令和4年3月24日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成30年(ワ)第17586号特許権侵害に基づく損害賠償等請求事件(第1事件)、平成31年(ワ)第7191号特許権侵害に基づく損害賠償請求事件(第2事件)、令和2年(ワ)第7989号特許権侵害に基づく損害賠償等請求事件(第3事件)、令和3年(ワ)第8097号特許権侵害に基づく損害賠償請求事件(第4事件)口頭弁論終結日令和4年2月3日判決 原告興和株式会社 同訴訟代理人弁護士北原潤一梶並彰一郎同補佐人弁理士中嶋俊夫鈴木智久見澤茂樹 被告東和薬品株式会社 同訴訟代理人弁護士飯田秀郷新保克芳森山航洋保志周作同訴訟代理人弁理士辻田朋子村松大輔 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求⑴ 第1事件 被告は、原告に対し、38億2826万4000円及びうち31億7124万円に対する平成28年4月1日から、うち6億5702万4000円に対する平成30年6月22日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 第2事件被告は、原告に対し、45億2279万3000円及びうち41億1163万円に対する平成29年4月1日から、うち4億1116万3000円に対する平成30年6月22日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 30年6月22日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 第2事件被告は、原告に対し、45億2279万3000円及びうち41億1163 万円に対する平成29年4月1日から、うち4億1116万3000円に対する平成31年4月2日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑶ 第3事件被告は、原告に対し、48億4197万3400円及びうち44億0179万4000円に対する平成30年4月1日から、うち4億4017万9400 円に対する令和2年4月4日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑷ 第4事件被告は、原告に対し、56億1814万円及びうち51億0740万円に対する平成31年4月1日から、うち5億1074万円に対する令和3年4月1 4日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、発明の名称を「医薬」とする特許権(特許第5190159号。以下「本件特許権」といい、その特許を「本件特許」という。)を有する原告が、別紙物件目録1から3記載の各製品(以下「被告製品1」ないし「被告製品3」と いい、これらを併せて「被告各製品」という。)が本件特許の特許請求の範囲に- 3 -属し、被告による被告各製品の製造、販売又は販売の申出が本件特許権の侵害に当たるなどと主張して、被告に対し、①第1事件については、不法行為に基づく損害賠償金35億1926万4000円及びうち31億7124万円に対する平成28年4月1日(不法行為の後の日)から、うち3億4802万4000円に対する平成30年6月22日(訴状送達日の翌日)から、各支払済みまで民法 (平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の 3億4802万4000円に対する平成30年6月22日(訴状送達日の翌日)から、各支払済みまで民法 (平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、不当利得に基づく不当利得金3億0900万円及びこれに対する平成30年6月22日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、②第2事件については、不法行為に基づく損害賠償金45億2279万3000円及びう ち41億1163万円に対する平成29年4月1日(不法行為の後の日)から、うち4億1116万3000円に対する平成31年4月2日(訴状送達日の翌日)から、各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、③第3事件については、不法行為に基づく損害賠償金48億4197万3400円及びうち44億0179万4000円に対する平成30年4月1日(不法行為 の後の日)から、うち4億4017万9400円に対する令和2年4月4日(訴状送達日の翌日)から、各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、④第4事件については、不法行為に基づく損害賠償金56億1814万円及びうち51億0740万円に対する平成31年4月1日(不法行為の後の日)から、うち5億1074万円に対する令和3年4月14日(訴状送達 日の翌日)から、各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠(特記しない限り枝番号を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)⑴ 当事者 原告及び被告は、医薬品等の製造・販売等を業とする株式会社である(争- 4 -い い限り枝番号を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)⑴ 当事者 原告及び被告は、医薬品等の製造・販売等を業とする株式会社である(争- 4 -いのない事実)。 ⑵ 本件特許権原告は、以下のとおりの本件特許権を有している(争いのない事実)。 ア特許番号第5190159号イ発明の名称医薬 ウ出願日平成24年8月8日(以下「本件出願日」という。)エ登録日平成25年2月1日⑶ 本件発明の内容ア本件特許の特許請求の範囲請求項6ないし9の記載(以下、順に「本件発明6」ないし「本件発明9」といい、これらを併せて「本件各発明」と いう。)は以下のとおりである(争いのない事実)。 請求項6次の成分(A)及び(B):(A)ピタバスタチン又はその塩;(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロース よりなる群から選ばれる1種以上;を含有し、かつ、水分含量が2.9質量%以下である固形製剤。 請求項7水分含量が1.5~2.9質量%である、請求項6記載の固形製剤。 請求項8 ピタバスタチン又はその塩を投与単位当たりピタバスタチンカルシウム換算で0.1~16mg含有する、請求項6又は7記載の固形製剤。 請求項9固形製剤が錠剤である、請求項6~8のいずれか1項記載の固形製剤。 イ本件特許の請求項6ないし9に係る発明の構成要件を分説すると、以下 のとおりである。 - 5 - 本件発明66-A 次の成分(A)及び(B):(A)ピタバスタチン又はその塩;(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上; を含有し 6-A 次の成分(A)及び(B):(A)ピタバスタチン又はその塩;(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上; を含有し、かつ、6-B 水分含量が2.9質量%以下である固形製剤。 本件発明77-A 水分含量が1.5~2.9質量%である、7-B 請求項6記載の固形製剤。 本件発明88-A ピタバスタチン又はその塩を投与単位当たりピタバスタチンカルシウム換算で0.1~16mg含有する、8-B 請求項6又は7記載の固形製剤。 本件発明9 9-A 固形製剤が錠剤である、9-B 請求項6~8のいずれか1項記載の固形製剤。 ⑷ 原告による訂正の請求ア被告は、特許庁に対し、平成30年7月19日、本件特許の請求項1及び2に係る発明について特許無効審判請求をした。原告は、特許庁に対し、 同年10月9日、本件特許の請求項1ないし5について訂正請求をしたが、特許庁は、令和元年7月1日、上記訂正請求を認めないとの審決の予告をした。(甲22、乙21、50)原告は、特許庁に対し、同年9月9日、本件特許の請求項1ないし5について訂正請求をした。その後、被告は、同年10月18日付けで弁駁書 を提出し、特許庁は、令和2年1月14日、上記弁駁書において新たに主- 6 -張された進歩性欠如に関する無効理由についての請求の理由の補正を許可し、同月20日、原告に明細書又は特許請求の範囲の訂正請求をすることができる旨等の通知をした。原告は、特許庁に対し、同年2月17日、本件特許の請求項1ないし5、7ないし9について訂正請求をした。(甲27ないし30) 特許庁は、同年9月18日、本件特許の請求項1ないし5について た。原告は、特許庁に対し、同年2月17日、本件特許の請求項1ないし5、7ないし9について訂正請求をした。(甲27ないし30) 特許庁は、同年9月18日、本件特許の請求項1ないし5についての上記訂正請求を認めるとともに、本件特許の請求項1及び2に記載された発明についての特許を無効とするとの審決をし、その後、同審決は確定した(甲34、乙59、弁論の全趣旨)。 イ被告は、特許庁に対し、同年12月17日、本件特許の請求項6ないし 9に係る発明について特許無効審判請求をした。原告は、特許庁に対し、令和3年7月30日、本件特許の請求項6ないし9について訂正請求をした(以下「本件訂正」という。)。(甲44、乙63)⑸ 本件各訂正発明についてア本件訂正による訂正後の請求項6ないし9に係る発明は、以下のとおり である(以下、順に「本件訂正発明6」ないし「本件訂正発明9」といい、これらを併せて「本件各訂正発明」という。また、本件訂正発明6ないし本件訂正発明9に係る訂正事項を「本件訂正事項6」ないし「本件訂正事項9」という。)(甲44)。 本件訂正発明6 次の成分(A)及び(B):(A)ピタバスタチン又はその塩;(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;を含有し、かつ、 (C)水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤であって、かつ、- 7 -錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤(但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、アルカリ化物質を含まない固形製剤を除く)。 本件訂正 (A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、アルカリ化物質を含まない固形製剤を除く)。 本件訂正発明7次の成分(A)及び(B):(A)ピタバスタチン又はその塩;(B)クロスポビドン;を含有し、 (C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、かつ、水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤であって、かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤(但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロース以 外のセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除く)。 本件訂正発明8次の成分(A)及び(B):(A)ピタバスタチン又はその塩を投与単位当たりピタバスタチンカル シウム換算で0.1~16mg;(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;を含有し、かつ、(C)水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤であって、かつ、 錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤(但し、固形製剤- 8 -又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として含む固形製剤を除く)。 本件訂正発明9次の成分(A)及び(B):(A)ピタバスタチン又はその塩;(B)クロスポビドン;を含有し、 (C)カ 塩に対する安定化剤として含む固形製剤を除く)。 本件訂正発明9次の成分(A)及び(B):(A)ピタバスタチン又はその塩;(B)クロスポビドン;を含有し、 (C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、かつ、水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤であって、かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤(但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として 含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除く)。 イ本件各訂正発明の構成要件の分説は以下のとおりである(争いのない事実)。 本件訂正発明66A 次の成分(A)及び(B): (A)ピタバスタチン又はその塩;(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;を含有し、6B かつ、(C)水分含量が1.5~2.9質量%である 6C 固形製剤であって、かつ- 9 -6D 錠剤であって、6E 気密包装体に収容される固形製剤6F (但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、 及び、アルカリ化物質を含まない固形製剤を除く)。 本件訂正発明77A 次の成分(A)及び(B):(A)ピタバスタチン又はその塩;(B)クロスポビドン; を含有し、(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、7B かつ、水分含量が1.5~2.9質量%である7C 固形製剤であって、かつ スポビドン; を含有し、(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、7B かつ、水分含量が1.5~2.9質量%である7C 固形製剤であって、かつ 7D 錠剤であって、7E 気密包装体に収容される固形製剤7F (但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロース以外のセルロース誘導体をフィルム形成剤として含 む材料の層でコーティングされている固形製剤を除く)。 本件訂正発明88A 次の成分(A)及び(B):(A)ピタバスタチン又はその塩を投与単位当たりピタバスタチンカルシウム換算で0.1~16mg; (B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロ- 10 -ースよりなる群から選ばれる1種以上;を含有し、8B かつ、(C)水分含量が1.5~2.9質量%である8C 固形製剤であって、かつ8D 錠剤であって、 8E 気密包装体に収容される固形製剤8F (但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定 化剤として含む固形製剤を除く)。 本件訂正発明99A 次の成分(A)及び(B):(A)ピタバスタチン又はその塩;(B)クロスポビドン; を含有し、(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、9B かつ、水分含量が1.5~2.9質量%である9C 固形製剤であって、かつ 9D 錠剤であって、9E 、(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、9B かつ、水分含量が1.5~2.9質量%である9C 固形製剤であって、かつ 9D 錠剤であって、9E 気密包装体に収容される固形製剤9F (但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤 を除く)。 - 11 -⑹ 被告の行為ア被告は、平成25年12月13日以降、被告製品1及び2の製造・販売をしており、平成26年12月12日以降、被告製品3の製造・販売をしている(争いのない事実)。 イ被告は、平成30年5月23日に被告製品3について、同年10月31 日に被告製品1及び2について、それぞれカルメロース及びその塩、クロスポピドン並びに結晶セルロースのいずれも含まない他社製剤に対する一変承認を得て、上記各日以降、別処方製剤を製造販売している(乙84、弁論の全趣旨)。 ウ平成25年12月13日から平成30年10月30日までに製造販売さ れた被告製品1及び2、平成26年12月12日から平成30年5月23日までに製造販売された被告製品3は、それぞれ本件各発明及び本件各訂正発明の各構成要件を充足し、各技術的範囲に属する(争いのない事実、弁論の全趣旨)。 ⑺ 本件訴訟に至る経緯 ア原告は、平成27年10月30日、本件特許権に基づき、被告に対し被告製品3の製造・販売の差止め等を求める訴えを東京地方裁判所に提起し、東京地方裁判所は、平成29年9月29日、原告の請求を認容する判決をした(争いのない事実)。 イ被告は、上記判決について控訴したが、知的財産高等裁判所は、平成3 0年4 方裁判所に提起し、東京地方裁判所は、平成29年9月29日、原告の請求を認容する判決をした(争いのない事実)。 イ被告は、上記判決について控訴したが、知的財産高等裁判所は、平成3 0年4月4日、被告による控訴を棄却するとの判決をした。被告は、上記判決に対して上告提起及び上告受理申立てをしたが、上告提起については平成30年6月8日付けで取り下げ、上告受理申立てについては最高裁判所により平成31年2月14日付けで上告不受理決定がされ、前記東京地方裁判所の判決は確定した(争いのない事実、甲36、36の2)。 ウ原告は、平成30年6月1日、被告に対して、平成27年4月1日から- 12 -平成28年3月31日までの間の被告による本件特許権の侵害行為について不法行為に基づく損害賠償金及び不当利得に基づく不当利得金並びに遅延損害金の支払を求める訴え(第1事件)を提起した(顕著な事実)。 エ原告は、平成31年3月22日、被告に対して、平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間の被告による本件特許権の侵害行為につ いて不法行為に基づく損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める訴え(第2事件)を提起した(顕著な事実)。 オ原告は、令和2年3月25日、被告に対して、平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間の被告による本件特許権の侵害行為にについて不法行為に基づく損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める訴え(第 3事件)を提起した(顕著な事実)。 カ原告は、令和3年3月30日、被告に対して、平成30年4月1日から平成31年3月31日までの間の被告による本件特許権の侵害行為について不法行為に基づく損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める訴え(第4事件)を提起した(顕著な事実)。 ⑻ 先行文献 平成31年3月31日までの間の被告による本件特許権の侵害行為について不法行為に基づく損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める訴え(第4事件)を提起した(顕著な事実)。 ⑻ 先行文献本件出願日(平成24年8月8日)よりも前に公開された文献として、以下のものが存在する。 ア国際公開2004-071402号公報(公開日平成16年8月26日。 乙1。以下「乙1公報」といい、乙1公報に記載された発明を「乙1発明」 という。)イ国際公開2004-071403号公報(公開日平成16年8月26日。 乙12。以下「乙12公報」という。)ウ SI21402 A号公報(公開日平成16年8月31日。乙62。以下「乙62公報」といい、乙62公報に記載された発明を「乙62発明」 という。)- 13 - 2 争点被告は、本件各発明の無効理由として、乙12発明1(後述)、乙12発明2(後述)及び乙62発明に基づく進歩性欠如の無効理由、サポート要件違反並びに実施可能要件違反の各無効理由を主張するところ、本件各発明について上記進歩性欠如の無効理由があることは当事者間に争いはないことから、 本件の争点は、以下のとおりである。 ⑴ 争点⑴(本件各発明について)アサポート要件違反の有無イ実施可能要件違反の有無⑵ 争点⑵(本件訂正発明9について) 本件訂正による訂正の再抗弁の成否であり、具体的には、本件訂正発明9について、本件訂正により以下の無効理由が解消されたか否かである。 ア乙12発明1に基づく進歩性欠如イ乙12発明2に基づく進歩性欠如ウ乙62発明に基づく進歩性欠如 エサポート要件違反及び実施可能要件違反⑶ 争点⑶(本件訂正発明7について)本件訂正による訂正の再抗弁の成 イ乙12発明2に基づく進歩性欠如ウ乙62発明に基づく進歩性欠如 エサポート要件違反及び実施可能要件違反⑶ 争点⑶(本件訂正発明7について)本件訂正による訂正の再抗弁の成否であり、具体的には本件訂正発明7について、本件訂正により以下の無効理由が解消されたか否かである。 ア乙12発明1に基づく進歩性欠如 イ乙12発明2に基づく進歩性欠如ウ乙62発明に基づく進歩性欠如エサポート要件違反及び実施可能要件違反⑷ 争点⑷(本件訂正発明6について)本件訂正による訂正の再抗弁の成否であり、具体的には以下のとおりであ る。 - 14 -ア本件訂正による請求項6の訂正が訂正要件に違反するか否かイ本件訂正発明6について、本件訂正により以下の無効理由が解消されたか否か乙12発明1に基づく進歩性欠如乙12発明2に基づく進歩性欠如 乙62発明に基づく進歩性欠如サポート要件違反及び実施可能要件違反⑸ 争点⑸(本件訂正発明8について)(訂正の再抗弁の成否)本件訂正による訂正の再抗弁の成否であり、具体的には以下のとおりであ る。 ア本件訂正による請求項8の訂正が訂正要件に違反するか否かイ本件訂正発明8について、本件訂正により以下の無効理由が解消されたか否か乙12発明1に基づく進歩性欠如 乙12発明2に基づく進歩性欠如乙62発明に基づく進歩性欠如サポート要件違反及び実施可能要件違反(本件訂正発明8についての新たな無効理由)ウ明確性要件違反 ⑹ 争点⑹損害額及び不当利得額第3 争点に対する当事者の主張 1 争点⑴ア(サポート要件違反)【原告の主張】 ⑴ 発明が解決しようとする課題 )ウ明確性要件違反 ⑹ 争点⑹損害額及び不当利得額第3 争点に対する当事者の主張 1 争点⑴ア(サポート要件違反)【原告の主張】 ⑴ 発明が解決しようとする課題- 15 -サポート要件の適否の判断において、発明の詳細な説明に記載された発明が解決しようとする課題は、原則として、発明の詳細な説明の記載によって認定されるべきである。 本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明(以下「本件明細書記載発明」という。)は、ピタバスタチン又はその塩にカルメロース又はその塩、 クロスポピドン、結晶セルロースといった崩壊剤(以下「本件崩壊剤」という。)を混合して得られた混合物(以下「本件混合物」という。)又は本件混合物に係る固形製剤若しくは医薬品(以下「本件混合物等」という。)において、ラクトン体の生成を抑制することを目的とした発明であり、その解決しようとする課題は、「ピタバスタチン又はその塩と、本件崩壊剤とを混合 して得た混合物等において、多量のラクトン体が生成すること」(以下「本件課題①」という。)である。 本件明細書には、5-ケト体の生成に関する記載があるが、本件明細書には、本件明細書記載発明が解決しようとする課題が「5-ケト体の生成」であることは一切記載されておらず、5-ケト体の生成は、本件明細書記載発 明が解決しようとする課題とはいえない。本件明細書における5-ケト体に関する記載は、本件課題①を解決できる構成について、さらに水分含量を1. 5質量%以上とする構成を加えることで、5-ケト体の抑制に関する追加的な効果が奏されることを示すものであり、本件明細書記載発明が解決しようとする課題について述べるものではない。 ⑵ 本件課題①を解決できると認識できることア本件 ト体の抑制に関する追加的な効果が奏されることを示すものであり、本件明細書記載発明が解決しようとする課題について述べるものではない。 ⑵ 本件課題①を解決できると認識できることア本件明細書の段落【0001】、【0009】、【0010】、【0013】、【0025】、【0028】及び【0058】以下の試験例1並びに試験例2の記載によれば、本件明細書記載発明は、本件混合物等においてラクトン体の生成を抑制することを目的とした発明であり、本件課題①との関係 において、「課題の解決」とは、本件混合物等において、ラクトン体の生- 16 -成が「抑制された」状態がもたらされたことであるといえる。そして、本件明細書は、「本件混合物等において水分含量が低くなるとラクトン体の生成も低くなるという相関関係(以下「本件相関関係」という。)に着目し、本件混合物等について水分含量を調整しなかった場合に比べて、水分含量を低くした場合、とりわけ、水分含量を2.9質量%以下に調整した 場合の方が、ラクトン体の生成が低くなることを実証しており、本件明細書は、試験例2の結果から、本件混合物等について、「水分含量が2.9質量%以下である固形製剤においてはラクトン体生成が抑制されることが明らかとなった」(【0067】)と評価している。他方、本件明細書には、ラクトン体の生成が「抑制された」か否かについて、ラクトン体の生成量 や生成率といった定量的な基準やこれに基づく判断について何らの記載もない。 