平成30(た)1 再審請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年6月15日 神戸地方裁判所
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判決文本文15,522 文字)

平成30年(た)第1号決定 主文 本件再審請求を棄却する。 理由 第1 本件再審請求の趣意等本件再審請求の趣意は,本件被告事件には刑事訴訟法(以下「刑訴法」という。)435条6号及び1号各所定の再審理由があるから,再審開始の決定を求める,というものであり,これに対する検察官の意見は,上記再審理由は認められないから,本件再審請求を棄却すべきである,というものである。 第2 本件の審理経過等記録(本件被告事件の記録を含む。以下同様。)によれば,以下のとおり認められる。 1 強盗事件の発生平成13年6月19日午後3時10分頃,自称Aほか1名の黒人男性が,兵庫県姫路市内所在のB郵便局(以下,単に「郵便局」という。)において,郵便局員らに対し,こもごも暴行脅迫を加えて現金2275万6000円を強取する,という強盗事件(本件被告事件)が発生した。 2 確定判決の内容等 請求人は,Aと共謀して本件強盗に及んだとして,神戸地方裁判所姫路支部に公訴を提起されたが,当初から一貫して,本件強盗はAとCなる人物の犯行であり,請求人は犯人ではないから無罪である旨主張した。これに対し,確定審となる神戸地方裁判所姫路支部は,後記①ないし⑦の各間接事実に加え,請求人とAの仕事上及び身分上の密接な関係等を考慮すると,請求人がAの共犯者として本件強盗を敢行したと強く推認され,これに合理的疑い を生じさせる事情もないとの理由から,請求人が本件強盗の実行犯人であることを認め,請求人に対し,懲役6年の有罪判決(確定判決)を宣告した。 この有罪判決は,控訴棄却判決及び上告棄却決定を経て確定した。 確定審が請求人を有罪と認定する根拠とした間接事実は次のとおりで を認め,請求人に対し,懲役6年の有罪判決(確定判決)を宣告した。 この有罪判決は,控訴棄却判決及び上告棄却決定を経て確定した。 確定審が請求人を有罪と認定する根拠とした間接事実は次のとおりである。 ① 犯行には2丁の拳銃様の物が使用されたが,請求人はそれまでにエアガンを少なくとも2丁は購入して所持していた。 ② 犯行に際し,犯人らが乗っていた車両(シルビア)は,請求人が購入し,請求人が当時経営していた会社の事務所や倉庫として使用・管理していた建物(以下「本件倉庫」という。)に置かれていたものである上,請求人が購入した別の車両のナンバープレートが取り付けられていた。 ③ 犯人らが犯行時に着用していた雨合羽は,請求人らが当時の勤務先(D)の作業において使っていたものと同様のものである。 ④ 犯行後,犯人らの乗った車両は本件倉庫に止められ,ナンバープレートは取り外されてナンバーが焼き切られていた。 ⑤ 被害現金は,本件倉庫内に隠され,犯行に用いられた雨合羽や靴等も本件倉庫内から見つかった。 ⑥ 本件倉庫は,請求人が管理しており,他の者が請求人の了解を得ないまま本件倉庫内の物品を利用して犯行を行い,本件倉庫内において証拠物の隠匿やナンバープレートの数字を焼き切るなどの作業を行うことが容易にできるとはいい難い(以下「間接事実⑥」という。)。 ⑦ 犯行の約30分後には,本件倉庫の近辺で請求人が目撃されており,これは請求人が犯人であるならば不自然ではない時間と場所での目撃内容といえる。 3 差戻前再審請求審の判断内容等請求人は,本件強盗の犯人(実行犯人)ではないと主張して本件再審請求をし,弁護人は,請求人につき刑訴法435条6号の無罪を言い渡すべき明らか な証拠を新たに発見 審請求審の判断内容等請求人は,本件強盗の犯人(実行犯人)ではないと主張して本件再審請求をし,弁護人は,請求人につき刑訴法435条6号の無罪を言い渡すべき明らか な証拠を新たに発見したとして,請求人以外の者の本件倉庫への立入り可能性に関する証拠,請求人の実行犯人性に関する証拠及びCの実在性に関する証拠等を提出した。 