- 1 -主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告が原告に対して平成16年2月2日付けでした,別紙物件目録記載の建物の新増設に係る事業所税についての更正の請求には更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。 第2事案の概要本件は,平成15年4月1日前に新築された事業所用家屋に対しては新増設に係る事業所税が課されるところ(平成15年法律第9号改正附則17条2項),別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)を新築した原告が,被告に対し,本件建物が新築されたのは同日前ではなく,本件建物に対しては新増設に係る事業所税が課されないとして,更正の請求をしたにもかかわらず,被告が,原告に対し,本件建物が新築されたのは同日前であるとして更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件処分」をした。)をしたことから,原告が,被告に対し,本件処分の取消しを求める事案である。 関係法令等の定め( )平成15年法律第9号による改正前の地方税法(以下「旧地方税法」とい う。)ア701条の30指定都市等は、都市環境の整備及び改善に関する事業に要する費用に充- 2 -てるため、事業所税を課するものとする。 イ701条の31第1項事業所税について、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 1から5まで(略) 新増設事業所床面積新築又は増築(家屋(第341条第3号の家屋をいう。以下本節において同じ。)の床面積を増加することをいう。 以下本節において同じ。)に係る事業所用家屋の床面積として政令で定める床面積をいう。 事業所用家屋家屋の全部又は一部で人の居住の用に供するもの以外のもの(事業所等において行う事業に対して課する事業所税にあつ 同じ。)に係る事業所用家屋の床面積として政令で定める床面積をいう。 事業所用家屋家屋の全部又は一部で人の居住の用に供するもの以外のもの(事業所等において行う事業に対して課する事業所税にあつては、当該家屋の全部又は一部で現に事業所等の用に供するもの)をいう。 建築主家屋に関する工事の請負契約の注文者又は請負契約によらないで自らその工事をする者をいう。 9から10まで(略)ウ701条の32(ア)1項事業所税は、事業所等において法人若しくは個人の行う事業又は事業所用家屋の新築若しくは増築に対し、当該事業所等又は事業所用家屋所在の指定都市等において、当該事業を行う者又は当該事業所用家屋の建築主に課する。この場合において、事業所等において法人又は個人の行- 3 -う事業に対して課する事業所税(以下本節において「事業に係る事業所税」という。)は、資産割額及び従業者割額の合算額によつて課する。 (イ)2項事業所用家屋の増築(次項の規定によつて新築とみなされるものを含む。以下本項及び第701条の43第3項において同じ。)があり、当該増築について同項後段の規定の適用がある場合において、当該増築に係る新増設事業所床面積(第701条の34の規定中事業所用家屋の新築又は増築に対して課する事業所税(以下本節において「新増設に係る事業所税」という。)に関する部分の規定の適用を受けるものを除く。 以下本項において同じ。)と当該増築をした日前2年以内に行われた当該増築をした者が建築主である当該事業所用家屋についての新築又は増築(以下本項において「前の新増築」という。)に係る新増設事業所床面積との合計面積が2千平方メートルを超えることとなるときは、当該増築がされた日において当該前の新増築(既に第701条の48の規定により新増設に係る事業所税 の新増築」という。)に係る新増設事業所床面積との合計面積が2千平方メートルを超えることとなるときは、当該増築がされた日において当該前の新増築(既に第701条の48の規定により新増設に係る事業所税を申告納付した、又は申告納付すべきであつたものを除く。)がされたものとみなして、本節中新増設に係る事業所税に関する規定を適用する。 エ701条の40第3項新増設に係る事業所税の課税標準は、新増設事業所床面積とする。 オ701条の42第2項新増設に係る事業所税の税率は、1平方メートルにつき6千円とする。 カ701条の48- 4 -事業所用家屋の新築又は増築をした建築主は、当該新築又は増築をした日から2月以内に、新増設に係る事業所税の課税標準となるべき新増設事業所床面積及び税額その他必要な事項を記載した総務省令で定める様式による申告書を当該事業所用家屋所在の指定都市等の長に提出するとともに、その申告した税額を当該指定都市等に納付しなければならない。 ( )平成15年法律第9号は,平成15年法律第9号による改正前の地方税法 709条の31第1項6号から8号まで,701条の32第1項及び第2項,701条の40第3項並びに701条の42第2項を全部改正し,同法701条の48を削除した。これによって,平成15年法律第9号の施行後は,新増設に係る事業所税が課されなくなった。 ( )平成15年法律第9号改正附則(以下「本件附則」という。) ア1条この法律は、平成15年4月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。…(以下略)…イ17条2項施行日前に行われた事業所用家屋(旧法第701条の31第1項第7号に規定する事業所用家屋をいう。)の新築又は増築に対して課する新増設に係る事業所税(旧法第701条 る。…(以下略)…イ17条2項施行日前に行われた事業所用家屋(旧法第701条の31第1項第7号に規定する事業所用家屋をいう。)の新築又は増築に対して課する新増設に係る事業所税(旧法第701条の32第2項に規定する新増設に係る事業所税をいう。)については、なお従前の例による。 ( )東京都税条例(昭和25年東京都条例第56号)は,188条の12から 188条の25までにおいて事業所税について定めており,平成15年法律第9号による改正前の地方税法701条の30,701条の32第1項及び- 5 -第2項,701条の40第3項,701条の42第2項並びに701条の48に相当する規定が置かれていたが,平成15年東京都条例第98号により,同法701条の32第1項及び第2項,701条の40第3項並びに701条の42第2項に相当する規定は全部改正され,同法701条の48に相当する規定は削除された。平成15年東京都条例第98号は,平成15年4月1日から施行された。 前提事実本件の前提となる事実は,次のとおりである。証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実等は,その旨付記した。その余の事実は,当事者間に争いがない。 ( )原告は,石炭,石油,ガスその他燃料類及びこれらの製品等の売買及び貿 易業等を目的とする会社である。 ( )本件建物の建築に係る請負契約は,次のとおりである(以下,これらの請 負契約を併せて「本件各請負契約」という。)。 ア原告は,a・b・c・d共同企業体(以下「a等共同企業体」という。)との間で,平成12年11月27日,「(仮称)e・f品川新オフィスビル新築工事」に係る請負契約を締結した。 イ原告及びg株式会社(以下「g」という。)は,a等共同企業体及びh・i・j・b・k・l・c共同企業体(以下「 11月27日,「(仮称)e・f品川新オフィスビル新築工事」に係る請負契約を締結した。 イ原告及びg株式会社(以下「g」という。)は,a等共同企業体及びh・i・j・b・k・l・c共同企業体(以下「h等共同企業体」という。)との間で,平成12年11月27日,「(仮称)e・f/g品川ビル(地下共用部分)新築工事」に係る請負契約を締結した。 ウgは,h等共同企業体との間で,平成13年1月26日,「(仮称)g- 6 -品川本社ビル第1期工事(地下専有部)新築工事」に係る請負契約を締結した。 エgは,h株式会社(以下「h」という。)との間で,平成13年7月30日,「(仮称)g品川本社ビル第2期工事(地上部分)新築工事」に係る請負契約を締結した。 オ前記アからエまでの請負契約によって建築された建物が本件建物であった。 ( )ア原告は,東京都建築主事に対し,平成15年2月12日,建築基準法7 条1項に基づき,本件建物について検査の申請をした。 イ東京都建築主事は,平成15年2月21日及び同年3月11日,建築基準法7条4項に基づき,本件建物の検査をした。なお,同年2月21日に行われた検査は,本件建物に係る検査であり,同年3月11日に行われた検査は,建築基準法86条2項の認定に係る検査であった。(乙3,6)ウ東京都建築主事は,原告及びgに対し,平成15年3月28日,建築基準法7条5項に基づき,本件建物についての検査済証(以下「本件検査済証」という。)を交付した。 ( )原告及びgは,被告に対し,平成15年5月12日,本件建物の新増設に 係る事業所税につき,課税標準となる新増設事業所床面積を18万1069. 32平方メートル,新増設に係る事業所税額を10億8641万5900円,徴収猶予に係る徴収金2億9878万2100円,納付すべき新増設 業所税につき,課税標準となる新増設事業所床面積を18万1069. 32平方メートル,新増設に係る事業所税額を10億8641万5900円,徴収猶予に係る徴収金2億9878万2100円,納付すべき新増設に係る事業所税額を7億8763万3800円とする新増設に係る事業所税の納付申告書を提出し,また,原告は,被告に対し,同日,免除の対象となる新増- 7 -設に係る事業所税額を2億9878万2100円とする徴収猶予申告書を提出した。(甲3,4)( )原告は,被告に対し,平成15年9月25日,本件建物の新増設に係る事 業所税につき,課税標準を18万1069.32平方メートルから5万3991.02平方メートルとし,税額を7億8763万3800円から3億2394万6100円とする内容の事業所税更正請求書を提出した。(甲5)( )原告は,被告に対し,平成15年12月25日,本件建物の新増設に係る 事業所税につき,課税標準を18万1069.32平方メートルから0平方メートルとし,税額を10億8641万5900円から0円とする内容の事業所税更正請求書を提出した(以下,当該更正の請求を「本件更正請求」という。)。(甲6)( )被告は,原告に対し,平成16年2月2日付けで本件更正請求には更正を すべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。 ( )原告は,東京都知事に対し,平成16年4月2日,本件通知処分につき審 査請求をしたところ,東京都知事は,同年11月24日付けで,当該審査請求を棄却する旨の裁決をした。 ( )原告は,平成17年2月24日,本件訴えを提起した。(当裁判所に顕著 な事実)()「地方税の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)」(昭和29 年自乙市発第22号自治庁次長通達。以下「本件通達 成17年2月24日,本件訴えを提起した。(当裁判所に顕著 な事実)()「地方税の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)」(昭和29 年自乙市発第22号自治庁次長通達。以下「本件通達」という。)第9章3( )アの内容は,以下のとおりである。 事業所用家屋の新築又は増築をした建築主は、当該新築又は増築をした日- 8 -から2月以内に、新増設に係る事業所税を申告納付しなければならないこととされているのであるが、この場合において新築又は増築をした日とは、事実上家屋の新築又は増築が完了した日をいうものであり、新築又は増築をされたものであるかどうかの判定は一般社会通念によるものであるが、次の事項に留意すること。(法701の48)(ア)一般的には、その家屋について当初の新築計画又は増築計画に基づいてその新築又は増築が完了した場合をいうものであること。 (イ)その判定が困難な場合は、建築基準法の適用がある家屋については、同法による竣工認可を受け得る程度であるかどうかで認定することもできるが、一般的には主要構造部についておおむね工事を終了し、最低限度の附帯設備の取付けを終わり、家屋として使用し得る状態になったときをいうものであること。 …(以下略)… 争点 本件建物は平成15年4月1日前に「新築」(平成15年法律第9号改正附則17条2項)されたものか。 当事者の主張の要旨(被告の主張)( )事業所税は,都市において事業活動を営む事務所又は事業所が都市の行政 サービスを享受する一方,これらの事務所又は事業所の立地が都市環境の整備のための行財政需要の増加をもたらしていることから,都市の行政サービスとそこに所在する事務所又は事業所との受益関係に着目し,都市的な各種- 9 -の行財政需要に係る経費をこれらの事務所又は事 整備のための行財政需要の増加をもたらしていることから,都市の行政サービスとそこに所在する事務所又は事業所との受益関係に着目し,都市的な各種- 9 -の行財政需要に係る経費をこれらの事務所又は事業所に特別に求めることを目的として創設されたものである。 そして,事業所税のうち,事業所用家屋の新増設に係る事業所税は,事業所用家屋の新増設によってもたらされるであろう都市の行財政需要の拡大に対処して都市環境の整備又は改善に要する費用に充てるために創設された目的税であるが,同時に,行財政需要そのものを数量化して課税の対象とすることは困難であることから,その原因となる事業所用家屋の新増設という事実に着目して,原因者である建築主に対して新増築ごとに新増築に係る事業所用家屋の床面積を課税標準として課税関係を発生させるものであって,例えば,納税義務者は赤字決算であってもその義務を免除されないなど納税者間の形式的平等が図られ,法治主義が厳格に妥当すべき租税制度の中でも外形標準的な性格が特に強いものである。 このように,事業所税は,新増設に係る行財政需要の拡大に対処するという目的で,事業所用家屋の新増築という事実に着目してその使用者ではなく建築主に課税されるものであり,当該家屋が事業所として現にどのように使用されているか,現に収益を上げているかといった点に着目して課税されるものではないことにかんがみると,事業所税における課税対象となる時期とは,所有者が当該家屋を財産として完全に使用し得る状態になったことまでを要するものではなく,一般社会通念上,客観的に見て「家屋として使用し得る状態」になった時であると解するのが相当である。 こうした点から,事業所税における「新築」とは,事実上家屋の新築が完了したことをいうものであり,一般的には,その家屋について当初の建築 として使用し得る状態」になった時であると解するのが相当である。 こうした点から,事業所税における「新築」とは,事実上家屋の新築が完了したことをいうものであり,一般的には,その家屋について当初の建築計- 10 -画又は増築計画に基づいてその新築又は増築が完了した場合をいうものであり,その判定が困難な場合は,主要構造部についておおむね工事を終了し,最低限度の附帯設備の取付けを終わり,「家屋として使用し得る状態」になった時をいうものである。 ( )完了検査は,建築基準法6条1項の規定に基づく建築確認を受けた建築物 の工事が完了した後に,建築主の申請によって,建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合しているかどうかについて行われるものであるから,建築主が検査を申請するということは,建築主が当該建築物について,これらの建築基準関係規定にのっとった工事が完了したと認識していたことを意味する。したがって,完了検査を申請した時点において,建築主の認識においては「家屋の新築が完了していた状態」であるといい得るものである。 東京都は,客観性を担保するために,建築物が申請を受けて実施される完了検査により建築基準関係規定に適合する状態であることが確認された時点をもって,事業所税における「新築の日」としてきたところである。そして,検査済証に記載された「完了検査の日」は,建築基準関係規定に適合する状態であることが検査員によって確認された日である。 建築基準法は,国民の生命,健康及び財産の保護を図るという目的で,安全上,防火上,避難上等の観点から,建築物が最低限備えるべき基準を定めたものであるから,これら建築基準関係規定に適合した状態であると確認された場合には,当該建築物は,建築物として通常備えるべき基準を満たし「社会通念上,客観的にみて家屋として使用し得 るべき基準を定めたものであるから,これら建築基準関係規定に適合した状態であると確認された場合には,当該建築物は,建築物として通常備えるべき基準を満たし「社会通念上,客観的にみて家屋として使用し得る状態」になったと評価できる。また,建築基準法上,検査済証の交付を受ければ,建築物の使用が許- 11 -されることからすれば,検査済証の交付を受け得る状態を確認した日である完了検査の日をもって「新築の日」とするのは合理的である。 仮に,本件建物に建築基準法上軽微な瑕疵が存したとしても,建物全体の状態からみて「社会通念上,客観的にみて家屋として使用し得る状態」と判断することは,検査済証の交付を基にしている課税実務と矛盾するものではない。 ( )原告は,本件各請負契約に基づき本件建物がしゅん工したことから,平成 15年2月12日に建築基準法7条1項に基づく完了検査の申請を行い,これを受けて,東京都建築主事は,同月21日及び同年3月11日に完了検査を実施し,同月28日に原告及びgに対し検査済証を交付しているのであるから,本件建物は,同年4月1日より前である同年3月11日には新築されたものというべきである。 また,本件建物は,検査済証が交付された平成15年3月28日には,事実上のみならず法的にも使用可能な状態となったのであるから,遅くとも同日には新築されたというべきである。 (原告の主張)( )事業所税は,都市環境の整備及び改善に関する費用に充てるため,特定の 都市の目的税として,昭和50年に創設されたものである。事業所税は,都市において事業活動を営む事務所又は事業所が都市の行政サービスを享受する一方,これらの事務所又は事業所の立地が都市環境の整備のための財政需要の増加をもたらしていることから,都市の行政サービスとそこに所在する事務所又は 営む事務所又は事業所が都市の行政サービスを享受する一方,これらの事務所又は事業所の立地が都市環境の整備のための財政需要の増加をもたらしていることから,都市の行政サービスとそこに所在する事務所又は事業所との受益関係に着目し,都市的な各種の行政需要に係る経- 12 -費を,これらの事務所又は事業所に特別に求めるものである。 