平成25年4月11日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成24年(行ケ)第10299号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成25年3月21日判決原告 X同訴訟代理人弁理士吉永貴大被告花王株式会社同訴訟代理人弁理士花田吉秋伊藤健主文 1 特許庁が無効2011-800233号事件について平成24年7月13日にした審決のうち,請求項1ないし5及び9に係る部分をいずれも取り消す。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを3分し,その2を被告の,その余を原告の各負担とする。事実及び理由第1 請求特許庁が無効2011-800233号事件について平成24年7月13日にした審決を取り消す。第2 事案の概要本件は,原告が,後記1のとおりの手続において,被告の後記2の本件発明に係る特許に対する原告の特許無効審判の請求について,特許庁が同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は後記3のとおり)には,後記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。 1 特許庁における手続の経緯 被告は,平成18年2月27日,発明の名称を「液体調味料の製造方法」とする特許出願(特願2006-49713号。国内優先権主張:平成17年4月15日)をし,平成23年6月24日,設定の登録(特許第4767719号)を受けた(請求項の数9。甲12)。以下,この特許を「本件特許」という。 原告は,平成23年11月14日,本件特許に係る発明の全てである請求項1ないし9に係る発明について 4767719号)を受けた(請求項の数9。甲12)。以下,この特許を「本件特許」という。 原告は,平成23年11月14日,本件特許に係る発明の全てである請求項1ないし9に係る発明について特許無効審判を請求し,無効2011-800233号事件として係属した。 被告は,平成24年6月21日,本件特許に係る請求項1,2及び6について訂正を請求した(甲25。以下「本件訂正」という。また,本件訂正により訂正された発明を請求項の番号に応じて「本件発明1」などといい,これらを併せて「本件発明」という。)。 特許庁は,平成24年7月13日,「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同月23日,原告に送達された。 2 特許請求の範囲の記載 本件訂正前の特許請求の範囲の記載は,以下のとおりである。なお,文中の「/」は,【請求項7】に記載のものを除き,原文の改行箇所を示す(後記2について同じ。)。【請求項1】工程(A):生醤油を含む調味液と血圧降下作用を有する物質とを混合する工程と,/工程(B):工程(A)の後に生醤油を含む調味液と血圧降下作用を有する物質との混合物をその中心温度が60~90℃になるように加熱処理する工程/を行うことを含む液体調味料の製造方法【請求項2】工程(A):生醤油を含む調味液と血圧降下作用を有する物質とを混合する工程と,/工程(B):生醤油を含む調味液と血圧降下作用を有する物質との混合物を加熱処理する工程を有しており,/生醤油を含む調味液と血圧降下作用を有する物質とを混合しながら,混合物の中心温度が60~90℃になるように加熱処理する工程を含む液体調味料の製造方法【請求項3】混合物の中心温度が60℃になるように加熱処理するとき,60℃に達 る物質とを混合しながら,混合物の中心温度が60~90℃になるように加熱処理する工程を含む液体調味料の製造方法【請求項3】混合物の中心温度が60℃になるように加熱処理するとき,60℃に達した時点から20分~2時間加熱し,/混合物の中心温度が90℃になるように加熱処理するとき,90℃に達した時点から5分~40分間加熱する,請求項1又は2記載の液体調味料の製造方法【請求項4】加熱処理温度が60~80℃であり,/混合物の中心温度が60℃になるように加熱処理するとき,60℃に達した時点から20分~2時間加熱し,/混合物の中心温度が80℃になるように加熱処理するとき,80℃に達した時点から10分~1.5時間加熱する,請求項1又は2記載の液体調味料の製造方法【請求項5】(B)加熱処理工程後に(C)充填工程を行う請求項1~4のいずれか1項に記載の液体調味料の製造方法【請求項6】血圧降下作用を有する物質がコーヒー豆抽出物又はγ-アミノ酪酸である請求項1~5のいずれか1項に記載の液体調味料の製造方法【請求項7】コーヒー豆抽出物が,コーヒー豆から水及び/又は水溶性有機溶媒により抽出されたものである請求項6記載の液体調味料の製造方法【請求項8】コーヒー豆抽出物を抽出するコーヒー豆が,生コーヒー豆又は焙煎度の低いコーヒー豆である請求項7記載の液体調味料の製造方法【請求項9】請求項1~8のいずれか1項に記載の方法で製造した液体調味料 本件訂正後の本件発明の特許請求の範囲の記載は,以下のとおりである。以下,この明細書(甲25に添付のもの。特許請求の範囲の記載を除き,本件訂正の前後を通じて記載に変更はない。)を「本件明細書」という。なお,下線部分は,本件訂正に係る箇所である。【請求項1】工程(A):生醤油を含む調味液と,コーヒー 特許請求の範囲の記載を除き,本件訂正の前後を通じて記載に変更はない。)を「本件明細書」という。なお,下線部分は,本件訂正に係る箇所である。【請求項1】工程(A):生醤油を含む調味液と,コーヒー豆抽出物,及びアンジオテンシン変換阻害活性を有するペプチドから選ばれる少なくとも1種の血圧降下作用を有する物質とを混合する工程と,/工程(B):工程(A)の後に生醤油を含む調味液と,コーヒー豆抽出物,及びアンジオテンシン変換阻害活性を有するペプチドから選ばれる少なくとも1種の血圧降下作用を有する物質との混合物をその中心温度が60~90℃になるように加熱処理する工程/を行うことを含む液体調味料の製造方法【請求項2】工程(A):生醤油を含む調味液と,コーヒー豆抽出物,及びアンジオテンシン変換阻害活性を有するペプチドから選ばれる少なくとも1種の血圧降下作用を有する物質とを混合する工程と,/工程(B):生醤油を含む調味液と,コーヒー豆抽出物,及びアンジオテンシン変換阻害活性を有するペプチドから選ばれる少なくとも1種の血圧降下作用を有する物質との混合物を加熱処理する工程を有しており,/生醤油を含む調味液と,コーヒー豆抽出物,及びアンジオテンシン変換阻害活性を有するペプチドから選ばれる少なくとも1種の血圧降下作用を有する物質とを混合しながら,混合物の中心温度が60~90℃になるように加熱処理する工程を含む液体調味料の製造方法【請求項3】混合物の中心温度が60℃になるように加熱処理するとき,60℃に達した時点から20分~2時間加熱し,/混合物の中心温度が90℃になるように加熱処理するとき,90℃に達した時点から5分~40分間加熱する,請求項1又は2記載の液体調味料の製造方法【請求項4】加熱処理温度が60~80℃であり,混合物の中心温度が6 度が90℃になるように加熱処理するとき,90℃に達した時点から5分~40分間加熱する,請求項1又は2記載の液体調味料の製造方法【請求項4】加熱処理温度が60~80℃であり,混合物の中心温度が60℃になるように加熱処理するとき,60℃に達した時点から20分~2時間加熱し,/混合物の中心温度が80℃になるように加熱処理するとき,80℃に達した時点から10分~1.5時間加熱する,請求項1又は2記載の液体調味料の製造方法【請求項5】(B)加熱処理工程後に(C)充填工程を行う請求項1~4のいずれか1項に記載の液体調味料の製造方法【請求項6】血圧降下作用を有する物質がコーヒー豆抽出物である請求項1~5のいずれか1項に記載の液体調味料の製造方法【請求項7】コーヒー豆抽出物が,コーヒー豆から水及び/又は水溶性有機溶媒により抽出されたものである請求項6記載の液体調味料の製造方法【請求項8】コーヒー豆抽出物を抽出するコーヒー豆が,生コーヒー豆又は焙煎度の低いコーヒー豆である請求項7記載の液体調味料の製造方法【請求項9】請求項1~8のいずれか1項に記載の方法で製造した液体調味料 3 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,要するに,①本件訂正は,平成23年法律第63号による改正前の特許法(以下「法」という。)134条の2第1項ただし書及び同条5項において準用する法126条3項,4項の規定に適合するので適法である,②本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ充分に記載したものであり,特許法36条4項1号に規定する要件(いわゆる実施可能要件)を満たす,③本件発明は,本件優先日前の技術常識に照らせば,実質,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された範囲のものであり,同条6項1号に規定する要件(い 1号に規定する要件(いわゆる実施可能要件)を満たす,③本件発明は,本件優先日前の技術常識に照らせば,実質,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された範囲のものであり,同条6項1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)を満たす,などというものである。 4 取消事由 訂正要件の認定の誤り(取消事由1) 実施可能要件に係る認定判断の誤り(取消事由2) サポート要件に係る認定判断の誤り(取消事由3)第3 当事者の主張 1 取消事由1(訂正要件の認定の誤り)について〔原告の主張〕 多くの原料物質が複雑に影響し合って風味や味をもたらす液体調味料は,その製造に当たり,ある物質の有無又はその添加量によって,大きく風味や味が変化し得る。例えば,液体調味料に血圧降下作用を有する物質を多量に配合すると,血圧降下作用には有利に働くものの,風味に変化が生じ,継続摂取し難くなる場合があり,アミノ酸や核酸の配合により味質を改善しようとしても,旨味が付与されて風味バランスが崩れてしまう問題点がある(本件明細書【0006】)。