平成22(ワ)40331 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年11月30日 東京地方裁判所
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判決文本文67,071 文字)

平成23年11月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(ワ)第40331号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成23年9月28日判決東京都大田区<以下略>原告株式会社データ・テック同訴訟代理人弁護士伊藤 真平井佑希同訴訟代理人弁理士鈴木正剛藤掛宗則同補佐人弁理士栗下清治東京都港区<以下略>被告カヤバ工業株式会社同訴訟代理人弁護士松本 司井上裕史主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目録記載の製品を生産,譲渡,貸渡し,輸出若しくは輸入し,又は譲渡,貸渡しの申出(譲渡,貸渡しのための展示を含む。)をしてはならない。 2 被告は,その占有に係る別紙被告製品目録記載の製品を廃棄せよ。 3 被告は,その占有に係る別紙被告製品目録記載の製品を製造するための金型を廃棄せよ。 4 被告は,原告に対し,1億円及び平成22年11月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,「移動体の操作傾向解析方法,運行管理システム及びその構成装置,記録媒体」に関する発明について後記2(2)の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許請求の範囲【請求項9】記載の発明を「本件発明1」,【請求項15】記載の発明を「本件発明2」という。また,本件発明1,2を総称して「本件発明」といい,本件発明に係る特許を「本件特許」という。)を有する原告が,被告の製造,販売する別紙被告製品目録記載の製品(以下,同目録記載1~3のドライブレコーダー ,本件発明1,2を総称して「本件発明」といい,本件発明に係る特許を「本件特許」という。)を有する原告が,被告の製造,販売する別紙被告製品目録記載の製品(以下,同目録記載1~3のドライブレコーダーを「被告機器」〔個別に特定する際は目録の番号を付す。以下同じ。〕,同4及び5の解析ツール(ソフトウェア)を「被告解析ツール」,被告解析ツールを記録した記録媒体(CD-ROM)を「被告記録媒体」といい,被告機器及び被告記録媒体を併せて「被告製品」という。)が本件発明の技術的範囲に属するとして,被告に対し,(1) 特許法100条1項に基づき,被告製品の生産,譲渡等の差止め(第1の1の請求),(2) 同条2項に基づき,被告製品の廃棄(第1の2の請求)及び同製品を製造するための金型の廃棄(第1の3の請求),(3) 不法行為(本件特許権侵害)による損害賠償請求権(民法709条,特許法102条2項)に基づき,損害賠償金15億8220万円のうち1億円及び平成22年11月6日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(第1の4の請求)を求める事案である。 被告は,被告製品が本件発明の技術的範囲に属することを争うとともに,特許法104条の3の権利行使の制限(新規性欠如,進歩性欠如)及び作 用効果の不奏功を主張する。 原告は,特許法104条の3の権利行使の制限に対しては,更に訂正を理由とする対抗主張をする。 2 前提事実(証拠等を掲げたもののほかは,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,センサーの応用技術の開発,製造,販売等を業とする株式会社である。 イ被告は,自動車用機器,鉄道車両用機器,その他各種輸送用機器及びそれらの装置,部品,付属品の製造,販売等を業とする株式会社であ センサーの応用技術の開発,製造,販売等を業とする株式会社である。 イ被告は,自動車用機器,鉄道車両用機器,その他各種輸送用機器及びそれらの装置,部品,付属品の製造,販売等を業とする株式会社である。 (2) 本件特許権原告は,次の特許の特許権者である。 ア特許番号特許第3229297号イ発明の名称移動体の操作傾向解析方法,運行管理システム及びその構成装置,記録媒体ウ出願日平成11年10月12日(国内優先権の主張平成10年10月12日)エ登録日平成13年9月7日オ異議決定(特許請求の範囲の訂正認容)確定日 平成15年2月10日カ特許請求の範囲(上記訂正後のもの。なお,文中の「/」は,原文の改行部分を示す。)「【請求項9】移動体の挙動を検出するセンサ部と,/前記挙動を特定挙動と判定するための挙動条件に従って前記センサ部で検出された当該移動体の挙動において前記特定挙動の発生の有無を判定し,前記移動体の操作傾向の解析が可能となるように,前記特定挙動の発生に応じて当該移動体の特定挙動に関わる情報を所定の記録媒体に記録する記録手段と を有し,/前記記録媒体は,前記移動体の識別情報,前記移動体の操作者の識別情報,前記移動体の挙動環境の少なくとも1つに従って分類される分類毎に作成されたカード状記録媒体であり,このカード状記録媒体に少なくとも前記挙動条件が記録されている,/データレコーダ。」「【請求項15】移動体の特定挙動に関わる情報を収集するための収集条件を所定の記録媒体に設定する処理,/前記設定された収集条件に適合する挙動に関わる情報が記録された前記記録媒体からその記録情報を読み出す処理,/読み出した情報から当該移動体の操作傾向を解析する処理をコンピュータ装置に実行 する処理,/前記設定された収集条件に適合する挙動に関わる情報が記録された前記記録媒体からその記録情報を読み出す処理,/読み出した情報から当該移動体の操作傾向を解析する処理をコンピュータ装置に実行させるためのディジタル情報が記録された,/コンピュータ読取可能な記録媒体。」(以下,本件特許に係る明細書及び図面〔別紙特許公報及び異議決定公報参照〕を「本件明細書」という。)(3) 構成要件の分説本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれ「構成要件1A」などという。)【請求項9】1A 移動体の挙動を検出するセンサ部と,1B 前記挙動を特定挙動と判定するための挙動条件に従って前記センサ部で検出された当該移動体の挙動において前記特定挙動の発生の有無を判定し,1C 前記移動体の操作傾向の解析が可能となるように,前記特定挙動の発生に応じて当該移動体の特定挙動に関わる情報を所定の記録媒体に記録する記録手段とを有し,1D 前記記録媒体は,前記移動体の識別情報,前記移動体の操作者の識別情報,前記移動体の挙動環境の少なくとも1つに従って分類される分類毎に作成されたカード状記録媒体であり, 1E このカード状記録媒体に少なくとも前記挙動条件が記録されている,1F データレコーダ。 【請求項15】2A 移動体の特定挙動に関わる情報を収集するための収集条件を所定の記録媒体に設定する処理,2B 前記設定された収集条件に適合する挙動に関わる情報が記録された前記記録媒体からその記録情報を読み出す処理,2C 読み出した情報から当該移動体の操作傾向を解析する処理2D をコンピュータ装置に実行させるためのディジタル情報が記録された,コンピュータ読取可能な記録媒体。 (4) 被告 読み出す処理,2C 読み出した情報から当該移動体の操作傾向を解析する処理2D をコンピュータ装置に実行させるためのディジタル情報が記録された,コンピュータ読取可能な記録媒体。 (4) 被告の行為被告は,平成18年5月下旬から被告製品を製造,販売している(ただし,被告は,平成22年7月1日をもって被告製品に係る事業をKYBトロンデュール株式会社に移したので,現在は被告製品の製造,販売はしていないと主張している。)。 (5) 被告製品の構成被告製品の構成は,それぞれ,別紙被告機器・解析ツール説明書(1),(2)記載のとおりである。 (6) 構成要件の充足ア被告機器1,2は本件発明1の構成要件を充足する。 イ被告機器3は,構成要件1Cを除き,本件発明1の構成要件を充足する。 ウ被告記録媒体は,構成要件2Bを除き,本件発明2の構成要件を充足する。 (弁論の全趣旨)(7) 被告による第1 回目の無効審判請求(以下「第1次無効審判請求」といい,同請求に係る審判手続を「第1次無効審判」という。)と審決 平成23年1月28日,被告は後記無効理由1-1,2を理由として本件特許につき無効審判を請求したが,同年7月11日,特許庁は請求不成立の審決をした。(乙4,甲11)(8) 被告による第2回目の無効審判請求(以下「第2次無効審判請求」といい,同請求に係る審判手続を「第2次無効審判」という。)平成23年8月4日,被告は後記無効理由2~4を理由として本件特許につき無効審判を請求した。(乙7)(9) 訂正請求ア本件弁論準備手続は,平成23年9月9日の第6回弁論準備手続期日において終結し,同日,本件訴訟の最終口頭弁論期日が平成23年9月28日と指定された。(顕著な事実) (9) 訂正請求ア本件弁論準備手続は,平成23年9月9日の第6回弁論準備手続期日において終結し,同日,本件訴訟の最終口頭弁論期日が平成23年9月28日と指定された。(顕著な事実)イ原告は,上記弁論準備手続終結後の平成23年9月16日,第2次無効審判請求の審判において,次の内容(下線は訂正部分を示す。)の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)をした(以下,本件訂正請求に係る発明を「本件訂正発明」という。)。(甲12)【請求項9】1A 移動体の挙動を検出するセンサ部と,1B 前記挙動を特定挙動と判定して当該特定挙動の発生前後の挙動に関わる情報を所定時間分収集するための収集条件に従って,前記センサ部で検出された当該移動体の挙動において前記特定挙動の発生の有無を判定し,1C 前記移動体の操作傾向の解析が可能となるように,前記特定挙動の発生に応じて前記収集条件に適合する挙動に関わる情報を所定の記録媒体に記録する記録手段とを有し,1D 前記記録媒体は,前記移動体の識別情報,前記移動体の操作者の識別情報,前記移動体の挙動環境の少なくとも1つに従って分類される 分類毎に作成されたカード状記録媒体であり,1E このカード状記録媒体に少なくとも前記収集条件が設定されている,1F データレコーダ。 【請求項15】2A 移動体の挙動を特定挙動と判定して当該特定挙動の発生前後の挙動に関わる情報を所定時間分収集するための収集条件を所定の記録媒体に設定する処理,2B 前記設定された収集条件に適合する挙動に関わる情報が記録された前記記録媒体からその記録情報を読み出す処理,2C 読み出した情報から当該移動体の操作傾向を解析する処理2D をコンピュータ装置に実行させるためのディジタル情報が記録され 関わる情報が記録された前記記録媒体からその記録情報を読み出す処理,2C 読み出した情報から当該移動体の操作傾向を解析する処理2D をコンピュータ装置に実行させるためのディジタル情報が記録された,コンピュータ読取可能な記録媒体。 ウ原告は,本件最終口頭弁論期日に,平成23年9月22日付け原告第6準備書面(同日提出,同月26日被告受領)をもって,上記イの訂正に基づいて,被告製品が本件訂正発明の構成要件を充足すること,訂正による本件発明の無効理由がいずれも解消された旨を主張する攻撃方法(対抗主張)を提出した。(顕著な事実) 3 争点(1) 技術的範囲の属否(2) 特許法104条の3第1項の権利行使の制限(3) 作用効果の不奏功(4) 訂正を理由とする対抗主張(5) 損害額 4 争点に関する当事者の主張(1) 技術的範囲の属否〔原告の主張〕 ア構成要件1Cについて被告機器は,「トリガ判定閾値(X,Y)」,「事故判定閾値(X,Y)」などの条件が設定され,加速度センサーで加速度が検出されたときは,検出された加速度と設定された条件とを比較することにより,当該条件を逸脱した加速度の発生の有無を判定する。 被告機器においては,上記設定された「トリガ判定閾値(X,Y)」などの条件を逸脱した加速度の発生に応じて,車両のX軸,Y軸方向の加速度や速度,カメラ画像がCFカードに記録され,例えば被告記録媒体に記録されたデジタル情報を実行したコンピュータ装置を通じて,時系列グラフによりブレーキやアクセルワーク,ハンドル操作などの運転特性を確認することができる。 本件特許明細書の【0006】に記載されたとおり,本件発明1は,交通事故等の発生率の高い箇所での,アクセルやブレーキ,ハンドル等の運転操作に対し ンドル操作などの運転特性を確認することができる。 本件特許明細書の【0006】に記載されたとおり,本件発明1は,交通事故等の発生率の高い箇所での,アクセルやブレーキ,ハンドル等の運転操作に対して,危険を認識するという点に着目したものであり,構成要件1Cにいう「操作傾向」とは,運転者のこのようなアクセルやブレーキ,ハンドル等の操作の傾向を意味する。 したがって,上記のコンピュータ装置を通じて,時系列グラフによりブレーキやアクセルワーク,ハンドル操作などの運転特性を確認できるように,「トリガ判定閾値(X,Y)」などの条件を逸脱した加速度の発生に応じて,車両のX軸,Y軸方向の加速度や速度,カメラ画像を,CFカードに記録する記録手段を有する被告機器は,「前記移動体の操作傾向の解析が可能となるように,前記特定挙動の発生に応じて当該移動体の特定挙動に関わる情報を所定の記録媒体に記録する記録手段とを有し」ているので,構成要件1Cを充足する。 イ構成要件2Bについて前記のとおり,被告機器は,CFカードに設定された「トリガ判定閾値 (X,Y)」,「事故判定閾値(X,Y)」などの条件に従って,車両のX軸(前後),Y軸(左右)方向の加速度や速度,カメラ画像等の情報を収集し,CFカードに記録する。 また,被告記録媒体に記録されたデジタル情報を実行したコンピュータ装置は,上記のCFカードから記録情報を読み出して,時系列グラフによりブレーキやアクセルワーク,ハンドル操作などの運転特性を確認できるようにする。したがって,「前記設定された収集条件に適合する挙動に関わる情報が記録された前記記録媒体からその記録情報を読み出す処理」をコンピュータ装置に実行させるためのデジタル情報が記録された被告記録媒体は,構成要件2Bを充足する。 〔被告の主張 合する挙動に関わる情報が記録された前記記録媒体からその記録情報を読み出す処理」をコンピュータ装置に実行させるためのデジタル情報が記録された被告記録媒体は,構成要件2Bを充足する。 〔被告の主張〕ア構成要件1Cについて原告は,後記乙1発明について,「事故発生の有無に関わらず記録されている走行状態データのサンプリングレートを変化させるというものであり,両方法は,技術的に相容れないものである」と主張し,乙1発明は,本件発明の構成要件1Cを充足しないと主張する。 この点,被告機器3は,起動後,低サンプリングレートで「加速度」を記録し続けており,「加速度」が一定の閾値(トリガ判定閾値,事故判定閾値)を超過すると,高いサンプリングレートで「加速度」が記録される構成となっている。 よって,仮に原告の主張を前提とするならば,被告機器3は,構成要件1Cを充足せず,本件発明1の技術的範囲に属しないことになる。 イ構成要件2Bについて原告は,後記乙1発明について,「『運行状態データ』自体は,事故発生とは無関係に記録されるのであり,……『条件に適合する挙動』あるいは『条件に適合する挙動に関わる情報』なるものが存在しない。」と主張 する。 この点,被告解析ツールにおいても,「加速度」情報は,事故発生と無関係に記録されている。 よって,仮に原告の主張を前提とするならば,被告解析ツールにも「条件に適合する挙動に関わる情報」なるものが存在しないこととなり,被告解析ツールを記録した被告記録媒体についても構成要件2Bを充足せず,本件発明2の技術的範囲に属しないことになる。 (2) 特許法104条の3第1項の権利行使の制限〔被告の主張〕ア本件特許は,いずれも以下のとおり無効理由があり,特許無効審判により無効にさ 本件発明2の技術的範囲に属しないことになる。 (2) 特許法104条の3第1項の権利行使の制限〔被告の主張〕ア本件特許は,いずれも以下のとおり無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は本件特許権を行使することができない(特許法104条の3第1項)。 (ア) 本件発明は,いずれも本件特許の優先権主張日(平成10年10月12日)前に日本国内で頒布された刊行物である特開平10-177663号公報(乙1。公開日は平成10年6月30日。以下「乙1」という。)に記載された発明(以下「乙1発明」という。)と同じ発明である(特許法29条1項3号違反〔新規性欠如〕。以下「無効理由1-1」という。)。 仮に両者の間に相違点があるとしても,当該相違点は,いずれも上記本件特許の優先権主張日前に日本国内で頒布された刊行物である実願平3-26831号(実開平4-123472号)のマイクロフィルム(乙2。公開日は平成4年11月9日。以下「乙2」という。)に記載された発明(以下「乙2発明」という。)又は特開平6-223249号公報(乙3。公開日は平成6年8月12日。以下「乙3」という。)に記載された発明(以下「乙3発明」という。)と同一であり,また,当該乙2発明や乙3発明を乙1発明に適用する動機付けがあるから,当業者 は,乙1~乙3発明から本件発明を容易に想到し得たものである(特許法29条2項違反〔進歩性欠如〕。以下「無効理由1-2」という。)。 (イ) 本件発明は,いずれも乙2発明と同じ発明である(特許法29条1項3号違反〔新規性欠如〕。以下「無効理由2」という。)。 (ウ) 本件発明は,いずれも乙3発明と同じ発明である(特許法29条1項3号違反〔新規性欠如〕。以下「無効理由3-1」という。)。 条1項3号違反〔新規性欠如〕。以下「無効理由2」という。)。 (ウ) 本件発明は,いずれも乙3発明と同じ発明である(特許法29条1項3号違反〔新規性欠如〕。以下「無効理由3-1」という。)。 仮にそうでないとしても,乙2発明を適用することで容易に想到できる発明である(特許法29条2項違反〔進歩性欠如〕。以下「無効理由3-2」という。)。 (エ) 本件発明は,いずれも上記本件特許の優先権主張日前に日本国内で頒布された刊行物である特開昭62-144295号公報(乙6。公開日は昭和62年6月27日。以下「乙6」という。)に記載された発明(以下「乙6発明」という。)に,乙2発明を適用することで容易に想到できる発明である(特許法29条2項違反〔進歩性欠如〕。以下「無効理由4」という。)。 イ無効理由1-1,2について(ア) 乙1~乙3発明の内容a 乙1発明乙1の記載(【0001】,【0006】,【0009】,【0010】,【0018】,【0019】,【0022】,【0025】,【0033】,【0036】,【0038】,【表3】,【図2】)から,乙1には,次の構成を有する発明が開示されていると認められる。 