【DRY-RUN】主 文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事 実 第一、当事者の申立 (原告) 「被告が原告の昭和三九年分の所得税につき、昭和四〇年一〇月一四日付でした 更
主文原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実第一、当事者の申立(原告)「被告が原告の昭和三九年分の所得税につき、昭和四〇年一〇月一四日付でした更正処分のうち総所得金額五九万五四五〇円をこえ二三三万二二五〇円に達するまでの部分を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求めた。 (被告)主文同旨の判決を求めた。 第二、当事者の陳述(原告の請求原因)一、原告は昭和四〇年三月九日被告に対し昭和三九年分の所得税について総所得金額五九万五、四五〇円(内訳、給与所得三二万二、二五〇円、譲渡所得二七万三、二〇〇円)の確定申告をしたところ、被告は昭和四〇年一〇月一四日右所得金額を二三九万七二五〇円(内訳、給与所得三二万二二五〇円、譲渡所得〇、一時所得二〇七万五〇〇〇円)とする旨の更正処分をし、その頃これを原告に通知した。原告はこれを不服として異議申立をし、さらに審査請求をしたところ、大阪国税局長は昭和四一年四月一二日、所得金額のうち一時所得二〇七万五〇〇〇円を二〇一万円に減額し(総所得金額二三三万二二五〇円)、被告の更正処分をその限度において取消す旨の裁決をなし、その頃原告に通知した。 二、被告は原告の昭和三九年分の所得のうち原告が申告した譲渡所得の発生を否定し、これにかえて結局一時所得二〇一万円を認定しているのであるが、原告にはこのような一時所得はないので前記更正処分(裁決により一時取消された部分を除く。)の取消を求める。 (請求原因事実に対する被告の認否)請求原因第一項の事実は認める。 同第二項のうち、被告が更正処分において原告の申告した譲渡所得の発生を否定し、これにかえて結局一時所得二〇一万円を認定したことは認めるが、その余の主張は争う。 (被告の主張)一、原告の昭和三九年分の所得金 のうち、被告が更正処分において原告の申告した譲渡所得の発生を否定し、これにかえて結局一時所得二〇一万円を認定したことは認めるが、その余の主張は争う。 (被告の主張)一、原告の昭和三九年分の所得金額の内容は次のとおりである。 (一) 一時所得収入金額四三〇万円経費額一三万円法定控除前の所得額四一七万円法定控除額(旧所得税法第九条一項) 二一六万円一時所得金額二〇一万円(二) 給与所得収入金額四二万円法定控除額(旧所得税法第九条一項五号、昭和三九年法律第二〇号第三条ロ)九万七七五〇円所得金額三二万二二五〇円二、原告の一時所得の発生原因は次のとおりである。 原告は昭和二〇年六月頃から別紙目録記載の建物(以下本件建物という。)をその所有者Aから賃借して居住していた。Aは昭和三九年七月末頃本件建物をその敷地並にこれに隣接する土地建物と共に名神土地建物株式会社に売渡した。名神土地建物株式会社は、安藤建設株式会社から委託をうけてこの会社がビルデイングを建設するに必要な土地を得るため、本件建物ほか隣接の土地建物を買受けたものであつたので、買受後ただちに原告をはじめとするB、C、D、Eその他の賃借人らと建物立退きの交渉を行ない、原告に対しては立退料四三〇万円を支払うことで明渡の合意が成立した。原告は昭和三九年中に名神土地建物株式会社から立退料四三〇万円を受領し本件建物を同会社に明渡した。原告が名神土地建物株式会社から受領した四三〇万円は立退料である。これは営利を目的とする継続的行為から生じたものではなく、一時的性質のもので、しかも労務その他の役務の対価たる性質を有しないものであるから旧所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの。以下同じ。)第九条一項九号の一時所得に該当する。そこで被告は、前記のとおり、金一三万円を 務その他の役務の対価たる性質を有しないものであるから旧所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの。以下同じ。)第九条一項九号の一時所得に該当する。