したがって、本件明細書の記載によれば、本件混合物等において、ラクトン体の生成が「抑制された」とは、本件混合物等について、水分含量を調整しなかった場合に比べて、ラクトン体の生成が低くなることをもって、 「ラクトン体生成の抑制」がなされたという おいて、ラクトン体の生成が「抑制された」とは、本件混合物等について、水分含量を調整しなかった場合に比べて、ラクトン体の生成が低くなることをもって、 「ラクトン体生成の抑制」がなされたという解釈、すなわち、水分含量に着目した相対的な抑制をもって「ラクトン体生成の抑制」がなされたという解釈(相対的抑制論)が合理的である。そうすると、本件課題①との関係で「課題の解決」とは、本件混合物等について、水分含量を調整しない場合に比べて、ラクトン体の生成が低くなることを意味するといえる。 イ本件において、本件明細書の処方例1に係る口腔内崩壊型錠剤に含まれたピタバスタチンカルシウム及び本件崩壊剤以外の成分の中に、本件混合物等における水分含量が低くなるとラクトン体の生成も低くなるという本件相関関係の成立に不可欠の成分が存在するということは、本件明細書に記載も示唆もされていないし、また、そのようなことが本件出願日当時に 技術常識として当業者に認識されていたという事情も存在しない。そして、- 17 -本件明細書には、試験例1によりピタバスタチンカルシウムと本件崩壊剤のみを混合した混合物についても同様に、本件相関関係が認められることが示されており、また、ラクトン体の生成の原因・メカニズムについても本件崩壊剤の吸湿性に起因すると考察されている。そうとすれば、当業者は、本件明細書の記載、特に試験例2及び1の記載から、処方例1に係る 口腔内崩壊型錠剤に限らず、本件混合物等一般について、水分含量を2. 9質量%以下に調整することにより、水分含量を調整しなかった場合に比べて、ラクトン体の生成が低くなることを認識(合理的に推認)することができるというべきである。 したがって、本件明細書の記載によれば、当業者は、本件混合物等一般 を調整しなかった場合に比べて、ラクトン体の生成が低くなることを認識(合理的に推認)することができるというべきである。 したがって、本件明細書の記載によれば、当業者は、本件混合物等一般 について「水分含量を2.9質量%以下に調整すること」により本件課題①を解決できると認識できるのであるから、当該構成は、本件課題①を解決できると認識できる範囲のものである。 ⑶ 本件課題②について仮に、本件課題①に加えて、5-ケト体の生成に関する課題を認定する場 合には、本件明細書の記載(【0025】、【0068】~【0070】)は、本件混合物等において水分含量が2.9~1.5質量%の場合に、ラクトン体の生成を抑制することができる上に、5-ケト体の生成も抑制することができると示していることからすれば、5-ケト体に関する課題は、「本件混合物等において水分含量を1.5質量%未満とした場合に、水分含量が1. 5質量%以上の場合と比べて、5-ケト体がより多く生成されるとの懸念」(以下「本件課題②」という。)といえる。 そして、本件課題②との関係で、「課題の解決」とは、「本件混合物等において、水分含量を1.5質量%未満とした場合に水分含量が1.5質量%以上の場合と比べて、5-ケト体がより多く生成されるとの懸念」が解消され ることである。そうすると、本件明細書の試験例3により、当業者は、本件- 18 -混合物等である処方例1に係る口腔内崩壊型錠剤について、水分含量を1. 5質量%以上に調整することで、本件課題②を解消できることを認識することができる。そして、当業者は、処方例1に係る口腔内崩壊型錠剤以外の本件混合物等一般についても同様に、水分含量を1.5質量%以上に調整することで、本件課題②を解消できることを認識でき、これを妨げる とができる。そして、当業者は、処方例1に係る口腔内崩壊型錠剤以外の本件混合物等一般についても同様に、水分含量を1.5質量%以上に調整することで、本件課題②を解消できることを認識でき、これを妨げる事情は存在 しない。 したがって、当業者は、本件明細書の記載により、本件混合物等一般について、水分含量を1.5質量%以上とする構成を採用することにより、本件課題②を解決できると認識できるから、当該構成は、本件課題②を解決できると認識できる範囲のものである。 ⑷ 被告の主張についてア被告は、本件明細書記載発明の課題は、ピタバスタチン又はその塩が保存中に分解して類縁物質(不純物)としてのラクトン体の生成を抑制し、医薬品としての品質管理上要求される類縁物質の許容範囲(0.5%以下)に収まるようにその生成を抑制することを課題とするなどと主張する。 しかしながら、被告の主張は、本件明細書記載発明は、水分含量が調整されていないものに比べて、「ラクトン体の生成抑制」について定量的な意味合いを持つことを前提とするが、本件明細書には、表3の「40℃75%RH2ヶ月後」のラクトン体の生成率が0.23%以下でないと「ラクトン体生成の抑制」がなされたとはいえないことを示す記載や技術常識 は一切ないことからすれば、本件明細書に触れた当業者が、「40℃75%RH2ヶ月後」のラクトン体の生成率が「0.23%」以下であって初めて「ラクトン体生成の抑制」がなされたという判断基準を本件明細書が示していると理解することはない。また、本件明細書には、「医薬品としての品質管理上要求される類縁物質の許容範囲・・・に収まるようにそ の生成を抑制することを課題としている」などとは、一切記載されておら- 19 -ず、このような「許容範囲」 、「医薬品としての品質管理上要求される類縁物質の許容範囲・・・に収まるようにそ の生成を抑制することを課題としている」などとは、一切記載されておら- 19 -ず、このような「許容範囲」なるものが具体的に存在するのか不明であるし、仮にそれが存在するとしても、被告が主張する「0.5%以下」という数値がその許容範囲であることの根拠もない。被告の上記主張は失当である。 イ被告は、①本件明細書の処方例1に係る口腔内崩壊型錠剤に含まれた結 晶セルロース、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び塩化カルシウム二水和物(以下「本件3成分」という。)を除いて製造した固形製剤について、本件3成分を含んだ固形製剤の試験結果と同様の試験結果を確認できるか不明である、②本件3成分が、処方例1の口腔内崩壊型錠剤において、ピタバスタチンの安定性に寄与しており、安定性保持のために必須の成分 であるなどと主張する。 しかしながら、上記①について、本件3成分を含む処方例1に係る口腔内崩壊型錠剤に限らず、本件3成分の全部又は一部を含まない本件混合物等一般について、水分含量を2.9質量%以下に調整することにより、水分含量を調整しなかった場合に比べて、ラクトン体の生成が低く なることを当業者が認識できることは上記⑵イのとおりであり、被告の上記①の主張は理由がない。 上記②について、本件明細書には、本件課題①の課題であるラクトン体の生成が抑制されたか否かについて、ラクトン体の生成量や生成率といった定量的な基準やこれに基づく判断について何らの記載もないこと からすれば、本件3成分が処方例1に係る口腔内崩壊型錠剤におけるピタバスタチンの安定性保持に必須の成分であるとする被告の主張は、サポート要件の関係では無関係である。 また、被 載もないこと からすれば、本件3成分が処方例1に係る口腔内崩壊型錠剤におけるピタバスタチンの安定性保持に必須の成分であるとする被告の主張は、サポート要件の関係では無関係である。 また、被告は本件3成分がピタバスタチンの安定性に寄与すると主張するが、本件3成分が本件相関関係の成立に不可欠な成分とは認められ ないし、仮に本件3成分が処方例1に係る口腔内崩壊型錠剤においてピ- 20 -タバスタチンの安定性に寄与していたとしても、それはラクトン体の生成率の絶対値に影響を与えるものであって、本件相関関係に影響を与えるものではないため、本件相関関係についての推認は覆らず、当業者は、本件3成分を除いた本件混合物等一般について本件相関関係が認められると認識することができる。上記被告の主張はサポート要件の適否の判 断とは無意味なものである。 さらに、本件3成分が、ピタバスタチンの安定性に寄与しているか不明である上に、本件出願日当時、ピタバスタチンの安定性に寄与することが技術常識であったとはいえない。 被告は、乙1公報により結晶セルロースに安定化作用があるなどと主 張するが、乙1公報は、アトルバスタチンカルシウムを主薬とする医薬剤形に係る発明であり、ピタバスタチン又はその塩を主薬とする医薬剤形に係る発明ではない上に、乙1公報には結晶セルロースが安定化に寄与したかを示す実証実験もなく安定化に寄与したか不明である。かえって、結晶セルロースがスタチンを不安定化するものであることを示す文 献もある(甲39、41)。仮に、結晶セルロースがピタバスタチンを安定化する作用を有するものであるとの知見を考慮したとしても、本件明細書の表1には、ピタバスタチンカルシウムのみの場合には、70℃3日保存後のラクトン体生成率が0 、結晶セルロースがピタバスタチンを安定化する作用を有するものであるとの知見を考慮したとしても、本件明細書の表1には、ピタバスタチンカルシウムのみの場合には、70℃3日保存後のラクトン体生成率が0.03%であるのに対し、結晶セルロースを組み合わせた場合には、70℃3日保存後のラクトン体生成率 が0.33%になるとの記載があり、これに接した当業者は、結晶セルロースがピタバスタチンの安定性を損なう成分であると理解するのであり、上記知見は、本件明細書の上記記載により打ち消されており、サポート要件違反の根拠たりえない。 したがって、被告の上記②の主張を採用することはできない。 【被告の主張】- 21 -⑴ 発明の解決すべき課題について本件明細書の段落【0009】の記載からすれば、本件各発明は、ラクトン体生成が抑制された医薬品製剤を提供することを課題としている。そして、本件明細書の表3は水分含量が2.9質量%と3.3質量%の間に二重線を引いており、段落【0067】の記載からすれば、本件各発明は、錠剤の水 分含量を3.3質量%とした場合は「ラクトン体生成の抑制」という課題を解決することはできないが、水分含量を2.9質量%以下という特定の数値範囲に制御することによって「ラクトン体生成の抑制」という課題を解決することができることを見出したという内容である。 また、本件出願日当時、スタチン類が酸性環境で不安定となってラクトン 体に変化することは周知であり、かつ、そのラクトン体抑制のための方法として、錠剤中の水分含量を3%未満に制御することも知られており、このような技術常識を参酌して本件明細書をみれば、本件各発明の課題であるラクトン体の生成抑制とは、単に水分含量を抑制しない場合と比べて相対的にラクトン体の生成 3%未満に制御することも知られており、このような技術常識を参酌して本件明細書をみれば、本件各発明の課題であるラクトン体の生成抑制とは、単に水分含量を抑制しない場合と比べて相対的にラクトン体の生成が抑制されればよい、というものでないことは明らかである。 以上によれば、本件各発明の課題であるラクトン体の生成抑制とは、ピタバスタチン又はその塩が保存中に分解して類縁物質(不純物)としてのラクトン体の生成を抑制し、医薬品としての品質管理上要求される類縁物質の許容範囲(0.5%以下)に収まるようにその生成を抑制することを課題としているというべきである。 ⑵ 課題の解決について本件明細書において、水分含量を1.5~2.9質量%とすることによってピタバスタチン又はその塩の安定性が確認されている固形製剤は、処方例1に基づいて製造され、試験例2及び試験例3の試験に供された口腔内崩壊型錠剤のみである。そして、処方例1に係る口腔内崩壊型錠剤は、本件3成 分を含有するところ、本件3成分の全部又は一部を除いて製造した固形製剤- 22 -について水分含量値によって保存後のラクトン体生成率及び5-ケト体生成率の差異が生じるかは、本件3成分の全部又は一部を除いて製造した固形製剤についての試験例が開示されていない以上、全く不明である。むしろ、医薬品添加物に関する当業者の技術常識を踏まえれば、本件3成分は、いずれも固形製剤中のピタバスタチン又はその塩の安定性に寄与する物質であり、 かつ、本件明細書の処方例1には安定性効果を発揮するために必要かつ十分な量が含まれており、処方例1の固形製剤において本件3成分は、ピタバスタチンの安定性保持のための必須の成分であるというべきであり、本件3成分のうちいずれか1つを欠いた場合には、当該課題の解決が 十分な量が含まれており、処方例1の固形製剤において本件3成分は、ピタバスタチンの安定性保持のための必須の成分であるというべきであり、本件3成分のうちいずれか1つを欠いた場合には、当該課題の解決ができるか否かは不明といわざるを得ない。 しかるに、本件各発明は、いずれも本件3成分を必須の構成とするものではなく、本件3成分を含まない構成をも包含するものとして広く規定されている。そうすると、本件3成分を必須としない発明の構成によって、処方例1と同様に「ラクトン体生成の抑制」という課題を解決することができるかは不明である。 また、本件明細書の発明の詳細な説明の記載において、5-ケト体の生成抑制ができると当業者が理解するのはPTP包装及びアルミピロー包装という二重包装による密封を行うからであり、5-ケト体との関係において本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明は、PTP包装及びアルミピローという二重包装による密封を必須の構成とするものであるから、 そもそも包装体を要件としていない本件各発明はサポート要件を満たさない。 以上によれば、本件各発明には、サポート要件違反の無効理由がある。 ⑶ 原告の主張について原告は、本件3成分がピタバスタチンの安定化をもたらす成分であること が本件出願日当時の技術常識であったことを立証する必要があると主張する。 - 23 -しかし、本件3成分は、いずれもピタバスタチン又はその塩の安定性に寄与する物質であることは、本件出願日当時の技術常識であり、そのうちのいずれかを欠く場合に医薬品としての品質保持を維持するという観点からのラクトン体生成の抑制という課題が解決できないことは明らかである。また、サポート要件の立証責任を負っているのは原告であるところ、本件3成分を 含 医薬品としての品質保持を維持するという観点からのラクトン体生成の抑制という課題が解決できないことは明らかである。また、サポート要件の立証責任を負っているのは原告であるところ、本件3成分を 含まない処方例に基づくラクトン体の生成抑制試験の結果は開示されておらず、かつ、本件3成分がピタバスタチン又はその塩の安定性に寄与している蓋然性が合理的に認められることからすれば、原告において、本件3成分がピタバスタチン又はその塩の安定性に寄与ないという知見が当業者の技術常識であることを立証しない以上、サポート要件に違反するというべきである。 2 争点⑴イ(実施可能要件違反)【原告の主張】本件明細書の発明の詳細な説明には、固形製剤の製法(段落【0004】)及び固形製剤の水分含量の調整方法(段落【0027】~【0029】)が記載されるとともに、[製造例7]として、ピタバスタチン又はその塩、クロス ポピドンを含み、カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含まず、ヒドロキシエチルセルロース及びポリビニルアルコールをいずれもフィルム形成剤として含まない水分含量が2.3質量%の固形製剤が具体的に示されている(段落【0078】【表6】)。 したがって、当業者は、上記記載及び本件出願日当時の技術常識に基づき、 過度の試行錯誤を要することなく、本件各発明に係る固形製剤を生産、使用することができる。本件明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 【被告の主張】本件各発明におけるクレームされた発明は、本件3成分を含有させることを 規定していない。他方、本件明細書から理解される本件各発明は、本件3成分- 24 -を含有している。これら本件3成分を要件とせずに医薬品としての品質保持に必要な程度に を含有させることを 規定していない。他方、本件明細書から理解される本件各発明は、本件3成分- 24 -を含有している。これら本件3成分を要件とせずに医薬品としての品質保持に必要な程度にラクトン体の生成抑制ができるかどうかは、多大な労力を費やさなければ確認できない。 また、5-ケト体は、ピタバスタチン又はその塩が酸化されることにより生成される酸化分解化合物であるところ、本件明細書での5-ケト体の生成抑制 を確認した試験例3では、PTP包装及びアルミピロー包装という二重包装による密封によって固形製剤中への酸素の透過を防止しており、それに基づく結果が表4に示されている。しかし、本件各発明は、PTP包装及びアルミピロー包装という二重包装による密封を要件とせずに、水分含量を1.5質量%以上とすることで5-ケト体の生成を抑制することができるかどうかは多大な労 力を費やさなければならない。 したがって、クレームされた発明が解決しようとする課題、解決手段、その他の発明の技術上の意義を理解するために必要な情報を開示し、発明を実施するための明確でかつ十分な情報を提供していないと言わざるを得ず、本件各発明には、実施可能要件違反の無効理由がある。 3 争点⑵ア(本件訂正発明9について乙12発明1に基づく進歩性欠如)【被告の主張】⑴ 乙12発明1の内容乙12公報において、「ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされた構成」は必須ではな く、また、ピタバスタチンを有効成分とする医薬製剤において、環境影響から保護するコーティングの形態で適用されるフィルム形成剤としてポリビニルアルコール又はセルロース誘導体以外の様々な材料が周知であることからすれば、乙12公報か 成分とする医薬製剤において、環境影響から保護するコーティングの形態で適用されるフィルム形成剤としてポリビニルアルコール又はセルロース誘導体以外の様々な材料が周知であることからすれば、乙12公報から以下の発明を認定することができる(以下「乙12発明1」という。)。 「医薬剤形であって、- 25 -(a)フィルム形成物質を含む、イタバスタチンであるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤および1種類以上の医薬賦形剤および/または医薬剤形の環境影響からの保護および安定性を、好ましくは酸化および/または環境湿度からの保護および安定性を提供するコーティングでコーティングされている、イタバスタチンであるHMG-CoAレダクターゼ阻害 剤を含む、コーティングされた粒子および/またはイタバスタチンであるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を含有する1つ以上のコーティングされていない粒子の混合物と、(b)以下の群から選択される1種類以上の医薬賦形剤と、(aa)1種類以上のフィラー; (bb)1種類以上のバインダー、(cc)1種類以上の崩壊剤、(dd)1種類以上の滑沢剤または滑剤、(ee)1種類以上の緩衝化要素、(ff)1種類以上のアルカリ化要素、 (gg)1種類以上の界面活性剤および(hh)着色剤、香味剤および吸着物質からなる群から選択される従来技術で知られている固形剤形のための他の成分(c)前記コーティング、又は前記コーティングされた粒子が医薬剤形に埋め込まれている場合には従来技術で知られている任意のコーティングで あってもよく、含水量が、前記医薬剤形全体の3重量%未満である、医薬剤形」⑵ 本件訂正発明9と乙12発明1との一致点本件訂正発明9と乙12発明1は、「次の成分(A):(A) ィングで あってもよく、含水量が、前記医薬剤形全体の3重量%未満である、医薬剤形」⑵ 本件訂正発明9と乙12発明1との一致点本件訂正発明9と乙12発明1は、「次の成分(A):(A)ピタバスタチン又はその塩;を含有する、医薬品」である点で一致する。 ⑶ 本件訂正発明9と乙12発明1との相違点- 26 -ア相違点121-9-1製剤が含有する成分について、本件訂正発明9は、「(B)クロスポビドン;を含有し、(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤と して含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除く」と特定しているのに対し、乙12発明1は、「コーティング」及び「コーティングされた粒子」が、「フィルム形成物質を含む、イタバスタチンであるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤および1種類以上の医薬賦形剤の環境影響からの保護および安定性を、好ましくは酸化および/または環境湿度からの 保護および安定性を提供するコーティング」及び該「コーティングでコーティングされている、イタバスタチンであるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を含む、コーティングされた粒子および/またはイタバスタチンであるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を含有する1つ以上のコーティングされていない粒子」であることを前提として、「(b)以下の群から選択 される1種類以上の医薬賦形剤と、(aa)1種類以上のフィラー;(bb)1種類以上のバインダー、(cc)1種類以上の崩壊剤、(dd)1種類以上の滑沢剤または滑剤、(ee)1種類以上の緩衝化要素、(ff)1種類以上のアルカリ化要素、(gg)1種類以上 フィラー;(bb)1種類以上のバインダー、(cc)1種類以上の崩壊剤、(dd)1種類以上の滑沢剤または滑剤、(ee)1種類以上の緩衝化要素、(ff)1種類以上のアルカリ化要素、(gg)1種類以上の界面活性剤および(hh)着色剤、香味剤および吸着物質からなる群から選択される従来技術で知ら れている固形剤形のための他の成分、(c)前記コーティング、又は前記コーティングされた粒子が医薬剤形に埋め込まれている場合には従来技術で知られている他のコーティング」であってもよい点イ相違点121-9-2本件訂正発明9は、「水分含量が1.5~2.9%である」と特定して いるのに対し、乙12発明1は、「含水量が、前記医薬剤形全体の3重- 27 -量%未満である」と特定している点ウ相違点121-9-3本件訂正発明9は、「固形製剤」と特定しているのに対し、乙12発明1は「医薬剤形」である点エ相違点121-9-4 ピタバスタチン又はその塩について、本件訂正発明9は、「含有する」としか特定していないのに対し、乙12発明1は、「HMG-CoAレタグターゼ阻害剤」であるとされ、混合物である上記「コーティングされた粒子」及び/又は「コーティングされていない粒子」に含まれるものとしている点 オ相違点121-9-5本件訂正発明9は、「かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される」と特定しているのに対し、乙12発明1はそのような特定をしていない点⑷ 相違点の検討ア相違点121-9-1 クロスポビドンを含有するものとする点本件訂正発明9の成分(B)クロスポビドンについて、乙12発明1は、成分(b)として、(cc)1種類以上の崩壊剤などの群から選択される1種類以上の医薬賦形剤を含むとし、乙1 を含有するものとする点本件訂正発明9の成分(B)クロスポビドンについて、乙12発明1は、成分(b)として、(cc)1種類以上の崩壊剤などの群から選択される1種類以上の医薬賦形剤を含むとし、乙12公報には崩壊剤として架橋したポリビニルピロリドン(本件訂正発明9のクロスポピドン) が記載されており、また、崩壊剤を用いて調製する旨の記載がある。そうすると、乙12発明1において、崩壊剤としてクロスポビドンを含有するものとすることは当業者が容易になし得た事項である。 カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有しないとされる点 本件訂正発明9における、(C)カルメロース及びその塩並びに結晶- 28 -セルロースをいずれも含有しないとされる点について、乙12公報において、カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースが必ず配合される成分であるとは解されておらず、乙12発明1において、カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有しないとすることは当業者が容易になし得た事項である。 固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除くとされる点乙12発明1は、フィルム形成物質を含むものであるところ、乙12公報には、フィルム形成剤について、環境の影響から活性物質を保護す るフィルム形成剤であればよく、好ましくは、酸化および/または環境湿度から活性物質を保護するフィルム形成剤であり、最も好ましくは、酸化からの活性物質の保護を提供する、ポリビニルアルコール及びセルロースの誘導体からなる群から選択される任意のフィルム形成剤であると記載され、ポリビニルアルコール又はセルロース り、最も好ましくは、酸化からの活性物質の保護を提供する、ポリビニルアルコール及びセルロースの誘導体からなる群から選択される任意のフィルム形成剤であると記載され、ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形 成剤として含む材料の層でコーティングされていることを必須の構成とするものではない。 そして、コーティングの形態で適用されるフィルム形成剤は、ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体に限らず様々な材料が周知であり、コーティング又はコーティングされた粒子が医薬剤形に埋め込まれてい る場合でなくても、従来技術で知られている他のコーティングを適用できることは技術常識である。 したがって、乙12発明1において、粒子又は医薬剤形をポリビニルアルコール又はセルロース誘導体以外のフィルム形成剤を用いてコーティングすることは当業者が容易になし得た事項である。 イ相違点121-9-2- 29 -乙12公報に記載された医薬剤形は、環境湿度に敏感であるイタバスタチンについて、それを安定化し、また、ヒドロキシル酸形態からラクトン体形態へと変換するのを防ぐために、含水量を3%未満にするものであるといえ、同じHMG-CoAレダクターゼ阻害剤であるアトルバスタチンとイタバスタチンは、医薬製剤中の環境湿度に対する敏感さとしては同等 のものとして記載されているといえる。 