平成20(ネ)424 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成20年11月11日 名古屋高等裁判所 棄却 名古屋地方裁判所 平成17(ワ)1243
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判決文本文11,363 文字)

(注)別紙請求一覧表(1),同表(2)及び同表(3)は,掲載を省略しました。 原判決・名古屋地方裁判所平成17年(ワ)第1243号等は,当ホームページの裁判例情報のページから検索できます。 主文 本件控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人は,控訴人らに対し,各控訴人に対応する別紙請求一覧表(1)ないし(3)の「請求額」欄記載の金員及びこれらに対する,同表(1)記載の控訴人らの請求につき平成17年4月21日から,同表(2)記載の控訴人らの請求につき平成17年8月10日から,同表(3)記載の控訴人らの請求につき平成19年3月15日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は,第1,2審を通じ被控訴人の負担とする。 第2,3項につき仮執行宣言第2事案の概要 本件は,被控訴人の提供するインターネットオークションサイト(本件サービス)を利用して,商品を落札し,その代金を支払ったにもかかわらず,商品の提供を受けられないという詐欺被害に遭った控訴人らが,被控訴人の提供する本件システムには,契約及び不法行為上の一般的な義務である詐欺被害の生じないシステムの構築義務に反する瑕疵があり,それによって控訴人らは,上記詐欺被害に遭ったとして,被控訴人に対し,債務不履行又は不法行為に基づき,損害賠償金(別紙請求一覧表(1)ないし(3)記載のとおりの各控訴人の損害額及びそれらの15パーセントに相当する弁護士費用)並びにこれらに対する, いずれも請求及び不法行為の結果発生後(訴状送達の日の翌日)である,同表(1)記載の控訴人らの各請求につき平成17年4月21日から,同表(2)記載の控訴人らの各請求につき平成17年8月10日から いずれも請求及び不法行為の結果発生後(訴状送達の日の翌日)である,同表(1)記載の控訴人らの各請求につき平成17年4月21日から,同表(2)記載の控訴人らの各請求につき平成17年8月10日から,同表(3)記載の控訴人らの各請求につき平成19年3月15日から,それぞれ支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は控訴人らの請求をいずれも棄却し,これに不服のある控訴人らが控訴をした。 当事者間に争いのない事実,争点及びこれに対する当事者の主張は,次の4,5で付け加えるほか,原判決「事実及び理由」中の「第2事案の概要」の「1」ないし「3」記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決の補正(1)原判決書11頁16行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「dそして,エスクローサービスを利用者間のすべての取引に義務付けることは,営利事業としての本件サービスの運営に困難を強いることにはならない。平等かつ安価にエスクローサービスを展開すれば,かえって,詐欺的犯罪行為を防ぐことが可能となるので,利用者のみならず,本件サービスの運営者である被控訴人にとっても有益である。したがって,被控訴人は,少なくとも,落札者が,エスクローサービスの利用を求めた場合には,これを拒否できない仕組みを採用すべきであり,これを採用したとしても運営者に困難を強いることにはならない(なお,被控訴人は,出品時手元にない商品の出品を禁止している。)。」(2)原判決書18頁4行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「被控訴人は,本件サービスを利用しての詐欺的犯罪行為が,一定期間にどの程度発生し,全体に占める割合がどの程度であったかを示すべきである。 そうすれば,利用者は,本件サービスを利用しないという る。 「被控訴人は,本件サービスを利用しての詐欺的犯罪行為が,一定期間にどの程度発生し,全体に占める割合がどの程度であったかを示すべきである。 そうすれば,利用者は,本件サービスを利用しないという選択もあったはずであるが,被控訴人の行ってきたトラブル事例の紹介,本件サービスを利用 する際に注意すべきポイントを掲載したページを設ける程度では,十分でない。 