種損害保険業を目的とする株式会社である。 イ一審被告は,キプロス共和国法に準拠して設立された海運業を営む法人であり,平成元年当時,貨物船マノリス号(以下「マノリス号」という。)を所有し,運航していた。 (2) マノリス号の構造マノリス号は,1974年に建造された一般貨物船で,全長152.6m,型幅20.4m,型深11.92m,総トン数9557t,純トン数5986t,夏期載貨重量1万3945tで,船首側から船尾側に向かって,第1船艙,第2船艙,第3船艙,第4船艙の4つの船艙を有している。 第1船艙は,船首楼にあって,1つの艙口(ハッチ)を有し,上部中甲板船艙,下部中甲板船艙及び下部船艙から成っている。第2船艙及び第3船艙は,いずれもそれぞれ左右両舷に1つづつ艙口を有し,中甲板船艙及び下部船艙から成っている。第4船艙は,機関室の後方にあり,1つの艙口を有し,中甲板船艙及び下部船艙から成っている。 (甲29,49,51の1,2,甲52,53,63の1から3まで,乙13)(3) 本件貨物ア三菱商事株式会社は,平成元年5月18日及び同月22日ころ,三菱インターナショナル有限会社から,原判決別紙売買契約目録記載のとおり,袋詰魚粉を買い受けた(以下,各売買契約の目的物を同目録の番号に従い,順に「本件貨物一」ないし「本件貨物五」といい,これらを併せて「本件貨物」という。)。(甲5から9まで)イ本件貨物は,平成元年4月13日から同年5月1日にかけて,エクアドル共和国のグアヤキル港においてマノリス号に積み付けられた 物五」といい,これらを併せて「本件貨物」という。)。(甲5から9まで)イ本件貨物は,平成元年4月13日から同年5月1日にかけて,エクアドル共和国のグアヤキル港においてマノリス号に積み付けられた。 一審被告は,原判決別紙船荷証券目録記載の各船荷証券(以下,右各船荷証券を同目録の番号に従い,順に「本件船荷証券一」ないし「本件船荷証券五」といい,これらを併せて「本件船荷証券」という。これらの各船荷証券に表示された貨物は,それぞれ同じ番号の本件貨物に対応する。)記載のとおり,各荷送人ら(以下,ネゴシオス・インダストリアレス・レアル・エス・エイを「レアル」といい,シア・ペスケラ・インテグラル・デル・エクアドル・シー・エイ・インペスカを「インテグラル」という。)との間で海上物品運送契約(以下,総称して「本件運送契約」という。)を締結し,各荷送人に本件船荷証券を交付した。 本件船荷証券には,いずれも,「外観上良好な状態で本船上に船積みされた」旨記載されているほか,「重量,寸法,品質,数量,状態,内容,価格は不知」とのいわゆる不知文言(以下「不知文言」という。)が付されている。 (甲11から15まで)ウマノリス号は,同年5月1日グアヤキル港を出港したが,出港当時,マノリス号には,本件貨物のほか原判決別紙積付貨物目録一から一〇まで記載の袋詰魚粉(以下,同目録の番号に従い,順に「別件貨物一」,「別件貨物二」のようにいう。)合計2625メトリック・トン(以下単に「t」と表記する。)(船荷証券に記載された重量,以下この項において同じ。)及び同目録一一及び一二記載のばら積み魚粉(以下「別件貨物一一」,「別件貨物一二」といい,別件貨物一から一二までを併せて,以下「別件貨物」という。)合計3150tも船積みされ,本件貨物と併せて総合計1万0500tの魚粉(以 載のばら積み魚粉(以下「別件貨物一一」,「別件貨物一二」といい,別件貨物一から一二までを併せて,以下「別件貨物」という。)合計3150tも船積みされ,本件貨物と併せて総合計1万0500tの魚粉(以下「本件船積貨物」という。)が船積みされていた。 この船積み期間中である同年4月20日夕方にグアヤキル港に雨が降り(以下「本件降雨」という。),マノリス号においてはその時点までに船積みされた貨物が濡れるのを防ぐため,各船艙のハッチカバーを閉めようとしたが,第4船艙のハッチカバーが故障のため途中で閉まらなくなり,上記故障を修理し,ハッチカバーを完全に閉めるのに1時間を要した。 当時,第4船艙中甲板船艙には,9450袋の袋詰魚粉が積み付けられていたが,このうち鹿島向けインテグラル魚粉(以下,本件船積貨物の中の魚粉を個別に引用する場合,その荷送人の名称を用いて特定する。)1119袋が雨濡れを理由に同月22日荷揚げされ,新品(本件貨物三の一部に当たる。)と交換された。 さらに,同月24日から同月26日にかけて,第4船艙中甲板船艙から8331袋(本件貨物三の一部及び別件貨物一又は二のうちの一部が含まれる。),同下部船艙から名古屋向けインテグラル魚粉503袋(別件貨物一又は二のうちの一部)の合計8834袋が荷揚げされたが,その後ごく一部を除くほとんど全部が再びマノリス号に船積みされた(以下「再船積貨物」という。)。 エ本件船荷証券は,上記の荷送人らから,アルフレッド・C・トプファーインターナショナル有限会社,三菱インターナショナルへと順次交付され,三菱商事は,本件船荷証券一及び三から五までを三菱インターナショナルから取得し,本件船荷証券二を三菱インターナショナルから交付を受けた株式会社三和銀行から取得した。 (4) 保険契約一審原告は,三菱商事との間で 船荷証券一及び三から五までを三菱インターナショナルから取得し,本件船荷証券二を三菱インターナショナルから交付を受けた株式会社三和銀行から取得した。 (4) 保険契約一審原告は,三菱商事との間で,平成元年5月25日及び同月26日,本件貨物について,オールリスクを担保条件とする保険金額総計3億9538万6000円の貨物海上保険契約を締結した(以下「本件保険契約」という。)。(甲17から21まで)(5) 本件損害の発生マノリス号は,平成元年5月1日,グアヤキル港を出港して,同月26日,鹿島沖に到着し,同年6月5日,鹿島港南公共埠頭に接岸して,本件船積貨物の荷揚作業が開始された。 マノリス号では,航海中である同年5月22日に第4船艙中甲板船艙から煙が出ていることが発見されるなどし,その後の荷揚作業の際に,第2及び第4船艙の各中甲板船艙並びに第2及び第3船艙の各下部船艙に積み付けられていた貨物が発熱や焦げ等による損害を受けていたほか,第1船艙から第4船艙までの各下部船艙に積み付けられていた貨物が濡れやかびによる損害を受けていたことが発見された(以下,これらの損害を総称して「本件損害」という。)。 (甲16,乙3,11の1から6まで,乙13)(6) 保険金の支払一審原告は,三菱商事に対し,本件保険契約に基づき,本件損害に関し,本件貨物に対する保険金として,平成元年9月29日に554万8744円,同年11月24日に7530万5361円の合計8085万4105円を支払った。 (7) 準拠法ア本件運送契約においては,準拠法について次のように合意されていた。 (ア) 1924年8月25日にブラッセルで署名された船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約(同条約は,1921年9月の国際法協会のへーグ会議で定められた「へーグ規則」に基づき制 れていた。 (ア) 1924年8月25日にブラッセルで署名された船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約(同条約は,1921年9月の国際法協会のへーグ会議で定められた「へーグ規則」に基づき制定されたものであることから,一般に「へーグ規則」と称されている。そこで,本判決においても,同条約を以下「ヘーグ規則」という。)が船積地の国において国内法として制定されている場合には,ヘーグ規則を適用する。 (イ) 船積地においてヘーグ規則の国内法が施行されていない場合には,仕向け国における対応する法律を適用する。ただし,その法律が強制的に適用されない運送に関しては,ヘーグ規則を適用する。 イ (ア) 本件貨物の船積地であるエクアドル共和国は,1977年3月23日,ヘーグ規則に加入し,同年9月23日,エクアドル共和国について効力を生じた。したがって,本件運送契約の準拠法は,ヘーグ規則である。 (イ) ヘーグ規則には,次の規定がある。 a 「運送人は,すべての海上物品運送契約において,物品の積込,取扱,積付,運送,保管及び荷揚に関し責任及び義務を負い,かつ,以下に定める権利及び免責を享受するものとする。」(2条本文)b 「運送人は,航海の前に及び航海の開始に際し,次のことについて相当の注意をしなければならない。 (a) 船舶を航海に堪える状態におくこと。 (b) 船員の乗組,船舶の艤装及び需品の補給を適切に行うこと。 (c) 船倉,冷気室,冷蔵室その他物品を積み込むすべての場所を物品の受入,運送及び保存に適する良好な状態におくこと。」(3条1項)c 「運送人は,運送される物品の積込,取扱,積付,運送,保管及び荷揚を適切かつ慎重に行わなければならない。ただし,第4条の規定の適用を妨げない。」(3条2項)d な状態におくこと。」(3条1項)c 「運送人は,運送される物品の積込,取扱,積付,運送,保管及び荷揚を適切かつ慎重に行わなければならない。ただし,第4条の規定の適用を妨げない。」(3条2項)d 「運送人,船長又は運送人の代理人は,物品を受け取った後は,荷送人の請求により,特に次の事項を記載した船荷証券を荷送人に交付しなければならない。 (a) 物品の識別のため必要な主要記号で物品の積込開始前に荷送人が書面で通告したもの。(以下略)(b) 荷送人が書面で通告した包若しくは個品の数,容積又は重量(c) 外部から認められる物品の状態ただし,運送人,船長又は運送人の代理人は,この記号,数,容積又は重量が実際に自己が受け取った物品を正確に表示していないと疑うべき正当な理由があるとき,又はその正確であることを確認する適当な方法がないときは,これらの事項を船荷証券に記載することを要しない。」(3条3項)e 「このような船荷証券は,反証がない限り,3項(a),(b)及び(c)の規定に従って当該証券に記載されているとおりの物品を運送人が受け取ったことを推定する証拠となる。」(3条4項)f 「運送人及び船舶は,航海に堪えない状態から生ずる滅失又は損害については,責任を負わない。ただし,運送人が,前条1項の規定に従い,船舶を航海に堪える状態におき,船員の乗組,船舶の艤装及び需品の補給を適切に行い,並びに船倉,冷気室,冷蔵室その他物品を積み込むすべての場所を物品の受入,運送及び保存に適する良好な状態におくことについて相当の注意をしなかったことにより航海に堪えない状態を生じた場合は,この限りでない。航海に堪えない状態から滅失又は損害を生じたときは,この条に定める免責を主張する運送人その他の者は,相当の注意をしたことを立証しなければならない。」(4条1項) 状態を生じた場合は,この限りでない。航海に堪えない状態から滅失又は損害を生じたときは,この条に定める免責を主張する運送人その他の者は,相当の注意をしたことを立証しなければならない。」(4条1項)g 「運送人及び船舶は,次のことから生ずる滅失又は損害については,責任を負わない。 (m) 物品の隠れた欠陥,特殊な性質又は固有の欠陥から生ずる容積又は重量の減少その他のすべての滅失又は損害(q) その他運送人又はその代理人若しくは使用人の故意又は過失によらない原因。ただし,この例外の利益を主張する者は,運送人又はその代理人若しくは使用人の故意又は過失が滅失又は損害に関係のなかったことを立証しなければならない。 (他の項目は省略)(4条2項)(ウ) なお,不法行為の準拠法は,法例11条1項により,原因事実発生地すなわち不法行為地の法律と定められているところ,本件は,マノリス号がエクアドル共和国から公海を経て日本へ航行した際に起きた事件であるが,本件貨物は日本を仕向地とするものであること及び日本の領海内において損害が発見されたことから,日本が不法行為地であり,その準拠法は,日本法である。 