平成20(ワ)14884

裁判年月日・裁判所
平成22年12月27日 大阪地方裁判所
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判決文本文38,215 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求1(1) 原告が,被告Zに対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 (2) 被告Zは,原告に対し,平成20年4月1日から毎月15日限り,36万2300円の割合による金員及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2(同1の請求との関係で予備的請求)(1) 被告らは,連帯して,原告に対し,平成20年4月から平成40年8月まで,毎月15日限り,36万2300円の割合による金員及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告らは,連帯して,原告に対し,200万円及びこれに対する平成20年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告Yは,原告に対し,495万5743円及びこれに対する平成20年4月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,原告が,被告らが原告と被告Y(以下「被告Y」という。)との間の派遣労働契約(以下「本件派遣労働契約」という。)及び被告ら間の労働者派遣契約(以下「本件労働者派遣契約」という。)に基づいて原告を被告Z(以下「被告Z」という。)に派遣したことが偽装派遣であることを前提に,(1)被告Zに対し,同被告との間で黙示の労働契約が成立しているなどとして,労働契約に基づいて①労働契約上の権利を有する地位の確認請求(請求の趣旨第1の1(1))とともに②平成20年4月以降の賃金の請求(附帯請求も含む。)(同1(2))を,(2)仮に原告と被告 どとして,労働契約に基づいて①労働契約上の権利を有する地位の確認請求(請求の趣旨第1の1(1))とともに②平成20年4月以降の賃金の請求(附帯請求も含む。)(同1(2))を,(2)仮に原告と被告Zとの間で同労働契約が認められないとしても,予備的に,被告らに対し,被告らの違法な偽装派遣を基礎とする解雇,雇止めにより雇用機会,雇用に値する期待等を侵害されたとして,共同不法行為に基づいて,①賃金相当損害金の損害賠償請求(経済的損害。ただし,平成20年4月から原告が満60歳となる平成40年8月までの間における定期金払請求。同2(1))とともに②慰謝料として200万円の賠償請求(精神的損害。同2(2))を求めるとともに,(3)被告Yに対し,同被告が原告の派遣元として不当に受益した中間搾取相当額について,不当利得返還請求(同3)をそれぞれ求める事案である。なお,原告は,同時審判の申出を行っている。 2 前提事実(ただし,文章の末尾に証拠等を掲げた部分は証拠等によって認定した事実,その余は当事者間に争いのない事実)(1) 当事者ア被告Y(以下,商号変更前のY’株式会社も含めて「被告Y」という。)は,昭和45年4月15日,「a株式会社」という社名でbの料金関係業務を受託する会社として設立され,平成2年8月,Y’株式会社と商号が変更された後,平成21年7月1日,現在の社名に商号が変更された。 同社の主要業務は,bへの人材派遣,請求書発行,ソフトの開発である。 (ただし,被告Zとの関係では,甲1,2,弁論の全趣旨)イ被告Zは,平成19年10月1日,関連する3社を吸収合併し,同日,現在の社名に商号が変更された(以下,特に断らない限り,吸収合併前の「Z’株式会社」と商号変更後の株式会社b’を合わせて,単に「被告Z」という。) 9年10月1日,関連する3社を吸収合併し,同日,現在の社名に商号が変更された(以下,特に断らない限り,吸収合併前の「Z’株式会社」と商号変更後の株式会社b’を合わせて,単に「被告Z」という。)。 同被告は,bの100%子会社であるところ,不動産事業部(なお,上記新商号以前は不動産部という名称であった。以下,特に断らない限りあわせて,「不動産事業部」という。)とサービス運営事業部の2つの事業部を有している。そのうちの不動産事業部は,主にb及びb’株式会社,株式会社b等のbグループが所有する不動産の有効利活用,仲介事業を行い,サービス運営事業部は,ビル管理業務,スポーツ施設運営,店舗運営を行っている。 (ただし,被告Yとの関係では,甲3,4,弁論の全趣旨)ウ原告は,平成14年5月2日,被告Y(当時は,「Y’株式会社」である。)に派遣労働者として登録し,派遣社員として,被告Z(当時は,「b株式会社」である。)へ派遣されることになり,同年7月1日から平成19年9月30日まで,同社の不動産部に,同年10月1日から20年3月31日まで,不動産事業部にそれぞれ配属されていた。 (2) 原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約ア原告は,上記のとおり平成14年5月2日,人材派遣業務を営む被告Yに派遣労働者として登録し,同年7月1日付けで同被告との間で以下のとおりの記載のある就業条件明示書(甲6の①)を取り交わして,同日から被告Zの不動産部で就業を開始した。 (ア) 賃金時給1700円(イ) 支払方法毎月末日締め,翌日15日支払。銀行振込み。 (ウ) 期間平成14年7月1日から同年9月30日まで(エ) 派遣先名称 b就業場所大阪市c区d(オ) 業務 5日支払。銀行振込み。 (ウ) 期間平成14年7月1日から同年9月30日まで(エ) 派遣先名称 b就業場所大阪市c区d(オ) 業務内容事務用機器操作及び付帯業務,現場調査(カ) 就労時間午前9時から午後5時30分まで(休憩60分間)なお,土曜日,日曜日は休日で,休憩時間は,午後12時から午後1時までであった。 イ本件派遣労働契約の更新状況及び原告の賃金状況(ア) 原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約の就労期間の定めは,1回目の3か月を除いて,それ以降いずれも6か月で,同更新は,平成20年3月31日までの間に合計11回なされた(平成14年10月,平成15年4月,同年10月,平成16年4月,同年10月,平成17年4月,同年10月,平成18年4月,同年10月,平成19年4月,同年10月。)(甲6の②ないし⑫)。 (イ) ところで,原告の賃金は,以下のとおり変遷している。 ① 平成15年4月~平成17年3月時給1720円(甲15の①ないし⑧,甲6の③ないし⑥,15の⑨ないし○ 31 )② 平成17年4月~時給1790円(甲6の⑦ないし⑫,15の○ 32 ないし○ 67 )(3) 被告ら間の本件労働者派遣契約ア被告らは,平成15年12月23日,労働者派遣に関する基本契約を締結した(乙2,丙2)。 イ被告らは,平成14年7月1日,原告の被告Zにおける派遣就労について,労働者派遣個別契約を締結し,以後,平成20年3月31日までの間,上記本件派遣労働契約の期間に対応する内容で更新してきた。 被告Yは,本件労働者派遣契約に基づいて被告Zに労働者を派遣してきたが,同派遣に当たって,被告Zに対し 成20年3月31日までの間,上記本件派遣労働契約の期間に対応する内容で更新してきた。 被告Yは,本件労働者派遣契約に基づいて被告Zに労働者を派遣してきたが,同派遣に当たって,被告Zに対し,派遣労働者の氏名,年齢,住所及び派遣期間が記載された派遣通知書を送付してきた。 なお,被告Yと被告Zの原告に係る派遣契約状況は別紙派遣契約状況(甲20③)のとおりである。 (甲20の③,乙3の①ないし⑥,丙3の①ないし⑪)(4) 原告の被告Zにおける業務内容等ア配属先平成14年7月1日~平成15年6月30日不動産部第1営業担当平成15年7月1日~平成19年9月30日同部第3営業担当平成19年10月1日~平成20年3月31日不動産事業部第1営業担当なお,第1営業担当と第2営業担当との相違は,担当エリアが異なるだけである。 イ業務内容(ア) b’株式会社,株式会社bの所有物件を,所有者に代わって借主と賃貸借契約の締結を行うこと(イ) 上記各会社の所有物件を,被告Zが直接所有者から借りて,他のユーザーに転貸すること(いわゆるサブリース)(ウ) すべての対象物件をパトロールし,写真撮影をした上で,上司への決済資料を作成すること(5) 本件派遣労働契約の終了被告Zは,原告に係る被告Yとの間の本件労働者派遣契約を平成20年3月31日をもって解消し,その結果,原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約も解消となり,原告は,同年4月1日から被告Zの下で業務に従事することができなくなった。 3 本件の争点(1)ア原告と被告Zとの間の労働契約の成否(争点1)(ア) 黙示の意思表示に基づく労働契約の成否(イ) 労働者派遣事業 ことができなくなった。 3 本件の争点(1)ア原告と被告Zとの間の労働契約の成否(争点1)(ア) 黙示の意思表示に基づく労働契約の成否(イ) 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)40条の4違反に基づく期間の定めのない労働契約の成否イ仮に原告と被告Zとの間の労働契約が認められるとした場合,原告との間の同契約関係を終了させたこと(解雇ないし雇止め)の有効性並びに賃金請求権の有無及びその額(争点2)(2) 被告Yに対する不当利得返還請求の成否及びその額(争点3)(3) 被告らの原告に対する共同不法行為の成否並びに損害の有無及びその額(争点4) 4 争点に対する当事者の主張(1) 原告と被告Zとの間の労働契約の成否(争点1)について(原告)ア労働者派遣法違反による原告と被告Yの本件派遣労働契約及び被告ら間の本件労働者派遣契約の無効について(ア) 労働者派遣法40条の2違反原告が被告Zの下で従事していた業務は,労働者派遣法40条の2で制限する就労期間について制限のない労働者派遣法施行令(以下「政令」という。)4条で定める26の業務(以下「政令26業務」という。)ではない。しかし,被告らは,労働者派遣の役務提供を受ける期間(労働者派遣法40条の2)を潜脱する目的で,原告の行う業務が上記各号に該当する業務であるとして派遣業務を偽装した違法な派遣を行っていた。 ① 原告が同従事していた業務は,以下のとおり政令4条5号(以下「政令5号業務」という。)及び同9号(以下「政令9号業務」という。)に該当しない。 a 政令5号業務に該当しないこと政令 事していた業務は,以下のとおり政令4条5号(以下「政令5号業務」という。)及び同9号(以下「政令9号業務」という。)に該当しない。 a 政令5号業務に該当しないこと政令5号業務とは,「電子計算機,タイプライター,テレックス,又はこれらに準ずる事務用機器の操作の業務」をいう。しかし,被告Zの下で原告が行っていた主たる業務は,不動産に係る賃貸借契約の決済行為,貸付管理代行業務,サブリース契約業務,その他の文書作成業務,物件調査業務であり,それぞれの業務遂行のために必要な範囲で,手段としてパソコンを利用して上記業務に必要な文書や表作成を行っていたにすぎない。原告の業務は,パソコン自体を専門とする業務ではないため,政令5号業務には該当しない。 