令和3年9月16日宣告広島高等裁判所令和2年(う)第145号過失運転致傷被告事件原審広島地方裁判所平成30年第755号 主文 原判決を破棄する。 被告人を罰金40万円に処する。 その罰金を完納することができないときは,5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 理由 1 本件控訴の趣意は,主任弁護人定者空ほか作成の控訴趣意書に記載されているとおりであるからこれを引用する。控訴理由は,事実誤認及び法令適用の誤りである。 2 検察官は,当審に至って予備的訴因を追加したが,原審においては,起訴状記載の公訴事実に係る変更後の訴因(以下「本位的訴因」という。)が認められるか否かが争われ,原判決は,結論としてこれを認め,「罪となるべき事実」において,本位的訴因とほぼ同一の事実を認定した。 すなわち,「被告人は,平成30年7月10日午後1時30分頃,普通乗用自動車(以下「被告人車両」という。)を運転し,広島市a区bc丁目d番e号所在のガソリンスタンド(以下「本件ガソリンスタンド」という。)敷地内からその北方に接する歩道(以下「本件歩道」という。)を通過して車道(以下「本件車道」という。)へ向け進出するに当たり,本件歩道手前で一時停止し,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全を確認して進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り,本件歩道手前で一時停止せず,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全確認不十分のまま漫然時速約5kmで進行した過失により,折から本件歩道を左から右へ向け進行して来たA(当時41歳)運転の自転車(以下「A自転車」という。)に気付かず,A自転車右側に自車右前部を 衝突させてAを路上に転倒させ,よって,Aに入院加療150日間を要す から右へ向け進行して来たA(当時41歳)運転の自転車(以下「A自転車」という。)に気付かず,A自転車右側に自車右前部を 衝突させてAを路上に転倒させ,よって,Aに入院加療150日間を要する脊髄損傷等の傷害を負わせた。」というものである。 3 事実誤認の論旨は,原判決が被告人の注意義務認定の前提とした①本件歩道手前の地点における左方の歩道上の見通しが悪いとの事実の認定及び②本件歩道手前の地点で一時停止をせず徐行して進行した場合には自転車等との衝突を避け難い状況に陥るとの事実の認定において,いずれも判決に影響を及ぼすことが明らかな重大な事実の誤認があるというものである。 また,法令適用の誤りの論旨は,原判決が,被告人がA自転車を目視できず,本件事故結果を予見できない本件歩道手前の地点で,被告人に一時停止義務を課している点で過失運転致傷罪における注意義務の内容について誤った解釈をし,法令の適用を誤っているというものである。もっとも,後に触れる所論を踏まえると,その趣旨は,被告人に本件歩道手前の地点での一時停止義務違反があると認めた原判決には事実の誤認があるというものであるから,結局は,事実誤認の主張と解される。 そこで以下,記録を調査し,当審における事実取調べの結果も併せて検討する。 4 記録によれば,本件の前提事実として以下の事実が認められる(原判決もおおむねこの事実(⑹を除く。)を認定しており,その点に事実の誤認はない。)。 本件事故現場付近の状況は,別紙図面1(原審甲1添付交通事故現場見取図写し。原判決添付図面と同じもの)【添付省略】(以下同じ)及び別紙図面2(原審甲20添付交通事故現場見取図写し)【添付省略】(以下同じ)のとおりである。道路外の施設である本件ガソリンスタンドの北側は,ほぼ東西に走る本件歩道と接してお 付省略】(以下同じ)及び別紙図面2(原審甲20添付交通事故現場見取図写し)【添付省略】(以下同じ)のとおりである。道路外の施設である本件ガソリンスタンドの北側は,ほぼ東西に走る本件歩道と接しており,本件歩道北側は,これと並行して走る本件車道と接している。 ⑵ 被告人は,本件ガソリンスタンドから本件歩道を横断して本件車道に進出して西方向へと進行(左折)しようと考え,本件歩道手前で一時停止をすることなく,被告人車両を本件ガソリンスタンド敷地内から本件歩道に進出させたと ころ,本件歩道上を西方から東方,すなわち被告人から見て左方から右方に向けて進行して来たA自転車に,被告人車両を衝突させた(以下,被告人からの視点に合わせ,西側を左方(側),東側を右方(側)ともいう。)。 ⑶ 本件事故に至るまでの被告人の進路は別紙図面1記載の①~③,別紙図面2記載の①~⑤,Aの進路は別紙図面2記載の㋐~㋑,双方車両の衝突地点は両図面記載の地点(以下「本件衝突地点」という。)である。なお,別紙図面1記載の②は被告人が最初にAを発見し,衝突した時の被告人の位置,同㋐はその時点でのAの位置であり,同㋐付近にA自転車が転倒し,同㋑は衝突後Aが転倒した地点である。 ⑷ 本件歩道の幅員は3.5mで,普通自転車の通行が可能とされ,西方から東方に向けて勾配1.0%の若干の下り坂となっている。 ⑸ 本件ガソリンスタンド敷地の西端には,本件ガソリンスタンドと本件歩道との境界線に至るまでの間,高さ2.5mの壁があり,本件ガソリンスタンド敷地内から被告人車両の進路に沿って本件歩道に進出する場合,左方には,上記壁のほか,店舗の看板等もあることから,左方の歩道の見通しは不良であった。 ⑹ 被告人車両は全長340cm程度であり,車両先端から計測すると,ルームミラーまで 本件歩道に進出する場合,左方には,上記壁のほか,店舗の看板等もあることから,左方の歩道の見通しは不良であった。 ⑹ 被告人車両は全長340cm程度であり,車両先端から計測すると,ルームミラーまでの距離は約120cm,運転席の背もたれまでの距離はおおよそ160cmである。 ⑺ 本件事故現場は市街地にあり,付近道路の交通は頻繁であった。 5 原判決は,要旨,以下のとおり判示して,上記「罪となるべき事実」を認定し,被告人に過失運転致傷罪の成立を認めた。 ⑴ 道路交通法17条2項は,道路外の施設に出入りするために歩道を横断する場合には,車両は,歩道に入る直前で一時停止し,かつ,歩行者の通行を妨げないようにしなければならないと定めている。この規定は,直ちに過失運転致傷罪の注意義務になるわけではないが,同罪の注意義務を考える上で基礎とすることが相当である。 ⑵ 本件現場は交通が頻繁な市街地にあり,時刻も午後1時30分頃であったから,本件歩道を歩行者や自転車が往来することは十分に想定可能である。ところが,本件ガソリンスタンド敷地内から本件歩道に進出しようとする被告人車両からは,ガソリンスタンドの壁などが死角となって左方の見通しが悪く,本件歩道の左側から歩行者や自転車が進行して来るのかどうかを確認することが困難な状況であった。こうした見通しの悪さからすると,単に徐行しただけでは十分な安全確認が難しいと考えられる。すなわち,被告人車両が本件歩道手前で一時停止し,本件歩道上の安全確認をするという措置を講じることなく,徐行して本件歩道に進出した場合には,見通しの悪い本件歩道の左側から進行して来た自転車等の存在に気付いて直ちに制動措置を講じたとしても,その自転車等との衝突を避けることが難しい状況に陥ってしまうのであり,こうしたことは被 た場合には,見通しの悪い本件歩道の左側から進行して来た自転車等の存在に気付いて直ちに制動措置を講じたとしても,その自転車等との衝突を避けることが難しい状況に陥ってしまうのであり,こうしたことは被告人にも予見可能であったし,予見すべきであったと認められる。 ⑶ 被告人にはこうした結果予見義務や道路交通法上の一時停止義務があることを踏まえると,被告人には,結果回避義務として,本件歩道手前で一時停止し,本件歩道上の安全確認をすべき自動車運転上の注意義務があったと認めるのが相当である。 なお,本件事故の状況,被告人車両の速度並びにA自転車の全長(約1.705m)及び速度(時速約33.9km)等からすれば,被告人が本件歩道手前で一時停止をし,本件歩道上の安全確認を十分に行った上で本件歩道に進出していれば,被告人車両がA自転車との衝突地点に至る時にはA自転車が同地点を通過し終えているから,客観的に見て,結果回避可能性があったといえる。 また,当時の被告人の意識状態に問題はなく,被告人が上記の結果回避措置を選択することは可能であったから,主観的に見ても結果回避可能性があったといえる。 ⑷ 以上によれば,被告人には,本件歩道手前で一時停止し,本件歩道上の安全確認をすべき義務(結果回避義務)があったと認められる。そして,被告人は, この義務を尽くさず,本件歩道手前で一時停止をしないで時速約5kmで本件歩道内に自車を進出させたことにより,見通しの悪い本件歩道の左側から進行して来た自転車等の存在に気付いて直ちに制動措置を講じたとしても,その自転車等との衝突を避けることが難しいという危険な状況に陥らせて,本件事故を惹起したものであり,本件事故は上記の危険が現実化したものといえるから,被告人の過失行為とAの傷害結果との間に因果関係も認 自転車等との衝突を避けることが難しいという危険な状況に陥らせて,本件事故を惹起したものであり,本件事故は上記の危険が現実化したものといえるから,被告人の過失行為とAの傷害結果との間に因果関係も認められる。 ⑸ 弁護人は,見通しの悪い本件歩道手前で一時停止しても,左方の歩道上の安全を確認できるわけではないから,被告人に本件歩道手前で一時停止する義務はないと主張する。 しかし,見通しの悪い状況であるからこそ,事故の危険性があり,一時停止が必要となるのである。安全確認が十分にできず,正常な交通を妨害するおそれがあるならば,路外施設の出入りのための進行をしてはならないというのが道路交通法25条の2第1項の趣旨である。