平成23年9月14日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成22年(ワ)第29497号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日平成23年7月15日判決東京都中央区<以下略>原告株式会社パリスメール 同訴訟代理人弁護士権藤龍光 東京都中央区<以下略>被告株式会社ドルチェ東京都世田谷区<以下略>被告 A東京都中央区<以下略>被告 B東京都中央区<以下略>被告 C 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告株式会社ドルチェ及び被告Aは,原告に対し,各自1500万円及びこれに対する平成22年9月17日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Bは,原告に対し,500万円及びこれに対する平成22年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告Cは,原告に対し,200万円及びこれに対する平成22年9月25日 から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告A,被告B及び被告Cは,別紙1「取引先名簿一覧」記載の各取引先に案内状(売出し等)を発送してはならない。 5 被告A,被告B及び被告Cは,別紙2「仕入先」記載の業者から同別紙2「商 4 被告A,被告B及び被告Cは,別紙1「取引先名簿一覧」記載の各取引先に案内状(売出し等)を発送してはならない。 5 被告A,被告B及び被告Cは,別紙2「仕入先」記載の業者から同別紙2「商品」記載の商品を仕入れてはならない。 6 訴訟費用は被告らの負担とする。 7 1ないし5項につき仮執行宣言第2 事案の概要本件は,服飾品の販売等を業とする原告が,原告の従業員であった被告B(以下「被告B」という。)及び被告C(以下「被告C」という。)が原告を退職し,被告A(以下「被告A」という。)が経営する被告株式会社ドルチェ(以下「被告会社」という。)に就職したことに関し,①被告B及び被告Cは,不正の利益を得る目的又は保有者に損害を加える目的で,原告から開示を受けた営業秘密(顧客名簿及び仕入先名簿)を被告会社及び被告Aに開示し,かつ,上記営業秘密を使用して,別紙1記載の各顧客に案内状を送付し,別紙2記載の仕入先から,原告の売れ筋商品である同別紙記載の商品を仕入れるなどした(不正競争防止法2条1項7号),②被告B及び被告Cは,原告との雇用契約上,就業規則所定の競業避止義務及び秘密保持義務を負っているにもかかわらず,競業会社である被告会社に上記のとおり就職し,かつ,上記①のとおり原告の営業秘密を被告会社及び被告Aに開示した,③被告会社及び被告Aは,被告B及び被告Cによる顧客名簿及び仕入先名簿の開示が上記①及び②のとおり営業秘密の不正開示行為であることを知りながら上記営業秘密を同人らに開示させ,これを取得し,上記営業秘密を使用して,上記①のとおり,被告B及び被告Cをして,各顧客に案内状を送付させ,仕入先から,原告の売れ筋商品である別紙2の商品を仕入れるなどさせた(不正競争防止法2条1項8号)と主張し,(1)不正競争防止法4条に基づき おり,被告B及び被告Cをして,各顧客に案内状を送付させ,仕入先から,原告の売れ筋商品である別紙2の商品を仕入れるなどさせた(不正競争防止法2条1項8号)と主張し,(1)不正競争防止法4条に基づき,上記各不正競争行為に基づく損 害賠償として,被告会社及び被告Aに対し各自1500万円(附帯請求として各訴状送達日の翌日〔平成22年9月17日〕から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金),被告Bに対し500万円(附帯請求として訴状送達日の翌日〔同月25日〕から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)及び被告Cに対し200万円(附帯請求として訴状送達日の翌日〔同日〕から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の各支払を求め,また,(2)就業規則所定の競業避止義務及び秘密保持義務違反の債務不履行責任に基づく損害賠償請求として,被告B及び被告Cに対し,上記(1)記載の金員の各支払を求め(同人らにつき上記(1)との選択的請求),さらに,(3)故意又は過失により,被告B及び被告Cに,上記(2)の秘密保持義務に違反して原告の営業秘密を漏えいさせた不法行為責任に基づく損害賠償請求として,被告Aに対し,上記(1)記載の金員の支払を求め(同人につき上記(1)との選択的請求),(4)不正競争防止法3条に基づき,被告A,被告B及び被告Cに対し,営業秘密である顧客名簿を使用して別紙1記載の顧客に対し案内状を発送する行為及び仕入先名簿を使用して別紙2記載の仕入先業者から同記載の商品を仕入れる行為の各差止めを求める事案である。 