平成22(行コ)5 費用弁償返還履行等請求控訴事件(原審 盛岡地方裁判所平成20年(行ウ)第3号)

裁判年月日・裁判所
平成22年7月22日 仙台高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文33,433 文字)

- 1 - 主文 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 同部分にかかる被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用は,第1,2審を通じて,被控訴人の負担とする。 事実 及び理由 第1当事者の求めた裁判 控訴人(1)主文第1項,3項同旨(2)被控訴人の本件訴えのうち,原判決別紙5別表3費用弁償の支給内訳中の「返還請求額の追加」欄記載の金額にかかる訴えを却下する。 (3)被控訴人のその余の請求を棄却する。 被控訴人(1)本件控訴を棄却する。 (2)控訴費用は控訴人の負担とする。 第2事案の概要 本件は,岩手県内に事務所を置く権利能力なき社団である被控訴人が,特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例(昭和27年4月1日岩手県条例第7号。平成18年12月13日岩手県条例第78号(平成19年1月1日施行)による改正後で平成20年10月27日岩手県条例第57号(同年11月1日施行)による改正前のもの。以下「本件条例」という。)7条3項及び4項に基づき,岩手県が平成20年2月の定例会に出席した各岩手県議会議員に対して支給した総額1483万6500円の費用弁償(以下「本件費用弁償」という。)のうち合計1009万4800円の支給部分は,地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの。以下「法」という。)203条に違反して違法であり,これにより同額の損害を岩手県に与えたと主張して,法242条の2第1項4号本文に基づき,岩手県知事である控訴人に対し,- 2 -各岩手県議会議員に対して上記費用弁償額(合計1009万4800円)の返還及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年9月14日から各支払済み づき,岩手県知事である控訴人に対し,- 2 -各岩手県議会議員に対して上記費用弁償額(合計1009万4800円)の返還及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年9月14日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するよう求めた住民訴訟である。 原判決は,被控訴人の請求のうち,岩手県が本件条例7条3項に基づき各県議会議員に対して会議等に出席した日1日につき5700円を支給した部分(ただし,平成20年3月24日を除く。),本件条例7条4項に基づき支給した部分及び平成20年3月24日分として支給した部分についてはいずれも法203条に違反して違法であり,これにより岩手県が合計678万0100円相当の損害を被ったとして,岩手県知事に対し,原判決別紙1の「請求対象者目録1」の「議員名」欄記載の各人に対し,同「議員名」欄に対応する「認容額」欄記載の各金員及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年9月14日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求をすることを命じ,被控訴人のその余の請求を棄却したところ,控訴人が上記敗訴部分につき不服を申し立てた。被控訴人はその敗訴部分につき不服を申し立てなかった。 そのほかの事案の概要は,下記2のとおり原判決の訂正等をするほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決の訂正等(1)原判決3頁1行目の「同条2項」を「同条3項」に,同2行目の「同条4項」を「同条5項」に,同3行目の「法203条4項」を「法203条5項」にそれぞれ改める。 (2)原判決5頁4行目の「甲4の2」の次に「,弁論の全趣旨」を加える。 (3)原判決6頁3行目の「当裁判所」を「盛岡地方裁判所」に改める。 203条4項」を「法203条5項」にそれぞれ改める。 (2)原判決5頁4行目の「甲4の2」の次に「,弁論の全趣旨」を加える。 (3)原判決6頁3行目の「当裁判所」を「盛岡地方裁判所」に改める。 (4)原判決7頁1行目及び同16行目の各「法203条4項」をいずれも「法- 3 -203条5項」に改める。 (5)原判決7頁12行目の冒頭から同15行目の末尾までを次のとおり改める。 「法242条の2第1項が,住民監査請求の前置を規定した趣旨は,住民監査請求により監査委員に監査の機会を与え,その判断を経ることにより,訴訟によらない地方公共団体による自主的かつ迅速な解決を図ることにあるものと解されるから,適法な住民監査請求を経たといえるかどうかは,形式的な判断によらず,請求の原因,理由を含めた実質的な観点から監査委員にその判断の機会を与えたか否かにより判断すべきである。 被控訴人が提起した平成20年3月24日分の費用弁償についての訴えは,同日は常任委員会が予定されていたが,同年3月21日の常任委員会において予定の審議が終了したため,同月24日には会議が開催されなかったことを理由とし,同日分の費用弁償が必要のない違法な支出であるとして,その全額の返還を請求するものであるところ,被控訴人の提起した住民監査請求は,議員に支払われる費用弁償の日額8700円から1万8000円という金額の違法を問題とするものであり,議会や委員会が開かれない日の費用弁償の支給の違法性については何ら問題にしていなかったから,上記住民監査請求においては,同日分の費用弁償が必要のない違法な公金支出であったかどうかは全く争点となっておらず,監査委員もこの点について全く判断していない。したがって,上記訴えについては,実質的にみて適法な住民監査請求を経たとはいえないから,訴訟要 い違法な公金支出であったかどうかは全く争点となっておらず,監査委員もこの点について全く判断していない。したがって,上記訴えについては,実質的にみて適法な住民監査請求を経たとはいえないから,訴訟要件を欠き,不適法な訴えとして却下されるべきである。」(6)原判決11頁22行目及び同12頁2行目の各「法203条2項」を「法203条3項」に改める。 (7)原判決14頁4行目の「法203条4項」を「法203条5項」に改める。 第3当裁判所の判断- 4 - 当裁判所は,被控訴人の請求は理由がないからこれを棄却すべきものと判断する。その理由は,下記2のとおり原判決の訂正等を行った上で,原判決の「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」の1を引用するほか,下記3及び4に記載のとおりである。 原判決の訂正等原判決17頁26行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。 「なお,控訴人は,適法な住民監査請求を経たといえるかどうかは,形式的な判断によらず,請求の原因,理由を含めた実質的な観点から監査委員にその判断の機会を与えたか否かにより判断すべきであると主張する。 しかし,住民監査請求の制度は,普通地方公共団体の財政の腐敗防止を図り,住民全体の利益を確保する見地から,当該普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の違法若しくは不当な財務会計上の行為又は怠る事実について,その監査と予防,是正等の措置とを監査委員に請求する権能を住民に与えたものであって,監査委員は,監査請求の対象とされた行為又は怠る事実につき違法,不当事由が存するか否かを監査するに当たり,住民が主張する事由以外の点にわたって監査することができないとされているものではなく,住民の主張する違法,不当事由や提出された証拠資料が異なることによって監査請求が別個のものになるものではない。ま 住民が主張する事由以外の点にわたって監査することができないとされているものではなく,住民の主張する違法,不当事由や提出された証拠資料が異なることによって監査請求が別個のものになるものではない。また,住民監査請求の制度は,住民訴訟の前置手続として,まず当該普通地方公共団体の監査委員に住民の請求に係る行為又は怠る事実について監査の機会を与え,当該行為又は当該怠る事実の違法,不当を当該普通地方公共団体の自治的,内部的処理によつて予防,是正させることを目的とするものであると解されるところ,法242条の2第1項は,『普通地方公共団体の住民は,前条第1項の規定による請求をした場合において,……裁判所に対し,同条第1項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき,訴えもって次の各号に掲げる請求をすることができる。』と規定し,住民訴訟は監- 5 -査請求の対象とした違法な行為又は怠る事実についてこれを提起すべきものとされているのであって,当該行為又は当該怠る事実について監査請求を経た以上,訴訟において監査請求の理由として主張した事由以外の違法事由を主張することは何ら禁止されていないものと解される(最高裁判所昭和62年2月20日第二小法廷判決・民集41巻1号122頁参照)。 したがって,被控訴人の本件訴えのうち,平成20年3月24日分の費用弁償についての訴えは,被控訴人が平成20年6月17日付けで行った住民監査請求の対象に含まれており,適法な住民監査請求を経たといえるから,控訴人の上記主張を採用することはできない。」 