上記事業所税の制度趣旨からすれば,建築主は,当該事業所用家屋が事業所として使用し得る状態に至って初めて都市の行政サービスを享受することができ,都市の行政サービスとの受益関係が生ずるのであり,当該事業用家屋が事業所として使用し得る状態に至っていない場合には,都市の行政サービスとの受益関係を観念し得ない。 本件建物は,平成15年3月31日時点では引渡しすらされていなかったのであるから,原告は,同日時点では本件建物について何らの行政サービスをも受けられる状態にはなく,したがって,受益関係は全く生じていなかった。 ( )ア旧地方税法701条の48は,新増設に係る事業所税の申告納付につい ては,当該新築又は増築をした日から2月以内に申告書を提出するとともに,その申告した税額を納付しなければならない旨規定しているところ,この「新築又は増築をした日」とは,原則として,事業所用家屋の新築又は増築が事実上完了し,当該事業所用家屋が事業所として使用し得る状態に至った日をいうものと解されている。 かかる「新築をした日」の意義からすれば,新増築に係る事業所税における「新築」とは,当該事業所用家屋が事業所として使用し得るに至った状態を意味するものと解される。 イ固定資産税の課税客体となるのは,新築の家屋の場合,一連の新築工事が完了した時であると解されるところ,この一連の新築工事とは,単に工事完了検査を経ただけでは足りず,注文主が使用開始 と解される。 イ固定資産税の課税客体となるのは,新築の家屋の場合,一連の新築工事が完了した時であると解されるところ,この一連の新築工事とは,単に工事完了検査を経ただけでは足りず,注文主が使用開始等に至るまでの工事- 13 -の完了を要するものと解されている。 また,不動産取得税は,不動産の取得を対象として課される都道府県税であり,その課税物件は,不動産所有権の取得という法律効果であるところ,地方税法73条の2第2項は,家屋が新築された場合においては,当該家屋について最初の使用又は譲渡が行われた日において家屋の取得がなされたものとみなし,当該家屋の所有者又は譲受人を取得者とみなして,これに対して不動産取得税を課するが,家屋が新築された日から6月を経過して,なお,当該家屋について最初の使用又は譲渡が行われない場合においては,当該家屋が新築された日から6月を経過した日において家屋の取得がされたものとみなし,当該家屋の所有者を取得者とみなして,これに対して不動産取得税を課す旨規定している。そして,この「家屋が新築された場合」といい得るためには,家屋が新築され本来の用法に従った使用が可能な程度に完成していることが必要であると解されている。 以上のように,固定資産税及び不動産取得税においては,建物の「新築」の時期は,当該建物が本来の用途に応じて使用し得るに至った時であると解されている。 固定資産税は,家屋等の資産価値に着目し,その所有という事実に担税力を認めて課する一種の財産税であり,不動産取得税は,財産の移転又は流通という事実に基づき,財産の取得者に租税負担の能力があるとして課税が行われる流通税の一種である。このような両税の性質からすると,財産の移転又は流通という事実に担税力を認める流通税たる不動産取得税における建物の「新築」の時期は,資 に租税負担の能力があるとして課税が行われる流通税の一種である。このような両税の性質からすると,財産の移転又は流通という事実に担税力を認める流通税たる不動産取得税における建物の「新築」の時期は,資産の所有という事実自体に担税力を認- 14 -める財産税たる固定資産税における建物の「新築」の時期よりも遅くなることはあっても,早くなることはない。 一方,新増設に係る事業所税は,財産税たる性質とともに,事務所又は事業所用の建築物の建築に対して課税する流通課税としての性質をも持つ税であり,そうであれば,事業所税においても,不動産取得税と同様に,建物が「新築」されたといい得るためには,本来の用法に従った使用が可能な程度に完成していることが必要であり,工事中の建物はたとえ一般的には建物といい得る状態に達していたとしても,事業所税の課税対象とはなり得ないものというべきである。 また,新増設にかかる事業所税は,事務所又は事業所用の建築物の建築に対して課税する流通税としての性格を持つ税であり,不動産取得税における性格と同様であるところ,事業所税と不動産取得税の課税時期を比較すると,事業所において事業を行うことを前提に課される事業所税は,不動産の取得に対して課される不動産取得税よりも,その課税時期は後れることとなる。よって,原告に対する事業所税の課税時期は,被告が不動産取得税について基準日とした平成15年4月1日よりも後になるはずである。そして,被告が同日になって初めて本件建物の不動産取得税の課税を行い得たということは,同年3月31日の時点では,本件建物が不動産取得税の課税客体にすらなっていなかったことを示している。 ( )ア事業所税における家屋とは,固定資産税における家屋をいい,固定資産 税の課税客体となる家屋とは,不動産登記法上の建物と同義であ 産取得税の課税客体にすらなっていなかったことを示している。 ( )ア事業所税における家屋とは,固定資産税における家屋をいい,固定資産 税の課税客体となる家屋とは,不動産登記法上の建物と同義である。そして,不動産登記法上の建物とは,屋根及び周壁又はこれに類するものを有- 15 -し,土地に定着した建物であって,その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいうとされている。 したがって,事業所税における家屋といい得るためには,当該建物がその用途に供し得る状態になければならず,かかる状態に至ったか否かを判断するためには,必然的に当該建物の使用目的を考慮せざるを得ない。 また,事業所税の課税根拠が都市の行政サービスとの受益関係から生じるものであるとすれば,当該建物が特定の用途に供し得る状態に至ることが課税の最低限の要件となるはずである。 