1a ブレーキ動作などの移動体の挙動を検出するセンサ部が備えられており(乙1の【0022】),1b センサ部で検出された当該移動体のブレーキ信号等を「所定の 閾値」と比較した結果を「事故(信号)」と判定し,(同【0022】)1c 事故発生時には,前記移動体の稼働状況及び運行状況を示す制動信号を含む「運行状態データ」をメモリカード3に転送して記録する記録手段を有し,(同【0006】,【0009】,【0010】,【0033】)事故発生前後における詳細な運行状態データを記録したことにより, 状態データ」をメモリカード3に転送して記録する記録手段を有し,(同【0006】,【0009】,【0010】,【0033】)事故発生前後における詳細な運行状態データを記録したことにより,当該移動体の稼働状況管理,効率的配送ルートの管理,労務管理,アクシデント発生時のフライトレコーダ的使用,レンタカーの使われ方(速度,走行位置等)の管理,自動車教習所での運転結果の解析等に対して非常に有効であり(同【0038】),1d 前記メモリカード3には,前記移動体の「車両識別コード」,「運転者識別コード」に従って分類される分類毎に作成されたカード状記録媒体であり,(同【0018】,【0019】,【表3】)1e このメモリカード3には,あらかじめ固定局において,車両識別のデータや『データ収集時における指示』が記録されている(同【0018】,【0019】,【表3】)1f 事故発生時の各種情報を収集するドライブレコーダの機能とを複合したデータ収集装置(同【0001】)2a 固定局において,車両識別のデータや『データ収集時における指示』をメモリカード3に設定する処理(同【0018】,【0019】,【表3】)2b 事故発生時には,制動信号を含む「運行状態データ」をメモリカード3に転送して記録し(同【0006】,【0009】,【0010】,【0033】), 固定局のデータ処理部11により,メモリカード3から前記記録情報を読み出す処理(同【0025】,【0036】)2c 読み出した情報から当該移動体の稼働状況管理,効率的配送ルートの管理,労務管理,アクシデント発生時のフライトレコーダ的使用,レンタカーの使われ方(速度,走行位置等)の管理,自動車教習所での運転結果などを解析する処理(同【0038】)2d 以上を固 ルートの管理,労務管理,アクシデント発生時のフライトレコーダ的使用,レンタカーの使われ方(速度,走行位置等)の管理,自動車教習所での運転結果などを解析する処理(同【0038】)2d 以上を固定局サブシステムのコンピュータ装置に実行させるためのプログラム(デジタル情報)及び当該プログラムが記録されたコンピュータに読取可能な記録媒体b 乙2発明乙2の記載(【請求項1】,【0013】,【図面の簡単な説明】,【図2】,【図3】,【図4】)から,乙2には,次の構成を有する発明が開示されていると認められる。 「CPU2において,走行センサ1から得られる車両の加減速データを,加減速ランクデータと対比し,『車両の停車を検出する停車検出手段』,『最大ランク又はこれに近いランクの急減速を検出する急減速検出手段』,『減速の開始から車速が連続して所定値低下したことを検出する車速低下検出手段』を有する車両運行データ収集装置が記載されている。」「そして,前記加速ランク・減速ランクなどの「(データ収集)条件」は,ICメモリカード4の『設定データDs』に記録されており,当該設定データが,CPU2に読み出される構成になっている。」c 乙3発明乙3の記載(【0035】,【0036】,【0047】,【0052】,【図2】)から,乙3には,次の構成を有する発明が開示されていると認められる。 「乙3に記載された『本件イベント記録装置』は,自動車の操作値あるいは性能値が所定の閾値を超えたり,事故発生などの異常事態によってトリガされ,データの収集を行う。また,ドライバーは,RAMカード20を用いて『所望の前方間隔,警告しきい値,自動車の電子制御システムを介してセットされるその他のパラメータに関する各自の意向』を車両,すな れ,データの収集を行う。また,ドライバーは,RAMカード20を用いて『所望の前方間隔,警告しきい値,自動車の電子制御システムを介してセットされるその他のパラメータに関する各自の意向』を車両,すなわち,車両に搭載したマイクロコントローラ22に組み込むことができる。」(イ) 新規性欠如(特許法29条1項3号違反)についてa 本件発明1と乙1発明の対比(a) 構成要件1Aについて乙1発明の構成1aは,構成要件1Aと同一である。 (b) 構成要件1Bについて本件発明1の「挙動」は,「移動体の挙動」を意味するのであるから,乙1発明の「ブレーキ(信号)」は,構成要件1Bの「挙動」に該当する。 本件明細書の【0009】によれば,本件発明1は,「移動体の特定挙動を示す挙動条件に従って……当該移動体の特定挙動に関わる情報を所定の記録媒体に記録」するものである。 他方,乙1発明は「事故信号を検出したときはバッファメモリ手段に記録保持されているデータを外部メモリ手段に記録させる」(乙1【0006】)ものである。 よって,構成要件1Bの「特定挙動」と乙1発明の構成要件1bの「事故(信号)」とは,いずれも記録媒体に記録を開始する「事象」であり,同一である。 構成要件1Bの「前記挙動を特定挙動と判断するための『挙動条件』」は,記録媒体に記録を開始する「事象[特定挙動]」を判断 する「条件」,すなわち,「所定のしきい値」(本件明細書【0050】)などである。 よって,乙1発明の「ブレーキ信号等を所定の閾値と比較した結果を事故信号と判定」する場合の「所定の閾値」は,構成要件1Bの「挙動条件」に該当する。 さらに,乙1発明の「所定の閾値」は,ブレーキ信号等と比較され,「事 ブレーキ信号等を所定の閾値と比較した結果を事故信号と判定」する場合の「所定の閾値」は,構成要件1Bの「挙動条件」に該当する。 さらに,乙1発明の「所定の閾値」は,ブレーキ信号等と比較され,「事故(信号)」と判断するために利用されるものであるから,構成要件1Bの「移動体の挙動を事故[特定挙動]と判断するための挙動条件」にも該当する。 また,乙1発明は,所定の閾値に従って前記センサ部で検出されたブレーキ信号等が「特定挙動(事故)」に該当するかを判定する。 以上のとおり,乙1発明の構成1bは,「ブレーキ(信号)[挙動]を事故[特定挙動]と判定するための所定の閾値[挙動条件]に従って前記センサ部で検出された当該移動体のブレーキ(信号)[挙動]において前記事故[特定挙動]の発生の有無を判定している」のであり,構成要件1Bと同一である。 (c) 構成要件1Cについて本件明細書の【0041】によれば,本件発明1において解析される「操作傾向」とは,「危険挙動別又は特徴的な挙動の発生回数等/悪癖情報/運行経路/運転評価グラフ表示……」などを意味する。 この点,乙1発明の構成1cの「稼働状況管理……自動車教習所での運転結果の解析」は,構成要件1Cの「操作傾向の解析」と同一である。 また,乙1発明は,「事故[特定挙動]の発生に応じて,移動体の制動信号を含む運行状態データをメモリカードに記録する」ので あるから,構成要件1Cの「特定挙動の発生に応じて当該移動体の特定挙動に関わる情報を所定の記録媒体に記録する記録手段」を有する。 以上のとおりであるから,乙1発明の構成1cは,構成要件1Cと同一である。 (d) 構成要件1Dについて乙1発明の構成1dは,構成要件1Dと同一である。 (e を有する。 以上のとおりであるから,乙1発明の構成1cは,構成要件1Cと同一である。 (d) 構成要件1Dについて乙1発明の構成1dは,構成要件1Dと同一である。 (e) 構成要件1Eについて前記構成要件1Bで述べたとおり,本件発明1の構成要件1Eの「挙動条件」とは,記録媒体に記録を開始する「事象」を判断する「条件」,すなわち,乙1発明の「(ブレーキ信号の)所定の閾値」がこれに相当する。 そして,乙1には,固定局からメモリカード3に「データ収集時における指示をあらかじめ設定しておくことによってサンプリング周期等を所望の値に容易に変更することができる」(【0019】)との技術事項が開示されている。 したがって,乙1の上記技術事項に接した当業者は,「データ収集時における指示」について,表3に記載された「データ選択指示」,「サンプリング周期」,「サンプリング開始トリガ指示」,「サンプリング終了トリガ指示」などのほかに,データ収集を開始する「所定の閾値」データが記録されることを当然に理解する。 よって,乙1には,「メモリカードに所定の閾値[挙動条件]が記録されている」との技術事項が記載されている。 以上のとおり,乙1発明の構成1eは,構成要件1Eと同一である。 (f) 構成要件1Fについて 乙1発明の構成1fは,構成要件1Fと同一である。 (g) 以上のとおり,本件発明1の構成要件と乙1発明の構成とは,全て同一であるから,本件発明1は,乙1に記載された発明であり,本件発明1には,特許法29条1項3号に違反する無効理由がある。 b 本件発明2と乙1発明の対比(a) 構成要件2Aについて本件明細書の【0049】には,「データ収集 記載された発明であり,本件発明1には,特許法29条1項3号に違反する無効理由がある。 b 本件発明2と乙1発明の対比(a) 構成要件2Aについて本件明細書の【0049】には,「データ収集条件には,例えば,図8(b)に示されるように,1秒間の間に変化する角速度が10°を越えた場合等が挙げられる。このような条件が満足された場合,特定挙動が発生したと判断され,発生前後の所定時間(例えば,前後30秒)の測定データがメモリカード20に記録される。」との記載がある。 よって,本件発明2の構成要件2Aの「移動体の特定挙動に関わる情報を収集するための収集条件」は,本件発明1の「挙動条件」と同義である。 そして,乙1発明において,データ収集を開始する「挙動条件」である「所定の閾値」が,メモリカード3に記録されている技術事項であることは,前記構成要件1Eで述べたとおりである。 よって,乙1発明の構成2aは,「メモリカードに所定の閾値[挙動条件]が記録されている」のであり,構成要件2Aと同一である。 (b) 構成要件2Bについて乙1発明の構成2bの「制動信号を含む『運行状態データ』」は,「収集条件に適合する挙動に関わる情報」である。 よって,乙1発明の構成2bは,構成要件2Bと同一である。 (c) 構成要件2Cについて乙1発明の「当該移動体の稼働状況管理,効率的配送ルートの管 理,労務管理,アクシデント発生時のフライトレコーダ的使用,使われ方(速度,走行位置等)の管理,自動車教習所での運転結果などを解析する処理」は,構成要件2Cの「移動体の操作傾向を解析する処理」に該当する。 よって,乙1発明の構成2cは,構成要件2Cと同一である。 (d) 構成要件2Dについて などを解析する処理」は,構成要件2Cの「移動体の操作傾向を解析する処理」に該当する。 よって,乙1発明の構成2cは,構成要件2Cと同一である。 (d) 構成要件2Dについて乙1発明の構成2dは,構成要件2Dと同一である。乙1には,「プログラムが記録されたコンピュータに読取可能な記録媒体」の記載はないが,固定局のMPU15にプログラムを記録させるために,コンピュータ(MPU)に読取可能な記録媒体を用いることは,当業者が当然に行うことであるから,記載されているものと同視できる技術事項である。 (e) 以上のとおり,本件発明2の構成要件と乙1発明の構成とは,全て同一であるから,本件発明2は,乙1に記載された発明であり,本件発明2は,特許法29条1項3号に違反して,特許されたものである。 (ウ) 特許法29条2項違反についてa 本件発明1について仮に乙1には本件発明1の構成要件1Eの「挙動条件」に対応する要素が明記されていないとしても,本件発明1は乙1発明に乙2発明又は乙3発明を適用することにより,当業者が容易に想到することができたものであり,本件発明1には,特許法29条2項に違反する無効理由がある。 (a) 本件発明1と乙1発明との相違点上記のように乙1に本件発明1の構成要件1Eの「挙動条件」に対応する要素が明記されていないとすれば,その相違点は,本件発 明1では,「挙動条件」がカード状記録媒体に記録されているのに対して,乙1発明では,メモリカード3に記録されているのは「データ収集時における指示」であって,「挙動条件」である「(エンジンの回転数やブレーキ信号等の)所定の閾値」が記録されているとは,明記されていない点ということになる。 (b) 上記相違点と乙 データ収集時における指示」であって,「挙動条件」である「(エンジンの回転数やブレーキ信号等の)所定の閾値」が記録されているとは,明記されていない点ということになる。 (b) 上記相違点と乙2発明との対比乙1発明の「所定の閾値」(挙動条件)は,移動体のセンサから得られる情報と比較され,特定の「事故(信号)の発生」の判断に用いられるものであるから,乙2発明の「加速ランク」,「減速ランク」などの「(データ収集)条件」と同一である。 そして,乙2発明では,前記「(データ収集)条件」は,ICメモリカード4の「設定データDs」に記録されており,適宜,当該設定データが,CPU2に読み出される構成になっている。 よって,乙2発明には,上記相違点(「挙動条件」がカード状記録媒体に記録されている)と同一の技術特定事項が開示されている。 (c) 上記相違点と乙3発明との対比乙3発明においては,「自動車の操作値あるいは性能値が所定のしきい値を越えたり,事故発生などの異常事態によってトリガされ,データの収集を行う」ところ,前記「事故発生」,「異常事態」は,本件発明1の「特定挙動」と同一である。 また,乙3発明では,ドライバーが,RAMカード20を用いて「所望の前方間隔,警告しきい値,自動車の電子制御システムを介してセットされるその他のパラメータに関する各自の意向」を車両に搭載したマイクロコントローラ22に組み込むことができるのであるから,RAMカードには,「警告しきい値」が記録されている(乙3【0047】)。 そして,「警告しきい値」とは,「異常事態」を判断する「条件」であるから,本件発明1の「挙動条件」と同一である。 よって,乙3発明は,「挙動条件がRAMカード2 )。 そして,「警告しきい値」とは,「異常事態」を判断する「条件」であるから,本件発明1の「挙動条件」と同一である。 よって,乙3発明は,「挙動条件がRAMカード20に記録され,適宜,マイクロコントローラ22に読み出される構成になっており,上記相違点と同一の技術特定事項が開示されている。 (d) 乙1発明に乙2発明又は乙3発明を適用する動機付けについて乙1の【0018】には,「表3はメモリカード3に記憶されるデータを示す表である。このように,乗務員に固有のデータ(運転者コード,車両識別コード等)を記録しておくことによってデータ管理が容易になる。また,データ収集時における指示を予め設定しておくことによってサンプリング周期等を所望の値に容易に変更することができる。」との記載がある。この点,データ収集時における指示とは,サンプリング周期のほか,データ収集を開始する「条件」を含むものであり,乙2発明の「加速ランク」,「減速ランク」や乙3発明の「警告しきい値」は,「データ収集時における指示」の具体的な例示である。 よって,当業者は,乙2発明,乙3発明と同様に,乙1発明のメモリカード3にも,「データ収集時における指示」として,同様の条件,すなわち,「(エンジンの回転数やブレーキ信号等の)所定の閾値」などの「条件」を採用できることを,容易に想到する。 以上のとおりであるから,当業者には,乙1発明に,乙2発明の「CPUでの判断条件をメモリカードに記録する」との技術特定事項又は乙3発明の「警告しきい値をRAMカードに記録する」との技術特定事項を適用する動機付けがある。 他方,乙1発明には,乙2発明の「CPUで判断する為の条件をメモリカードに記録」しておきCPUへの入力作業を 告しきい値をRAMカードに記録する」との技術特定事項を適用する動機付けがある。 他方,乙1発明には,乙2発明の「CPUで判断する為の条件をメモリカードに記録」しておきCPUへの入力作業を省力化する技 術事項や,乙3発明の「警告しきい値をRAMカードに記録」しておき各自の意向を車両に搭載したマイクロコントローラ22に組み込むとの技術事項を適用することに何ら障害となる事由はない。 (e) 結論以上のとおり,当業者は,乙1発明に乙2発明又は乙3発明を適用して本件発明1に容易に想到することができるから,本件発明1には,特許法29条2項に違反する無効理由がある。 b 本件発明2について(a) 本件発明2と乙1発明との相違点仮に本件発明2の構成要件2Aと乙1発明の構成2aが異なるとしても,前記のとおり,本件発明2の構成要件Eにおける「収集条件」と本件発明1の「挙動条件」は同一であるから,本件発明2と乙1発明との相違点は,前記a(a)の相違点と同一である。 そして,乙2発明や乙3発明に同相違点の技術特定事項が記載されていること,また,乙1発明に,乙2発明や乙3発明を適用することに,当業者に動機付けがあり,適用を阻害する事由が存在しないことは前記のとおりである。 (b) 結論以上のとおり,当業者は,乙1発明に乙2発明又は乙3発明を適用して本件発明2に容易に想到することができるから,本件発明2には,特許法29条2項に違反する無効理由がある。 ウ無効理由2について(ア) 乙2発明の技術分野と課題,目的乙2発明は,車両運転管理システムに係る技術分野の発明(乙2【0001】)であって,道路状況に左右されないで,運転者の運転状況を把握するのに有効な,加減速の履歴情報を 2発明の技術分野と課題,目的乙2発明は,車両運転管理システムに係る技術分野の発明(乙2【0001】)であって,道路状況に左右されないで,運転者の運転状況を把握するのに有効な,加減速の履歴情報を含む車両運行データを収集す ることのできる車両運行データ収集装置の提供を目的とする発明である(同【0004】~【0006】)。 すなわち,技術分野は本件発明と同じであり,その課題,目的も加減速に係る運転履歴から運転者の運転状況(操作傾向)を把握することであって,本件発明の課題,目的と共通する。 (イ) 乙2発明のハード構成乙2の記載(【0010】,【0011】,【0012】,【0013】,【0014】,【0021】,【0022】,【図3】,【図5】,【図10】)によれば,乙2発明のシステム全体のハード構成は次のとおりである。 a 「走行センサ11」(前記【0011】)車両の走行に伴って車速に応じた周波数の走行信号を発生する。 b 「車両運行データ収集装置」(同【0011】)車両に搭載される装置で,CPU2,カレンダ及び時計3,並びにカードコネクタ5等から構成された本件発明の「データレコーダ」に相当する装置である。 c 「解析装置10」(「運行データ解析装置」)(同【0021】)収集されたデータを解析するコンピュータであって,本件発明の「挙動解析装置30」に相当する。すなわち,「ICメモリカード4」の「運行データエリア43」に記録された車速や走行距離データを読み込んで解析する。 d 「ICメモリカード4」(同【0011】等)本件発明の「記録媒体」,「カード状記録媒体」に相当し,以下のエリアが形成されている(同【0013】,【図3】)。 (a) 「カードIDエリア41」解析装置 モリカード4」(同【0011】等)本件発明の「記録媒体」,「カード状記録媒体」に相当し,以下のエリアが形成されている(同【0013】,【図3】)。 (a) 「カードIDエリア41」解析装置10が,カードを識別するためのカードIDを書き込む ためのエリアである。 (b) 「設定データエリア42」解析装置10によって書き込まれる「設定データDs」を格納するエリアである。