平成16(う)2000 ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成16年10月20日 東京高等裁判所 棄却 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-20095.txt

判決文本文3,869 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 理由 本件控訴の趣意は,弁護人梅木佳則作成の控訴趣意書に記載のとおりであるから,これを引用する。 所論は,要するに,原判決は,「被告人は,A(当時35歳)に対する恋愛感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で,原判決添付別紙一覧表のとおり,平成15年11月7日ころから同年12月19日ころまでの間,東京都練馬区ab丁目c番d号所在のアパート『甲』外1箇所において,同表『ストーカー行為の内容』欄記載のとおり,手紙合計4通及び同女の裸体を被写体とする66画像を含む印刷物18枚を同女が使用する上記アパートの郵便受け等に投函するなどして同女に到達させ,いずれもそのころ,これらを同女に閲覧・閲読させ,同女に対し,その身体の安全,住居等の平穏若しくは名誉が害され,又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により,同女にその義務がないのに,反復して,携帯電話等の着信拒否設定の解除など,被告人との通信手段を確保するよう要求し,かつ,同女の性的羞恥心を害する図画を送付する行為をし,もってストーカー行為をした。」との事実を認定したが,被告人の行為はストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「法」という。)2条2項にいうストーカー行為には該当せず,仮に該当するとしても可罰的違法性はなく,被告人は無罪であるから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認及び法令適用の誤りがある,というのである。 そこで,記録を調査して検討すると,当裁判所も,原判決が「認定した犯罪事実」及び「補足説明」において認定,判示するところは正当として是認することができる。以下,所論に鑑み,若干付言する。 所論は,① 被告人の行為は,交際していた被害者との関係を清算処理するための連 罪事実」及び「補足説明」において認定,判示するところは正当として是認することができる。以下,所論に鑑み,若干付言する。 所論は,① 被告人の行為は,交際していた被害者との関係を清算処理するための連絡手段を確保する目的で行われたものであって,被告人には,法2条1項本文にいう恋愛感情等を充足する目的はなかった,② 被告人は,手紙で,被害者に対して電話やメールの着信拒否設定の解除を要望し,あるいは解除されていない事実を指摘したに過ぎず,同項3号にいう義務のない行為を要求したものではない,③手紙の全体的な内容からは,原判決のように暗に要求に応じなければ報復的な行動に出ることを匂わせたなどと評することはできず,2通目の手紙に同封された被害者の裸体写真も,一連の写真のごく一部を構成するもので,わいせつ性もない上,手紙には,被告人が被害者との関係に区切りを付け,写真の処分を被害者に委ねる旨記載されていたのであり,被告人の行為は,同条2項にいう不安を覚えさせるような方法によるものであったとはいえない,④ 被告人の行為は,その回数や間隔等に照らせば,同項の「反復して」という要件を満たさない,⑤ 被告人が手紙に写真を同封したのは1回だけであり,同条1項8号所定の行為を反復したとはいえないから,同条2項の要件を満たさない,などとして,被告人の行為はストーカー行為には該当しないと主張する。 しかしながら,①については,原判決が判示するとおり,被告人と被害者は平成14年11月ころから交際を始め,一時は互いの住居で同棲生活を送り,結婚をも意識していたところ,被害者は徐々に被告人の態度に嫌気がさし,平成15年9月6日には両親が被害者宅に来て別れ話が出たものの,被害者はその後も被告人との関係を完全には断ち切れずに,両親の目に触れないようにして被害者宅等で被告人と性的 被告人の態度に嫌気がさし,平成15年9月6日には両親が被害者宅に来て別れ話が出たものの,被害者はその後も被告人との関係を完全には断ち切れずに,両親の目に触れないようにして被害者宅等で被告人と性的関係を持つなどしていたが,同年10月18日の被害者の誕生日には被告人がプレゼントをしたり,帰りを待ち伏せしてプロポーズしたにもかかわらず,これに応じないなど,関係はさらに悪化し,結局,同月末ころには性的関係を持つこともなくなり,被害者は被告人からの携帯電話等にも出ず,メール等も無視していたことが認められ,また,同年11月6日には被害者が母親を伴って被告人方に被告人の自転車を返還しに赴いており,その際には母親と被告人との間で言い合いとなり,警察を呼ぶ事態にまでなり,その際には,被告人は交際の精算として外食費の支払等を要求しているのであって,もはやこの時点では関係の修復が極めて困難であることは,被告人自身も十分認識していたものと推認されるところである。 