本件発明は,このような液体調味料の製造方法に係る発明であり,原料によって得られる液体調 味料の風味の変化は,当業者でも予測することが困難であるから,その製造工程及びそれに伴う条件等が明細書の発明の詳細な説明に記載されていたとしても,実際に血圧降下作用を有する物質を添加して本件発明の液体調味料の風味等を確認した実施例の明示的な記載がないと,当業者であっても技術的事項を導き出すことができない。そして,本件明細書には,上記実施例の記載がないから,当該あるべき実施例に係る事項を請求項に追加する本件訂正は,新規事項の追加に該当する。 本件発明の効果の1つは,血圧降下作用等の薬理作用を高いレベルで発 細書には,上記実施例の記載がないから,当該あるべき実施例に係る事項を請求項に追加する本件訂正は,新規事項の追加に該当する。 本件発明の効果の1つは,血圧降下作用等の薬理作用を高いレベルで発揮する液体調味料を得ることができるという機能性にあるとされている(本件明細書【0010】)。しかし,化学物質など,発明の詳細な説明に記載されている事項であっても,実施例の記載がなければ,その物をどのように作り,どのように使用するかを理解することが比較的困難な技術分野に属する発明については,審査基準も,1つ以上の代表的な実施例を要求しており,特に医薬品などの機能性が重要な発明においては,その作用効果を裏付ける実施例の明示的な記載がないと,当業者であっても技術的事項を導き出すことができない。そして,本件明細書には,上記実施例の記載がないから,当該あるべき実施例に係る事項を請求項に追加する本件訂正は,新規事項の追加に該当する。 甲11は,被告による本件発明と極めて類似する液体調味料の発明の特許出願に対する拒絶理由通知の内容であるところ,そこでは,発明の詳細な説明には記載されているが実施例には記載されていない「アンジオテンシン変換阻害活性を有するペプチド」(ACE阻害ペプチド)を請求項に追加することが新規事項の追加に該当するので補正を認めないとする判断が示されている。したがって,本件訂正の適否も,甲11を参酌して判断されるべく,本件発明は,新規事項の追加に該当し認められないとされるべきである。〔被告の主張〕 従来,液体調味料に血圧降下作用を有する物質を含有させると,血圧降下作 用には有利に働くものの,当該物質由来の風味により液体調味料の風味に変化が生じ,継続摂取し難くなるところ,本件発明は,配合又は製造目的物である液体調 下作用を有する物質を含有させると,血圧降下作 用には有利に働くものの,当該物質由来の風味により液体調味料の風味に変化が生じ,継続摂取し難くなるところ,本件発明は,配合又は製造目的物である液体調味料の製造工程において,加熱処理を行う前に血圧降下作用を有する物質を混合し,次いで加熱処理を行うこと,又は,当該物質を混合しながら加熱処理することにより,血圧降下作用を有する物質を配合しても当該物質由来の風味が生じず,メニューによる風味の振れが少なくて継続的摂取が容易となり,優れた血圧降下作用を有する液体調味料の製造方法及びその製造方法で得られた液体調味料を提供する点に,先行技術にない特徴部分としての技術的思想がある。 本件明細書【0005】に記載の特許文献(乙1~14)は,いずれも本件優先日前の公開特許公報であり,同じく非特許文献(乙15~17)は,GABA(γ-アミノ酪酸)に関する文献であるが,そこには,いずれもACE阻害ペプチド等が血圧降下作用を有する旨の記載がある。また,本件審決が掲記する文献(乙18~21)は,いずれも本件優先日前の公開特許公報であり,そこには,血圧降下作用を有するACE阻害ペプチドに苦味があることから,苦味を持たないACE阻害ペプチドの製造が発明の課題とされていることが記載されている。さらに,その他の文献(乙22~29)には,様々の物質由来のACE阻害ペプチドが血圧降下作用を有しており,かつお節由来のACE阻害ペプチドが商品として平成5年には市販されていたことが記載されている。このように,ACE阻害ペプチドが血圧降下作用及び苦味を有することは,本件優先日前に周知の事項である。 法126条3項にいう「当初明細書等に記載した事項」とは,当業者によって,当初明細書等の全ての記載を総合することにより導 圧降下作用及び苦味を有することは,本件優先日前に周知の事項である。 法126条3項にいう「当初明細書等に記載した事項」とは,当業者によって,当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項をいうところ,本件発明のACE阻害ペプチドが当初明細書等の実施例にない場合であっても,前記の本件優先日当時の技術水準及び本件発明に使用されるべきACE阻害ペプチドについての具体的な記載(本件明細書【0027】)からみて,このようにして導かれる技術的事項との関係において,ACE阻害ペプチドを追加する訂正は, 新たな技術的事項を導入しないものであることが明らかである。また,甲11(特願2006-34074号に対する拒絶理由通知書)は,他の出願に係る手続に関する事項であり,本件がこれに拘束されるものではないし,当該拒絶理由通知は,新規事項追加違反,明細書の記載不備及び進歩性欠如を含むものであり,これによって本件訂正の適否について判断することはできない。よって,本件訂正を認めた本件審決に誤りはない。 2 取消事由2(実施可能要件に係る認定判断の誤り)について〔原告の主張〕本件発明が実施可能要件を満たすためには,血圧降下作用を有する物質を液体調味料に配合した場合の風味変化を改善し,かつ,血圧降下作用等の薬理作用を高いレベルで発揮する液体調味料を製造できること(本件明細書【0007】)が必要である。ところで,審査基準によれば,一般に,化学物質のように物の構造や名称からその物をどのように作り,どのように使用するかを理解することが比較的困難な技術分野に属する発明については,当業者がその発明の実施をすることができるように発明の詳細な説明を記載するためには,通常,1つ以上の代表的な実施例が必要であるし,医薬等のように物の性質 比較的困難な技術分野に属する発明については,当業者がその発明の実施をすることができるように発明の詳細な説明を記載するためには,通常,1つ以上の代表的な実施例が必要であるし,医薬等のように物の性質等を利用した用途発明においては,通常,用途を裏付ける実施例が必要である。そして,本件発明は,これを実施するに当たって,ACE阻害ペプチドが多岐にわたり,その由来や配合量等によって液体調味料の風味に大きな変化をもたらす可能性があること,ACE阻害活性を示すからといって必ずしも血圧降下作用を示すとは限らないこと(甲29)及び風味変化と血圧降下作用は血圧降下作用を有する物質の配合量とは相反関係にあること,を考慮しなければならない。したがって,本件発明においても,化学分野や医薬分野の発明と同様に,ACE阻害ペプチドを配合した液体調味料の実施例の記載が必須であることは,明らかである。しかるに,本件明細書は,上記実施例がないから,実際にACE阻害ペプチドを 一定量配合した液体調味料が風味の改善と血圧降下作用の発揮という相反する作用効果を適切に発揮させるために当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤を要求させるものである。よって,本件明細書が実施可能要件を満たさず,これに反する本件審決の判断が誤りであることは,明らかである。〔被告の主張〕方法の発明(本件発明1~8)が「物を生産する方法」に該当する場合,「その方法を使用することができる」というのは,その方法により物を作ることができることであるので,これが可能となるように発明の詳細な説明に記載する必要がある。 また,物の発明(本件発明9)について,実施をすることができるとは,その物を作ることができ,かつ,その物を使用できることであるから,発明の詳細な説明にも,これらが可能となるように記載する必 がある。 また,物の発明(本件発明9)について,実施をすることができるとは,その物を作ることができ,かつ,その物を使用できることであるから,発明の詳細な説明にも,これらが可能となるように記載する必要がある。本件審決は,これらを前提として,本件発明のACE阻害ペプチド,血圧降下作用,γ-アミノ酪酸等の上限値及び下限値並びに加熱温度について精緻に認定判断をしている。このような意味において,本件明細書には,当業者が本件発明1ないし9を実施可能な程度に明確かつ十分な記載がされており,本件審決の認定判断は,正当である。 3 取消事由3(サポート要件に係る認定判断の誤り)について〔原告の主張〕 本件発明の課題についてア本件審決は,本件発明の課題を「血圧降下作用を有する物質を液体調味料に配合した場合の風味変化を改善した液体調味料の簡便な製造方法を提供すること」又は「血圧降下作用を有する物質を液体調味料に配合した場合の風味変化を改善した液体調味料の製造方法によって液体調味料を得ること」と認定した。イしかしながら,本件発明は,血圧降下作用を有するコーヒー豆抽出物及びACE阻害ペプチドを添加しているのだから,得られた液体調味料が血圧降下作用を 発揮しないのでは,意味がない。また,本件明細書には,発明の課題として,「優れた血圧降下作用を有する液体調味料を製造すること」又は「血圧降下作用を有する物質を液体調味料に配合した場合の風味変化を改善し,風味の一体感付与を図り,メニューによる風味の振れが少なくて継続的な摂取が容易な,血圧降下作用等の薬理作用を高いレベルで発揮する液体調味料の簡便な製造方法を提供すること」(【0007】)が明記されているから,本件発明1ないし8の課題は,ここに記載のとおりに認定されるべきであり,本件発明9 等の薬理作用を高いレベルで発揮する液体調味料の簡便な製造方法を提供すること」(【0007】)が明記されているから,本件発明1ないし8の課題は,ここに記載のとおりに認定されるべきであり,本件発明9の課題も,当該液体調味料を提供することと認定されるべきである。したがって,サポート要件の判断に当たって,本件発明1ないし8の製造方法によって得られた液体調味料(本件発明9)が血圧降下作用を有するか否かが検討されなければならないが,本件審決は,本件発明の課題の認定を誤ったため,以下のとおり,当該検討をしないという重大な瑕疵を有している。 