平成7(行ウ)13 損害賠償請求住民訴訟事件

裁判年月日・裁判所
平成13年3月29日 津地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文30,822 文字)

主文 一被告らは、四日市市に対し、連帯して金一六八五万七三〇〇円及びこれに対する平成四年九月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 二原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 三訴訟費用はこれを三分し、その一を被告らの負担とし、その余を原告らの負担とする。 事実及び理由 第一請求被告らは、四日市市に対し、連帯して金四六九二万一六〇〇円及びこれに対する平成四年九月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 第二事案の概要本件は、四日市市民である原告らが、同市が被告日本下水道事業団(以下「被告事業団」という。)に建設を委託した四日市市公共下水道諏訪公園雨水調整池(以下「本件施設」という。)の電気設備工事(以下「本件工事」という。)の入札において被告富士電機らにより談合が行われ、これによって不当に落札価格がつり上げられ、四日市市が右落札価格と自由競争価格との差額棺当額の損害を被ったとして、右談合を行った被告富士電機及びそれに加担した被告事業団に対し、四日市市に代位して損害賠償を請求した事案である。 一前提となる事実1(一) 原告らは、いずれも四日市市民である(争いがない。)。 (二) 被告富士電機は、大手の重電機製造業者である(争いがない。)。 (三) 被告事業団は、日本下水道事業団法(昭和四七年法律第四一号)に基づいて設立された公益法人であり、地方公共団体等の要請に基づき、下水道の根幹的施設の建設及び維持管理を行い、下水道に関する技術的援助を行うことを目的とし(同法一条)、右目的を達成するため、地方公共団体の委託に基づき、終末処理場及びこれに直接接続する幹線管渠、終末処理場以外の処理施設並びにポンプ施設の建設を行うものである(同法二六条一項一号)。 2 四日市市は、平成四年六月二四日、 、地方公共団体の委託に基づき、終末処理場及びこれに直接接続する幹線管渠、終末処理場以外の処理施設並びにポンプ施設の建設を行うものである(同法二六条一項一号)。 2 四日市市は、平成四年六月二四日、被告事業団との間で、本件施設の建設工事を委託する旨の協定(四日市市公共下水道諏訪公園雨水調整池の建設工事委託に関する協定、以下「本件委託協定」という。本件工事をその内容として含む。)を締結した(争いがたい)。 3 右委託を受けて、被告事業団は、平成四年九月四日に本件工事の指名競争入札(以下「本件入札」という。)を実施したところ、被告富士電機が落札金額二億一三〇〇万円で落札し(争いがない)、同日、被告事業団と被告富士電機との間において、請負金額二億一九三九万円(右落札金額に消費税額を加えた金額)とする工事請負契約が締結された(以下「本件契約」という。)。 4 原告らは、本件入札に関して談合が行われたとして、平成七年一〇月四日住民監査請求をしたが、四日市市監査委員は、同年一一月二七日、右請求を棄却した(争いがない。)。 二被告らの本案前の主眼 1 監査請求期間の徒過(一) 原告らが主張するような談合が行われたという経緯により、本件工事にかかる四日市市から被告事業団に対する委託金の支払が違法になるとすれば、かかる違法な委託金の支払がなされたときから地方自治法二四二条二項所定の監査請求期間が起算されることになる。しかるに、本件において四日市市と被告事業団との間で本件委託協定が締結されたのが、平成四年六月二四日であり、右委託金の支払日は最も遅い支払日でも平成五年一二月二七日であるところ、原告らが四日市市監査委員に対し住民監査請求を行ったのは、平成七年一〇月四日であって、右監査請求期間を大幅に経過した後のことであるから、本件訴えは適法な監査請求を前置し 五年一二月二七日であるところ、原告らが四日市市監査委員に対し住民監査請求を行ったのは、平成七年一〇月四日であって、右監査請求期間を大幅に経過した後のことであるから、本件訴えは適法な監査請求を前置していないものである。 (1) 最高裁昭和六二年二月二〇日判決(民集四一巻一号一二二頁、以下「昭和六二年最高裁判決」という。)は、「普通地方公共団体において違法に財産の管理を怠る事実があるとして地方自治法二四二条一項の規定による住民監査請求があった場合に、右監査請求が当該普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし、当該行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもつて財産の管理を怠る事実としているものであるときは、当該監査請求については、右怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該行為のあった日又は終わった日を基準として同条二項の規定を適用すべきものと解するのが相当である」と判示しているところ、原告らが本訴における損害賠償請求権の法律根拠をどのように考えようとも、談合自体によって四日市市が直ちに損害を被るものではなく、客観的にみて四日市市と被告事業団との本件委託協定の締結あるいは委託金の支出という財務会計行為によって初めて四日市市に損害が生じるという関係にあることからすれば、右請求権が財務会計行為の違法・無効を根拠として発生するものであることは否定すべくもない。したがって、右昭和六二年最高裁判決の判旨に従って、監査請求期間は、右財務会計行為の日から起算されるべきである。 (2) 地方自治法二四二条にいうところの「違法」とは、客観的に定められるべきものである。すなわち、財務会計行為が、地方自治法二条一四項ないし地方財政法四条一項に反する過大な支出となっており、その結果として地方自治体に損 二条にいうところの「違法」とは、客観的に定められるべきものである。すなわち、財務会計行為が、地方自治法二条一四項ないし地方財政法四条一項に反する過大な支出となっており、その結果として地方自治体に損害が発生しているのであれば、違法と評価されるべきものであって、長や職員の善意・悪意(あるいは故意・過失)といった主観的態様を考慮すべき必要性はないから、右の「違法」を、長や職員の自治体に対する義務違反行為に限定する理由はない。 したがって、本件における原告らの法律構成によれば、談合による過大に高額な請負金額を前提とした本件委託協定は、客観的にみて違法な財務会計行為であるということにならざるを得ないから、怠る事実としてしか構成できないということはなく、昭和六二年最高裁判決の射程内にあるといえる。 (3) 原告らは、本訴請求において、被告富士電機らの談合行為が四日市市の損害の発生原因であるとして、四日市市における財務会計行為の違法を問題にするものではないとしているが、原告らの代位請求する損害賠償請求権は、四日市市の本件工事に関する工事委託費の支出が地方財政法四条一項等に反する不相当に高額なものとなっていることにより初めて生じるものであるから、結局、四日市市の財務会計上の行為が違法であることを前提とするものであるといえる。 (4) 最高裁判所平成九年一月二八日判決(民集五一巻一号二八七頁、以下「平成九年最高裁判決」という。)は、市長の違法な土地転売行為について市が和解金相当額の損害賠償請求権を行使しないこともって「怠る事実」とした事例に関して、和解成立日を基準として監査請求期間を起算すべきであると判示したものであるが、右判決は昭和六二年最高裁判決を当然の前提とした上で、右のような事例においても監査請求期間の適用があることを確認した判決であるというべきで として監査請求期間を起算すべきであると判示したものであるが、右判決は昭和六二年最高裁判決を当然の前提とした上で、右のような事例においても監査請求期間の適用があることを確認した判決であるというべきである。 本件委託協定の締結後においては、被告らに対し損害賠償請求を行うことが法的に不可能であったということはできず、またその行使が妨げられる事情があったということもできないのであるから、右判決を引用することは適切ではない。 (二) 本件においては、地方自治法二四二条二項ただし書所定の「正当な理由」も存在しない。すなわち、最高裁判所平成二年六月五日判決(判例時報一三七二号六〇頁)は、当該監査請求が問題とする財務会計上の行為等を他の事項から区別して特定・認識できるように個別的、具体的に摘示すべきである旨判示しており、これは他方で、住民監査請求において、住民は、監査委員の監査が可能な程度に監査請求の対象を特定すれば足りるのであって、それ以上の微細な事実の摘示を行う必要はないことを意味するものと解される。「正当な理由」については、当該行為が違法又は不当であることを知ることができたときから相当な期間内に監査請求を行うことを要すると解されているところ、右の当該行為の違法等を知ることができたときとは、前記最高裁判決を踏まえると、当該財務会計行為の特定をなし得るだけの事実を知ることができた状態をいうものと結論づけられることになる。 