平成11(行コ)160 不当利得返還代位請求控訴事件(原審・新潟地方裁判所平成10年(行ウ)第1号)

裁判年月日・裁判所
平成12年4月26日 東京高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文10,049 文字)

主文 一原判決を取り消す。 二被控訴人らは、新潟県に対し、それぞれ別紙請求目録の当該被控訴人氏名欄に対応する請求金額欄記載の金員及びこれに対する平成一〇年三月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 三訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第一当事者の求めた裁判一控訴人ら主文同旨二被控訴人ら 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は、控訴人らの負担とする。 第二事案の概要等一事案の概要本件は、新潟県の住民である控訴人らが、平成九年八月二一日から大阪府で開催された第五二回国民体育大会(通称「なみはや国体」)協賛第四九回全国都道府県議会議員軟式野球大会(以下「本件野球大会」という。)に新潟県議会議員である被控訴人らを派遣するとの新潟県議会の決定(以下「本件派遣決定」ともいう。)並びにこれに基づいてされた被控訴人らに対する同議会議長の旅行命令及び右命令に基づいてされた旅費の支出が違法であるとして、新潟県に代位して、被控訴人らに対し、受領した旅費相当額の不当利得の返還と訴状送達の後の遅延損害金の支払を求めた住民訴訟(地方自治法二四二条の二第一項四号)である。 原審は、控訴人らの請求をいずれも棄却したので、控訴人らが控訴した。 二当事者間に争いのない事実又は証拠によって容易に認定できる事実は、原判決「事実及び理由」第二の二に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決一五頁二行目の「港北」を「北港」に改め、同一八頁三行目の「議会」の次に「による本件派遣決定及び同議会」を加え、同二四頁五行目の次に改行して「8本件訴状は、別紙当事者目録4、10、25及び26の被控訴人らには平成一〇年三月一八日、同目録11の被控訴人には同月二一日、その余の被控訴人ら 定及び同議会」を加え、同二四頁五行目の次に改行して「8本件訴状は、別紙当事者目録4、10、25及び26の被控訴人らには平成一〇年三月一八日、同目録11の被控訴人には同月二一日、その余の被控訴人らには同月一七日それぞれ送達された(記録上明らか)。」を加える。)。 第三争点及び争点に関する当事者の主張当審における主張を次のとおり付加するほか、原判決の「事実及び理由」第三に記載のとおりであるからこれを引用する(ただし、原判決三〇頁七行目の「大会施設」の次に「の視察」を加え、八行目の「本県」を「新潟県」に改める。)。 一控訴人ら 1 被控訴人らの本件野球大会への参加は、議員相互の単なる私的なレクリエーションヘの参加にすぎず公務ではないから、本件派遣決定及びこれに基づく旅費支出命令は違法無効であり、被控訴人らは、本件各旅費相当額を法律上の原因なくして利得したものである。 新潟県議会議員給与条例七条一項、三項は議員が「公務」のために旅行をした場合には旅費、日当及び宿泊料等の費用を弁償する旨規定しており、これに基づいて本件野球大会の参加旅費が支給された。しかし、自治省の有権解釈である行政実例においては、議員に対する費用弁償は正規の議会活動に限定されている。全国都道府県議会議長会(以下「議長会」という。)の解釈も同様である。これに従うならば、条例の制定は「法律の範囲内」で認められているのであるから、「公務」も、議会開会中の本会議、委員会への出席など正規の議会活動に限定されるべきである。一方、新潟県議会の旅費支出を分析してみると、同議会においては、これよりもやや広く正規の議会活動のほかに、議会活動に関連が深いか又は有益であり、かつ、県民生活に資するものについて旅費を支出するとの独自の基準を立てているものと解される。本件野球大会についてみると、正 りもやや広く正規の議会活動のほかに、議会活動に関連が深いか又は有益であり、かつ、県民生活に資するものについて旅費を支出するとの独自の基準を立てているものと解される。本件野球大会についてみると、正規の議会活動ではなく、参加の目的及びその実態は、野球の試合をすることで、「交流」等は付随的なものであり、また、「交流」についても、議会活動にとって有益な情報交換、議論が行われたことはない。したがって、右いずれの基準からみても、本件野球大会への参加旅費の支出は、議会の裁量権を逸脱又は濫用した違法なものである。 