ACE阻害ペプチド及び血圧降下作用についてア本件審決は,血圧降下作用を有する物質としてACE阻害ペプチドを選択した本件発明1について,実施例等における実証がされていないとしながらも,本件明細書【0005】が引用する乙1ないし3及び甲17を根拠に,サポート要件を満たすものとする。イしかしながら,本件明細書には,乳由来,穀物由来及び魚肉由来の様々なACE阻害ペプチドが例示されており,分子量についても200ないし1万の範囲が例示されており(【0027】【0030】),ペプチドの由来及び種類が異なれば,風味も呈味性も異なり,混合後に加熱したからといって一様に風味が改善されるとはいえないばかりか,官能評価の結果も,添加量によって大きく左右される。しかるに,甲17には,大豆ペプチド(2重量%)及びカツオペプチド(1重量%)の2例の実験データが記載されているにとどまる。そして,甲17の実験データにおける上記添加量は,本件明細書に記載のACE阻害ペプチドの好ましい配合量の数値範囲(0.5~20%。【0030】)のうち,下限値付近の配合量を採用したものであるが,上限値付近の風味についての官能評価の 量は,本件明細書に記載のACE阻害ペプチドの好ましい配合量の数値範囲(0.5~20%。【0030】)のうち,下限値付近の配合量を採用したものであるが,上限値付近の風味についての官能評価の結果は,不明であり,実施例がない状態では,当業者であっても検証ができない。しかも,甲17には,ACE阻害ペプチドを含有する液体調味料が血圧降下作用を有することを示すデータが一切記載されていないなど様々な問題点がある(なお,本件明細書に記載の事項について求められる実験データは,甲17のように新たに作成されたものではなく,出願当初の実験データであるべきである。)。ウまた,乙1及び3は,コーヒー豆抽出物が血圧降下作用を示すことを記載した文献であり,これをもって本件発明1のACE阻害ペプチドを含有する液体調味料がこれらと同様に血圧降下作用を有することを立証するものではない。乙2の実施例3にはACE阻害ペプチド及び塩化カリウムを含有する減塩醤油が記載されているものの,当該減塩醤油中のACE阻害活性を測定しただけで,実際に血圧降下作用を試験したデータの記載はないし,塩化カリウムを含有する減塩醤油は,血圧降下作用を有することが知られている(甲1【0029】【0030】)から,仮にデータがあったとしても,それがACE阻害ペプチドによるものとはいえない。なお,ACE阻害ペプチド自体が血圧降下作用を有することが周知であるとしても,本件発明における「液体調味料」とは,醤油又は醤油を含む液体調味料等であるところ(本件明細書【0011】),被告が指摘する証拠には液体調味料が存在しない。むしろ,血圧を上昇させる要因となる高濃度の食塩を含有する醤油に血圧降下作用を有するとされるACE阻害ペプチドを添加しても血圧降下作用が認められるか否かは,本件優先日当時の技術者に 料が存在しない。むしろ,血圧を上昇させる要因となる高濃度の食塩を含有する醤油に血圧降下作用を有するとされるACE阻害ペプチドを添加しても血圧降下作用が認められるか否かは,本件優先日当時の技術者には不明であって,被告は,本件発明により得られる液体調味料についても血圧降下作用が認められることを合理的に説明する責任を負っている。エむしろ,本件発明の前記イに記載の課題に照らすと,本件明細書には,血圧降下作用に関する実施例の記載が必要であるというべきである。ことに,甲29によれば,ACE阻害活性と血圧降下作用は,イコールではない場合が多く,ACE阻害活性を示すからといって必ずしも血圧降下作用を示すとは限らないから,本件明細書のサポート要件の充足性を判断するに当たっては,実際にACE阻害ペプチドを配合した液体調味料(本件発明9)を用いて血圧降下作用の評価試験を行わなければならないというべきである。しかるに,本件明細書には,そのような実施例の記載がないばかりか,乙1ないし3及び甲17は,前記のとおりACE阻害ペプチドを配合した液体調味料が血圧降下作用を有する実験データを示していないから,乙1ないし3及び甲17をもって本件明細書がサポート要件に適合すると判断した本件審決の判断には,誤りがあり,本件明細書は,サポート要件に適合しないことが明らかである。 上限値及び下限値についてア本件審決は,本件発明1の血圧降下作用を有する物質の配合量について,当該物質を混合した「液体調味料」との配合をもって,本件優先日前の技術常識に照らせば,当業者がおおよそ把握できるものであるから,本件明細書における発明の詳細な説明に開示された内容を,配合量を規定しない本件発明1の「液体調味料の製造方法」の範囲まで,拡張ないし一般化できるものであ ば,当業者がおおよそ把握できるものであるから,本件明細書における発明の詳細な説明に開示された内容を,配合量を規定しない本件発明1の「液体調味料の製造方法」の範囲まで,拡張ないし一般化できるものであるとする。イしかしながら,本件発明の課題は,前記イに記載のとおりであるから,本件発明は,苦味又は異味を有する血圧降下作用を有する物質を添加したことによる「風味変化の改善」と「血圧降下作用を発揮する」という相反する課題を同時に解決しようとするものである。そして,この相反する課題を解決するためには,適切な配合量の範囲が明確に存在するのであって,本件明細書にも,「ポリフェノール量が0.1%以下では,十分な血圧降下作用が得られない。また,5%以上のポリフェノールの配合は,異味が強すぎて好ましくない。」(【0026】)との記載があるように,コーヒー豆抽出物中に含まれるポリフェノール量が0.1%以下又は5%以上の場合には,課題を解決することができない旨が明示されている。したがって,コーヒー豆抽出物及びACE阻害ペプチドの配合量が限定されていない本件発明は,発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているため,サポート要件に違反することが明らかである。〔被告の主張〕 本件発明の課題について本件審決は,本件発明の課題について,液体調味料の継続的な摂取を容易にして血圧降下作用等の薬理作用を高いレベルで発揮すること,すなわち血圧降下作用が有利に働く程度に血圧降下作用を有する物質を配合すると,風味に変化が生じ,継続して摂取し難くなるとの問題点の解決を図ったものであって,風味変化を改善することによって,当該問題点が解決されることを意図したものといえると認定している。このように,本件審決は,血圧降 じ,継続して摂取し難くなるとの問題点の解決を図ったものであって,風味変化を改善することによって,当該問題点が解決されることを意図したものといえると認定している。このように,本件審決は,血圧降下作用についても課題として認定しており,その認定に誤りはない。 ACE阻害ペプチド及び血圧降下作用についてア乙2は,塩化カリウムがともに存在している同じ条件でペプチドの有無によりACE阻害活性の有無を確認したものであり,そこには,ペプチドの持つ生理活性機能には血圧降下作用,肝機能改善作用等が知られており,特にアンジオテンシン変換酵素阻害作用による血圧降下作用が注目されており,この作用を有するペプチドを配合した商品が特定保健用食品として許可されていることが記載されている(【0002】【0003】)。また,前記のとおり,ACE阻害ペプチドが血圧降下作用を有することは,本件優先日前に周知の事項である。イ本件明細書には,本件発明に用いられる血圧降下作用を有する物質としてACE阻害ペプチドが好ましいこと(【0013】),好ましいACE阻害ペプチドの種類(【0027】),本件発明に用いられるACE阻害ペプチドの血圧降下作用が期待できるACE阻害活性の強さの具体的な濃度の数値(【0028】),本件発明に配合できるペプチドの市販品(【0029】),ACE阻害活性の測定方法及びキットのほか,ACE阻害ペプチドの配合量について,「血圧降下作用及び風味の点から液体調味料中0.5~20%,更に1~10%,特に2~5%が好ましい。」との具体的な数値(【0030】)が,それぞれ記載されており,特にこの「風味の点から」との記載は,「風味が良好である点から」との趣旨であるから,ACE阻害ペプチドを配合した場合に風味変化が改善されることを確認した結 0】)が,それぞれ記載されており,特にこの「風味の点から」との記載は,「風味が良好である点から」との趣旨であるから,ACE阻害ペプチドを配合した場合に風味変化が改善されることを確認した結果,好ましいACE阻害ペプチドの配合量について特定して記載したものである。そして,甲15にもジペプチドのACE阻害と苦味には相関があることが記載されているとおり,ACE阻害ペプチドに苦味等があることは,本件優先日前に周知の事項であるし,甲17は,ペプチドを添加して加熱処理した液体調味料の風味が改善されたことを示しているから,本件明細書の記載(【0030】)を裏付けるものである。なお,甲17は,本件明細書に記載された技術的内容を確認したものであるにすぎない。ウ甲29(乙22)は,ペプチドが消化管酵素の影響を受ける可能性を指摘しつつ,低分子ペプチドがその影響を受けにくく,血圧降下作用を示すことを記述しているばかりか,前記のとおり,ACE阻害ペプチドが血圧降下作用を有することは,本件優先日前に周知の事項である。エサポート要件は,特許出願時の当業者の技術常識を参酌した上で,実施例を含む明細書の発明の詳細な説明の記載内容から,特許請求の範囲に記載された発明特定事項がサポートされていれば足りる。本件発明についても,多数の実施例が示されることが好ましいとはいえるが,発明の範囲全体にわたる実施例が必ず要求されるわけではなく,したがって,発明の本質を覆す事実があればともかく,実施例の数が少ないこと自体が常に問題となるものではない。問題は,本件発明が,発明の詳細な説明の記載又は示唆から,当業者が出願時の技術常識に照らして読み取れるか否かであり,本件明細書の発明の詳細な説明には,当該技術常識に照らして,本件発明の課題及びACE阻害ペプチドの血圧降下作 の詳細な説明の記載又は示唆から,当業者が出願時の技術常識に照らして読み取れるか否かであり,本件明細書の発明の詳細な説明には,当該技術常識に照らして,本件発明の課題及びACE阻害ペプチドの血圧降下作用が記載されているといえる。 