本件においては、平成六年三月二六日には被告富士電機らを含む大手電機・計器製造業者らが、地方自治体発注の上下水道処理システムの入札談合嫌疑で公正取引委員会の立入調査を受けた旨の報道がなされ、さらに、同年九月二日には、被告事業団発注の下水道電気設備工事について談合が行われていたとの報道がなされ、その後も全国の下水道電気設備工事についての 正取引委員会の立入調査を受けた旨の報道がなされ、さらに、同年九月二日には、被告事業団発注の下水道電気設備工事について談合が行われていたとの報道がなされ、その後も全国の下水道電気設備工事についての談合が刑事告発の対象とされた旨の報道が多数なされた。加えて、公正取引委員会は、平成七年三月七日に被告富士電機らを刑事告発し、同年七月一一日には課徴金納付命令を発したもので、そのころその旨報道されたものである。また、原告らが平成七年八月に取得したという公正取引委員会作成にかかる課徴金納付命令に関する文書は、この時点で一般に公表・配布されていたものである。したがって、客観的にみて、四日市市の住民としては、遅くとも同年七月ころまでには、同市による本件工事にかかる委託金の支払等の違法性ないし不当性について疑問を持ち得たものというべきである。そして、監査請求に必要な相当な期間として考えられているのは、一か月ないしせいぜい二か月が限度であると解されているのであるから、右時点から約三か月も経過した同年一〇月四日になされた本件監査請求が、不適法であることは明らかである。 2 被告富士電機について被告適格の欠如本件の場合、四日市市と被告事業団との間の本件委託協定の締結に当たって被告富士電機は一切関与していないから、被告富士電機は、四日市市が有するとされる実体法上の請求権の相手方たりえない。したがって、被告富士電機は、本件に関し被告適格を有しない。 三本案前の主張に対する原告らの反論 1 監査請求期間について(一) 本訴請求は、以下のとおり「怠る事実」に基づく請求であるから、一年の監査請求期間の適用はないというべきである。したがって、本件訴訟は適法な監査請求を前置しているというべきである。 (1) すなわち、昭和六二年最高裁判決は、「当該行為が違法無効であるこ るから、一年の監査請求期間の適用はないというべきである。したがって、本件訴訟は適法な監査請求を前置しているというべきである。 (1) すなわち、昭和六二年最高裁判決は、「当該行為が違法無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもつて財産の管理を怠る事実としているものであるときは、当該監査請求は、右怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該行為のあった日又は終わった日を基準として」起算すべきである旨判示しているところ、本件請求は、被告らが談合という不法行為を行ったことを理由として四日市市に代位して損害賠償請求するものであって、四日市市と被告事業団との間で締結された本件委託協定という財務会計行為の違法・無効を前提とする請求ではない。本件のような談合入札による不法行為の事例においては、発注自治体は自己の関知しないところで行われる談合という不法行為によって価格をつり上げられ、いわば詐欺の被害者的な立場におかれているのであり、その場合契約の無効・取消を前提としないで損害賠償を請求しうる地位にあるのである。そうであれば、本件は、同一の財務会計行為の法的構成を言い換えたにすぎない昭和六二年最高裁判決の事例と異なるというべきであって、同判決の射程内にあるということはできない。したがって、本訴請求は、いわゆる「真正怠る事実」に当たるものとして、監査請求期間の制限を受けないというべきである。 (2) 地方自治法二四二条一項において「当該普通地方公共団体の長若しくは・・・職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得」と規定されていることからも、同項にいうところの「違法」とは、職員の違法行為(職務違反行為)をいうものと解すべきである。本件においては、契約締結権者たる職員(財務会計職員、本件では四日市市長)が談合の存在について知っているこ 、同項にいうところの「違法」とは、職員の違法行為(職務違反行為)をいうものと解すべきである。本件においては、契約締結権者たる職員(財務会計職員、本件では四日市市長)が談合の存在について知っていることを前提としていないものであるから本訴請求は、違法な財務会計行為を行ったことを理由としては構成できないもので、「怠る事実」としてしか構成できない。したがって、本件のような談合事例は昭和六二年最高裁判決の射程外であるというべきである。 (3) 地方自治法二四二条二項が住民監査請求の期間を一年間とした趣旨が行政行為について、いつまでも争い得る状態にしておくことが法的安定性の観点から問題があるという点にあるとしても、前記のとおり、本件においては財務会計行為の違法・無効を前提とするものではないから、そのような短い期間に限定する合理的な理由はないものである。 (4) また、平成九年最高裁判決に見られるように、最高裁も、具体的妥当性を考慮して監査請求期間の起算点を柔軟に解釈する姿勢を示している。本件のように契約締結権者である地方自治体の首長も住民も、談合の事実を知らない場合にまで、請負契約締結時から監査請求期間のみが起算されるというのではいかにも不合理である。少なくとも、自治体に談合事実が発覚した時点から一年の期間が起算されると解すべきである。 (二) 本件監査請求には、「正当な理由」がある。すなわち、被告富士電機ら重電九社が被告事業団発注の電気設備工事の入札について談合を行ったとして、独占禁止法違反の事実で起訴されたのが平成七年六月一五日であり、公正取引委員会から課徴金納付命令が出されたことが公表されたのが同年七月一二日であり、そのころ新聞報道がなされたが、これらの報道においては本件入札において談合がなされたとの報道は一切されていない。原告らが、初めて本 ら課徴金納付命令が出されたことが公表されたのが同年七月一二日であり、そのころ新聞報道がなされたが、これらの報道においては本件入札において談合がなされたとの報道は一切されていない。原告らが、初めて本件入札について談合がされていたと知り得たのは、同年八月ころ、課徴金納付命令の対象とされている工事のリストを入手した時点である。右情報を受けて原告らは、本件入札に関して情報公開請求を行い、同月二四日に資料の公開を受け、同年九月二六日に本件監査請求を行ったものであるから、右課徴金納付命令が公表された時点から起算するとしても、相当な期間内に監査請求を行ったものといえる。 2 被告富士電機の被告適格について原告は、被告富士電機が談合という不法行為を行い、それに基づいて四日市市に損害が生じたと主張するものであるから、本件において被告富士電機が被告適格を有するのは当然である。 四本案に関する原告らの主張 1 談合(一) 被告富士電機を含む大手・中堅重電機製造業者九社(いわゆる重電九社)は、受注のための競争を回避し、不当な利益を挙げる目的で、組織的かつ継続的に受注調整・談合を行ってきたものである。その仕組みは、以下のとおりである。 (1) 重電九社においては、被告事業団や発注自治体に対する営業を担当する部局(営業部門)と、被告事業団発注物件に対し他社との連絡調整等を担当する部局(調査部門)が共通して存在する。 (2) 各社の営業部門の担当者は、調査部門の担当者と協議して被告事業団発注物件の中から受注希望物件を選定するなど会社としての方針を決定する。 (3) 営業部門の担当者は、自社が受注予定者となっている場合には、自社が確実に落札できるような金額で入札してくれるよう調査部門の担当者を介するなどして、他社の担当者に依頼し、自社が受注予定者となっていない場合 部門の担当者は、自社が受注予定者となっている場合には、自社が確実に落札できるような金額で入札してくれるよう調査部門の担当者を介するなどして、他社の担当者に依頼し、自社が受注予定者となっていない場合は、決定済みの受注予定業者が確実に落札できるような金額で入札に応じる。 (4) また、被告富士電機を含む重電九社は、被告事業団発注物件について受注調整を円滑に行うため、毎年度幹事会社を決めており、この幹事会社の営業部門の担当者は、これら九社の代表として被告事業団との窓口となり、被告事業団の工務部次長から、各年度の被告事業団発注物件について、その工事名、発注自治体の受注会社についての意向の有無等について教示を受けるなど、被告事業団と九社とのいわば橋渡し役を務めていた。 (5) そして、各社の調査部門の担当者は、会社としての方針を踏まえて「九社会」と呼ばれる会議に出席し、他社の調査部門の担当者と協議し物件毎の受注予定業者を決定するとともに、当該受注予定業者が確実に落札できるように協力しあうことを約する。 (6) 受注予定業者は、その後の入札までに他社の担当者に、入札金額を指示する。 (7) 被告事業団が発注する電気設備工事に関して受注予定業者を決めるに当たっては、自治体に自社を受注会社として認めてもらう(いわゆる「天の声」)とか、当該工事が既設物件の継続工事であるなどの事情が重視されていたが、被告事業団及び業者間において、被告事業団に対する過度な営業活動や、各社間の受注シェアに差が生じてきたことなどが問題視されるようになってきたことから、平成二年ころからは、全国規模で業者間の受注シェアを割り振る方法(「ドラフト会議」と呼ばれていた。)がとられるようになった。 (二) 平成三年度以前においては、被告富士電機等大手五社のシェアは八○パーセント(各社一六 、全国規模で業者間の受注シェアを割り振る方法(「ドラフト会議」と呼ばれていた。)がとられるようになった。 (二) 平成三年度以前においては、被告富士電機等大手五社のシェアは八○パーセント(各社一六パーセントずつ)、中堅四社のシェアは二〇パーセントと定められていたが、平成四年度においては、かねてからの中堅四社の要望を受けて、七五パーセント対二五パーセントに変更された。そして、平成四年六月上旬ころ、九社に同年度の発注物件リストが交付され、同月中旬、幹事社である三菱電機の会議室で九社会が行われ、それぞれ右割合に従って受注予定業者を決め、本件工事について被告富士電機が落札予定業者となったものである。 2 被告らの責任(一) 被告富士電機は、前記のとおり、不当な利益を得る目的で本件入札に関し談合を行ったものであるから、それによって四日市市が被った損害を賠償する責任を負う。 (二) 被告事業団は、かねてから被告富士電機ら重電九社と共謀して、前記の談合に関するルールの形成・定着に深く関与していたところ、本件契約に関しても、四日市市に適正価格を超える費用負担をさせない義務を負っているにもかかわらず、これに違反し、事前に予定価格等を教示するなどして、右談合に加担したものであるから、それによって四日市市が被った損害を賠償する責任を負う。 3 四日市市の被った損害本件委託協定は、被告事業団と工事請負業者との間の請負契約に先立って締結されるものであるから、右協定に基づいて支払われる委託金の額は、個々の工事請負契約の代金額を前提としての金額ではない。したがって、本件委託協定における委託金の額と個々の工事請負契約において定められた代金額との間には差額が生じ、この差額は本件委託協定に定める精算によって調整されることとなっている。後記のとおり、請負契約が談合によ 委託協定における委託金の額と個々の工事請負契約において定められた代金額との間には差額が生じ、この差額は本件委託協定に定める精算によって調整されることとなっている。後記のとおり、請負契約が談合による場合と、談合によらない場合とにおいては、その請負代金額に違いが生じてくるものであるから、本件契約の請負代金額が変化することによって、建設工事の施行に要する費用について精算の必要が生じてくることは当然であり、その点で被告事業団と請負業者との請負代金額は本件委託協定に基づいて支払われる費用に影響を及ぼすものである。したがって、談合によって請負代金額がつり上げられれば、発注自治体である四日市市に損害が生じる。 本件のような談合を原因とする損害賠償請求における損害額は、談合を前提とした実際の落札額と談合がなければ存在したであろう落札額との差額であると解すべきである。公共工事は、民間工事と比較して経費が高く積算されており利益幅が大きく業者にとってうまみが大きい。また、公共工事において予定価格の基礎とされる積算基準においては、バブル崩壊における価格の下落が反映されておらず、依然として高額となっている。したがって、公共工事において、業者が予定価格を探知して談合を行った場合と、自由競争を行った場合とを比較すれば、当然後者は前者よりも相当低い金額で落札されるはずである。 そして、本件入札において談合が行われず、公正な競争が行われていたとしたら、少なくとも最低制限価格までは落札価格が下落したものと考えられる。したがって、四日市市の被った損害は、本件契約の請負契約金額(落札金額に消費税額を加えた金額)二億一九三九万円から最低制限価格である一億七六四一万八四〇〇円を差し引いた金額四二九七万一六〇〇円に、弁護士会報酬規定に照らして相当と認められる弁護士費用である (落札金額に消費税額を加えた金額)二億一九三九万円から最低制限価格である一億七六四一万八四〇〇円を差し引いた金額四二九七万一六〇〇円に、弁護士会報酬規定に照らして相当と認められる弁護士費用である三九五万円を加えた、合計四六九二万一六〇〇円であるというべきである。 219,390,000‐176,418,400=42,971,60042,971,600+3,950,000=46,921,600五本案に関する被告らの主張 1 談合の有無について(一) 本件において談合行為を直接証明する証拠はない。原告らは、独占禁止法違反事件にかかる刑事事件記録に依拠して、本件契約が談合によるものであると主張するが、独占禁止法違反の刑事事件においては、同法の趣旨が、公正な取引秩序を侵害する危険のある取引制限的な行為を排除することにあるため、一定の範囲に属する不特定の取引全体が「一定の取引分野」として把握され、そこにおける競争制限的な合意の存在の有無が問題とされるに止まるのであって、そこでは、個々の契約に関する談合が判断の対象とされているものではない。要するに、本件においては、本件契約に先立ち、業者間における談合行為がなされていたことを示す証拠はないものであって、公正取引委員会により課徴金納付命令が発出され、刑事事件において有罪判決が出されたからといって、本件契約を含む個々の契約において、被告富士電機らが談合を行っていたと推認されるものではない。 (二) また、原告らは、落札率が高いことや、一位不動(一回目の入札で予定価格を下回る業者がなかった場合、複数回入札が行われることになるが、その場合各回の最低価格入札業者に変動がないこと)が談合の証拠であると主張するが、一般的に業者は高額での落札を望むから、落札価格が予定価格に近いこと自体が談合の存在を示すもので われることになるが、その場合各回の最低価格入札業者に変動がないこと)が談合の証拠であると主張するが、一般的に業者は高額での落札を望むから、落札価格が予定価格に近いこと自体が談合の存在を示すものであるということはできないし、業者の価格競争力は異なり、当該工事に対する主観的な落札への意欲の強い業者が、複数回の入札においていずれも最低価格を入札することは十分あり得ることであるから、一位不動の現象が生じることは何ら不自然なことではない。 2 被告らの責任について(一) 本件委託協定は地方自治法二三四条一項の随意契約の性質を有するものであり、そもそも競争入札手続がないものであるから、独占禁止法三条違反の問題が生じる余地はあるが、これと成立要件を異にする民法七〇九条の不法行為の成立はあり得ない。 (二) 独占禁止法三条違反行為と、民法七〇九条による不法行為とは区別されなければならない。すなわち、前者は、競争入札発注工事において、独占禁止法三条が規律するところの正常な競争価格で入札すべき法律上の義務に違反し、入札参加業者において競争入札の落札予定会社を決定するとともに、それぞれの業者が、落札予定者において可能な限り高額をもって落札できるような価格で入札することを合意し、競争を実質的に制限することによつて成立するものであって、右合意に従って、各業者が入札することにより発注者の利益を侵害する民法七〇九条による不法行為とは理論的に別個のものである。 (三) そして、本件において原告らが主張する民法七〇九条の不法行為においては、競争入札の発注者以外の者は正常な競争入札価格で請負契約を締結することによる利益を有しないから、入札業者らの談合によって、入札発注者である被告事業団が損害を受けることはあっても、四日市市における損害の発生を観念することはできないの 争入札価格で請負契約を締結することによる利益を有しないから、入札業者らの談合によって、入札発注者である被告事業団が損害を受けることはあっても、四日市市における損害の発生を観念することはできないのである。したがって、仮に、本件入札において談合がなされていたとしても、四日市市に対する関係で不法行為が成立する余地はない。 3 四日市市の損害について(一) 四日市市と被告事業団との本件委託協定及びこれに基づく委託金の支払は、被告事業団と被告富士電機との本件契約とは別個に、四日市市が、地方自治法及び右委託協定に基づいて適法に行ったものであるから、右委託金が談合によって水増しされたものということはできない。このことは、被告事業団が発注した他の施設に関して、公正取引委員会の立入調査、課徴金納付命令、刑事訴追がなされた後においても、本件委託協定について、四日市市が、その無効・解除等を主張せず右委託金の支払を適法なものとして履行していることからも明らかである。 (二) 仮に原告らの主張するように、本件契約の請負代金が不当に高額となっているとし、その精算されるべき金額が損害になるという考え方を前提とするにしても、それは本件委託協定所定の精算義務が不履行の状態にあると解さざるを得ないものであって、被告事業団が右精算義務を履行することによって過払いの状態を解消しうるのであるから、その精算請求権が存在することを否定し得ない以上、右状態をもつて四日市市に損害があるとはいえない。したがって、この点において原告らの主張は失当である。 (三) 四日市市と被告事業団との本件委託協定は、被告事業団が四日市市に対し本件施設を建設完成の上引き渡す義務を負う請負契約の性質を有する契約であり、四日市市が被告事業団に対し請負業者に発注することを委任する契約ではない。また、被告事業団 定は、被告事業団が四日市市に対し本件施設を建設完成の上引き渡す義務を負う請負契約の性質を有する契約であり、四日市市が被告事業団に対し請負業者に発注することを委任する契約ではない。また、被告事業団は、その独自の権限と責任において本件施設をアウトソーシング(外注)の方法で建設するものであって、本件委託協定と、被告事業団と請負業者との外注請負契約は、それぞれ独立した別個の契約である。さらに、本件委託協定における「精算」とは、被告事業団の清算事務処理要領に基づく一方的な還付行為であって、委任契約における「清算」とその性質を異にするものである。そして、本件委託協定一一条における精算は、被告事業団の責任と権限でする外注による実際の請負代金支出額の合計額と四日市市からの納入済額との差額について行うもので、原告主張の想定請負代金相当額と納入済額との差額について行うものではない。要するに、被告事業団と請負業者との請負契約の代金額いかんによって精算金が定められるという関係にない以上、仮に談合があったとしても、四日市市に損害が生じるものではない。 第三当裁判所の判断一本案前の主張について 1 監査請求期間について(一) 本件において原告らは、被告らが、談合という不法行為に加担したとして、被告らを「怠る事実の相手方」であると構成した上で損害賠償を請求するものであるところ(地方自治法二四二条の二第一項四号後段)、この場合、地方自治法二四二条二項の監査請求期間の適用があるか否かが問題となる。 同項は、住民監査請求について、当該財務会計行為のあった日又は終わった日から一年を経過したときは行うことができない旨を定めているところ、これは行政機関が行った財務会計行為について、いつまでも争い得るとすることは法的安定性の観点から好ましくないことから、法律関係を早期に ら一年を経過したときは行うことができない旨を定めているところ、これは行政機関が行った財務会計行為について、いつまでも争い得るとすることは法的安定性の観点から好ましくないことから、法律関係を早期に安定させることを目的としたものである。そして、「怠る事実」については、同項の文言からすれば、原則として右の監査請求期間の適用がないものと解される。 ところで、地方自治法は、住民が、その拠出する税金について、当該自治体において違法.不当な用途に使用されていないかどうかについて利害を有することから、住民に監査請求をなしうる権限を与えたものであって、このような観点からすれば、同条の「違法」とは、広く地方自治法二条一四項、地方財政法四条を初めとする財務会計上の法規範に客観的に違反することを指すと解するのが相当であって、当該財務会計職員の職務上の義務違反行為を要しないものと解すべきである。 そして、住民監査請求という制度は、地方自治体の監査委員に住民の請求に係る財務会計上の行為又は怠る事実について一次的に監査の機会を与え、監査委員による勧告等の是正措置を通じ、地方自治体の自治的・内部的処理によつてその違法・不当を予防、是正させるところにその本質があるものであるから、監査委員は、監査請求の対象となる財務会計上の行為又は怠る事実が特定されている限りにおいて、その範囲内で、請求者の求める具体的な措置内容に拘束されないばかりか、請求人の摘示した法的構成や相手方にもとらわれることなく、地方財政の健全な運営という観点から、幅広く必要かつ相応な措置を選択した上で、それを講ずることができるものと解され(最高裁判所平成一〇年七月三日判決・判例時報一六五二号六五頁参照)、またそのような運用が期待されているところである。以上の点からすると、ある財務会計行為の違法・不当を ずることができるものと解され(最高裁判所平成一〇年七月三日判決・判例時報一六五二号六五頁参照)、またそのような運用が期待されているところである。以上の点からすると、ある財務会計行為の違法・不当を理由とする住民監査請求がなされた場合には、監査委員は、当該地方自治体に生じた損害を補填するため返還請求等の措置を採り得るというべきであって、その相手方も当該財務会計職員や当該財務会計行為の直接の相手方のみに限られないというべきである。 ところで、財務会計上の行為が違法、無効であることに基づいて、当該財務会計職員あるいは右財務会計行為の相手方に対して損害賠償請求権が発生する場合に、住民は、右請求権を有する地方自治体がこれを行使しないことをもつて「財産の管理を怠る事実」として監査請求の対象とすることができるが、これについて原則どおり監査請求期間の適用がないとすることは、住民の法的構成の仕方によつて監査請求期間の適用の有無が左右される結果となり、法が監査請求期間を設けた趣旨を没却する。むしろ、前記の住民監査請求における監査のあり方からすれば、違法・無効な財務会計行為によつて被った損害に係る損害賠償請求権の不行使に関する住民監査請求は、当該財務会計行為の違法・無効を理由とする住民監査請求に包摂される関係にあるというべきであり、前記の行政上の法律関係の安定という観点からすれば、これらは一回的に解決されるべき性質のものであるから、このように、財務会計行為が違法・無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもつて怠る事実とする場合には、当該財務会計行為の日から監査請求期間を起算すべきであると解するのが相当である(昭和六二年最高裁判決)。 そして、本件において、原告らは、損害賠償請求権の発生原因として、被告富士電機を含む九社による談合という 行為の日から監査請求期間を起算すべきであると解するのが相当である(昭和六二年最高裁判決)。 そして、本件において、原告らは、損害賠償請求権の発生原因として、被告富士電機を含む九社による談合という不法行為を主張しているが、右談合行為自体によって四日市市に損害が生じるのではなく、被告事業団と請負業者との間で、談合を前提とした不当につり上げられた代金額で請負契約が締結され、四日市市が、既に存在する本件委託協定に基づいて被告事業団に対し委託金を支払うなどし、談合によって不当につり上げられた請負代金額が実質的に四日市市の負担に帰せしめられることによって、初めて四日市市に損害が生じるという関係にある。したがって、本件監査請求については、四日市市が被告らに対する損害賠償請求権の行使を怠ることが違法であることを理由とするものであっても、もし違法・無効な財務会計行為が存在するといえるならば、その行為のあった日を起算点として同法二四二条二項所定の監査請求期間の適用を考慮すべきことになる。もっとも、本件においては、四日市市と業者との間に被告事業団が介在しているので、何が違法・無効な財務会計行為であるかを判断するに当たって、直接契約の場合とは異なった考慮が必要となる。 (二) そこで、次に、本件においてどの時点をもって監査請求期間の起算点とすべきかについて検討する。 前記前提となる事実、証拠(甲第二〇号証の1ないし4、三三、三四号証、三六号証の1、2、乙イ第二ないし五号証、一〇号証の)及び弁論の全趣旨によれば、本件工事に関する事実経過として、以下の事実が認められる。 (1) 平成四年六月二四日、四日市市と被告事業団との間で、本件委託協定が締結された。本件委託協定は、数年次にわたる工事において採用される基本協定型(数年次にわたる建設工事の全体の基本的事項に 。 (1) 平成四年六月二四日、四日市市と被告事業団との間で、本件委託協定が締結された。本件委託協定は、数年次にわたる工事において採用される基本協定型(数年次にわたる建設工事の全体の基本的事項についで概括的に基本協定として締結し、各年度に行う建設工事の内容及びその範囲、費用、施設の引渡しその他必要な事項について、年度ごとに年度実施協定を締結するという形式)ではなく、単年度協定方式が採られている。そして、右協定においては、四日市市は、被告事業団に対し、本件施設の建設工事を委託し、その完成予定年度は平成六年三月三一日とされ(第六条)、建設工事の施行に要する費用は五億円(うち取引に係る消費税額は一四五六万三一〇六円)と定め(第七条1)、物価等の変動により右金額では建設工事を完成することが困難であると認めるときは、四日市市と被告事業団とが協議の上、右金額を変更し、又は建設工事の委託の対象若しくはその内容を変更するため、本件委託協定を変更することができるものとされた(同条2)。