争点(2)(本件条例7条3項及び4項が法203条5項に違反し,同条例に基づく本件費用弁償に違法な支出となる部分があるかどうか)について(1)法203条3項にいう費用の弁償について,条例で,あらかじめその支給事由を定め,それに該当す 法203条5項に違反し,同条例に基づく本件費用弁償に違法な支出となる部分があるかどうか)について(1)法203条3項にいう費用の弁償について,条例で,あらかじめその支給事由を定め,それに該当するときには標準的な実費である一定額を支給する取扱いをする場合,いかなる事由を支給事由として定めるか,また,上記一定額をいくらとするかは,条例を制定する普通地方公共団体の議会の裁量判断にゆだねられていると解される(最高裁判所平成2年12月21日第二小法廷判決・民集44巻9号1706頁参照)。 そして,普通地方公共団体の議会が,条例をもって議員が定例会等の会議に出席した場合に定額の費用弁償を支給する旨を定める場合,上記会議はいずれも法に定められたものであって,議員の重要な活動の場であり,そこへの出席に伴い,その職責を十全に果たすための準備,連絡調整及び移動等の費用を含む,常勤の公務員にはない諸雑費や交通費の支出を要する場合があり得るところであるから,当該普通地方公共団体の議会が他の普通地方公共団体における取扱いとの均衡をも考慮しつつその費用弁償額を定めていたものということができる場合には,上記条例の定めは,法203条が普通地方公共団体の議会に与えた裁量権の範囲を超え又はそれを濫用したものとして- 6 -違法,無効となると断ずることはできない(最高裁判所平成22年3月30日第三小法廷判決)。 (2)本件についてこれをみるに,以下の事情を総合考慮すると,本件条例の定めは,法203条が普通地方公共団体の議会に与えた裁量権の範囲を超え又はそれを濫用したものとして違法,無効となると断ずることはできないと判断する。その理由は,以下のとおりである。 ア本件条例は,岩手県議会の議員が定例会等の会議に出席した場合に当該出席した日について定額の費用弁償を支給す して違法,無効となると断ずることはできないと判断する。その理由は,以下のとおりである。 ア本件条例は,岩手県議会の議員が定例会等の会議に出席した場合に当該出席した日について定額の費用弁償を支給するもの(本件条例7条3項)及び議員が上記会議に出席するに当たって前泊ないしは後泊した場合に定額の費用弁償を支給するもの(本件条例7条4項)であるが,上記会議はいずれも法に定められたものであって,議員の重要な活動の場であり,そこへ出席する際に行う職務内容は,定例会等における議案審議や請願,要望への対応など,議員個々の自主的かつ広範で多様な活動が行われることが想定されていることから,その職責を十全に果たすためには,事前の準備,連絡調整及び移動等の費用を含む,常勤の公務員にはない諸雑費や交通費の支出を要する場合があり得るところである。このような議員の職務の多様性,広範性を考慮すれば,法203条3項の「職務を行うため要する費用」には,交通費に留まらず,諸雑費,個々の議案審議等のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用が含まれるというべきである。 したがって,本件条例が,招集地が居住地である議員についても一定額の費用の弁償を行うことを定め,また,招集地が居住地以外の議員については,居住地から招集地までの距離に応じて一定額の費用の弁償を行うことを定めたことは不合理とはいえない。 イ岩手県議会は,平成11年3月23日,特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例を一部改正し(平成11年3月23日岩手県条例第6号,同年4月1日施行),招集地が居住地以外の県議会議員の費用- 7 -弁償を定額支給に変更したが(乙1,弁論の全趣旨),その際の資料(北海道・東北各県議会における日額旅費の状況(乙2))によると,改正後の費用弁償額は,他の道県と比較 外の県議会議員の費用- 7 -弁償を定額支給に変更したが(乙1,弁論の全趣旨),その際の資料(北海道・東北各県議会における日額旅費の状況(乙2))によると,改正後の費用弁償額は,他の道県と比較した場合,平均的な範囲内にとどまっていることが認められる。また,平成20年4月1日現在の応招旅費等に関する全国調査の結果(乙3)に照らしてみても,本件条例に定める費用弁償額は,定額方式を採用する全国26都道府県と比較しても,平均的な範囲内にあることが認められる。 なお,岩手県は,平成20年10月27日岩手県条例第57号(同年11月1日施行)によって本件条例を改正し,費用弁償を実額支給に改めた。 以上のとおり,本件費用弁償当時,議会の議員が定例会等の会議に出席した場合の費用弁償の支給額の定め方は都道府県において様々に異なるものの,本件条例が定めるのと同程度の定額で費用弁償を支給する都道府県も多数存在していたのであって,岩手県議会は,このような取扱いとの均衡をも考慮しつつ,費用弁償額を定めていたものということができる。 ウ岩手県は都道府県としては北海道に次いで2番目に広大な面積を有するため,岩手県議会の議員が定例会等の会議に出席する場合の移動距離が長くなる場合があること,また公共交通機関の整備も必ずしも十分とはいえないことなどから,県内の移動に時間がかかる状況にあること(公知の事実),前記のとおり,定例会等へ出席する際に行う職務内容は,定例会等における議案審議や請願,要望への対応など,議員個々の自主的かつ広範で多様な活動が行われることが想定されていることから,その職責を十全に果たすためには,会議の開始予定時刻の相当前あるいは会議の終了予定時刻の相当後まで招集地に滞在することが必要となることがあり得ることを考慮すると,招集地と居住地が一定の距離以 から,その職責を十全に果たすためには,会議の開始予定時刻の相当前あるいは会議の終了予定時刻の相当後まで招集地に滞在することが必要となることがあり得ることを考慮すると,招集地と居住地が一定の距離以上離れている議員が前泊ないし後泊した場合に費用弁償として一定額を支給する旨を定めることは必ずしも不合理とはいえない。 - 8 -また,平成20年4月1日現在の応招旅費等に関する全国調査の結果(乙3)によれば,広大な面積を有し,公共交通機関の条件も岩手県と近似する北海道においても,招集地と居住地が一定の距離以上離れている議員が前泊ないし後泊した場合には費用弁償として一定額を支給する旨が定められていたことが認められる。 エ岩手県議会議員は,県議会に上程された議案を審議する等のために,審議等に必要な知識・情報を得ることを目的として,関係者と面談したり,資料を収集したりするという諸活動を行うことが考えられるところ,このような諸活動では,移動の費用,資料代,コピー代等がかかることが予想され得るのであり,これらの費用分を費用弁償として支給することは不合理とはいえない。 政務調査費は,議員の調査活動基盤の充実を図るとの趣旨から,議員の自発的な意思に基づき行われる調査研究に資するために必要な経費の一部を交付するというものであるが,年度を通した経費が対象となること,対象となる経費の使途項目が限定されていること,領収証を添付した報告書の提出が義務づけられていることといった特徴を有する。これに対し,費用弁償は,「職務を行うため要する費用」を,議員が招集に応じて会議等に出席した場合などに限って定額を支給するというものであり,その使途の報告を求めるものではない。このように,費用弁償と政務調査費は,制度の趣旨や仕組みが異なるものである上,岩手県においては,平成16 に出席した場合などに限って定額を支給するというものであり,その使途の報告を求めるものではない。このように,費用弁償と政務調査費は,制度の趣旨や仕組みが異なるものである上,岩手県においては,平成16年3月29日付け事務連絡により,県議会議員に宛てて,「議会の開会中(土,日,祝日を除く。)及び閉会中の常任委員会等の開催日並びに県外調査等で費用弁償が行われている場合には,議員の交通費,宿泊料,現地経費については,政務調査費を支出することはできません。また,費用弁償の対象とならない土,日,祝日であっても,前後泊をした場合で費用弁償の対象となる日の交通費等は,政務調査費を支出できません。」との事務連絡- 9 -を行って政務調査費と費用弁償との重複支給を避ける取扱いをしている(乙4)のであるから,個々の議案審議等のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用を含む費用弁償の支給が政務調査費との重複支給に当たり不合理であるとは言い難い。 オ以上の諸事情を考慮すると,岩手県議会の定例会等の会議に出席した議員に費用弁償として一定額の費用弁償を支給する旨の本件条例の定めは,法203条5項が普通地方公共団体の議会に与えた裁量権の範囲を超え又はそれを濫用したものとして違法,無効となると断ずることはできない。 (3)被控訴人は,法203条にいう費用の弁償につき,所定の支給事由に該当するときに標準的な実費である一定額を支給する旨を条例で定めた場合において,当該額が同条により与えられた普通地方公共団体の議会の裁量権の範囲内にあるといえるためには,当該費用弁償が当該支給事由に係る職務を行うために要する費用を弁償するものであって,報酬としての性格を有しておらず,かつ,その額が合理的に見積もられたものである必要があると主張する。 しかし,その費用弁償が費用とし 支給事由に係る職務を行うために要する費用を弁償するものであって,報酬としての性格を有しておらず,かつ,その額が合理的に見積もられたものである必要があると主張する。 しかし,その費用弁償が費用としての性格を有するものであり,報酬としての性格を有していないかどうかの評価,その金額の見積りが合理性を有するかどうかの具体的判断などについては,各地方公共団体の議会に,地域の事情及び通常の公務員と異なる議員の議会活動のあり方等にかんがみてある程度自由に政策決定をする余地を認めることは一概に不合理とはいえない。 したがって,費用弁償の対象となる費目の範囲を限定し,その費目について必要最小限度の費用を積算して行く方法を唯一の適正な方法であるとし,このような積算結果との適合性の有無を以て裁量逸脱の有無を判断することは,上記平成2年判決及び平成22年判決が採用する裁量判断の手法とは相容れないものというべきである。したがって,被控訴人の上記主張を採用することはできない。 - 10 - 争点(3)(平成20年3月24日分の費用弁償の支給は,違法な支出となるか否か)について(1)本件条例7条3項は,「県議会の議員が招集に応じて会議又は委員会等に出席したときの第1項の費用弁償の額は,前項の規定にかかわらず,当該出席した日(議案調査等に従事した日を含む。)1日につき,別表第4左欄に掲げる区分に応じ,それぞれ同表右欄に定める額とする。」と規定し,「当該出席した日(議案調査等に従事した日を含む。)」に費用弁償を行っており,「議案調査等に従事した日」には,「議案調査のための休会」及び「委員会審査のための休会」の議決休会日が含まれるものと解される。 「議案調査のための休会」は,議員が議案の精査や調査,資料収集等を行うことにより議案審議の充実を図り,また,議案に対す めの休会」及び「委員会審査のための休会」の議決休会日が含まれるものと解される。 「議案調査のための休会」は,議員が議案の精査や調査,資料収集等を行うことにより議案審議の充実を図り,また,議案に対する各議員間の意見調整等を行うなど議会運営を円滑かつ効果的に行うために必要とされる日を休会とするものであり,また,「委員会審査のための休会」とは,本会議で各委員会(常任委員会,特別委員会)に付託された議案について,各委員会の審議のために必要とされる日を休会とするものであって,いずれも議員活動のためには必要不可欠なものであると認められる(弁論の全趣旨)。そして,「委員会審査のための休会」の日に委員会が開催されない場合であっても,会期中は会議の有無にかかわらず継続して議案の調査や情報収集,議員発議案の検討や取りまとめ,議案提出等を行うほか,議員自らが所属しない常任委員会に付託された議案の審査状況等を把握したり,議員間の意見調整を行うなど,議案に対する賛否を明らかにするため,本会議最終日まで議員による様々な活動が活発に行われることが予定されているのであって,「議案調査のための休会」の日と同様の議員活動が行われることが考えられるところである。 平成20年2月定例会においても,平成19年度2月補正予算案や平成20年度当初予算案,条例案,議員発議案など多くの議案が提案されており,- 11 -会期の最終日である平成20年3月25日には,本会議において提案された議案についての質疑,討論及び採決が予定されていたのである(原判決「事実及び理由」欄の第2の1の(3))から,限られた会期の中で,これらの議案の審査等のために議員により活発な活動が行われることは容易に推認できる。 したがって,平成20年2月定例会において,既に付託された議案の審査が終了したため委員会 ら,限られた会期の中で,これらの議案の審査等のために議員により活発な活動が行われることは容易に推認できる。 したがって,平成20年2月定例会において,既に付託された議案の審査が終了したため委員会が開催されない日であるからといって,議員の活動が休止し,その職務が行われなくなるものと認めるのは不合理であって,「議案調査のための休会」の日と同様に,議員の活動は議会への出席と同視できるから,当該日にその職務を行うために要する費用として費用弁償を行うことは合理性を有するというべきである。 (2)以上のとおりであるから,平成20年3月24日分の費用弁償の支給をもって,本件条例7条3項に反する違法な支出であると断ずることはできない。 結論 以上によれば,被控訴人の本訴請求は理由がないから,これを棄却すべきである。 よって,被控訴人の請求を一部認容した原判決を取り消した上,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第2民事部裁判長裁判官小磯武男- 12 -裁判官潮見直之裁判官山口均(原裁判等の表示) 主文 被告は,別紙1の「請求対象者目録1」の「議員名」欄記載の各人に対し,同「議員名」欄に対応する「認容額」欄記載の各金員及びこれに対する平成20年9月14日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求をせよ。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,これを3分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 事実及び理由 第1請求被告は,別紙2「請求対象者目録2」記載の「議員名」欄記載の各人に対し,同「議員名」欄に対応する「 し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 事実及び理由 第1請求被告は,別紙2「請求対象者目録2」記載の「議員名」欄記載の各人に対し,同「議員名」欄に対応する「返還請求額」欄記載の各金員及びこれに対する平成20年9月14日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求をせよ。 第2事案の概要本件は,岩手県民により構成される権利能力なき社団である原告が,特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例(平成18年岩手県条例第78号による改正後の昭和27年4月1日条例第7号)(以下,「本件条例」という。)7条3項及び4項に基づき,岩手県が平成20年2月の定例会に出席した岩手県議会各議員に対して支給した総額1483万6500円の費用弁償のうち合計1- 13 -009万4800円の支給部分は違法であり,これにより同額の損害を岩手県に与えたと主張して,地方自治法(以下,「法」という。)242条の2第1項4号本文に基づき,岩手県知事である被告に対し,岩手県議会各議員に対して上記費用弁償額(合計1009万4800円)の返還及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年9月14日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するよう求めた事案である。 争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実(証拠により認定した事実は証拠を掲記する。)(1)当事者等ア原告は,地方公共団体等の行政への住民参加の実現と行政の監視並びに不正の是正を目的として結成された権利能力なき社団である。原告の構成員は,岩手県民である。 イ被告は,岩手県知事であり,岩手県の執行機関である。 ウ別紙1の「請求対象者目録1」及び別紙2の「請求対象者目録2」記載の「 利能力なき社団である。原告の構成員は,岩手県民である。 イ被告は,岩手県知事であり,岩手県の執行機関である。 ウ別紙1の「請求対象者目録1」及び別紙2の「請求対象者目録2」記載の「議員名」欄記載の各人は,平成20年2月の定例会が開かれた平成20年2月及び3月当時,岩手県議会議員であった。 (2)本件条例ア法203条は,普通地方公共団体の議会の議員は,職務を行うため要する費用の弁償を受けることができ(同条2項),その費用弁償の額及び支給方法は条例でこれを定めなければならない(同条4項)と規定している。 イ岩手県は,法203条4項を受けて,本件条例を制定している。 ウ本件条例7条の規定及び同規定が引用する別表第4(以下,「本件別表4」という。)は,以下のとおりである。 「(旅費及び費用弁償)第7条特別職の職員が,職務のため旅行したときは,常勤の者には旅費を支給し,臨時又は非常勤の者にはその費用を弁償する。 - 14 - 前項の旅費又は費用弁償の額は,別表第2左欄に規定する職員について,それぞれ同表右欄に定める額とする。ただし,知事,副知事,出納長,県議会の議員及び県議会の議員のうちから選任された監査委員が内国を旅行した場合に支給する現地経費,宿泊料及び食卓料については別表第3に定めるところによる。 県議会の議員が招集に応じて会議又は委員会等に出席したときの第1項の費用弁償の額は,前項の規定にかかわらず,当該出席した日(議案調査等に従事した日を含む。)1日につき,別表第4左欄に掲げる区分に応じ,それぞれ同表右欄に定める額とする。 居住地から招集地までの距離が陸路(鉄道を除く。以下同じ。)75キロメートル以上の県議会の議員が次の各号に掲げる場合に該当す 4左欄に掲げる区分に応じ,それぞれ同表右欄に定める額とする。 居住地から招集地までの距離が陸路(鉄道を除く。以下同じ。)75キロメートル以上の県議会の議員が次の各号に掲げる場合に該当するときの第1項の費用弁償の額は,第2項の規定にかかわらず,それぞれ当該各号に定める日1日につき,第1号の場合にあっては別表第4左欄に掲げる区分に応じそれぞれ同表右欄に定める額,第2号の場合にあっては同表左欄に掲げる区分に応じそれぞれ同表右欄に定める額に2分の1を乗じて得た額とする。 (1)招集に応じて会議又は委員会等に出席した日の前日(当該会議又は委員会等の開会の日(議案調査日等を含む。)を除く。)に招集地において宿泊した場合当該前日(2)招集に応じて会議又は委員会等に出席した日に招集地において宿泊した場合でその翌日(当該会議又は委員会等の開会の日(議案調査日等を含む。)を除く。)に旅行したとき当該翌日 」「別表第4 区分費用弁償の額招集地が居住地である県議会の議員8,700円- 15 -居住地から招集地までの距離が陸路25キロメートル未満の場合10,600円居住地から招集地までの距離が陸路25キロメートル以上50キロメートル未満の場合12,400円居住地から招集地までの距離が陸路50キロメートル以上75キロメートル未満の場合14,300円居住地から招集地までの距離が陸路75キロメートル以上100キロメートル未満の場合16,100円招集地が居住地以外の県議会の議員居住地から招集地までの距離が陸路100キロメートル以上の場合18,000円」( 00円招集地が居住地以外の県議会の議員居住地から招集地までの距離が陸路100キロメートル以上の場合18,000円」(3)平成20年2月定例会の日程岩手県議会平成20年2月定例会の日程は,別紙3の別表1(岩手県議会平成20年2月定例会日程)のとおりであった。