確かに本件歩道手前では,運転者からは左方の歩道上の視認範囲は限られるが,全く見えないというわけではないし,右方の安全確認は十分に行うことができる。一時停止することで,左方の安全確認も右方の安全確認も時間をかけて十分に行うことができる。また,本件歩道手前で自車を一時停止させることで,本件歩道を通行する歩行者や自転車の運転者に自車の存在を知らせることもできる。本件歩道手前で一時停止をし,本件歩道の安全確認をすることは,本件歩道を往来する歩行者や自転車等との衝突を避けるために,まず最初に行うべき措置というべきである(なお,この後も,見通しの良い位置に至るまで,微発進と一時停止を繰り返して安全確認義務を尽くすことが求められると解されるが,最初の義務を尽くしていればA自転車との衝突を避けることができたと認められる。)。 6 しかしながら,原判決の上記判断は,是認することができない。その理由は以下のとおりである。 ⑴ 原審検察官が本位的訴因における注意義務を主張するに至った経緯及びそ の内容は,次のとおりである。 ら,原判決の上記判断は,是認することができない。その理由は以下のとおりである。 ⑴ 原審検察官が本位的訴因における注意義務を主張するに至った経緯及びそ の内容は,次のとおりである。 本位的訴因は,被告人が,「本件歩道手前」の地点で一時停止し,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全を確認すべき注意義務を怠った点を本件過失としている。なお,上記「本件歩道手前」とは,被告人車両がその先端部分も含めて本件歩道に進出せず,車両全体が本件ガソリンスタンド敷地内にとどまっている地点を指すものと認められる(以下,「本件歩道手前」及び「本件歩道手前の地点」の語は,上記地点を指すものとして用いる。)。 そして,原審における訴因変更の経緯を見ると,本位的訴因は,当初,平成30年12月27日付け起訴状において,一時停止義務を明示することなく,「本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全を確認して進行すべき自動車運転上の注意義務」の違反を本件過失とするものであったが,令和元年5月22日付け訴因変更請求書(同日,原裁判所により許可決定)により,原審検察官は,本件の注意義務として,本件歩道手前で一時停止すべき義務を追加し,「本件歩道手前で一時停止し,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全を確認して進行すべき自動車運転上の注意義務」の違反を本件過失とするものへと主張を変更した。 その後,原審検察官は,令和元年12月19日付け回答書により,本位的訴因における過失の内容について,被告人の過失は,車両を歩道に進出させる際の一時停止義務違反であり,「自転車等の有無及びその安全を確認して進行すべき」という点は,一般的に一時停止の際に運転者の執るべき行為を掲げているにすぎず,検察官として,安全確認義務を本件交通事故の具体的過失の内容に含 あり,「自転車等の有無及びその安全を確認して進行すべき」という点は,一般的に一時停止の際に運転者の執るべき行為を掲げているにすぎず,検察官として,安全確認義務を本件交通事故の具体的過失の内容に含める趣旨ではない旨釈明した。 さらに,令和2年2月4日,原審第8回公判期日において,原審検察官は,原裁判所から,「検察官としては,一時停止とそれに伴い安全を確認して進行すべき義務を注意義務であると捉えていて,被告人がそもそも一時停止をしていない以上,一時停止に伴い安全を確認して進行すべき義務を当然果たしてい ないと主張しているものと理解しているが,それでよろしいか。」と釈明を求められたのに対し,「そのとおりである。」と釈明した。なお,原裁判所が上記求釈明において言及した「一時停止」の語は,従前の経緯に照らし,本件歩道手前の地点における一時停止を指すものと解される。 こうした経緯からすると,原審検察官は,本位的訴因の内容として,本件歩道手前の地点における一時停止及び同地点での安全確認義務を被告人の注意義務とし,同義務の違反を本件過失として主張しているものと理解される。 ⑵ 以上を踏まえた上で,本位的訴因及び原判決について検討する。 原判決は,その説示に照らし,本位的訴因の内容を⑴で当裁判所が理解したのと同様の趣旨で捉えた上でこれを是認し,そのとおりの犯罪事実を認定したものといえる。しかしながら,以下の理由からこの判断は是認することができない。 ア被告人車両の進路に沿って本件ガソリンスタンド敷地内から本件歩道に進出しようとする場合,左方の見通しが不良であったことは原判決も説示するところである。4のとおり,本件においては,高さ2.5mの壁が本件ガソリンスタンド敷地の西端に南北方向に設けられ,本件ガソリンスタンド敷地と本件歩道との の見通しが不良であったことは原判決も説示するところである。4のとおり,本件においては,高さ2.5mの壁が本件ガソリンスタンド敷地の西端に南北方向に設けられ,本件ガソリンスタンド敷地と本件歩道との境界線上まで及んでいるのみならず,その北端付近には看板等も設置されている。