昭和36(オ)1379 労働委員会命令取消請求

裁判年月日・裁判所
昭和39年8月4日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。      上告費用は上告人らの負担とする。          理    由  上告代理人成富信夫、同成富安信、同風間武雄、同山分栄、同岩野正、同伴昭彦 の

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判決文本文4,748 文字)

主    文      本件上告を棄却する。      上告費用は上告人らの負担とする。          理    由  上告代理人成富信夫、同成富安信、同風間武雄、同山分栄、同岩野正、同伴昭彦 の上告理由第一点について。  (一) 論旨は、精神病院の特殊性にかんがみ、その従業員の争議行為は禁止さ れていると解すべきものとする。  しかしながら、わが国においては、労働者の争議権は憲法二八条によつて保障さ れているのであるから、これを奪うためには特別の立法を必要とすべく、たとえ精 神病院の使命、業務が一般企業のそれと著しく異なるところがあり、或は、上告人 病院が精神衛生法に基づき、新潟県によつてその設置すべき精神病院の代用機関と して指定された病院であるとしても、所論のごとく電気事業及び石炭鉱業における 争議行為の方法の規制に関する法律三条、船員法三〇条、地方公務員法三七条の類 推解釈等によつて、その従業員の争議行為を全面的に禁止することは許されないも のといわなければならない。  (二) また、論旨は、精神病院の薬剤士、看護人、看護婦が争議行為として投 配薬、診療の補助、看護等の業務を放棄することは、労働関係調整法三六条に違反 するものとする。  しかしながら、労働関係調整法三六条は、人命保護のために設けられた規定では あるが、それが明らかに安全保持の「施設の……維持又は運行」といつていること からみても、また、それが右「施設の維持又は運行」の停廃、妨害以外の争議行為 はたとえ人命に危害を及ぼすものであつてもすべて許される趣旨を規定したもので はないことに思いをいたせば、ここにいう安全保持の施設とは、たとえば、炭鉱に - 1 - おけるガス爆発防止施設、落盤防止施設、通信施設のごとき、直接人命に対する危 害予防のため若しくは衛生上欠くことのできない物的施設に限られ、病院の にいう安全保持の施設とは、たとえば、炭鉱に - 1 - おけるガス爆発防止施設、落盤防止施設、通信施設のごとき、直接人命に対する危 害予防のため若しくは衛生上欠くことのできない物的施設に限られ、病院の従業員 はこれに含まれないものと解するのが相当である。それ故、所論のごとく労働関係 調整法三六条の規定を拡張解釈して、精神病院の従業員が争議行為としてその平常 の業務を放棄することが同法条に違反するとなすこともまた許されないものといわ なければならない。  (三) さらに、論旨は、要するに、原判決が本件争議行為は精神病院従業員の 争議行為として正当性の範囲を逸脱したものではないとして、被上告人の所論命令 を是認したことは、憲法一二条、二八条の解釈を誤まり、労働組合法七条一号の適 用を誤つたものであるとする。  しかしながら、病院、診療所などの医療施設に勤務する医師、薬剤師、看護婦等 といえども、現行法上、団結し、団体交渉を行い、それが行き詰つた場合、所定の 手続をふんだうえで、平常の業務を放棄する争議行為をなし得るのは、疑いを容れ ないところであり、また、これら従業員の平常の業務が患者の治療、投配薬、治療 等の補助であることも、明らかである。そして、以上のことは、精神病院において も、異なるところはない。従つて、精神病院の従業員が争議行為をしたことにより、 患者の治療に支障を来たす事態が発生したとしても、ただそれだけの理由で、争議 行為が直ちに正当性の範囲を逸脱するとは認め得ないものといわなければならない。  さればといつて、生命・身体の安全を脅かし、患者の病状に相当の悪影響を及ぼ すような行為は、特別の立法の有無に拘らず、争議行為としてもなし得ないこと、 条理上、当然である。それのみならず、治療の停廃も或る程度の期間継続すれば、 患者の病状は悪化することがあり、また、病状の変 すような行為は、特別の立法の有無に拘らず、争議行為としてもなし得ないこと、 条理上、当然である。それのみならず、治療の停廃も或る程度の期間継続すれば、 患者の病状は悪化することがあり、また、病状の変化は必らずしも予測を許さない ものであるから、病院の従業員が争議行為を行うにあたつては、予め患者の生命・ 身体の保全に遺憾なきを期するとともに、患者の身体・精神の回復を図るべき病院 - 2 - の使命に対する管理者側の真摯な努力にも拘らず、緊急事態発生の客観的危険性が 現われた場合には、その善後措置に協力すべき義務があり、これを故なく拒否すれ ば、争議行為は、その点においてもまた、不当になるもの、と解するのが相当であ る。  