また、乙12公報には、アトルバスタチンCaを用いたものであるものの、錠剤をコーティングし、含水量を2.73、1.99、1.55又は1.73質量%程度とすることで、アトルバスタチンCaをラクトン体の生成、酸化分解から安定化できることが示されているといえる。 したがって、「含水量が、前記医薬剤形全体の3重量%未満である」とされる乙12発明1に とで、アトルバスタチンCaをラクトン体の生成、酸化分解から安定化できることが示されているといえる。 したがって、「含水量が、前記医薬剤形全体の3重量%未満である」とされる乙12発明1において、その含水量を、2.73、1.99、1. 55又は1.73質量%程度とすることは当業者が容易になし得た事項であるといえ、当該含水量は、「含水量が1.5~2.9質量%である」ことに相当するから、相違点121-9-2に係る本件訂正発明9の構成を 採用することは当業者が容易になし得た事項である。 ウ相違点121-9-3乙12発明1は、任意成分として着色料等の固形剤形のための他の成分を含むものであり、乙12公報には「本発明の医薬剤形は、好ましくは、固形医薬剤形である」ことも記載されているから、乙12発明1について 「固形製剤」であるとすることは当業者が容易になし得た事項である。 エ相違点121-9-4本件明細書には、ピタバスタチン又はその塩が優れたHMG-CoA還元酵素阻害活性を有すること(【0002】)、顆粒剤等とすることができ、コーティングされていてもよいことが記載されている(【0039】)。顆 粒剤が粒子であること、及び、混合物を形成することは自明であり、本件- 30 -訂正発明9は、ピタバスタチン又はその塩をHMG-CoAレダクターゼ阻害剤として用いること、ピタバスタチン又はその塩が、コーティングされた粒子及び/又はコーティングされていない粒子の混合物を包含する。 したがって、相違点121-9-4は実質的に相違しない。 オ相違点121-9-5 錠剤である点については、乙12公報には錠剤とすることが記載されており、乙12発明1を錠剤とすることは当業者が容易になし得た事項である。 気密包 違しない。 オ相違点121-9-5 錠剤である点については、乙12公報には錠剤とすることが記載されており、乙12発明1を錠剤とすることは当業者が容易になし得た事項である。 気密包装体に収容される点については、固形製剤を気密包装体に収容することにより包装体外からの水分等の侵入を防ぎ、製剤の安定化を図るこ とは周知の技術事項である。したがって、乙12公報に環境湿度等の環境影響に敏感であると記載されているイタバスタチンを含む乙12発明1について、水分等の侵入を防ぎ、製剤の安定化を図るために、気密包装体に収容されるものとすることは当業者が容易になし得た事項である。 カ小括 以上のとおり、相違点121-9-1ないし相違点121-9-3及び相違点121-9-5に係る本件訂正発明9の技術的事項は当業者が容易になし得た事項であり、相違点121-9-4は実質的な相違点ではなく、また、本件訂正発明9は当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであるともいえないから、本件訂正発明9は、乙12発明1及び本件出 願日の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 【原告の主張】⑴ 乙12発明1の認定について乙12公報には、「本発明の第1の目的は、環境影響から、特に、酸化お よび/または環境湿度から、活性物質および1種類以上の医薬賦形剤および- 31 -/または医薬剤形の保護を与え、その結果として、安定性を与えるコーティングである」と記載されており、「コーティングは、環境影響から、特に、酸化および/または環境湿度から活性物質および1種類以上の医薬賦形剤をそれぞれ保護する。」と記載されている。そして、コーティングに含まれる適切な膜形成剤は、「(環境影響に敏感な)粒子に、また 特に、酸化および/または環境湿度から活性物質および1種類以上の医薬賦形剤をそれぞれ保護する。」と記載されている。そして、コーティングに含まれる適切な膜形成剤は、「(環境影響に敏感な)粒子に、または活性物質を含む医 薬剤形のコアにコーティングの形態で塗布され、環境影響からの、好ましくは酸化および/または環境湿度に対する活性物質の保護を与える任意の膜形成剤」であり、当該適切な膜形成剤は、「ポリビニルアルコール(PVA)およびセルロースの誘導体からなる群から選択される」と記載されている。 そして、乙12公報には、ポリビニルアルコールおよびセルロースの誘導体 からなる群から選択されるフィルム形成剤以外に、フィルム形成剤として用いられる材料について何ら記載も示唆もされていない。 以上によれば、乙12公報に開示された発明は、「環境影響に敏感な活性物質の粒子若しくは環境影響に敏感な活性物質を含む粒子又は固形製剤が(環境影響からの)保護および安定性を提供するポリビニルアルコール又は セルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされた構成」を必須の構成とするものといえる。 したがって、乙12発明1として、「ポリビニルアルコールおよびセルロース誘導体またはこれらの組み合わせからなる群から選択される」との点を除く形で認定することはできないというべきである。 ⑵ 相違点121-9-1乙12公報に開示された発明が「環境影響に敏感な活性物質の粒子若しくは環境影響に敏感な活性物質を含む粒子又は固形製剤が(環境影響からの)保護および安定性を提供するポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされた構成」を必須の構 成とすることは上記⑴のとおりであるから、乙12 の)保護および安定性を提供するポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされた構成」を必須の構 成とすることは上記⑴のとおりであるから、乙12公報に開示された発明の- 32 -「ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含まない」他のコーティングに変更することは想定されていないし、当該変更には阻害要因があるといえる。 また、乙12公報に開示された発明のコーティングと先行技術の既知のコーティングにおける任意のその他のものとが明確に区別されていることから すれば、乙12公報に開示された発明の「ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む」コーティングを、「ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含まない」、従来技術で知られている他のコーティングに変更することは想定されていないし、当該変更には阻害要因があるといえる。 ⑶ 相違点191-9-2乙12発明1はピタバスタチン又はその塩を有効成分とする医薬剤形にかかる発明であり、乙12公報の実施例8のアトルバスタチンカルシウムを有効成分とする錠剤とは有効成分が異なっており、当業者において、上記実施例8のアトルバスタチンカルシウムを有効成分とする錠剤の水分含量値を乙 12発明1に適用する動機付けは存在しない。また、上記実施例8の水分含量値を考慮するとしても、3.49、2.73、1.99、1.55及び1. 73質量%という数値に着目する理由はなく、とりわけ、「3.49」を除外し、「2.73、1.99、1.55又は1.73質量%」という数値に着目する理由はない。そして、上記実施例8の水分含量を考慮しても、本件 訂正発明9における水分含量の上限値及び下 49」を除外し、「2.73、1.99、1.55又は1.73質量%」という数値に着目する理由はない。そして、上記実施例8の水分含量を考慮しても、本件 訂正発明9における水分含量の上限値及び下限値に係る構成は、本件出願日当時の当業者にとって想定外の課題を解決するための手段であり、上記構成に想到するのは困難であった。 したがって、本件出願日当時の当業者において、水分含量に関する相違点に係る構成を容易に想到し得たとはいえない。 ⑷ 効果について- 33 -乙12公報を出発点として、有効成分をアトルバスタチンカルシウムからピタバスタチン又はその塩としたうえで、水分含量を1.5質量%以上にすることによって、「5-ケト体」の生成を抑制できることは、本件出願日当時、「当業者が予測することができなかったもの」あるいは「予測することができた範囲の効果を超える顕著なもの」であり、本件訂正発明9の効果は 「予測できない顕著なもの」であったといえる。 ⑸ 小括以上によれば、本件訂正事項9に係る訂正を行うことによって、本件発明9に対する無効理由は解消されたといえ、乙12発明1に基づく進歩性欠如の無効理由は成り立たない。 4 争点⑵イ(本件訂正発明9について乙12発明2に基づく進歩性欠如)【被告の主張】⑴ 乙12発明2の認定乙12公報のコーティング又はフィルム形成剤に関する記載によれば、以下の発明を認定することができる(以下「乙12発明2」という。)。 「HMG-CoAレダクターゼ阻害剤であるアトルバスタチンCaと、ラウリル硫酸ナトリウム、ProsolvSMCC90、アルファデンプン化されたコーンスターチ、架橋カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルクからなる錠剤コアに、 スタチンCaと、ラウリル硫酸ナトリウム、ProsolvSMCC90、アルファデンプン化されたコーンスターチ、架橋カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルクからなる錠剤コアに、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物でコーティングした錠剤を乾 燥剤を用いたHDPEプラスチック瓶にパッケージした医薬剤形であって、水分が2.73、1.99、1.55又は1.73%である医薬剤形」⑵ 本件訂正発明9と乙12発明2との一致点本件訂正発明9と乙12発明2とは、「次の成分(A):(A)HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物;を含有し、固形製剤又は成分(A) の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコールをフィルム形- 34 -成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を含まず、かつ、水分含量が2.73、1.99、1.55又は1.73質量%であって、かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤。」である点で一致する。 ⑶ 本件訂正発明9と乙12発明2との相違点 本件訂正発明9と乙12発明2は、以下の点で相違する。 ア相違点122-9-1(A)HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物について、本件訂正発明9は、「(A)ピタバスタチン又はその塩」であるのに対し、乙12発明2は、「アトルバスタチンCa」である点 イ相違点122-9-2製剤が含有する成分について、本件訂正発明9は、「(B)クロスポビドン;を含有し、(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤と して含む材 ルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤と して含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除く」と特定しているのに対し、乙12発明2は、「ラウリル硫酸ナトリウム、ProsolvSMCC90、アルファデンプン化されたコーンスターチ、架橋カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール」を含有する点 ウ相違点122-9-3本件訂正発明9は、コーティングについて特定していないのに対し、乙12発明2は、コーティングしている点⑷ 相違点の検討ア相違点122-9-1 乙12公報の記載、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン類)- 35 -の分解生成物(ラクトン体及び酸化分解生成物)の生成は、スタチン類に共通する化学構造(ジヒドロキシカルボン酸骨格)に由来することが出願時の技術常識であったことからすれば、乙12公報に実施例として具体的に記載された、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤であるアトルバスタチンカルシウムを活性物質とする乙12発明2の医薬剤形について、当該ア トルバスタチンカルシウムに代えて、アトルバスタチンカルシウムと同様のHMG-CoAレダクターゼ阻害剤であってスタチン類に共通する化学構造を有するスタチン類であり、環境pH、湿度、光、温度、二酸化炭素及び酸素にも敏感な活性物質である、乙12公報に記載のイタバスタチン(ピタバスタチン)を用いた医薬剤形とすることは当業者が容易になし得 た事項である。 イ相違点122-9-2クロスポビドンを含有するものとする点、カルメロー 報に記載のイタバスタチン(ピタバスタチン)を用いた医薬剤形とすることは当業者が容易になし得 た事項である。 イ相違点122-9-2クロスポビドンを含有するものとする点、カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有しないとされる点については、前記相違点121-9-1と同様であり、当業者が容易になし得た事項であ る。 ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除くとされる点乙12発明2のコーティングの成分である「カルボキシメチルセルロースナトリウム」、「グリセロール」及び「水」からなる分散物は、ポリ ビニルアルコールを含んでいない。そして、乙12公報のフィルム形成剤を含む材料のコーティングは、環境影響から粒子又は医薬剤形を保護するものであるところ、本件出願日当時、環境影響から保護するフィルム形成剤として、ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体に限らず様々な材料が周知であると認められる。 そうとすると、乙12発明2において、「カルボキシメチルセルロー- 36 -スナトリウム」、「グリセロール」及び「水」からなる分散物をコーティングすることに代えて、環境影響から保護するフィルム形成剤であって、ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体以外の周知のフィルム形成剤と置換することは当業者が容易になし得た事項である。 ウ相違点122-9-3 相違点121-9-4と同様に、実質的な相違点ではない。 ⑸ 小括以上のとおり、相違点122-9-1及び122-9-2に係る本件訂正発明9の技術的事項は当業者が容易になし得た事項であり、相違点122-9-3は実質的な相違点ではなく、また、本件訂正発明9は当業者が予測 のとおり、相違点122-9-1及び122-9-2に係る本件訂正発明9の技術的事項は当業者が容易になし得た事項であり、相違点122-9-3は実質的な相違点ではなく、また、本件訂正発明9は当業者が予測し 得ない格別顕著な効果を奏するものであるともいえないから、本件訂正発明9は、乙12発明2及び本件出願日の技術常識に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 【原告の主張】被告の主張に理由がないことは、前記3【原告の主張】のとおりである。 5 争点⑵ウ(本件訂正発明9について乙62発明に基づく進歩性欠如)【被告の主張】⑴ 乙62発明の認定乙62公報の記載によれば、以下の乙62発明を認定することができる。 「HMG-CoAレダクターゼ阻害剤であるアトルバスタチンCaと、ラウ リル硫酸ナトリウム、ProsolvSMCC90、アルファデンプン化されたコーンスターチ、架橋カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルクからなる錠剤コアに、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物でコーティングした錠剤を乾燥剤を用いたHDPEプラスチック瓶にパッケージした医薬剤形であって、水 分が2.73、1.99、1.55又は1.73%である医薬剤形」の発明」- 37 -⑵ 一致点・相違点乙62発明は、乙12発明2と同一であるから、本件訂正発明9と乙62発明の対比・判断は、本件訂正発明9と乙12発明2との対比・判断と同様である。そして、乙62公報のコーティングやフィルム形成剤についての記載からすれば、乙62発明は、「ポリビニルアルコール又はセルロース誘導 体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされた構成」が必須ではない。 したがって、本 ルム形成剤についての記載からすれば、乙62発明は、「ポリビニルアルコール又はセルロース誘導 体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされた構成」が必須ではない。 したがって、本件訂正発明9は、本件出願日前に頒布された乙62公報に記載された発明及び本件出願日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 【原告の主張】乙62公報に開示された発明は、乙12公報に開示された発明と同様、「環境影響に敏感な活性物質の粒子若しくは環境影響に敏感な活性物質を含む粒子又は固形製剤が(環境影響からの)保護および安定性を提供するポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の 層でコーティングされた構成」を必須の構成とするものである。したがって、乙62公報に開示された発明の「ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む」コーティングを、「ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含まない」他のコーティングに変更することは想定されていないし、当該変更には阻害要因があるといえ る。 また、乙12公報との関係において述べたのと同様に、乙62公報においても、乙62公報に開示された発明のコーティングと、先行技術の既知のコーティングにおける任意のその他のものとが明確に区別されていることからも、乙62公報に開示された発明の「ポリビニルアルコール又はセルロース 誘導体をフィルム形成剤として含む」コーティングを、「ポリビニルアルコ- 38 -ール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含まない」従来技術で知られている他のコーティングに変更することは想定されていないし、当該変更には阻害要因があるといえる。 6 争点⑵エ 38 -ール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含まない」従来技術で知られている他のコーティングに変更することは想定されていないし、当該変更には阻害要因があるといえる。 6 争点⑵エ(本件訂正発明9についてサポート要件違反及び実施可能要件違反)【原告の主張】 前記1及び2の各【原告の主張】のとおり、本件訂正発明9は、サポート要件及び実施可能要件を充足する。 【被告の主張】本件訂正発明9は、本件3成分を含まない固形製剤を含んでいることからすれば、前記1及び2の各【被告の主張】のとおり、本件訂正発明9は、サポー ト要件及び実施可能要件を満たさない。 また、5-ケト体との関係において本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明は、PTP包装及びアルミピローという二重包装による密封を必須の構成とするものであるから、二重包装による密封という構成を欠く本件訂正発明9はサポート要件を満たさない。 7 争点⑶アないしウ(本件訂正発明7について乙12発明1、乙12発明2又は乙62発明に基づく進歩性欠如)【被告の主張】本件訂正発明7の特許請求の範囲は、本件訂正発明9を包含する広いものとなっているところ、本件訂正発明9は、前記3ないし5のとおり、乙12発明 1、乙12発明2又は乙62発明と本件出願日の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当然に、本件訂正発明7もこれらに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 【原告の主張】被告の主張に理由がないことは、前記3【原告の主張】のとおりである。 8 争点⑶エ(本件訂正発明7についてサポート要件違反及び実施可能要件違反)- 39 -【原告の主張】前記1及び2の各【原告の主張】のと とは、前記3【原告の主張】のとおりである。 8 争点⑶エ(本件訂正発明7についてサポート要件違反及び実施可能要件違反)- 39 -【原告の主張】前記1及び2の各【原告の主張】のとおり、本件訂正発明7は、サポート要件及び実施可能要件を充足する。 【被告の主張】本件訂正発明7は、本件3成分を含まない固形製剤を含んでいることからす れば、前記1及び2の各【被告の主張】のとおり、本件訂正発明7は、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。 また、5-ケト体との関係において本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明は、PTP包装及びアルミピローという二重包装による密封を必須の構成とするものであるから、二重包装による密封という構成を欠く本件訂正発 明7はサポート要件を満たさない。 9 争点⑷ア(本件訂正による請求項6の訂正が訂正要件に違反するか否か)【被告の主張】本件訂正発明6は、ラクトン体の生成を抑制し、ピタバスタチン又はその塩の安定性を得るための解決手段として、「水分含量の調整」という解決手段の みならず、本件明細書には何らの記載も示唆もない「アルカリ化物質」を必須成分として含有させるという解決手段を必須とする構成に変更されている。 したがって、本件訂正による請求項6の訂正は、新規事項を追加するもの又は実質上特許請求の範囲を変更するものであり、訂正要件に違反する。 【原告の主張】 本件訂正事項6は、訂正前の請求項6の「水分含量が2.9質量%以下である固形製剤」を、①「水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤であって、かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤」に限定するとともに、②(a)「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又は 質量%である固形製剤であって、かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤」に限定するとともに、②(a)「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材 料の層でコーティングされている固形製剤」、及び、(b)「アルカリ化物質を含- 40 -まない固形製剤」を除くこととして固形製剤を限定するものである。 本件明細書記載発明の特徴は、ピタバスタチン又はその塩をクロスポピドン等の特定の崩壊剤と組み合わせた場合に生じるラクトン体の増加という課題を水分含量「2.9質量%以下」にすることなどによって解決しようとするものである。 そうすると、上記①及び上記②(a)は、上記の特徴的な技術的事項に何らの変更も生じさせるものではない。また、本件明細書の段落【0030】には、「当該技術分野において通常用いられている添加剤」を含有することが許容されており、アルカリ化物質は、pHを調整する物質であるから、上記段落【0030】に例示列挙された添加剤の一つである「pH調整剤」に該当するとこ ろ、処方例1をはじめ、本件明細書に開示された全ての処方例・製造例(処方例2~16・製造例2~16)においては、アルカリ化物質として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム又は沈降炭酸カルシウムが含まれている 。そして、いずれの処方例・製造例の固形製剤についても、水分含量は1.5~2.9質量%の範囲内にすることが開示されている。 したがって、本件明細書には、「成分(A)及び成分(B)を含む固形製剤において、添加剤としてアルカリ化物質を含有する固形製剤であって、その水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤」の発明が記載されており、本件訂正事項6は、新たな技術的 び成分(B)を含む固形製剤において、添加剤としてアルカリ化物質を含有する固形製剤であって、その水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤」の発明が記載されており、本件訂正事項6は、新たな技術的事項の導入には当たらず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 10 争点⑷イ(本件訂正発明6について乙12発明1に基づく進歩性欠如)【被告の主張】⑴ 本件訂正発明6と乙12発明1との対比乙12発明1の内容は、前記3【被告の主張】⑴のとおりであるところ、本件訂正発明6と乙12発明1とは、「次の成分(A):(A)ピタバスタチ ン又はその塩;を含有する、医薬品」である点で一致し、以下の点で相違す- 41 -る。 