そして,この書き込まれる「設定データDs」とは「加速及び減速ランクデータ」であって(同【0022】),後述するように,本件発明の「挙動条件」及び「収集条件」に相当する。 (c) 「運行データエリア43」車両運行データ収集装置によって,収集した車速や走行距離データを書き込むためのエリアである。 (d) 「オプションデータエリア44」車両運行データ収集装置によって書き込まれる加減速ランクの出現回数を格納するエリアである(同【0014】,【図5】)したがって,乙2発明には本件発明1の構成要件1A,1D,1E及び1Fと同じ構成並びに構成要件2A,2B及び2Dと同じ構成が開示されていることになる。 (ウ) データ処理についてa 車両運行データ収集装置での処理乙2の記載(【0016】,【0017】,【0031】,【0032】,【0033】,【0038】,【0039】)によれば,次のとおりである。 すなわち,車両運行データ収集装置(のCPU2)は,走行センサ1から入力した走行信号に基づいて,加速,減速を演算により求め,あらかじめ定めた条件下で成立する1サイクル中の最大の加速,減速がどのランクに当てはまるかを上記加速ランクデータ及び減速ランクデータに基づいて決定し,サイクルの間の最大の加減速ランクを検出 らかじめ定めた条件下で成立する1サイクル中の最大の加速,減速がどのランクに当てはまるかを上記加速ランクデータ及び減速ランクデータに基づいて決定し,サイクルの間の最大の加減速ランクを検出 し,この最大加減速ランクに対応するICメモリカード4のオプションデータエリア44に記録して加減速の履歴情報を得る。 この「加速ランク」及び「減速ランク」は,加速度値(「m/秒2」・乙2の【0013】参照)で設定した閾値であって,本件発明の「挙動条件」及び「収集条件」に相当する。また,「最大加減速ランク」の加減速の検出(判定)が,本件発明の「特定挙動」の発生の有無の判定に相当する(構成要件1B,2B)。 そして,「最大加減速ランク」の加減速の出現回数に係る情報,すなわち,本件発明の「特定挙動に関わる情報」(構成要件1C)又は「収集条件に適合する挙動に関わる情報」(構成要件2B)に相当する情報を,ICメモリカード4の「オプションデータエリア44」に記録している。 b 解析装置10での処理乙2の記載(【0044】,【0046】,【0049】)によれば,次のとおりである。 すなわち,解析装置10では,「ICメモリカード4」から読み取られた「最大加減速ランク」の加減速の出現回数に係る情報より,例えば1時間ごとの警報速度を越えた回数や時間の管理表,一覧表を作成して,加減速の履歴情報を含む車両運行データにより,運転者の運転状況を把握する処理がなされている。 これらの処理は,本件発明の「移動体の操作傾向の解析」(構成要件2C)に相当するから,これらの処理の基となった「ICメモリカード4」に記録された「最大加減速ランク」の加減速の出現回数に係る情報は,「移動体の操作傾向の解析を可能とする特定挙動に関わる情報」(構成要件1C) するから,これらの処理の基となった「ICメモリカード4」に記録された「最大加減速ランク」の加減速の出現回数に係る情報は,「移動体の操作傾向の解析を可能とする特定挙動に関わる情報」(構成要件1C)に相当する。 (エ) したがって,以上の記載から,乙2発明には,本件発明の構成要件1 C及び2Cに相当する構成が開示されている。 (オ) 以上,乙2発明には本件発明の構成全てが開示されているから,本件発明には,いずれも特許法29条1項3号に違反する無効理由がある。 エ無効理由3-1,2について(ア) 乙3発明の技術分野と課題,目的乙3発明の技術分野は,自動車レーダシステムにおける操作的なイベント(事象)を記録するための装置及び方法(乙3【0001】)とされ,飛行機のブラックボックスのような事故復元に有用なデータの記録を,自動車において安価で小型化した装置で達成することを目的とする(同【0004】,【0005】)ほか,自動車の操作状態のデータを記録(同【0006】)しようとする発明であって,その技術分野は本件発明と同じであり,課題,目的も共通する。 (イ) 種々の自動車の機能に関するセンサ乙3発明の「ERA(イベント記録装置)」には,自動車の機能に関する種々のセンサを設けられることが記載されているが,この構成は本件発明の構成要件1A(移動体の挙動を検出するセンサ部)に相当する。 (ウ) 第3操作モードにおける異常操作に係るデータの記録及び多様な表形態での表示a 明細書の記載乙3発明の「RAMカード20」には,複数の異なる操作モードがあるとされている(前記【0032】)。 そして,第2操作モードの変形等では,自動車センサ4aから得られたデータである操作値が「所定のしきい値」を越えた場合にのみ運転整備センサ 異なる操作モードがあるとされている(前記【0032】)。 そして,第2操作モードの変形等では,自動車センサ4aから得られたデータである操作値が「所定のしきい値」を越えた場合にのみ運転整備センサ値が記録されるとされ(同【0035】),また,第3操作モードでは,突然の加速,減速,突然のブレーキ操作,エアバッグの作動などの「異常操作」が発生した場合には,事後分析のために その事態に係るデータ値がRAMカード20に記録されることが記載され(同【0036】),これらの操作モードの変形,組合せは設計事項であるとされている(同【0037】)。 したがって,第3操作モードでの「異常操作」の発生の有無の判定(識別)も,第2操作モードの変形等と同様に,操作値が「所定のしきい値」を超えたか否かで判定されることが開示されていることになる。 b そして,上記のデータが記録された「RAMカード20」が,「自動車システム」(ERA:イベント記録装置)(本件発明のデータレコーダに相当)から取り外され,「PC60」(本件発明の「挙動解析装置30」に相当)に挿入されて,データが読み出される(乙3【0041】)。 そして,この読み出したデータに基づき,設計事項(慣用技術)である多様な表形態でコンピュータに表示する,と説明されているが(同【0042】),この多様な表形態での表示等は,本件発明の「移動体の操作傾向の解析」(構成要件2C)に相当するから,この元となった「RAMカード20」に記録されたデータは,「移動体の操作傾向の解析を可能とする特定挙動に関わる情報」(構成要件1C)に相当する。 c 乙3発明の「RAMカード20」は本件発明の「記録媒体」及び「カード状記憶媒体」に相当する。また,乙3発明の「所定のしきい値」とは本件発 に関わる情報」(構成要件1C)に相当する。 c 乙3発明の「RAMカード20」は本件発明の「記録媒体」及び「カード状記憶媒体」に相当する。また,乙3発明の「所定のしきい値」とは本件発明の「挙動条件」及び「収集条件」に相当し,また乙3発明の「異常操作」とは本件発明の「移動体の特定挙動」に相当する。 したがって,乙3発明には,本件発明の構成要件1A,1B,1C並びに1Fに相当する構成が開示されているとともに,2B,2C並びに2Dに相当する各構成が開示されていることになる。 (エ) RAMカード20の閾値等RAMカード20は,各ドライバーは個人用のRAMカード20を所有することができるとされており(乙3【0043】),また,各ドライバーは個人それぞれのRAMカード20が特定の車両にのみ有効となるように電子サイン(署名)でキイされていること(同【0044】)からすれば,各車両ごと,各ドライバーごとの識別情報に従って分類される分類ごとに作成されたカード状記録媒体である。すなわち,構成要件1Dと同じ構成が開示されている。 また,ドライバーは,RAMカード20を用いて,所望の「警告しきい値」を組み込むことができる(同【0047】)のであるから,RAMカード20には「警告しきい値」が設定,記録されていることが開示されている。ただ,この「警告しきい値」は,同【0035】に記載の,これ「を越えたり,事故発生などの異常事態によってトリガされる」「しきい値」,換言すれば,本件発明の「挙動条件」,「収集条件」に該当する「しきい値」ではないと考えられるが,このような閾値がRAMカード20に設定,記録されていることからすれば,乙3発明においては,同【0035】の「第2操作モードの別の変形」や同【0036】に記載の「第 きい値」ではないと考えられるが,このような閾値がRAMカード20に設定,記録されていることからすれば,乙3発明においては,同【0035】の「第2操作モードの別の変形」や同【0036】に記載の「第3操作モード」では,突然の加速,減速,突然のブレーキ操作,エアバッグの作動など異常操作が発生した場合」にトリガされる「しきい値」も,換言すれば,本件発明の「挙動条件」,「収集条件」に該当する「しきい値」もRAMカード20に設定,記録されていると当業者は認識する。 すなわち,乙3発明には構成要件1Eと2Aと同じ構成が開示されていることになる。 (オ) 以上,乙3発明には本件発明の構成全てが開示されている。 (カ) 仮に乙3発明に構成要件1Eと2Aと同じ構成が開示されていないと しても,乙3発明はその他の全ての構成要件で本件発明と一致するから,本件発明1と乙3発明との相違点は構成要件1Eであり,また,本件発明2と乙3発明との相違点は構成要件2Aということになる。 a 前述したように,乙2発明には本件発明1の構成要件1E及び本件発明2の構成要件2Aの構成が開示されていた。 すなわち,乙2発明には本件発明の「挙動条件」,「収集条件」を「カード状記憶媒体」,「記憶媒体」に記録し,設定する処理が開示されていた。 b また,前述したように,乙2発明,乙3発明及び本件発明は,技術分野及び解決課題を共通する発明である。 しかも,乙2の【0048】には「また,実施例では,加減速ランクデータの設定をICメモリカードに書き込まれた設定データによって行っているが,例えばROM中に予め記憶させておいてもよい。……」と説明されている。 この記載は,本件発明の「挙動条件」及び「収集条件」に相当する「加減速ランクデータ」の記録する場所が タによって行っているが,例えばROM中に予め記憶させておいてもよい。……」と説明されている。 この記載は,本件発明の「挙動条件」及び「収集条件」に相当する「加減速ランクデータ」の記録する場所が,「カード状記憶媒体」,「記憶媒体」,又は,車両に搭載されるデータレコーダのメモリのどちらでもよいとするものであるが,これは,データレコーダのメモリに記録されていた構成を,「カード状記憶媒体」,「記憶媒体」に記録する構成に置換することにつき,何等の支障もないこと,さらには,実施例では「カード状記憶媒体」,「記憶媒体」に記録する構成を採用していたことからすれば,この置換を示唆しているといえる。 したがって,乙3発明に乙2発明を適用し,「挙動条件」及び「収集条件」を「カード状記憶媒体」,「記憶媒体」に記録する構成に置換することは当業者が容易に想到できたことは明らかである。 そして,乙3発明に乙2発明を適用した結果,得られる運転者ごと に異なる「しきい値」を設定,記録することで,その変更,修正も運転者ごとに可能となる効果,さらには運転者ごとの操作傾向の解析を可能とする効果は,当業者が予測不能の顕著な効果とは到底いえず,当業者が容易に予測できる効果である。このことは,乙3の【0047】に,RAMカード20に「警告しきい値」を記録することで「自動車の操作指標をドライバーの意向に合わせて『特別化』あるいは『個人化』するのにも用いられる。」としていることからも裏付けられる。 (キ) よって,乙3発明には本件発明の構成要件全てが開示されているのであるから,本件発明には,いずれも特許法29条1項3号に違反する無効理由がある。 仮にそうでないとしても,本件発明は,いずれも乙3発明に乙2発明を適用することにより 開示されているのであるから,本件発明には,いずれも特許法29条1項3号に違反する無効理由がある。 仮にそうでないとしても,本件発明は,いずれも乙3発明に乙2発明を適用することにより,容易に想到できた発明であって,特許法29条2項に違反する無効理由がある。 オ無効理由4について(ア) 乙6発明の技術分野と課題,目的乙6発明は,車輌運転管理システムに係る技術分野の発明であって,スピードの出し過ぎや急発進,急制動の有無,その回数をあらかじめ設定された基準値を基に自動判定して,統合的なドライバーの運転管理データを得るシステムの提供を目的とする発明である。 すなわち,乙6発明は,本件発明及び乙2発明と同じ技術分野の発明であり,その課題,目的も加減速に係る運転履歴から運転者の運転状況(操作傾向)を把握することであって乙2発明と同じであり,また,加減速に係る運転履歴を対象とする点で本件発明と共通する。 (イ) 乙6発明の実施例のハード構成乙6の記載(4頁左上欄8行目~右上欄18行目,左下欄14行目~右下欄13行目,第3図,第4図)によれば,次のとおりである。 すなわち,乙6発明の実施例のハード構成は,乙6記載の第3図に示されるとおり,外部記憶体としての「ICカード1」,車輌Vに搭載された「運転データ記録装置2」(本件発明の「データレコーダ」に相当),管理事務所等にある「管理データ処理装置3」(本件発明の「挙動解析装置30」に相当),ICカード1の磁気ストライプの識別データ記憶部1bから識別データを「読取る磁気テープ読取式データ処理装置4」,及び,車速を検出し,運転データ記録装置2に検出信号を入力する「検出部5」から構成されている。 そして,「ICカード1」は,運転データを書込むための「運転デー る磁気テープ読取式データ処理装置4」,及び,車速を検出し,運転データ記録装置2に検出信号を入力する「検出部5」から構成されている。 そして,「ICカード1」は,運転データを書込むための「運転データ記憶部1a」と識別データを記憶している「識別データ記憶部1b」とからなっている。 以上の明細書の記載から,乙6発明の「検出部5」は,構成要件1Aに相当し,「ICカード1」は,本件発明の「記録媒体」,「カード状記録媒体」に相当し,また,その「識別データ記憶部1b」には運転者の識別情報が記憶されているから,構成要件1Dの運転者ごとの識別情報に従って分類される分類ごとに作成された「カード状記録媒体」と同じ構成である。 (ウ) 乙6発明の運転データの管理a 運転データ記録装置2での処理第4図で示されるように,検出部5から入力された車速データは,運転データ記録装置2の「演算部20」に入力され,「演算部20」の「安全スピード判定手段13」により,あらかじめ安全走行の励行として設定されている「基準スピード」を超えるか否かが判定される。 また,「演算部20」の「スピード変化率算出手段11」で算出された「速度変化率」が,「粗雑運転判定手段12」により,この変化率があらかじめ急速発進として設定されている「基準変化率」を超えて いるか否か及び急制動として設定されている「基準変化率」を下回っているか否かによって急速発進及び急制動が判定される。 この「基準スピード」及び「基準変化率」はいわゆる閾値であって,本件発明の「挙動条件」及び「収集条件」に相当し,また,「基準スピード」を超えた場合や,「基準変化率」を超える「急速発進」,下回る「急制動」の有無の判定が,本件発明の「特定挙動」の発生の有無の判定に相当する(構成要件1B,2B)。そ 」に相当し,また,「基準スピード」を超えた場合や,「基準変化率」を超える「急速発進」,下回る「急制動」の有無の判定が,本件発明の「特定挙動」の発生の有無の判定に相当する(構成要件1B,2B)。そして,これらの判定されたデータは,第4図に示されるように,「管理データ処理装置3」の「運転評価手段31」(「安全スピード運行評価手段33」,「粗雑運転評価手段32」及び「長距離走行評価手段36」)に入力されるが,このデータの移行は「ICカード1」が利用される。 つまり,乙6の4頁右下欄19行目~5頁左上欄3行目に「次に,前記の如くICカード1の稼動データ記億部1aにストアされた運転データは,管理事務所等にある管理データ処理装置3に適宜読取手段(例えばICカードリーダー等)を介して入力される。」と記載されているように,「運転データ記録装置2」の「演算部20」で判定されたデータは,「ICカード1」の「稼動データ記億部1a」にストア(記録)され(構成要件1C,2B),これが,管理データ処理装置3にICカードリーダー等の読取手段で読み取られること(構成要件2B)で入力される。 b 管理データ処理装置3での処理上記の「ICカード1」より読み取られた判定データから,管理データ処理装置3の「演算部30」の「安全スピード運転評価手段33」では,基準スピード以上のスピードを出した回数と所定係数との積をポイントとして算出し,また「粗雑運転評価手段32」では,急速発進及び急制動の回数と所定係数との積をポイントとして算出する。そ して,これらポイントは「運転管理パターン判定手段38」で集計されて,あらかじめ所定のランク付けが行われてある運転管理パターンのどれに該当するか判定されるポイント制が例示されている。この判定,評価は,本件発明の イントは「運転管理パターン判定手段38」で集計されて,あらかじめ所定のランク付けが行われてある運転管理パターンのどれに該当するか判定されるポイント制が例示されている。この判定,評価は,本件発明の「移動体の操作傾向の解析」(構成要件2C)に相当するから,この判定,評価の基となった「ICカード1」に記録された判定データは,「移動体の操作傾向の解析を可能とする特定挙動に関わる情報」(構成要件1C)に相当する。 c したがって,乙6発明には,本件発明の構成要件1B(特定挙動発生の有無の判定),1C(特定挙動に関わる情報の記録),2B(記憶媒体からの読み出し処理)及び2C(操作傾向の解析処理)に相当する構成が開示されている。 (エ) そして,既に述べたように,乙6発明の「運転データ記録装置2」は本件発明1の「データレコーダ」に相当し,「ICカード1」は本件発明の「記録媒体」及び「カード状記憶媒体」に相当する。 したがって,乙6発明には構成要件1F及び2Dと同じ構成が開示されている。 (オ) 乙6発明と本件発明との一致点,相違点以上,乙6発明には,本件発明1の構成要件1A,1B,1C,1D及び1Fと同じ構成が存在し,また,本件発明2の構成要件2B,2C及び2Dと同じ構成が存在する。 すなわち,乙6発明と本件発明1は構成要件1A,1B,1C,1D及び1Fで一致し,構成要件1Eで相違する。また,乙6発明と本件発明2とは,2B,2C及び2Dで一致し,構成要件2Aで相違することになる。 言い換えれば,乙6発明では,本件発明の「挙動条件」又は「収集条件」が,「カード状記録媒体」ないし「記録媒体」,又は「運転データ 記録装置2」(データレコーダ)のメモリのいずれに記録されているのか(技術的には,どちらかに必ず記録さ 件」又は「収集条件」が,「カード状記録媒体」ないし「記録媒体」,又は「運転データ 記録装置2」(データレコーダ)のメモリのいずれに記録されているのか(技術的には,どちらかに必ず記録されている。)が明確ではない。 (カ) 乙2発明の乙6発明への適用前記のとおり,乙2発明には本件発明1の構成要件1E,本件発明の構成要件2Aの構成が開示されていた。すなわち,乙2発明には本件発明の「挙動条件」又は「収集条件」を「カード状記憶媒体」ないし「記憶媒体」に記録し,設定する処理が開示されていた。 しかも,前述したように,乙2発明,乙6発明,及び本件発明は,技術分野,解決課題を共通する発明である。 