仮に上記の点をおくとしても,原告の業務内容には,電話対応,顧客対応やクレーム処理,現地確認や現地調査等パソコンを使用しない業務も相当割合存在した。それらは,主要業務と一体的に行われる準備及び整理の業務には該当しない。 なお,原告の場合,パソコンを使用しない業務の割合は,一日又は一週間のうちで,優に1割を超えており,複合業務として適法となるものではない。この点は,労働局の調査,是正勧告においても同様の判断がなされている。 b 政令9号業務に該当しないこと政令9号業務とは,「新商品の開発,販売計画の作成等に必要な基礎資料を得るためにする市場等に関する調査又は当該調査の結果の整理若しくは分析の業務」であって,具体的には,市場調査等の調査を企画若しくは実施し,又はその結果を集計若しくは分析し,最終的に統計表の作成を行う業務である。政令9号業務において予定されている「調査」とは,いわゆるマーケティング業務(顧客ニー 場調査等の調査を企画若しくは実施し,又はその結果を集計若しくは分析し,最終的に統計表の作成を行う業務である。政令9号業務において予定されている「調査」とは,いわゆるマーケティング業務(顧客ニーズを的確につかんで製品計画を立て,最も有利な販売経路を選ぶ活動)をいう。しかし,原告が行っていたような不動産の物件管理のための調査や賃貸が可能か否かを調査する業務は上記9号業務に該当しない。 ② 原告が同従事していた業務が,政令5号業務及び政令9号業務に該当しないことは以下の事情からも明らかである。 a 派遣元は,労働者派遣を行う場合,派遣労働者に対して就業条件を明示しなければならない(派遣法34条)ところ,政令26業務について労働者派遣を行う場合,当該業務の(政令4条の)号番号を必ず付す必要がある(甲18・175頁)。また,派遣元管理台帳や派遣先管理台帳にも当該対象業務の号番号を記載しなければならない(甲18・190頁,261頁)。 しかし,原告に交付された就業条件明示書には,号番号の記載がない。また,被告ら間の労働者派遣個別契約書(丙3の①ないし⑪)にも,最後の平成19年10月から平成20年3月のものには5号の記載があるものの,その他の同各契約書には号番号の記載はない。 さらに,被告らがそれぞれ作成している派遣元管理台帳や派遣先管理台帳にも号番号の記載がない。 b 原告は,平成20年9月11日,H労働局に対し,文書によって是正申告を行った。H労働局は,同年10月30日,平成14年7月1日から平成20年3月31日までの間,被告Zが被告Yから派遣された労働者について,政令5号業務に該当しない不動産関係の営業業務に従事させていた旨認定して,被告らに対して,是正指導を行っている。 (イ) 職業安定法(以 日までの間,被告Zが被告Yから派遣された労働者について,政令5号業務に該当しない不動産関係の営業業務に従事させていた旨認定して,被告らに対して,是正指導を行っている。 (イ) 職業安定法(以下「職安法」という。)44条及び労働基準法(以下「労基法」という。)6条違反① 被告らは,上記(ア)で記載したとおりの違反のほか,抵触日(労働者派遣法26条5項,6項)や就業条件明示義務(同法34条1項3号,2項)等に違反している上,直接雇用申込義務(同法40条の4)にも違反して,派遣就労可能期間の制限を潜脱し,5年9か月もの長期間にわたって原告に被告Zの下での派遣就労を継続させた。 ② 原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約及び被告らの間の本件労働者派遣契約は,上記①で記載したとおり脱法的な労働者供給契約というべきであって,職安法44条及び労基法6条に違反する。 (ウ) 原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約及び被告らの間の本件労働者派遣契約が無効であること原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約及び被告らの間の本件労働者派遣契約は,上記(ア)(イ)で記載したとおり労働者派遣法に違反するとともに職安法44条,労基法6条に違反する違法性の強いものである。したがって,同各契約は,いずれも民法90条により無効というべきである。 イ原告と被告Yとの間に期間の定めのない黙示の労働契約が成立していること(ア) 原告と被告Y間の本件派遣労働契約及び被告ら間の本件労働者派遣契約は,上記ア(ウ)で記載したとおり民法90条により無効というべきである。 (イ) 労働契約の成立要件労働契約は,労務提供とその対価としての賃金支払の合意のみで成立する諾成契約であり,同契約の成否は,労務提供と賃金支払の契約意 り無効というべきである。 (イ) 労働契約の成立要件労働契約は,労務提供とその対価としての賃金支払の合意のみで成立する諾成契約であり,同契約の成否は,労務提供と賃金支払の契約意思が合致していることをもって足り,賃金額を決定することまでは要しない。また,労働契約かどうかは契約形式ではなく,実態的な客観的事実から推認される意思に基づいて契約効果を判断すべきである。 (ウ) 黙示の労働契約の成立労働契約も他の私法上の契約と同様に当事者間の明示の合意によって締結されるほか,黙示の合意によっても成立するところ,労働契約の本質は,使用者が労働者を指揮及び監督し,労動者が賃金の支払を受けて労務を提供することにあるから,黙示の合意により労働契約が成立したか否かは当該労務供給形態の具体的実態により両者間に事実上の支配従属関係,労務提供関係,賃金支払関係があるかどうか,この関係から両者間に客観的に推認される黙示の意思の合致があるかどうかによって判断されるべきである。 ① 事実上の使用従属関係a 就労開始時の状況原告は,被告Yに派遣登録をした後,被告Zで就労を開始するまでの間,被告Yの採用面接を受けたことはない。被告Yの担当者は,原告に対し,電話で,派遣先での仕事の内容が不動産関係であり,派遣期間が3か月であるとの説明をしたのみである。被告Y担当者は,原告が被告Zで就労を開始するに当たって,同行したが,被告Z担当者を紹介した後すぐに帰り,その後,原告は,被告Zの担当者から会社の案内,就業条件明示書の交付を受けた。 b 具体的な指揮命令及び監督関係(適法な指揮命令権限の授権がない下での指揮命令の事実)被告Zによる原告に対する指揮命令及びそれに対する原告の労務が,適法 の交付を受けた。 b 具体的な指揮命令及び監督関係(適法な指揮命令権限の授権がない下での指揮命令の事実)被告Zによる原告に対する指揮命令及びそれに対する原告の労務が,適法な派遣に基づかない場合,被告Zが原告に対して指揮命令を行って,労務提供を受けていたことは,原告と被告Zとの労働契約関係を基礎づける事実となるというべきである。 原告は,被告Zでの就労開始後,被告ZのA部長から決済等を通じて業務指示を受けていた。また,業務のやり方についての説明は,就労当初はB課長代理,平成15年に第三営業部に異動してからはC課長代理から受けていた。さらに,平成19年4月に第一営業部に異動した後は,D課長の業務指示を受けて業務を行っていた。その間,被告Yから業務の指示を受けたことはなかった。 c 原告の勤務状況原告が従事していた業務内容は,被告Zの正社員と異なるものではなかった。被告Zは,原告に対し,正社員との区別のない従業員証明書を交付し,正社員と同じ作業着,靴,ジャンパー等を支給した。更衣室や休憩室も正社員と派遣社員の区別はなかった。 d 被告Zの原告に対する労務管理被告Zは,労働者派遣の派遣先事業主という立場を越えて,原告の使用者として原告に係る労務管理を行っていた。本件派遣労働契約の内容の確定,同契約の更新,同契約の終了等,すべて被告Zの意思と権限をもって行われた。被告Zは,使用者として原告のすべての労務管理を行っていた。残業・休日出勤をする場合の報告は,被告Zの社員にして許可を得ており,有給休暇の申請も被告Zに行っていた。これらについて,被告Yに対しては,何ら報告をすることもなかった。 e 被告Zにおける研修原告は,被告Zの 被告Zの社員にして許可を得ており,有給休暇の申請も被告Zに行っていた。これらについて,被告Yに対しては,何ら報告をすることもなかった。 e 被告Zにおける研修原告は,被告Zの社員と同様,被告Zが実施した企業倫理研修,個人情報保護法に関する研修,社会保険労務士の資格取得に向けた勉強会等に参加した。 ② 労務提供関係原告は,被告Zでの就労開始からそこでの就労ができなくなる(解雇,雇止め)までの間,被告Z以外で就労した事実はない。 ③ 賃金支払関係原告は,被告Zの下で働いていた期間,2度の昇給があったが,その際,被告Zの総務部から昇給する旨の通知を受けた。ところで,原告が被告Yから賃金等として受領する金員は,被告Zから被告Yに支払われた金員から被告Yの利益等を控除した額を基礎とするものであった。以上のことからして被告Zが,原告が給与等の名目で受領する金員の額を実質的に決定する立場にあったというべきである。 ④ まとめ上記①ないし③の事情からして,被告Zが原告を直接指揮命令監督して,その業務に従事せしめ,実質的に,その採用,失職,就業条件の決定,賃金支払等を行い,原告がこれに対応して被告Zに労務提供していたというべきである。したがって,原告と被告Zの実態関係を法的に根拠付けるのは,原告と被告Z間の労働契約のほか考えられず,両者間には,就労開始時点において,黙示の労働契約が成立していたというべきである。 (エ) 黙示の労働契約の内容(期間について)原告と被告Zとの間には,上記(ウ)で記載したとおり原告の就労開始時点において,黙示の労働契約が成立していたが,原告の就労実態及び更新状況等にかんがみれば,同契約は,期間の定めがないものであるというべきであ との間には,上記(ウ)で記載したとおり原告の就労開始時点において,黙示の労働契約が成立していたが,原告の就労実態及び更新状況等にかんがみれば,同契約は,期間の定めがないものであるというべきである。 ウ労働者派遣法40条の4違反に基づく原告と被告Zとの間の労働契約の成立(ア) 仮に原告が被告Zで就労を開始した時点で黙示の労働契約が成立していないとしても,被告Zは,原告が従事していた業務が政令26業務に該当しなかったため,労働者派遣法40条の4に基づいて,派遣受入期間の制限を超過した時点において,原告に対し,直接雇用申込義務を負っていたところ,同義務を履行していない。 したがって,原告が被告Zの下で就労を開始して1年が経過した平成15年7月1日,あるいは遅くとも就労開始3年を経過した日である平成17年7月1日には,労働者派遣法40条の4に基づいて,被告Zに対する直接あるいは同条の趣旨から導き出される直接雇用申込義務違反の効果として,原告と被告Zとの間に労働契約が成立しているというべきである。 (イ) なお,派遣元の被告Yから派遣先の被告Zに対して労働者派遣法35の2第2項に基づく通知がなされていないため,被告Zに直接雇用申込義務が発生しないように見える。しかし,同法40条の4は適法な派遣を前提とした規定であるところ,被告ら間の本件労働者派遣契約は,上記アで記載したとおり違法性の強い形態による派遣である。また,派遣元が同法35条の2第2項による通知を行っていない場合,派遣先は,同項の通知を受けていないことを理由として,同法40条の4による直接雇用申込義務を免れることはできないと解すべきである。