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主文 原判決を次のとおり変更する。被控訴人は控訴人に対し金二五万円とこれに対し昭和三四年四月一日から支払いずみまで年六分の割合による金員を支払いせよ。控訴人のその余の請求を棄却する。訴訟費用中控訴人と被控訴人間に生じた部分は第一、二審を通じて三分し、その一を被控訴人のその余を控訴人の各負担とする。この裁判は、第二項に限り控訴人が金六万円の担保を供して仮に執行することができる。事実 控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人は控訴人に対し金七一万六、五一四円とこれに対する昭和三四年四月一日から支払いずみまで年六分の割合による金員を支払いせよ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決と仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、援用、認否は、次に記載するほかは原判決の事実摘示と同一であるから、ここに引用する。一、 控訴代理人甲第九、一〇号証第一一号証の一ないし三、第一二、一三号証の各一、二及び第一四号証を提出、当審での控訴本人尋問の結果を援用、乙第一〇号証の原本の存在と成立を認める。二、 被控訴代理人乙第一〇号証を提出、当審証人Aの証言、当審での被控訴本人尋問の結果を援用、右甲号各証の成立を認め、同第一四号証は原本の存在も認める。なお、原審での認否を次のとおり訂正する。甲第一号証の成立は否認する。但し被控訴人の記名、捺印、支払地、振出地及び支払場所の記載並びに収入印紙の消印は認める、同第三号証中株式会社B製綿工場代表者Cの署名、拇印、及び文面中「個人債権は全額御支払い願いとう思います」との記載部分の成立は認め、その余の部分 振出地及び支払場所の記載並びに収入印紙の消印は認める、同第三号証中株式会社B製綿工場代表者Cの署名、拇印、及び文面中「個人債権は全額御支払い願いとう思います」との記載部分の成立は認め、その余の部分の成立は否認する。 払場所の記載並びに収入印紙の消印は認める、同第三号証中株式会社B製綿工場代表者Cの署名、拇印、及び文面中「個人債権は全額御支払い願いとう思います」との記載部分の成立は認め、その余の部分 振出地及び支払場所の記載並びに収入印紙の消印は認める、同第三号証中株式会社B製綿工場代表者Cの署名、拇印、及び文面中「個人債権は全額御支払い願いとう思います」との記載部分の成立は認め、その余の部分の成立は否認する。理由 第一、 主たる請求(手形請求)について判断する。一、 本件手形振出しの経緯及び控訴人がこれを所持するに至つた事情について。控訴人が本件手形を所持していることは当事者間に争いがなく、この争いのない事実や被控訴人の記名、捺印、支払地、振出地及び支払場所の記載並びに印紙の消印について当事者間に争いがないので、被控訴人関係部分について真正に成立したものと推認される甲第一号証、成立に争いがない同第四ないし六号証、同第七号証の四(不動産仮差押異議事件の証人Dの証人調書)、同第一一号証の二(別件の証人Eの証人調書)、乙第二、四、五、八号証、同第九号証(別件の証人Aの証人調書)、同第一〇号証(別件の証人Dの証人調書)、原審証人D(一部)、同F、当審証人Aの各証言、原審と当審での控訴人(いずれも一部)被控訴人の各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すると、次のことが認められる。(一) 被控訴人の経営する訴外株式会社B製綿工場は、昭和三四年二月一七日約金一、三七二万円の負債のため倒産したが、被控訴人は、個人としても約金六〇〇万円の債務を負担するに至つた。このことを苦慮した被控訴人は、同日家族を伴つて家出をし、行先をくらませた。(二) B会社は、訴外G製綿工業有限会社(代表者代表取締役H)とそれまで融通手形を交換しあつており、その頃B会社は、G会社から約金六〇万円の融通手形の振出しをうけこれを割り引いていたのに対し、B会社は、G会社に融通手形五通(その金額と支払期日は夫々(イ)金一六万四、二〇〇円、 を交換しあつており、その頃B会社は、G会社から約金六〇万円の融通手形の振出しをうけこれを割り引いていたのに対し、B会社は、G会社に融通手形五通(その金額と支払期日は夫々(イ)金一六万四、二〇〇円、昭和三四年三月七日(ロ)金一二万五、三〇〇円、同月一二日(ハ)金一三万二、四五〇円、同月二二日(ニ)金一四万円、同月二三日(ホ)金二五万円、同年四月二六日で、その金額の合計は、金八一万一、九五〇円である。 