そこで被告は、前記のとおり、金一三万円を同法第九条一項九号にいう「その収入を得るために支出した金額」と認めてこれを右の四三〇万円から控除し、さらに同法第九条一項本文による法定の除(一五万円)をした金額の一〇分の五に相当する金額二〇一一万円を原告の一時所得金額としたものである。 三、仮に、右立退料の取得が一時所得に該当せず、借家権の譲渡の対価として譲渡所得に該当するとしても、借家権は租税特別措置法第三五条(居住用財産の買換えの場合の譲渡所得の金額の計算)所定の「土地若しくは土地の上に存する権利又は家屋の譲渡」にあたらないから、同条は適用されない。 譲渡所得とした場合の所得金額の計算は次のとおりである。 (一) 収入金額四三〇万円(二) 譲渡資産の取得価額〇原告が本件建物を賃借したのは昭和二〇年六月頃で、権利金は支払つていないから取得価額は零であるが、昭和二七年一二月三一日以前に賃借権を取得しているので、その取得価額は、旧所得税法第一〇条の五が適用され「当該資産の昭和二八年一月一日における価額として命令で定めるところにより計算した金額」とされ、旧所得税法施行規則第一二条の一九第一項によると、これは相続税及び贈与税の課税標準の計算について用いるべきものとして国税庁長官の定めて公表した方法によつて計算することになつているが、国税庁長官の定めて公表した方法では借家権の評価基準についてふれていないから、取得価額は零とするほかない。 (三) 借家権の譲渡に関する経費〇原告は、本件建物から転居先への引越費用として三万円使い、転居先の家屋に関する代金として名神土地建物株式会社に一〇万円渡し いから、取得価額は零とするほかない。 (三) 借家権の譲渡に関する経費〇原告は、本件建物から転居先への引越費用として三万円使い、転居先の家屋に関する代金として名神土地建物株式会社に一〇万円渡しているが、これらはいずれも、借家権の譲渡に関する経費ではない。本件譲渡経費は零である。 (四) 法定の控除二二二万五〇〇〇円旧所得税法第九条一項によつて控除される金額である。 (五) 譲渡所得金額二〇七万五〇〇〇円従つて、仮に本件立退料の受領が譲渡所得であるとしても右譲渡所得金額二〇七万五〇〇〇円は被告のなした更正処分にかかる一時所得金額二〇一万円をこえるものであり、被告の更正処分に違法はない。 (被告の主張事実に対する原告の認否)被告の主張第一項(一)の金額はすべて争う。 同第二項のうち、もとAが本件建物ほか隣接の土地建物を所有していたこと、原告が本件建物をAから賃借していたこと、原告が名神土地建物株式会社から四三〇万円を受領した(ただし、同会社に対する仲介料等を差しひいて現実に受領したのは四〇〇万円である)ことは認めるが、その余の事実は否認する。 同第三項の事実は否認する。 (一時所得に関する原告の反論)原告は、昭和二〇年六月頃、Aから本件建物を期限の定めなく賃借し、以後この建物に居住していたのであるが、昭和三九年頃Aが本件建物ほか隣接の土地建物を他に売却するという話が伝えられたので、交渉のうえ、Aの代理人である不動産仲介業者Fから昭和三九年七月末日、代金一一〇万円で本件建物を買受けた。その後原告は、名神土地建物株式会社の求めにより、同年九月三日本件建物を代金四三〇万円で同会社に売渡し、この代金の中から売買仲介手数料、周旋料として三〇万円を同会社に支払い四〇〇万円受取つた。そして、原告は右のように自分の住宅を売渡したので、これ 年九月三日本件建物を代金四三〇万円で同会社に売渡し、この代金の中から売買仲介手数料、周旋料として三〇万円を同会社に支払い四〇〇万円受取つた。そして、原告は右のように自分の住宅を売渡したので、これにかわる住宅として松原市<以下略>の現住所にある家屋一棟を代金三五〇万円で買取り、登録税、不動産取得税、司法書士手数料として二二万六八〇〇円支出した。この名神土地建物株式会社への売却によつて得た四〇〇万円と現住家屋を購入した際の代金その他の経費合計三七二万六八〇〇円との差額二七万三二〇〇円については、原告は昭和三九年分の譲渡所得として被告に申告し、それに相当する税金を納付ずみである。このような原告の一連の行為は、租税特別措置法第三五条所定の居住用財産の買替えに該当する典型であるから、譲渡所得とせずに一時所得とした被告の更正処分は違法である。 