このような場合,同法40条の4が直接適用されて直接雇用申込義務が発生するか,少なくとも同法の趣旨から直接雇 理由として,同法40条の4による直接雇用申込義務を免れることはできないと解すべきである。このような場合,同法40条の4が直接適用されて直接雇用申込義務が発生するか,少なくとも同法の趣旨から直接雇用申込義務が課されると解すべきである。本件の被告Zは,同法違反に故意又は過失により直接加担した派遣先であって同法35条の2第2項の通知を受けるべき正当な期待はない。 したがって,被告Zは,上記通知を受けていなかったとしても1年の派遣受け入れ可能期間を経過した時点で,派遣法40条の4が直接適用されるか,その趣旨から直接雇用申込義務が生じるというべきである。ところで,同法40条の4の義務は,派遣先に法律上,私法上の直接雇用申込義務を課したものであって,派遣先に対して単に労働契約の申込みをすべき努力義務を課したにとどまるものではない。直接雇用申込義務が課せられている派遣先が,なおも派遣労働者による労務提供を受けた場合,労務提供を受け入れたことは労働契約の申込であると解すべきであり,これによって派遣先と派遣労働者との間には直接労働契約関係が成立していると解される。 エまとめ上記アないしウで記載したとおり原告と被告Zとの間で労働契約が成立しているところ,同契約は,期間の定めがない契約であり,賃金に関しては,主位的には,被告Zが原告との関係で被告Yに支払っていた月額36万2300円とされるべきであり,予備的には,原告が被告Yから現実に受領していた月額28万5336円とされるべきである。 (被告Z)ア政令26業務該当性について原告が被告Zの下で従事していた業務内容は,政令26業務のうち,政令5号業務及び政令9号業務に該当し,かつ,同各号業務と一体不可分とはいえない一般業務が1日当たり又は1週間当たりの就業時間数に占め 原告が被告Zの下で従事していた業務内容は,政令26業務のうち,政令5号業務及び政令9号業務に該当し,かつ,同各号業務と一体不可分とはいえない一般業務が1日当たり又は1週間当たりの就業時間数に占める割合は1割以下であったことは明らかであって,被告Zは,原告を派遣社員として受け入れるに当たって,派遣就労可能期間に制限を受けず,したがって,労働者派遣法40条の2に違反していない。 (ア) 原告の行っていた業務内容は,貸付管理代行業務で,パソコンにより得られたデータ入力,賃貸借契約書の作成等の事務機器操作及び賃貸借契約締結に向けての市場調査が基本であり,同業務のうち,パソコンによるデータ入力業務,賃貸借契約書等の作成業務は,政令26業務のうち政令5号業務に該当し,同業務の前提となる市場調査業務は,政令9号業務に該当する。 (イ) 原告に係る就業条件明示書等の一部には,号番号の記載漏れがあるが,いずれの資料についても,原告の業務が「事務機器操作」及び「現地調査」と明記されており,号番号の記載漏れは,形式的かつ軽微な不備にすぎない。 (ウ) 現代社会においてパソコン普及率が高くなったとはいえ,パソコン使用の速度,精度,多種多様なパソコン機能を利用した入力等を考慮すれば,パソコンを利用した入力作業やワープロ作業は,政令5号業務に該当するというべきである。厚生労働省職業安定局通達においても,本件のような貸付管理代行業務において行われる各種調査業務を政令26業務の政令9号業務から除外する旨の記載はない。同業務が,賃貸借契約を締結する前提として,同契約締結時における物件近隣の賃料等を調査し分析を行うことからすれば,同業務に該当するというべきである。 (エ) 原告が担当していた電話応対業務は,賃貸借契約書等を作成する上 る前提として,同契約締結時における物件近隣の賃料等を調査し分析を行うことからすれば,同業務に該当するというべきである。 (エ) 原告が担当していた電話応対業務は,賃貸借契約書等を作成する上で必要なものも多く,政令5号業務と一体不可分の業務である。また,貸付管理代行業務のうち,賃貸借契約を締結する前提として必要となる市場調査に関係する業務は,政令9号業務に該当する。 (オ) 原告が被告Zの下で従事した業務のうち,一般業務の1日当たり又は1週間当たりの就業時間数に占める割合が,1割を超えることはない。 イ原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約及び被告ら間の本件労働者派遣契約の有効性仮に原告の派遣について,労働者派遣法に適合しない事実が存在したとしても,同事実が,原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約及び被告ら間の本件労働者派遣契約の有効性に影響を与えることはない。 (ア) 職安法44条及び労基法6条違反の事実がない。 職安法は,労働者派遣をその適用対象の労働者供給から除外している。 労働者派遣は,労働者派遣法に適合するか否かにかかわらず,職安法が規定する労働者供給には該当せず,専ら労働者派遣法の適用を受ける。 したがって,労働者派遣法に適合しない事実が存在したとしても,職安法44条に違反することはあり得ず,労基法6条に反することもない。 (イ) 民法90条に違反しないこと仮に原告が従事した業務内容が政令5号業務及び政令9号業務に該当しないとしても,被告Zは,故意に当該状況を招いたわけではなく,原告を派遣労働者として業務に従事させて以降,被告ら間の原告に係る個別労働者派遣契約が終了となるまでの間,同各業務に該当しない旨の状況を認識したことはない。この 故意に当該状況を招いたわけではなく,原告を派遣労働者として業務に従事させて以降,被告ら間の原告に係る個別労働者派遣契約が終了となるまでの間,同各業務に該当しない旨の状況を認識したことはない。この点は,被告Zが営業活動が伴う転貸事業について派遣労働者を従事させていなかったことからも明らかである。 したがって,原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約及び被告ら間の本件労働者派遣契約が民法90条に違反することはない。 (ウ) 黙示の労働契約に係る判断要素原告は,被告Zとの間で黙示の労働契約が成立するか,その考慮要因として,事実上の使用従属関係,労務提供関係,賃金支払関係という3つの要素のみを取り上げるだけで,原告との労働契約を締結している派遣元の独立性について検討していない。ところで,被告Yは,労働者派遣業務について名目的な存在ではなく,被告Zとは独自性を有している。 したがって,原告と被告Zとの間に黙示の労働契約が成立することはない。 (エ) まとめ上記(ア)ないし(ウ)で記載したとおり原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約及び被告ら間の本件労働者派遣契約は,いずれも有効である。同各契約がいずれも有効であることは,当事者の意思にも合致する。すなわち,原告は,自身が被告Yと労働契約を締結している派遣労働者であるとの認識を当初から有していた。 ウ労働者派遣法40条の4違反に基づく労働契約の成否(ア) 労働者派遣法40条の4は,派遣先企業の直接雇用申込義務の発生要件として,派遣元企業による抵触日に関する通知について規定しているところ,被告Zは,被告Yから抵触日に関する通知を受領していない。 したがって,被告Zには原告に対する直接雇用申込義務が発生していない。しかも,同条は,同義務違 抵触日に関する通知について規定しているところ,被告Zは,被告Yから抵触日に関する通知を受領していない。 したがって,被告Zには原告に対する直接雇用申込義務が発生していない。しかも,同条は,同義務違反をもって直ちに派遣先からの労働契約の申込があったのと同じ効果を発生するとまでは規定しておらず,そのように解釈することもできない。 (イ) また,原告は,派遣就労可能期間以降における原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約及び被告ら間の本件労働者派遣契約が労働者派遣法違反を理由に無効であることを前提とした主張をするが,同前提自体誤っており,その限りにおいても,原告の同主張は理由がない。 (2) 仮に原告と被告Zとの間の労働契約関係が認められるとした場合,原告との契約関係を終了させたこと(解雇ないし雇止め)の有効性(争点2)について(原告)ア被告Zの原告に対する解雇ないし雇止めの意思表示(ア) 平成20年2月22日,D課長及びE課長は,原告に対し,被告Zの契約社員として採用ができないこと,派遣契約は本来同年3月31日までで打ち切るところであるが,原告の長年に亘る功績を考慮して同年6月30日までの3か月に限り就職活動期間として派遣社員として契約すること,その期間においては休みをとって就職活動をしてもよいこと及びそれ以降は,派遣契約を更新しない旨述べた。 (イ) D課長及びE課長の同発言は,原告に対する解雇の意思表示にあたり,被告Zは,原告に対し,同年3月31日付けで解雇したというべきである(以下「本件解雇」という。)。 (ウ) 仮に原告と被告Zとの間の労働契約について,更新期間に対応する期間の定めがついているとしても,D課長及びE課長の上記発言は,原告に対する雇止めの意思表示にあたり,被告Zは, う。)。 (ウ) 仮に原告と被告Zとの間の労働契約について,更新期間に対応する期間の定めがついているとしても,D課長及びE課長の上記発言は,原告に対する雇止めの意思表示にあたり,被告Zは,原告との労働契約について,同年3月31日付けで雇止めをしたことになる(以下「本件雇止め」という。)。 イ解雇権濫用(ア) 本件解雇は,解雇理由となる事実は全く存在しないから,この限りにおいて,無効である。仮に正社員の配置の事実が存在したとしても,契約社員の採否とは何ら関係がなく,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であるとは認められない。 (イ) 期間の定めのある労働契約の雇止め(更新拒絶)については,①従事する業務の客観的内容,②契約上の地位の性格,③当事者の主観的態様,④更新手続の手続・実態,⑤他の労働者の更新状況,⑥その他の事情を総合的に考慮し,更新拒絶が信義則違反・権利濫用に当たれば,許されない。 ところで,原告の被告Zにおける業務内容は,正社員の業務内容と異ならず,恒常性があり,臨時的業務ともいえないこと,原告については平成14年7月以降5年9か月という長期間に11回にも上る多数回の更新がされていること,同各更新の際,原告に対し,雇用期間が限定されている旨の説明がなかったこと,被告Zから原告に対し,契約社員候補者としての意思確認がなされていたこと,他の被告Yからの派遣社員も,ほとんどが契約を長期間にわたってほぼ自動的に更新されていたことからすると,原告に対する本件雇止めの意思表示は信義則に反し,権利の濫用であり許されない。 (被告Z)ア原告と被告Zとの間には労働契約が成立していないから,そもそも解雇ないし雇止めということ自体存在しない。 イ仮に上記の点をおくとしても ,権利の濫用であり許されない。 (被告Z)ア原告と被告Zとの間には労働契約が成立していないから,そもそも解雇ないし雇止めということ自体存在しない。 イ仮に上記の点をおくとしても,原告の主張は理由がない。 (ア) 本件解雇について被告Zが原告に係る労働者派遣契約を終了させた理由は,原告の業務内容である貸付管理代行業務が減少傾向にあることと,貸付管理代行業務の減少に伴い,今後サブリース・オーダーリース業務に重点を置きつつ展開していく方針となったこと,サブリース業務の性質上,不特定多数の者を対象として転借人を探すという営業活動が中心的要素となり,それらが原告の業務である政令5号業務及び政令9号業務には該当しないことから,サブリース・オーダーリース業務を原告に行わせることができず,正社員を配置したというところにある。したがって,被告Zの原告に係る本件労働者派遣契約の終了には,客観的に合理的な理由があり,社会的相当性もあるというべきである。 (イ) 本件雇止めについて正社員の業務は,貸付管理代行業務に限られないため,原告の業務と被告Zの正社員の業務に全く異なるところがないということではない。 また,原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約及び被告ら間の本件労働者派遣契約が自動更新された事実はなく,被告Zが,原告に対して本件労働者派遣契約が継続されるという期待を抱かせたような発言も一切ない。上記(ア)で記載したとおり被告Zが原告に係る本件労働者派遣契約を終了させたことには,客観的に合理的な理由があり社会通念上相当なものであったというべきである。 (3) 被告Yに対する不当利得返還請求の成否及びその額(争点3)について(原告)ア被告Yは,被告Zと共同して脱法的な業務偽装により,派遣受 当なものであったというべきである。 (3) 被告Yに対する不当利得返還請求の成否及びその額(争点3)について(原告)ア被告Yは,被告Zと共同して脱法的な業務偽装により,派遣受入可能期間の制限に違反して原告を5年9か月もの長きにわたり被告Zの下で就労させた。その間,被告Yは,派遣元として形式的に雇用主という立場にいたが,実質的な雇用主としての役割はほとんど果たしてこなかった。したがって,被告Yと原告との間に労働契約が存在するとは観念できないにもかかわらず,被告Yは,あたかも派遣元として被告Zから派遣料金を取得し,それより低額な賃金を原告に支払って中間利益(マージン)を不当に取得し,その結果,原告が同利得額相当の損失を被った。そうすると,被告Yが被告Zから得ていた同不当な利得は法律上の原因を欠いているというべきである。 また,仮に被告Yと原告との間に派遣受入可能期間である1年の範囲で形式的に労働契約が存在していたとしても,派遣受入可能期間の1年を超える部分については,意見聴取の手続を履践せずに1年の派遣就労期間制限に違反し,直接雇用申込義務を潜脱した違法な労働者派遣であり,形式上の適法な派遣契約もなく,重大な派遣法違反があって無効である。したがって,少なくとも被告Yが被告Zから派遣受入可能期間である1年を超えて得ていた上記利得は法律上の原因がないことは明らかである。 イそこで,被告Yが受領してきた不当な利得であるが,その額は,別紙「原告給与支給額差額表」記載のとおり,被告Zが被告Yに支払った給与の差額である502万9743円となるところ,被告Yは,原告に対し,賞与として合計7万4000円を支給しているため,同差額から同賞与支給額を控除した495万5743円が利得額となる。なお,被告Zが被告Yに である502万9743円となるところ,被告Yは,原告に対し,賞与として合計7万4000円を支給しているため,同差額から同賞与支給額を控除した495万5743円が利得額となる。なお,被告Zが被告Yに支払った金額は,派遣料金各単価に,原告の労働時間を乗じることで算出した。 また,仮に派遣受入可能期間である1年を超える平成15年7月から平成20年3月までの間における利得額を不当利得とすると,その利得額は,396万5601円(403万9601円-7万4000円)となる。 ウところで,原告の上記損失であるが,被告Yが業務偽装のような極めて違法性の強い偽装工作を行っている場合には,そのような中間利益を得る根拠が全くないため,本来原告の労務提供と対価性を有する中間利益分は,原告が受けるべき利益を受けていないというべきであるから,同利益相当分が原告の「損失」となる。 エ被告Yの利得と原告の損失の間の因果関係であるが,原告の上記損失は,被告Yの業務偽装の派遣により,被告Zから派遣料金の支払いを受けた上でそれを下回る給与を原告に支給し,その差額を利得することで生じていることからすると,同因果関係があるというべきである。 (被告Y)ア原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約及び被告ら間の本件労働者派遣契約は,労働者派遣法に違反していない。 イ仮に被告Yにおいて,労働者派遣法違反の事実があったとしても,そのことから直ちに原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約が無効となるわけではなく,原告の賃金の決定,労務管理の状況等にかんがみれば,原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約は有効である。 ウまた,仮に原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約が無効であったとしても,被告Yが受領してきた利益について,原告に「損失」が んがみれば,原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約は有効である。 ウまた,仮に原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約が無効であったとしても,被告Yが受領してきた利益について,原告に「損失」が観念できる訳ではない。被告Zが被告Yに支払ってきた金員は,被告Yに対する派遣料金として支払ってきたもので,原告に対する賃金として支払ってきたものではない。原告の労働の対価は飽くまでも原告が被告Yから現に支給されてきた賃金であって,それ以上でもそれ以下でもない。これは本件派遣労働契約が無効であっても同じである。 エ上記アないしウで記載したとおりいずれにしても原告の被告Yに対する不当利得返還請求は理由がない。 (4) 被告らの原告に対する共同不法行為の成否並びに損害の有無及びその額(争点4)について(原告)ア被告らの違法行為(ア) 原告の被告Zにおける業務内容からすると,被告Zは,原告を自ら直接雇用して就労させるべきであった。しかし,被告Zは,原告を自ら直接雇用することなく,形式的には労働者派遣の法形式をとり,かつ,労働者派遣法26条7項で禁止されている事前面接を行う一方で,業務偽装という手法をとって,派遣受入可能期間を意図的に潜脱し,直接雇用責任(使用者責任)を負うことなく(何らの制限のない形で全く正当な理由なしで本件労働者派遣契約を打ち切ることで派遣労働者の雇用の場を奪うこと),原告を指揮命令し長期間その労務を利用しようとし,事実そのように利用してきた。このような被告Zの労働者派遣法に違反した一連の行為で,原告の雇用の場を得て賃金を受けるべき地位を侵害した被告Zの行為は,強度の違法性を帯び,不法行為に該当する。 また,被告Zは,原告を本件解雇ないし本件雇止めにしたところ,同解雇ないし同雇止め の雇用の場を得て賃金を受けるべき地位を侵害した被告Zの行為は,強度の違法性を帯び,不法行為に該当する。 また,被告Zは,原告を本件解雇ないし本件雇止めにしたところ,同解雇ないし同雇止めは,上記(2)の原告の主張で記載したとおりいずれも正当な事由がなくなされたものであって,労働契約法16条に違反するものであり,無効であるところ,同解雇等は,労働者の労働契約上の権利を侵害したものとして,不法行為上の違法性を帯びるというべきである。 (イ) 被告Yは,被告Zとの間で脱法的な本件労働者派遣契約を締結し,長期間原告を被告Zに派遣することで,労働者派遣法の潜脱に手を貸して原告の安定した就労への期待を奪っただけではなく,被告Zによる違法な同契約の打ち切りを招いて原告の雇用を失わせた。被告Yの同行為は,原告に対する不法行為が成立する。 (ウ) 原告は,被告らの上記(ア)(イ)で記載した行為により,継続的に被告Zに対して労務を提供してその対価として賃金を得る権利ないし地位(現実に賃金の支払を受けていた被告Yに対する,あるいは,直接雇用された場合には賃金支払いを受けることになっていた被告Zに対する)を侵害され,あるいは継続的に被告Zに対して労務を提供してその対価として賃金を得ることについての正当な期待権を侵害された。 イ共同不法行為性被告らの上記各行為は,原告を違法な状態で就労させ,結果として原告の雇用を失わせる行為として,客観的に関連共同している。 ウ原告の損害(ア) 経済的損害(上記第1の2(1))① 原告は,本来,被告Zに直接雇用されていれば本件解雇ないし本件雇止めをされることがなかったにもかかわらず,被告らの労働者派遣法に違反する政令26業務偽装行為及びその結果,被告Zによる全く ① 原告は,本来,被告Zに直接雇用されていれば本件解雇ないし本件雇止めをされることがなかったにもかかわらず,被告らの労働者派遣法に違反する政令26業務偽装行為及びその結果,被告Zによる全く制限のない形で同解雇ないし同雇止めされたことによって,平成20年4月以降定期的に,本来であれば得られ続けることができるはずであった賃金を取得できる権利(法的利益)について,同賃金相当額の経済的損害を被った。そこで,原告が被った1か月当たりの同賃金相当損害金は,被告Zが被告Yに形式上原告に係る派遣料金として支払っていた金員とすべきであるから,同解雇ないし同雇止めされる直前3か月(平成20年1月ないし3月)の平均月額相当額である36万2300円となる。 ② 仮に同金額が認められないとしても,少なくとも従来原告が被告Yから得ていた賃金額を下回らないことは明らかであるから,同解雇ないし同雇止めされる直前3か月(平成20年1月ないし3月)の平均月額相当額である28万5336円となる。 ③ 上記①,②からすると,被告らの共同不法行為により,原告が被る損害額は,平成20年4月以降,毎月15日限り,月額36万2300円(これが認められないとしても,少なくとも月額28万5336円)相当の定期金としての損害が発生しているというべきである。 ④ なお,将来の損害賠償請求は原則的に否定されているが,仮に将来請求にかかるものとして定期金賠償が認められないとしても,このような専門業務偽装の上での制約のない形での同解雇ないし同雇止めがなければ,原告は,少なくとも1年間の雇用継続は見込めたといえる。 したがって,仮に定期金賠償が認められないとしても,少なくとも(ⅰ)月額36万2300円の1年間の賃金相当額である434万7600円あるいは,(ⅱ は,少なくとも1年間の雇用継続は見込めたといえる。 したがって,仮に定期金賠償が認められないとしても,少なくとも(ⅰ)月額36万2300円の1年間の賃金相当額である434万7600円あるいは,(ⅱ)仮に月額28万5336円としても,342万0432円について,相当因果関係にある損害として認められるべきである。 (イ) 精神的損害(上記第1の2(2))原告は,被告らの違法行為によって雇用継続への期待,安定した雇用への期待が奪われた。これによって原告が被った期待(精神的損害)を慰謝するためには,どれだけ低く見積もったとしても200万円を下ることはない。 (被告Z)ア被告Zが派遣就労可能期間を意図的に潜脱した事実はない。 被告Zは,被告Yとの間の本件労働者派遣契約を期間満了により終了させたのであり,それ以上の終了理由等まで必要はなく,法律上も要求されていない。ただし,被告Zには,貸付管理代行業務の減少,原告の業務が,政令5号業務及び政令9号業務に該当するものであったため,不特定多数への営業行為を行うサブリース・オーダーリース事業に原告を従事させられなかったこと,定期人事による正社員の配置という事情が存在したことがあるところ,以上の事実からして,被告ら間の労働者派遣契約を期間満了により終了させたことには正当な理由が存在するというべきである。 また,仮に被告Zに労働者派遣法違反が存在したとしても,本件労働者派遣契約期間の満了による同契約の終了により,同法違反は結果的に是正されたというべきであって,直ちに不法行為と評価することはできない。 イ被告Zは,原告に対し,直接の労働契約や労働契約更新に対する期待を抱かせる行為を一切していない。D課長及びE課長の原告に対する言動は,契約社員候補とし ちに不法行為と評価することはできない。 イ被告Zは,原告に対し,直接の労働契約や労働契約更新に対する期待を抱かせる行為を一切していない。D課長及びE課長の原告に対する言動は,契約社員候補として推薦するが,推薦しても良いかと確認する行為であって,同推薦の際通常行われる程度の言動であり,殊更取り上げて問題視するような内容ではない。原告には,契約社員としての採用について,法的保護が必要と判断されるような強い期待は一切存在しない。 ウ原告主張に係る損害は,否認ないし争う。 (被告Y)ア原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約及び被告ら間の本件労働者派遣契約は,いずれも労働者派遣法に違反していない。 イ被告Yは,被告Zとの間の本件労働者派遣契約において,①不動産事業における各種契約書の作成,②法規制資料の収集,③プレゼンテーションの作成,④契約状況のとりまとめ,⑤料金請求資料の作成,⑥不動産賃貸に伴う現場調査,⑦事務室,駐車場等の近傍調査を原告の業務として確認した上,同①③④⑤については,政令5号業務と判断し,同②⑥⑦については,政令9号業務と判断した。被告Yは,原告との間の本件派遣労働契約の中で,被告Zでの業務について,専門業務であるとの認識の下で同契約を更新してきた。したがって,被告Yが労働者派遣法の潜脱に手を貸したとはいえない。 ウなお,仮に原告の派遣先である被告Zでの業務が一般業務としての労働者派遣であったとしても,派遣就労可能期間経過後に原告と被告Zとの間で直接労働契約が締結されるであろうとの前提は成り立たない。被告Zは,原告と直接労働契約を結ぶのではなく,派遣就労可能期間満了により直ちに原告との派遣契約を終了させていた可能性も十分にあり得る。したがって,原告の被告Zでの業務が一般業務としての 立たない。被告Zは,原告と直接労働契約を結ぶのではなく,派遣就労可能期間満了により直ちに原告との派遣契約を終了させていた可能性も十分にあり得る。したがって,原告の被告Zでの業務が一般業務としての労働者派遣であったとしても,平成20年3月31日時点で原告と被告Zとが直接雇用状態にあったかどうか不明である。そうすると,原告の同主張は,失当である。 エまた,原告が主張する原告の安定した就労への期待を奪ったとの主張であるが,その期待した内容は不明確である。仮に原告が直接雇用について期待を抱いたとしても,このような期待権が法的保護の対象となるものではない。 オ原告主張に係る損害は,否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 原告と被告Zとの間の労働契約の成否(争点1)について(1) 認定事実上記前提事実並びに証拠(甲5,6の①ないし⑫,9,10.11の①ないし⑦,12の①ないし⑦,13,14の①ないし③,15の①ないし○ 67 ,16の①ないし⑤,19,20の③ないし⑩,21,34ないし36,乙1,2,3の①ないし⑥,4の①ないし○ 69 ,7の①ないし④,8,9,丙1,2,3の①ないし⑪,4の①ないし○ 39 ,5ないし7,証人D,証人F,証人G,原告)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 ア原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約締結に至る経緯(ア) 被告Yは,職業安定所を通して派遣社員の募集を行ったところ,同安定所に提出した同求人票には,就業場所として「大阪市a区」と,仕事の内容として「不動産現場の立ち合い,監督,不動産物件のメンテ,不動産関係の資料作成事務等」と記載されていた。 原告は,同求人票をみて,被告Yに応募することとし,被告Yに赴いて,履歴書を提出し,適性検査 動産現場の立ち合い,監督,不動産物件のメンテ,不動産関係の資料作成事務等」と記載されていた。 原告は,同求人票をみて,被告Yに応募することとし,被告Yに赴いて,履歴書を提出し,適性検査に係る質問事項に回答して,平成14年5月2日,派遣社員として登録した。 (イ) その後,原告は,被告Yから被告Zにおいて就労するか確認を受けた上,被告Yの下で働くこととして,同年7月1日,求人票に記載されていた就業場所である被告Zの事務所に赴いた。その際,被告Yの担当者である行社員が同行した。同日,原告は,行社員から被告Y作成に係る就業条件明示書を受け取った。 ところで,原告を被告Zに派遣するという決定は,すべて被告Yの判断に基づくものであり,原告の採用等について,被告Zは,原告に対する面接も含めて何らの関与もしていない。 (なお,原告は,上記就業条件明示書を被告Zの担当者から受け取った旨主張し,それに沿う供述をするが,同明示書が被告Y作成に係るものであること,原告に対する初めての就業条件明示書であること,当日被告Yの担当者である行社員が同行していることを踏まえると,被告Yが原告に対して手交したと推認される。同認定に反する原告の同主張に沿う供述は採用できず,その他,同主張に沿う事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,原告の同主張は理由がない。)。 イ被告ら間の労働者派遣契約等(ア) 被告らは,特に,被告Zの役員が被告Yの役員になっていたり,被告Yの役員が被告Zの役員になっているというような人的関係にはなく,また,資本的な関係にもなく,それぞれ独立した法人である。また,被告Yは,被告Z以外の会社にも派遣労働者を派遣している。 (甲1ないし4,弁論の全趣旨)(イ) 被告らは,平成15 にはなく,また,資本的な関係にもなく,それぞれ独立した法人である。また,被告Yは,被告Z以外の会社にも派遣労働者を派遣している。 (甲1ないし4,弁論の全趣旨)(イ) 被告らは,平成15年12月23日,労働者派遣に関する基本契約を締結した(乙2,丙2)。 (ウ) 被告らは,平成14年7月1日,原告を含む派遣労働者の被告Zにおける派遣就労について,労働者派遣個別契約を締結し,それ以降,更新の都度,同個別契約書を繰り返し作成して平成20年3月31日まで合計11回,更新を繰り返した。 ところで,同個別契約書には原告の従事する業務として,「事務用機器操作及び付帯業務,現場調査」という記載があるが,平成19年10月1日付けの同個別契約書には,同記載に加えて「事務用機器操作及び付帯業務」が政令5号業務に該当する旨の記載がある。 (丙3の①ないし⑪)(エ) 被告Yは,上記(ウ)で記載した更新時期に合わせて被告Zに対し,原告を含む被告Zへの派遣社員に関する派遣通知書を送付していたところ,同通知書にも原告らの従事する業務について「事務用機器操作及び付帯業務現場調査」との記載があり,平成16年4月1日付けの同通知書には,同記載に加えて,「事務用機器操作及び付帯業務」が政令5号業務である旨の記載がある。 (乙3の①ないし⑥)ウ原告の就労に関する被告らとの関係(ア) 被告Yは,原告との本件派遣労働契約を更新する際,直接手交するか否かはともかく,原告に対し,その都度,就業条件明示書を交付しているが,同明示書には,派遣先,派遣元,派遣条件の記載があり,原告が被告Zの下で従事する業務についても「事務用機器操作及び付帯業務現場調査」との記載があった。しかし,同業務について政令26業務との関 が,同明示書には,派遣先,派遣元,派遣条件の記載があり,原告が被告Zの下で従事する業務についても「事務用機器操作及び付帯業務現場調査」との記載があった。しかし,同業務について政令26業務との関係を示す記載はなかった。 (甲6の①ないし⑫)(イ) 被告Zは,被告Yとの本件労働者派遣契約に基づいて,派遣社員である原告に対し,直接,業務上の指揮命令を行い,派遣先として自社で就労する原告の労働時間,残業,休日出勤等の労務管理を行っていた。 もっとも,原告は,毎月,原告の勤務状況について,派遣元管理台帳,勤務表(派遣先管理台帳)(以下,単に「勤務表」という。)に,それぞれ勤務開始時刻,勤務終了時刻,休憩時刻,基本時間数,時間外・休日出勤時間等を記載し,被告Zの責任者の確認を受けた上で,勤務表及び派遣元管理台帳を被告Yに送付していた。なお,派遣元管理台帳,勤務表には,原告が従事する業務として,「事務用機器操作及び付帯業務現場調査」との記載があるほか,平成19年10月分以降のそれらには同記載に付加して「事務用機器操作及び付帯業務」の後に「(5」という記載がある。 (甲12の①ないし⑦,乙4の①ないし○ 69 ,弁論の全趣旨)(ウ) 原告は,有給休暇をとる場合,被告Yに通知して同被告から有給休暇付与通知の送付を受け,これを受領していた。なお,被告Zの正社員が有給休暇を取得する場合には,各正社員に与えられたフォームを利用して,各人のパソコン端末からの電子決裁によって行われていた。しかし,原告には被告Zから同端末は与えられていなかった。 (証人D,証人G,原告)(エ) 原告は,被告Yから賃金の支給を受け,その際,原告の「就業場所」として,被告Zの会社名が記載されている給与明細書の送付を受け られていなかった。 (証人D,証人G,原告)(エ) 原告は,被告Yから賃金の支給を受け,その際,原告の「就業場所」として,被告Zの会社名が記載されている給与明細書の送付を受けていた。また,被告Yは,原告に対し,平成15年から平成19年までの間,各12月に「寸志」という名目で合計7万4000円の賞与を支払っていた。 (甲14の①ないし③,15の①ないし○ 67 ,16の①ないし⑤,乙7の①ないし⑤)エ原告の被告Zにおける具体的な業務内容(ア) 被告Zは,原告に対し,従業者証明書及び名刺を交付し,同社のロゴが入ったポロシャツ及びジャンパー,運動靴を支給していた(甲9,10,11の①ないし⑦)。 (イ) 原告は,主として原告が所属していた部署の担当課長から,D課長が原告の上司の担当課長となった平成19年7月1日からは,同課長若しくは課長代理主査からそれぞれ指示を受けて業務を遂行していた。 ところで,原告が被告Zの下で主に従事していた貸付管理代行業務は,物件のオーナーとの業務委託契約に基づき,オーナーに代わってオーナー所有に係る物件について賃借人との間で賃貸借契約を締結し,同契約締結後の賃借人の管理とともに同物件の管理もするという業務である。 具体的な業務内容は,以下のとおりである。 ① オーナーから借主となる顧客の紹介を受けた場合や入居希望者からの申込みを受けた場合等の新規の貸し付けの場合であるが,まず,インターネット調査,近隣の不動産仲介業者への電話による調査,現地訪問による調査等物件近隣の市場調査を開始し,同調査により賃料の相場等を把握し,同各調査によって得られた情報をパソコンに入力する。また,同申し込みをしてきた賃借希望者に直接会ったり,電話で応対 地訪問による調査等物件近隣の市場調査を開始し,同調査により賃料の相場等を把握し,同各調査によって得られた情報をパソコンに入力する。また,同申し込みをしてきた賃借希望者に直接会ったり,電話で応対したり,現地に案内したり,同希望者との間で賃料等の賃借条件について交渉をしたりする。そして,同申込者との賃貸借契約の締結について事前にオーナーの了解を得た上で同申込者との間で賃貸借契約が成立する場合には,パソコンで賃貸借契約書や図面等を作成したり,同契約の際に賃貸物件についての重要事項を説明したりして,同契約の締結をする。 ② 同賃貸借契約で賃貸物件に入居した入居者に対して告知すべき情報を告知したり,入居者等からのクレームやクレームまでに至らない申告に対して,現地立ち会いや現地確認等して対処したり,処理したりする。また,クレーム処理に関して法律事務所に相談することもある。 そして,同物件について,変更が施されていないかどうか確認したり,現況を写真撮影したりする。 ③ 物件のオーナーとの打ち合わせをする。 ④ ところで,原告が従事していた上記貸付管理代行業務は,問い合わせがなければ賃貸物件の紹介をすることはなく,また,その問い合わせも多くがbグループやbの協力会社等で,不特定多数に対して物件の紹介や勧誘等の営業活動を行うことはなかった。 ⑤ なお,原告が所属していた被告Z不動産事業部第1営業担当では,週に1回約1時間程度,第1営業担当会議が開催され,原告も参加していた。また,原告が上記貸し付け代行業務を遂行するに当たって賃貸借契約書等を含めて上司に対して提出する決裁資料は,パソコンのソフトを使用して作成するが,特に専門的な知識や操作が必要なわけではなく,予めフォーマットが決まっており,同フォーマット るに当たって賃貸借契約書等を含めて上司に対して提出する決裁資料は,パソコンのソフトを使用して作成するが,特に専門的な知識や操作が必要なわけではなく,予めフォーマットが決まっており,同フォーマットに入力することで資料が作成できるようになっていた。 (甲21,34,36,丙7,証人D,原告)(ウ) 被告Zの正社員は,原告のような派遣社員とは異なり,貸付管理代行業務のほか,転貸業務(b所有の不動産を被告Zが借り上げ,テナント等に貸付を行う営業を伴う業務)も担当していた。 なお,正社員が行う貸付管理代行業務内容と原告が行っていた貸付管理代行業務内容は,同様であって,殊更相違するところはなかった。 (丙7,証人D,原告)オ被告Yとの本件派遣労働契約の更新状況等(ア) 被告Yの社員で,平成18年8月から原告の担当者となったFは,原告を含む派遣社員の派遣労働契約を更新する際,概ね以下の手続に従って行っていた。 ① 契約期間が満了する前月の初旬から中旬にかけて,派遣先の会社に契約更新の有無を確認する。 ② その後,同月中旬から下旬にかけて,当該派遣社員に対し,契約更新の意向を確認する。 ③ 同確認の結果を派遣先の会社に伝える。 ④ 派遣期間の継続更新が始まる前月の中旬ころに,派遣先会社に対し,労働者派遣契約書を交付する。また,同月下旬に,派遣社員に対し,就業条件明示書を交付する。 (証人F)(イ) Fは,原告の担当者であった期間に,3回,原告に対する更新手続を行ったが,その際,上記(ア)で記載した内容にしたがって手続を進めた。 もっとも,就業条件明示書を直接原告に手渡したのは1回であり,残り2回は,他の派遣社員を通じて原告に交付した。これは,原告が多忙で派遣先会社を 際,上記(ア)で記載した内容にしたがって手続を進めた。 もっとも,就業条件明示書を直接原告に手渡したのは1回であり,残り2回は,他の派遣社員を通じて原告に交付した。これは,原告が多忙で派遣先会社を不在にしていることが多く,事前に連絡しても,預けておいて欲しいと言われたためである。 (甲6の⑩ないし⑫,証人F)(ウ) Fは,原告の担当となった後,本件派遣労働契約の更新の際や研修資料の配付,交通費の支給の際等,合計12回原告と面会している。ただし,面会は,5分かかるか,かからないかという短時間であって,その際,Fから原告に対し,特に何か変わったことはないかという問い合わせに対して,原告が特にない旨返事をする程度であった。 (証人F)カ原告に係る派遣料金の決定等の状況(ア) 被告Yは,被告Zから支払われる派遣料金から被告Yの利益等を控除した額を被告に支払っていた。 ところで,被告Yには,派遣社員に係る昇給等について定めた規程はない。 (証人G,弁論の全趣旨)(イ) 平成15年4月,原告の賃金が時給1700円から時給1720円に昇給しているが,その際,被告Zの被告Yに対する派遣料金は2300円から増額されていない。他方,平成17年4月,原告の賃金が時給1720円から時給1790円に昇給しているが,その際,被告Zの被告Yに対する派遣料金が2300円から2400円に増額されている。 (甲20の④の8,9枚目,丙3の⑤⑥)。 (ウ) 被告Yが派遣社員について,昇給するか否かは,担当者が派遣先から派遣社員の評価を聞き,それを社内に持ち帰り,社内稟議を経て,決定していた。昇給は,ほぼ契約更新時に行われていた。 他方,被告Zから被告Yに対し,原告の昇給に関する通知等を行ったことはな 先から派遣社員の評価を聞き,それを社内に持ち帰り,社内稟議を経て,決定していた。昇給は,ほぼ契約更新時に行われていた。 他方,被告Zから被告Yに対し,原告の昇給に関する通知等を行ったことはなかった。 (証人D,証人G,弁論の全趣旨)キ被告Zへの派遣が終了するに至った経緯(ア) 被告Zでは,平成19年10月1日から,派遣社員の中から契約社員候補者の推薦を受け,契約社員として契約するという契約社員制度を導入した。 D課長は,平成20年1月21日,原告に対し,原告を被告Zの契約社員候補として推薦したい旨述べ,原告に対して契約社員となることの意思確認をした。その際,D課長は,原告に対し,「契約社員候補者に推薦するからといって,契約社員になれるかどうかは分からないよ。それでも推薦していいですか。」と尋ねた。また,D課長は,原告に対し,仮に原告を契約社員として登用した場合の賃金算定の資料とするため,原告の被告Yから派遣されている際の労働時間単価を聞いたこともあった。 その後の同年2月7日ないし同月中旬ころ,E課長は,原告に対し,「契約社員になっても,1年で切られることもあり得るが,それでも構わないか。」と契約社員として契約することについての最終的な意思確認をした。その際,原告は,E課長に対し,契約社員になりたい旨返事をした。以上のような状況であったにもかかわらず,同月22日,一転して,D課長及びE課長は,原告に対し,契約社員として採用することはできない旨述べた。 (イ) Fは,同月20日,被告Zから原告の派遣契約が同年3月末で終了するとの連絡を受け,すぐに原告に対してその旨を伝えようしたところ,遅くとも同月29日には電話でその旨伝えた。その上で,GとFは,同年3月11日,直接,原告と面談 原告の派遣契約が同年3月末で終了するとの連絡を受け,すぐに原告に対してその旨を伝えようしたところ,遅くとも同月29日には電話でその旨伝えた。その上で,GとFは,同年3月11日,直接,原告と面談し,あらためて本件派遣労働契約が終了する旨を伝えるとともに他の派遣先を紹介しようとしてその希望を聞いたところ,原告から希望しない旨の返事がなされた。 (証人D,証人F,証人G,原告)ク H労働局からの是正指導及びそれに対する被告らの対応等(ア) 原告は,本件の訴訟代理人を申立代理人として,平成20年9月11日,H労働局に対し,原告の就労に関して,被告らを被申告者として,是正申告書を提出した(甲19)。 (イ) H労働局は,同年10月30日,被告Yに対し,労働者派遣法26条1項,31条,35条の2第1項について,違反事実を指摘し,指定期日までに是正して報告するよう求める是正指導書を交付した。また,H労働局は,同日,被告Zに対しも,労働者派遣法26条1項,40条第2項,40条の2第1項について,違反事項を指摘した上で,指定期日までに是正して報告するよう指導した。 (乙1,丙1)。 (ウ) 被告Zは,同年11月19日,H労働局に対し,是正報告書を提出しているところ,同報告書の中で被告Zが締結しているすべての労働者派遣契約については,政令26業務の5号業務(事務用機械操作)に従事するものであり,違反事項に該当する者はない旨記載している(甲20の⑤)。 (エ) 被告Yは,同年12月1日及び平成21年1月30日,H労働局に対し,是正報告書を提出した(甲20の⑥⑦,証人G)。 (2) 原告と被告Zとの間に黙示の労働契約が成立しているか。 ア被告Zにおける原告の業務内容が,政令26業務(政令5号業務あ 労働局に対し,是正報告書を提出した(甲20の⑥⑦,証人G)。 (2) 原告と被告Zとの間に黙示の労働契約が成立しているか。 ア被告Zにおける原告の業務内容が,政令26業務(政令5号業務あるいは政令9号業務)に該当するか。 被告らは,被告Zにおける原告の業務が政令26業務のうち,政令5号及び9号の各業務に該当する旨主張する。 (ア) 原告は,被告Yから被告Zに派遣されて上記1(1)エ(イ)で認定したとおり同被告の不動産事業部に所属して不動産に係る貸付管理代行業務を行っていたところ,確かに,上記(1)イ(ウ)(エ)及び同ウ(ア)(イ)で認定したとおり被告ら間の原告を含む派遣労働者に係る労働者派遣個別契約書,被告Yとの間の本件派遣労働契約時ないし更新時に原告に交付された就業条件明示書,また,被告らそれぞれが原告の就労状況を管理するために作成していた派遣元管理台帳,勤務表にはその一部に政令5号業務を示す「(5」等との記載があったほか,同各業務内容そのものである「事務用機器操作及び付帯業務現場調査」との記載があったこと,また,上記1(1)エ(イ)で認定したとおり原告が従事していた貸付管理代行業務の中には,パソコンによるデータ入力業務やパソコンを用いた賃貸借契約書等の作成業務があること(事務用機器操作),そして,同業務の前提として市場調査が必要で,同調査をしたこともあったこと(現場調査)がある。以上の事実は,原告が政令26業務のうちの政令5号及び9号の各業務に従事していたことを窺わせる。しかし,原告が従事していた貸付管理代行業務は,積極的な営業活動はないものの上記1(1)エ(イ)(ウ)で認定したとおり賃借希望者との間の賃貸借契約を巡る賃貸借条件の交渉,賃貸借契約の締結,同締結後の入居者とのクレームや申告を含めた入 行業務は,積極的な営業活動はないものの上記1(1)エ(イ)(ウ)で認定したとおり賃借希望者との間の賃貸借契約を巡る賃貸借条件の交渉,賃貸借契約の締結,同締結後の入居者とのクレームや申告を含めた入居者との対処,対応が中心であって,オーナーとの折衝もそれにあわせてあったことが推認される上,また,同業務は同様の貸付管理代行業務を行う被告Zの一般的な正社員の業務とは殊更異なるものではなかったことがある。 