上限値及び下限値について本件発明1の血圧降下作用を有する物質の配合量については,血圧降下作用を有する物質を混合した「液体調味料」との記載をもって,本件優先日前の技術常識に照らせば,当業者がおおよそ把握できるものであり,そうすると,本件明細書における発明の詳細な説明に開示された内容を,配合量を規定しない本件発明1の「液体調味料の製造方法」の範囲まで拡張ないし一般化できるものである。第4 当裁判所の判断 1 本件発明について 本件明細書の記載について本件発明の特許請求の範囲の記載は,前記第2の2に記載のとおりであるところ,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明について,おおむね次のような記載がある。ア本発明は,血圧降下作用を有する物質を混合した液体調味料の製造方法に関する(【0001】)。イ昨今,食品中に含まれる種々の成分の生理作用に関心が高まっているが(【0002】),生理活性機能を有する素材の一つとして,血圧降下作用を有する物質がある。なかでも食品中に含まれ安全性の高い物質として,ペプチド,γ-アミノ酪酸,クロロゲン酸,コーヒー豆抽出物等があり,これらを含有する高血圧に有効な食品が提案されている(乙1~3)。特に,γ-アミノ酪酸は,食品中に含まれており,血圧降下作用,精神安定作用,抗更年期障害作用等が知られている(乙4~6,15~17)。このように有用なγ-アミノ酪酸について,食品中の含有量を高める技術が公知である(乙7~13)(【0003】)。ところが, 用,精神安定作用,抗更年期障害作用等が知られている(乙4~6,15~17)。このように有用なγ-アミノ酪酸について,食品中の含有量を高める技術が公知である(乙7~13)(【0003】)。ところが,調味料にγ-アミノ酪酸を添加すると,当該物質特有の後味や,エグ味が生じて風味の一体感が損なわれるという問題があるため,アミノ酸や核酸を配合することで,味質を改善する方法が開示されている(乙14)(【0004】)。しかし,液体調味料に血圧降下作用を有する物質を多量に配合すると,血圧降下作用には有利に働くものの,風味に変化が生じ,継続摂取し難くなる場合がある。特に,日常摂取する液体調味料においては,風味の変化が摂取に影響を及ぼすことから,メニューによって風味変化が生じることは,継続的な摂取への影響が懸念される。例えば,上記従来技術においてアミノ酸や核酸を配合することで味質を改善しようとしても,旨味が付与されて風味のバランスが崩れてしまうほか,コストが増加する等の新たな問題点も生じる(【0006】)。ウ本発明の目的は,日常的に摂取する商品である醤油又は醤油を含む液体調味料において,血圧降下作用を有する物質を液体調味料に配合した場合の風味変化を改善し,風味の一体感付与を図り,メニューによる風味の振れが少なくて継続的な摂取が容易な,血圧降下作用等の薬理作用を高いレベルで発揮する液体調味料の簡単な製造方法を提供することにある(【0007】)。エ本発明の発明者は,配合又は製造目的物である液体調味料の製造工程において,加熱処理を行う前に血圧降下作用を有する物質を混合し,次いで加熱処理を行うこと,又は血圧降下作用を有する物質を混合しながら加熱処理することにより,血圧降下作用を有する物質を配合しても当該物質由来の風味が生じず,メニューによる 用を有する物質を混合し,次いで加熱処理を行うこと,又は血圧降下作用を有する物質を混合しながら加熱処理することにより,血圧降下作用を有する物質を配合しても当該物質由来の風味が生じず,メニューによる風味の振れが少なくて,継続的摂取が容易となり,優れた血圧降下作用を有する液体調味料が得られることを見いだした(【0008】)。すなわち,本発明は,(A)生醤油を含む調味料と血圧降下作用を有する物質とを混合する工程及び(B)生醤油を含む調味料を加熱処理する工程,を行うことを含む液体調味料の製造方法を提供するものである(【0009】)。本発明によれば,血圧降下作用を有する物質を含有させたものであるにもかかわらず,当該物質由来の風味が生じず,メニューによる風味の振れが少なくて,継続的に摂取することが容易となり,血圧降下作用等の薬理作用を高いレベルで発揮する液体調味料を得ることができる(【0010】)。オ本発明における液体調味料は,醤油を含む液体調味料をいい(【0011】),本発明においては,生醤油を含む調味料と血圧降下作用を有する物質を混合することが必要である。生醤油とは,醤油の製造工程において,製造原料の仕込み,醗酵・熟成を行った後,圧搾して絞り出した液体部分をいい,製造工程で植え付けた麹菌により作られた酵素や,原料由来又は空気中からの各種の菌が存在するが,原料の成分を備えている段階のものである(【0012】)。本発明における血圧降下作用を有する物質とは,ポリフェノール類,アンジオテンシン変換阻害活性を有するペプチド(ACE阻害ペプチド),交感神経抑制物質,食酢,ニコチアナミン,核酸誘導体,醤油粕,スフィンゴ脂質等をいい,これらから選択される1種又は2種以上であることが好ましい(【0013】)。より好ましいポリフェノール類と ),交感神経抑制物質,食酢,ニコチアナミン,核酸誘導体,醤油粕,スフィンゴ脂質等をいい,これらから選択される1種又は2種以上であることが好ましい(【0013】)。より好ましいポリフェノール類としては,クロロゲン酸類が挙げられ,クロロゲン酸類は,市販され,安定かつ持続的な血圧降下作用を有することから特に好ましい(【0014】)。クロロゲン酸類を含有する天然物抽出物としては,例えば,コーヒー豆その他があるが,含有量の点からコーヒー豆が好ましく(【0017】),クロロゲン酸類をコーヒー豆から抽出する方法としては,熱水又は水溶性有機溶媒により抽出することが好ましく,コーヒー豆は,生又は軽く焙煎したものであることがクロロゲン酸類の含有量が高い点からは好ましく,特に生コーヒー豆抽出物が好ましい。そのような生コーヒー豆抽出物は,複数の会社から市販されている(【0018】)。本発明の液体調味料へのポリフェノール類の液体調味料に対する配合量は,血圧降下作用及び風味の点から0.1~5質量%(以下「%」で示す。),さらに0. 2~3%,特に0.25~2%が好ましい。ポリフェノール量が0.1%以下では,十分な血圧降下作用が得られず,また,5%以上のポリフェノールの配合は,異味が強すぎて好ましくない(【0026】)。ACE阻害ペプチドとしては,食品原料由来であるものが使用できる。特に乳由来のペプチド,穀物由来のペプチド及び魚肉由来のペプチドが好ましい。ここで,穀物由来のペプチドとしては,穀物(特にとうもろこし)由来の分子量200~4000のペプチドが好ましい。さらにまた,(特に)とうもろこし蛋白,大豆蛋白,小麦蛋白等を(アルカリ性)プロテアーゼで処理して得られる分子量200~4000のペプチドが好ましい。魚肉由来のペプチドとしては,魚肉由来の分子量20 にまた,(特に)とうもろこし蛋白,大豆蛋白,小麦蛋白等を(アルカリ性)プロテアーゼで処理して得られる分子量200~4000のペプチドが好ましい。魚肉由来のペプチドとしては,魚肉由来の分子量200~1万のペプチド,さらにサバ,(特に)カツオ,マグロ,サンマ等の魚肉をプロテアーゼ処理して得られる分子量200~1万のペプチドが好ましい(【0027】)。 アンジオテンシン変換酵素阻害活性の強さは,アンジオテンシン変換酵素の活性を50%阻害する濃度(IC50)で示される。本発明に用いられるACE阻害ペプチドのIC50は,50~1000μg/mL程度であれば減塩醤油系において,血圧降下作用が期待でき(【0028】),本発明に配合できるペプチドにはとうもろこし由来,小麦由来,大豆由来及びカツオ由来等の複数の市販品がある(【0029】)。 ACE阻害ペプチドの配合量は,血圧降下作用及び風味の点から液体調味料中0. 5~20%,更に1~10%,特に2~5%が好ましい(【0030】)。交感神経抑制物質としては,γ-アミノ酪酸,タウリン及びこれらの塩等が挙げられる。γ-アミノ酪酸とは,4-アミノ酪酸(C4H9NO2)のことであり,甲殻類の神経筋接合部,哺乳動物の脳などに多く存在するアミノ酸の一種である(【0031】)。カ本発明において,(A)生醤油を含む調味液と血圧降下作用を有する物質とを混合する工程は,製造原料の仕込み,醗酵・熟成,圧搾後に得られた生醤油を含む調味液に対し,血圧降下作用を有する物質を所定量添加し,混合する工程をいう。 混合する際に攪拌を行うのが好ましく,生醤油を含む調味液を攪拌しながら血圧降下作用を有する物質を添加してもよいし,生醤油を含む調味液に血圧降下作用を有する物質を添加した後で攪拌してもよい。通常,添加剤を配合した醤油製 行うのが好ましく,生醤油を含む調味液を攪拌しながら血圧降下作用を有する物質を添加してもよいし,生醤油を含む調味液に血圧降下作用を有する物質を添加した後で攪拌してもよい。通常,添加剤を配合した醤油製品の製造方法においては,添加剤の添加,混合は,製造工程の最終段階である充填前に行われるが,本発明においては,血圧降下作用を有する物質を,生醤油を含む調味液に対して添加,混合することが必要である(【0035】)。本発明において,(B)生醤油を含む調味液を加熱処理する工程とは,生醤油を含む調味液を特定の条件で加熱する工程のことをいう。工程(B)は,工程(A)の次に行うことが望ましい。また,製造工程の簡便性の点から,工程(A)と工程(B)を並行して行ってもよい。すなわち,生醤油を含む調味液と血圧降下作用を有する物質とを添加,混合しながら加熱処理を行って液体調味料を製造してもよく,加熱処理工程を開始した後に,生醤油をいまだ含む段階で血圧降下作用を有する物質とを添加,混合してもよい。工程(A)の次に工程(B)を行っても,工程(A)と工程(B)を並行して行っても,血圧降下作用を有する物質を含有させたものであるにもかかわらず,当該物質由来の風味が生じず,メニューによる風味の振れが少なくなる効果が得られる。加熱処理時の加熱温度は,調味液や血圧降下作用を有する物質の種類や量によって異なるが,60℃以上であることが,血圧降下作用を有する物質を混合しても,当該物質由来の風味が生じず,メニューによる風味の振れが抑制されて風味良好であることから好ましい。