2 争点(1) 本件貨物に生じた損害(一審原告の主張)ア煙損,濡れ損,かび損,発熱・固化損及び焦損(ア) 本件損害のうち,本件貨物一から三まで(鹿島向け貨物分)に生じた煙損,濡れ損,かび損,発熱・固化損及び焦損の量は,次のとおりであり,全損に換算して合計421.643tである。 正味重量(t)  損率全損換算数量(t)煙損(程度軽) 135.877 20% 27.175煙損(程度中) 342.717 40% 137.087煙損(程度重) 320.022 60% 192.013濡れ 度軽) 135.877 20% 27.175煙損(程度中) 342.717 40% 137.087煙損(程度重) 320.022 60% 192.013濡れ損・かび損  38.483 60% 23.090発熱・固化損 47.588 70% 33.312焦損 11.208 80% 8.966(イ) 本件損害のうち,本件貨物四及び五(鹿児島向け貨物分)に生じた煙損,濡れ損,かび損,発熱・固化損,焦損の量は,次のとおりであり,全損に換算して合計471.112tである。 正味重量(t)  損率全損換算数量(t)煙損(程度軽)  252.463 20% 50.493煙損(程度重)  634.330 43% 272.762かび損 158.146 50% 79.073発熱・固化損 105.821 65% 68.784イ不足ないし不着損害(ア) 本件貨物一から三まで(鹿島向け貨物分)の船荷証券に記載された総重量合計は1575.000tであり,これから袋の重量(3万1395袋。1袋当たり0.2㎏。合計6279㎏)を差し引いた正味重量は1568.721tであるにもかかわらず,実際に鹿島で荷揚げされた総正味重量は1534.651tであり,34.070t不足していた。 (イ) 本件貨物四及び五(鹿児島向け貨物分)の船荷証券に記載された総重量合計は3150.000tであり,これから袋の重量(6万5214袋。1袋当たり0.2㎏。合計1万3042. 8㎏)を差し引いた正味重量は3136.957tであるにもかかわらず,実際に鹿児島で荷揚げされた総正味重量は3081 tであり,これから袋の重量(6万5214袋。1袋当たり0.2㎏。合計1万3042. 8㎏)を差し引いた正味重量は3136.957tであるにもかかわらず,実際に鹿児島で荷揚げされた総正味重量は3081.122tであり,55.835tが不足していた。 ウよって,三菱商事が被った本件貨物の損害は,正味重量に換算して合計982.659tであった。 (一審被告の主張)アかび損について各下部船艙で生じたかび損については,袋詰魚粉のうち幾らかがかびにより外面的に影響を受けたのは事実であるが,これらは全く表面的なものにすぎず,その量も多くなく,ばらしたり混ぜ合わせたりするうちに失われる程度であったから,かび損は無視できる程度のものにすぎなかった。 イ不足ないし不着損害について本件貨物の重量が減少したのは,マノリス号においては,航海中を通じて常に通風換気が適切に行われていたために,本件貨物に含まれる水分が自然蒸発したこと,及び発熱損の原因となった本件魚粉の燃焼作用によるものである。したがって,不足及び不着による損害はない。 (2) 本件損害の発生原因(一審被告の主張)ア本件船積貨物の特殊な性質(ア) すべての魚粉は,放置しておけば必然的に自然発火するという特殊な性質を有するものであり,国際海事機関(IMO)の国際海上危険物規程(InternationalMaritimeDangerousGoodsCode。 以下「IMDGコード」という。)において危険物に指定されており,抗酸化剤処理され,一定の条件を満たしたものはクラス9の危険品に,また,抗酸化剤処理されていないが,必要な外気さらしをされ,一定の条件を満たしたものはクラス4.2の危険品に分類されている。 本件船積貨物は,クラス9に分類される抗酸化剤処理を施された魚粉であり,一般論と 抗酸化剤処理されていないが,必要な外気さらしをされ,一定の条件を満たしたものはクラス4.2の危険品に分類されている。 本件船積貨物は,クラス9に分類される抗酸化剤処理を施された魚粉であり,一般論として特殊な性質を有する貨物である。 そして,本件船積貨物については抗酸化剤証明書が発行されているが,十分に抗酸化剤処理がされていても,その効力は,日時の経過により消滅していき,いつかは自然発火するものである。 (イ) また,本件船積貨物がIMDGコードクラス9に分類される魚粉であっても,荷送人の検査人が抗酸化剤証明書を作成するに当たって行った検査は,本件船積貨物の中から無作為にサンプルを抽出して行ったものであって,場合によっては,2000袋中20袋のみを検査対象としているにすぎない上に,検査対象となった袋も中身を一部取り出して検査しているにすぎない。 よって,抗酸化剤証明書があったからといって,同証明書が対象としている魚粉すべての部分に抗酸化剤がまんべんなく十分に処理されているということにはならない。 (ウ) 本件損害は,魚粉である本件船積貨物の抗酸化剤処理が不十分であったことが原因であり,その特殊な性質により生じたものである。 イ一審原告の主張する発熱原因への反論(ア) 再船積貨物の雨濡れと再船積みについてa 発熱発火原因となるような雨濡れ貨物がなかったこと(a) 一審被告は,本件降雨の後に,第4船艙内の貨物を点検して,雨濡れした貨物を雨濡れしていない周辺の貨物と共に(合計1119袋)取り除いて新品と交換した。また,再船積貨物は,積付け場所を誤ったために積み直されたにすぎず,雨濡れしていたわけではないから,これが過剰の水分を含んでいたために発熱原因となったということはあり得ない。 (b) そもそも,本件貨物は,船積前検査によると1袋が約50㎏ ために積み直されたにすぎず,雨濡れしていたわけではないから,これが過剰の水分を含んでいたために発熱原因となったということはあり得ない。 (b) そもそも,本件貨物は,船積前検査によると1袋が約50㎏,水分含有率が約8%であったところ,グアヤキル港における平成元年4月20日午後1時から午後7時までの降水量は8.9㎜であり,仮にこれが午後4時45分から午後7時までのものであるとしても,午後4時45分から第4船艙ハッチカバーが閉じられるまでの午後5時45分までに同船艙内に降り込んだ雨量は,3.95㎜と推定される。これが平積みされた魚粉の袋の上面(80㎝×50㎝)に降り注ぐと,その重量は合計1.58㎏になるが,これを袋詰魚粉が全量吸収したとしても,水分含有率は約10.82%にしかならない。これは,IMDGコードに定められた水分量(5%を超え12%以下)の範囲内であるから,発熱発火に至るはずがない。 (c) また,一審原告は,第4船艙中甲板に設けられた十字状の通風溝に降り込んだ雨が,最下部に積み付けられた魚粉の袋に浸透したため発熱原因になったと主張するが,ハッチカバーが閉まらなかったために雨が降り込んだ通風溝部分は,長さ4.4ないし4.5m,幅約30㎝で1.35㎡にすぎないから,ハッチカバーが閉まるまでの雨量を4㎜としても,全体で5.4リットルにすぎず,これが一つの魚粉袋に吸収されたとしても水分含有率を10%増加させるにすぎないから,通風溝へ降り込んだ雨が発熱発火の原因となることはない。 (d) なお,バクテリアの生長には20%の水分含有率が必要であるが,そのような部分が塊となっていなければならないから,袋詰魚粉が外面層に沿って濡れただけでは不十分である。 b 再船積み場所と発熱発火場所(a) 再船積貨物の再積付け位置は,次のとおり本件船積貨物の発熱焦 うな部分が塊となっていなければならないから,袋詰魚粉が外面層に沿って濡れただけでは不十分である。 b 再船積み場所と発熱発火場所(a) 再船積貨物の再積付け位置は,次のとおり本件船積貨物の発熱焦損場所と全く異なっており,一審原告が第2船艙及び第4船艙の雨濡れ貨物と主張する魚粉が発熱焦損の原因となっていないことが明らかである。 (b) 本件降雨が始まった時点では,第4船艙には合計1万6830袋の魚粉が積み込まれていた。その内訳は,中甲板船艙に,上から,鹿島向けインテグラル6189袋,名古屋向けインテグラル3261袋があり,下部船艙には,誤って積み付けられた名古屋向けインテグラル503袋とその下に鹿児島向けインテグラル6877袋があった。 (c) 本件降雨後,雨濡れを理由に,第4船艙中甲板から鹿島向けインテグラル魚粉のうち1119袋が荷揚げされた。その際,下部船艙の名古屋向けインテグラル503袋が誤った場所に積み付けられていたことが判明し,これを積み直すために,中甲板船艙にあった残りの鹿島向けインテグラル5070袋及び名古屋向けインテグラル3261袋も併せて荷揚げされ,合計8834袋(再船積貨物)が積み直された。 これらの魚粉の積み直し場所については,まず,鹿島向けインテグラル5070袋については,第1船艙中甲板船艙最上部に600袋,及び第4船艙中甲板船艙最上部に4470袋が積み直され,名古屋向けインテグラル3764袋は,第2船艙中甲板船艙の中層に2層に分割して再積付けされた。 (d) これに対して,第2船艙中甲板船艙の発熱損の火元は,同船艙最下部の鹿児島向け貨物であって再船積貨物ではなく,また,第4船艙中甲板船艙の発熱損の火元は,再船積貨物である最上部の鹿島向けインテグラルよりもはるか下であったから,再船積貨物が発熱焦損原因でないことは明ら 児島向け貨物であって再船積貨物ではなく,また,第4船艙中甲板船艙の発熱損の火元は,再船積貨物である最上部の鹿島向けインテグラルよりもはるか下であったから,再船積貨物が発熱焦損原因でないことは明らかである。 (イ) 積付け不良について一審原告は,第2船艙中甲板船艙のハッチコーミング(艙口縁材)の高さ一杯にまで十分な荷敷板をあてがうことなくぎっしりと積み付けたことが同船艙の貨物の熱損の一原因となったと主張するが,同船艙の発熱焦損は,前記のとおり同船艙底部から発生したものであるから,同船艙最上部の積付けは発熱焦損とは関係ない。 また,第2船艙中甲板船艙の右舷部側も同様の積付けをしていたにもかかわらず,発熱損害は生じていないから,これが発熱損害の原因とはいえない。そもそも,IMDGコードでは,クラス9に該当する魚粉は,ホールド内にチャネル(通風路用のすき間)を作らずに袋と袋をぎっしり詰めて一つのブロックとして積み付けることができ,通風溝を設ける必要はないとされており,空気循環のための荷敷板が不足していることが熱損の発生原因とはなり得ない。 (ウ) 異常な湿気について積戻しに際して,第4船艙中甲板船艙には特段の措置を必要とするような水分など存在しなかった。なお,同船艙最上部の魚粉の濡れは,本件船積貨物が発熱発火したために鹿島入港前に消火する目的でハッチを封鎖して二酸化炭素を注入したために水滴の凝結が生じたことが原因である。 (エ) 濡れた荷敷板の再使用について濡れた荷敷板が再使用されたことはない。 (オ) ハッチカバーの適時閉鎖懈怠による雨濡れについて第2船艙及び第3船艙は本件降雨の際,ハッチカバーが直ちに閉められており,また,マノリス号の積込み作業中を通して,両船艙内に雨が降り込んだ事実はない。仮に,雨が入り込んだとしても,わずかな量であり, 第2船艙及び第3船艙は本件降雨の際,ハッチカバーが直ちに閉められており,また,マノリス号の積込み作業中を通して,両船艙内に雨が降り込んだ事実はない。仮に,雨が入り込んだとしても,わずかな量であり,発熱焦損の原因となるほどのものではない。 (カ) 通風換気不足について本件船積貨物の積付け及び航海中の通風換気が適切に行われていたことは後記3の一審被告の主張のイ(ウ)のとおりである。 (一審原告の主張)ア本件損害の原因(ア) 再船積貨物の雨濡れと再船積み(第2船艙及び第4船艙の各中甲板船艙について)a 本件降雨による雨濡れ(a) 抗酸化剤処理済みの魚粉であっても,水濡れして部分的にその水分含有率が20%を超えるとその部分の魚粉の中でバクテリアが繁殖し,その結果発熱し,温度が50ないし60℃に達する。この温度になると,魚粉中の残存脂肪の酸化が促進され,自ら持続的に発熱し,やがて焦げないし燻り現象が始まることが知られており,IMDGコードのクラス9に関する規定においても,濡れた袋は船積みしないことが定められている。 (b) 平成元年4月20日,マノリス号はグアヤキル港において荷役作業中であったが,同日午後5時から午後6時35分にかけて8.9㎜の降雨(本件降雨)があり,その際第4船艙のハッチカバーの故障により同船艙口がしばらくの間閉鎖されなかった。 マノリス号のハッチカバーは,マクレガー式で,5枚のパネル(1枚のパネル寸法は,2.6m×11m)で艙口を覆う構造になっていたが,第1パネルの先端部が艙口の中央付近に達したとき,同パネルの前側の車輪が,後方から3番目のくぼみに陥没したため動かなくなったものと推定される。このとき,第1パネルの前方には,パネル2.5枚分の,第2パネルの後方には,パネル0.5枚分の,併せて3枚分の閉鎖されていない部分が残 から3番目のくぼみに陥没したため動かなくなったものと推定される。このとき,第1パネルの前方には,パネル2.5枚分の,第2パネルの後方には,パネル0.5枚分の,併せて3枚分の閉鎖されていない部分が残されており,その面積は,85.8㎡であった。 第4船艙のハッチカバーがいつ閉鎖されたのかは不明であるが,前記のとおり,午後5時から午後6時35分までの間に8.9㎜の降雨があり,第4船艙の艙口寸法は,13m×11mであるから,同艙口上に降った雨量は1.273tである。 前述のようにハッチカバーは,半分ほど閉められていたが,ハッチカバーのすき間から雨水が流れ込むことも十分あり得るから,1.273tを上限とする雨水が第4船艙内に入り込んだことになる。 (c) このとき第4船艙中甲板船艙には,鹿島向けインテグラル2803袋(133.2t),名古屋向けインテグラル4405袋(197.5t)及び仕向地不詳(本件貨物に含まれない名古屋向けインペカ,インデマル又はその双方の魚粉である可能性が高い。)の2242袋の合計9450袋が積載されており,程度の差こそあれ,全量が雨に濡れた。 さらに,第4船艙下部船艙の閉鎖中のハッチカバーに滴下した雨水は,同ハッチカバーのすき間から同船艙最上部に積み付けられていた名古屋向けインテグラル503袋(22. 5t)にも降下し,程度の違いこそあれ,その全量を濡らせた。すなわち,本件船積貨物の袋はポリプロピレン製編み袋であり,その上に降下した雨水の一部は編み目から袋の内部に浸透するが,その余は編み袋の表面を滑って下方へ流れ落ちる。そして,本件降雨は,降り始めは弱かったが,次第にスペイン語でchubascoと呼ばれるしゅう雨となり,グアヤキル港のすべての積荷作業がまひ状態となったほど激しくなったから,雨水は袋の間を滑り落ち,中甲板船艙 降雨は,降り始めは弱かったが,次第にスペイン語でchubascoと呼ばれるしゅう雨となり,グアヤキル港のすべての積荷作業がまひ状態となったほど激しくなったから,雨水は袋の間を滑り落ち,中甲板船艙の艙底にまで達し,最下段に直接接して積み付けられた魚粉に吸収された。こうして,第4船艙中甲板船艙に積み付けられていた9450袋の中には,内部の魚粉の一部において水分含有率が20%に達したものが相当数ある状態となった。さらに,第4船艙下部船艙の閉鎖中のハッチカバー上に流れ落ちた雨水は,すき間から下に落ち,第4船艙下部船艙最上部に積み付けられた名古屋向けインテグラル503袋をも濡らし,ここでもその内部の魚粉の一部において水分含有率が20%に達したものが相当数ある状態となった。 (d) さらに,第4船艙中甲板船艙の積荷には,十文字の通風溝が設けられていたから,少なくともハッチカバーに覆われていなかった前半分の積荷は,通風溝の下まで雨濡れしたはずである。開口部直下だけでも,縦の溝に面する袋は1列11袋の14段が2面あり,計308袋,横の溝に面する袋は,縦で数えた袋を除くと1列6袋の14段が2面,これが左右にあるから計336袋で,合計644袋はあった。一審被告が新品と交換した鹿島向けインテグラル1119袋には,このうちの前方の3段134袋と後部の1段14袋が含まれるが,それでも496袋は残されたことになる。 (e) このように,新品に交換された1119袋以外の魚粉も雨濡れしており,かつ,そのうちの相当数が,袋内部の一部分において水分含有率が20%に達していたから,発熱焦損の原因となり得るものであった。 b 再船積み場所と発熱焦損場所(a) 本件降雨後,第4船艙中甲板船艙には,新品と交換された1119袋のほかに8331袋が残っており,第4船艙下部船艙の名古屋 熱焦損の原因となり得るものであった。 b 再船積み場所と発熱焦損場所(a) 本件降雨後,第4船艙中甲板船艙には,新品と交換された1119袋のほかに8331袋が残っており,第4船艙下部船艙の名古屋向けインテグラル503袋と共にいったん荷揚げされた。 (b) 上記(a)の荷揚げされた貨物のうち,名古屋向けインテグラル4908袋(220t)が第2船艙中甲板船艙に積み戻され,新品と交換された鹿島向けインテグラル1119袋(53.2t)は,他の鹿島向けインテグラル魚粉1684袋(80t)と併せて第4船艙中甲板船艙に積み戻された。そして,残りの2242袋は,インペカ,インデマル又はその双方の魚粉を含んでいる可能性が高く,これらは第2船艙若しくは第4船艙又はその双方に積み戻された。 これらの魚粉のうち,雨濡れの程度がひどかった箇所でバクテリアが生長して魚粉の温度上昇を招き,これが魚粉の抗酸化剤の消費を促進して,ついに魚粉自体が自然発熱を始めた。 (c) 第2船艙中甲板船艙の発熱発煙箇所は,左舷側艙口区画のうち右前隅部であり,同区画の底部から貨物表面に至るまでの筒状の範囲で発生した。また,第4船艙中甲板船艙については,同艙口区画内にあった鹿島向け貨物のうち,左舷後部及び右舷後部の各中段の魚粉が発熱損を生じており,下段の貨物については,燻り損を生じ,この燻り損を生じた鹿島向け魚粉に接する若干の鹿児島向け魚粉にも燻り損が及んでいた。 この損害状況からすれば,本件降雨で雨濡れしたまま再船積みされた魚粉が発熱焦損の主要な原因であったといえる。 (d) これに対して,一審被告は,第2船艙中甲板船艙最下層に積み付けられていた鹿児島向けインデマル又は名古屋向けインデマルが発熱源であり,これらの魚粉は,本件降雨後に第4船艙から荷揚げされて再積付けされた魚粉ではないから 審被告は,第2船艙中甲板船艙最下層に積み付けられていた鹿児島向けインデマル又は名古屋向けインデマルが発熱源であり,これらの魚粉は,本件降雨後に第4船艙から荷揚げされて再積付けされた魚粉ではないから,本件降雨による雨濡れとは無関係であると主張し,発熱源に関する根拠の一つとして,熱の伝達は上方に早く,側方にやや早く,下方にはゆっくりと伝達するから,発熱源は発熱団塊の下層部に存在すると主張する。しかし,その熱伝導に関する主張は,第2船艙及び第3船艙の各下部船艙の発熱損害では上方のみに熱が伝わっているわけではないことに照らせば,信用性のあるものではなく,ただ焦損が進行して空洞が生じた場所や通風溝に面した場所のように空気の対流が自由活発な空間でのみ採用できるものにすぎない。 (イ) 積付け不良(第2船艙中甲板船艙について)一審被告は,第2船艙中甲板船艙の魚粉をハッチコーミングの最上部から30ないし50㎝下の高さまでぎっしりと積み付け,十分な通風換気溝を作らなかった。これも第2船艙中甲板船艙における発熱焦損の一因であった。 (ウ) 異常な湿気(第4船艙中甲板船艙について)本件降雨の後,平成元年4月26日午後10時50分に第4船艙からの雨濡れ貨物の陸揚げが終了した際,同船艙中甲板船艙内の水分を除去する措置が執られないまま直ちに雨濡れ貨物の積戻し荷役が開始されたため,出港時及び航海中第4船艙内の湿気は異常に高かった。また,この異常な湿気のため,航海中長時間にわたり,ハッチカバーの下に結露した水滴が貨物の上に滴下して新たな水濡れを魚粉に生じさせた。これにより,最上部の魚粉が濡れ損を被り,また,第4船艙中甲板船艙の熱損の一原因となった。 (エ) 濡れた荷敷板の再使用(第4船艙中甲板船艙について)第4船艙中甲板船艙で使用されていた荷敷板も本件降雨により濡 最上部の魚粉が濡れ損を被り,また,第4船艙中甲板船艙の熱損の一原因となった。 (エ) 濡れた荷敷板の再使用(第4船艙中甲板船艙について)第4船艙中甲板船艙で使用されていた荷敷板も本件降雨により濡れたが,貨物を積み戻す際にそのまま再使用された。これも本件損害の原因の一部である。 (オ) ハッチカバーの適時閉鎖懈怠による雨濡れ(第2船艙及び第3船艙の各下部船艙について)第2船艙については,本件降雨の際ハッチカバーの閉鎖が遅れ,そのときまでに下部船艙に積み付けられていた門司向けレアルばら積み魚粉1598tの最上部がある程度雨濡れした。第3船艙についても,本件降雨の際ハッチカバーの閉鎖が遅れ,そのときまでに下部船艙に積み付けられていた門司向けレアルばら積み魚粉1552tとその上に積み付けられていた鹿児島向けインテグラル5892袋(282t)の最上部がある程度雨濡れした。また,ハッチカバーの閉鎖が遅れて多少とも雨に濡れる事態は本件降雨後も生じた。これらの雨濡れが原因となって第2船艙及び第3船艙の各下部船艙の熱損が生じた。 この事実は,①第2船艙及び第3船艙の各下部船艙の発熱損害が生じた場所が,艙口下の区画内,すなわち降雨時にハッチが開放されているとした場合に雨の入り込む区画にのみ散在していること,②本件降雨時には,第2船艙及び第3船艙の各下部船艙は,門司向けレアルばら積み魚粉の積載が終わり,第3船艙下部船艙では,鹿島向けインテグラル袋詰魚粉の積付けが進行中であったが,このときに積み込まれていた袋詰魚粉ないしばら積み魚粉の最上部の高さが発熱損害が発生している高さと一致することからも裏付けられる。 また,第2船艙下部船艙のばら積み魚粉の中から大量のうじ虫が発見されたが,これも雨濡れしたことの証拠である。 (カ) 通風換気不足(第1船艙から第4船 ている高さと一致することからも裏付けられる。 また,第2船艙下部船艙のばら積み魚粉の中から大量のうじ虫が発見されたが,これも雨濡れしたことの証拠である。 (カ) 通風換気不足(第1船艙から第4船艙までの各下部船艙について)第1船艙から第4船艙までの各下部船艙で生じたかび損は,通風換気が確保されるような積付けがされなかったこと及び航海中適切な通風換気がされなかったことによる結露が原因である。 イ本件貨物の抗酸化剤処理不足が原因でないこと(ア) 抗酸化剤によって適切に処理された魚粉であって,水分含有率が5% を超え12%以下,脂肪含有率が15%以下のものは,IMDGコードクラス9の「その他の危険物」に分類されている。そしてIMDGコードは,抗酸化剤処理の方法や輸送船舶積込み時におけるエトクシキン(抗酸化剤)濃度や貨物の温度についても規制している。このことは,逆にいうと,海上輸送に際して積付け及び積荷の管理が積載地において適切にされていれば,発熱や発煙等の問題を起こすことはないことを意味する。 (イ) 本件貨物は,荷送人から船積みのためマノリス号に引き渡された時点において,IMDGコードの定める基準値(水分含有率が5%を超え12%以下,脂肪含有率が15%以下,船積み時における抗酸化剤有効濃度100ppm以上,船積み時の貨物温度35℃又は気温に5℃を加えた温度のうち,いずれか高い方の温度以下であること)を満たしていた(なお,本件貨物五には,貨物温度に関する証明書がなかったが,本件貨物五のうち223tが第1船艙上部中甲板船艙に,残り302tが第3船艙中甲板船艙に積み付けられており,これらの区画では発熱は生じていないから,本件損害とは関係がない。)。 (ウ) 仮に,一審被告の主張するように抗酸化剤処理が不十分な魚粉の存在が発熱発火の原因であれば 中甲板船艙に積み付けられており,これらの区画では発熱は生じていないから,本件損害とは関係がない。)。 (ウ) 仮に,一審被告の主張するように抗酸化剤処理が不十分な魚粉の存在が発熱発火の原因であれば,再積付けとは関係のない第1船艙及び第3船艙の各中甲板船艙及び第4船艙下部船艙の魚粉も発熱発火する可能性があるが,これらの区画では一切被害がなかった。このように被害が生じた場所が再積付けと関係のある場所に限られていることにかんがみれば,発熱発火の原因は,抗酸化剤処理の不足ではなく,雨濡れと考えられる。 (3) 一審被告の責任(一審被告の主張)ア 「隠れた欠陥,特殊な性質又は固有の欠陥」による損害(ア) 別件貨物を含めた本件船積貨物は,すべて検査上IMDGコードクラス9の要件を満たしており,マノリス号の船長は,荷送人及び荷送人の検査会社からその旨の確認を得ている。それにもかかわらず,実際には抗酸化剤が均等に投与されていなかったものであり,これは,運送品の「隠れた欠陥,特殊な性質又は固有の欠陥」(以下「隠れた欠陥等」という。)に当たる。そして,本件損害は,上記の隠れた欠陥等により通常生ずべきものであるから,一審被告はヘーグ規則4条2項(m)により免責される。 (イ) なお,一審原告は,隠れた欠陥等を理由として一審被告が免責されるのは,本件貨物中に隠れた欠陥等が存在した場合のみであって,別件貨物に隠れた欠陥等が存在した場合には免責されるものではないと主張する。しかし,ヘーグ規則4条2項(m)の免責事項は,運送人の無過失の立証の負担を軽減したものであるから,上記のような場合にも適用されるべきである。仮に,運送品の種類が複数にわたる場合,運送品の隠れた欠陥等とは,損害の生じた当該運送品のみについてのものをいうとしても,本件のように運送品の種類が単一で 上記のような場合にも適用されるべきである。仮に,運送品の種類が複数にわたる場合,運送品の隠れた欠陥等とは,損害の生じた当該運送品のみについてのものをいうとしても,本件のように運送品の種類が単一である場合には,隠れた欠陥等は,当該運送品に限らず,同時に運送された同種の運送品のいずれかに存すれば足りるというべきである。 仮に,別件貨物に存する隠れた欠陥等がヘーグ規則4条2項(m)に該当しないとしても,同項(q)の「運送人又はその代理人若しくは使用人の故意・過失によらない原因」に該当し,上記(ア)のとおり,運送人たる一審被告,その代理人若しくは使用者に故意,過失はない。 イ一審被告の注意義務違反の不存在(ア) 本件船積貨物を雨濡れさせない義務及び雨濡れした魚粉を船積みさせない義務マノリス号の船長は,自ら本件船積貨物の船積みに立ち会って濡れた貨物が積み込まれないように監視し,その旨を荷役作業員に徹底しており,本件降雨の際に濡れた魚粉の袋は,実際には濡れていないものも含めて,念のため余裕をもって合計1119袋が取り除かれ,新たな袋と取り替えられた。 また,マノリス号の航海士及び甲板員は,積込み作業が行われている各船艙に立ち会い,雨が降り始めると,ハッチカバーは,彼らによって荷役作業員の手助けを借りて何度も適切に閉鎖されており,本件降雨の際の第4船艙の貨物の雨濡れ以外には,貨物の濡れはなかった。 したがって,一審被告が本件船積貨物を雨濡れさせない義務及び雨濡れした魚粉を船積みさせない義務に違反していないことは明らかである。 (イ) 本件船積貨物の温度を計測する義務マノリス号には,遠隔温度記録センサーがばら積み魚粉の中及びばら積み魚粉の上部に積み付けた袋詰魚粉の中に合計26個(第2及び第3船艙にそれぞれ13個ずつ)設置され,それらは航海を 度を計測する義務マノリス号には,遠隔温度記録センサーがばら積み魚粉の中及びばら積み魚粉の上部に積み付けた袋詰魚粉の中に合計26個(第2及び第3船艙にそれぞれ13個ずつ)設置され,それらは航海を通して監視され,正確な記録が維持された。 また,その他の船艙内の温度は1日3回手動で計測され,その結果は慎重に書き留められたばかりでなく,温度計測のために船艙に入ったときには,発熱の兆候あるいは発熱の臭いがないかも調べられた。 したがって,本件船積貨物の温度を計測する義務は尽くされている。 そもそも,魚粉は,優れて断熱性を有するため,煙が発生している魚粉の1m以内においても正常な温度が記録され得る。したがって,温度を計測しているからといって,早期に温度上昇を探知できるものではない。 (ウ) 本件船積貨物の積付け・通風換気を適切に行う義務IMDGコードでは,袋詰貨物をブロック積付けすることは特別の換気がなくても許されると規定しており,本件船積貨物についても,船艙内に通風路用のすき間を作らずに袋と袋をぎっしり詰めて積み付けることができ,危険性のない吸湿性貨物と同様の通常の通風換気方法で足りる。 そして,本件船積貨物は,前後及び船横方向の通風溝を設ける方法により積み付けられ,これら通風溝は積み付けられた山の十分な高さに達するまで設けられ,揚げ地に到着するまでその溝もふさがれたり遮られたりしなかった。 したがって,本件船積貨物の積付けはIMDGコードに従った適切な方法によるものであり,一審被告が本件船積貨物の適切な積付けにつき注意を尽くしたことは明らかである。 また,マノリス号は,機械による自動換気システムを備えており,航海中,天候の許す限り毎朝電源を入れて晩に電源を切ることより慎重に通風換気が実施されたから,通風換気を適切に実施する注意義務も尽 る。 また,マノリス号は,機械による自動換気システムを備えており,航海中,天候の許す限り毎朝電源を入れて晩に電源を切ることより慎重に通風換気が実施されたから,通風換気を適切に実施する注意義務も尽くされている(なお,一審原告が主張する各下部船艙のかび損の程度は,前記のとおり,全く表面的なもので無視できる程度のものにすぎなかったから,損害は生じていない。また,考慮に値する量のかび損が実際に存在していたとしても,ある程度のかび損は不可避のものであり,一審被告に過失はない。)。 局地的な凝結を回避する唯一の手段は,船舶に湿度を管理することができる換気システムを備えることであるが,IMDGコードクラス9に該当する魚粉の輸送に当たっては特別の換気を必要としないことにかんがみれば,このような特殊な換気システムを備える必要はない。IMDGコードクラス9の魚粉の運送については,マノリス号のような船舶が通常備えている表面通風システムで十分である。 以上のとおり,一審被告は注意義務を尽くしたものであるから,一審被告は,ヘーグ規則4条2項(q)により免責される。 ウ不足ないし不着損害について本件貨物に係る船荷証券には不知文言が付されている。マノリス号には約20万袋,重量にして1万t以上もの魚粉が船積みされたのであり,それだけの貨物を検量することは時間的・経済効率的制約からできず,重量が正確であることを確認する適当な方法はなかったし,本件船荷証券に記載されている重量はいずれも端数のない丸い数字であること,「1袋当たりの重量は約50キロ」と極めて曖昧な記載がされていることからすれば,重量が実際に自己が受け取った物品を正確に表示していないと疑うべき正当な理由もあるから,上記不知文言は有効であり,一審被告は,船荷証券記載の重量の正確性について責任を負わず,不足 ることからすれば,重量が実際に自己が受け取った物品を正確に表示していないと疑うべき正当な理由もあるから,上記不知文言は有効であり,一審被告は,船荷証券記載の重量の正確性について責任を負わず,不足ないし不着損害について賠償する責任を負わない。 (一審原告の主張)ア 「隠れた欠陥等」による損害に該当しないこと運送品の隠れた欠陥等を理由として運送人が免責されるのは,損害が生じた当該運送品に隠れた欠陥等が存在した場合のみであるから,本件貨物以外の運送品に隠れた欠陥等が存在した場合には,一審被告は免責されるものではない。 そして,一審被告の主張によれば,第2船艙中甲板船艙では,鹿児島向けインデマルが,第4船艙中甲板船艙では鹿島向けインペカが,抗酸化剤不足のため発火源になったというのであるが,これらはいずれも本件貨物でないから,一審被告の主張は主張自体失当である。 イ運送品に関する注意義務違反へーグ規則4条2項(q)の免責を主張する運送人は,自身又はその代理人若しくは使用人の無過失の証明をするだけでは不十分であり,損害の原因を明らかにした上に,自身のみならず代理人若しくは使用人の故意又は過失が損害の原因と関係ないことの証明を要する。 (ア) 雨濡れした魚粉の船積み前記のとおり,抗酸化剤処理済みの魚粉であっても,水濡れして部分的にその水分含有率が20%を超えるとその部分の魚粉の中でバクテリアが繁殖し,その結果発熱し,焦げないし燻り現象が始まることが知られており,IMDGコードクラス9に関する規定においても,濡れた袋は船積みしないことが定められているにもかかわらず,被告は,IMDGコードクラス9に関する規定に違反して,積込み中に雨濡れした貨物を積み戻した。 (イ) 本件船積貨物の積込み及び船内保管作業に欠陥があったこと1974年の海上に いるにもかかわらず,被告は,IMDGコードクラス9に関する規定に違反して,積込み中に雨濡れした貨物を積み戻した。 (イ) 本件船積貨物の積込み及び船内保管作業に欠陥があったこと1974年の海上における人命の安全のための国際条約は,荷送人は船積書類を作成するに当たり,貨物が運送に適した状態にあることを示す署名ある証明書を添付しなければならないこと,危険物はその性質に応じて安全かつ適切に積み付けられなければならないこと,危険物を運送する船舶は船内にある危険物及びその位置を示す特別の一覧表を備えなければならないこと,以上の規定に従わない危険物の運送は禁じられることを定めている。 本件貨物については,その荷送人は,船積みのためマノリス号に引き渡すに際してIMDGコードの定める船積前証明書を提出したが,別件貨物についてみると,一審被告は,別件貨物三,八及び九については何らの船積前証明書も取り付けず,別件貨物一一及び一二についても,仮船積前証明書の呈示を受けただけで,以上について抗酸化剤濃度を示す正規の船積前証明書を取り付けないまま,マノリス号に積み込み,出港した。 また,一審被告は,EMPRESAPESQUERAPOLARS.A. という得体の知れない袋詰魚粉も相当数マノリス号に積載している。この袋詰魚粉は,第2船艙中甲板船艙左舷側の焦損場所の中段付近及び第2船艙中甲板船艙右舷側後部に積み付けられていたが,このような貨物の積付けを見逃したということは,マノリス号には魚粉を積み込むに際しての人的堪航性も欠落していた。 (ウ) 温度管理についてIMDGコードクラス9の危険物に適用される規定によれば,貨物船がこのような貨物を海上運送する場合,1日3回以上温度を計測し,記録すべきものとされている。 一審被告は,本件貨物を海上運送する際,上記規 MDGコードクラス9の危険物に適用される規定によれば,貨物船がこのような貨物を海上運送する場合,1日3回以上温度を計測し,記録すべきものとされている。 一審被告は,本件貨物を海上運送する際,上記規定に従った温度計測をしなかった。