第三、証拠関係(省略) 理由一、被告が原告の昭和三九年分の所得税確定申告(総所得金額五九万五四五〇円、その内訳・給与所得三二万二二五〇円、譲渡所得二七万三、二〇〇円)について、昭和四〇年一〇月一四日、原告の総所得金額を二三九万七二五〇円(内訳・給与所得三二万二二五〇円、一時所得二〇七万五〇〇〇円)とする旨の更正処分をし、これを原告に通知したこと、この更正処分を不服として原告が異議申立と審査請求をしたこと、大阪国税局長が原告の審査請求に対して昭和四一年四月一二日付で所得金額のうち一時所得二〇七万五〇〇〇円を二〇一万円に減額し、その限度において更正処分を一部取消す旨の裁決をなし、その頃原告に通知したことは当事者間に争いがない。 二、本件更正処分の所得金額中、給与所得三二万二二五〇円は、原告のなした確定申告の金額と同額であり従つて本訴において原告の認めて争わない(その違法を主張しない)ところ ことは当事者間に争いがない。 二、本件更正処分の所得金額中、給与所得三二万二二五〇円は、原告のなした確定申告の金額と同額であり従つて本訴において原告の認めて争わない(その違法を主張しない)ところである。 三、一時所得の主張について。 成立について争いのない乙第七号証の一、二、証人Aの証言によつて真正に成立したものと認められる乙第八号証の一、二、同第一一号証、証人Aの証言、原告本人尋問の結果(ただし、後記措信しない部分を除く)を総合すれば、つぎの事実が認められる。 Aは昭和二〇年一月頃父Gが死亡したため家督相続により大阪市<以下略>宅地一七五・一七平方メ-トル(五二坪九合九勺)、同<以下略>宅地四七一・六三平方メ-トル(一四二坪六合七勺)及びこれらの地上にある木造瓦葺二階建居宅二棟(内訳・五戸建一棟、四戸建一棟)の所有権を取得し、右地上建物の一部分である本件建物(一戸)を昭和二〇年五月頃原告に期間の定めなく賃貸し、その余の部分をB、H、C、I、D、その他の賃借人に賃貸していた。昭和三九年五月頃になつて、前記Aは名神土地建物株式会社代表取締役Fから右の土地建物の売却方を求められたので、右物件を一括して買つてくれるなら売却してもよい旨の意向を示し、同会社が売買土地の測量をすることを承諾した。同会社が測量するのを見て原告その他前記借家人等は右売買の交渉が進められていることを知り、同年七月頃Aに対し、「長い間住んでいる我々に相談なしに売つて貰つては困る。売るなら名神土地建物株式会社には売らないで我々に売つてほしい。」と申し入れたが、Aは全物件を一括して売却したいと思つていたので、「買うなら全部を一括して買つて欲しい。」との希望を述べ、その後この希望に対しては原告その他の借家人等から何等の返答・交渉もなく売買の話しは具体的に進展しなかつた。A して売却したいと思つていたので、「買うなら全部を一括して買つて欲しい。」との希望を述べ、その後この希望に対しては原告その他の借家人等から何等の返答・交渉もなく売買の話しは具体的に進展しなかつた。Aは同年九月頃名神土地建物株式会社代表取締役Fとの間で、売買代金を合計三、九〇〇円(契約成立と同時に手付として二〇〇万円支払、残額は昭和四〇年三月三〇日までに分割支払)、建物の明渡しは買主名神土地建物株式会社が原告その他の建物賃借人と話合つて決め、売主Aはこの話合いに協力するが賃借人に対し立退料を支払うときは売主は負担せず買主が賃借人に立退料を支払うとの約束で、前記土地建物を売渡す旨の売買契約を結んだ。その後昭和四〇年一月二七日までには賃借人らの立退きが完了し、買主名神土地建物株式会社はAに売買の残代金全部の支払をした。他方、原告その他の賃借人は、昭和三九年七月頃、前示のように、一度はAに対し賃借人らに売つてくれるように申し入れたが、「賃借建物と土地の全部を買取つてくれるのでなければ応じられない。」旨の返事があつたので買受資金に窮し、賃借人らが買受ける交渉は進展しないままに終つた。家屋立退きの交渉は名神土地建物株式会社の代表取締役Fが賃借人らと行ない、Aは賃借人らと直接立退きの交渉をしなかつた。 