平成14(ワ)89 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年2月23日 広島地方裁判所 福山支部
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判決文本文21,707 文字)

主文 1 被告は,原告Aに対し,2998万4001円及びこれに対する平成12年12月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を,原告Bに対し,2916万4001円及びこれに対する平成12年12月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告らの負担とし,その余は被告の負担とする。 4 本判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 被告は,原告Aに対し,金5666万5180円及びこれに対する平成12年12月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を,原告Bに対し,5546万5180円及びこれに対する平成12年12月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は,被告の負担とする。 3 仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は,被告が管理する水路に転落し,頭部外傷により死亡した亡Cの相続人である原告らが,被告に対し,上記転落事故は被告の設置管理にかかる歩道,水路等に瑕疵があったために発生したものであるとして,国家賠償法2条1項に基づき,損害賠償(前記死亡の日である平成12年12月28日以降支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を含む。)を求める事案である。 2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者ア原告Aは,C(昭和41年7月21日生)の妻であり,原告Bは,両名間の子である(Cの出生日につき甲1,その余は争いがない。)。 イ被告は,市道北吉津曙線(以下「本件市道」という。)の歩道(以下「本件歩道」という。)及びこれに沿う水路(以下「本件水路」という。)を設置,管理する地方公共 につき甲1,その余は争いがない。)。 イ被告は,市道北吉津曙線(以下「本件市道」という。)の歩道(以下「本件歩道」という。)及びこれに沿う水路(以下「本件水路」という。)を設置,管理する地方公共団体であり,これらはいずれも営造物である(争いがない。)。 (2) 本件事故の発生Cは,平成12年12月28日未明,本件歩道を自転車で走行中,広島県福山市a町b丁目c番d号D株式会社福山営業所(以下「D株式会社」という。)先の本件水路に転落し,遅くともその約5時間後には死亡した(Cが同日未明にD株式会社先の本件水路において死亡したことは争いがなく,その余は甲2)。 (3) 本件事故現場付近の状況本件事故現場付近の状況は,ほぼ別紙現場見取図1記載のとおりであるが,斜線部分が本件歩道であり,この南西側に沿って本件水路がある。本件歩道及び本件水路の状況は,次のとおりである(甲18,乙1,4,6,弁論の全趣旨)。 ア本件歩道の状況本件歩道は,バス停留所を設置するために,その一部(別紙現場見取図1のヌ,ル,オ,ワ,ヌの各点を順次結んだ直線で囲まれる範囲内の部分。以下,同見取図上の点については,単に「ヌ点」などという。)が削られ,その後に設置されたと思われる電柱の工事に伴い,本件事故当時,次のような状態となっていた。 本件歩道及び後記のとおり本件水路上に架けられたコンクリート製溝蓋部分を合わせた幅員は,リ点付近からヌ点付近までは約3.5メートル,ヌ点付近からル点付近にかけて次第に狭くなり,ル点付近からオ点付近にかけては約15メートルにわたって約2.1メートル(そのうち本来の歩道部分は約0.9メートル),オ点付近からワ点付近にかけて次第に広くなり,ワ点付近から再び約3.6メートルであった。 上記電柱は,本件転落現場から約16メー て約2.1メートル(そのうち本来の歩道部分は約0.9メートル),オ点付近からワ点付近にかけて次第に広くなり,ワ点付近から再び約3.6メートルであった。 上記電柱は,本件転落現場から約16メートル北西寄り(e町方面。別紙現場見取図1ル,オ間のA点付近。)にあり,その断面の直径は約40センチメートルで,本件水路上に架けられたコンクリート製溝蓋部分に接して設置されており,当該箇所におけるコンクリート製溝蓋部分の幅員は約1.2メートル,本来の歩道部分の幅員は電柱の車道側約0.5メートルである。 また,本件歩道は,D株式会社敷地前付近では,同敷地端から北東側車道に向かって低く傾斜し,車道との間に縁石や段差のない形状となっている。 イ本件水路の状況上記アのとおり,バス停留所の設置により削られて幅員が狭くなった本件歩道を補うため,本件水路上のイ,ロ,ト,チ,イの各点を順次結んだ直線で囲まれる範囲内の部分に,そのころ被告によって,コンクリート製の溝蓋(以下「バス停溝蓋」という。)が架けられている。また,本件水路上のロ,ハ,ヘ,ト,ロの各点を順次結んだ直線で囲まれる範囲内の部分には,昭和50年7月16日に被告から占用許可を受けたEによって,倉庫への進入路とするために,コンクリート製の溝蓋(以下「本件溝蓋」という。)が架けられている。そして,本件水路上のハ,ニ,ホ,ヘ,ハの各点を順次結んだ直線で囲まれる範囲内の部分は,無蓋開渠となっている。 本件水路は,コンクリート製の側溝であり,その深さはコンクリート製の本件溝蓋の厚みを含めて1.0ないし1.1メートルであり,幅員は開口部が約1.3メートル,底部が約0.5メートルであり,本件事故当時の水深は約5センチメートルであった。 第3 争点及び争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件歩道,水路等の ートルであり,幅員は開口部が約1.3メートル,底部が約0.5メートルであり,本件事故当時の水深は約5センチメートルであった。 