令和6年6月13日東京地方裁判所刑事第7部宣告令和5年刑(わ)第1462号、第2070号、第2253号、第2824号、令和5年特(わ)第1514号、第2361号、令和6年刑(わ)第251号邸宅侵入、有印私文書偽造・同行使、著作権法違反、威力業務妨害、私電磁的記録不正作出・同供用、窃盗被告事件 主文 被告人を懲役3年に処する。 未決勾留日数中230日をその刑に算入する。 東京地方検察庁で保管中の懲戒請求書(令和5年東地領第3006号符号1)の偽造部分を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は第1 法定の除外事由がなく、かつ、著作権者の許諾を受けないで、別表1(省略)記載のとおり、令和3年12月23日頃から令和5年5月30日頃までの間、33回にわたり、東京都内又はその周辺において、パーソナルコンピューターを使用し、インターネットを介して、株式会社Aほか4社が著作権を有する著作物である「ガールズ&パンツァー最終章第3話」ほか108作品の情報が記録された各動画データの識別情報等を記録した各トレントファイルをインターネットサイトBに送信して、同サイト上で前記各トレントファイルを公開した上、前記各動画データを、氏名不詳者が管理する場所不詳に設置されたインターネットに接続された各サーバーコンピューターの記録装置に記録保存し、さらに、前記各サーバーコンピューターのIPアドレスを前記サイトに送信するなどして前記各トレントファイルと前記各動画データを結び付けて、前記サイトを閲覧した不特定多数の者に前記各トレントファイルを介して前記各サーバ ーコンピューターに接続して前記各動画データを自動的に公衆送信し得る状態にし、もって前記株式会社Aほか4社の著作権を侵害した第2 Cと共謀の上、令和5年 ファイルを介して前記各サーバ ーコンピューターに接続して前記各動画データを自動的に公衆送信し得る状態にし、もって前記株式会社Aほか4社の著作権を侵害した第2 Cと共謀の上、令和5年1月23日、2回にわたり、C方(住所省略)において、パーソナルコンピューターを使用し、インターネット回線を介したファックス送信サービスを利用して、「お前らの糞大学に高機能爆弾(TATP)を334個仕掛けたナリ」「今日の14時までに下記の口座に30万円払わないと仕掛けた爆弾が起爆して大学諸共ポアナリ!!!」「死にたくなかったらいますぐ金を振り込む、それはできるよね?」などと記載された文書を 1 東京都目黒区(住所省略)学校法人D大学に設置された複合機に送信し、その頃、同所において、同大学財務施設部長兼施設課課長Eらにこれを閲覧させ、同人らに、警察への通報、警備会社等関係先への連絡、不審物件の検索等を余儀なくさせて、同大学の正常な業務の遂行に支障を生じさせ 2 東京都八王子市(住所省略)学校法人F大学に設置された複合機に送信し、その頃、同所において、同大学庶務課課長Gらにこれを閲覧させ、同人らに、警察への通報、学生への退校指示、関係先への連絡、不審物件の検索等を余儀なくさせて、同大学の正常な業務の遂行に支障を生じさせもって威力を用いて人の業務を妨害した第3 正当な理由がないのに、令和5年1月29日午後1時41分頃、H管理組合理事長Iが看守する三重県四日市市(住所省略)所在のマンションHの1階エントランスホールの共用部分に、正面玄関ドアから侵入した第4 JになりすましてK弁護士会に弁護士Lの懲戒請求をしようと考え、令和5年3月21日頃から同月26日頃までの間、東京都小金井市(住所省略)被告人方において、行使の目的で、パーソナルコン 入した第4 JになりすましてK弁護士会に弁護士Lの懲戒請求をしようと考え、令和5年3月21日頃から同月26日頃までの間、東京都小金井市(住所省略)被告人方において、行使の目的で、パーソナルコンピューターを使用して、「懲戒請求書」と題する書面の氏名欄に「J」などと記載した文書を作成し、同書面に「J」と刻した印章を押印し、もって前記J作成名義の懲戒請求書1通(令和5年東地領第3006号符号1)を偽造し、さらに、同日頃、同懲戒請求書 を、あたかも真正に成立したもののように装い、東京都稲城市(住所省略)M株式会社N駅北口前路上に設置された郵便ポストに投函し、東京都千代田区(住所省略)所在の前記弁護士会に宛てて郵送して提出し、同月27日、これを同弁護士会に到達させて行使した第5 Cと共謀の上、不正に入手した他人名義のクレジットカード情報等を利用して、インターネット通信販売業者から商品を窃取しようと考え、別表2(省略)記載のとおり、令和5年4月21日午後2時19分頃及び同月28日午後4時4分頃、2回にわたり、前記C方において、Cが、パーソナルコンピューターを使用し、電気通信回線を通じて、株式会社Oがインターネット上に開設するオンラインサイトにアクセスし、同社が販売するゲーム機2台の購入を申し込むとともに、配送先住所を被告人が在籍していた国立大学法人P大学内に所在する物品検収センターほか1か所と指定し、同社の事務処理を誤らせる目的で、Qほか1名名義のクレジットカード番号等を入力して、その代金を同クレジットカード使用者等が所定の方法により支払う旨を装って、これらの虚偽の情報を同社が神奈川県内に設置したサーバーコンピューターに送信して記録させ、人の事務処理の用に供する権利義務に関する電磁的記録を不正に作出した上、同社の事務処理の用 