昭和63(オ)1539 建物抵当権代位の付記登記手続

裁判年月日・裁判所
平成元年11月24日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄自判 札幌高等裁判所 昭和62(ネ)321
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。      被上告人の請求を棄却する。      訴訟の総費用は被上告人の負担とする。          理    由  職権をもって調査

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判決文本文6,197 文字)

主    文      原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。      被上告人の請求を棄却する。      訴訟の総費用は被上告人の負担とする。          理    由  職権をもって調査するに、原審の確定したところ及び記録によれば、(1) 訴外 D所有の釧路市ab丁目c番dほか一〇筆の土地及び訴外E株式会社(以下「E」 という。)所有の同所b丁目c番地eないしf上の建物ほか二棟の建物(以下、こ れらの土地建物を総称して「訴外物件」という。)並びに上告人ほか四名(現在は 上告人ほか三名)の共有にかかる本件不動産(第一審判決添付の物件目録記載の各 建物をいう。)を共同抵当の目的として、訴外株式会社F銀行の訴外G木材工業株 式会社に対する金銭消費貸借契約上の債権を担保するため昭和五一年一二月二三日 抵当権が設定され、昭和五二年一月二〇日付で抵当権設定登記が経由されていたと ころ、右抵当権につき、昭和五六年一二月一日付をもって、訴外H協会のため一部 代位弁済(弁済額六一二万七二七〇円)を原因とする抵当権一部移転の附記登記が、 次いで、昭和六一年二月一八日付をもって、上告人のため代位弁済を原因とするH 協会持分移転の附記登記がそれぞれ経由された、(2) 訴外物件について後順位の 根抵当権を有していた被上告人は、訴外物件に対し右根抵当権の実行としての競売 を申し立て(釧路地方裁判所昭和五八年(ケ)第一八九号事件)、その結果、上告 人を含む先順位抵当権者はいずれも被担保債権全額の弁済を受けたが、被上告人は その債権の一部について弁済を得るにとどまった、(3) そこで、被上告人は、本 件において、本件不動産につき、民法三九二条二項後段の規定に基づき、上告人が 弁済を受くべき金額に満つるまで上告人に代位してその抵当権を行使し得ることに なったと主張して、上告人に対し代位の附記登 、本 件において、本件不動産につき、民法三九二条二項後段の規定に基づき、上告人が 弁済を受くべき金額に満つるまで上告人に代位してその抵当権を行使し得ることに なったと主張して、上告人に対し代位の附記登記手続を求めたところ、第一審は右 - 1 - 請求を認容し、原審も第一審判決を相当として、上告人の控訴を棄却した。  しかしながら、右の事実によれば、本件の共同抵当の目的である訴外物件及び本 件不動産はともに物上保証人の所有にかかるものであることが明らかであるところ、 かかる場合には、訴外物件上の後順位抵当権については民法三九二条二項後段の規 定は適用がなく、先に競売された訴外物件の所有者であったD及びEは、民法五〇 一条四号、三号により、各不動産の価格に応じて、本件不動産の所有者である上告 人ほか三名に対し取得した求償権の範囲内において、先順位抵当権者である上告人 が有していた本件不動産に対する抵当権及びその被担保債権を代位取得するが、後 順位抵当権者である被上告人は、あたかも右抵当権の上に民法三七二条、三〇四条 一項本文の規定により物上代位をするのと同様に、D及びEの取得した抵当権から 優先して弁済を受けることができるものであり、右優先弁済権を主張するについて は登記を必要としないというべきである(大審院昭和一一年(オ)第一五九〇号同 年一二月九日判決・民集一五巻二一七二頁、最高裁昭和五〇年(オ)第一九六号同 五三年七月四日第三小法廷判決・民集三二巻五号七八五頁参照)。そうすると、被 上告人が民法三九二条二項後段の規定により右抵当権を代位取得したことを前提と する被上告人の本件附記登記請求は理由がないというべきである。  したがって、本件請求を認容すべきものとした原審の判断には法令の解釈適用を 誤った違法があるというべきであり、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかで ある 附記登記請求は理由がないというべきである。  したがって、本件請求を認容すべきものとした原審の判断には法令の解釈適用を 誤った違法があるというべきであり、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかで あるから、論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れず、第一審判決 を取り消して、被上告人の本件請求を棄却すべきである。  