第3 争点及び争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件歩道,水路等の設置管理の瑕疵の有無)(原告らの主張)(1) 本件溝蓋部分の管理者本件水路上のバス停溝蓋部分は,本件歩道に含まれるか,または一体として歩行者等が歩道として使用可能な形状であり,本件溝蓋部分も,本件歩道と一体として歩行者等が歩道として通行可能な形状となっている。本件溝蓋は,Eの占用許可申請により設置されたものであるが,被告は許可に際し,交通安全のための諸条件を付し,あるいは不許可にすることもできた以上,国家賠償法上の設置行為は被告によりなされたといえる。また,水路の管理業務には占用の許可・不許可を含み,その後の延長許可等の権限があることからすれば,本件溝蓋部分に対しても,被告の管理権限及び管理義務が残存している。なお,被告は,昭和55年に占用許可期限が切れた後も,何らの措置をとることもなくそのまま放置していたのであるから,Eの設置,管理の瑕疵であると主張することは信義則に反する。 (2) 本件歩道,水路等の状況及び瑕疵ア本件歩道,水路等は,前記経緯から,幅員等が前記形状になっているため,歩行者等が,バス停溝蓋部分(幅員約1.25メートル)を進行することが当然の構造となっていたばかりか,バス停溝蓋部分に接した位置には電柱が設置され,かつ電柱よりル点寄りには電柱に隣接してバス停留所の標識が設置されていることから,本件歩道を進行する者が,ル点付近からオ点付近に進行するまでに,本件水路上のバス停溝蓋部分を通行せざるを得ないことになり,そのまま直進すれば本件溝蓋が途切れているヘ点付近において,開渠になった本件水路に転落してしまうという構造となっ オ点付近に進行するまでに,本件水路上のバス停溝蓋部分を通行せざるを得ないことになり,そのまま直進すれば本件溝蓋が途切れているヘ点付近において,開渠になった本件水路に転落してしまうという構造となっていた。 イ本件歩道は,D株式会社敷地端から車道まで低く傾斜し,縁石はなく,車道との段差もないため,夜間には,傾斜が歩道から車道に降りるためのものと誤信させる状況を作出している。 ウ被告によって設置されたヘ点からホ点の間にある白いガードパイプの存在が,D株式会社によって設置されたハ点からニ点の間にある緑色フェンスと相まって,明かりの消えた深夜には,その間にある本件水路部分を通行可能な歩道の延長であると錯覚しかねない構造となっていた。 エ被告は,水路上のバス停溝蓋部分を歩行者等の通行の用に供するにあたり,水路への転落防止及び歩道部分の終わりを示す意味もあり,本件溝蓋北側のロ,トの各点付近に逆U字型の歩行者止めを設置していたが,本件事故時までには上記歩行者止めは姿を消しており,歩行者等が上記歩行者止めを超えて進行することが可能な状況となっていた。 オこのような状況にもかかわらず,本件事故現場付近には,現場付近の危険性を告知する標識等の警告措置や転落防止措置がないばかりか,夜間,現場付近の危険な状況を明らかにするための街灯も設置されておらず,しかも,本件溝蓋の先に続いている本件水路は,約1メートルの深さのコンクリートがむきだしの水路であり,転落した場合には,歩行者等において重大な傷害や死亡という結果が発生する危険性の高い構造であった。 仮に被告が主張する水路管理上の「開渠の原則」が認められるとしても,同原則は,転落事故を防止するための脱着可能な鉄板等の溝蓋を水路上に設置することまでも排除するとは到底考えられず,転落防止の防護措置を に被告が主張する水路管理上の「開渠の原則」が認められるとしても,同原則は,転落事故を防止するための脱着可能な鉄板等の溝蓋を水路上に設置することまでも排除するとは到底考えられず,転落防止の防護措置を講じたとしても,水路の清掃や雨水の排水には何ら障害にならない。また,被告は,パチンコ店の明かりで識別可能であるなどと主張するが,本件事故発生当時の時間帯は既にパチンコ店の明かりは消えている時間であるし,対向車両や信号の明かりは,自転車運転者の視界を失わせることがあっても,視認性を高めることはない。さらに,コンビニエンスストアーは,事故現場から110メートル以上離れた場所にあり,その明かりが現場付近の水路部分を照らしていたなどという主張は失当である。 カ以上に加えて,本件市道は,道路構造令第3条の第4種道路に該当するところ,同令第10条の2により,自転車歩行者道としては最低限1.5メートルの幅員が必要とされ,バスの停留所の看板,電柱等の路上施設を設ける場合にはこれに0.5メートルを加えなければならないが,バス停留所で削られた部分の本件歩道の幅員は,わずか0.97メートルであり,同令に違反している。 第4種道路の車線の幅員は,3ないし3.25メートルであるところ(同令第5条),本件市道の車線の幅員は約6メートルであり,バス停留所の設置にあたっては車道を削って歩道を広くすべきところ,被告は歩道を削ったものであるから,バス停留所設置に伴うやむを得ない結果であるとはいえず,明らかな道路の設置,管理の瑕疵である。 キ結論このような本件歩道,水路及び本件溝蓋の状況に照らせば,被告は,本件歩道を通行する者が本件水路に転落することを避けるために,ヘ点付近に街灯を設置するか転落防止用の防護柵あるいは標識等の安全設備を設置するなどの措置を講ずべきであっ 溝蓋の状況に照らせば,被告は,本件歩道を通行する者が本件水路に転落することを避けるために,ヘ点付近に街灯を設置するか転落防止用の防護柵あるいは標識等の安全設備を設置するなどの措置を講ずべきであった。 被告は,バス停留所を設置したときには,本件歩道の危険性を認識し,それを回避するために逆U字の歩行者止めを設置していたものと思われる。しかしながら,上記歩行者止めがいつの間にか失われたにもかかわらず,被告は,その後何ら危険回避の措置をとらずに放置し,本件歩道,水路等の設置管理者としての義務を怠っている。また,被告は,本件事故発生後,F警察署警察官から本件歩道ないしは本件水路の危険性を指摘され,ハ,ヘの各点付近及びニ,ホの各点付近の水路上のコンクリート部分に蛍光色を施したプラスチックポールの杭を3本設置している。このような被告の本件事故前後の措置からしても,本件歩道,水路等の設置管理の瑕疵があることは疑いようがなく,被告自身,これを十分認識していたというべきである。 前記の事情に照らせば,本件歩道,水路等には,営造物として瑕疵があったと認められ,被告にはその設置管理責任があるというべきである。 