また、前記建設工事の施行に要する費用のうち平成四年度国庫補助対象額(一億九〇〇〇万円)に係る資金計画については、四日市市と被告事業団が協議の上定め、四日市市は右資金計画に基づき所要金額を被告事業団に前金払いするものとされ、前記費用のうち四日市市の債務負担行為額(三億一〇〇〇万円)に係る資金計画及び支払方法等については別に協議の上定めることとされていた(第八条)。被告事業団は、建設工事に関し建設業者と工事請負契約を締結したときは、速やかに四日市市にその概要を通知するものとされた(第一二条)。さらに、被告事業団は、右工事が完了したときは、費用の精算を行うものとされ、精算の結果生じた納入済額と精算額との差額は、四日市市に還付するものとされた(第一一条)。なお、右費用は、工事費 第一二条)。さらに、被告事業団は、右工事が完了したときは、費用の精算を行うものとされ、精算の結果生じた納入済額と精算額との差額は、四日市市に還付するものとされた(第一一条)。なお、右費用は、工事費及び管理諸費からなり、管理諸費は、受託業務費用負担細則に従い算出される金額である。 また、平成五年三月一九日、本件委託協定の一部について変更がなされたが、前記建設工事の施行に要する費用の総額については変更がなかった。 (2) 被告事業団は、平成四年九月四日に本件施設建設工事の一部である本件工事について入札を実施したところ、二回目の入札で被告富士電機が二億一三〇〇万円で落札した。 (3) 被告事業団と被告富士電機とは、右入札結果に基づき、平成四年九月四日、本件契約を締結した。右契約によれば、工期は同月五日から平成五年七月三〇日まで、請負代金額は二億一九三九万円(うち取引に係る消費税額六三九万円)とされていた。 右請負代金額については、平成五年七月一九日、二七六万〇四〇〇円(うち取引に係る消費税額八万〇四〇〇円)増額がなされ、合計二億二二一五万〇四〇〇円となった。 (4) 四日市市は、本件委託協定に基づき、被告事業団に対し、次のとおり建設費用を支払った。 ① 平成四年一〇月五日六四二三万四〇〇〇円② 同年一一月五日九九三万七六〇〇円③ 平成五年三月三一日一億六五八二万八四〇〇円④ 同年六月七日七六五七万三〇〇〇円⑤ 同年一二月二七日一億八三四二万七〇〇〇円(5) 被告事業団は、本件施設建設工事について、平成五年四月一五日に平成四年度の終了精算を、平成六年三月三一日に最終の精算を行い、四日市市に対し、それぞれ年度完了精算報告書を提出した。右最終精算についての年度完了精算報告書によれば、右工事について四日市市の納入済額と精算 年度の終了精算を、平成六年三月三一日に最終の精算を行い、四日市市に対し、それぞれ年度完了精算報告書を提出した。右最終精算についての年度完了精算報告書によれば、右工事について四日市市の納入済額と精算額とは一致しており、四日市市に対する還付金額は零円であつた。 (三) 以上の認定事実に照らして検討するに、本件委託協定は、被告事業団が本件施設を建設・完成させ、これを四日市市に引き渡す義務を負うという点で請負契約類似の性質を有するものと解されるところ、右協定の締結が財務会計法規に照らして客観的に違法であると評価されるならば、右契約時点から同法二四二条二項所定の監査請求期間が起算されると解されることになる。 しかるに、後記二認定のとおり、平成四年六月ころ被告富士電機を含む重電九社は、いわゆる九社会において、当該年度において全国で発注される事業団発注の工事を予め決められた受注シェアに従って割り振り、受注予定業者を決定していたものではあるが、このような受注調整によって、自治体が本件工事について実際に負担する数額が確定的に決まるものではなく、それが初めて確定されるのは、本件工事について九社間において個別的な談合行為が行われ、それに基づき入札がなされ、事業団と業者との間で契約が締結された時点であるというべきである。この点を更に詳細に述べるならば、前記のとおり、本件委託協定においては事業団によって精算が行われることが前提とされているのであり、最終的な自治体の負担する数額はこの精算によって定まるものであるが、後記認定のとおり、当裁判所は、右精算額は事業団と業者との間の請負契約代金額の如何によって影響を受ける関係にあると認めるものである。したがって、本件工事について個別的な談合行為がなされた時点以後になされた財務会計行為については、不当に高額な代金額を前提 間の請負契約代金額の如何によって影響を受ける関係にあると認めるものである。したがって、本件工事について個別的な談合行為がなされた時点以後になされた財務会計行為については、不当に高額な代金額を前提とするものであって、違法と評価し得る余地があると解するものであるが、そこまでに至っていない受注調整のみの段階においては、実際に自治体が負担すべき数額が明確になっていないものであるから、その段階においてなされた財務会計行為を違法と評価することはできない。そうであるならば、平成四年六月二四日に締結された本件委託協定については、それ以前に本件工事について個別的な談合行為が行われたという確たる証拠がない以上、それが談合によって不当に高額になった請負金額を前提としたものということはできないから、本件委託協定の締結が、地方自治法二条一四項、地方財政法四条の趣旨に反する違法な財務会計行為であるということはできない。 また、本件委託協定に基づいてなされた支出それ自体も、財務会計行為として住民監査請求の対象となりうるものであるが、それは同協定という契約の拘束力を受けるものであるから、本件委託協定が公序良俗違反(民法九〇条)等によって私法上無効である場合に、初めて右支出が違法となり得ると解されるところ、本件においては、事業団と被告富士電機間の請負契約をいうのならばともかく、事業団と四日市市との本件委託協定が私法上無効であるとまではいうことはできないから、同協定に基づく支出を違法ということはできない。 (四) 結局、本件においては、違法・無効な財務会計行為を観念することはできないといわざるを得ないから、本件が、昭和六二年最高裁判決にいうところの「財務会計行為が違法・無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって怠る事実とする場合」に当たるというこ きないといわざるを得ないから、本件が、昭和六二年最高裁判決にいうところの「財務会計行為が違法・無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって怠る事実とする場合」に当たるということはできない。したがって、本件は監査請求期間の制限を受けないというべきであるから、本件監査請求は適法であって、それに基づく本件訴えも適法であるということができる。 以上によれば、本件において適法な監査請求を前置していないとする被告らの主張には理由がない。 2 被告富士電機の被告適格についてなお、被告富士電機は、四日市市と被告事業団との間の本件委託協定の締結に当たって関与していないから、被告富士電機は、四日市市が有するとされる実体法上の請求権の相手方たりえないとして被告適格を有しない旨主張するが、被告富士電機が実体法上の請求権の相手方たりうるか否かは、本案の問題であって訴訟要件の問題ではないから、右主張は失当である。 二本案について 1 本件入札における談合の有無について(一) 後掲各証拠によれば、以下の事実が認められる。 (1) 被告事業団における契約締結の仕組み(甲第二一号証、六五号証の2六七号証の2、3、六八号証の1、8、七〇号証)被告事業団の業務は大別して受託業務(被告事業団が地方公共団体からの委託を受け、終末処理場やポンプ場等の処理施設や、終末処理場に直接接続する幹線管渠の建設や設計等を行う業務)、建設業務(地方公共団体の要請を受け、被告事業団が主体となって行う下水汚泥広域処理事業等)及び一般業務(技術者養成のための研修、技術検定、下水道管理認定試験等)に分けられるところ、このうち最も大きい比重を占めるのは受託業務であり、総予算の約八割以上を受託業務が占めていた。 被告事業団本社においては、その業務は企画総務部、経理部、業務 水道管理認定試験等)に分けられるところ、このうち最も大きい比重を占めるのは受託業務であり、総予算の約八割以上を受託業務が占めていた。 被告事業団本社においては、その業務は企画総務部、経理部、業務部、計画部及び工務部とに分掌されており、このうち、工務部においては、終末処理場に関する建設工事の実施、管理、測量・調査、年度施行計画の策定、積算、検査などの業務を所掌していた。 被告事業団会計規程においては、請負契約を締結する場合、原則として競争入札の方式によるものとしており、そのうち、契約の性質又は目的により競争に加わるべき者が少数である場合や、一般競争に付することが不利な場合、あるいは事業運営上特に必要がある場合には指名競争入札に付するものとされていた(同規程五五条)。そして、被告事業団においては、契約締結に際して予定価格を設定するものとされており(同規程五六条)、競争入札に付する場合には、その予定価格の範囲内で最低価格によって入札した者と契約するが、予定価格が一〇〇〇万円を超える工事請負契約など高額な契約について、契約内容に適合した履行がなされないと認められるおそれがある場合には、次順位の者と契約することができるものとされている(同規程五八条)。