これに対し,差戻前再審請求審となる神戸地方裁判所姫路支部は,本件強盗の被害現金が犯行から1時間10分以内という極めて短時間のうちに本件倉庫に持ち込まれ,その全額が保管されていたことを「中核的事実関係1」とし,本件強盗には請求人が購入していた車両(シルビア)や請求人が購入した別の車両に付けられていたナンバープレートが使用されたのみならず,これらも犯行から極めて短時間のうちに本件倉庫に持ち込まれ,同ナンバープレートには罪証隠滅とみられる工作が施されていたことを「中核的事実関係2」として,これらに請求人が本件強盗の犯人の一人であることに対する強い推認力を認め,さらに,中核的事実関係1の強い推認力は,請求人に本件倉庫の管理権限があること自体を基礎とするものであるから,請求人以外の者でも本件倉庫内に立ち入ることが可能であったという事実が存在しても,基本的にはその推認力が大きく減殺されることはないとした上で,弁護人が提出した証拠は,仮に,請求人が実行犯人ではないとしても,実行犯人以外の共犯でもないとの合理的な疑いを抱かせるものではないから,明白性は認められないとして,再審請求を棄却する決定(以下「差戻前棄却決定」という。)をした。 4 即時抗告審の判断内容等差戻前棄却決定に対し請求人が即時抗告の申立てをしたところ,即時抗告審となる大阪高等裁判所は,確定審で取り調べられた証拠と新証拠とを総合的に評価 。)をした。 4 即時抗告審の判断内容等差戻前棄却決定に対し請求人が即時抗告の申立てをしたところ,即時抗告審となる大阪高等裁判所は,確定審で取り調べられた証拠と新証拠とを総合的に評価した結果,確定判決が認定した犯罪事実の一部に合理的な疑いが生じたものの,公訴事実の同一性が認められる範囲内でなお同一の構成要件に該当する事実が認定できるという心証を得た場合に再審を開始しない余地のあることを認めつつ,再審請求審においても,請求人に対する不意打ちを防止し,請求人に対して十分防御の機会を与える必要があるとした上で,本件では,①実行共 同正犯かその他の共犯かによって間接事実の持つ意味や構造に変化が生じることも考えられ,推認過程に対する反論や反証も異なり得るから,その点について請求人に主張立証の機会を与えなかったことは不意打ちに当たること,②差戻前棄却決定にいう中核的事実関係1及び2による犯人性の推認は,事実上も,第三者が請求人に無断で本件倉庫に物品を持ち込み隠匿することや証拠隠滅の作業をすることがない管理状態であったことが前提となるはずであり,請求人の管理権限そのものを基礎として,中核的事実関係1に強力な推認力を認めるのは相当でなく,論理則,経験則に反し,各中核的事実関係の推認力が減殺されるか否かは,請求人の関与なしに,請求人以外の者が本件倉庫に立ち入り,物品の隠匿や毀棄等の行為ができたかという点に関して,弁護人から提出された証拠の信用性等を検討してはじめて評価できるが,差戻前棄却決定はこの点について検討しておらず,審理が尽くされているとはいえないこと,③確定判決は,請求人が実行犯人であることを前提としているところ,本件は,請求人が実行犯人であることから,共同正犯と評価,認定した事案ということができ,請求人の実行犯人性に合 いるとはいえないこと,③確定判決は,請求人が実行犯人であることを前提としているところ,本件は,請求人が実行犯人であることから,共同正犯と評価,認定した事案ということができ,請求人の実行犯人性に合理的疑いが生じるのであれば,残る間接事実によって請求人の共犯性を認定できるかについてはさらに検討を要することとなるのに,差戻前再審請求審における審理経過をみても,弁護人からこの点に関連する複数の証拠が提出され,検察官も各証拠の信用性を争うなどしていたにもかかわらず,差戻前棄却決定は,各証拠の信用性について検討を加えておらず,請求人の実行犯人性を前提としない場合に,請求人の共犯性が認定できるか否かの間接事実の検討について,十分な審理が尽くされているとはいえないことを理由として差戻前棄却決定を取り消し,本件を神戸地方裁判所に差し戻す決定をした(以下「本件差戻決定」という。)。本件差戻決定は,最高裁判所が弁護人の特別抗告を棄却する決定をしたことにより確定した。 第3 当裁判所の判断1-刑訴法435条6号の再審理由の有無について弁護人が刑訴法435条6号に該当するものとして提出している証拠は,請 求人以外の者の本件倉庫への立入り可能性に関する証拠,請求人の実行犯人性に関する証拠及びCの実在性に関する証拠に分類されるので,順次検討する(以下,「再審弁」の番号は,弁護人が差戻前再審請求審,即時抗告審又は当審において提出した証拠の番号を,「1審検」の番号は,確定審の第1審記録中の証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を,「控訴審弁」の番号は,確定審の控訴審記録中の証拠等関係カードにおける弁護人請求証拠の番号を示す。)。 