したがって,乙6発明に乙2発明を適用することは,前記した乙3発明と同じ理由により,当業者は容易に想到する。 (キ) 以上,本件発明は,いずれも乙6発明に乙2発明を適用することにより,容易に想到できた発明であって,特許法29条2項に違反する無効理由がある。 〔原告の主張〕ア無効理由1-1,2に対し(ア) 乙1,乙2発明の認定の誤り被告は,乙1の開示内容から乙1発明(構成1a~1f,構成2a~2d),乙2の開示内容から乙2発明,乙3の開示内容から乙3発明をそれぞれ認定しているが,少なくとも以下の部分に認定の誤りがある。 a 乙1発明(a) 構成1aデータ収集装置1(1f)に「ブレーキ動作などの移動体の挙動を検出する」センサ部が備えられることは,乙1に記載されていないので,誤りである。ブレーキ信号等を含む運行状態データは,車両側で検出されて,データ収集装置1(1f)に取り込まれるだけ である(乙1【0009】,【0010】)。 (b) 構成1b乙1,特に【0022】には,「 運行状態データは,車両側で検出されて,データ収集装置1(1f)に取り込まれるだけ である(乙1【0009】,【0010】)。 (b) 構成1b乙1,特に【0022】には,「ブレーキ信号等を『所定の閾値』と比較した結果を『事故(信号)』と判定」するのがデータ収集装置1(1f)であるとは記載されていないので,誤りである。乙1の【図1】によれば,事故の判定は車両側で行われ,その結果,事故信号がデータ収集装置1(1f)に入力される。同【0022】には,事故信号であるエアバッグ信号に代えて,車両に設置された衝撃検出手段(図示しない)によって出力される加速度信号,あるいは,「ブレーキ信号等を所定の閾値と比較した結果」等を事故信号として用いることができる,としか記載されていない。 (c) 構成1c被告は「事故発生時には,……」と認定しているが,「運行状態データ」自体は,事故発生時以外も低サンプリングレートでメモリカード3に転送,記録されるので誤りである。事故発生時には,転送,記録される「運行状態データ」が通常時よりも短い周期でサンプリングされたものになるだけである。 (d) 構成1e被告は,構成1eにおける挙動条件を一方で「データ収集時における指示」と認定し,他方で「(ブレーキ信号の)所定の閾値」と認定しているが,両者は同義語ではないので,いずれか一方が誤りである。 (e) 構成2a被告は,構成2aにおける収集条件を一方で「データ収集時における指示」と認定し,他方で「(ブレーキ信号の)所定の閾値」と認定しているが,両者は同義語ではないので,いずれか一方が誤り である。 (f) 構成2b「運行状態データ」自体は事故発生時以外にもメモリカード3に転送,記録されるので 」と認定しているが,両者は同義語ではないので,いずれか一方が誤り である。 (f) 構成2b「運行状態データ」自体は事故発生時以外にもメモリカード3に転送,記録されるので,誤りである。 (g) 構成2c「……などを解析する処理」とあるが,乙1の【0038】の該当箇所は,「……解析等に対して非常に有効であるといえる。」と記載されているだけであり,具体的な処理として記載されているわけではないので,誤りである。 固定局サブシステム側で行う処理として乙1に記載されているのは,運航ルートをトレースする処理,すなわち,地図データ保管部13に保管されている地図データとメモリカード3から供給された位置データとを関連付け,運航ルートをデータ表示・記録部10に表示させる処理と,(どこで作成されるのかは不明であるが)運航グラフを印刷する処理だけである(同【0036】)。 b 乙2発明加速ランク・減速ランクデータは,ある速度変化ΔVを加減速ランクRrに変換するため,すなわち,ランク分けしてカウンタをインクリメントするために用いられるものであり,車両の挙動に関わる情報を収集するために用いられるものではない。少なくとも乙2には,被告がいう「(データ収集条件)」としての意味合いでは記載されていない。よって,被告の認定は誤りである。 (イ) 新規性欠如(特許法29条1項3号違反)に対しa 乙1発明の構成1aは構成要件1Aと相違する。 乙1発明が構成1aを備えているといえない以上,当然の帰結である。 b 乙1発明の構成1bは構成要件1Bと相違する。 本件発明1の特許請求の範囲の記載に従えば,構成要件1Bにいう「挙動条件」は,構成要件1Aのセンサ部で検出された挙動を b 乙1発明の構成1bは構成要件1Bと相違する。 本件発明1の特許請求の範囲の記載に従えば,構成要件1Bにいう「挙動条件」は,構成要件1Aのセンサ部で検出された挙動を特定挙動と判定するための条件である。乙1発明が構成1aを備えているといえないことはもとより,乙1の記載からは「ブレーキ信号等を「所定の閾値」と比較した結果を「事故(信号)」と判定」するのが,車両ではなくデータ収集装置1fであると断定できない以上,当然の帰結である。 c 乙1発明の構成1cは構成要件1Cと相違する。 乙1発明は,事故(信号)の発生に応じて運行状態データをメモリカードに記録するものではなく,事故発生の有無に関わらず記録している運行状態データを事故(信号)の発生に応じて,サンプリングレートを変えて記録するにすぎない。 d 乙1発明の構成1eは構成要件1Eと相違する。 被告の論理は,おおむね以下のものと認められる。 ① 「挙動条件」は「(ブレーキ信号の)所定の閾値」に相当する。 ② 表3に示された「データ収集時における指示」がメモリカードに設定されることにより,サンプリング周期等を所望の値に容易に変更することができる。 ③ したがって,当業者はデータ収集を開始する「(ブレーキ信号の)所定の閾値」がメモリカードに併せて記録されることを当然に理解する。 ④ よって,メモリカードには「挙動条件」が記録されている。 しかし,「データ収集時における指示」は,既に(どこかに)設定されている運行状態データのサンプリング周期等,収集されるデータの属性についての指示をメモリカードを通じて事後的に変更するだけ であり,これらのデータの収集を開始するか否かについての指示ではないので,この「データ収集時におけ 期等,収集されるデータの属性についての指示をメモリカードを通じて事後的に変更するだけ であり,これらのデータの収集を開始するか否かについての指示ではないので,この「データ収集時における指示」の記述に触れた当業者が,そこからデータ収集を開始する「(ブレーキ信号の)所定の閾値」を想起する動機がない。 また,乙1の【0022】に「所定の閾値との判定結果」という文言が記載されていても,その判定がどこで行われるかが不明である以上,当業者が,表3に記載された指示等のほかに,データ収集を開始する「所定の閾値」がメモリカードに記録されると「当然に」理解するということはできない。むしろ,乙1の図1からは,移動体サブシステムの外で,事故(信号)の発生が判定され,事故と判定される場合には,事故信号として移動体サブシステムに入力されるように読める。現にエアバッグの作動信号の場合には,事故と判定するのが移動体サブシステムの外であるのは明らかである。乙1発明では「所定の閾値との判定結果」と「エアバッグの作動信号」を事故信号として用いる場合で何らの区別もされておらず,「所定の閾値との判定」に用いる閾値がメモリカードに記録されていると理解することはできない。 そもそも,事故の発生は客観的な現象であって(つまり,誰が見ても,誰が起こしても,事故は事故である。),車両や運転者によって事故(信号)と判定する基準が変わるものではないから,メモリカードに「(ブレーキ信号の)所定の閾値」を個別に記録する必然性がないし,ブレーキ操作と事故発生との因果関係も明確でない。被告は,本件発明を知った上でその内容を引用文献の記載上に無理に求めようとしているとしかいいようがない。 よって,被告の論理は破綻しており,乙1発明のメモリカードに「挙動 係も明確でない。被告は,本件発明を知った上でその内容を引用文献の記載上に無理に求めようとしているとしかいいようがない。 よって,被告の論理は破綻しており,乙1発明のメモリカードに「挙動条件」が記録されているとはいえないから,構成1eは,構成要件1Eと相違するというべきである。 e 乙1発明の構成2aは構成要件2Aと相違する。 被告は,「収集条件」は「挙動条件」と同義であると説明しているが,「挙動条件」と「収集条件」は同義ではなく,「収集条件」は,1つの閾値又は複数の閾値の組合せ(条件パターン),又はこれと所定時間等の組合せで設定される,測定データを収集するための条件であり,乙1発明のメモリカードに「(ブレーキ信号の)所定の閾値」が記録されているといえないのであるから,構成2aは構成要件2Aと相違するというべきである。 f 乙1発明の構成2bは構成要件2Bと相違する。 構成要件2Bは「前記設定された収集条件に適合する挙動に関わる情報が記録された前記記録媒体からその記録情報を読み出す処理」である。つまり,記録媒体に記録される情報は,構成要件2Aで設定した収集条件に適合する挙動に関わる情報である。 被告は,構成2bにおいて,メモリカードに記録するのは「制動信号を含む『運行状態データ』」と説明している。しかし,「運行状態データ」自体は,事故発生とは無関係に記録されるのであり,強いて事故発生と関連付けるのであれば,事故発生前後はそのサンプリング周期が短くなることであるが,サンプリング周期が「収集条件」でないことは被告も認識していることなので,「条件に適合する挙動」あるいは「条件に適合する挙動に関わる情報」なるものが存在しない。 よって,構成2bは,構成要件2Bと相違すると 「収集条件」でないことは被告も認識していることなので,「条件に適合する挙動」あるいは「条件に適合する挙動に関わる情報」なるものが存在しない。 よって,構成2bは,構成要件2Bと相違するというべきである。 g 乙1発明の構成2cは,構成要件2Cと相違する。 構成要件2Cは,構成要件2Bにおいて記録媒体から読み出された情報,すなわち,構成要件2Aにおいて設定された収集条件に適合する挙動に関わる情報から移動体の操作傾向を解析する処理,であることを内容とする。 この処理に対する被告主張の根拠は,乙1の【0038】の記載のようであるが,同【0038】には,「……運転結果の解析等に対して非常に有効であるといえる。」と記載されているだけで,どのような情報を基に,どのような目的で,どのような処理を行うかについて記載されているわけではない。 同【0038】の該当記載は,字義から判断する限り,「タクシーの稼働状況管理」はタクシーが稼働しているかどうかの管理,「宅配便等の効率的配送ルートの管理」は配送ルートの管理,「長距離トラックの労務管理」は乗車時間の管理,「アクシデント発生時のフライトレコーダ的使用」はドライブレコーダ機能の一用途,「レンタカーの使われ方(速度,走行位置等)の管理」は顧客が過去に走行した速度等の記録,「自動車教習所での運転結果の解析も教習所において過去に走行した速度等の記録であるから,いずれも「操作傾向を解析する処理」とはいえない。 これらは,事故発生の有無に関わらず記録されているタコグラフの運行結果の解析のことをいうにすぎず,そうすると,「収集条件に適合する挙動に関わる情報から移動体の操作傾向を解析する処理」ということはできない。 よって,構成2cは,構成 いるタコグラフの運行結果の解析のことをいうにすぎず,そうすると,「収集条件に適合する挙動に関わる情報から移動体の操作傾向を解析する処理」ということはできない。 よって,構成2cは,構成要件2Cと相違するというべきである。 h 以上のとおり,本件発明は,いずれも乙1発明と同一ではなく,特許法29条1項3号の規定に違反していないから,被告主張には理由がない。 (ウ) 進歩性欠如(特許法29条2項違反)に対しa 本件発明と乙1発明との一致点及び相違点被告は,本件発明と乙1発明との相違点は,乙1発明の構成1eが本件発明1の構成要件1Eを備えない点,及び,乙1発明の構成2a が本件発明2の構成要件2Aを備えない点のみであると認識しているようである。 しかし,本件発明1と乙1発明とが一致するのは,移動体や運転者の識別情報によって分類されたカード状記録媒体に,その移動体の挙動(動態)に関わる情報が記録されるデータレコーダである点のみであり,その余は相違する。 また,本件発明2と乙1発明とが一致するのは,記録媒体に記録されたデジタル情報を読み取ったコンピュータ装置が,①移動体の挙動(動態)に関わる情報が記録されたカード状記録媒体から,その記録情報を読み出す処理,②読み出した情報の解析を行う処理を実行する点のみであり,その余は相違する。 b 相違点についての検討(a) 本件発明1と乙1発明の相違点① 構成要件1A:乙1発明が本件発明1の「移動体の挙動を検出するセンサ部」を備えるとはいえない点構成要件1Aの技術的意義は,データレコーダが,移動体に配備されているセンサとは別にセンサ部を備えることにより,それを搭載する移動体を選ばないことにある。移動体が車両の場合,デ い点構成要件1Aの技術的意義は,データレコーダが,移動体に配備されているセンサとは別にセンサ部を備えることにより,それを搭載する移動体を選ばないことにある。移動体が車両の場合,データレコーダは,商用車のみならず,一般車両にも搭載が可能である(本件明細書【0004】参照)。 乙1発明はデータ収集装置についての発明であるが,その実体はタコグラフである。タコグラフ(Tachograph)は,「道路運送車両法に基づく道路運送車両の保安基準」第48条の2第1項に規定された「運行記録計」であり,大型トラック等の一定の商用車にその装着とその記録結果の保管が義務づけられる装置である。その構成や精度等も上記保安基準の細目を定める告 示で定める技術基準に適合するものでなければならないとされている(同条第2項)。同技術基準には,車両の構造や部品類(センサを含む)についても詳細に規定されている。 したがって,当業者には,既に上記技術基準を満たした精度を持つ車両設置のセンサに代えて,独自にブレーキ動作などの挙動を検出するセンサ部を用意する動機はないというべきである。現に,乙1には,運行状態データは,データ収集装置ではなく,車両(移動体)の各所に取り付けられたセンサで検出されることが明記されている(乙1【0009】)。 ② 構成要件1B:乙1発明が,挙動条件に従って特定挙動の発生の有無を判定しているかどうかが不明である点本件発明の技術的意義は,1つには運転者の操作傾向を把握して,事故等の発生を未然に防止する情報を生成することにあり,事故が起きた際の事故信号の入力を契機として,運行データのサンプリング周期を変える乙1発明とはその技術的意義が全く異なる。 したがって,乙1発明に の発生を未然に防止する情報を生成することにあり,事故が起きた際の事故信号の入力を契機として,運行データのサンプリング周期を変える乙1発明とはその技術的意義が全く異なる。 したがって,乙1発明において事故信号の入力に代えて,事故が起きていない時点における1つの閾値又は複数の閾値の組合せ(条件パターン)を契機として運行データの記録を開始する構成を採用する動機がない。 また,構成要件1Bは,構成要件1Cにいうデータレコーダの記録手段が行う機能動作の一部として規定されている。 乙1発明は,事故信号の入力を契機に,事故発生の有無に関わらず記録されている運行状態データを高サンプリング周期でサンプリングされたものにする発明なので,事故信号さえ入力されれば,所期の目的を達成する。乙1の【図1】によれば,事故信号 は,車両側からデータロギング部5に入力される。 被告主張の根拠である乙1の【0022】には,この車両側からデータロギング部5に入力される事故信号として,エアバッグの作動信号のほか,加速度信号とエンジンの回転数やブレーキ信号等を所定の閾値と比較した結果等を用いることができる旨が記載されているにすぎない。仮に被告説明のように,構成要件1Bの「特定挙動」を「事故(信号)」,構成要件1Bの「挙動条件」を「ブレーキ信号等を『事故(信号)』と判定するための『(ブレーキ信号の)所定の閾値』」と解し得たとしても,そのように判定するのは車両側であって,データ収集装置1fではない。少なくともデータ処理装置1fには,車両側に代わって「事故(信号)」と判定しなければならない理由がない。 よって,乙1に接した当業者が,乙1発明に基づいて構成要件1Bに想到することは困難である。 ③ 構成 は,車両側に代わって「事故(信号)」と判定しなければならない理由がない。 よって,乙1に接した当業者が,乙1発明に基づいて構成要件1Bに想到することは困難である。 ③ 構成要件1C:特定挙動の発生に応じて当該移動体の特定挙動に関わる情報を記録するかどうかが不明な点通常,移動体に特徴的な挙動,例えば急発進のときの動態が生じるのは,運転者によって無理なアクセル操作等がなされたためであるから,構成要件1Cの技術的意義は,データレコーダを搭載した移動体のアクセル又はブレーキ操作,ハンドルの操作等の運転操作の傾向の解析が可能となるように,移動体の特定挙動に関わる情報を記録手段に記録することにある。 これは,従来のデータレコーダが,事故等が発生した場合の事後的解析用であったこと(本件明細書【0004】),運転者による操作傾向を把握して事故等の発生を未然に防止するための情報を生成するという視点がなかったこと(同【0006】)に対 応する解決手段である。 本要件では,移動体の挙動のうち,挙動条件に従う特定挙動に注目すればよいので,特定挙動の発生に応じて当該移動体の特定挙動に関わる情報を記録する。これは,従来多大な記録領域を確保しておく必要があったという問題点(同【0005】)に対応する解決手段である。 他方,乙1発明は,通常時には第2の周期で収集した運行状態データを外部メモリ等に記録し,事故発生時には第2の周期よりも速い第1の周期で収集した運行状態データを記録する。事故発生後は通常時よりも速い第1の周期で記録される。これは,車両の衝突事故等の発生前後における高サンプリングレートな詳細データを収集できないという問題を解決するためである(乙1【0005】)。 事故発生後は通常時よりも速い第1の周期で記録される。これは,車両の衝突事故等の発生前後における高サンプリングレートな詳細データを収集できないという問題を解決するためである(乙1【0005】)。つまり,事故が発生した場合の事後的解析用である。 事故発生時は通常時よりも詳細なデータを収集することになることから,多大な記録領域を必要とする。 このように,乙1発明と本件発明1とは,課題解決の思考が逆行するので,乙1発明から構成要件1Cを導くことはできないというべきである。 乙1発明は,正に本件発明が従来例として挙げている事後的解析用の装置である。 さらに,記憶領域を節約するという課題に対する解決手段として採用されている方法も,本件発明1においては,特定挙動の発生に応じて記録を行うというものであるが,乙1発明では事故発生の有無に関わらず記録されている走行状態データのサンプリングレートを変化させるというものであり,両方法は,技術的に相容れないものである。 よって,乙1に接した当業者が,乙1発明に基づいて構成要件1Cに想到することは困難である。 ④ 構成要件1E:カード状記録媒体に前記挙動条件が記録されているかどうか不明な点構成要件1Eの技術的意義は,構成要件1Bにいう「挙動条件」を,分類ごとに作成されたカード状記録媒体に記録しておくことで,操作傾向を解析したい特定挙動に関わる情報が,分類ごとにそのカード状記録媒体に記録されるようにすることにある。 