なお、予定価格の設定に当たっては、仕様書、設計書、図書を参照し、取引実例、需給状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短を考慮して適正に定めなければならないものとされており(同規程実施細則四九条)、実際には、コンサルタント会社と呼ばれる設計会社に委託して設計を行わせ、これを基に積算を行い、その積算金額が予定価格とされていた。また、契約の性質又は目的が競争を許さないとき、緊急の必要により競争に付することができないとき及び競争に付することが不利と認められるときには随意契約によるものとし、さらに 額が予定価格とされていた。また、契約の性質又は目的が競争を許さないとき、緊急の必要により競争に付することができないとき及び競争に付することが不利と認められるときには随意契約によるものとし、さらに、予定価格が少額のとき、その他事業運営上必要があるときには随意契約によることができるものとされていた(同規程五五条)。 本件工事のような電気設備工事については、設置機器の特殊性や専門技術性から、その施行能力を有する業者が限定されていることから、指名競争入札の方式が採られるのが一般であったが、発注自治体の予算等の都合もあり、一度にすべての工事が発注されることは少なく、数回の工事に分けられて発注されることが通常であった。 そして、指名業者の選定に当たっては、発注自治体との窓口になっていた被告事業団の各支社において、指名業者等選定上申書を作成し、これを本社工務部に送付する。そして、本件工事のような電気設備工事においては、工務部の電気課長が、(事実上電気課を取り仕切る)工務部次長の意見を採り入れた上で、右上申書を基に指名業者選定書案を作成し、工務担当理事の了解を得、更に契約課の指名業者審査委員会における審査を経て、指名業者(七社)が選定されていた。もっとも、右審査委員会において、指名業者選定書案と異なる意見が出ることはほとんどなく、同委員会に至るまでの段階で指名業者が事実上決定するといってよいのが実態であった。 以上のような過程を経て、指名業者が決定され、現場説明を経て、入札が行われ、被告事業団と落札業者との間で工事請負契約が締結される建前となっている。 (2) 被告事業団発注の電気設備工事の受注を巡る各社の状況及びそれに対する被告事業団の対応について(甲第六一、六二号証、六三号証の2、4ないし6、六四号証の2、六五号証の2、3、六六号証の2、六七 (2) 被告事業団発注の電気設備工事の受注を巡る各社の状況及びそれに対する被告事業団の対応について(甲第六一、六二号証、六三号証の2、4ないし6、六四号証の2、六五号証の2、3、六六号証の2、六七号証の3、4、六八号証の2ないし4、7)本件工事のような電気設備工事の業界においては、株式会社日立製作所、株式会社東芝、三菱電機株式会社、被告富士電機、株式会社明電舎の五社が業界大手とされており(以下右各社を「大手五社」という。)、それに続いて、株式会社安川電機製作所、日新電機株式会社、神鋼電機株式会社、株式会社高岳製作所が中堅とされており(以下右各社を「中堅四社」という。)、これらはまとめて重電九社と呼ばれており、地方自治体の委託に係る被告事業団発注の電気設備工事のほとんどを受注していた。 また、被告事業団が発注する電気設備工事は、大別して受変電設備工事、水処理動力電気設備工事、自家発電設備工事、汚泥処理電気設備工事等に分かれるところ、大手五社はこれらをすべて完成させることができるだけの技術力を有していたが、中堅四社においては一部受注できない工事が存在するなど、これらの工事能力・受注能力には相当な格差があった。また、これらの九社を含む水処理機械製造業者、風水力機械製造業者、重電機製造業者が会員となって、下水道事業の技術向上や、広報等をその目的とする社団法人日本下水道施設業協会を設立していた。 電気設備工事に関して、電気設備そのものについては工事業者によつて差異が出ることはさほどないものの、それを作動させるシステムに関しては、各業者によつて設計や技術が大きく異なるために、業者間における互換性がなく、新規工事の業者と異なる業者が継続工事を行うと、不都合を生じ電気事故につながる恐れもあり、その場合の責任の所在も明らかにならないという難点があ や技術が大きく異なるために、業者間における互換性がなく、新規工事の業者と異なる業者が継続工事を行うと、不都合を生じ電気事故につながる恐れもあり、その場合の責任の所在も明らかにならないという難点があった。そこで、電気設備工事に関しては、原則として、新規工事を請け負った業者が継続工事も行うこととされ、継続工事については随意契約の方式によって行うこととされていた(いわゆる同一機場一メーカーの原則)。 ところで、被告事業団発注の(新規)電気設備工事については、指名競争入札の形式がとられていたものの、実際には、従来から業者間における話合いによって受注予定業者を予め決定し、その業者が落札できるように指名業者間で調整を行った上で、入札が行われるということが常態化していた。そして、受注予定業者を決定するに当たっては、発注自治体の意向、すなわち、当該自治体における特定の業者に受注させたいという意向がその決定的要因とされており、とりわけその首長の意向(「天の声」などと言われていた。)が重要視された。各社は、前記の同一機場一メーカーの原則があり、新規工事を受注すれば、継続工事についての受注もほぼ確実視されることから、新規工事の受注獲得に鎬を削っており、発注自治体が被告事業団に対し自社に受注させたいとする意向を述べてくれるように、自治体に対する営業活動に特に力を注いでいた。 また、各社においては、これらの営業活動を行う営業部門の他に、調査部門と呼ばれる部門が存在し、具体的にどの工事を受注するかという業者間の話合いは、この調査部門の担当者間において行われていた。重電九社によるこの話合いは俗に「九社会」とも呼ばれ、各社の営業部門・調査部門の担当者は、毎年、九社の持ち回りで幹事・副幹事を務め、被告事業団との窓口的な役割を担当していた。 一方、被告事業団において 九社によるこの話合いは俗に「九社会」とも呼ばれ、各社の営業部門・調査部門の担当者は、毎年、九社の持ち回りで幹事・副幹事を務め、被告事業団との窓口的な役割を担当していた。 一方、被告事業団においては、発注自治体側の意向が、支社を通じあるいは直接に工務担当理事などのもとに寄せられることから、工務部次長はこれを取りまとめて右幹事らに伝え、落札予定業者を決めるための便宜に供していた。なお、時に九社会で決めた受注予定業者と、発注自治体の意向とが異なることがあり、稀に、被告事業団がそのような自治体の意向を受け、受注予定業者の変更を求めて再調整を要請することがあった(「事業団裁定」といわれていた。)。 そのようにして落札予定業者が決まると、当該業者の担当者は、入札前に、被告事業団の工務部次長か電気課長のところに行って、予定価格について探りを入れるのが常であったところ、工務部次長や電気課長は、予定価格を具体的に教示することこそしないものの、業者側の金額を示しての問いに対し、「そんなんではとても落ちないよ。」とか、「それ位ならいいんじゃないの。」などと答え、暗に予定価格を示唆していた。そして、右の落札予定業者の担当者は、示唆された金額を基に一回目から三回目までの入札金額を決め、他社にも一回目から三回目までの入札金額(落札予定業者よりも高い金額)を指示していた。 また、業者間あるいは被告事業団裁定によって定められた落札予定業者以外の業者が落札した事例はなかった。 (3) 受注シェアの均等化による方法への移行(甲第六一号証、六三号証の5ないし7、六四号証の2、3、六五号証の3、六七号証の4、5、8、9、六八号証の2、3、8、11、12、七三号証)前記(2)のとおり、被告事業団は、業者らが事前に落札予定業者を決めることに協力していたものであるが、業者ら 、六五号証の3、六七号証の4、5、8、9、六八号証の2、3、8、11、12、七三号証)前記(2)のとおり、被告事業団は、業者らが事前に落札予定業者を決めることに協力していたものであるが、業者らの営業活動が激化するにつれ、業者の意を受けて代議士等が発注自治体の首長に圧力をかけるような事案も散見されるようになり、右首長から被告事業団に苦情が寄せられることもあったことから、このような営業活動に対して難色を示していた。被告事業団は、業者らに対し、その営業を行う上で、①代議士を利用しない、②コンサルタント会社(設計会社)との癒着を禁止する、③他社に対する誹謗中傷を行わないという三原則を守るよう、かねてから要請していた。 ところが、昭和六三年ころから、発注自治体から一旦は出されていた意向が突然変更になり、自治体の意向により当初は受注が予定されていた業者が受注できないということがしばしば起こるようになり、このような事態に対し、当初受注予定業者とされた業者の担当者は、東芝や被告富士電機などが前記の三原則に反した強引な営業活動をしているなどという不満を持つようになり、苦情を被告事業団の工務部次長の下などに持ち込むようになった。 