主文 被告人を懲役4年6月に処する。 未決勾留日数中140日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,分離前の相被告人Aから,同人と交際中である分離前の相被告人BがCに強姦されたのでCを痛めつけて慰謝料を取って欲しい旨依頼されたことから,A,B,D,E及びFと共謀の上,Cに対して暴行・脅迫を加えるなどして同人を問い詰め,慰謝料名下に金品を強取しようと企て,平成14年7月31日午後10時50分ころ,Aが,神戸市a区b町c丁目d番e号先路上にC(当時28歳)を呼び出し,被告人,D,E及びFが,Cを同区b町f丁目g番先路上まで連行し,同所等において,被告人,D,E及びFが,こもごも,Cに対し,「何でここに呼ばれたかわかるか。」,「Aの彼女に酒飲まして無理矢理ホテルに連れて行ってやったやろ。」などと申し向けながら,E及びFが,Cに対し,手拳でその顔面及び後頭部を数回殴打し,その腹部を膝蹴りするなどの暴行を加えた上,同所付近に停めていた普通貨物自動車の座席にCを押し込み,EがCの左横に座って同人を監視しつつ,Dが同車を運転疾走させて,同年8月1日午前零時20分ころ,大阪市h区ij丁目k番l号先路上まで連行し,同所において,A及びBが合流した後,更にCを大阪府吹田市mn丁目o番p号先G川河川敷まで連行し,同日午前1時10分ころ,同所において,B,D,E及びFが,こもごも,Cに対し,手の平,手拳及び木刀でその顔面,胸部及び腹部等を多数回殴打するなどの暴行を加え,上記一連の暴行等により,その反抗を抑圧した上,同人を普通乗用自動車に同乗させて,同府堺市q町r番地先堤防上まで連行し,同日午前3時ころ,同所において,被告人,A,B,D,E及びFが,こもごも え,上記一連の暴行等により,その反抗を抑圧した上,同人を普通乗用自動車に同乗させて,同府堺市q町r番地先堤防上まで連行し,同日午前3時ころ,同所において,被告人,A,B,D,E及びFが,こもごも,Cに対し,「どう落とし前つけるんや。どう責任とるんや。」,「金払う気あるんか。」,「内蔵売るか。角膜売るか。売ったら金になるからな。ここやったら沈めてもわからんやろ。」,「お前払う言うてどうやって払うねん。」,「給料月なんぼもらっとんや。それやったら20万円全部よこせ。給料日はいつや。毎月5日に20万円持ってこい。Aと女がいいと言うまで払え。」などと語気鋭く申し向けて金員を要求した後,更にCを普通貨物自動車に同乗させて,同人を大阪市s区tu丁目v番w号所在のH港トラックステーションまで連行し,同日午前5時47分ころ,同所において,Fが,Cから現金3250円を強取し,引き続き,同人を神戸市a区b町x丁目y番z号先路上まで連行し,同日午前7時ころまでの間,走行中の自動車内及び同所付近において,D及びEが,Cから同人所有又は管理にかかる,同人の給料が振込まれる銀行口座の普通預金通帳(口座残高281円),印鑑,外国紙幣7枚(合計5万2000ウォン,時価4472円相当)ほか3点を強取したが,その際,上記一連の暴行により,同人に全治約30日間を要する左眼窩底骨折,鼻骨骨折,左外傷性結膜下血腫等の傷害を負わせたものである。 (証拠の標目)-括弧内は証拠等関係カードの検察官請求証拠番号省略(事実認定の補足説明) 1 弁護人らは,被告人が,Cに対して,暴行・脅迫を加えたり,金品を要求したり,金品を強取したりの強盗致傷罪の実行行為に及んだことはないし,被害者から金品を強取することを共犯者らと共謀をしたこともないので,被告人には強盗致傷罪の共同正犯 行・脅迫を加えたり,金品を要求したり,金品を強取したりの強盗致傷罪の実行行為に及んだことはないし,被害者から金品を強取することを共犯者らと共謀をしたこともないので,被告人には強盗致傷罪の共同正犯は成立せず,その幇助犯が成立するに止まる旨主張し,被告人も公判廷においてはこれに沿う供述をする。 2 しかしながら,以下に述べるとおり,被告人には強盗致傷罪の共同正犯が成立することが十分認められる。 (1) まず,前掲各証拠によれば,次の事実が間違いのないものとして認められる。