加えて,被告人車両においては,車両先端からルームミラーまでの距離が約120cm,同じく運転席の背もたれまでの距離がおおよそ160cmであるから,本件歩道手前の地点に被告人車両を停止させた状態では,運転者である被告人は,本件歩道と本件ガソリンスタンドの境界線から1m以上手前(南側)の地点にいることになる。記録によれば,同地点からは,上記壁等遮へい物の存在により,本件歩道上の左方の状況については,視認することが困難な状況にあったものと認められる。 そうすると,被告人が仮に本件歩道手前の地点で一時停止をしても,左方から来るA自転車について視認することは困難であるから,本件歩道手前の地点で一時停止をして左右等の安全確認を行ったとしても,左方から来るA自転車 を発見,視認して衝突回避措置を執ることはできなかったことになる。 したがって,本位的訴因において本件過失の根拠となる注意義務として行うべきとされた本件歩道手前の地点での一時停止及び左右等の安全確認措置は,本件事故の回避を可能ならしめる有効な措置とはいえず,本位的訴因における上記注意義務及びその違反は,被告人に過失責任を問うことのできないものであったといわざるを得ない。 原判決は,このような過失責任を問うことのできない注意義務を設定した本位的訴因をそのまま是認した点において,その事実認定は,論理則,経験則等に違反した不合理なものといわざるを得ない。 イまた,原判決は,本位的訴因における過失行為と本件結果との因果 義務を設定した本位的訴因をそのまま是認した点において,その事実認定は,論理則,経験則等に違反した不合理なものといわざるを得ない。 イまた,原判決は,本位的訴因における過失行為と本件結果との因果関係を肯定し,本件結果を本位的訴因における注意義務違反,つまり,本件歩道手前の地点における一時停止及び安全確認の各義務違反に帰責しているが,この判断についても是認することはできない。 すなわち,本件においては,上記のとおり,被告人には,本位的訴因に係る本件歩道手前の地点での一時停止義務及び安全確認義務を課すことはできず,本位的訴因における被告人の行為に,本件結果を帰責することは許されない。 また,仮に,被告人が,本位的訴因における本件歩道手前の地点での一時停止及び左右等の安全確認の各措置を執ったとしても,A自転車が左方から進行して来ることに気付くことができず,ひいては,本件結果を回避することができる有効な措置を執ることができなかったものと認められ,原判決は,当該各措置を履行したとしても,予見することも有効な回避措置を執ることもできないまま発生した結果を被告人に帰責するものであって是認することができない。 この点,原判決は,被告人が本件歩道手前の地点で一時停止をしていれば,被告人車両が本件衝突地点に到達する前にA自転車が同地点を通過し終えていることになるため,本件事故は発生しなかったことを指摘し,これを主たる根拠として,本件歩道手前の地点における一時停止及び安全確認義務違反と本 件結果との因果関係を肯定している。 しかしながら,上記のような理屈によって,本件において,被告人が本件歩道手前の地点に到達した時点で一時停止をしていたら,その分だけ本件衝突地点への到達が遅れ,本件結果を回避することができたとはいえるとしても,それ 記のような理屈によって,本件において,被告人が本件歩道手前の地点に到達した時点で一時停止をしていたら,その分だけ本件衝突地点への到達が遅れ,本件結果を回避することができたとはいえるとしても,それゆえに,被告人に対し,本件歩道手前の地点での一時停止義務を課し,同義務違反と本件結果との間の因果関係を肯定することは許されない。 すなわち,本位的訴因にいう本件歩道手前の地点での一時停止義務は,飽くまで,本件歩道に進出するに当たって,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全を確認するために課されるものであり,本件歩道上を左方から進行して来る自転車等との本件衝突地点における衝突を避けるために本件衝突地点への到達を遅らせることを目的として課されるものではない。後者の目的のために本件歩道手前の地点での一時停止義務を課すのであれば,本件歩道上を左方から進行して来る自転車等がいつ本件衝突地点に到達するか予見可能である必要があるが,本件において,本件歩道手前の地点からは本件歩道上の左方の見通しが不良であるため,そのような予見は不可能であるから,後者の目的のために本件歩道手前の地点での一時停止義務を課すことはできないというべきである。また,原判決がいう理屈で本件歩道手前の地点での一時停止義務違反と本件結果との因果関係を肯定することは,結局のところ,一時停止により本件衝突地点への到達が遅れることによって時間差が生じ,偶然に結果を回避できた可能性を根拠として被告人に本件結果を帰責することになり,ひいては,A自転車が本件衝突地点に到達した時点がいつであったかという偶然の事情によって結論が左右されることになって,妥当性を欠く。 