加熱温度は,更に60~130℃,特に70~120℃,ことさら75~95℃であることが,風味,安定性,色等の点から好ましい(【0036】)。本発明において,加熱処理は,液体調味料の品温で規定してもよい。加 ,更に60~130℃,特に70~120℃,ことさら75~95℃であることが,風味,安定性,色等の点から好ましい(【0036】)。本発明において,加熱処理は,液体調味料の品温で規定してもよい。加熱処理時に,品温(サンプルの中心温度)が60℃以上となるように加熱するのが好ましく,更に70~130℃,特に80~98℃,ことさら85~95℃となるように加熱するのが,風味,安定性,色等の点から好ましい。品温60℃の場合,60℃に達した時点(60℃達温)から10時間以下の加熱処理が好ましく,更に60℃達温時より20分~5時間,特に30分~2時間,ことさら40分~1.5時間の加熱処理が,風味,安定性,色等の点から好ましい。品温80℃の場合,80℃に達した時点(80℃達温)から3時間以下の加熱処理が好ましく,更に80℃達温時より5分~2時間,特に10分~1.5時間,ことさら20分~1時間の加熱処理が,風味,安定性,色等の点から好ましい。品温85℃の場合,85℃に達した時点(85℃達温)から1時間以下の加熱処理が好ましく,更に85℃達温時より3分~50分,特に5分~40分,ことさら10分~30分の加熱処理が,風味,安定性,色等の点から好ましい。品温90℃の場合,90℃に達した時点(90℃達温)から50分以下の加熱処理が好ましく,更に90℃達温時より30秒~40分,特に2分~30分,ことさら5分~20分の加熱処理が,風味,安定性,色等の点から好ましい(【0038】)。キ実施例ア 生醤油にコーヒー豆抽出物を1.2%添加した液体調味料1の7mlをガ ラス製スクリュービンに入れて閉栓し,40℃,60℃又は80℃のウォーターバスに浸漬し,それぞれ30分,60分又は120分加熱してから流水で冷却して製造した試験品1~9及び加熱処理しない対 ラス製スクリュービンに入れて閉栓し,40℃,60℃又は80℃のウォーターバスに浸漬し,それぞれ30分,60分又は120分加熱してから流水で冷却して製造した試験品1~9及び加熱処理しない対照品a(【0065】)を用いてホウレン草のおひたしを作製して風味評価を行ったところ,風味バランスについて,対照品aを使用したものは,「やや風味バランスに欠け,あまり好ましくない」という評価を得た一方,試験品を使用したものは,40℃で加熱した試験品7~9が対照品aと同じ評価であったほかは,いずれも「非常に風味バランスがよく,好ましい」か,あるいは「風味バランスがよく,やや好ましい」という評価を得たほか,コーヒー豆抽出物由来の風味の評価基準について,いずれも「コーヒー豆抽出物由来の風味を全く感じない」か,当該風味が対照品に比べて「かなり低減している」又は「やや低減している」との結果を得た。また,上記試験品1~9及び対照品aを用いて金目鯛の煮付けを作製して風味評価を行ったところ,いずれも風味バランスについて「非常に風味バランスがよく,好ましい」との評価を得たほか,コーヒー豆抽出物由来の風味の評価基準について,いずれも「コーヒー豆抽出物由来の風味を全く感じない」との評価を得た。このように,対照品aには調理品による風味の振れが明らかに存在し,良好ではなかった。なお,80℃で120分の加熱処理を施しても,有効成分であるクロロゲン酸の含有量は,低下しなかった(【0064】~【0070】【0073】【0075】【0076】【表1】)。イ 生醤油60質量部に浄水39.5質量部及び4-アミノ酪酸0.5質量部添加,混合して溶解した液体調味料2の7mlをガラス製スクリュービンに入れて閉栓し,40℃,60℃又は80℃のウォーターバスに浸漬し,それぞれ30分, 39.5質量部及び4-アミノ酪酸0.5質量部添加,混合して溶解した液体調味料2の7mlをガラス製スクリュービンに入れて閉栓し,40℃,60℃又は80℃のウォーターバスに浸漬し,それぞれ30分,60分又は120分加熱してから流水で冷却して製造した試験品10~18及び加熱処理しない対照品b(【0065】)について官能評価を行ったところ,風味バランスについて,対照品bは,「風味バランスに欠け,あまり好ましくない」という評価を得た一方,試験品は,いずれも「非常に風味バランスがよく,好ましい」,「風味バランスがよく,やや好ましい」あるいは「やや風味バランスに欠け,あまり好ましくない」という評価を得たが,特に60℃で120分加熱処理したもの及び80℃で30分又は60分加熱処理したものは,いずれも「非常に風味バランスがよく,好ましい」という評価であった。また,γ-アミノ酪酸由来の風味の評価基準については,60℃で120分加熱処理したもの及び80℃で加熱処理したものは,いずれも「γ-アミノ酪酸由来のエグ味,後味を全く感じない」という評価を受けたほか,60℃で30分又は60分加熱処理したものは,当該エグ味が対照品bに比べ「かなり低減している」又は「やや低減している」との評価を受けた。このように,対照品bは,γ-アミノ酪酸由来の後味が強く,風味バランスもよくなかった(【0064】【0065】【0070】~【0072】【0077】【0078】【表2】)。ウ 生醤油36質量部に,浄水23.28質量部,4-アミノ酪酸を0.24質量部及び塩化カリウム0.48質量部を添加した後,攪拌して溶解し,50mL容のガラス製サンプル瓶に入れて閉栓し,ウォーターバス(80℃)に浸漬して60分間加熱し,流水で冷却することで容器詰め液体調味料Pを製造した。これを .48質量部を添加した後,攪拌して溶解し,50mL容のガラス製サンプル瓶に入れて閉栓し,ウォーターバス(80℃)に浸漬して60分間加熱し,流水で冷却することで容器詰め液体調味料Pを製造した。これを開栓して風味評価を行ったところ,γ-アミノ酪酸由来のエグ味,後味がほとんど感じられず,カリウムの異味が抑制され,しかも風味の一体感が付与され,風味良好であった(【0074】)。 本件発明の課題についてア以上の本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,本件発明の解決すべき課題は,前記イに記載のとおり,醤油を含む液体調味料(【0011】)に,ACE阻害ペプチド又はクロロゲン酸類を有効成分とするコーヒー豆抽出物等の血圧降下作用を有する物質(【0013】【0014】【0017】)を多量に配合すると,血圧降下には有利に働くものの,風味に変化が生じ,その結果,液体調味料の継続摂取が困難になる(【0003】【0006】)というものであると認められる。そして,液体調味料の継続摂取が困難となる原因は,血圧降下作用を有する物質を液体調味料に配合した場合の風味変化であるから,本件発明の解決すべき課題は,より具体的には,血圧降下作用を有する物質を液体調味料に配合した場合の風味変化の改善であるといえる。イこの点について,原告は,血圧降下作用を高いレベルで発揮する液体調味料の簡便な製造方法を提供することも本件発明の課題であると主張する。そこで検討すると,本件明細書の発明の詳細な説明には,前記ウ及びエに記載のとおり,本件発明の目的ないし効果として,血圧降下作用等の薬理作用を高いレベルで発揮する液体調味料の簡単な製造方法を提供することないしこのような液体調味料を得ることも挙げられている(【0007】【0010】)ほか,本件発明 いし効果として,血圧降下作用等の薬理作用を高いレベルで発揮する液体調味料の簡単な製造方法を提供することないしこのような液体調味料を得ることも挙げられている(【0007】【0010】)ほか,本件発明が優れた血圧降下作用を有する液体調味料が得られることを見いだしたとの記載(【0008】)がある。しかしながら,本件明細書の発明の詳細な説明は,前記イに記載のとおり,血圧降下作用を有する物質を液体調味料に配合した場合の風味の変化及びその結果として生じる液体調味料の継続摂取が困難となることを本件発明の課題として具体的に特定している(【0003】【0006】)にとどまり,それ以上に血圧降下作用等の薬理作用を高いレベルで発揮する液体調味料の簡単な製造方法の提供等をその課題としては特定しておらず,むしろ,この点については,本件発明が当該課題を解決して血圧降下作用を有する物質を液体調味料に配合した場合の風味変化を改善した結果,メニューによる風味の振れが少なくなったため,液体調味料の継続摂取が容易となったことによりもたらされる本件発明の作用効果として言及していることが明らかである(【0007】【0008】【0010】)。よって,原告の上記主張は,採用することができない。 本件発明の技術的思想について以上によれば,本件発明は,醤油を含む液体調味料(【0011】)に,ACE阻害ペプチド又はクロロゲン酸類を有効成分とするコーヒー豆抽出物等の血圧降下作用を有する物質(【0013】【0014】【0017】)を多量に配合すると,血圧降下には有利に働くものの,風味に変化が生じ,その結果,液体調味料の継続摂取が困難になる(【0003】【0006】)という課題(より具体的には,血圧降下作用を有する物質を液体調味料に配合した場合に,風味変化を のの,風味に変化が生じ,その結果,液体調味料の継続摂取が困難になる(【0003】【0006】)という課題(より具体的には,血圧降下作用を有する物質を液体調味料に配合した場合に,風味変化を改善するという課題)を解決するため,液体調味料の加熱処理を行う前に血圧降下作用を有する物質であるACE阻害ペプチド(本件発明1~5,9)又はコーヒー豆抽出物(本件発明1~9)を混合し,次いで加熱処理を行うか,あるいはこれらの物質を混合しながら液体調味料を加熱処理するなどの手段を採用することで(【0008】【0009】【0035】【0036】【0038】),これにより,血圧降下作用を有する物質を日常的に摂取する食品である液体調味料に配合した場合の風味変化を改善し,風味の一体感付与を図り,メニューによる風味の振れが少なくて継続的な摂取が容易な,血圧降下作用等の薬理作用を高いレベルで発揮する液体調味料(本件発明9)及びその簡単な製造方法(本件発明1~8)を実現するという作用効果を有するものである(【0007】~【0010】)といえる。 