ア相違点121-6-A固形製剤が含有する成分について、本件訂正発明6は、「(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;を含有し」、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成 分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、アルカリ化物質を含まない固形製剤を除く」と特定しているのに対し、乙12発明1は、「コーティング」及び「コーティングされた粒子」が、「フィルム形成物質を含む、イタバスタチンであるHMG-CoAレダクター ゼ阻害剤および1種類以上の医薬賦形剤の環境影響からの保護および安定性を、好ましくは酸化および/または環境湿度からの保護および安定性を提供するコーティング」及び該「コーティングでコーティングされている、イタバスタチンであるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を含む、コーティングされた粒子および/またはイ 湿度からの保護および安定性を提供するコーティング」及び該「コーティングでコーティングされている、イタバスタチンであるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を含む、コーティングされた粒子および/またはイタバスタチンであるHMG-CoAレ ダクターゼ阻害剤を含有する1つ以上のコーティングされていない粒子」であることを前提として、「(b)以下の群から選択される1種類以上の医薬賦形剤と、(aa)1種類以上のフィラー;(bb)1種類以上のバインダー、(cc)1種類以上の崩壊剤、(dd)1種類以上の滑沢剤または滑剤、(ee)1種類以上の緩衝化要素、(ff)1種類以上のアルカリ化要 素、(gg)1種類以上の界面活性剤および(hh)着色剤、香味剤および吸着物質からなる群から選択される従来技術で知られている固形剤形のための他の成分、(c)前記コーティング、又は前記コーティングされた粒子が医薬剤形に埋め込まれている場合には従来技術で知られている他のコーティング」であってもよい点 イ相違点121-6-B- 42 -本件訂正発明6は、「水分含量が1.5~2.9質量%である」と特定しているのに対して、乙12発明1は、「含水量が、前記医薬剤形全体の3重量%未満である」と特定している点ウ相違点121-6-C本件訂正発明6は、「固形製剤」と特定しているのに対して、乙12発 明1は、「医薬剤形」である点エ相違点121-6-Dピタバスタチン又はその塩について、本件訂正発明6は、「含有」するとしか特定していないのに対し、乙12発明1は、「HMG-CoAレダクターゼ阻害剤」であるとされ、混合物である上記「コーティングされた 粒子」及び/又は「コーティングされていない粒子」に含まれるものとしている点オ相違点121- は、「HMG-CoAレダクターゼ阻害剤」であるとされ、混合物である上記「コーティングされた 粒子」及び/又は「コーティングされていない粒子」に含まれるものとしている点オ相違点121-6-E本件訂正発明6は、「かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される」と特定しているのに対し、乙12発明1はそのような特定をしていない点 ⑵ 相違点の検討ア相違点121-6-A 崩壊剤について乙12公報には、崩壊剤として具体的に記載された架橋したカルボキシメチルセルロース(本件訂正発明6のカルメロースの塩に相当)、架 橋したポリビニルピロリドン(本件訂正発明6のクロスポピドンに相当)、架橋したカルボキシメチルデンプン、様々な種類のデンプン及び結晶セルロース(本件訂正発明6の結晶セルロース)などが記載されており、また、崩壊剤を用いて調製する旨の記載されている。そうすると、乙12発明1において、崩壊剤としてカルメロース及びその塩、クロス ポピドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上を含有- 43 -するものとすることは当業者が容易になし得た事項である。 固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除くとされる点についてa 乙12発明1は、フィルム形成物質を含むものであるところ、乙1 2公報には、フィルム形成剤について、環境の影響から活性物質を保護するフィルム形成剤であればよく、好ましくは、酸化および/または環境湿度から活性物質を保護するフィルム形成剤であり、最も好ましくは、酸化からの活性物質の保護を提供する、ポリビニルアルコール(PVA)およびセルロース であればよく、好ましくは、酸化および/または環境湿度から活性物質を保護するフィルム形成剤であり、最も好ましくは、酸化からの活性物質の保護を提供する、ポリビニルアルコール(PVA)およびセルロースの誘導体からなる群から選択される任 意のフィルム形成剤であると記載され(訳文19頁10行~17行)、ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされていることを必須の構成とするものではない。 b そして、コーティングの形態で適用されるフィルム形成剤は、ポリ ビニルアルコール又はセルロース誘導体に限らず様々な材料が周知であり、コーティング、又はコーティングされた粒子が医薬剤形に埋め込まれている場合でなくても、従来技術で知られている他のコーティングを適用できることは技術常識である。 c したがって、乙12発明1において、固形製剤又は成分(A)の粒 子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除く構成とすることは当業者が容易になし得た事項である。 アルカリ化物質を含まない固形製剤を除くとされる点について 乙12公報には、アルカリ化要素を含む構成が記載されていることか- 44 -らすれば、乙12発明1において、アルカリ化物質を固形製剤中に含有することは当業者が容易になし得た事項である。 イ相違点121-6-B乙12公報に記載された医薬剤形は、環境湿度に敏感であるイタバスタチンについて、それを安定化し、また、ヒドロキシル酸形態からラクトン 形態へと変換するのを防ぐために、含水量を3%未満にするものであるといえ、同じHMG-CoAレダクターゼ阻害剤であるアトルバ チンについて、それを安定化し、また、ヒドロキシル酸形態からラクトン 形態へと変換するのを防ぐために、含水量を3%未満にするものであるといえ、同じHMG-CoAレダクターゼ阻害剤であるアトルバスタチンとイタバスタチンは、環境湿度に対する敏感さとしては同等のものとして記載されているといえる。 また、乙12公報には、アトルバスタチンCaを用いたものであるもの の、錠剤をコーティングし、含水量を2.73、1.99、1.55又は1.73質量%程度とすることで、アトルバスタチンCaをラクトン体の生成、酸化分解から安定化できることが示されているといえる。 したがって、「含水量が、前記医薬剤形全体の3重量%未満である」とされる乙12発明1において、その含水量を、2.73、1.99、1. 55又は1.73質量%程度とすることは当業者が容易になし得た事項であるといえ、当該含水量は、「水分含量が2.9質量%以下である」ことに相当するから、相違点121-6-Bは当業者が容易になし得た事項である。 ウ相違点121-6-C 乙12発明1は、任意成分として着色料等の固形剤形のための他の成分を含むものであり、乙12公報には、「本発明の医薬剤形は、好ましくは、固形医薬剤形である。」ことも記載されているから(訳文29頁)、乙12発明1について、「固形製剤」であるとすることは当業者が容易になし得た事項である。 エ相違点121-6-D- 45 -本件訂正発明6は、ピタバスタチンの医薬用途を特定しておらず、固形製剤中での存在形態も特定していない。そして、本件明細書には、ピタバスタチン又はその塩が優れたHMG-CoA還元酵素阻害活性を有すること(【0002】)、顆粒剤等とすることができ、コーティングされていてもよいこと( も特定していない。そして、本件明細書には、ピタバスタチン又はその塩が優れたHMG-CoA還元酵素阻害活性を有すること(【0002】)、顆粒剤等とすることができ、コーティングされていてもよいこと(【0039】)が記載されている。顆粒剤が粒子であること、 及び、混合物を形成することは自明であり、本件訂正発明6は、ピタバスタチン又はその塩をHMG-CoAレダクターゼ阻害剤として用いること、ピタバスタチン又はその塩が、コーティングされた粒子及び/又はコーティングされていない粒子の混合物を包含する。 したがって、本件訂正発明6と乙12発明1とはこの点では実質的に相 違しない。 オ相違点121-6-E錠剤である点については、乙12公報には、錠剤とすることが記載されており、乙12発明1を錠剤とすることは当業者が容易になし得た事項である。 気密包装体に収容される点については、固形製剤を気密包装体に収容することにより、包装体外からの水分等の侵入を防ぎ、製剤の安定化を図ることは、周知の技術的事項である。したがって、乙12公報に環境湿度等の環境影響に敏感であると記載されるイタバスタチンを含む乙12発明1について、水分等の侵入を防ぎ、製剤の安定化を図るために、 気密包装体に収容されるものとすることは当業者が容易になし得た事項である。 カ小括以上のとおり、相違点121-6-Aないし相違点121-6-C及び相違点121―6-Eに係る本件訂正発明6の技術的事項は当業者が容易 になし得た事項であり、相違点121-6-Dは実質的な相違点ではない- 46 -といえ、また、本件訂正発明6は当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであるともいえないから、本件訂正発明6は、乙12発明1及び本件出願時の技術常識 は実質的な相違点ではない- 46 -といえ、また、本件訂正発明6は当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであるともいえないから、本件訂正発明6は、乙12発明1及び本件出願時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。 【原告の主張】 本件訂正発明6は、本件訂正発明9と同様に、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤・・・を除く」ものであるから、本件訂正発明6との関係においても、前記3【原告の主張】と同様の理由により、乙12発明1に基づく進歩性欠 如の無効理由は成り立たない。 11 争点⑷イ(本件訂正発明6について乙12発明2に基づく進歩性欠如)【被告の主張】⑴ 本件訂正発明6と乙12発明2との一致点乙12発明2の内容は、前記4【被告の主張】⑴のとおりであるところ、 本件訂正発明6と乙12発明2とは、「次の成分(A):(A)HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物;を含有し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコールをフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を含まず、かつ、水分含量が2.73、1.99、1.55又は1.73質量%であって、か つ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤。」である点で一致する。 ⑵ 本件訂正発明6と乙12発明2との相違点ア相違点122-6-A(A)HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物について、本件 訂正発明6は、「(A)ピタバスタチン又はその塩」であるのに対し、乙1- 47 -2発明2は、「アト 違点122-6-A(A)HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物について、本件 訂正発明6は、「(A)ピタバスタチン又はその塩」であるのに対し、乙1- 47 -2発明2は、「アトルバスタチンCa」である点イ相違点122-6-B製剤が含有する成分について、本件訂正発明6は、「(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;を含有し」、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分 (A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、アルカリ化物質を含まない固形製剤を除く」と特定されているのに対し、乙12発明2は、「ラウリル硫酸ナトリウム、ProsolvSMCC90、アルファデンプン化されたコーンスターチ、架橋カルボキシメチル セルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール」を含有し、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物でコーティングしている点ウ相違点122-6-C 本件訂正発明6は、コーティングについて特定していないのに対し、乙12発明2は、コーティングしている点⑶ 相違点の検討ア相違点122-6-A前記4【被告の主張】⑷アのとおり、乙12公報に記載のイタバスタチ ン(本件訂正発明6のピタバスタチン)を用いた医薬剤形とすることは当業者が容易になし得た事項である。 イ相違点122-6-B前記10【被告の主張】⑵アと同様の理由で、乙12発明2において、崩壊剤としてカルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セル ロースよりなる群から選ばれる1種以上 相違点122-6-B前記10【被告の主張】⑵アと同様の理由で、乙12発明2において、崩壊剤としてカルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セル ロースよりなる群から選ばれる1種以上を含有するものとすること、固- 48 -形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除く構成とすること、アルカリ化物質を固形製剤中に含有する構成とすることは、いずれも当業者が容易になし得た事項である。 ウ相違点122-6-C本件訂正発明6では、コーティングについて特定していないものの、本件明細書の段落【0039】の記載からすれば、本件訂正発明6の固形製剤は、コーティングする態様も当然に含むと理解されるから、本件訂正発明6と乙12発明2は、この点では実質的に相違しない。 エ小括以上のとおり、相違点122-6-A及び相違点122-6-Bに係る本件訂正発明6の技術的事項は、当業者が容易になし得た事項であり、相違点122-6-Cは実質的な相違点ではないといえ、また、本件訂正発明6が当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであるともいえ ないから、本件訂正発明6は、乙12発明2及び本件出願日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。 【原告の主張】本件訂正発明6は、本件訂正発明7及び9と同様に、「固形製剤又は成分 (A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤・・・を除く」ものであるから、本件訂正発明6との関係においても、前記3【 A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤・・・を除く」ものであるから、本件訂正発明6との関係においても、前記3【原告の主張】と同様の理由により、乙12発明2に基づく進歩性欠如の無効理由は成り立たない。 12 争点⑷イ(本件訂正発明6について乙62発明に基づく進歩性欠如)- 49 -【被告の主張】⑴ 本件訂正発明6と乙62発明との一致点乙62発明の内容は、前記5【被告の主張】⑴のとおりであるところ、本件訂正発明6と乙62発明とは、「次の成分(A):(A)HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物;を含有し、固形製剤又は成分(A)の粒子 若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコールをフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を含まず、かつ、水分含量が2.73、1.99、1.55又は1.73質量%であって、かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤。」である点で一致する。 ⑵ 本件訂正発明6と乙62発明との相違点 ア相違点62-6-A(A)HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物について、本件訂正発明6は、「(A)ピタバスタチン又はその塩」であるのに対し、乙62発明は、「アトルバスタチンCa」である点イ相違点62-6-B 製剤が含有する成分について、本件訂正発明6は、「(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;を含有し」、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、 アル 有し」、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、 アルカリ化物質を含まない固形製剤を除く」と特定されているのに対し、乙62発明は、「ラウリル硫酸ナトリウム、ProsolvSMCC90、アルファデンプン化されたコーンスターチ、架橋カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール」を含有し、カルボキシメチルセルロース ナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物でコーティングしている- 50 -点ウ相違点62-6-C本件訂正発明6は、コーティングについて特定していないのに対し、乙62発明は、コーティングしている点⑶ 相違点についての検討 ア相違点62-6-A前記4【被告の主張】⑷アのとおり、乙12公報に記載のイタバスタチン(本件訂正発明6のピタバスタチン)を用いた医薬剤形とすることは当業者が容易になし得た事項である。 イ相違点62-6-B 崩壊剤について乙62公報の記載からすれば、乙62発明において、崩壊剤としてカルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上を含有するものとすることは当業者が容易になし得た事項である。 固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除くとされる点について乙62発明は、フィルム形成物質を含むものであるところ、乙62公報の記載からすれば、ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体 含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除くとされる点について乙62発明は、フィルム形成物質を含むものであるところ、乙62公報の記載からすれば、ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフ ィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされていることを必須の構成とするものではない。 また、ピタバスタチンなどのスタチン類(スタチン系化合物)を含有する医薬製剤において、水分などからの安定性維持のためにコーティングを施すことも、そのコーティングの形態で適用されるフィルム形成剤 として、ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体に限らず様々な材- 51 -料が適用されることは周知であり、コーティング、又はコーティングされた粒子が医薬剤形に埋め込まれている場合でなくても、従来技術で知られている他のコーティングを適用できることは技術常識である。 したがって、乙62発明において、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘 導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除く構成とすることは当業者が容易になし得た事項である。 アルカリ化物質を含まない固形製剤を除くとされる点について乙62公報には、アルカリ化要素を含む構成が記載されていることからすれば、乙62発明において、アルカリ化物質を固形製剤中に含有す ることは当業者が容易になし得た事項である。 ウ相違点62-6-C本件訂正発明6では、コーティングについて特定していないものの、本件明細書の段落【0039】の記載からすれば、本件訂正発明6の固形製剤は、コーティングする態様も当然に含むと理解されるから、本件訂正発 明6と乙62発明は、この点では実質的に相違しない。 エ 件明細書の段落【0039】の記載からすれば、本件訂正発明6の固形製剤は、コーティングする態様も当然に含むと理解されるから、本件訂正発 明6と乙62発明は、この点では実質的に相違しない。 エ小括以上のとおり、相違点62-6-A及び相違点62-6-Bに係る本件訂正発明6の技術的事項は当業者が容易になし得た事項であり、相違点62-6-Cは実質的な相違点ではないといえ、また、本件訂正発明6が当 業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであるともいえないから、本件訂正発明6は、乙62公報及び本件出願日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 【原告の主張】本件訂正発明6は、本件訂正発明7及び9と同様に、「固形製剤又は成分 (A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセ- 52 -ルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤・・・を除く」ものであるから、本件訂正発明6との関係においても、前記3【原告の主張】と同様の理由により、乙62発明に基づく進歩性欠如の無効理由は成り立たない。 13 争点⑷イ(本件訂正発明6についてサポート要件違反及び実施可能要件 違反)【原告の主張】前記1及び2の各【原告の主張】(本件各発明についてのサポート要件違反及び実施可能要件違反での検討)と同様の理由により、本件訂正発明6のサポート要件違反及び実施可能要件違反の無効理由は成り立たない。 また、本件訂正発明6においては、結晶セルロースは、カルメロース及びその塩、クロスポビドンと並び、成分(B)の一つとして規定されており、結晶セルロースを含まない構成に限られるものではないことからすれば、本件訂正発明6がサポート要件を セルロースは、カルメロース及びその塩、クロスポビドンと並び、成分(B)の一つとして規定されており、結晶セルロースを含まない構成に限られるものではないことからすれば、本件訂正発明6がサポート要件を充足することはより明らかというべきである。 【被告の主張】 本件訂正発明6は、本件3成分を含まない固形製剤を含んでいることからすれば、前記1及び2の各【被告の主張】のとおり、本件訂正発明6は、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。 また、5-ケト体との関係において本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明は、PTP包装及びアルミピローという二重包装による密封を必 須の構成とするものであるから、二重包装による密封という構成を欠く本件訂正発明6はサポート要件を満たさない。 14 争点⑸ア(本件訂正による請求項8の訂正が訂正要件に違反するか否か)【被告の主張】結晶セルロースの固形製剤中における用途は、安定化剤の他にも、滑沢剤、 基剤、吸着剤、結合剤、懸濁剤、コーティング剤、糖衣剤、軟化剤、賦形剤、- 53 -分散剤、崩壊剤、崩壊補助剤、流動化剤としての用途も存在するところ、本件訂正による請求項8の訂正は、結晶セルロースの安定化剤としての用途を除くとするものであるから、本件訂正事項8にいう「結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として含む」形態を除いた固形製剤は、結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤以外の用 途で用いる構成をも広く含んでいる。他方、本件明細書は、含有する結晶セルロースの用途は、崩壊剤であることを、【0006】、【0009】、【0010】、【0017】、【0024】及び【0063】で説明しているが、結晶セルロースを、他の用途である滑沢剤、基剤、吸着剤 セルロースの用途は、崩壊剤であることを、【0006】、【0009】、【0010】、【0017】、【0024】及び【0063】で説明しているが、結晶セルロースを、他の用途である滑沢剤、基剤、吸着剤、結合剤、懸濁剤、コーティング剤、糖衣剤、軟化剤、賦形剤、分散剤、崩壊補助剤、流動化剤と して含有させることは一切記載されていない。このため、滑沢剤、基剤、吸着剤、結合剤、懸濁剤、コーティング剤、糖衣剤、軟化剤、賦形剤、分散剤、崩壊補助剤、流動化剤として含有する結晶セルロースは、本件明細書の記載事項の範囲外である。 したがって、本件訂正事項8の「結晶セルロースをピタバスタチン又はそ の塩に対する安定化剤として含む固形製剤を除く」という技術的事項は、本件明細書に記載されていないことになるから、請求項8に係る本件訂正は、本件明細書に記載された技術的事項の範囲内においてするものであるということはできない。 【原告の主張】 本件訂正事項8は、訂正前の請求項8が引用する訂正前の請求項6の「水分含量が2.9質量%以下である固形製剤」を、①「水分含量が1.5~2. 9質量%である固形製剤であって、かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤」に限定するとともに、②(a)「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース 誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形- 54 -製剤」、及び、(b)「結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として含む固形製剤」を除くこととして固形製剤を限定するものである。 