を交換しあつており、その頃B会社は、G会社から約金六〇万円の融通手形の振出しをうけこれを割り引いていたのに対し、B会社は、G会社に融通手形五通(その金額と支払期日は夫々(イ)金一六万四、二〇〇円、昭和三四年三月七日(ロ)金一二万五、三〇〇円、同月一二日(ハ)金一三万二、四五〇円、同月二二日(ニ)金一四万円、同月二三日(ホ)金二五万円、同年四月二六日で、その金額の合計は、金八一万一、九五〇円である。)を振り出して交付した。しかし、被控訴人は、これら融通手形が不渡りになつても、G会社に迷惑を掛けることがないように、その債務の代物弁済として、B会社が、これまでその工場で製綿に使用していた機械類をG会社に譲渡しておこうと考え、その措置として、右家出の日である昭和三四年二月一七日、その家出を前にして、売主B会社、買主Hとし、右機械類を売買する旨の売買契約証(甲第五号証)を作成したが、その売買代金と売買の日はG会社の利益のため空白にしておいた。被控訴人は、更に、他の債権者が右機械類を持ち去つて処分するかも知れず、そのときは、G会社に対する代物弁済の目的が達せられないことになることを予測し、B会社の右債務を個人保証することにより、G会社は、被控訴人個人に対する債権者となることができ、そのときには他の債権者より優位に立てると判断し、約束手形用紙五通に、いずれも、振出人をB会社と被控訴人の共同振出し名義にし、支払地、振出地とも大阪市、支払場所株式会社大和銀行I支店と夫々記入し、振出日と受取人の各欄を白地のままとし、各金額欄と支払期日欄は、G会社の方で、さきにB会社がG会社に振り出しておいた融通手形五通の各金額と支払期日を補充することを予想し、そのおぼえとして右五通の融通手形に対応する同一の金額と支払期日を、別紙添付約束手形記載例どおり(イ) 164 会社がG会社に振り出しておいた融通手形五通の各金額と支払期日を補充することを予想し、そのおぼえとして右五通の融通手形に対応する同一の金額と支払期日を、別紙添付約束手形記載例どおり(イ) 164,200 34 37 (ロ)125,300 34 3(ハ)132,450 34 3 22(ニ)140,000 34 3(ホ)250,000 34 4 26と夫々鉛筆で書き込んで約束手形五通を作成した。被控訴人は、このようにして出来上つ売買契約証と約束形五通に、H宛「御許し下さい御許し下さい全部なげ出しても足りません世の笑い者になりました御許し下さい」と用箋に認めたものを添えて、二通のG会社宛ての封筒に入れ、家出の途中、これを郵便として投函した。 3(ハ)132,450 34 3 22(ニ)140,000 34 3(ホ)250,000 34 4 26と夫々鉛筆で書き込んで約束手形五通を作成した。被控訴人は、このようにして出来上つ売買契約証と約束形五通に、H宛「御許し下さい御許し下さい全部なげ出しても足りません世の笑い者になりました御許し下さい」と用箋に認めたものを添えて、二通のG会社宛ての封筒に入れ、家出の途中、これを郵便として投函した。(三) B会社が倒産し、被控訴人が家出したことは、いち早く翌日である昭和三四年二月一八日の新聞に掲載されたので、債権者らはこれを聞知して騒ぎ出し、B会社につめかけた。その中に控訴人やG会社の代表者である右Hの弟訴外Dもいた。控訴人は、B会社に対し約金二七〇万円の一番大口売掛債権を有していた関係で、自然とB会社の債権者の代表者のような恰好になり、同日頃直ちにB会社の店舗と工場にあつた綿の製品と半製品を約八台の大型トラツクに積んで自己の倉庫に運び込んで保管した。(四) 被控訴人がG会社に宛て投函したさきの郵便物は、同月二〇日頃G会社に到達した。G会社の右Dは、右売買契約証を利用して、その日付を遡らせて昭和三三年一〇月五日代金を金三〇万円と夫々記入し、すでに右機械類は、同日G会社がB会社に対する金三〇万円の貸金の代物弁済の目的として売買され、その所有権はG会社のものである旨の売買証書に仕立て、G会社を代理して昭和三四年二月二一日、これを疎明資料に、大阪地方裁判所から右機械類に対する処 する金三〇万円の貸金の代物弁済の目的として売買され、その所有権はG会社のものである旨の売買証書に仕立て、G会社を代理して昭和三四年二月二一日、これを疎明資料に、大阪地方裁判所から右機械類に対する処分禁止の仮処分命令をえ、その頃同命令を執行した。なお、被控訴人が綿利商店こと訴外Jに対しても同様な売買契約証を送付したことを知つたDは、右Jと共同で右仮処分命令をえてその執行をしたものである。