平成一〇年(ワ)第九四〇九号特許実施契約確認本訴請求事件、平成一〇年(ワ)第三 〇〇八五号損害賠償等反訴請求事件 (口頭弁論終結日 平成一一年一一月一五日) 判 決 原告兼反訴被告 株式会社麹館(以下「原告」という。) 右代表者代表取締役 A 右訴訟代理人弁護士 鈴 木 弘 喜 同 卜 部 忠 史 同 福 島 昭 宏 同 鈴 木 健 二 同 高 後 元 彦 被告兼反訴原告 ビッグ・ビーンズ・インク(以下「被告」 という。) 右代表者 B 主 文 一 被告は、原告に対し、金三〇〇〇万円及びこれに対する平成一一年九月二一 日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 二 被告の請求をいずれも棄却する。 三 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、被告の負担とする。 四 この判決は、仮に執行することができる。 事実及び理由 第一 請求 〔本訴〕 主文一項に同じ 〔反訴〕 一 原告は、特許(特許番号一五九二八二一号、発明の名称「バランス抽出シス テム」)に基づく健康食品等の製造・ディストリビューション及び販売等一切の実 施行為をしてはならない。 二 原告は、被告に対し、金一億円及びこれに対する平成一〇年一二月二九日か ら支払済みまで年 テム」)に基づく健康食品等の製造・ディストリビューション及び販売等一切の実 施行為をしてはならない。 二 原告は、被告に対し、金一億円及びこれに対する平成一〇年一二月二九日か ら支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。 第二 事案の概要 〔本訴〕 原告は、被告に対し、契約金の返還と損害賠償を選択的に求めた(金額につき一 部請求)。 ① 原告は、後記の特許権に関して専用実施権を有していた被告と、日本国内での 製造、販売等について実施許諾契約(以下「本件実施契約」という。)を締結した が、被告が右契約に基づく債務を履行しなかったことを理由に、本件実施契約の解 除の意思表示をし、契約金の返還を求めた。 ② 原告は、本件実施契約を締結する際に、被告に詐欺行為があったとして、不法 行為に基づく損害賠償を請求した。 〔反訴〕 被告は、原告に対し、①原告が健康食品を製造する行為等が被告の営業上の利益 を侵害すると主張して、不正競争防止法三条一項に基づいて、その行為の差止めを 求め、②原告の秘密漏泄行為が、本件実施契約上の債務不履行ないし不法行為を構 成するとして、損害賠償を求めた(金額は一部請求)。 一 前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び顕著な事実) 1 当事者 原告は、健康食品の製造、販売を主たる業とする会社である。 被告は、健康食品の製造、販売を主たる業とする米国法人である。 被告は、特許権(特許番号一五九二八二一号、発明の名称「バランス抽出システ ム」)について専用実施権を有していた。 2 本件実施契約 原告と被告は、平成九年六月一九日、本件実施契約を締結した。すなわち、被告 が原告に対し、同日より三年間、原告が、本件特許権に関して、健康食品製品(名 称 アロマウォーター、以下「本件製品」という。)を日本において非専用的に製 造する 、本件実施契約を締結した。すなわち、被告 が原告に対し、同日より三年間、原告が、本件特許権に関して、健康食品製品(名 称 アロマウォーター、以下「本件製品」という。)を日本において非専用的に製 造すること及び日本において独占的にディストリビュート(卸売)及び販売するこ とを許諾し、原告が被告に対して、契約金三〇〇〇万円及び実施料等を支払うとい う内容の契約を締結した。 原告は、本件実施契約に基づき、平成九年六月三〇日までに、右契約金三〇〇〇 万円の支払を完了した。 3 本件実施契約の解除 被告は、原告に対し、平成九年九月二六日、原告の債務不履行を理由に、本件実 施契約を解除する旨の意思表示をした。 他方、原告も、被告に対し、被告の債務不履行を理由に、平成一一年九月二〇日 到達の同年六月二八日付訴変更申立書をもって、本件実施契約を解除する旨の意思 表示をした(顕著な事実)。 (なお、いずれも、債務不履行の事実の有無については争いがある。) 二 争点 〔本訴請求〕 1 被告の債務不履行責任 (原告の主張) 被告は原告に対し、本件実施契約により、①被告が製造した本件製品を原告に提 供し、②原告が自ら本件製品を製造できるようその製造に必要な装置を原告に賃貸 する義務を負った。しかし、被告は右義務を履行しない。被告には債務不履行に基 づく損害賠償責任がある。また、被告は、原告が交付した契約金三〇〇〇万円の返 還義務を負う。 (被告の反論) 否認する。本件実施契約について、原告に債務不履行がある。本件実施契約は解 除されたので、被告は履行義務を負わない。 2 被告の不法行為責任 (原告の主張) 被告は、本件実施契約締結以前に、本件特許権についての専用実施権を失い、そ の旨抹消登録していたにもかかわらず、専用実施権を有している旨述べて、原告を 欺罔して、原告 の不法行為責任 (原告の主張) 被告は、本件実施契約締結以前に、本件特許権についての専用実施権を失い、そ の旨抹消登録していたにもかかわらず、専用実施権を有している旨述べて、原告を 欺罔して、原告との間で本件実施契約を締結させた。