Fは原告と交渉の結果、原告は名神土地建物株式会社から立退料として四三〇万円を受取つて本件建物を同会社に明渡すが、税金対策(租税特別措置法第三五条の規定による譲渡所得金額の軽減を図る)のため、売買に関する書類の形式上は、原告がいつたんAから本件建物を買受け原告から名神土地建物株式会社に転売したことにし、そのことについてはAの承諾も得て、事実と相違する虚構の売買契約書(甲第一、二、四号証)を作成の上、建物登記簿上もAから原告を経て名神土地建物株式会社が移 ら名神土地建物株式会社に転売したことにし、そのことについてはAの承諾も得て、事実と相違する虚構の売買契約書(甲第一、二、四号証)を作成の上、建物登記簿上もAから原告を経て名神土地建物株式会社が移転した旨の登記手続をした。原告は右とりきめに従つて、昭和三九年九月乃至一〇月上旬頃名神土地建物株式会社から立退料四三〇万円を受領したが、前記Fに、右のようにAから原告、原告からさらに名神土地建物株式会社にという虚構の事実に基づく所有権移転登記(並にそのための本件建物所有権の区分登記)の登記手続を依頼し、さらに本件建物から退去後の住居建物の購入斡旋方をも依頼していたため、それらの諸費用・手数料として三〇万円を支払い、残額の手取り四〇〇万円を受領して同年一〇月五日頃本件建物を同会社に明渡した。 以上の事実が認められる。甲第一、二号証、第三号証の一から四まで、第四号証及び原告本人尋問の結果中には原告が昭和三九年七月末日A(またはG)から本件建物を代金一一五万円で買受け同年九月三日名神土地建物株式会社に代金四三〇万円で転売し、その旨大阪法務局中野出張所に登記申請した旨の記載・供述があるが、これらの書類は前示のように立退料を受領することによつて原告が負担すべき税金の軽減を図り、これによつて原告が円満に立退くことができるようにするためにFが中心となつて原告やAの了解を得て作成したもので事実と異なるものと認められるし、原告本人尋問の結果中原告がAから本件建物を買受けたという部分は前記認定に照らして措信できない。 してみると、原告が名神土地建物株式会社から受領した四三〇万円が立退料であることは明らかである。 ところで、被告は、右立退料四三〇万円が旧所得税法第九条一項一号から八号までの所得に該当せず、営利を目的とする継続的行為から生じたものではなく、労務そ 三〇万円が立退料であることは明らかである。 ところで、被告は、右立退料四三〇万円が旧所得税法第九条一項一号から八号までの所得に該当せず、営利を目的とする継続的行為から生じたものではなく、労務その他役務の対価たる性質を有しない一時的なものであるから、同法同条同項九号所定の一時所得であると主張する。 同条一項八号によれば、譲渡所得は資産の譲渡に因る所得であり、建物所有を目的とする土地賃借権の設定の対価として支払を受ける金額で土地価額の一〇分の五をこえるものも譲渡所得に含まれる。一時所得は、譲渡所得等同条一項一号乃至八号に定める所得以外の所得で、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得のうち労務その他役務の対価たる性質を有しないものをいう(同条一項九号)のである。従つて、本件立退料が資産の譲渡の対価たる性質を有しているか否かが問題となる。 家屋明渡に際して、家屋所有者から家屋明渡をなす者に対し支払われる立退料は、その具体的事情に応じて各種の性質があり、一般的抽象的には決められないが、本件では、前示のとおり、本件建物の買受人名神土地建物株式会社は原告が適法な(対抗力を有する)家屋賃借人であることを認め、その賃借権を消滅させるために立退料を支払い、原告も立退料を受領することによつて賃借権を放棄し、それに伴つて本件建物を名神土地建物株式会社に明渡す意思で四三〇万円受領したのであるから、本件立退料四三〇万円は本件建物について原告が有していた賃借権を消滅させる対価としての性質を有しているものと認められる。もつとも家屋賃借権は、賃貸人と賃借人との契約に基づく人的関係を基礎としたものであるから、賃借人が賃貸人の意向を無視して賃借権を勝手に他に譲渡し転々流通させることはできないが、法的には財産権の一種であり、賃貸人の承諾を得れば処分( 借人との契約に基づく人的関係を基礎としたものであるから、賃借人が賃貸人の意向を無視して賃借権を勝手に他に譲渡し転々流通させることはできないが、法的には財産権の一種であり、賃貸人の承諾を得れば処分(譲渡、転貸)可能な権利であり、現実の社会生活において経済的には金銭に評価することのできるものであるから、経済的価値を有するもの即ち資産の一つであると解するのが相当である。 