被告は,構成要件1Eの「前記挙動条件」を,乙1発明における「データ収集時における指示」あるいは「(ブレーキ信号の)所定の閾値」に相当すると解釈し,乙1発明では「(ブレーキ信号の)所定の閾値」が「カード状記 成要件1Eの「前記挙動条件」を,乙1発明における「データ収集時における指示」あるいは「(ブレーキ信号の)所定の閾値」に相当すると解釈し,乙1発明では「(ブレーキ信号の)所定の閾値」が「カード状記録媒体」の一例であるメモリカードに記録されるので構成要件1Eと同一である旨を主張しているようである。この主張に理由がないことは前記のとおりであるが,仮に被告主張のとおり,所定の閾値がメモリカードに記録されることがあり得たとしても,事故発生は客観的な現象であって,移動体ごと又は運転者ごとに事故判定の基準が変わるものではないから,メモリカードに「(ブレーキ信号の)所定の閾値」を個別に記録しておく必然性がなく,乙1に接した当業者がメモリカードに「所定の閾値」を個別に記録するという構成に至る動機がない。 よって,乙1に接した当業者が,乙1発明に基づいて構成要件1Eに想到することは困難である。 (b) 本件発明2と乙1発明の相違点① 構成要件2A:記録媒体に収集条件が設定されているかどうか不明である点 本件発明2において「収集条件」を設定する目的は,移動体に特徴的な挙動が生じるときは,特徴的な運転操作がなされるのが一般的であるから,データレコーダを搭載した移動体のアクセル又はブレーキ操作,ハンドルの操作等の運転操作の傾向を解析が可能となるように,移動体の特定挙動に関わる情報を収集できるようにすることにある。 被告説明によれば,「特定挙動」は「事故(発生)」であるが,乙1発明の目的は,車両の事故発生前後における高サンプリングレートな詳細データを収集できるようにすることであり(乙1【0005】),メモリカードに,事故に関わる情報を収集するための条件をあえて設定しなくても,事故信 車両の事故発生前後における高サンプリングレートな詳細データを収集できるようにすることであり(乙1【0005】),メモリカードに,事故に関わる情報を収集するための条件をあえて設定しなくても,事故信号が車両側からデータ処理装置に入力されさえすれば,上記の目的が達成されるのであるから,当業者が,あえて上記条件をメモリカードに設定する必然性がない。 よって,乙1に接した当業者が,乙1発明に基づいて構成要件2Aに想到することは困難である。 ② 構成要件2B:設定された収集条件に適合する挙動に関わる情報が記録媒体に記録されているかどうかが不明な点「収集条件に適合する挙動に関わる情報」は,収集したい特定挙動に関わる情報,例えば車両において特定挙動が発生したときのその前後の測定データ等(本件明細書【0049】)である。 被告説明によれば「特定挙動」は「事故(発生)」であるから,乙1発明においてメモリカードに記録されるのは,通常時の第2周期よりも速い第1周期でサンプリングされた事故発生に関わる運行状態データということになるが,第2周期から第1周期に変化するきっかけ(トリガ)は事故信号の入力であり,事故信号は あらかじめメモリカードに設定する「収集条件」ではないし,乙1の表3に示されている「データ収集における指示」も,記録される運行状態データの属性に関する指示であり,運行状態データを記録するか否かの指示ではないし,サンプリング周期を変更するだけなので,これも「収集条件」ではない。 したがって,事故発生に関わる運行状態データを「収集条件に適合する挙動」ということはできない。 よって,乙1に接した当業者が,乙1発明に基づいて構成要件2Bに想到することは困難である。 したがって,事故発生に関わる運行状態データを「収集条件に適合する挙動」ということはできない。 よって,乙1に接した当業者が,乙1発明に基づいて構成要件2Bに想到することは困難である。 ③ 構成要件2C:固定局サブシステムで行う処理が移動体の操作傾向を解析する処理かどうかが不明な点構成要件2Cにいう「操作傾向を解析する処理」は,例えばアクセル操作,ブレーキ操作,ハンドル操作のような運転操作の傾向を視覚的に把握できるようにするために,グラフ作成や定量化を行う情報処理であるが,この情報処理の基礎となる情報は,構成要件2Bにおいて記録媒体から読み出された「収集条件に適合する挙動に関わる情報」である。 乙1発明のメモリカードには「収集条件」が設定されず,ゆえに「収集条件に適合する挙動に関わる情報」が存在しないことは上述したとおりである。したがって,固定局サブシステムで行う処理を「操作傾向を解析する処理」ということはできない。 これは,乙1発明のデータ収集装置の実体がタコグラフであることにも起因する。タコグラフは,特定挙動に関わる情報だけを抽出して,これを必要な分だけ収集する装置ではないから,この装置においてメモリカードに記録された情報を固定局サブシステムで読み出しても,読み出した情報を基に行う処理は,本要件に いう「操作傾向を解析する処理」ということはできない。 また,前述のとおり,乙1の【0038】に記載された各管理,解析は,事故発生の有無に関わらず記録された運行状態データを解析することでなされるものであり,収集条件に適合する挙動に関わる情報に基づき行われるものではない。 さらに,事故の発生を契機としていることから,運転者の操作傾向を把握して,事 運行状態データを解析することでなされるものであり,収集条件に適合する挙動に関わる情報に基づき行われるものではない。 さらに,事故の発生を契機としていることから,運転者の操作傾向を把握して,事故等の発生を未然に防止する情報を生成するという本件発明2の構成に相当することはあり得ないことである。 よって,乙1に接した当業者が,乙1発明に基づいて構成要件2Cに想到することは困難である。 被告は,本件発明の内容を知った上で,その課題及びその解決手段の内容を事後分析的に乙1の記載に求めすぎた結果,実際には乙1には記載されていない要素を取り込んで乙1発明を認定してしまったものといわざるを得ない。 c 以上のとおり,本件発明は,いずれも乙1~乙3発明に基づいて容易になし得た発明ではなく,特許法29条2項の規定に違反していないから,被告主張は理由がない。 イ無効理由2~4について(ア) 被告は,平成23年7月12日付け準備書面(4)をもって無効理由2~4を追加主張するに至ったが,同追加主張は,被告が自ら提起した無効審判請求事件の審理を終えて,今正に審決が出るという段階において,後出し的に提出された主張である。被告は,自ら無効審判を請求した以上,全ての無効理由について検討し,無効審判請求段階でその全ての無効理由を主張し得たにもかかわらず,その審理を終え,被告に不利な審決が出ることを予期して,本件侵害訴訟において新たな無効理由を追加したものである。 このような無効理由の追加は,侵害訴訟と審決取消訴訟におけるいわゆるダブルトラック問題を引き起こすものであり,被告は,無効審判請求(どんなに遅くともその審理終結)のときまでに提出すべきであったにもかかわらず,故意又は重大な過失によりその提出を行 訟におけるいわゆるダブルトラック問題を引き起こすものであり,被告は,無効審判請求(どんなに遅くともその審理終結)のときまでに提出すべきであったにもかかわらず,故意又は重大な過失によりその提出を行わなかったものであり,いたずらに審理を遅延,混乱させるものであるから,時機に後れた攻撃防御方法(民事訴訟法157条1項)として却下されるべきである。 (イ) 無効理由2についてa 課題の相違乙2発明の課題,目的は,正しくは,運転者の運転状況を把握するのに有効な,加減速の履歴情報を含む車両運行データを収集する際に,加速及び減速ランクデータによりランク分けされたデータを一定時間ごとに集計する従来装置では一般道路を多く走行した場合には高ランクの加速の頻度が多くなり,高速道路を多く走行した場合には低ランクの加速の頻度が多くなるという問題点を解決し,道路状況に左右されないで,加減速の履歴情報を含む車両運行データを収集できるようにすることである(乙2の【0002】,【0005】,【0006】)。 乙2には,このような課題を解決するための技術事項しか開示されていない。 一方,本件発明の課題は,従来のデータレコーダが,事故等の発生原因を究明するためのもので(本件明細書【0004】),多大な記録領域を要し(同【0005】),運転者による(車両の)操作傾向を把握して事故等の発生を未然に防止する情報を生成するという観点がなかった(同【0006】)という問題点を解決し,移動体,例えば「車両の操作傾向」を適切に把握できるようにすることであるから(同【0007】),道路状況に左右されないで,加減速の履歴情報 を含む車両運行データを収集できるようにするという乙2発明の課題とは相違している。 b 構成の相違乙2発明は 【0007】),道路状況に左右されないで,加減速の履歴情報 を含む車両運行データを収集できるようにするという乙2発明の課題とは相違している。 b 構成の相違乙2発明は,道路状況に左右されないようにするために,従来装置のような一定時間ごとではなく,停車ごと,あるいは,最大ランク又はこれに近いランクの急減速や減速の開始から車速の連続した所定値の低下の検出ごとに,それまでの1サイクルの最大加減速ランクをインクリメントすることにより車両の加速及び減速の履歴情報を収集する点に主眼のある発明なので,少なくとも以下の構成が本件発明のものと相違する。 (a) 加減速ランクデータ乙2発明の加減速ランクデータは,多様に変化する加速度を,加速で8通り,減速で8通りのランクのいずれかのランクに区分けして,ランクごとの加速度の発生回数を計数できるようにするために参照されるものであって(乙2【0002】,【0013】),いわば電気信号のアナログ信号をデジタル信号に変換する(置き換える)際の単位時間幅ごとの代表レベル値あるいは成績を例えば5段階評価するために定めた成績評価ランク(指標)と同じようなものである。 つまり,乙2発明における加減速ランクデータは,検出された加減速データが移動体の特徴的な挙動を示しているか否かにかかわらず,検出される加減速データをランク1~8に変換し,振り分けるための指標にすぎず,加減速ランクデータにより,特定挙動の有無を判定しているものでもない。 例えば,乙2の【図4】の例では,1.00~1.25m/秒2の範囲の加速であれば「加速ランク1」,3.00~3.50m/ 秒2の範囲の加速であれば「加速ランク7」,4.00m/秒2以上の加速であれば「加速ランク8」,1.00~1 .25m/秒2の範囲の加速であれば「加速ランク1」,3.00~3.50m/ 秒2の範囲の加速であれば「加速ランク7」,4.00m/秒2以上の加速であれば「加速ランク8」,1.00~1.25m/秒2の範囲の減速であれば「減速ランク1」,3.50~4.00m/秒2の範囲の減速であれば「減速ランク7」,4.00m/秒2以上の減速であれば「減速ランク8」に変換する(置き換える)ために参照されるデータが加減速ランクデータである。車両が停止していない限り,検出された加速度は,加減速ランクデータに基づいてランク分けされたデータとして出力される。つまり,ランク分けされたデータは,加速度の実数([m/秒2])から加速度ランク(単位なし)へとディメンジョンが変換されているものの,運行データそのものである。 このように,乙2発明で用いる加減速ランクデータは,車両走行時に検出された加減速データのディメンジョンを変換する(具体的な数値をランクに置き換える)際に参照される単なる指標なのであって,注目する反応を引き起こすのに必要な最小値である閾値(広辞苑第6版参照)とは,用途,性質,効用が明らかに区別されるものである。 (b) 「特定挙動」,「特定挙動に関わる情報」前記のとおり,加減速ランクデータは「閾値」ではないから,乙2には「特定挙動」及び「特定挙動に関わる情報」は開示されていない。 また,乙2発明では,1サイクルにおける最大加速又は最大減速のランクに対応するデータを計数するが,運転の1サイクルにおける最大加速又は最大減速のランクに対応するデータはランク1やランク2程度のものもあり得るところ,このようなランクの緩やかな加減速を,危険挙動のような「特徴的な」挙動(=「特定挙動」) ということはできない。前記 ンクに対応するデータはランク1やランク2程度のものもあり得るところ,このようなランクの緩やかな加減速を,危険挙動のような「特徴的な」挙動(=「特定挙動」) ということはできない。前記のとおり,乙2発明における加減速ランクデータは,移動体の特徴的な挙動の発生の有無にかかわらず,検出された加減速データを,所定のランクに変換し,振り分けるための指標にすぎないのである。 よって,いずれにしても乙2には,「特定挙動」,「特定挙動に関わる情報」は開示されていない。 (c) 「挙動条件」,「収集条件」前記のとおり,乙2には「特定挙動」,「特定挙動に関わる情報」が開示されていないのであるから,「挙動を特定挙動と判定するための挙動条件」,「特定挙動に関わる情報を収集するための収集条件」が開示されているということはできない。 (d) 「操作傾向の解析」前記のとおり,乙2発明における加減速ランクは,移動体の特徴的な挙動の発生の有無に着目したものではなく,また,そのような移動体の特徴的な挙動を発生させた運転者の特徴的な操作に着目するものではなく,検出された加減速データを所定の加減速ランクデータに応じて変換し振り分けるものである。 したがって,乙2発明には,「移動体の操作傾向の解析が可能となるように記録する」,「操作傾向を解析する処理」という点が,開示も示唆もされていない。 c 作用効果の相違本件発明と乙2発明では,その課題及び構成が相違する以上,当然のことであるが,乙2発明では,特徴的な挙動(特定挙動)の発生を判定するとともに,発生した特定挙動に関わる情報を収集するための条件を運転者ごとのカード状記録媒体に記録して,この条件を運転能力等に応じて変更可能とし,これにより当該運転者の運転評価や操作 判定するとともに,発生した特定挙動に関わる情報を収集するための条件を運転者ごとのカード状記録媒体に記録して,この条件を運転能力等に応じて変更可能とし,これにより当該運転者の運転評価や操作 傾向の解析を可能にするという本件発明の作用効果を奏することはできない。 d 以上のとおり,乙2発明は,本件発明と課題,構成,作用効果が相違しており,特に,乙2には,本件発明の「特定挙動」,「特定挙動に関わる情報」,「挙動条件」,「収集条件」,「移動体の操作傾向が解析可能となるように」,「操作傾向を解析する処理」が開示されていないから,少なくとも本件発明1の構成要件1B,1C,1E,本件発明2の2A,2B,2Cを充足せず,上記要素以外の構成要件を考慮するまでもなく,本件発明と同一ということはできない。 よって,本件発明は特許法29条1項3号に違反していないから,被告主張は理由がない。 (ウ) 無効理由3-1についてa 課題の相違本件発明は,飛行機のブラックボックスのような事故復元に有用なデータの記録を安価で小型化した装置で達成することを課題,目的とする発明ではないので,当該装置において操作状態のデータをも記録しようとすることをもって,本件発明の課題と乙3発明の課題とが同じということはできない。 b 構成の相違(a) 本件発明の構成要件1E,2A乙3の【0047】に記載された「警告しきい値」は「特定挙動に関わる情報」を記録するために設定されるものではない(記録のトリガですらない)から,それをRAMカード20に組み込むことは,本件発明の課題の解決になんら寄与するものではない。つまり,同【0047】の記載は,本件発明の課題を解決するための構成を示唆するものではなく,このような「警告しきい AMカード20に組み込むことは,本件発明の課題の解決になんら寄与するものではない。つまり,同【0047】の記載は,本件発明の課題を解決するための構成を示唆するものではなく,このような「警告しきい値」をRAMカー ド20に組み込むという記載から,挙動条件をRAMカード20に記録するということが示唆されているということはできない。 しかも,同【0035】に「所定のしきい値」を越えたときにトリガされる例として挙げられている「エンジン温度など」は同【0010】に記載された「自動車メンテナンス情報」であり,「自動車メンテナンス情報」は同【0050】によればドライバーの身元に関係のない情報であり,これをドライバーの身元と関係のある個人用のRAMカード20に記録する理由,必要性は全くない。 そうすると,乙3の【0047】の記載に接した当業者が,これら記録のトリガとなる「所定のしきい値」をRAMカード20に記録されていると認識する動機がない。 これは,乙3の【0035】,【0036】に,記録がトリガされる別の例として挙げられている「事故発生などの異常事態」,あるいは「突然の加速,減速,突然のブレーキ操作,エアバッグの作動など,事故を示し得るような異常状態」についても同様である。 被告は,これらの記述に着目して,乙3には「特定挙動」,「特定挙動に関わる情報」が開示されていると認識したものと思われるが,被告の自認するとおり,この場合の記録の条件を個人用のRAMカード20に記録しておく旨の明示的な記述は,乙3には一切存在しない。 また,上記「異常事態」や「異常状態」の記録は,乙3発明の課題における「飛行機のブラックボックスのような事故復元に有用なデータの記録」に相当し,事故発生や事故を示し得るような異常状態は客観的な事象(つまり 記「異常事態」や「異常状態」の記録は,乙3発明の課題における「飛行機のブラックボックスのような事故復元に有用なデータの記録」に相当し,事故発生や事故を示し得るような異常状態は客観的な事象(つまり,誰が運転しても,誰の目から見ても,事故は事故であり,異常状態は異常状態)であるから,上記記録の条件を個人用のRAMカード20に個別に記録して,これを運転能 力等に応じて変更可能にする理由,必要性がない。 そうすると,乙3の【0047】の記載に接した当業者が,これら記録のトリガとなる「異常状態」と認識するため条件を,RAMカード20に記録されていると認識する動機がない。 このように,「警告しきい値」をRAMカード20に組み込むことは本件発明の課題解決のための構成を示唆するものではなく,このような「警告しきい値」がRAMカード20に組み込まれているという【0047】の記載から,当業者が「所定のしきい値」や「事故発生などの異常事態」,「事故を示し得るような異常状態」と判定するための条件がドライバーの身元と関係のある個人用のRAMカード20に記録されていると認識することはできないし,そのように認識する動機もない。 したがって,乙3の【0035】,【0036】,【0047】の記載を根拠として乙3に本件発明の構成要件1Eと2Aと同じ構成が開示されているとの被告主張は,論理の著しい飛躍ないし恣意に基づくものであり,失当である。 乙3には,カード状記録媒体に「挙動条件」又は「収集条件」が記録される点については記載も示唆もされていないのであるから,本件発明の構成要件1E及び2Aに対応する事項が開示されているということはできない。 (b) 構成要件1B,2Bについて乙3発明にいう「所定のしきい値」は,「自動車の操作値あるい ら,本件発明の構成要件1E及び2Aに対応する事項が開示されているということはできない。 (b) 構成要件1B,2Bについて乙3発明にいう「所定のしきい値」は,「自動車の操作値あるいは性能値」,例えば「エンジン温度など」のような「自動車メンテナンス情報」の大きさを判定するものであって(乙3【0035】),移動体の特徴的な挙動の発生の有無に着目したものではなく,車両の「挙動を特定挙動と判定」したり,「特定挙動に関わる情報を収 集するための」ものではないので,「挙動条件」にも「収集条件」にも相当しない。 したがって,乙3には,本件発明の構成要件1B,2Bに対応する事項は開示されていないことになる。 (c) 「操作傾向」の解析乙3発明における「所定のしきい値」は,移動体の特徴的な挙動の発生の有無に着目したものではなく,また,そのような移動体の特徴的な挙動を発生させた運転者の特徴的な操作に着目するものでもない。 したがって,乙3発明には,「移動体の操作傾向の解析が可能となるように記録する」,「操作傾向を解析する処理」という点が開示も,示唆もされていない。 c 作用効果の相違本件発明のものと課題,構成が相違する以上,当然のことであるが,乙3発明では,特徴的な挙動(特定挙動)の発生を判定するとともに発生した特定挙動に関わる情報を収集するための条件を運転者ごとのカード状記録媒体に記録して,この条件を運転能力等に応じて変更可能とし,これにより当該運転者の運転評価や操作傾向の解析を可能にするという本件発明の作用効果を奏することはできない。 d 以上のとおり,乙3発明と本件発明とは,課題,構成,作用効果が相違しており,特に,乙3には少なくとも本件発明1の構成要件1B,1E,本件発明2の構成要 明の作用効果を奏することはできない。 d 以上のとおり,乙3発明と本件発明とは,課題,構成,作用効果が相違しており,特に,乙3には少なくとも本件発明1の構成要件1B,1E,本件発明2の構成要件2A,2B,2Cに対応する事項が開示されていないのであるから,他の構成要件を考慮するまでもなく,乙3発明と本件発明とが同一でないことは明らかである。 よって,本件発明は特許法29条1項3号に違反していないから,被告主張は理由がない。 (エ) 無効理由3-2についてa 相違点の認定本件発明の各構成要件は課題を解決するために有機的に関連するものであるから,単純に構成要件1E,2Aのみが相違するということはない。既に述べたとおり,乙3発明は,少なくとも本件発明の構成要件1B,1E,2A,2B,2Cを備えていない。 b 容易想到の論理(乙2発明の乙3発明への適用)被告による容易想到の論理は,以下のものと思われる。 ① 乙2発明の「加減速ランクデータ」は本件発明の「挙動条件」,「収集条件」であり,乙2には「加減速ランクデータ」を「カード状記録媒体」,「記録媒体」に記録し,設定する処理が開示されている。 ② 乙2発明,乙3発明,及び本件発明は,技術分野,解決課題を共通する発明であるから相互に関連がある。 ③ 乙2の【0048】の記載は,データレコーダのメモリに記録されていた構成を,「カード状記録媒体」,「記録媒体」に記録する構成に置換することを示唆している(置換することに支障もない)。 ④ したがって,乙3発明に乙2発明を適用し,乙3発明の「所定のしきい値」を「カード状記録媒体」,「記録媒体」に記録する構成に置換することは,当業者が容易に想到できたものである。 ⑤ 置換の結果,運転者ごとに異なる「 発明に乙2発明を適用し,乙3発明の「所定のしきい値」を「カード状記録媒体」,「記録媒体」に記録する構成に置換することは,当業者が容易に想到できたものである。 ⑤ 置換の結果,運転者ごとに異なる「しきい値」を設定,記録することで,その変更,修正も運転者ごとに可能となる効果,さらには運転者ごとの操作傾向の解析を可能とする効果は,当業者が予測不能の顕著な効果とは到底いえず,当業者が容易に予測できる効果である。 しかし,乙2発明の「加減速ランクデータ」は,上述したとおり「閾 値」ではなく,それ故に「挙動条件」,「収集条件」ということもできないから上記①は誤りである。既に述べたとおり,乙2及び乙3のいずれにも,構成要件1E(「特定挙動」が開示されていない以上,当然に「特定挙動と判定するための挙動条件」の開示もない),2A(「移動体の特定挙動に関わる情報」の開示がない)の開示がない。 また,乙2発明及び乙3発明の課題は,上述したとおり共通しないので,上記②も誤りである。 乙2の【0048】は,「加減速ランクデータ」をICメモリカードではなく,ROM中にあらかじめ記憶させておいてもよいことを記載した箇所である。 つまり,データレコーダのメモリに記録されていた構成を「カード状記録媒体」に記録する構成に置換することが一般化されるようには記載されていない。また,構成の置換の示唆は,置換の試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく,置換したはずであるという示唆である必要があるので,③も誤りである。上記①~③が誤っている以上,④も誤りである。 また,被告は⑤のようにいえる根拠を何ら示しておらず,いわゆる後知恵以外の何ものでもないので,主張自体失当である。 c よって,乙3発明に基づく容易想到性についての被 以上,④も誤りである。 また,被告は⑤のようにいえる根拠を何ら示しておらず,いわゆる後知恵以外の何ものでもないので,主張自体失当である。 c よって,乙3発明に基づく容易想到性についての被告の主張は,乙2発明及び乙3発明の誤った認識ないし恣意に基づいていることが明らかであり,本件発明は特許法29条2項に違反していないから,被告主張は理由がない。 (オ) 無効理由4についてa 乙6発明の課題急発進,急制動の有無ないしその回数等の管理を,従来のようにドライバーの自覚に任せるのではなく,あらかじめ設定された基準値を 基に自動判定することで客観的に評価できるシステムとすることが,乙6に開示された発明の課題であり,乙6には,そのような課題を解決するための技術的事項しか開示がない。 一方,乙2発明の課題は,運転者の運転状況を把握するのに有効な,加減速の履歴情報を含む車両運行データを収集する際に,加速及び減速ランクデータによりランク分けされたデータを一定時間ごとに集計する従来装置では一般道路を多く走行した場合には高ランクの加速の頻度が多くなり,高速道路を多く走行した場合には低ランクの加速の頻度が多くなるという問題点を解決し,道路状況に左右されないで,加減速の履歴情報を含む車両運行データを収集できるようにすることであり(乙2【0002】,【0005】,【0006】),乙6のようにあらかじめ定めた基準値を基に自動判定することは,乙2発明が解決しようとする問題の背景として挙げられていることである。つまり「加減速に係る運転履歴から運転者の運転状況(操作傾向)を把握すること」自体は,乙2発明及び乙6発明が解決しようとする問題の背景にすぎないのであって,課題,目的ではない。 同様に,本件発明は,確かに「加減 係る運転履歴から運転者の運転状況(操作傾向)を把握すること」自体は,乙2発明及び乙6発明が解決しようとする問題の背景にすぎないのであって,課題,目的ではない。 同様に,本件発明は,確かに「加減速に係る運転履歴を対象とする」が,そのことだけをもって,上記乙6発明の課題,目的が「本件発明と共通する。」ということはできない。 b 乙6発明の構成乙6発明には,基準値をICカードに設定するという観点がない。 乙6発明の課題は,急発進,急制動の有無ないしその回数等の管理を,従来のようにドライバーの自覚に任せるのではなく,あらかじめ設定された基準値を基に自動判定することで客観的に評価できるシステムとすることである。したがって,基準値は複数のドライバーに共通のものであり,本件発明における挙動条件又は収集条件とは全く異なる ものである。 このような基準値を各ドライバー用のICカードに個別に設定し,これを運転能力等に応じて変更できるようにすることは,乙6発明の課題解決にならないから,採り得ない。 また,乙6発明において使用するICカードは,運転データ記録装置2の運転データを記録して管理データ処理装置3へ伝達(乙6の表現では「交換」)するために用いられるにすぎず,運転データ記録装置2から管理データ処理装置3へ運転データを伝達するデータ通信部10bと同じ役割を果たすものである(乙6の第5図)。 基準値は,乙6発明の課題を解決するために不可欠となるデータであるから,仮に基準値をICカードに設定するという観点が乙6発明に存在するならば,運転データの伝達媒体をICカードに代えてデータ通信部10bを用いる際の基準値の設定の仕方について何らかの記載が乙6に存在してしかるべきところ,乙6にはそのような記載は一切存在しない。 よって,仮 転データの伝達媒体をICカードに代えてデータ通信部10bを用いる際の基準値の設定の仕方について何らかの記載が乙6に存在してしかるべきところ,乙6にはそのような記載は一切存在しない。 よって,仮に基準値が「挙動条件」又は「収集条件」に相当するとしても,乙6発明には,基準値をICカードに設定するという記載も示唆もないので,どのようなICカード関連技術を乙6発明に適用しても,ICカードに「挙動条件」が記録されているという本件発明の構成要件1E,及び,移動体の特定挙動に関わる情報を収集するための「収集条件」をICカードに設定するという本件発明の構成要件2Aを想到することは困難である。 c 容易想到の論理(乙2発明の乙6発明への適用)被告による容易想到の論理は,以下のものと思われる。 ① 乙6発明は,カード状記録媒体に「挙動条件」が設定されている構成(構成要件1E),及び,「収集条件」を所定の記録媒体(カ ード状記録媒体)に設定する構成(構成要件2A)を備えない。 ② しかし,乙2には上記構成要件1E,2Aの構成が開示されていた。 ③ 乙2発明,乙6発明及び本件発明は,技術分野,解決課題を共通する発明である。 ④ したがって,乙6発明に乙2発明を適用して本件発明の構成要件1E,2Aに想到することは容易である。 しかしながら,乙2には,「特定挙動」,「特定挙動に関わる情報」が開示されておらず,それゆえにカード状記録媒体に「挙動条件」又は「収集条件」が設定されることの開示がなく,1E及び2Aの開示がないことは,前記のとおりである。よって,上記①は正しいが②は誤りである。 また,乙2発明,乙6発明及び本件発明の解決課題は共通しないから上記③も誤りであり,それゆえに,乙6発明に乙2発明を適用して本件発明の構成, りである。よって,上記①は正しいが②は誤りである。 また,乙2発明,乙6発明及び本件発明の解決課題は共通しないから上記③も誤りであり,それゆえに,乙6発明に乙2発明を適用して本件発明の構成,特に本件発明の構成要件1E,2Aを想起する動機がないから上記④も誤りである。 d よって,乙6発明に基づく容易想到性についての被告の主張は,乙6発明に対する被告の誤った認識ないし恣意に基づくことが明らかであり,本件発明は特許法29条2項に違反していないから,被告主張は理由がない。 (3) 作用効果の不奏功〔被告の主張〕原告は,「本件発明の技術的意義は,1つには運転者の操作傾向を把握して,事故等の発生を未然に防止する情報を生成することにあり,事故が起きた際の事故信号の入力を契機として,運航データのサンプリング周期を変える乙1発明とはその技術的意義が全く異なる」と主張する。 この点,被告は,本件発明も乙1発明も,事後的に運航データを解析する点で同一であると考えるが,仮に原告の主張を前提とすれば,被告製品は,本件発明とその技術的意義が異なり,作用効果を奏さないものとなる。 被告製品では,解析ツールで,「加速度」の履歴などが表示されるが,それによって解析されるのは,乙1発明の「アクシデント発生時のフライトレコーダ的使用」(乙1【0038】)と異なるところはないからである。 〔原告の主張〕事後的に運航データを解析する点が同じというだけで乙1発明と被告製品の技術的意義が同じといえないのは当然であり,原告が本件発明の技術的意義が乙1発明のものと異なると主張するのであれば被告製品のものとも異なると結論付ける被告の主張は,失当である。 被告機器では,トリガ判定閾値・事故判定閾値に適合する「加速度」等が,危険度に応じ 義が乙1発明のものと異なると主張するのであれば被告製品のものとも異なると結論付ける被告の主張は,失当である。 被告機器では,トリガ判定閾値・事故判定閾値に適合する「加速度」等が,危険度に応じて複数回(それぞれ最大30秒間)記録可能であり,この記録情報により,被告解析ツールで「操作傾向」の解析が可能になるのであるから(甲8の22~23頁,甲5の26~27頁),本件発明と同様の作用効果を奏することは,被告自身も認識できていることである。 よって,被告製品が本件発明の「作用効果を奏さない」との被告の主張は,事実に反することが明らかであり,失当である。 (4) 訂正を理由とする対抗主張〔原告の主張〕ア本件訂正発明は,乙2発明及び乙3発明と同一の発明ではないから,被告が主張する特許法29条1項3号違反の無効理由は,訂正により解消している。 また,本件訂正発明は,乙3発明に乙2発明の構成を適用することで,あるいは乙6発明に乙2発明の発明を適用することで,容易になし得た発明ではないから,被告が主張する特許法29条2項違反の無効理由は,訂 正により解消している。 そして,被告製品は,本件訂正発明の技術的範囲に属する。 イ特許法第104条の3第1項に対する対抗主張が認められる要件として,現に訂正審判の請求あるいは訂正請求を行ったことが必要か否かについてはなお争いのあるところではあるが,これを必要とする見解が多数である。これに対し,特許法126条2項より,訂正審判は,特許無効審判が特許庁に係属した時からその審決が確定するまでの間は,請求することができないとされ,この間は無効審判請求に対する訂正請求がなしうるにとどまる。しかも,訂正請求できる期間は,当該無効審判の請求に対する答弁書提出期間とされている(特許法134条の 間は,請求することができないとされ,この間は無効審判請求に対する訂正請求がなしうるにとどまる。しかも,訂正請求できる期間は,当該無効審判の請求に対する答弁書提出期間とされている(特許法134条の2第1項)。第1次無効審判の審理が終結し,審決が出され,この審決に対する審決取消訴訟が提起されている現状で第1次無効審判の口頭審理前において無効理由として主張されていない乙6に基づく無効理由を回避するために訂正することを原告に期待することは不可能である。しかるに,実質的に,原告において,乙6発明に基づく無効理由を回避するために,訂正請求を行うことができるのは,第2次無効審判請求書副本の送達日(平成23年8月19日)から答弁書提出期限(平成23年10月18日)までの期間のみである。 以上より,本件訂正請求に基づく対抗主張は,何ら時機に後れたものではない。 〔被告の主張〕原告の上記対抗主張は,民事訴訟法157条1項の時機に後れた攻撃防御方法であるから,却下されるべきである。 (5) 損害額〔原告の主張〕被告は,平成18年5月29日から現在までの間,少なくとも被告機器を各1万2000台,被告記録媒体を3600個譲渡した。 被告機器の平均単価は9万円,平均利益額は被告機器1台当たり1万8000円を下らない。 また,被告記録媒体の平均単価は26万円,平均利益額は25万9500円を下らない。 したがって,被告製品の製造,販売による原告の損害の額は15億8220万円を下らない(特許法102条2項)。 〔被告の主張〕争う。 第3 当裁判所の判断 1 技術的範囲の属否について(1) 被告機器1,2被告機器1,2が本件発明1の構成要件を充足することは,前記第2の2(6)アのとおりである。 (2) 被告機器3 第3 当裁判所の判断 1 技術的範囲の属否について(1) 被告機器1,2被告機器1,2が本件発明1の構成要件を充足することは,前記第2の2(6)アのとおりである。 (2) 被告機器3ア被告機器3が,構成要件1Cを除き,本件発明1の構成要件を充足することについては,前記第2の2(6)イのとおりである。 イ構成要件1Cの充足性(ア) 本件発明は,「車両や鉄道等の移動体の挙動を表す運行データの管理システムに係り,特に,運転者の操作傾向の解析に適したデータレコーダ及びこれを利用した運行管理システムに関する」(本件明細書【0001】)ものであるから,移動体とは,自動車等の車両を意味することが明らかである。また,挙動とは,一般に「立ち居ふるまい。人の動作や行為。しわざ。様子。挙止。」(広辞苑第5版)を意味するから,「特定挙動」とは,挙動のうち特定の挙動と判定されるもの,本件明細書の記載(【0030】,【図6】,【図7】)に即していえば,車両の特徴的な挙動,例えば危険挙動(急発進,交差点のブレーキ,旋回中の急 加速,急ハンドル,急ブレーキ等)の事実が発生したと認識するための一つの閾値又は複数の閾値の組合せ若しくは交差点旋回等の挙動パターンを意味するものと解される。さらに,本件発明の移動体の運行管理システムは,「所定の収集条件を満足した移動体の挙動を検出して該挙動が検出されたときはその挙動の発生前後にわたって前記移動体の挙動を所定の記録媒体に記録する手段を備えたデータレコーダ」(【0011】)を有するものであり,「この記録媒体は,好ましくは,移動体の識別情報,移動体の操作者の識別情報,移動体の挙動環境の少なくとも1つに従って分類される分類ごとに作成されたカード状記録媒体」(【0016】)であるから,「特定挙動に 録媒体は,好ましくは,移動体の識別情報,移動体の操作者の識別情報,移動体の挙動環境の少なくとも1つに従って分類される分類ごとに作成されたカード状記録媒体」(【0016】)であるから,「特定挙動に関する情報」とは,特定挙動を表すその発生前後の測定データを,「所定の記録媒体」とは,メモリーカードのようなカード状記録媒体をそれぞれ意味するものと解することができる。 以上から,構成要件1Cの「前記移動体の操作傾向の解析が可能となるように,前記特定挙動の発生に応じて当該移動体の特定挙動に関わる情報を所定の記録媒体に記録する記録手段とを有し,」は,自動車等の操作者(運転者)による移動体の特徴的な運転操作の傾向を解析できるように,特定の挙動と判定された挙動が発生したことに合わせて,特定挙動を表すその発生前後の測定データをメモリーカードのようなカード状記録媒体に記録する手段を有することを意味するものと解される。 (イ) これを被告機器3についてみると,被告機器3が,「それを搭載した車両の前後左右方向の加速度(G値)を検出する加速度センサーを内蔵し,CFカードを格納するカードスロットを有するドライブレコーダー(データレコーダの一種)であり,例えば内蔵の加速度センサーで衝撃を検知したときに,衝撃前後の映像,走行データをCFカードに記録する」ものであること,「被告機器使用の際には,トリガ判定閾値X,ト リガ判定閾値Y,キャプチャモード(多重トリガ/シングルトリガ),トリガ後記録時間,事故判定閾値(X,Y)が記録されているCFカードをカードスロットへ挿入」し,「CFカードヘの上記条件の記録は,被告記録媒体(CD-ROM)に記録された『KURUMAME 解析ツール』をインストールしたコンピュータ装置において行われ」,「被告機器 カードスロットへ挿入」し,「CFカードヘの上記条件の記録は,被告記録媒体(CD-ROM)に記録された『KURUMAME 解析ツール』をインストールしたコンピュータ装置において行われ」,「被告機器が車両に搭載され,使用可能な状態になると,被告機器は,当該車両のデータ収集を開始」し,「内蔵の加速度センサーからのデータが,『トリガ判定閾値』を超過した場合,当該車両の映像,車速,加速度データをCFカードに記録する」ものであることについては,いずれも当事者間に争いがない(前記第2の2(5))。 