1 争いのない事実等(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1) 当事者等ア原告及び被告会社は,服飾品の卸販売等を業とする株式会社であり,被告Aは,被告会社の代表者 争いのない事実等(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1) 当事者等ア原告及び被告会社は,服飾品の卸販売等を業とする株式会社であり,被告Aは,被告会社の代表者である(弁論の全趣旨)。 イ被告B及び被告Cは,原告の元従業員であり,現在は,被告会社に勤務している。 (2) 被告B及び被告Cの退職に至る経緯等ア被告Bは,平成18年ころ,原告代表者が経営する有限会社ネクストシーンに入社し,販売員として勤務していたが,同年11月ころ,東京都中央区東日本橋横山町・馬喰町界隈の問屋街に,上記有限会社ネクストシー ンの支店として「パリスメール」が開店した(以下,上記「パリスメール」を指して「原告店舗」という。)ことから,原告店舗に異動し,同店店長として勤務するようになった(甲3,被告B)。 イ被告Cも,同様に,上記有限会社ネクストシーンで勤務していたが,平成19年ころ,原告店舗で勤務するようになった(被告B)。 ウ平成20年4月ころ,上記「パリスメール」が法人成りし,原告として登記された(甲2)。 エ被告Aは,平成21年10月ころ,上記横山町・馬喰町界隈の問屋街に,「メルシー」の名称で店舗を開き,服飾品の卸販売等を業として行うようになった(被告B)。 オ被告Bは平成21年12月末日付けで原告を退職し,平成22年1月ころ,上記「メルシー」に就職し,勤務するようになった。 カ被告Cは平成22年1月8日付けで原告を退職し,同年2月9日ころ,上記「メルシー」に就職し,勤務するようになった。 キ上記「メルシー」は,平成22年3月3日,被告Aを代表者として法人成りし,被告会社として登記された(弁論の全趣旨)。 (3) 原告の就 シー」に就職し,勤務するようになった。 キ上記「メルシー」は,平成22年3月3日,被告Aを代表者として法人成りし,被告会社として登記された(弁論の全趣旨)。 (3) 原告の就業規則(甲1)ア原告の就業規則(甲1)には,下記条項が定められている。 (ア) 従業員は,次の事項を守らなければならない。 会社,取引先等の機密を漏らさず,退職後もこれを遵守すること(第9条〔遵守事項〕6号)。 (イ) 従業員は,下記1並びに2の公然と知られていない生産方法・販売方法・その他の事業活動に有用な技術上および営業上の情報であって会社が秘密として管理する営業秘密,下記3ないし6の会社が対外的に秘密に管理している企業秘密を在職中は勿論の事退職後も不正に取得しまたは,第三者に漏えいまたは開示してはならない(第10条)。 1.製造技術,製造工程,プロセス,レイアウト,品質管理に関する情報。 2.財務,経営に関する情報。 3.顧客名簿,販売企画,商品仕入れ及び製造…企画情報4.人事管理に関する情報。 5.他社との業務提携や訴訟に関する情報。 6.会社,関連会社に関する情報。 (ウ) 従業員は在職中および退職後2年間は,会社の業務と競業する事業を自ら行わないものとし,また競業する事業を営む企業または会社に就職しないものとする(第13条)。 (エ) 従業員は退職時に営業秘密を記録した図面,書類,複写物,サンプル,フロッピーディスク,CD,USB接続メモリー,パソコン等に営業秘密が記録されてる場合は会社の担当者の前で,削除するものとする(第14条)。 (オ) こ 密を記録した図面,書類,複写物,サンプル,フロッピーディスク,CD,USB接続メモリー,パソコン等に営業秘密が記録されてる場合は会社の担当者の前で,削除するものとする(第14条)。 (オ) この規則は平成20年11月1日から実施する(附則)。 2 争点(1) 被告B及び被告Cに,不正の利益を得る目的又は保有者に損害を加える目的で原告から示された営業秘密を使用し,又は開示する行為(不正競争防止法2条1項7号)が認められるか。 (2) 被告B及び被告Cに,就業規則所定の秘密保持義務違反及び競業避止義務違反が認められるか。 (3) 被告会社及び被告Aに,被告B及び被告Cの前記(1)又は(2)の営業秘密不正開示行為を知りながら上記営業秘密を使用する行為(同法2条1項8号)が認められるか。 (4) 被告Aに,故意又は過失により被告B及び被告Cに前記(2)の秘密保持義務に反し営業秘密を漏えいさせた不法行為が認められるか。 (5) 前記(1)及び(3)の各不正競争行為に基づく差止請求の成否(6) 前記(1)及び(3)の各不正競争行為又は被告B及び被告Cにつき前記(2)の秘密保持義務違反若しくは競業避止義務違反,被告Aにつき前記(4)の不法行為に基づく損害賠償請求の成否並びにその損害額第3 争点に対する当事者の主張 1 争点(1)(被告B及び被告Cに,不正の利益を得る目的又は保有者に損害を加える目的で原告から示された営業秘密を使用し,又は開示する行為(不正競争防止法2条1項7号)が認められるか。)について(原告の主張)(1) 顧客名簿及び仕入先名簿の営業秘密該当性ア別紙1「取引先名簿」記載の原告の顧客名簿及び別紙2記載の「仕入先」は,原告の売れ筋商品の仕入先及び販売先に関する情報であ 告の主張)(1) 顧客名簿及び仕入先名簿の営業秘密該当性ア別紙1「取引先名簿」記載の原告の顧客名簿及び別紙2記載の「仕入先」は,原告の売れ筋商品の仕入先及び販売先に関する情報であり,最も収益力の高い製造及び販売ルートに関する情報である。 各小売店は,それぞれ顧客層も売れ筋商品も異なっており,ある特定の仕入先から特定の傾向の商品を継続的に購入する実績又は可能性のある小売店は極めて限られている。どの小売店がどの仕入先の商品を購入する実績があるかという情報は,単なる販売先情報ではなく,仕入先と販売先の組合せに関する情報であり,当該組合せに関する情報は,これを横取りするだけで,数百万円の売上を容易に得ることができるものであり,有用な情報である。 イ原告の販売する商品には,すべて原告の登録商標である「PARISMAIL」のロゴ入りラベルが貼付されており,ほかに,製造元や仕入先に関する情報を示すタグやラベル等は付されていないから,原告の販売商品を見るだけでは,これらの商品の製造元や仕入先を知ることはできない。 被告B及び被告Cを含む原告の従業員であれば,原告に勤務する中で上記製造元及び仕入先を知ることができるかもしれないが,これらの従業員 には,後記(争点(2)に関する原告の主張)のとおり競業避止義務及び秘密保持義務が課されており,上記製造元及び仕入先に関する情報を開示することは禁止されている。 したがって,どの小売店がどの仕入先の商品を購入する実績があるかという仕入先と販売先の組合せに関する情報は非公知のものである。 ウ(ア) 原告は,平成20年4月,法人成りするに際し,書類入れロッカー及び金庫を購入し,原告店舗2階の社長室左側に上記ロッカー,右側に上記金庫を設置した。 は非公知のものである。 ウ(ア) 原告は,平成20年4月,法人成りするに際し,書類入れロッカー及び金庫を購入し,原告店舗2階の社長室左側に上記ロッカー,右側に上記金庫を設置した。 原告代表者は,原告従業員に対し,重要帳簿,仕入帳,売掛台帳,銀行通帳,金銭出納帳,元帳,仕入発注書,仕入契約書,仕入先名簿,顧客名簿及び名刺ホルダーについて,重要な情報であることを説明し,上記書類入れロッカーに鍵を掛けて保管するよう厳しく指示し,実行されていた。 上記ロッカー及び上記ロッカーを設置した部屋の鍵は,被告B及び被告Cが退職するまでの間,原告代表者,被告B及び被告Cのみが保管しており,これを持ち出すことができたのは同人らのみであった。 (イ) 顧客名簿及び仕入先名簿は,原告店舗内のパソコンにも電子データとして保管されていたが,上記パソコンは,社外からの来客等は近付くこともできない場所である原告店舗2階奥に設置されており,当該パソコンにアクセスできるのは,被告B,被告C及びパートタイム従業員のDに限られていた。 また,原告の従業員には,就業規則上,秘密保持義務が課されていた。 (ウ) 原告代表者はパソコンの操作ができないため,被告Cの進言に従い,パソコンにパスワードの設定等はしていなかったが,パソコンの設置場所が外部からアクセスできない場所にあること,パソコンにアクセスできるのが従業員のみであるところ,従業員には上記のとおり秘密保持義 務が課されていることから,営業秘密の管理としては十分であった。 エしたがって,原告の顧客名簿及び仕入先名簿(これらの組合せ情報)は,原告の営業秘密に該当する。 (2) 被告B及び被告Cは,原告の従業員として業務に従事する中で,原告 であった。 エしたがって,原告の顧客名簿及び仕入先名簿(これらの組合せ情報)は,原告の営業秘密に該当する。 (2) 被告B及び被告Cは,原告の従業員として業務に従事する中で,原告から,その顧客名簿及び仕入先名簿(これらの組合せ情報)の開示を受けていた。 (3) 被告B及び被告Cは,上記顧客名簿及び仕入先名簿の情報を原告から持ち出し,原告を退職後,原告と競業関係にある被告会社の従業員として,被告会社から報酬として給与を得て,原告に損害を与える目的で,原告の営業秘密である顧客名簿及び仕入先名簿(これらの組合せ情報)を被告会社代表者である被告Aに開示し,上記顧客名簿記載の顧客に案内状を送付したり,上記仕入先名簿記載の業者から,原告の売れ筋商品である別紙2記載の商品を仕入れ,販売したりするなど,その競業行為に利用させた。 (4) よって,被告B及び被告Cには,不正の利益を得る目的又はその保有者に損害を与える目的で原告から示された営業秘密を使用し,又は開示する行為(不正競争防止法2条1項7号)が認められる。 (被告B及び被告Cの主張)(1) 顧客名簿及び仕入先名簿の営業秘密該当性についてア原告の主張する事実は否認し,法的主張は争う。 イ原告店舗のある馬喰町商店街には多数の業者が存在しており,これらの業者は,毎月,大韓民国の新平和市場等にある極めて限られたメーカーから競うように仕入れをしているのであって,これらの仕入先は当然ながら重複しており,原告で扱った商品が馬喰町商店街の他店で売られたり,他店の人気商品を原告が仕入れたりすることは日常茶飯事である。これらの仕入先からは,馬喰町商店街のどの業者であっても仕入れができるものであり,仕入先情報は非公知のものではない。 他店で売られたり,他店の人気商品を原告が仕入れたりすることは日常茶飯事である。これらの仕入先からは,馬喰町商店街のどの業者であっても仕入れができるものであり,仕入先情報は非公知のものではない。 また,原告の顧客名簿には,社名,所在地及び電話番号が記載されてい るにすぎないところ,これらの顧客は,馬喰町商店街の1店舗のみから仕入れを行うことはなく,同商店街の5ないし6店舗,多くは数十店舗から仕入れをしているのであって,他店にもこれらの情報が記載された名刺を配っているのであるから,これらの顧客情報も非公知のものではない。 ウ仕入帳,売掛台帳,仕入発注書,顧客名簿及び名刺ホルダーは原告店舗1階に置かれ,中でも名刺ホルダーは,商品の発送時に参照するために1階レジ横に置かれ,誰でも見られる状態であった。また,その他の書類も,ロッカーではなく2階事務机引き出しに入っていた。 店舗の鍵は全部で4人が持っていた上,営業中であれば,資料を持ち出すのは誰でもできたはずである。 原告店舗に置かれたパソコンにパスワードの設定はなく,パート従業員も入力作業に携わるなど,誰でもパソコン内の顧客名簿を閲覧できる状態であった。 エしたがって,原告の顧客名簿及び仕入先名簿は原告の営業秘密に当たらない。 (2) 被告B及び被告Cが原告の顧客名簿及び仕入先名簿を持ち出した事実及びこれらを被告Aに開示した事実については否認する。被告B及び被告Cは,原告を退職し被告会社に就職した後,40人分のダイレクトメールを作成し発送したが,その中に,原告の顧客のうち,被告B及び被告Cが個人的に名刺を受け取るなどしていたものや,被告Aが韓国人同業者から紹介を受けたものが含まれていたにすぎず,被告B又は レクトメールを作成し発送したが,その中に,原告の顧客のうち,被告B及び被告Cが個人的に名刺を受け取るなどしていたものや,被告Aが韓国人同業者から紹介を受けたものが含まれていたにすぎず,被告B又は被告Cが原告の顧客名簿等を持ち出した事実はない。 (3) したがって,被告B及び被告Cには,不正競争防止法2条1項7号に当たる行為はない。 2 争点(2)(被告B及び被告Cに,就業規則所定の守秘義務違反及び競業避止義務違反が認められるか。)について (原告の主張)(1) 被告B及び被告Cは,いずれも,原告との雇用契約上,前記「争いのない事実等」(3)のとおり,原告が平成20年11月1日に実施した就業規則(甲1)第9条6号,第10条,第13条,第14条に定める秘密保持義務及び競業避止義務を負っていた。 (2) 上記各義務にもかかわらず,被告B及び被告Cは,原告の営業秘密である顧客名簿及び仕入先名簿(これらの組合せ情報)を持ち出し,原告と競争関係にある被告会社に就職した上,上記情報を被告会社代表者である被告Aに開示し,上記顧客名簿記載の顧客に案内状を送付するなど,その競業行為に利用させたのであるから,被告B及び被告Cには秘密保持義務及び競業避止義務違反が認められる。 (被告B及び被告Cの主張)(1) 原告の主張する事実は否認し,法的主張は争う。 (2) 被告B及び被告Cが原告に入社してから退職するまで,原告に就業規則は存在しなかったのであり,原告の提出する就業規則(甲1)は,被告B及び被告Cの在職期間に合わせて,本件訴訟のために作成されたものであると思われる。また,もし就業規則が存在したとしても,被告B及び被告Cは,就業規則について見たことも聞いたこともなかった。 (3) 被告B及び 期間に合わせて,本件訴訟のために作成されたものであると思われる。