そのような中で、昭和六三年度の九社会の幹事で、日立製作所の営業部門担当であったAは、昭和六三年夏ころ、被告事業団のB工務部次長やC工務担当理事に対し、大手五社の受注シェアの割合を均等にすることを提案した。これに対し、B次長やC理事は、当初は発注自治体の意向を無視することになりかねないことを懸念し、また被告事業団がシェアの均等化による受注調整という違法行為に積極的に加担する結果になることを憚ったこともあって、直ちにAの右提案に賛意を示さなかったが、被告事業団側においても、当時営業活動が激化して発注自治体から苦情が寄せられる る受注調整という違法行為に積極的に加担する結果になることを憚ったこともあって、直ちにAの右提案に賛意を示さなかったが、被告事業団側においても、当時営業活動が激化して発注自治体から苦情が寄せられるなど、影響が被告事業団まで波及することも多くあり、事態を深刻に受け止めていたことから、遂にAの右提案を受け入れた。そして、B次長は、C理事の了解を得て、平成元年の四月ころ、大手五社の役員を、次いでその営業担当の従業員をそれぞれ呼び出し、大手五社間において被告事業団発注の電気設備工事についてその受注シェアを均等化することを要請するとともに、中堅四社については、技術力・営業力も異なるから大手五社とは均等のシェアにすることは考えていないなどと述べた。これに対し、当時受注シェアを伸ばしていた東芝は、自らの営業努力を認めてほしいとか、これまで大手五社の権益とされてきた流域下水道のような規模の大きな工事についても、中堅四社の侵食を許すことになる旨主張したが、全体としてさほど大きな反対はなく、程なく、大手五社間のシェアを均等化することで話がまとまった。そして、その後中堅四社とも協議がなされ、結局大手五社と中堅四社とのシェアの比率を、八○パーセント対二〇パーセントとし、大手五社は各社一六パーセントずつのシェアとすることについて合意がなされた。 その後、平成元年度の工事については、右合意がまだ定着しておらず、九社間でうまく割り振りができなかったこともあって、大手五社が、定められたシェア以上の工事を受注してしまうなど混乱もみられたが、平成二年度からは、各社の間でも右合意が徐々に定着し、発注自治体の意向の強弱を考慮して調整を行うなどして、それぞれの割合に従って工事を受注できる目途が立ってきた。このような中、B次長は、当時の九社会の幹事の求めに応じ、工事の分配を行 が徐々に定着し、発注自治体の意向の強弱を考慮して調整を行うなどして、それぞれの割合に従って工事を受注できる目途が立ってきた。このような中、B次長は、当時の九社会の幹事の求めに応じ、工事の分配を行わせるため、予定金額(積算を行う以前の概算額であって、予定価格そのものではない。)等が記載された平成二年度新現発注工事の一覧表を交付し、それ以後、毎年六月ころ開催される日本下水道施設業協会における被告事業団発注物件の説明会のころまでに、各年度の新規発注工事に関する一覧表を九社会の幹事に渡すのが通例になった。なお、落札予定業者が、入札前に予定価格について探りを入れてきた場合は、従前どおり、工務部次長ないし電気課長が暗に予定価格を示唆していた。 (4) 本件入札・契約について(甲第六三号証の8、六四号証の2、3、六五号証の3、六八号証の3、4)平成三年度から、同年度発注の新規工事のみならず、平成二年度の新規工事物件で平成三年度以降継続物件となる工事などについても、前記受注シェア均等化合意の対象となることとなったが、同年度からは、前年度のシェアが低かった業者から順番に発注物件を選択する方法で受注予定物件を決定する方式が採用された(プロ野球のドラフト会議の方式に類似していたことから、「ドラフト方式」と呼ばれた。)。 また、平成四年度からは、中堅四社の強い要望により、大手五社と中堅四社とのシェアの割合が、それまでの八○パーセント対二〇パーセントから七五パーセント対二五パーセントに変更された。そして、同年六月一九日ころ三菱電機の会議室で行われた九社会において、平成四年度の被告事業団発注物件について受注予定業者が決められ、本件工事について被告富士電機が受注予定業者となることが決まった。 そして、同月二四日に本件入札が実施され、被告富士電機が二億一三〇 、平成四年度の被告事業団発注物件について受注予定業者が決められ、本件工事について被告富士電機が受注予定業者となることが決まった。 そして、同月二四日に本件入札が実施され、被告富士電機が二億一三〇〇万円で落札し、同日、被告事業団と被告富士電機との間において、請負代金額二億一九三九万円(うち消費税額六三九万円)で本件契約が締結された。 (二) 被告らは、本件において談合が行われていたとする直接証拠はなく、原告らが書証として提出する独占禁止法違反の刑事事件においては、個々の契約に関する談合が判断の対象とされているものではないから、本件契約を含む個々の契約において、被告富士電機らが談合を行っていたと推認されるものではない旨主張する。 しかしながら、受注調整(独占禁止法三条違反の事実)と、談合の事実とが厳密には別個の事実であるとしても、両者はいずれも業者が少しでも多く利潤を挙げるための手段という点でその目的を共通にし、受注調整の結果を実現するために談合を行うことが必要になるということができるから、前者をもって後者を推認することも可能である上、民事事件においては、刑事事件と異なり、談合の具体的方法等を微細にわたってまで認定する必要はなく、間接事実等に照らして、本件入札において談合がなされたということ自体が推認できれば必要にして十分であると解すべきである。そして、前記のとおり、本件工事について、九社間の話合いによって被告富士電機を受注予定業者として決定したことは優に認定できることや、九社間においてはかねてから恒常的に受注調整が行われており、このような受注調整を行う目的が、可能な限り高額で落札し十分な利益を挙げることにあること、被告事業団発注の工事において、入札前に被告事業団の職員から予定価格の示唆を受けた落札予定業者の担当者が、他社に具体的な入 調整を行う目的が、可能な限り高額で落札し十分な利益を挙げることにあること、被告事業団発注の工事において、入札前に被告事業団の職員から予定価格の示唆を受けた落札予定業者の担当者が、他社に具体的な入札金額の指示を行うのが通常化しており、本件入札においてそれがされなかったと考えることはかえって不自然であること、平成二年度以降、被告事業団は、九社会の幹事らに対し、年度の初めころには、発注予定工事の一覧表を交付し、同一覧表には予定金額(予定価格ではないが、予算として承認された価格である。甲第七一号証の1)が記載されていたこと、及び本件工事の予定価格は二億二〇五二万三〇〇〇円であり、落札率(落札価格の予定価格に対する比率)は九六・五九パーセントと高率であること(甲第五四号証)などに鑑みれば、本件入札に先立ち、被告富士電機を含む重電九社において、話合いによって被告富士電機を受注予定業者と決定し、他の業者に対し被告富士電機の入札価格よりも高い価格で入札するよう入札価格の指示を行い、右のとおり入札がなされることで、予定どおり被告富士電機が落札したものと認められる。すなわち、本件入札は自由競争を排除して入札価格の低下を防止するものであって、本件契約は、談合によるものということができる。 2 被告らの責任について(一) 以上のとおり、被告富士電機は、本件入札において談合行為を行って被告事業団と本件契約を締結し、これによって四日市市から委託金を支出させたものであるところ、このような談合は、地方自治法が定める競争入札制度を潜脱してその意味を失わせ、地方月治体に財産的損害をもたらす行為であるから、四日市市に対する関係で民法七〇九条あるいは七一五条の不法行為に該当するというべきである。したがって、被告富士電機は、右談合行為によつて四日市市が被った損害について賠 損害をもたらす行為であるから、四日市市に対する関係で民法七〇九条あるいは七一五条の不法行為に該当するというべきである。したがって、被告富士電機は、右談合行為によつて四日市市が被った損害について賠償する責任を負う。 (二) また、被告事業団は、従前から、重電九社が入札前に受注予定業者を決めていたことを黙認するのみならず、発注自治体の意向を伝えたり、平成元年度から始まった受注シェアの均等化による受注調整においては、予定金額入りの工事一覧表を九社側に渡すなどして、積極的にこれに加担していたものであるところ、前記認定事実によれば、工務担当理事等被告事業団の上層部の者もこれらの事情を十分に認識していたものと推認でき、単なる工務部次長等の突出した行動ではないというべきであるから、被告事業団としても、民法七〇九条、七一五条により同様に不法行為責任を免れないものである。 3 四日市市の被った損害について(一) 原告らの主張によれば、本件契約において、四日市市から委託を受けた被告事業団は談合がなければより低廉な価格で請負契約を締結できたというのであり、前記のとおり、四日市市と被告事業団との間で締結された本件委託協定においては、建設工事が完成したときには、被告事業団は、費用の精算を行うものとされ、精算の結果生じた納入済額と精算額との差額は四日市市に還付されることと定められていたものである。