また,被告機器3に搭載される被告解析ツールの取扱説明書(甲5)には,被告機器3は,①「内蔵の加速度センサーにより,衝撃や急加速・急ブレーキ・急ハンドルを数値として記録し,その情報より運行状況や運転特性を判断する」ことができるものであること,②CFカードへの記録は,X方向(前後)及びY方向(左右)ごとに設定される最小値(トリガ判定閾値)を超える加速度が測定されたときに開始されること,③後に被告解析ツールをインストールしたコンピュータ装置において,CFカードに記録された前後左右の加速後に関する情報を「時系列グラフで表示」し,また,同カードに記録された画像ファイルをレベル1からレベル4に分類された危険度(加速度)を基に検索を行うことができることがそれぞれ記載されている。 以上によれば,被告機器3は,上記(ア)で検討した構成要件1Cの意味する「自動車等の操作者(運転者)による移動体の特徴的な運転操作の傾向を解析できるように,特定の挙動と判定された挙動が発生したことに合わせて,特定挙動を表すその発生前後の測定データをメモリーカードのようなカード状記録媒体に記録する手段」を全て備えるものと認め られる。 したがって,被告機器3は構成要件1Cを充 に合わせて,特定挙動を表すその発生前後の測定データをメモリーカードのようなカード状記録媒体に記録する手段」を全て備えるものと認め られる。 したがって,被告機器3は構成要件1Cを充足する。 (ウ) これに対し,被告は,被告機器3は,起動後,低サンプリングレートで「加速度」を記録し続けており,「加速度」が一定の閾値(トリガ判定閾値,事故判定閾値)を超過すると,高いサンプリングレートで「加速度」が記録される構成となっているから,乙1発明に関する「事故発生の有無に関わらず記録されている走行状態データのサンプリングレートを変化させるというものであり,両方法は,技術的に相容れないものである」との原告の主張を前提にすれば,被告機器3は,構成要件1Cを充足せず,本件発明1の技術的範囲に属しないことになると主張する。 しかしながら,たとえ被告機器3が事故発生前から「加速度」を常時記録し続け,「加速度」が一定の閾値(トリガ判定閾値,事故判定閾値)を超過するとそのサンプリングレートが変化する構成を併せ有しているとしても,それは前記(イ)の構成に加速度の常時記録,すなわちタコグラフとしての機能が付加されたことを意味するにすぎず,これにより上記構成要件の充足が否定されることにはならない。上記被告の主張は失当であり,採用することができない。 ウ以上によれば,被告機器3は本件発明1の技術的範囲に属するものと認められる。 (3) 被告記録媒体ア被告記録媒体が,構成要件2Bを除き,本件発明2の構成要件を充足することは,前記第2の2(6)ウのとおりである。 イ構成要件2Bの充足性(ア) 前記(2)イ(ア)に述べたところに加え,本件明細書の「【0049】データ収集条件には,例えば,図8(b)に示されるように,1秒間の間に変化す のとおりである。 イ構成要件2Bの充足性(ア) 前記(2)イ(ア)に述べたところに加え,本件明細書の「【0049】データ収集条件には,例えば,図8(b)に示されるように,1秒間の間に変化する角速度が10°を越えた場合等が挙げられる。このような条 件が満足された場合,特定挙動が発生したと判断され,発生前後の所定時間(例えば,前後30秒)の測定データがメモリカード20に記録される」との記載によれば,構成要件2Aにおける「移動体の特定挙動」とは,特定の(特徴的な)挙動,例えば急発進,急停止,急旋回のときの動態を意味し,「移動体の特定挙動に関わる情報」とは,特定挙動を表すその発生前後の測定データを意味し,「収集条件」とは,一つの閾値又は複数の閾値の組合せ若しくはこれに所定時間のような収集したい情報の範囲を付加したものを意味するものと解することができ,これを受けた構成要件2Bの「収集条件に適合する挙動に関わる情報」は,一つの閾値又は複数の閾値を超えた測定データ若しくはこのような測定データのうち収集したい範囲の条件に適合する情報を意味するものと解することができる。 (イ) これを被告記録媒体についてみると,前記第2の2(5)の事実に証拠(甲4の3,5,8)及び弁論の全趣旨を総合すれば,被告記録媒体は,検出した加速度が「トリガ判定閾値X」又は「トリガ判定閾値Y」を超えるとき,それをトリガとして加速度等の測定データの記録を開始し,「トリガ後記録時間」により定まる時間分の測定データをCFカードに記録するものであり,「多重トリガ」が設定されているときは,トリガ発生後に更に2回目のトリガが発生した場合もその記録を行うものであることが認められるから,このようにしてCFカードに記録され,読み出される情報は,構成要件2Bの「前記設定され れているときは,トリガ発生後に更に2回目のトリガが発生した場合もその記録を行うものであることが認められるから,このようにしてCFカードに記録され,読み出される情報は,構成要件2Bの「前記設定された収集条件に適合する挙動に関わる情報」に該当するということができる。そして,被告解析ツールは,このCFカードから「記録情報を読み出す処理」を実行するものであるから(前記第2の2(5)),被告解析ツールが記録された被告記録媒体は,本件発明2の構成要件2Bを充足するものと認められる。 (ウ) これに対し,被告は,乙1発明に関する「運行状態データ」自体は, 事故発生とは無関係に記録されるのであり,「条件に適合する挙動」あるいは「条件に適合する挙動に関わる情報」なるものが存在しないとの原告の主張を前提にすれば,被告解析ツールにおいても,「加速度」情報は,事故発生と無関係に記録されているから,仮に上記原告の主張を前提とするならば被告解析ツールにも「条件に適合する挙動に関わる情報」なるものが存在しないこととなり,被告解析ツールが記録された被告記録媒体は構成要件2Bを充足しないと主張する。 しかしながら,たとえ被告機器3が事故発生前から「加速度」を常時記録し続ける構成を併せ有していたとしても,そのことにより上記構成要件の充足が否定されることにはならないというべきことは,前記(2)イ(ウ)のとおりである。上記被告の主張は失当であり,採用することができない。 ウ以上によれば,被告記録媒体は,本件発明2の技術的範囲に属するものと認められる。 (4) 小括以上検討したところによれば,被告機器は本件発明1の技術的範囲に属し,被告記録媒体は本件発明2の技術的範囲に属する。 2 特許法104条の3第1項の権利行使の制限について本 (4) 小括以上検討したところによれば,被告機器は本件発明1の技術的範囲に属し,被告記録媒体は本件発明2の技術的範囲に属する。 2 特許法104条の3第1項の権利行使の制限について本件事案に鑑み,無効理由4から判断する。 (1) 乙6の記載本件特許の優先権主張日(平成10年10月12日)前に日本国内で頒布された刊行物である乙6には,下記図面とともに,以下の事項が記載されている(文中の「/」は,特に断り書がない限り原文の改行部分を示す。)。 「2.特許請求の範囲(1).車輌に搭載されて車輌の走行速度を検出する検出部を接続すると共に時計機能を有して管理データを演算処理する演算部を備えた運転データ記 録装置と,/該運転データ記録装置の演算部により得られた管理データを外部記憶体に書込む書込部又はデータ通信を行うデータ通信部と,/管理者側に設けられて上記外部記憶体又は通信手段を介して入力されたデータを処理する管理データ処理装置とからなる車輌運転管理システムにして,/検出部から入力された車速データを基にその車速データが予め設定されている基準値を超えているか否かを判定する安全スピード判定手段と,/上記検出部から入力された車速データを基にスピード変化率算出手段で変化率を算出し,得られた変化率が予め設定されている基準値を超えているか否かを判定する粗雑運転判定手段と,/上記車速データを基に走行距離算出手段で走行距離を算出し,得られた走向距離を時計機能により所定の時間帯ごとに区分する用途別走行距離算出手段と,/上記各判定結果を基に運転評価を行う運転評価手段/とを設けてなることを特徴とする車輌運転管理システム。」(1頁左下欄3行目~右下欄9行目)「【作用】検出部5から入力された車速データは,安全スピ 定結果を基に運転評価を行う運転評価手段/とを設けてなることを特徴とする車輌運転管理システム。」(1頁左下欄3行目~右下欄9行目)「【作用】検出部5から入力された車速データは,安全スピード判定手段13に入力されて,予め設定されている基準値を超えているか否かを判定する。/また,この車速データは,スピード変化率算出手段11に入力されて変化率を算出し,該変化率が粗雑運転判定手段12で予め設定されている基準値を超えているか否か,即ち急発進や急制動か否かが判定される。/更に,上記車速データと時計機能による時刻データを基に走行距離算出手段14で時刻に対応した走行距離を算出し,得られた走向距離を用途別走行距離算出手段15で所定の時間帯に区分けする。/このようにして得られたデータは,運転評価手段31で所定の評価基準に従って評価され,管理データ処理装置3でデータ処理される。/ここで運転データ記録装置2から管理データ処理装置3ヘデータを送るには書込部10Aを介して外部記憶体1ヘデータをストアさせ(管理データ処理装置3側でデータの読出しを行 い)或いはデータ通信部10Bを介してのデータ転送させること等により行うことができる。/また,上記作用に加えて,データ交換に外部記憶体1を用いた場合には,該外部記憶体1からドライバーの識別コード等を読出し可能なデータ処理装置4を介して入力されるデータも併せて管理データ処理装置3でデータ処理される。」(3頁左下欄19行目~4頁左上欄6行目)「【実施例】以下に,この発明の車輌運転管理システムを社有自動車に適用し,外部記憶体としてICカードを用いた好適実施例を第3図及び第4図に基づいて説明する。/第3図は,車輌運転管理システムのハード構成を示す概略図であり,車輌Vに搭載された運転データ記 有自動車に適用し,外部記憶体としてICカードを用いた好適実施例を第3図及び第4図に基づいて説明する。/第3図は,車輌運転管理システムのハード構成を示す概略図であり,車輌Vに搭載された運転データ記録装置2と,該運転データ記録装置2により運転データが書込まれるICカード1と,事業乃至販売場所に設置してあって該ICカード1の磁気ストライプの識別データ記憶部1bから識別データを読取る磁気テープ読取式データ処理装置4と,管理事務所等にある管理データ処理装置3とから構成されている。/また,前記ICカード1 は,カードにCPUとICメモリが設けられた構成からなって,運転データを書込むための運転データ記憶部1aを構成し,カードの外表面に取外けられた磁気ストライプが識別データを記憶している識別データ記憶部1bとなる構成からなっている。/そして,識別データ記憶部lbには,本実施例の場合,オペレータの識別コード(ID コード)が適宜書込手段によって予め書込まれている。/次ぎに,運転データ記録装置2は,データ読取書込部2aを備えたマイクロコンピュータ構成からなっており,I/O ポートとCPUと演算部20とを有している。/この運転データ記録装置2には,車輌Vの駆動輪系乃至速度計に設けられて所定のサンプリング間隔で車速を検出する検出部5がインターフェースを介して接続されており,運転データ記録装置2に検出信号を入力している。」(4頁 左上欄7行目~右上欄18行目)「次に,前記の如くICカード1の稼動データ記憶部1aにストアされた運転データは,管理事務所等にある管理データ処理装置3に適宜読取手段(例えばICカードリーダー等)を介して入力される。/また,前述の磁気カード読取式データ処理装置4(41,42,43,・・)に記録されたデータは,P 事務所等にある管理データ処理装置3に適宜読取手段(例えばICカードリーダー等)を介して入力される。/また,前述の磁気カード読取式データ処理装置4(41,42,43,・・)に記録されたデータは,POS等のオンライン又はオフライン(この場合はマニュアル入力)によって上記管理データ処理装置3に入力される。/このようにして入力された運転データ及びその他のデータは,同一の識別データ(コード)を有しているので,該識別データをもとにした統合的なデータ処理を行うことが可能となる。/上記システムにおいて,運転データの管理は第4図で示す如き構成で行われる。/即ち,検出部5から入力された車速データは,記録装置2の演算部20に入力される。/該演算部20では,車速データを安全スピード判定手段13に入力する。/この安全スピード判定手段13には,予め安全走行の励行として基準スピードが設定されており,入力された車速データが上記基準スピードを超えるか否かを判定する。/ここで,安全スピード判定手段13で判定する安全スピード基準値の一例を示せば,例えば第1基準を時速80㎞以上110㎞未満,第2基準を時速110㎞以上に分けて判定する構成等である。/また,この車速データは,スピード変化率算出手段11に入力されて一定時間における速度変化率が算出され,次いで粗雑運転評価手段12でこの変化率が予め急速発進として設定されている基準変化率を超えているか否か及び急制動として設定されている基準変化率を下回っているか否かによって急速発進及び急制動が判定される。/更に,上記車速データは,走行距離算出手段14に時計機能6から得られた日付と時刻(クロック信号)と共に入力されて時刻に対応した走行距離が算出される。/この走行距離は,用途別走行距離算出手段15に入力されて所定の時間帯に区分けされる 出手段14に時計機能6から得られた日付と時刻(クロック信号)と共に入力されて時刻に対応した走行距離が算出される。/この走行距離は,用途別走行距離算出手段15に入力されて所定の時間帯に区分けされる。/即ち,本実施例 において一例を示せば,ウィークデイの内,7時~9時迄及び17時~19時迄を通勤時間帯(準公用)とし,9時~17時を勤務時間帯(公用)とし,それ以外を私用時間帯(私用)に絶対的に区分し,上記各時間帯に対応する走行距離を算出する構成,或いは一日を前記タイムレコーダのデータ処理装置42から入力された当該日付の勤務時間データを基に該勤務時間帯(公用)と,それに前後する一定時間帯(通勤時間帯となる準公用)と,それら以外の時間帯からなる私用時間帯(私用)に区分し,各区分毎に走行距離を算出する構成としてもよい。/なお,本実施例では上記用途別走行距離算出手段15に長距離走行判定手段16を併せて設けている。 /即ち,長距離走行判定手段16は一定の単位時間(本実施例では0時~24時の一日)における走行距離の合計値が,予め設定されている長距離走行基準値を超えるか否か判定するものである。/このようにして判定された各データは,運転評価手段31に入力される。」(4頁右下欄19行目~5頁左下欄20行目)「ここで,上記構成は運転データ記録装置2の演算部20と管理データ処理装置3の演算部30とで行われるものであり,特にどちらの演算部で処理されるかにつき本発明では限定されるものではないが,本実施例では運転評価手段31以降が管理データ処理装置3の演算部30で処理されている。 /なお,この発明において運転評価手段31における評価方法はポイント制を例示したが,上記構成に特に限定されるものではなく適宜の管理手法が用いられる。」(6頁左上欄15行目 算部30で処理されている。 /なお,この発明において運転評価手段31における評価方法はポイント制を例示したが,上記構成に特に限定されるものではなく適宜の管理手法が用いられる。」(6頁左上欄15行目~右上欄5行目)「【発明の効果】この発明は上記構成からなっているので,管理水準以上のスピードで走行した事実(回数や距離)を記録し,また急速発進,急制動の事実(回数)を記録することによって,客観的にドライバーの運転を把握して,安全運転の励行や粗雑運転の防止を図ることができる。/また,用途別(時間帯 別)の走行距離即ち使用実績の把握によって私用/公用(判決注:この「/」は原文どおり)の使用区分の明確化を図ることができる。」(6頁左下欄15行目~右下欄4行目)記【第3図】 【第4図】 (2) 乙6に記載された発明上記(1)の記載から,乙6には,それぞれ次の各構成を有する運転データ記録装置及びその記録媒体に関する発明が記載されているものと認められる。 ア運転データ記録装置(ア) 車両に搭載されて車両の走行速度を検出する検出部を接続すると共に時計機能を有して管理データを演算処理する演算部と,該演算部により得られた管理データを外部記憶体に書込む書込部とを備えた運転データ記録装置であって,(イ) 前記外部記憶体は,ICカードであって,オペレータの識別コードが予め書き込まれた識別データ記憶部と,運転データを書き込むための運 転データ記憶部とを有しており,(ウ) 前記運転データ記録装置は,管理者側に設けられて前記外部記憶体を介して入力されたデータを処理する管理データ処理装置とで,車両運転管理システムを構成するものであり,か 憶部とを有しており,(ウ) 前記運転データ記録装置は,管理者側に設けられて前記外部記憶体を介して入力されたデータを処理する管理データ処理装置とで,車両運転管理システムを構成するものであり,かつ,(エ) 前記運転データ記録装置の前記演算部は,a 前記検出部から入力された車速データを基にその車速データが予め設定されている基準値を超えているか否かを判定する安全スピード判定手段と,b 前記検出部から入力された車速データを基にスピード変化率算出手段で変化率を算出し,得られた変化率が予め設定されている基準値を超えているか否かを判定する粗雑運転判定手段とを備えており,(オ) 前記管理データ処理装置には,上記各判定結果を基に運転評価を行う運転評価手段が備えられた,(カ) 運転データ記録装置。(以下「引用発明1」という。)イ記録媒体(ア) 前記安全スピード判定手段と前記粗雑運転判定手段とで判定された判定結果が記録された前記ICカードから該判定結果を読み出す処理,(イ) 読み出した判定結果を基に運転評価を行う処理,(ウ) を前記管理データ処理装置(コンピュータ装置)に実行させるためのデジタル情報が記録された,コンピュータ読取可能な記録媒体。(以下「引用発明2」という。)(上記(ウ)については,乙6に文言上明記されてはいないが,プログラムを読み取らせるためコンピュータに読み取り可能な記録媒体を用いることは,当業者が当然に行うことであるから,当業者は,上記事項が記載されているのと同様に理解できるものと認められる。)(3) 本件発明と引用発明との対比 ア本件発明1本件発明1は,構成要件1Eの「カード状記録媒体に少なくとも前記挙動条件が記録されている」構成を備えている 認められる。)(3) 本件発明と引用発明との対比 ア本件発明1本件発明1は,構成要件1Eの「カード状記録媒体に少なくとも前記挙動条件が記録されている」構成を備えている点で引用発明1と相違する(なお,引用発明1が本件発明1のその余の構成を備えていることは,原告は争わない。)。 