もし計測していれば,早期に温度上昇を探知し,炭酸ガス等を注入することにより発熱を抑圧することができたのに,これを怠ったために,損害の発生,拡大を防止できなかった。 (エ) 本件船積貨物の積付け及び通風換気を適切に行う義務第1船艙から第4船艙までの各下部船艙に積み付けられていた本件積込貨物については,通風換気が確保されるような積付けがされておらず,また,航海中適切な通風換気がされなかった。第4船艙中甲板船艙は,本件降雨後,いったん貨物が陸揚げされたが,同区画については,ふき取りも,乾燥させる措置もとられないまま貨物陸揚げの終了と同時に再積込みが行われ,さらに再積込みされた貨物の一部には雨濡れしたままの貨物も含まれており,同区画は他の区画に比べ多量の湿気を含んだ状態のまま船積輸送された。 ウ不足・不着損害一審被告は,三菱商事に対し,本件船荷証券の記載通りの運送品を引き渡す義務があるから,運送品の不足ないし不着について,債務不履行による損害賠償責任を負う。 本件船荷証券における不知文言は印刷されたものであるが,不知文言の記載は個別的にされるべきであるから,このような印刷された不知文言は無効である。また,一審被告は,本件貨物の重量について疑いを抱いた形跡はなく,もし,荷送人の通告を正確でないと疑ったのなら,自ら重量を計測するのに何の障害もなかった。したがって,ヘーグ規則3条3項ただし書の規定にかんがみ,本件船荷証券の不知文言は,少なくとも重量の記載に関する限り無効である。 エ予備的主張(不法行為責任)前記(2) のに何の障害もなかった。したがって,ヘーグ規則3条3項ただし書の規定にかんがみ,本件船荷証券の不知文言は,少なくとも重量の記載に関する限り無効である。 エ予備的主張(不法行為責任)前記(2)の一審原告の主張欄記載の事実及び上記イの事実に照らせば,一審被告は,本件損害について,三菱商事に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 (4) 損害額について(一審原告の主張)ア本件貨物の損害額 7566万4743円本件貨物の平成元年5月末前後における正品市価は,1t当たり7万7000円であるから,これに全損換算の総重量である982.659tを乗じた合計7566万4743円が本件貨物の損害額となる。 イ鑑定料 60万円三菱商事は,本件事故が発生したために鑑定費用として60万円を支払った。 ウ弁護士費用 458万9362円エ合計 8085万4105円第3 当裁判所の判断 1 魚粉の性質及び海上輸送における規制魚粉は,各種の魚類の全魚体又は一部を,そのまま,又は油脂を分離した後に,乾燥して粉末にしたものであり,家畜の飼料に用いられている。 エクアドルにおける魚粉の製造工程は,原材料のイワシやサバなどを煮沸して圧搾機により水分及び油脂分を除去し,粗い粉の状態にまで粉砕し,加熱キルンを通してから乾燥機に通し,更に風によって粉末状にし,サイロで細かいほこりを除去し,ベルトコンベア等に載せて液状の抗酸化剤を機械制御によりノズルから撒布し,袋詰めした後,倉庫で貯蔵して,自然乾燥を兼ねて温度を常温まで下げるというものである。 魚粉の原材料であるイワシなどは,油脂(不飽和脂肪)含有量が多く,それを加工した魚粉も不飽和脂肪の含有量が多くなる傾向があり,通常6から14%の不飽 燥を兼ねて温度を常温まで下げるというものである。 魚粉の原材料であるイワシなどは,油脂(不飽和脂肪)含有量が多く,それを加工した魚粉も不飽和脂肪の含有量が多くなる傾向があり,通常6から14%の不飽和脂肪を含んでいる。この不飽和脂肪は常温において容易に酸化し,これが変色等の品質低下をもたらすばかりでなく,酸化の過程で発熱し,発火に至る可能性もある。そこで,魚粉に含まれる不飽和脂肪の酸化現象を抑制するため,製造過程で抗酸化剤が添加される。抗酸化剤のうち最も広く用いられているのがエトクシキンである。抗酸化剤は,魚粉中の不飽和脂肪の酸化が進行するにつれて消費され,袋詰魚粉の場合,通常の保管状態において1か月当たり約55から60ppmの割合でエトクシキンが減少する。 また,魚粉の水分含有量が低くなると発熱しやすくなるが,逆に,水分含有率が13%を超えるとかびが生長し,より水分含有率が高くなると(例えば20%程度)バクテリアの生長が促進される。バクテリアの生長は発熱を伴い,これが脂肪の酸化による自発的な熱発生を加速させ,抗酸化剤の消耗を引き起こし,発火の危険を増大させる。この場合,1袋全体が20%程度の水分含有率に達する必要はなく,1袋のうちのある程度の量(数㎏)の魚粉の塊においてそのような水分含有率に達した場合,発熱発火に至るおそれがある。 このように,魚粉は,発熱発火の潜在的危険性を有していることから,その海上輸送はIMDGコードによる規制の対象とされており,抗酸化剤処理されていない魚粉は,自然発火しやすい物質として,クラス4.2に分類されている。また,抗酸化剤処理がされた魚粉はクラス9の「その他の危険物及び物品」に分類されているが,クラス9の要件を満たすためには,水分含有率は5%を超え12%以下,脂肪含有率は15%以下とされ,船積み前の1 また,抗酸化剤処理がされた魚粉はクラス9の「その他の危険物及び物品」に分類されているが,クラス9の要件を満たすためには,水分含有率は5%を超え12%以下,脂肪含有率は15%以下とされ,船積み前の12か月以内の製造時に400ないし1000ppmの濃度のエトクシキン等の抗酸化剤で有効処理される必要があり,船積み時における抗酸化剤の有効濃度は100ppm以上であること,水分含有率,脂肪含有率,船積時における抗酸化剤濃度等が記載された当局からの証明書を添付すること,濡れた袋又は損傷した袋は船積みしないことなどが要求されている。 (甲24,29,54,56,63の1,2,甲74,75,乙1,8の2,乙9) 2 本件船積貨物の積付け及び損害の発生状況等(1) マノリス号は,グアヤキル港を出航後,鹿島,名古屋,鹿児島,門司の順に寄港して各仕向地あての貨物を荷揚げすることとなっていた。本件船積貨物は,平成元年4月13日から同年5月1日にかけて船積みされたが,本件貨物一,二及び五(インテグラル)については,検査機関である SGS Del  EcuadorS.A.(以下「SGS」という。)が,本件貨物三及び四(レアル)については,検査機関である EcuatorianadeSupervisionesC. Ltda. (以下「EDS」という。)が,船積み前の同年4月4日から同月19日にかけて,それぞれ,水分及び脂肪の含有率並びに抗酸化剤濃度を検査した次の内容の船積前証明書が存在している。 水分脂肪分抗酸化剤本件貨物一 7.16% 8.85% 約450ppm本件貨物二 7.16% 8.85% 約450ppm本件貨物三 8.77% 本件貨物一 7.16% 8.85% 約450ppm本件貨物二 7.16% 8.85% 約450ppm本件貨物三 8.77% 7.00% 220.14ppm本件貨物四 9.52% 8.31% 325.45ppm本件貨物五 7.16% 8.85% 約450ppmしたがって,本件貨物の船積み前における水分,脂肪分及び抗酸化剤濃度の検査結果は,いずれもIMDGコードクラス9の要求値を満たしていた。 一方,別件貨物に対応するものと思われる船積み前の検査結果として本項末尾記載の内容のものが存在する。このうち,別件貨物一,二,五及び六(インテグラル)はEDSによって検査されており,船積前証明書が発行されている。一方,別件貨物三,八及び九(インペカ),四,七及び一〇(インデマル),一一及び一二(レアル)に対応する証明書はSGSによって検査されたものとして証明書が発行されているが,このうち,別件貨物三,八,九,一一及び一二については仮船積前証明書の数値,別件貨物四,七及び一〇については抗酸化剤証明書記載の数値であり,これらについて,正規の船積前証明書が存在するかどうかは証拠上明らかでない。また,別件貨物三,八及び九については,証明書記載の数量が実際の数量と異なっており,真実これら貨物に係る検査結果であるのか疑いがある。 また,上記証明書のほかにも,本件船積貨物と関係があると思われる証明書の類が存在しており,結局別件貨物については,証明書と船積みされた貨物との対応関係を完全に特定することはできない。 マノリス号の危険貨物リストによれば,本件船積貨物すべてについてIMDGコードクラス9の要件を満たしていた旨の記載があり,マ ,証明書と船積みされた貨物との対応関係を完全に特定することはできない。 マノリス号の危険貨物リストによれば,本件船積貨物すべてについてIMDGコードクラス9の要件を満たしていた旨の記載があり,マノリス号の船長Aもその旨の船積前証明書が完備していた旨陳述している(乙12)が,以上の認定に照らし,その内容には疑問が残る。 水分脂肪分抗酸化剤別件貨物一及び二 9.40% 7.07% 281.5ppm別件貨物三,八及び九記載なし記載なし判読不能別件貨物四記載なし記載なし 610ppm別件貨物五 9.02% 10.00% 284.04ppm別件貨物六 8.09% 9.79% 302.00ppm別件貨物七記載なし記載なし 610ppm別件貨物一〇 記載なし記載なし 610ppm別件貨物一一 7.16% 8.85% 854ppm別件貨物一二 7.16% 8.85% 854ppm(甲29,33,34,36,38,39,41,42,44,45,63の1,2,甲75,乙13,18の1から3まで,乙19の1から5まで,7,8)(2) 平成元年4月20日午後5時ころから降り出した本件降雨のため,マノリス号における船積作業は中止され,すべてのハッチカバーを閉鎖する作業が始まった。当時,第1船艙では上部中甲板船艙に鹿児島向け袋詰魚粉が船積み途中であり,第2船艙では下部船艙の門司向けばら積み魚粉の荷ならしがトラクターを用いて行われており のハッチカバーを閉鎖する作業が始まった。当時,第1船艙では上部中甲板船艙に鹿児島向け袋詰魚粉が船積み途中であり,第2船艙では下部船艙の門司向けばら積み魚粉の荷ならしがトラクターを用いて行われており,第3船艙では下部船艙の門司向けばら積み魚粉の荷ならしの終了後,その上の一部に鹿児島向け袋詰魚粉の積荷作業が行われていたところであった。 また,第4船艙においては,中甲板船艙において積荷作業が行われていたところであったが,ハッチカバーが閉鎖作業の途中で故障し,後方約半分は閉鎖したものの,前方約半分が開いたままの状態で動かなくなってしまい,ハッチカバーが閉鎖された午後5時45分までの間,第4船艙のハッチの開いた部分から中甲板船艙内に雨が降り込んだ。 マノリス号の船積作業は,雨がやんだ後の同日午後8時から再開された。 同月21日,EDSは,インテグラル社を代理して,検査員Bの名で,マノリス号の第4船艙のハッチカバーの故障で適時に閉まらなかったことにより船艙内にぎっしり詰められていた魚粉が濡れたことに抗議し,インテグラル社においてはこの魚粉が重大な損害を被り最終荷受人によって問題とされるかもしれない場合のクレームを留保する旨の「抗議状」をマノリス号の代理店トランスオセアニカに発した。 同日午後3時25分ころ,船主の責任保険者であるノース・オブ・イングランド・プロテクティング・アンド・インデムニティ・アソシエイション・リミテッド(船主責任相互保険会社,以下「P&Iクラブ」という。)の現地代表者Cが第4船艙の貨物検査のため乗船し,第4船艙のハッチが開けられた。Cは,前部の袋詰魚粉について上から3段とその後部の1段の合計約910ないし950袋程度を荷揚げすることを船長に指示するとともに,船積み再開前に新しい検査証明書が発行されることを求めた。