2 取消事由1(訂正要件の認定の誤り)について 訂正要件について法134条の2第1項ただし書は,訂正を特許請求の範囲の減縮等についてのみ認めているほか,同条5項が準用する法126条3項は,訂正について,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならないとしているところ,ここに明細書又は図面に記載した事項とは,当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,訂正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものと かれる技術的事項であり,訂正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものということができると解すべきである。 本件訂正の適否についてこれを本件訂正についてみると,本件訂正は,本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1(2箇所)及び2(3箇所)において「血圧降下作用を有する物質」と記載されていたものを,いずれも「コーヒー豆抽出物,及びアンジオテンシン変換阻害活性を有するペプチドから選ばれる少なくとも1種の血圧降下作用を有する物質」とする訂正を含むものであって,当該訂正は,本件訂正前における発明の「血圧降下作用を有する物質」を上記のようにコーヒー豆抽出物,ACE阻害ペプチド又はこれらの混合物に減縮して特定するものである。また,本件明細書は,前記1オに記載のとおり,本件特許に係る発明における血圧降下作用を有する物質として,ポリフェノール類及びアンジオテンシン変換阻害活性を有するペプチド(ACE阻害ペプチド)等から選択される1種又は2種以上であることが好ましい(【0013】)としているほか,より好ましいポリフェノール類の例として,クロロゲン酸類を含有するコーヒー豆抽出物についても記載している(【0014】【0017】【0018】)。さらに,本件明細書は,本件特許に係る発明に配合できるペプチドにはとうもろこし由来,小麦由来,大豆由来及びカツオ由来等の複数の市販品がある(【0029】)としているほか,現に,本件明細書で引用されているものを含む本件出願日前に公開された複数の文献には,ACE阻害ペプチドが血圧降下作用を有する物質である旨の記載がある(乙2,6,18~21,23~29)以上,ACE阻害ペプチド 細書で引用されているものを含む本件出願日前に公開された複数の文献には,ACE阻害ペプチドが血圧降下作用を有する物質である旨の記載がある(乙2,6,18~21,23~29)以上,ACE阻害ペプチドが血圧降下作用を有する物質であることは,本件出願日当時の当業者の技術常識であったものと認められる。したがって,本件訂正による特許請求の範囲の請求項1及び2に係る訂正は,いずれも,当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるといえるから,明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものといえる。 原告の主張について原告は,本件明細書にはACE阻害ペプチドを用いる場合の実施例がない以上,当業者であっても技術的事項を導き出すことができないから,本件訂正による特許請求の範囲の請求項1及び2に係る訂正が新規事項の追加に該当し,本件発明と類似する出願の審査においても同様の判断が示されていると主張する。しかしながら,前記に説示のとおり,ACE阻害ペプチドは,本件明細書に血圧降下作用を有する物質として記載されており,かつ,このことは,本件出願日当時の当業者の技術常識であったものと認められるから,本件訂正による特許請求の範囲の請求項1及び2に係る訂正のうちACE阻害ペプチドに係る部分は,いずれも,当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるといえるのであって,訂正の要件との関係では,ACE阻害ペプチドの実施例がないからといって,明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものでなくなるというものではない。また,本件における訂正の適否は,本件 あって,訂正の要件との関係では,ACE阻害ペプチドの実施例がないからといって,明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものでなくなるというものではない。また,本件における訂正の適否は,本件発明及び本件明細書の記載に基づいてすれば足り,他の特許出願における拒絶理由通知書の有無等が本件における判断を左右するものでないことは,明らかである。よって,原告の上記主張は,採用することができない。 小括以上のとおり,本件訂正による特許請求の範囲の請求項1及び2に係る訂正は,法134条の2第1項ただし書及び同条5項において準用する法126条3項,4項の規定に適合するものであり,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 3 取消事由2(実施可能要件に係る認定判断の誤り)について 実施可能要件について特許法36条4項1号は,発明の詳細な説明の記載は「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に,記載したもの」でなければならないと規定している。特許制度は,発明を公開する代償として,一定期間発明者に当該発明の実施につき独占的な権利を付与するものであるから,明細書には,当該発明の技術的内容を一般に開示する内容を記載しなければならない。特許法36条4項1号が上記のとおり規定する趣旨は,明細書の発明の詳細な説明に,当業者が容易にその実施をすることができる程度に発明の構成等が記載されていない場合には,発明が公開されていないことに帰し,発明者に対して特許法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くことになるからであると解される。そして,方法の発明における発明の実施とは,その方法の使用をする行為をいうから(特許法2条3項2号),方法の発明については,明細書にその発明 る前提を欠くことになるからであると解される。そして,方法の発明における発明の実施とは,その方法の使用をする行為をいうから(特許法2条3項2号),方法の発明については,明細書にその発明の使用を可能とする具体的な記載が必要であるが,そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその方法を使用することができるのであれば,上記の実施可能要件を満たすということができる。また,物の発明における発明の実施とは,その物の生産,使用等をする行為をいうから(同項1号),物の発明については,明細書にその物を製造する方法についての具体的な記載が必要であるが,そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造することができるのであれば,上記の実施可能要件を満たすということができる。 本件発明の実施可能要件の適否について本件発明1ないし8は,いずれも方法の発明であるが,その特許請求の範囲の記載にある「生醤油」(【0012】),「コーヒー豆抽出物」(【0018】),「アンジオテンシン阻害活性を有するペプチド」(ACE阻害ペプチド。 【0027】【0029】)及び「液体調味料」(【0011】)については,いずれも本件明細書に具体的にその意義,製造方法又は入手方法が記載されている。また,本件発明1ないし8の方法は,上記「生醤油」を含む調味料と,「コーヒー豆抽出物」及び「アンジオテンシン阻害活性を有するペプチド」(ACE阻害ペプチド)から選ばれる少なくとも1種の原材料(本件発明1~5)あるいは専ら「コーヒー豆抽出物」(本件発明6~8)を混合し,特定の温度(及び時間)で加熱処理し,あるいは混合しながら同様に加熱処理し,更にその後に充填工程を行うというものである 料(本件発明1~5)あるいは専ら「コーヒー豆抽出物」(本件発明6~8)を混合し,特定の温度(及び時間)で加熱処理し,あるいは混合しながら同様に加熱処理し,更にその後に充填工程を行うというものであるが,これらの具体的手法は,液体調味料の加熱処理方法(【0065】)や,加熱処理が充填工程の前に行われること(【0035】)を含めて,いずれも本件明細書(【0035】【0036】【0038】)に記載されている。したがって,本件明細書の発明の詳細な説明には,これに接した当業者が本件発明1ないし8の使用を可能とする具体的な記載があるといえる。また,本件発明9は,本件発明1ないし8のいずれかの方法により製造した液体調味料という物の発明であるが,以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,これに接した当業者が本件発明1ないし8の使用を可能とする具体的な記載がある以上,当業者は,本件発明9を製造することができるものといえる。 原告の主張について原告は,本件発明はACE阻害ペプチドの由来や配合量等によって液体調味料の風味に大きな変化をもたらす可能性があり,かつ,血圧降下作用を示すとは限らないばかりか,風味変化と血圧降下作用を有する物質の配合量とが相反関係にある以上,ACE阻害ペプチドを使用する場合についての実施例が発明の詳細な説明に記載されていない限り,実施可能要件を満たさないと主張する。しかしながら,本件明細書に本件発明1ないし8の使用を可能とする具体的な記載があり,かつ,当業者が本件発明9を製造することができる以上,本件発明は,実施可能であるということができるのであって,原告の上記主張は,サポート要件に関するものとして考慮する余地はあるものの,実施可能要件との関係では,その根拠を欠くものというべきである。よって,原告 実施可能であるということができるのであって,原告の上記主張は,サポート要件に関するものとして考慮する余地はあるものの,実施可能要件との関係では,その根拠を欠くものというべきである。