平成23(わ)588 窃盗

裁判年月日・裁判所
平成23年11月4日 神戸地方裁判所
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判決文本文5,124 文字)

主文 被告人を懲役10月に処する。 訴訟費用中,証人A及び同Bに支給した分は,被告人に負担させる。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,平成23年3月9日午後9時10分ころから午後9時18分ころまでの間,兵庫県三田市ab 番地c 株式会社CD営業所事務所内で,同営業所所長(当時)Aが管理し,同事務所内の据置金庫に保管していた現金39万9656円を窃取した。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明)被告人は,本件の第1発見者として直ちに被害を判示所長に電話で伝えたもので,判示窃盗の犯人ではない旨,捜査段階から一貫して供述し,弁護人も,上記犯人は別におり,被告人は無罪である旨主張するので,当裁判所が判示事実を認定した理由を,以下補足説明する。 1 証拠上容易に認定できる前提事実(1) 判示営業所(以下「被害店」という。)では,G株式会社の防犯システムが導入されていて,退店時には,判示事務所(以下,単に「事務所」という。)内の壁面に設置された上記防犯システムの機械に同機械の対応キーを挿入して「セット」の操作をした後(約30秒後に「セット」の状態となり,防犯システムが作動),事務所出入口ドアを施錠し,入店時には,同ドアを開錠後,約30秒内に上記機械に上記キーを挿入して「解除」の操作をすることになっており,上記約30秒間を除く防犯システムの作動中に事務所のドアや窓が開いたり事務所内で人が動いたりすれば,警報音が鳴るとともに異常を知らせる通報が上記Gや警察にされることになっていた。 (2) 被害店には上記キーが4本支給されていたところ,各キーには固有番号が割り当てられており,本件当時,003番のキー(以下「3番キー」という。)は,共用のものと 察にされることになっていた。 (2) 被害店には上記キーが4本支給されていたところ,各キーには固有番号が割り当てられており,本件当時,003番のキー(以下「3番キー」という。)は,共用のものとして被害店の屋外トイレ内の棚の中に置かれていた一方,001番のキーは被害店の所長(当時)A(以下Aという。)が,002番のキーはE(以下Eという。)が(毎日勤務のため),004番のキー(以下「4番キー」という。)は被告人が(勤務日にはラスト〔午後9時〕までの勤務のため),それぞれ所持していた。また,被告人が4番キーを他人に貸与等したことは昨年以降なかった。 (3) 判示日の2日前から,判示日の午後9時47分に被告人が前記防犯システムの解除操作をする(以下,この解除操作を「本件解除」という。)までの間の,同システムの操作状況は,次のとおりであった。 (月日〔平成23年〕,時刻,操作内容,キー番号,操作をした者の順で,括弧内は操作の理由である〔「通常」を付した入退店は勤務開始・終了の際のもの〕。)3月7日 6:49 解除 001番 A(通常入店)〃 21:09 セット 004番被告人(通常退店)〃 21:16 解除 004番争いあり〃 21:17 セット 004番争いあり3月8日 6:40 解除 003番 F(通常入店)〃 21:56 セット 003番 A(通常退店)〃 23:49 解除 002番 E(バッテリー充電器のスイッチを〃 23:56 セット 002番 E 切るための入退店)3月9日 6:50 解除 003番 A(通常入店)〃 21:10 セット 003番 B(通常退店)〃 21:17 解除 004番争いあり〃 21:18 セット 3月9日 6:50 解除 003番 A(通常入店)〃 21:10 セット 003番 B(通常退店)〃 21:17 解除 004番争いあり〃 21:18 セット 004番争いあり〃 21:47 解除 004番被告人(4) 同年2月16日~3月9日の間で,被告人の退店時に上記システムが「セット」された12日中,その際被告人が4番キーを使った日は,上記(3)の3月7日のほか2月17・23・24日,3月1~3・5日の計8日であり,他方,4番キーが使われなかった日は,上記(3)の3月9日のほか2月16・20・28日の計4日であった(このうち2月28日はEが自身の所持する002番のキーを使ったもので,その余はいずれも3番キーが使われたもの〔すべてBが他のラスト勤務者であり,少なくとも3月9日はBが同キーの使用をしたのは上記(3)のとおり〕。)