よって、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁判官 香川保一の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。  裁判官香川保一の反対意見は、次のとおりである。  私は、多数意見には賛同することができず、本件上告は棄却すべきものと考える。 - 2 - その理由は、次のとおりである。 一 民法三九二条一項は、債権者が同一の債権の担保として数個の不動産上に数個 の抵当権(以下「共同抵当権」という。)を有する場合において、その数個の不動 産が同時に競売されて(以下、この競売を「同時競売」という。)、その売却代金 を配当するときは、共同抵当権の被担保債権を当該数個の不動産の価額に応じてそ の負担を分つ(以下、この負担額を「分担額」という。)こととして、各不動産に ついての後順位抵当権者その他の利害関係人の利害を調整し、その公平を図らんと しているのであるが、右の利害関係人には、当該不動産の所有者も含まれているこ とはいうまでもない。しかし、共同抵当権の目的不動産の一部が競売されて(以下、 この競売を「異時競売」という。)、その売却代金を配当する場合には、その共同 抵当権者の利益を保護するため、同条二項前段において、共同抵当権者は、いわゆ る不可分性の原則どおりその被担保債権の全部について弁済を受けることができる ものとするとともに、その場合の後順位抵当権者の同条一項による利益を実質的に 保護するため、同条二項後段において 者は、いわゆ る不可分性の原則どおりその被担保債権の全部について弁済を受けることができる ものとするとともに、その場合の後順位抵当権者の同条一項による利益を実質的に 保護するため、同条二項後段において、後順位抵当権者は、同時競売がされるとす ればその共同抵当権者が他の不動産の売却代金から弁済を受けるべき金額(分担額) を限度として、当該他の不動産上の共同抵当権を自己の債権の担保として代位取得 するものとしているのである。他方、異時競売により物上保証人所有の不動産が競 売されて、その売却代金から共同抵当権の被担保債権の弁済がされた場合には、当 該物上保証人は、同法五〇〇条及び五〇一条により債務者に対して求償し得る範囲 内において他の目的不動産上の共同抵当権及びその被担保債権を代位取得すること になるのである。したがって、その物上保証人所有の不動産上に後順位抵当権が存 するときは、他の不動産上の共同抵当権について、右の物上保証人の代位と前記の 後順位抵当権者の代位との優劣が当然問題となるのである。 二 そして、右の物上保証人の代位、保護と後順位抵当権者の代位、保護をいかよ - 3 - うに調整すべきかは、この点に関し何ら明文の規定がないため、解釈上困難な問題 である。もともと、同法三九二条の規定は、共同抵当権の目的不動産についての利 害関係人の利害を調整して、その余剰担保価値を利用しての後順位抵当権の設定を 容易ならしめようとするものである。すなわち、かかる不動産については、同時競 売の場合には同条一項の規定により、異時競売の場合には同条二項後段の規定によ り、いずれの場合にも、後順位抵当権者がその目的不動産の価額からその分担額を 控除した余剰担保価値を把握することができることとなるから、所有者のその不動 産の余剰担保利用を容易にするとともに、利害関係人の利害も調整されるのであ 順位抵当権者がその目的不動産の価額からその分担額を 控除した余剰担保価値を把握することができることとなるから、所有者のその不動 産の余剰担保利用を容易にするとともに、利害関係人の利害も調整されるのである。 かかる趣旨からいえば、同条の適用について法文上共同抵当権の目的不動産が債務 者、物上保証人又は第三取得者のいずれの所有であるかについて何ら限定していな いのは当然である(因に、同条の趣旨に従って、不動産登記法においては、共同抵 当権の目的不動産についてその旨を公示するについて、その所有者が右のいずれの 者であるかを問うことなく、共同担保である旨の公示をすることとしているのであ る。同法一二二条、一二三条、一二五条から一二八条まで等参照)。 三 以上の点を考えれば、異時競売、同時競売のいずれの場合においても、共同抵 当権者はもちろん、目的不動産の所有者及び後順位抵当権者の利害の調整が結果的 に同じようになる解釈をすべきが当然である。  そこで、まず同時競売の場合を考えると、共同抵当権者は、被担保債権の全額( 各目的不動産の分担額の合計)の弁済を受け、その所有者、すなわち債務者、物上 保証人又は第三取得者のいずれもは、共同抵当権については各自分担額を負担する とともに、自己所有の不動産上の後順位抵当権の被担保債権の負担をするほか、そ れぞれの配当要求債権者の債権を弁済して、残余があればその交付を受けることと なるのである。