支払う旨を装って、これらの虚偽の情報を同社が神奈川県内に設置したサーバーコンピューターに送信して記録させ、人の事務処理の用に供する権利義務に関する電磁的記録を不正に作出した上、同社の事務処理の用に供し、さらに、同社が依頼した配送業者に、前記電磁的記録に基づいて、前記株式会社O所有の前記ゲーム機2台(販売価格合計8万7135円)を前記物品検収センターほか1か所に配送させ、同月24日及び同年5月1日、被告人がこれを受け取って窃取した第6 Cと共謀の上、不正に入手した他人名義のクレジットカード情報等を利用して、インターネット通信販売業者から商品を窃取しようと考え、別表3(省略)記載のとおり、令和5年4月30日午後7時9分頃から同年5月17日午後0時17分頃までの間、8回にわたり、前記C方において、Cが、パーソナルコンピューターを使用し、電気通信回線を通じて、株式会社Rがインターネット上に開設するオンラインサイトにアクセスし、同社が販売するブルーレイディ スク36点の購入を申し込むとともに、配送先住所を被告人が契約していた私設私書箱である「東京都台東区(以下省略)」と指定し、同社の事務処理を誤らせる目的で、Sほか2名名義のクレジットカード番号等を入力して、その代金を同クレジットカード使用者等が所定の方法により支払う旨を装って、これらの虚偽の情報を同社がいずれかの場所に設置したサーバーコンピューターに送信して記録させ、人の事務処理の用に供する権利義務に関する電磁的記録を不正に作出した上、同社の事務処理の用に供し、さらに、同社が依頼した配送業者に、前記電磁的記録に基づいて、前記株式会社R所有の前記ブルーレイディスク36点(販売価格合計31万1750円)を前記私設私書箱に配送させ、同月2日から同月25日までの間、被告人がこれを受け 送業者に、前記電磁的記録に基づいて、前記株式会社R所有の前記ブルーレイディスク36点(販売価格合計31万1750円)を前記私設私書箱に配送させ、同月2日から同月25日までの間、被告人がこれを受け取って窃取した第7 Cと共謀の上、不正に入手した他人名義のクレジットカード情報等を利用して、インターネット通信販売業者から商品を窃取しようと考え、別表4(省略)記載のとおり、令和5年5月6日午前2時24分頃から同月25日午後8時34分頃までの間、前記C方において、Cが、パーソナルコンピューターを使用し、電気通信回線を通じて、株式会社Tが運営するショッピングサイトUにアクセスし、ブルーレイディスク合計14点の購入を順次申し込み、配送先住所を被告人が契約していた私設私書箱である「東京都台東区(以下省略)」と指定するとともに、同社の事務処理を誤らせる目的で、6回にわたり、Vほか4名名義のクレジットカード番号等を入力し、その代金を同クレジットカード使用者等が所定の方法により支払う旨を装って、これらの虚偽の情報を、東京都内に設置された同社が使用するサーバーコンピューターに送信して記録させ、人の事務処理の用に供する権利義務に関する電磁的記録を不正に作出した上、同社の事務処理の用に供し、さらに、同月8日から同月29日までの間、同社が依頼した配送業者に、前記電磁的記録に基づいて、前記株式会社T所有の前記ブルーレイディスク合計14点(販売価格合計21万5820円)を前記私設私書箱に配送させ、同月10日から同月30日までの間、被告人がこれを受 け取って窃取した第8 Cと共謀の上、不正に入手したW名義のクレジットカード情報等を利用して、インターネット通信販売業者から商品を窃取しようと考え、令和5年5月16日午前10時5分頃、前記C方において、C 取した第8 Cと共謀の上、不正に入手したW名義のクレジットカード情報等を利用して、インターネット通信販売業者から商品を窃取しようと考え、令和5年5月16日午前10時5分頃、前記C方において、Cが、パーソナルコンピューターを使用し、電気通信回線を通じて、株式会社Oがインターネット上に開設するオンラインサイトにアクセスし、同社が販売するSSD1台の購入を申し込むとともに、配送先住所を被告人が契約していた私設私書箱である「東京都台東区(以下省略)」と指定し、同社の事務処理を誤らせる目的で、前記W名義のクレジットカード番号等を入力して、その代金を同人名義のクレジットカード使用者等が所定の方法により支払う旨を装って、これらの虚偽の情報を同社が神奈川県内に設置したサーバーコンピューターに送信して記録させ、人の事務処理の用に供する権利義務に関する電磁的記録を不正に作出した上、同社の事務処理の用に供し、さらに、同月22日、同社が依頼した配送業者に、前記電磁的記録に基づいて、前記株式会社O所有の前記SSD1台(販売価格2万3790円)を前記私設私書箱に配送させ、同月23日、被告人がこれを受け取って窃取した第9 法定の除外事由がなく、かつ、著作権者の許諾を受けないで、令和5年5月25日頃、東京都内又はその周辺において、パーソナルコンピューターを使用し、インターネットを介して、株式会社Aが著作権を有する著作物である「機動戦士ガンダム水星の魔女」第7話「シャル・ウィ・ガンダム?」