平成17年9月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成16年(行ウ)第38号法人税更正処分等取消請求事件口頭弁論終結の日平成17年7月27日判決 主文 1 被告が平成12年8月29日付けで原告に対して行った平成8年7月1日から平成9年6月30日までの事業年度の法人税の更正処分(ただし,納付すべき税額4億6518万0600円を超える部分)及び過少申告加算税賦課決定処分をそれぞれ取り消す。 2 被告が平成12年8月29日付けで原告に対して行った平成9年7月1日から平成10年6月30日までの事業年度の法人税の更正処分(ただし,納付すべき税額9467万5400円を超える部分)及び過少申告加算税賦課決定処分をそれぞれ取り消す。 3 被告が平成12年8月29日付けで原告に対して行った平成10年7月1日から平成11年6月30日までの事業年度の法人税の更正処分(ただし,納付すべき税額6584万6700円を超える部分)及び過少申告加算税賦課決定処分をそれぞれ取り消す。 4 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の請求主文同旨第2 事案の概要本件は,原告が,H.R.D.SingaporePteLtd(以下「HRD」という。なお,HRDは,HousingResearchandDevelopmentの略称である。)との間で締結された,原告が保有するノウハウ等を譲渡する旨の契約(以下「本件譲渡契約」という。)に基づき,HRDから受領した譲渡代金について,被告が,当該ノウハウ等は株式会社一条工務店(以下「一条工務店」という。)に帰属しており,上記契約は架空の取引であるから,受領した金員は法人税法22条2項所定の「無償による資産の譲受け……に係る……収益」(受贈益)に該当するとの理由で,平 (以下「一条工務店」という。)に帰属しており,上記契約は架空の取引であるから,受領した金員は法人税法22条2項所定の「無償による資産の譲受け……に係る……収益」(受贈益)に該当するとの理由で,平成8年7月1日から平成9年6月30日,同年7月1日から平成10年6月30日及び同年7月1日から平成11年6月30日までの各事業年度(以下,個別には「平成9年6月期」などといい,3事業年度を総称して「本件各事業年度」という。)の法人税の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をしたことから,原告が,本件譲渡契約は架空のものではないと主張して,上記各処分(ただし,更正処分については,確定申告又は従前の更正処分によって,原告が自認する税額を超える部分)の取消しを求めた抗告訴訟である。 なお,本件は,原告を一条工務店,被告を江東西税務署長とする東京地方裁判所平成15年(行ウ)第553号法人税更正処分等取消請求事件と密接に関連し,その派生事件に位置づけられるものであるが,上記事件について,東京地方裁判所は,平成17年7月21日,基本的に一条工務店の請求を認容する判決を言い渡している。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実,証拠により容易に認定できる事実等)(1) 関係者等ア原告原告は,昭和62年7月1日に設立され,住宅関連業務の研究開発及びこれに関する経営指導等を目的とする株式会社である(なお,平成5年3月,商号を「株式会社一条住宅研究所」から「株式会社住宅研究所」に変更し,平成12年8月26日,再び現在の商号に変更している。)。 原告の代表取締役は,設立時からA(以下「A」という。)であったが,同人は,平成9年12月15日に辞任し,Bが代表取締役に就任した。 原告の株式は,本件各事業年度を通して,その発行済株式の総数の85パーセントを親会社に当た 時からA(以下「A」という。)であったが,同人は,平成9年12月15日に辞任し,Bが代表取締役に就任した。 原告の株式は,本件各事業年度を通して,その発行済株式の総数の85パーセントを親会社に当たる一条工務店が保有している。 イ一条工務店一条工務店は,昭和53年9月12日,京都市にて設立された株式会社であり,木造注文住宅の販売及び施工を目的としている。 また,一条工務店は,多数の指定商品等につき,「株式会社一条工務店」及び「一条工務店」の商標(以下「本件商標」という。)を登録する(乙5の1ないし10)とともに,洋風住宅「SAISON」,和風住宅「円熟の家百年」の商品名を用いて,住宅の販売等を行っている。 一条工務店の代表取締役は,設立時からAであったが,同人は,平成9年8月9日に辞任し,Cが代表取締役に就任した。 一条工務店の株式は,HRDの役員であるD(Aの長男。以下「D」という。)が,本件各事業年度を通して,その発行済株式総数の約75パーセントを,HawkingHoldingsPte.Ltd(平成7年2月4日設立,シンガポール共和国),株式会社ラスティング及び株式会社日信を介して間接的に保有している。 ウ HRDHRDは,1995年(平成7年)2月4日,シンガポール共和国において設立された法人で,代表者は設立時からAであったが,同人は,1996年(平成8年)11月3日に辞任し,E(以下「E」という。)が代表者に就任した。 HRDの株式は,本件各事業年度を通して,Dがその発行済株式総数の99.99パーセントを保有している。 (2) フランチャイズ事業の概要ア原告設立までのフランチャイズ契約(ア) 一条工務店は,昭和53年の設立以後,住宅展示場を使用して木造注文住宅の販売及び施工を行っていたが,さらに,木造注文住宅の建築事業を ンチャイズ事業の概要ア原告設立までのフランチャイズ契約(ア) 一条工務店は,昭和53年の設立以後,住宅展示場を使用して木造注文住宅の販売及び施工を行っていたが,さらに,木造注文住宅の建築事業を拡大するため,昭和61年11月以降,別表1記載のとおり,全国各地の工務店との間で,フランチャイズ契約を締結した(以下,同表の契約を同表左欄の番号に即して「契約番号1」のように表示し,これらの契約を併せて「本件各フランチャイズ契約」,フランチャイジーを「GC」,GC各社,一条工務店及び原告を「一条グループ」という。)。 (イ) 本件各フランチャイズ契約のうち,原告設立前に締結された契約(契約番号1ないし9)の内容は,いずれもほぼ同一であり,その主なものは,次のとおりである(甲8の2ないし10,乙6。なお,以下においては,甲8の3をもって代表させることとし,甲は契約の相手方であるGCの立見建設株式会社,乙は一条工務店,丙は立見建設株式会社と一条工務店によって設立予定の「株式会社一条工務店群馬」を指す。)。 2. 「経営システム」の供与2-1 乙は乙独自の仕様に基く木造注文住宅(以下本品という)に対する丙の事業展開(以下本事業という)に関する以下の事項に対し,経営のための専門知識・機能・技能・管理手法・有形無形の各種資料・データ・マニュアル,並びに考案などにつき,既に確立されたノウハウと経験を有している。 A.本品に関する材料の製造・製品の調達と品質管理B.販売並びにマーケティングの要領及び管理C.住宅に関する建築設計技術D.住宅に関する建築工事技術E.工事管理・監督の要領F.本事業に必要な組織体制作りG.本事業に必要な諸般の帳票・様式並びに管理手法2-2 乙は既に確立された(2-1)項記載のノウハウの他に,常に本事業経営の全般にわたって新 .工事管理・監督の要領F.本事業に必要な組織体制作りG.本事業に必要な諸般の帳票・様式並びに管理手法2-2 乙は既に確立された(2-1)項記載のノウハウの他に,常に本事業経営の全般にわたって新しいノウハウ開発を怠りなく行う。 2-3 (2-1)項及び(2-2)項記載の事項をここに「経営システム」と総称する。 2-4 甲乙両者が共存共栄する強力な取引関係を維持継続するためには,丙が乙から「経営システム」を受けることによって,本事業が継続して利益をあげることが前提となる。 よって乙は丙に「経営システム」を与え,この実現に責任を持つ。 又,丙は乙の指示指導を確実に守り,事業に専念し,これを遂行する義務を持つ。 3. 商標3-1 乙は丙に対し乙が所有する全ての商標・標章・商品名の使用を許諾する。 3-2 本契約が終了,或いは(8-4)項に基づいて解約又は解除となったときは,理由の如何を問わず,丙は乙が所有する商標・標章・商品名を使用することはできない。 又,丙はそれを表示した有形物を速やかに撤去,消滅させることとし,その作業は少なくも最長90日を越さないものとする。 ただし,丙と丙の顧客の間で未済の契約物件が存在するときは,該当物件が完了したときをもって本項を適用する。 4. 「経営システム」指導の責任乙は「経営システム」が完全に丙に根付くよう乙の施設内で行われる教育指導と,丙の業務実践過程中現地で実地に教育指導するとを問わず,指導要領に基く適宜な方法・手段によって丙を指導する。 (中略)5. ロイヤリティ丙は乙から供与された「経営システム」とこれに伴う乙の教育指導に対し,その対価として次のロイヤリティを乙に支払う。 5-1 ロイヤリティの計算基礎となる完工高とは,冷蔵庫・冷暖房器具・家具など及び其の他丙の顧客から支給される機器等及び外構工事・ う乙の教育指導に対し,その対価として次のロイヤリティを乙に支払う。 5-1 ロイヤリティの計算基礎となる完工高とは,冷蔵庫・冷暖房器具・家具など及び其の他丙の顧客から支給される機器等及び外構工事・営繕工事を除いたものを指す。 5-2 (5-1)で規定する完工高のをロイヤリティとする(注:契約番号4については,ロイヤリティ率が ,契約番号6及び8については,同率がとされている。)。 5-3 ロイヤリティの支払いは,本品の請求高合計分を毎月15日で締切り,翌月5日丙は現金をもって乙に支払う。 5-4 契約解除時点における受注残についても(5-1)(5-2)(5-3)項を適用する。 7. 資材の購入と其の他の責任7-1 以下に記載する本品の構造部材及びこれに関連する部品・付属品又は住設機器をここに資材と総称する。 7-2 甲・丙は原則として次の資材を乙より購入するものとする。ただし,特別な事情により甲・乙・丙間で合意するか,又は甲・丙にとって第三者の購入条件が乙より有利な場合,その限りでない。 A.乙の開発したオリジナル部材及び製品B.住設機器(流し台・洗面台・下駄箱)C.サッシ及びサッシの付属品D.ドアー及びドアー枠関係部品E.造作部材F.その他一条グループ(甲・乙・丙を含む)共同仕入品(以下略)イ原告と一条工務店との間のノウハウ供与契約(ア) 原告設立の前日である昭和62年6月30日付けで,原告が一条工務店にノウハウを供与する旨の契約書が存在する(以下,その契約を「昭和62年契約」という。甲8の1,乙7)。 (イ) 昭和62年契約の内容は,次のとおりである(以下,甲は原告,乙は一条工務店を指す。)。 1.「新しいノウハウ」の開発研究及び供与1-1 甲は甲独自の仕様に基く木造注文住宅(以下本品という 。 (イ) 昭和62年契約の内容は,次のとおりである(以下,甲は原告,乙は一条工務店を指す。)。 1.「新しいノウハウ」の開発研究及び供与1-1 甲は甲独自の仕様に基く木造注文住宅(以下本品という)に対する乙の事業展開(以下本事業という)に関する以下の事項に対し,経営のための専門知識・機能・技能・管理手法・有形無形の各種資料・データ・マニュアル,並びに考案などにつき,既に確立されたノウハウと経験を有している。 A.本品に関する材料の製造技術・製品の調達と品質管理技術B.販売並びにマーケティングの要領及び管理手法C.住宅に関する建築設計技術D.住宅に関する建築工事技術E.工事管理・監督の要領F.本事業に必要な組織体制作りの要領G.本事業に必要な諸般の帳票・様式並びに管理手法1-2 甲は既に確立された(1-1)項記載のノウハウに加え,常に本事業経営の全般にわたって「新しいノウハウ」の開発研究を怠りなく行う。 1-3 甲乙両者が共存共栄する強力な取引関係を維持継続するためには,乙が甲から「新しいノウハウ」を受けることによって,本事業が継続して利益をあげることが前提となる。 よって甲は乙に「新しいノウハウ」を与え,この実現に責務を持つ。 又,乙は甲の指示指導を確実に守り,事業に専念し,これを遂行する義務を持つ。 2.「新しいノウハウ」指導の責任甲は「新しいノウハウ」が完全に乙に根付くよう指導要領に基く適宜な方法手段によって乙を指導する。 3.ロイヤリティ乙は甲から供与された「新しいノウハウ」と,これに必要な開発費とこれに伴う甲の教育指導に対し,その対価として次のロイヤリティを甲に支払う。 3-1 ロイヤリティの計算基礎となる請求高合計とは,冷蔵庫・冷暖房器具・家具など及び其の他丙(注:乙の誤記)の顧客から支給される機器などを除いたものを指す 対価として次のロイヤリティを甲に支払う。 3-1 ロイヤリティの計算基礎となる請求高合計とは,冷蔵庫・冷暖房器具・家具など及び其の他丙(注:乙の誤記)の顧客から支給される機器などを除いたものを指す。 3-2 (3-1)で規定する請求高合計のをロイヤリティとする。 3-3 ロイヤリティの支払いは,本品の請求高合計を毎月末日で締め切り,翌月末日乙は現金をもって甲に支払う。 ウ原告設立後のフランチャイズ契約(ア) 原告設立後の昭和63年に締結されたフランチャイズ契約(契約番号10ないし12。甲8の11ないし13)これらの契約においては,地場工務店であるGCと,一条工務店及び原告とが契約当事者となり,原告がGCに経営システムを供与し,その対価としてGCが原告にロイヤリティを支払うこと,一条工務店が本件商標等の使用を許諾すること,GCは資材を一条工務店から購入することなどが合意されているところ,供与される経営システムの内容,ロイヤリティの内容,その計算方法等は,原告設立前のフランチャイズ契約の文言(上記ア)とほぼ同一である。 (イ) 平成元年から平成3年に締結されたフランチャイズ契約(契約番号13ないし18。甲8の14ないし19)これらの契約においては,地場工務店であるGCと,一条工務店が契約当事者となり,本部機能を有する一条工務店が,本件商標等の使用を許諾するとともに,経営システムの供与とその指導援助を行い,これらの対価としてGCが一条工務店にロイヤリティを支払うこと,GCは一条工務店から資材を購入することなどが合意されているところ,これらの内容は,権利義務の主体が異なる点を除くと,従来のフランチャイズ契約書の文言と類似しているが,ロイヤリティは本件商標等の使用料の趣旨をも含むものとされている(もっとも,その計算方法は,従来と同様であ 容は,権利義務の主体が異なる点を除くと,従来のフランチャイズ契約書の文言と類似しているが,ロイヤリティは本件商標等の使用料の趣旨をも含むものとされている(もっとも,その計算方法は,従来と同様である。)ほか,GCの報告義務,守秘義務,終了後貸与されている各種マニュアルの返還義務などが定められ,また,契約終了時にGCと顧客との契約に基づいて工事中の物件のうち,引渡前のものの所有権が一条工務店に移転することなどが合意されている。 (ウ) 平成5年に締結されたフランチャイズ契約(契約番号19ないし21。乙19ないし21)これらの契約は,一条工務店及び原告が契約の一方当事者となって,地場工務店であるGCとの間で締結されており,一条工務店及び原告が,本件商標等の使用を許諾するとともに,経営システムを供与し,これらの対価としてGCが一条工務店及び原告にロイヤリティを支払うこと,GCは一条工務店及び原告から資材を購入することなどが合意されているところ,これらの内容は,権利義務の主体が異なる点(一条工務店と原告とが区別されることなく,契約の一方当事者となっている。)を除くと,上記(イ)の契約の文言とほぼ同一であるが,契約が終了したときの顧客に対する契約履行責任については,一条工務店,原告及びGCが共に責任を果たすこととされている。 エ一条グループから脱退したGCなお,GC各社のうち,契約番号1のクリヤマ株式会社(以下「クリヤマ」という。)及び同12の一条工務店愛媛(現在は,株式会社未来工務店と商号変更している。以下「未来工務店」という。)は,現在,一条グループから離脱している。 (3) 原告とHRDとの間の本件譲渡契約ア 1995年(平成7年)2月28日付けで,原告からHRDにノウハウ及びデータベースを譲渡した旨の「ノウハウ及びデータベース譲渡契約 ープから離脱している。 (3) 原告とHRDとの間の本件譲渡契約ア 1995年(平成7年)2月28日付けで,原告からHRDにノウハウ及びデータベースを譲渡した旨の「ノウハウ及びデータベース譲渡契約書」と題する契約書(以下「本件譲渡契約書」という。甲4の1・2)が存在し,Aがそれぞれの代表者として記名押印及び署名している。 イその抜粋は,次のとおりである(甲は原告,乙はHRDを指す。)。 第1条(目的物1)甲は,甲の設立当初より研究開発した在来工法の集大成を下記の要領でマニュアル化し,その真正な所有者であるが,今般,このマニュアル及びその運用に係る一切のノウハウの所有権を乙に譲渡し,乙は譲渡を受けたノウハウの真正な所有者となる。(詳細は別紙1を参照のこと)(1) 設計マニュアル(2) 施工マニュアル(3) 営業マニュアル(4) 業務マニュアル第2条(目的物2)甲は,甲が過去の科学実験等によって獲得し,蓄積した以下のデータベース等の真正な所有者であるが,今般,これらのデータベース等の所有権を乙に譲渡し,乙は譲渡を受けたデータベース等の真正な所有者となる。(詳細は別紙2参照のこと)(1) データベース(2) 上記(1)を使用した著作物(3) 認定書類第5条(引渡の条件) 1 甲は,当目的物の受け渡しをシンガポール国内の乙の指定する場所にて行うものとする。 2 本契約に基づき,第1条及び第2条に規定する目的物は西暦1995年2月28日24時をもって甲から乙に引き渡されるものとする。 第6条(対価及び決済) 1 甲は,第1条及び第2条に規定する目的物を金20億円にて乙に譲渡するものとする。