また,もし就業規則が存在したとしても,被告B及び被告Cは,就業規則について見たことも聞いたこともなかった。 (3) 被告B及び被告Cが,原告の顧客名簿及び仕入先名簿を持ち出し,これを利用して案内状等を送付したことがない点については,争点(1)に関する被告B及び被告Cの主張と同様である。 3 争点(3)(被告会社及び被告Aに,被告B及び被告Cの前記争点(1)又は(2)の営業秘密不正開示行為を知りながら上記営業秘密を使用する行為(同法2条1項8号)が認められるか。)について(原告の主張)(1) 被告B及び被告Cが,原告から開示を受けた営業秘密である顧客名簿及び 仕入先名簿(これらの組合せ情報)を,不正の利益を得る目的で,被告会社及び被告Aに開示したこと及び上記開示行為が就業規則所定の秘密保持義務に反するものであることは,争点(1)及び(2)に関する原告の主張のとおりであるところ,被告会社及び被告Aは,上記営業秘密の開示を受け,これを案内状の発送等の原告に対する競業行為に利用するに当たり,これが,前記争点(1)及び(2)の原告の主張のとおり,不正競争行為又は秘密保持義務違反に当たることを知っていた。 (2) したがって,被告会社及び被告Aには,被告B及び被告Cの営業秘密不正開示行為又は秘密保持義務違反を知りながら上記営業秘密を使用する行為(不正競争防止法2条1項8号)が認められる。 (被告会社及び被告Aの主張)(1) 原告の主張は否認し,法的主張は争う。 (2) 原告の顧客名簿等が原告の営業秘密に該当せず,被告B及び被告Cに営業秘密不正開示行為又は秘密保持義務違反が認められないこと,同人らが顧客名簿等を持ち出して は否認し,法的主張は争う。 (2) 原告の顧客名簿等が原告の営業秘密に該当せず,被告B及び被告Cに営業秘密不正開示行為又は秘密保持義務違反が認められないこと,同人らが顧客名簿等を持ち出しておらず,被告会社及び被告Aが上記情報の開示を受けたことがないことは,争点(1)及び(2)に関する被告B及び被告Cの主張と同様である。 (3) したがって,被告会社及び被告Aには,不正競争防止法2条1項8号に当たる行為はない。 4 争点(4)(被告Aに,故意又は過失により被告B及び被告Cに前記争点(2)の秘密保持義務に反し営業秘密を漏えいさせた不法行為が認められるか。)について(原告の主張)不正競争防止法の改正により営業秘密に関する条項が設けられて以降は,本邦において就業規則に秘密保持義務規定を置くことは通常となっているのであるから,被告Aは,被告B及び被告Cが,原告に対し,雇用契約上の秘密保 持義務を負っていることを認識し又は容易に認識することができた。これにもかかわらず,被告Aは,あえて被告B及び被告Cに上記義務に反し原告の営業秘密を漏えいさせ,顧客への案内状の送付等,被告会社のために利用させたのであるから,これは,被告Aの原告に対する不法行為に該当する。 (被告Aの主張)原告の主張は争う。 5 争点(5)(前記争点(1)及び(3)の各不正競争行為の差止請求の成否)(原告の主張)(1) 原告は,前記争点(1)及び(3)の各不正競争行為により,別紙1顧客名簿記載の顧客を被告会社に奪われ,売上額が顕著に減少している上,別紙2の仕入先記載の業者からの仕入額が,平成21年8月には151万1050円,同年9月には94万7760円,同年10月には101万7400円 の顧客を被告会社に奪われ,売上額が顕著に減少している上,別紙2の仕入先記載の業者からの仕入額が,平成21年8月には151万1050円,同年9月には94万7760円,同年10月には101万7400円であったのが,同年11月には50万0900円と半減し,同年12月には0円となり,平成23年以降は仕入れができない状況となるなど,仕入額も大幅に減少している。 これらは,被告B,被告C及び被告Aの各不正競争行為に起因するものであるから,原告は,上記各不正競争行為により,営業上の利益を侵害されている。 (2) したがって,原告は,不正競争防止法3条に基づき,被告B,被告C及び被告Aに対し,営業秘密である顧客名簿を使用して同名簿記載の顧客に対し案内状を発送する行為及び別紙2仕入先名簿記載の仕入先業者から同別紙記載の商品を仕入れる行為の各差止めを求めることができる。 (被告B,被告C及び被告Aの主張)(1) 原告の主張は争う。仕入先名簿記載のIMKは,原告代表者が経営する複数の法人から1000万円以上の債権を踏み倒され,原告に対する信用の低下から原告との取引を断ったものであり,その他の業者からの仕入額が減少 しているのも,原告代表者の上記踏み倒しが大韓民国の仕入先業者に広く知られるに至り,仕入れに応じる業者が数社に減少したため及び原告が資金的に逼迫しているためにすぎない。 