1 請求人以外の者の本件倉庫への立入り可能性に関する証拠についてこの証拠に関する弁護人の主張の概要は以下の 確定審の控訴審記録中の証拠等関係カードにおける弁護人請求証拠の番号を示す。)。 1 請求人以外の者の本件倉庫への立入り可能性に関する証拠についてこの証拠に関する弁護人の主張の概要は以下のとおりである。 ア確定判決が間接事実⑥を認定したのは誤りであり,実際には,本件倉庫は,普段から日中は扉の鍵が開いており,事件当日も鍵が開いていた。 イ確定判決が間接事実⑥を認定した根拠は,㋐本件倉庫で誰も作業をしていないときはいつも本件倉庫の扉に鍵がかかっており,請求人,その妻及びA以外の人物が本件倉庫の鍵を開けるのを見たことがなく,事件当日も午後2時前後頃までの間,本件倉庫の扉には鍵がかけられたままであった旨のEの証言と,㋑事件当日の午後4時20分頃,本件倉庫の扉には鍵がかかっており,F警察官(以下「F」という。)が鍵の開いていた窓から本件倉庫内に入った旨のF及びGの各証言であると考えられる。 ウしかしながら,Hの陳述書(再審弁14。以下「H 陳述書」という。),Eの陳述書(再審弁40。以下「E陳述書」という。),Iの陳述書(再審弁71。以下「I陳述書」という。)及びDVD(再審弁70)によれば,上記㋐㋑の各証言はいずれも虚偽であって,信用性はない。 エ請求人以外の者が本件倉庫に立ち入ることが困難ではなかったのであるから,本件倉庫から被害現金等が発見されたからといって,請求人が本件強盗の犯人であると推認することはできない。なお,F及びGの上記㋑の証言が虚偽であるとすると,本件強盗の被害現金が犯行から1時間10分 以内という極めて短時間のうちに本件倉庫に持ち込まれ,その全額が保管されていたという事実(差戻前棄却決定にいう「中核的事実関係1」)の存在にも疑いが生じる。 H陳述書についてア Hは,H陳述書に 短時間のうちに本件倉庫に持ち込まれ,その全額が保管されていたという事実(差戻前棄却決定にいう「中核的事実関係1」)の存在にも疑いが生じる。 H陳述書についてア Hは,H陳述書において,㋐事件の1か月弱ほど前,本件倉庫の前を通ったとき,大扉が全開になっていることがあったので,請求人がいれば声をかけようと思い,大声で倉庫の中に向かって請求人の名を呼んだが,返事はなかった,㋑大扉の左側の窓には防犯のため格子が内側から付けられているため,その窓から人が侵入することはできない,㋒確定審で取り調べられた証拠では,事件の翌日に本件倉庫の捜索が行われ,自分が立ち会ったようになっているが,自分が警察官から連絡を受けて本件倉庫の中に入ったのは事件当日の夜だけであり,翌日には行っていない,などと述べている。 イしかしながら,まず,㋐の点について,その陳述を裏付ける客観的な証拠は見当たらず,陳述内容も体験しなければ語り得ないようなものではない。また,㋑の点について,検察官の再審請求に対する意見書添付資料8及び9によれば,本件倉庫の窓枠から倉庫内エレベーターの壁面まで約35.5センチメートルの間隔があり,その隙間を通って窓から倉庫内に入ることが可能であることが認められるところ,Hの陳述はこれと矛盾する。さらに,㋒の点について,写真撮影報告書添付の写真(1審検29番号1及び3,1審検52番号1)に,陽光を透過している窓や,夜であれば見えないはずの本件倉庫前の景色がHの背景として写っていることと矛盾する。以上によれば,Hの陳述は,全体として信用性に乏しい。 加えて,Hは,上記㋐に関連して,請求人の妻に電話をして鍵を掛けた方がいいと伝えたところ,同人は請求人が本件倉庫の扉を開けたまま近くの友人のところに遊びに行ったと話した旨陳述し て信用性に乏しい。 加えて,Hは,上記㋐に関連して,請求人の妻に電話をして鍵を掛けた方がいいと伝えたところ,同人は請求人が本件倉庫の扉を開けたまま近くの友人のところに遊びに行ったと話した旨陳述しており,この点を併せれ ば,このときも本件倉庫の鍵を開けたのは請求人であり,その後一時的に同所から離れていたにすぎないのであるから,その陳述内容を前提としても,普段から,請求人の関与なく請求人以外の者の本件倉庫への立入りが可能な状況にあったとの疑いが生じるものともいえない。 ウ以上によれば,H陳述書によって確定審におけるE,F及びGの証言の信用性に疑義は生じない。なお,当審では,本件差戻決定の指摘(前記第2の4の②)を踏まえ,H陳述書の信用性を吟味するため,Hの証人尋問を実施したが,その結果を踏まえても,H陳述書の証拠価値を高める事情は認められず,上記判断は左右されない。 