ただし,平成20年3月24日は常任委員会が開催される予定であったが,同月21日の常任委員会において予定の審議が終了したため,同日,24日の常任委員会は開催されないことが決まり,24日の常任委員会は開催されなかった(甲3)。 各議員の平成20年2月定例会(本会議,予算特別委員会,常任委員会)への出席日数は別紙4の別表2(平成20年2月定例会出席日数)のとおりであった(甲4の2)。 (4)費用弁償の支給岩手県は,本件条例7条3項及び4項に基づき,平成20年2月及び3月に開催された平成20年2月の定例会に出席した別紙1及び2(請求対象者- 16 -目録1及び2)記載の岩手県議会議員47名に対し,それぞれの議員の居住地から招集地までの距離に応じて,会議への出席(議案調査等に従事した日を含む。)の度に,1日につき,本件別表4記載の日額8700円から1万8000円を支給し,居住地から招集地までの距離が陸路75キロメートル以上の議員が出席した日の前日に招集地において宿泊した場合は当該前日につき日額1万6100円または1万8000円を,出席した日に招集地において宿泊した場合でその翌日に旅行した場合は当該翌日につき日額8050円または9000円を支給し,請求対象者目録1及び2「平成20年2月定例会支給額」欄記載のとおり,総額1483万6500円を支給した(以下,当該支給を「本件費用弁償」という。 翌日につき日額8050円または9000円を支給し,請求対象者目録1及び2「平成20年2月定例会支給額」欄記載のとおり,総額1483万6500円を支給した(以下,当該支給を「本件費用弁償」という。支給内訳については,別紙5の別表3(費用弁償の支給内訳)「支給内容」,「支給額」,「支給総額」欄記載のとおりである。)。 (5)住民監査請求原告は,平成20年6月17日,本件費用弁償について,法242条に基づき,岩手県監査委員に対し,必要な措置を講ずべきことを請求した(甲5。 なお,平成20年3月24日分の費用弁償について,適法な住民監査請求を経たといえるかについては争いがあるので,後に判断を示す。)。岩手県監査委員は,同年8月8日,当該請求を棄却する旨の通知を原告に対して行った。 (6)訴訟提起原告は,平成20年9月8日,本件費用弁償の支出は違法な部分があるとして,法242条の2第1項4号に基づいて,本件訴訟を当裁判所に提起した。 (7)他の都道府県における費用弁償額岩手県では,平成11年3月23日に,特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例の一部が改正され,招集地が居住地以外の県議会議- 17 -員の費用弁償を定額支給に変更したが(乙1),その際に被告は,北海道・東北各県議会における日額旅費の状況(乙2)を検討した。また,平成20年4月1日現在の応招旅費等に関する全国調査の結果(乙3)も存在する。 (8)岩手県では,法100条14項の規定を受けて,政務調査費の交付に関する条例(平成13年3月30日条例第37号)(以下,「本件政務調査費交付条例」という。)を制定し,岩手県議会議員に対し,政務調査費を交付する旨定めている。 なお,岩手県では,平成16年3月29日付け「政務調 年3月30日条例第37号)(以下,「本件政務調査費交付条例」という。)を制定し,岩手県議会議員に対し,政務調査費を交付する旨定めている。 なお,岩手県では,平成16年3月29日付け「政務調査費収支報告書の作成上の留意点について(事務連絡)」と題する文書(以下,「平成16年3月29日付事務連絡」という。)により,県議会議員に宛てて,政務調査費と費用弁償との重複につき,「議会の開会中(土,日,祝日を除く。)及び閉会中の常任委員会等の開催日並びに県外調査等で費用弁償が行われている場合には,議員の交通費,宿泊料,現地経費については,政務調査費を支出することはできません。また,費用弁償の対象とならない土,日,祝日であっても,前後泊をした場合で費用弁償の対象となる日の交通費等は,政務調査費を支出できません。」との事務連絡を行っている(乙4)。 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は,本案前の争点として,(1)平成20年3月24日分の費用弁償についての訴えが適法な住民監査請求を経たものといえるか,本案の争点として,(2)本件条例7条3項及び4項が法203条4項に違反し,当該規定に基づく本件費用弁償に違法な支出となる部分があるかどうか,(3)平成20年3月24日分の費用弁償の支給は,違法な支出となるかどうかである。 (1)争点(1)(平成20年3月24日分の費用弁償についての訴えが適法な住民監査請求を経たものといえるか)について(原告の主張)原告が平成20年6月17日付で行った住民監査請求は,請求日1年以内- 18 -に支出された岩手県議会議員に対する費用弁償の全額を対象として行ったものであるから,平成20年3月24日分の費用弁償についても住民監査請求の対象に含まれており,適法な住民監査請求を経たものである。 (被 出された岩手県議会議員に対する費用弁償の全額を対象として行ったものであるから,平成20年3月24日分の費用弁償についても住民監査請求の対象に含まれており,適法な住民監査請求を経たものである。 (被告の主張)原告は,平成20年3月24日分の費用弁償が違法な公金支出であることを理由として損害の填補を求めるべき旨の住民監査請求を行っておらず,3月24日分の費用弁償についての訴えは,訴訟要件を欠いているので,却下されるべきである。 (2)争点(2)(本件条例7条3項及び4項が法203条4項に違反し,同条例に基づく本件費用弁償に違法な支出となる部分があるかどうか)について(原告の主張)ア本件費用弁償の対象について(ア)本件条例7条1項は「特別職の職員が,職務のため旅行したときは,常勤の者には旅費を支給し,臨時又は非常勤の者にはその費用を弁償する。」と規定しており,費用弁償の対象は,常勤の者に対する旅費と同等である。 そして,岩手県の「一般職の職員等の旅費に関する条例」3条によれば,旅費の種類は,鉄道賃,船賃,航空賃,車賃,現地経費,宿泊料,食卓料,移転料,着後手当及び扶養親族移転料とされているところ,会議の出席に関するものとしては,交通費(鉄道賃,船賃,航空賃,車賃),現地経費,宿泊料及び食卓料と解される。また,同条例15条が,行程40キロメートル未満の旅行であって用務地が県内のものについては,現地経費は,支給しないと規定していることに照らすと,近距離で宿泊を要しない場合における費用弁償の対象経費は,交通費に限られることになる。そうすると,招集地が居住地である議員は,宿泊を必要とせず,かつ現地経費の支給も行われないことから,- 19 -同議員らに対する支給対象経費は交通費(鉄道賃,船賃,航空賃,車賃)に限ら とになる。そうすると,招集地が居住地である議員は,宿泊を必要とせず,かつ現地経費の支給も行われないことから,- 19 -同議員らに対する支給対象経費は交通費(鉄道賃,船賃,航空賃,車賃)に限られるべきである。 (イ)上記(ア)のとおり,招集地が居住地である議員の支給対象経費は交通費に限られるところ,国家公務員の場合,国家公務員等の旅費に関する法律(以下,「旅費法」という。)27条により,在勤地内の旅行については,原則として交通費等を含め一切の旅費は支給されないことになっていることに準じ,招集地が居住地である議員に対しては費用弁償を支給すべき理由はない。 イ本件条例7条3項における定額の支給額について(ア)費用弁償とは,法207条の「実費弁償」と同じ意味であり,職務の執行に要した経費を償うために支給される金銭をいう。したがって,費用弁償は実費の弁償にほかならないから,本来,費用を要した都度,その実費を計算して弁償を受ける実額方式によるべきである。そして,仮に,実額方式に伴う手続の煩雑さ,経費の増大等を理由として,あらかじめ一定の支給事由を定め,それに該当するときに一定額を費用弁償として支給する定額方式を採ることが許されるとしても,それは,実費の弁償という費用弁償の趣旨を損なわない範囲に限られるというべきである。 (イ)しかるに,本件条例7条3項に基づく費用弁償は,実際にかかる交通実費を勘案することなく,旅費の範囲を大きく超える定額の支給がなされている。 (ウ)本件費用弁償のうち,違法な支出に当たる部分については,まず,招集地が居住地である議員に対しては費用弁償を支給する理由がなく,当該議員に対する費用弁償額は0円となるべきで,当該議員に対してなした一律8700円の費用弁償の支給は違法な支出にあたり,全 まず,招集地が居住地である議員に対しては費用弁償を支給する理由がなく,当該議員に対する費用弁償額は0円となるべきで,当該議員に対してなした一律8700円の費用弁償の支給は違法な支出にあたり,全額が返還されるべきである。 - 20 -(エ)そして,招集地が居住地以外の議員に支給すべき相当な金額は,最大でも,本件別表4に記載された各支給額から招集地が居住地である議員に対して支出する費用弁償額8700円を差し引いた額というべきである。すなわち,居住地から招集地までの距離が陸路25キロメートル未満の議員について相当な費用弁償の最大額は1900円(1万0600円-8700円),居住地から招集地までの距離が陸路25キロメートル以上50キロメートル未満の議員について相当な費用弁償の最大額は3700円(1万2400円-8700円),居住地から招集地までの距離が陸路50キロメートル以上75キロメートル未満の議員について相当な費用弁償の最大額は5600円(1万4300円-8700円),居住地から招集地までの距離が陸路75キロメートル以上100キロメートル未満の議員について相当な費用弁償の最大額は7400円(1万6100円-8700円),居住地から招集地までの距離が陸路100キロメートル以上の議員についての相当な費用弁償の最大額は9300円(1万8000円-8700円)であるというべきである。 (オ)上記(エ)記載の金額の妥当性は,車賃を1キロメートルにつき37円の範囲内で定めている岩手県の一般職の職員等の旅費に関する条例7条からも導くことができる。