原告店舗の販売員は,平成23年に入って次々に退職し,現在,原告店舗には販売スタッフがほとんどいない状況である。また,前記のとおり,原告が資金的に逼迫していることから,仕入額自体,相当程度減少しているのであって,これに応じて売上額が減少するのは当然である。原告の売上が減少しているのは,これらの事情によるものであって,顧客 り,原告が資金的に逼迫していることから,仕入額自体,相当程度減少しているのであって,これに応じて売上額が減少するのは当然である。原告の売上が減少しているのは,これらの事情によるものであって,顧客名簿の持出し等によるものではない。 (2) したがって,原告の営業利益の減少は,被告B,被告C及び被告Aの行為とは無関係であるから,原告に,不正競争防止法3条に基づく差止請求は認められない。 6 争点(6)(前記争点(1)及び(3)の各不正競争行為,前記争点(2)の秘密保持義務違反・競業避止義務違反,前記争点(4)の不法行為に基づく損害の有無及び額)(原告の主張)(1) 被告らの前記各不正競争行為,被告B及び被告Cの秘密保持義務違反・競業避止義務違反,被告Aの不法行為により,原告の売上げは,その分,被告会社に流れることになり,原告の売上額は,前年同月に比べて,次のとおり顕著に減少した。 ア平成21年・1月1018万0901円・2月1128万4308円・3月1289万4934円・4月1385万8655円・5月1115万8815円 ・6月1424万0899円・7月991万3132円・8月560万9660円・9月1258万2980円・10月 1026万4370円・11月 1011万1902円・12月 629万7187円イ平成22年・1月451万6531円・2月475万5721円・3月545万5742円 ・12月 629万7187円イ平成22年・1月451万6531円・2月475万5721円・3月545万5742円・4月454万2495円・5月507万3007円・6月620万7765円・7月600万4321円以上のとおり,平成22年1月ないし同年7月の7か月間に限っても,原告の売上額の減少は,合計4697万6062円に達しているところ,原告の売上に対する利益率は少なくとも8%あるから,上記7か月間における原告の利益減少額は,375万8085円に達している。 この利益減少はその後も続いたため,上記割合で平成23年6月末までの利益減少額を計算すると,966万3647円となる。 実際には,被告らによる原告の誹謗行為により,原告の営業は次第に困難となり,販売活動を一時中止するに至ったため,その損害を加味すると,原告の損害額は1000万円をはるかに超える。 また,別紙2記載の仕入業者からの原告の仕入額は,被告B及び被告Cの退職前には年間1200万円を下回らなかったにもかかわらず,同人らの退 職後は,仕入額は0円となっている。上記仕入業者からの商品については,返品はほとんどなく,そのマージン(粗利益率)は約54%に上るのであるから,売上の減少による販売管理費の減少,運送費などを考慮しても,仕入額の30%を超える損失となることは明らかである。 したがって,上記仕入業者に係る年間損害額は,360万円を下回らない。 (2) 被告らの前記各不正競争行為は,いずれも故意又は過失によるものである。 (3) したがって,原告は,被告らに対し,請求の趣旨記載の各損害額の支払いを 間損害額は,360万円を下回らない。 (2) 被告らの前記各不正競争行為は,いずれも故意又は過失によるものである。 (3) したがって,原告は,被告らに対し,請求の趣旨記載の各損害額の支払いを求める。 (被告らの主張)原告の主張は争う。原告の売上額の減少が,原告の信用低下等によるものであり,被告らとは無関係であることは,争点(5)に関する被告らの主張で述べたとおりである。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告B及び被告Cに,不正の利益を得る目的で原告から示された営業秘密を使用し,又は開示する行為が認められるか)について(1) 不正競争防止法2条1項7号の営業秘密とは,秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られていないものをいうから(同条6項),被告B及び被告Cの行為が同条1項7号に該当するといえるためには,原告が営業秘密と主張する営業上の情報が秘密として管理されていることが必要である。そして,このような秘密管理性が認められるためには,少なくとも,これに接した者が秘密として管理されていることを認識し得る程度に秘密として管理している実体があることが必要である。