平成4(行コ)18 所得税更正処分取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成8年1月31日 名古屋高等裁判所 租税
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判決文本文48,916 文字)

○ 主文本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一控訴人ら 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人が昭和五八年六月一六日付けで承継前の原告Aの昭和五六年分所得税についてした更正のうち分離課税の長期譲渡所得の金額七一六八万六四二〇円を超える部分並びに同人の同年分所得税に関する過少申告加算税賦課決定のうち税額七七万七一〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定を取り消す。 3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 二被控訴人主文同旨第二当事者の主張当事者双方の主張は、次のとおり付加するほか、原判決の事実摘示記載のとおりであるから、これを引用する。 (控訴人らの主張)一適用条文の誤りに基づく本件処分の違法について 1 原判決は、本事案に租税特別措置法(以下「法」という。)三七条の五を適用すること(被控訴人は、本件処分に当たり法三七条の五を適用した。)が誤りであり、本事案には法三七条を適用すべきことを明らかにした。 2 ところで、租税法体系の下では、租税軽減措置を受けるべく措定された特例適用条文について、納税者(申告者)に選択権が権利として付与されている。 この選択権は、特例適用を受けるか否か、受けるとしても、どの特例条文の適用を受けるのかを選択する権利であり、申告納税制度の重要な内容をなしているから、この選択は、納税者の申告に係らしめられており、その結果が有利になるか否かは、納税者の判断にゆだねられている。 したがって、納税者が、申告時に、ある特例条文の適用を求めた場合、納税者がこれに拘束されることはもとより、課税庁も、更正等に当たって特例適用条文を変更することは許されないものというべきである。 また、特例適用条文に関する規定は、申告後の納税義務を確認するという租税手続法としての内 されることはもとより、課税庁も、更正等に当たって特例適用条文を変更することは許されないものというべきである。 また、特例適用条文に関する規定は、申告後の納税義務を確認するという租税手続法としての内容を有するものであるところ、行政行為の法適法性という見地からすると、特例条文の適用を誤った本件処分には、課税内容の違法除去では救済されない手続的違法性があるものというべきである。 3 したがって、租税軽減措置に関する特例条文の適用を誤った本件処分は、そのことのみで違法なものとして取消しを免れないところ、原判決は、これを取り消さず、法三七条の五の適用による課税額が法三七条を適用して計算した課税額の範囲に収まる旨認定判断し、本件処分を適法として控訴人らの請求を棄却した原判決は、課税額の多寡の違法の是正によっては救済されない手続的違法を看過したものであり、取り消されるべきである。 二土地所有者が買戻しな借地権等の取扱いについてl原判決は、土地所有者が借地権を設定して貸与している場合の借地権部分の事業供与性について、控訴人らが、事業用資産として保有されているのは底地のみであり、借地権は非事業用資産であると解すべきであると主張したのに対し、「土地の所有者が当該土地を第三者に不動産貸付けの事業として賃貸したことにより当該第三者が当該土地につき借地権を取得した場合であっても、当該土地は借地権付の土地になっただけであって、土地所有者が不動産貸付けの事業の用に供しているのが当該土地全体であることに変わりはないのであるから、借地権と底地とを区別して底地のみが事業の用に供されているものと解することは相当でない」として、本件で、Aが買戻した借地権は底地と共に事業用資産であり、譲渡の対象となる資産に該当すると判示した。 2 しかしながら、本件譲渡所得課税における旧借地 されているものと解することは相当でない」として、本件で、Aが買戻した借地権は底地と共に事業用資産であり、譲渡の対象となる資産に該当すると判示した。 2 しかしながら、本件譲渡所得課税における旧借地権部分の取扱いは、次のとおり所得計算されるべきであり、当審においてこれを新たに主張する。 すなわち、本件における譲渡資産は土地それ自体であり、Aが、土地を譲渡するため、借地権消滅の対価として借地人に支払った金員は、当該土地の譲渡費用に該当するものというべきである。けだし、譲渡所得課税の趣旨は、保有資産の価値の増加益に対して課税しようとするものであって、資産が保有者の手を離れるのを機会に、その保有期間中の増加益を清算して課税しようとするものであるところ、本件のように、専ら借地権が設定されている当該土地を譲渡するため、その譲渡契約履行のために借地契約を解除し、その後直ちに当該土地を譲渡した場合には、取得した借地権の増加益を期待したものとはいえず、したがって、本件旧借地権部分の借地権消滅の対価としてAが借地人に支払った金員は、譲渡所得を発生させる資産(借地権)の取得費ではなく、当該土地を譲渡するための費用となるべきものである。 そして、右控訴人らの主張に立脚して、本件譲渡所得額の計算をすると、別表1のとおりとなる。 3 仮に、右主張に理由がないとしても、本件の譲渡資産は、旧底地部分と旧借地部分とに別れるところ、旧借地部分は、短期譲渡所得に該当する非事業用資産として所得計算されるべきである。すなわち、税法上は、ある土地に借地権が設定された場合、土地所有権のうち使用収益権が借地権者に移転し、底地処分権が所有者に止まることを出発点にして、つまり土地が借地権と底地(所有権)に分離されたものとして以後の課税関係が律せられるところ、土地所有者が借地権を買戻して、 使用収益権が借地権者に移転し、底地処分権が所有者に止まることを出発点にして、つまり土地が借地権と底地(所有権)に分離されたものとして以後の課税関係が律せられるところ、土地所有者が借地権を買戻して、これを事業の用に供することなく直ちに土地全体を譲渡した場合には、借地権は民法上混同により消滅するが、税法上はあくまで非事業用資産である借地権と事業用資産である底地とがそれぞれ譲渡されたものと観念し、各々別個の譲渡所得を構成するものと考えるべきである。 そして、右控訴人らの主張に立脚して、本件譲渡所得額の計算をすると、別表2のとおりとなる。 三無償貸借部分と事業用資産の範囲について本件譲渡資産のうち、Aが当初から所有していた土地一一四四・七七平方メートル(原判決添付の別表二の本来部分)の一部には、Bに無償使用させていた土地九八・六〇平方メートルが含まれているが、右無償使用部分の全体に占める割合は八・六パーセントに過ぎず、「事業の用に供されていた部分がおおむね九〇%以上」(法関係通達三七-四)の要件に該当するから、右無償使用部分を含めた本来部分全体が事業用資産に該当するものとして所得計算されるべきである。けだし、控訴人らは、従前、右無償使用部分が原判決添付の別表二の1の土地(一三〇八番の土地)のみに対して占める割合一二・四パーセントを問題にしてきたが、原判決添付の別表二の2の土地(一三一八番の土地)は一三〇八番の土地と一体となってAの事業の用に供されてきたものであるから、その中で無償使用部分が占める割合を取り上げるのが正当であるからである。 本件買換資産である新不動産(原判決添付の別表三の1ないし9の不動産)の全部が事業用資産に該当することは従前主張したとおりである。 四新井組に対する工事支出金等について 1 原判決は、新井組に対する工事支出金 産である新不動産(原判決添付の別表三の1ないし9の不動産)の全部が事業用資産に該当することは従前主張したとおりである。 四新井組に対する工事支出金等について 1 原判決は、新井組に対する工事支出金等二〇五八万三四七八円について、旧不動産が支障なく譲渡されるために支出されたものとして、これを譲渡費用であるとしたが、右判断は、明らかに判例に違反している。 すなわち、所得税法三三条三項に定める「譲渡費用」とは、「譲渡のための周旋料、登記料、借家人の立退科等のような譲渡そのものに関し、直接必要な支出」と解されてきており、これが判例の立場である(東京高裁昭和四八年六月二八日判決・税務資料七〇号五五二頁、同昭和五一年五月二四日判決・税務資料八八号八四一頁、同昭和五二年一〇月一二日判決・税務資料九六号五頁、最高裁昭和五〇年七月一七日判決・訟務月報二一巻九号一九六六頁、神戸地裁昭和六〇年九月三〇日判決・税務資料一四六号七六七頁)。 このように、「譲渡費用」とは、譲渡に際して支出される費用のうち、当該譲渡のために直接必要な費用に限定されているのであって、原判決のように「支障なく譲渡されるために支出されるもの」すべてが譲渡費用となるものではない。仮に、譲渡費用の性格を原判決のように解するとしても、本件の工事支出金等は、その支払がなくても、譲渡に支障がないか、あっても、その支障性は、前記最高裁判決等が譲渡費用に該当しないとしている譲渡不動産の被担保債権の弁済金等よりも低いものである。 2 原判決は、「資産の取得に要した金額」として譲渡による収入金額から控除されるのは、資産の取得に関連して支出した費用のうち、一般的に右取得における当該資産の客観的価値を構成する費用に限定されるとした上、本件の工事支出金等は、新不動産の取得とは直接関係なく支出されたものであり、新 、資産の取得に関連して支出した費用のうち、一般的に右取得における当該資産の客観的価値を構成する費用に限定されるとした上、本件の工事支出金等は、新不動産の取得とは直接関係なく支出されたものであり、新不動産の客観的価値を構成するものではないとして、これが新不動産の取得費に該当しないとした。 しかしながら、税法及び税実務においては、取得費をこれほど厳格に解釈していない。例えば、所得税基本通達三八-九の二は、「いったん締結した固定資産税の取得に関する契約を解除して他の固定資産を取得することとした場合に支出する違約金」を取得費としているが、この違約金が新取得固定資産の客観的価値を構成するとは到底いえない。これは、最終的にはある固定資産を取得する目的の下、時間的にも当事者の意図としても、違約金支出が新固定資産取得との間に相当因果関係ありとして、その取得費性を認めたものにほかならない。 本件においても、新井組に対する工事支出金等と当初目的としていた賃貸マンション「トヤママンション」たる新固定資産の取得との間には、右因果関係があるものと考えるべきであり、事例としては、正に前記通達の内容と何ら変わりがないのであるから、本件工事支出金等を取得費に含めるべきである。 なお、日綿との等価交換契約は、Aにとって、買換資産である新動産の取得を目的として行われたものであるから、その収入印紙代金の全額が買換資産の取得費に当たる。 五譲渡資産と買換資産の対応(買換取得資産を按分計算すること)について原判決は、譲渡資産と買換資産の対応関係につき、譲渡事業用資産に対応する買換資産の取得価額を、譲渡した短期・長期各事業用資産の譲渡時の価額の比により按分して計算しているが、法三七条及び法施行令二五条四項(昭和六二年政令三三三号による改正前のもの)の各規定のどこをみても、買換資産 取得価額を、譲渡した短期・長期各事業用資産の譲渡時の価額の比により按分して計算しているが、法三七条及び法施行令二五条四項(昭和六二年政令三三三号による改正前のもの)の各規定のどこをみても、買換資産の一部のみを按分して譲渡事業用資産に対応させるべきであるとする規定はない。しかるに、原判決は、このような按分方法が相当というのみで、何らの理由も付していない。 前記のとおり、新不動産は、そのすべてが事業用資産であるので、取得資産の全部を譲渡した事業用資産に対応する買換資産とすべきである。 なお、控訴人らは、従前、短期譲渡(付加部分譲渡)所得金額にかかる収入金額に「付随費用一一七万七八五〇円(ワシノ機械との契約書に貼付した収入印紙代三万円、不動産取得税一〇万三〇五〇円、所有権移転登記費用二三万四八〇〇円及び田中製鋼所との間の賃借権確認請求事件に係る弁護士費用七五万円の合計額)」を加えるべきであると主張したが、右主張は撤回する。 六買換特例が適用される場合の譲渡費用の取扱いについて 1 原判決は、法三七条により資産の譲渡による収入金額から買換資産の取得価額を控除した額(譲渡があったものとされる金額)についての譲渡所得金額の計算に当たり、譲渡した資産の取得費及び譲渡費用の合計額のうち、当該譲渡があったとされる範囲に対応する部分の金額を按分計算して、これを譲渡があったとされる金額から控除して譲渡所得金額を算出している。 2 しかしながら、原判決のような計算方法を直接定めた規定はない。そして、特別の規定がない以上、譲渡収入金額は法三七条により譲渡があったものとされる範囲に圧縮されるものの、その譲渡収入金額から譲渡費用の全額が控除されるべきものである。 更に、買換特例の適用を受けた買換資産の取得価額について、いわゆる取引価格の引継ぎ(譲渡資産の取得価額等と譲 範囲に圧縮されるものの、その譲渡収入金額から譲渡費用の全額が控除されるべきものである。 更に、買換特例の適用を受けた買換資産の取得価額について、いわゆる取引価格の引継ぎ(譲渡資産の取得価額等と譲渡費用の合計額のうち譲渡がなかったものとされる範囲に対応する金額とすること)を定めた法三七条の三の規定は、譲渡資産に係る譲渡所得金額を計算する場合に控除される譲渡費用は「譲渡があったとされる金額」の範囲に圧縮されることを当然の前提にしているようにも見えるが、本件のように概算取得費の額により譲渡所得金額を計算する場合には、次のような理由から、このような解釈を当てはめることは妥当ではない。 すなわち、概算取得費控除を規定する法三一条の四は、昭和二七年以前に取得した資産についてはその取得費を証明することが困難である実情にかんがみ、譲渡所得金額の計算上、譲渡収入金額の五パーセントに相当する金額を取得費として控除することを認めたものである(なお、通達〈措通三一の四-一〉により、昭和二八年以後に取得した資産で取得費を証明することができない場合にも準用されている。)