E陳述書についてア Eは,E陳述書において,警察官から本件倉庫の扉のことなどを聞かれた際,早く事情聴取を終えて仕事をしたいと思っていたことから,自分の記憶があいまいでよくわからないことについても,警察官に言われたとおりの事実を適当に答え,検察官の事情聴取や裁判所における証人尋問の際にも,早く終わりたいと思って同じことを話した旨陳述する。 イしかしながら,記録によれば,Eは,確定審において,主尋問のみならず,弁護人の反対尋問における種々の追及に対しても,本件倉庫の扉には南京錠がかけられ,誰もいないときには鍵がかかっており,請求人,その妻及びA以外の者が鍵を開けることはなかった旨を一貫して明言していたことが認められ,このような確定審における証言内容や態度に照らすと,Eが,確定審において,記憶があいまいでよくわからないのに上記の証言 びA以外の者が鍵を開けることはなかった旨を一貫して明言していたことが認められ,このような確定審における証言内容や態度に照らすと,Eが,確定審において,記憶があいまいでよくわからないのに上記の証言を貫いたとは,にわかに考え難い。 また,当裁判所は,本件差戻決定の指摘(前記第2の4の②)を踏まえ,E陳述書の信用性を吟味するため,Eの証人尋問を実施した。しかるところ,当審証人尋問において,Eは,朝から午後にかけて本件倉庫の扉が開いていたことがある旨確定審とは異なる証言をしたものの,扉が開いてい るのを見たわけではなく,開いているときもあるのではないか,などとそれが想像であるかのようなことを述べた上,確定審において記憶にないことは言っていない,記憶にあることだけを話した,などとも述べているところである。このような曖昧模糊とした供述内容等にも照らせば,E陳述書及びEの当審証言のうち,確定審の証言と齟齬する部分は信用し難い。 ウ以上のとおり,E陳述書にEの確定審証言の信用性を減殺させる証拠価値があるとは認められない。 I陳述書についてア I陳述書は,確定審の控訴審において,弁護人が請求し(控訴審弁22),検察官に不同意とされてその請求を撤回するとともに,Iの証人尋問請求をしたが,裁判所が請求を却下したものであるから,新規性は認められない。 イまた,I陳述書の要旨は,「私が,請求人の倉庫に行ったときには,大概倉庫は開いていた。請求人以外にも,その知人らが入れ替わりやって来て,倉庫の中で自分の仕事をしていた。写真を見せてもらったAほか1名も請求人と一緒に働いていた。ほかにも何人かの黒人が請求人の倉庫で働いていた」というものであるが,誰が鍵を管理しているか等について確認したものではなく,この陳述を前提と 真を見せてもらったAほか1名も請求人と一緒に働いていた。ほかにも何人かの黒人が請求人の倉庫で働いていた」というものであるが,誰が鍵を管理しているか等について確認したものではなく,この陳述を前提としても,請求人の承諾なく第三者が本件倉庫内に立ち入ることが可能であった疑いが生じるものではない。 DVD(再審弁70)についてDVD(再審弁70)には,男性が,本件倉庫の鍵は大概開いていて請求人がいなくても鍵だけは開いていた旨発言している場面が録画されており,弁護人は,この男性がIであると主張している。 しかるに,この発言を裏付ける具体的な資料はないし,この発言自体,本件倉庫の鍵が開いていた具体的時期や状況等について言及のない漠然としたものにとどまっており,信用性に乏しく,この証拠によって確定審における Eの証言の信用性に疑義が生じるとはいえない。 小括以上の次第で,弁護人提出に係る請求人以外の者の本件倉庫への立入り可能性に関する証拠の中に,確定判決における間接事実⑥の認定を揺るがすに足りるものはない。 2 請求人の実行犯人性に関する証拠について 弁護人が請求人の実行犯人性に関するものとして提出している証拠は,防犯カメラの映像に関する証拠,目出し帽の付着物に関する証拠,請求人の血液型に関する証拠,請求人の足のサイズに関する証拠,請求人の左足の負傷に関する証拠及び指掌紋に関する証拠に分類できるので,順次検討する。 防犯カメラの映像に関する証拠についてア弁護人は,確定審において防犯カメラの映像として2本のビデオテープ(1審検160,162。以下,1審検160のビデオテープを「検160ビデオ」と,1審検162のビデオテープを「検162ビデオ」という。)が取り調べられており,鑑定書等(再 として2本のビデオテープ(1審検160,162。以下,1審検160のビデオテープを「検160ビデオ」と,1審検162のビデオテープを「検162ビデオ」という。)