この指示に基 Cは,前部の袋詰魚粉について上から3段とその後部の1段の合計約910ないし950袋程度を荷揚げすることを船長に指示するとともに,船積み再開前に新しい検査証明書が発行されることを求めた。この指示に基づき,同日午後3時30分から翌22日午後2時15分にかけて,鹿島向けインテグラル1119袋が荷揚げされ,新品(本件貨物三の一部)と取り替えられた。この新品のEDSによる検査結果は,水分含有率7.47%,脂肪含有率7.54%,抗酸化剤濃度243.26ppmであった。 この時点で,第4船艙中甲板船艙には8331袋(本件貨物三の一部及び別件貨物一又は二のうちの一部が含まれる。)が残っていた。P&Iクラブはこの検査をEDSに依頼したが,EDSは船上では検査できないとして荷揚げを要請した。また,そのころ,第4船艙中甲板及び下部船艙上部に鹿児島向け貨物の代わりに誤って鹿島向け及び名古屋向け貨物が積み付けられていたことが判明し,同月24日午後9時から同月26日午後10時50分までにかけて,同船艙中甲板船艙に残っていた上記8331袋及び下部船艙上部に積み付けられていた名古屋向けインテグラル503袋(別件貨物一又は二のうちの一部)の合計8833袋(約440t)が荷揚げされ,その20分後の同日午後11時10分から第4船艙下部船艙に正しい貨物の船積みが開始された。 上記8833袋については,そのうちひどく水濡れしていた少量の袋が取り除かれたほかは,新品と取り替えられた上記1119袋と共にマノリス号に再船積みされた。これらのうち,名古屋向けインテグラル4908袋は,第2船艙中甲板船艙の中段に2層に分けて積み付けられ,その他の全部又は大部分が第4船艙中甲板船艙に積み付けられた(一部が第1船艙上部中甲板船艙の最上部に積み付けられた可能性もある。)。 なお,再積付貨物のう 甲板船艙の中段に2層に分けて積み付けられ,その他の全部又は大部分が第4船艙中甲板船艙に積み付けられた(一部が第1船艙上部中甲板船艙の最上部に積み付けられた可能性もある。)。 なお,再積付貨物のうちインテグラル300tについては,船主側の依頼に基づき同月26日EDSによって検査され,水分含有率8.00%,脂肪含有率7.60%,船積時抗酸化剤濃度177.54ppmとの検査結果が得られたが,その証明書には,「マノリス号の4番船艙下部甲板に鹿児島向けとして積み付けられていて,雨に濡れたためにそこから取り出され,荷送人の倉庫に戻されていた抗酸化剤処理済みの袋詰め魚粉300t」と記載されている一方,通常のEDSの船積前証明書に記載されている「予定された航海に対し合理的に安全な状態であると判断した」との文言が記載されていない。 (甲1,26の1,甲28,29,46から48まで,50,59から61まで,63の1,2,乙3,5,8の1,2,乙12,証人C)(3) 同年5月1日出港時におけるマノリス号における積付け状況は,次のとおりであった。 ア第1船艙(ア) 上部中甲板船艙最上部に鹿島向けインテグラル600袋(29t)及び同レアル712袋(36t)が積み付けられ,その下に鹿児島向けレアル4400袋(223t)及び同インテグラル1435袋(69t)が積み付けられていた。 (イ) 下部中甲板船艙鹿児島向けインテグラル9600袋(459t)が積み付けられていた。 (ウ) 下部船艙鹿児島向けインテグラル9720袋(465t)が積み付けられていた。 イ第2船艙(ア) 中甲板船艙貨物はハッチ・コーミング(艙口縁材)の最上部より30から50㎝下の高さまでぎっしりと積み付けられており,鹿島向けレアル1万3816袋(700t)がハッチウェー内部に18~19 (ア) 中甲板船艙貨物はハッチ・コーミング(艙口縁材)の最上部より30から50㎝下の高さまでぎっしりと積み付けられており,鹿島向けレアル1万3816袋(700t)がハッチウェー内部に18~19段の高さに積み付けられ,その下に名古屋向けインテグラル3463袋(155t),同インデマル4267袋(214t),同インテグラル1445袋(65t),同インペカ2092袋(105t)及び鹿児島向けインデマル4829袋(242t)が11~12段に積み付けられていた。積み付けの間には4本(船首尾方向に1本,船横方向に3本)の通風溝が設けられていたが,貨物とハッチ・コーミングの間には通風溝が設けられていなかった。上記通風溝で区切られた前方の2つの区画はいずれも1段当たり約8袋×5袋,その他の6つの区画はいずれも1段当たり約10袋×5袋が積み付けられていた。 (イ) 下部船艙上部に鹿児島向けインデマル762袋(38t)及び同インテグラル1万4526袋(695t)が12~13段に積み重ねられ,その下に門司向けレアルばら積み1598tが積み付けられており,ばら積み魚粉と袋詰魚粉との間には2層の厚板荷敷が設けられていたほか,袋詰貨物の2から4段ごとに荷敷板があてがわれていたが,場所によってはないところもあった。 通風溝は,船横方向に1本,船首尾方向に3本設けられていた。 ウ第3船艙(ア) 中甲板船艙最上部に鹿島向けレアル1万1607袋(589t)が積み付けられ,その下に名古屋向けインテグラル9142袋(410t),同インデマル2000袋(101t)及び鹿児島向けレアル5955袋(302t)が積み付けられていた。貨物の外縁部に通風溝が設けられていた。 (イ) 下部船艙上部に鹿児島向けインテグラル2万1478袋(1028t)が約15段に積み付けられ,その レアル5955袋(302t)が積み付けられていた。貨物の外縁部に通風溝が設けられていた。 (イ) 下部船艙上部に鹿児島向けインテグラル2万1478袋(1028t)が約15段に積み付けられ,その下に門司向けレアルばら積み1552tが積み付けられており,荷敷板及び通風溝の状況は,第2船艙下部船艙とほぼ同様であった。 エ第4船艙(ア) 中甲板船艙貨物は中甲板全部にわたってハッチウェーではハッチ・コーミングまで,他の部分では甲板下50㎝の高さにまで積み付けられていた。貨物は非常に緊密に積み付けられており,袋の間の間隔は非常に狭くなっていた。最上部に鹿島向けインテグラル4470袋(221t)がハッチウェーでは11段,その他の部分では7~8段の高さに積み付けられ,その下に鹿児島向けインペカ8367袋(420t)及び同インデマル8449袋(422t)が約18段に積み付けられていた。通風溝は,船横方向に1本,船首尾方向に1本の十字状に設けられ(幅約30㎝),通風溝によって区切られた4つの区画はいずれも1段当たり約12袋×6袋であり,貨物の3,4段毎に荷敷板があてがわれていた。また,前方及び後方のロッカー内にも11~13段の袋詰魚粉が積み付けられていた。 (イ) 下部船艙袋詰魚粉が20段に積み重ねられており,そのうち上部に鹿児島向けインデマル660袋(33t)が,下部に同インテグラル6877袋(329t)が積み付けられていた。 オ本件貨物の積付け位置上記のアからエまでのように積み付けられた本件船積貨物のうち,本件貨物は,次のとおり積み付けられた。 本件貨物一及び二(鹿島向けレアル)は,第1船艙の上部中甲板船艙,第2船艙の中甲板船艙及び第3船艙の中甲板船艙の各上部に積み付けられ,本件貨物三(鹿島向けインテグラル)は,第1船艙の上部中甲板船 本件貨物一及び二(鹿島向けレアル)は,第1船艙の上部中甲板船艙,第2船艙の中甲板船艙及び第3船艙の中甲板船艙の各上部に積み付けられ,本件貨物三(鹿島向けインテグラル)は,第1船艙の上部中甲板船艙及び第4船艙の中甲板船艙の各上部に積み付けられ,本件貨物四(鹿児島向けインテグラル)は,第1船艙の3つの船艙並びに第2船艙,第3船艙及び第4船艙の各下部船艙に積み付けられ,本件貨物五(鹿児島向けレアル)は,第1船艙の上部中甲板船艙及び第3船艙の中甲板船艙下部に積み付けられていた。 (甲10,16,29,乙11の5,6)(4) 航海中の同年5月22日,第4船艙中甲板船艙左舷後部の貨物から煙が出ているのが発見された。温度は60~70℃で,貨物の6段目から8段目に進むにつれて温度が上昇しており,直ちに第4船艙中甲板船艙の開口部が閉鎖され,開口部とハッチカバーの密封が実施され,発熱を抑えるために炭酸ガスが注入された。 第4船艙中甲板船艙内には,その後も同年6月4日までほぼ毎日炭酸ガスが注入され,同年5月24日には下部船艙内にも炭酸ガスが注入された。 鹿島沖に錨泊中の同月27日には,第2船艙中甲板船艙左舷部からも少量の煙が出ているのが発見され,同所にも炭酸ガスが注入された。同月30日朝には,第2船艙中甲板船艙左舷部前方のハッチ・コーミングで70~75℃を計測した。 同年6月5日,マノリス号は鹿島港南公共埠頭に接岸し,同月7日まで荷揚げ作業が行われ,同月5日以降,三菱商事が依頼した日本海事検定協会,船主側のP&Iクラブが依頼したパーフェクト・ランバート・アンド・カンパニー及び新日本検定協会の各検査員による検査が行われた。 マノリス号は,同月7日,鹿島港を出港し,同月9日名古屋港に接岸した。名古屋港で荷揚げをした後,同月13日名古屋港を出港し,同月15 ・カンパニー及び新日本検定協会の各検査員による検査が行われた。 マノリス号は,同月7日,鹿島港を出港し,同月9日名古屋港に接岸した。名古屋港で荷揚げをした後,同月13日名古屋港を出港し,同月15日に鹿児島港に到着し,同月24日まで荷揚げ作業が行われ,同月15日以降,鹿島港におけると同様,日本海事検定協会,パーフェクト・ランバート・アンド・カンパニー及び新日本検定協会の各検査員による検査が行われた。その後,マノリス号は,鹿児島港を出港し,同月26日ころまでに門司港に到着し,ばら積み魚粉を荷揚げした。 (甲16,63の1,70,乙3,6の2,3,乙11の1から3まで,乙12,13,証人D,同E)(5) 鹿島港において確認された本件船積貨物の状況は次のとおりであった。 ア第1船艙貨物は良好な状態で発熱もかびもなかった。 イ第2船艙中甲板船艙左舷部鹿島向けの貨物の全量,特に最上部に積み付けられた貨物及び積み付けられた貨物の中の通風溝に沿った場所の貨物が煙により甚だしく汚損され,積付けの右舷前方隅近くには1m四方,深さ1.5mの貨物の燻りによって生じた空洞があり,燻りは名古屋向け貨物の底部にまで達していた。なお,この付近には,EMPRESAPESQUERAPOLARS.Aと袋に記載された袋詰魚粉が積み付けられていた。 ウ第2船艙中甲板船艙右舷部左舷部と同じように積み付けられており,鹿島向け貨物の全量が煙の影響を受けており,特に通風溝付近の貨物が甚だしく煙により汚損されていた。 エ第3船艙中甲板船艙貨物は良好な状態で発熱もかびもなかった。 オ第4船艙中甲板船艙鹿島向けと鹿児島向けの間に荷敷板が十文字にあてがわれていたが,荷敷板のほとんどが鹿児島向けの袋の間の隙間の上に並べられていた。最上部の貨物はすべて甲板の裏面とハッ た。 オ第4船艙中甲板船艙鹿島向けと鹿児島向けの間に荷敷板が十文字にあてがわれていたが,荷敷板のほとんどが鹿児島向けの袋の間の隙間の上に並べられていた。最上部の貨物はすべて甲板の裏面とハッチカバーから滴下した汗によって濡れており,それらの袋のうち多くにはかびが生じていた。ハッチウェーの後部では鹿島向け貨物の中間層及び下部層の貨物が発熱し,硬化して褐色に変色していた。その下の鹿児島向け貨物も燻っていた。他の部分の貨物は外観上正常に見えたが,煙のにおいに染まっていた。 (甲16,63の1,乙11の2,3,乙13)(6) 名古屋港,鹿児島港及び門司港において確認された本件船積貨物の状況は次のとおりであった。 ア第1船艙下部船艙において,船側及び底部の約50tの貨物に結露のためかびが生じていた。 イ第2船艙中甲板船艙左舷部右舷前方隅近くの名古屋向け貨物は,重度の汚れ及び変色を伴って焦げていた。鹿児島向け貨物(底部から4~5段)は外見上の汚れに限られていた。 