。 ところが、買換特例の適用を受ける譲渡資産について法三一条の四の概算取得費により譲渡所得金額を計算する場合には、譲渡があったものとされる譲渡収入金額(譲渡収入金額のうち買換資産の取得額を超える金額)についてその五パーセントに相当する金額を取得費として控除されるだけであって、法三一条の四によって譲渡資産の取得費自体が定められるわけではない。したがって、概算取得費の額により譲渡所得金額を計算する場合には、法三七条の三が引継ぎを定める譲渡資産の取得価額等が定められない以上、法三七条の三の規定は適用される余地がない。 なお、買換資産を更に譲渡するに際し、概算取得費の額により譲渡所得金額を計算する場合には 三七条の三が引継ぎを定める譲渡資産の取得価額等が定められない以上、法三七条の三の規定は適用される余地がない。 なお、買換資産を更に譲渡するに際し、概算取得費の額により譲渡所得金額を計算する場合には、法三七条の三の取引価額の引継ぎの規定を適用する余地はなく、この点からも、法三七条の三の規定は、概算取得費の額により譲渡所得金額を計算する場合には、適用を予定されない規定と解される。 そうすると、法三七条の三の規定は、譲渡所得金額の計算に当たり、概算取得費以外により(いわば実額に基づき)取得費を計算する場合には、買換の特例により譲渡収入金額が圧縮されるとともに、譲渡費用も取得費と同様に圧縮されると解する根拠となり得ても、概算取得費の額により譲渡所得金額を計算する場合には、譲渡費用は譲渡があったとされる範囲の金額に圧縮されるとする根拠にはなり得ない。 七重加算税賦課決定処分の適否について 1 原判決は、「Aが新井組に対して支払った八三五八万二七三九円はトヤマビルが借り入れていた借入金の返済であり、それが新不動産の取得に直接関係しないものであることは明らかであり、かつ、右八三五八万二七三九円の支払が右のようなものであることはAないしCにも自明のことであったにもかかわらず、AないしCは、あえてこれを譲渡所得計算明細書に新不動産の買入代金の一部として記載し、かつ、これに基づいて所得金額をことさらに過少にした内容」の確定申告をし、右八三五八万二七三九円につき事実を隠ぺいし又は仮装したものとし、本件重加算税賦課決定処分を適法であると判示した。 2 ところで、Aが直接新井組に支払った形になっている九六〇〇万円の支払は次の経緯によるものである。すなわち、Aからマンション建築の企画等に関し依頼を受けた(これを「総合企画契約」という。)トヤマビルは、Aが日綿と等価交 新井組に支払った形になっている九六〇〇万円の支払は次の経緯によるものである。すなわち、Aからマンション建築の企画等に関し依頼を受けた(これを「総合企画契約」という。)トヤマビルは、Aが日綿と等価交換を行うためにトヤママンション建築工事を中止したことにより、新井組との間に締結していた建築請負契約解除に伴う損害賠償責任を新井組に対して負うとともに、トヤマビル自身もAの契約解除に伴って莫大な損害を被ることになったので、Aに対して損害賠償請求権の行使をすることになった。このような三者間の関係から、Aが直接新井組に支払った形になっている前記金員の額は、本来ならば、Aがトヤマビルに対し損害賠償債務の履行をなし、その上で、トヤマビルが新井組に対し、同組に対する損害賠償債務と同組からの借入金とを清算支払いするという形態が採られるべきであったところ、書面上は、これを簡略化して、直接Aから新井組に対して九六〇〇万円が支払われた(換言すれば、Aからトヤマビルへの損害賠償債務の履行とトヤマビルから新井組への借入金の返済及び損害賠償の支払いが同時になされた。)形式が残る甲第一二号証の一、二及び第一三号証の一、二の各書面が作成されたものである。 そうすると、Aが新井組に対して支払った金員全部を買換資産の取得費に含まれるとする確定申告の内容を裏付けることを目的として作成されたものと原判決が断ずる乙第一三号証ないし第一五号証の書面は、トヤマビルからAに対して損害賠償請求が成立し得る限度では、仮装でも何でもないものといわなければならない。そして、AないしCは、このような損害賠償も日綿との等価交換を行うための費用に当たるものと考えていたものであり、故意に事実を隠ぺい又は仮装して申告をしたものではない。 (控訴人の主張)一適用条文の誤りに基づく本件処分の違法について 償も日綿との等価交換を行うための費用に当たるものと考えていたものであり、故意に事実を隠ぺい又は仮装して申告をしたものではない。 (控訴人の主張)一適用条文の誤りに基づく本件処分の違法について 1 控訴人らは、特例適用条文に関する規定は、申告後の納税義務を確認するという租税手続法としての内容を有する旨主張するが、課税庁が課税処分を行うために定められた規定は、税法上、青色申告を更正する場合の帳簿書類の調査・理由の附記(所得税法一五五条、法人税法一三〇条)規定されているのみで、これ以外に課税処分を行うための一定の手続要件は定められていない。法三七条及び法三七条の五は、いずれも、譲渡所得が生じる場合、一定の条件の下に、課税の繰り延べを認めたものであり、そのための要件を定めた規定であって、課税庁が処分を行うための手続きを定めた規定ではない。また、両条文は、確定申告書にそれぞれの規定の適用を受けようとする旨の記載をすることが必要であると規定しているが、これも、課税所得の算定のための課税要件の一つを定めたものであって、課税庁の行う更正手続きについて定めた手続規定ではない。 2 控訴人らは、特例条文の適用を誤った本件処分には、課税内容の違法除去では救済されない手続的違法性があり、同処分は、そのことのみで違法なものとして取り消されなければならない旨主張するが、前記のとおり、法三七条及び法三七条の五の規定は、いずれも、課税要件を定めたものであって、控訴人ら主張のような手続規定ではなく、また、課税処分の取消訴訟における実体上の審理対象は、当該更正処分により認定された課税標準等の客観的存否であるから、法三七条の五を適用した場合の課税標準等が法三七条を適用した場合の課税標準等を超えていなければ(言い換えると、当該更正処分に係る課税標準等が客観的に存在すれば) れた課税標準等の客観的存否であるから、法三七条の五を適用した場合の課税標準等が法三七条を適用した場合の課税標準等を超えていなければ(言い換えると、当該更正処分に係る課税標準等が客観的に存在すれば)、当該更正処分は違法の瑕疵を帯びるものではない。 二上地所有者が買戻した借地権等の取扱いについて 1 控訴人らは、本件における譲渡資産は土地それ自体であり、Aが、土地を譲渡するため、借地権消滅の対価として借地人に支払った金員は、当該土地の譲渡費用に該当する旨主張する。 2 しかしながら、そもそも譲渡所得の基因となる資産とは、「法(所得税法)三三条第二項各号に規定する資産及び金銭以外の一切の資産をいい、当該資産には、借家権又は行政官庁の許可、認可、割当て等により発生した事実上の権利も含まれる。」とされている(所得税基本通達三三-一)が、その意味するところは、いわゆるキャピタル・ゲインを生ずべき資産はすべてこれに含まれるものと解される。 そして、借地権も当然、キャピタル・ゲインを生ずべき資産にほかならないから、譲渡所得の対象となる資産となる。 その上で、法三一条及び三二条は、分離課税の対象となる資産として、「土地」のほか、「土地の上に存する権利」を掲げているのであり、借地権は土地の上に存する権利にほかならないから、分離課税とされる譲渡所得の基因となる資産となるのである。 3 控訴人らは、譲渡所得課税の趣旨か保有資産の価値の増加益に対して課税するものであるとし、本件のように、当該土地を譲渡するため、その譲渡契約履行のために借地契約を解除した後直ちに当該土地を譲渡した場合、取得した借地権の増加益を期待したものとはいえないから、本件旧借地権部分の借地権消滅の対価としてAが借地人に支払った金員は、当該土地の譲渡費用になるとする。 しかしながら、一般論としても 渡した場合、取得した借地権の増加益を期待したものとはいえないから、本件旧借地権部分の借地権消滅の対価としてAが借地人に支払った金員は、当該土地の譲渡費用になるとする。 しかしながら、一般論としても、直後に転売する目的をもって借地権あるいは所有権を取得する行為であっても、増加益を期待した取引行為ではないとすることはできないものであって、このことは、実際にかかる転売で利益を上げる例があることからも明らかである。また、そもそも譲渡費用(所得税法三三条三項)とは、資産の譲渡のため直接必要な経費であるから、譲渡資産上の抵当権を抹消するためにした第三者の債務の弁済(最高裁昭和三六年一〇月一三日第二小法廷判決・民集一五巻九号二三三二頁)、譲渡担保の目的となっている資産の譲渡に際してその受戻しに要した特別の経費(東京地裁昭和三九年三月二六日判決・下級民集一五巻三号六三九頁)はこれに含まれないとされている。 以上により、借地権付土地を更地として譲渡するに際し、借地権を消滅させるのにかかった費用が譲渡費用に当たらないことは明らかである。 4 控訴人らは、本件の譲渡資産は、旧底地部分と旧借地部分とに別れ、旧借地部分は、短期譲渡所得に該当する非事業用資産である旨主張するが、右主張が失当であることは、原判決が正当に判示するとおりである。 三無償貸借部分と事業用資産の範囲について 1 控訴人らは、Aが当初から所右していた土地一一四四・七七平方メートルの一部には、Bに無償使用させていた九八・六〇平方メートルが含まれているが、その全体に占める割合は八・六パーセントと僅少で、法関係通達三七-四の要件を満たすから、全部を事業用資産と見るべきであると主張する。 右八・六パーセントの計算方法は、分母に旧不動産のうち原判決別表二の1及び2の土地の合計面積一一四四・七七平方メートル 係通達三七-四の要件を満たすから、全部を事業用資産と見るべきであると主張する。 右八・六パーセントの計算方法は、分母に旧不動産のうち原判決別表二の1及び2の土地の合計面積一一四四・七七平方メートルをとり、分子にBの使用部分九八・六〇平方メートルをとるというものである。 しかしながら、Aが日綿に譲渡した土地は原判決別表二の1ないし3の土地であるから、そのうち、右1及び2の土地のみを取り出して、非事業用資産の割合を計算しても意味のある数値とはいえない。 これを筆単位でみると、一二パーセントを超え(九八・六〇/七九七・〇一)、取引単位でみると、一五パーセントを超え(一九七・九九/一二四四・一六)、いずれにしても、非事業用の割合は一〇パーセントを超えるから、法関係通達三七-四ただし書を適用することはできない。 2 控訴人らは、本件買換資産である新不動産は、トヤマビルがすべてAから一括して賃借を受け、その名において新不動産全部に火災保険を掛けていたのであるから、当初から全部が事業用資産に該当する旨主張するが、右主張が失当であることは、原判決の判断するとおりである。 四新井組に対する工事支出金等について控訴人らは、新井組に対する工事支出金は買換資産の取得費に該当する旨主張するが、同工事支出金は買換資産の設備費及び改良費の性格を有するものではないから、原判決の判断のとおり右工事支出金は買換資産の取得費に該当しないものである。 なお、収入印紙代金五万円のうち、譲渡資産(旧不動産)の売渡しに要する部分の金額三万一四一七円は譲渡費用、買換資産(新不動産)の取得に要する部分の金額一万八五八三円は取得費として処理した原判決は相当である。 五譲渡資産と買換資産の対応(買換取得資産を按分計算すること)について本件譲渡資産である旧不動産及び買換資産である新不動産の する部分の金額一万八五八三円は取得費として処理した原判決は相当である。 五譲渡資産と買換資産の対応(買換取得資産を按分計算すること)について本件譲渡資産である旧不動産及び買換資産である新不動産のいずれにも事業用部分と非事業用部分があるのであるから、法三七条の規定が適用されるためには、譲渡資産及び買換資産がいずれも事業用資産であることを要するところ、譲渡資産のうち、付加部分は短期保有資産であり、本来部分は長期保有資産である。したがって、法三七条の適用に当たっては、事業用資産である短期保有資産及び長期保有資産の各譲渡につき、それぞれの譲渡資産に対応する買換資産の取得価額を算定して譲渡所得金額を計算することが必要であるが、その計算方法としては、原判決のとおり、右の各譲渡資産に対応する買換資産の取得価額を譲渡した短期保有及び長期保有の各事業用資産の譲渡時の価額の比により按分して計算するのが合理的かつ妥当である。 六買換特例が適用される場合の譲渡費用の取扱いについて 1 控訴人らは、買換特例により課税の繰延べが適用される場合、譲渡収入金額は譲渡があったものとされる範囲に圧縮されるものの、譲渡費用の額は、圧縮後の譲渡収入金額から譲渡費用の全額控除されるべきである旨主張する。 2 しかし、買換特例が適用される場合に譲渡費用として控除される金額は、譲渡があったものとされる金額に対応する部分の金額に圧縮されるべきであり、控訴人らの前記主張は次のとおり失当である。 (一) そもそも買換特例が適用される場合には、法三七条による買換特例により譲渡資産の一部について譲渡がなかったものとして取り扱われる部分以外の「課税される譲渡益部分」に応じた取得費及び譲渡費用のみが控除されるとするのが極めて自然というべきである。課税されない譲渡益部分に応じた譲渡費用までも控除 渡がなかったものとして取り扱われる部分以外の「課税される譲渡益部分」に応じた取得費及び譲渡費用のみが控除されるとするのが極めて自然というべきである。課税されない譲渡益部分に応じた譲渡費用までも控除するとなると、譲渡収入とは全く関係のない経費を必要経費として控除するに等しく、所得計算としての合理性を有しないといわざる得ないからである。 (二) 更に、控訴人ら主張のような見解に立つと、課税される部分の占める割合が少ないような場合、譲渡費用の額いかんによっては、その全額を控除することによって、譲渡所得金額がマイナスとなり得ることもあるという不合理な結果が生じることになる。 (三) 現行の法三七条は、本件更正当時と異なり、原則として買換資産の二〇パーセントについては課税されることになっているが、この場合の計算でも控除される譲渡費用(及び取得費とも)は、課税される部分に対応する金額とされており、そこに取得費が概算取得控除方式による場合の例外は認められていない。 (四) 控訴人らは、譲渡所得の計算に当たり、法三一条の四(概算取得費控除)が適用されると、法三七条の三(買換特例の適用を受けた買換資産の取得価額の引継ぎ)の適用がなく、したがって、譲渡収入金額は譲渡があったものとされる金額に圧縮されるものの、譲渡費用はその譲渡収入金額から全額が控除されるべきである旨主張するが、そのように解する文言上の根拠はない。 そもそも、法三七条の買換特例は、譲渡資産の譲渡によって生じた譲渡益の全部又は一部を買換資産に移転するという形で課税の繰延べをさせることを意味し、その課税の繰延べを受けていた部分の金額は、当該買換資産を後日譲渡した際に、その買換資産の保有期間中の値上がり益(本来の譲渡益)と合わせて、買換資産の譲渡益という形で実現することになっている。逆にいうと、課税 繰延べを受けていた部分の金額は、当該買換資産を後日譲渡した際に、その買換資産の保有期間中の値上がり益(本来の譲渡益)と合わせて、買換資産の譲渡益という形で実現することになっている。逆にいうと、課税の繰延べの対象とならない譲渡益部分は譲渡資産の譲渡の際に課税されることになっているのであって、その譲渡益部分を計算するには、課税対象となるべき圧縮された収入金額から、その部分に対応する取得費及び譲渡費用を控除するのでなければ、課税部分に係る譲渡益を適正に算出することはできない。このように概算取得費により取得費が計算される場合、何故譲渡費用のみが全額控除されなければならないのか疑問といわざるを得ない。 七重加算税賦課決定処分の適否についてAが、トヤママンションの建築工事の中止に伴う損害賠償金をトヤマビルに対して支払わなければならない根拠ないし義務のないことは原判決説示のとおりであるほか、Aは右損害賠償金を支払った事実もないものである。 AないしCは、本件申告をした当時、Aが新井組に対して支払った九六〇〇万円のうち八三五八万二七三九円は、トヤマビルが新井組から借り入れていた借入金元本及びその利息金の返済であり、それが新不動産の取得に直接関係ないものであることを十分承知していたにもかかわらず、あえてこれを譲渡所得計算書(乙第二号証)に新不動産の買入代金の一部として記載し、かつ、これに基づいて所得金額をことさらに過少にした内容の本件申告書(乙第一号証)を提出したのであるから、これが原判決説示のとおり隠ぺい、仮装に当たることは明らかである。 第三証拠関係(省略)○ 理由一当裁判所も、本件更正及び本件決定は、いずれも、適法であり、その各取消しを求める控訴人らの本訴請求はいずれも理由がないものと判断するものであるが、その理由は、次に付加、訂正、削除 略)○ 理由一当裁判所も、本件更正及び本件決定は、いずれも、適法であり、その各取消しを求める控訴人らの本訴請求はいずれも理由がないものと判断するものであるが、その理由は、次に付加、訂正、削除するほか、原判決の理由説示記載のとおりであるから、これを引用する。 1 原判決三〇枚目裏一一行目の「相当である。」の後に次のとおり付加する。 「もっとも、前記宥恕規定の趣旨にかんがみると、右特例適用条文の記載に、明らかな誤記や疑義のある記載があって、その記載自体の補正を求める必要があるときには、税務署長が、納税者(申告者)の意思確認を行ない、その補正結果に基づいて課税の処理(適用条文の判断等)を行うことは許容されるものというべきである。」 2 同三五枚目表三行目の「されている」の次に「(乙第二号証参照)」と加入する。 3 同三六枚目表九行目の「調査」の前に「被控訴人主張のとおり」と加入する。 4 同三六枚目裏四ないし五行目の「決すべきものであり」を「決すれば足り」と改める。 5 同一〇行目と一一行目との間に次のとおり付加する。 「(四)控訴人らは、前記説示(原判決引用)のとおり本件申告に係る昭和五六年分のAの譲渡所得額については、法三七条が適用されるべきものであるとすると、被控訴人が法三七条の五を適用してなした本件処分には、課税内容の違法除去では救済されない手続的違法があることになるから、租税軽減措置に関する特例条文の適用を誤った本件処分は、そのことのみで違法なものとして取消しを免れないと主張するので、この点について検討する。 ところで、法三七条及び法三七条の五の各規定についてみるに、右各規定は、いずれも、個人がその所有する資産を譲渡した場合の譲渡所得については、一定の条件の下に、課税の繰り延べを認めることにした上、そのための要件を定めたものであり の五の各規定についてみるに、右各規定は、いずれも、個人がその所有する資産を譲渡した場合の譲渡所得については、一定の条件の下に、課税の繰り延べを認めることにした上、そのための要件を定めたものであり、また、両条文には、確定申告書にそれぞれの規定の適用を受けようとする旨の記載をすることが必要であると規定されているが、これらは、いずれも、譲渡所得の算定のための課税要件を定めたものであって、青色申告を更正する場合の帳簿の調査・理由の附記に関する規定である所得税法一五五条、法人税法一三〇条のように課税処分を行うための一定の手続要件を定めたものではないと解するのが相当である。そして、国税通則法二四条によると、税務署長は、納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正することができるが、この更正は、新たに納税義務を課す処分ではなく、課税要件の充足によって既に成立している課税標準等又は税額等を数額的に確定させる処分であり、それは税額を増加又は減少させる場合にのみ行うものであって、税額算定の根拠事実が異なる場合に行うものではないと解され、したがって、更正処分の取消訴訟における実体上の審理の対象も、当該更正処分による課税標準等又は税額等の適否にあると解されるので、当該更正処分による課税標準等又は税額等が納税者の選択した租税軽減措置に関する特例条文によって計算した客観的な課税標準等又は税額等を上回るものでない限り、当該更正処分は取消原因たる瑕疵を有するものではないというべきである。 すなわち、青色申告を更正する場合の帳簿の調査・理由の附記に関する手続規定に違反する場合には、当該更正処分 回るものでない限り、当該更正処分は取消原因たる瑕疵を有するものではないというべきである。 すなわち、青色申告を更正する場合の帳簿の調査・理由の附記に関する手続規定に違反する場合には、当該更正処分は取消原因たる瑕疵を有する処分であると解すべきであるが、本件のような課税標準等の計算に関する特例規定については、その適用条文を誤った更正処分がなされたとしても、その課税標準額算定の根拠事実に異同があるわけではないのであるから、そのこと自体をもって取消原因たる瑕疵ある処分となるものではなく、当該更正処分による課税標準額が正しい特例規定に基づき計算した課税標準額を上回るものでない限り、当該更正処分は違法とならないものというべきである。 よって、控訴人らの前記主張は採用できず、以下、本件処分に係る課税標準額が納税者であるAによって選択された法三七条に基づいて計算した課税標準額を上回っているかどうかを検討することとする。」 6 同三六枚目裏一一行目の「2事業用資産の範囲」を「2の2事業用資産の範囲」と改め、同行目の前に次のとおり付加する。 「2の1譲渡所得の基因となる資産の範囲(一) 前記認定(原判決引用)のとおり、Aは、自己の所有する原判決添付別表二の1の土地のうち一三二・七一平方メートルを田中製鋼所に賃貸し、また、同土地のうち五六五・七〇平方メートル及び同じく自己の所有する原判決添付別表二の2の土地をワシノ機械に賃貸していたが、Aは、右1及び2の土地を提供し、トヤマビルをして、トヤママンションの建築、賃貸、管理を行わせることを計画し、昭和五四年三月九日、田中製鋼所に対し移転料九〇〇万円を支払って同月二五日限り右賃貸に係る土地の明渡しを受けることを合意したほか、右トヤママンション建築計画中止後の同年一一月二七日、Aは、日綿との間で等価交換方式による金 中製鋼所に対し移転料九〇〇万円を支払って同月二五日限り右賃貸に係る土地の明渡しを受けることを合意したほか、右トヤママンション建築計画中止後の同年一一月二七日、Aは、日綿との間で等価交換方式による金山グランドハイツの建設を進めることにし、ワシノ機械から代金九三〇〇万円で前記同社に対する賃貸土地の借地権及び原判決添付別表二の3ないし5の不動産を買い受けた上、日綿に対し旧不動産を四億八九五七万六九六〇円で譲渡し、新不動産を二億八九五七万六九六〇円で取得する旨の契約を締結し、これを実行したものである。 この事実によれば、Aは、原判決添付別表二の1及び2の土地上にマンションを建築する妨げとなる田中製鋼所及びワシノ機械の賃借権を消滅させるため、田中製鋼所に対しては九〇〇万円の移転料を支払って賃借権を取得し、ワシノ機械からは有償で賃借権を買受けたものと認めるのが相当である。 そうすると、右賃借権の消滅及び買受けは、土地所有者が第三者の有していた賃借権を取得することにほかならないものというべきであり、Aの日綿に対する原判決添付別表二の1及び2の土地の譲渡は、譲渡所得の計算上、譲渡所得の基因となる資産である底地と借地権の譲渡が行われたものと観念するのが相当である。 (二) これに対し、控訴人らは、本件における該渡資産は土地それ自体であり、Aが、土地を該渡するため、借地権消滅の対価として借地人に支払った金員は、譲渡所得を発生させる資産(借地権)の取得費ではなく、当該土地を譲渡するための費用となるべきものであると主張するが、以下に検討するとおり、右主張は失当であり採用できない。 すなわち、譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいい(所得税法三三条一項)、かつ、右資産とは、譲渡性を右する財産をすべて合むものと観念されるところ、この譲渡所得の対象となる資産には、棚卸 できない。 すなわち、譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいい(所得税法三三条一項)、かつ、右資産とは、譲渡性を右する財産をすべて合むものと観念されるところ、この譲渡所得の対象となる資産には、棚卸資産等の一定の資産は含まれないこととされている(所得税法三三条二項)が、法律上、控訴人らが主張するような事情の下で取得した借地権を譲渡所得の基因となる資産から除外した規定は存しない。そして、譲渡所得課税の趣旨は、控訴人ら主張のとおり、保有資産の価値の増加益に対して課税しようとするものであって、資産が保有者の手を離れるのを機会に、その保有期間中の増加益を清算して課税しようとするものであるが、これは、一般的、典型的取引を念頭においたものであり、法律上、取得した直後に転売する目的をもって取得した資産で、保有期間内の譲渡益が期待し得ない資産であることをもって、譲渡所得の対象となる資産であることが否定されているわけではない。 要するに、借地権者が借地権の設定されている土地を所有者に返還して受け取る対価は、譲渡性のある財産と観念される借地権の譲渡の対価として譲渡所得に当たり、反面、借地権の返還を受けた土地所有者は、譲渡所得の対象となる資産(借地権)を取得したものと解するのが相当であり、土地所有者が右土地を他に譲渡した場合には、それがたとえ取得直後に行われたものであっても、借地権部分につき譲渡所得の収入金額を観念することができるものというべきである。仮に、控訴人ら主張のように、税務上、借地権の消滅ないし買戻しの対価は、底地の譲渡費用で、資産の取得費に当たらないとすると、右対価出捐直後に土地を譲渡して収受した金員はすべて底地部分の譲渡対価であるとしか観念できないことになるが、そうだとすると、底地の価額は、借地権の消滅ないし買戻しの前後で大きな相違が生じること と、右対価出捐直後に土地を譲渡して収受した金員はすべて底地部分の譲渡対価であるとしか観念できないことになるが、そうだとすると、底地の価額は、借地権の消滅ないし買戻しの前後で大きな相違が生じることになり、借地権の消滅ないし買戻し後の価額すなわち譲渡の対価は、底地の客観的な価額(時価)を超えるという経済原則に反する不自然な結果をもたらすことになるものといわなければならない。 よって、控訴人らの前記主張は、到底採用できない。」 7 同三七枚目裏九行目の「当該」の前に「その経緯にかんがみれば、元々、借地権の設定されていない土地を事業として賃貸したのであるから、」と加入する。 8 同三九枚目裏四行目の「相当である。」の後に次のとおり付加する。 「更に、旧不動産の譲渡取引につき、土地の筆単位でみると、前記(原判決引用)のとおりBの使用部分は一二・三七パーセントになるが、これを譲渡された土地全体の単位でみると、前記認定(原判決引用)のとおり譲渡対象土地の総面積は一二四四・一六平方メートルであり、非事業用の部分(Bの使用部分とワシノ機械から買い受けた原判決添付別表二の3の土地)は一九七・九九平方メートルであるから、非事業用の割合は一五パーセントを超えることになり、法関係通達三七-四ただし書を適用することはできない。」 9 同四一枚目表九行目の「書面」を「書面一(乙第二〇号証)」と改める。 10 同四二枚目表九行目の「2」を「2の2」と改める。 11 同四三枚目表四行目の「相当である。」の後に次のとおり付加する。 「すなわち、法三七条による買換特例は、一の事業用資産である譲渡資産又は取得資産の一部分のみを買換えの特例対象とすることを許容していない(法三七条一項、租税特別措置法施行令二五条七項、法関係通達三七-一九参照)ので、本件のように譲渡資産たる本来部分・付加 譲渡資産又は取得資産の一部分のみを買換えの特例対象とすることを許容していない(法三七条一項、租税特別措置法施行令二五条七項、法関係通達三七-一九参照)ので、本件のように譲渡資産たる本来部分・付加部分が一体となって買換資産たる新不動産部分と対応していることが実質的にも契約上も明らかである場合には、このような対応関係を前提として繰延べ計算が行われるべきであるところ、本件では、本来部分・付加部分及び新不動産部分間の個々具体的な対応関係が契約上も実際上も識別し難く、かつ、譲渡資産の中に短期譲渡所得の対象となるもの(借地権部分、付加部分)と長期譲渡所得の対象となるもの(底池部分、本来部分)があるというのであるから、本来部分と付加部分のそれぞれの対応する買換資産の価額は、本来部分・付加部分により按分して算定するのが合理的である。」 