なお,Cは,本件事故当時飲酒していたが,同程度の飲酒は通常あり得ることであるし,多少の飲酒の上で自転車を運転することは世上よく見られることであり,走行方法も直進していただけであるから,被告が主張するような特異な事情とは到底いえない。 (被告の主張)(1) 本件溝蓋部分の管理者バス停溝蓋部分は,バスの乗降客の待機場所及び公道から西側私有地への出入口として利用されているもので,歩道ではない。また,本件溝蓋は,昭和50年7月16日,Eが被告から占用許可を受けて設置,管理しているもので,公道よりD株式会社倉庫事務所への自動車等の出入口として使用さ として利用されているもので,歩道ではない。また,本件溝蓋は,昭和50年7月16日,Eが被告から占用許可を受けて設置,管理しているもので,公道よりD株式会社倉庫事務所への自動車等の出入口として使用されており,被告の設置,管理にかかる営造物には該当しない。 本件溝蓋のごとき占用許可に係る溝蓋ないし橋は,福山市内に極めて多数存在し,これを被告において全て管理することは困難であって,そのため,当該設備についての管理は全て占有者ないしその承継人がこれを行うことが占用許可の条件となっている。私設の工作物につき転落の危険等が存する場合には,設置者である当該私人にその安全策を講ずべき義務があり,かかる私人の設置管理している本件溝蓋及びこれに関連する問題につき,被告がその設置管理の瑕疵の責を負うべき理由はない。 (2) 本件歩道,水路等の状況及び瑕疵の主張についてア本件バス停溝蓋は,バス停留所が設けられた際,乗降客の安全及び自動車交通の混雑の緩和のために歩道の一部が削減されたことの対応策として,バス乗客の待機場及び付近住民の公道への出入口等の確保のために設置されたものであり,その設置自体に何らの問題はない。 たしかに,本件歩道は電柱等の設置により一部狭くなっている箇所も存するが,そこから転落地点までは15メートル以上の距離があり,見通しもよく,歩行者はもちろん,自転車運転者も,本件水路を認識し,これに転落しないような行動を取ることが十分可能である。 イ本件歩道は,東側車道に向かって傾斜した形状になっており,バス停溝蓋部分を通行して南進した場合には,同所付近の電柱部分通過後は,自然に東側の歩道部分を進行することとなり,その結果,転落地点の方向には進行しにくい構造となっている。 ウ原告ら主張のフェンスとガードパイプとの間の水路部分は,通 は,同所付近の電柱部分通過後は,自然に東側の歩道部分を進行することとなり,その結果,転落地点の方向には進行しにくい構造となっている。 ウ原告ら主張のフェンスとガードパイプとの間の水路部分は,通行可能な歩道の延長と錯覚するような構造,状況にない。 エ被告は,本件溝蓋北側端付近に逆U字型状の歩行者止めが設置されていたとの事実は確認していない。かかる形状の歩行者止めが設置されていた場合には,歩行者等の通行の障害になるばかりか,かえって事故発生の原因にもなりかねない。仮に歩行者止めがあって,その姿を消したという経緯があったとすれば,近隣住民が歩行者止めが通行の障害となる危険性と本件水路への転落の危険性と対比して,本件水路への危険性の方がないと判断したからといえる。 オ本件市道は,自動車の交通量も相当量存する幹線道路であり,本件事故現場付近は街灯はないものの,すぐ近隣にパチンコ店,コンビニエンスストアーなどの大型店舗が点在し,信号機,通行車両のライトにより,深夜に至ってもかなり明るい状況にあり,深夜でも歩道か水路かは識別できる。また,街灯は,予算上,申請があれば各町内会の費用負担で設置しているが,本件事故現場について申請がなされたことはない。また,本件溝蓋は,被告の設置管理に係るものではないから,被告が同所に防護柵を設置することは法律上の根拠がなく,また,予算の範囲内において必要不可欠な箇所から随時設置しているところ,本件水路はこれを設置する状況になかったもので,近隣住民から設置を求める要望も出されていない。 本件水路は,前記のとおり,底部の幅員が狭く,仮に自転車等が転落しても途中で引っ掛かって止まり,底部まで直下することはなく,転落しても死亡等の重大事故に至る可能性はなく,危険性の高い構造とはいえない。本件水路については, ,底部の幅員が狭く,仮に自転車等が転落しても途中で引っ掛かって止まり,底部まで直下することはなく,転落しても死亡等の重大事故に至る可能性はなく,危険性の高い構造とはいえない。本件水路については,約40年前に水路が設置されて以来,事故の報告はなく,また市民からの対応申し入れもない。なお,本件事故発生後,本件溝蓋の南端にポストコーンを設置しているが,本件事故発生により,警察等と協議の上,D株式会社の承諾を得て仮設のポストコーンを設置しているものであり,被告が本件水路,歩道等の瑕疵を認めた上で設置したものではない。 これらに対し,原告らは,バス停溝蓋部分をそのまま直進すれば,開渠の本件水路に転落してしまう構造になっているとして,本件水路全部に転落防止のため蓋等を設置しなければならないかのように主張するが,本件水路は,農業用水,雨水,生活排水等のための用水路であって,本来,水路は,雨水の流入,ゴミ等による流水の阻害防止等の管理上の理由に基づき,開渠が原則であり,水路上に溝蓋を設置するのは,公道より私有地への出入りの確保のため,限定的な範囲でこれを認めているものであるから,原告らの主張は,水路開渠の原則に反し,失当である。 よって,これらの措置を講ずべき必要性はない。 カ原告らは,本件市道が道路構造令に違反しているとして道路の設置,管理に瑕疵がある旨主張する。しかし,本件事故現場付近の本件市道は,車道の交通渋滞を緩和するためにバス停留所の停車帯にする目的で,当該歩道部分に幅員約1.5メートルの切り込みを設け,その代替措置として水路にバス停溝蓋を設置したものであり,その形状は,少なくとも道路法施行法10条1項,道路構造令38条1項の規定により適法であり,本件歩道の設置,管理に瑕疵はない。 また,本件市道の交通渋滞は極めて深刻 溝蓋を設置したものであり,その形状は,少なくとも道路法施行法10条1項,道路構造令38条1項の規定により適法であり,本件歩道の設置,管理に瑕疵はない。 また,本件市道の交通渋滞は極めて深刻で,バス停車帯を設置する際,片側一車線の車道側を削減することは極めて困難であり,原告らの主張は机上の空論にすぎず,その他の主張も失当である。 キ結論(ア) 以上のとおり,本件水路及び歩道は,通常人の一般的基準からして,危険性を有する営造物ではないことは明らかである。 