ところで譲渡所得は、資産に値上がりを生じた場合、その資産が売却その他処分によつて換価されることにより増加益が実現したときにこれを捕捉して課税するものであつて、処分により増加益が実現したのであれば、必ずしもその原因が売却等資産が他に移転する場合に限らず、資産が消滅(処分の一種)する場合(例えば土地収用によつて、土地及びそれに対する賃借権が収用され、土地所有者、賃借人に補償金が支払われた場合の賃借権の消滅)にも、譲渡所得があつたものといわねばならない。 従つて、原告が家屋賃借権消滅の対価として交付を受けた四三〇万円は、譲渡所得に該当するものというべきである。(なお、賃借権消滅の対価としての立退料を一時所得ではなく譲渡所得と解することは、譲渡所得には経費の控除項目として、取得価額、設備費、改良費が認められている点で、納税者に不利益といえない。)四、租税特別措置法第三五条(居住用財産の買換えの場合の譲渡所得の金額の計算)の適用について。 同条は、個人の住宅建設に便宜を図るため税制上の措置として、個人が「土地若しくは土地の上に存する権利又は家屋の譲渡をし」た場合に限定して、その前後において当該個人の居住の用に供する土地等又は家屋を取得した場合に、譲渡所得の金額の計算について特例をもうけたものであるが、本件では、前示第三項認定のとおり原告が名神土地建物株式会社に対して消滅させた( いて当該個人の居住の用に供する土地等又は家屋を取得した場合に、譲渡所得の金額の計算について特例をもうけたものであるが、本件では、前示第三項認定のとおり原告が名神土地建物株式会社に対して消滅させた(放棄処分した)のは借家権であり、借家権は「土地若しくは土地の上に存する権利又は家屋」に該当しないから、同条の適用による特例を認めることはできない。 五、譲渡所得の経費について。 (一) 譲渡に関する経費前示第三項で認定したとおり、原告は立退料四三〇万円の中から名神土地建物株式会社に対し諸費用、手数料として三〇万円支払つているが、これは原告が本件建物の賃借権を消滅(放棄)させることに関するものではなく、本件建物をAから原告、原告からさらに名神土地建物株式会社に順次譲渡したという虚構の事実をつくり出すために必要とした登記手続に関する費用及び転居先の建物の購入についての周旋料として支払つたものであるから資産の譲渡に関し通常必要とされる経費とは認められない。 (二) 借家権の取得価額前示のように原告は昭和二〇年五月頃貸借契約を結んだのであるから、旧所得税法第一〇条の五第三項が適用され、本件借家権の取得価額は昭和二八年一月一日における価額として命令で定めるところにより計算した金額とされるが、この金額を認めるに足りる証拠はない。 (三) 設備費、改良費、原告が本件建物について設備費又は改良費を支出した事実を認むべき証拠はない。 従つて、本件譲渡所得については経費は零というほかない。 六譲渡所得金額の計算収入金額四三〇万円経費額〇法定控除額二二二万五〇〇〇円譲渡所得金額二〇七万五〇〇〇円七以上の事実によれば、原告の昭和三九年分の所得のうち一時所得金額を二〇一万円(収入金額四三〇万円、経費額一三万円、法定控除額二一六万円、一時所得金額二 〇〇〇円譲渡所得金額二〇七万五〇〇〇円七以上の事実によれば、原告の昭和三九年分の所得のうち一時所得金額を二〇一万円(収入金額四三〇万円、経費額一三万円、法定控除額二一六万円、一時所得金額二〇一万円)とした本件更正処分(大阪国税局長の審査裁決によつて一部取消された残余の部分)は、所得金額において前示第六項で認定した譲渡所得金額二〇七万五〇〇〇円をこえないものであり、且つ、本件の場合の一時所得と譲渡所得のちがいは収入金額の法的性質についての判断(法的評価)の相違に由来するにすぎないものであるから結局適法というべく、原告の請求は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。 (裁判官山内敏彦藤井俊彦井上正明)(別紙目録省略)
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