12 同四三枚目裏三行目から同四四枚目表四行目までの部分を削除する。 13 同五四枚目裏八行目と九行目との間に次のとおり付加する。 「前記(原判決引用)のとおり、買換特例が適用される場合に控除される譲渡費用の額については、譲渡があったものとされる金額に対応する部分の金額であると解するのが相当である。 これに対し、控訴人らは、本件のように取得費の額を譲渡収入の五パーセント相当額による概算取得費控除の方式とした場合(法三一条の四)には、譲渡収入金額は法三七条により譲渡があったものとされる範囲に圧縮されるものの、その譲渡収入金額から譲渡費用の全額が控除されるべきであると主張するが、右主張は、被控訴人の当審における主張六の2に掲げる理由のほか、次の理由を考慮すると、到底採用できない。 すなわち、法三七条の適用において、例えば、譲渡収入金額が買換資産の取得価額を超える場合には、「買換資産の取得価額を超える部分の譲渡があったものとし ほか、次の理由を考慮すると、到底採用できない。 すなわち、法三七条の適用において、例えば、譲渡収入金額が買換資産の取得価額を超える場合には、「買換資産の取得価額を超える部分の譲渡があったものとして」譲渡所得の金額を計算することになっている。これを換言すれば、「買換資産の取得価額までの部分の譲渡がなかったものとして」譲渡所得の金額を計算するということである。これに対し、例えば、保証債務の履行のため資産を譲渡した場合に、その履行に伴う求償権の行使ができなくなったときは、所得税法六四条により、各種所得金額からその回収不能額に相当する収入金額がなかったものとして当該所得金額を再計算することになっている(同法施行令一八〇条)ところ、この所得税法六四条の適用による再計算に当たっては、その規定振りからして、譲渡費用の額は収入金額の減額に応じて圧縮されることなく、その全額を控除し得ることとされているが、このような規定振りになっていない法三七条においては、所得税法六四条の場合と同様に処理することはできないものと解するのが相当である。つまり、譲渡があった場合の所得金額は、収入金額、取得費及び譲渡費用の科目を基礎として計算するので、「・・・部分の譲渡がなかったものとして」譲渡所得の金額を計算する場合には、これらの収支科目の金額はいずれも譲渡がなかった部分に圧縮されるものと解するのが相当である。 なお、控訴人らは、買換特例の計算上、取得費の額を実額で計算している場合には、法三七条の三の規定を根拠として、譲渡費用の額も圧縮されるものと解されるが、取得費の額を法三一条の四に規定する概算取得費によっている場合には、法三七条の三の規定の適用がないから、譲渡収入金額は圧縮されるものの、譲渡費用はその圧縮後の収入金額から全額が控除されるべきである旨主張するが、この点につ 四に規定する概算取得費によっている場合には、法三七条の三の規定の適用がないから、譲渡収入金額は圧縮されるものの、譲渡費用はその圧縮後の収入金額から全額が控除されるべきである旨主張するが、この点については、先に掲げた理由のほか、次の理由により失当である。 すなわち、概算取得費控除の規定は、要は実額に代えて控除金額を計算することを認める趣旨のものであるので、取得費の額を実額で計算した場合と概算取得費によった場合とで、その他の部分にまで著しい差が生じることが当然とするような解釈を採ることは相当でない。しかも、法三一条の四第一項ただし書は、取得費の実額が概算取得費の金額を超えることが明らかであれば実額により計算することができるとしており(なお、取得時期が昭和二八年以降である資産の譲渡についても、法関係通達三一の四―一で概算取得費計算が認められているが、この場合も同様である。)、概算取得費の額と実額とを比べ有利な金額を取得費として控除することが認められているところである。したがって、実額よりも有利であるとして概算取得費を選択し概算取得費により取得費の額を計算した場合、(控訴人らの主張によれば、取得費の額を実額で計算した場合には、本来圧縮すべきこととなるのに)、何故譲渡費用の全額を圧縮後の収入金額から控除できるものとして、更に有利な処理を施さなければならないのかについては、これを首肯するに足りる合理的理由を見出すことができない。 ちなみに、法人における買換特例(法六五条の七)は、個人のように「買換資産の取得価額までの部分の譲渡がなかつな」ものとして圧縮計算するのではなく、「圧縮基礎取得価額」((1)買換資産の取得価額と(2)譲渡資産の対価の額のいずれか少ない全額)に、左記に示す「差益割合」を乗じて計算した「圧縮限度額」(現行法は、この金額に更に原 するのではなく、「圧縮基礎取得価額」((1)買換資産の取得価額と(2)譲渡資産の対価の額のいずれか少ない全額)に、左記に示す「差益割合」を乗じて計算した「圧縮限度額」(現行法は、この金額に更に原則として八〇パーセントを乗じた金額が圧縮限度額となる。)の範囲内で、損金経理等により買換資産の帳簿価額を直接減額する等の方法で所得の圧縮計算をすることになっているが、計算方法は異なっても、個人と法人の圧縮金額(限度額)は基本的に同一になるべきものと解されるところ、法人の圧縮金額の計算上、「圧縮基礎取得価額」に「差益割合」を乗じることは、個人において、譲渡がなかった部分の金額計算上、収入、取得費及び譲渡費用のいずれも応じる部分を減額することと軌を一にするものというべきである。 差益割合=(譲渡資産の譲渡対価額)-(譲渡資産の簿価+譲渡経費額/譲渡資産の譲渡対価額」 14 同五七枚目表八行目の「ついては、」の次に「申告時における」と加入する。 15 同六〇枚目表三行目の「あること、」を「ある(それなのに、トヤマビルが新井組から立退料等に充てるために借り入れた八〇〇〇万円の相当部分がCが経営するトヤマ工務店の運転資金に流用されていた。)のに対し、Aの責任は原判決添付別表二の1及び2の土地をマンション建設用地として提供するというものであったこと、」と改める。 16 同一一行目の「明らかではない。」を「明らかではないのみならず、Aがトヤママンション建築工事の中止によってトヤマビルに支払うべき損害金が何故にこれとは何の関係もないトヤマビルの新井組からの借入金及びその利息との合計額となるのかも明らかではない。」と改める。 17 同六〇枚目裏三行目の「また、」の次に「トヤマビルの昭和五五年九月三〇日期の法人税確定申告書(甲第二一号証)には、トヤマビルがAから九六 利息との合計額となるのかも明らかではない。」と改める。 17 同六〇枚目裏三行目の「また、」の次に「トヤマビルの昭和五五年九月三〇日期の法人税確定申告書(甲第二一号証)には、トヤマビルがAから九六〇〇万円を受け取ったとする計上もないこと、」と加入する。 二よって、原判決は相当であって、控訴人らの本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官塩崎勤玉田勝也岡本岳)別表1、2(省略)参考本控訴審判決において付加、訂正、削除の上、引用された原審判決部分を組み込んだ判決の理由(注)原審判決が、本控訴審判決により付加、訂正されている部分には傍線を、削除されている部分には(※)を付した。 なお、引用された部分の当事者の表記は、原審判決のままとした。 ○ 理由一当裁判所も、本件更正及び本件決定は、いずれも、適法であり、その各取消しを求める控訴人らの本訴請求はいずれも理由がないものと判断するものであるが、その理由は、次に付加、訂正、削除するほか、原判決の理由説示記載のとおりであるから、これを引用する。 〔付加、訂正、削除の上、引用された原審判決部分〕第一本件更正について一本件処分の経緯が別表一記載のとおりであること、Aの昭和五六年分の総所得金額が五四五万二六六五円であり、分離課税の短期譲渡所得金額が零であることは当事者間に争いがない。そこで、本件更正につき争いがあるのは、分離課税の長期譲渡所得の金額(及びこの算出に当たり控除されるべき短期譲渡の損失金額)のみであるので、以下これについて検討する。 1 適用条文について(一) 法三七条は、個人が一定種類の事業用資産を譲渡し、かつ、一定の期間内に一定種類の事業用資産を取得 れるべき短期譲渡の損失金額)のみであるので、以下これについて検討する。 1 適用条文について(一) 法三七条は、個人が一定種類の事業用資産を譲渡し、かつ、一定の期間内に一定種類の事業用資産を取得した場合等に、いわゆる取得価額の引継による譲渡所得の課税の繰延べを認めている。そして、同条一項の表の一一号は、譲渡資産が既成市街地等(同表の一号上欄において定義されているものをいう。以下同じ。)内にある土地でその上に地上階数四以上の建物を建築するために譲渡されるもの等であり、かつ、買換資産が右建物、その敷地等である場合に右のような課税の特例の適用を認めている。すなわち、本来、個人の有する事業用固定資産等の譲渡があった場合には、その資産の所有期間中における値上がり等によって生じた譲渡所得に対して所得税が課税されるが、右規定は、既成市街地等内での土地の有効利用のための買換え等一定の望ましい事業用資産の買換えについて、譲渡所得の課税の繰延べを記めることにより、その円滑化に資するために定められたものと解される。 他方、法三七条の五は、個人が法三七条一項の表の一一号所定の譲渡資産を譲渡し、かつ、一定期間内に、当該譲渡をした土地の上に建築された地上階数四以上の耐火共同住宅の全部又は一部を取得して当該個人の事業又は居住の用に供した場合に、同条項と同じ課税の繰延べを認めている。すなわち、既成市街地等内での建物の高層化の促進を図るために、事業用資産の買換えについては法三七条一項の表の一一号で特例が定められているが、これは事業用資産に該当しない土地の所有者等には利用できないものであるため、法三七条の五は、土地所有者が事業の用に供していない土地等についても買換えの特例の適用を認めることにより、既成市街地等内において更なる土地の有効利用の捉進と住宅の供給増加を図ったも いものであるため、法三七条の五は、土地所有者が事業の用に供していない土地等についても買換えの特例の適用を認めることにより、既成市街地等内において更なる土地の有効利用の捉進と住宅の供給増加を図ったものと解される。したがって、既成市街地等内の土地の所有者が当該土地を譲渡して当該土地上に建築される地上階数四以上の耐火共同住宅の全部又は一部を取得した場合に、右譲渡資産及び買換資産がいずれも事業用資産であるときは、法三七条一項の表の一一号又は法三七条の五第一項のいずれの規定の適用も可能である。 (二) ところで、法三七条一項及び法三七条の五第一項は、いずれも、当該規定の適用を受けようとする者の確定申告書にその旨の記載があり、かつ、所定の書類の添付がある場合に限り適用すると定められ(法三七条六項、三七条の五第二項)、同条項の規定を適用して課税の特例を受けるか、あるいは同条項の規定を適用せずに譲渡所得の計算をするかは、専ら確定申告時における納税者の自由な選択に委ねられている。これは、右各法条が、一定の資産の買換えを円滑化して土地の有効利用の促進等を図るために、資産の譲渡をした者にとって一般的には有利な課税の特例を設けたものであるので、その適用を希望する者にだけ適用することが適当であるし、また、その適用要件の存否は当事者の申立てによって把握することが相当と考えられるものであることから、納税者が当該規定の適用を受けようとする意思を明確に表示し、かつ、その適用要件の存在を裏付ける所定の資料を提出した場合に限ってこれを適用することとして、税額確定手続における画一的かつ的確な処理を図ったものと解することができる。なお、右のような画一的処理の例外として、法は、確定申告書の提出がなかった場合又は特例適用の希望の記載若しくは所定の書類の添付がない確定申告書の提出が つ的確な処理を図ったものと解することができる。なお、右のような画一的処理の例外として、法は、確定申告書の提出がなかった場合又は特例適用の希望の記載若しくは所定の書類の添付がない確定申告書の提出があった場合においても、その提出又は記載若しくは添付がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該記載をした書類及び所定の書類の提出があった場合に限り、税務署長が当該特例を適用することを認めている(法三七条七項、三七条の五第二項)が、その反面、右のような法の定める例外的な取扱いの要件を満たさない場合は、原則どおりの画一的処理をすべきものと解するのが相当である。そして、乙第一号証によれば、本件申告書においては、その二面の(1)所得金額欄の末尾に特例適用条文の記入欄が設けられており、この欄に適用を希望する法条を記入すれば足りることとなっていたことが認められるのであるから、税務署長は、このような用紙を用いてされる確定申告については、原則として、右の特例適用条文欄の記載内容によって納税者の特例適用希望の意思を確認すれば足り、また、右欄に記載されたのとは異なる特例条文を適用することはできないと解するのが相当である。 もっとも、前記宥恕規定の趣旨にかんがみると、右特例適用条文の記載に、明らかな誤記や疑義のある記載があって、その記載自体の補正を求める必要があるときには、税務署長が、納税者(申告者)の意思確認を行ない、その補正結果に基づいて課税の処理(適用条文の判断等)を行うことは許容されるものというべきである。 (三) 以上を前提として本件についてみるに、証拠(甲第三号証、第四号証の一及び二、第六号証、第九号証ないし第一一号証、第一四号証、第一五号証、乙第一号証、第二号証、第一八号証、第二〇号証、第三〇号証、第三二号証、証人D、原告C)並びに に、証拠(甲第三号証、第四号証の一及び二、第六号証、第九号証ないし第一一号証、第一四号証、第一五号証、乙第一号証、第二号証、第一八号証、第二〇号証、第三〇号証、第三二号証、証人D、原告C)並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。 (1) Aは、昭和四三年末日以前から別表二の1及び2の土地を所有しており、従前、同表の1の土地のうち一三二・七一平方メートルを田中製鋼所に不動産貸付けの事業(事業に準じる不動産等の貸付け等を含む。以下同じ。)として賃貸し、また、同土地のうち五六五・七〇平方メートル及び同表の2の土地をワシノ機械に同じく不動産貸付けの事業として賃貸していたが、昭和五三年頃、同表の1及び2の土地上に賃貸マンション(トヤママンション)を建築することを計画した。そこで、A及びAに代わり実質的にトヤママンション建築計画を企画推進していたAの次男Cは、同年一〇月、トヤママンションの建築、賃貸、管理等を効率的に行うために、トヤマビルを設立し、同社は、昭和五四年四月二七日、新井組とトヤママンションの建築請負契約を締結した。また、Aは、田中製鋼所との間で、同年三月九日、移転料九〇〇万円を支払って同月二五日限り前記賃貸に係る土地の明渡しを受けることを合意した。なお、トヤマビルの設立当時の代表取締役はAの三男原告Eであったが、トヤマビルの実質的な経営はCが行っており、Aは、トヤママンション建築に関し一切をCに任せていた。そして、トヤマビルは、トヤママンション建築のために、田中製鋼所及びワシノ機械に敷地の明渡しを求めること、そのための立退科の資金を準備することについても、Aに代わってすべて責任を持って実行することになっていた。 ところが、その後、Aないしトヤマビルとワシノ機械との間の賃貸土地明渡し交渉がAないしトヤマビルの資金調達が の資金を準備することについても、Aに代わってすべて責任を持って実行することになっていた。 ところが、その後、Aないしトヤマビルとワシノ機械との間の賃貸土地明渡し交渉がAないしトヤマビルの資金調達が困難となった関係で難航したため、トヤママンション建築計画は同年八月頃中止を余儀なくされた。 (2) そこで、Aは、新たにデベロッパーの日綿との間でいわゆる等価交換方式によるマンション(以下「金山グランドハイツ」という。)建設を進めることとし、昭和五四年一一月二七日、ワシノ機械から代金九三〇〇万円で前記の同社に対する賃貸土地の借地権及び別表二の3ないし5の不動産を買い受けるとともに、日綿に対し旧不動産を合計四億八九五七万六九六〇円で譲渡し(この事実は当事者間に争いがない。)、同表の1ないし3の土地上に日綿が建築するマンション(敷地権付)の一部である新不動産を二億八九五七万六九六〇円で取得する旨の契約を締結した。その後、昭和五六年一〇月に金山グランドハイツが完成して保存登記され、Aは、取得にか新不動産のうち、別表三の2ないし4及び6ないし8の建物並びに同1の土地の右各建物に対応する共有持分をトヤマビルに不動産貸付けの事業として賃貸した。 (3) Aは、Cを代理人として、本件申告を税理士・公認会計士のFに依頼し、F税理士は、本件申告書の二面の(1)所得金額欄の末尾の特例適用条文の記入欄に「措法37」と記入して所定の添付書類と共に郵送で被告に提出し、被告はこれらを昭和五七年三月一五日に受領した。 (4) A及びCは、旧不動産を譲渡して新不動産を取得する旨の契約を締結するに先立って、相手方の日綿から等価交換を勧めるパンフレットを示され、法三七条所定の課税の特例の適用を受けられることを等価交換方式の利点として説明されていた。そこで、AないしCは、F税理士に 締結するに先立って、相手方の日綿から等価交換を勧めるパンフレットを示され、法三七条所定の課税の特例の適用を受けられることを等価交換方式の利点として説明されていた。そこで、AないしCは、F税理士に対し、かねてから事業用資産の買換えの特例を受けたい旨を話していた。本件申告に当たっても、Cは、F税理士に前記パンフレットを示し、旧不動産の譲渡につき事業用資産の買換えの特例を受けたい旨を述べて事務処理を依頼している。F税理士は、別表二の1の土地のうち従前田中製鋼所及びワシノ機械に賃貸していた部分以外の九八・六〇平方メートルにはAの五男の原告Bが無償で居住していたことから、その部分が事業用資産として認められるかどうか疑問を抱き、事業用資産の範囲や考え方についてCと議論したが、Cから本件申告関係の資料を受領して依頼を受けたのが申告期限の二、三日前で時間的余裕がなかったため、特例適用の権利を保全するためにとりあえず申告してやるのが税理士の務めだと考えて、Cのいうとおりすべてを事業用資産として申吉した。このように、F税理士も、本件申告に当たっては、特例適用条文として法三七条のみを考えており、法三七条の五の適用を受けることは全く念頭になかった。 (5) その後、本件申告書の特例適用条文の記入欄の「措法37」の記載が訂正ないし補正された事実はない。なお、本件申告がされた当時、添付書類の譲渡資産などの明細書(兼譲渡所得計算明細書)の「お売りになった不動産」欄の特例適用条文欄の「租税特別措置法条」と印刷された記入欄は未記入であったが、後に被告の部下職員にまり同欄に「37」と赤いボールペン様のもので記入がされている(乙第二号証参照)。 以上認定の事実によれば、申告期限内に提出された本件申告書には適用を希望する特例条文が法三七条であることが明記され、かつ、所定 「37」と赤いボールペン様のもので記入がされている(乙第二号証参照)。 以上認定の事実によれば、申告期限内に提出された本件申告書には適用を希望する特例条文が法三七条であることが明記され、かつ、所定の書類の添付がされていたこと、並びに右記載はAないしその代理人C及びF税理士の自由な意思に基づくものであったことが認められるのであるから、本件申告に係る昭和五六年分のAの所得税については法三七条が適用されるべきものである。 この点に関し、被告は、附属書面の記載内容等に照らすとAが法三七条と三七条の五のいずれの適用を希望するのか判然としなかったので、これをCに問いただしたところ、同人が法三七条の五の適用を求める旨述べたので、本件申告書の「措法37」の記載は「措法37の5」の誤記であると認めた旨主張し、その根拠として、Aが法三七条の五の適用について不服申立て段階で異議を述べなかったこと等を挙げる。しかしながら、前記認定のとおり、本件申告書には特例適用条文が法三七条であることが明記されており、その記載自体からそれが誤記であることをうかがわせるような事情はなかったものであるところ、前記(二)で述べたように、納税者の特例適用希望の意思は、原則として、確定申告書の特例適用条文欄の記載内容によって確認すれば足り、かつ、右欄に記載されたのとは異なる特例条文を適用することはできないのであるから、付属書面の記載中に不備があればその補正を求めるべきものであり、それをしないで、特例適用条文として記載された法三七条でなく法三七条の五を適用することは許されないというべきである。また、被控訴人主張のとおり調査時にCに特例適用条文の確認をした旨の証人Dの証言は曖昧で、これに反する原告Cの供述及び前記認定の本件申告書の作成提出の経緯及び本件申告書の特例適用条文欄の記載内容が訂 た、被控訴人主張のとおり調査時にCに特例適用条文の確認をした旨の証人Dの証言は曖昧で、これに反する原告Cの供述及び前記認定の本件申告書の作成提出の経緯及び本件申告書の特例適用条文欄の記載内容が訂正ないし補正されていない事実に照らして信用することができないし、そもそも特例を適用するかどうかは、原則として、確定申告の時点における確定申告書の記載によって決すれば足り、納税者自身後にこれを変更することは許されないのであるから、仮に、確定申告期限後に納税者が確定申告書に記載した特例適用条文を変更する意思を明らかにしてもこれを認めることはできないというべきである。したがって、いずれにしても被告の右主張を採用することはできない。 (四) 控訴人らは、前記説示(原判決引用)のとおり本件申告に係る昭和五六分のAの譲渡所得額については、法三七条が適用されるべきものであるとすると、被控訴人が法三七条の五を適用してなした本件処分には、課税内容の違法除去では救済されない手続的違法があることになるから、租税軽減借置に関する特例条文の適用を誤った本件処分は、そのことのみで違法なものとして取消を免れないと主張するので、この点について検討する。 ところで、法三七条及び法三七条の五の各規定についてみるに、右各規定は、いずれも、個人がその所有する資産を譲渡した場合の譲渡所得については、一定の条件の下に、課税の繰り延ベを認めることにした上、そのための要件を定めたものであり、また、両条文には、確定申告書にそれぞれ規定の適用を受けようとする旨の記載をすることが必要であると規定されているが、これらは、いずれも、譲渡所得の算定のための課税要件を定めたものであって、青色申告を更正する場合の帳簿の調査・理由の附記に関する規定である所得税法一五五条、法人税法一三〇条のように課税処分を行 が、これらは、いずれも、譲渡所得の算定のための課税要件を定めたものであって、青色申告を更正する場合の帳簿の調査・理由の附記に関する規定である所得税法一五五条、法人税法一三〇条のように課税処分を行うための一定の手続要件を定めたものではないと解するのが相当である。そして、国税通則法二四条によると、税務署長は、納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正することができるが、この更正は、新たに納税義務を課す処分ではなく、課税要件の充足によって既に成立している課税標準等又は税額等を数額的に確定させる処分であり、それは税額を増加又は減少させる場合にのみ行うものであって、税額算定の根拠事実が異なる場合に行うものではないと解され、したがって、更正処分の取消訴訟における実体上の審理の対象も、当該更正処分による課税標準等又は税額等の適否にあると解されるので、当該更正処分による課税標準等又は税額等が納税者の選択した租税軽減措置に関する特例条文によって計算した客観的な課税標準等又は税額等を上回るものでない限り、当該更正処分は取消原因たる瑕疵を有するものではないというべきである。 すなわち、青色申告を更正する場合の帳簿の調査・理由の附記に関する手続規定に違反する場合には、当該更正処分は取消原因たる瑕疵を有する処分であると解すべきであるが、本件のような課税標準等の計算に関する特例規定については、その適用条文を誤った更正処分がなされたとしても、その課税標準額算定の根拠事実に異同があるわけではないのであるから、そのこと自体をもって取消原因たる瑕疵ある処分となるものではなく、当該更正処分による の適用条文を誤った更正処分がなされたとしても、その課税標準額算定の根拠事実に異同があるわけではないのであるから、そのこと自体をもって取消原因たる瑕疵ある処分となるものではなく、当該更正処分による課税標準額正しい特例規定に基づき計算した課税標準額を上回るものでない限り、当該更正処分は違法とならないものというべきである。 よって、控訴人らの前記主張は採用できず、以下、本件処分に係る課税標準額が納税者であるAによって選択された法三七条に基づいて計算した課税標準額を上回っているかどうかを検討することとする。 2 の1譲渡所得の基因となる資産の範囲(一) 前記認定(原判決引用)のとおり、Aは、自己の所有する原判決添付別表二の1の土地のうち一三二・七一平方メートルを田中製鋼所に賃貸し、また、同土地のうち五六五・七〇平方メートル及び同じく自己の所有する原判決添付別表二の2の土地をワシノ機械に賃貸していたが、Aは、右1及び2の土地を提供し、トヤマビルをして、トヤママンションの建築、賃貸、管理を行わせることを計画し、昭和五四年三月九日、田中製鋼所に対し移転料九〇〇万円を支払って同月二五日限り右賃貸に係る土地の明渡しを受けることを合意したほか、右トヤママンション建築計画中止後の同年一一月二七日、Aは、日綿との間で等価交換方式による金山グランドハイツの建設を進めることにし、ワシノ機械から代金九三〇〇万円で前記同社に対する賃貸土地の借地権及び原判決添付別表二の3ないし5の不動産を買い受けた上、日綿に対し旧不動産を四億八九五七万六九六〇円で譲渡し、新不動産を二億八九五七万六九六〇円で取得する旨の契約を締結し、これを実行したものである。 この事実によれば、Aは、原判決添付別表二の1及び2の土地上にマンションを建築する妨げとなる田中製鋼所及びワシノ機械の賃借権を消 五七万六九六〇円で取得する旨の契約を締結し、これを実行したものである。 この事実によれば、Aは、原判決添付別表二の1及び2の土地上にマンションを建築する妨げとなる田中製鋼所及びワシノ機械の賃借権を消滅させるため、田中製鋼所に対しては九〇〇万円の移転料を支払って賃借権を取得し、ワシノ機械からは有償で賃借権を買受けたものと認めるのが相当である。 そうすると、右賃借権の消滅及び買受けは、土地所有者が第三者の有していた賃借権を取得することにほかならないものというべきであり、Aの日綿に対する原判決添付別表二の1及び2の土地の譲渡は、譲渡所得の計算上、譲渡所得の基因となる資産である底地と借地権の譲渡が行われたものと観念するのが相当である(二) これに対し、控訴人らは、本件における譲渡資産は土地それ自体であり、Aが、土地を譲渡するため、借地権消滅の対価として借地人に支払った金員は、譲渡所得を発生させる資産(借地権)の取得費ではなく、当該土地を譲渡するための費用となるべきものであると主張するが、以下に検討するとおり、右主張は失当であり採用できない。 すなわち、譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいい(所得税法三三条一項)、かつ、右資産とは、譲渡性を有する財産をすべて含むものと観念されるところ、この譲渡所得の対象となる資産には、棚卸資産等の一定の資産は含まれないこととされている(所得税法三三条二項)が、法律上、控訴人らが主張するような事情の下で取得した借地権を譲渡所得の基因となる資産から除外した規定は存しない。