ウ第2船艙中甲板船艙右舷部名古屋,鹿児島向けとも甚だしい煙汚損,熱損がみられ,中央線隔壁近くでは固化し,汚損していた。 エ第2船艙下部船艙中甲板船艙左舷部の前側のハッチ・コーミングは煙のため汚れていた。鹿児島向け袋詰め魚粉の下から6~7段が,部分的に発熱,固化の損傷を被っており,その下のばら積み魚粉も発熱していた。すべての袋が中甲板から侵入した煙の影響を受けていた。その他,相当数の袋が船側において結露のためかびていた。門司向けばら積み魚粉は,かなり均一に約30㎝の深さまで甚だしく発熱,変色しており,深さ平均1.25m位まで損害を受けていた。ばら積み魚粉の辺縁部にもかびが発生していた。また,ばら積みの魚粉の中に大量のうじ虫が発見された。 オ第3船艙中甲板船艙 で甚だしく発熱,変色しており,深さ平均1.25m位まで損害を受けていた。ばら積み魚粉の辺縁部にもかびが発生していた。また,ばら積みの魚粉の中に大量のうじ虫が発見された。 オ第3船艙中甲板船艙貨物は良好な状態であった。 カ第3船艙下部船艙鹿児島向けの袋詰魚粉の下方5,6段が部分的に発熱,固化し,その下のばら積み魚粉も発熱していた。船側に積み付けられていたほとんどすべての袋が結露のためかびていた。ばら積み魚粉は全体にわたって約30㎝の深さまで甚だしく発熱し,深さ平均1.65mまで損害を受けていた。ばら積み魚粉の外縁部近くや船側付近でかびが発生していた。 キ第4船艙中甲板船艙中央部分を中心に貨物が熱損害を被っていた。側壁に沿って,多くの袋にかびが発生していた。ロッカー内の貨物は外観上正常であった。 ク第4船艙下部船艙発熱した貨物はなかったが,中甲板からアクセス・ハッチを通して煙が侵入し,すべての袋が煙により軽度に影響されていた。約50tの袋が,船側,底部及び積み付けられた貨物の中の通風溝の周囲でかびていた。 (甲16,29,63の1,甲70,乙9,11の4から6まで,乙13,証人E)(7) 本件貨物の損傷状況については,日本海事検定協会及び新日本検定協会の検査結果により,以下のとおりと認められる。 ア本件貨物一から三まで(鹿島向け貨物分)について正味重量(t) 損率全損換算数量(t)煙損(程度軽) 135.877 20% 27.175(第4船艙中甲板船艙)煙損(程度中) 342.717 40% 137.087(第2船艙中甲板船艙右舷部)煙損(程度重) (第4船艙中甲板船艙)煙損(程度中) 342.717 40% 137.087(第2船艙中甲板船艙右舷部)煙損(程度重) 320.022 60% 192.013(第2船艙中甲板船艙左舷部)濡れ損・かび損 38.483 60% 23.090(第4船艙中甲板船艙)発熱・固化損 47.588 70% 33.312焦損 11.208 80% 8.966合計 421.643イ本件貨物四及び五(鹿児島向け貨物分)について正味重量(t)  損率全損換算数量(t)煙損(程度軽)  252.463 20% 50.493煙損(程度重)  634.330 43% 272.762かび損 158.146 50% 79.073発熱・固化損 105.821 65% 68.784合計 471.112(甲16,70,乙11の3,5,証人E。Dの陳述書(乙14)における陳述中,以上の認定に反する部分は採用できない。) 3 本件貨物の損傷の原因についての検討(1) 一審被告は,本件船積貨物は,検査上IMDGコードクラス9の要件を満たしていたが,抗酸化剤が均等に添加されておらず,これが発熱焦損等を引き起こしたものであり,雨濡れが原因ではないと主張し,Fの報告書(乙9,16)及び証人D(鹿児島港及 MDGコードクラス9の要件を満たしていたが,抗酸化剤が均等に添加されておらず,これが発熱焦損等を引き起こしたものであり,雨濡れが原因ではないと主張し,Fの報告書(乙9,16)及び証人D(鹿児島港及び門司港において本件船積貨物の損傷状況の検査を行ったパーフェクト・ランバート・アンド・カンパニーの検査員)の証言及び陳述書(乙8の1,2,乙14)を援用する。 確かに,本件船積貨物に係る魚粉の製造工場における抗酸化剤の添加方法は,ベルトコンベア上の魚粉に単一ノズルで直接抗酸化剤を吹き付けるというものであり,不均等が生じやすい方法であったこと,袋詰魚粉の検査は,1000袋から2000袋ごとに約72袋又は20袋の標本を選び,その中から検査資料を抽出して行われる標本調査であること,南米産の抗酸化剤処理済魚粉については,平成元年当時,抗酸化剤処理が不十分であったことが原因と疑われる発熱発火事故が時々発生しており,他に特別の原因が見当たらない場合には,抗酸化剤の不足あるいは不均等処理が発熱原因とされていたこと(甲26の1,29,63の1,甲70,75,乙1,9,14,16,証人E)からすると,本件船積貨物に生じた発熱焦損等は抗酸化剤処理が不十分であったことによって引き起こされたとの可能性も否定することができない。 (2) しかしながら,効果的に抗酸化剤処理され,船積時においてIMDGコードクラス9の要求値を満たす魚粉であれば,損害を及ぼすような発熱のおそれはないのであって(甲29,63の1,乙1),以下の事情を勘案すると,本件においては,本件降雨により本件船積貨物及び船艙内が雨濡れしたことにより本件船積貨物に発熱焦損等の損害が生じた可能性がより高いものと認められる。 ア Bは,本件降雨後マノリス号に乗船したが,魚粉の袋の間を通り抜けて雨水が第4船艙中甲板 物及び船艙内が雨濡れしたことにより本件船積貨物に発熱焦損等の損害が生じた可能性がより高いものと認められる。 ア Bは,本件降雨後マノリス号に乗船したが,魚粉の袋の間を通り抜けて雨水が第4船艙中甲板船艙の底部に達した可能性があるとの印象を受けた,同船艙から荷揚げされた貨物のうちの15~20袋がひどく濡れていて,うち3~4袋にはうじ虫が認められた,また,第2船艙と第3船艙のハッチカバーも迅速に閉鎖されなかったため,両船艙内の貨物も雨によって濡れた(又は湿った)と聞いた旨を陳述書(甲26の1,甲59)において述べている。 グアヤキル港における本件降雨の午後5時から午後6時35分までの降雨量は8.9㎜であり(甲25,29,68の1,2),この間平均的な強さで降雨があったとすると,第4船艙のハッチがハッチカバーの故障により開いていた約45分間の降雨量は約4.2㎜となる。これは並程度の降雨量であり(甲27),トランスオセアニカが当時作成した事実記録(甲4)においては RAINSHOWER(にわか雨)と表現されている。そして,第4船艙のハッチは幅11m,長さ13mの長方形(甲30,52,53)であり,その約半分が降雨時に開口していたのであるから,開口部の面積を71.5㎡とすると,45分間に開口部から船艙内に入った雨の量は約0.3â(約300㎏)となる。 本件船積貨物のうちの袋詰魚粉の包装は,ポリプロピレン製の編み袋であるが,積み重ねられた魚粉入りの袋に水を噴霧した場合,袋の表面に付着している魚粉に含まれる脂肪分のために雨水が袋の表面を流れ,袋と袋の隙間を伝って順次下段の袋に雨水が達し,袋に編み目の緩み,破れやくぼみがあると,そこに水がたまり,袋の内部に水分が浸透しやすいことが認められる。すなわち,袋に水が付着しても,直ちに内部に水分が浸透するわけ って順次下段の袋に雨水が達し,袋に編み目の緩み,破れやくぼみがあると,そこに水がたまり,袋の内部に水分が浸透しやすいことが認められる。すなわち,袋に水が付着しても,直ちに内部に水分が浸透するわけではなく,むしろ相当部分は袋の表面を伝って流れ落ちる。 そして,第4船艙中甲板船艙からは雨濡れしたとして最上部から3段程度鹿島向けインテグラル1119袋が荷揚げされているが,第4船艙のハッチカバーが開いていた間に同船艙内に降り込んだ雨量を考えれば,袋の状態や積付けの状態にもよるが,4段目以下の貨物の袋にまで雨水が達し,袋内部に水分が浸透する可能性は十分に存在するし,第4船艙中甲板船艙には十字状に幅約30㎝の通風溝が設けられていたから,通風溝に降り込んだ雨水が通風溝に接する貨物を濡らしたり,中甲板船艙の底部に達したという可能性も当然に存在する。 (甲63の1,甲75,77,78,88,乙7)ところで,Bの陳述(甲26の1,59)によると,同人は雨濡れの貨物の存在を認識し,これをマノリス号に積み込むべきではないと考えていたというのに,船主側の依頼に基づいて発行されたインテグラル300tに係る証明書にはその旨の記載はなく,結果としてこれがマノリス号に再積付けされている点は不可解といえなくもない。しかし,前記のとおり,上記証明書には通常のEDSの船積前証明書とは異なる文言が記載されていることに照らせば,上記陳述が信用できないとまではいえない。このほか,第4船艙中甲板船艙及び下部船艙から荷揚げされた8834袋(440t)のうちから水濡れした少量の袋が取り除かれていることも,再船積貨物中に雨濡れした貨物が含まれている可能性を示唆するものである。 また,上記300tの検査結果は,水分及び脂肪の含有率,抗酸化濃度ともIMDGコードクラス9の要求値を満たして ていることも,再船積貨物中に雨濡れした貨物が含まれている可能性を示唆するものである。 また,上記300tの検査結果は,水分及び脂肪の含有率,抗酸化濃度ともIMDGコードクラス9の要求値を満たしていたのであるが,前記のとおり,発熱を生じさせるためには1袋全体の水分含有率が20%に達している必要はなく,1袋のうちのある程度の量(数㎏)の魚粉の塊においてそのような数値に達していれば足りるのであるから,検査結果がクラス9の要求値を満たしていたからといって,発熱を引き起こすおそれがなかったとはいえない。 以上によれば,第4船艙中甲板船艙内に雨が降り込んだことにより,上記1119袋以外にも発熱を引き起こす程度に濡れた貨物が相当数存在していたとの可能性は十分に存在する。 また,本件降雨により第4船艙中甲板船艙底部や荷敷板に雨水が達した可能性があるが,同船艙内の水分を拭き取るなどして同船艙内を乾燥させる措置が執られたような事情もうかがわれないから,同船艙内の湿度は高かったものと推認され,平成元年4月20日午後5時45分から同月21日午後3時25分ころまでの約22時間,第4船艙のハッチカバーが閉鎖された状態にあったから,その間に第4船艙中甲板船艙内の貨物が水分を吸収した可能性もある。 イ本件船積貨物の発熱現象は,雨水が降り込んだ第4船艙中甲板船艙及び再船積貨物が積み付けられた第2船艙中甲板船艙で発生している一方で,再船積貨物が積み付けられなかった第3船艙中甲板船艙では発生していない。一審被告は,再船積貨物は第1船艙上部中甲板船艙最上部にも積み付けられている(鹿島インテグラル600袋,29t)のに,同所では発熱が生じていないと主張するが,再船積貨物が同船艙に積み付けられたかどうかは証拠上明らかではないし,再船積貨物すべてが発熱を起こすほどに濡れていた (鹿島インテグラル600袋,29t)のに,同所では発熱が生じていないと主張するが,再船積貨物が同船艙に積み付けられたかどうかは証拠上明らかではないし,再船積貨物すべてが発熱を起こすほどに濡れていたとも限らず,仮に第1船艙上部中甲板船艙に積み付けられたとしても,その数は少量であることに照らすと,このことをもって再船積貨物に雨濡れしたものがなかったとすることの根拠となるものではない。 