いま、本件についてこれをみるのに、原判決(その引用する第一審判決)の確定 した事実によれば、上告人A1(上告人病院)は、「D病院」と称する精神病院を 経営する医療法人であり、上告人A2は、上告人病院の委託により入院患者に作業 療法を実施する社会福祉法人であるが、その各従業員組合は、労働関係調整法所定 の手続を経て争議権を確立したうえで、昭和三元年三月一九日から同月二一日まで 事務職場を中心とする第一波のストライキを、また、同月二三日から事務職場のほ か薬局、医療関係の職場等全般にわたり第二波ストライキを行い、該争議は、地元 労働委員会のあつせんにより同年四月二目解決をみるにいたつたものであるところ、 当時、上告人病院には約四五〇名の精神病患者が収容されており、これに対する病 院側の総要員は一二八名、内非組合員は、理事四名、医師八名(内一名は嘱託医)、 事務係七名、試用期間中の者二名、臨時雇三名、合計二四名であつたけれども、試 用および臨時雇の五名は組合の説得に応じて就労しなかつたので、実際に業務に従 事し得る非組合員は一九名に過ぎなかつたのであつて、精神病 名、試用期間中の者二名、臨時雇三名、合計二四名であつたけれども、試 用および臨時雇の五名は組合の説得に応じて就労しなかつたので、実際に業務に従 事し得る非組合員は一九名に過ぎなかつたのであつて、精神病院患者の多くは、他 の普通の患者と異なり、病識がないため医師に抵抗して治療を拒んだり、幻覚にか られて突発的行動に出ることもあるので、治療にあたつては強制力を用いたり、警 備体勢をととのえなければならず、そのため、電撃療法を実施する場合には一時に 数人の介補者を必要とするにも拘らず、右のような人的構成の下で看護人および看 護婦が介補の業務を放棄した結果、(イ)電撃療法の対象患者は八〇名、インシュ リン療法の対象患者は約八名いたのに、第二波中は医師だけで治療を行つたので、 電撃療法は内一三名の対象患者に、インシュリン療法は内二名位の対象患者に、し - 3 - かもサブシヨツクの方法により、実施されたに過ぎず、(ロ)また、平常は治療室 において一日平均約三五名の患者に対して治療が行われていたのに、第二波突入後 は治療患者の数が一日平均二五名に減少したとはいえ、その他の業務、なかんづく、 投配薬、給食、清掃、巡視、緊急の場合における医師への連絡、狂そう或いは無意 識状態にある患者の保護等については、必らずしも完全であつたとはいえないにせ よ、概ね平常どおり行われていた、というのである。  されば、右第一波のストライキが正当であることは明らかであり、また第二波の ストライキも、それにより患者の治療に或る程度の支障を来たしたとはいえ、未だ もつてその病状に相当の悪影響を及ぼしたものとは認められない。したがつて、本 件争議行為が全体として正当性の範囲を逸脱したものでないとした原判決の結論は、 是認することができ、本件争議の目的が所論のごとく賃上げに過ぎなかつたとして も、かかる事情は、右の れない。したがつて、本 件争議行為が全体として正当性の範囲を逸脱したものでないとした原判決の結論は、 是認することができ、本件争議の目的が所論のごとく賃上げに過ぎなかつたとして も、かかる事情は、右の判断を左右するに足る資料となし得ない。  論旨は違憲をも云為するけれども、その実質は、結局、本件争議行為の違法を主 張するに帰着するものであつて、適法な上告の理由とは認められない。 論旨は、 すべて、採用し得ない。  同第二点および上告代理人安藤剛、同伴純の上告理由第一点について。  論旨は、原判決が本件争議行為の正当性を認めた判示に理由不備、理由齟齬の違 法があるものとする。  原判決の所論判示には周到な用意を尽さなかつたきらいはあるとしても、その趣 旨とするところは、前示上告理由第一点に記載した事実関係の下においては、第一 審判決のごとく病院管理者側において代替要員の獲得等患者の治療に万全を期する ための努力を尽したかどうかを論ずるまでもなく、本件争議行為は精神病院従業員 の争議行為として正当性の範囲を逸脱したものではないというにあることが窺い得 られるので、原判決に所論の違法があるとはいえない。 - 4 -  論旨は、採用し得ない。  上告代理人安藤剛、同伴純の上告理由第二点について。  論旨は、本件争議行為は労働関係調整法三六条違反の行為であるとの上告人らの 主張に対して、原審が単に上告人病院に勤務する薬剤師、看護人および看護婦は右 法条にいわゆる安全保持の施設に該当しないと判示しただけで上告人らの右主張を 排斥したことは、釈明義務に違反するものとする。  しかしながら、記録によれば、上告人らは、労働関係調整法三六条違反の主張と して、第一審以来、薬剤師、看護人および看議婦が同法条にいわゆる安全保持の施 設に該当するから、本件争議行為は違法であると陳述しているに過ぎない 録によれば、上告人らは、労働関係調整法三六条違反の主張と して、第一審以来、薬剤師、看護人および看議婦が同法条にいわゆる安全保持の施 設に該当するから、本件争議行為は違法であると陳述しているに過ぎないのである から、さらに上告人病院にそれ以外の施設で右にあたるものがあるかどうかは、上 告人らにおいて主張、立証すべき事柄であつて、原審がこの点について上告人らに 対し何等の釈明をも求めなかつたとしても、これに所論の違法があるとはいえない。  論旨は、採用し得ない。  同第三点について。  論旨は、原判決が上告人病院の入院患者Eの死亡は本件争議行為に基因するもの ではないと認定したことに実験則違反があるとする。  しかしながら、原判決(その引用する第一審判決)の右認定は、その挙示の証拠 に照らして是認することができ、右認定及びそれに至る過程に所論の違法あるを見 い出し得ない。  論旨は、畢竟、独自の見解に立脚して原判決を攻撃するか、或は原審の専権に属 する証拠の取捨、選択、事実の認定を非難するに帰着するものであつて、採用し得 ない。  よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員 の一致で、主文のとおり判決する。 - 5 -      最高裁判所第三小法廷          裁判長裁判官    石   坂   修   一             裁判官    五 鬼 上   堅   磐             裁判官    横   田   正   俊             裁判官    柏   原   語   六             裁判官    田   中   二   郎 - 6 -    中   二   郎 - 6 -

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