よって,原告の上記主張は,採用することができない。 小括以上のとおり,本件発明は,特許法36条4項1号の実施可能要件に適合するものであって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 4 取消事由3(サポート要件に係る認定判断の誤り)について サポート要件について特許法36条6項1号には,特許請求の範囲の記載は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したもの」でなければならない旨が規定されている。特許制度は,発明を公開させることを前提に,当該発明に特許を付与して,一定期間その発明を業として独占的,排他的に実施することを保障し,もって,発明を奨励し,産業の発達に寄与することを趣旨とするものである。そして,ある発明について特許を受けようとする者が願書に添付すべき明細書は,本来,当該発明の技術内容を一般に開示するとともに,特許権として成立した後にその効力の及ぶ範囲(特許発明の技術的範囲)を明らかにするという役割を有するものであるから,特許請求の範囲に発明として記載して特許を受けるためには,明細書の発明の詳細な説明に,当該発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載しなければならないというべきである。特許法36条6項1号の規定する明細書のサポート要件が,特許請求の範囲の記載を上記規定のように限定したのは,発明の詳細な説明に記載していない発明を特許請求の範囲に記載すると,公開されていない発明について独占的,排他的な権利が発生することになり,一般公衆からその自由利用の利益を奪い,ひいては産業の発達を阻害 の詳細な説明に記載していない発明を特許請求の範囲に記載すると,公開されていない発明について独占的,排他的な権利が発生することになり,一般公衆からその自由利用の利益を奪い,ひいては産業の発達を阻害するおそれを生じ,上記の特許制度の趣旨に反することになるからである。そして,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か,あるいは,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 本件発明のサポート要件の適否についてア本件発明の特許請求の範囲の記載は,前記第2の2に記載のとおりである。他方,本件明細書の発明の詳細な説明には,前記1オに記載のとおり,血圧降下作用を有する物質として,ポリフェノール類,ACE阻害ペプチド等が列記されている(【0013】)ところ,ポリフェノール類の一種であるクロロゲン酸類を含有するコーヒー豆抽出物の入手方法等についても記載がある(【0014】【0017】【0018】)ほか,ACE阻害ペプチドの具体例や入手方法等についても具体的な記載がある(【0027】~【0030】)。そして,本件明細書の発明の詳細な説明には,前記1カに記載のとおり,液体調味料の加熱処理を行う前にこれらの血圧降下作用を有する物質を液体調味料に混合し,次いで加熱処理を行うか,あるいはこれらの物質を混合しながら液体調味料を加熱処理するなどの方法について,加熱処理の際 調味料の加熱処理を行う前にこれらの血圧降下作用を有する物質を液体調味料に混合し,次いで加熱処理を行うか,あるいはこれらの物質を混合しながら液体調味料を加熱処理するなどの方法について,加熱処理の際の温度等を含めて具体的に記載しており(【0035】【0036】【0038】),これらは,いずれも本件発明1ないし8の特許請求の範囲の記載に対応するものであるといえるほか,これらの方法により本件発明9の液体調味料の製造が可能であることは,前記3に説示のとおりである。したがって,本件発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるということができる。イ本件発明は,前記1に説示のとおり,醤油を含む液体調味料に,ACE阻害ペプチド又はクロロゲン酸類を有効成分とするコーヒー豆抽出物等の血圧降下作用を有する物質を多量に配合すると,血圧降下には有利に働くものの,風味に変化が生じ,その結果,液体調味料の継続摂取が困難になるという課題(より具体的には,血圧降下作用を有する物質を液体調味料に配合した場合に,風味変化を改善するという課題)を解決するため,液体調味料の加熱処理を行う前に血圧降下作用を有する物質であるACE阻害ペプチド(本件発明1~5,9)又はコーヒー豆抽出物(本件発明1~9)を混合し,次いで加熱処理を行うか,あるいはこれらの物質を混合しながら液体調味料を加熱処理するなどの手段を採用することで,これにより,血圧降下作用を有する物質を日常的に摂取する食品である液体調味料に配合した場合の風味変化を改善し,風味の一体感付与を図り,メニューによる風味の振れが少なくて継続的な摂取が容易な,血圧降下作用等の薬理作用を高いレベルで発揮する液体調味料(本件発明9)及びその簡単な製造方法(本件発明1~8)を実現するという作用効果を有するもの による風味の振れが少なくて継続的な摂取が容易な,血圧降下作用等の薬理作用を高いレベルで発揮する液体調味料(本件発明9)及びその簡単な製造方法(本件発明1~8)を実現するという作用効果を有するものである。したがって,本件発明においては,血圧降下作用を有する物質が混合され,上記のように加熱処理された液体調味料の風味変化が改善されるのであれば,その課題 が解決されたものとみて差し支えないといえる。ウそこで,本件明細書について,その発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を上記のとおり解決できると認識できるものであるか否かを検討すると,そこには,前記1キアに記載のとおり,前記イに記載の物質のうちコーヒー豆抽出物を本件発明における血圧降下作用を有する物質として液体調味料に混合して加熱処理した場合(本件発明1~9)に,液体調味料の風味変化を改善し,もって本件発明の課題を解決できることが実施例をもって記載されている(【0064】~【0070】【0073】【0075】【0076】【表1】)から,この場合に本件発明の課題を解決することができることが示されているといえる。なお,血圧降下作用を有する物質としてコーヒー豆抽出物を使用した場合の本件発明1ないし9は,上記課題を解決するものであり,かつ,当該課題を解決する手段である混合及び加熱処理の工程もごく簡単なものである以上,その帰結として,風味の一体感付与を図り,メニューによる風味の振れが少なくて継続的な摂取が容易な液体調味料(本件発明9)及びその簡単な製造方法(本件発明1~8)を実現するという作用効果についても,本件明細書の発明の詳細な説明には開示があるということができる。また,本件明細書の発明の詳細な説明には,血圧降下作用を有する物質がコーヒー豆抽出物である場 )を実現するという作用効果についても,本件明細書の発明の詳細な説明には開示があるということができる。また,本件明細書の発明の詳細な説明には,血圧降下作用を有する物質がコーヒー豆抽出物である場合の本件発明1ないし8の方法により製造された液体調味料(本件発明9)が血圧降下作用を有するか否かについての具体的な記載が見当たらない。しかしながら,甲9(乙3)は,「高血圧症予防・改善・治療剤」という発明の公開特許公報(特開2002-87977号公報。平成14年3月27日公開)であるところ,そこには,12週齢の雄性自然発症高血圧ラットについて胃にコーヒー豆抽出物を投与した試験群は,対照群と比較して有意に血圧が降下したことが示されており(【0021】~【0026】),また,甲10は,「コーヒー抽出液の精製方法」という発明の公開特許公報(特開2004-81053号。平成16年3月18日公開)であるところ,そこには,甲9(乙3)を従来技術として引用しつつ,特にコーヒー生豆中に含まれる成分が高血圧の予防・改善・治療剤として応用されている旨が記載されている(【0002】)。このように,コーヒー豆抽出物が血圧降下作用を有することは,本件優先日当時に当業者に周知の事項であったものと認められるほか,本件明細書には,前記1キアに記載のとおり,コーヒー豆抽出物の有効成分であるクロロゲン酸類の液体調味料における含有量が加熱処理によっても変化しないことが記載されている(【0076】)ことを併せ考えると,コーヒー豆抽出物を液体調味料と混合して加熱処理をした場合に,コーヒー豆抽出物の有効成分であるクロロゲン酸類は,その活性を失わず,加熱処理後も血圧降下作用を示すものと認められる。したがって,本件明細書の発明の詳細な説明には,加熱処理等にもかかわらず 合に,コーヒー豆抽出物の有効成分であるクロロゲン酸類は,その活性を失わず,加熱処理後も血圧降下作用を示すものと認められる。したがって,本件明細書の発明の詳細な説明には,加熱処理等にもかかわらずコーヒー豆抽出物が血圧降下作用の薬理作用を高いレベルで発揮する液体調味料(本件発明9)及びその製造方法(本件発明1~8)を実現するという作用効果について開示があるということができるから,仮に,風味の一体感付与を図り,メニューによる風味の振れが少なくて継続的な摂取が容易な,血圧降下作用等の薬理作用を高いレベルで発揮する液体調味料及びその簡単な製造方法を実現することが本件発明の解決すべき課題であるとしても,血圧降下作用を有する物質としてコーヒー豆抽出物を使用した場合の本件発明1ないし9(特に,血圧降下作用を有する物質として専らコーヒー豆抽出物を使用する本件発明6ないし8)については,本件明細書の発明の詳細な説明に当該課題を解決することができることが示されているといえる。エ他方,本件明細書の発明の詳細な説明には,前記イに記載の物質のうちACE阻害ペプチドを本件発明における血圧降下作用を有する物質として液体調味料に混合して加熱処理した場合の実施例の記載がない。