イ(ア)本件建物は,オフィスビルとして使用することを目的として建築されている。したがって,本件建物の「新築」を判断するに当たっては,本件建物がオフィスビルとして使用し得る程度に完成していたか否かによって判断されなければならないところ,平成15年3月31日時点の本件建物は,オフィスビルとして使用することは全く不可能な状態であった。 (イ)平成15年3月31日時点では,本件建物の建築工事においては,多数の未完成工事が存在していた。そのため,a等共同企業体作業所長名義の未完成工事の存在を確認した念書が提出されており,当該工事の内容は,床工事,内壁工事,天井工事などであり,同日時点において,本件建物は,オフィスビルとしては到底使用不可能な状態であった。 特に,本件建物の6階は,仮設事務所としてその前日まで稼働していたため,壁工事,床工事及び天井工事の内装工事が未完成であったことから,同年5月23日まで内装工 としては到底使用不可能な状態であった。 特に,本件建物の6階は,仮設事務所としてその前日まで稼働していたため,壁工事,床工事及び天井工事の内装工事が未完成であったことから,同年5月23日まで内装工事がされ,同月26日にようやく引き- 16 -渡された。 (ウ)本件建物の敷地は既存の道路には接していないところ,本件建物敷地の西側に新たに建設されていた道路は,平成15年3月31日時点ではいまだ使用不能の状態にあり,同年4月1日になって初めて供用が開始された。 また,JR東日本β駅及び外部の歩道と本件建物とをつなぐ歩行者専用通路及び外部避難通路も,同日になって初めて通行可能な状態となった。 したがって,同年3月31日時点では,本件建物には,自動車でアクセスできないだけでなく,β駅や外部の歩道を通じて立ち入ることもできない状況にあったのであり,工事関係者以外の者が本件建物を利用することは客観的に不可能な状態にあった。 (エ)本件建物を含むβ駅東口再開発地域全体に冷暖房用熱エネルギーの供給を行う施設である地域冷暖房施設は,平成15年3月31日時点では稼動しておらず,同年4月1日から稼動を開始した。 オフィスビルとして本件建物を使用する場合,空調設備が稼動することは必要不可欠の条件であるが,本件建物はかかる条件すら満たしていなかった。特に,本件建物は,窓を開閉できない構造となっており,空調設備が稼動しない場合には温度調節が不可能なものである。 ( )ア本件通達は,新築とはその家屋について当初の新築計画に基づいてその 新築が完了した場合をいう旨規定しているところ,本件建物については,平成15年4月1日の時点において,未完成工事が多数残っていたのであ- 17 -るから,この基準によっても新築ということはできない。 イ本件通達は,新築の判定 しているところ,本件建物については,平成15年4月1日の時点において,未完成工事が多数残っていたのであ- 17 -るから,この基準によっても新築ということはできない。 イ本件通達は,新築の判定が困難な場合は,建築基準法の適用がある家屋については,同法によるしゅん工認可を受け得る程度であるか否かによって判断するとしている。 東京都建築主事は,平成15年2月21日及び同年3月11日に本件建物の完了検査を実施し,その後原告らに対し,建築基準関係規定の定める基準を満たさない点を是正するよう指導したが,同月28日,原告らが指導した点を当然に是正することを前提に検査済証を交付することを約束した。 そして,東京都建築主事は,原告に対し,同日,検査済証を交付したが,完了検査の際に指摘された指摘事項はいまだ是正されていなかった。例えば,東京都建築主事から指摘された本件建物の32階附室の排煙窓に関する是正工事が完了したのは,同年4月11日であり,東京都に対する是正工事完了の報告をしたのは,同年5月23日であった。 このように,本件建物は,同年3月31日時点では,建築基準法上のしゅん工認可を受け得る程度には完成していなかった。 ( )建築基準法は,「建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準 を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする」ものであり,また,建築主事の行う完了検査は,当該工事に係る建築物及びその敷地が「建築基準関係規定に適合しているかどうかを検査する」ものにすぎない。 したがって,建築基準法7条4項に基づく建築主事の完了検査は,当該建- 18 -物の新築工事が完成したか否かとは全く異なる観点から行われるものであり,「新築」の基準となり得るものではない。 第3当裁判所の判断 準法7条4項に基づく建築主事の完了検査は,当該建- 18 -物の新築工事が完成したか否かとは全く異なる観点から行われるものであり,「新築」の基準となり得るものではない。 第3当裁判所の判断 認定事実前記前提事実に加え,証拠及び弁論の全趣旨(各事実の後に付記する。)によると,以下の事実を認めることができる。 ( )ア原告は,a等共同企業体との間で,平成12年11月27日,「(仮 称)e・f品川新オフィスビル新築工事」に係る以下の内容の請負契約を締結した。(甲1)(ア)工事場所東京都港区α××番(イ)工期着工平成12年1月26日しゅん工平成15年3月31日(ウ)請負代金額278億0820万円内訳工事価格264億8400万円消費税額13億2420万円(エ)請負代金の支払前渡金平成12年11月末日請負代金額の10パーセントを現金払い中間金平成13年3月末日請負代金額の30パーセントを現金払い平成14年3月末日請負代金額の30パーセントを現金払い- 19 -残金しゅん工引渡し翌月末日現金支払また,追加変更に伴う工事費の精算は別に取り扱う。 (オ)その他(略)イ原告及びgは,a等共同企業体及びh等共同企業体との間で,平成12年11月27日,「(仮称)e・f/g品川ビル(地下共用部分)新築工事」に係る以下の内容の請負契約を締結した。