仮に本件溝蓋の設置管理に瑕疵があったとしても,被告の設置管理に係るものではない。また,前記各事実関係によれば,本件営造物は相対的安全性を具備しており,法律上,予算等の制約その他の諸事情から,危険防止の措置の限界論として免責される事案に該当する。さらに,本件事故現場で転落事故が発生したのは本件が初めてで,かつ,近隣住民等からも本件水路及び歩道の危険性を指摘する申し出は全くなされていなかったものであり,また,本件事故現場は危険な形状を有していたものではないから,本件事故の発生につき事前に予測することは困難であり,被告には予見可能性がない。 よって,被告は,国家賠償法2条1項の責任を負担しない。 (イ) 本件事故は,Cが深夜,酩酊状態で,自転車をスムーズに進行させるのも相当困難な状況で自転車を運転した結果,惹起されたもので,事故現場が通勤経路であったことからしても,正常な状態で自転車を運転していれば本件事故は発生しなかったものと推認され,極めて特異な事故であるから,被告は,国家賠償法2条1項の責任を負担しない。 2 争点2(原告らの損害の有無及び損害額)(原告らの主張)(1) 逸失利益(Cの損害) 74,930,360円 告は,国家賠償法2条1項の責任を負担しない。 2 争点2(原告らの損害の有無及び損害額)(原告らの主張)(1) 逸失利益(Cの損害) 74,930,360円(原告らそれぞれ37,465,180円)Cは,死亡当時34歳で,平成12年には,558万円の年収を得ており,少なくとも67歳に達するまでの33年間は就労することが可能であったものであるから,その逸失利益は,新ホフマン係数19.1834,生活費控除割合を30%で計算すると,7493万0360円となる。 【計算式】5,580,000円(平成12年当時の年収)×0.7(生活費控除30%)×19.1834(就労可能年数33年としてこれに対応するホフマン係数)=74,930,360円そして,Cの相続人は,妻である原告Aと子である原告Bの2人であるから,原告らは各2分の1ずつ(各3746万5180円)相続した。 (2) 葬儀費用(原告Aが負担) 1,200,000円(3) 慰謝料(原告らの損害) 26,000,000円(原告らそれぞれ13,000,000円)原告A,原告Bに対して,各1300万円をもって慰謝するのが相当である。 (4) 弁護士費用(原告らの損害) 10,000,000円(原告らそれぞれ5,000,000円)原告らは,それぞれ訴訟代理人に本件訴訟の提起,遂行を委任し,その報酬として各500万円を支払う旨約した。 (5) 損害合計以上,(1)ないし(4)を合計すると,原告Aにつき5666万5180円,原告Bにつき5546万5180円は下らない。 (被告の主張)原告ら主張 500万円を支払う旨約した。 (5) 損害合計以上,(1)ないし(4)を合計すると,原告Aにつき5666万5180円,原告Bにつき5546万5180円は下らない。 (被告の主張)原告ら主張の各損害は争う。 特に,逸失利益の算定にあたっては,新ホフマン係数に基づく主張は失当であり,ライプニッツ係数に基づきその算出がなされるべきである。 また,生活費控除は,被扶養者が妻と長女の2人であるから,35ないし40%とみるべきである。 慰謝料についても,合計で2000ないし2200万円が相当である。 3 争点3(過失相殺の可否及び過失割合)(被告の主張)仮に,被告において,国家賠償法2条1項の責任が生ずるとしても,次の各事情に照らせば,本件事故の大半はCの責めに帰すべき事由によって発生したことは明確であるから,少なくとも本件損害につき90%を超える過失相殺がなされるべきである。 (1) Cは,本件事故前日には,勤務終了後,飲酒を伴う会合があり,しかもその帰宅は深夜になることを十分承知していたのであるから,自転車で通勤するのを中止するか,あるいは勤務後,勤務先に自転車を置き,タクシー等で会合に出席するか,もしくは,深夜,飲酒後帰宅する場合には,妻に自家用車での迎えを依頼するか,さらにはタクシーで帰宅する等の行動をとることは極めて容易であったにもかかわらず,これを怠り,勤務による疲れに加え,約6時間,深夜まで多量のビールなどを飲酒して酩酊して仲間と騒いだため,心身とも疲労困憊し,認識力,判断力がともに鈍麻し,通常の注意をもって自転車を運転することができない状態において,自転車を運転して出発し(自転車の損傷状況等からみて,極めて低速で本件水路に落下したものと推認できるが,このことは同人の酩酊状態を裏付ける。),さらに年末の深夜というこ ことができない状態において,自転車を運転して出発し(自転車の損傷状況等からみて,極めて低速で本件水路に落下したものと推認できるが,このことは同人の酩酊状態を裏付ける。),さらに年末の深夜ということで少しでも早く帰宅したいという思いから,周囲の注視を怠ったために,本件事故に遭ったものである。 (2) しかも,Cは,本件水路に転落した後も,本件水路の構造に照らせば,通常であれば自力で這い上がり,救助を求めるなど何らかの対応をし,本件のような重大な結果が生じなかったはずであるが,前記原因により身体の自由がきかなかったため,救助への対応ができなかったものであり,死因は,凍死の可能性が強い。 (原告らの主張)Cの血中アルコール濃度,飲酒状況や解散時の様子に関する証言,Cの健康状態や年齢等に照らせば,被告が主張するほどにCの判断能力が減退していたり,疲労困憊していたとは認められない。また,死因は,本件水路に落下した際に負った頭部外傷である。飲酒していた以上,全く過失がなかったとは考えていないが,本件のように極めて特殊な道路形状,環境からすると,責任のほとんどは被告に存する。 第4 当裁判所の判断 1 前記前提となる事実に加えて,証拠(甲2~7,9,10,17~23,28~33,35,乙1~3,5~8《枝番のあるものはその全部。以下も原則として同じ。》,証人G,証人H,証人I,原告A本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下のとおりの事実が認められる。 (1) 本件事故に至る経緯ア Cは,本件事故前日の平成12年12月27日,いつものように自転車で出勤し,勤務終了後,原告Bが通う幼稚園の父兄で構成する「J」の会合に参加するため,広島県福山市f町g-h所在の飲食店「K」に自転車で出かけた。