(五) 債権の回収に腐心していた控訴人はDから、右仮処分執行後事の次第を打ち開けられ、同人に対し、右機械類の所有権がG会社にあることを債権者らに承認させる代わりに、その手中にあるB会社と被控訴人共同振出しのさきの約束手形五通を交付するよう要求した。被控訴人の個人保証をえていない控訴人は、右手形を取得することにより、被控訴人個人に対する手形債権者となることができ、そのことによつて、自己のB会社に対する債権の回収が容易になると考えた。 訴人はDから、右仮処分執行後事の次第を打ち開けられ、同人に対し、右機械類の所有権がG会社にあることを債権者らに承認させる代わりに、その手中にあるB会社と被控訴人共同振出しのさきの約束手形五通を交付するよう要求した。被控訴人の個人保証をえていない控訴人は、右手形を取得することにより、被控訴人個人に対する手形債権者となることができ、そのことによつて、自己のB会社に対する債権の回収が容易になると考えた。 そこで、Dは、昭和三四年二月二三日頃、控訴人の右要求に応じ、控訴人に対し、被控訴人から受け取つた金額と支払期日を鉛筆書きにしたそのままの右約束手形五通を交付したが、その際両者間で、右G会社に機械類の所有権を認めることの代償に右手形の交付をするものである事実は他に口外しないことをかたく密約した。(六) 控訴人は、右約束手形の交付を受けると、被控訴人が鉛筆書きした手形金額金一六万四、二〇〇円支払期日昭和三四年三月七日、金一二五、三〇〇円支払期日同月一二日及び金二五万円支払期日同年四月二六日の約束手形三通(以下三通の約手という)のうち、いずれか一通を用いて、右鉛筆書きの部分を消して、金額欄に、その頃までの控訴人の有するB会社の不渡り手形の合計金額である金七一万六、五一四円と、支払期日欄に、昭和三四年二月二五日と、振出日欄に、昭 、いずれか一通を用いて、右鉛筆書きの部分を消して、金額欄に、その頃までの控訴人の有するB会社の不渡り手形の合計金額である金七一万六、五一四円と、支払期日欄に、昭和三四年二月二五日と、振出日欄に、昭和三三年一二月二日と夫々記入した。(七) 控訴人は、このように完全に鉛筆書きの部分を消して夫々記入したため手形面上鉛筆書きが明らかでなくなり、結局、本件手形は三通の約手のどの一通なのか判然としないわけで、本件に顕われた全証拠を検討しても、本件手形がどの一通であるかを認めることができる証拠が見当らない。 (八) 控訴人は、昭和三四年二月二六日弁護士平野光夫に委任して大阪地方裁判所に対し、被控訴人を相手どつて、被保全権利を、被控訴人に対する右金七一万六、五一四円の手形債権とし、これを保全するため、被控訴人の個人所有である大阪市a区b町c丁目d番地にある宅地と建物について仮差押の申立てをしたところ、同裁判所は、同日右申立てを容れて仮差押決定をした。 (九) このようにしているうちに、被控訴人は、同年三月初頃その居所を見つけられ、その住所に連れ戻された。 に委任して大阪地方裁判所に対し、被控訴人を相手どつて、被保全権利を、被控訴人に対する右金七一万六、五一四円の手形債権とし、これを保全するため、被控訴人の個人所有である大阪市a区b町c丁目d番地にある宅地と建物について仮差押の申立てをしたところ、同裁判所は、同日右申立てを容れて仮差押決定をした。 (九) このようにしているうちに、被控訴人は、同年三月初頃その居所を見つけられ、その住所に連れ戻された。被控訴人は、同月一七日、落綿会館で、債権者の集会を開いたが、そこには、B会社の債権者のほか、被控訴人個人の債権者も出席していた。B会社の債権整理委員長に選ばれた控訴人は、その席で、自己がした右仮差押の事実を報告しなかつた。被控訴人の個人債権者らは、その後右仮差押の事実を探知し、控訴人に対し不信の念を抱き、整理は、B会社に対する債権と被控訴人に対する債権と夫々別個にすることを申し入れた。そこで、控訴人は、同弁護士に委任して同月二五日、大阪簡易裁判所に対し、本件手形上の債権について被控訴人とB会社とを相手どつて本件支払命令の申立てをした。右認定に反する原審証人Dの証言、原審と当審での控訴本人 は、同弁護士に委任して同月二五日、大阪簡易裁判所に対し、本件手形上の債権について被控訴人とB会社とを相手どつて本件支払命令の申立てをした。右認定に反する原審証人Dの証言、原審と当審での控訴本人尋問の結果の夫々一部及び成立に争いがない甲第七号証の二(不動産仮差押異議事件の証人Kの証人調書)、同号証の三(同事件の証人Eの証人調書)、同第一三号証の二(同事件の控訴人の本人調書)、同第一二号証の二(別件での控訴人の証人としての尋問調書)の各記載は採用しないし、ほかに、右認定の妨げとなる証拠はない。