イ本件発明2本件発明2は,「移動体の特定挙動に関わる情報を収集するための収取条件を所定の記録媒体に設定する処理」をコンピュータ装置に実行させるためのデジタル情報が記録されている点で引用発明2と相違する(なお,引用発明2が本件発明2のその余の構成を備えていることは,原告は争わない。)(4) 相違点についての容易想到性そこで,上記各相違点に係る構成について,当業者が容易に想到できたものであるか否かについて検討する。 ア本件発明1(ア) 乙2の記載本件特許の優先権主張日(平成10年10月12日)前に日本国内で頒布された刊行物である乙2には,下記図面とともに,以下の事項が記載されている。 「【実用新案登録請求の範囲】【請求項1】車両の加速及び減速の履歴情報を有する車両運行データを記録媒体に記録して収集する車両運行データ収集装置において,予め定めた加減速ランクの各々に対応した複数の回数記録エリアを有する記録媒体と,車両の加減速を予め定めた複数の加減速ランクデータの一つに変換する変換手段と,車両の停車を検出する停車検出手段と,最大ランク又 はこれに近いランクの急減速を検出する急減速検出手段と,減速の開始から車速が連続して所定値低下したことを検出する車速低下検出手段と,車両の走行開始又は前回サイクルの終了から前記停車検出手段,前記急減速検出手段又は前記車速低下検出手段による検出まで と,減速の開始から車速が連続して所定値低下したことを検出する車速低下検出手段と,車両の走行開始又は前回サイクルの終了から前記停車検出手段,前記急減速検出手段又は前記車速低下検出手段による検出までを1サイクルとし,該1サイクルの間に前記変換手段によって変換した加減速ランクデータの内の最大の加減速ランクを検出する最大加減速ランク検出手段と,該最大加減速ランク検出手段により検出した最大加減速ランクに対応する前記記録媒体の回数記録エリアのデータをインクリメントする書込手段とを備えることを特徴とする車両運行データ収集装置。」「【0001】【産業上の利用分野】本考案は車両に搭載して使用される車両運行データ収集装置にかかり,特に,運転者の運転状況を把握するのに有効な車両の加速及び減速の履歴情報を有する車両運行データを収集する車両運行データ収集装置に関するものである。」「【0002】【従来の技術】車両の加速及び減速の履歴情報は,運転者の運転状況を把握し,燃費や安全運転などを管理する上で有効な車両運行データである。」「【0004】【考案が解決しようとする課題】……【0005】このように,収集される車両運行データは車両が走行する道路の状況によって大きく左右され,一般道路を多く走行した場合には高ランク の加速の頻度が多くなり,高速道路を多く走行した場合には低ランクの加速の頻度が多くなる。従って,高ランクの加速が多い走行を行った車両の運転者が,高速道路を多く走行し,低ランクの多い走行をした車両の運転者の運転よりも,経済運転や安全運転をしていないと判断するのは適当でなく,この装置によって収集したデータはあまり有効に利用できるとは言い難い。」「【0006】よって本考案は,上述した従来の問題点に鑑み, も,経済運転や安全運転をしていないと判断するのは適当でなく,この装置によって収集したデータはあまり有効に利用できるとは言い難い。」「【0006】よって本考案は,上述した従来の問題点に鑑み,道路状況に左右されないで,運転者の運転状況を把握するのに有効な,加減速の履歴情報を含む車両運転データを収集することのできる車両運行データ収集装置を提供することを課題としている。」「【0010】【実施例】以下,本考案の実施例を図面に基づいて説明する。第2図は急加速及び急減速の履歴情報の他に,時々刻々変化する車速データ,走行距離などを含む車両運行データを収集するように構成された本考案による車両運行データ収集装置の一実施例を示す。」「【0011】同図(判決注:上記第2図)において,車両運行データ収集装置は,車両のトランスミッションに図示しない連結手段によって連結され,車両の走行に伴って車速に応じた周波数の走行信号を発生する走行センサ1と,この走行センサ11からの走行信号をサンプリングして入力するマイクロコンピュータ(CPU)2と,実時間を表す時刻情報を発生するカレンダ及び時計3と,記録媒体としてのICメモリカード4が挿抜されるカードコネクタ5とを有する。」「【0013】 上記ICメモリカード4には,図3に示すように,カードを識別するためのカードIDを書き込むためのカードIDエリア41と,後述する運行データ解析装置によって書き込まれる各種の設定データDsを格納する設定データエリア42と,収集した車速や走行距離データを書き込むための運行データエリア43と,オプションデータエリア44とが形成されている。設定データエリア42には,図4に示すようなランク1乃至8の加速ランクデータ(m/秒2)とランク1乃至8の減 を書き込むための運行データエリア43と,オプションデータエリア44とが形成されている。設定データエリア42には,図4に示すようなランク1乃至8の加速ランクデータ(m/秒2)とランク1乃至8の減速ランクデータ(m/秒2)とが格納されている。」「【図面の簡単な説明】……【図2】本考案による車両運行データ収集装置の一実施例を示す図である。 【図3】図2中のICメモリカード内の記録内容を示す図である。 【図4】図3中の一部分である設定データエリアの内容の詳細を示す図である。」記【図2】 【図3】 【図4】 (イ) 乙3の記載本件特許の優先権主張日(平成10年10月12日)前に日本国内で頒布された刊行物である乙3には,図面とともに,以下の事項が記載されている。 「【発明の名称】自動車操作イベントの記録方法および装置」「【0001】【産業上の利用分野】本発明は自動車レーダシステムに関し,詳しくは自動車レーダシステムにおける操作的なイベント(事象)を記録するための装置および方法に関する。」「【0002】【従来の技術】自動車分野には,車両操作の様々な側面でのデータや環境情報を記録する電子装置が多数存在する。このような装置は,磁気テープとペーパーストリップを用いて情報の記録を行っており,主として,走行距離,走行時間,燃費,平均速度などの情報を記録する走行モニタとして機能する。」 「【0003】このような記録装置の失点は,磁気テープやペーパーストリップが自動車環境に起こりがちな熱や振動の影響を被りやすいことである。また,従来の自動車記録装置は,車両レーダシステムと結びつけて,自動 03】このような記録装置の失点は,磁気テープやペーパーストリップが自動車環境に起こりがちな熱や振動の影響を被りやすいことである。また,従来の自動車記録装置は,車両レーダシステムと結びつけて,自動車とその自動車のレーダシステムで位置確認されるターゲットとの間の接近速度(CR),自動車とターゲットとの間の距離(D),自動車速度(VS)などの情報や,自動車機能および環境情報(ブレーキ圧,自動車の加速/減速,右左折速度,操舵角,レーダシステムプロセッサで検出される危険度,ターゲット方向,走行制御状態など)を記録するために使用されなかったし,事故復元に使用されるべく情報を記録することもなかった。」「【0004】【発明が解決しようとする課題】民間飛行機や一部の自家用エアクラフトには,「ブラックボックス」と呼ばれる事故記録装置が備えられている。……ブラックボックス記録装置は飛行機事故の再現において非常に重要な証拠を提供してきたが,この種の方法は極めて高額であり,用途も飛行機などの費用のかかる輸送手段に限られていた。さらにこのような記録装置はすべて,データの記録に大掛かりな磁気テープを使用して作動すると考えられており,自動車用途としての許容範囲以上に装置が大型化して重量も増え,消費動力も増える。」「【0005】自動車事故復元の分野では,事故分析者は,横滑り形跡の長さや車両の大きさ,周囲の物体の損傷度,事故発生時の道路状況などを測定することによって最も可能性の高い事故発生状態を決定する。この事故再現方法は時として非常に費用がかかったり不正確であった。それゆえ,自動車にも事故記録ブラックボックスとして機能するシステムを備えることが望まれている。そのようなシステムは,車両および事故発生以前の周囲環境に関する情報を記録しているのが好 った。それゆえ,自動車にも事故記録ブラックボックスとして機能するシステムを備えることが望まれている。そのようなシステムは,車両および事故発生以前の周囲環境に関する情報を記録しているのが好 ましく……」「【0006】また,事故復元に有用なデータの記録以外にも,自動車機能,操作状態,環境データなどの標準的なデータも記録できることが望ましく……」「【0008】【課題を解決するための手段および作用】本発明の良好な実施例は特に自動車レーダシステムと組み合わせて使用され,自動車機能,操作状態,環境などに関する選択可能の情報を記録する,着脱自在かつ外部読み出し可能の不揮発性固体メモリのイベント記録装置(ERA:データ格納カード)を提供する。このERA(イベント記録装置)は特に,事故分析に有効な情報を記録することができる。」「【0012】【実施例】……【0018】図2は,本発明の実施例のERAシステムのより詳細なブロック図である。RAMカード20は,インターフェイスレセプタクル21を介してマイクロコントローラ22に接続される……」「【0043】RAMカード20は取り外し可能であり,比較的安価であるので,量販車やバスなどの特定乗物の各ドライバーは個人用のRAMカード20を所有することができる。このように,本発明のイベント記録装置は,特定のドライバーによる平均運転速度,ブレーキ/アクセル傾向,前方間隔(レーダシステムによって検出される同車線のすぐ前の車までの距離)等の指標を含む操作をモニタするのに用いられる。」「【0047】本発明のこの態様はまた,自動車の操作指標をドライバーの意向に合わせて「特別化」あるいは「個人化」するのにも用いら れる。例えば,量販車あるいはバスなどのドライバーはR 「【0047】本発明のこの態様はまた,自動車の操作指標をドライバーの意向に合わせて「特別化」あるいは「個人化」するのにも用いら れる。例えば,量販車あるいはバスなどのドライバーはRAMカード20を用いて,所望の前方間隔,警告しきい値,自動車の電子制御システムを介してセットされるその他のパラメータに関する各自の意向を車両に組み込むことができる。」(ウ) 以上のとおり,乙2記載の装置及び乙3記載の装置は,共に自動車運転者の運転操作に関する情報を記録するための装置であり,本件発明と技術分野が共通するものであるところ,乙2には,カード状記録媒体であるICメモリーカードを用いる車両運行データ収集装置において,当該カード状記録媒体にカードIDや車両運行データに加えて,設定データを記憶させておく構成が記録されており,乙3にも,自動車用イベント(事象)記録装置において,RAMカードを用いて所望の前方間隔,警告閾値,自動車の電子制御システムを介してセットされるその他のパラメータに関する各自の意向を車両に組み込む構成が記載されていることからすれば,自動車用のデータレコーダにおいて,カード状記録媒体を用いてデータレコーダのパラメータ等の設定を行うことは,本件特許の出願時において周知の技術的事項であったと認められる。 そして,引用発明1のICカード(カード状記録媒体)には,前記安全スピード判定手段と前記粗雑運転判定手段(ここで用いられる基準値が構成要件1Bの「挙動条件」に該当する。被告は,当該基準値は複数のドライバーに共通のものであり,本件発明における挙動条件又は収集条件とは全く異なると主張するが,乙6の5頁右上欄3~6行目に「ここで,安全スピード判定手段13で判定する安全スピード基準値の一例を示せば,例えば第1基準を時速80㎞ 件発明における挙動条件又は収集条件とは全く異なると主張するが,乙6の5頁右上欄3~6行目に「ここで,安全スピード判定手段13で判定する安全スピード基準値の一例を示せば,例えば第1基準を時速80㎞以上110㎞未満,第2基準を時速110㎞以上に分けて判定する構成等である」と記載されているように,一例として示されているにすぎず,例えば,一般道を走行する場合と,高速道路を走行する場合とで基準となる速度を変更することは, 当業者が当然に理解できることであるから,引用発明における基準値が必ずしも複数のドライバーに共通するものとはいえず,本件発明の挙動条件又は収集条件と異ならないというべきである。上記被告の主張は採用できない。)に基づいてデータが記憶されるのであり,上記のとおり当該基準値(挙動条件)が必ずしも複数のドライバーに共通のものではなく,設定変更できることを前提としていることを踏まえれば,パラメータとして当該基準値(挙動条件)をいかにして設定するか(例えば,手動で入力するか,あるいは,メモリ等にあらかじめ入力しておいたデータを読み出すか)は,当業者が適宜選択できる事項といえる。 (エ) 以上によれば,本件発明1の相違点に係る構成は,引用発明1に乙2及び乙3に記載された上記周知の技術的事項(自動車用のデータレコーダにおいて,カード状記録媒体を用いて,データレコーダのパラメータ等の設定を行うこと)を組み合わせることにより,当業者が容易に想到できたものと認められる。 イ本件発明2前記のとおり,自動車用のデータレコーダにおいて,カード状記録媒体を用いて,データレコーダのパラメータ等の設定を行うことが周知の技術的事項であったと認められる以上,コンピュータ装置に実行させるためのデジタル情報として「移動体の特定挙動に関わる ,カード状記録媒体を用いて,データレコーダのパラメータ等の設定を行うことが周知の技術的事項であったと認められる以上,コンピュータ装置に実行させるためのデジタル情報として「移動体の特定挙動に関わる情報を収集するための収集条件を所定の記録媒体に設定する処理」を追加することも,当業者が容易に想到できたものと認められる。 したがって,本件発明2の相違点に係る構成は,引用発明2に乙2及び乙3に記載された上記周知の技術的事項を組み合わせることにより,当業者が容易に想到できたものと認められる。 (5) 以上のとおり,本件発明1,2は,当業者が引用発明1,2に乙2及び乙3に記載された周知の技術的事項を組み合わせることによって容易に発明を することができたものであり,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,特許法104条の3第1項により,原告は被告に対し本件特許権を行使することができない。 (6) 時機に後れた攻撃防御方法であるとの原告の主張について原告は,無効理由4に係る被告の無効主張は時機に後れた攻撃防御方法であるから却下すべきと主張する。 しかしながら,当該無効主張は,平成23年7月13日の第4回弁論準備手続において,同月12日付け被告準備書面(4)をもってなされたものであるところ,同時点では,いわゆる二段階審理における侵害論についての審理中であったから,当該無効主張についての審理がなければ直ちに弁論を終結できる段階になく,上記無効主張により訴訟の完結を遅延させることになるものとは認められない。原告は,無効審判請求の審理が終結した後に新たに無効主張を追加することは,侵害訴訟と審決取消訴訟におけるいわゆるダブルトラック問題を引き起こすと指摘するが,上記無効主張により訴訟の完結を遅延させることに ,無効審判請求の審理が終結した後に新たに無効主張を追加することは,侵害訴訟と審決取消訴訟におけるいわゆるダブルトラック問題を引き起こすと指摘するが,上記無効主張により訴訟の完結を遅延させることになるものと認められないことは上記のとおりであるから,原告の上記主張は採用することができない。 3 訂正を理由とする対抗主張について原告は,平成23年9月22日付け原告第6準備書面をもって,本件訂正発明には無効理由がなく,かつ,被告製品は本件訂正発明の技術的範囲に属すると主張し,これに対し,被告は,原告の上記主張は,時機に後れた攻撃防御方法であるから却下されるべきであると主張する。 そこで検討するに,原告の上記対抗主張は,前記平成23年7月12日付け被告準備書面(4)をもってなされた無効理由2~4に対するものであるところ,受命裁判官は第5回弁論準備手続期日(同年8月5日)において,原告に対し,上記無効理由についても審理するので,これに対する反論があれば次回までに提出するよう促し,反論の機会を与えたにもかかわらず,原告は,第6回弁論 準備手続期日(同年9月9日)までに上記対抗主張をすることなく,同期日で弁論準備手続を終結することについても何ら異議を述べなかったものである。 無効理由2及び3は,いずれも既出の証拠(乙2及び乙3)を主引用例とする無効主張であり,無効理由4も,平成14年5月20日付け特許異議申立てにおいて既に刊行物として引用されていた乙6に基づくものであるから,原告は,上記無効理由の主張があった第4回弁論準備手続期日から弁論準備手続を終結した第6回弁論準備手続期日までの間に対抗主張を提出することが可能であったと認められる(原告は,乙6に基づく無効理由4を回避するために訂正請求を行うことができるのは第2次無効審判請求の無 手続を終結した第6回弁論準備手続期日までの間に対抗主張を提出することが可能であったと認められる(原告は,乙6に基づく無効理由4を回避するために訂正請求を行うことができるのは第2次無効審判請求の無効審判請求書副本の送達日である平成23年8月19日から答弁書提出期限である同年10月18日までの期間のみであると主張するが,本件訴訟において対抗主張を提出することはできたものというべきである。原告は,対抗主張が認められる要件として現に訂正審判の請求あるいは訂正請求を行ったことが必要とする見解が多数であるとも主張するが,訂正審判請求前又は訂正請求前であっても,訴訟において対抗主張の提出自体が許されないわけではなく,理由がない。)にもかかわらず,これを提出せず,弁論準備手続の終結後,最終の口頭弁論期日になって上記対抗主張に及ぶことは,少なくとも重大な過失により時機に後れて提出したものというほかなく,また,これにより訴訟の完結を遅延させるものであることも明らかである。 よって,原告の上記対抗主張は,民事訴訟法157条1項によりこれを却下する。 4 まとめ以上のとおり,本件発明は,当業者が引用発明に乙2及び乙3に記載された周知の技術的事項を組み合わせることによって容易に発明をすることができたものであり,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。 したがって,特許法104条の3第1項により,原告は被告に対し本件特許権を行使することができない。 5 結論よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 岡本 岳 裁判官 鈴木和典 裁判官 ずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 主文 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 岡本岳 裁判官 鈴木和典 裁判官 寺田利彦 (別紙)被告製品目録 1 K Y B ドライブレコーダー D R E - 100 2 K Y B ドライブレコーダー D R E - 110 3 K Y B ドライブレコーダー D R E - 120 4 K U R U M A M E 解析ツール Ver.2.00 5 K U R U M A M E 解析ツール Ver.3.00以上

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