2 将来の国体の開催の実施を検討する上での見識の涵養であれば、全国野球大会は、毎年一回同様の企画内容で繰り返されているのであるから、新潟県が開催県となる年の前年又は前々年から参加すれば十分なはずであり、新潟県は平成二一年頃に開催の予定なのであるから、平成九年の本件野球大会への参加は必要性がない。 また、右見識の涵養につながるのであれば、その成果を将来に生かし、あるいは他の議員と共有するため、記録すべきものであるが、議会への報告書は作成されていない。スポーツ振興策検討のための見識の涵養についても、現在まで新潟県には県営野球場が一つも建設されていないなど、これが生かされた具体例がない。 3 議員相互の交流は、日常の議員活動の中で十分その機会があるはずであるし、被控訴人らは野球部の部員であるから、親善試合などの場で十分交流の機会があるはずで、本件野球大会が議員相互の交流として貴重な機会となっているとはいえない。 4 全国野球大会は、毎年ほぼ同一の式次第で行われており、被控訴人ら議員は、A議員が連続二四回参加したのを初めとして、その多くが第四八回大会にも参加しており、本件野球大会の実態を十分理解した上で、本件派遣決定に加わり、また、右大会に参加してい れており、被控訴人ら議員は、A議員が連続二四回参加したのを初めとして、その多くが第四八回大会にも参加しており、本件野球大会の実態を十分理解した上で、本件派遣決定に加わり、また、右大会に参加しているのである。 5 議員を派遣することが議会の裁量権の範囲内かどうか、及び右派遣にかかる旅費を公費で負担するに足りる公務性を有するかどうかの判断に際しては、その時代の社会状況や国民及び県民の社会通念によっても異なるので、これを検討すべきところ、新潟県民からは本件野球大会への公費支出に対し批判的意見が続出し、各新聞も原判決を批判する報道を繰り返しており、このことも原判決の不当性を物語るものである。 二被控訴人ら 1 全国野球大会の主催者に昭和五二年から加わった議長会は、自治大臣に届出が義務づけられている団体であって(地方自治法二六三条の三第一項)地方自治に影響を及ぼす法律又は政令その他の事項に関し自治大臣を経由して内閣に対し意見を申し出、また、国会に意見書を提出することができる公的機関である(同条二項)。 本件野球大会においては、各都道府県議会議長が主催者である議長会及び国体開催都道府県議会からの参加要請を受け、各議会が議員の派遣を決定しているところ、新潟県においても、右同様の経緯によって、被控訴人らが新潟県議会代表として参加したのである。したがって、被控訴人らは、新潟県スポーツ議員連盟野球部会の活動として本件野球大会に参加したのではない。 2 議員は、広範な活動を通じてその「見識を涵養」し、これを自身の中で総合的に構築して、一つの政策を実現していくものである。換言すると、その広範な活動を通じて、農業政策・スポーツ振興策・町づくり政策等のあらゆる政策を自己の体験と他議員との話合い等に基づき、抽象的なものからより具体的なものへと順次構築していくも である。換言すると、その広範な活動を通じて、農業政策・スポーツ振興策・町づくり政策等のあらゆる政策を自己の体験と他議員との話合い等に基づき、抽象的なものからより具体的なものへと順次構築していくものであり、これが議員活動の実体である。「見識の涵養」につながると判断するためには、議員の活動の一つ一つに対応した具体的成果が必要とされるというものではない。 被控訴人らは、新潟県議会の代表として、党派を超えて本件野球大会に参加し、その中で団結を培い、相互の信頼関係を構築してきている。この取組は、県政の円滑な運営にとって重要な役割を果たしてきた。また、国体の強化費などの予算措置等を決定する被控訴人ら議員が、国体の模擬大会ともいえる全国野球大会に参加し、これを実現することは、議員としての見識の涵養に大いに貢献するものである。 国体は国内アマチュアスポーツの最大のイベントであり、これに野球大会という実践を身をもって体験・参加する協賛こそ真の協賛であり、また、その場で議員の「交流」と「見識の涵養」がされることも明かである。 3 控訴人らはその時代の社会状況等をいうが、司法の場に多数決原理を導入すべきであるというのであれば基本的な理解を欠くものである。一部新聞等の報道も、世論、県民の意見を集約し代弁したものではない。 地方議会は、「地方自治の本旨」の担い手として、憲法によって認められた自治組織であることからすれば、その自律権が最大限尊重されるべきことは論を待たない。自律権尊重の要請は、地方議会の自主決定権を最大限確保することを最終目標とするものであり、当然にその広範な裁量権を認めるべき理由となる。 