そこで,この点について検討するに,証拠(甲2,4,6,原告代表者,被告B)及び弁論の全趣旨によれば,①原告は,顧客(小売店)と取引を開始する際に,その社名,所在地,電話番 号等が記載された名刺を受領し,これを名刺ホルダーに綴じて保管するとともに,原告従業員に,原告店舗2階に設置したパソコンに上記社名,所在地等を入力させ,顧客名簿としてデータ登録していたこと(甲2,原告代表者,被告B),②上記①のほか,原告従業員が顧客の社名,所在地等を記載して作成したノートが存在した 置したパソコンに上記社名,所在地等を入力させ,顧客名簿としてデータ登録していたこと(甲2,原告代表者,被告B),②上記①のほか,原告従業員が顧客の社名,所在地等を記載して作成したノートが存在したこと(被告B),③上記名刺ホルダー及びノートは,商品の納品の連絡,発送等の日常業務において使用するものであり,これらのうち,名刺ホルダーは,原告店舗2階の施錠可能なロッカー内に保管するものとされていたが,原告従業員は,原告店舗内において,これらを上記業務のため必要に応じて持ち出し,使用することができたこと(甲6,原告代表者,被告B),④原告店舗内の上記パソコン及び上記顧客名簿データのいずれにもパスワードは設定されておらず,被告B等の原告従業員は,会計管理等の作業のため,上記パソコンを日常的に使用しており,ダイレクトメールの発送のため,上記顧客名簿データにアクセスし,宛名ラベルをプリントアウトして使用したこともあったこと(甲2,4,被告B)がそれぞれ認められる。 上記認定に係る①ないし④の原告の顧客名簿(上記名刺ホルダー,パソコン内の顧客名簿データ及び顧客情報を記載したノート)の内容及び管理状況に照らすと,原告において,上記各情報に接した者が,これらが秘密として管理されていることを認識し得る程度に秘密として管理されていた実体があったと認めることはできず,上記情報が,不正競争防止法上保護されるべき営業秘密に当たると認めることはできない。 また,原告は,原告の仕入先名簿も営業秘密に該当するところ,上記仕入先名簿は,原告店舗2階の施錠可能なロッカー内に保管されていたから,営業秘密として管理されていたと主張するが,原告は仕入先名簿を証拠として提出しているものではなく,他方,被告Bは,原告において,仕入先の名刺,納品書の他に,仕入先に関 ッカー内に保管されていたから,営業秘密として管理されていたと主張するが,原告は仕入先名簿を証拠として提出しているものではなく,他方,被告Bは,原告において,仕入先の名刺,納品書の他に,仕入先に関する情報を集約した仕入先名簿等は作成されてお らず,原告が仕入先名簿であると主張するファイルは,商品台帳であって仕入先に関する情報が記載されているものではないと供述している。そうすると,仕入先名簿の存在自体が立証されているものとはいえない。また,仮にこれが存在したとしても,原告が仕入先名簿を保管していたとする上記ロッカーの鍵は,従業員が必要に応じて解錠することができ,保管書類を原告店舗内で使用するに当たり,制限等はなかったことがうかがわれる(原告代表者,被告B)のであるから,上記仕入先名簿が,不正競争防止法上保護されるべき営業秘密として保管・管理されていたことを認めるに足りるものではない。 (2) なお,原告は,上記顧客名簿及び仕入先名簿そのもののみならず,これらの組合せ情報(上記顧客名簿記載の各顧客〔小売店〕毎にそれぞれ売れ筋商品は異なるところ,どの小売店がどの仕入先の商品を購入する実績又は可能性があるかという情報)も原告の営業秘密に該当すると主張する。しかし,前記(1)でみたとおり,原告がその営業秘密として特定した顧客名簿には,各顧客又の社名,所在地,電話番号が記載されているのみであって,各顧客の商品購入実績又は商品購入の可能性等,各仕入先からの商品仕入実績等が記載されているものではなく,このほかに,各顧客の商品購入実績等が原告内部で集約され,営業秘密として管理されていることを認めるに足りる証拠はない。 また,原告の上記主張が,原告の売掛台帳,仕入帳,仕入発注書,仕入契約書等の記載内容が原告の営業秘密に該当する旨の主 で集約され,営業秘密として管理されていることを認めるに足りる証拠はない。 また,原告の上記主張が,原告の売掛台帳,仕入帳,仕入発注書,仕入契約書等の記載内容が原告の営業秘密に該当する旨の主張であると解したとしても,原告において,上記台帳類等が秘密として管理されていることを認めるに足りる証拠はない(なお,原告は,上記台帳類は,原告店舗2階に設置した施錠可能な書類入れロッカーに保管し,常に施錠していたと主張するが,原告の書類等の保管状況に関する報告書〔甲6〕の写真番号10に見られる同ロッカー内の各書類のうち,どれが上記台帳類に該当するものかにつ いて特定がされておらず,上記台帳類が同ロッカー内に保管されていたと認めるに足りない。