また,トラブルを発生させた利用者の預金口座のホームページでの開示は,本件サービスにおける利用が削除,禁止されない限り,注意喚起としては不十分である。」(3)原判決書20頁24行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「c被控訴人は,このように本件サービスの利用における詐欺被害防止に向けた様々な注意喚起を行っており,これで十分である。控訴人らは,被控訴人が詐欺被害の発生状況(頻度)という特定の情報を明示すべき旨主張するが,このことを明示すべき義務があるとする合理的な理由はない。また,問題のあった銀行口座の停止は,当該口座を管理している銀行しかできないものであり,そもそも,被控訴人が,報告されたトラブル口座について,真に詐欺などの犯罪行為があったか否かを正確に判断することは困難である。」 当審において当事者が追加又は敷衍した主張(控訴人ら)(1)伝統的オークションでは,競売人は,売主から最良の買値での執行を委託され,競売人を受託者あるいは代理人とするエージェンシー関係が存在する。 そして,競売人は,通常,代理人として次の4つの機能を果たしている。 ①売買の対象となる商品に関する情報の提供。通常,競売人は,売主からの情報に独自の審査を加え,一定の条件を備えた商品等を取引対象として上場する。さらに,売買に先立ち,買主に自らの目で商品などを確認する機会を提供する。 ②売 る情報の提供。通常,競売人は,売主からの情報に独自の審査を加え,一定の条件を備えた商品等を取引対象として上場する。さらに,売買に先立ち,買主に自らの目で商品などを確認する機会を提供する。 ②売主からの売買条件に従って,最良条件で委託された商品などを売る取引執行機能。 ③決済(代金支払・受渡し)の代行機能。競売人は,売買に先立って, 売主から商品の預託を受け,落札後速やかに買主から落札代金を徴収し,確認した上で,落札商品を買主に受け渡し,それと同時に売主の勘定に入金をする。 ④約定価格に関する情報の提供機能。競売人は,取引成立後速やかに価格情報を提供することによって,市場参加者の不安を軽減し,期待修正を容易にするなどを通じて取引を誘引し,市場の流動性を高め正常な価格形成を助ける機能を果たしている。 一方,インターネットオークションでは,競売人の上記4つの機能のうち,②と④は備えているが,①の商品に関する情報提供機能のうち,売主からの情報を独自に審査する機能はなく,買主は,疑問があれば,サイト運営者の提供するシステムを使って質問することはできるが,その場合でも出品者の提供情報を信じるしかない。③の決済及び受渡機能は,利用者すべてに提供が保障されているわけではなく,用意されているエスクローサービスや決済システムは利用者のオプションに委ねられている。そして,インターネットオークションに欠けている上記2つの機能は,インターネットオークション取引が安全かつ円滑に行われるためには不可欠であり,一般の消費者は,この点につき自らのリスクで参加している。 (2)一般の売買契約は,売主と買主の意思表示が合致した時点で成立するが,インターネットオークションでは,サイト運営者(被控訴人)との間でその提供するインターネットオークションシステム(本件シ 。 (2)一般の売買契約は,売主と買主の意思表示が合致した時点で成立するが,インターネットオークションでは,サイト運営者(被控訴人)との間でその提供するインターネットオークションシステム(本件システム)を利用して取引を行う旨の基本契約が結ばれ,その事業者の定める条件を承諾しなければシステムを利用した取引にアクセスできないという条件の下で,利用者間での個別取引がされる仕組みになっている。したがって,インターネットオークションでの取引は,個別契約である売買契約に当事者間の契約条件の交渉過程が存在せず,あらかじめサイト運営者の設定した条件以外での取引はできなくなっている。この点に着目すれば,売買契約がシステム利用契約と いう基本契約の附合契約であるか,あるいは,システム利用契約と売買契約がサイト運営者(被控訴人),出品者,落札者(控訴人ら)という三当事者の契約の形を取る複合契約であると考えられる。 そして,利用者である出品者と落札者間の売買契約は,サイト利用契約に基づいて,オークションサイト上で,サイト運営者の用意したシステムの指示に従って,出品から落札までの売買に関わる一連の過程がすべて行われる仕組みになっている。