この場合、共同抵当権であれ、後順位抵当権であれ、所有者が物上 保証人又は第三取得者の地位にあれば、その抵当権者への弁済により債務者に対し - 4 - て求償することができるけれども、共同抵当権の全部の目的不動産については、も はや代位権その他の権利を有しないことはいうまでもないのであって、その所有の 目的不動産上の後順位抵当権についての弁済負担は、自己が債務 ことができるけれども、共同抵当権の全部の目的不動産については、も はや代位権その他の権利を有しないことはいうまでもないのであって、その所有の 目的不動産上の後順位抵当権についての弁済負担は、自己が債務者である場合はも とより、物上保証人である場合も、債務者に対する求償は別として、甘受すべきも のであることも当然である。  次に、異時競売の場合を考えると、その競売不動産上の後順位抵当権者は、共同 抵当権者が当該不動産の負担額を超えて弁済を受けた額(それは、他の目的不動産 の分担額の合計である。)については、同時競売の場合であればその額に相当する 配当金から弁済を受けることができるのであるから、物上保証人の所有かどうかを 問うことなく、常に他の不動産の分担額を限度として当該共同抵当権を自己の債権 の担保として代位取得することができるものと解することにより、同時競売の場合 と結果的に同一になるのであるし、異時競売の対象不動産が物上保証人の所有であ る場合も、その物上保証人は、その不動産を責任財産として、共同抵当権の分担額 の負担を甘受すべきは当然であり、また自己の設定した後順位抵当権の権利者の他 の共同抵当権の右の代位取得を甘受してその優先弁済権を享受させるべきであり、 そうでなければ、同時競売の場合とは同一の結果が得られないわけである。したが って、物上保証人所有の不動産であっても、後順位抵当権者の民法三九二条二項後 段の規定による代位を物上保証人の同法五〇一条による代位よりも優先して認める べきである。 四 しかるに、多数意見は、物上保証人所有の不動産上の後順位抵当権については、 同法三九二条二項後段の規定は適用されない(換言すれば、後順位抵当権者は代位 することができない)ものとして、物上保証人の代位を優先保護することとしてい るのであるが、さらに、右の後順位抵当権者の保護 同法三九二条二項後段の規定は適用されない(換言すれば、後順位抵当権者は代位 することができない)ものとして、物上保証人の代位を優先保護することとしてい るのであるが、さらに、右の後順位抵当権者の保護のために、「あたかも右抵当権 (物上保証人の代位取得した共同抵当権)の上に民法三七二条、三〇四条一項本文 - 5 - の規定により物上代位するのと同様に、右の抵当権から優先して弁済を受けること ができる」ものとしている。  しかし、物上保証人の代位を優先保護すべきものとする理由は必ずしも明らかに されていないが、当該物上保証人がその設定した後順位抵当権の被担保債権の債務 者である場合に、その後順位抵当権者の代位を排除して物上保証人の代位を優先さ せることはいかにも不条理の感を免れない。さらに、多数意見の「あたかも右抵当 権の上に物上代位するのと同様に、右の抵当権から優先弁済を受けることができる」 とする趣旨も必ずしも明らかでないが、おそらく当該物上保証人の配当金請求権に 対し別途債権に対する強制執行として差押えを要せずして優先弁済権を行使し得る ものとするのか、又は物上保証人の代位した共同抵当権の転抵当と同様の優先弁済 権を行使し得るものとするのかのいずれかであろうが、その根拠が必ずしも明らか でないのみならず、その執行手続についても疑問なしとしない。そのような疑義の ある態様において後順位抵当権者の保護を図るよりも、後順位抵当権者の前記の代 位を肯認するのがより直截簡明ではなかろうか。 五 以上のとおり、物上保証人の所有不動産上の後順位抵当権者についても、同法 三九二条二項後段の規定により、当該後順位抵当権者は、当該後順位抵当権の被担 保債権を担保するものとして他の不動産の共同抵当権を当該不動産の分担額を限度 として代位取得することができるものとし、したがって不動産登記法一一 規定により、当該後順位抵当権者は、当該後順位抵当権の被担 保債権を担保するものとして他の不動産の共同抵当権を当該不動産の分担額を限度 として代位取得することができるものとし、したがって不動産登記法一一九条ノ四 による申請をして共同抵当権の一部移転の登記を受けることができるものと解すべ きである(なお、この場合、物上保証人は、他の目的不動産上に後順位抵当権が存 しない場合において、当該不動産の所有者が債務者であるときは、共同抵当権の被 担保債権から物上保証人所有の不動産の分担額の部分を控除した残額債権の全部を、 求償権の範囲内において共同抵当権とともに同法五〇一条三号により代位取得する ことになるし、他の目的不動産上に後順位抵当権が存する場合には、当該不動産の - 6 - 分担額から前記の後順位抵当権者の代位した額を控除した残額についてのみ右の代 位取得をすることとなるのである。)。      最高裁判所第二小法廷          裁判長裁判官    島   谷   六   郎             裁判官    牧       圭   次             裁判官    藤   島       昭             裁判官    香   川   保   一             裁判官    奧   野   久   之 - 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