そして、譲渡所得課税の趣旨は、控訴人ら主張のとおり、保有資産の価値の増加益に対して課税しようとするものであって、資産が保有者の手を離れるのを機会に、その保有期間中の増加益を清算して課税しようとするものであるが、これは、一般的、典型的取引を念頭におい 有資産の価値の増加益に対して課税しようとするものであって、資産が保有者の手を離れるのを機会に、その保有期間中の増加益を清算して課税しようとするものであるが、これは、一般的、典型的取引を念頭においたものであり、法律上、取得した直後に転売する目的をもって取得した資産で、保有期間内の譲渡益が期待し得ない資産であることをもって、譲渡所得の対象となる資産であることが否定されているわけではない。 要するに、借地権者が借地権の設定されている土地を所有者に返還して受け取る対価は、譲渡性のある財産と観念される借地権の譲渡の対価として譲渡所得に当たり、反面、借地権の返還を受けた土地所有者は、譲渡所得の対象となる資産(借地権)を取得したものと解するのが相当であり、土地所有者が右土地を他に譲渡した場合には、それがたとえ取得直後に行われたものであっても、借地権部分につき譲渡所得の収入金額を観念することができるものというべきである。仮に、控訴人ら主張のように、税務上、借地権の消滅ないし買戻しの対価は、底地の譲渡費用で、資産の取得費に当たらないとすると、石対価出捐直後に土地を譲渡して収受した金員はすべて底地部分の譲渡対価であるとしか観念できないことになるが、そうだとすると、底地の価額は、借地権の消滅ないし買戻しの前後で大きな相違が生じることになり、借地権の消滅ないし買戻し後の価額すなわち譲渡の対価は、底地の客観的な価額(時価)を超えるという経済原則に反する不自然な結果をもたらすことになるものといわなければならない。 よって、控訴人らの前記主張は、到底採用できない。 2 の2事業用資産の範囲(一) 旧不動産について前記1(三)(1)で認定したとおり、Aは、従前、自己の所有する別表二の1の土地のうち一三二・七一平方メートルを田中製鋼所に事業として賃貸し、また、同土地 事業用資産の範囲(一) 旧不動産について前記1(三)(1)で認定したとおり、Aは、従前、自己の所有する別表二の1の土地のうち一三二・七一平方メートルを田中製鋼所に事業として賃貸し、また、同土地のうち五六五・七〇平万メートル及び同じく自己の所有する同表の2の土地をワシノ機械に事業として賃貸していたのであるから、同表の1の土地のうち右各賃貸に係る部分合計六九八・四一平方メートル及び同2の土地は、いずれもAの不動産貸付けの事業の用に供されていた事業用資産であるというべきである。 この点に関し、原告らは、所得税法三三条一項、同法施行令七九条、法三一条一項、三七条等の税法の規定は借地権を底地とは区別された独立の資産としているのであるから、土地の所有者が当該土地に借地権を設定している場合には、事業用資産として保有しているのは借地権を除く底地のみであり、借地権は非事業用資産と解すべきである旨主張する。しかしながら、土地の所有者が当該土地を第三者に不動産貸付けの事業として賃貸したことにより当該第三者が当該土地につき借地権を取得した場合であっても、その経緯にかんがみれば、元々、借地権の設定されていない土地を事業として賃貸したのであるから、当該土地は借地権付の土地になっただけであって、土地所有者が不動産貸付けの事業の用に供しているのが当該土地全体であることに変わりはないのであるから、借地権と底地とを区別して底地のみが事業の用に供されているものと解することは相当でない。原告らの挙げる法令の規定は、担税力という観点からは、一定の借地権の設定等が土地の所有権の譲渡に準じるものと解されることから、これを譲渡所得の基因となる資産の譲渡に含め、法三七条一項の適用の対象とする旨を定めているにすぎない。例えば自己の長期保有資産である土地を不動産貸付けの事業として賃貸し じるものと解されることから、これを譲渡所得の基因となる資産の譲渡に含め、法三七条一項の適用の対象とする旨を定めているにすぎない。例えば自己の長期保有資産である土地を不動産貸付けの事業として賃貸していた者がその借地権を買い取った上短期間内に借地権の負担のない土地として第三者に譲渡した場合において、譲渡資産の取得の時期の判定については、これらの規定により借地権部分と底地部分を区分して短期譲渡所得と長期譲渡所得の金額を算定する必要が生じるけれども、これらの規定は、右借地権部分が事業用資産か否かの判定に影響を及ぼすものではないというべきである。 また、原告らは別表二の1の土地はその全部を事業用資産とみなすべきである旨主張する。しかし、譲渡した資産が不動産貸付けの事業の用と事業以外の用とに併せ供されている場合は、その事業の用に供されている部分に限り法三七条一項所定の特例が適用されるというのが原則であり、例外的に、事業以外の用に供されている部分がその面積、用途等からみて重要性が低く、全体としてみると全部が事業の用に供されているのと同視できるようなときは、その全部が事業の用に供されているものと判定することができると解することができるとしても、本件については、前記認定のとおり、Aは、同土地の総面積七九七・〇一平方メートルのうち一三二・七一平方メートルを田中製鋼所に、また、五六五・七〇平方メートルを同表の2の土地と共にワシノ機械にそれぞれ不動産貸付けの事業として賃貸していたが、残りの九八・六〇平方メートルについては、Aの五男原告Bを居住させるという用途に供していたものであり、その面積が同表の1の土地の総面積の一二・三七パーセント(小数点以下第三位を四捨五入)を占めることを考慮すると、その部分の重要性が低く、全部が事業の用に供されているのと同視できる場 ていたものであり、その面積が同表の1の土地の総面積の一二・三七パーセント(小数点以下第三位を四捨五入)を占めることを考慮すると、その部分の重要性が低く、全部が事業の用に供されているのと同視できる場合に当たるとはいえないと解するのが相当である。 更に、旧不動産の譲渡取引につき、土地の筆単位でみると、前記(原判決引用)のとおりBの使用部分は一二・三七パーセントになるが、これを譲渡された土地全体の単位でみると、前記認定(原判決引用)のとおり譲渡対象土地の総面積は一二四四・一六平方メートルであり、非事業用の部分(Bの使用部分とワシノ機械から買い受けた原判決添付別表二の3の土地)は一九七・九九平方メートルであるから、非事業用の割合は一五パーセントを超えることになり、法関係通達三七-四ただし書を適用することはできない。 したがって、旧不動産のうち事業用資産であるのは別表二の1の土地のうち六九八・四一平方メートル及び同表の2の土地であり、その余は非事業用資産というべきである。 (二) 新不動産について前記1(三)(2)で認定したとおり、Aは、昭和五六年一〇月に新不動産のうち別表三の2ないし4及び6ないし8の建物並びに同1の土地の右各建物に対応する共有持分をトヤマビルに不動産貸付けの事業として賃貸したのであるから、右賃貸に係る不動産は事業用資産であるということができる。 原告らは、Aは、同表の5及び9の建物並びに同1の土地の右各建物に対応する共有持分についても、その取得後直ちにトヤマビルに賃貸して不動産貸付けの事業の用に供していた旨主張し、これに沿うような証拠として甲第三号証ないし第六号証及び原告Cの供述がある。しかし、甲第三号証及び第四号証はトヤマビルが昭和五六年九月二八日付で新不動産につき火災保険の申込みをした書面であるところ、トヤマビルが前記認 として甲第三号証ないし第六号証及び原告Cの供述がある。しかし、甲第三号証及び第四号証はトヤマビルが昭和五六年九月二八日付で新不動産につき火災保険の申込みをした書面であるところ、トヤマビルが前記認定のような経緯で設立された会社であることを考慮すると、右書面によって直ちに当時Aとトヤマビルの間に新不動産全部につき賃貸借契約が存在していたことまでは認めることができない。また、甲第五号証の賃貸借契約書は、昭和五八年一〇月一日付のものである上、別表三の5の建物は賃貸対象として記載されていない。更に、甲第六号証は、Aが昭和五七年にトヤマビルから金山グランドハイツに係る賃料として毎月合計八五万円を受領していたことをうかがわせるものにすぎない。他方、証拠(乙第二〇号証、証人D、原告C)及び弁論の全趣旨によれば、同表の2ないし9の建物のうち同2ないし4及び同6ないし8の各建物は第三者が有償で使用しているのに対し、同5の建物はAの五男の原告Bが無償で、また、同9の建物はAの六男の原告Gがそれぞれ使用していること、原告Bは、従前、旧不動産のうち別表二の1の土地のうち非事業用資産であった九八・六〇平方メートルを無償で居住用に使用していた者であること、Aが被告に昭和五八年四月七日に提出した書面(乙第二〇号証)には、Aは昭和五六年一〇月からトヤマビルに月額八五万円で金山グランドハイツのA所有の区分所有建物を賃貸しているが、別表三の5及び9の建物は除く旨が記載されていること、被告の部下の係官が本件申告後の税務調査の際、同表の不動産の賃貸借契約書ないし転貸借契約書の提出を求めたところ、Aは、同表2ないし4及び同6ないし8の各区分所有建物についての転貸借契約書を提出したのみであったことが認められ、これらの事実を合わせて考えると、同表5及び同9の区分所有建物並びに同1 求めたところ、Aは、同表2ないし4及び同6ないし8の各区分所有建物についての転貸借契約書を提出したのみであったことが認められ、これらの事実を合わせて考えると、同表5及び同9の区分所有建物並びに同1の土地の右各区分所有建物に対応する共有持分については、少なくともAが新不動産を取得した後一年以内(昭和五七年一〇月まで)にこれをトヤマビル仁賃貸するなどして事業の用に供したことを認めることはできないというべきである。 3 譲渡資産及び買換資産の範囲、対応関係等法三七条の規定が適用されるためには譲渡資産及び買換資産がいずれも事業用資産であることを要するところ、譲渡した資産及びこれに代えて取得した資産のそれぞれのうちに事業の用に供していたものとそうでないものがある場合には、それぞれ事業の用に供していたもののみが法三七条にいう譲渡資産及び買換資産として同条の適用を受けることができると解するのが相当である。そこで、本件では、前記2の2で述べたとおり、旧不動産については、別表二の1の土地のうち従前田中製鋼所及びワシノ機械に賃貸していた部分合計六九八・四一平方メートル並びに同2の土地、そして、新不動産については、別表三の2ないし4及び同6ないし8の区分所有建物並びに同1の土地の右各区分所有建物に対応する共有持分が、それぞれ事業用資産で法三七条にいう譲渡資産及び買換資産として同条が適用されるというべきである。 また、前記認定のとおり、右の譲渡資産のうち付加部分は短期保有資産であり、本来部分は長期保有資産であるので、法三七条の適用に当たっては、事業用資産である短期保有資産及び長期保有資産の各譲渡につき、それぞれの譲渡資産に対応する買換資産の取得価額を算定して譲渡所得金額を計算することが必要であるが、右の各譲渡資産に対応する買換資産の取得価額については、事業 保有資産及び長期保有資産の各譲渡につき、それぞれの譲渡資産に対応する買換資産の取得価額を算定して譲渡所得金額を計算することが必要であるが、右の各譲渡資産に対応する買換資産の取得価額については、事業用資産である買換資産の取得価額を、譲渡した短期保有及び長期保有の各事業用資産の譲渡時の価額の比により按分して計算するのが相当である。 すなわち、法三七条による買換特例は、一の事業用資産である譲渡資産又は取得資産の一部分のみを買換えの特例対象とすることを許容していない(法三七条一項、租税特別措置法施行令二五条七項、法関係通達三七-一九参照)ので、本件のように譲渡資産たる本来部分・付加部分が一体となって買換資産たる新不動産部分と対応していることが実質的にも契約上も明らかである場合には、このような対応関係を前提として繰延べ計算が行われるべきであるところ、本件では本来部分・付加部分及び新不動産部分間の個々具体的な対応関係が契約上も実際上も識別し難く、かつ、譲渡資産の中に短期譲渡所得の対象となるもの(借地権部分、付加部分)と長期譲渡所得の対象となるもの(底地部分、本来部分)があるというのであるから、本来部分と付加部分のそれぞれの対応する買換資産の価額は、本来部分・付加部分により按分して算定するのが合理的である。 4 分離課税の短期譲渡所得金額(一) 収入金額(1) Aの昭和五六年分の分離課税の短期譲渡所得の収入金額は、付加部分を日綿に売却譲渡した譲渡金額であるところ、前記一1(三)(1)、(2)認定の事実関係のもとでは、右譲渡金額は当該譲渡に先立ってAが付加部分を取得した際の価額一億〇二〇〇万円(田中製鋼所に支払った九〇〇万円とワシノ機械に支払った九三〇〇万円の合計額)と同額と認めるのが相当である。 (※)(2) 付加部分のうち非事業用資産の譲渡によ 分を取得した際の価額一億〇二〇〇万円(田中製鋼所に支払った九〇〇万円とワシノ機械に支払った九三〇〇万円の合計額)と同額と認めるのが相当である。 (※)(2) 付加部分のうち非事業用資産の譲渡による収入金額証拠(甲第九号証)及び弁論の全趣旨によれば、Aから日綿への旧不動産の譲渡に当たり、目的物件とされたのは土地だけで、同表の4及び5の建物は譲渡後直ちに取り壊される予定の無価値な物として取引されたことが認められるのであるから、付加部分のうち非事業用資産(別表二の3ないし5の不動産)の譲渡による収入金額は、旧不動産の譲渡金額四億八九五七万六九六〇円に旧不動産中の土地の総面積(同表の1ないし3の土地の合計面積一二四四・一六平方メートル)に占める同表の3の土地の面積(九九・三九平方メートル)の割合を乗じて計算した三九一〇万九九六五円(一円未満四捨五人)であるということができる。 (3) 付加部分のうち事業用資産の譲渡による収入金額付加部分のうち法三七条の適用対象となる事業用資産の価額は、付加部分の譲渡金額一億〇二〇〇万円から前記(2)の非事業用資産の価額三九一〇万九九六五円を差し引いた六二八九万〇〇三五円である。 そこで、法三七条の適用に当たり、右の事業用資産に対応する買換資産の取得価額が問題となるが、これは、新不動産のうち買換資産となるべき事業用資産全体の価額を、新不動産の取得価額に新不動産中に事業用資産が占める割合を乗じて計算した上で、このうち短期譲渡に係る部分を前記3のとおり按分計算して求めることができる。