が取り調べられており,鑑定書等(再審弁10,再審弁31の1,2,再審弁78,79,81ないし84,101ないし104)によれば,これらのビデオテープはいずれも捜査機関が意図的に偽造,改ざんしたものであることが明らかであるところ,画像がいわゆる「砂嵐」となっている部分を復元したDVD(再審弁86)及び写真(再審弁92)によれば,Aが郵便局で目出し帽を脱いでいなかったことが認められ,そうすると,郵便局に遺留されていた目出し帽はA以外の実行犯人が遺留したものということになり,この事実関係は請求人の実行犯人性に疑いを生じさせるものである旨主張している。 イしかしながら,DVD(再審弁86)及び写真(再審弁92)を参照してみても,「砂嵐」が始まる前の画像(画像上の時刻の表示が15時13分41秒までのもの)及び「砂嵐」が終了した後の画像(画像上の時刻の表 示が15時13分43秒以降のもの)は確認できるものの,時刻の表示が15時13分42秒の画像は確認できない。したがって,「砂嵐」となっている部分が復元されているとは認められず,Aが郵便局内で目出し帽を脱いでいなかったという事実も認められない。弁護人の上記アの主張は前提を欠く。 ウまた,弁護人は,写真(再審弁93。画像上の時刻の表示が15時13分58秒のもの)に,A以外の実行犯人が写っているとも主張するけれども,この写真を参照しても人物の姿は確認できない。 エ以上のとおり,弁護人提出に係る防犯カメラの映像に関する証拠はいずれも請求人の実行犯人性に合理的疑いを生じさせるに足りるものではない。 オなお,弁護人の主 参照しても人物の姿は確認できない。 エ以上のとおり,弁護人提出に係る防犯カメラの映像に関する証拠はいずれも請求人の実行犯人性に合理的疑いを生じさせるに足りるものではない。 オなお,弁護人の主張に鑑み,捜査機関が検160ビデオ及び検162ビデオを意図的に偽造,改ざん等したとは認められないことについて,若干補足して説明を加えておく。 記録によれば,以下のとおり認められる。 a 郵便局では,タイムラプス記録方式という,ビデオテープの記録時間を延ばすために時間間隔を空けて間欠録画する方式が取られており,記録モードとしては,2時間用録画テープに約3日間分の間欠録画を行うモード(以下「間欠モード」という。)と2時間分の連続録画を行うモード(以下「連続モード」という。)の2つがあった。平時は間欠モードで録画され,警報装置のボタンが押されることによって連続モードに切り替わるようになっていた。 タイムラプス記録方式で録画された映像を確認する際には,タイムラプスビデオデッキを用いて記録モードと同じモードで再生する必要があり,間欠モードで録画された映像を一般のビデオデッキ(連続モード)で再生すると,フレーム再生(2つのフィールドが重なった状態)され,さらに早送りされたような映像となる。 b 検160ビデオは,捜査機関が郵便局から提出を受けたVHSテープ(以下「原本テープ」という。)を,鑑識課員が再現実験を行った際に誤って一部を上書きしたものである(1審検163)。 c 検162ビデオは,原本テープを適正な時間モード(間欠モード又は連続モード)で再生し,これを連続モード録画でダビングすることによって作成されたVHSテープである。 上記のダビングをする際,記録モードが切り替わるテープ位置で,再生側も録画側も一時停 モード又は連続モード)で再生し,これを連続モード録画でダビングすることによって作成されたVHSテープである。 上記のダビングをする際,記録モードが切り替わるテープ位置で,再生側も録画側も一時停止して,再生モードを手動で切り替え,再び再生及び録画をする必要があり,その際に,ノイズが発生したり,ノイズ時間の長さが原本テープとは変わったりする可能性がある。 d したがって,検162ビデオは,検160ビデオを単純に複製したものではない。 検160ビデオを通常のビデオデッキでダビングしたVHSテープ又はそれを更にデータ化したDVDを再生した場合,フレーム再生(2つのフィールドが重なった状態)され,さらに早送りされたような映像となることなどが考えられる。 これに対し,検162ビデオを通常のビデオデッキでダビングしたVHSテープ又はそれをさらにデータ化したDVDを再生した場合には,フレーム再生はされないことなどが考えられる。 以上を踏まえてさらに記録を検討すると,弁護人が前記アイで問題にしている「砂嵐」は,郵便局員が警報装置のボタンを押したことで録画モードが間欠モードから連続モードに切り替わった後,再び間欠モードに戻った際に生じたものと考えて矛盾がないものといえる。 