二、 被控訴人は、被控訴人は単にG会社に対しB会社の債務を個人保証する証として使用させる目的で本件手形を振り出したに過ぎず、第三者の手による白地部分の補充により本件手形を流通におく意思はなかつたと抗弁するが、そのような抗弁事実を認めることができる的確な証拠がないばかりか、さきに認定した事実からすると、被控訴人は、B会社のG会社に対する融通手形上の債務を個人保証する意図のもとに、本件手形を含む五通の白地約束手形をB会社と共同で、G会社に振り出したことが認められるから、被控訴人には、右手形五通を流通におく意思がなかつたとするわけにはいかない。 部分の補充により本件手形を流通におく意思はなかつたと抗弁するが、そのような抗弁事実を認めることができる的確な証拠がないばかりか、さきに認定した事実からすると、被控訴人は、B会社のG会社に対する融通手形上の債務を個人保証する意図のもとに、本件手形を含む五通の白地約束手形をB会社と共同で、G会社に振り出したことが認められるから、被控訴人には、右手形五通を流通におく意思がなかつたとするわけにはいかない。したがつて、この抗弁は採用できない。三、 被控訴人は、控訴人はG会社から本件手形を借用しているに過ぎないから正当な手形の所持人でないと主張するが、さきに認定したとおり、控訴人はG会社から本件手形を含む右約束手形五通の交付を受けて手形上の権利を取得したものであるから、この主張は採用に由ない。四、 被控訴人は、控訴人の本件手形の取得は、信託法一一条に違反し無効であると抗弁するので判断する。<要旨第一>(一)信託法一一条の法意については種々の見解があるが、右法条は、非弁護士が弁護士代理の原則(民訴</要旨第 の本件手形の取得は、信託法一一条に違反し無効であると抗弁するので判断する。<要旨第一>(一)信託法一一条の法意については種々の見解があるが、右法条は、非弁護士が弁護士代理の原則(民訴</要旨第一>七九条一項)に反して他人のため訴訟行為をしたり、非弁護士が弁護士法七二条に反して他人のため法律事務を業として取り扱う場合、又は、なんびとであるを問わず、他人間の法的紛争に介入し、その解決について司法機関を利用しつつ、不当な利益を追求する場合には、そのような他人の権利について訴訟行為をすることは不当であつて法律上容認することができないものであるとし、このことを前提に、その基本の要素である権利の他人性を信託形式の利用によつて排除して右法原則の適用を免れようとする脱法行為を防止することを目的としたものと解するのが相当である。(二) ところで、本件を観察すると、(1) さきに認定したとおり、控訴人の目的は他にあるのであつて、そのうえ、控訴人は、本件手形を取得すると間なしに弁護士平野光夫に委任して、本件訴訟を提起したのであるから、控訴人は、本件手形債権を譲り受けて自ら訴訟を追行することにより、弁護士代理の原則(民訴七九条一項)を潜脱しようとしたものとは認められない。(2) 本件手形債権の譲受人である控訴人が、法律事務を業とするものであることを認めることができる証拠は、本件にはない。 り、控訴人の目的は他にあるのであつて、そのうえ、控訴人は、本件手形を取得すると間なしに弁護士平野光夫に委任して、本件訴訟を提起したのであるから、控訴人は、本件手形債権を譲り受けて自ら訴訟を追行することにより、弁護士代理の原則(民訴七九条一項)を潜脱しようとしたものとは認められない。(2) 本件手形債権の譲受人である控訴人が、法律事務を業とするものであることを認めることができる証拠は、本件にはない。(3) さきに認定したところによると、控訴人のG会社からの本件手形の譲受けは、これによつて、B会社の債務の保証の趣旨で手形の共同振出人となつた被控訴人個人に対する債権者となり、控訴人のB会社に対する債権の回収を図ることを目的としたものであつて、けつして、G会社のため代わつて本件手形金を取り立てることを目的としたものではなく、又被控訴人とG会社間の法的紛争に立ち 者となり、控訴人のB会社に対する債権の回収を図ることを目的としたものであつて、けつして、G会社のため代わつて本件手形金を取り立てることを目的としたものではなく、又被控訴人とG会社間の法的紛争に立ち入つてその解決について不当な利益を追求することを目的としたものでもない。(三) そうしてみると、控訴人の本件手形の譲受けは、信託法一一条に違反しないから、この抗弁も採用できない。三、 被控訴人は、控訴人は本件手形の金額と支払期日とを変造したから、変造前に署名した被控訴人には、変造前の金額と支払期日の範囲でしか責任がないと抗弁するので判断する。<要旨第二>(一) 本件手形金額の変造の主張について。</要旨第二> (1)さきに認定したとおり、三通の約手は手形金額の下方に算用数字で、それぞれ164,200 125,300 250,000と振出人である被控訴人によつて鉛筆書きされている。