(甲2)(ア)工事場所東京都港区α××番(イ)工期着工平成12年1月26日しゅん工平成15年3月31日(ウ)請負代金額92億2845万円内訳工事価格87億8900万円消費税額4億3945万円原告負担分64億4250万2830円内訳工事価格61億3571万6981円消費税額3億0678万5849円 2845万円内訳工事価格87億8900万円消費税額4億3945万円原告負担分64億4250万2830円内訳工事価格61億3571万6981円消費税額3億0678万5849円g負担分27億8594万7170円内訳工事価格26億5328万3019円消費税額1億3266万4151円(エ)請負代金の支払中間金3か月ごとの月末締め出来高の90パーセントを3か月後の月末に現金支払とする。 残金しゅん工引渡し3か月後の末日に現金支払とする。 - 20 -また,追加変更に伴う工事費の精算は別に取り扱う。 なお,原告とgは,各々の負担分を,請負者入金窓口として株式会社aにそれぞれ支払うこととする。 (オ)その他(略)ウgは,h等共同企業体との間で,平成13年1月26日,「(仮称)g品川本社ビル第1期工事(地下専有部)新築工事」に係る請負契約を締結した。(前記前提事実)エgは,h建設との間で,平成13年7月30日,「(仮称)g品川本社ビル第2期工事(地上部分)新築工事」に係る請負契約を締結した。(前記前提事実)オ前記アからエまでの請負契約によって建築された建物が本件建物であった。(前記前提事実)( )ア原告は,東京都建築主事に対し,平成15年2月12日,建築基準法7 条1項に基づき,本件建物について検査の申請をした。(前記前提事実)イ東京都建築主事は,平成15年2月14日,同月20日及び同月21日,本件建物について建築基準法7条1項に定める完了検査を実施した。東京都都市計画局市街地建築部建築指導課検査係長であったmは,平成15年2月20日及び同月21日に行われた完了検査において,本件建物の設備に係る検査を行った。(甲58,59,乙10)ウ原告は,mに対し,平成15年2月28日,検査の際 検査係長であったmは,平成15年2月20日及び同月21日に行われた完了検査において,本件建物の設備に係る検査を行った。(甲58,59,乙10)ウ原告は,mに対し,平成15年2月28日,検査の際に指摘された事項について是正の報告を行ったところ,mは,原告に対し,本件建物の32階附室の排煙窓の開口面積を3平方メートル以上確保するよう指示をした- 21 -ものの,当該工事の完了を待たずに検査済証を交付する旨述べた。(甲32,58ないし60,乙10,証人n)エ東京都建築主事は,原告及びgに対し,平成15年3月28日,建築基準法7条5項に基づき,本件検査済証を交付した。本件検査済証の検査年月日の欄には,「平成15年2月21日、3月11日」と記載されていた。 (乙2)オ原告は,平成15年4月1日,本件建物の引渡しを受けた。(前記前提事実)( )ア原告は,平成15年4月1日付けで,a等共同企業体作業所長から,同 日現在における未完成工事の場所,内容及び完了予定日等が記載された念書の提出を受けた。(甲21,証人n)イa等共同企業体は,平成15年4月1日から同年5月23日まで,本件建物6階にある仮設事務所の解体作業等として,仮設の間仕切り壁,仮設のタイルカーペット,天井ボードの一部,電話やLAN設備などの撤去工事を行い,その後,間仕切り壁の組立て及び仕上げ,天井ボードの取付け,床の仕上げなどの工事を行い,原告は,同月31日,上記工事の完了の確認をした。(甲22,40,56の2,56の3,59,60,証人n)ウa等共同企業体は,平成15年3月10日から同年4月11日まで,本件建物の32階附室の排煙窓の開口面積が3平方メートルとなるよう工事を行い,原告は,東京都に対し,同年5月23日,上記工事が完了した旨報告した。(甲33,34, 3月10日から同年4月11日まで,本件建物の32階附室の排煙窓の開口面積が3平方メートルとなるよう工事を行い,原告は,東京都に対し,同年5月23日,上記工事が完了した旨報告した。(甲33,34,39,42,56の1,59,60,証人n)- 22 -( )原告及びgは,被告に対し,平成15年5月12日,本件建物の新増設に 係る事業所税につき,課税標準となる新増設事業所床面積を18万1069. 32平方メートル,新増設に係る事業所税額を10億8641万5900円,徴収猶予に係る徴収金2億9878万2100円,納付すべき新増設に係る事業所税額を7億8763万3800円とする新増設に係る事業所税の納付申告書を提出し,また,原告は,被告に対し,同日,免除の対象となる新増設に係る事業所税額を2億9878万2100円とする徴収猶予申告書を提出した。(前記前提事実)( )原告は,被告に対し,平成15年9月25日,本件建物の新増設に係る事 業所税につき,課税標準を18万1069.32平方メートルから5万3991.02平方メートルとし,税額を7億8763万3800円から3億2394万6100円とする内容の事業所税更正請求書を提出した。(前記前提事実)( )原告は,被告に対し,平成15年12月25日,本件建物の新増設に係る 事業所税につき,課税標準を18万1069.32平方メートルから0平方メートルとし,税額を10億8641万5900円から0円とする内容の本件更正請求をした。(前記前提事実)( )被告は,原告に対し,平成16年2月2日付けで本件通知処分をした。 (前記前提事実) 争点について( )事業所用家屋の新増設に係る事業所税は,事業所用家屋の新築又は増築に よって将来もたらされるであろう都市の行財政需要の拡大に対処す 件通知処分をした。 (前記前提事実) 争点について( )事業所用家屋の新増設に係る事業所税は,事業所用家屋の新築又は増築に よって将来もたらされるであろう都市の行財政需要の拡大に対処するため,- 23 -都市環境の整備又は改善に関する事業に要する費用に充てるために課する目的税であり(旧地方税法701条の30参照),行財政需要の原因となる事業所用家屋の新築又は増築という事実に着目して,原因者である建築主に対して新築又は増築ごとに新増設に係る事業所用家屋の床面積を課税標準として課税関係を発生させるものであって,外形標準によって税負担を求めるものであるということができる。 新増設に係る事業所税の上記趣旨及び目的を前提に,本件建物が平成15年4月1日前に「新築」されたものか否か検討することとする。 ( )ア本件附則17条2項は,平成15年法律第9号の施行日である平成15 年4月1日前に行われた事業所用家屋の「新築」に対して課する新増設に係る事業所税については,なお従前の例による旨規定しているところ,この「新築」とは,旧地方税法702条32第1項等における「新築」と同義であると解するのが相当である。しかし,いつの時点をもって「新築」というべきかということは,旧地方税法に規定がないことから,結局,上記事業所用家屋の新増設に係る事業所税の課税目的を考慮しつつ,社会通念によりこれを決するほかない。 イそして,上記のとおり,事業所用家屋の新増設に係る事業所税は,事業所用家屋の新築又は増築によって将来もたらされるであろう都市の行財政需要の拡大に対処するため,都市環境の整備又は改善に関する事業に要する費用に充てるために課する目的税であるから,家屋が事業所用家屋,すなわち「家屋の全部又は一部で人の居住の用に供するもの以外のもの」(旧地方 に対処するため,都市環境の整備又は改善に関する事業に要する費用に充てるために課する目的税であるから,家屋が事業所用家屋,すなわち「家屋の全部又は一部で人の居住の用に供するもの以外のもの」(旧地方税法701条の31第1項7号)として使用し得る状態になった- 24 -時には,将来行財政需要の原因となることが高度の蓋然性をもって見込まれることになるから,そのような状態になった時に「新築」されたというべきである。 ウところで,建築主は,建築基準法6条1項の規定による工事を完了したときは,建築主事の検査を申請しなければならず(同法7条1項),建築主事が当該申請を受理した場合においては,建築主事等は,その申請を受理した日から7日以内に,当該工事にかかる建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合しているかどうかを検査しなければならず(同条4項),建築主事等は,当該検査をした場合において,当該建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合していることを認めたときは,当該建築物の建築主に対して検査済証を交付しなければならず(同条5項),建築主は,検査済証の交付を受けた後でなければ,原則として,当該建築物を使用し,又は使用させてはならないこととなる(同法7条の6第1項)。 もとより,検査済証交付の制度は,同法1条に定めるとおり,国民の生命,健康及び財産の保護を図り,もって公共の福祉の増進に資することを目的とするものであり,新増設に係る事業所税の課税目的と異なるものではあるが,建築基準法の適用を受ける事業所用家屋については,建築主は,当該事業所用家屋が建築基準関係規定に適合している場合に検査済証の交付を受けることができ,検査済証の交付を受けることができれば当該事業所用家屋を使用し得るのであり(同法7条の6第1項),当該事業所用家屋について建築主が検査済 係規定に適合している場合に検査済証の交付を受けることができ,検査済証の交付を受けることができれば当該事業所用家屋を使用し得るのであり(同法7条の6第1項),当該事業所用家屋について建築主が検査済証の交付を受けたときには,将来行財政需要の原因となることが高度の蓋然性を持って見込まれることになるというべき- 25 -であるから,当該事業所用家屋は,検査済証の交付を受けた時に事業所用家屋として使用し得る状態になったと解するのが相当である。 エこれを本件についてみると,前記認定事実のとおり,東京都建築主事は,原告及びgに対し,平成15年3月28日,建築基準法7条5項に基づき,本件検査済証を交付しているのであるから,本件建物は,遅くとも同日までには,事業所用家屋として使用し得る状態になり,「新築」されたというべきである。 ( )アこの点につき,原告は,新増設に係る事業所税の課税客体となるために は,当該事業用家屋が特定の用途に供し得る状態に至っていることを要するとして,本件建物がオフィスビルとして使用されることを目的として建設されている以上,本件建物がオフィスビルとして使用し得る程度に完成した段階をもって「新築」と解すべきである旨主張する。 イしかし,前述のとおり,事業所用家屋が「新築された」とは,将来行財政需要の原因となることが高度の蓋然性をもって見込まれることになる状態になったという意味において当該事業所用「家屋の全部又は一部で人の居住の用に供するもの以外のもの」として使用し得る状態にあることをいうが,検査済証の交付の法的効果(建築基準法7条の6第1項)に照らすと,検査済証が交付された事業所用家屋については,オフィスビルとして使用し得るものと認められる状態になっていなくとも,将来行財政需要の原因となることが高度の蓋然性をもって見 7条の6第1項)に照らすと,検査済証が交付された事業所用家屋については,オフィスビルとして使用し得るものと認められる状態になっていなくとも,将来行財政需要の原因となることが高度の蓋然性をもって見込まれることになる状態になったと認めることができるというべきである。 ウしたがって,原告は,平成15年3月31日の時点において,本件建物- 26 -の6階の工事が未了であったことや空調設備が稼動していない状態であったことなどを理由に,同日の時点ではオフィスビルとして使用できないから「新築」と解することはできない旨主張するが,上記理由から原告の上記主張を採用することはできない。 ( )アまた,原告は,本件検査済証が交付された平成15年3月28日当時, 本件建物の32階附室の排煙窓の開口面積が昭和45年建設省告示第1833号に規定する面積を満たしておらず,建築基準関係規定に適合していなかったのであり,当該排煙窓の開口面積が当該告示所定の面積を満たしたのは同年4月1日以降であるから,本件建物が「新築」されたのは同日以降である旨主張する。 イしかし,前述のとおり,事業所用家屋が「新築」されたとは,将来行財政需要の原因となることが高度の蓋然性をもって見込まれることになる状態になったという意味において当該事業所用「家屋の全部又は一部で人の居住の用に供するもの以外のもの」として使用し得る状態にあることをいうものと解すべきところ,原告は平成15年3月28日に本件検査済証の交付を受けているのであるから,同日以降本件建物を使用することができたのであり,したがって,同日には,将来行財政需要の原因となることが高度の蓋然性をもって見込まれることになる状態になったというべきである。