昭和26(う)323 窃盗麻薬取締法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和27年7月17日 大阪高等裁判所 破棄自判
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人を懲役壱年六月に処する。      但し本裁判確定の日から五年間右刑の執行を猶予する。          理    由  本件控訴の趣意は、

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判決文本文3,248 文字)

主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役壱年六月に処する。 但し本裁判確定の日から五年間右刑の執行を猶予する。 理由 本件控訴の趣意は、本判決書末尾添附検察官藤田太郎作成の控訴趣意書と題する書面記載のとおりである。 控訴趣意第一点について。 検察官の主張は要するに、原判決が判示第一の窃盗の事実を認定するにあたり、証拠として当然援用すべき検察官事務取扱検察事務官A作成の被告人第一回供述調書を援用しないで、被告人の犯行であることの記載のない証拠を援用したのは、虚無の証拠を以て事実を認定したものであつて、原判決には理由不備又は理由にくいちがいの違法があると言うのであるが検察官から起訴状記載の公訴事実を肯認した原判決に対し、右のような理由を以て控訴の申立をすることができるかどうかという点について、弁護人はかような控訴申立は不適法である、と主張するのである。 よつて案ずるに検察庁法第四条によれば、検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ裁判の執行を監督する等の権限を有するのであつて、検察官は原告官ではあるが、公益の代表者として被告人の利益のためにも上訴することができると解され、また有罪の言渡を受けた者の利益のために再審の請求をすることができる旨規定されておるのもこの故であるが、更に進んで原判決に刑事訴訟法第三百七十七条ないし第三百八十三条に規定する事由があるとまは、訴訟当事者の利益不利益にかかわらす控訴裁判所に対し法の正当な適用を請求するため、控訴の申立をすることができると解すべきである。判決確定後において検事総長が審判の法令違反を是正するため非常上告を為し得るのもこれと同一の精神であつて、被告人の上訴とはその性質を異にしその控訴理由を制限すべき根拠は とができると解すべきである。判決確定後において検事総長が審判の法令違反を是正するため非常上告を為し得るのもこれと同一の精神であつて、被告人の上訴とはその性質を異にしその控訴理由を制限すべき根拠はどこにもないの<要旨>である。従つて原判決の証拠説明に理由を附せず又は理由にくいちがいがあるとき、たとえ原判決の事実認定</要旨>が起訴状記載のとおりであつても、検察官は、刑事訴訟法第三百五十一条第一項、第三百七十八条第四号により、前記の事由があることを理由として控訴の申立をすることができると言わなければならない。 原判決は、罪となるべき事実として、昭和二十六年四月十日附窃盗の起訴状及び同年二月十日附麻薬取締法違反の起訴状を引用しておるが、その窃盗というのは、被告人がB、Cと共謀して昭和二十六年二月二日大阪市a区b町c丁目d番地D方においてE所有の自転車一台を窃取したというのであつて、原判決は右両事実の証拠説明として「被告人の当公廷での供述、被害者の盗難被害届書、被告人の司法警察員に対する各供述調書、警視庁技手Fの理化学鑑識復命書、捜索差押調書」を援用しておる。