すなわち,招集地が居住地以外の議員に対する交通費の妥当な費用弁償額は多く見積もっても1キロメートルにつき37円であり,具体的には,居住地から招集地までの距離が陸路25キロメートル未満の議員につ 。すなわち,招集地が居住地以外の議員に対する交通費の妥当な費用弁償額は多く見積もっても1キロメートルにつき37円であり,具体的には,居住地から招集地までの距離が陸路25キロメートル未満の議員について相当な費用弁償額は1850円(37円/㎞×25㎞×2),居住地から招集地までの距離が陸路25キロメートル以上50キロメートル未満の議員について相当な費用弁償額は3700円(37円/㎞×50㎞×2),居住地から招集地までの距離が陸路50キロメートル以上75キロメートル未満の- 21 -議員について相当な費用弁償額は5550円(37円/㎞×75㎞×2),居住地から招集地までの距離が陸路75キロメートル以上100キロメートル未満の議員について相当な費用弁償額は7400円(37円/㎞×100㎞×2),居住地から招集地までの距離が陸路100キロメートル以上の議員について相当な費用弁償額は9250円(37円/㎞×125㎞×2)である。これらの金額は,上記(エ)記載の金額とほぼ同じであることから,上記(エ)記載の金額が相当な費用弁償の最大額であるといえる。 (カ)以上によれば,本件条例7条3項に基づく本件費用弁償のうち,上記(エ)の妥当な費用弁償額を超えるものについては違法な支出である。 ウ本件条例7条4項に基づく本件費用弁償について本件条例7条4項は,議員が会議に出席するに当たって前泊ないしは後泊した場合の費用弁償につき定めているが,平成20年2月に開かれた定例会の会議日程からすれば,前泊ないし後泊する必要性は認められない。 よって,本件費用弁償のうち,本件条例7条4項に基づき支出した部分は違法な支出である。 エ政務調査費との重複支給について政務調査費との重複支給に当たることからも,本件条例7条3項及び4項は違法である。 本件費用弁償のうち,本件条例7条4項に基づき支出した部分は違法な支出である。 エ政務調査費との重複支給について政務調査費との重複支給に当たることからも,本件条例7条3項及び4項は違法である。 すなわち,被告は,個々の議案審議等のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用が費用弁償の対象に含まれる旨主張するが,岩手県議会議員は,政務調査費交付条例に基づき政務調査費の支給を受けているところ,政務調査費法制化の趣旨は,地方議会の審議能力強化にあったことからすれば,個々の議案審議等のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用は政務調査費の支出対象に含まれている。したがって,個々の- 22 -議案審議のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用は,政務調査費として支出されるべきものであり,これを費用弁償として支出することは経費の二重取りに当たる。また,平成16年3月29日付事務連絡の文言に照らせば,本件条例7条で定めている費用弁償の対象は,議員の交通費,宿泊料,現地経費に限定されており,個々の議案審議のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用を費用弁償として支出することは許されないというべきである。 (被告の主張) ア費用弁償の対象について(原告の主張ア,ウ及びエに対し)(ア)費用弁償の支給方法につき,実額方式では実際上の計算や手続が煩雑になり事務量や経費の増大につながることや,費用の中には実額の算定が困難なものがあることも否定できないことから,定額方式をとることも合理的方法として許される。そして,定額方式をとる場合に,いかなる事由を支給事由として定めるか,支給される一定額をいくらにするかは議会の裁量的判断に委ねられている。 本件条例1条は「この条例は地方自治法第203 そして,定額方式をとる場合に,いかなる事由を支給事由として定めるか,支給される一定額をいくらにするかは議会の裁量的判断に委ねられている。 本件条例1条は「この条例は地方自治法第203条及び同法204条の規定により…(中略)…県議会の議員…(中略)…の受ける給与並びに旅費及び費用弁償に関し必要な事項を定めるものとする。」と規定しており,法203条2項は「第1項の者は,職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる。」と規定しているから,条例における「費用弁償」の費用が,「職務を行うため要する費用」を意味することは明らかである。そして,「職務を行うために要する費用」は文理上「旅行したときの費用」に限定されるものではない。 (イ)本件条例7条3項について(原告の主張ア及びエに対し) 議員の職務の多様性,広範性を考慮すれば,法203条2項の「職務を行うため要する費用」には,交通費,諸雑費,個々の議案審議等- 23 -のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用が含まれる。そして,議員が会議等に出席する際に行う職務内容は,定例会等における議案審議や請願,要望への対応など,議員個々の自主的かつ広範で多様な活動が行われることが想定されていることから,本件条例は,招集地が居住地である議員についても費用の弁償を行うこととしている。 (ウ)本件条例7条4項について(原告の主張ウに対し) 岩手県が広大な面積を有し,移動距離が長く,また公共交通機関の整備も必ずしも十分とはいえないことなど,県内の移動に時間がかかる状況にあることからすれば,招集地と居住地が一定の距離以上離れている議員が前泊ないし後泊した場合に一定額を支給する旨定めることにも合理性がある。 イ本件条例における定額の支 動に時間がかかる状況にあることからすれば,招集地と居住地が一定の距離以上離れている議員が前泊ないし後泊した場合に一定額を支給する旨定めることにも合理性がある。 イ本件条例における定額の支給額について(原告の主張イ及びウに対し)(ア)議員の職務内容は,定例会等における議案審議や請願,要望への対応など,議員個々の自主的かつ広範で多様な活動が行われることが想定されるものであり,これに要する費用の見積りは困難であり,職務にかかる諸経費も一般的に多額になるものと考えられている。「職務を行うため要する費用」の個別の費目及び金額については,議員ごとに相違があることは容易に推測されるし,実額の算出には困難を伴うものである。 (イ)また,本件条例7条2項は,同条3項に定める支給事由以外の職務,例えば,議員派遣によって視察調査等を行う場合などには,旅行目的及び旅程,その職務内容など,職務を行うため要する費用の見積りが明らかであることから,同条3項とは異なり,常勤の者の旅費の場合と同様の普通旅費方式により費用弁償をする旨定めているが,その主な費目構成である「現地経費」とは,「旅行中の昼食費」及び「これ- 24 -に伴う諸雑費」並びに「目的地である地域を巡回する場合の交通費等」を賄うために定額で支給されるものであり,これは旅費法6条の定める「日当」と同じ考え方によるものであるが,この旅費法で定める日当の額は,その計算基礎としては,「宿泊料の定額の約20パーセントで計算されている」とされており,「日当」そのものの個別の費目及び金額は明確ではない。すなわち,旅費の建前が旅行の事実に対する実費弁償であるとしても,その旅費制度において,実費との比較によっては定められない費目が含まれ,支給されることが許容されているのである。 よって,本件 ない。すなわち,旅費の建前が旅行の事実に対する実費弁償であるとしても,その旅費制度において,実費との比較によっては定められない費目が含まれ,支給されることが許容されているのである。 よって,本件条例7条3項に定める定額には,「交通費」,「諸雑費」,「個々の議案審議等のため必要な情報や資料を収集・整理するための費用」が含まれるものと解されるが,上記「日当」と同様,実費との比較によっては定められない費用が含まれるのであるから,必ずしもその定額の定めが実費との比較によってのみ行われなければならないとまではいえない。 (ウ)以上のことから,招集地が居住地である議員の標準的な「職務を行うため要する費用」を定めるにあたり,実費との比較のみによって決定するのではなく,他の地方公共団体との比較・均衡によって決定することは一定の合理性を有するものと考えられ,本件条例は,他県との比較により費用弁償の額を定めたものである。 岩手県議会は,平成11年3月23日,費用弁償に関する条例を一部改正し,招集地が居住地以外の県議会議員の費用弁償を定額支給に変更したが(乙1),その際の資料(北海道・東北各県議会における日額旅費の状況(乙2))によると,改正後の費用弁償額は,他の道県と比較した場合,平均的な範囲内にとどまっている。 また,平成20年4月1日現在の応招旅費等に関する全国調査の結- 25 -果(乙3)に照らしてみても,本件条例に定める費用弁償額は,定額方式を採用する全国24都府県に比較して,平均的な範囲内にある。 そうすると,本件条例7条3項及び4項は,議会の合理的裁量の範囲内のものであり,法203条4項に違反しない。 ウ政務調査費との重複支給について(原告の主張エに対し)県議会議員は,県議会に上 と,本件条例7条3項及び4項は,議会の合理的裁量の範囲内のものであり,法203条4項に違反しない。 ウ政務調査費との重複支給について(原告の主張エに対し)県議会議員は,県議会に上程された議案を審議する等のために,審議等に必要な知識・情報を得ることを目的として,関係者と面談したり,資料を収集したりするという諸活動を行うことが考えられる。このような諸活動では,移動の費用,資料代,コピー代等がかかることが予想され得るのであり,これらの費用分を費用弁償として支給することは不合理ではない。 