また,原告は,重要書類を原告店舗内の金庫内に保管していた旨も主張するが,同金庫内には,ごく薄い封筒類しか保管されていないのであって,原告の主張する取引業者数及び取引量に照らし,上記台帳類がすべて上記金庫内に保管されているとは考え難い。)。 (3) したがって,顧客名簿及び仕入先名簿に係る被告B及び被告Cに対する不正競争の主張は,いずれも理由がない。 2 争点(2)(被告B及び被告Cに,就業規則所定の秘密保持義務違反及び競業避止義務違反が認められるか)について(1) 使用者は,就業規則を,常時各作業場の見やすい場所へ掲示し,又は備え付けること,書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって,労働者に周知させなければならないとされており(労働基準法106条1項),就業規則が労働者に拘束力を生ずるためには,その内容を,適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する(平成15年10月10日最高裁第二小法廷判決・最高裁判所集民事211号1頁)ところ,原告は,平成2 生ずるためには,その内容を,適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する(平成15年10月10日最高裁第二小法廷判決・最高裁判所集民事211号1頁)ところ,原告は,平成20年6月21日に開催された社員講習会で,社員教育の一環として,就業規則について説明した旨主張し,原告代表者は同旨の供述をするが,上記社員講習会のスケジュール表(甲10)には,就業規則について説明を行った旨の記載は何ら存在せず,被告Bも,上記講習会において就業規則の説明は行われなかったと供述している上,上記社員講習会は,前記前提事実でみた就業規則の附則に記載された就業規則の実施時期(平成20年11月1日)の4か月以上前に,原告従業員に加え,有限会社ネクストシーンの従業員も出席させて開催されたものであるから,上記講習会で,原告の就業規則について説明がされた旨の原告の主張は直ちに信用し難い。このほか,原告代表者の供述からは,上記講習会のほかに,就業規則を原告従業員に周知させるための手続をとっていることはうかがわれない し,被告B及び被告Cも,就業規則について見聞きしたことはない旨主張しているのであるから,原告の就業規則(甲1)について,その内容を,適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られたものと認めることはできず,上記就業規則につき,法的規範の性質を有するものとして従業員に対する拘束力を生じていると認めることはできない。 (2) したがって,就業規則所定の秘密保持義務及び競業避止義務違反に関する原告の主張は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。 3 争点(3)(被告会社及び被告Aに,被告B及び被告Cの前記争点(1)又は(2)の営業秘密不正開示行為を知りながら上記営業秘密を使用する行為が認められるか)について までもなく理由がない。 3 争点(3)(被告会社及び被告Aに,被告B及び被告Cの前記争点(1)又は(2)の営業秘密不正開示行為を知りながら上記営業秘密を使用する行為が認められるか)について争点(1)及び(2)に関する当裁判所の判断でみたとおり,原告が営業秘密であると主張する情報は,いずれも,不正競争防止法上保護されるべき営業秘密に該当せず,また,原告の就業規則所定の秘密保持義務に法的拘束力は認められないのであるから,被告会社及び被告Aに係る不正競争の主張はその前提を欠き,理由がない。 4 争点(4)(被告Aに,故意又は過失により被告B及び被告Cに前記争点(2)の秘密保持義務に反し営業秘密を漏えいさせた不法行為が認められるか)について争点(2)に関する当裁判所の判断でみたとおり,原告の就業規則所定の秘密保持義務に法的拘束力は認められないのであるから,被告Aに関する不法行為の主張はその前提を欠き,理由がない。 5 小括したがって,被告らに,不正競争行為(被告B及び被告Cにつき不正競争防止法2条1項7号,被告会社及び被告Aにつき同法2条1項8号),雇用契約上の秘密保持義務及び競業避止義務違反の債務不履行,不法行為のいずれも認められないから,争点(5)及び(6)について検討するまでもなく,原告の請求は, いずれも理由がないことに帰着する。 第5 結論したがって,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官菊池絵理 裁判官森川さつき 裁判官 大須賀滋 裁判官 菊池絵理 裁判官 森川さつき
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