(2) 手形金額記載は約束手形の必要的記載事項である(手形法七五条二号)が、その記載の仕方については、同法七七条二項が準用する同法六条のほか、何らの規定がない。したがつて、手形金額は、必ずしも本文中に文字で記載しなければならないものではなく、要は、社会通念上からみて、一定の金額の手形上の記載が、振出人の手形金額記載の意思の体現であると解されるかぎり、手形上の記載の部位や書体のいかんを問わないし、又その記載の用具は、故意又は事故による変改、毀減、抹消などを防止するため、なるべく、そのおそれの少ないものを可とするが、それは程度問題であるから、社会的に事務用筆記具として使用されている鉛筆を用具とする記載を不可とする理はない。 いものではなく、要は、社会通念上からみて、一定の金額の手形上の記載が、振出人の手形金額記載の意思の体現であると解されるかぎり、手形上の記載の部位や書体のいかんを問わないし、又その記載の用具は、故意又は事故による変改、毀減、抹消などを防止するため、なるべく、そのおそれの少ないものを可とするが、それは程度問題であるから、社会的に事務用筆記具として使用されている鉛筆を用具とする記載を不可とする理はない。(3) しかし、本件の右記載は、すでに認定したとおり、主観的には、G会社が手形金額を記入することを予期した被控訴人が、その記入される金 て使用されている鉛筆を用具とする記載を不可とする理はない。(3) しかし、本件の右記載は、すでに認定したとおり、主観的には、G会社が手形金額を記入することを予期した被控訴人が、その記入される金額の限度を示すためにおぼえ程度に記載したにすぎず、客観的にこの記載を観察しても、約束手形用紙の金額欄が、ことさらに空白になつている以上、金額欄の下方にある鉛筆書きによる右算用数字は金額欄の空白部分を、将来の手形取得者が補充することを予定し、その資料的意味があらわされたものと認められる。そうしてみると、右三通の約手にした算用数字による金額の記入は、振出人である被控訴人の手形金額記載の意思の体現であるとは解することができないから、三通の約手は、いずれも、手形金額を白地として振り出されたものと認めるのが相当である。(4) 以上の次第で、本件手形を含む三通の約手は、その各金額欄は白地であるから、控訴人が、金額欄に、被控訴人の記載した算用数字による金額と異なる金額を記入しても、何ら手形金額の変造になるものではない。それゆえ被控訴人のこの抗弁は採用に由ない。<要旨第三>(二) 本件手形の支払期日の変造の主張について。</要旨第三>(1) さきに認定したとおり、被控訴人は、三通の約手の支払期日欄の「支払期日昭和年月日」とあるその各空欄に、鉛筆書きで、34.3.7.34. 3.12.34.4.26.と書き込んだもので、鉛筆書きではあるにしても、この記載は、その体裁上、昭和三四年三月七日、昭和三四年三月一二日、昭和三四年四月二六日と夫々確定の支払期日を記載したものと理解することができる。(2) 支払期日の記載も、約束手形の必要的記載要件である(手形法七五条二号)。もつとも、その記載のないときは、手形法七六条二項によつて一覧払いのものとみなし で、34.3.7.34. 3.12.34.4.26.と書き込んだもので、鉛筆書きではあるにしても、この記載は、その体裁上、昭和三四年三月七日、昭和三四年三月一二日、昭和三四年四月二六日と夫々確定の支払期日を記載したものと理解することができる。(2) 支払期日の記載も、約束手形の必要的記載要件である(手形法七五条二号)。もつとも、その記載のないときは、手形法七六条二項によつて一覧払いのものとみなし 記載したものと理解することができる。(2) 支払期日の記載も、約束手形の必要的記載要件である(手形法七五条二号)。もつとも、その記載のないときは、手形法七六条二項によつて一覧払いのものとみなして手形が無効となることを防いでいるが(このことはもとより支払期日に関する白地手形を認めない趣旨ではない)、このほかに、手形法には支払期日の記載方法を制限する規定、たとえば、その書体や用具について、算用数字による記載は認めず、鉛筆書きは許さないとした規定はないし、これを不可とする合理的根拠も見出だすことはできない。(3) そうしてみると、本件では、三通の約手の各支払期日欄に、鉛筆書きにもせよ、右のとおり支払期日の記載があるから、振出人が約束手形用紙の支払期日欄を全く空白にしてその補充権を与えたときとは同一に論ぜられないのである。