政務調査費は,議員の調査活動基盤の充実を図るとの趣旨から,議員の自発的な意思に基づき行われる調査研究に資するために必要な経費の一部を交付するというものであるが,年度を通した経費が対象となること,対象となる経費の使途項目が限定されていること,領収証を添付した報告書の提出が義務づけられていることといった特徴を有する。 これに対し,費用弁償は,「職務を行うため要する費用」を,議員が招集に応じて会議等に出席した場合などに限って定額を支給するというものであり,その使途の報告を求めるものではない。 このように,費用弁償と政務調査費は,制度の趣旨や仕組みが異なるものであるから,個々の議案審議等のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用を含む費用弁償の支給が直ちに不合理になるものではない。 また,岩手県においては,平成16年3月29日付事務連絡のとおりの取扱いをしており,二重取りとの批判は当たらない。 (3)争点(3)(平成20年3月24日分の費用弁償の支給は,違法な支出となるか否か)について(原告の主張)- 26 -ア平成20年2月定例会日程のうち,平成20年3月24日は,常任委員会が予定されていたが,3月21日 3月24日分の費用弁償の支給は,違法な支出となるか否か)について(原告の主張)- 26 -ア平成20年2月定例会日程のうち,平成20年3月24日は,常任委員会が予定されていたが,3月21日の常任委員会において予定の審議が終了したため,3月24日には会議が開催されなかった。しかるに,3月24日の分も費用弁償が支給されており,これは全く必要のない違法な支出である。 イ被告は,既に付託された議案の審査が終了したため委員会が開催されない日であるからといって,議員の活動が休止し,その職務が行われなくなるものではなく,費用弁償の支出が適法であるとされる「議案調査のための休会」,「委員会審査のための休会」の日と同様に,議員の活動は議会への出席と同視でき,3月24日について費用弁償を支出することは違法ではない旨主張する。 しかしながら,「議案調査のための休会」日は,定例会日程において,2月22日,25日,26日及び27日が予定されていたのであり,3月24日は,日程では常任委員会を開催することが予定されていたところ,3月21日で予定の審議が終了したため開催しないこととなったものであるから,3月24日は,「議案調査のための休会」にも「委員会審査のための休会」にも当たらない。 また,3月24日は定例会最終日の前日であり,かつ予定されていた常任委員会の審議もすべて終了していたのであるから,現実にも,すべての議員が「議案調査」に従事していたとは考えられない。 そうすると,「職務を行うために要する費用の弁償」に該当しないのはもちろん,「実費弁償」という費用弁償の趣旨に照らせば,3月24日の費用弁償の支出はいかなる実費に対応するものであるか理解しがたいものであり,当該支出はその全額が違法な支出である。 (被告の主張)ア本件条例7条3項は,「県議会の議 の趣旨に照らせば,3月24日の費用弁償の支出はいかなる実費に対応するものであるか理解しがたいものであり,当該支出はその全額が違法な支出である。 (被告の主張)ア本件条例7条3項は,「県議会の議員が招集に応じて会議又は委員会等- 27 -に出席したときの第1項の費用弁償の額は,前項の規定にかかわらず,当該出席した日(議案調査等に従事した日を含む。)1日につき,別表第4左欄に掲げる区分に応じ,それぞれ同表右欄に定める額とする。」と規定し,「当該出席した日(議案調査等に従事した日を含む。)」に費用弁償を行っており,「議案調査等に従事した日」には,「議案調査のための休会」,「委員会審査のための休会」の議決休会日が含まれる。 「議案調査のための休会」とは,議員が議案の精査や調査,資料収集等を行うことにより議案審議の充実を図り,また,議案に対する各議員間の意見調整等を行うなど議会運営を円滑かつ効果的に行うために必要とされる日を休会とするものであって,議員には必要不可欠なものである。 「委員会審査のための休会」とは,本会議で各委員会(常任委員会,特別委員会)に付託された議案について,各委員会の審議のために必要とされる日を休会とするものである。 イそして,「委員会審査のための休会」の日に委員会が開催されない場合であっても,事情によっては,休会とされた日に本会議が開催されることがあるほか,会期中は会議の有無にかかわらず継続して議案の調査や情報収集,議員発議案の検討や取りまとめ,議案提出等を行うほか,議員自らが所属しない常任委員会に付託された議案の審査状況等の把握や議員間の意見調整など,議案に対する賛否を明らかにするため,本会議最終日まで議員による様々な活動が活発に行われることが予定されるのであって,「議案調査のための休会」の日と同様の議 審査状況等の把握や議員間の意見調整など,議案に対する賛否を明らかにするため,本会議最終日まで議員による様々な活動が活発に行われることが予定されるのであって,「議案調査のための休会」の日と同様の議員活動が行われる。 平成20年2月定例会においても,平成19年度2月補正予算案や平成20年度当初予算案,条例案,議員発議案など多くの議案が提案されており,限られた会期の中でこれらの審査等のために議員により活発な活動が行われることは容易に観念できるのであり,「委員会審査のための休会」の日に委員会が開催されないからといって,会期中における議員の職務が- 28 -なくなり,議員の活動が休止するものではない。 ウ以上によれば,平成20年2月定例会において,既に付託された議案の審査が終了したため委員会が開催されない日であるからといって,議員の活動が休止し,その職務が行われなくなるものではなく,「議案調査のための休会」の日同様に,議員の活動は議会への出席と同視できるものであり,その職務を行うために要する費用として費用弁償を行うことについて合理性を有するものである。 第3当裁判所の判断 争点(1)(平成20年3月24日分の費用弁償についての訴えが適法な住民監査請求を経たものといえるか)について平成20年2月定例会に係る岩手県議会の全議員に支給された費用弁償の合計額が1483万6500円であることは争いがなく,証拠(甲5)によれば,原告は,平成20年6月17日付け「岩手県知事に係る措置請求書」をもって住民監査請求をし,同請求書において,請求の趣旨として,「岩手県が岩手県議会議員に対し,平成19年6月18日から平成20年6月17日までの間に費用弁償として支給した日額8,700円から18,000円は,違法・不当な公金の支出である。よって,岩手県知 ,「岩手県が岩手県議会議員に対し,平成19年6月18日から平成20年6月17日までの間に費用弁償として支給した日額8,700円から18,000円は,違法・不当な公金の支出である。よって,岩手県知事に対し,損害の填補,並びに今後の損害を未然に防止するための条例改正等の措置を講ずるよう勧告すること」を求め,請求の原因として,費用弁償の支給状況として,「平成20年2月,3月に開かれた平成20年2月定例会における支給状況は,別紙事実証明書1のとおりであり,合計14,836,500円が支給されている。」と主張し,事実証明書1として岩手県議会平成20年2月定例会費用弁償支給額一覧を添付したことが認められる。 以上によれば,原告は,平成20年2月定例会に関して支出された費用弁償全部について適法な住民監査請求をしたといえ,その対象には平成20年3月24日分の費用弁償も含まれているから,被告の本案前の答弁は採用できない。 - 29 - 争点(2)(本件条例7条3項及び4項が法203条4項に違反し,当該規定に基づく本件費用弁償に違法な支出となる部分があるかどうか)について(1)法203条2項は,普通地方公共団体の議会の議員は,職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる旨規定しているところ,同規定の費用弁償とは,実費を弁償すべき性質のものであり,職務を行うために要した経費を償うため支給される金銭をいうものと解される。そして,費用弁償は,実費の弁償である以上,費用を要した都度,その実費を計算し,その弁償を受ける実額方式によるのがその趣旨に最も適合するものといえる。しかしながら,実額方式によると,事務が煩瑣となり,そのための経費を増大させることにもなりかねないので,それに代わる方式として,あらかじめその支給事由を定め,それに該当するときには るものといえる。しかしながら,実額方式によると,事務が煩瑣となり,そのための経費を増大させることにもなりかねないので,それに代わる方式として,あらかじめその支給事由を定め,それに該当するときには,実際に費消した額の多寡にかかわらず,標準的な実費である一定の額を支給することとする取扱いをすることも許されると解すべきであり,そして,この場合,いかなる事由を費用弁償の支給事由として定めるか,また,標準的な実費である一定の額をいくらとするかについては,費用弁償に関する条例を定める当該普通地方公共団体の議会の裁量判断にゆだねられていると解するのが相当であり(最高裁判所平成2年12月21日第二小法廷判決・民集44巻9号1706頁),当該議会に与えられた裁量権の範囲を超え又はそれを濫用したものであることを認めるに足りる事情がうかがわれない限り,上記裁量権の範囲内のものと解するのが相当というべきである。 (2)そこで,まず,費用弁償の対象となる事由としてどのような事由が認められるか,費用弁償の対象として挙げられる事由の中に,それを費用弁償の対象とすることが県議会に与えられた裁量権を逸脱又は濫用することになるものがないかを検討する。 ア交通費及び出席に伴う諸雑費について(ア)本件条例7条3項及び4項は,県議会議員が招集に応じて会議又は委- 30 -員会等に出席した場合の費用弁償について定めたものであり,同規定に基づく費用弁償は,議員が会議等に出席したときに支給されるものであるから,費用弁償の対象となるのは,議員が会議等の出席という職務を行うため要する費用であることが必要というべきところ,被告が本件費用弁償の対象として挙げている事由の中で,まず,交通費及び出席に伴う諸雑費(会議等に出席するために必要となる昼食代及び出席に伴うその 行うため要する費用であることが必要というべきところ,被告が本件費用弁償の対象として挙げている事由の中で,まず,交通費及び出席に伴う諸雑費(会議等に出席するために必要となる昼食代及び出席に伴うその他の諸雑費。)