同会は午後7時30分から開かれ,メンバー7人で鍋を囲ん 勤し,勤務終了後,原告Bが通う幼稚園の父兄で構成する「J」の会合に参加するため,広島県福山市f町g-h所在の飲食店「K」に自転車で出かけた。同会は午後7時30分から開かれ,メンバー7人で鍋を囲んで午後11時ころまで飲酒し,以後はお茶を飲みながら会の活動方針を話し合い,翌28日午前1時ころ解散となった。Cは,その際,ビールの中ジョッキ(500ミリリットル)を2,3杯飲んでいたが,顔が赤い程度で普段とさほど変わらない様子であり,店の前で30分ほど立ち話をして午前1時30分ころ,自転車に乗って帰宅の途についた際も,ふらついたりすることなく普通に自転車を漕いで帰って行った。 イ Cの飲酒程度につき,被告は,アルコールの影響で正常な運転ができない酩酊状態にあったと主張するので,上記のとおり認定した理由につき,補足して説明する。 鑑定結果書(乙2)によれば,Cの遺体から採取された血中アルコール濃度は,血液1ミリリットルあたり約0.60ミリグラムであり,Cが本件事故後,遅くとも約5時間後には死亡していることなどに照らせば,本件事故当時,Cの酔いの程度は,厳密なテストをすれば運動失調が来ているため,運転者としては危険であるが,本人にその自覚がない程度とされる第1度(微酔)であったと推認される(乙5)。そして,「J」会長で本件会合が開かれた店の店長でもある証人Gは,Cの飲酒量及び同人の様子について,「生ビールの中ジョッキ2,3杯を飲み,飲酒時も帰る際も普段とあまり変わらなかった。」旨の証言をするところ,その証言内容は上記推認と整合する内容といえる上,御勘定表(甲28)の記載と符合し,他の参加者の陳述書の内容とも齟齬はなく,信用することができる。 以上によれば,上記アの事実を容易に認めることができる。 これに対し,被告は,Cが ,御勘定表(甲28)の記載と符合し,他の参加者の陳述書の内容とも齟齬はなく,信用することができる。 以上によれば,上記アの事実を容易に認めることができる。 これに対し,被告は,Cが酩酊状態で正常な運転ができなかったことを窺わせる一事情として,同人が自転車を運転していた速度が低速であったことを指摘する。たしかに,上記飲食店から本件事故現場までの距離,Cの死亡推定時刻,自転車の損傷状態等(甲2,22,乙1等により認定できる。)からすれば,本件事故当時,Cが低速度で自転車を走行させていた可能性もなくはないが,既に指摘した事情を併せ考慮すると,自転車の速度のみを根拠として,Cの飲酒程度が,アルコールの影響で正常な運転ができない酩酊状態にあったとは認められない。被告の上記主張は,採り得ない。 (2) 事故態様アその後,Cは,自宅に向かって,自転車の前照灯を点灯して本件歩道を経て本件溝蓋部分を北西から南東に向かい走行していたが,平成12年12月28日未明,その途切れた部分(別紙現場見取図1記載の・印箇所)から,自転車とともに開渠となった本件水路に転落し,同日午前6時30分ころ,頭を北西側,足を南東側にして仰向けに倒れ,その頭部に自転車(上下が反対になり車輪が上になっていた。)のサドルが当たる状態になっていたところを発見されたが,その時には既に死亡していた。死亡したのは,転落した際,頭部を強打したことにより受けた頭部外傷に直接の原因がある可能性が高い。なお,Cら家族は,平成12年4月のCの転勤でその当時の自宅に転居してきたものであるが,本件歩道は,Cが普段通勤に利用していた経路ではなかった。 イ被告は,Cの死因につき,相当程度の酩酊状態かつ疲労状態にあったために身体の自由がきかず,凍死に至った可能性が高いと主張する。同人の が,本件歩道は,Cが普段通勤に利用していた経路ではなかった。 イ被告は,Cの死因につき,相当程度の酩酊状態かつ疲労状態にあったために身体の自由がきかず,凍死に至った可能性が高いと主張する。同人の死因については,解剖が行われていないため必ずしも明らかではない。しかし,同人が発見された際の上記状況に照らせば,自転車もろとも頭から転落し,そのまま一回転したものと認められる上,本件水路の水深はわずか5センチメートル程度しかないことに照らすと,コンクリート側溝に打ち付けられたCの頭部には相当強い力が掛かったことが推認される。また,午前7時21分に救急車で病院に搬送された際には既に死亡しており,死後2ないし5時間経過していると診断されたが,診療録によると顔面に凝血塊が付着し(乙3の2),原告Aによれば,対面時,前頭部の中心に陥没したような外傷があったとのことであり(甲9),死体検案書においても直接死因は頭部外傷とされている(甲2)。これらの事情に加えて,Cの飲酒程度は相当程度の酩酊状態とまではいえないものであったこと(前記(1)ア),Cは,本件事故当時,とりたてて疲労状態にあった様子はなかったこと(原告A本人)を併せ考慮すれば,Cの死亡は頭部外傷に起因するものと認められる。 また,被告は,本件歩道はCの通勤経路であったと主張するところ,たしかに,自転車通勤への変更に伴う,平成12年10月31日付け通勤手当認定申請書(甲23の3)には,自宅から勤務先までの略図として本件市道が記載されている(甲17添付図面参照)。しかしながら,原告Aは,Cは本件市道はバス停留所で待っている人がいると一旦自転車から降りて自転車を押したりしないといけないからバス通りは通らないと言って,実際には本件市道の一本北を並行に走る道路を通勤経路としていたと述べているところ バス停留所で待っている人がいると一旦自転車から降りて自転車を押したりしないといけないからバス通りは通らないと言って,実際には本件市道の一本北を並行に走る道路を通勤経路としていたと述べているところ(甲17,原告A本人),その内容は,前記のとおり,本件歩道のバス停留所付近は,幅員が狭くなっており,バス停溝蓋部分が乗降客の待機場所等として歩道を補う役割を果たしていたという状況に照らせば,通勤時間帯に本件歩道を自転車でスムーズに走行するのが困難であることは想像に難くなく,信用できる。車両による通勤の場合,勤務先に申請した通勤経路と異なる経路を利用することはままあることであり,不自然な話でもない。こうした事情を考慮すると,本件歩道は同人の通勤経路ではなかったと認めるのが相当である。 (3) 本件事故現場付近の状況ア明るさ及び視認状況(ア) 照明状況本件市道は,本件事故現場付近では,車道部分の幅員が約12メートルであり,同市道を挟んで本件事故現場の反対側(北東側)には,郊外型パチンコ店及び駐車場があり,同市道に面してその南西側には,北西方面から南東方面に向かって(Cが本件事故当時進行していた方向)順に,駐車場,D株式会社事務所,同倉庫前駐車場,幅員約3.5メートルの道路を挟んで,自動販売機が設置されている建物前駐車場,レストラン,車両販売会社展示場等が並び,さらに背戸川の流れる道路を1本挟んで,本件事故当時はコンビニエンスストアがあった(口頭弁論終結時は閉店)。 本件事故現場付近にある照明設備としては,本件事故現場の進行方向手前から順に,別紙現場見取図2ア点に電柱の街灯が,ア点から約17メートル先のウ点に門灯,蛍光灯があるのみで,上記自動販売機は本件事故現場から約23メートル先のエ点にあり,上記コンビニエンスストアは,本件事故 ,別紙現場見取図2ア点に電柱の街灯が,ア点から約17メートル先のウ点に門灯,蛍光灯があるのみで,上記自動販売機は本件事故現場から約23メートル先のエ点にあり,上記コンビニエンスストアは,本件事故現場から110メートル以上先にあった。 なお,本件事故が発生した時刻を,Cが上記店から出発した時刻,同人の死亡推定時刻から考えられる最も早い時刻である平成12年12月28日(木曜日)午前1時45分ころと想定すると,そのころの月齢は,新月の同月26日午前2時から約48時間経過した時間にあたり,天気は晴れであった。 (イ) 照度調査原告Aが依頼した調査会社が,平成14年8月10日(土曜日)午前0時50分から午前1時20分までの間(新月から約21時間経過した時間にあたり,天気は晴れで一部に雲があった。),本件事故現場付近の照度を測定した結果によると,別紙現場見取図2のア点で5ルクス,A点で計測不能,イ点で10ルクス,ウ点で5ルクス,B点で計測不能,C点で計測不能,自動販売機の光源は580ルクス,その直近の水路上蓋上エ点で10ルクス,歩道中央オ点で5ルクスであった。また,自転車の前照灯の明るさを光源に接して測定した結果は,自転車の光源が1000ルクス,前輪先端から1.6メートル先の地面で10ルクスであった。なお,その前日である同月9日午後6時1分から午後6時15分までの間に計測した昼間の照度は3400ないし3700ルクスであった。 (ウ) 視認調査上記調査を実施した調査会社の職員Lは,「(別紙現場見取図2)B点に立って見分したところ,転落地点C点方向は暗くて溝を確認できなかった。約40メートル先の自販機の明かりで先の歩道が確認された。」と述べている。 また,被告職員4名が,平成13年1月29日午前2時10分から午前3時20分までの間(晴れ は暗くて溝を確認できなかった。約40メートル先の自販機の明かりで先の歩道が確認された。」と述べている。 また,被告職員4名が,平成13年1月29日午前2時10分から午前3時20分までの間(晴れ時々曇り),本件事故現場付近の視認状況について,自転車に乗り,事故地点がどのくらい手前で確認できるかを測定した報告書(乙6)によると,別紙現場見取図1へ点からホ点にかけて設置されたガードパイプが,職員2名は約5メートル手前で,職員2名は約10メートル手前で確認することができたとされている。 イ本件市道の利用状況原告Aが依頼した調査会社の上記調査時において,本件市道の自動車の交通量は,午前1時38分から1分間で,南側方向へ(福山港方面へ)タクシー2台,代行運転普通乗用車1台であったが,歩行者,自転車の通行はなかった。 また,被告職員の上記実験時において,本件市道の自動車の交通量は,午前2時40分から午前3時20分の40分間で,南側方向へ26台,北側方向へ15台,自転車の交通量は,南側方向へ1台,歩行者は北側方向へ1人であった。 ウ本件事故前後の事故発生状況被告は,土木常設員設置規則に基づき,区域ごとに住民の中から委嘱される土木常設員を通して,土木事業や水路改修事業等に関する地元住民の意向を市に申し出る土木常設員制度を設けているところ,本件事故現場について,本件事故前,被告に土木常設員を通じて防護施設の設置等の要望等がなされたことはなかった。 しかし,本件事故の4日後である平成13年1月1日にも本件事故現場において転落事故があり,同月4日,F警察署から被告に対し,事故報告と目印があった方が望ましいとの意見具申があったのを受けて,同日,被告において,Eに相談することなく,別紙現場見取図1のハ,ヘの各点付近及びニ,ホの各点付近 月4日,F警察署から被告に対し,事故報告と目印があった方が望ましいとの意見具申があったのを受けて,同日,被告において,Eに相談することなく,別紙現場見取図1のハ,ヘの各点付近及びニ,ホの各点付近の水路上のコンクリート部分に蛍光色を施したポストコーンを3本設置した。 以上の前提となる事実(前記第2の2)及び認定事実(第4の1)を前提に,以下,各争点について検討する。 2 争点1(本件歩道,水路等の設置管理の瑕疵の有無)について(1) 本件営造物の設置管理の瑕疵前記認定の本件歩道及び水路の状況からすると,本件歩道を北西から南東に向かって進行する場合,本件歩道のバス停留所設置により削られた部分は,バス停溝蓋を除く本来の歩道部分に限っていえば,幅員が最も狭い箇所で約0.9メートルと非常に狭くなっている上,電柱が設置されている部分においては,本来の歩道部分は電柱の車道側に約0.5メートルを残すのみであり,自転車等は当該箇所において本来の歩道部分を通行することはできず,それを避けてバス停溝蓋部分を通行せざるを得ない。そして,当該箇所を通過後の本件歩道及び水路の形状も,本件歩道は車道へと低く傾斜し,しかも車道との間には縁石や段差もないことから,自転車運転者等において,車道側に降りないようにとの意識から,傾斜のある本件歩道に進路を戻すことなく,バス停溝蓋部分をそのまま直進し,その結果,本件溝蓋部分を進行することが十分予想される構造になっている。 そして,本件事故現場付近には街灯等の照明設備はなく,前記照度調査結果によれば,本件事故現場手前の街灯や門灯,蛍光灯の直下では5ないし10ルクスの照度があったものの,本件歩道からバス停溝蓋部分へと進路を変える上記電柱付近や本件転落地点では計測不能であってほとんど照度がなかったもので,自転車の前照灯を 灯,蛍光灯の直下では5ないし10ルクスの照度があったものの,本件歩道からバス停溝蓋部分へと進路を変える上記電柱付近や本件転落地点では計測不能であってほとんど照度がなかったもので,自転車の前照灯を使用してもその照度不足を十分に補うことはできない。 