。 (以上,(1)~(4)につき,甲3,5,7〔同意部分〕,8~13,15,16,乙3~6等)(5) 判示日に被告人とBが退店する午後9時10分ころ,判示金庫内には,棒状に束ねられた小銭のほか,売上金30万9656円を入れた封筒(同日午後8時ころにBが同金庫に入れたもの。以下「本件封筒」という。)と,レジの現金(札束9万円分と小銭)を入れた緑色の集金袋ないし鞄(被告人が上記退店直前に同金庫に入れたもの。以下「本件袋」という。)が入っていた(甲1,2,5,17,乙4,A・B各証言) (被告人も,「私が集金袋のお金を金庫にしまう時には,売り上げのお金,集金袋(レジ)のお金,それに銀行がくれる棒状の束になった小銭の全てのお金が金庫に入っていたのを,間違いなく確認しています。」と供述している〔乙4〕。この点,弁護人は,売上金とレジの現金につき上記認定に沿うB証言 のお金,それに銀行がくれる棒状の束になった小銭の全てのお金が金庫に入っていたのを,間違いなく確認しています。」と供述している〔乙4〕。この点,弁護人は,売上金とレジの現金につき上記認定に沿うB証言の信用性には疑義がないとした上,同証言には棒状に束ねられた小銭が金庫に入っていた事実が出てこないから,そのような事実はなかったものとうかがわれ,被告人の上記供述は,取調官の誘導等によりなされた客観的事実と整合しないものであると考えられると主張するが,上記小銭が確かに金庫に入っていたのは明らかで〔甲5〈判示日の撮影に係るもの〉の6の写真〕,弁護人の上記主張は前提を誤っている。そして,被告人が本件袋を金庫に入れているのをBが退店直前に見ていることにも照らせば,被告人の上記供述の信用性に疑義はない。また,被告人が施錠したはずの金庫扉が本件解除時には開いたままになっていて,本件封筒がなくなっていたほか,本件袋のチャックが開いた状態で金庫から半分出ていたことからも,判示現金が窃取されたのは,被告人の上記確認の後であるのは明らかであって,その窃取が上記確認前であった可能性をいう弁護人の主張もまた採用できない。)。 (6) 本件解除の後,本件封筒と,本件袋の中の9万円分の札束が,判示金庫内からなくなっていたことが確認された(現金合計39万9656円が窃取されたことになる。)が,本件解除までに前記防犯システム上の通報はなく,また,事務所の出入口ドアや窓等が破損されたこともなかった(甲2~4,8,A証言)。 2 被告人の犯人性の検討上記1(5),(6)の各事実によれば,判示現金の窃盗は,判示日の午後9時10分ころ~午後9時47分の間に行われたことが明らかである(本件解除の直後については,被告人がすぐにAに架電していること〔甲1〕等からすると,上記窃盗が行 れば,判示現金の窃盗は,判示日の午後9時10分ころ~午後9時47分の間に行われたことが明らかである(本件解除の直後については,被告人がすぐにAに架電していること〔甲1〕等からすると,上記窃盗が行われた可能性から除くべきである。)が,その間に前記防犯システム上の通報はなく,また事務所の出入口ドア等も破損されていなかったことからすると,同システムの判示日における前記1(3)の解除とセットの状況からして,上記窃盗については,① 被告人が判示金庫内を確認した午後9時10分ころか,② 上記の間で同システムが解除された後セットされた午後9時17分~午後9時18分の間しか,その機会は考えられない(なお,犯行が約1分あれば可能であるのは甲14のとおりである。)。 