については,その内容からいって,議員が会議等に出席するという職務を行うため要する費用に当たるということができる。 (イ)この点,原告は,岩手県の,一般職の職員等の旅費に関する条例15条において,近距離で宿泊を要しないといえる場合について現地経費を支給しないと規定していることに照らし,招集地が居住地である議員については,費用弁償の対象となる経費は交通費のみである旨主張する。しかし,普通地方公共団体の議会の議員は,一般の職員とは異なり,招集があった場合に限り指定された日時及び場所に参集して議会活動を行うものであるから(法101条等参照),招集による議会又は議会の委員会の会議への出席を,一般の職員の近距離で宿泊を要しない出張と異なる扱いをすることが根拠のないこととはいえず,招集地が居住地である議員につき諸雑費を費用弁償の対象とすることが議会に与えられた裁量権を逸脱又は濫用するとまではいえないというべきである。 (ウ)また,原告は,国家公務員の場合に旅費法27条により在勤地内の旅行については原則として交通費等を含め一切の旅費は支給されないことになっているのに準じ,招集地が居住地である議員については,交通費も費用弁償の対象とすべきではない旨主張する。しかし,同条は,「在勤地内における旅行については,左の各号の一に該当する場- 31 -合において,当該各号に規定する額の旅費又は当該旅費を基準とする日額旅費に限り,支給する。」として,各号の一として「旅行が行程八キロメートル以上又は引き続き五時間以上にわたる場合には, - 31 -合において,当該各号に規定する額の旅費又は当該旅費を基準とする日額旅費に限り,支給する。」として,各号の一として「旅行が行程八キロメートル以上又は引き続き五時間以上にわたる場合には,別表第一の日当定額の二分の一以内において財務省令で定める基準に従い,各庁の長が定める額の日当」と規定しているのであって,同条においても,在勤地内における旅行について,旅費又は日額旅費を支給できる裁量権を各庁の長に付与しているのであって,一切の旅費を支給しないこととされているわけではない。また,上記現地経費の場合と同様に,普通地方公共団体の議会の議員における,招集による議会又は議会の委員会への出席を,国家公務員の在勤地内の旅行と異なる扱いをすることが根拠のないこととはいえないし,岩手県議会が所在する盛岡市の面積,交通事情等に鑑みれば,招集地が居住地である議員についても,バスや場合によってはタクシーを利用することにより交通費が生じ得るところであるから,招集地が居住地である議員につき交通費及び諸雑費を費用弁償の対象とすることが議会に与えられた裁量権を逸脱又は濫用するとまではいえないというべきである。 イ宿泊費について次に,宿泊費については,岩手県内の交通事情に鑑みれば,招集地から居住地までの距離が一定以上の議員においては,会議等に出席するために前泊ないし後泊する必要性が認められる場合があるというべきであり,そのような場合,宿泊費も,議員が会議等に出席するという職務を行うため要する費用に当たると認められる。 ウ個々の議案審議等のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用について(ア)さらに,被告は,県議会議員は,県議会に上程された議案を審議する等のために,審議等に必要な知識,情報を得ることを目的として 等のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用について(ア)さらに,被告は,県議会議員は,県議会に上程された議案を審議する等のために,審議等に必要な知識,情報を得ることを目的として,- 32 -関係者と面談したり,資料を収集したりするという諸活動を行い,その際,移動の費用,資料代,コピー代等がかかるところ,これらの費用を費用弁償の対象とすることは不合理ではないと主張し,個々の議案審議等のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用が費用弁償の対象に含まれる旨を主張する。 (イ)しかるところ,まず,個々の議案審議等のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用は,政務調査費に当たるという点に留意すべき必要がある。すなわち,政務調査費とは,地方公共団体の自己決定権や自己責任が拡大し,その議会の担う役割がますます重要なものとなってきていることに鑑み,地方議会の審議能力を強化し,地方議員の調査研究活動の基盤の充実を図るため,議会における会派又は議員に対する調査研究の費用等の助成を制度化する趣旨のもとに,法100条14項において,「普通地方公共団体は,条例の定めるところにより,その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,その議会における会派又は議員に対し,政務調査費を交付することができる。この場合において,当該政務調査費の交付の対象,額及び交付の方法は,条例で定めなければならない。」と規定され,この規定を受けて,岩手県においては,政務調査費交付条例を制定し,更に,岩手県議会は,「政務調査費の交付に関する規程」を制定し,同規定3条において,同条例7条の使途基準として,調査研究費(議員が行う県の事務及び地方財政に関する調査研究並びに調査委託に要する経費(調査委託費,交通費,宿泊費等)),研修費( る規程」を制定し,同規定3条において,同条例7条の使途基準として,調査研究費(議員が行う県の事務及び地方財政に関する調査研究並びに調査委託に要する経費(調査委託費,交通費,宿泊費等)),研修費(団体等が開催する研修会,講演会等への議員及び議員の雇用する秘書等の参加に要する経費(会費,交通費,宿泊費等)),会議費(議員が行う地域住民の県政に関する要望,意見を把握するための各種会議に要する経費(会場費,機材借上費,資料印刷費等)),資料作成費(議員が議- 33 -会活動に必要な資料を作成するために要する経費(印刷・製本代,原稿料等)),資料購入費(議員が行う調査研究のために必要な図書,資料等の購入又は借上げに要する費用(書籍購入代,新聞雑誌購読料等)),事務費(議員が行う調査研究に係る事務遂行に必要な経費(事務用品・備品購入費,通信費等))等が定められているから,岩手県においても,個々の議案審議等のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用は,政務調査費に属する費用とされている。 (ウ)そして,さらに法は,政務調査費について,その使途の透明性を確保する趣旨のもと,法100条15項において,「前項の政務調査費の交付を受けた会派又は議員は,条例の定めるところにより,当該政務調査費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとする。」と規定し,岩手県においては,政務調査費交付条例8条1項において,「議員は,交付を受けた年度の政務調査費に係る収支報告書(様式)に当該収支報告書に記載された政務調査費による支出に係る領収書その他の証拠書類の写しを添えて,当該年度の末日の翌日から起算して30日以内に議長に提出しなければならない。」と規定している。 (エ)一方,法203条2項の費用弁償については,上記のとおり,実費の弁償 書類の写しを添えて,当該年度の末日の翌日から起算して30日以内に議長に提出しなければならない。」と規定している。 (エ)一方,法203条2項の費用弁償については,上記のとおり,実費の弁償であり,実額方式によるのがその趣旨に最も適合するが,実額方式によると事務が煩雑となり,そのための経費を増大させることにもなりかねないことから,実際に費消した額の多寡にかかわらず標準的な実費である一定の額を支給する定額方式によることも,議会に与えられた裁量権の行使として許容されているのであり,本件条例7条もそのような趣旨から定額方式を採用しているものと位置づけることができる。 (オ)そうすると,個々の議案審議等のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用について,政務調査費でありながら,費用弁償の対- 34 -象として,その支出額を積算等することにより標準的な額を試算することもなく,定額方式により一定額の支出を許すことになれば,政務調査費の使途の透明性を確保する趣旨から「政務調査費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出する」ことを規定した法100条15項に抵触することにもなりかねず,また,同一項目の費用について重複して支給されるおそれを生じさせることにもなりかねないというべきである。 なお,被告が指摘する平成16年3月29日付事務連絡については,議会の開会中等に費用弁償が行われている場合には,議員の交通費,宿泊費,現地経費については,政務調査費から支出することができない旨が記載されているにすぎず,上記事務連絡は個々の議案審議等のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用と費用弁償との関係については何ら触れておらず,上記事務連絡の存在は,もとより上記費用を費用弁償として支出することを何ら正当化するものとはなら 審議等のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用と費用弁償との関係については何ら触れておらず,上記事務連絡の存在は,もとより上記費用を費用弁償として支出することを何ら正当化するものとはならないというべきである。 (カ)以上のとおりであるから,個々の議案審議等のため必要な情報や資料を収集,整理するための費用は,政務調査費として,法100条14項,15項,政務調査費交付条例等に基づいて支給されるべきであり,これを費用弁償の対象として定額方式により支給することは,明らかに不合理であり,県議会に与えられた裁量権を逸脱又は濫用するものとなるから許されないというべきである。 (3)定額の支給額及び支給方法(支給要件)について 以上によれば,費用弁償の対象となる事由としては,交通費,出席に伴う諸雑費及び宿泊費が認められるというべきところ,以下,本件条例7条3項及び4項が規定する定額の支給額及び支給方法(支給要件)において,県議会に与えられた裁量権を逸脱又は濫用する点がないかを順次検討する。 - 35 -ア本件条例7条3項について(ア)本件条例7条3項の費用弁償の対象となる費目は,交通費及び出席に伴う諸雑費であり,前記のとおり,同項は,本件別表4記載のとおり,招集地が居住地である議員に対する費用弁償額を8700円と規定し,招集地が居住地以外である議員に対する費用弁償額については,本件別表4記載のとおり,居住地から招集地までの距離に応じて,1万0600円,1万2400円,1万4300円,1万6100円及び1万8000円と規定している。 (イ)しかるところ,実費弁償であるという費用弁償の性質に照らせば,定額の支給額が費用弁償の対象となる事由の標準的な実費額と比較して明らかに過大であるときには,議会に 0円と規定している。 (イ)しかるところ,実費弁償であるという費用弁償の性質に照らせば,定額の支給額が費用弁償の対象となる事由の標準的な実費額と比較して明らかに過大であるときには,議会に与えられた裁量権を逸脱又は濫用するものというべきである。 (ウ)そこで,まず,招集地が居住地である議員に対する費用弁償額と招集地が居住地以外の議員に対する費用弁償額との各差額分については,それぞれの招集地と居住地との距離に応じ,車賃を1キロメートルにつき37円として計算した場合(一般職の職員等の旅費に関する条例7条1項)の額とほぼ同様の額となっていることは当事者間で争いがなく,これによれば,同差額分については,交通費の支給額として明らかに過大とはいえないというべきである。 (エ)次いで,招集地が居住地である議員に対する費用弁償額の8700円(招集地が居住地以外である議員についてみれば,招集地における交通費及び出席に伴う諸雑費分に対する費用弁償としての8700円。以下同じ。)について検討する。 aしかるところ,招集地が居住地である議員についての交通費及び出席に伴う諸雑費の標準的な実費額については,岩手県議会においてこれを具体的に積算等して算定したことを認めるに足りる証拠はない。 - 36 -b他方,旅費法6条6項においては,指定職の職務にある者の日当は1日につき3000円とされており(同法別表第1の1),この「日当」には,旅行中の昼食代及びこれに伴う諸雑費並びに目的地である地域内を巡回する場合の交通費等を含むと解されている。 cそうすると,招集地が居住地である議員についての交通費及び出席に伴う諸雑費の額は,概ね3000円の範囲内であれば,議会に与えられた裁量権を逸脱又は濫用したことにはなら と解されている。 cそうすると,招集地が居住地である議員についての交通費及び出席に伴う諸雑費の額は,概ね3000円の範囲内であれば,議会に与えられた裁量権を逸脱又は濫用したことにはならないというべきところ,上記8700円は,3000円の約3倍で明らかに過大な額といわざるを得ず,したがって,3000円を超えて8700円を支給することとしたのは,県議会に与えられた裁量権を逸脱又は濫用するものというべきである。 (オ)以上によれば,本件費用弁償のうち,岩手県が,本件条例7条3項に基づき各県議会議員に対し,会議等に出席した日1日につき5700円を支給した部分については,その支出は違法であり,被告において,本件費用弁償を受けた者に対し,上記支給部分を返還するよう請求すべきである。 イ本件条例7条4項について(ア)本件条例7条4項の費用弁償の対象となる費目は宿泊費であり,前記のとおり,同項においては,居住地から招集地までの距離が陸路75キロメートル以上の議員が出席した日の前日に招集地において宿泊した場合は当該前日につき日額1万6100円または1万8000円,出席した日に招集地において宿泊した場合でその翌日に旅行した場合は当該翌日につき日額8050円または9000円を支給すべきことが規定されている。 (イ)しかるところ,宿泊費は,もとより職務を行うために要する費用として支給されるものであるから,宿泊の事実があれば当然に支給され- 37 -るべきものではなく,会議の日程,開始(予定)時刻や終了(予定)時刻等により職務を行うために宿泊が必要であると認められる場合に限り支給されるべきものであるところ,本件条例7条4項は,こうした宿泊の必要性を審査する規定内容とはなっておらず,宿泊の必要性を間接的に 刻等により職務を行うために宿泊が必要であると認められる場合に限り支給されるべきものであるところ,本件条例7条4項は,こうした宿泊の必要性を審査する規定内容とはなっておらず,宿泊の必要性を間接的に推認させる事情等にすぎない,招集地から居住地までの距離や前泊か後泊かといった要素のみを考慮するものとなっている。したがって,かような支給方法(支給要件)を定めた同条例は,明らかに不合理であって,県議会に与えられた裁量権を逸脱又は濫用するものというほかない。 (ウ)そして,「旅行命令(依頼)票・旅費請求書(支出票)」(平成20年2月定例会に係る全議員分)(甲4の2)を精査しても,職務を行うために宿泊が必要であったかが審査された形跡が窺われないから,本件条例7条4項はその適用段階においても上記違法性が是正されているとは認められない。 (エ)以上によれば,本件費用弁償のうち,岩手県が,本件条例7条4項に基づき各県議会議員に対して支給した部分(宿泊費)については,その全額の支出が違法であり,被告において,その支給を受けた議員に対し,当該支給額を返還するよう請求すべきである。 ウなお,被告は,本件条例7条3項及び4項に定められた費用弁償額は,他の都道府県と比較して平均的な範囲内にとどまるから,本件条例7条3項及び4項は裁量の範囲内のものであると主張する。 しかし,前記のとおり,実費弁償であるという費用弁償の性質に照らせば,定額の支給額が県議会に与えられた裁量権を逸脱又は濫用するものに当たるかどうかは,同支給額が費用弁償の対象となる事由の標準的な実費額と比較して明らかに過大といえるかどうかによって決するべきである。 したがって,定額の支給額が他の都道府県の費用弁償額と比較して平均- 38 -的な額であるとい となる事由の標準的な実費額と比較して明らかに過大といえるかどうかによって決するべきである。 したがって,定額の支給額が他の都道府県の費用弁償額と比較して平均- 38 -的な額であるということを指摘するのみでは,本件条例7条3項及び4項に基づく支給額が標準的な実費額として相当な額であることを基礎付けることはできず,被告の上記主張は採用することができない。 争点(3)(平成20年3月24日分の費用弁償の支出の違法性)について証拠(甲3)及び弁論の全趣旨によれば,岩手県議会においては,平成20年3月24日に,本会議で常任委員会に付託された議案について同委員会において審議を行う予定であったことを受けて,同県議会を,委員会審議のための休会日とする予定であったこと,しかるに,常任委員会において,同年3月21日には予定の審議が終了するに至ったため,同月24日の常任委員会は開催されないことが決まり,同日の同委員会は開催されなかったことが認められる。 これらによれば,同月24日については,本件条例7条3項の「会議又は委員会等に出席したとき」には当たらないというべきで,同日分の費用弁償の支給は違法というべきである。 被告は,既に付託された議案の審査が終了したため委員会が開催されない日であっても,議員の活動が休止し,その職務が行われなくなるものではなく,議員の活動は議会への出席と同視できるとして,平成20年3月24日は本件条例7条3項の「議案調査等に従事した日」に該当する旨主張する。 しかし,本件条例7条3項が「県議会の議員が招集に応じて会議又は委員会等に出席したとき」,「当該出席した日(議案調査等に従事した日を含む)」と規定していることに照らせば,本会議の「議案調査等に従事した日」は,予めその趣旨のための日程が確保されているなどの事情が存し, 等に出席したとき」,「当該出席した日(議案調査等に従事した日を含む)」と規定していることに照らせば,本会議の「議案調査等に従事した日」は,予めその趣旨のための日程が確保されているなどの事情が存し,議員が「招集に応じて」職務を行った場合と同視できる日でなければならないと解するのが相当であるところ,上記のとおり,常任委員会において,平成20年3月21日には予定の審議が終了するに至ったため,同月24日の常任委員会は開催されないことが決まり,同日の同委員会は不開催となるに至ったというのである。 このような本件の経過に照らすと,仮に議員が急遽不開催となった同日の日程- 39 -を活かし,事実上,議案調査等のための活動を行っていたとしても,本件において,予めその趣旨のための日程が確保されていたなどの事情が認められないことに変わりはなく,「招集に応じて」職務を行った場合と同視できる日とはいえないというほかない。 以上によれば,被告の上記主張は採用することができない。 第4結語よって,原告の請求のうち,岩手県が,本件条例7条3項に基づき各県議会議員に対して会議等に出席した日1日につき5700円を支給した部分(平成20年3月24日を除く。),本件条例7条4項に基づき支給した部分,及び平成20年3月24日分として支給した部分については理由があるからこれを認容することとし,その余の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条本文を適用して,主文のとおり判決する。 盛岡地方裁判所第2民事部裁判長裁判官田中寿生 裁判官田中孝一 裁判官鈴木恵子 中寿生 裁判官 田中孝一 裁判官 鈴木恵子

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