本件明細書記載発明の特徴は、ピタバスタチン又はその塩をクロスポピドン等の特定の崩壊剤と組み合わせた場合に生じるラクトン体 として含む固形製剤」を除くこととして固形製剤を限定するものである。 本件明細書記載発明の特徴は、ピタバスタチン又はその塩をクロスポピドン等の特定の崩壊剤と組み合わせた場合に生じるラクトン体の増加という課 題を水分含量「2.9質量%以下」にすることなどによって解決しようとするものである。 そうすると、上記①及び②(a)は、上記の特徴的な技術的事項に何らの変更も生じさせるものではない。また、本件明細書記載発明において、結晶セルロースは、カルメロース及びその塩やクロスポビドンと同様に、崩壊剤と してピタバスタチン又はその塩と組み合わせた場合に、ピタバスタチン又はその塩の安定性を損なう(すなわち、経時的に多量のラクトン体を生成する)成分として位置づけられており、「ピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤」として用いることは想定されておらず(このことを開示ないし示唆する記載は一切なく)、「結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対す る安定化剤として含む固形製剤を除く」との訂正をしても、上記の特徴的な技術的事項には何ら変更は生じない。 したがって、本件訂正事項8は、新たな技術的事項の導入にあたらず、本件訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 15 争点⑸イ(本件訂正発明8について乙12発明1に基づく進歩性欠如)【被告の主張】⑴ 本件訂正発明8と乙12発明1との対比乙12発明1の内容は、前記3【被告の主張】⑴のとおりであるところ、本件訂正発明8と乙12発明1とは、「次の成分(A):(A)ピタバスタチ ン又はその塩;を含有する、医薬品」である点で一致し、以下の点で相違す- 55 -る。 ア相違点121-8-A本件訂正発明8 12発明1とは、「次の成分(A):(A)ピタバスタチ ン又はその塩;を含有する、医薬品」である点で一致し、以下の点で相違す- 55 -る。 ア相違点121-8-A本件訂正発明8の固形製剤は、ピタバスタチン又はその塩を投与単位当たりピタバスタチンカルシウム換算で0.1~16mg含有するのに対し、乙12発明1ではこのような特定がない点 イ相違点121-8-B固形製剤が含有する成分について、本件訂正発明8は、(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;を含有し」、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィ ルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として含む固形製剤を除く」と特定しているのに対し、乙12発明1は、「コーティング」及び「コーティングされた粒子」が、「フィルム形成物質を含む、イタバスタチンであるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤および1種類以 上の医薬賦形剤の環境影響からの保護および安定性を、好ましくは酸化および/または環境湿度からの保護および安定性を提供するコーティング」及び該「コーティングでコーティングされている、イタバスタチンであるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を含む、コーティングされた粒子および/またはイタバスタチンであるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を含 有する1つ以上のコーティングされていない粒子」であることを前提として、「(b)以下の群から選択される1種類以上の医薬賦形剤と、(aa)1種類以上のフィラー;(bb)1種類以上のバインダー、(cc)1種類以上の崩壊剤、 ィングされていない粒子」であることを前提として、「(b)以下の群から選択される1種類以上の医薬賦形剤と、(aa)1種類以上のフィラー;(bb)1種類以上のバインダー、(cc)1種類以上の崩壊剤、(dd)1種類以上の滑沢剤または滑剤、(ee)1種類以上の緩衝化要素、(ff)1種類以上のアルカリ化要素、(gg)1種類以 上の界面活性剤および(hh)着色剤、香味剤および吸着物質からなる群- 56 -から選択される従来技術で知られている固形剤形のための他の成分、(c)前記コーティング、又は前記コーティングされた粒子が医薬剤形に埋め込まれている場合には従来技術で知られている他のコーティング」であってもよい点ウ相違点121-8-C 本件訂正発明8は、「水分含量が1.5~2.9質量%である」と特定しているのに対して、乙12発明1は、「含水量が、前記医薬剤形全体の3重量%未満である」と特定している点エ相違点121-8-D本件訂正発明8は、「固形製剤」と特定しているのに対して、乙12発 明1は、「医薬剤形」である点オ相違点121-8-Eピタバスタチン又はその塩について、本件訂正発明8は、「含有」するとしか特定していないのに対し、乙12発明1は、「HMG-CoAレダクターゼ阻害剤」であるとされ、混合物である上記「コーティングされた 粒子」及び/又は「コーティングされていない粒子」に含まれるものとしている点カ相違点121-8-F本件訂正発明8は、「かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される」と特定しているのに対し、乙12発明1はそのような特定をしていない点 ⑵ 相違点の検討ア相違点121-8-A乙6、14、20、22、48に記載されたピタバスタチン等の単位投与量等の 特定しているのに対し、乙12発明1はそのような特定をしていない点 ⑵ 相違点の検討ア相違点121-8-A乙6、14、20、22、48に記載されたピタバスタチン等の単位投与量等の記載からすれば、乙12発明1において、相違点121-8-Aに係る本件発明8の技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た 事項である。 - 57 -イ相違点121-8-B崩壊剤について前記10【被告の主張】⑵アと同様に、乙12発明1において、崩壊剤としてカルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上を含有するものとすることは当業者 が容易になし得た事項である。 固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除くとされる点について前記10【被告の主張】⑵アと同様の理由で、乙12発明1において、 ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体以外の周知のフィルム形成剤を用いて、固形製剤又はピタバスタチンカルシウムの粒子若しくはピタバスタチンカルシウムを含む粒子をコーティングすることは当業者が容易になし得た事項である。 結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として 含む固形製剤を除くとされる点について乙12公報においては、結晶セルロースは、医薬剤形のフィラー、バインダー又は崩壊剤として使用されることが開示され、結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として使用されているとの開示はないから、乙12発明1は、結晶セルロースを、医薬剤形のフ ィラー、バインダー又は崩壊剤として使用する構成を含むもので をピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として使用されているとの開示はないから、乙12発明1は、結晶セルロースを、医薬剤形のフ ィラー、バインダー又は崩壊剤として使用する構成を含むものである。 よって、結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として含む構成を除くという点は、本件訂正発明8と乙12発明1との実質的な相違点ではない。また、ピタバスタチンなどのスタチン類について、結晶セルロースを含有させるものの、安定化剤として用いるもの ではない医薬組成物は、公知である(乙6、7、31)。 - 58 -したがって、乙12発明1について、結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として含む構成を除くという構成にすることは当業者が容易になし得る事項である。 ウ相違点121-8-C前記10【被告の主張】⑵イと同様の理由で、乙12発明1において、 水分含量を1.5~2.9質量%とすることは、当業者において容易になし得た事項である。 エ相違点121-8-D前記10【被告の主張】⑵ウと同様の理由で、乙12発明1について、「固形製剤」であるとすることは当業者が容易になし得た事項である。 オ相違点121-8-E前記10【被告の主張】⑵エでの検討と同様の理由で、本件訂正発明8と乙12発明1とはこの点では実質的に相違しない。 カ相違点121-8-F前記10【被告の主張】⑵オと同様の理由で、乙12発明1において、 錠剤であって、気密包装体に収容されるとすることは、当業者において容易になし得た事項である。 キ小括以上のとおり、相違点121-8-Aないし相違点121-8-D及び相違点121-6-Fに係る本件訂正発明8の技術的事項は当業者が容易 に 者において容易になし得た事項である。 キ小括以上のとおり、相違点121-8-Aないし相違点121-8-D及び相違点121-6-Fに係る本件訂正発明8の技術的事項は当業者が容易 になし得た事項であり、相違点121-8-Eは実質的な相違点ではないといえ、また、本件訂正発明8は当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであるともいえないから、本件訂正発明8は、乙12発明1及び本件出願日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。 【原告の主張】- 59 -本件訂正発明8は、本件訂正発明9と同様に、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤・・・を除く」ものであるから、本件訂正発明8との関係においても、前記3【原告の主張】と同様の理由により、乙12発明1に基づく進歩性欠 如の無効理由は成り立たない。 16 争点⑸イ(本件訂正発明8について乙12発明2に基づく進歩性欠如)【被告の主張】⑴ 本件訂正発明8と乙12発明2との対比乙12発明2の内容は、前記4【被告の主張】⑴のとおりであるところ、 本件訂正発明8と乙12発明2とは、「次の成分(A):(A)HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物;を含有し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコールをフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を含まず、かつ、水分含量が2.73、1.99、1.55又は1.73質量%であって、か つ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤。」である点で一致し、以下の点で相違 されている固形製剤を含まず、かつ、水分含量が2.73、1.99、1.55又は1.73質量%であって、か つ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 ア相違点122-8-A(A)HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物について、本件訂正発明8は、「(A)ピタバスタチン又はその塩を投与単位量当たりピタ バスタチンカルシウム換算で0.1~16mg」であるのに対し、乙12発明2は、「アトルバスタチンCaを投与単位量当たりアトルバスタチンCa換算で40mg」である点イ相違点122-8-B製剤が含有する成分について、本件訂正発明8は、「(B)カルメロース 及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれ- 60 -る1種以上;を含有し」、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として含む固形製剤を除く」と特定されているのに対し、乙12発明2は、「ラウリ ル硫酸ナトリウム、ProsolvSMCC90、アルファデンプン化されたコーンスターチ、架橋カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール」を含有し、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物でコーティングしている点 ウ相違点122-8-C本件訂正発明8は、コーティングについて特定していないのに対し、乙12発明2は、コーティングしている点⑵ 相違点についての検討ア相違点122- いる点 ウ相違点122-8-C本件訂正発明8は、コーティングについて特定していないのに対し、乙12発明2は、コーティングしている点⑵ 相違点についての検討ア相違点122-8-A 前記4【被告の主張】⑷アと同様の理由で、乙12公報に記載のイタバスタチン(本件訂正発明8のピタバスタチン)を用いた医薬剤形とすることは当業者が容易になし得た事項である。 また、前記15【被告の主張】⑵アと同様の理由で、乙12発明2において、ピタバスタチン又はその塩の含量を投与単位当たりピタバスタチン カルシウム換算で0.1~16mgとすることは当業者が容易になし得た事項である。 イ相違点122-8-B崩壊剤について前記10【被告の主張】⑵アと同様の理由で、乙12発明2において、 崩壊剤としてカルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セル- 61 -ロースよりなる群から選ばれる1種以上を含有するものとすることは当業者が容易になし得た事項である。 固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除くとされる点について 前記10【被告の主張】⑵アと同様の理由で、乙12発明2において、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除く構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。 結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として含む固形製剤を除くとされる点について前記15【被告の主張】⑵イと同様の理由により 当業者が容易になし得た事項である。 結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として含む固形製剤を除くとされる点について前記15【被告の主張】⑵イと同様の理由により、結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として含む構成を除くという点は、本件訂正発明8と乙12発明2との実質的な相違点ではない。 また、乙12発明2について、結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として含む構成を除くという構成にすることは当業者が容易になし得た事項である。 ウ相違点122-8-C前記11【被告の主張】⑶ウと同様の理由で、本件訂正発明8の固形製 剤はコーティングする態様を当然に含むと理解されるから、本件訂正発明8と乙12発明2は、この点では実質的に相違しない。 エ小括以上のとおり、相違点122-8-A及び相違点122-8-Bに係る本件訂正発明8の技術的事項は当業者が容易になし得た事項であり、相違 点122-8-Cは実質的な相違点ではないといえ、また、本件訂正発明- 62 -8が当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであるともいえないから、本件訂正発明8は、乙12発明2及び本件出願日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 【原告の主張】本件訂正発明8は、本件訂正発明9と同様に、「固形製剤又は成分(A) の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤・・・を除く」ものであるから、本件訂正発明8との関係においても、前記3【原告の主張】と同様の理由により、乙12発明2に基づく進歩性欠如の無効理由は成り立たない。 でコーティングされている固形製剤・・・を除く」ものであるから、本件訂正発明8との関係においても、前記3【原告の主張】と同様の理由により、乙12発明2に基づく進歩性欠如の無効理由は成り立たない。 17 争点⑸イ(本件訂正発明8について乙62発明に基づく進歩性欠如)⑴ 本件訂正発明8と乙62発明との対比乙62発明の内容は、前記5【被告の主張】⑴のとおりであるところ、本件訂正発明8と乙62発明とは、「次の成分(A):(A)HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物;を含有し、固形製剤又は成分(A)の粒子 若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコールをフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を含まず、かつ、水分含量が2.73、1.99、1.55又は1.73質量%であって、かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 ア相違点62-8-A(A)HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物について、本件訂正発明8は、「(A)ピタバスタチン又はその塩を投与単位量当たりピタバスタチンカルシウム換算で0.1~16mg」であるのに対し、乙62発明は、「アトルバスタチンCaを投与単位量当たりアトルバスタチンCa 換算で40mg」である点- 63 -イ相違点62-8-B製剤が含有する成分について、本件訂正発明8は、「(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;を含有し」、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィル ム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、結晶セルロース 「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィル ム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として含む固形製剤を除く」と特定されているのに対し、乙62発明は、「ラウリル硫酸ナトリウム、ProsolvSMCC90、アルファデンプン化されたコーンスターチ、架橋カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マ グネシウム、タルク、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール」を含有し、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物でコーティングしている点ウ相違点62-8-C本件訂正発明8は、コーティングについて特定していないのに対し、乙 62発明は、コーティングしている点⑵ 相違点についての検討ア相違点62-8-A前記12【被告の主張】⑶アと同様の理由で、乙62公報に記載のイタバスタチン(本件訂正発明8のピタバスタチン)を用いた医薬剤形とする ことは当業者が容易になし得た事項である。 前記15【被告の主張】⑵アと同様の理由で、乙62発明において、ピタバスタチン又はその塩の含量を投与単位当たりピタバスタチンカルシウム換算で0.1~16mgとすることは、当業者において容易になし得た事項である。 イ相違点62-8-B- 64 -崩壊剤について前記12【被告の主張】⑶イと同様の理由で、乙62発明において、崩壊剤としてカルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上を含有するものとすることは当業者が容易になし得た事項である。 固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上を含有するものとすることは当業者が容易になし得た事項である。 固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除くとされる点について前記12【被告の主張】⑶イと同様の理由で、乙62発明において、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビ ニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除く構成とすることは当業者が容易になし得た事項である。 結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として含む固形製剤を除くとされる点について 乙62公報においては、結晶セルロースは、医薬剤形のフィラー、バインダー又は崩壊剤として使用されることが開示され、結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として使用されているとの開示はないから、乙62発明は、結晶セルロースを、医薬剤形のフィラー、バインダー又は崩壊剤として使用する構成を含むものである。 したがって、結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として含む構成を除くという点は、本件訂正発明8と乙62発明との実質的な相違点ではない。また、前記15【被告の主張】⑵イのとおり、乙62発明について、結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する安定化剤として含む構成を除くという構成にすることは当 業者が容易になし得た事項である。 - 65 -ウ相違点62-8-C前記12【被告の主張】⑶ウと同様の理由で、本件訂正発明8の固形製 として含む構成を除くという構成にすることは当 業者が容易になし得た事項である。 - 65 -ウ相違点62-8-C前記12【被告の主張】⑶ウと同様の理由で、本件訂正発明8の固形製剤はコーティングする態様を当然に含むと理解されるから、本件訂正発明8と乙62発明は、この点では実質的に相違しない。 エ小括 以上のとおり、相違点62-8-A及び相違点62-8-Bに係る本件訂正発明8の技術的事項は当業者が容易になし得た事項であり、相違点62-8-Cは実質的な相違点ではないといえ、また、本件訂正発明8が当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであるともいえないから、本件訂正発明8は、乙62発明及び本件出願日当時の技術常識に基づいて 当業者が容易に発明をすることができたものである。 【原告の主張】本件訂正発明8は、本件訂正発明9と同様に、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固 形製剤・・・を除く」ものであるから、本件訂正発明8との関係においても、前記3【原告の主張】と同様の理由により、乙62発明に基づく進歩性欠如の無効理由は成り立たない。 18 争点⑸イ(本件訂正発明8についてサポート要件違反及び実施可能要件違反) 【原告の主張】前記1及び2の各【原告の主張】と同様の理由により、本件訂正発明8のサポート要件違反及び実施可能要件違反の無効理由は成り立たない。また、本件訂正発明8は、結晶セルロースを全く含有しないとするものではないため、本件訂正発明8がサポート要件を充足することはより明らかというべき である。 - 66 -【被告の主張】本 本件訂正発明8は、結晶セルロースを全く含有しないとするものではないため、本件訂正発明8がサポート要件を充足することはより明らかというべき である。 - 66 -【被告の主張】本件訂正発明8は、本件3成分を含まない固形製剤を含んでいることからすれば、前記1及び2の各【被告の主張】のとおり、本件訂正発明8は、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。 また、5-ケト体との関係において本件明細書の発明の詳細な説明に記載 された発明は、PTP包装及びアルミピローという二重包装による密封を必須の構成とするものであるから、二重包装による密封という構成を欠く本件訂正発明8はサポート要件を満たさない。 19 争点⑸ウ(本件訂正発明8について明確性要件違反)【被告の主張】 結晶セルロースは、安定化剤の他にも、滑沢剤、基剤、吸着剤、結合剤、懸濁剤、コーティング剤、糖衣剤、軟化剤、賦形剤、分散剤、崩壊剤、崩壊補助剤、流動化剤としての用途を有するなど多数の用途、機能を有するため、固形製剤中に結晶セルロースが含まれる場合、当該結晶セルロースが安定化剤として含まれているのか、それとも、その他の用途で含まれるのかについ ては、当業者においても一義的に判断することができない。そして、本件訂正発明8は、結晶セルロースをピタバスタチン又はその塩に対する「安定化剤」として含む固形製剤のみを除くとしているところ、上記のとおり、固形製剤中に結晶セルロースが含まれる場合、当該結晶セルロースが安定化剤として含まれているのか、それとも、その他の用途で含まれるのかについては、 当業者においても一義的に判断することができないから、本件訂正発明8が除く対象として特定する固形製剤の範囲は不明瞭である。 