すなわち、まず、新不動産の取得価額がその取得金額二億八九五七万六九六〇円並びに収入印紙代一万八五八三円(Aと日綿との間の旧不動産及び新不動産の売買契約書に貼付した五万円の収入印紙につき、これを旧不動産の売買代金四億八九五七万六九五〇円 取得金額二億八九五七万六九六〇円並びに収入印紙代一万八五八三円(Aと日綿との間の旧不動産及び新不動産の売買契約書に貼付した五万円の収入印紙につき、これを旧不動産の売買代金四億八九五七万六九五〇円と新不動産の売買代金二億八九五七万六九六〇円に応じて按分して計算した結果新不動産に対応する金額)及び所有権移転登記費用八二万〇七〇〇円の合計二億九〇四一万六二四三円であることは当事者間に争いがなく(ただし、原告らは、後記(二)(2)の二〇五八万三四七八円をこれに加算すべきである旨主張するが、右主張を採用できないことは後記(二)(2)のとおりである。)、これに、新不動産の取得価額に新不動産中に事業用資産が占める割合、すなわち、別表二の2ないし4及び6ないし8の事業用資産たる区分所有建物の床面積の合計九二五・五七平方メートルを同表の2ないし9の区分所有建物の床面積の合計一〇八〇・七八平方メートルで除した結果の数値を乗じて計算すると、新不動産の事業用資産の価額は二億四八七〇万九七八六円(一円未満切上げ)である。そして、このうち短期譲渡に係る部分は、右金額に、旧不動産の事業用資産の譲渡金額のうち短期部分が占める割合(付加部分のうちの事業用資産の譲渡代金六二八九万〇〇三五円を旧不動産の事業用資産の譲渡金額(右の六二八九万〇〇三五円と後記5(一)(3)の本来部分の譲渡金額三億四八七七万七八六〇円の合計額)四億一一六六万七八九五円で除した結果の数値)を乗じて計算すると、三七九九万五一一〇円(一円未満四捨五入)である。 したがって、法三七条を適用した後の収入金額(事業用資産の長期譲渡によるもの)は、右の譲渡による収入金額六二八九万〇〇三五円から買換資産の取得価額三七九九万五一一〇円を差し引いた二四八九万四九二五円というべきである。 (二) 取得費及び譲渡費用 用資産の長期譲渡によるもの)は、右の譲渡による収入金額六二八九万〇〇三五円から買換資産の取得価額三七九九万五一一〇円を差し引いた二四八九万四九二五円というべきである。 (二) 取得費及び譲渡費用(1) 取得費付加部分の取得費が合計一億〇三一一万七八五〇円であることは当事者間に争いがない。そして、このうち、非事業用資産の取得費及び事業用資産の取得費は、右の付加部分の取得費に、短期譲渡収入金額全体のうち非事業用資産の価額及び事業用資産の価額が占める各割合(前記(一)(2)の三九一〇万九九六五円及び前記(一)(3)の六二八九万〇〇三五円をそれぞれ同一億〇二〇〇万円で除した結果の数値)を乗じて計算すると、それぞれ三九五三万八五八三円及び六三五七万九二六七円(各一円未満四捨五入)である。 (2) 譲渡費用Aが、トヤママンション建築工事に関し工事支出金二〇五五万二〇六一円(その内訳は、基礎工事費用一二四一万七二六一円、設計料七三三万円、鑑定料三五万円及び諸費用四五万四八〇〇円)を支出したこと、及びAと日綿との間の旧不動産及び新不動産の売買契約書に貼付した五万円の収入印紙代のうち、旧不動産の譲渡に関する部分は、右収入印紙代を旧不動産の売買代金四億八九五七万六九五〇円と新不動産の売買代金二億八九五七万六九六〇固に応じて按分計算した三万一四一七円であることは当事者間に争いがなく、これらの費用は、旧不動産が支障なく譲渡されるために支出されたものであるから、この合計金額二〇五八万三四七八円は、被告主張のとおり、旧不動産の譲渡に要した費用であるということができる。そして、このうち付加部分の譲渡に要した費用は、右合計金額を付加部分の売買代金一億〇二〇〇万円と本来部分の売買代金三億八七五七万六九六〇円に応じて按分計算した四二八万八四二六円(一円未満四捨五人) そして、このうち付加部分の譲渡に要した費用は、右合計金額を付加部分の売買代金一億〇二〇〇万円と本来部分の売買代金三億八七五七万六九六〇円に応じて按分計算した四二八万八四二六円(一円未満四捨五人)というべきである。 原告らは、右各費用は、いずれも、支障なく等価交換を行うために、すなわち、支障なく買換資産を取得するために要した費用であって、買換資産の取得費として計上すべきものである旨主張する。しかしながら、譲渡所得の計算上控除される資産の取得費は、原則として、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額であると定められている(所得税法二八条)ところ、譲渡所得に対する課税は、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨のものであり、譲渡所得の計算上資産の取得費が控除されるのは、それが取得時における当該資産の客観的価値と捉えられるべきものであるので、これを譲渡による収入金額から控除することにより当該資産保有中の増加益の純益に相当する部分を課税対象として算定する趣旨であると解することができる。そうであるとすると、右の「資産の取得に要した金額」として譲渡による収入金額から控除されるのは、資産の取得に関連して支出した費用のうち一般的に右取得時における当該資産の客観的価値を構成する費用に限られると解するのが相当である。ところが、前記認定のとおり、右工事支出金は、いわゆる等価交換方式による金山グランドハイツの建築の話が出る以前に、新不動産とは直接関係なしに、別表二の1及び2の土地上にトヤママンションを建築するために支出した費用であって、新不動産の取得のためにされたものではなく、新不動産の客観的価値を構成するものでないことは明らかである 接関係なしに、別表二の1及び2の土地上にトヤママンションを建築するために支出した費用であって、新不動産の取得のためにされたものではなく、新不動産の客観的価値を構成するものでないことは明らかであるから、これをもって新不動産の取得に要した金額ということはできない。また、右の収入印紙は、旧不動産及び新不動産の各譲渡に関する契約書に貼付されたものであり、右各譲渡がいわゆる等価交換方式により一括してされたものであったとしても、旧不動産め譲渡に関して貼付された部分までが新不動産の取得に要した金額ということはできない。したがって、この点に関する原告らの主張は採用することができない。 そして、右の付加部分の譲渡費用四二八万八四二六円のうち非事業用資産の譲渡に関するもの及び事業用資産の譲渡に関するものは、右の譲渡費用に、短期譲渡収入金額の全体のうち非事業用資産及び事業用資産が占める各割合(前記(一)(2)の三九一〇万九九六五円及び前記(一)(3)の六二八九万〇〇三五円をそれぞれ前記(一)(1)の一億〇二〇〇万円で除した結果の数値)をそれぞれ乗じて計算した一六四万四三一六円及び二六四万四一一〇円(各一円未満四捨五入)というべきである。 (3) 以上のとおりであるから、非事業用資産の短期譲渡に係る取得費及び譲渡費用の合計額は前記(1)の三九五三万八五八三円と同(2)の一六四万四三一六円の合計額四一一八万二八九九円であり、事業用資産の短期譲渡に係る取得費及び譲渡費用の合計額は前記(1)の六三五七万九二六七円と同(2)の二六四万四一一〇円の合計額六六二二万三三七七円である。そして、事業用資産の短期譲渡に係る取得費及び譲渡費用の法三七条適用後の収入金額に対応する金額は、同条適用前の収入金額に対応する事業用資産の短期譲渡に係る取得費及び譲渡費用の割合に応じて定め ある。そして、事業用資産の短期譲渡に係る取得費及び譲渡費用の法三七条適用後の収入金額に対応する金額は、同条適用前の収入金額に対応する事業用資産の短期譲渡に係る取得費及び譲渡費用の割合に応じて定めるべきであるから、右の六六二二万三三七七円に、同条適用後の収入金額二四八九万四九二五円を同条適用前の収入金額六二八九万〇〇三五円で除した結果の数値を乗じた二六二一万四四二四円(一円未満切上げ)である。 (三) 差引所得金額(1) 非事業用資産の短期譲渡による所得金額分離課税の短期譲渡所得のうち非事業用資産の譲渡による所得金額は、前記(一)(2)の収入金額三九一〇万九九六五円から同(二)(3)の取得費及び譲渡費用の合計額四一一八万二八九九円を差し引くと、二〇七万二九三四円の損失である。 (2) 事業用資産の短期譲渡による所得金額分離課税の短期譲渡所得のうち事業用資産の譲渡による所得金額は、前記(一)(3)の法三七条適用後の収入金額二四八九万四九二五円から同(二)の法三七条適用後の収入金額に対応する取得費及び譲渡費用の合計額二六二一万四四二四円を差し引くと、一三一万九四九九円の損失である。 (3) 分離課税の短期譲渡所得金額以上のとおりであるから、分離課税の短期譲渡所得金額は、前記(1)及び同(2)の各所得金額(損失)を合計した三三九万二四三三円の損失である。 5 分離課税の長期譲渡所得金額(一) 収入金額(1) Aの昭和五六年分の分離課税の長期譲渡所得の収入金額は、本来部分を日綿に売却譲渡した譲渡金額であるところ、本来部分の価額は旧不動産の譲渡金額四億八九五七万六九六〇円から前記4(一)(1)の付加部分の譲渡金額一億〇二〇〇万円を差し引いた残額の三億八七五七万六九六〇円である。 (2) 本來部分のうち非事業用資産の譲渡による収入金額本来部分のう 八九五七万六九六〇円から前記4(一)(1)の付加部分の譲渡金額一億〇二〇〇万円を差し引いた残額の三億八七五七万六九六〇円である。 (2) 本來部分のうち非事業用資産の譲渡による収入金額本来部分のうち非事業用資産(別表二の1の土地のうち田中製鋼所及びワシノ機械に賃貸していた部分以外の部分九八・六〇平方メートル)の価額は、旧不動産の譲渡金額四億八九五七万六九六〇円に、旧不動産中の土地の総面積(同表の1ないし3の土地の合計面積一二四四・一六平方メートル)に占める右土地の面積(九八・六〇平方メートル)の割合を乗じた三八七九万九一〇〇円(一円未満四捨五人)であり、右金額が本来部分のうち非事業用資産の譲渡による収入金額ということができる。 (3) 本来部分のうち事業用資産の譲渡による収入金額本来部分のうち事業用資産の価額は、前記(1)の本来部分の譲渡金額三億八七五七万六九六〇円から同(2)の非事業用資産の価額三八七九万九一〇〇円を差し引いた三億四八七七万七八六〇円である。 そこで、法三七条の適用に当たり、右の事業用資産に対応する買換資産の取得価額が問題となるが、前記4(一)(3)の新不動産のうち買換資産となるべき事業用資産の価額二億四八七〇万九七八六円のうち短期譲渡に係る部分は、前記3のとおり、右金額に、旧不動産の事業用資産の譲渡金額のうち長期部分が占める割合(本来部分のうちの事業用資産の譲渡代金三億四八七七万七八六〇円を旧不動産の事業用資産の譲渡金額(右の三億四八七七万七八六〇円と付加部分の譲渡金額六二八九万〇〇三五円の合計額)四億一一六六万七八九五円で除した結果の数値)を乗じた二億一〇七一万四六七六円(一円未満四捨五人)である。 したがって、法三七条を適用した後の収入金額(事業用資産の短期譲渡によるもの)は、右の譲渡による収入金額三億四八七七万 除した結果の数値)を乗じた二億一〇七一万四六七六円(一円未満四捨五人)である。 したがって、法三七条を適用した後の収入金額(事業用資産の短期譲渡によるもの)は、右の譲渡による収入金額三億四八七七万七八六〇円から買換資産の取得価額二億一〇七一万四六七六円を差し引いた一億三八〇六万三一八四円というべきである。 (二) 取得費及び譲渡費用(1) 取得費本来部分のうち非事業用資産の取得費は、法三一条の四(長期譲渡所得の概算取得費控除、控除率五パーセント)の規定により前記(一)(2)の収入金額三八七九万九一〇〇円の五パーセントである一九三万九九五五円となる。 また、本来部分のうち事業用資産の取得費は、同条の規定により前記(一)(3)の収入金額三億四八七七万七八六〇円の五パーセントである一七四三万八八九三円となる。 (2) 譲渡費用前記4(二)(2)の旧不動産の譲渡に要した費用合計金額二〇五八万三四七八円のうち本来部分の譲渡に要した費用は、右合計金額を本来部分の売買代金三億八七五七万六九六〇円と付加部分の売買代金一億〇二〇〇万円に応じて按分計算した一六二九万五〇五二円(一円未満四捨五入)というべきであり、このうち非事業用資産の譲渡に関するもの及び事業用資産の譲渡に関するものは、右の譲渡費用に、長期譲渡収入の全体のうち非事業用資産及び事業用資産が占める各割合(前記(一)(2)の三八七九万九一〇〇円及び同(一)(3)の三億四八七七万七八六〇円をそれぞれ同(一)(1)の三億八七五七万六九六〇円で除した結果の数値)をそれぞれ乗じた一六三万一二四六円及び一四六六万三八〇六円(各一円未満四捨五入)というべきである。 前記(原判決引用)のとおり、買換特例が適用される場合に控除される譲渡費用の額については、譲渡があったものとされる金額に対応する部分の金額である 万三八〇六円(各一円未満四捨五入)というべきである。 前記(原判決引用)のとおり、買換特例が適用される場合に控除される譲渡費用の額については、譲渡があったものとされる金額に対応する部分の金額であると解するのが相当である。 これに対し、控訴人らは、本件のように取得費の額を譲渡収入の五パーセント相当額による概算取得費控除の方式とした場合(法三一条の四)には、譲渡収入金額は法三七条により譲渡があったものとされる範囲に圧縮されるものの、その譲渡収入金額から譲渡費用の全額が控除されるべきであると主張するが、右主張は、被控訴人の当審における主張六の2に掲げる理由のほか、次の理由を考慮すると、到底採用できない。 すなわち、法三七条の適用において、例えば、譲渡収入金額が買換資産の取得価額を超える場合には、「買換資産の取得価額を超える部分の譲渡があったものとして」譲渡所得の金額を計算することになっている。これを換言すれば、「買換資産の取得価額までの部分の譲渡がなかったものとして」譲渡所得の金額を計算するということである。これに対し、例えば、保証債務の履行のため資産を譲渡した場合に、その履行に伴う求償権の行使ができなくなったときは、所得税法六四条により、各種所得金額からその回収不能額に相当する収入金額がなかったものとして当該所得金額を再計算することになっている(同法施行令一八〇条)ところ、この所得税法六四条の適用による再計算に当たっては、その規定振りからして、譲渡費用の額は収入金額の減額に応じて圧縮されることなく、その全額を控除し得ることとされているが、このような規定振りになっていない法三七条においては、所得税法六四条の場合と同様に処理することはできないものと解するのが相当である。