以上の事実を踏まえると,原告が従事した貸付管理代行業務は,その一部においてデータの入力や賃貸借契約書の作成等,パソコンの操作等があるが,「電子計算機,タイプライター,テレックス,又はこれらに準ずる事務用機器の操作の業務及びその過程において一体的に行われる準備及び整備の業務」(政令5号業務)に該当するとは認め難い。 また,原告が貸付管理代行業務の中で行っていた現地調査は,上記1(1)エ(イ)で認定したとおり同物件について,変更が施されていないかどうか確認し,現況を写真に撮影する等飽くまでも不動産の物件管理のための調査が中心であり,賃貸が可能か否かを調査する業務であって,それに賃貸借物件の適正賃料の調査業務を踏まえたとしても「顧客ニーズを的確につかんで製品計画を立て,最も有利な販売経路を選ぶ活動(マーケティング業務)」(政令9号業務)とは言い難い。 (イ) そして,本件全証拠によるも原告が従事していた貸付管理代行業務の中で,政令26業務の対象となる業務がほとんどで,それらに該当しない業務の割合が,1日又は1週間当たりの就業時間数の1割以内であったとまでは認められず,かえって,上記(ア)で認定説示したことに証拠(甲21,34,原告)を総合すると,原告が同従事していた業務のうち政令26業務(政令5号及び9号の各業務) 時間数の1割以内であったとまでは認められず,かえって,上記(ア)で認定説示したことに証拠(甲21,34,原告)を総合すると,原告が同従事していた業務のうち政令26業務(政令5号及び9号の各業務)に該当しない業務の割合が1日又は1週間当たりの就業時間数の1割を超えていたことが認められる。 (ウ) 以上の(ア)(イ)で認定した事実に上記(1)クで認定したH労働局が被告らに対し,労働者派遣法26条1項違反(政令26業務に該当しない業務に従事させたこと)を指摘し,是正指導を行っていたことをも併せ踏まえると,被告らは,原告の従事した業務について,労働者派遣法26条1項に違反していたと解さざるを得ない。したがって,この点に関する被告らの上記主張は理由がない。 イ黙示の労働契約の成否(ア) 被告Zで従事した原告の業務内容は,上記アで認定説示したとおり政令26業務に該当するとは言い難く,被告らは,原告の労働者派遣について,労働者派遣法26条1項に違反していたといわざるを得ない。 (イ) もっとも,労働者派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質,さらには派遣労働者を保護する必要性等を踏まえると,仮に労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合であったとしても,特段の事情のない限り,そのことだけで派遣労働者と派遣元との間の派遣労働契約が,また,派遣元と派遣先との労働者派遣契約が直ちに無効となるものではないと解するのが相当である(参照・最高裁平成21年12月18日第二小法廷判決民集63巻10号2754頁)。そこで,派遣労働者と派遣先との黙示の労働契約の成否であるが,それを判断するに当たっては,派遣元(本件では被告Y)に企業としての独自性があるかどうか,派遣労働者と派遣先との間の事実上の使用従属関係,労務提供関係,賃金支 遣先との黙示の労働契約の成否であるが,それを判断するに当たっては,派遣元(本件では被告Y)に企業としての独自性があるかどうか,派遣労働者と派遣先との間の事実上の使用従属関係,労務提供関係,賃金支払関係があるかどうかといった点を総合的に判断して決するのが相当であると解する。より具体的には,労働者が派遣元との派遣労働契約に基づき派遣元から派遣先に派遣された場合であっても,派遣元が形式的な存在にすぎず,派遣労働者の労務管理を行っていないのに対して,派遣先が実質的に派遣労働者の採用,賃金額その他の労働条件を決定し,配置,懲戒等を行い,派遣労働者の業務内容・派遣期間が労働者派遣法で定める範囲を超え,派遣先の正社員と区別し難い状況となっており,派遣先が,派遣労働者に対し,労務給付請求権を有し,賃金を支払っている等派遣先と派遣労働者間に事実上の使用従属関係があると認められるような特段の事情がある場合には,派遣先と派遣労働者との間において,黙示の労働契約が成立していると認められる場合があるというべきである。 (ウ) そこで,原告と被告Zとの間に黙示の労働契約が成立しているか検討する。 確かに,原告は,被告Zの下での貸付管理代行業務の遂行にあたって,同被告の担当者から指揮監督を受けていたこと,また,被告らは,上記(2)アで認定説示したとおり労働者派遣法26条1項に違反して,原告に5号業務及び9号業務以外の一般業務に従事させていたものである。 しかし,上記(イ)で記載したとおり同法違反の事実だけで直ちに原告(派遣労働者)と被告Y(派遣元)との間の本件派遣労働契約及び被告ら間の本件労働者派遣契約が無効となるものではない。また,①被告ら間に資本関係,人的関係は一切なく,被告Yは,独立の法人格を有する株式会社であって,被告Z以外の会社 との間の本件派遣労働契約及び被告ら間の本件労働者派遣契約が無効となるものではない。また,①被告ら間に資本関係,人的関係は一切なく,被告Yは,独立の法人格を有する株式会社であって,被告Z以外の会社にも派遣労働者を派遣していること(上記(1)イ(ア)),②原告が被告Yに派遣社員として登録していること,原告が被告Zで働き始める際に被告Yから交付を受けた就労条件明示書には派遣労働であることが明示されていたこと,原告が被告Zで働いていた際,同被告の契約社員になることを同被告の担当者に対して希望していること,原告が被告Yから支払われる賃金を受領していること(上記(1)ア(ア)(イ),ウ(エ),キ)からすると,原告は,自身が被告Yからの派遣社員であるということを十分に認識していたと認められること,③原告の賃金については,被告Yが独自に決定していたこと(上記(1)カ),④勤務表による出退勤の管理,有給休暇の付与についても被告Yが行っていた(なお,原告も被告Yから年次有給休暇付与通知を受け取っていたことを認めている。)(上記(1)ウ(イ)(ウ)),⑤被告Yは,原告に対し,本件派遣労働契約更新時に,その都度,就業条件明示書を交付していたこと(上記(1)ウ(ア)),⑥平成18年8月以降,原告の担当者であったFは,派遣契約が終了する平成20年3月31日までの2年8か月の間に,契約更新の意向確認や就業条件明示書の交付,研修資料の配付,交通費の支給等の目的で,合計12回原告と面会していること(上記(1)オ(イ)(ウ)),⑦原告の本件派遣労働契約が終了するに際しても,平成20年2月20日に被告Zから派遣契約が同年3月末で終了するとの連絡を受けたFは,すぐに原告に対してその旨を伝えようと努力し,遅くとも同月29日には電話でその旨伝えた上で,同年3月11日,Gと 平成20年2月20日に被告Zから派遣契約が同年3月末で終了するとの連絡を受けたFは,すぐに原告に対してその旨を伝えようと努力し,遅くとも同月29日には電話でその旨伝えた上で,同年3月11日,GとFは,直接原告と面談し,あらためて本件派遣労働契約が終了する旨を伝えて,同月31日で原告との間の本件派遣労働契約が終了したこと(上記キ(イ)),⑧被告Yの取引先は被告Zに限られていないこと(前提事実(1)ア),原告と被告Y間で本件派遣労働契約が締結され,被告ら間で本件労働者派遣契約が締結されていること(前提事実(2)(3)),原告の採用手続は被告Yが行い,被告Zは一切関与していないこと(上記(1)ア(イ))があるところ,以上の事実を踏まえると,原告と被告Zとの間に黙示の労働契約が成立していたとは認められず,その他,同契約関係を認めるに足りる証拠はなく,かえって,原告は,被告Yとの間の本件派遣労働契約,被告ら間の本件労働者派遣契約に基づいて被告Yから被告Zに派遣された派遣労働者であることが推認される。 (エ)① ところで,原告は,被告Zとの間の直接の労働契約を基礎づける事実として原告の賃金を被告Zが決定していた旨主張する。 確かに,上記(1)カ(イ)で認定したとおり平成17年4月,原告の時給が1720円から1790円に昇給した際,被告Zの被告Yに対する派遣料金も増額されている。しかし,平成15年4月における原告の昇給時には同派遣料金は増額していないこと(同カ(イ))を踏まえると,被告Yは,被告Zからのは同派遣料金の増額について,個々の派遣労働者の昇給を判断する際の一要素として考えている可能性が高い。 また,被告Yと被告Zとは別法人であり,人的関係や資本関係は存在しない(上記(1)イ(ア))。そして,D課長が原告に対し,原告を の派遣労働者の昇給を判断する際の一要素として考えている可能性が高い。 また,被告Yと被告Zとは別法人であり,人的関係や資本関係は存在しない(上記(1)イ(ア))。そして,D課長が原告に対し,原告を被告Zの契約社員に推薦する際,原告に原告が被告Yから受領している賃金の時間単価を聞いていること(上記(1)キ(ア))からすると,被告Zは,原告の被告Yから支払われる賃金の時給単価を知らなかったことが窺われる。以上の事実を踏まえると,被告Zが原告の賃金を決定していたとまでは認めることができず,かえって,被告Yが派遣労働者である原告の賃金額を最終的に決定していたことが推認される。 なお,原告は,原告が被告Yから賃金等として受領する金員は,被告Zから被告Yに支払われた金員から被告Yの利益等を控除した額を基礎としていることからすると,被告Zが原告が給与等の名目で受領する金員の額を実質的に決定する立場にあったとも主張する。しかし,派遣社員の賃金額の決定に当たっては,通常,派遣元と派遣先との交渉等において,派遣料額を決定した上で,両者間で決定された派遣料金から派遣元が一定の利益を控除して算定されるところ,このような賃金額決定のプロセスは,派遣労働者と派遣元との派遣労働契約関係及び派遣元と派遣先との労働者派遣契約関係を前提とする労働者派遣での就労形態においては通常のものであり,かかるプロセスをもって,派遣先が実質的に派遣社員の賃金を決定していると評価することまではできない。そうすると,被告Zが原告の賃金額を決定していたと認めることはできず,その他,それを認めるに足りる証拠はない。したがって,原告の上記主張は理由がない。 ② 原告は,原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約及び被告ら間の本件労働者派遣契約が労働者派遣法に違反しているこ ,それを認めるに足りる証拠はない。したがって,原告の上記主張は理由がない。 ② 原告は,原告と被告Yとの間の本件派遣労働契約及び被告ら間の本件労働者派遣契約が労働者派遣法に違反していることからして,被告Zが適法な指揮命令権限の授権を受けていないといえ,したがって,かかる場合の被告Zの原告に対する指揮命令は,原告と被告Zとの労働契約関係を基礎づけるものである旨主張する。 しかし,原告は,上記(2)イ(ウ)で認定したとおり被告Yとの間の本件派遣労働契約,被告ら間の本件労働者派遣契約に基づいて被告Yから被告Zに派遣された派遣労働者であって,仮に原告が主張するように原告の被告Zへの派遣について,労働者派遣法違反の事実があったとしても,そのことをもって,原告に対する上記労働者派遣という実態に変更はなく,また,被告Zの原告に対する指揮命令という事実も,労働者派遣であれば当然のことであって,直ちに同事実が原告と被告Zとの間の労働契約関係を基礎づける事実になるものではない。