したがって、本件訂正発明8の技 の用途で含まれるのかについては、 当業者においても一義的に判断することができないから、本件訂正発明8が除く対象として特定する固形製剤の範囲は不明瞭である。 したがって、本件訂正発明8の技術的範囲の外延が不明であると言わざるを得ず、本件訂正発明8は、明確性要件の無効理由を含むものである。 【原告の主張】 本件訂正発明8においては、「結晶セルロース」を(ピタバスタチン又は- 67 -その塩に対する)「安定化剤」として含む固形製剤を除くという構成要件が示されているところ、「安定化剤」という用語は、特許請求の範囲において、複数の用途を有する医薬品添加物との関係で、当該医薬品添加物の用途を特定する用語として一般的に用いられている明確な用語であり、本件訂正発明8に係る特許請求の範囲の記載が「第三者の利益が不当に害されるほどに不 明確」でないことは明らかである。したがって、本件訂正発明8について、明確性要件違反の無効理由は認められない。 20 争点⑹(損害額及び不当利得額)【原告の主張】⑴ 平成25年12月から平成28年3月までの損害額及び不当利得額 ア平成27年4月1日から平成28年3月31日までの期間における被告各製品の販売数量、被告各製品に対応する原告製品(以下「原告各製品」という。)の単位数量当たりの利益の額は、別表1のとおりであり、原告は、上記被告各製品の販売数量を製造・販売する能力を有していたことから、特許法102条1項に基づく損害額は、別表1のとおり、31億71 24万円となる。 イ被告は、被告製品1及び2については平成25年12月13日から平成27年3月31日までの期間、被告製品3については、平成26年12月12日から平成27年3月31日までの期間、本件特許権の侵害行為により は、被告製品1及び2については平成25年12月13日から平成27年3月31日までの期間、被告製品3については、平成26年12月12日から平成27年3月31日までの期間、本件特許権の侵害行為により本来支払うべき本件各発明の実施についての実施料を支払わずに、被告 各製品を販売しており、原告は、同額の損失を被った。被告各製品の売上高は、別表2のとおりであり、本件各発明の実施に対し受けるべき料率は売上高の15%が相当であるから、被告の不当利得額は、別表2のとおり、3億0900万円となる。 ウ弁護士・弁理士費用 3億4802万4000円 ⑵ 平成28年4月から平成29年3月までの損害額- 68 -ア平成28年4月1日から平成29年3月31日までの期間における被告各製品の販売数量、原告各製品の単位数量当たりの利益の額は、別表3のとおりであり、原告は、上記被告各製品の販売数量を製造・販売する能力を有していたことから、特許法102条1項に基づく損害額は、別表3のとおり、41億1163万円となる。 イ弁護士・弁理士費用 4億1116万3000円⑶ 平成29年4月から平成30年3月までの損害額ア平成29年4月1日から平成30年3月31日までの期間における被告各製品の販売数量、原告各製品の単位数量当たりの利益の額は、別表4のとおりであり、原告は、上記被告各製品の販売数量を製造・販売する能力 を有していたことから、特許法102条1項に基づく損害額は、別表4のとおり、44億0179万4000円となる。 イ弁護士・弁理士費用 4億4017万9400円⑷ 平成30年4月から平成31年3月31日までの損害額ア平成30年4月1日から平成31年3月31日までの期間における被告 各製品の販売数量 護士・弁理士費用 4億4017万9400円⑷ 平成30年4月から平成31年3月31日までの損害額ア平成30年4月1日から平成31年3月31日までの期間における被告 各製品の販売数量、原告各製品の単位数量当たりの利益の額は、別表5のとおりであり、原告は、上記被告各製品の販売数量を製造・販売する能力を有していたことから、特許法102条1項に基づく損害額は、別表5のとおり、51億0740万円となる。 イ弁護士・弁理士費用 5億1074万円 【被告の主張】原告の主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件各発明について⑴ 本件明細書の記載 本件各発明の明細書には、以下のとおり記載されている。 - 69 -ア技術分野【0001】本発明は、ピタバスタチン又はその塩のラクトン体生成が抑制された固形製剤及び当該固形製剤を用いた医薬品に関する。 イ背景技術【0002】いわゆるスタチン類の一種であるピタバスタチンカルシウ ム(化学名:(+)-monocalciumbis{(3R,5S,6E)-7-[2-cyclopropyl-4-(4-fluorophenyl)-3-quinolyl]-3,5-dihydroxy-6-heptenoate})等のピタバスタチン又はその塩は、優れたHMG−CoA還元酵素阻害活性を有し、高脂血症治療剤、高コレステロール血症治療剤等の有効成分として有用であることが知られている。 【0003】上記スタチン類の共通骨格であるジヒドロキシカルボン酸骨格は、脱水縮合反応により分子内で環化し、HMG−CoA還元酵素阻害活性の低いラクトン体を生成することが知られている。医薬品製剤中でのラクトン体の生成は、医薬品の有効性の低下や医薬品間での有効性の不均一性の 縮合反応により分子内で環化し、HMG−CoA還元酵素阻害活性の低いラクトン体を生成することが知られている。医薬品製剤中でのラクトン体の生成は、医薬品の有効性の低下や医薬品間での有効性の不均一性の原因ともなり得る。そのため、ピタバスタチンを含むスタチン類 の医薬品製剤中での安定性を向上させる試みが従来より種々なされているが、その多くはスタチン類のpH環境に対する検討であり、具体的には低pH環境下におけるジヒドロキシカルボン酸骨格の不安定性を考慮して炭酸カルシウム等の塩基性物質を配合してスタチン類のpH環境を塩基性にする、というものである。 【0004】また、特許文献4には、ピタバスタチンカルシウムの結晶性形態Aを乾燥させると、水分が4%以下でアモルファス化して結晶性が低下すること、及びアモルファス化したピタバスタチンカルシウムは保存中の安定性が極めて悪くなることが記載されている。さらに、非特許文献1には、「有効成分の各種条件下における安定性」の項において、低湿度 条件下(60℃、30%RH)において水分減少とともに類縁物質の増加- 70 -が認められた旨、記載されている。 ウ発明が解決しようとする課題【0007】しかしながら、特許文献4及び非特許文献1には、ピタバスタチンカルシウムと特定の高い吸湿性を有する崩壊剤とを含有する固形製剤における、吸湿(水分の上昇)に伴う不安定性については一切記載さ れていない。 【0008】ところで、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウムなどのカルメロース又はその塩、クロスポビドン、結晶セルロースといった医薬品添加物はいずれも極めて高い吸湿性を有する。そのため固形製剤に配合した場合、吸湿して膨潤する・毛管作用により製剤内部 に導水するといった作用 の塩、クロスポビドン、結晶セルロースといった医薬品添加物はいずれも極めて高い吸湿性を有する。そのため固形製剤に配合した場合、吸湿して膨潤する・毛管作用により製剤内部 に導水するといった作用を発揮し、固形製剤に良好な崩壊性を付与するため、崩壊剤等として利用されている。 【0009】固形製剤の崩壊性の向上は、有効成分の放出と薬効発揮をより確実にし、ひいては固形製剤の品質の向上につながるというメリットがある。また、良好な崩壊性を特徴とする固形製剤の一種である口腔内崩 壊型の固形製剤においては、水無しに服用できるため場所・時間等を問わず服用でき、服用コンプライアンスの向上につながるというメリットもある。 このようなメリットを考慮して、本発明者はピタバスタチン又はその塩を含有する崩壊性が良好な固形製剤を得るため、カルメロース又はその塩、 クロスポビドン、結晶セルロースといった崩壊剤とピタバスタチン又はその塩とを混合したところ、経時的に多量のラクトン体が生成することが判明した。 従って、本発明は、ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種 以上とを含有する、ラクトン体生成の抑制された固形製剤、及び当該固形- 71 -製剤を用いた医薬品を提供することを課題とする。 エ課題を解決するための手段【0010】本発明者は上記課題を解決するにあたり、まずピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上との混合時におけるラクトン 体生成の原因・メカニズムにつき鋭意検討したところ、驚くべきことに、混合物中の水分含量とラクトン体量の間に相関があり、水分含量が増加するに従 る群から選ばれる1種以上との混合時におけるラクトン 体生成の原因・メカニズムにつき鋭意検討したところ、驚くべきことに、混合物中の水分含量とラクトン体量の間に相関があり、水分含量が増加するに従い脱水縮合物であるラクトン体の生成量が増加することが明らかとなった。一方において、特許文献5記載の「製剤の各種条件下における安定性」の項においては、現在販売中の「リバロ錠」の苛酷試験(湿度:2 5℃、60%RH又は85%RH)での安定性につき“規格範囲内”あるいは“溶出率低下”とされているのみである。これらのことから、上記した崩壊剤との共存によるラクトン体生成の原因・メカニズムは、現在販売中の「リバロ錠」には配合されていない上記特定の崩壊剤の有する高い吸湿性に起因することが示唆された。そして、固形製剤の水分含量を一定値 以下とすることによって、ピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体生成が抑制できることを見出し、本発明を完成した。 【0011】すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B):(A)ピタバスタチン又はその塩;(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロース よりなる群から選ばれる1種以上;を含有し、かつ、水分含量が2.9質量%以下である固形製剤を、気密包装体に収容してなる医薬品を提供するものである。 【0012】また、本発明は、次の成分(A)及び(B):(A)ピタバスタチン又はその塩; (B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロース- 72 -よりなる群から選ばれる1種以上;を含有し、かつ、水分含量が2.9質量%以下である固形製剤を提供するものである。 オ発明の効果【0013】本発明の固形製剤は、ピタバスタチン又はその塩由来のラ クトン体 れる1種以上;を含有し、かつ、水分含量が2.9質量%以下である固形製剤を提供するものである。 オ発明の効果【0013】本発明の固形製剤は、ピタバスタチン又はその塩由来のラ クトン体生成が抑制され、しかも崩壊性に優れる。したがって、本発明の固形製剤は、有効成分の安定性が良好であるのみならず有効成分の放出と薬効発揮が確実であるから、品質に優れる。 また、本発明の医薬品は、本発明の固形製剤が気密保存可能な包装体にて包装され包装体内への水分の侵入が妨げられるため、長期間に渡って包 装体内部の固形製剤の水分含量が安定的に保たれ、固形製剤中のピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体生成が長期間に渡って抑制され、有用である。 カ発明を実施するための形態【0014】本発明において「ピタバスタチン又はその塩(以下、「成 分(A)」とも称する)」には、ピタバスタチンそのもののほか、ピタバスタチンの薬学上許容される塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;フェネチルアミン塩等の有機アミン塩;アンモニウム塩等)、更にはピタバスタチン又はその薬学上許容される塩と、水、アルコール等との溶媒和 物も含まれる。本発明においては、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。 本発明においては、ピタバスタチンカルシウム(化学名:(+)-monocalciumbis{(3R,5S,6E)-7-[2-cyclopropyl-4-(4-fluorophenyl)-3-quinolyl]-3,5-dihydroxy-6-heptenoate})が好ましい。 ピタバスタチン又はその塩は公知の化合物であり、例えば、特開平1−- 73 - )-3-quinolyl]-3,5-dihydroxy-6-heptenoate})が好ましい。 ピタバスタチン又はその塩は公知の化合物であり、例えば、特開平1−- 73 -279866号公報、米国特許第5856336号明細書等に記載の方法により製造することができる。 【0015】本発明において、固形製剤における成分(A)の含有量は特に限定されず、服用者の性別、年齢、症状等に応じて適宜検討して決定することができるが、例えば、1投与単位当たり、成分(A)をピタバス タチンカルシウム換算で0.1〜16mg、より好適には0.5〜12mg、さらに好適には1〜8mg、特に好適には1〜4mg含有する固形製剤が好ましい。 本発明においては、成分(A)を固形製剤全質量に対して、ピタバスタチンカルシウム換算で0.1〜10質量%含有する固形製剤が好ましく、 0.2〜5質量%含有する固形製剤がより好ましく、0.5〜4質量%含有する固形製剤が特に好ましい。 【0023】本発明に用いられる結晶セルロースは特に限定されず、分子量、粒径等の異なるいずれの結晶セルロースを用いてもよく、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。 本発明において、結晶セルロースとしては市販品を用いてもよく、具体的には例えば、セオラスUFグレード、セオラスKGグレード、セオラスPHグレード(以上、旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。 【0024】本発明において、固形製剤における結晶セルロースの含有量は特に限定されず、固形製剤の崩壊性に応じて適宜検討して決定するこ とができる。本発明においては、結晶セルロースを固形製剤全質量に対して0.1〜80質量%含有する固形製剤が好ましく、0.5〜65質量%含有する固形製剤がより 性に応じて適宜検討して決定するこ とができる。本発明においては、結晶セルロースを固形製剤全質量に対して0.1〜80質量%含有する固形製剤が好ましく、0.5〜65質量%含有する固形製剤がより好ましく、1〜50質量%含有する固形製剤が特に好ましい。また、ピタバスタチンカルシウム換算した成分(A)1質量部に対しては、結晶セルロースを0.1〜85質量部含有する固形製剤が 好ましく、0.5〜70質量部含有する固形製剤がより好ましく、1〜5- 74 -5質量部含有する固形製剤が特に好ましい。 【0025】本発明の固形製剤は、ラクトン体の生成を抑制するため水分含量が固形製剤全質量に対し2.9質量%以下である必要があるが、ラクトン体の生成抑制の観点から2.1質量%以下であるのがより好ましく、1.9質量%以下であるのが特に好ましい。 なお、後掲の試験例3に記載の通り、本発明の固形製剤の水分含量を1. 5質量%以上とした場合、ラクトン体とは別の分解物である5−ケト体の生成を抑制できる。5−ケト体は、特許文献5記載の通りピタバスタチン又はその塩を光に曝すことによって生じる光分解物であることが知られているが、水分との関係についてこれまでに報告はない。 従って、水分含量が1.5〜2.9質量%(好適には1.5〜2.1質量%、特に好適には1.5〜1.9質量%)である本発明の固形製剤は、ラクトン体の生成が抑制され、また、5−ケト体の生成も抑制されるため、固形製剤中のピタバスタチンの安定性が特に良好であるという優れた効果を有する。 【0028】本発明は、成分(A)と、成分(B)を含有する固形製剤の水分含量を調整することによって、成分(A)由来のラクトン体生成を抑制することを一つの特徴とする。ここで、固形製剤の水分含量を調 【0028】本発明は、成分(A)と、成分(B)を含有する固形製剤の水分含量を調整することによって、成分(A)由来のラクトン体生成を抑制することを一つの特徴とする。ここで、固形製剤の水分含量を調整する手段としては、加湿手段と乾燥手段とが挙げられ、これらの手段を適宜組み合わせることにより本発明に係る水分含量に調整すればよい。 【0030】本発明において固形製剤は、その具体的形態(剤形)に応じて、上記成分以外に当該技術分野において通常用いられている添加剤を含有していてもよい。当該添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤(成分(B)を除く)、結合剤、滑沢剤、着色剤、可塑剤、フィルム形成剤、難水溶性高分子物質、抗酸化剤、矯味剤、甘味剤、pH調整剤、界面活性 剤、香料等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を適宜組み合わせて使- 75 -用することが可能である。なお、各添加剤の使用量は適宜決定することができる。 【0031】賦形剤としては、例えば、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素、無水硫酸ナトリウム、無水リン酸水素カルシウム、塩化ナトリウム、含水無晶形酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ 酸、重質無水ケイ酸、硫酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、酸化マグネシウム等の無機系賦形剤;アメ粉、デンプン(コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン等)、果糖、カラメル、カンテ ン、キシリトール、パラフィン、ショ糖、果糖、麦芽糖、乳糖、白糖、ブドウ糖、プルラン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、マルチトール、還元麦芽糖水アメ、粉末還元麦芽糖水アメ、エリスリトール テ ン、キシリトール、パラフィン、ショ糖、果糖、麦芽糖、乳糖、白糖、ブドウ糖、プルラン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、マルチトール、還元麦芽糖水アメ、粉末還元麦芽糖水アメ、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、トレハロース、還元パラチノース、マルトース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリ ビニルアセタールジエチルアミノアセテート、クエン酸カルシウム等の有機系賦形剤等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 崩壊剤としては、例えば、デンプン、ショ糖脂肪酸エステル、ゼラチン、炭酸水素ナトリウム、デキストリン、デヒドロ酢酸及びその塩、ポリオキ シエチレン硬化ヒマシ油60等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 【0038】本発明において、固形製剤のpHは特に限定されるものではないが、4以上、好ましくは4〜13、より好ましくは5〜12、更に好ましくは6〜11、特に好ましくは7〜11である。なお、本明細書に おいて、固形製剤のpHとは、固形製剤1投与単位を精製水4mLに溶解- 76 -又は分散して得られる液のpHを、第十六改正日本薬局方に記載のpH測定法に従って測定される値を意味する。 【0039】本発明において、固形製剤は、第十六改正日本薬局方製剤総則等に記載の公知の方法にしたがって、種々の剤形にすることができる。剤形は特に限定されず、第十六改正日本薬局方製剤総則等に記載の 剤形、具体的には例えば錠剤(口腔内崩壊型錠剤、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠等を含む。)、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口投与用固形製剤や口腔用錠剤(トローチ剤、舌下錠、バッカル錠 、具体的には例えば錠剤(口腔内崩壊型錠剤、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠等を含む。)、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口投与用固形製剤や口腔用錠剤(トローチ剤、舌下錠、バッカル錠、付着錠、ガム剤等を含む。)、坐剤、膣錠、膣用坐剤等の非経口投与用固形製剤が挙げられるが、経口投与用固形製剤が好ましい。なお、これらの固 形製剤は必要に応じてフィルム、糖衣等でコーティングされていてもよい。 本発明において固形製剤の剤形としては、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤が好ましく、錠剤がより好ましく、口腔内崩壊型錠剤が特に好ましい。固形製剤の剤形が口腔内崩壊型錠剤である場合においては、錠剤が口腔内で速やかに崩壊するため服用が容易となり、引いては服 用コンプライアンスの向上につながるという優れた効果を有する。 なお、本発明において、口腔内崩壊型錠剤の、口腔内での崩壊時間(健常人の口腔内の唾液で固形製剤が完全に崩壊するまでの時間)は特に限定されず、固形製剤の剤形、大きさ等によって異なるが、例えば、90秒以内、好ましくは60秒以内、特に好ましくは30秒以内である。 【0045】また、本発明は、上記の固形製剤が気密包装体に収容してなる医薬品を提供するものである。固形製剤を気密包装体に収容することにより、包装体外からの水分の侵入が妨げられる結果、包装体内部に存在する固形製剤の水分含量が長期間に渡って安定的に保たれ、結果として固形製剤中の成分(A)由来のラクトン体生成が長期間に渡って抑制される。 本発明の「医薬品」は、気密包装体の内部において固形製剤が2.9質- 77 -量%以下の水分含量であればよい。すなわち、気密包装体から固形製剤を取り出した直後において、その水分含量が2.9質量 本発明の「医薬品」は、気密包装体の内部において固形製剤が2.9質- 77 -量%以下の水分含量であればよい。すなわち、気密包装体から固形製剤を取り出した直後において、その水分含量が2.9質量%以下であればよく、例えば、気密包装体にて収容する前において固形製剤の水分含量が2.9質量%以上であっても、乾燥剤を同封する等の手段により気密包装体の内部において固形製剤の水分含量が2.9質量%以下となっていれば(すな わち、気密包装体から固形製剤を取り出した直後において、その水分含量が2.9質量%以下となっていれば)本発明の「医薬品」に包含される。 【0053】本発明の固形製剤は、HMG−CoA還元酵素阻害活性を有するピタバスタチン又はその塩をその構成成分として含有することから、例えば、高脂血症治療剤、高コレステロール血症治療剤、家族性高コレス テロール血症治療剤等として利用できる。また、医薬組成物の服用経路としては、経口及び非経口が挙げられ、経口投与が好ましい。さらに、医薬組成物は、1日につき1〜4回程度に分けて、食前、食間、食後、就寝前等に服用することができる。 キ実施例 【0057】以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。 【0058】[試験例1]高い吸湿性を有する崩壊剤との共存によるラクトン体生成の確認 高い吸湿性を有する崩壊剤との共存下におけるピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体生成を確認するため、以下の混合物1〜4を調製してポリエチレン製の袋及びアルミ袋に入れ70℃で3日間保存し、混合物調製直後及び70℃、3日保存後の混合物中のラクトン体の生成率を評価した。ラクトン体の生成率は、各混合物につき、HPLC装置(WATER レン製の袋及びアルミ袋に入れ70℃で3日間保存し、混合物調製直後及び70℃、3日保存後の混合物中のラクトン体の生成率を評価した。ラクトン体の生成率は、各混合物につき、HPLC装置(WATER S製2695)を用いて、ピタバスタチン及びその分解物に由来する総ピ- 78 -ーク面積に対する面積百分率として測定した。なお、参考のため、ピタバスタチンカルシウムのみ別途70℃、3日保存した場合のラクトン体の生成率も同様に評価した。 【0059】また、ラクトン体の生成と混合物中の水分含量の相関の有無を確認するため、混合物1~4について、70℃、3日保存後の水分含 量を測定した。 水分含量は、第十六改正日本薬局方の水分測定法(カールフィッシャー法)に準拠して、容量滴定法により測定した。結果を表1に示す。 【0060】<混合物1> ピタバスタチンカルシウム1質量部と、クロスポビドン(BASF社製:商品名コリドンCL−SF)10質量部とを混合し、混合物1を調製した。 <混合物2>ピタバスタチンカルシウム1質量部と、カルメロースカルシウム(五徳 薬品社製:商品名 ECG−505)10質量部とを混合し、混合物2を調製した。 【0061】<混合物3>ピタバスタチンカルシウム1質量部と、結晶セルロース(旭化成ケミカ ルズ社製:商品名セオラスUF−711)10質量部とを混合し、混合物3を調製した。 <混合物4>ピタバスタチンカルシウム1質量部と、カルメロースナトリウム(第一工業製薬社製:商品名セロゲンP−815C)10質量部とを混合し、 混合物4を調製した。 - 79 -【0062】【表1】【0063】表1記載の試験結果から、各混合物中の水分含量とラクト 製:商品名セロゲンP−815C)10質量部とを混合し、 混合物4を調製した。 - 79 -【0062】【表1】【0063】表1記載の試験結果から、各混合物中の水分含量とラクトン体の生成率との間に相関があり、水分含量が増加するに従って、ラクトン体量が増加することが明らかとなった。そして、クロスポビドン、カル メロースカルシウム、結晶セルロース、カルメロースナトリウムはいずれも高い吸湿性を有することから、ラクトン体の生成はこうした崩壊剤の有する高い吸湿性に起因し、共存する崩壊剤が吸湿してピタバスタチンが水分に曝される結果、ラクトン体が生成するものと推察された。 