また,本件明細書の発明の詳細な説明には,前記1オに記載のとおり,血圧降下作用を有する物質として,ポリフェノール類,ACE阻害ペプチド,交感神経抑制物質,食酢,ニコチアナミン,核酸誘導体,醤油粕,スフィンゴ脂質等が列記されており(【0013】),コーヒー豆抽出物がポリフェノール類の一種であるクロロゲン酸類を含有しており(【0014】【0017】),γ-アミノ酪酸が交感神経抑制物質の一種であること(【0031】)のほか,前記1キアないしウに記載のとおり,コーヒ 一種であるクロロゲン酸類を含有しており(【0014】【0017】),γ-アミノ酪酸が交感神経抑制物質の一種であること(【0031】)のほか,前記1キアないしウに記載のとおり,コーヒー豆抽出物(【0064】~【0070】【0073】【0075】【0076】【表1】)又はγ-アミノ酪酸(【0064】【0065】【0070】~【0072】【0074】【0077】【0078】【表2】)を本件発明における血圧降下作用を有する物質として液体調味料に混合して加熱処理した場合にも,液体調味料の風味変化を改善し,本件発明の解決すべき課題を解決できることが実施例をもって記載されている。しかるところ,本件明細書の発明の詳細な説明に列記された上記血圧降下作用を有する物質の間には,その化学構造に何らかの共通性を見いだすことができず,その風味にも共通性が見当たらないばかりか,発明の詳細な説明において実施例について記載のあるクロロゲン酸類及びγ-アミノ酪酸は,いずれもACE阻害ペプチドと共通する化学構造を有するものではなく,また,ACE阻害ペプチドと共通する風味を有するものでもないことに加え,上記血圧降下作用を有する物質の風味とその血圧降下作用に関連性がないこともまた,技術常識に照らして明らかである。以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明に,コーヒー豆抽出物及びγ-アミノ酪酸を本件発明における血圧降下作用を有する物質として液体調味料に混合して加熱処理した場合の実施例があり,それにより液体調味料の風味変化を改善し,本件発明の解決すべき課題を解決できることが示されているとしても,これらは,ACE阻害ペプチドを本件発明における血圧降下作用を有する物質として液体調味料に混合し加熱処理した場合に,液体調味料の風味変化の改善という本件発明の解決すべき ことが示されているとしても,これらは,ACE阻害ペプチドを本件発明における血圧降下作用を有する物質として液体調味料に混合し加熱処理した場合に,液体調味料の風味変化の改善という本件発明の解決すべき課題を解決できることを示したことにはならない。その他,本件明細書の発明の詳細な説明には,ACE阻害ペプチドを本件発明における血圧降下作用を有する物質として液体調味料に混同して加熱処理をした場合に,上記課題が解決されたことを示す記載はない以上,本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者は,血圧降下作用を有する物質としてACE阻害ペプチドを使用した場合を包含する本件発明1ないし5及び9が,液体調味料の風味変化の改善という課題を解決できると認識することができるとはいえず,また,当業者が本件出願時の技術常識に照らして本件発明の課題を解決できると認識できることを認めるに足りる証拠もない。 原告の主張について原告は,本件発明が血圧降下作用を有する物質の混合による風味変化の改善と,血圧降下作用の発揮という相反する課題を同時に解決しようとするものであることから,コーヒー豆抽出物についての適切な配合量の上限値及び下限値が存在するはずであるところ,このような配合量の限定がない本件発明は発明の課題が解決できることを当業者が認識できないものであって,サポート要件に違反すると主張する。しかしながら,本件発明の課題は,前記1アに説示のとおり,具体的には,血圧降下作用を有する物質を液体調味料に配合した場合に,風味変化を改善するというものであり,液体調味料に配合するコーヒー豆抽出物の量については,本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者であれば,配合するコーヒー豆抽出物の量が少なければ血圧降下作用が限定される一方,その量が多ければ風味変化の 調味料に配合するコーヒー豆抽出物の量については,本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者であれば,配合するコーヒー豆抽出物の量が少なければ血圧降下作用が限定される一方,その量が多ければ風味変化の改善が限定されることを理解することができるから,風味変化の改善等を図るためにその配合量を調整することが容易に可能である。したがって,本件発明(特に本件発明6~8)の特許請求の範囲の記載に配合量の上限値及び下限値の記載がないからといって,本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者が,本件発明6ないし8がその解決すべき課題を解決できるものと認識できないとみることはできない。よって,原告の上記主張は,採用できない。 被告の主張についてア被告は,本件発明1ないし5及び9がサポート要件を満たす根拠として,本件明細書には好ましいACE阻害ペプチドの種類(【0027】),血圧降下作用が期待できるACE阻害活性の具体的な濃度の数値(【0028】),ACE阻害ペプチドの市販品(【0029】)等が具体的に記載されていると主張する。しかしながら,本件明細書の発明の詳細な説明におけるこれらの記載は,いずれも,ACE阻害ペプチドを混合し加熱処理をした液体調味料の風味変化が改善されるか否かとは無関係の事項であって,本件発明1ないし5及び9がサポート要件を満たすか否かとは,関係のない記載であるというほかない。よって,被告の上記主張は,採用することができない。イ被告は,本件明細書には液体調味料に対するACE阻害ペプチドの配合量について,「血圧降下作用及び風味の点から液体調味料中0.5~20%,更に1~10%,特に2~5%が好ましい。」との具体的な数値の記載があり(【0030】),これがACE阻害ペプチドを配合した場合に風味変化が改善される 作用及び風味の点から液体調味料中0.5~20%,更に1~10%,特に2~5%が好ましい。」との具体的な数値の記載があり(【0030】),これがACE阻害ペプチドを配合した場合に風味変化が改善されることを確認した結果に基づくものであると主張する。しかしながら,本件明細書の発明の詳細な説明によれば,前記1オに記載のとおり,本件発明1ないし5及び9に利用可能なACE阻害ペプチドは,乳,穀物又は魚肉等の食品原料由来のものであり,かつ,その種類も多岐にわたるところ,これらの多種類の原料に由来するACE阻害ペプチドの風味が共通し,かつ,加熱処理によって同等の風味変化を生じ,あるいは生じないという技術常識が存在することを認めるに足りる証拠はない。しかも,ACE阻害ペプチドの配合量の数値に関する上記記載も,概括的なものであるから,仮にこれがACE阻害ペプチドを配合した場合の風味変化の改善を確認した結果に基づくものであるとしても,上記多種類の原料に由来するACE阻害ペプチドのいずれについて風味がどの程度改善されたのかを明らかにするものとは到底いえない。したがって,上記配合量の数値の記載があるからといって,本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者は,血圧降下作用を有する物質としてACE阻害ペプチドを液体調味料に混合して加熱処理した場合に,風味変化の改善という本件発明の課題を解決できると認識することはできず,サポート要件を満たすことになるものではない。よって,被告の上記主張は,採用することができない。ウ被告は,本件発明1ないし5及び9がサポート要件を満たす根拠として,ACE阻害ペプチドを添加して加熱処理した液体調味料の風味が改善されたことを示す本件出願後に行われた試験結果の報告書(甲17)が,本件明細書に記載された技術的内 9がサポート要件を満たす根拠として,ACE阻害ペプチドを添加して加熱処理した液体調味料の風味が改善されたことを示す本件出願後に行われた試験結果の報告書(甲17)が,本件明細書に記載された技術的内容を確認し,かつ,裏付けるものであると主張する。しかしながら,前記エに説示のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,その他にACE阻害ペプチドを本件発明における血圧降下作用を有する物質として液体調味料に混同して加熱処理をした場合に,上記課題が解決されたことを示す記載はなく,また,このことを示す技術常識も見当たらない以上,サポート要件の適否の判断に当たって,本件出願後にされた試験の結果を参酌することはできない。よって,被告の上記主張は,採用することができない。 小括以上によれば,血圧降下作用を有する物質として専らコーヒー豆抽出物を使用した本件発明6ないし8は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者がその課題を解決できると認識できるものであるから,サポート要件を満たすものといえる一方,血圧降下作用を有する物質として,コーヒー豆抽出物に加えてACE阻害ペプチドを使用する場合を包含する本件発明1ないし5及び9は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるといえるが,発明の詳細な説明の記載により当業者がその課題を解決できると認識できるものではなく,また,当業者が本件出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できるものであるともいえないから,サポート要件を満たすものとはいえない。よって,本件発明6ないし8に関する本件審決の判断に誤りはないものの,本件発明1ないし5及び9に関する本件審決の判断には,誤りがあり,取消しを免れない。 5 結論よって,本 ない。よって,本件発明6ないし8に関する本件審決の判断に誤りはないものの,本件発明1ないし5及び9に関する本件審決の判断には,誤りがあり,取消しを免れない。 5 結論よって,本件審決のうち,本件発明1ないし5及び9に係る部分をいずれも取り消すこととして,主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官土肥章大裁判官井上泰人裁判官荒井章光
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