平成20(む)3906

裁判年月日・裁判所
平成20年7月24日 名古屋地方裁判所
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判決文本文3,595 文字)

平成20年(む)第3906号主文本件請求を棄却する。 理由 本件請求の趣旨及び理由の要旨本件請求の趣旨及び理由は,弁護人作成に係る平成20年6月23日付け裁定請求書及び同年7月4日受付けの意見書に記載のとおりであるが,要するに,A警部補が作成した被告人B(以下「被告人」という。)の取調べの際における取調べメモ(手控え)・取調べ小票・調書案・ノート・備忘録等(名称の如何を問わず,被告人の取調べの内容,状況,被告人の供述等をメモしたもの。以下「本件備忘録等」という。)は,被告人がA警部補の面前で犯行時や犯行に至る経緯等に関し,その時々の心情や経過について子細に述べた内容が記載されたものであって,弁護人の予定主張に関連する重要な証拠であり,開示の必要性が認められるから,刑事訴訟法316条の20第1項によって開示をすべきであるのに,検察官がこれに応じないので,開示命令を求めるというものである。 当裁判所の判断(1) 弁護人の予定主張弁護人は,計画性,共謀の成立時期,犯行態様,共犯者間の役割,被告人の発言の趣旨や共犯者に与える影響等に関し,検察官の主張する証明予定事実とは異なる内容の主張を予定しているという。 そして,その具体的な内容としては,弁護人の平成20年5月7日付け及び同年6月23日付け各予定主張事実等記載書面によれば,客観的な事実関係については概ね検察官の主張を認めた上で,共犯者間で交わされた会話等の要約の仕方や,事実関係全体のニュアンス,間,区切り,臨場感,行間などが異なる旨を指摘し,そのほかには,被告人の心情等に関し,例えば,被告人が共犯者に対し,殺害ということに関する言葉を発したことなどについては認めた上で,被告人の実際の心情としては,共犯者らが安易な気持ちで強盗を実行しようとするのでは失敗に終わることなどを懸念 ば,被告人が共犯者に対し,殺害ということに関する言葉を発したことなどについては認めた上で,被告人の実際の心情としては,共犯者らが安易な気持ちで強盗を実行しようとするのでは失敗に終わることなどを懸念し,殺害に至る可能性もないとはいえない状況であることなどの十分な覚悟ができているのかを確認するなどしたものであって,殺害というのは最悪の場合を想定した未必的な意図に過ぎず,殺害を煽ろうという意思はなかった旨などを主張し,また,被告人が,共犯者のうちの一人が被害者を姦淫しようとした際,その共犯者を制止した理由については,検察官が主張するように暗証番号を聞き出すことを優先したものではなく,被害者によって騒がれるなどして周囲に犯行を知られるのを防ぐためである旨主張し,さらに,被告人が被害者の頭部を金槌で殴打した点については,検察官が主張するように確実に殺害するためではなく,被害者が長期にわたって苦しまないために行ったものであって,殴打する力は死に直結するほど強い力ではなかった旨などを主張するにすぎない。 そして,弁護人は,被告人に対する取調べについて,共犯者3人をいずれも平等の求刑とすることを引換えにしたり,被告人の興奮状況や強気の発言をする性格を逆用するなどして,供述調書に署名指印させた旨主張し,一方で,弁護人の前記6月23日付け予定主張事実等記載書面によれば,供述調書における内容について,被告人は,取調べに際し,客観的な状況のほか,時々の心情や発言の趣旨などについて,反省心等からできるだけ記憶に忠実に話をした旨を主張し,ただ,取調官は,客観的な部分だけが重要であるとして被告人の心情等の主観面については,ノート又はメモ等には記載するものの,供述調書に記載しなかったなどと主張している。そして,弁護人は,被告人の身上経歴に関する警察官調書1通に同意を が重要であるとして被告人の心情等の主観面については,ノート又はメモ等には記載するものの,供述調書に記載しなかったなどと主張している。そして,弁護人は,被告人の身上経歴に関する警察官調書1通に同意をしたほか,検察官が証拠請求をした14通の被告人の検察官調書に関し,その任意性を肯定した上で,不同意かつ不必要との証拠意見を述べている。 (2) 開示の必要性現時点の本件公判審理計画によると,検察官が証拠請求をしている被告人の供述調書は,弁護人が同意をしている身上経歴に関するもの1通を除いて採用を留保し,被告人質問を先行させ,その結果によって取調べの要否を検討することなどが予定されている。 弁護人は,被告人が,将来行われる公判廷における被告人質問において,検察官調書の記載内容とは異なる客観面,主観面に関する事実を供述をすることが予想されるところ,その場合,検察官から,検察官調書に記載がないことを理由に,被告人が取調べの際には供述していなかった内容である旨,あるいは,被告人は供述を変遷させたものである旨などが主張され,被告人の公判廷における供述の信用性が弾劾されることは必至であり,弁護人としては,被告人が,A警部補による取調べの際から一貫した供述をしていることなどを主張し,公判廷における被告人供述の信用性を補強するとともに,検察官調書の信用性を弾劾する予定であり,これらの防御等のためには,本件備忘録等の開示を受けることは,必要かつ重要であるなどと主張する。 しかしながら,被告人が供述することが予想される検察官調書の記載内容とは異なる客観面,主観面に関する事実の内容というのは,上記(1)の弁護人の予定主張に沿うような内容のものであることが予想され,要するに,客観的事実関係等については特に明示的に異なるというものではなく,そのニュアンス等が異なるという 実の内容というのは,上記(1)の弁護人の予定主張に沿うような内容のものであることが予想され,要するに,客観的事実関係等については特に明示的に異なるというものではなく,そのニュアンス等が異なるというものであり,また,被告人の主観面等についても,上記(1)のとおり,被告人は取調べの際に犯行に至る経緯及び犯行状況等における被告人の心情の詳細等を述べたが,取調官は重要でないとして,供述調書には客観面しか記載しなかったというのであって,供述調書に記載されなかった被告人の主観面に関する具体的な供述というのも,検察官が主張している証明予定事実の内容と明らかに矛盾抵触するとまでは言い難いような被告人の真意,心理の詳細といったものである。 そうすると,弁護人がこれらの点を主張し,防御するについては,被告人質問によって,被告人が真意,心情の詳細等を十分に供述した上で,本件犯行に至る経緯及び犯行状況等に関する被告人及び共犯者らの具体的な言動等に照らして,その信用性等を評価検討して主張することが重要となると解される。これに対し,取調状況がどのようなものであったかという点は,弁護人の主張,防御等との関係において,重要なものとは言い難く,取調官の証人尋問等を行うべき必要性までは認められないのであって,実際にも,当事者のいずれからも取調官の証人尋問請求はなされておらず,その予定もない。 以上によれば,本件における弁護人の予定主張との関係において,本件備忘録等の証拠は,関連性及び証明力がいずれも高くなく,被告人の防御の準備のために本件備忘録等を開示する必要性は乏しいのであって,開示を相当と認めることはできない。 なお,検察官は,A警部補が犯罪捜査規範13条に基づいて作成した備忘録は存在せず,同人が作成した個人的なメモ等は証拠開示命令の対象になり得ない旨主張するのに対し ,開示を相当と認めることはできない。 なお,検察官は,A警部補が犯罪捜査規範13条に基づいて作成した備忘録は存在せず,同人が作成した個人的なメモ等は証拠開示命令の対象になり得ない旨主張するのに対し,弁護人は,本件備忘録等は同条によって作成が義務付けられているものであるから,存在することは明らかである旨主張している。そもそも,警察官が捜査の過程で作成して保管するメモが証拠開示命令の対象となるものであるか否かの判断は,裁判所が行うべきものであるから,警察官らが,備忘録は存在せず,個人的なメモが存在するにすぎないなどと主張した場合であっても,当該メモが証拠開示命令の対象となる可能性のあることは明らかであって,この点に関する検察官の主張は失当である。しかしながら,上記のとおり,本件備忘録等については,そもそも開示する必要性が乏しく,開示を相当と認めることができない以上,その余の点について判断するまでもなく,弁護人の本件請求には理由がない。 よって,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官・近藤宏子,裁判官・野口卓志,裁判官・酒井孝之)

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