- 1 -平成30年7月6日宣告平成30年(わ)第31号殺人未遂被告事件判決 主文 被告人を懲役2年6月に処する。 未決勾留日数中150日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,経済的困窮に悩み,妻であるA(当時73歳。以下「被害者」という。)と無理心中しようと考え,平成29年11月6日午前10時40分頃,札幌市a区b条c丁目d番e号f号室の当時の被告人方において,ベッド上で寝ていた被害者に対し,殺意をもって,手に持った包丁(刃体の長さ約18.5センチメートル)で頸部等を数回突き刺すなどしたが,被害者が抵抗したため,被害者に加療約7日間を要する右前頸部刺創,後頸部刺創,左頬部刺創等の傷害を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げなかった。 (法令の適用)罰 条刑法203条,199条刑種の選択有期懲役刑法律上の減軽刑法43条本文,68条3号未決勾留日数の算入刑法21条刑の執行猶予刑法25条1項訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(弁護人の主張に対する判断)第1 本件では,被告人が本件犯行当時精神病症状を伴わない重症うつ病エピソー - 2 -ドに罹患していたことに争いはないところ,弁護人は,このことが被告人の善悪を判断する能力及び行動をコントロールする能力に大きな影響を与え,心神耗弱の状態にあったと主張する。 第2 捜査段階で被告人の精神鑑定を行った精神科医Bの証言によれば,被告人は,遅くとも平成29年8月頃 する能力及び行動をコントロールする能力に大きな影響を与え,心神耗弱の状態にあったと主張する。 第2 捜査段階で被告人の精神鑑定を行った精神科医Bの証言によれば,被告人は,遅くとも平成29年8月頃には精神病症状を伴わない重症うつ病エピソードを発症し,そのため激越症状(不安や焦りが強く出る症状)や自殺念慮が生じるとともに視野狭窄(他のことが考えづらい状態)に陥り,単に自殺をしたのみでは,自身の借金で妻が困ることを心配し,妻を殺して自分も死ぬという無理心中を決意し,本件犯行に及んだものと認められ,精神障害が犯行に一定の影響を与えたといえる。 もっとも,被告人の供述等によれば,被告人は,本件犯行に当たりちゅうちょしており,妻から抵抗を受ける中で「離婚したいならしてやる」等と聞き,攻撃をやめた事実が認められる。このように,被告人は,妻の殺害が悪いことであることを認識し,ためらいながらも犯行に及んでいたところ,妻への心配に対する解決策を与えられたことで,自らの判断によって犯行をやめたものといえる。 これらの事情によれば,被告人は,善悪を判断する能力及び行動をコントロールする能力が著しく低下していたものではなかったと認められる。 以上によれば,被告人が犯行当時心神耗弱の状態にあったとの弁護人の主張は採用できない。 (量刑の理由)被告人は,寝ている被害者が十分に抵抗できない中,その頸部等を目掛けて包丁を振り下ろし,合計6か所の傷を負わせているのであって,その犯行態様は危険であったといえるが,被害者が負った傷が加療約7日間と比較的軽いものにとどまっているのは,被告人にためらいもあったことによるものとうかがわれる。また,無理心中を決意し被害者を殺害しようとしたことは身勝手といわざるを得ないが,被告人は,年齢や身体の不調もあって思うように まっているのは,被告人にためらいもあったことによるものとうかがわれる。また,無理心中を決意し被害者を殺害しようとしたことは身勝手といわざるを得ないが,被告人は,年齢や身体の不調もあって思うように職に就けないこと等から経済的困窮 - 3 -を打開できず,思い悩んだ末本件犯行に及んだものであって,酌むべき点もあるといえる。 これに加えて,示談が成立して被害者が被告人の処罰を求めていないことも考慮すると,執行猶予判決が相当であり,社会復帰後の支援態勢がとられていること,再犯可能性が低いこと等も併せ考え,刑期及び執行猶予期間を定めることとした。 (検察官大友隆,長谷川麻理,国選弁護人齊藤弘毅,奥田真与各出席)(求刑懲役5年)平成30年7月6日札幌地方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官島戸 純 裁判官平 手 健太郎 裁判官亀井直子
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