以上のとおり,本件結果は,本位的訴因にある本件歩道手前の地点において一時停止をして安全確認を行うという注意義務の違反に基づく危険が 然の事情によって結論が左右されることになって,妥当性を欠く。 以上のとおり,本件結果は,本位的訴因にある本件歩道手前の地点において一時停止をして安全確認を行うという注意義務の違反に基づく危険が現実化したものと評価することはできないから,同義務違反と本件結果との因果関係を認めることはできないというべきである。 ⑶ 以上によれば,本件控訴趣意中,原判決が,被告人がA自転車を目視できない本件歩道手前の地点で,被告人に一時停止義務を課している点で過失運転致傷罪における注意義務の内容について誤った理解をしているとの所論は,その結論において理由があるものといえる。上記のとおり,本位的訴因における本件過失の内容としての注意義務の設定に看過し難い誤りがあったにもかかわらず,原判決は,被告人に本位的訴因に係る注意義務違反に基づく過失責任を認め,これと本件結果との因果関係を肯定し,過失の認定及び因果関係の認定のいずれにおいても,論理則,経験則等に違反した不合理な判断をしたものであって,この事実誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから,原判決は,破棄を免れない。 7 破棄自判そこで,刑訴法397条1項,382条により原判決を破棄する。なお,当審において予備的訴因が追加されたが,本件においては,同訴因についても既に必要な審理は尽くされていると認められるから,同法400条ただし書を適用して,更に次のとおり判決する。本位的訴因に係る公訴事実については,これまで述べてきたとおり犯罪の証明がないことは明らかであるから,以下,予備的訴因に係る公訴事実について判断を示す。 【罪となるべき事実】被告人は,平成30年7月10日午後1時30分頃,普通乗用自動車(軽自動車)を運転し,広島市a区bc丁目d番e号所在の本件ガソリンスタン る公訴事実について判断を示す。 【罪となるべき事実】被告人は,平成30年7月10日午後1時30分頃,普通乗用自動車(軽自動車)を運転し,広島市a区bc丁目d番e号所在の本件ガソリンスタンド敷地内からその北方に接する本件歩道を通過して本件車道へ向け進出するに当たり,本件ガソリンスタンドの出入口左方には壁や看板等が設置されていて左方の見通しが悪く,本件歩道を進行する自転車等の有無及びその安全を確認するのが困難であったから,本件歩道手前で一時停止した上,小刻みに停止・発進を繰り返すなどして,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全を確認して進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り,本件歩道手前で一時停止せず,本件歩道を通行する自転車等の有無及びその安全確認不十分のまま漫然時速約4.2kmで進行した過失に より,折から本件歩道を左から右へ向け進行して来たA(当時41歳)運転のA自転車に気付かず,A自転車右側に自車右前部を衝突させてAを路上に転倒させ,よって,Aに入院加療150日間を要する脊髄損傷等の傷害を負わせたものである。 【証拠の標目】省略【事実認定上の争点に対する判断】 1 弁護人は,第1に,本件において,被告人に判示の一時停止の義務まではなかった,第2に,被告人は判示の注意義務を尽くしても本件結果を回避することができなかったなどと主張し,被告人には過失が認められないと主張する。すなわち,本件の争点は,①被告人の負っていた注意義務の内容,②本件結果についての予見可能性及び③本件結果の回避可能性である。 2⑴ まず,上記②本件結果についての予見可能性について検討する。本件歩道は普通自転車が通行可能とされていた上,本件現場は市街地に所在し,午後1時30分頃という本件事故発生の時間帯において交通頻繁 2⑴ まず,上記②本件結果についての予見可能性について検討する。本件歩道は普通自転車が通行可能とされていた上,本件現場は市街地に所在し,午後1時30分頃という本件事故発生の時間帯において交通頻繁であり,本件ガソリンスタンド敷地内から本件歩道へと進出しようとする被告人としては,特に本件歩道上の左方の見通しが不良であったことから,適切な安全確認措置を執らずに本件歩道に進出した場合,特に,左方から通行して来る自転車等と衝突し,その運転者等にけがをさせることについて,十分に予見可能であったと認められる。 ⑵ そこで,上記①被告人の負っていた注意義務の内容について具体的に見ると,本件歩道手前の地点においては,本件歩道上の右方の確認は可能であるものの,左方の確認は困難である以上,上記の地点から,左方の視界が開ける地点(記録によれば,別紙図面1記載のⓅ地点と認められる。以下,この地点を「Ⓟ地点」という。)