そして,「砂嵐」が生じている前後の画像の状況等に照らせば,「砂嵐」が生じている時間帯にA以外の実行犯人は画面に映っていなかったものと考えられる。そうすると,捜査機関において,請求人が本件強盗の実 行犯人でないことを隠蔽する目的で,A以外の実行犯人が映っていない時間帯の画像を消去して「砂嵐」を作出したなどとは到底考え難いというべきである。 弁護人が提出している鑑定書等で示されている諸々の見解は,いずれも,前述したタイムラプス記録方式で記録されたVHSテー 間帯の画像を消去して「砂嵐」を作出したなどとは到底考え難いというべきである。 弁護人が提出している鑑定書等で示されている諸々の見解は,いずれも,前述したタイムラプス記録方式で記録されたVHSテープの特性等を正解しないものであるか,あるいは,その見解から直ちに捜査機関が原本テープに故意に改ざん等を加えたと疑うことはできないものなどであって,当裁判所の判断を左右するものではない。 目出し帽の付着物に関する証拠についてア弁護人は,証拠(再審弁3の1,2,再審弁26,再審弁27の1,2,再審弁28の1,2,再審弁34ないし36,41,89)によれば,㋐郵便局に遺留されていた緑色の目出し帽(以下「緑色目出し帽」という。)から請求人の毛髪やDNA型が検出されず,他方,緑色目出し帽には請求人及びAの毛髪とは類似性の乏しい人毛が付着しており,緑色目出し帽の付着物から請求人及びAのものとは一致しないDNA型が検出された事実,㋑本件倉庫から発見された青色の目出し帽(以下「青色目出し帽」という。)から,請求人の毛髪やDNA型が検出されず,他方,青色目出し帽の付着物から請求人及びAのものとは一致しないDNA型が検出された事実が認められ,これらの事実からすると,請求人の実行犯人性に合理的な疑いが生じる旨主張する。 イしかしながら,防犯カメラ映像,緑色目出し帽の遺留状況及びAの確定審における供述等の記録によれば,緑色目出し帽をAがかぶっていたことは動かし難い事実であると認められ,弁護人が指摘する毛髪等の付着状況を踏まえても,犯行時にA以外の実行犯人がかぶっていたものとは認められないから,上記㋐はそもそも請求人の実行犯人性とは無関係である。 また,上記㋑については,請求人が青色目出し帽をかぶっていたならば 必 外の実行犯人がかぶっていたものとは認められないから,上記㋐はそもそも請求人の実行犯人性とは無関係である。 また,上記㋑については,請求人が青色目出し帽をかぶっていたならば 必ず請求人のDNA型等が検出されるといえるものではないし,捜査機関による鑑定が行われた平成13年7月5日から弁護人依頼に係る鑑定が実施されるまでの間には長い年月が経過し,保管者や場所が移動するなどしており,この間,捜査関係者など複数の者が青色目出し帽に直接触れた可能性等を否定できないから,青色目出し帽の付着物から請求人及びAのものとは一致しないDNA型が検出されたからといって,そのDNA型が本件強盗の実行犯人のものであるとは断定できない。したがって,上記㋑の事実によって,請求人の実行犯人性に合理的な疑いが生じるとはいえない。 請求人の血液型に関する証拠についてア弁護人は,証拠(再審弁6ないし8,再審弁9の1ないし6,再審弁46,87,88)により,捜査機関において,当初,請求人の血液型はB型と把握されていたが,実際にはAB型であり,他方,請求人は,捜査機関から,A以外の実行犯人の血液型はB型と聞かされていたことが認められるところ,以上の事実関係によれば,請求人は本件強盗の実行犯人ではあり得ない旨主張する。 イしかしながら,記録上,A以外の実行犯人の血液型は不明であり,捜査機関において,当初,請求人の血液型をB型と認識し(1審検130),請求人に実行犯人の血液型がB型であると伝えていたとしても,それにより実行犯人の血液型がB型であると認定できるものではない。そうすると,請求人の血液型がAB型であるという事実によって,請求人の実行犯人性に合理的な疑いを生じるとはいえない。 請求人の足のサイズに関する証拠に がB型であると認定できるものではない。そうすると,請求人の血液型がAB型であるという事実によって,請求人の実行犯人性に合理的な疑いを生じるとはいえない。 請求人の足のサイズに関する証拠についてア再審弁20として提出された書面の中には,本件強盗の発生から9年近く後に,靴店において,請求人の足のサイズが右27.9センチメートル,左28.1センチメートルと計測された旨の記載がある。 そして,弁護人は,A以外の実行犯人が履いていた靴のサイズが27セ ンチメートルであることに照らすと,上記の足のサイズの請求人がこの靴を履けるはずがないから,再審弁20は請求人の実行犯人性に合理的な疑いを生じさせる証拠である旨主張する。 