もつとも、被控訴人は、主観的には、支払期日についても、鉛筆書きのとおり、G会社が書き込むことを期待したわけであるから、この振出人の意思を尊重する立場をとると、三通の約手の所持人が、たとえは右支払期日の鉛筆書きを墨汁又はインキなどを用いて書き改めないかぎり、支払期日欠缺の未完成手形であつて、そのままで呈示することは不適法としてその効力を否定されることになる。しかし、この結論には到底賛同することができない。なぜならば、被控訴人が支払期日を白地にし、鉛筆書きのとおり、他日支払期日を補充するよう白地補充権を与える心算で、他の適切な方法、たとえば、手形の欄外に記入する方法をとつた場合と異なり、手形の外観上、支払期日欄に鉛筆書きにもせよ明瞭な日時の記載があり、空白は存しないにもかかわらず、彼此混同して未完成手形とみるのは、あまりにも、手形外観を無視して主観的意思解釈に堕し、取引きの安全を害するおそれがあるからである。(4) 瞭な日時の記載があり、空白は存しないにもかかわらず、彼此混同して未完成手形とみるのは、あまりにも、手形外観を無視して主観的意思解釈に堕し、取引きの安全を害するおそれがあるからである。 払期日欄に鉛筆書きにもせよ明瞭な日時の記載があり、空白は存しないにもかかわらず、彼此混同して未完成手形とみるのは、あまりにも、手形外観を無視して主観的意思解釈に堕し、取引きの安全を害するおそれがあるからである。(4) 瞭な日時の記載があり、空白は存しないにもかかわらず、彼此混同して未完成手形とみるのは、あまりにも、手形外観を無視して主観的意思解釈に堕し、取引きの安全を害するおそれがあるからである。(4) 控訴人が、三通の約手のいずれか一通の支払期日欄の鉛筆書きの記載を消して昭和三四年二月二五日と記載したことは、さきに認定したとおりであるから、控訴人は、三通の約手の支払期日である昭和三四年三月七日、同月一二日、同年四月二六日のどれかを同年二月二五日に変造したことになる。<要旨第四>(5) 手形変造の法律効果を主張する者は、その要件事実として、手形債務者として署名した特定の者の</要旨第四>署名当時における手形文言について立証責任を負うものと解するのが相当である。けだし、手形の文言が変造された場合には、その変造後の署名者は、変造された文言に従つて手形上の責任を負い、変造前の署名者は、原文言に従つて責任を負うものであることは、手形法七七条一項六九条の明定するところである。そして、手形法には、旧商法四三七条二項の「変造シタル手形ニ署名シタル者ハ、変造前ニ署名シタルもノト推定ス」というような法律上の推定規定は存しないから、立証責任の分配は一般の原則によつて解決されることになる。ところで、手形の変造は、変造部分が手形の必要的記載事項、有益的記載事項、および有害的記載事項のいずれであるかを問わず、又主張者の立場が手形の所持人、手形債務者、もしくはそれ以外の第三者であるかを問わず、一般に、手形の現文言(注、変造が特定の手形文言、たとえば、支払期日について数回行なわれた場合には、すでに主張立証されたところの特定の変造後における特定の手形文言、たとえば支払期日である場合がある。)による手形債務者の責任が、変造前の原文言(注、右現文言の場合と同断。)による責任に れた場合には、すでに主張立証されたところの特定の変造後における特定の手形文言、たとえば支払期日である場合がある。)による手形債務者の責任が、変造前の原文言(注、右現文言の場合と同断。)による責任に比し、変造の主張者にとつて不利益であるところから主張されるものである(そうでなければ主張は無意味である。 る場合がある。)による手形債務者の責任が、変造前の原文言(注、右現文言の場合と同断。)による責任に れた場合には、すでに主張立証されたところの特定の変造後における特定の手形文言、たとえば支払期日である場合がある。)による手形債務者の責任が、変造前の原文言(注、右現文言の場合と同断。)による責任に比し、変造の主張者にとつて不利益であるところから主張されるものである(そうでなければ主張は無意味である。)から、特定の者が、手形債務者としての署名時の手形の原文言と、署名後の手形の現文言の両者が相異なること、署名の前後で両者が相異なるのは無権原による記載事項の挿入、削除、変更が加えられたためであること、および変造の主張者によつて現文言が不利益であることとその不利益の限界すなわち署名時の手形の原文言、以上の諸点について証拠判断上不明が存するときは、その不利益は主張者に帰せしめるのが衡平であるからである。ところで、本件は、被控訴人は振出人として署名のうえ、支払期日を夫々記載して三通の約手を振り出したところ、その後、これを取得した控訴人が右三通の約手の支払期日のどれかを変造したことまでの立証はできたが、三通の約手のどの支払期日を変造したのかすなわち変造前の手形の原文言の内容について遂に立証できなかつた事案である。