に至るまでの間,被告人は,目視によって左方の安全確認措置を執ることができないまま,自車を本件歩道に進出させていくほかない。このような状況にある被告人としては,左方から進行して来る自転車等との衝突を確実に回避しつつ本件歩道に進出するための注意義務として,検察官が予備的 訴因において例示するように,小刻みに停止・発進を繰り返すなどして左右等,特に本件歩道上の左方の安全を確認しながらⓅ地点まで進行し,Ⓟ地点で左右等の安全を確認した上で進行すべき注意義務を負っていたものと認められる。 上記注意義務の履行は,本件歩道には自転車が通行すべき部分の指定(道路交通法63条の4第2項)もなく,また,本件歩道手前の地点では,左方から進行して来る自転車等が被告人車両の進出経路上のどの地点にいつ出現するか予見することが困難であることも踏まえると,より強く要 路交通法63条の4第2項)もなく,また,本件歩道手前の地点では,左方から進行して来る自転車等が被告人車両の進出経路上のどの地点にいつ出現するか予見することが困難であることも踏まえると,より強く要請されていたものといえる。 したがって,上記の「小刻みに停止・発進を繰り返すなどして」の中には,当然に,まず本件歩道手前の地点において一時停止することが含まれるものと解される。また,その際歩道を通行する自転車等の有無及びその安全を確認するという歩道手前での一時停止の趣旨に鑑み,Ⓟ地点での一時停止及び安全確認をすることも上記の注意義務に含まれるものと解される。 予備的訴因における注意義務の内容は適切なものと認められ,本件記録によれば,被告人は,その注意義務を履行していないことが明らかであるから,被告人には,予備的訴因に係る注意義務(以下「本件注意義務」という。)に違反した過失が認められる。 ⑶ また,上記③本件結果の回避可能性について見ると,記録によれば,Ⓟ地点からは左方も含めて本件歩道上の視界は良好なものであったと認められるから,被告人が,本件注意義務を履行していれば,被告人において,A自転車を含め,本件歩道を進行して来る自転車や歩行者との衝突を回避して進行することは十分に可能であったと認められる。 したがって,本件事故及びこれによって生じたAの傷害結果は,被告人が本件注意義務に違反した過失の危険が現実化したものといえるから,被告人による本件注意義務違反の過失との因果関係が認められる。 ⑷ 以上から,被告人に対しては,判示のとおり,予備的訴因に係る過失責任を 認めることができる。 3 弁護人の主張について検討する。 ⑴ 弁護人は,A自転車の速度について,これを時速約33.9kmとした原判決の認定が誤りであり,実際 的訴因に係る過失責任を 認めることができる。 3 弁護人の主張について検討する。 ⑴ 弁護人は,A自転車の速度について,これを時速約33.9kmとした原判決の認定が誤りであり,実際には時速約39.6kmであったとの主張を前提に,被告人には本件当時,このような高速度で進行して来る自転車がいるとは予見できないから,より見通しの良い地点まで徐行しながら進行して安全を確認する方法で十分であり,上記のように小刻みに停止・発進を繰り返す義務はなかったと主張するので,以下,検討する。 ア A自転車の速度については,捜査状況報告書において,被告人運転車両搭載のドライブレコーダー(以下「本件ドライブレコーダー」という。)の映像に基づき,移動距離(6.6m)を同映像のコマ数(7コマ)によって算出した所要時間(0.7秒)で除することによって時速約33.94kmとの数値が導かれており,原判決はこの証拠に依拠してA自転車の速度を時速約33.9kmと認定したものと解される。 しかしながら,1コマ目の録画時点から7コマ目の録画時点までの間に経過する時間は0.6秒であるから,A自転車の速度は,時速約39.6kmであると認められる(なお,被告人車両の速度についても,捜査状況報告書において,被告人車両の衝突直前の速度を時速約4.02kmと算出しているが,これについても,上記同様に,正確には時速約4.275kmと認められる。 そのため,上記「罪となるべき事実」においては,被告人車両の速度を時速約4.2kmと認定した。)。 イ被告人には,時速約39.6kmという高速度で左方から進行して来る自転車がいるとは予見できないとの弁護人の主張について見ると,時速39.6kmという速度は,自転車の速度としてかなりの高速度であることは否定できないものの,本件歩道がA 高速度で左方から進行して来る自転車がいるとは予見できないとの弁護人の主張について見ると,時速39.6kmという速度は,自転車の速度としてかなりの高速度であることは否定できないものの,本件歩道がA自転車の進行経路に照らすと直線的な形状である上,1.0%と僅かではあるものの左方から右方に向けて下り坂になってい ることなどの事情をも考慮すれば,およそ想定し難いほど特異な高速度とはいえない。このことは,道路交通法上,自転車には原則として歩道上での徐行義務が課されている(同法63条の4第2項)ことを踏まえても左右されない。 