したがって,原告の上記主張は理由がない。 ③ 原告は,被告Zとの直接契約を基礎づける事実として,就労する派遣業務の内容も含めて,被告Zが原告の業務遂行力を確認した上で採用決定し,被告ら間の本件労働者派遣契約の締結に至った旨主張する。 しかし,被告Yは,被告Zへの派遣就労を前提とした求人を行っていること(上記(1)ア(ア)),原告は,被告Yとの本件派遣労働契約締結前に被告Zの面接等を受けたことがないこと(上記(1)ア(イ)),平成14年7月1日,原告は,被告Yの担当者である行社員同行の下,初めて被告Zを訪れているところ,同日時点において,原告が被告Yの派遣社員として被告Zで就労すること自体が既に決定していたこと(上記(1)ア(イ)),さ 原告は,被告Yの担当者である行社員同行の下,初めて被告Zを訪れているところ,同日時点において,原告が被告Yの派遣社員として被告Zで就労すること自体が既に決定していたこと(上記(1)ア(イ)),さらにこの時点で被告Zが原告の能力等を査定等したとは認められないこと(上記(1)ア(イ))があるところ,以上の事実を踏まえると,被告Zが被告Yによる原告の採用に直接関与したとは認められず,その他,それを認めるに足りる証拠はなく,かえって,同採用に関与していないことが推認される。したがって,原告の上記主張は認められない。 ④ 原告は,被告Zが労働者派遣の派遣先という立場を越えて,原告の使用者として原告に係る労務管理を行っていた旨主張する。確かに,被告Zは,上記(1)ウ(イ)で認定したとおり被告Zの下で業務に従事する原告の労務管理をしていた。しかし,被告Zは,派遣先として被告Zの下で業務に従事する原告に対して,労務管理をする必要性があったこと,被告Yは,派遣労働契約の更新に当たって,被告Z及び派遣労働者である原告の意向を確認した上で更新するか否かを決定していたこと(上記(1)オ(ア)),被告Yは,原告に対し,派遣労働契約の更新に当たって,直接手交するかどうかは別として,就業条件明示書を交付していたこと(上記(1)オ(イ)),原告は,毎月勤務表を作成し,派遣先である被告Zの責任者の確認を受けた上で,同表を被告Yに送付していたこと(上記(1)ウ(イ)),原告の賃金に関しては,被告Yが独自に決定していたこと(上記(2)イ(エ)),原告は,有給休暇を取得する際,被告Yに対し,有給休暇取得の申請をし,被告Yは,原告に対し,有給休暇付与通知を送付しており,かかる有給休暇の申請方法は,被告Zの正社員とは異なるものであること(上記(1)ウ(ウ)),D 得する際,被告Yに対し,有給休暇取得の申請をし,被告Yは,原告に対し,有給休暇付与通知を送付しており,かかる有給休暇の申請方法は,被告Zの正社員とは異なるものであること(上記(1)ウ(ウ)),D課長及びE課長が原告に対して,被告Zの契約社員への推薦の意思確認をしたのは,飽くまでも推薦することだけであって,必ず契約社員として採用されるとまでは述べていなかったこと(上記(1)キ(イ)),同意思確認に至るまで,D課長等は,原告の時間単価を知らなかったこと(上記(1)キ(イ))があるところ,以上の事実を踏まえると,被告Zが原告の派遣先としての立場を越えて使用者として労務管理を行っていたとまでは認められず,その他,それを認めるに足りる証拠はない。したがって,原告の上記主張は理由がない。 ⑤ 原告は,原告と被告Zとの直接の労働契約関係を基礎づける事実として,その他に,原告が被告Zの研修や同被告が開催する各種研修に参加していたこと,原告が被告Z以外の会社で就労していなかったこと,被告Zの従業員証を携帯していたこと,被告Zのみに5年余就労しており,その間,部署異動も経験していること等の事情を挙げる。 しかし,派遣先の指揮命令下において派遣先で就労するという労働者派遣という就労形態の特殊性を踏まえると,原告が挙げる同各事情をもってしても,直ちに原告と被告Zとの間に黙示の労働契約が成立していたと認めることはできない。 (オ) 以上の(ア)ないし(エ)で認定説示したとおり派遣労働者である原告と派遣元である被告Yとの間の派遣労働契約,被告ら間の労働者派遣契約がいずれも無効であると認めるに足りる特段の事情があるとは言い難く,ひいては,原告と被告Zとの間で黙示の労働契約が成立していたとも認められない。 (3) 原告と被告Zとの間において 労働者派遣契約がいずれも無効であると認めるに足りる特段の事情があるとは言い難く,ひいては,原告と被告Zとの間で黙示の労働契約が成立していたとも認められない。 (3) 原告と被告Zとの間において,労働者派遣法40条の4違反に基づいて労働契約が成立しているといえるか。 ア原告は,被告らが,被告Zでの原告の業務が政令26業務に該当しないにもかかわらず,同業務に該当するとしていたことから,同40条の4に基づいて,派遣受入期間の制限を超過した時点において,被告Zが原告に対し,直接雇用申込義務を負っていたところ,被告Zが同義務を履行していないことから,原告が被告Zの下で就労を開始して1年が経過した平成15年7月1日,あるいは遅くとも就労開始3年を経過した日である平成17年7月1日には,労働者派遣法40条の4に基づいて,直接あるいは同条の趣旨から導き出される直接雇用申込義務違反の効果として,原告と被告Zとの間に労働契約が成立している旨主張する。 イ原告が被告Zで従事していた業務は,上記(2)アで認定説示したとおり政令5号業務及び政令9号業務に該当しない。ところで,派遣先である被告Zについて,派遣労働者である原告に対する直接雇用の申込義務が認められるためには派遣先である被告Zが派遣元である被告Yから抵触日に関する通知を受けたことが要件となる(同法40条の4)。そこで,被告Zであるが,同法40条の4に基づいて,派遣元である被告Yから抵触日に関する通知を受領していない。したがって,被告Zの原告に対する直接雇用申込義務の発生要件が欠いているといわざるを得ず,その限りにおいて,原告の上記主張は理由がない。 上記の点をおいて,仮に派遣先が派遣社員に対する同法40条の4に基づく直接雇用申込義務を履行しなかったとしても,それはあくま いわざるを得ず,その限りにおいて,原告の上記主張は理由がない。 上記の点をおいて,仮に派遣先が派遣社員に対する同法40条の4に基づく直接雇用申込義務を履行しなかったとしても,それはあくまで義務の不履行であって,それを超えて直ちに,派遣労働者との間で直接的な労働契約関係が発生するとは解し難い。 そうすると,いずれにしても,原告の上記主張は理由がない。 (4) 小括以上のとおりであって,原告と被告Zとの間で労働契約が成立しているとは認め難く,原告の被告Zに対する地位確認及び同地位を前提とする賃金請求(争点2)は,いずれも理由がないといわざるを得ない。 2 被告Yに対する不当利得返還請求の成否及びその額(争点3)について原告と被告Y間の本件派遣労働契約及び被告ら間の本件労働者派遣契約は,上記1で認定説示したとおりいずれも有効に成立している。 そうすると,被告Yが被告Zから受領した原告の派遣に係る派遣料金は,被告ら間の本件労働者派遣契約に基づいて受領したものであって,同受領は法律上の原因が存在するといわなければならない。したがって,原告の上記請求は,その余の点(原告の損失,利得と損失の間の因果関係等)について判断するまでもなく,理由がない。 3 被告らの共同不法行為の成否及び損害の有無並びにその額(争点4)について(1) 原告は,被告らが労働者派遣法に違反して被告Zの下で長期間にわたって原告に対して違法に指揮命令して労務を提供させながら,その一方で形式的に労働者派遣という直接の雇用責任を免れる形式をとって,何らの制限のない形で全く正当な理由なしで労働者派遣契約を打ち切り,その結果,原告の雇用の場を得て賃金を受けるべき地位を侵害したものであって,被告らの原告に対する一連の行為は強度の違 形式をとって,何らの制限のない形で全く正当な理由なしで労働者派遣契約を打ち切り,その結果,原告の雇用の場を得て賃金を受けるべき地位を侵害したものであって,被告らの原告に対する一連の行為は強度の違法性を帯び,不法行為に該当する旨主張し,また,被告Zの原告に対する雇用の打ち切りが労働契約法16条に違反する違法な解雇ないし雇止めで,共同不法行為が成立する旨主張する。確かに,被告ら間の本件労働者派遣契約等を基礎とする原告の派遣就労は,上記1(2)で認定説示したとおり労働者派遣法26条1項に違反している。 しかし,①原告が被告Zの下で従事していた業務の中には,政令26業務のうち,政令5号業務及び政令9号業務に該当する部分が含まれていること(上記(1)エ(イ)),②被告Yは,原告の被告Zへの派遣就労について,労務管理(勤務表の提出や有給休暇付与通知等による原告の労働時間管理等)や契約更新手続を適切に行っていたと認められること(上記(1)ウ(ア),オ),③原告と被告Yの派遣労働契約及び被告ら間の労働者派遣契約はいずれも有効である一方,原告と被告Z間に黙示の労働契約が成立しているとは認め難く,被告Zが被告Yとの本件労働者派遣契約を終了したこと自体,解雇あるいは雇止めには該当しないこと(上記1の(2)(3))があるところ,以上の事実を踏まえると,上記違法派遣行為を前提として原告らの行為が違法行為であると主張する部分(直接雇用義務違反行為,本件解雇ないし本件雇止め行為)は,いずれも理由がないといわざるを得ない。 (2) また,原告は,被告らの行為により,継続的に被告Zに対して労務を提供してその対価として賃金を得る権利ないし地位(現実に賃金の支払を受けていた被告Yに対する,あるいは,直接雇用された場合には賃金支払いを受けることになっていた により,継続的に被告Zに対して労務を提供してその対価として賃金を得る権利ないし地位(現実に賃金の支払を受けていた被告Yに対する,あるいは,直接雇用された場合には賃金支払いを受けることになっていた被告Zに対する)を侵害され,あるいは継続的に被告Zに対して労務を提供してその対価として賃金を得ることについての正当な期待権を侵害されたと主張する。 確かに,被告Zが原告の派遣労働の基礎となった被告Yとの間の労働者派遣契約の解消原因として挙げた,①貸付管理代行業務の経年的な減少と,②原告が元所属していた部署に定期人事異動によって正社員を配置することになったという点については,被告Zが原告の派遣就労を解消して被告Zの下での就労を終了させる旨通知する直前ともいうべき同通知のおよそ2週間前まで契約社員に推薦すべく意思確認等を行っていたことと必ずしも整合しないようにも思われる。しかし,原告と被告Zとの間に黙示も含めて労働契約が成立していたとは認められないこと,被告ZのD課長及びE課長は原告に対し,契約社員に推薦する旨述べたものの,必ず原告が契約社員になれるといった発言をしたことはなかったこと,その他,本件全証拠を総合勘案しても,被告らが原告の雇用継続に関して,法的保護に値するに足りる期待権を生じさせるだけの行為があったとは認められない。そうすると,原告の上記主張は理由がない。 4 結論以上の次第で,原告の被告らに対する各請求はいずれも理由がないから,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官中村哲 裁判官内藤裕之 裁判官峯金容子 判長 裁判官中村哲 裁判官内藤裕之 裁判官峯金容子

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