そこで、右立証責任の分配にしたがつて、その不利益は変造を主張する被控訴人に帰せしめなければならないが、被控訴人にとつて、最も不利益な支払期日は、昭和三四年三月七日であることは多言を費すまでもない。そうすると、控訴人は支払期日昭和三四年三月七日を同年二月二五日に変造したものであるから、被控訴人は、支払期日は同年三月七日の範囲で責任を負わなければならない。六、 被控訴人は、控訴人は、本件手形の金額の白地補充権を濫用したと抗弁するので判断する。 <要旨第五>(一)この手形金額についての白地手形取得者の補充権の濫用の事実すなわち特定の ばならない。六、 被控訴人は、控訴人は、本件手形の金額の白地補充権を濫用したと抗弁するので判断する。 <要旨第五>(一)この手形金額についての白地手形取得者の補充権の濫用の事実すなわち特定の手形の白地金額の補充</要旨第五>について白地署名者と相手方間に特定の金額に限定する旨の合意があり、右手形取得者が悪意で右合意金額を超えて金額欄を補充したとの要件事実は、これを主張する者において立証責任を負うものと解するのが相当である。 は、控訴人は、本件手形の金額の白地補充権を濫用したと抗弁するので判断する。 <要旨第五>(一)この手形金額についての白地手形取得者の補充権の濫用の事実すなわち特定の手形の白地金額の補充</要旨第五>について白地署名者と相手方間に特定の金額に限定する旨の合意があり、右手形取得者が悪意で右合意金額を超えて金額欄を補充したとの要件事実は、これを主張する者において立証責任を負うものと解するのが相当である。(二) さきに説示したとおり、三通の約手には、いずれも、手形金額欄は白地で、その下方に鉛筆書きで各手形金額の白地補充権の内容が示されていたのであるが、これを取得した控訴人は、そのうちの一通の鉛筆書きを消して、三通の約手の鉛筆書きで示されたすべての各金額を超えて、本件手形金額である金七一万六、五一四円と記入したのであるから、控訴人は補充権を濫用して手形金額を記載したものといわなければならない。(三) ところで、本件手形が三通の約手のうちどの一通であるか分明でない本件では、右立証責任の分配上、被控訴人は本件手形を含む三通の約手の金額の白地補充権を与えたものとして、そのうちの最高金額である金二五万円の範囲で、本件手形の補充権を与えたものと認めるほかない。したがつて、被控訴人は、本件手形金額のうち金二五万円についてその責任を負担すべきであるが、これを超える部分については、その責任を有しないとしなければならない。七、 ここで一言付加すると、以上認定判断したところによると、被控訴人は、金額は金二五万円、支払期日は昭和三四年三月七日の手形について責を負わなければならない。ところが、三通の約手中には、このような手形要件の約束手形がないから、右認定判断は、客観的に存在する手形上の責任とは一致しないことになる。しかし 四年三月七日の手形について責を負わなければならない。ところが、三通の約手中には、このような手形要件の約束手形がないから、右認定判断は、客観的に存在する手形上の責任とは一致しないことになる。しかし、金額として金二五万円が、支払期日として昭和三四年三月七日が、それぞれえられたのは、前者については白地金額補充権濫用の、後者については手形支払期日変造の各抗弁について、当裁判所がそれぞれ立証責任を適用して判断した結果であるから、この結果は、やむをえないものとするほかはない。八、 被控訴人は本件手形債務は消滅したと抗弁するので判断する。 は、客観的に存在する手形上の責任とは一致しないことになる。しかし、金額として金二五万円が、支払期日として昭和三四年三月七日が、それぞれえられたのは、前者については白地金額補充権濫用の、後者については手形支払期日変造の各抗弁について、当裁判所がそれぞれ立証責任を適用して判断した結果であるから、この結果は、やむをえないものとするほかはない。八、 被控訴人は本件手形債務は消滅したと抗弁するので判断する。右抗弁が成立するためには、手形法七七条一項一号一七条にいわゆる悪意、すなわち手形取得者が、その取得の当時、その前者の有する抗弁内容を知ることが必要である。しかるところ、右悪意の主張がないのみならず、控訴人が、本件手形を取得したのは、さきに認定したとおり、昭和三四年二月二三日頃であるのに対し、被控訴人の主張する機械類の譲渡、代物弁済又は債権の放棄の事実が発生したとする日は、同年三月二日であるところ、控訴人が、本件手形を取得した際本件手形は、G会社が右機械類の譲渡を受けることができないとき、はじめて支払われるもので、その譲渡があれば、当然本件手形債務は消滅すること、及び、本件手形債務は、右機械類の代物弁済によつて消滅するものであることまで知つて悪意でこれを取得したことを認めることができる証拠はどこにもない。