したがって,サイト運営者(被控訴人)は,利用者の出品物が他の利用者(控訴人ら)によって落札させる目的で,出品者と落札者の間の売買契約の媒介を行っていることになる。よって,サイト運営者(被控訴人)は,民事仲立人である。また,被控訴人は,出品商品1点ごとに出品システム利用料,落札が決定すると出品者から落札金額に応じて一定割合で徴収する落札システム利用料及び出品取消料などを徴収しているが,これらは,民事仲立契約に伴う出品者による報酬である。 サイト運営者の被控訴人は,民事仲立人であるから,委託者(出品者)と相手方(落札者,控訴人 落札システム利用料及び出品取消料などを徴収しているが,これらは,民事仲立契約に伴う出品者による報酬である。 サイト運営者の被控訴人は,民事仲立人であるから,委託者(出品者)と相手方(落札者,控訴人ら)との売買契約締結のために努力すべき義務があり,そのために,自ら提供するインターネットオークションサイト(本件システム)での委託者と相手方の契約締結に至るためのシステムを整備,維持,管理するなどの義務を負い,それを怠ったために委託者と相手方との契約締結に支障を来し,損害が発生した場合には,民事仲立人としての責任を負うと解される。 その責任の前提としての,民事仲立人の義務としては,取引が安全に行われるように,提供するオークションのシステムにおいて,詐欺などの被害を防止するための事前の対策を講じる義務があり,その内容は,同業他社がその運営するサイトでどのような対策を採っているかを調査し,合理的に判断して導入が可能であると思われる対策を講じる義務と解される。 (3)当審において追加主張した注意義務(出品者情報の開示)について ア上述のとおり,目的商品が落札された場合,被控訴人は仲立人と同様の立場に立つので,被控訴人は,氏名などを他方当事者に報告すべきである(商法546条1項)。 代金支払をしたのに,落札者の下に落札した商品が届かないなど一定の場合に,出品者情報の提供・開示がされることになれば,提供・開示があることを前提とした心理的抑制が働き,詐欺的犯罪行為の抑制につながることは明らかである。 イまた,本件サービスは,古物の競りあつせんを行うものであるから,被控訴人は,そもそも出品者情報の真偽について確認する措置を執るように努めなければならず(古物営業法21条の2),少なくとも,平成16年7月1日以前の本人確認方法だけでなく,その後現実に出 るから,被控訴人は,そもそも出品者情報の真偽について確認する措置を執るように努めなければならず(古物営業法21条の2),少なくとも,平成16年7月1日以前の本人確認方法だけでなく,その後現実に出品をする利用者に対しては,郵送住所確認の方法を採るべきであった。しかるに,被控訴人は,この本人確認の措置を執ることを怠っていた。 よって,被控訴人が行っている出品者情報の確認は,不十分な確認であり,仮に十分であったとしても,少なくとも落札者からの求めがあればその情報を開示すべきである。 (4)不法行為の成立被控訴人は,犯罪被害が多発するような瑕疵あるシステムを提供し続け,十分な注意義務を尽くさなかったので,不法行為責任を負う。 (被控訴人)(1)被控訴人が提供する本件サービスにおける落札者のへ落札通知は,システム上の機能として自動的に行われている「落札者決定の事実の通知」に過ぎない。また,自動入札機能は,確実に落札したい利用者(入札者)の便宜のために用意されたシステム上の機能に過ぎない。このような本件サービスの実態に鑑みれば,被控訴人が利用者間の個々の取引に積極的に介入して,取引成立に尽力しているとはいえない。 また,落札通知後においては,専ら出品者と落札者間において,電子メールなどにより連絡を取り合い,支払方法や商品発送時期などの詳細について協議することで,契約締結に向けたやりとりが行われるのであり,被控訴人が,出品者と落札者間のやりとりに何らかの関与をすることはない。よって,被控訴人と本件サービスの利用者(控訴人ら)との契約が仲立となるものではない。 本件サービスの利用希望者は,被控訴人が示す本件利用規約及び本件ガイドラインをウェブ上でクリックし同意することにより,初めて本件サービスの提供を受けられる。したがって,本件ガイドライ のではない。 本件サービスの利用希望者は,被控訴人が示す本件利用規約及び本件ガイドラインをウェブ上でクリックし同意することにより,初めて本件サービスの提供を受けられる。したがって,本件ガイドラインと本件利用規約は,被控訴人と利用者との間の合意内容を構成する。