対価の最終決定については,試用期間終了後1ヶ月以内に第7条に規定する対価の修正の有無を相互に確認する。 (以下略)ウ上記第1条で引用されている別 る目的物を金20億円にて乙に譲渡するものとする。対価の最終決定については,試用期間終了後1ヶ月以内に第7条に規定する対価の修正の有無を相互に確認する。 (以下略)ウ上記第1条で引用されている別紙1を整理したものが別表2,上記第2条で引用されている別紙2を図表化して整理したものが別表3である(以下,本件譲渡契約において目的物とされた別表2のノウハウと別表3のデータベースを併せて「本件ノウハウ等」という。)。 (4) 被告による課税処分ア原告は,本件譲渡契約によって譲渡対価とされた20億円を平成7年7月1日から平成8年6月30日までの事業年度(以下「平成8年6月期」という。)の収益に計上して,平成8年9月2日,確定申告をした。 これに対して,被告は,平成9年3月ころ,同期を調査対象最終年度とする税務調査を行った上,同年7月4日付けで,別表4の同日付け「更正処分等」欄記載のとおり,本件譲渡契約に係る上記譲渡対価が過少であるとして,適正な譲渡対価を31億2601万2066円とすることなどを内容とする法人税額等の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をした(甲3。以下「本件先行処分」という。)。 イこれを受けて,原告は,平成8年11月1日にHRDから受領した18億円を本件譲渡契約の譲渡代金に係る未収金の回収とし,2億円を外国法人税に該当する租税公課として損金算入して,平成9年6月期の確定申告を行い,同様に,平成10年1月20日にHRDから受領した9億円を同未収金の回収とし,1億円を外国法人税に該当する租税公課として損金算入して,平成10年6月期の確定申告を行い,さらに,平成10年9月22日にHRDから受領した9000万円を同未収金の回収とし,1000万円を外国法人税に該当する租税公課として損金算入して,平成11年6月期の確定申告を行った( 定申告を行い,さらに,平成10年9月22日にHRDから受領した9000万円を同未収金の回収とし,1000万円を外国法人税に該当する租税公課として損金算入して,平成11年6月期の確定申告を行った(乙1ないし3。以下,上記の18億円,9億円及び9000万円の金員の授受を併せて「本件資金移動」という。)。 なお,被告は,原告の平成10年6月期及び平成11年6月期の各法人税について,平成11年11月26日付けで,別表4の同日付け「更正処分」欄記載のとおり,法人税額等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行っているが,これらの処分は,本件先行処分による処理を前提とするものであった。 ウその後,被告は,平成11年10月,原告の平成11年6月期を調査対象最終年度として,東京国税局との連携調査を行い(以下「本件調査」という。),①平成8年6月期については,本件譲渡契約代金を収益計上した本件先行処分による処理を自ら否定して,同期に計上された本件ノウハウ等の譲渡収益を減算し,②平成9年6月期から平成11年6月期については,HRDから実際に入金された額を原告の収益とし,かつ,本件資金移動を無償による資産の譲受け(受贈益)であるとして,別表4の平成12年8月29日付け「更正処分等」欄記載のとおり,法人税額等の更正処分(以下,本件各事業年度についての更正処分を「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下,本件各更正処分とこれに係る賦課決定処分を併せて「本件各処分」という。)をした(甲1の1ないし4)。 (5) 原告による不服申立てと本訴提起原告は,平成8年6月期の上記減額更正処分及び本件各処分を不服として,国税通則法75条4項1号に基づき,平成12年10月5日,国税不服審判所長に対して審査請求をしたが,国税不服審判所長は,平成15 原告は,平成8年6月期の上記減額更正処分及び本件各処分を不服として,国税通則法75条4項1号に基づき,平成12年10月5日,国税不服審判所長に対して審査請求をしたが,国税不服審判所長は,平成15年7月7日,平成8年6月期の減額更正処分についての審査請求を却下するとともに,本件各処分についての審査請求を棄却するとの裁決をし,そのころ,原告に通知した(甲2)。 そこで,原告は,平成15年10月1日,本件各処分(ただし,更正処分については,平成9年6月期は確定申告に係る税額を超える部分,平成10年6月期及び平成11年6月期については,平成11年11月26日付け各更正処分に基づいて納付すべき税額を超える部分)の取消しを求めて,本訴を提起した。 2 本件の争点本件譲渡契約は仮装のものであり,これに基づく本件資金移動は,無償による資産の譲受けに係る収益(受贈益)に当たるか。具体的には,(1) 本件譲渡契約において譲渡対象とされている本件ノウハウ等が,同契約締結時において,一条工務店に帰属しており,原告に帰属していない(被告の主張)か,原告に帰属していた(原告の主張)か。 (2) 本件譲渡契約に経済的合理性がない(被告の主張)か,ある(原告の主張)か。 それとの関連で,本件譲渡契約の仮装性を判断する上で,租税回避等の経済的動機が存在するとの主張立証をしないことが影響する(原告の主張)か,しない(被告の主張)か。 3 当事者の主張(被告の主張)本件譲渡契約締結時において,①原告は,本件ノウハウ等を保有しておらず,②HRDには,本件譲渡契約を締結すべき合理的な理由がないから,本件譲渡契約が実体が伴った真実の取引であったとは認められず,仮装のものというべきである。したがって,本件資金移動は,本件譲渡契約に基づく譲渡代金とは認められず,法人税法22条2 な理由がないから,本件譲渡契約が実体が伴った真実の取引であったとは認められず,仮装のものというべきである。したがって,本件資金移動は,本件譲渡契約に基づく譲渡代金とは認められず,法人税法22条2項所定の無償による資産の譲受け(受贈益)に当たる。 (1) 本件ノウハウ等が一条工務店に帰属しており,原告に帰属していないこと一般に,ノウハウの帰属を検討するに当たっては,問題となるノウハウの内容,その保有の趣旨・目的,ノウハウ形成過程における指揮・命令関係,その使用形態や関係者の意識等の諸般の事情を考慮して,これを決するのが相当である。 ア本件各フランチャイズ契約におけるフランチャイザーは,一条工務店であって,原告ではないこと(ア) フランチャイズ・システムフランチャイズとは,ある事業者(フランチャイザー)が他の事業者(フランチャイジー)との間に契約を結び,自己の商標,サービス・マーク,トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識,及び経営のノウハウを用いて,同一のイメージの下に商品の販売その他の事業を行う権利を与え,一方,フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い,事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導及び援助の下に事業を行う両者の継続的関係をいう。 このようなフランチャイズ・システムの特徴を十分に発揮するには,一般公衆がフランチャイザーの商標やサインの掲げられているどのストアにいっても,均等の品質の商品やサービスが得られる必要があるから,ノウハウと商標等は,フランチャイズ・システムを成り立たせる重要な役割を果たしている。 したがって,そのような商標等とノウハウは,フランチャイザーが保有し,フランチャイジーに与えられるべきものである。 (イ) 一条グループにおけるフランチャイザーが一条工務店であること上記のとおり,フラン がって,そのような商標等とノウハウは,フランチャイザーが保有し,フランチャイジーに与えられるべきものである。 (イ) 一条グループにおけるフランチャイザーが一条工務店であること上記のとおり,フランチャイズ・システムにおけるノウハウとは,フランチャイザーが保有し,フランチャイジーに与えられるものであるから,フランチャイジーの立場からすると,フランチャイザーは,フランチャイズ契約の契約主体がだれか,商標等の保有主体がだれか,ノウハウの提供がどのように行われているかなどの観点から把握されることになる。 しかるところ,一条グループにおけるフランチャイザーは,以下のとおり,一条工務店であることは明らかであり,それゆえ,本件ノウハウ等も,一条工務店に帰属するというべきである。 a 本件各フランチャイズ契約の契約主体は,別表1のとおり,原告設立前はもちろんのこと,原告設立後も一条工務店がその名義人となっており,また,GC各社に使用が許諾されている本件商標についても,一条工務店がそのすべての商標権を有している。しかも,契約番号10ないし12の各契約を除き,一条工務店がノウハウである経営システムを提供する主体とされており,その対価であるロイヤリティも,一条工務店(ないし一条工務店及び原告)に支払うこととされている。 b もっとも,本件各フランチャイズ契約には,契約番号10ないし12の契約のように,GC,原告及び一条工務店を契約主体とし,かつ,ノウハウの供与者を原告とする内容の契約も存在する。しかしながら,その契約当事者の一つである未来工務店(契約番号12)の代表取締役であったF(以下「F」という。)は,経営システムは,実際には,すべて一条工務店から供与されており,本件商標等や資材の購入も一条工務店からであり,ロイヤリティの支払については一条工務店からの指 締役であったF(以下「F」という。)は,経営システムは,実際には,すべて一条工務店から供与されており,本件商標等や資材の購入も一条工務店からであり,ロイヤリティの支払については一条工務店からの指示どおり原告に振込んでいた旨供述しており,一条工務店がノウハウを提供し,ロイヤリティの支払先も指示するという形で主体的に関与しているのが実態である。 c また,未来工務店に加えて,複数のGC各社が,一条工務店がフランチャイザーであり,経営システムを保有し,教育指導していたと認識している。 d しかも,本件ノウハウ等を構成している各種マニュアル・カタログ類(①「特注カタログ百年」,「特注カタログSAISON」のカタログ,②「設計事務所標準マニュアル書」,③「安全施工基準書」)は,一条工務店の名義で作成されている。 (ウ) 原告の主張に対する反論a 口頭合意について原告は,原告の設立前に締結されたフランチャイズ契約(契約番号1ないし9)については,原告の設立時に,原告とGC9社との間で,口頭によりノウハウである経営システムの供与等を内容とする契約が締結されたものであり,実際にも,原告の設立後に締結されたフランチャイズ契約(契約番号10ないし12)では,経営システムの提供主体が原告であることが明記された契約書が存在する旨主張する。 しかしながら,このような従前の契約関係の変更,とりわけ,GC各社にとって非常に重要な経営システムの供与主体の変更を招来する変更を,口頭合意をもって済ませるというのは,現代社会における合理的経済人が通常採る行動としてはおよそ想定し難いし,原告の設立後も,経営システムの提供主体及び本件商標権等の使用許諾者を一条工務店とするフランチャイズ契約が締結されている(契約番号10ないし12を除く。)こととも整合しない。 b 歴史的 定し難いし,原告の設立後も,経営システムの提供主体及び本件商標権等の使用許諾者を一条工務店とするフランチャイズ契約が締結されている(契約番号10ないし12を除く。)こととも整合しない。 b 歴史的事実確認書について次に,原告は,契約番号10ないし12を除くフランチャイズ契約の当事者であるGC各社との関係では,経営システムの提供主体を原告とすることについて,口頭での合意がなされた旨主張し,それを裏付ける証拠として歴史的事実確認書と題する書面(甲57の1ないし9)を提出する。 しかしながら,歴史的事実確認書は,本件譲渡契約の締結後,原告に対して税務調査が行われる可能性が高い旨の顧問税理士の指摘が契機となり,税務対策の目的をもって作出されたものである上,その作成の依頼文書(乙17)には,「契約書のスタイルが前契約とは変わっておりますが,基本精神及び内容は前契約のものと何ら変わっておりません」と記載されていて,原告とGC各社間において,原告主張のような口頭合意の存在は全く意識されていなかったことに照らすと,原告と上記GC各社との契約関係を基礎づける証拠とはいえない。 c 原告が契約当事者とされなかった理由について原告は,平成元年以降のフランチャイズ契約において,原告が名を連ねていないのは,三者間契約にすると契約関係が複雑となる上,GCが一条グループを脱退した際に,GCが受注した住宅の施工を巡って紛争が存在していると,迅速な引継ぎができなくなるおそれがあるためである旨主張する。 しかしながら,GC各社との経営システムの供与契約と,対顧客との住宅施工の引継ぎに関する契約とは別個の問題であるから,上記の事情は,平成元年以降のフランチャイズ契約において,原告が契約当事者とされていないことの合理的理由とはならないことが明らかである。 d ロイヤリティの支 ぎに関する契約とは別個の問題であるから,上記の事情は,平成元年以降のフランチャイズ契約において,原告が契約当事者とされていないことの合理的理由とはならないことが明らかである。 d ロイヤリティの支払についてまた,原告は,原告設立後7年8か月もの長期にわたり,GC各社及び一条工務店のロイヤリティがすべて原告に支払われている旨主張する。 しかしながら,GC各社による原告へのロイヤリティの支払は,単に一条工務店の指示に従って支払先が変更されたものにすぎないから,原告の主張を裏付けるものではない。 e 商標権の使用許諾の対価支払についてさらに,原告は,本件各フランチャイズ契約において,本件商標権等の使用許諾がロイヤリティの対価となっていないことを挙げ,一条グループにおけるフランチャイザーの確定に当たり,本件商標権等の帰属関係を重視するのは正当ではない旨主張する。 しかしながら,フランチャイズにおける商標の使用許諾は,統一したトレードイメージを付与して事業展開を容易ならしめることにあるから,そこでは,経営システムの供与と商標権等の使用許諾がパッケージとなって,フランチャイジーに提供されるという関係にあればよく,商標権等の使用許諾がロイヤリティの対価を構成しているかどうかは本質的問題ではないから,商標の使用許諾がロイヤリティの対価の構成要素となっているか否かは,被告主張のフランチャイズ理論の妥当性を左右するものではない。 ちなみに,GC各社の多くが,その商号に「一条工務店」の名称を冠した企業名を採用しており,本件各フランチャイズ契約(契約番号13以降)上も,本件商標権等の使用がロイヤリティの対価の構成要素とされており,一条工務店ブランドの浸透とともに,本件商標権の使用許諾がロイヤリティ算定の重要な要素となっていったことが看取できる。 イ本件ノウ ,本件商標権等の使用がロイヤリティの対価の構成要素とされており,一条工務店ブランドの浸透とともに,本件商標権の使用許諾がロイヤリティ算定の重要な要素となっていったことが看取できる。 イ本件ノウハウ等の研究開発の状況からみて,原告が本件ノウハウ等の帰属者ではないこと(ア) ノウハウの帰属者判定の要素原告は,一条グループにおける経営システムの開発研究スタッフが原告に在籍していたことや,その研究開発費用を原告が負担していたことを理由に,原告が本件ノウハウ等の帰属者である旨主張する。 しかし,①だれがノウハウの開発者と評価するかは,その開発業務に従事した在籍関係や研究開発費用だけをみて決められるものではないし,②仮に,ある一定の者が開発主体であると評価できたとしても,その成果物(ノウハウ)が,当然に開発主体に帰属するわけではない。例えば,開発が派遣会社ないし下請け業者の社員によって行われたときに,その開発主体がだれかは,在籍関係や給与関係のみによって決定することはできないし,派遣会社ないし下請け業者が開発主体と評価し得る場合であっても,派遣会社と派遣先企業ないしは元請け業者と下請け業者との間で,その成果物の最終的な帰属先を開発主体ではない派遣先企業や元請け業者とする旨の合意がされることも十分あり得る。 (イ) 原告の研究開発の状況a 研究者の在籍状況まず,原告は,その研究開発活動の柱は,モデルハウスの設計等,基礎研究,地盤調査,原価管理及び営業方法の指導等であり,これらを原告代表者のAやその従業員であるE,G(以下「G」という。),H(以下「H」という。)らが担当していたと主張する。 しかしながら,Aは,原告の役員であるとともに,一条工務店の代表者でもあるから,Aが行ったとされる研究開発業務も,外形的には何ら峻別し得るものではなく,原 」という。)らが担当していたと主張する。 しかしながら,Aは,原告の役員であるとともに,一条工務店の代表者でもあるから,Aが行ったとされる研究開発業務も,外形的には何ら峻別し得るものではなく,原告に在籍していた当時に行ったと断定する根拠に乏しい。また,G,Hについては,一条工務店の従業員の肩書をもって,成果である各種開発技術の対外的な発表を行っており,施主に対しても一条工務店の従業員として対応している上,同人らの勤務地は一条工務店の管理センターとなっている。 b 一条工務店による管理支配状況上記のような不自然さは,次のような事情を併せて検討すれば,容易に理解できるものとなる。 