第四当裁判所の判断一議会による公務性判断の裁量権について地方自治法二〇三条三項は、普通地方公共団体の議会(以下、単に「議会」という。)の議員は「職 その広範な裁量権を認めるべき理由となる。 第四当裁判所の判断一議会による公務性判断の裁量権について地方自治法二〇三条三項は、普通地方公共団体の議会(以下、単に「議会」という。)の議員は「職務」を行うために要する費用の弁償を受けることができる旨規定し、これを受けて新潟県議会議員給与条例七条一項、三項は、議員が「公務」のために旅行をした場合には、鉄道賃(必要に応じ、航空賃)、日当及び宿泊料等の費用を弁償する旨規定しており(甲四)、本件野球大会への被控訴人らの参加旅費は右規定に基づいて支出されたものである。 ところで、普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の議決機関として、その機能を適切に果たすために必要な限度で広範な権能を有しているのであるから、普通地方公共団体の施策を適切に実現するため、又は議会の構成員である議員の知識・経験の向上を図るため、他の普通地方公共団体の実情把握、意見交換あるいは相互交流等を目的として、議員を国内又は海外に派遣することも、議会の機能を適切に果たすために合理的な必要性がある場合には許されるのであって、右の場合における派遣決定に基づく議員の旅行は、費用支出の根拠となる議員の「職務」ないし「公務」(以下、両者を意味するものとして「公務」という。)のための旅行に当たるものと解される。そして、右の議員派遣決定の合理的な必要性の有無の判断に際しては、議会の裁量権が尊重されなければならないことは当然のことであるが、もとより右の裁量権にも自ずから限界があるのであって、派遣の目的、態様等に照らして著しく妥当性を欠くときは、裁量権の行使に逸脱又は濫用があるものとして違法となるものと解するのが相当である。したがって、本件派遣決定に裁量権の逸脱又は濫用があるか否かは、本件野球大会への参加目的、参加と目的達成との関連性 は、裁量権の行使に逸脱又は濫用があるものとして違法となるものと解するのが相当である。したがって、本件派遣決定に裁量権の逸脱又は濫用があるか否かは、本件野球大会への参加目的、参加と目的達成との関連性、参加の態様・実態などを総合的に勘案して判断されるべきである。 二本件派遣決定の違法性の有無について 1 本件野球大会の目的、主催者等について前記第二の二に認定した事実並びに証拠(乙二、八、被控訴人A本人)及び弁論の全趣旨によれば、全国野球大会は、「国体に協賛し、あわせて議員相互間の親睦とスポーツ精神の高揚を図り、地方自治の発展に寄与する」ことを目的とした、全国都道府県議会議員による、各議会対抗形式による軟式野球大会であること、発足の経緯は、昭和二四年、国体開催地の都道府県が国体主催団体に加わったことを契機に、開催時期及び場所は国体に合わせて決定され、四九年間にわたり、毎年一回開催されてきたこと、昭和五二年からは議長会も主催者に加わり、昭和六〇年代からは四五以上の都道府県議会が参加してきたこと、新潟県議会は、昭和二六年から右大会に参加するようになり、昭和四四年からは二九回連続してこれに参加してきたこと、また、本件野球大会の目的は、「なみはや国体に協賛し、あわせて議員相互の親睦とスポーツ精神の高揚を図り、地方自治の発展に寄与する」というものであり、第五二回なみはや国体の開催に先立ち、右国体の開催地である大阪府において、全ての都道府県議会の参加を得て開催されたこと、本件野球大会における試合は、大阪府内の野球場において実施されたこと、大会開会式は、大阪府内の舞洲アリーナにおいて、全国都道府県議会チームの入場や各種あいさつ、優勝旗返還等が国体の開会式にならう形で実施されたこと、全国野球大会は、毎年ほぼ同一の式次第で行われており、被控訴人ら議員は、 内の舞洲アリーナにおいて、全国都道府県議会チームの入場や各種あいさつ、優勝旗返還等が国体の開会式にならう形で実施されたこと、全国野球大会は、毎年ほぼ同一の式次第で行われており、被控訴人ら議員は、A議員が連続二四回参加したのを初めとして、その多くが第四八回大会にも参加していることが認められる。 (一) 「国体への協賛」、「スポーツ精神の高揚」について証拠(乙一二)によれば、議長会は、国体が国民の健康増進、スポーツの振興という行政目的を達するための国内における最大の行事で、各都道府県が最重点をおいて取り組んでいる施策の一つであり、住民の代表である議員がスポーツの代表である野球を通じて国体を盛り上げ、スポーツを自ら行うことを奨励することは住民の福祉の向上を目的とする地方自治の発展に寄与するところが大であるとの見解を表明していることが認められる。 