しかし、被告人の原審公判廷における供述は窃盗事実の否認であり、被害者の盗難被害届書には被告人の犯行であることの記載がなく、記録中被告人の司法警察員に対する供述調書は三通あるが、そのうち司法警察員Gに対する昭和二十五年十月九日附第二回供述調書は窃盗事実に関係がなく司法警察員Hに対する昭和二十六年二月二十三日附供述調書には中古自転車一台を窃取した旨の記載はあるが、判示窃盗事実の記載ではなく、司法警察員Iに対する昭和二十六年三月十三日附第一回供述調書には、被告人が昭和二十六年一月二十一日B、Cと相談して大阪市e区f町g丁目h番地J方前で中古二輪自転車一台を窃取して売却したのを始めとし、司法 察員Iに対する昭和二十六年三月十三日附第一回供述調書には、被告人が昭和二十六年一月二十一日B、Cと相談して大阪市e区f町g丁目h番地J方前で中古二輪自転車一台を窃取して売却したのを始めとし、司法巡査K作成の犯罪一覧表のとおり同年二月五日までの間に七回にわたり自転車その他七点をC、B等と一緒に盗んだ旨の記載はあるが、公判廷において検察官は右引用の一覧表の取調を請求しなかつたので、右の供述調書は結局原判示窃盗事実の証拠となり得ないものであり、原判決の挙示するその他の証拠は、いずれも右窃盗事実とは関係のないものである。然らば記録上原判示窃盗事実認定の証拠は全くないかというに、「大阪地方検察庁検察官事務取扱検察事務官A作成名義の昭和二十六年四月九日附被告人の第一回供述調書には、被告人がC、Bとb町を通行中、被告人とBとが見張を為し、Cが自転車一台を窃取したが、その他は被告人が売却の世話をしただけで盗んだのではない旨の供述記載があり、同書面は検察官から「検察事務官に対する第一回供述調書」として取調を請求し、弁護人においてその取調請求に異議なく且つ証拠とすることに同意し、原裁判所はその任意性を確めた上で証拠として採用しておることが記録上明らかである。しかして、右書面作成者の資格について、検察事務官が地方検察庁において検察官の事務を取扱う権限はないからその点において違法ではあるが、大阪地方検察庁検察事務官作成の供述調書として証拠能力を有すると解することができるから、被告人側の同意により右の書面を証拠に援用し、これに前記の被害届書その他の補強証拠を取れば原判示事実を認定し得るのであるが、原判決がそうしないで判示事実に関する記載のないいわゆる虚無の証拠を採つて判示窃盗の事実を認定したのは、証拠理由を附せないものと言うべきである。論旨は理由あり、原判決 示事実を認定し得るのであるが、原判決がそうしないで判示事実に関する記載のないいわゆる虚無の証拠を採つて判示窃盗の事実を認定したのは、証拠理由を附せないものと言うべきである。論旨は理由あり、原判決は破棄を免れない。 よつて量刑不当の控訴趣意に対する判断はこれを省略し、刑事訴訟法第三百九十七条、第三百七十八条第四号に従つて原判決を破棄し、同法第四百条但書によつて更に判決をする。 罪となるべき事実昭和二十六年四月十日附及び同年二月十日附各起訴状記載の公訴事実のとおり、証拠の標目一、 原審第一回公判調書中被告人の供述記載(但し窃盗の事実を否認する部分を除く)二、 更に判示窃盗の点につき、E作成の盗難被害届書の記載、被告人の検察事務官Aに対する第一回供述調書の記載、三、 麻薬取締法違反の点につき、被告人の司法巡査L、司法警察員G、司法巡査Mに対する各供述調書の記載、被告人の検察官大坪貞五郎に対する供述調書の記載、司法巡査作成の差押調書、司法巡査作成の捜索差押調書の各記載、大阪警視庁技手F作成の理化学鑑識結果復命書の記載を綜合して判示事実を認める。 法令の適用被告人の判示行為中窃盗の点は刑法第二百三十五条、第六十条に、麻薬所持の点は、麻薬取締法第三条第一項、第五十七条第一項に当るところ、後者につき罰金等臨時措置法第二条、第四条を適用した上懲役刑を選択し、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条、第十条により、重い窃盗罪の刑に法定の加重をして被告人を主文の刑に処し、本件犯行の動機、態様、犯罪後の情況本件の麻薬は自分が施用する目的で買入れたものであつて転売の目的ではなかつたことその後麻薬中毒症状の認められないこと、その他諸般の事情を考慮すると、この際被告人に懲役の実刑を科するよりも、その執行を 件の麻薬は自分が施用する目的で買入れたものであつて転売の目的ではなかつたことその後麻薬中毒症状の認められないこと、その他諸般の事情を考慮すると、この際被告人に懲役の実刑を科するよりも、その執行を猶予し、今後を戒めるに止めた方が刑政上妥当であると思われるので、刑法第二十五条により右刑の執行を猶予する。 (裁判長判事瀬谷信義判事山崎薫判事西尾貢一)

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