そうすると,被告人に時速約39.6kmで進行して来る自転車の存在を予見できなかったとはいえず,結局,弁護人の主張はその前提を欠くものであって採用できない。 ウまた,弁護人の上記主張は,時速約39.6kmという高速度で自転車が左方から進行して来るというのは異常な事態であり,このような異常な行動による危険を避けるために被告人に一時停止の義務まで課すのは不当に過剰なものであるとの趣旨にも解される。 しかしながら,本件歩道上の左方の見通し状況及び本件歩道の交通状況に照らせば,本件注意義務は,至極当然に課されるべきものである。所論を検討しても,A自転車の速度がおよそ想定し難いほど特異な高速度とはいえないことは上記のとおりである上,そのような速度の自転車に被告人車両が衝突した場合には重大な人身被害を生じさせる可能性が高いことを考慮すると,このような事態を回避するため,被告人に対し,本件注意義務を課すことが不当に過剰なものとは解されない。 エ以上によれば,弁護人の主張は採用できない。 ⑵ 弁護人は,Ⓟ地点からの見通し状況を争い,Ⓟ地点においても被告人には左方から来る自転車を的確に視認することはできな 過剰なものとは解されない。 エ以上によれば,弁護人の主張は採用できない。 ⑵ 弁護人は,Ⓟ地点からの見通し状況を争い,Ⓟ地点においても被告人には左方から来る自転車を的確に視認することはできなかったから,本件結果について被告人に予見可能性はないと主張する。 そこで,Ⓟ地点からの左方の見通し状況について検討する。 ア実況見分調書(以下「本件実況見分調書」という。)によれば,Ⓟ地点からは,本件歩道上の左方の約54.9m先までが視認可能であったとされているところ,同調書は,本件事故の約30分後から,被告人立会いの下で実 施された実況見分結果に基づいて作成されたものであり,Ⓟ地点の特定に当たっては,被告人自身が被告人車両に乗車し,実際に左方を視認して確認している様子も写真に撮影されているところ,被告人は,原審及び当審を通じて上記実況見分の結果について異論がある旨の供述はしていない。 また,視界が開けた後の本件歩道上の見通しが良好であったことについては,同調書添付写真や,捜査状況報告書添付写真並びに同報告書添付写真によっても裏付けられている。 以上によれば,Ⓟ地点から,本件歩道の左方の見通しが良好なものであり,約54.9m先が視認可能であったとする本件実況見分調書については,十分な信用性が認められる。 イこれに対し,弁護人は,上記実況見分における見通し状況の再現の正確性を争い,実際には,被告人車両は,本件歩道に対し,左斜め方向に向いた状態で本件歩道へと進出していたにもかかわらず,上記見通し状況の再現は,被告人車両を本件歩道に対して垂直方向に向けて停止させた状態で実施されているから,本件実況見分調書は信用できないと主張する。 確かに,弁護人が指摘する本件ドライブレコーダーの記録映像や,本件実況見分調書の添付写真 道に対して垂直方向に向けて停止させた状態で実施されているから,本件実況見分調書は信用できないと主張する。 確かに,弁護人が指摘する本件ドライブレコーダーの記録映像や,本件実況見分調書の添付写真を見ると,実際には被告人車両は,本件歩道に対し,若干左斜め方向に向いて進行しているのに対し,上記実況見分の際には,本件歩道に対しほぼ垂直方向に向いて停止した状態で左方の見通し状況の確認が実施されている。 しかしながら,これらの証拠の内容を見ると,両者の角度の相違は,若干のものにとどまると認められる。被告人の目の位置はⓅ地点にあることに変わりはないのであるから,この程度の角度の相違が,見通しの可否やその距離の確認の正確性に影響を生ずるものとは解されない。仮に影響があったとしても,再現時の状況よりも,左側に若干向いた状態であった実際の状況の方が左方の視認はしやすいと解されるのであるから,少なくとも,上記実況 見分における再現によって視認可能と確認された約54.9mの距離について,実際にも被告人から視認可能であったと認めることには何ら支障はない。 ウまた,弁護人は,別紙図面2の③地点で撮影された本件ドライブレコーダーの映像によれば,同地点からは,看板等に遮られて約18.6mしか見通せないことが明らかであり,別紙図面1,2を対照すると,上記③地点とほぼ同じ位置にある地点となるⓅ地点から約54.9m先まで見通せたとする本件実況見分調書の記載は誤りであるとも主張する。 しかしながら,本件ドライブレコーダーは,被告人車両のルームミラーと一体型のものと認められ,若干の向きの変動はあり得るものの,その映像からして本件当時,一貫して被告人車両正面方向を向いたままの状態であったと認められるのに対し,被告人自身が目視によって視認する際には,身体を ものと認められ,若干の向きの変動はあり得るものの,その映像からして本件当時,一貫して被告人車両正面方向を向いたままの状態であったと認められるのに対し,被告人自身が目視によって視認する際には,身体を前に乗り出して顔を左方に向けるなどして,左方に視線をやって注視することが可能であり,目視による視認の範囲の方が本件ドライブレコーダーによる撮影可能範囲よりも広く,左方に向けて長距離に及ぶことは明らかというべきである。 