【0064】[試験例2]ラクトン体の生成抑制試験 下記の方法により製造した口腔内崩壊型錠剤の水分含量を、真空乾燥にて表3に示す各水分含量に調整した(なお、水分含量の測定方法は下記の通り)。その後、水分含量の調整された各錠剤(100錠)を、予めポケット部分を成形した樹脂シート(住友ベークライト社製:商品名スミライトVSS−1202−R)のポケット部分に入れ、次いでPTP用アルミ 箔(大和化学工業社製:商品名アルミ箔銀無地)で蓋をしてPTP包装し、得られたPTP包装体を更にアルミラミネート袋(生産日本社製:商品名ラミジップALシリーズ)でアルミピロー包装した。こうして得られた包装体を40℃、75%相対湿度の条件下で2ヵ月間保存し、錠剤調製直後、1ヶ月保存後及び2ヶ月保存後の、錠剤中のラクトン体の生成率 - 80 -を評価した。ラクトン体の生成率は、各錠剤につき、HPLC装置(SHIMADZU製LC−20シリーズ)を用いて、ピタバスタチン及びその分解物に由来する総ピーク面積に対する面積百分率として測定した。 また、錠 。ラクトン体の生成率は、各錠剤につき、HPLC装置(SHIMADZU製LC−20シリーズ)を用いて、ピタバスタチン及びその分解物に由来する総ピーク面積に対する面積百分率として測定した。 また、錠剤中の水分含量は、第十六改正日本薬局方の水分測定法(カールフィッシャー法)に準拠して、容量滴定法により測定した。 【0065】<口腔内崩壊型錠剤の製造>常法に従い、下記表2記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する口腔内崩壊型錠剤を製造した。 すなわち、表2中、ピタバスタチンカルシウムから酸化チタンまでの成分を用い、湿式造粒法にて顆粒を製造した。 得られた顆粒、及び表2中キシリトール以下の成分を混合し、打錠することにより、1錠当たり120mgの口腔内崩壊型錠剤を製造した。 - 81 -【表2】【0066】結果を表3に示す。 【表3】 - 82 -【0067】表3に示す試験結果から、錠剤の水分含量が2.9質量%以下である場合にラクトン体の生成が顕著に抑制されることが明らかとなった。特に、錠剤の水分含量が2.1質量%以下である場合、40℃、75%相対湿度の条件下で2ヶ月保存後においてもラクトン体の生成率は低く抑えられていた。なお、気密包装(PTP包装、アルミピロー包装)に よって包装体外からの水分の侵入が妨げられた結果、40℃、75%相対湿度の条件下で2ヶ月保存後においても各錠剤中の水分含量に変化は認められなかった。 以上の試験結果から、ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1 種以上を含有し、かつ、水分含量が2.9質量%以下である固形製剤においてはラクトン体生成が抑制されることが明らかとなった。また、当 、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1 種以上を含有し、かつ、水分含量が2.9質量%以下である固形製剤においてはラクトン体生成が抑制されることが明らかとなった。また、当該固形製剤が気密包装体に収容されてなる医薬品は水分含量が安定的に維持される結果長期に渡ってラクトン体生成が抑制されることも明らかとなった。 【0068】[試験例3]5−ケト体の生成抑制試験 試験例2と同一の方法により、種々の水分含量の口腔内崩壊型錠剤をPTP包装、次いでアルミピロー包装して得られた包装体を40℃、75%相対湿度の条件下で2ヶ月間保存し、錠剤調製直後、1ヶ月保存後及び2ヶ月保存後の、錠剤中の5−ケト体の生成率を評価した。5−ケト体の生成率は、各錠剤につき、HPLC装置(SHIMADZU製LC−20シリ ーズ)を用いて、ピタバスタチン及びその分解物に由来する総ピーク面積に対する面積百分率として測定した。 結果を表4に示す。 【0069】- 83 -【表4】【0070】表4に示す試験結果から、錠剤の水分含量が1.5質量%以上である場合において5−ケト体の生成が顕著に抑制されることが明らかとなった。なお、気密包装(PTP包装、アルミピロー包装)によって包装体内外の水分の移動が妨げられた結果、40℃、75%相対湿度の条 件下で2ヶ月保存後においても各錠剤中の水分含量に変化は認められなかった。 以上の試験結果から、ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上を含有し、かつ、水分含量が1.5質量%以上である固形製剤にお いては5−ケト体生成が抑制されることが明らかとなった。 ⑵ 本件各発明の技術的意義 ルロースよりなる群から選ばれる1種以上を含有し、かつ、水分含量が1.5質量%以上である固形製剤にお いては5−ケト体生成が抑制されることが明らかとなった。 ⑵ 本件各発明の技術的意義本件明細書の記載によれば、本件各発明の技術的意義は、以下のとおりと認めることができる。 ア本件各発明は、ピタバスタチン又はその塩のラクトン体生成が抑制され た固形製剤及び当該固形製剤を用いた医薬品に関するものである(【0001】)。いわゆるスタチン類の一種であるピタバスタチンカルシウム等のピタバスタチン又はその塩は、優れたHMG-CoA還元酵素阻害活性を- 84 -有し、高脂血症治療剤、高コレステロール血症治療剤等の有効成分として有用であることが知られているが(【0002】)、上記スタチン類の共通骨格であるジヒドロキシカルボン酸骨格は、脱水縮合反応により分子内で環化し、HMG-CoA還元酵素阻害活性の低いラクトン体を生成し、医薬品の有効性の低下等の原因ともなり得るため、ピタバスタチンを含むス タチン類の医薬品製剤中での安定性を向上させる試みが従来より種々なされている(【0003】)。 ここで、固形製剤の崩壊性の向上は、有効成分の放出と薬効発揮をより確実にし、ひいては固形製剤の品質の向上につながるなどのメリットがある。このようなメリットを考慮して、ピタバスタチン又はその塩を含有す る崩壊性が良好な固形製剤を得るため、カルメロース又はその塩、クロスポビドン、結晶セルロースといった崩壊剤とピタバスタチン又はその塩とを混合したところ、経時的に多量のラクトン体が生成することが判明した。 そこで、本発明は、ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以 上 、経時的に多量のラクトン体が生成することが判明した。 そこで、本発明は、ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以 上とを含有する、ラクトン体生成の抑制された固形製剤、及び当該固形製剤を用いた医薬品を提供することを課題とするものである(【0009】)。 イ上記課題を解決するに当たって検討したところ、ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上との混合物中の水分含量とラクトン体量 の間に相関があり、水分含量が増加するに従い脱水縮合物であるラクトン体の生成量が増加することが明らかとなった。そして、固形製剤の水分含量を一定値以下とすることによって、ピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体生成が抑制できることを見出し、本件各発明は完成した(【0010】)。 ウ以上によれば、本件各発明の技術的意義は、ピタバスタチン又はその塩- 85 -と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上とを含有する、固形製剤の水分含量を一定値以下とすることによって、ピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体の生成が抑制された医薬品を提供することにある。 2 結晶セルロースに関する文献 結晶セルロースについて、以下の文献又はウェブサイトの記載がある。 ⑴ 乙1公報「本発明は、製薬業界の分野に関し、特に、環境への影響に敏感な活性物質を含む安定な医薬剤形に関する。好ましくは、活性物質は、環境pH、酸化および/または環境湿度に敏感であり、HMG-CoAレダクターゼ阻害 剤の群から選択される。最も好ましくは、活性物質は、アトルバスタチンで 剤形に関する。好ましくは、活性物質は、環境pH、酸化および/または環境湿度に敏感であり、HMG-CoAレダクターゼ阻害 剤の群から選択される。最も好ましくは、活性物質は、アトルバスタチンである。 本発明の安定な医薬剤形は、環境pHに敏感な1つ以上の活性物質と、環境pHに対する1つ以上の活性物質の安定性を与える1つ以上の医薬賦形剤とを含み、上記医薬剤形は、水分含量が医薬剤形全体の重量の3.5重量% 未満、好ましくは3重量%未満であり、アルカリ化物質または緩衝剤、またはこれらの組み合わせを含まない。上記医薬剤形は、様々な種類の結晶セルロースおよび結晶セルロースの改変された形態からなる群から選択される1つ以上の賦形剤を含む。」(訳文1頁)「今まで、低pHで、ヒドロキシル酸の形態のHMG-CoAレダクター ゼ阻害剤(例えば、アトルバスタチン、プラバスタチン、メバスタチン、セリバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチンおよびイタバスタチン)から、ラクトン形態および異なる異性体への変換という問題は、医薬剤形にアルカリ性物質または塩基性化物質またはアルカリ化物質および/または緩衝剤を添加することによって解決されてきた。 したがって、本発明の目的は、環境影響に敏感な活性物質を安定化し、こ- 86 -のような活性物質と医薬賦形剤とを含む医薬剤形を安定化することである。 さらに、本発明の目的は、環境pH、酸化および/または環境湿度に敏感な活性物質を安定化し、上述の活性物質と医薬賦形剤とを含む医薬剤形を安定化することである。好ましくは、本発明の目的は、スタチンである活性物質、最も好ましくはアトルバスタチンを、環境影響に対して、好ましくは、環境 pH、酸化および/または環境湿度に対して安定化することである。」(訳文 しくは、本発明の目的は、スタチンである活性物質、最も好ましくはアトルバスタチンを、環境影響に対して、好ましくは、環境 pH、酸化および/または環境湿度に対して安定化することである。」(訳文20頁)「本発明の目的は、さらに、低い水分含量の条件下で、すなわち、乾燥減量3.5%(LODが3.5%未満)、好ましくはLODが3%未満で、アルカリ化物質または緩衝剤を医薬剤形に添加することなく、驚くべきことに 活性物質であるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤のヒドロキシル酸形態からラクトン形態への変換を防ぐ医薬剤形である。本発明の安定な医薬剤形は、環境pHに敏感な1つ以上の活性物質と、環境pHに対する1つ以上の活性物質の安定性を与える1つ以上の医薬賦形剤とを含み、上記医薬剤形は、水分含量が医薬剤形全体の重量の3.5重量%未満、好ましくは3重量%未満 であり、アルカリ化物質または緩衝剤、またはこれらの組み合わせを含まない。 本発明の安定な医薬剤形の医薬賦形剤は、様々な種類の結晶セルロースおよび結晶セルロースの改変された形態からなる群から選択される。好ましくは、結晶セルロースとコロイド状SiO2の物理的な混合物の群から選択さ れ、最も好ましくは、異なる種類の結晶セルロース、例えば、ProSolv(商標)SMCC(登録商標)90、ProSolv(商標)HDおよびAvicel(登録商標)PH 200から選択される。」(訳文21頁)「【請求項2】安定な医薬剤形であって、環境pHに敏感な1つ以上の活 性物質と、環境pHに対する1つ以上の活性物質の安定性を与える1つ以上- 87 -の医薬賦形剤とを含み、医薬賦形剤は異なる種類の結晶セルロースおよび結晶セルロースの改変された形態からなる群から選択され、前記医薬剤形 対する1つ以上の活性物質の安定性を与える1つ以上- 87 -の医薬賦形剤とを含み、医薬賦形剤は異なる種類の結晶セルロースおよび結晶セルロースの改変された形態からなる群から選択され、前記医薬剤形は、前記水分含量が前記医薬剤形全体の重量の3.5重量%未満であり、アルカリ化物質または緩衝剤、またはこれらの組み合わせを含まない、安定な医薬剤形。」(訳文37頁) ⑵ 日本医薬品添加剤協会SafetyDataのウェブサイト(平成17年作成。乙51)の記載結晶セルロースの「用途」として、「安定(化)剤、滑沢剤、基剤、吸着剤、結合剤、懸濁(化)剤、コーティング剤、糖衣剤、軟化剤、賦形剤、分散剤、崩壊剤、崩壊補助剤、流動化剤」と記載されている。 ⑶ KEGGDRUGのウェブサイト(平成19年作成。乙52)の記載結晶セルロースについて、「安定(化)剤」、「滑沢(化)剤」、「基剤」、「吸着剤」、「結合剤」、「懸濁(化)剤」、「コーティング剤」、「糖衣剤」、「軟化剤」、「賦形剤」、「分散剤」、「崩壊剤」、「崩壊補助剤」、「流動化剤」と記載されている。 ⑷ 特表2011-500811号公報(公開日平成23年1月6日。乙66)【請求項5】「前記クラブラン酸カリウムが、粉末としてまたは二酸化ケイ素もしくは微結晶性セルロースとの1:1混合物として調製されている、請求項4記載の製薬組成物。」【0006】「クラブラン酸およびその誘導体または塩(集合的に、クラ ブラン酸塩と称する)を含有する多くの乾燥製剤の調製は、結合剤、流動促進剤(glidant)、崩壊剤および乾燥剤等のような複雑な配合の賦形剤を含ませて製薬上許容し得る担体を得ることを必要としている。このことは、一部では、クラブラン酸塩が水性媒質中で極めて不安定 動促進剤(glidant)、崩壊剤および乾燥剤等のような複雑な配合の賦形剤を含ませて製薬上許容し得る担体を得ることを必要としている。このことは、一部では、クラブラン酸塩が水性媒質中で極めて不安定である高湿気性物質であるという事実による。」 【0016】「クラブラン酸カリウムは、純粋化合物として或いはClavit- 88 -esseTM、即ち、クラブラン酸カリウムと微結晶性セルロースとの1:1混合物またはクラブラン酸カリウムと二酸化ケイ素との1:1混合物・・・として供給し得る。」【0056】「・・・ClavitesseTM 中の微結晶性セルロースまたは二酸化ケイ素は、錠剤中の水分を捕捉することによってクラブラン酸カリウムの安 定性の増大にさらに寄与しているようである。」⑸ 特開昭55-47615号公報(公開日昭和55年4月4日。乙67)「特許請求の範囲 1 賦形剤の1部又は全部が結晶セルロースであることを特徴とするニフエジピン固型製剤。」「しかしながら、ニフエジピンは、光、温度及び湿気に対して敏感であり、 これらによって褐変し効力が著しく低下する性質がある。」(1頁)「驚くべきことに、従来公知の多くの賦形剤の中で結晶セルロースを使用するときは特異的にニフエジピンが安定化されることを見出し、本発明を完成した。」(2頁)「賦形剤として結晶セルロースを使用したものは特異的にニフエジピンを 安定化する。本発明において、ニフエジピンを固型製剤化するには、結晶セルロースをニフエジピンの約2倍以上、特に好ましくは2.5倍以上使用する。」(4頁)⑹ 特開平11-269072号公報(公開日平成11年10月5日。乙68)【請求項1】「ポリモルフII 形態のトロバフロキサシンメシレート、潤滑 剤 くは2.5倍以上使用する。」(4頁)⑹ 特開平11-269072号公報(公開日平成11年10月5日。乙68)【請求項1】「ポリモルフII 形態のトロバフロキサシンメシレート、潤滑 剤、及び少なくとも5%の微結晶性セルロース(MC)を含む、乾燥顆粒化組成物。」【0003】「特にポリモルフII は、疎水的に安定と報告されている非水化物(anhydrate)であり、錠剤化作業間又はカプセル封入作業間の活性成分の製剤化問題を軽減する。ポリモルフIも非水化物であり、実質 的に吸湿性で、雰囲気から水を取り込んでモノ水化物(トロバフロキサシン- 89 -の第3形態)を形成すると報告されていることから、不利である。」【0005】【課題を解決するための手段】「本発明は、良好な保存安定性を有し、多くの製剤化の利点を示す錠剤に関する。」【0006】「本発明は、ポリモルフII 形態のトロバフロキサシンメシレート、潤滑剤、及び少なくとも5%の微結晶性セルロース(MC)を含む、 錠剤を提供する。前記の無コート錠剤は、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%の微結晶性セルロースを含む。」【0033】【実施例1】「本質的に本発明に従って製造された製剤の材料の組成を以下に示す。」【表3】 【0036】【表4】- 90 -【0037】「前記錠剤及び実施例1のように製造した比較用錠剤について、40℃及び相対湿度75%の一定の条件下で、開放容器中で12週間前記錠剤を保存することによって、一緒に安定性試験を実施した。12週間経過後に、HPLCアッセイを逆相で実施して全ての潜在的分解生成物、工程関連化合物、及び製剤賦形物からトロバフロキサシンを分離することにより、 各組成物を、それらの分 性試験を実施した。12週間経過後に、HPLCアッセイを逆相で実施して全ての潜在的分解生成物、工程関連化合物、及び製剤賦形物からトロバフロキサシンを分離することにより、 各組成物を、それらの分解プロフィールに関して試験した。・・・本実施例の錠剤では、2.4%の分解を示したのに対して、実施例1の錠剤は、0. 3%の合計不純物レベルを示した。」⑺ 特表2005-536527号公報(公開日平成17年12月2日。乙69) 【0003】このように、式Iのベンズイミダゾール化合物、特にオメプラゾールは、酸性水溶液において不安定であり、そのためにベンズイミダゾール化合物は、最初、アルカリ性緩衝剤を使用してガレヌス製剤中で配合されていた。 【課題を解決するための手段】 【0009】意外にも、微結晶セルロースは、式Iで表されるベンズイミダゾール化合物、特にオメプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾールおよびランソプラゾールを安定化することができることが見出された。 【発明を実施するための最良の形態】【0010】本発明に従って、式Iで表されるベンズイミダゾール化合物 の安定化のために、微結晶セルロースを有効成分を含有するペレットの層に使用する時は、微結晶セルロース粒子のサイズはできるだけ小さい程、特に好都合であり、微結晶セルロースの広い表面との相互作用により安定化が起きるものと推定される。 ⑻ 特表2007-530623号公報(平成19年11月1日。乙70) 【0001】本発明は、ペリンドプリルまたはその塩の固形薬学的組成物- 91 -を調製するためのプロセス、ならびに固形薬学的組成物に関する。 【背景技術】【0002】ACEインヒビター(例えば、ペリンドプリル(Perindopril))は、インビ 的組成物- 91 -を調製するためのプロセス、ならびに固形薬学的組成物に関する。 【背景技術】【0002】ACEインヒビター(例えば、ペリンドプリル(Perindopril))は、インビボで実際に活性な物質である、ペリンドプリラット(perindoprilat)のプロドラッグである。特に、錠剤の ような固形処方物は、かなりの量の分解を被り、それによって、ペリンドプリルの有効量を減少させる。主な分解経路は、1)エステル基の加水分解、および2)特に、酸性環境下において、ジケトピペラジン(DKP)をもたらす、分子内環化である。 【0003】ACEインヒビターの固形組成物を安定化させるための種々 の試みがなされてきた。 【0004】特許文献1によれば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩が、ACEインヒビターの処方物を安定化するために使用されてきた。特に、炭酸マグネシウムは、エナラプリル(enalpril)と組み合せた場合に、有効であることが分かった、適切な安定化炭酸塩であるこ とが開示されている。組成物の成分は、湿式造粒によって、所望の錠剤へと加工される。 【0005】さらに、特許文献2は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩を添加することにより安定化された、塩酸モエキシプリル(moexiprilhydrochloride)の処方物を開示する。塩 酸モエキシプリルおよびアルカリ反応性の炭酸塩を含む混合物は、湿式造粒により加工され、その結果、安定化の効果は、モエキシプリルのナトリウム塩のインサイチュ形成に起因するようである。さらに、炭酸塩の量が、塩酸モエキシプリルの化学量論上の量よりも多くあるべきであることが開示される。 【0007】しかし、ペリンドプリルのようなACEインヒビ チュ形成に起因するようである。さらに、炭酸塩の量が、塩酸モエキシプリルの化学量論上の量よりも多くあるべきであることが開示される。 【0007】しかし、ペリンドプリルのようなACEインヒビターの安定- 92 -化された処方物を得るための、上記のアプローチは、いつも水の使用を包含し、この水が、次に安定性の低下を引き起こし得るという欠点を被る。 【0008】従って、本発明の目的は、従来のプロセスの上記の問題を回避する、ペリンドプリルの固形薬学的組成物を調製するためのプロセス、ならびに、高い安定性を有し、かつ、少量の分解産物のみしか含まないペリン ドプリルの固形薬学的組成物を提供することである。 【0031】ペリンドプリルもしくはその塩を、0.3重量%~5.0重量%の特定の含水量を有する微結晶性セルロースおよび/もしくは無水ラクトースのいずれかと組み合わせて用いることによって、非常に安定な組成物が得られることは、驚くべきことである。このことは、一般に、水のような 液体の存在が、湿式造粒工程、または、アルカリ性の安定化剤と酸性のACEインヒビターとの間の中和反応に必要とされる先行技術の教示とは対照的である。 【0036】実施例1と実施例4との比較は、アルカリ反応性の炭酸塩がない場合でも、低含水量の微結晶性セルロースを用いる実施例4の場合には、 ジケトピペラジンの量が減少することを示す。 3 争点⑴ア(サポート要件違反)について⑴ 判断基準特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載さ れた発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲の 載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載さ れた発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであると解される。 ⑵ 本件各発明の課題及び解決手段について- 93 -ア本件明細書の発明の詳細な説明には、本件各発明の技術分野は、「ピタバスタチン又はその塩のラクトン体生成が抑制された固形製剤及び当該固形製剤を用いた医薬品に関する」ものであり(【0001】)、「本発明は、ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上とを含有する、ラ クトン体生成の抑制された固形製剤、及び当該固形製剤を用いた医薬品を提供することを課題とする。」と記載されており(【0009】)、本件各発明は、ピタバスタチン又はその塩のラクトン体の生成が抑制された固形製剤及び当該固形製剤を用いた医薬品を提供することを課題とする発明といえる。 そして、本件明細書には、本件各発明が「固形製剤の水分含量を一定値以下とすることによって、ピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体の生成が抑制できることを見出し、本発明を完成した」と記載されている(【0010】)ところ、本件明細書には、発明を実施するための形態について、「本発明の固形製剤は、ラクトン体の生成を抑制するため水分含量 が固形製剤全質量に対し2.9質量%以下である必要があるが、ラクトン体の生成抑制の観点から2.1質量%以下であるのがより好ましく、1. 9質量%以 剤は、ラクトン体の生成を抑制するため水分含量 が固形製剤全質量に対し2.9質量%以下である必要があるが、ラクトン体の生成抑制の観点から2.1質量%以下であるのがより好ましく、1. 9質量%以下であるのが特に好ましい。」「水分含量が1.5~2.9質量%・・・である本発明の固形製剤は、ラクトン体の生成が抑制され、また、5-ケト体の生成も抑制されるため、固形製剤中のピタバスタチンの 安定性が特に良好であるという優れた効果を有する」(【0025】)、「本発明の「医薬品」は、気密包装体の内部において固形製剤が2.9質量%以下の水分含量であればよい」との記載がされており(【0045】)、本件各発明の固形製剤の水分含量を2.9質量%以下にすることによってラクトン体の生成が抑制されることが記載されている。 イ上記アのような本件明細書の記載に鑑みれば、本件各発明は、ラクトン- 94 -体の生成率を抑制した医薬品を提供することを課題とするものであり、本件各発明の固形製剤の水分含量を2.9質量%以下にすることが記載されているところ、上記課題について、解決をすることができると認識できる範囲について、検討する。 本件明細書には、その実施例(試験例2)について、「表3に示す試 験結果から、錠剤の水分含量が2.9質量%以下である場合にラクトン体の生成が顕著に抑制されることが明らかとなった。特に、錠剤の水分含量が2.1質量%以下である場合、40℃、75%相対湿度の条件下で2ヶ月保存後においてもラクトン体の生成率は低く抑えられていた。」「以上の試験結果から、ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及 びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上を含有し、かつ、水分含量が2.9質量%以下である固 「以上の試験結果から、ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及 びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上を含有し、かつ、水分含量が2.9質量%以下である固形製剤においてはラクトン体生成が抑制されることが明らかとなった。」(【0067】)と記載されており、上記表3において、水分含量「2. 