そうしてみると、この抗弁も採用に由ない。第二、 予備的請求(重畳的債務引受け)について判断する。一、 控訴人は、被控訴人は昭和三四年三月一七日債権者集会の席上で、控訴人に対し、B会社の控訴人に対する金二七一万六、九八一円の売掛代金債務を重畳的に引き受けることを約束したと主張し、前掲甲第一二号証の二(別件で 、被控訴人は昭和三四年三月一七日債権者集会の席上で、控訴人に対し、B会社の控訴人に対する金二七一万六、九八一円の売掛代金債務を重畳的に引き受けることを約束したと主張し、前掲甲第一二号証の二(別件での控訴人の証人としての尋問調書)の記載や、原審と当審での控訴本人尋問の結果中には右主張にそう部分があるが、これらは後記認定事実と対比して採用することができないし、ほかに右主張事実を認めるに足りる証拠はない。二、 かえつて、成立に争いがない甲第七号証の二(不動産仮差押異議事件の証人Kの証人調書)同号証の三(同事件の証人Eの証人調書)同号証の四(同事件の証人Dの証人調書)同第一一号証の二(別件の証人Eの証人調書)同号証の三(別件の証人Lの証人調書)乙第九号証(別件の証人Aの証人調書)B会社代表者Cの署名、拇印の成立について当事者間に争いがないので真正に成立したものと推定される甲第三号証(会社整理に関するメモ)や、原審証人F、当審証人Aの各証言及び当審での被控訴本人尋問の結果を総合すると次のことが認められる。 の証人Eの証人調書)同号証の四(同事件の証人Dの証人調書)同第一一号証の二(別件の証人Eの証人調書)同号証の三(別件の証人Lの証人調書)乙第九号証(別件の証人Aの証人調書)B会社代表者Cの署名、拇印の成立について当事者間に争いがないので真正に成立したものと推定される甲第三号証(会社整理に関するメモ)や、原審証人F、当審証人Aの各証言及び当審での被控訴本人尋問の結果を総合すると次のことが認められる。(一) 被控訴人が落綿会館に昭和三四年三月一七日招集した債権者集会には、B会社の債権者と被控訴人個人の債権者が約五〇名位集まつた。被控訴人は、その席で、これら債権者に対し、B会社の財産は勿論のこと、個人所有財産を投げ出すから、B会社と被控訴人個人が負担する全部の債権の整理に充てるよう提案し、特に被控訴人個人債権者には、その全額の支払いがあるように希望した。(二) もともと利害の対立していたB会社の債権者と被控訴人個人の債権者のうち、後者が、被控訴人の提案に反対し、結局最終的に、何ら債権整理についてまとまつた結論がえられなかつた。 (三) その後被控訴人個人の債権者らは、B会社の債権整理委員長である控訴人に、B会社の債権者とは別個に債 被控訴人の提案に反対し、結局最終的に、何ら債権整理についてまとまつた結論がえられなかつた。 (三) その後被控訴人個人の債権者らは、B会社の債権整理委員長である控訴人に、B会社の債権者とは別個に債権の整理をすることを申し入れたため、右債権者集会後は一回も、債権者集会が開催されなかつた。右認定事実からすると、被控訴人は昭和三四年三月一七日控訴人のB会社に対する債権を重畳的にもせよ個人引受けをしたことはなかつたとしなければならない。三、 そうしてみると、控訴人のこの主張は採用に由ない。第三、 むすび以上の次第で、被控訴人は控訴人に対し、本件手形の正当所持人として、その手形金額のうち金二五万円と、これに対する支払日として認定した昭和三四年三月七日以後で、本件支払命令が被控訴人に送達された日の翌日であることが記録上明らかな昭和三四年四月一日から、商法所定の年六分の割合による遅延損害金を支払わなければならないから、これと異なる原判決を変更し、控訴人の本件請求は右の範囲で正当として認容し、これを超える部分は失当として棄却しなければならない。そこで民訴三八六条九六条八九条九二条一九六条を適用して主文のとおり判決する。 して認定した昭和三四年三月七日以後で、本件支払命令が被控訴人に送達された日の翌日であることが記録上明らかな昭和三四年四月一日から、商法所定の年六分の割合による遅延損害金を支払わなければならないから、これと異なる原判決を変更し、控訴人の本件請求は右の範囲で正当として認容し、これを超える部分は失当として棄却しなければならない。そこで民訴三八六条九六条八九条九二条一九六条を適用して主文のとおり判決する。(裁判長裁判官平峯隆裁判官日高敏夫裁判官古嵜慶長)(別紙省略)
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