また,本件事故現場先の自動販売機も,設置付近の歩道でも5ルクスしかなく,この明かりのために約23メートル手前の転落地点付近の構造を認識することが可能になったとは考え難い。コンビニエンスストアに至っては転落地点から110メートル以上も離れており,証人Iが証言するように,その明かりによって本件事故現場付近の視認性が確保されていたとは直ちに認め難い(乙6号証添付の写真は全てフラッシュをたいて撮影されているため,実際よりも明るく写っていると考えられる。)。本件市道を挟んで反対側のパチンコ店の明かりについては,原告A本人の供述によれば,午前0時ころには消灯していたものと認められる。また,本件事故が発生した深夜においては,本件市道を通過する自動車はまばらで,本件歩道を通行する自転車等が本件歩道や水路の構造を認識するのに役立つものとは認められない。さらに,付近の信号機によって,本件事故現場の視認性が有意に向上するとは考えられない。そうすれば,本件事故現場付近の明るさは,上記のとおりの本件歩道及び水路の構造と本件溝蓋部分が途切れた先が開渠の本件水路となっていることを,夜間に通行する自転車等に認識させるには不十分であったといわざるを得ない。 これに対して,被告の前記視認調査に立ち会った証人Iは,本件事故後に設置されたポストコーンを黒いビニール袋で覆って実験を行った結果,同ビニール袋が本件溝蓋の端にかかっている状態でも,同ビニール袋の上から本件水路部分と本件溝蓋部分の違いが認識できたと証言するが,乙6号証の報告書 ストコーンを黒いビニール袋で覆って実験を行った結果,同ビニール袋が本件溝蓋の端にかかっている状態でも,同ビニール袋の上から本件水路部分と本件溝蓋部分の違いが認識できたと証言するが,乙6号証の報告書においては,あくまでも「ガードパイプが確認できた」と表現されていること,水路の何が見えたのかという問いに対して,同人は当初「水路の方向」が見えたと述べていたことなどに照らせば,上記実験において,当時の状況下で本件溝蓋と本件水路もしくは水面との境目を認識できるかという点を意識的に調査できていたのか疑問が残る。よって,視認状況についての同証言及び上記報告書の内容をそのまま信用することはできない。以上の照明状況に照らせば,本件転落地点付近の視認状況は不良であったと認められる。 このように,本件事故現場においては,夜間,肉眼では本件溝蓋の途切れるところと,本件水路の開渠部分の境目を識別しにくく,そのまま本件溝蓋部分を進行して本件水路に転落しかねない危険性を有している。そして,そのような場合には,本件水路の深さが約1メートルで側溝及び底面の材質がコンクリート製であることからすれば,転落した自転車運転者等が生命を失いかねない危険があることは当然予想されることである。この点,被告は,仮に転落しても途中で引っ掛かって止まり,底部まで直下することはないと主張するが,最も狭い底部においても幅員は約0.5メートルであるところ,本件自転車の幅は約0.54メートル(乙1)であり,容易に底面に到達するし,運転者においてはなおさらである。 そして,当事者双方の実験時においては,本件歩道を利用した歩行者及び自転車はほとんどなかったものの,本件市道は,深夜でもまばらとはいえ自動車の通行がある道路であることからしても,深夜における本件歩道の自転車等の通行可能性は相応にあるものと 歩道を利用した歩行者及び自転車はほとんどなかったものの,本件市道は,深夜でもまばらとはいえ自動車の通行がある道路であることからしても,深夜における本件歩道の自転車等の通行可能性は相応にあるものと推認される。 したがって,これらの事情を総合すれば,本件歩道及び水路は,深夜本件歩道及び水路上の溝蓋を進行してきた自転車等が,本件溝蓋部分を経て本件水路に転落する危険性を有しており,本件溝蓋の付近等には,夜間の通行者が誤って本件水路に転落することのないように危険性を知らせる標識や転落防止措置を設けたり,照明設備を設置するなどの事故防止措置をとることが必要であったというべきである。 しかしながら,本件事故当時,そのような措置は何らとられていなかったものであるから,本件歩道及び水路は,営造物が通常有すべき安全性を欠いていたものというべきであり,その設置管理に瑕疵があったと認めるのが相当である。 これに対し,被告は,本件以前に本件事故現場での事故報告はなく,近隣住民等から防護柵等の設置の要望もなかったから,本件歩道及び水路が通常有すべき安全性を欠いていたとはいえないとの趣旨の主張をする。なるほど,被告は,土木事業や水路改修事業等に関する地元住民の意向を市に申し出る土木常設員制度を設けているところ,本件事故現場について,本件事故前,被告に土木常設員を通じて防護施設等の設置の要望はなかった。しかし,証人H自ら,被告福山市における他の水路転落事故についても,土木常設員から意見が上がってきたことはないと証言していることをみると,そもそも被告の土木常設員制度が,かかる水路転落事故発生の危険性の指摘という観点において十分に機能していたものといえるのか疑問なしとしないことに加え,本件事故直後の平成13年1月1日にも本件事故現場で転落事故が起きていること,それを踏ま 水路転落事故発生の危険性の指摘という観点において十分に機能していたものといえるのか疑問なしとしないことに加え,本件事故直後の平成13年1月1日にも本件事故現場で転落事故が起きていること,それを踏まえて警察の指摘を受けて上記ポストコーンが急遽設置されたこと,さらには,設置者は明らかではないが,過去に本件溝蓋北西側端付近に歩行者止めが設置されていた痕跡があること(甲7,10,19)などに照らせば,本件事故現場の転落危険性及び転落防止措置等の必要性があったものと十分に認められるのであり,被告主張の事実をもって,本件歩道及び水路に瑕疵がなかったとはいえない。 また,被告が主張する水路管理上の開渠の原則については,本件溝蓋部分をEに占用許可するにあたって,溝掃除を容易にするためのグレーチングをかけることを義務づけることで対処し,本件事故現場近くの水路においても同様のコンクリート製溝蓋が多く見受けられること(甲35,乙4)などに鑑みると,必ずしも絶対的な原則とは認め難い。そもそも被告が主張するような「開渠の原則」が存するとしても,転落事故発生の危険を放置してよいことにはならないのであり,転落防止措置には溝蓋以外にも防護柵の設置等,より弊害の少ない種々の方法が考えられるところである。