また,一審被告は,熱は上方へ伝わることを根拠に,第2船艙中甲板船艙左舷部における発熱源は再船積貨物が積み付けられた箇所(名古屋向けインテグラル)よりも下の鹿児島向け貨物であると主張し,証人Dの証言及び陳述書(乙8の1,2,乙14)及びFの報告書(乙16)においてもこれに沿う証言及び陳述があることが認められるが,鹿児島向け貨物の4~5段に焦損は及んでいなかったものと考えられる(前記2(6)イ)上,同船艙にはハッチ・コーミングの最上部から30から50㎝下の高さまで約30段にわたってぎっしりと積み付けられていたのであって,Gの報告書(甲63の1,甲72)に記述があるように,このような場合,発熱源に接した部分から上方ばかりでなく下方へも順次熱が伝わるものと考えられるから,再積付貨物が発熱源であったとしても矛盾はないと考えられる。 以上のように,中甲板船艙における発熱箇所と雨濡れした可能性のある再積付貨物の積付場所との間には,有意な関係があるということができる。 さらに,第2船艙及び第3船艙の各下部船艙においては,袋詰魚粉とばら積み魚粉との境目を中心として発熱による損傷が生じているが,本件降雨当時,両船艙においてはばら積み魚粉の積込みが終了し,このうち第2船艙においては一部袋詰魚粉の積付けが始まっていた状況にあった上,上記損傷箇所は概ね両船艙の艙口の真下であると推認さ ているが,本件降雨当時,両船艙においてはばら積み魚粉の積込みが終了し,このうち第2船艙においては一部袋詰魚粉の積付けが始まっていた状況にあった上,上記損傷箇所は概ね両船艙の艙口の真下であると推認される(乙11の5)ことからすると,上記のような発熱による損傷状況は,具体性には欠けるものの,本件降雨の際に両船艙のハッチカバーの閉鎖が遅れ,両船艙内の貨物が雨で濡れたとするBの陳述にも符合している。 なお,Dも,同人作成に係るパーフェクト・ランバート・アンド・カンパニーの報告書(乙13)においては,中甲板船艙の発熱の原因としては水濡れが最もあり得る原因であると結論付けていたにもかかわらず,その後特段の理由なく上記のとおり見解を変更したものである(証人D)。しかも,同人は,第2,第3船艙下部船艙の熱損については,乙8の1の陳述書でも水分過剰の可能性を指摘しているところである。また,Fも,甲75の報告書では,相当に水濡れした幾らかの袋がサンプルから外れた可能性を完全に除去することはできないと述べているのである。 ウ証人Cは,本件降雨後,マノリス号に乗船して第4船艙の貨物検査を行った際,積荷の表面に一面に魚粉のほこりが付着しており,船首側半分の最上部の貨物上部には雨のしみ跡があったが,船尾側半分の積荷及び下の積荷には雨のしみ跡はなかったと証言及び陳述(乙7)しており,Aも雨濡れしたおそれのある袋はすべて取り除かれたと陳述書(乙12)で述べている。しかし,4段目以下の積荷や船艙底部に雨水が達する可能性も当然に考えられることは前記のとおりであり,視認による検査では袋の外観から雨濡れの有無・程度を判断することは困難である(甲75)から,上記の証言及び陳述は採用することはできない。 そして,本件船積貨物の発熱の原因が抗酸化剤処理が不十分であったことを 検査では袋の外観から雨濡れの有無・程度を判断することは困難である(甲75)から,上記の証言及び陳述は採用することはできない。 そして,本件船積貨物の発熱の原因が抗酸化剤処理が不十分であったことを積極的に裏付ける証拠はない。 (3) さらに,再船積貨物は約440tであるのに対し,EDSの上記検査はインテグラル300tを対象としていることからすれば,残りの約140tはインテグラル貨物ではなく,インペカ又はインデマル貨物であった可能性も考えられないではなく,いずれにせよこの約140tに対応する本件降雨後の検査証明書は存在しておらず,検査がされたかどうかも明らかでない。さらに,前記のとおり,第2船艙中甲板船艙には,EMPRESAPESQUERAPOLARS.Aと記された袋詰魚粉が積まれており,この貨物が別件貨物に属さない貨物である可能性もあるが(乙13),そうとすれば,これが船積み前に検査されたことをうかがわせる証拠は全くない。 したがって,これらの魚粉がIMDGコードクラス9の要件を満たしていたかどうかも疑問がある。また,上記のとおり,別件貨物すべてについてIMDGコードクラス9の要件を満たす正規の船積前証明書が添付されていたかどうかについても疑問が残る。 (4) 以上によれば,本件貨物に生じた煙損,発熱・固化損及び焦損は,IMDGコードクラス9の要件を満たした証明書が添付されている貨物について抗酸化剤処理が不十分であったことにより生じたものと認めるには足りず,むしろ,本件船積貨物が本件降雨によって濡れたことが原因である可能性がより高いものと認められるから,ヘーグ規則4条2項(m)の免責事由に該当するものということはできない。そして,本件船積貨物の雨濡れが上記損害の原因であるとすれば,IMDGコードに照らし,そのような貨物を積み込んだ 認められるから,ヘーグ規則4条2項(m)の免責事由に該当するものということはできない。そして,本件船積貨物の雨濡れが上記損害の原因であるとすれば,IMDGコードに照らし,そのような貨物を積み込んだことについて一審被告に過失があることは明らかであるし,また,本件貨物以外の本件船積貨物すべてがIMDGコードクラス9の要件を満たしていたかについても疑問が残るのであるから,同項(q)の免責事由にも該当するものと認めることもできない。 (5) 次に,本件貨物に生じた濡れ損及びかび損の原因について検討する。 第4船艙中甲板船艙に積み付けられていた本件貨物三に生じた濡れ損及びかび損は,同船艙内に雨が降り込んだことにより湿度が上昇したことに加えて,発熱を抑えるために同船艙内に継続的に注入された炭酸ガスにより船艙内の空気中の水分が凝結したことが原因である可能性が強い(乙8の1,2,14)。したがって,上記(4)と同様に,ヘーグ規則4条2項(q)の免責事由に該当するものと認めることはできない。 次に,第1船艙から第4船艙までの各下部船艙に積み付けられていた本件貨物四及び五に生じたかび損については,これらが船側で多く発生していること,かび損が発熱の起こっていない第1船艙及び第4船艙の各下部船艙内でも生じていることからすると,これらのかび損は,船艙内の水分を含んだ温かい空気が海水によって冷却され,結露が生じたことが主な原因と認められる(甲29,乙16)。 ところで,SGSによる魚粉の積付けに関するガイドラインでは,袋詰魚粉に関しては,袋は隔壁,船側,船殻と中甲板の底から貨物用当て木又は荷敷板を用いていずれも約15㎝離さなければならないこと,貨物の中に通風路を設けること等を推奨している(甲29,甲63の1)。そして,イードン・リディアード・アンド・ヴィンス・ 底から貨物用当て木又は荷敷板を用いていずれも約15㎝離さなければならないこと,貨物の中に通風路を設けること等を推奨している(甲29,甲63の1)。そして,イードン・リディアード・アンド・ヴィンス・カンパニー・リミテッドの報告書(甲29)及びGの報告書(甲63の1)によれば,上記かび損は適切な通風換気を怠ったことが原因であると指摘している。しかし,IMDGコードではクラス9の魚粉の積付け方法として,ブロック積付けが許容され,特別の通風換気は不要であるとされている(甲24)。そして,ばら積み魚粉については,SGSの上記ガイドラインにおいても通風溝の確保を要求していないが,本件においてはばら積み魚粉についてもかび損が発生していることも勘案すれば,各下部船艙の貨物の積付け方法が不適切であったということはできない(乙1,8の1,2,乙9,16)。さらに,航海中船艙内は機械による換気が行われていたものと認められ,通風換気の方法について不適切な点があったことも特にうかがわれない(乙8の2,乙12)。 以上によれば,本件貨物四及び五に生じたかび損については,一審被告に過失がなかったものとして,ヘーグ規則4条2項(q)の免責事由に該当するものと認めるのが相当である。 4 不足ないし不着損害について送り状及び船荷証券に記載された本件貨物一から三までの数量は合計3万1395袋,重量は合計1575tであり,本件貨物四及び五の数量は合計6万5124袋,重量合計は3150tである。これに対して,本件貨物一から三までについて鹿島での荷揚げ時に計測した結果は,3万1395袋,総重量1540.909t,正味重量1534.651tであり,本件貨物四及び五について鹿児島での荷揚げ時に計測した結果は,6万5163袋,総重量3094. 154t,正味重量3081.122tで 5袋,総重量1540.909t,正味重量1534.651tであり,本件貨物四及び五について鹿児島での荷揚げ時に計測した結果は,6万5163袋,総重量3094. 154t,正味重量3081.122tであったから,送り状及び船荷証券の記載と比べ,本件貨物一から三までについては,袋数は同数であるが,総重量において34.091t少ないこと,本件貨物四及び五については,袋数は39袋多く,総重量において55.846t少ないことが認められる。また,本件貨物一から三までについては97袋,本件貨物四及び五については236袋に袋の破れが認められた。 (甲5から9まで,16から21まで,乙11の3,乙13)そして,1袋当たりの重量は50㎏前後であるから,袋が破れたために流出した魚粉の量は,本件貨物一から三までについては最大限4.85t(50㎏×97袋)程度,本件貨物四及び五については最大限11.80t(50㎏×236袋)程度にすぎない。そして,上記の総重量の差は,全体の2%程度にすぎないことからすれば,これは,主として発熱により水分等が蒸発して軽量化したことにより生じたものと考えられ,破れた袋から内容物が逸失した分が含まれる可能性も否定できないものの,証拠上これを認めるに足りない。 したがって,本件貨物について不足及び不着があったことを認めるに足りない。 5 損害額について以上によれば,一審被告は,ヘーグ規則2条,3条1項,2項本文により,本件運送契約に基づく債務不履行責任として,三菱商事に対し,前記2(7)のうちイのかび損を除いた損害についてその賠償義務を負うものであり,その全損換算数量は,813.682tである。そして,当時における魚粉の1t当たりの市場価格は7万7000円を下回らない(甲16,70,71の1から8まで)から,上記損害の額は6265万3 のであり,その全損換算数量は,813.682tである。そして,当時における魚粉の1t当たりの市場価格は7万7000円を下回らない(甲16,70,71の1から8まで)から,上記損害の額は6265万3514円(813.682×77,000) となる。 また,三菱商事は,本件損害について鑑定費用として60万円を支払った(甲76)が,これも一審被告の債務不履行と相当因果関係を有する損害と認められる。 なお,一審原告は,本訴の提起,追行に要した弁護士費用も損害として請求する。しかし,前記の認定判断に照らすと,本件損害の発生について一審被告にヘーグ規則所定の免責事由が認められないというにとどまり,進んで本件損害が一審被告の過失によって生じたと認めるには足りず,一審被告の不法行為責任を肯定するには不十分であることからも,上記弁護士費用は一審被告の債務不履行と相当因果関係のある損害と認めることはできない。 したがって,一審被告には,一審原告に対し,上記損害額の合計6325万3514円及びこれに対する本件訴状が一審被告に送達された日の翌日であることが記録上明らかな平成8年7月31日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払義務がある。 第4 結論以上によれば,原判決は一部失当であるから,上記の判断に従ってこれを変更することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第15民事部裁判長裁判官近藤崇晴裁判官宇田川基裁判官加藤正男

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