そして,仮に,原告が主張するように,本件建物の32階附室の排煙窓の開口面積が上 て,同日には,将来行財政需要の原因となることが高度の蓋然性をもって見込まれることになる状態になったというべきである。そして,仮に,原告が主張するように,本件建物の32階附室の排煙窓の開口面積が上記告示所定の面積を満たしていなかったとしても,そのことは,直ちに本件検査済証の効力を失わせるものではないから,将来行財政需要の原因となることが高度の蓋然性をもって見込まれることになる- 27 -状態にあることを否定する理由にはなり得ない。そうすると,そのことだけをもって直ちに本件建物が同日に「新築」されたことを否定することはできないといわざるを得ない。 よって,原告の上記主張を採用することはできない。 ( )アまた,原告は,事業所税が都市の行政サービスとそこに所在する事務所 又は事業所との受益関係に着目して特別の税負担を求めるものであるから,建築主が現実に都市の行政サービスを享受することができる状態に至って初めて,都市の行政サービスとの受益関係が生ずるのであり,「新築」といい得る旨主張する。 イ確かに,事業所税は,都市への企業の集中とそれに伴う人口の集中によって生ずる都市環境の整備のための財源の一部を,都市における集積の利益を享受している企業に求めようとするものではあるが,前述のとおり,新増設に係る事業所税は,事務所又は事業所が新築又は増築された場合将来もたらされる都市の行財政需要に対処するために建築主に対し特別に税負担を求めるものであるから,事業所税が行政サービスと企業活動との間の受益関係に着目した税であるとしても,新増設に係る事業所税の課税の時点において現実に都市の行政サービスを享受することができる状態にあることを要するとまでいうことはできない。 ウしたがって,課税の時点において現実に都市の行政サービスを享受することができる状態 の時点において現実に都市の行政サービスを享受することができる状態にあることを要するとまでいうことはできない。 ウしたがって,課税の時点において現実に都市の行政サービスを享受することができる状態にあることを前提に「新築」の時期を決すべきであるとする原告の主張を採用することはできない。 ( )ア原告は,不動産取得税及び事業所税は,いずれも流通税としての性格を - 28 -有するものであるから,不動産取得税に係る「新築」(地方税法73条の2第2項)の場合と同様に,新増設に係る事業所税における「新築」の場合も,本来の用途に従った使用が可能な程度に完成していることが必要である旨主張する。 イしかし,不動産取得税は,家屋の新築により所有者が取得する経済的な利益,すなわち,当該家屋の所有者として当該家屋を完全に使用収益し,又は処分することができるという価値の取得に対し課せられるものであるのに対し,事業所用家屋の新増設に係る事業所税は,前述のとおり,事業所用家屋の新築又は増築によって将来もたらされるであろう都市の行財政需要の拡大に対処するため,都市環境の整備又は改善に関する事業に要する費用に充てるために課するものであるから,家屋の所有者として当該家屋を完全に使用収益し,又は処分できるという価値の取得に対し課せられる不動産取得税とは,その目的を異にするといわざるを得ない。 ウしたがって,事業所税が不動産取得税と同様に流通税としての性格を有することを考慮したとしても,新増設に係る事業所税の「新築」の意義を,不動産取得税の「新築」の意義と同様に解すべき必然性は認め難く,これらを同一に解すべきであるとする原告の主張を採用することはできない。 ( )アさらに,原告は,新築の家屋が固定資産税の課税客体となるのは,一連 の新築工事が完了した時である 必然性は認め難く,これらを同一に解すべきであるとする原告の主張を採用することはできない。 ( )アさらに,原告は,新築の家屋が固定資産税の課税客体となるのは,一連 の新築工事が完了した時であると解すべきところ,新増設に係る事業所税の課税客体となるのも,一連の新築工事が完了した時であると解すべきであるから,一連の新築工事が完了した時点で「新築」があったものと解すべきである旨主張している。 - 29 -イしかし,固定資産税は,家屋等の資産価値に着目し,その所有という事実に担税力を認めて課する一種の財産税であるところ,新築の家屋の場合には,一連の新築工事が完了した段階において初めて家屋としての資産価値が定まり,その正確な評価が可能になることから,一連の新築工事が完了した段階をもって固定資産税の課税客体たり得るものと解されるのである(最高裁昭和58年(行ツ)第19号同59年12月7日第二小法廷判決・民集38巻12号1287頁参照)。 これに対して,事業所用家屋の新増設に係る事業所税は,前述のとおり,事業所用家屋の新築又は増築によって将来もたらされるであろう都市の行財政需要の拡大に対処するため,都市環境の整備又は改善に関する事業に要する費用に充てるために課するものであって,家屋の資産価値に着目して課税される固定資産税とは異なり,家屋の資産価値を確定しその正確な評価をすべき必要性に乏しいものである。 ウしたがって,新増設に係る事業所税の「新築」の時点を,新築の家屋の場合における固定資産税の課税客体となる時期と同様に解すべき必然性は認められないから,これらを同一に解すべきであるとする原告の主張を採用することはできない。 第4 結論 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適 ら,これらを同一に解すべきであるとする原告の主張を採用することはできない。 第4 結論 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部- 30 -杉原則彦裁判長裁判官鈴木正紀裁判官松下貴彦裁判官
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