清掃作業上の困難という理由も設置上さほど障害になるものとは認められない。結局のところ,この点についての被告の主張は理由がないというべきである。 なお,原告らは,本件歩道のバス停留所で削られた部分が,道路構造令第10条の2で最低限必要とされる自転車歩行者道としての幅員に満たず,同令違反の道路構造であることも道路の設置管理の瑕疵であるなどと主張する。しかし,同規定は,歩道通行者の通行の快適性を確保するための規定であるから,本件市道が同規定に適合していないからといって,直ちに 違反の道路構造であることも道路の設置管理の瑕疵であるなどと主張する。しかし,同規定は,歩道通行者の通行の快適性を確保するための規定であるから,本件市道が同規定に適合していないからといって,直ちに設置管理の瑕疵があると断ずることはできず,少なくとも,そのことをもって本件事故と因果関係の認められる設置管理の瑕疵とはいえない。したがって,この点についての原告らの主張は採用できない。 (2) なお,原告らは,本件溝蓋も,本件歩道に含まれるなどとして,被告の管理する営造物である旨主張するが,本件溝蓋は,Eが被告の占用許可を得て倉庫への進入路とするために設置したものであり,その後本件事故までの間,被告がこれを管理していたとの事実も認められないから,これを被告の管理する営造物ということはできない。しかしながら,本件歩道及び水路の構造は,本件溝蓋を経てではあるものの,自転車通行者等が水路に転落する危険性を有しており,本件事故はその危険性が現実化したものであるから,被告は,本件溝蓋自体の管理主体であるか否かに関わりなく,本件歩道及び水路の設置,管理者として責任を負うものと認めるのが相当である。 (3) 被告の責任以上により,被告には,国家賠償法2条1項に基づき,本件事故により,原告らに生じた損害を賠償すべき責任がある。 3 争点2(損害額)及び争点3(過失相殺の可否及び過失割合)について(1) 逸失利益前記争いのない事実及び証拠(甲1,11)によれば,Cは,昭和41年7月21日生まれで,死亡当時34歳であったこと,携帯電話会社に勤めていたCの平成12年度の年収は,558万3652円であったことが認められる。そこで,これを基礎年収とし,就労可能期間を33年間,生活費控除割合を30%とし,5%ライプニッツ係数により中間利息を控除して逸失利益 年度の年収は,558万3652円であったことが認められる。そこで,これを基礎年収とし,就労可能期間を33年間,生活費控除割合を30%とし,5%ライプニッツ係数により中間利息を控除して逸失利益の現価を算定すると,6254万6673円となる。原告らの相続分は各2分の1であるから,各3127万3336円(1円未満切捨て)となる。 【計算式】5,583,652×(1-0.3)×16.0025=62,546,673円(2) 慰謝料本件事故の内容,Cの年齢,その他本件における一切の事情を考慮すると,慰謝料は原告らそれぞれにつき1300万円と認めるのが相当である。 (3) 葬祭費(原告A)本件事故と相当因果関係のある葬儀費用としては,120万円と認めるのが相当である。 (4) 過失相殺の可否及び過失割合本件事故当時の本件歩道及び水路の状況は前記認定のとおりであるが,本件のように深夜自転車で本件歩道のような暗い水路沿いの歩道を通行する者には,進路の安全を十分確認しながら進行すべき注意義務があったというべきである。しかるに,Cは,酩酊状態で自転車を運転していたものではないとはいえ,本件事故当時,酒気を帯びた状態で自転車を運転していたために,飲酒の影響で注意力散漫の状態となり,自転車運転者が当然払うべき上記注意義務を怠った結果,前方注視不十分のまま進行したことにより,本件水路の開渠部分の存在に転落地点の手前で気づかないまま,自転車もろとも転落したものと容易に推認されるのであり,同人にはこの点において過失があるといわざるを得ない。 もっとも,前記1(2)ア認定のとおり,本件歩道はCの通勤経路ではなく,本件歩道及び水路の状況等について同人が熟知していたものとまでは認められないことからすれば,本件歩道及び水路の状況に照らせば,本件溝蓋 も,前記1(2)ア認定のとおり,本件歩道はCの通勤経路ではなく,本件歩道及び水路の状況等について同人が熟知していたものとまでは認められないことからすれば,本件歩道及び水路の状況に照らせば,本件溝蓋部分を走行中の自転車等が,深夜,前記認定の明るさの下,本件溝蓋が途切れた先が開渠の水路になっていることを認識し,転落を回避すべく,本来の歩道部分に進路を戻すことは,相当程度困難なことであったと認められる。そして,Cの勤務による疲労など,被告が主張するその他の過失は,これを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,本件事故は,Cの上記過失にも起因するものと認められるところ,既に認定した本件事故発生の原因となった本件歩道及び水路の設置または管理の瑕疵の内容と対比すれば,過失相殺として,原告らに生じた損害の4割を減ずるのが相当と認められる。 したがって,被告において賠償すべき金額は,原告Aの損害合計4547万3336円のうち,その6割に相当する2728万4001円,原告Bの損害合計4427万3336円のうち,その6割に相当する2656万4001円となる。 (5) 弁護士費用本件事案の内容,審理経過,認容額等,諸般の事情を総合すると,相当因果関係のある弁護士費用相当の損害額は,原告Aにつき270万円,原告Bにつき260万円と認めるのが相当である。 (6) 損害額合計よって,原告Aの損害額は,合計2998万4001円,原告Bの損害額は,合計2916万4001円となる。 第5 結論以上によれば,原告Aの請求は2998万4001円,原告Bの請求は2916万4001円,及び原告らについて前記各金員に対する本件事故の日である 以上によれば,原告Aの請求は2998万4001円,原告Bの請求は2916万4001円,及び原告らについて前記各金員に対する本件事故の日である平成12年12月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は失当であるからいずれもこれを棄却することとする。 よって,主文のとおり判決する。 広島地方裁判所福山支部裁判長裁判官森一岳裁判官中島経太裁判官荒木美穂

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