このうち,①については,犯人が被告人となるのは明らかである(なお,被告人が当時,一緒にいたBに気づかれずに上記窃盗を行い得たかについては,Bが金庫の置かれたスタッフルームにいたところに,被告人が本件袋を持ってきて金庫に同袋を入れたのをBが見た後,Bが同ルームを出て行った隙に,上記可能性があったといえる。また,被告人はその後Bと顔を合わせているが,本件封筒や9万円分の札束は,かさばるものではなく,Bに怪しまれずに窃盗を行うことは可能であったと考えられるし,その後の②の解除とセットも,金庫扉を開けたままにするなど被害の状況を偽装工作するためのものであったなどの可能性は十分考えられるから,①の機会の窃盗と②の解除・セットとは両立するものである。)。 次に,②についてみると,前記システムの解除とセットが被告人の所持する4番キーで行われたことからすると,弁護人が主張するような,被告人から4番キーを密かに盗み取った第三者の存在が否定できないのであれば格別,そうでない限り,被告人が本件の窃盗犯である 被告人の所持する4番キーで行われたことからすると,弁護人が主張するような,被告人から4番キーを密かに盗み取った第三者の存在が否定できないのであれば格別,そうでない限り,被告人が本件の窃盗犯であることに疑義は生じない。 しかるに,本件解除の際(午後9時47分)に被告人が4番キーを使っているのは前記1(3)のとおりであって,仮に②の際(午後9時17~18分)に4番キーを使った第三者がいたことを想定しても,その者が本件解除までの間に被告人に密かに4番キーを返し得た可能性はおよそ考え難い。すなわち,被告人の供述によれば,4番キーは被告人の車のドアポケットに普段入れていたというところ,被告人は,当日午後9時10分ころの退社から本件解除のため事務所に戻ってくるまでの間,上記車を運転して事務所を離れていたのである。 弁護人は,上記第三者が判示現金の窃盗に及んだ後暫く事務所付近にいたところに,被告人が忘れ物を取りに上記車で引き返してきたため,上記第三者がとっさに同車のドアポケットに4番キーを戻した可能性が考えられるなどというが,被告人が事務所に到着後その足で本件解除を行った間に,被告人に4番キーを密かに返すことができたはずもない。また,被告人は,車内に所持していたキーは普段使っておらず,本件解除も被害店の屋外トイレ内に置かれていたキーで行ったと供述するが,被告人が4番キーの使用を旨としていたのは前記1(4)のとおりである上,上記トイレ内に置かれていたのは3番キーであって,被告人の上記供述はこのいずれの客観事実にも反することが明白であり,明らかに信用できない。そして,3番キーについては,Bが当日の退店時に使って上記トイレ内に戻しているのであるから,弁護人がいうような,上記第三者が4番キーを誤って上記トイレ内に戻したなどという事態も,およそ考え難 ない。そして,3番キーについては,Bが当日の退店時に使って上記トイレ内に戻しているのであるから,弁護人がいうような,上記第三者が4番キーを誤って上記トイレ内に戻したなどという事態も,およそ考え難い。 そうすると,①と②のいずれの場合であったとしても,被告人が本件の窃盗犯であることに,合理的疑いはない(なお,争いのある3月7日の解除とセットについても,被告人によるものであることはすでに明らかというべきであり,本件窃盗の予行演習などの意味があったとみられるものである。)。 よって,判示のとおりの事実を認定した。 (法令の適用)省略(量刑の理由)本件窃盗は,売上金等の管理実態に通じていた被告人がこれを悪用し,職場の信頼関係を逆手にとって敢行した悪質なものであり,犯行の計画性も認められる。そして,被害額も40万円近くと高額であるが,被告人は,犯行当初から被害の第1発見者を装い,逮捕後も一貫して犯行を否認していて反省の態度は全くみられず,また,被害弁償もなんら行っていない。 そうすると,被告人の刑責は重く,前科前歴がないこと,養うべき妻と子(14歳と12歳の2人)がいることなどの酌むべき事情を十分に考慮しても,主文の実刑が相当である。 (求刑懲役1年6月)平成23年11月4日神戸地方裁判所第1刑事部 裁判官西森英司

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