すなわち,①原告に対する税務調査の際に,被告担当者と実際に面接対応したのは,原告の税理士であるIのほかは,一条工務店経理部副長のJと同経理部Kであったこと,②原告の社屋は,3階建てで,1階の事務室は一条工務店の事務所であり,ほかに事務室はないこと,③原告の帳簿書類は,浜松市にある一条工務店の管理センターにおいて保管されていたこと,④原告の経理処理は,一条工務店の管理センターの経理担当者によって行われており,そのチーフが上記のKであること,⑤帳簿調査等で把握した原告従業員の住所はそのほとんどが浜松市であり,そのため,原告の従業員は一条工務店の管理センターに勤務していること,⑥原告からGC各社あてに郵送された封筒及びFAX連絡文書は,差出人住所として一条工務店管理センターの住所が記載されており,かつ,一条工務店本部企画室名で作成されていること,さらに,⑦一条工務店からGC各社あてに発出された日常業務マニュアルによれば,原告の在籍従業員と主張される従業員が,一条工務店の業務の中に組み込まれ,対外的にも一条工務店の従業員として表示されていること,これらの事情を総合すれ 社あてに発出された日常業務マニュアルによれば,原告の在籍従業員と主張される従業員が,一条工務店の業務の中に組み込まれ,対外的にも一条工務店の従業員として表示されていること,これらの事情を総合すれば,開発業務に従事した役員・従業員が原告に在籍していたという事実があるからといって,一条工務店との密接な関連性を否定することはできず,むしろ,これら役員・従業員に対して一条工務店の管理支配が及んでいたことが示されているから,何ら原告の主張を裏付けるものとはならない。 c 開発研究費の負担状況本件譲渡契約締結前の平成7年2月期における一条工務店の研究開発費は,39億9600万円余にも上っている。これに対し,同期に対応する原告のロイヤリティ収入は,約31億円程度(原告の平成6年6月期及び平成7年6月期のロイヤリティ収入を月数按分して平成6年3月から平成7年2月までのロイヤリティ収入を算定したもの)であり,このうち約10億円程度は,GC各社からのロイヤリティ収入であることからすると,差引約19億円(39億9600万円-(約31億円-約10億円))の金額は,一条工務店が自ら投下した研究開発費と評価することができ,この点からも,研究開発を主体的に行っていたのは,一条工務店であることが明らかである。 これに対し,原告の研究開発費は,平成5年6月期が約400万円,平成6年6月期が約250万円,平成7年6月期はわずかに4000円にすぎない。この点につき,原告は,原告が経営システムの開発につき,多額の開発研究費を投じていた旨主張するが,その内実は人件費が大半を占めるところ,原告の事業内容には,住宅設備機器(商品)の輸入販売(いわゆる卸売販売)があって,この業務がかなりのウエイトを占めている。こうした業務には,受注・発注業務,商品の受払及び決済代金の管理等,人件 ろ,原告の事業内容には,住宅設備機器(商品)の輸入販売(いわゆる卸売販売)があって,この業務がかなりのウエイトを占めている。こうした業務には,受注・発注業務,商品の受払及び決済代金の管理等,人件費を含む多くのコスト(販売管理費)を要することが容易に想定し得るところであり,原告における人件費がすべて研究開発費に当たるとは到底いえない。 仮に,原告の主張するとおり,原告における人件費がすべて研究開発費であるとしても,例えば,原告の平成5年6月期において,研究開発費は8259万6000円(研究開発費86万5000円,現場研究費304万9000円及び人件費7868万2000円の合計額)であるのに対し,ロイヤリティ収入は25億8430万5000円であることからすれば,ロイヤリティ収入に対する研究開発費は,極めて低額であるといわざるを得ない。 そして,本件譲渡契約締結後,原告の売上額が著しく減少していることからすると,原告は,その収益のかなりの部分を一条工務店及びGC各社からのロイヤリティ収入に依存していたものと推察されるが,そのロイヤリティの支払は,GC各社と原告との契約に基づくものではなく,一条工務店の一方的な指示に基づいて行われていたことに照らせば,結局,同契約締結前の原告の収益の多くは,一条工務店から原告に投入された資金であるということができる。 d 特許権等の帰属ノウハウのうち,特許権等の対象となり得るものは,非常に高い価値を有しているから,仮に原告がその開発主体であるならば,従業者発明として,就業規則等により,原告に帰属して然るべきところ,本件では,原告の従業員による発明が,いずれも一条工務店名義で特許・実用新案登録出願されており(以下,登録後の権利を「本件特許権等」という。),一条工務店と原告間では,特許発明等については,開発体 本件では,原告の従業員による発明が,いずれも一条工務店名義で特許・実用新案登録出願されており(以下,登録後の権利を「本件特許権等」という。),一条工務店と原告間では,特許発明等については,開発体制いかんにかかわらず,これを一条工務店に権利帰属させるとの処理がされている。 この点につき,原告は,GC各社及び一条工務店は原告の研究開発活動による成果物を経営システムとして提供されており,その対価としてロイヤリティを支払っているのであるから,経営システムの一部を構成する特許を受ける権利を原告から譲り受けて,専ら営業上の理由から,特許登録等の出願をすることができるのは当然である旨主張する。 しかしながら,昭和62年契約の条項には,①対価の構成要素の一つとして「開発費」が明示されていること(経費分との位置づけが明示されており,他のGC各社とのロイヤリティ条項と明らかに異なる。),②本件各フランチャイズ契約におけるロイヤリティ条項と異なり,契約終了後の守秘義務の定めや,マニュアル類の返還といった定めがないこと(ノウハウが一条工務店に移転するからこそ,契約が終了しても,守秘義務やマニュアル類の返還義務が生じないと解されること)にかんがみれば,ここにいうロイヤリティの実態は,原告の開発費用の負担及び知的財産権承継の対価としての意味を有するものというべきである。 以上によれば,本件特許権等については,仮に原告が開発主体であるとしても,少なくとも,原告から一条工務店に対する黙示の権利承継があったというべきである。 そして,一条工務店が取得した本件特許権等は,本件譲渡契約における譲渡の対象とはされていないが,本件ノウハウ等と別個独立のものではなく,これと相互に密接に関連している。例えば,「木材の等級判別装置」に係る特許出願(乙13の1)が,本件譲渡契約の対象 契約における譲渡の対象とはされていないが,本件ノウハウ等と別個独立のものではなく,これと相互に密接に関連している。例えば,「木材の等級判別装置」に係る特許出願(乙13の1)が,本件譲渡契約の対象物であるデータベース「梁桁材の簡易グレーディング」と不可分の関係にあることは,論文(乙11の29)及び研究開発事業に係る報告書(乙15)の記載内容からも明らかであるところ,上記データベースについて,特許・実用新案登録出願がされたノウハウ部分と,出願には至らなかったノウハウ部分とが切り離されて開示の対象となるとは考え難い。したがって,特許・実用新案登録出願にまで至らなかったノウハウについても,原告ではなく,一条工務店に帰属するものと認めるのが相当である。 e データーベース等の発表名義人本件ノウハウ等のうち,データベースを構成する別表3の「論文の題名」欄記載の各論文のかなりは,同表の「所属及び発表者等」欄記載のとおり,「一条工務店」という肩書が付されたGないしはHが発表者の一人となっている。このことは,本件特許権等と同様に,これらのデータの保有者が一条工務店であると考えられていたことを示している。 また,平成3,4年ころ,一条工務店が「第5回木質材料・木質構造技術研究基金賞(杉山英男賞)」を受賞したことにつき,「ティンバーエンジニアリングニューズNo18(乙36)」に一条工務店代表者のAの挨拶文が掲載されているが,そこでは,一条工務店が平成3年の木造3階建ての実大実験などの研究開発の主体であり,大学との共同研究は一条工務店の指揮監督の下で行っていることが明白に述べられていること,同様に,別表3の番号28の「流通過程におけるスギ柱材のヤング係数の変動」に関する論文の基となった,一条工務店から愛媛県森林組合連合会会長あての平成2年10月15日付け が明白に述べられていること,同様に,別表3の番号28の「流通過程におけるスギ柱材のヤング係数の変動」に関する論文の基となった,一条工務店から愛媛県森林組合連合会会長あての平成2年10月15日付けお願い文書(乙37)には,一条工務店の指揮の下に行われる調査・研究についての協力依頼の件が記載されていることなども,これらのデータの保有者が一条工務店であることを裏付けている。 f 一条工務店から原告への経営システムの譲渡についてなお,原告は,原告設立時において,それまで形成されていた一条グループのノウハウが,陳腐化し無価値となったことから,一条工務店から原告に無償譲渡された旨主張する。 しかしながら,ノウハウが陳腐化したからといって,公知になったものでない以上,全くの無価値となったわけではなく,一条工務店及びGC各社から,平成5年6月期約26億円及び平成6年6月期約35億円にも上るロイヤリティが得られる収益の源泉であったノウハウを無償で譲渡させ,以後,原告が一条工務店及びGC各社から多額なロイヤリティを取得するというのは,一般的に認め難い行為である。 (ウ) 小括以上によれば,一条工務店は,原告の従業員を支配し,その影響の下に原告の従業員にノウハウ開発業務に従事させているということができるから,本件各フランチャイズ契約における経営システムの開発主体は一条工務店であり,したがって,本件ノウハウ等も一条工務店に帰属するとみるのが相当である。 ウ本件先行処分等との整合性について原告は,従前の税務調査の際,課税庁は,原告が「経営システム」を研究開発し,GC各社及び一条工務店に提供していることを認め,これらから原告に対するロイヤリティの支払を税務上是認し,さらに,平成8年6月期を調査対象最終年度とする税務調査においては,本件譲渡契約による譲渡対価 GC各社及び一条工務店に提供していることを認め,これらから原告に対するロイヤリティの支払を税務上是認し,さらに,平成8年6月期を調査対象最終年度とする税務調査においては,本件譲渡契約による譲渡対価が過少であることを理由に本件先行処分を行ったにもかかわらず,本件各処分では,原告がHRDに本件ノウハウ等を譲渡したこと自体が架空の取引であると認定していることを指摘し,このように矛盾した事実関係に立つ課税処分は,明らかに違法である旨主張する。 しかしながら,課税庁は,従前の税務調査においては,GC各社に対する経営システムの供与等に関する実態を十分把握していなかったが,その後の東京国税局との連携調査の結果,上記経営システムを保有し,かつ,これをGC各社に供与している主体が,原告ではなく一条工務店であることが明らかとなったのである。したがって,原告が主張するような本件先行処分等の経緯が,本件各処分の適法性を左右するものではない。 (2) HRDに譲渡すべき合理的理由の欠如アノウハウの性質とその経済的価値そもそも,ノウハウとは,事業上利用可能な技術上,商業上その他の知識・経験に基づく情報であるから,それが財産的価値を有するのは,それが秘密とされる場合に限られる。したがって,それが公知となれば価値を喪失するし(絶対的秘密性の喪失),また,一部の者に知られた場合でも,その者との関係では秘密ではなくなるばかりか(その限りで,ノウハウの価値は低減する。),その者が問題となるノウハウを保持し,しかも,これを自由に用いることができる状況にある場合には(例えば,ライセンス契約上で設定される守秘義務や当該ライセンス契約終了後のノウハウの返還義務などの制約がない場合),特段の事情がない限り,あえてそのような者同士の間で,かかるノウハウを取引すべき理由はない。 イ センス契約上で設定される守秘義務や当該ライセンス契約終了後のノウハウの返還義務などの制約がない場合),特段の事情がない限り,あえてそのような者同士の間で,かかるノウハウを取引すべき理由はない。 イ本件ノウハウ等譲渡の必要性の欠如かかる見地から,本件についてみると,①昭和62年契約の内容に照らせば,一条工務店は,既に本件ノウハウ等を自由に利用し得る地位にあったこと,②HRD,一条工務店及び原告の3社は,いずれも密接な資金関係にあり,また,役員構成も共通するところが多いこと(例えば,Aは一条工務店,HRD及び原告の役員であり,また,Eは一条工務店及びHRDの役員であり,さらに,原告の主張によれば,経営システムの開発従事者とされるA,EがHRDに在籍している。)などの事情を認めることができる。 また,昭和62年契約には,契約が解除された場合ないし終了した場合の定めが何ら存在しないため,一条工務店は,その契約の解約後も,その当時まで形成されていた経営ノウハウを自由に用いることができ,同社が保有する本件ノウハウ等を含むマニュアル類をHRDに付与しても,何らの問題も生じないはずである。ところで,本件譲渡契約締結日の翌日付けで,HRDと一条工務店との間に,前者が後者に経営システムを提供することを内容とする「ノウハウ使用許諾契約(以下「新契約」という。)書」が作成されており,本件譲渡契約は新契約の準備行為としてなされたものと考えられるところ,上記のとおり,経営システムの提供を受ける当の一条工務店においては,既に本件ノウハウ等を自由に利用し得る地位にあったのである。 したがって,これらの事情を総合的に考慮すれば,HRDが原告から本件ノウハウ等を取得し,これを一条工務店へ供与する必要は全くなかったというべきである。 (3) 仮装についての経済的動機原 ある。 したがって,これらの事情を総合的に考慮すれば,HRDが原告から本件ノウハウ等を取得し,これを一条工務店へ供与する必要は全くなかったというべきである。 (3) 仮装についての経済的動機原告は,本件譲渡契約によって,原告も一条工務店も何ら税務上のメリットを得るわけでなく,租税回避あるいは脱税目的で,本件ノウハウ等が真実は一条工務店に帰属していたにもかかわらず,これが原告に帰属していたかのような外形を作出すべき経済的動機は何ら存在しない旨主張する。 しかしながら,被告は,本件が租税回避スキームであるなどと主張しているわけではなく,本件の事実関係に照らせば,原告が譲渡の対象となる権利・利益を保有しておらず,また,HRDが本件ノウハウ等を譲り受ける経済的合理性が全くなかったことから,本件譲渡契約が真実のものとは認められないと主張しているのであって,租税回避スキームでなければ,税法上,仮装取引といえないものでないことは自明である。 (原告の主張)被告の主張は争う。 (1) 本件ノウハウ等が原告に帰属していたことア原告がフランチャイザーであること(ア) フランチャイズ・システムの多様性被告は,フランチャイズ・システムにおいて,フランチャイザーからフランチャイジーに提供されるのは,ノウハウと商標等であり,ロイヤリティは,ノウハウと商標等の使用対価である旨主張するが,現実のビジネスは,必ずしも法律実務書に記載されたとおりではなく,各々のフランチャイズ・システムにはそれぞれの特徴があり,その在り方が,そのような定義によって制約を受けることなどあり得ない。 (イ) 本件各フランチャイズ契約におけるフランチャイザーが原告であること以下のとおり,一条グループにおける経営システムの供与者は原告であり,本件各フランチャイズ契約におけるフランチャイザー ない。 (イ) 本件各フランチャイズ契約におけるフランチャイザーが原告であること以下のとおり,一条グループにおける経営システムの供与者は原告であり,本件各フランチャイズ契約におけるフランチャイザーは原告である。 a フランチャイズ契約書上の経営システムの供与者について原告設立前に,一条工務店とフランチャイズ契約を締結したGC各社(契約番号1ないし9)は,原告設立後,口頭契約によって(ただし,原告の顧問税理士から契約書の不備を指摘されたため,平成8年11月7日付けで,GC各社との間で,原告との間で経営システムの使用許諾契約を締結していたとの内容の歴史的事実確認書と題する契約書の作成が事後的に行われている。),原告との間でフランチャイズ契約が成立している(ただし,一条工務店千葉とは,平成5年12月15日付けで,経営システムの提供主体が原告である旨の契約書を取り交わしている。)。 次に,原告設立後に締結されたフランチャイズ契約のうち,契約番号10ないし12については,当初から,明文で,経営システムの提供主体が原告であることが定められている。 さらに,契約番号13ないし18については,経営システムの提供主体が一条工務店とされているが,これは,一条工務店,原告及びGC各社の三者間契約にすると,契約関係が複雑になり,GCが一条グループを脱退するときに,その時点でGCが受注していた住宅の施工を巡って紛争になった場合に,受注した住宅の迅速な引継ぎ等ができなくなるおそれがあったことによるものであって,上記のような契約書の記載は合理的である(原告とGCとの二者間契約であれば,建設業の許可を受けていない原告が施工を引き継げず,原告の存在を知らない顧客に対する説明を要する。)。しかも,契約番号13の当事者である一条工務店福岡は,平成5年(月日不詳)付け契約書で であれば,建設業の許可を受けていない原告が施工を引き継げず,原告の存在を知らない顧客に対する説明を要する。)。しかも,契約番号13の当事者である一条工務店福岡は,平成5年(月日不詳)付け契約書でロイヤリティの提供主体及び支払先が原告とされているのである。 bGC各社に対する経営システムの提供形態原告は,本件各フランチャイズ契約に基づき,モデルハウスの設計図面や施行方法,当該モデルハウス等に関する商品知識などの経営システムの伝達を,これからGCがモデルハウスを建て(替え)ようとしている住宅展示場に赴いて,GC各社の施工担当者や営業社員に対し,直接口頭で行っていた。もっとも,経営システムの伝達を,連絡票を作成して,一条工務店を通じて行う方式が採られることもあったが,これは,原告が一条グループにおける専門的な研究開発部門という位置づけで設立されたことから,その成果である経営システムの伝達等の事務的業務は,従来どおり,一条工務店が行うのが合理的と考えられたからである。 cGC各社によるロイヤリティ支払GC各社は,本件各フランチャイズ契約に基づいて,一条グループに加入した時点から平成7年2月までの長期間にわたり,原告から提供を受けた本件ノウハウ等の代償として,原告にロイヤリティを支払い続けている。