したがって、本件において四日市市が被った損害とは、談合によって被告事業団と被告富士電機との間の請負契約金額が本来よりもつり上げられることによつて、談合がなかったとすれば右精算によって受けられたはずの還付金相当額を受けられなかったことであるというべきであって、具体的な損害額としては、談合によつて形成された実際の契約金額と公正な競争入札が行われることにより形成されるであろ よって受けられたはずの還付金相当額を受けられなかったことであるというべきであって、具体的な損害額としては、談合によつて形成された実際の契約金額と公正な競争入札が行われることにより形成されるであろう契約金額との差額であると解するのが相当である。 被告らは、この点について、まず、精算による還付金請求権が存在する以上、四日市市に未だ損害は発生していない旨主張するが、右還付金請求権と談合という不法行為に基づく損害賠償請求権とはいわば請求権競合の関係に立つものであるから、四日市市の還付金請求権が仮に存在するとしても、これが存在することを理由として、不法行為上の損害が発生しないということはできない。したがって、被告らの右主張は失当である。 さらに、被告らは、四日市市と被告事業団との本件委託協定は、被告事業団が四日市市に対し本件施設を完成の上引き渡す義務を負う請負契約の性質を有し、四日市市が被告事業団に対し請負業者に発注することを委任する契約ではなく、本件委託協定に基づく精算は、被告事業団と請負業者との間の実際の請負代金支出額の合計額と四日市市からの納入済額との差額について行うもので、被告事業団と請負業者との請負契約の代金額いかんによつて精算金が変動するという関係にない以上、仮に談合があったとしても、四日市市に損害が生じるものではない旨主張する。しかしながら、証拠(甲第三四号証)によれば、本件委託協定の最終精算における年度完了精算報告書には、被告事業団と請負業者との請負契約金額と、それによって被告事業団が請負業者に支払った支出金額が記載され、本件工事を含むすべての工事請負契約を含んだ合計の支出額に管理諸費を加えた支出総額と、最終協定額(最終変更後の協定金額)との差額が、精算に基づく四日市市への還付金額となっていることが認められる。また、被告事業 むすべての工事請負契約を含んだ合計の支出額に管理諸費を加えた支出総額と、最終協定額(最終変更後の協定金額)との差額が、精算に基づく四日市市への還付金額となっていることが認められる。また、被告事業団の公益法人としての性質からして、低廉な金額で工事が完了した場合に、その差額を被告事業団の利益として保有できるシステムになっているとは容易に考え難い。したがって、被告事業団と請負業者との請負契約金額が変動すれば、支出総額も変動するものであるといえるから、仮に談合がなく右請負契約金額がより低廉な金額となったとすれば、その分精算に基づく還付金が発生する関係にあるということができる。以上によれば、談合がなかったとすれば発生したであろう還付金相当額が、四日市市の損害となると認められるから、被告らの右主張を採用することはできない。なるほど、被告らが主張するとおり、本件施設建設工事の費用については、本件委託協定の段階で既に国による補助金交付決定がなされているけれども、これによつて精算による還付金請求権が発生しないというものではなく、現に差額が生じた場合には精算すべきは当然であるから、右判断に影響を及ぼすものではない。 (二) そこで、本件入札における談合によって四日市市が被った損害額、すなわち、談合によつて形成された実際の契約金額と公正な競争入札が行われることにより形成されるであろう契約金額との差額について検討する。 この点について、原告らは、談合をしなければ少なくとも実際の契約金額から一八パーセントは下落する傾向がある旨主張するところ、証拠(甲五三、七四、七八ないし八○号証)によれば、他の地方公共団体の公共工事において、談合がされた事例と自由競争がされた事例とで落札率において一定程度の差があることが認められるし、また、落札意欲を持った業者らが自由競争を ないし八○号証)によれば、他の地方公共団体の公共工事において、談合がされた事例と自由競争がされた事例とで落札率において一定程度の差があることが認められるし、また、落札意欲を持った業者らが自由競争を行えば、落札代金が下落する現象がみられるであろうことは、容易に推認できるところである。 しかしながら、右に挙げられた事例は、本件工事とその工事の種類も規模も異なるものであるから、右の事例をもって直ちに四日市市の損害額を算定することはできない。また、証拠(甲第五一号証)によれば、被告事業団発注の電気設備工事について独占禁止法違反として刑事告発・訴追された後も落札率は依然として九五パーセント以上の高率を示していることが認められ、原告らがいうように平成八年度以降談合が行われているか否かについては、証拠上不明といわざるを得ないことからすれば、いわゆる前後理論によって損害額を算定することもできない。そもそも、落札価格は入札当時の経済情勢等によっても異なるものであり、その他、工事の種類・規模、公共工事の発注件数、工事自体の難易、地域性、入札業者の落札に向けた意欲の多寡、入札業者の価格競争能力、入札業者の数などの諸条件が複雑に絡み合って形成されるものというべきである。さらに、実際にどのように落札価格が形成されるかについては、当該入札で落札を希望する業者が、同入札においてどの程度の競争が行われるかということを計算に入れ、どこまで利潤を見込むことができるかを予測した上で、最も自己に利益に落札できるであろうと考える価格を入札することによるのであって、それは前記の価格形成条件はもとより、落札を希望する業者の積算能力・予測能力にも依存するところが大きいといわなければならず、そこまでを詳細に検討することは事実上不可能であるといわざるを得ない。 結局、本件においては談 条件はもとより、落札を希望する業者の積算能力・予測能力にも依存するところが大きいといわなければならず、そこまでを詳細に検討することは事実上不可能であるといわざるを得ない。 結局、本件においては談合が行われなければ落札価格が下落するという意味において、四日市市に財産的損害が生じたこと自体は推認できるものの、右損害額の算定には極めて種々の仮定的条件を基礎としなければならず、その算定には著しい困難を伴うものであると言わざるを得ない。また、損害賠償請求事件においては、その性質上、確度の高い損害率を選ぶ必要がある。そこで、当裁判所は、本件においては民事訴訟法二四八条を適用し、前記内容を含む証拠調の結果及び弁論の全趣旨を考慮した結果、その損害額を契約金額の七パーセントと認定することとする。 (三) 以上によれば、被告富士電機を含む重電九社の談合によつて四日市市が被った損害は、一五三五万七三〇〇円となる。 219,390,000×0.07=15,357,300(四) また、原告が主張する弁護士費用について検討するに、地方自治法二四二条の二第七項は、同条第一項四号の規定による住民訴訟を提起した者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、右訴訟を提起した者が弁護士に報酬を支払うべきときは、普通地方公共団体に対し、その報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができる旨規定しているところ、当該裁判が確定した後に地方自治体が右訴訟提起者に対し支払うことが相当と認められる金額については、本件不法行為と相当因果関係のある損害であると認めるのが相当である。そして、右相当と認められる金額については、本件における認容額、訴訟追行の経緯等を総合的に勘案すると、一五〇万円と認めるのが相当である。 (五) 結局、本件における四日市市の損害は、合計一六八五万七 そして、右相当と認められる金額については、本件における認容額、訴訟追行の経緯等を総合的に勘案すると、一五〇万円と認めるのが相当である。 (五) 結局、本件における四日市市の損害は、合計一六八五万七三〇〇円となる。 15,357,300+1,500,000=16,857,300第四結論以上のとおり、原告らの本訴請求のうち被告らに対し、連帯して金一六八五万七三〇〇円及び右金員に対する本件契約が締結された日の翌日である平成四年九月五日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求めた部分については理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六五条一項本文、六四条本文、六一条を適用して、主文のとおり判決する。なお、仮執行宣言は相当でないからこれを付さないものとする。 津地方裁判所民事部裁判長裁判官山川悦男裁判官後藤隆裁判官西村康一郎

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