エ以上から,弁護人の主張を踏まえても,Ⓟ地点からの見通し状況を含め,本件実況見分調書は十分に信用することができる。Ⓟ地点からの視認可能性を争う弁護人の主張は採用できない。 ⑶ 弁護人は,仮に被告人が③地点,すなわちⓅ地点で左方から進行して来るA自転車を目視できたとしても本件事故を確実に回避できたとはいえず,結果回避可能性が認められないと主張する。 そこで検討すると,被告人は,左方が見通せるⓅ地点に至るまでの間,小刻みに停止・発進を繰り返すなどして左右等に注意を払いながら進行し,Ⓟ地点において一旦停止した状態で左右等の安全を十分に確認する注意義務を負っていたのであり,このような注意義務を尽くしていれば,Ⓟ地点において一旦停止した状態で左方から進行して来る自転車等を発見することが可能であり, このような自転車を発見,視認した場合には,そのまま発進せずに同自転車が通り過ぎるのを待つことにより,衝突を回避することが十分に可能であったものと認められる。 弁護人は,被告人が高齢者であることを前提に,平成23年度警察庁委託調査研究報告書によって認められる高齢者の平均的な反応時間等を考慮すると,被告人が本件衝突地点の手前で停止する余地はほとんどないとか,そもそも反応すらできない可能性が高いなどと主張する。 察庁委託調査研究報告書によって認められる高齢者の平均的な反応時間等を考慮すると,被告人が本件衝突地点の手前で停止する余地はほとんどないとか,そもそも反応すらできない可能性が高いなどと主張する。 しかしながら,本件結果の回避のためには,被告人は,Ⓟ地点において一旦停止した状態で左方から進行して来る自転車等を発見し,そのまま自車を発進させることなく,同自転車等が通過するのを待つことによって衝突を回避することが十分に可能であったといえる。すなわち,本件注意義務は,これを履行するのに弁護人主張の反応時間等の影響をさほど受けるものではないから,高齢者だからこれを尽くせないというものではない。 また,Ⓟ地点から左方の見通しが十分であることが明らかな本件事案においては,仮にⓅ地点において一旦停止して本件歩道上の左右等を確認したにもかかわらず,左方から進行して来る自転車等を発見できなかったという場合には,それ自体が左方の安全確認を怠ったものとして本件注意義務違反となり,それゆえに結果を回避することができなかったという帰結になることは明らかである。 結局,弁護人の主張は採用できない。 4 以上から,上記「罪となるべき事実」のとおりの事実が認められる。 【法令の適用】 1 構成要件及び法定刑を示す規定被告人の判示所為は,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条本文に該当する。 2 刑種の選択 罰金刑を選択する。 3 宣告刑の決定所定金額の範囲内で被告人を主文掲記の主刑に処する。 4 労役場留置その罰金を完納することができないときは,刑法18条により5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 【量刑の理由】路外施設から歩道を横断して車道に進出するという高度の慎重さを その罰金を完納することができないときは,刑法18条により5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 【量刑の理由】路外施設から歩道を横断して車道に進出するという高度の慎重さを求められる場面において注意義務を尽くさなかったことを考慮すれば,被告人の過失は大きなものといわざるを得ない。また,被害者の負った傷害は,脊髄損傷等と重篤なもので,入院加療150日間を要したほか,後遺症も残存するとされており,本件結果は重い。 しかしながら,本件においては,道路交通法上,徐行義務のある歩道上で,時速約39.6kmという高速度で自転車を運転し,被告人車両が歩道上に進出して来ているのを認識しながら,あえて停止等の措置を執ることなくその前を通り過ぎようとしたという点で,被害者の行為が本件事故の一因を形成し,あるいは,本件傷害の結果の重さに影響した側面があることは否定できない。 こうした犯情を踏まえ,被告人にこれまで前科前歴が見当たらないことなどの一般情状をも考慮すると,被告人に対しては,原審検察官の求刑よりも若干減額した上で,主文の罰金刑に処するのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 (原審検察官の求刑罰金50万円)令和3年9月30日広島高等裁判所第1部 裁判長裁判官伊名波宏仁 裁判官富張真紀 裁判官廣瀬裕亮 裕亮
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