このことに照らせば,被告主張のようなフランチャイズ契約の理論が,「フランチャイザーが一条工務店であり,経営システムも一条工務店に帰属する」旨の被告主張の根拠とはなり得ない。 (ウ) 被告の主張に対する反論a 口頭合意について被告は,原告設立前に締結されたフランチャイズ契約について,原告設立後に契約当事者という重要事項を変更するのに,口頭合意をもって済ませるのは合理的経済人として想定し難い旨主張する。 しかしながら,原告とGC各社との間のフランチャ フランチャイズ契約について,原告設立後に契約当事者という重要事項を変更するのに,口頭合意をもって済ませるのは合理的経済人として想定し難い旨主張する。 しかしながら,原告とGC各社との間のフランチャイズ契約の内容は,従来の一条工務店との間の契約と同様であったことから,便宜的に契約書を作成していないものの,上記のとおり,GC各社は,7年8か月もの長期間,「経営システム」の対価として原告にロイヤリティを支払っていたのであるから,原告との間に経営システムの使用許諾契約が成立していたと認められる。 b 歴史的事実確認書について被告は,歴史的事実確認書は,税務対策上作成されたもので,原告とGC各社との間の使用許諾の合意を基礎づけるものでない旨主張する。 しかしながら,同書面が作成されたのは,本件の税務調査が開始された平成11年8月よりも約3年も前である平成8年11月7日であり,かつ,文書化は,原告の顧問税理士から契約書の不備を指摘されたことが契機となって行われたものにすぎない。また,GC各社は,一条工務店や原告から独立した経営者による各地の地場企業であり,一条工務店によるフランチャイズ展開当初,各地においては,一条工務店よりも著名で力のある企業であった(そのため,フランチャイズ加入後も,クリヤマや下津井電鉄,タカノホームなどのGC各社は,一条工務店の保有する本件商標を使用しなかった。)ところ,そのGC各社が,歴史的事実確認書によって,原告設立から本件譲渡契約を締結するまでの間(以下「住研時代」という。)においては原告との間で経営システムの使用許諾契約を締結していた旨確認し,かつ,7年8か月もの長期間にわたって,経営システムの対価として原告にロイヤリティを支払っていたことに照らせば,単に税務対策上の理由で作成されたものではないことが明らかである。 していた旨確認し,かつ,7年8か月もの長期間にわたって,経営システムの対価として原告にロイヤリティを支払っていたことに照らせば,単に税務対策上の理由で作成されたものではないことが明らかである。 なお,ご案内には,「当文書はご一読後必ず廃却して下さい。」と記載されていたが,これは,10周年記念賞与を一条グループの各従業員に支給する案が検討されていたものの,未確定であったため,書類送付のご案内がGC各社の一般従業員の目に触れないようにする必要があったこと,しかも,同ご案内には,HRDとGC各社との間の契約書と記載されているとおり,HRDの表記が見られたところ,HRDの存在を一般従業員に知られないようにする必要があったことによるものである。 そして,原告とGC各社との間でフランチャイズ契約が成立していたからこそ,その内容を確認する趣旨の契約書の作成を,原告や一条工務店から独立した存在であるGC各社に対し,簡便な方法で依頼することができたのであり,被告の上記主張は失当である。 c 平成元年以降のフランチャイズ契約書の当事者について被告は,原告設立後も,フランチャイズ契約書には,原告が当事者として記載されていない旨主張する。 しかしながら,上記のとおり,平成元年以降加入したGC各社との契約書において原告が名を連ねていないのは,一条工務店と原告とGC各社との三者間契約の形式にすると,契約関係が複雑になり,GC各社が一条グループを脱退する際に,脱退時点でGC各社が受注した住宅の施工を巡って,一条工務店とGC各社との間で紛争になった際に,受注した住宅の迅速な引継ぎ等ができなくなるおそれがあったことによるものであるにすぎない。 d ロイヤリティの支払について上記のとおり,GC各社は,7年8か月もの長期間,「経営システム」の対価として原告にロイヤリティ 引継ぎ等ができなくなるおそれがあったことによるものであるにすぎない。 d ロイヤリティの支払について上記のとおり,GC各社は,7年8か月もの長期間,「経営システム」の対価として原告にロイヤリティを支払っていたところ,被告は,この支払は一条工務店の指示に従ってなされたものにすぎない旨主張する。 しかしながら,そもそも,一条工務店の指示があったかどうかが,原告とGC各社との間のフランチャイズ契約の成否とどのような関係にあるか不明であるところ,GC各社は,地場では著名な企業であり,一条工務店からは独立した企業であるから,GC各社が,一条工務店の指示に対して抵抗できないなどということはなく,このような誤った認識を前提とする被告の主張は失当である。 e 商標権の帰属について被告は,フランチャイズ契約においては,統一されたトレードイメージをもって事業展開を容易ならしめることが重要であるから,経営システムの供与のほかに商標権等の使用許諾がパッケージとなっているところ,本件商標権は一条工務店に帰属している旨主張する。 しかしながら,一条グループにおけるフランチャイズ・システムにおいては,一条工務店の商標を使用しないGCが存在していることから明らかなとおり,当初,一条工務店の本件商標にブランドとしての価値が十分備わっていなかったことから,GC各社が支払うロイヤリティは,経営システム及びこれに伴う教育指導に対する対価であって,本件商標の使用はロイヤリティの対象とはなっていない。むしろ,GC各社が本件商標を使用して事業を拡大してくれたおかげで,その結果としてその経済的価値が醸成されたにすぎない。ちなみに,HRDとGC各社間の経営システム使用許諾契約(甲6の1ないし17)では,本件商標はロイヤリティの支払対象とされておらず,一条工務店とHRDとの間の商標権等 済的価値が醸成されたにすぎない。ちなみに,HRDとGC各社間の経営システム使用許諾契約(甲6の1ないし17)では,本件商標はロイヤリティの支払対象とされておらず,一条工務店とHRDとの間の商標権等使用許諾契約書(甲126)でも,HRDがGC各社に使用許諾した一条工務店の有する本件商標等については,GC各社の貢献にかんがみ,一条工務店はHRDにロイヤリティを請求しない旨定められている。そうすると,本件商標権が一条工務店に帰属しているからといって,本件フランチャイズ契約におけるフランチャイザーが原告でないとの根拠になるものではない。 f 本件特許権等の出願状況について被告は,原告の従業員とされているGらによる発明が,一条工務店名義で特許権等登録出願されており,このように,非常に高い価値を有している特許発明について,一条工務店と原告間では,開発体制いかんにかかわらず,これを一条工務店に権利帰属させるとの処理がされている旨主張する。 しかしながら,GC各社及び一条工務店は,原告の研究開発活動による成果物を経営システムとして提供を受けており,その対価としてロイヤリティを支払っているのであるから,経営システムの一部を構成する特許を受ける権利を原告から譲り受けて,専ら営業上の理由から,特許等の出願をすることができるのは当然である(本来ならば,GC各社を含めた一条グループ名義で出願すべきであるが,手続が極めて煩瑣となるため,一条工務店が代表して出願したものである。)。 g データーベース等の発表名義人について被告は,別表3記載の各データのかなりが一条工務店の名義で発表されている旨主張する。 しかしながら,原告従業員であるG及びHが中心となって行った基礎研究及び実験の成果が,対外的にはすべて一条工務店ないし一条工務店研究開発部の肩書で発表されたのは,専 義で発表されている旨主張する。 しかしながら,原告従業員であるG及びHが中心となって行った基礎研究及び実験の成果が,対外的にはすべて一条工務店ないし一条工務店研究開発部の肩書で発表されたのは,専ら一条グループの技術力を顧客にアピールするために行われたという営業上の理由に基づく。すなわち,原告でなく一条工務店の名義を用いたのは,当該論文発表自体が,技術力を顧客や学生,学会へアピールするチャンスと考え,優秀な理系学生の採用活動上及び顧客への広告活動上,これらの者と直接接点を持つ一条工務店の名義で発表する方が効果的と判断したからであって,合理的な理由に基づいている。 h 各種マニュアル・カタログの作成名義について被告は,各種マニュアル・カタログ類(①「特注カタログ百年」,「特注カタログSAISON」のカタログ,②「設計事務所標準マニュアル書」,③「安全施工基準書」)の作成名義が一条工務店である旨主張する。 しかしながら,①のカタログは,一条グループの住宅展示場に訪れる顧客に対して配布する営業上の資料であるから,一条工務店の名前を表示することに営業上の合理的理由があり,②のマニュアルは,一条工務店と設計事務所との間の作業の進め方,敷地調査,測量時の注意事項等を記載したマニュアルであり,専ら一条工務店の外注先の業者に配布されるものであるため,直接の発注者である一条工務店の名前を記載するのが適切であったからであり,③の安全施工基準書は,施工現場の作業員の安全性向上を目的としたマニュアル書であり,専ら一条工務店の外注先に配布されるものであるため,②と同様に,一条工務店の名前が記載されているにすぎない。しかも,これらの内容のうち①に記載されているものは,原告の従業員が原告の費用によって研究開発した商品であり,②及び③は,いずれも,EとAの指示に基づ ,一条工務店の名前が記載されているにすぎない。しかも,これらの内容のうち①に記載されているものは,原告の従業員が原告の費用によって研究開発した商品であり,②及び③は,いずれも,EとAの指示に基づいて作成されたものである。 iGC各社の認識について被告は,経営システムの供与や資材等の購入が一条工務店から行われた旨のFの聴取書を援用するが,同人が代表取締役であった未来工務店(現社名)は,平成10年3月に一条グループを脱退し,一条工務店の関連会社である株式会社日本産業に対して約1億5000万円,HRDに対して約5000万円の各負債を抱え,その債務免除を巡って訴訟が係属したところ,平成12年11月21日に未来工務店が株式会社日本産業に対して10年間に毎年1000万円ずつ返済することを内容とする裁判上の和解が成立したが,未来工務店は,平成14年7月に倒産し,Fも行方不明になっていること,上記聴取書は,その係争中に作成されたものであること,未来工務店は,一条グループに加入後,平成7年2月まで原告に対してロイヤリティを支払い続けていたこと,これらによれば,Fの聴取書は,その信用性に疑問があり,虚偽というべきである(もっとも,住研時代は,一条工務店が,原告に代わって経営システムをGC各社に伝達する形式が取られることが多かったことから,その点を同人が誤解していた可能性もある。)。 イ本件ノウハウ等の開発主体が原告であること(ア) 原告による研究開発活動以下のとおり,住研時代において,一条グループの競争力の源泉たる経営システムを研究開発していた主体は原告であるから,本件ノウハウ等が一条工務店に帰属していたことはあり得ない。 a 原告の設立目的原告設立前において,一条工務店は,木造注文住宅の材木をあらかじめ可能な限り工場で加工し,これを現場で組み立 あるから,本件ノウハウ等が一条工務店に帰属していたことはあり得ない。 a 原告の設立目的原告設立前において,一条工務店は,木造注文住宅の材木をあらかじめ可能な限り工場で加工し,これを現場で組み立てることにより,熟練度が高くない大工でも良質な住宅を建築することができるという工法,すなわちプレ・カット工法を開発(関連会社の株式会社東陽住宅)し,導入しており,GCの多くも,これに魅力を感じて一条グループに参加したものであるが,一条グループの成長に伴い,さらに新たなノウハウを開発,提供しなければ,GC各社を一条グループにとどめておくことはできない情勢となった。そこで,プレ・カット工法以外の①住宅展示場に関するノウハウや,建築技術に対する学問的基礎研究を行うなど,豊富で密度の濃い経営システムの研究開発を専門に行う部門の必要性を生じ,そこで設立されたのが原告である。 b 一条グループの事業と原告の研究開発活動上記のとおり,一条グループが行っている木造注文住宅事業は,住宅展示場に自社の営業従業員を配置して,来場した顧客に対し,自社の商品であるモデルハウスの魅力をアピールして注文を獲得し,受注後は,顧客の要望や敷地条件等に応じて,間取り・外観デザイン・内装デザイン・住宅設備機器を選択・決定し,当該設計に従って実際に木造住宅を施工するというものである。したがって,住宅展示場への来場者に,いかに一条グループの商品に魅力を感じてもらえるかが最も重要であり,住宅展示場は,同事業にとって極めて重要な意味を持つ。 このため,原告は,住研時代に,①住宅展示場のモデルハウスの設計・施工,各種住宅設備機器の新商品の開発,②基礎研究及び実験,③地盤調査,④個別の現場の原価管理及び開発された新商品の営業方法の指導等の研究開発活動を行っている。 なお,基礎研究,実験,知的財 の設計・施工,各種住宅設備機器の新商品の開発,②基礎研究及び実験,③地盤調査,④個別の現場の原価管理及び開発された新商品の営業方法の指導等の研究開発活動を行っている。 なお,基礎研究,実験,知的財産権の出願などの原告の研究開発活動の成果が,すべて一条工務店ないし一条工務店研究開発部等の名義で対外的に発表されているのは,専ら一条グループの技術力を顧客にアピールするという営業上の合理的理由に基づくものである。 GC各社及び一条工務店は,原告から,上記①ないし④の研究開発活動の成果という,木造注文住宅販売・施工事業にとって極めて付加価値の高いノウハウである経営システムの提供を継続的に受けていたからこそ,7年8か月もの長期にわたり,原告に対してロイヤリティを支払い続けていたのである。すなわち,経営システムは,いったん相手方が知ってしまえば,直ちに陳腐化して,もはや対価を支払ってまで実施する必要性がなくなるが,GC各社は,原告が開発する新しくて有用な経営システムを常に提供されるという将来に対する期待から,ロイヤリティを支払ってまで,一条グループに属していたのである。 これに対し,住研時代において,一条工務店は,上記①ないし④の研究開発活動を行う部門や従業員は存在せず,独自の研究開発活動を行っていない。 c 原告の経費支出本件譲渡契約締結前後である平成5年6月期から平成7年6月期における原告の売上総利益,販売費・一般管理費及び営業利益は,別表5記載のとおりであるところ,前記のとおり,原告は,一条グループの競争力の源泉たる経営システムを研究開発する拠点として特化された会社であるから,その事業活動に伴う経費は,すべて一条グループの研究開発費としての性質を有するものである。 なお,原告の販売費・一般管理費の内訳では,租税公課を除けば,給料手当が最も多額に 特化された会社であるから,その事業活動に伴う経費は,すべて一条グループの研究開発費としての性質を有するものである。 なお,原告の販売費・一般管理費の内訳では,租税公課を除けば,給料手当が最も多額になっているが,これは,原告の研究開発活動が,モデルハウスの設計,住宅設備機器の新規商品開発等,知識集約的な創作活動であるという性質から,そのような活動を行う設計士や技術者の人件費が最も大きな割合を占めるのは必然的な結果である。 (イ) 被告の主張に対する反論a 一条工務店による指揮監督についてこの点について,被告は,研究開発を担当したのが原告の従業員であったとしても,原告の役員やその従業員が,職務及び勤務場所において一条工務店と混然一体となっており,一条工務店の指揮監督の下に研究開発を行っている以上,開発主体は一条工務店であり,その成果物も一条工務店に帰属する旨主張する。 しかしながら,万が一,原告の従業員が一条工務店の指揮監督の下に研究開発を行っていたとしても,人件費を含む研究開発費用をすべて原告が負担しているにもかかわらず,研究開発投資を一度も回収することなく,無償で一条工務店が当該研究開発の成果物を取得することを前提とする被告の上記主張は,経済的に不合理である。 b 昭和62年契約についてさらに,被告は,昭和62年契約において,契約終了後の守秘義務や,マニュアル類の返還といった定めがないことなどに照らせば,一条工務店から原告に支払われるロイヤリティは,実質的に,原告の開発費用の負担及び知的財産権の承継の対価としての意味を有する旨主張する。 しかしながら,第1に,GC各社との本件各フランチャイズ契約の大半については,契約解消後のマニュアル類の返還義務を定めた規定は存在しない。第2に,昭和62年契約には,一条工務店は,原告から供与された新し しながら,第1に,GC各社との本件各フランチャイズ契約の大半については,契約解消後のマニュアル類の返還義務を定めた規定は存在しない。第2に,昭和62年契約には,一条工務店は,原告から供与された新しいノウハウとこれに必要な開発費とこれに伴う教育指導に対し,その対価としてロイヤリティを支払う旨記載されているところ,ロイヤリティとは,無体財産権の利用のために支払われる対価と解されており,決して無体財産権の譲渡代金ではない。第3に,仮に,被告が主張するように,経営システムが原告から一条工務店に移転したのであれば,「経営システムの非保有者は,契約解消後は守秘義務を負う。」との被告の上記反論自体から導かれる被告自身の論理によれば,原告・一条工務店間の契約解消後,原告が守秘義務を負うこととなる旨の規定が昭和62年契約に明記されていなければならないところ,同契約書には,原告に契約解消後の守秘義務を負わしめる規定は存在しない。 以上のとおり,被告の主張は,いずれも失当として採り得ない。 ウ本件各処分が本件先行処分等と矛盾すること以下のとおり,課税庁は,住研時代において,GC各社及び一条工務店から原告に対するロイヤリティの支払を税務上是認しており,本件各処分と矛盾することが明らかである。 (ア) 住研時代における課税庁による税務調査住研時代である昭和62年7月から平成7年2月の7年8か月もの長期間にわたって,GC各社と一条工務店は,原告に対し,原告から提供される経営システムの対価として,ロイヤリティを支払い続けてきた。そして,被告のみならず,GC各社の各所轄税務署は,GC各社及び一条工務店から原告に対してロイヤリティが支払われている事実に基づいて,7年8か月間もの長期にわたって課税を行ってきた。 その間,被告のみならず,GC各社の各所轄税務署は,多数回の 務署は,GC各社及び一条工務店から原告に対してロイヤリティが支払われている事実に基づいて,7年8か月間もの長期にわたって課税を行ってきた。 その間,被告のみならず,GC各社の各所轄税務署は,多数回の税務調査を行い,原告に経営システムが帰属することをその都度確認してきた。 よって,本件各処分は,過去7年8か月にわたる取引実態を無視し,かつ,従来の課税処分の前提と矛盾しており,不合理極まりない。 (イ) 被告による本件先行処分また,被告は,平成9年7月4日付けの本件先行処分において,原告がHRDに譲渡した本件ノウハウ等の対価が20億円であるのは過小であるとして,本件ノウハウ等の適正評価額を31億2601万2066円と認定しているが,その際,被告の担当者は,評価額について原告の顧問税理士等と協議しているのであるから,評価対象である本件ノウハウ等の内容について詳細に検討したはずである。 よって,実際には本件ノウハウ等が原告には存在せず,一条工務店に帰属していたなどということはあり得ないから,さしたる調査も行うことなくなされた,本件先行処分に反する本件各処分は,根拠なき課税であることが明らかである。 (ウ) その他の税務調査等さらに,原告は,平成6年秋ころ,被告から税務調査を受け,一条工務店からの約1億4000万円分のロイヤリティの収入過大計上,及びその他GC各社からのロイヤリティ約4400万円の計上漏れについて,平成7年2月28日付けで更正処分を受け,さらに,一条工務店は,平成6年10月ころ,江東西税務署から税務調査を受け,原告に対する上記約1億4000万円のロイヤリティ過大計上を指摘されたので,その旨の修正申告に応じている。 (2) 本件譲渡契約の経済的合理性ア HRDの設立の経緯一条グループにおいては,同業他社の商品から差別化され,競争力あ 円のロイヤリティ過大計上を指摘されたので,その旨の修正申告に応じている。 (2) 本件譲渡契約の経済的合理性ア HRDの設立の経緯一条グループにおいては,同業他社の商品から差別化され,競争力ある独自の商品を開発するために,研究開発に特化した原告を設立し,その後は原告が本件ノウハウ等を供与し,ロイヤリティの支払を受けるという事業形式を採用してきた。しかしながら,同業他社との競争力が激化するなかで,それとの差別化を図るためには,同業他社にはなく,一条グループが販売する木造住宅にしかない優れたデザイン,機能,耐久性等を有する商品を,低コストで顧客に提供する必要性が高まった。また,平成4年ころから,顧客のニーズの洋風化傾向が顕著となり,洋風住宅の商品開発も重要な課題の一つとなった。 この点,住研時代は,原告が海外から既製品を調達して一条グループに販売してきたが,それよりも自らオリジナル商品を開発・製造した方が低コストで高級な商品を供給できることから,海外でオリジナル商品を開発・製造する拠点を作る必要性が高まった。このような背景事情から,A及びE(現HRDの代表取締役)の両名は,平成6年ころから,海外における一条グループの研究開発部門を担当する会社を設立する構想の具体化に着手し,その結果,東南アジアの地理的中心に位置し,政治情勢も安定していて,情報収集が容易なシンガポールにHRDを設立するに至った。 イ HRDの事業体制HRDのシンガポール本社は,ビジネスの中心地であるUOBプラザビル20階に置かれ,経理事務や一条グループから支払われるロイヤリティの管理を行っている。これとは別に,ジュロン地域にあるIMMビルにデザインセンターが置かれ,住宅に関する各種研究開発を行うとともに,内装事業を行っている。同センターには,HRDのショールームもあり の管理を行っている。これとは別に,ジュロン地域にあるIMMビルにデザインセンターが置かれ,住宅に関する各種研究開発を行うとともに,内装事業を行っている。同センターには,HRDのショールームもあり,HRDが開発した商品や世界各地から集められた住宅部材が展示されている。 フィリピン支店は,同国内に複数の拠点を有するが,主たるものは,に置かれた,研究開発を行う4階建事務所と,各種実験施設を備え,一条グループの顧客の木拾い,積算,発注,CAD図面作成などを行う事務所である。 台湾駐在員事務所では,原材料の市場調査や新商品の開発,中国の下請建材工場に対する技術指導などを行っている。 HRDは,上記のような事業体制を維持するために,多数の日本人社員と現地社員を雇用している。 ウ HRDの事業活動と本件ノウハウ等の譲受けの必要性HRDは,平成7年3月以降,一条グループのために大規模に研究開発活動を行っており,実際に,GC各社及び一条工務店に対して,一条グループの競争力の源泉である,高級,良質で魅力ある多数のオリジナル商品を安価で安定的に提供している。 このような事業活動を行うため,HRDは,平成7年2月から平成8年6月までの間に62億5276万0664円,平成9年6月期に64億0724万7332円,平成10年6月期に59億6990万8813円,平成11年6月期に56億1119万0536円の研究開発費(原告に支払った本件ノウハウ等の譲渡費用,役務提供・技術開発費用,現地指導費用,研修費,販売費・一般管理の合計)を支出している。 以上のとおり,HRDは,一条グループの研究開発拠点として設立され,実際に上記のような研究開発活動を行っている企業であるから,HRDが,従来の一条グルー ,販売費・一般管理の合計)を支出している。 以上のとおり,HRDは,一条グループの研究開発拠点として設立され,実際に上記のような研究開発活動を行っている企業であるから,HRDが,従来の一条グループの研究開発拠点であった原告から,その地位を引き継ぐのに伴って,原告保有に係る本件ノウハウ等を譲り受けることは,経済的に合理的な行為である。 (3) 仮装についての経済的動機の欠如原告も一条工務店も同じ日本法人であり,かつ同族会社であるから,法人税法上,適用税率が異なる等の差異は存在しない。また,原告も一条工務店も恒常的に利益を計上して法人税を納税しているから,仮に原告と一条工務店を一つの企業体とみた場合,GC各社からのロイヤリティを一条工務店が受領した場合と,原告が受領した場合とで,両社に対する合計の課税額には何ら差が生じない。 したがって,一条工務店ではなく原告がロイヤリティを受領するからといって,原告にも一条工務店にも税務上何らのメリットもないから,原告ないし一条工務店が,節税,租税回避あるいは脱税目的で,真実は本件ノウハウ等が一条工務店に帰属しているにもかかわらず,あたかもこれが原告に帰属するかのような外形を作出すべき経済的動機は全く認められない。しかも,平7年2月28日当時,本件ノウハウ等は,一条工務店ではなく原告に帰属していたものであるが,HRDが,本件ノウハウ等を一条工務店ではなく原告から譲り受けるからといって,HRD・原告・一条工務店の間で,何らの税務上のメリットもない。この点からも,本件各処分は合理的根拠を欠く。 被告は,本件各処分の処分理由として,本件譲渡契約が仮装すなわち通謀虚偽表示であると主張し,本件ではその点が争点となっているのであるから,契約当事者である一条工務店と原告が通謀虚偽表示を行う経済的動機についての主張を要す 分理由として,本件譲渡契約が仮装すなわち通謀虚偽表示であると主張し,本件ではその点が争点となっているのであるから,契約当事者である一条工務店と原告が通謀虚偽表示を行う経済的動機についての主張を要するにもかかわらず,被告は,この点について,「経済的動機の有無については主張立証しない。」と述べて,裁判所の求釈明にも応じず,処分理由の最も中心的事実についての主張立証を放棄している。 第3 当裁判所の判断 1 通謀虚偽表示の認定における間接事実について本件における争点は,前記のとおり,本件資金移動が法人税法22条2項所定の受贈益に該当するか否かであり,その論理的前提問題として,本件譲渡契約が仮装された無効のものか,すなわち,原告とHRDとの間で民法94条1項の通謀虚偽表示が成立したかが争われている。 ところで,通謀虚偽表示の成立要件である,法律行為の当事者が当該法律行為(の表示行為)に対応する内心的効果意思を持たず,かつ持たないことにつき相手方と通謀したことは,それが専ら主観的な要素から構成されるため,それを推測させる客観的な事実,すなわち間接事実によって証明されることが通常であるところ,譲渡契約における目的物が譲渡人に帰属していないことは,これによって直ちに当該契約の無効を来すものではない(他人物売買も有効に成立することはいうまでもない。)ものの,そのことが前提とされて契約が締結されたなどの事情が認められない限り,一般的には不自然な契約であるといわざるを得ず,この意味で,売買契約の性質を有する本件譲渡契約によって譲渡の目的物とされた本件ノウハウ等が原告に帰属していたか否かは,有力な間接事実として,上記争点についての判断に大きな影響を与えるというべきである。この意味で,被告が本件譲渡契約が仮装されたものであることを証するために,本件ノウハウ等 告に帰属していたか否かは,有力な間接事実として,上記争点についての判断に大きな影響を与えるというべきである。この意味で,被告が本件譲渡契約が仮装されたものであることを証するために,本件ノウハウ等の帰属を問題としているのは,的確な対応というべきである(そして,本件各フランチャイズ契約におけるフランチャイザーがだれかは,本件ノウハウ等の帰属についての判断に影響を与える再間接事実に位置づけられるから,この問題も争点の判断に影響を与え得ると考えられる。)。 もっとも,上記争点の判断に影響を与える間接事実としては,目的物の帰属のほかにも種々考えられるところ,通謀虚偽表示は,内心的効果意思が存在しないにもかかわらず,通謀の上,あえて表示行為を行うのであるから,経験則上,そのような仮装行為をするについての動機が存在するのが通常と考えられる。すなわち,通謀虚偽表示が成立する場合には,当事者双方ないし少なくとも一方が,当該法律行為が有効に成立したという外形を作出することによって何らかの利益を得る関係が存在すると考えられ,逆にいえば,そのような動機が全く見当たらないという事実は,通謀虚偽表示の認定について,消極的な方向で作用することは当然である。したがって,被告の主張するように,租税回避等の経済的動機が存在しないからといって,直ちに本件において通謀虚偽表示が成立しないと断定できるわけではないとしても,かかる事情を無視ないし軽視することも相当とはいえない。 2 本件各フランチャイズ契約におけるフランチャイザーについて被告は,本件各フランチャイズ契約におけるフランチャイザーが一条工務店であることから,同契約において供与される経営システムを保有しているのは一条工務店であり,したがって,本件譲渡契約締結当時にそれらが集積されて成る本件ノウハウ等も一条工務店に帰 ャイザーが一条工務店であることから,同契約において供与される経営システムを保有しているのは一条工務店であり,したがって,本件譲渡契約締結当時にそれらが集積されて成る本件ノウハウ等も一条工務店に帰属する旨主張するのに対し,原告は,本件各フランチャイズ契約におけるフランチャイザーは原告であり,経営システムの保有者も原告である旨主張するので,まずこの点について判断する。 (1) フランチャイズ契約の特色とフランチャイザーの資格についてフランチャイズ・システムは,比較的歴史の浅い,新しい事業形態であるため,様々な内容のものがあり,フランチャイザーからフランチャイジーに対してなされる給付についても,営業標章の使用許諾,事業経営システムの付与,経営指導・統制,営業を行う権利の付与,商品や原材料の販売・供給などの一部又は全部が組み合わされ,フランチャイジーからフランチャイザーに対する義務についても,契約金・保証金・ロイヤリティの支払,営業への専念義務,経営システムの秘密保持義務などの一部又は全部が組み合わされるといったように多種多様な要素から成っているなど,フランチャイズ契約については,どの側面を重視するかによって,様々な定義が可能であり,定まったものはないとされている。もっとも,その典型的な内容については,ある程度の共通認識が形成されている。 例えば,社団法人日本フランチャイズチェーン協会が昭和47年に策定し,昭和54年に改定した定義は,「フランチャイズとは,事業者(「フランチャイザー」と呼ぶ)が,他の事業者(「フランチャイジー」と呼ぶ)との間に契約を結び,自己の商標,サービス・マーク,トレード・ネーム,その他の営業の象徴となる標識,および経営のノウハウを用いて,同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え,一方,フランチャイジー ,自己の商標,サービス・マーク,トレード・ネーム,その他の営業の象徴となる標識,および経営のノウハウを用いて,同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え,一方,フランチャイジーは,その見返りとして一定の対価を支払い,事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導及び援助のもとに事業を行う両者の継続的関係をいう。」というものであり,中小小売商業振興法4条5項及び11条は,「連鎖化事業であつて,当該連鎖化事業に係る約款に,加盟者に特定の商標,商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し,加盟金,保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるもの(略)を行う者は……あらかじめ……次の事項を記載した書面を交付し,その記載事項について説明をしなければならない。」と規定し,その記載事項として,加盟金,販売条件,経営指導に関する事項,使用させる商標その他の表示に関する事項等を掲げる。さらに,公正取引委員会が昭和58年に作成した「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」は,「フランチャイズとは,定義によつてその範囲に広狭が生じるが,一般的には,特定の商標,商号又はそれらの一部,サービス・マーク等を使用させ,加盟者の物品販売,サービス提供その他の事業・経営について,統一的な方法で統制,指導,援助を行う事業形態であるとされている。……フランチャイズにおいては,本部と加盟者がいわゆるフランチャイズ契約を締結し,この契約に基づいて,本部と各加盟者があたかも通常の企業における本店と支店であるかのような外観を呈して事業を行つているものが多く,両者の関係は通常の製造業者と販売業者のものよりも密接であるが,加盟者は法律的には本部から独立した事業者であることから,本部と加盟者間の取引関係は独占禁止法の適用を受けるもの 行つているものが多く,両者の関係は通常の製造業者と販売業者のものよりも密接であるが,加盟者は法律的には本部から独立した事業者であることから,本部と加盟者間の取引関係は独占禁止法の適用を受けるものである。」と定義した上,「フランチャイズの取引関係の基本はフランチャイズ契約であり,同契約は,概ね次のような事項を含む統一的契約である。①本部が加盟者にその商号,商標等を使用し営業することの許諾に関するもの ②営業に対する第三者の統一的イメージを確保し,本部を含む加盟者の営業を維持するための加盟者の統制,指導等に関するもの ③上記に関連した対価の支払に関するもの ④フランチャイズの終了に関するもの」とフランチャイズ契約の一般的内容を示している。 そうすると,被告の主張するとおり,フランチャイズ契約においては,フランチャイザーが特定の商標やサービス・マークなど,統一的イメージを与える標識を使用させるとともに,事業経営のノウハウを供与してその展開を援助する内容が定められ,両者がいわばパッケージとされているのが通常と考えられる。したがって,一般的には,フランチャイザーとなるためには,上記のような標識について使用許諾する権限と事業経営のノウハウを保有することが必要と考えられる。 もっとも,このことは,フランチャイズ契約が常に上記のような典型的なものであることを意味するものではない。例えば,フランチャイザーは,一般的にノウハウの提供義務を負うことから,通常はそのノウハウの帰属者であることが多いと解されるが,提供義務を履行するためには,フランチャイザーが,時機に応じて,適時に,ノウハウを提供し得る態勢を有していれば足りるから,必ずしもノウハウの帰属者であることを要するものではない。同様に,フランチャイズ契約においては,フランチャイザーが常に1者(社)である て,適時に,ノウハウを提供し得る態勢を有していれば足りるから,必ずしもノウハウの帰属者であることを要するものではない。同様に,フランチャイズ契約においては,フランチャイザーが常に1者(社)であることを要するものではない。資本や役員構成を共通にする複数の者(社)が,全体として対外的に統一的イメージを与えるグループ企業を構成している場合,これらが共同フランチャイザーとなって,フランチャイズ契約で定められた責務を分担することも十分にあり得るといわねばならない。すなわち,統一的イメージを与える標識の使用に関する権限を有する者と事業経営のノウハウの保有主体とが異なっている場合には,両者が共同フランチャイザーとなった上,前者が上記標識について使用許諾し,後者がノウハウの供与を行うことも,フランチャイズ契約の類型に含まれることは当然である。 (2) 本件各フランチャイズ契約におけるフランチャイザーについてア以上の観点に立って,本件各フランチャイズ契約におけるフランチャイザーの確定と,それが経営システムの保有主体の認定にどのように影響するかについて検討するに,前記前提事実に証拠(甲8の2ないし19,46,52,57の1ないし9,131,132,136の1ないし17,138,141,152,153,乙5の1ないし10,12,16,17,26,27,35,38,39)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 (ア) 一条工務店は,昭和53年9月12日に設立され,昭和61年2月28日,区分7(建築または構築専用材料,その他本類に属する商品)の指定商品について,「株式会社一条工務店」の商標登録を受けたのを皮切りに,平成11年1月29日までの間,多数の指定商品等について,同商標や「一条工務店」の商標登録を受け,その権利者となった。 原告は,昭和 について,「株式会社一条工務店」の商標登録を受けたのを皮切りに,平成11年1月29日までの間,多数の指定商品等について,同商標や「一条工務店」の商標登録を受け,その権利者となった。 原告は,昭和62年7月1日,一条グループにおける住宅関連業務の研究開発及びこれに関する経営指導等を目的として設立され,人的にも資本構成上も,一条工務店の子会社に位置づけられる。 なお,原告設立の前日である同年6月30日付けで,原告が経営システムの保有者及び供与者であり,一条工務店がその供与を受ける対価として,一定額のロイヤリティを支払う旨の昭和62年契約が締結されている。 (イ) 原告設立以前に締結されたフランチャイズ契約書(契約番号1ないし9)においては,一条工務店とGCが契約当事者となり,一条工務店が上記商標権等の使用を許諾するとともに,経営システムの保有者及び供与者とされていた。 その後の住研時代である昭和63年中に締結されたそれら(契約番号10ないし12)においては,一条工務店,原告及びGCが契約当事者となり,一条工務店が上記商標権等の使用を許諾するとともに,原告が経営システムの保有者及び供与者とされていた。 また,平成元年から平成3年にかけてのそれら(契約番号13ないし18)においては,再び一条工務店とGCが契約当事者となり,一条工務店が上記商標権等の使用を許諾するとともに,経営システムの保有者及び供与者とされていた。 さらに,平成5年以降のそれら(契約番号19ないし21)においては,再び一条工務店,原告及びGCが契約当事者となり,一条工務店及び原告が区別されることなく,上記商標権等の使用を許諾するとともに,経営システムの保有者及び供与者とされていた。 (ウ) 一条工務店は,原告設立後,それ以前にフランチャイズ契約を締結していたGC各社に対し,以後は ることなく,上記商標権等の使用を許諾するとともに,経営システムの保有者及び供与者とされていた。 (ウ) 一条工務店は,原告設立後,それ以前にフランチャイズ契約を締結していたGC各社に対し,以後はロイヤリティを原告に支払うよう指示した。これを受けたGC各社の中には,その理由について疑問を感じた者もいたが,一条工務店と原告とはいずれも一条グループを構成し,親会社と子会社の関係にあることから,特段,支払先の変更に異議を述べることなく,原告に対してロイヤリティを支払うようになり,経理上の処理もそのように変更した。なお,その際,原告とGCとの間で,改めてフランチャイズ契約に関して契約書を作成したり,書面で承認を確認したりすることはなかった。 (エ) GC各社に対する研修は,一条工務店の管理センターにおいて,原告の従業員が講師となって行われ,その案内や各種マニュアル等の注文の受付けも,一条工務店の管理センターが行っていたが,モデルハウスの建築等についての設計や指導は,その現場等において,原告の従業員が行っていた。 もっとも,上記指導や研修等は,原告ではなく親会社である一条工務店の名義で実施されており,GC各社のうちかなりの者は,これらの実施主体が一条工務店であるとの認識を有していた。 (オ) また,GC各社に配布された各種マニュアル・カタログ類は,一条工務店ないし本部企画室等が作成者として表示されている。 このうち,「特注カタログ百年」,「特注カタログSAISON」,「間違いのない家づくり」,「あなたの土地を診断します」は,モデルハウス等を訪れた顧客に配布されるものであり,「設計事務所標準マニュアル書」,「安全施工基準書」,「大工工事施工マニュアル書’88」,「大工工事基本施工マニュアル書’91」,「設計マニュアル(H7.4.)」は,一条工務店な 布されるものであり,「設計事務所標準マニュアル書」,「安全施工基準書」,「大工工事施工マニュアル書’88」,「大工工事基本施工マニュアル書’91」,「設計マニュアル(H7.4.)」は,一条工務店ないしGC各社から外注先にも配布が予定されているものであり,「営業マニュアル(平成7年4月第2版)」は,一条工務店ないしGC各社の一般営業従業員に配布が予定されているものである。 (カ) 原告の顧問会計事務所のI税理士は,原告の平成8年6月期決算が終了した平成8年8月ころ,経理担当者から,原告の利益率が大幅に減少したのは本件ノウハウ等を譲渡したからであるとの説明を受けたため,関係書類の整備状況について確認するよう指示した。 これを受けて,一条工務店業務推進室が改めて調査したところ,本件譲渡契約書と一条工務店及び原告の議事録の存在を確認したが,それだけでは十分でなく,原告とGC各社との間の契約書を整備する必要があると考え,平成8年11月7日のGCオーナー会議において,HRDの業務内容や本件譲渡契約の内容等を説明し,HRDとの間のフランチャイズ契約書,日付を遡らせた原告とGC各社間のフランチャイズ契約書,ノウハウの秘密保持に関する覚書に署名してもらうことを依頼し,平成8年12月19日付けで,GC各社に対し,上記各書類を同封して,署名の上返送するよう求めた。なお,その送付書には,冒頭に,一読後廃棄するよう求める記載があり,10周年記念賞与についての書面も同封されていた。 GC各社は,契約番号16の一条工務店鹿児島を除き,上記の要請に応じ,住研時代に日付を遡らせた原告との間のフランチャイズ契約に記名押印して,原告に返送している(なお,一条工務店鹿児島は,平成6年6月以降は,ロイヤリティの入金をしていない。)。 (キ) 平成11年11月ころに行われた本件調 た原告との間のフランチャイズ契約に記名押印して,原告に返送している(なお,一条工務店鹿児島は,平成6年6月以降は,ロイヤリティの入金をしていない。)。 (キ) 平成11年11月ころに行われた本件調査において,未来工務店(契約番号12)の代表取締役であるFは,被告の担当者に対し,経営システムの提供は一条工務店から行われ,指導も浜松の一条工務店の管理センターで受けていたにもかかわらず,ロイヤリティを原告に支払っていたことについて疑問を感じていた旨述べており,クリヤマ(契約番号1)の元住宅産業事業準備室長である御牧元一も,経営システムのマニュアル類を契約締結と同時に一条工務店から受領し,その追加・改訂版も一条工務店から受け取り,指導等も一条工務店から受けていたと述べている。 他方,平成11年5月まで,株式会社一条工務店千葉(契約番号19)の代表取締役社長であったLは,経営システムの供与者が原告に移行した経緯は覚えていないが,原告及びHRDも浜松の一条工務店という認識であり,両者を区別していないと述べ,さらに,株式会社木の国工房(旧一条工務店柏。契約番号14)の代表取締役社長であるMも,原告から経営システムの供与を受ける旨の契約を締結しつつも,一条工務店からその提供を受けるという考えでいた旨述べている。 なお,未来工務店は,平成10年に一条グループから脱退し,平成11年に至って,一条工務店の関連会社である株式会社日本産業から,総額1億5000万円を超える木材及び住宅設備機器等の売掛金請求の訴えを提起され(大阪地方裁判所平成11年(ワ)第11304号),平成12年11月21日,同年から平成21年までの10年間,毎年1000万円ずつ分割で支払う等の内容の和解が成立したが,平成14年7月5日,2回目の不渡りを出し銀行取引停止処分を受け,Fは所在不明 平成12年11月21日,同年から平成21年までの10年間,毎年1000万円ずつ分割で支払う等の内容の和解が成立したが,平成14年7月5日,2回目の不渡りを出し銀行取引停止処分を受け,Fは所在不明となった。なお,クリヤマも一条グループから脱退している。 (ク) その後,原告は,GC各社(契約番号2ないし5,7ないし9,15,17)から,平成11年12月2日付け歴史的事実確認書と題する書面に代表者の記名押印をしてもらった上,返送を受けている。 同書面には,①原告設立に伴って,契約当事者を一条工務店から原告に変更したことについて口頭で了解をしたこと,②住研時代は,経営システムの提供は主として一条工務店が作成した連絡票,一条工務店の名前で開催する研修会等の手法で行ってきたが,その理由は,経営システムが原告という試験研究法人から供与されることが明らかになると,一般消費者にとって一条グループのイメージが悪くなり,また,GC各社も一条工務店研究開発部の名称で経営システムの供与を受ける方が事業経営上安心であることによること,③研修会の講師,モデルハウスの設計建築指導等を実際に行っていたのは原告の従業員であるE,G,Hらであることなどが記載されている。 イ以上の事実によれば,本件各フランチャイズ契約書においては,すべて一条工務店が契約当事者として表示されているのに対し,原告については,一条工務店と並んで契約当事者になっているものも存在する(契約番号10ないし12,19ないし21)反面,原告設立前に一条工務店が当事者となって締結された契約が修正ないし変更されないままであったり(契約番号1ないし9),原告設立後に作成されたものですら,契約当事者とされていないものも相当数存在しており(契約番号13ないし18),また原告が契約当事者になっている契約書でも,一条 ままであったり(契約番号1ないし9),原告設立後に作成されたものですら,契約当事者とされていないものも相当数存在しており(契約番号13ないし18),また原告が契約当事者になっている契約書でも,一条工務店との役割分担が明記されているものとそうでないものとが存在するなど,契約書の作成,殊に当事者の表示について一貫した方針が取られておらず,企業の作成する文書として不自然であることは否定できない(この点について,原告は,原告を含めた三者間契約にすると契約関係が複雑になり,GCが一条グループを脱退した場合に,顧客との間に紛争が生じていると,迅速な引継ぎができない旨弁解するが,被告の主張するとおり,フランチャイズ契約と顧客の引継ぎとは別個の問題であるから,三者間契約にしたからといって不都合を生ずるとは考えられず,現に,三者間契約の方式に拠った契約が相当数存在することは上記認定のとおりである。)。 しかしながら,原告は一条工務店の子会社であり,対外的には一条工務店の会社名を前面に出した方が信用を得やすいと考えられることや,GC各社からみると,両社は同じ一条グループを構成し,これを峻別することによって格別の利益が得られるものではないと考えられること(両者の区別についてあいまいな供述をするGCが存在することは,これを裏付けるものである。むしろ一般論としては,親会社である一条工務店への信頼を背景として,本件各フランチャイズ契約を締結したと推測できるGCとしては,一条工務店がフランチャイザーとしてフランチャイズ契約上の全債務を負担する形式の方が安心できるとも考えられる。)を考慮すると,契約書に当事者ないし経営システムの保有者として原告が表示されていないからといって,直ちにその供与主体が原告ではなく一条工務店であると断定するのは相当でない。このことは,原告 れる。)を考慮すると,契約書に当事者ないし経営システムの保有者として原告が表示されていないからといって,直ちにその供与主体が原告ではなく一条工務店であると断定するのは相当でない。このことは,原告の従業員が,一条工務店の名義でもってGCに対する研修,指導に当たったことや,GC各社に配布された各種マニュアル・カタログ類の作成者が,一条工務店ないし本部企画室等と表示されていたことについても,同様と考えられる(殊に,カタログ及び資料は,住宅展示場を訪れる顧客に対して配布する営業上の資料であり,「設計事務所標準マニュアル書」,「安全施工基準書」,「大工工事施工マニュアル書」,「設計マニュアル」,「工務マニュアル書」は,一条工務店ないしGC各社の外注先にも配布が予定されたものであり,「営業マニュアル」は,一条工務店ないしGC各社の一般の営業従業員に配布が予定される営業方法に関するマニュアルであるから,一条工務店等の名義で作成されることについて合理的な理由があると考えられる。)。 かえって,GC各社が,一条工務店からの指示があったとはいえ,原告設立後は何らの異議を申し立てることもなくロイヤリティを原告に支払うようになり,経理上の処理もそのように変更した上,その多くが,日付を遡らせた原告とGC各社間のフランチャイズ契約書や歴史的事実確認書の作成の依頼に応じていることは,本件各フランチャイズ契約によって経営システムの供与主体が原告であること,すなわちフランチャイザーであると認識していたことをうかがわせるものである(原告がGC各社に対して歴史的事実確認書の作成を依頼することを決めた契機は,上記のとおり,税務調査が実施される可能性が高い旨顧問税理士から指摘されたことであるが,契約書の作成状況が不備である場合に,税務上の処理と整合させるべくこれを整備するこ 依頼することを決めた契機は,上記のとおり,税務調査が実施される可能性が高い旨顧問税理士から指摘されたことであるが,契約書の作成状況が不備である場合に,税務上の処理と整合させるべくこれを整備することは不自然なことではなく,まして,GC各社としては,その認識と異なる虚偽の契約書等の作成に応じなければならない理由はない。)。 (3) 小括以上を総合すれば,本件各フランチャイズ契約においては,契約書の作成方針に一貫性がなく,全契約を通じてフランチャイザーを統一的に確定することは困難であるものの,原告が経営システムの供与者,すなわち共同フランチャイザーである可能性を否定できない。 そうすると,本件各フランチャイズ契約における当事者の表示やノウハウ等の供与主体となるフランチャイザーの検討だけでは,経営システムの帰属主体がだれであるかを判定することはできないといわざるを得ない。 よって,その帰属主体がだれであるかについては,さらにその研究開発者がだれであるかなどを検討した上で,最終的に判断されるべきものである。 3 本件ノウハウ等の研究開発の主体について(1) 研究開発主体の判断要素ある知的財産権の帰属主体を判断するに際して,最も重視すべき間接事実は,いうまでもなく,その研究開発の主体がだれであるかということである。したがって,本件においても,本件ノウハウ等の帰属主体を確定するには,その研究開発の主体がだれであったかを検討しなければならないと考えられるところ,それが一条工務店と原告のどちらであるかは,当該経営システムを研究・開発した人物がどちらに所属していたか(在籍状況),当該経営システムの研究・開発に必要な費用をどちらが負担していたか(費用負担状況)などの諸要素を重視すべきではあるが,それだけではなく,両社の営業内容,設立目的,設立経緯などからみ たか(在籍状況),当該経営システムの研究・開発に必要な費用をどちらが負担していたか(費用負担状況)などの諸要素を重視すべきではあるが,それだけではなく,両社の営業内容,設立目的,設立経緯などからみて,どちらが保有するにふさわしいと考えられていたか(事業目的との整合性)をも総合的に検討した上,判断すべきものである。 そして,在籍状況,すなわち,当該従業者の使用者はだれかの判断においては,給与の実質的支給者はだれかという点が最大のメルクマールとなるが,それだけではなく,研究施設の提供,研究補助者の提供,指揮命令関係等を総合的に勘案して使用者を決定すべきものと解される。 もっとも,上記のような検討の結果,研究開発者の所属先や費用負担者が確定したとしても,被告の主張するとおり,事案によっては,これと異なる主体に研究開発の成果を帰属させる趣旨の合意が成立している可能性も否定できないが,このような合意が成立している場合は,通常,それを相当とする特段の事情が存在すると考えられるので,本件においても,かかる特段の事情が認められるかについても,併せて検討することにする。 (2) 本件ノウハウ等の研究開発の状況そこで,本件ノウハウ等の研究開発の状況について検討するに,前記認定事実に後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア原告及びHRD設立の経緯等(甲50,140,乙10)(ア) 一条工務店において採用されたフランチャイズ・システム一条工務店は,前記のとおり,昭和53年9月12日に設立され,木造注文住宅の販売及び施工を営んできたが,昭和55年10月ころ,それに用いられる材木をあらかじめ可能な限り工場で加工し,これを現場で組み立てるという方法,すなわちプレ・カット工法を導入し,これによりコストを削減するとともに,非熟練の大工を有 55年10月ころ,それに用いられる材木をあらかじめ可能な限り工場で加工し,これを現場で組み立てるという方法,すなわちプレ・カット工法を導入し,これによりコストを削減するとともに,非熟練の大工を有効に利用しつつ高品質を維持することが可能となった。 その結果,一条工務店の売上高が100億円に迫ったが,さらに事業を拡大するために,昭和61年ころから,各地の工務店とフランチャイズ契約を締結するようになった。その内容は,一条工務店が,GC各社に対し,商標等の使用許諾,木造注文住宅の販売・施工事業に関するノウハウ(経営システム)の提供及び指導,並びに各種住宅設備機器等の商品の販売を行い,他方,GC各社は,一条工務店に対し,経営システムの提供及び指導の対価として売上高のないしのロイヤリティを支払うというものである。そして,一条工務店が提供する経営システムの内容は,契約書によれば次のとおりであるが,具体的には,木造注文住宅のモデルハウスの設計及び当該モデルハウスの施工に要する木材の加工方法(プレ・カット工法)が中心であった。 