そして,これらには,被控訴人が取引のきっかけを提供する「場の提供者」に過ぎず,個別の取引は,利用者の自己責任で行われるべきことが明記されているから,本件システムの利用者(控訴人ら)と被控訴人との間の契約関係は,被控訴人が利用者に対し,インターネットオークションサイトという本件システムを提供することにより,取引の場を提供することを約し,利用者は,被控訴人に対し,その場の提供の対価としてシステム利用料の支払を約するという「システム利用契約」の一形態というべきである。 なお,この契約が仲立契約であるとしても,これにより控訴人らが主張する被控訴人の詐欺防止への具体的な注意義務が導かれるものではない。 (2)出品者情報の開示について平成15年9月1日から古物営業法の改正法が施行されたが,同法21条の2は,そもそも盗品等の売買を防止する目的として,インターネットオークション事業に対して,出品者に対する本人確認の努力義務を規定したものにすぎず,出品者情報の提供・開示を義務付けるものではない。その上,被控訴人は,同法施行に先立つ平成13年から,「口座振替による認証」,「通常のクレジット・カード認証」を行っており,被控訴人の本人確認手続 の内容が,その時代の水準に照らして不十分であったことはない。これに加え,被控訴人は,平成16年7月に「郵送住所確認」を,平成18年11月に「配送本人確認」を,それぞれ導入している。 (3)不法行為について被控訴人には,控訴人らが主張する注意義務違反はないか に加え,被控訴人は,平成16年7月に「郵送住所確認」を,平成18年11月に「配送本人確認」を,それぞれ導入している。 (3)不法行為について被控訴人には,控訴人らが主張する注意義務違反はないから,「瑕疵のあるシステム」を提供し続けたことはなく,控訴人らの主張は失当である。 第3 証拠 原審記録中の書証目録及び証人等目録並びに当審記録中の書証目録記載のとおりであるから,これを引用する。 第4当裁判所の判断当裁判所も,控訴人らの請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は,次のとおり付け加えるほか,原判決「事実及び理由」中の「第3当裁判所の判断」記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決の補正(1)原判決書25頁8行目の末尾の次に,次のとおり加える。 「なお,被控訴人の入札は,自動入札,すなわち最高入札価格を設定し,その範囲内で,他の入札者の入札価格を上回るまで,自動的に入札価格を上げて再入札する仕組みを採用している。」(2)原判決書30頁5行目の末尾の次に,次のとおり加える。 「この点,控訴人らは,アメリカ合衆国のE社がそのインターネットオークションにおいてF社の決済サービスを利用していると主張するが,日本には,この決済システムに相当するシステムを運営する会社が存在するとは認められない。」(3)原判決書33頁3行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「また,控訴人らは,落札者が,エスクローサービスの利用を求めた場合には,これを拒否できない仕組みを採用すべきであると主張する。しかし,落 札後,落札者は,出品者との交渉において,エスクローサービスの利用を求めることができ,出品者がこれを拒絶すれば,売買契約自体の締結を拒むことができるから,被控訴人が,予め控訴人らの主張するような仕組みを採用しなければな との交渉において,エスクローサービスの利用を求めることができ,出品者がこれを拒絶すれば,売買契約自体の締結を拒むことができるから,被控訴人が,予め控訴人らの主張するような仕組みを採用しなければならない義務があるとは認められない。」(4)原判決書34頁1行目の末尾の次に,行を改めて,次のとおり加える。 「さらに,控訴人らは,一定期間における詐欺的犯罪行為の発生頻度,発生割合を明らかにすべきであり,トラブルを発生させた利用口座の本件サービスでの利用を禁止すべきであると主張する。しかし,上述のとおり,被控訴人は,利用者(入札希望者)に対する相応の注意喚起措置を執っており,詐欺的犯罪行為の発生頻度,発生割合を明らかにすれば,詐欺的被害を防止できる関係にあるとは認められないので,上述の注意喚起に加え,詐欺的犯罪行為の発生頻度,発生割合を明らかにしなければ必要な注意喚起をしたことにならないとは認められない。」(5)原判決書34頁19行目の冒頭から同行目の末尾までを,次のとおり改める。 「(3)また,控訴人らは,トラブルを発生させた利用者の預金口座の利用を禁止すべきであると主張する。