9」の場合のラクトン体の生成率「0.23」と水分含量「3.3」の 場合のラクトン体の生成率「0.35」との間には二重線が付され、それらの生成率について明確に区別して記載されている。 これらに照らせば、本件明細書は、表3の「水分含量(質量%)」が「2.9」の場合のラクトン体の生成率「0.23」(40℃75%RH2か月後)について「ラクトン体生成が抑制されることが明らかにな った」と評価して本件各発明の課題を解決したとする一方で、「水分含量(質量%)」が「3.3」の場合のラクトン体の生成率「0.35」(40℃75%RH2か月後)については、そのラクトン体の生成率に着目した上で、その生成率に照らし、本件各発明の課題を解決したといえる程度にラクトン体の生成が抑制されたとはいえないと評価している ものといえる。 - 95 - 本件各発明の属する医薬品の分野において、医薬品としての品質管理上要求される類縁物質の許容範囲が存在し、医薬品の品質管理上、当該許容範囲に収まるように一定範囲内に類縁物質の生成抑制がされた医薬品を提供することは当業者にとって周知の課題といえる(乙83、弁論の全趣旨)。 本件各発明は医薬品を提供する発明であり、本件明細書の記載から、一定の医薬品を提供することを課題とする(前記ア)ものであり、ラクトン体を含む類縁物質の生成が一定範囲内に抑制された医薬品を提供するもの 件各発明は医薬品を提供する発明であり、本件明細書の記載から、一定の医薬品を提供することを課題とする(前記ア)ものであり、ラクトン体を含む類縁物質の生成が一定範囲内に抑制された医薬品を提供するものであることを前提としたものといえる。 以上のとおりの本件明細書の記載等に照らせば、本件各発明において、 課題が解決されて、ラクトン体の生成が抑制されたというのは、本件各発明が医薬品を提供する発明であることを前提として、水分含量を「2. 9質量%以下」という一定値以下にすることにより、ラクトン体の生成率(40℃75%RH2か月後)が0.23%と0.35%の間のいずれかの値以下に抑制されたことをいうものと解するのが相当である。 ウ本件明細書の段落【0025】及び試験例3に係る段落【0068】ないし【0070】には、5-ケト体の生成抑制に関する記載がある。 もっとも、本件明細書の「発明が解決しようとする課題」(段落【0007】ないし【0009】)、「課題を解決するための手段」(段落【0010】ないし【0012】)、「発明の効果」(段落【0013】)には、5- ケト体の生成抑制について何らの記載もないことからすれば、5-ケト体の生成を抑制するという点は、本件各発明のすべての発明についての解決しようとする課題には当たらないと解するのが相当である。上記5-ケト体の生成抑制に関する記載は、前記のラクトン体の生成率の抑制という課題を解決できる構成について、さらに、水分含量を1.5質量%以上とす る構成を加えることで、5-ケト体の生成の抑制に関する追加的な効果が- 96 -奏されることを示すものにすぎないものといえる。 エ原告は、本件各発明の課題の解決の意義について、本件明細書は、本件相関関係に着目し、本件混合物等 の抑制に関する追加的な効果が- 96 -奏されることを示すものにすぎないものといえる。 エ原告は、本件各発明の課題の解決の意義について、本件明細書は、本件相関関係に着目し、本件混合物等について水分含量を調整しなかった場合に比べて、水分含量を低く調整した場合の方がラクトン体の生成が低くなることを実証しており、他方、本件明細書には、ラクトン体の生成が「抑 制された」か否かについて、ラクトン体の生成量や生成率といった定量的な基準やこれに基づく判断について何らの記載もないことからすれば、ラクトン体の生成が抑制されたとは、本件混合物等について、水分含量を調整しなかった場合に比べて、ラクトン体の生成が低くなることをもって、「ラクトン体生成の抑制」がされたという解釈(相対的抑制論)が合理的 であり、課題の解決とは、本件混合物等について、水分含量を調整しない場合に比べて、ラクトン体の生成が低くなることを意味すると主張する。 しかし、本件明細書には、「ラクトン体生成の抑制」の意味について、原告が主張する趣旨の記載はない。また、本件明細書の試験例2は、本件混合物等について水分含量を調整した場合のラクトン体の生成率とこれを 調整しなかった場合のラクトン体の生成率について比較したものではなく、水分含量(質量%)「3.3」の場合のラクトン体生成率(%)「0.35」(40℃75%RH2か月後)という具体的な数値と比較した上で、水分含量(質量%)「2.9」の場合について、ラクトン体の生成が抑制されると記載している。これに加えて、本件各発明は医薬品を提供する発明で あり、ラクトン体を含む類縁物質の生成が一定範囲内に抑制された医薬品を提供するものであることを前提とするものであることに照らせば、本件各発明は、ラクトン体の生成率に着目 薬品を提供する発明で あり、ラクトン体を含む類縁物質の生成が一定範囲内に抑制された医薬品を提供するものであることを前提とするものであることに照らせば、本件各発明は、ラクトン体の生成率に着目して、本件各発明の固形製剤の水分含量を「2.9質量%以下」という一定値以下にすることによりラクトン体の生成率(40℃75%RH2か月後)が0.23%と0.35%の間 のいずれかの値以下に抑制されたことをもって課題を解決したとするもの- 97 -と解するのが相当であり、原告の上記主張を採用することはできない。 課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かについてア本件各発明の課題は、ラクトン体の生成率を抑制した医薬品を提供することであり、その課題の解決とは、本件各発明が医薬品を提供する発明であることを前提として、水分含量を「2.9質量%以下」という一定値以 下にすることによりラクトン体の生成率(40℃75%RH2か月後)が0.23%と0.35%の間のいずれかの値以下に抑制されたことをいうと解されるから、以下、本件各発明が、発明の詳細な説明の記載から、上記のような課題の解決をすることができると認識できる範囲のものであるか否かについて検討する。 本件明細書の発明の詳細な説明の記載には、「本発明者は上記課題を解決するにあたり、まずピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上との混合時におけるラクトン体生成の原因・メカニズムにつき鋭意検討したところ、驚くべきことに、混合物中の水分含量とラクト ン体量の間に相関があり、水分含量が増加するに従い脱水縮合物であるラクトン体の生成量が増加することが明らかとなった。・・・。これらのことから、上 、驚くべきことに、混合物中の水分含量とラクト ン体量の間に相関があり、水分含量が増加するに従い脱水縮合物であるラクトン体の生成量が増加することが明らかとなった。・・・。これらのことから、上記した崩壊剤との共存によるラクトン体生成の原因・メカニズムは、現在販売中の「リバロ錠」には配合されていない上記特定の崩壊剤の有する高い吸湿性に起因することが示唆された。そして、固 形製剤の水分含量を一定値以下とすることによって、ピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体生成が抑制できることを見出し、本発明を完成した。」(【0010】)と記載されているが、本件明細書において、上記記載以外に、本件各発明の固形製剤の水分含量を2.9質量%以下にすることによって、ラクトン体の生成率が抑制される具体的な作用機序 についての記載はない。 - 98 -そして、本件明細書には、試験例2として、表2の処方例1に基づき製造された口腔内崩壊型錠剤(錠剤120mg中にピタバスタチンカルシウム1.0mg、結晶セルロース45mgなどを配合したもの。)について、「表3に示す試験結果から、錠剤の水分含量が2.9質量%以下である場合にラクトン体の生成が顕著に抑制されることが明らかとな った。特に、錠剤の水分含量が2.1質量%以下である場合、40℃、75%相対湿度の条件下で2ヶ月保存後においてもラクトン体の生成率は低く抑えられていた。・・・。以上の試験結果から、ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上を含有し、かつ、水分含量が 2.9質量%以下である固形製剤においてはラクトン体生成が抑制されることが明らかとなった。また、当該固形製剤が気密包装体に収容されてなる医薬品は水 選ばれる1種以上を含有し、かつ、水分含量が 2.9質量%以下である固形製剤においてはラクトン体生成が抑制されることが明らかとなった。また、当該固形製剤が気密包装体に収容されてなる医薬品は水分含量が安定的に維持される結果長期に渡ってラクトン体生成が抑制されることも明らかとなった。」(【0067】)と記載されている。この記載からすれば、処方例1に基づき製造された口腔内崩 壊型錠剤については、固形製剤の水分含量を2.9質量%以下にすることによって、ラクトン体の生成を相当量に抑制することができ、本件各発明の課題が解決されたことが記載されているといえる。 他方、本件明細書には、本件各発明の実施例としては、上記の実施例の記載があるだけであって、表2の処方例1に基づき製造された口腔内 崩壊型錠剤以外の構成を有する本件各発明の医薬品について、本件各発明の固形製剤の水分含量を2.9質量%以下にした場合のラクトン体の生成率を示した実施例の記載はない。 本件各発明は、(A)ピタバスタチン又はその塩、(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ば れる1種以上からなる固形製剤であり、結晶セルロースを含まない構成- 99 -を包含する固形製剤である。 本件明細書の表2の処方例1の成分及び分量として、結晶セルロースが処方例1の口腔内崩壊型錠剤120mg中に45.0mg含まれているところ、結晶セルロースについては、一般的に主薬の化学的変化を抑制する安定化剤としての効果があることは周知技術といえること(前記 2⑵ないし⑻)、乙1公報にはスタチン系製剤(HMG-CoAレダクターゼ阻害剤)の安定性に結晶セルロースが寄与することが開示されていること(前記2⑴)、処方例1の口腔内崩壊型錠剤に含まれ 前記 2⑵ないし⑻)、乙1公報にはスタチン系製剤(HMG-CoAレダクターゼ阻害剤)の安定性に結晶セルロースが寄与することが開示されていること(前記2⑴)、処方例1の口腔内崩壊型錠剤に含まれている結晶セルロースの分量は上記安定性を発揮するには十分なものといえることに照らせば、処方例1に基づき製造された口腔内崩壊型錠剤に含有す る結晶セルロースがピタバスタチンカルシムの安定性に寄与した可能性があるというべきである。 これに加えて、本件明細書には、本件各発明の固形製剤の水分含量を2.9質量%以下にすることによって、ラクトン体の生成が抑制される具体的な作用機序についての記載はない(上記)。そして、表2の処 方例1に基づき製造された口腔内崩壊型錠剤以外の構成について、固形製剤の水分含量を2.9質量%以下にすることによって、ラクトン体の生成率がどのようになるか示した実施例の記載もなく、また、処方例1に基づき製造された口腔内崩壊型錠剤の結晶セルロースを除いた構成によってラクトン体の生成率を抑制した医薬品を提供することができると の技術常識もない。 これらを併せて考えれば、本件明細書の記載から、当業者が、本件各発明の固形製剤の水分含量を2.9質量%以下にすることにより、結晶セルロースを除いた構成によってラクトン体の生成率(40℃75%RH2か月後)が0.23%と0.35%の間のいずれかの値以下に抑制 された医薬品を提供することができると認識することはできず、本件各- 100 -発明の課題を解決することができると認識することはできないというべきである。 原告の主張についてア原告は、本件明細書の試験例1の試験結果の記載(【表1】及び【0063】)から、ピタバスタチンカルシウムと本件崩壊剤のみを混合した することはできないというべきである。 原告の主張についてア原告は、本件明細書の試験例1の試験結果の記載(【表1】及び【0063】)から、ピタバスタチンカルシウムと本件崩壊剤のみを混合した混 合物について水分含量とラクトン体の間に本件相関関係があるといえることを前提に、試験例2の試験結果の記載(【表3】及び【0067】)と併せて、本件混合物等一般について本件相関関係が認められ、水分含量を2. 9質量%以下に調整した場合の方が、ラクトン体の生成が低くなることを当業者は認識することができるなどと主張する。 原告の上記主張は、本件各発明の解決すべき課題について、本件各発明の固形製剤について、水分含量を調整しない場合に比べて、ラクトン体の生成が低くなることを意味するものであること(原告が主張する相対的抑制論)を前提とするものであるが、この原告の主張を採用することができないことは前記⑵のとおりである。 また、本件明細書の試験例1は、「高い吸湿性を有する崩壊剤との共存によるラクトン体生成の確認」と題して、ピタバスタチンカルシウムとクロスポビドン(混合物1)、ピタバスタチンカルシウムとカルメロースカルシウム(混合物2)、ピタバスタチンカルシウムと結晶セルロース(混合物3)、ピタバスタチンカルシウムとカルメロースナトリウム(混合物 4)の各混合物について、70℃、3日保存後のラクトン体の生成率とその水分含量を測定したものである(【0058】ないし【0062】)。ここで、上記4つの混合物の崩壊剤の種類はそれぞれ異なるところ、混合物2のカルメロースカルシウムと混合物4のカルメロースナトリウムは類似した構造であるといえるものの、混合物1のクロスポビドンと混合物3の 結晶セルロースは異なる構造であること、上 ところ、混合物2のカルメロースカルシウムと混合物4のカルメロースナトリウムは類似した構造であるといえるものの、混合物1のクロスポビドンと混合物3の 結晶セルロースは異なる構造であること、上記の各崩壊剤の種類ごとに、- 101 -吸湿性又はラクトン体の生成率に差異がないことを示す技術常識も認められないことに照らすと、ピタバスタチンカルシウムに加えて4つの異なる本件崩壊剤をそれぞれ混合した混合物についての試験結果である本件明細書の試験例1の試験結果を「高い吸湿性を有する崩壊剤」についてのものと一般化し、当該混合物中の水分含量とラクトン体の生成率との間に相関 関係があるといえるかは不明である。 そして、本件各発明の課題は、ラクトン体の生成率を抑制した医薬品を提供することであり、その課題の解決とは、水分含量を「2.9質量%以下」という一定値以下にすることによりラクトン体の生成率(40℃75%RH2か月後)が0.23%と0.35%の間のいずれかの値以下に 抑制されたことであるところ、本件明細書の試験例1及び2の試験結果についての上記記載からは、本件各発明の固形製剤の水分含量を2.9質量%以下にすることによって、上記課題を解決することができると認識することができないのは前記⑶のとおりである。 したがって、原告の上記主張を採用することはできない。 イ原告は、①乙1公報はアトルバスタチンカルシウムを主薬とする医薬剤形に係る発明であり、ピタバスタチン又はその塩を主薬とする医薬剤形に係る発明ではなく、また、乙1公報には結晶セルロースが安定化に寄与したかを示す実証実験がなく、実際に安定性に寄与しているか不明であること、②結晶セルロースがスタチンを不安定化するものであることを示す文 献(甲39、41)があり、 晶セルロースが安定化に寄与したかを示す実証実験がなく、実際に安定性に寄与しているか不明であること、②結晶セルロースがスタチンを不安定化するものであることを示す文 献(甲39、41)があり、また、本件明細書の表1に結晶セルロースがピタバスタチンの安定性を損なう成分であると理解できる記載があることから、結晶セルロースがピタバスタチンの安定化作用を有するとの知見は、サポート要件違反の根拠たり得ないなどと主張する。 上記①について a 乙1公報は、アトルバスタチンカルシウムを主薬とすることが記載- 102 -されているが、「本発明は、製薬業界の分野に関し、特に、環境への影響に敏感な活性物質を含む安定な医薬剤形に関する。好ましくは、活性物質は、環境pH、酸化および/または環境湿度に敏感であり、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤の群から選択される。最も好ましくは、活性物質は、アトルバスタチンである。」(訳文1頁)と記載さ れており、上記HMG-CoAレダクターゼ阻害剤として、「アトルバスタチン、プラバスタチン、メバスタチン、セリバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチンおよびイタバスタチン」が記載されていて(訳文20頁)、アトルバスタチンと並列してイタバスタチン(ピタバスタチンに相当)が記載されている。そして、HMG-CoAレ ダクターゼ阻害剤(スタチン類)の分解生成物の生成は、スタチン類に共通する共通骨格に由来するところ、アトルバスタチンとピタバスタチンについても当該共通骨格を有するものであり、これらの化合物は、分解生成物としてラクトン体を生成し、当該分解生成物の生成は当該共通骨格部分における化学変化によるものであることは本件出願 日当時の技術常識であること(乙2~8、12、13、18~20、39)に 生成物としてラクトン体を生成し、当該分解生成物の生成は当該共通骨格部分における化学変化によるものであることは本件出願 日当時の技術常識であること(乙2~8、12、13、18~20、39)にも照らせば、乙1公報の記載は、ピタバスタチン又はその塩にも当てはまるものといえる。 b また、乙1公報には実証実験についての記載がないという点については、結晶セルロースについて、一般的に主薬の化学的変化を抑制す る安定化剤としての効果があることは周知技術といえること(前記2⑵ないし⑻)からすれば、乙1公報の内容は、これに沿うものといえ、実証実験についての記載がないことをもって前記認定を覆すものとはいえない。 c したがって、原告の上記①の主張は採用できない。 上記②について- 103 -a 特開2002−20282号公報(甲39)には、「プラバスタチン1gに製剤化助剤10gを加え乳鉢で混合後、その約1gをバイアル瓶に入れ40℃湿度75%の条件下で1週間開放保存した」こと及び「表1よりプラバスタチンは多くの製剤化助剤と相互作用を起こすことが明らかである」と記載され(【0009】)、表1において、「ア ビセルPH101」(結晶セルロースの商品名)の「HPLC評価判定」が「×」(分解物が3%以上)と記載されている。しかし、上記表1の試験は、プラバスタチンと製剤化助剤の相互作用を明らかにしようとしたものであり(【0009】)、固形製剤の安定性を評価したものとはいえず、また、水分含量も不明であり、これをもって結晶セ ルロースがピタバスタチンを不安定化させるということはできない。 b 特開2004―43509号公報(甲41。以下「甲41公報」という。)には、実施例1として、表1の処方(「プラバスタチンNa5mg ースがピタバスタチンを不安定化させるということはできない。 b 特開2004―43509号公報(甲41。以下「甲41公報」という。)には、実施例1として、表1の処方(「プラバスタチンNa5mg」、「マンニトール 85mg」、「結晶セルロース -」、「ステアリン酸Mg 1mg」 合計91mg)により直接打錠法によって 製造した処方例1の錠剤と表2の処方(「プラバスタチンNa 5mg」、「マンニトール 75mg」、「微結晶セルロース 10mg」、「ステアリン酸Mg 1mg」 合計91mg)により湿式造粒法でつくった比較錠剤について、60℃において7日間および14日間貯蔵後のラクトン体を定量し、主薬のラクトン体への変化率を比較した ところ、「表2に示すように湿式造粒法でつくった錠剤よりも直接打錠法でつくった錠剤の方が同じマンニトールをベースにしても貯蔵安定性にすぐれていた。」と記載されている(【0010】ないし【0014】)。これらによれば、甲41公報には、結晶セルロースを含まない錠剤である処方例1よりも微結晶セルロースを含む錠剤である比較 錠剤の方が、ラクトン体変化率が大きいことが記載されているといえ- 104 -る。しかし、甲41公報は、「プラバスタチンナトリウム、マンニトールおよび滑沢剤を含む混合物を直接打錠することにより、得られたプラバスタチンナトリウム錠剤の崩壊時間および溶出時間を遅延させず、かつ貯蔵安定化させる方法が提供される。」(【0004】)と記載されており、甲41公報に係る発明は、プラバスタチンナトリウム、 マンニトール及び滑沢剤を含む混合物を直接打錠することによって、プラバスタチンナトリウムを有効成分とする錠剤を貯蔵安定化させようとしたものといえる。そうすると、直接打錠法により製造された ム、 マンニトール及び滑沢剤を含む混合物を直接打錠することによって、プラバスタチンナトリウムを有効成分とする錠剤を貯蔵安定化させようとしたものといえる。そうすると、直接打錠法により製造された処方例1の錠剤と湿式造粒法で製造された比較錠剤の安定性の違いが結晶セルロースの有無によって生じたものとはいえず、これをもって、 結晶セルロースがピタバスタチンカルシムを不安定化させるものとはいえない。 c 本件明細書【0062】には、表1として、ピタバスタチンカルシウムと結晶セルロースとの混合物3について、「ラクトン体の生成率(%)」「70℃3日後」「0.33」と記載され、他方、「※ピタバス タチンカルシウムのみ 70℃3日保存後のラクトン体生成率は0. 03%」と記載されている。しかしながら、上記の混合物3の水分含量は「10.1」質量%という高い数値であるのに対して、「ピタバスタチンカルシウム」のみの水分含量は不明であることからすれば、上記の記載をもって、結晶セルロースがピタバスタチンカルシウムを 不安定化させるものとはいえない。 d したがって、原告の上記②の主張は採用できない。 ⑸ 以上によれば、本件明細書の記載から、当業者は、本件各発明の固形製剤の水分含量を2.9質量%以下にすれば、結晶セルロースを除いた構成によって、ラクトン体の生成率(40℃75%RH2か月後)が0.23%と0. 35%の間のいずれかの値以下に抑制された医薬品を提供することができる- 105 -と認識することはできない。したがって、本件各発明は、サポート要件(特許法36条6項1号)に違反する。 4 争点⑵エ、⑶エ、⑷イ及び⑸イ(本件各訂正発明のサポート要件違反)原告は、本件各発明について、本件訂正による訂正の再抗弁を主張し、 は、サポート要件(特許法36条6項1号)に違反する。 4 争点⑵エ、⑶エ、⑷イ及び⑸イ(本件各訂正発明のサポート要件違反)原告は、本件各発明について、本件訂正による訂正の再抗弁を主張し、本件訂正が訂正要件を満たしており、本件各発明の無効理由が解消されたと主張す る。しかしながら、本件各訂正発明は、いずれも結晶セルロースを任意成分とするものであって、結晶セルロースを含まない構成を包含する発明であることからすれば、本件各訂正発明についても、前記3と同様の理由により、本件明細書の記載から、当業者が、本件各訂正発明の固形製剤の水分含量を2.9質量%以下にすることにより、結晶セルロースを除いた構成によって、ラクトン 体の生成率(40℃75%RH2か月後)が0.23%と0.35%の間のいずれかの値以下に抑制された医薬品を提供することができると認識することはできないというべきである。 したがって、その余の点について判断するまでもなく、本件訂正によって本件各発明のサポート要件違反の無効理由は解消しないというべきである。 以上によれば、本件各発明に係る特許は、特許法36条6項1号に違反し、特許無効審判により無効にされるべきものといえる(同法123条1項4号)から、原告は、同法104条の3第1項により、本件各発明に係る特許権を行使することはできない。 第5 結論 よって、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明- 106 - 裁判官棚井 啓 裁判官仲田憲史- 107 -別紙物件目録 1 ピタバスタチンCa・OD錠1mg「トーワ」 - 106 - 裁判官棚井 啓 裁判官仲田憲史- 107 -別紙物件目録 1 ピタバスタチンCa・OD錠1mg「トーワ」 2 ピタバスタチンCa・OD錠2mg「トーワ」 3 ピタバスタチンCa・OD錠4mg「トーワ」 - 108 -別表 別表1(平成27 年4 月1 日~平成28 年3 月31 日) 被告各製品の譲渡数量【錠】原告各製品の単位数量当たりの利益の額【円】損害額【円】(102 条1 項)被告製品1●(省略)●●(省略)●●(省略)●被告製品2●(省略)●●(省略)●●(省略)●被告製品3●(省略)●●(省略)●●(省略)● 合計3,171,240,000 別表2(平成25 年12 月13 日~平成27 年3 月31 日) 被告各製品の売上高【円】本件特許発明の実施料率不当利得額【円】被告製品1700,000,00015%105,000,000被告製品21,300,000,00015%195,000,000被告製品360,000,00015%9,000,000 合計309,000,000 別表3(平成28 年4 月1 日~平成29 年3 月31 日) 被告各製品の譲渡数量【錠】原告各製品の単位数量当たりの利益の額【円】損害額【円】(102 条1 項)被告製品1●(省略)●●(省略)●●(省略)●被告製品2●(省略)●●(省略)●●(省略)●被告製品3●(省略)●●(省略)●●(省略)● )被告製品1●(省略)●●(省略)●●(省略)●被告製品2●(省略)●●(省略)●●(省略)●被告製品3●(省略)●●(省略)●●(省略)● 合計4,111,630,000- 109 - 別表4(平成29 年4 月1 日~平成30 年3 月31 日) 被告各製品の譲渡数量【錠】原告各製品の単位数量当たりの利益の額【円】損害額【円】(102 条1 項)被告製品1●(省略)●●(省略)●●(省略)●被告製品2●(省略)●●(省略)●●(省略)●被告製品3●(省略)●●(省略)●●(省略)● 合計4,401,794,000 別表5(平成30 年4 月1 日~平成31 年3 月31 日) 被告各製品の譲渡数量【錠】原告各製品の単位数量当たりの利益の額【円】損害額【円】(102 条1 項)被告製品1●(省略)●●(省略)●●(省略)●被告製品2●(省略)●●(省略)●●(省略)●被告製品3●(省略)●●(省略)●●(省略)● 合計5,107,400,000
▼ クリックして全文を表示