ほか2作品の情報が記録された動画データの識別情報等を記録したトレントファイルをインターネットサイトBに送信して、同サイト上で同トレントファイルを公開した上、前記動画データを、氏名不詳者が管理する場所不詳に設置されたインターネットに接続されたサーバーコンピューターの記録装置 インターネットサイトBに送信して、同サイト上で同トレントファイルを公開した上、前記動画データを、氏名不詳者が管理する場所不詳に設置されたインターネットに接続されたサーバーコンピューターの記録装置に記録保存し、さらに、同サーバーコンピューターのIPアドレスを前記サイトに送信するなどして前記トレントファイルと前記動画データを結び付けて、前記サイトを閲覧 した不特定多数の者に前記トレントファイルを介して前記サーバーコンピューターに接続して前記動画データを自動的に公衆送信し得る状態にし、もって前記著作権者の著作権を侵害したものである。 (量刑の理由)本件は、特定の弁護士を対象として嫌がらせを行うなどするインターネット上の匿名者集団の一員であると考えていた被告人が、同集団の中で前例のない行為を行うことで、同集団を世の中に広く知らしめたいなどと考えて、アニメの動画を違法アップロードするなどして著作権を侵害した事案(第1及び第9)、同集団のウェブサイトで知り合った共犯者と共謀の上、前記弁護士に嫌がらせをしたい、報道されることで同集団を世間に知らしめたいなどと考えて、複数の大学に対して爆破予告のファックスを送信した事案(第2)、同集団のウェブサイトに住所や氏名が掲載されていた人物のマンション共用部分に侵入した事案(第3)、前記弁護士がSNSに自分のアカウントを掲載したことに立腹し、同集団の中でだれもやっていないことをやりたいと考えたことなどから、前記弁護士の懲戒請求をするために他人名義の懲戒請求書を偽造して送付した事案(第4)、前記共犯者と共謀の上、他人名義のクレジットカード情報等を利用して、インターネット上でアニメのDVD等の購入を申し込んで窃取した事案(第5ないし第8)である。 前記のとおり、本件犯行の動機はいずれも身 犯者と共謀の上、他人名義のクレジットカード情報等を利用して、インターネット上でアニメのDVD等の購入を申し込んで窃取した事案(第5ないし第8)である。 前記のとおり、本件犯行の動機はいずれも身勝手なものであり、前記集団の中でこれまで行われていない違法な行為を行うことで自分が認められたいなどと考えて、無軌道に犯行を重ねた側面も認められる。事件ごとにみると、第1及び第9(著作権法違反)については、長期間にわたって多数の動画を違法アップロードしていること、第2(威力業務妨害)については、複数の大学に対して行われたもので、学生を退校させることになるなど学校業務に多大な影響を与えていること、第5ないし第8(窃盗等)については、多数回行われたもので、被害額も合計約64万円と多額であることなどの悪質な事情が認められる。また、共犯事件における被告人の 役割についてみると、第2については、ファックス送信サービスを利用して送信したのは共犯者であるが、被告人は、大学に対して爆破予告をすることを提案し、大学のファックス番号を収集するなどしており、第5ないし第8についてみても、クレジットカード情報を不正に入手して注文したのは共犯者であるが、商品を受け取ったのは被告人であるから、いずれについても重要な役割を果たしていたといえる。 他方、被告人が、本件犯行を素直に認め、多数の人に迷惑をかけて本当に申し訳ない旨述べるなど、反省の態度を示していること、被告人に前科がないことなど、被告人のために酌むべき事情も認められる。 そこで、以上を踏まえて検討するが、本件の一つ一つの犯行をみた場合には、直ちに実刑に処すべき行為とはいえない。しかし、いずれも決して軽視できない悪質な犯行である上、前記集団を広く知らしめ、同集団の中で認められたいなどという身勝手な動 件の一つ一つの犯行をみた場合には、直ちに実刑に処すべき行為とはいえない。しかし、いずれも決して軽視できない悪質な犯行である上、前記集団を広く知らしめ、同集団の中で認められたいなどという身勝手な動機で様々な違法行為を重ねたという事件全体をみた場合には、被告人の責任は重いといわざるを得ない。そうすると、弁護人が主張するように、本件犯行については、被告人の精神的な幼さの現れという側面が認められるとしても、被告人に対して刑の執行を猶予することは困難であり、被告人にとって酌むべき事情は刑期において十分に考慮することとし、主文のとおりの刑に処するのが相当である。 (求刑:懲役5年、懲戒請求書の偽造部分の没収)令和6年6月28日東京地方裁判所刑事第7部 裁判官福家康史
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