そして,このような状況下で,被告人が4回にわたり原判示のとおりの行為に及んでいることや,送付した手紙の文面に加え,被告人自身,捜査段階において,当時の心境が被害者に対する愛憎の入り混じったものであり,手紙の文面には被害者に対する脅しのような意味と非難めいた気持ちが含まれていた旨供述していることに照らせば,被告人は,法2条1項本文にいう恋愛感情等を充足する目的を有していたと認められ,被告人が被害者との関係を清算処理するための連絡手段を確保する目的を有していたとしても,それが上記目的と相容れないものではない。②については,被告人は,被害者に宛てた4通の手紙で,一貫して被害者が電話やメールの着信を拒否していることに言及して,その解除を求めるとともに,「僕は理不尽なことをされなければ理不尽なことをするつもりはありま は,被告人は,被害者に宛てた4通の手紙で,一貫して被害者が電話やメールの着信を拒否していることに言及して,その解除を求めるとともに,「僕は理不尽なことをされなければ理不尽なことをするつもりはありません。」「このままではその行動について,僕に対する悪意と解釈するより仕方ないと考えます。」「前回の手紙にも記したとおり,残念乍ら悪意と解釈するより他ありません。」「引き続き当方に対する悪意と解釈するより他ありません。」などと書き添えているのであって,被告人自身,捜査段階において,そのように書いた方がプレッシャーになると思ったなどと供述していることに照らしても,被告人が被害者に対して義務のない行為を要求したことは明らかである。③については,被告人は各手紙に上記のとおりの文言を書き添えていること,同年12月7日には,そのような手紙とともに,交際中に撮影した被害者の裸体写真を含む多数のプリントを封筒に入れて被害者宅の玄関ドアの新聞受けに投函しており,被告人も,捜査段階において,手紙や写真などを準備している途中,何らかの事件に結び付く可能性があるかも知れないと思ったが,既に大半を準備してしまっており,年末も近いことから,結び付いても仕方ないと思い,手紙と写真を分けずに送り届けた旨供述していることによれば,被告人の手紙の投函等の行為が,被害者に不安を覚えさせるような方法により行われたことも明らかである。④については,被告人は,被害者に対して通信手段の確保を求めて同年11月7日から同年12月17日ないし19日にかけて4回にわたり手紙の投函等の行為を繰り返したもので,そのうち3回は12月中に行われており,同種事犯に比して多数回にわたるとはいえないものの,反復性の要件を満たしていないとはいえない。⑤については,【要旨】法は,個人の身体,自由及び名誉に対する危害の発 のうち3回は12月中に行われており,同種事犯に比して多数回にわたるとはいえないものの,反復性の要件を満たしていないとはいえない。⑤については,【要旨】法は,個人の身体,自由及び名誉に対する危害の発生を防止し,あわせて国民の生活の安全と平穏に資するという目的を達成するため,恋愛感情その他好意の感情等を表明するなどの行為のうち,相手方の身体の安全,住居等の平穏若しくは名誉が害され,又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる社会的に逸脱したつきまとい等の行為を規制の対象とした上で,その中でも相手方に対する法益侵害が重大で,刑罰による抑制が必要な場合をストーカー行為として,相手方の処罰意思に基づき刑罰を科すこととしたものであり(最高裁平成15年12月11日第一小法廷判決・判例時報1846号153頁参照),このような法の趣旨や,ストーカー行為が様々な嫌がらせ的な行為を繰り返すという特質を有するものであることからすると,法2条1項各号に定められた行為が全体として反復されたと認められれば,各号所定の行為がそれぞれ反復されていなくても,同条2項の要件は満たされると解すべきであるから,これと同旨の判断を示した原判決に誤りはない。 そして,被告人の行為の態様,特に被告人が上記のとおりの写真を投函している点を見れば,被告人の行為に可罰的違法性がないということもできない。 所論はいずれも採用できず,事実誤認及び法令適用の誤りをいう論旨は理由がない。 よって,刑事訴訟法396条により本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官高橋省吾裁判官沼里豊滋裁判官家令和典) 判官 高橋省吾 裁判官 沼里豊滋 裁判官 家 令和典

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る