イしかし,上記サイズの人物が27センチメートルのサイズの靴を履けるはずがないとはいえないのであり,現に,記録(1審検131,132,217)によれば,足のサイズが29センチメートルのAは,事件当時,サイズの表示が26.5センチメートルの靴を履いていたものと認められる。したがって,弁護人が主張する足のサイズの事実によって,請求人の実行犯人性に合理的な疑いを生じるとはいえない。 請求人の左足の負傷に関する証拠についてア報告書(再審弁15)について 報告書(再審弁15)は,当時の弁護人Jが,診断書(控訴審弁25),所見メモ(控訴審弁26)及びカルテ(写し・控訴審弁41)を作成したK医師から,上記診断書等の記載事項等について聞き取った内容を記載したもので,請求人は,事件当時,左膝内側半月断裂,左大腿骨内顆骨壊死の状態にあり,痛みのため左足を引きずっていたことは間違いない旨の記載がある。 そして,弁護人は,報告書(再審弁15)によれば,請求人は,事件当時 ,事件当時,左膝内側半月断裂,左大腿骨内顆骨壊死の状態にあり,痛みのため左足を引きずっていたことは間違いない旨の記載がある。 そして,弁護人は,報告書(再審弁15)によれば,請求人は,事件当時,左足を引きずっていたと認められるところ,請求人が,郵便局のカウンターを越えて現金を強取したとすれば,請求人が左足を引きずっているところが目撃されたはずであるのに,そのような証拠はないことからすると,報告書(再審弁15)は請求人が本件強盗の実行犯人であることに疑いを生じさせる証拠である旨主張する。 そこで検討するに,記録によれば,上記診断書,所見メモ及びカルテ(写し)は,いずれも確定審の控訴審で弁護人が請求し,上記診断書及び所見メモの各同意部分並びにカルテ(写し)が採用の上取り調べられ, 弁護人が不同意部分を撤回した上で,K医師の証人尋問を請求したが裁判所が請求を却下したことが認められる。以上の事実関係によれば,報告書(再審弁15)の記載内容は実質的に確定審の控訴審において審理の対象とされていたものといえるから,報告書(再審弁15)に新規性はない。 また,記録によれば,K医師は,検察官の照会に対し,請求人は事件当時も必死の状況になれば全力疾走は不可能とはいえない旨回答していたことに加え,請求人は,確定審の第1審において,種々の弁解をして犯行を否認する中,事件当時走ることができる状態にあったことを認める供述をしていたものである。これらからすると,請求人が,迅速な行動を必要とする場面において,足が悪いことに他者が気付かない程度に迅速な動きができた可能性はあると認められる。 イ Lの陳述書(再審弁16)について Lは,陳述書(再審弁16)において,本件強盗の実行犯人2名を目撃した際,2名と かない程度に迅速な動きができた可能性はあると認められる。 イ Lの陳述書(再審弁16)について Lは,陳述書(再審弁16)において,本件強盗の実行犯人2名を目撃した際,2名とも足を引きずっていなかった旨述べている。 弁護人は,Lの上記陳述は,確定審で取り調べられたLの供述調書(1審検12)では触れられていなかったものであるから,新規性が認められるし,報告書(再審弁15)等によれば,請求人は,事件当時,左足を引きずっていたと認められるから,請求人は本件強盗の実行犯人ではないということとなり,明白性も認められる旨主張する。 そこで検討すると,Lは,確定審で取り調べられた供述調書(1審検12)で,本件強盗の実行犯人が足を引きずっていなかったとは明示していないものの,郵便局から2人の男性が飛び出してきて,走って自動車に乗り込んだのを目撃した旨供述しており,実質的にみて,足を引きずるなどの状況にはなかったことを述べているものといえるから,Lの陳述書(再審弁16)に新規性は認められない。 また,前記アで説示したとおり,請求人が,迅速な行動を必要とする場面において,足が悪いことに他者が気付かない程度に迅速な動きができた可能性はあると認められるのであるから,目撃者において,実行犯人が足を引きずっているように見えなかったという事実によって,請求人が本件強盗の実行犯人であることに合理的な疑いが生じるとはいえない。 ウ以上のとおり,請求人の左足の負傷に関する証拠によって,請求人の実行犯人性に合理的な疑いを生じるとはいえない。 指掌紋に関する証拠についてア弁護人は,証拠(再審弁42ないし44,90,96ないし99)によれば,本件倉庫から発見されたエアガン 行犯人性に合理的な疑いを生じるとはいえない。 