A 本品に関する材料の製造・製品の調達と品質管理B 販売並びにマーケティングの要領及び管理C 住宅に関する建築設計技術D 住宅に関する建築工事技術E 工事管理・監督の要領F 本事業に必要な組織体制作りG 本事業に必要な諸般の帳票・様式並びに管理手法なお,フランチャイズ契約書には,一条工務店の商標権をGC各社が使用できる旨の記載があるが,フランチャイズ・システムを展開し始めたころは,一条工務店の商標が業界にそれほど知られておらず,GC各社の中には,フランチャイジーとなった後も,従前の商標を使用する会社もあった。 (イ) 住宅展示場を中心とした営業一条グループが営んでいる木造注文住宅の販売・施工事業 にそれほど知られておらず,GC各社の中には,フランチャイジーとなった後も,従前の商標を使用する会社もあった。 (イ) 住宅展示場を中心とした営業一条グループが営んでいる木造注文住宅の販売・施工事業は,住宅展示場に自社の営業従業員を配置した上,来場した顧客に自社の「商品」であるモデルハウスの魅力をアピールして注文を獲得し,受注後は,顧客の要望や敷地条件等に応じて,間取り・外観デザイン・内装デザイン・住宅設備機器を選択・決定し,実際に設計図書に従って木造住宅を施工するというものである。 したがって,一条グループの営業の成否は,住宅展示場の来場者に一条グループの商品の魅力を感じてもらえるか否かによって大きく左右されることから,住宅展示場が最も重要な営業活動の場であると認識されていた。 (ウ) 原告の設立昭和62年ころまでのGC各社は,プレ・カット工法に魅力を感じて一条グループに参加してきたが,同工法自体は,昭和30年代の終わりころから業界全体に普及し始め,昭和62年ころには,大手プレハブ住宅メーカーが,下請工務店を利用して住宅建築事業を展開しつつあった。 そこで,一条工務店は,プレ・カット工法だけでは売上増を見込めず,GC各社を一条グループにつなぎ止めておくことはできないと考え,①住宅販売業者にとって営業の中心となる住宅展示場に関するノウハウ(住宅展示場のモデルハウスの設計,飾り付け及び運営方法(営業方法))を提供すること,②建築技術についての学問的裏付けを行い,技術力をセールスポイントにできるような建築技術の基礎研究を行うこと,③多様な顧客ニーズに対応できる商品の多様化・オリジナル化を推進すること,これらの活動に特化した専門的部門を作るため,昭和62年7月1日,原告が設立された。 原告における研究開発及びGC各社に対する経営システムの提供 に対応できる商品の多様化・オリジナル化を推進すること,これらの活動に特化した専門的部門を作るため,昭和62年7月1日,原告が設立された。 原告における研究開発及びGC各社に対する経営システムの提供は,一条工務店がそれまでに有していた経営システムを基礎としてなされることを前提としていたことから,その趣旨を明らかにすべく,同年6月30日付けで昭和62年契約の契約書が作成され,原告は,設立後,一条工務店からその経営システムを無償で引き継いだ。 イ原告の従業員等の配置(甲67の1,67の2の1・2,67の3ないし24,67の25の1・2,67の26ないし37,67の38の1・2,67の39,140,154)住研時代における原告の代表者は,一条工務店の代表者であるAが兼務していた。 また,従業員数は,住研時代においては数十名であり,とりたてて組織系統図が作成されることはなかった。そのため,当初の従業員の配置状況を示すものは存在しないが,平成5年6月期ないし平成7年6月期における従業員の配置数は別表6のとおりであり,モデルハウス設計・商品開発部門に7人ないし8人,基礎研究・実験に2人(G,H),原価管理に1人ないし2人,構造建方監修に1人ないし2人,平成6年7月期以降,地盤調査に3人,広報・連絡に7人ないし12人,木材加工に4人(平成5年6月期のみ)がそれぞれ配置されていた。これらの従業員に対しては,原告から給与が支給されていた。 もっとも,これらの従業員のうちの相当数の者は,一条工務店の部署にも席を有して,GC各社との対応に当たっており,一条工務店と原告の組織を厳密に区別することは困難であった。 ウ原告による研究内容(甲67の1,67の2の1・2,67の3ないし24,67の25の1・2,67の26ないし37,67の38の1・2,67の39, 原告の組織を厳密に区別することは困難であった。 ウ原告による研究内容(甲67の1,67の2の1・2,67の3ないし24,67の25の1・2,67の26ないし37,67の38の1・2,67の39,68ないし81,82の1・2,83の1ないし3,84,85,86及び87の各1ないし3,88ないし95,96の1ないし3,97ないし99,139ないし151,154,乙39)(ア) 商品開発原告は,Eを中心として,住宅展示場に建設されるモデルハウスの設計及び施工,インテリアコーディネイトの開発,新しいコンセプト・デザインの和風住宅ないし洋風住宅の開発,各種住宅設備機器の新商品の開発等を行った。そして,これら商品の開発に伴い,原告の住宅展示場設計担当者は,各地の住宅展示場に新たにモデルハウスを建築する際は,現地に赴いた上,そこに駐在しているGC各社のモデルハウス施工担当者や営業担当者らに対して,直接,モデルハウスの設計・施工指導,新しい商品知識の教育指導等を行っていた。このようにして,原告が,平成5年6月期から平成7年2月期の間,モデルハウスを施工した住宅展示場は,別表7のとおりである。 このような研究開発活動により,例えば,昭和63年ころに一条グループが売り出したタイル貼りの木造注文住宅は,大ヒット商品となった。もっとも,タイルの固定に用いられたセメントのあくが雨で染み出して外観を損ねるなどのクレームが出されたため,原告は,平成4年ころ,外壁のタイル貼りの工法を,従来の湿式から新乾式へと変更する内容の技術を開発した。この新しい施工方法の開発により,タイル貼り工法の大幅なコストダウンが実現されるとともに,外壁のタイルが立体感を持ち,全体としても高級感あふれる美しい外観を作ることが可能となった。また,原告は,昭和63年10月ころ,それまで禁止 タイル貼り工法の大幅なコストダウンが実現されるとともに,外壁のタイルが立体感を持ち,全体としても高級感あふれる美しい外観を作ることが可能となった。また,原告は,昭和63年10月ころ,それまで禁止されていた木造3階建住宅の建築が解禁されたことを受けて,木造3階建住宅「ファミーユⅢ」モデルを開発した。さらに,原告は,顧客の生活スタイルの変化,生活水準の向上,求められる住宅設備機器の変化などに対応すべく,一条グループの主力商品である洋風住宅「SAISON(セゾン)」や和風住宅「百年」のモデルチェンジを行った。 その他の分野では,原告は,同年8月ころ,その販売・施工する木造注文住宅に,「住宅金融公庫高耐久性木造住宅仕様」を標準仕様として導入し,平成4年4月ころには,一条グループ独自の住宅設備機器として,システムクローゼットを開発した。また,原告は,平成5年ころ,「住宅金融公庫高耐久性木造住宅仕様」の普及のために,同制度の適用を受けるために必要な性能保証住宅登録機構への保証料を顧客に代わって一条グループが負担する制度や,全住宅を対象とした地盤調査に基づく住宅の20年保証制度などを創設した。さらに,原告は,上記システムクローゼット以外にも,キッチン背面の収納棚,ダイニング・カウンター収納棚,キッチン・カウンター,I型及びL型システムキッチン,シューズ・ボックス,洗面・脱衣ユニット,セカンド・キッチン,その他キッチン・アイテム,食器棚,収納棚,出窓等の新しい独自の住宅設備機器を多数開発している。 なお,原告は,平成2年9月に浜松,平成4年10月に名古屋,平成6年11月に福岡の各都市において,一条グループが提供する数々の住宅設備機器のショールームであるインテリア館の内装デザインを担当している。 (イ) 基礎研究及び実験原告は,昭和63年11月から平成 6年11月に福岡の各都市において,一条グループが提供する数々の住宅設備機器のショールームであるインテリア館の内装デザインを担当している。 (イ) 基礎研究及び実験原告は,昭和63年11月から平成7年2月の間,木造住宅に関する基礎研究活動を行うべく,従業員であるG及びHを中心に,東京大学大学院農学生命科学研究科等との産学協同による研究開発活動を実施したが,その内容は別表3のとおりである。 なお,G及びHらは,一条工務店ないし一条工務店研究開発部所属従業員の肩書をもって,このような基礎研究及び実験を行っていた。 (ウ) 地盤調査地盤調査については,原告は,当初,GC各社から個別に相談を受けた案件について,基礎工事の方法を選定する方法で対処してきたが,従来の方法では既製コンクリート杭を地盤に打ち込む必要があるため,その過程でかなりの騒音や振動が発生し,数件ではあったが隣家の壁などにクラックが入ったなどのクレームがあったことから,振動等のない工法の採用が望まれた。 そこで,原告は,平成2年6月ころ,地盤改良方法としてDSP工法(地中に柱状の改良地盤を造成し,まさつ杭としての効果を発揮させる工法)を開発し,この問題を解決した。一条グループは,このような原告の地盤調査に関する研究開発活動を基に,平成5年ころ,住宅業界では初めて,受注したすべての施工現場を対象として地盤調査を実施することとし,これを受けて,従来は10年間であった住宅の保証期間を20年間に延長した。 (エ) 原価管理等の指導原告は,一条グループ全体の住宅資材の調達コストの低減を図るため,全国各地の業者の納入価格を調査・交渉し(主として仕様変更の際),GC各社に対して,より安いコストでの仕入れが可能となるような業者を紹介したり,様々な観点から原価管理について指導したり,個々のモデルハ 各地の業者の納入価格を調査・交渉し(主として仕様変更の際),GC各社に対して,より安いコストでの仕入れが可能となるような業者を紹介したり,様々な観点から原価管理について指導したり,個々のモデルハウス施工現場での営業方法についても指導するなどした。 エ原告の研究開発費(甲100の1ないし3,152,153)本件譲渡契約締結の前後における原告の決算報告書によれば,原告の売上総利益,販売費・一般管理費及び営業利益は,別表5記載のとおりである。なお,販売費・一般管理費の主要な部分は,人件費によって占められている。 そして,原告のロイヤリティ収入のうち,一条工務店から支払を受けた額は,平成6年6月期が約25億円,平成7年6月期が約33億円であり,これを一条工務店の営業期間に応じて分けると,平成6年3月から6月までのそれが税込み約6億7519万4797円,平成6年7月から平成7年2月までのそれが税込み約33億6459万2866円であるところ,この合計額は,一条工務店の平成7年2月期の開発研究費である39億9600万円とほぼ等しくなる(約6億7519万円と約33億6459万円を合計した約40億3978万円から消費税を控除した約39億2212万円)。 オ各種マニュアル・カタログ類の作成名義(甲47,48,137,138,乙35,38,39)一条グループが作成,配布する各種マニュアル・カタログ類については,前記のとおり,一条工務店ないし本部企画室等が作成者として表示されている。 もっとも,「特注カタログ百年」,「特注カタログSAISON」,「間違いのない家作り」,「あなたの土地を診断します」等のパンフレットは,モデルハウス等を訪れた顧客に配布されるものであり,「設計事務所標準マニュアル書」,「安全施工基準書」,「大工工事施工マニュアル書’88」,「 作り」,「あなたの土地を診断します」等のパンフレットは,モデルハウス等を訪れた顧客に配布されるものであり,「設計事務所標準マニュアル書」,「安全施工基準書」,「大工工事施工マニュアル書’88」,「大工工事基本施工マニュアル書’91」,「設計マニュアル(H7.4.)」は,一条工務店ないしGC各社から外注先にも配布が予定されているものであり,「営業マニュアル(平成7年4月第2版)」は,一条工務店ないしGC各社の一般営業従業員に配布が予定されているものである。 カ本件特許権等の権利者(乙13の1ないし23,14の1ないし3)一条工務店は,住研時代を含む平成元年1月27日から平成11年3月30日までの間,自己を出願人,G(又は外1名ないし3名)を発明者又は考案者として,別表8のとおり,特許登録出願又は実用新案登録出願をしており,実際にも登録されてその権利者となっている。他方,原告が権利者として登録された権利は存在しない。 また,上記実用新案出願のうち,平成元年1月27日出願に係る考案については,考案者Gの住所として,一条工務店の所在地が記載されている。 (3) 本件ノウハウ等の帰属についての総合的検討ア原告の設立目的,設立の経緯について上記認定事実によれば,一条工務店は,プレ・カット工法などを武器に,順調な発展を遂げてきたが,昭和62年ころに至って,このままでは発展を維持できる保障がないとの認識から,競合他社との差別化を図るべく,一条グループの中で,建築技術や住宅設備機器等の研究開発及び住宅展示場を用いた経営方法の開発指導等に業務を特化した部門を設立することを決め,昭和62年7月1日,原告が設立されたことが明らかである。 このような原告の設立目的,設立の経緯に照らせば,一条グループの有する研究開発能力のすべてを原告に集中し,効率的な研究 を設立することを決め,昭和62年7月1日,原告が設立されたことが明らかである。 このような原告の設立目的,設立の経緯に照らせば,一条グループの有する研究開発能力のすべてを原告に集中し,効率的な研究開発体制を築こうとするのが自然と考えられる(この一環として,それまでのノウハウ等が原告に帰属することを確認し,一条工務店がロイヤリティを支払う旨の昭和62年契約の契約書が作成されたものと考えられる。)から,原告設立後も依然として一条工務店が本件ノウハウ等の研究開発主体であったと認めることは困難である。 この点について,被告は,原告設立時において,それまで形成されていた一条工務店のノウハウが高額の収益をもたらすにもかかわらず,原告に無償でしかも口頭で譲渡されたと認めることはできない旨主張するところ,確かに,一条工務店は,原告設立前に,既に確立された経営システム等のノウハウをGC各社に供与するとのフランチャイズ契約を締結し,これによってロイヤリティを得ていたものである。 しかしながら,前記のとおり,一条工務店と原告とは,人的にも資本構成上も親子会社の関係にあるから,書面の作成(ノウハウの譲渡契約書ではなく,昭和62年契約の書面を作成するにとどまったこと)や譲渡対価の支払について格別の意を払わなかったからといって,特に不自然とはいえない上,上記フランチャイズ契約においては,経営システムについての守秘義務が規定されず,新たなノウハウの開発義務が明記されていたことに照らすと,一条工務店とGC各社とは,いったん経営システムが提供されれば短期間にその陳腐化が進行すると認識していたことがうかがわれるから,木造注文住宅建築に関する一条グループの研究開発機能を原告に集中させたとの上記の判断を覆すことはできない。 イ本件ノウハウ等を研究開発した者の在籍状況について 認識していたことがうかがわれるから,木造注文住宅建築に関する一条グループの研究開発機能を原告に集中させたとの上記の判断を覆すことはできない。 イ本件ノウハウ等を研究開発した者の在籍状況について上記認定事実によれば,モデルハウスの設計及び施工,インテリアコーディネイトの開発等は,原告の従業員であるEを中心として行われ,かつその基礎となる研究・実験は,同じく原告の従業員であるGやHらが,東京大学大学院農学生命科学研究科等との産学協同態勢などを通じて行っていたことが明らかであり,これによれば,本件ノウハウ等を生み出すに至った研究開発行為が,原告に在籍する従業員らによって行われたと認めることができる。 この点について,被告は,①研究開発者であるAは,原告の役員であるとともに一条工務店の代表者でもあり,その活動を外形的に峻別することはできないこと,②G,Hらについても,一条工務店の従業員の肩書で成果となる各種開発技術の対外的な発表をしており,施主に対しても一条工務店の従業員として対応しており,また,一条工務店の管理センターが勤務地となっていることなどから,原告に在籍していた者についても,一条工務店による管理支配が行われている旨主張する。 しかしながら,①Aについては,被告もその活動がどちらの者のために行われたのか外形的に峻別できないと主張するにとどまり,Aが原告のために研究開発したことを否定する証拠は存在しないこと(かえって,前記のとおり,一条グループの研究開発部門として原告が設立されたことに照らせば,その研究開発に向けられた活動は,原告のために行われたと推認される。),②G及びHについては,確かに,両名の研究発表は,一条工務店ないしは一条工務店研究開発部等所属従業員の肩書でなされ,施主に対する応対も一条工務店の従業員としてなされ,その勤務地も たと推認される。),②G及びHについては,確かに,両名の研究発表は,一条工務店ないしは一条工務店研究開発部等所属従業員の肩書でなされ,施主に対する応対も一条工務店の従業員としてなされ,その勤務地も一条工務店の管理センターとされているものの,もともと一条工務店と原告とは,人的にも資本構成上も親子会社の関係にあり,GC各社を含めた外部に対しては,一条工務店の名称を前面に出して活動する方が,一条グループ全体の営業上も得策と考えられたことは推測に難くないこと,かえって,同人らは,原告から給与の支払を受け,原告の本来の業務とされていた建築技術の基礎研究を担当していたことなどに照らせば,被告の主張する「一条工務店による管理支配」の意味内容が明確でないことはさておいても,同人らの研究開発行為が原告のためではなく一条工務店のために行われたと認めることは相当でない。 ウ開発研究費の負担について原告は,上記認定事実のとおり,相当数の従業員を木造建築技術の研究開発や建築関連機器の新商品の開発に従事させており,実際にも多くの成果を上げ,一条グループの営業に貢献をしてきたものである。