すなわち① 被告人は,平成14年7月30日午前1時30分ころ,神戸市a区b町にあるファミリーレストラン「デニーズ」において,Aとその彼女であるBと会い,同人らから,Bが被害者からレイプされた旨の話を聞かされるなどしたこと② 被告人は,Aとは中学校時代の同級生であり,被告人がAの勤務するパチンコ店に遊びに行ったことをきっかけとして,犯行当時はパチンコ店で出会ったときに話をしたり,携帯電話で話をしたりする程度のつき合いをしていたが,特に親しい間柄ではなかったし,Bとは上記の「デニーズ」で会ったのが初対面であったこと③ 被告人は,同日午後11時すぎころ,同区b町にあるb商店街の自動販売機の辺りにおいて,約6年前からつき合いがあってかなり親しい間柄であるD(当時23歳),被告人の内妻の弟の友人であるE(当時17歳)及びF(当時17歳)を初対面のAに引き合わせ,その場において,同人から,Bが被害者からレイプされたので,被害者を痛めつけて慰謝料を取って欲しい,慰謝料が取れればみんなで分けてくれたらよいなどの話がなされ,被告人らは木刀を用意した上で被害者を呼び出すことにしたこと④ 被告人らは,木刀を用意した上,判示のとおり,同月31日午後10時50分ころ ればみんなで分けてくれたらよいなどの話がなされ,被告人らは木刀を用意した上で被害者を呼び出すことにしたこと④ 被告人らは,木刀を用意した上,判示のとおり,同月31日午後10時50分ころから同年8月1日午前7時ころまでの間,神戸市a区内,大阪市h区内,大阪府吹田市内,同府堺市内等において,呼び出した被害者にBをレイプしたとして問い詰め,その間,被害者に対し,繰り返し激しい暴行を加えて,その反抗を抑圧した上,慰謝料名下に金員の支払いを要求し,被害者をして毎月20万円を支払うことなどを約束させる一方,被害者から判示の金品を強取し,その際,被害者に判示の傷害を負わせたこと⑤ 被告人は,終始行動をともにして,E,F,B及びDが被害者に対して手拳や木刀で殴打するなどの激しい暴行を繰り返し一方的に加えるのを見ていながら,それを制止するなどしなかったし,被害者に慰謝料の支払いを要求して毎月20万円の支払いを約束させるのを知りながら,それをやめさせなかっただけでなく,その20万円についてはBが5万円,他の者らが3万円ずつ均等に配分する旨の合意に加わったほか,被害者から強取した預金通帳等を手にし,その中のパスポートに挟まれていた韓国紙幣を自ら取得して所持していたこと以上が間違いのない事実として認められる。 (2) 上記認定の各事実によれば,被告人は,特に親しい間柄ではないAから,Bが被害者からレイプされたとして,被害者を痛めつけて慰謝料を取ることを依頼され,Aらと一面識もなかったD,E及びFとともに,慰謝料の中からの報酬欲しさからこれに応じ,それに基づいて,E,F,B及びDが被害者に対し激しい暴行を加えて,その反抗を抑圧した上,被害者に慰謝料の支払いを約束させるとともに被害者から金品を強取し,その際,被害者に傷害を負わせた これに応じ,それに基づいて,E,F,B及びDが被害者に対し激しい暴行を加えて,その反抗を抑圧した上,被害者に慰謝料の支払いを約束させるとともに被害者から金品を強取し,その際,被害者に傷害を負わせたものであるとみざるを得ないのであるから,被告人が,共犯者らとともに,被害者に暴行を加えて金品を強取することを共謀の上,本件犯行に及んだことが十分推認できるというべきである。 そして,上記認定の各事実に照らせば,被告人の検察官調書(乙21ないし23)及び警察官調書(乙15ないし18,20)において,被告人が,共犯者らと共謀の上,被害者から金品を強取しようとして本件犯行に及んだ旨いうところや,共犯者である証人A,同E及び同Fの当公判廷における各供述等において,同様にいうところも,十分信用できるというべきである。 (3) なお,被告人は,当公判廷においては,Aから,被害者を痛めつけてでも慰謝料を取って欲しいと頼まれたが,とりあえず被害者に会って話を聞くつもりであって,暴行を加えるつもりはなかったし,被害者から金品を強取するつもりもなく,そのような共謀もしていなかった旨供述するが,上記認定の各事実,とりわけ,被告人は,共犯者らが被害者に暴行を加えているのを制止しなかったばかりか,自らも被害者から強取する慰謝料から報酬を得ることを拒むことなく,むしろ強取品の一部を取得していることなどに照らすと,被告人の公判供述は,その内容が不合理・不自然であって,これをそのまま信用することはできない。 3 以上のとおりであって,被告人が,共犯者らと共謀の上,被害者から金品を強取しようとして本件犯行に及んだことは十分これを認めることができるから,被告人に強盗致傷罪の共同正犯が成立することは明らかである。 (法令の適用)被告人の判示所為は刑法60条,240 金品を強取しようとして本件犯行に及んだことは十分これを認めることができるから,被告人に強盗致傷罪の共同正犯が成立することは明らかである。 (法令の適用)被告人の判示所為は刑法60条,240条前段に該当するところ,所定刑中有期懲役刑を選択し,なお犯情を考慮し,同法66条,71条,68条3号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で,被告人を懲役4年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中140日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,共犯者Aから,共犯者Bが被害者に強姦されたので,被害者を痛めつけて慰謝料を取って欲しい旨依頼され,共犯者Dほか2名をAに紹介し,A,B,Dほか2名と共謀の上,被害者を痛めつけて慰謝料名下に金品を強取しようと企て,被害者に対して判示のとおりの暴行を加え,反抗を抑圧した上,その金品を強取し,その際,傷害も負わせたという強盗致傷の事案である。 被告人は,Aから,被害者から慰謝料名下に金員を強取することを依頼され,強取した慰謝料から報酬を支払う旨言われたことから,報酬目当てに本件犯行に及んだものであって,その動機に酌量の余地はないこと,被告人らは,最初の現場において被害者を4人がかりで取り囲み,同人がその場から逃げようとすると殴る蹴るの暴行を加えて,人気のない河川敷まで連行し,被告人ら6名が取り囲む中,被害者に強姦の事実を認めさせるべく,被害者が意識もうろうになるまで手拳や木刀等で一方的に殴打するなどの暴行を加えた上,更に場所を移した後,被告人ら6名がこもごも被害者に対し金員を要求し,被害者に当日午後8時までに10万円を支払い,毎月5日に20万円を支払う旨約束させるとともに,現金及び通帳などの財物を強取した ,更に場所を移した後,被告人ら6名がこもごも被害者に対し金員を要求し,被害者に当日午後8時までに10万円を支払い,毎月5日に20万円を支払う旨約束させるとともに,現金及び通帳などの財物を強取したものであって,その犯行態様は,悪質かつ執拗であり,その暴行の程度にも激しいものがあること,被告人らは,被害者から銀行の通帳,印鑑,パスポート等を強取して,被害者による金銭の支払いを担保しようとし,また被害者に対し,警察に言えば殺すと申し向けて脅すなどして,本件犯行が発覚しないようにしていること,被害者は,このような手酷い目に遭わなければならないような落ち度はなかったにもかかわらず,本件犯行により,判示のとおりの金品を強取されただけでなく,判示のとおりの傷害を負わされた上,殺されるかもしれないという恐怖を味わわされているのであって,その肉体的精神的苦痛は甚大であり,その処罰感情にも厳しいものがあること,被告人は,Dほか2名(うち2名は少年)を本件犯行に引き込んでいる上,公判廷においては強盗の共謀の事実を否認するなど不合理な弁解をしていて,真摯な反省の態度がみられないことなどを併せ考えると,犯情は悪く,被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。 また,被告人には平成9年9月に傷害罪で懲役1年,3年間刑執行猶予の判決を受けた前科があることも,量刑上看過することはできない。 してみると,本件による財産的損害はそれほど大きくなく,現金以外の被害品もすべて被害者に還付されていること,被告人は,Aの依頼を受けて本件犯行に加担したものであり,また,被害者に対して直接暴行を加えていないこと,被告人は,被害者に金50万円を分割して支払うことで示談を成立させ,うち金30万円についてはすでに支払っており,また,Aの母親も被害者に対して被害弁償金の一部として金2 直接暴行を加えていないこと,被告人は,被害者に金50万円を分割して支払うことで示談を成立させ,うち金30万円についてはすでに支払っており,また,Aの母親も被害者に対して被害弁償金の一部として金20万円を支払っていて,ある程度の被害回復がなされていること,前記の執行猶予は取り消されることなく,すでにその期間が経過していること,被告人も捜査段階では本件犯行を認め反省していたこと,被告人の内妻が被告人との間の子供とともに被告人の帰りを待ち,被告人の社会復帰後は監督する旨を誓っていること,被告人が本件により8か月半以上の期間身柄を拘束されていることなどの,被告人のために酌むべき事情を考慮し,更には共犯者に対する科刑・処分状況を参酌しても,主文の刑はやむを得ないところである。 (検察官の科刑意見懲役7年)よって,主文のとおり判決する。 平成15年4月18日神戸地方裁判所第2刑事部 裁判長裁判官森岡安廣 裁判官伏見尚子 裁判官前田昌宏は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官森岡安廣
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