指掌紋に関する証拠についてア弁護人は,証拠(再審弁42ないし44,90,96ないし99)によれば,本件倉庫から発見されたエアガンの箱や取扱説明書から請求人の指掌紋が検出されず,同取扱説明書から請求人及びAの指紋とは一致しない指紋が検出されている事実が認められ,これらの事実は請求人の実行犯人性に合理的な疑いを生じさせるものである旨主張する。 イしかしながら,請求人がエアガンの箱や取扱説明書に触ったら必ずその箱や取扱説明書から請求人の指紋が検出されるとは限らないから,本件倉庫から発見されたエアガンの箱や取扱説明書から請求人の指紋が検出されなかった事実によって,請求人の実行犯人性に合理的な疑いが生じるとはいえない。 また,エアガンの製造過程など本件強盗とは別の機会に,請求人及びA以外の者の指紋がエアガンの取扱説明書に付着し,その指紋が検出される可能性が考えられるから,エアガンの取扱説明書から請求人及びAの指紋とは一致しない指紋が検出された事実によって,請求人の実行犯人性に合理的な疑いが生じるとはいえない。 ウ以上によれば,弁護人が提出した指掌紋に関する証拠は,いずれも明白性がない。 小括以上のとおり,請求人の実行犯人性に関する証拠の中に,刑訴法435条6号の要件を充たすものはない。 3 Cの実在性に関する証拠について弁護人は,Cが実在している旨主張し,その事実や関連事実を立証するものとして証拠(再審弁17,18,再審弁19の1,2,再審弁22,23,再審弁31の1,2,再審弁80)を提出している。 しかしながら,Cが実在しているという事実関係は,請求人を本件強盗の実行犯人であると認定した確定判決の ,再審弁19の1,2,再審弁22,23,再審弁31の1,2,再審弁80)を提出している。 しかしながら,Cが実在しているという事実関係は,請求人を本件強盗の実行犯人であると認定した確定判決の判断構造に全く影響を与えるものではないから,上記の証拠にいずれも明白性はない。 4 前記1ないし3において検討したもののほか,弁護人が提出した全ての証拠(当審に加え,差戻前再審請求審及び即時抗告審において提出されたものをも含む。)を踏まえて記録を精査しても,請求人が本件強盗の実行犯人であるとした確定判決の事実認定に誤りがあるとは認められない。 5 以上によれば,刑訴法435条6号の再審理由は認められない。 第4 当裁判所の判断2-刑訴法435条1号の再審理由の有無について 1 弁護人は,刑訴法435条1号にいう「確定判決」は,刑事の確定判決に限られず,請求人が提起している別件の国家賠償請求事件において証拠の改ざん,偽造又は変造を認定した判決が確定した場合は,これも「確定判決」に含まれるから,本件につき刑訴法435条1号の再審理由が認められる旨主張する。 2 しかしながら,弁護人の主張自体,別件の判決が確定したというのではないのみならず,そもそも刑訴法435条1号にいう「確定判決」とは,刑事の確定判決をいい,国家賠償請求事件の確定判決は含まれないと解されるから(最高裁判所第一小法廷平成31年2月12日決定・裁判所時報1718号3頁参照),弁護人の主張はそれ自体失当である。 3 なお,記録を精査しても,確定判決が証拠の標目に掲げた証拠の中に,偽造 等されたものがあるとも認められない。すなわち,弁護人が刑訴法435条1号に該当する証拠として主張するもののうち,検160ビデオ及び検162ビデオが偽造等されたものとは認められないこと 等されたものがあるとも認められない。すなわち,弁護人が刑訴法435条1号に該当する証拠として主張するもののうち,検160ビデオ及び検162ビデオが偽造等されたものとは認められないことについては,前記第3の2オで説示したとおりであり,そのほかの証拠は,そもそも確定判決の証拠の標目に掲げられていないか,あるいは,弁護人が信用性の乏しいH陳述書及びHの当審証言に依拠して偽造等の主張をしているものにすぎない。 そうすると,刑訴法435条1号該当性について確定判決に代わる証明(刑訴法437条)があったとみることもできず,弁護人の主張が認められる余地はない。 4 以上によれば,刑訴法435条1号の再審理由は認められない。 第5 結論よって,本件再審請求は理由がないから,刑訴法447条1項により,主文のとおり決定する。 令和2年6月15日神戸地方裁判所第1刑事部 裁判長裁判官飯 島 健太郎 裁判官松井 修 裁判官成田昌平

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