しかし,被控訴人は,「金を振り込んだが商品が送られてこない」などのトラブルが報告された口座のリストを公開し,この公開された口座に振込みをした場合には補償の対象とならない等の注意喚起の呼びかけをしている(乙6の3,7の3)。また,出品商品を紹介するページには,支払方法(銀行振込み,郵便振替等)は記載されいるが,振込先口座の口座番号は記載されていない(乙8の1)。したがって,出品者の落札者に対する振込口座の開示は,落札後の交渉過程でされるが,被控訴人はこの段階で両者の交渉に関与することはないから,被控訴人がトラブルを発生させた利用者(出品者)の預金口座の利用を禁 て,出品者の落札者に対する振込口座の開示は,落札後の交渉過程でされるが,被控訴人はこの段階で両者の交渉に関与することはないから,被控訴人がトラブルを発生させた利用者(出品者)の預金口座の利用を禁止することはできない。また,控訴人らの主張が,トラブルを発生させた利用者の預 金口座の利用自体の禁止を求めるものであるならば,これを行うことができるのは口座を開設した銀行であり,これを被控訴人に求めることは不可能を強いることになる。 よって,控訴人らの上記主張は採用できない。 (4)以上によれば,被控訴人に上記義務違反を認めることはできない。」 当審において当事者が追加又は敷衍した主張について(1)控訴人らは,本件サービスにおける被控訴人の法的地位を民事仲立人(あるいは,それに類似した立場)と主張する。そこで,この点につき,判断する。 アまず,本件システムを利用して出品商品が落札された場合における売買契約の成立時期につき検討する。 被控訴人は,落札者が決定した場合,自動的に落札者に電子メールで通知をする。その通知の内容には,落札商品,落札価格は記載されているが,出品者を特定する情報は記載されていない。そして,上記電子メールには,「このオークションの出品者にも通知されています。支払方法や商品の受取方法については,出品者からの連絡をお待ちください。」と記載されている(乙9)。 そして,その後,落札者は,出品者からの連絡を待ち,交渉をすることになるが,この交渉は,両者が直接電子メール等を使用して行い,被控訴人はこの交渉に何ら関与することはない。この交渉の結果,出品者と落札者が合意に達すれば,商品の受渡し及び代金の支払がされることになる。 しかし,合意に達しなければ,出品者は,落札者の意思に関わりなく出品を取り消すことができ(これは,出品 この交渉の結果,出品者と落札者が合意に達すれば,商品の受渡し及び代金の支払がされることになる。 しかし,合意に達しなければ,出品者は,落札者の意思に関わりなく出品を取り消すことができ(これは,出品取消システム利用料が存在することから認められる〔乙5の13,弁論の全趣旨〕。)。他方,落札者も,落札後落札を辞退することが可能であり,この場合には,出品者が,最高額落札者を取り消すことになる(乙7の4,弁論の全趣旨)。 以上の認定事実に照らすと,落札されても,出品者も落札者もその後の交渉から離脱することが制度上認められており,必ず落札商品の引渡し及び代金の支払をしなくてはならない立場に立つわけではない。そうすると,落札により,出品者と落札者との間で売買契約が成立したと認めることはできず,上記交渉の結果合意が成立して初めて売買契約が成立したものと認めるのが相当である。 被控訴人作成の本件ガイドラインの「出品された商品の落札に基づいて売買契約が成立した場合には」等の記述は,本件サービスにおける上述の実態を前提にしたものと理解できる。 イ控訴人らは,被控訴人は民事仲立人(あるいはそれに類似した立場)であると主張するところ,仲立人は,他人間の法律行為の媒介をすること,すなわち他人間の法律行為(本件では売買契約の締結)に尽力する者をいう。本件においては,被控訴人は,上述のとおり,落札後の出品者,落札者間の上記交渉の過程には一切関与しておらず,何ら,出品者と落札者との間の売買契約の締結に尽力していない。確かに,被控訴人は,本件システムを運営しているが,出品者は自らの意思で本件システムのインターネットオークションに出品し,入札者も自らの意思で入札をするのであり,被控訴人が,その過程で両者に働きかけることはない。そして,落札者は,入札者の入札価格に 品者は自らの意思で本件システムのインターネットオークションに出品し,入札者も自らの意思で入札をするのであり,被控訴人が,その過程で両者に働きかけることはない。そして,落札者は,入札者の入札価格に基づき,入札期間終了時点の最高買取価格で入札した者に対し自動的に決定され,その者に,自動的に電子メールで通知が送られる。