つまり、譲渡があった場合の所得金額は、収入金額、取得費及び譲渡費用の科目を な規定振りになっていない法三七条においては、所得税法六四条の場合と同様に処理することはできないものと解するのが相当である。つまり、譲渡があった場合の所得金額は、収入金額、取得費及び譲渡費用の科目を基礎として計算するので、「・・・部分の譲渡がなかったものとして」譲渡所得の金額を計算する場合には、これらの収支科目の金額はいずれも譲渡がなかった部分に圧縮されるものと解するのが相当である。 なお、控訴人らは、買換特例の計算上、所得費の額を実額で計算している場合には、法三七条の三の規定を根拠として、譲渡費用の額も圧縮されるものと解されるが、取得費の額を法三一条の四に規定する概算取得費によっている場合には、法三七条の三の規定の適用がないから、譲渡収入金額は圧縮されるものの、譲渡費用はその圧縮後の収入金額から全額が控除されるべきである旨主張するが、この点については、先に掲げた理曲のほか、次の理由により失当である。 すなわち、概算取得費控除の規定は、要は実額に代えて控除金額を計算することを認める趣旨のものであるので、取得費の額を実額で計算した場合と概算取得費によった場合とで、その他の部分にまで著しい差が生じることが当然とするような解釈を採ることは相当でない。しかも、法三一条の四第一項ただし書は、取得費の実額が概算所得費の全額を超えることが明らかであれば実額により計算することができるとしており(なお、取得時期が昭和二八年以降である資産の譲渡についても、法関係通達三一の四-一で概算取得費計算が認められているが、この場合も同様である。)、概算取得費の額と実額とを比べ有利な金額を取得費として控除することが認められているところである。したがって、実額よりも有利であるとして概算取得費を選択し概算取得費により取得費の額を計算した場合、(控訴人らの主張によれば、取得 有利な金額を取得費として控除することが認められているところである。したがって、実額よりも有利であるとして概算取得費を選択し概算取得費により取得費の額を計算した場合、(控訴人らの主張によれば、取得費の額を実額で計算した場合には、本来圧縮すべきこととなるのに)、何故譲渡費用の全額を圧縮後の収入金額から控除できるものとして、更に有利な処理を施さなければならないのかについては、これを首肯するに足りる合理的理由を見出すことができない。 ちなみに、法人における買換特例(法六五条の七)は、個人のよう「買換資産の取得価額までの部分の譲渡がなかった」ものとして圧縮計算するのではなく、「圧縮基礎取得価額」((1)買換資産の取得価額と(2)譲渡資産の対価の額のいずれか少ない金額)に、左記に示す「差益割合」を乗じて計算した「圧縮限度額」(現行法は、この金額に更に原則として八〇パーセントを乗じた金額が圧縮限度額となる。)の範囲内で、損金経理等により買換資産の帳簿価額を直接減額する等の方法で所得の圧縮計算をすることになっているが、計算方法は異なっても、個人と法人の圧縮金額(限度額)は基本的に同一になるべきものと解されるところ、法人の圧縮金額の計算上、「圧縮基礎取得価額」に「差益割合」を乗じることは、個人において、譲渡がなかった部分の金額計算上、収入、取得費及び譲渡費用のいずれも応じる部分を減額することと軌を一にするものというべきである。 差益割合=(譲渡資産の譲渡対価額)-(譲渡資産額の簿価+譲渡経費額)/譲渡資産の譲渡対価額(3) 以上のとおりであるから、非事業用資産の長期譲渡に係る取得費及び譲渡費用の合計額は前記(1)の一九三万九九五五円と同(2)の一六三万一二四六円の合計額三五七万一二〇一円であり、事業用資産の長期譲渡に係る取得費及び譲渡費用の合計額は前 の長期譲渡に係る取得費及び譲渡費用の合計額は前記(1)の一九三万九九五五円と同(2)の一六三万一二四六円の合計額三五七万一二〇一円であり、事業用資産の長期譲渡に係る取得費及び譲渡費用の合計額は前記(1)の一七四三万八八九三円と同(2)の一四六六万三八〇六円の合計額三二一〇万二六九九円である。そして、事業用資産の長期譲渡に係る取得費及び譲渡費用の法三七条適用後の収入金額に対応する金額は、同条適用前の収入金額に対応する事業用資産の長期譲渡に係る取得費及び譲渡費用の割合に応じて定めるべきであるから、右の三二一〇万二六九九円に、同条適用後の収入金額一億三八〇六万三一八四円を同条適用前の収入金額三億四八七七万七八六〇円で除した結果の数値を乗じた一二七〇万七八〇五円(一円未満切上げ)である。 (三) 所得金額(1) 非事業用資産の長期譲渡による所得金額分離課税の長期譲渡所得のうち非事業用資産の譲渡による所得金額は、前記(一)(2)の収入金額三八七九万九一〇〇円から同(二)(3)の取得費及び譲渡費用の合計額三五七万一二〇一円を差し引いた三五二二万七八九九円である。 (2) 事業用資産の長期譲渡による所得金額分離課税の長期譲渡所得のうち事業用資産の譲渡による所得金額は、前記(一)(3)の法三七条適用後の収入金額一億三八〇六万三一八四円から前記(二)の法三七条適用後の収入金額に対応する取得費及び譲渡費用の合計額一二七〇万七八〇五円を差し引いた一億二五三五万五三七九円である。 (3) 分離課税の長期譲渡所得金額以上のとおりであるから、分離課税の長期譲渡所得金額は、前記(1)及び同(2)の各所得金額を合計した一億六〇五八万三二七八円から、所得税法三三条三項の規定により前記4(三)(3)の短期譲渡の損失額三三九万二四三三円を控除した一億五七一九万〇八四五円 、前記(1)及び同(2)の各所得金額を合計した一億六〇五八万三二七八円から、所得税法三三条三項の規定により前記4(三)(3)の短期譲渡の損失額三三九万二四三三円を控除した一億五七一九万〇八四五円である。 二以上のとおり、Aの昭和五六年分の総所得金額は五四五万二六六五円であり、また、分離課税の長期譲渡所得金額は一億五七一九万〇八四五円であるから、これらの範囲内で所得金額を認定してされた本件更正は適法である。 第二本件決定について一 Aがした昭和五六年分の所得税の確定申告が別表一の確定申告欄記載のとおりであることは当事者間に争いがない。そこで、Aの所得金額が第一で認定したとおりであるとすると、Aは、総所得金額につき一四五万九六九八円、分離課税の長期譲渡所得金額につき一億四七三七万〇八四五円、それぞれ所得金額を過少に申告したものであるところ、証拠(乙第三号証、第七号証)によれば、本件決定は、Aが総所得金額につき右と同額の一四五万九六九八円、分離課税の長期譲渡所得金額につき右金額よりも少ない一億三〇八五万一七二三円、それぞれ所得金額を過少に申告したと認定し、かつ、分離課税の長期譲渡所得の税額等の計算の基礎となるべき買換資産の取得費に計上した八三五八万二七三九円につき事実を隠ぺいし、又は仮装したものであるとしてされたものであることが認められる。したがって、本件決定の適否については、申告時における右のような隠ぺい又は仮装の有無が問題となる。 二前記第一の一1(三)(1)、(2)で認定した事実に、証拠(甲第一二号証及び第一三号証の各一及び二、乙第二号証、第一二号証ないし第一五号証、第三〇号証、第三一号証、証人D、原告C本人)並びに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができる。 1 Aないしその代理人Cは、F税理士に依頼して本件申告書 証、第一二号証ないし第一五号証、第三〇号証、第三一号証、証人D、原告C本人)並びに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができる。 1 Aないしその代理人Cは、F税理士に依頼して本件申告書を被告に郵送で提出した際、本件申告書及びこれに添付した譲渡資産などの明細書(兼譲渡所得計算明細書)に、新井組に対する九六〇〇万円の支払を買換資産の買入代金四億七八五七万六九六〇円の一部として挙げ、これに基づいて譲渡所得金額を計算してその結果を記載して申告した(Aが右のような記載をした譲渡所得計算明細書を作成し、これに基づいて計算した結果を申告したことは当事者間に争いがない。)。 2 しかし、右の新井組に対する支払金額九六〇〇万円のうち、トヤマビルの注文によりトヤママンションの建築工事を請け負った新井組が費した工事費用の補償として支払われた一二四一万七二六一円は旧不動産の譲渡費用に含まれると解することができるものであった(第一の一4(二)(2)参照)が、その余の八三五八万二七三九円は、新井組がトヤマピルに対し右両名間の昭和五四年四月二七日付の金銭消費賃借契約に基づいて貸し付けた元本八〇〇〇万円及び約定利息三五八万二七三九円の返済として支払われたものであった。 3 新井組がトヤマビルに貸し付けた前記の八〇〇〇万円については、新井組から振り出された小切手二通(額面三〇〇〇万円及び同五〇〇〇万円のもの)がいずれもCの経営するトヤマ工務店名義の当座預金口座に入金され、その相当部分が当時資金繰りが苦しかったトヤマ工務店の運転資金に充てられていた。 4 AないしCは、本件申告をした当時、前記2の後段及び3の事実を知っていた。 以上のとおり、Aが新井組に対して支払った八三五八万二七三九円はトヤマビルが借り入れていた借入金の返済であり、それが新不動産の取得に直接関 本件申告をした当時、前記2の後段及び3の事実を知っていた。 以上のとおり、Aが新井組に対して支払った八三五八万二七三九円はトヤマビルが借り入れていた借入金の返済であり、それが新不動産の取得に直接関係しないものであることは明らかであり、かつ、右八三五八万二七三九円の支払が右のようなものであることはAないしCにも自明のことであったにもかかわらず、AないしCは、あえてこれを譲渡所得計算明細書に新不動産の買入代金の一部として記載し、かつ、これに基づいて所得金額をことさらに過少にした内容の本件申告書を被告に提出したものである。 三ところで、原告らは、Aの新井組に対する右金員の支払はAからトヤマビルへの損害賠償とトヤマビルから新井組への借入金返済等が同時に行われたものである旨主張する。そして、Aが被告に提出したことについて当事者間に争いがない乙第一三号証ないし第一五号証の記載内容をみると、これらはいずれもトヤマビルがAに対して作成した書面であり、乙第一三号証はトヤママンション建築工事の中止について了承する代わりに損害の補償を求める昭和五四年一一月二七日付の覚書、乙第一四号証は九八〇〇万円の損害賠償請求内訳書(ただし、記載された内訳の金額(トヤママンション建築工事の中止に伴う損害金七〇〇〇万円、新井組との契約解除に伴う損害金二〇〇〇万円及び見込み利益金一八〇〇万円)を合計すると一億〇八〇〇万円となる。)、乙第一五号証は同日付の損害金内金八〇〇〇万円の請求書であることが認められる。 しかしながら、トヤママンションの建築が中止された直接の原因はワシノ機械に対して支払うべき立退料等の資金の調達が困難となったことであること、これらの資金調達はトヤマビルがAに代わりすべて責任を持って行うことになっていたものである(それなのに、トヤマビルが新井組から立退料等 して支払うべき立退料等の資金の調達が困難となったことであること、これらの資金調達はトヤマビルがAに代わりすべて責任を持って行うことになっていたものである(それなのに、トヤマビルが新井組から立退料等に充てるために借り入れた八〇〇〇万円の相当部分がCが経営するトヤマ工務店の運転資金に流用されていた。)のに対し、Aの責任は原判決添付別表二の1及び2の土地をマンション建設用地として提供するというものであったこと、トヤマビルは、結局は新不動産の大部分をAから借り受けて賃貸事業の用に供することで利益を挙げていることは前記認定のとおりであり、これに、前記認定のようなトヤマビルの設立の経緯、トヤマビルとAないしCの関係等を参酌すると、トヤマビルが、トヤママンション建築工事の中止に関し請負人の新井組に支払わなければならなかった前記工事支出金一二四一万七二六一円のはかに、原告ら主張のような多額の損害を被り、かつ、Aがその賠償をする義務を負う根拠は必ずしも明らかではないのみならず、Aがトヤママンション建築工事の中止によってトヤマビルに支払うベき損害金が何故にこれよは関係もないトヤマビルの新井組からの借入金及び利息との合計額となるのかも明らかではない。そして、右損害金額の算出根拠に関する原告Cの供述は、右各書証が同人の作成に係るものであるにもかかわらず、首尾一貫しない曖昧なものであって信用することができない。また、トヤマビルの昭和五五年九月三〇日期の法人税確定申告書(甲第二一号証)には、トヤマビルがAから九六〇〇万円を受け取ったとする計上もないこと、証拠(原告C)によれば、Cは乙第一四号証をAに見せてさえいないことが認められるのであって、この事実と前記認定の事実を総合すると、乙第一三号証ないし第一五号証の書面は、Aが新井組に対して支払った金員全部を買換資産 よれば、Cは乙第一四号証をAに見せてさえいないことが認められるのであって、この事実と前記認定の事実を総合すると、乙第一三号証ないし第一五号証の書面は、Aが新井組に対して支払った金員全部を買換資産の取得費に含まれるとする本件申告の内容を裏付けることを目的として作成されたものと認めるのが相当であり、結局、これらの書面の存在によって原告らの右主張を認めることはできない。 四以上のとおり、Aないしその代理人Cは、前記八三五八万二七三九円の支払につき、本件申告書の添付書面に虚偽の記載をして被告に提出し、これに基づきことさらに所得金額を過少に申告したものであるから、これらの行為は国税通則法六八条一項に規定する重加算税の賦課要件に該当するというべきであって、本件決定は適法ということができる。 〔引用部分終了〕二よって、原判決は相当であって、控訴人らの本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。 別表一~三(省略)

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