しかして,原告が上記従業員らに対して支給した給与の総額は,毎営業期においてかなりの金額に上っているところ,これらは,広義では研究開発費の性質を有すると解されるから,本件ノウハウ等の開発研究費は,主として原告によって負担されていたと認められる。 この点についても,被告は,①本件譲渡契約締結直前の平成7年2月期における一条工務店の研究開発費が39億9600万円余であるのに対し,同期に対応する原告のロイヤリティ収入は約31億円であり,このうち約10億円は,GC各社からのロイヤリティ収入であることからすると,差引約19億円(39億9600万円-(約31億円-約10億円))の金額は,一条工 告のロイヤリティ収入は約31億円であり,このうち約10億円は,GC各社からのロイヤリティ収入であることからすると,差引約19億円(39億9600万円-(約31億円-約10億円))の金額は,一条工務店が自ら投下した研究開発費と評価することができること,②原告の事業内容には,住宅設備機器(商品)の輸入販売(いわゆる卸売販売)があり,この業務がかなりのウエイトを占めており,こうした業務には,多くの販売管理費及び人件費がかかるから,原告における人件費がすべて研究開発費に当たるとはいえないこと,③仮に,原告における人件費がすべて研究開発費であるとしても,ロイヤリティ収入に対する研究開発費は,極めて低額であること,④GC各社からのロイヤリティの支払は,GC各社と原告とのフランチャイズ契約に基づくものではなく,一条工務店の一方的な指示に基づいて行われていたことなどに照らせば,結局,同契約締結前の原告の収益の多くは,一条工務店から原告に投入された資金であるということができることなどを理由に,研究開発費用を主に負担したのは,一条工務店である旨主張する。 しかしながら,以下のとおり,被告の主張はいずれも採用できない。まず,①については,上記認定事実のとおり,原告の決算報告書及び総勘定元帳によれば,本件譲渡契約締結直前ころに原告が一条工務店から支払を受けたロイヤリティの金額は,一条工務店の研究開発費とほぼ等しいから,一条工務店は,原告にロイヤリティを支払い,原告からその開発した本件ノウハウ等の使用許諾を受ける以外,独自に多額の研究開発費を投ずることはなかったと認められる。 次に,②,③については,確かに,原告は,基礎的な建築技術や経営システムの開発と並んで,住宅設備機器等の調達・販売も行っているから,人件費のすべてが研究開発費の実質を有するものとはいえない られる。 次に,②,③については,確かに,原告は,基礎的な建築技術や経営システムの開発と並んで,住宅設備機器等の調達・販売も行っているから,人件費のすべてが研究開発費の実質を有するものとはいえない(もっとも,被告は,住宅設備機器等の調達・販売に要する経費や業務が原告の業務のどの程度の割合を占めるかについて,何ら具体的に主張立証していない。)が,上記認定事実のとおり,相当数の従業員や施設を研究開発活動に投入し,かなりの成果を上げていることからすれば,人件費の相当割合がそのための経費としての性質を有することは否定し難いし,原告のロイヤリティ収入に比して,原告における研究開発費の割合又は額が少ないとしても,それが研究開発費としてのある程度のまとまった額を下回るような場合でない限り,原告が本件ノウハウ等の研究開発費用の主たる負担者であるとの認定を妨げるものではない。 さらに,④については,なるほど,原告設立時において,一条工務店からGC各社に対し,今後はロイヤリティを原告に支払うよう指示があったことが認められるが,だからといって,一条工務店が原告の行った研究開発活動の経費を負担していたと評価できるものでないことは明らかである(GC各社の中には,一条工務店と原告とを明確に区別していない者が存在していたことは前記のとおりであるものの,そのロイヤリティが,原告の開発した本件ノウハウ等の使用許諾の対価たる性質を失うものではない。)。 エ本件特許権等の帰属について上記認定事実のとおり,一条工務店は,住研時代に,自己を出願人,G(又は外1名ないし3名)を発明者又は考案者として,多数の特許登録出願又は実用新案登録出願を行い,実際にも登録されてその権利者となっているところ,被告は,仮にこれらの発明・考案が原告の従業員によって開発されたものであるとしても, 者又は考案者として,多数の特許登録出願又は実用新案登録出願を行い,実際にも登録されてその権利者となっているところ,被告は,仮にこれらの発明・考案が原告の従業員によって開発されたものであるとしても,少なくとも,本件特許権等については,開発体制いかんにかかわらず,これを一条工務店に帰属させるとの合意が成立していたというべきであるから,これと関連する本件ノウハウ等も同様の扱いがされていたというべきである旨主張し,これを裏付けるものとして,昭和62年契約において,①対価の構成要素の一つとして「開発費」が明示されていること,②本件各フランチャイズ契約におけるロイヤリティ条項と異なり,契約終了後の守秘義務の定めや,マニュアル類の返還といった定めがないことから,ここにいうロイヤリティの実態は,原告の開発費用の負担及び知的財産権承継の対価としての意味を有するものというべきであると指摘する。 確かに,原告の従業員による発明・考案であるならば,本来は原告の名義で登録出願するのが自然と考えられるが,再三述べてきたとおり,一条工務店と原告とは親子会社の関係にあり,その営業政策上も,対外的には一条工務店の名義を前面に出すのが有利と考えたと推測できるから,本件特許権等が一条工務店に帰属するとの扱いを受けていたとしても,本件ノウハウも同様であるとはいえない(特許権等は公開されて外部の者の目に触れるのに対し,ノウハウは公開されない点に価値がある。)。 また,昭和62年契約(甲8の1,乙7)には,「乙(一条工務店)は甲(原告)から供与された「新しいノウハウ」と,これに必要な開発費とこれに伴う甲の教育指導に対し,その対価として次のロイヤリティを支払う。」と記載されているのに対し,他の本件各フランチャイズ契約については,「甲(GC各社)は,乙から許諾された販売実施権及び経 費とこれに伴う甲の教育指導に対し,その対価として次のロイヤリティを支払う。」と記載されているのに対し,他の本件各フランチャイズ契約については,「甲(GC各社)は,乙から許諾された販売実施権及び経営システムとこれに伴う乙の教育指導に対し,その対価として次のロイヤリティを支払う。」と記載されているが,ロイヤリティは,一般にノウハウの使用の対価であると理解されていること,いずれも,GC各社及び一条工務店が支払うのはロイヤリティであるとされ,その計算方法,支払方法,ロイヤリティ率もほぼ同様であること,昭和62年契約の「その対価として次のロイヤリティを……支払う。」の「その」は,文言上,原告から供与される「新しいノウハウ」であると解されること,仮にロイヤリティが何らかのノウハウの譲渡対価の趣旨であれば,そのことをうかがわせる文言があって然るべきであるが,そのような文言は存在しないことに照らすと,上記記載は,ロイヤリティ受取りの経済的動機の一つがその開発費の回収にあるという当然のことを意味するにとどまると解するのが相当であること,一条グループにおける経営システムに関して守秘義務条項が定められるようになったのは,平成元年に締結されたフランチャイズ契約以降であって,昭和63年までに締結されたほかのフランチャイズ契約においても経営システムに関して守秘義務の定めはないこと,これらによれば,「これに必要な開発費」は,単に動機を記載したものにすぎないと解されるから,昭和62年契約が,一条工務店が原告に対してロイヤリティを支払うことによって,開発された経営システムを譲渡する内容のものであるとの被告の主張は採用できない。 (4) 本件先行処分等との整合性について原告は,①被告ほかの課税庁は,過去において多数回にわたる税務調査を実施し,原告に本件ノウハウ等が帰属 譲渡する内容のものであるとの被告の主張は採用できない。 (4) 本件先行処分等との整合性について原告は,①被告ほかの課税庁は,過去において多数回にわたる税務調査を実施し,原告に本件ノウハウ等が帰属することを確認してきた,②被告は,平成9年7月4日,本件譲渡契約によってHRDが取得する本件ノウハウ等の対価とされた20億円が過少にすぎるとして,その適正評価額を31億2601万2066円と認定し,これを前提とする本件先行処分をしたものであって,その過程で本件ノウハウ等の内容について詳細に検討したはずであるから,本件各処分は根拠のない課税であるなどと主張するところ,本件先行処分は本件ノウハウ等が原告に帰属していたことを前提とするのに対し,本件各処分はそれが一条工務店に帰属していたことを前提とするものであるから,両者間に矛盾があることは否定できない。 この点について,被告は,本件先行処分の際には,その実態(帰属)を十分に把握していなかったと弁解するところ,証拠(甲61ないし63,65)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア被告は,平成7年2月28日付けで,原告に対し,一条工務店やGCに対する売上(ロイヤリティ収入)計上漏れなどを理由として更正処分(ただし,一条工務店からの売上げが二重に計上されていたなどの理由で,結論としては減額更正)を行った。 イ原告から本件ノウハウ等の適正価額算定の依頼を受けた公認会計士増井高一は,本件譲渡契約締結に先立つ平成7年2月15日,一条グループの完工高とロイヤリティ率を基準として,本件ノウハウ等の上記価額を19億円ないし20億円と鑑定評価した。 ウ原告は,平成9年の本件先行処分に先立ち,被告(及び中村税務署)による税務調査を受け,その結果,顧問税理士Iは,被告の担当者から,本件譲渡契約によって原 19億円ないし20億円と鑑定評価した。 ウ原告は,平成9年の本件先行処分に先立ち,被告(及び中村税務署)による税務調査を受け,その結果,顧問税理士Iは,被告の担当者から,本件譲渡契約によって原告がHRDに譲渡したのは,本件ノウハウ等そのものだけでなく,フランチャイズ契約の相手方からロイヤリティの支払を受けるシステム全体をも含むとの指摘を受けた。 そこで,原告は,本件譲渡契約締結日から1年間に原告が取得するロイヤリティ収入に複利減価率を乗じて本件ノウハウ等の適正価額を算出することとし,第1案(一条工務店についてはロイヤリティ率 )として28億2395万0176円,第2案(前同 )として34億2807万3957円を被告に提案したところ,その中間値である31億2601万2066円で合意が成立し,これに基づいて,被告は本件先行処分をした。 以上の事実によれば,被告の担当者は,税務調査の結果,本件譲渡契約によってHRDに譲渡されたのは,本件ノウハウ等そのものだけでなく,フランチャイズ契約によってロイヤリティの支払を受けるシステムそのものであるとの問題意識を抱き,原告と協議した結果,本件先行処分を行うに至ったのであるから,その過程において,本件各フランチャイズ契約に係る契約書等を精査したはずである。そうだとすると,被告が本訴において主張する契約書上の問題点(原告が当事者として表示されていないものが多いことなど)も当然に認識したであろうことは想像に難くなく,これを出発点として,さらに本件ノウハウ等の帰属についても問題意識を深めるのが自然と解されるところ,これについての検討が行われた形跡はなく,単なる適正譲渡価額の点を巡る課税処分に終わったことは上記のとおりであり,その意味では,本件各処分に至った事情は,やや不可解であるとの印象 然と解されるところ,これについての検討が行われた形跡はなく,単なる適正譲渡価額の点を巡る課税処分に終わったことは上記のとおりであり,その意味では,本件各処分に至った事情は,やや不可解であるとの印象を免れず,被告の上記弁解は,直ちに採用することはできない。 付言すれば,本件各処分によって原告が新たに納付すべきこととなった法人税額は,平成8年6月期の更正処分による減額を考慮すると,実質的には原告の納付した外国法人税額の否認によってもたらされたものであるところ,上記外国法人税は,被告による本件先行処分の結果,これと整合する金額に増額されているから,原告は,本件先行処分に従ったがために,今回の本件各処分によって,平成8年6月期の減額更正によっても埋められない,より大きな不利益を被ったことは否定できない。 (5) 小括以上の検討結果によれば,本件ノウハウ等の研究開発主体は原告であったものであり,かつその成果を一条工務店に帰属させる必要性はなかったと認められるから,その帰属主体も原告であったと判断するのが相当である。 4 経済的合理性の有無について(1) 証拠(甲9ないし15,16の1ないし15,17,18,19ないし23の各1・2,24ないし34,35・36の各1ないし3,37の1・2,38,39の1ないし4,40の1ないし3,41の1ないし5,42の1ないし3,43の1ないし4,44の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア一条グループでは,同業他社との競争が激化するにつれ,それとの差別化をもたらす優れたデザイン,機能,耐久性等を有する商品の研究開発の必要性が認識され,AとEを中心として,その計画の具体化に着手した。その過程において,上記の目的を達成するためには,原材料の供給先に近く,国内の他社への情報漏れを防ぎや 性等を有する商品の研究開発の必要性が認識され,AとEを中心として,その計画の具体化に着手した。その過程において,上記の目的を達成するためには,原材料の供給先に近く,国内の他社への情報漏れを防ぎやすい海外に拠点を設けるのが有利と考えられ,検討の結果,地理的に東南アジアの中心に位置し,政治情勢も安定しているシンガポールにHRDを設立することに決定した。 イ HRDは,シンガポールのUOBビル内に本店を置き,経理事務等を行っているほか,ジュロン地区内のIMMビルに置かれたデザインセンターにて,住宅関係の各種研究開発や内装事業を行っている。 また, に置かれたHRDのフィリピン支店でも,住宅関係の研究開発や各種実験を行っており,台湾駐在員事務所では,原材料の市場調査や新商品の開発,さらには日本国内から指導員の派遣を受けて,中国の下請工場に対する技術指導などを担当している。 ウ HRDは,事業を展開するために,相当数の日本人及び現地人を雇用しているほか,本件資金移動に係る金員,役務提供・技術開発費,現地指導費用,研修費等の多額の費用を支出している。 上記認定事実によれば,HRDは,一条グループがさらなる発展を期すため,その企業戦略の一環として海外に設置されることとなった住宅関連技術等の研究開発部門であり,少なくとも現時点において,それにふさわしい人的,物的施設等の実体を備え,かつ多額の費用を投じていることが明らかである。 そうすると,HRDは,かつての原告のように,一条グループにおける建築技術,住宅関連機器等の研究開発拠点たることを目的として設立されたのであるから,一条グループの有する研究開発能力のすべてが集中され,効率的な研究開発体制を築くことが期待されていたと認めるのが相当であり,したがって,本件譲渡契約は,経済的,経営 的として設立されたのであるから,一条グループの有する研究開発能力のすべてが集中され,効率的な研究開発体制を築くことが期待されていたと認めるのが相当であり,したがって,本件譲渡契約は,経済的,経営的な観点からする合理性を有していたと判断するのが相当である。 (2) この点につき,被告は,①昭和62年契約に基づいて,一条工務店は,既に本件ノウハウ等を自由に利用し得る地位にあったこと,②HRD,一条工務店及び原告の3社は,いずれも密接な資金関係にあり,また,役員構成も共通するところが多いことなどの事情を総合的に考慮すれば,HRDが原告から本件ノウハウ等を取得し,これを一条工務店へ供与する必要はない旨主張する。 しかしながら,昭和62年契約は,あくまで,原告が一条工務店に対して経営システムを供与する義務を負担する旨定めているにとどまり,一条工務店に経営システムを自由に利用し得る地位を保障するものではなく,しかも,密接な人的・資本関係にあるからといって,そのような関係のある会社間の取引の効力を否定する根拠になるものではない。かえって,上記認定のとおり,研究機関の拠点を海外において,建築資材や建築設備等の情報を円滑に取得し,かつ,その情報の保護を図るためにHRDを設立し,HRDにそれまでに集積された本件ノウハウ等を譲渡することには,十分な経済的合理性・必要性があると認められ,しかも,被告が自認するように,本件譲渡契約を仮装する動機も必要性もないのであるから,本件譲渡契約には経済的合理性がないとの被告の上記主張は採用できない。 5 本件各処分の適否以上の検討結果を総合すれば,本件譲渡契約が仮装であるとの被告の主張は採用できない。そうすると,本件譲渡契約に基づいてなされた本件資金移動が法人税法22条2項所定の無償による資産の譲受けに該当しないことは明ら 結果を総合すれば,本件譲渡契約が仮装であるとの被告の主張は採用できない。そうすると,本件譲渡契約に基づいてなされた本件資金移動が法人税法22条2項所定の無償による資産の譲受けに該当しないことは明らかであるので,その余について判断するまでもなく,本件各処分(ただし,更正処分については,平成9年6月期は確定申告に係る税額を超える部分,平成10年6月期及び平成11年6月期については,平成11年11月26日付け各更正処分に基づく納付すべき税額を超える部分)は違法といわざるを得ない。 6 結論よって,原告の本訴各請求は,いずれも理由があるからこれらを認容することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄 裁判官舟橋恭子 裁判官片山博仁別表1ないし別表8は省略 裁判官 片山博仁 別表1ないし別表8は省略
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