この過程は,本件システムのプログラムに従い自動的に行われており,被控訴人が,落札に向けて何らかの尽力をしているとは認められない。 したがって,控訴人らの上記主張は,採用できない。 この点,控訴人らは,出品者あるいは落札者の一方が最高買取価格以外での取引を望んだとしても,他方にその希望を述べると,利用者評価に悪い評価が反映されることが必至であるから,本件サービスを利用する上で 致命的となる利用者評価欄の悪い評価を避ける心理が働くため,利用者評価システムが最高買取価格での取引の実現に一役買っていると主張する。 しかし,利用者評価システムは,本件システムの参加者が出品者や落札者を評価し,他の利用者に対しその情報を提供するシステムであり,その評価内容に被控訴人が関わっていない。したがって,入札者,落札者に,利用者評価システムにおける悪い評価を避けるために,落札価格以外での取引を避ける心理が働くとしても,それは,利用者評価システムが存在することによる反射的な効果であり,このシステムの存在をもって,被控訴人が,売買契約の締結に尽力したとは認められない。 また,控訴人らは,本件サービスでは最高買取価格で取引を行う暗黙の了解があるので,被控訴人は,出品者と落札者間の取引の本質的部分の決定に関与していると主張する。しかし,入札価格(したがって最高買取価格)を決めるのは,入札者自身であり,被控訴人は,本件システムを提供していること以外に最高買 出品者と落札者間の取引の本質的部分の決定に関与していると主張する。しかし,入札価格(したがって最高買取価格)を決めるのは,入札者自身であり,被控訴人は,本件システムを提供していること以外に最高買取価格の形成に関与していない。もっとも,本件システムでは自動入札が採用されており,複数の入札者がいる場合,各入札者の設定した最高入札価格まで,自動的に他の入札者の入札価格(現在の価格)に最低入札単位を加えた金額で再入札する仕組みになっているが,これは,改めて再入札をする手間を省くために採用されたシステムであり,最高入札価格の設定は入札者自身でなされている以上,この自動入札システムがあることを以て,被控訴人が売買契約の締結に尽力したとは認められない。また,最高買取価格で入札した者が出品者と売買契約の交渉をするのであるから,この価格を前提に交渉が行われることは,当然のことである。したがって,控訴人らの上記主張も採用できない。 ウよって,被控訴人は,出品者,落札者間の売買契約における仲立人(あるいはそれに類似した立場)であるとは認められず,被控訴人が民事仲立人であることを前提とした控訴人らの主張は,その余の点を判断するまで もなく理由がない。 (2)控訴人らは,古物営業法(平成14年法律115号による改正後のもの)21条の2を根拠に,被控訴人は出品者情報の真偽を確認する義務があると主張する。 しかし,同条は「古物競りあつせん業者は,古物の売却をしようとする者からのあつせんの申込みを受けようとするときは,その相手方の真偽を確認するための措置をとるよう努めなければならない。」と規定しており,被控訴人に出品者の真偽を確認する措置をとるべき努力義務を課しているが,出品者情報の真偽を個別に確認する義務を課してはいない。そして,被控訴人は,平成13年 努めなければならない。」と規定しており,被控訴人に出品者の真偽を確認する措置をとるべき努力義務を課しているが,出品者情報の真偽を個別に確認する義務を課してはいない。そして,被控訴人は,平成13年から「口座振替による認証」,「通常のクレジット・カード認証」を行っており,さらに,平成16年7月に「郵送住所確認」を,平成18年11月に「配送本人確認」を,それぞれ導入しており(乙13,20),この努力義務を果たしていると認められる。したがって,上記主張は採用できない。 (3)控訴人らは,被控訴人が「瑕疵のあるシステム」を提供し続けたことが不法行為に当たると主張するが,以上判示したところによれば,本件システムに瑕疵があったとは認められず,上記主張は採用できない。 第5 結論 以上判示したところによれば,原判決は相当であり,本件控訴はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条1項本文,65条1項本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第4部裁判長裁判官岡久幸治 裁判官加島滋人裁判官鳥居俊一

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