原告は、被告が本件特許権の 専用実施権者でないことを知っていれば、被告と本件実施契約を締結することはな かった。しかも、被告は、本件実施契約締結後わずか三か月で同契約を解除してい る。このように、原告は、本件特許権を実施させる意思がなかったにもかかわら ず、その意思があるかのごとく装って、原告を欺罔して、原告から契約金等名目で 三〇〇〇万円の支払を受けた。 被告の右行為は不法行為を構成するから、被告は原告の支払った右契約金等に相 当する損害を賠償する義務がある。 (被告の反論) 否認する。 〔反訴請求〕 3 原告の債務不履行責任 (被告の主張) 本件実施契約においては、(a)原告の保証、表示又は供述に重要な虚偽があった 場合、(b)被告の信用に否定的な影響を及ぼす行為、出版、無許可広告又はマーケ ティング資料公表などがされた場合、被告は本件実施契約を解除することができる 旨合意されていた。ところが、被告は、本件製品の癌やエイズに対する効果等につ いてのリサーチを、カリフォルニア大学ディビス校のC教授(以下「C教授」とい う。)に依頼したが、秘密を保持し、C教授との信頼関係を維持するために、右リ サーチ完了前に原告がC教授に接触しないことを原告に確約させるとともに、本件 特許権に関する事項についての守秘義務を課していた。ところが、原告はこれに反 して、訴外山之内製薬株式会社に本件特許に関する事実を告知し、同社をして、リ サーチ実施中に、C教授に接触させてしまった。原告の右各行為は、本件実施契約 上の義務に違反する。 また、原告は、 れに反 して、訴外山之内製薬株式会社に本件特許に関する事実を告知し、同社をして、リ サーチ実施中に、C教授に接触させてしまった。原告の右各行為は、本件実施契約 上の義務に違反する。 また、原告は、本件実施契約における最低実施料支払義務、販売契約締結交渉に おける交渉状況に関する報告義務、本件製品に関する記事・広告等に際し、事前に 被告に相談して了解を得る義務を履行をしなかった。 よって、原告は、債務不履行に基づき、これによって被告に生じた損害を賠償す る義務がある。 (原告の反論) 否認する。 4 原告の不法行為責任 (被告の主張) 原告は、故意又は過失により、前記3の守秘義務に違反して秘密事項を他社に漏 洩し、被告とC教授との信頼関係を失わせ、その結果、被告は、本件特許権に関す る事業活動を継続することができなくなった。 よって、原告には、不法行為に基づく損害賠償責任がある。 (原告の反論) 否認する。 5 原告の不正競争行為の事実の有無 (被告の主張) 原告は、被告が本件実施契約を解除した後にも、本件特許権について実施権を持 つことを公言して、実施行為を継続しようとし、被告の営業上の利益を侵害してい た。 右行為は不正競争防止法上の不正競争行為に当たる(ただし、同法二条所定のい かなる不正競争行為であるかの主張はない。)。 (原告の反論) 否認する。 第三 争点に対する判断 〔本訴請求について〕 被告の債務不履行責任の有無について検討する。 甲一及び一五号証によれば、原告及び被告は、本件実施契約の中で、被告は、① 原告に本件製品を提供したり、②原告において、ディストリビューション及び販売 用に本件製品を生産することができるよう、製造設備を使用させる義務を負担する 旨の合意をしたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。ところ したり、②原告において、ディストリビューション及び販売 用に本件製品を生産することができるよう、製造設備を使用させる義務を負担する 旨の合意をしたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。ところが、被 告は右義務を履行しなかったので、原告は、被告に対し、被告の債務不履行を理由 に、平成一一年九月二〇日到達の同年六月二八日付訴変更申立書をもって、本件実 施契約を解除する旨の意思表示をした。本件実施契約は、右解除の意思表示により その効力が消滅した。したがって、原告は、被告に対し、平成九年六月三〇日まで に、支払った右契約金三〇〇〇万円の返還を求めることができる。 なお、被告は、原告に債務不履行があった旨主張するが、本件全証拠によるも、 これを認めるに足りる証拠はなく、この点の被告の主張は失当である。 〔反訴請求について〕 本件全証拠によるも、被告の主張に係る、原告の債務不履行の事実(争点3)、 原告の不法行為の事実(争点4)、原告の不正競争行為の事実(争点5)は認めら れない。 よって、被告の反訴請求はいずれも理由がない。 〔結論〕 以上のとおり、原告の本訴請求は理由があり、被告の反訴請求は理由がない。 東京地方裁判所民事第二九部 裁 判 長 裁 判 官 飯 村 敏 明 裁 判 官 沖 中 康 人 裁 判 官 石 村 智
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