国体が我が国最大のスポーツイベントとして、スポーツの振興、青少年の健全育成や地域の活性化に大きく貢献していることは公知の事実である。そして、全国野球大会の発足当初においては、国民の間に国体を浸透させ、スポーツを奨励するため、議会としてこれに協賛するとの趣旨も理解できなくはない。しかし、今日においては、国体は国民の間に広く浸透し、スポーツの意義や利点も広く理解されていることからすれば、国体協賛という目的のもとに議員が野球大会を行うこととスポーツ振興との関連性は希薄であると言わざるを得ない。また、証拠(乙一)によれば、なみはや国体の実行委員会作成にかかるハンドブックには、本件野球大会は、協賛事業、デモンストレーションとしてのスポーツ行事のいずれの欄にも掲げられておらず、全く触れられていないことが認められ、国体の主催者(財団法人日本体育協会、文部省、開催地都道府県、右協会加盟の競技団体及び会場地市町村 レーションとしてのスポーツ行事のいずれの欄にも掲げられておらず、全く触れられていないことが認められ、国体の主催者(財団法人日本体育協会、文部省、開催地都道府県、右協会加盟の競技団体及び会場地市町村)は、全国野球大会を国体の目的を達するのに必要な関連行事としては位置付けていないことが推認される。さらには、全国野球大会について、一般国民の多くが関心を持っていることを認めるべき証拠はないから、議員がこれに参加することが「スポーツ精神の高揚」につながるものとは到底考えられない。 (二) 「議員相互の親睦」について議会の機能を適切に果たすことと「議員相互の親睦」との関連性を否定することはできないが、本件野球大会への参加によって「議員相互の親睦」を図ることに合理的な必要性があるか否かは、その参加者、参加の態様・実態等を検討して判断することが必要である。 (三) なお、全国野球大会の開催年数、参加都道府県数、新潟県の参加回数、主催者に議長会(被控訴人らが主張するように、公的な性格を有する団体であると認められる。)が加わっていることは、直ちに本件野球大会への参加の公務性を基礎付けるものということはできない。 2 本件野球大会への参加の態様・実態等について(一) 前記一のような判断基準及び前記二1のような本件野球大会の目的に照らして考えると、本件派遣決定に議会の裁量権の逸脱又は濫用があるか否かについては、本件野球大会への参加に際し、参加者の日程、行事計画の上で、他の地方公共団体との意見交換や相互交流あるいは視察等が予定されており、県政の発展に寄与し得るような事柄についての情報交換の場が設けられているか、現実にそれが行われているかなど参加の態様・実態につきさらに検討を加える必要があるというべきである。 (二)(1) 被控訴人らは、議長会が実質的に全国 な事柄についての情報交換の場が設けられているか、現実にそれが行われているかなど参加の態様・実態につきさらに検討を加える必要があるというべきである。 (二)(1) 被控訴人らは、議長会が実質的に全国野球大会に関与していることから、各都道府県議会相互の連携が密に取れるし、また、全国都道府県議会議員から党派を超えて一堂に集う機会は、年に一度の全国野球大会しかないのであり、被控訴人ら相互あるいは他の議会の議員らとの交流を深めるための貴重な機会となっている旨主張する。そして、証拠(乙一二)によれば、議長会は、本件野球大会への参加は、議員にとって、相互あるいは他の議会の議員と地域的、政治的立場の違いを超えて幅広い交流ができる唯一の公的な機会であり、特定の議題や課題に限定したフォーマルな情報交換とは異なる場において、自らの議会内だけではなく各議会の連携協力にとっても必要な将来の行政課題の解決に寄与できる人間関係を樹立することができ、今後の議会活動の活性化や議会間の協力体制が図られる有意義な行事となっている、との見解を表明していることが認められる。 しかし、まず、新潟県議会の議員相互の交流についてみると、野球をする一部の議員だけがわざわざ旅費を費やして大阪府にまで赴かなくても、十分に相互交流の目的を達する機会を得ることは可能であって、右の交流のために本件野球大会に参加することの必要性は極めて希薄であるといわなければならない。 次に、他の議会の議員との交流についてみると、参加者の日程、行事計画の上でそのような機会が設けられており、かつ、実際にそれが行われているのであれば、各地方公共団体の連携、協力という意味で、議会の機能を適切に果たすために合理的な必要性があるものと解する余地があろう。しかし、証拠(乙二~六、被控訴人A本人)によれば、本件野球大会の参 のであれば、各地方公共団体の連携、協力という意味で、議会の機能を適切に果たすために合理的な必要性があるものと解する余地があろう。しかし、証拠(乙二~六、被控訴人A本人)によれば、本件野球大会の参加者の日程、行事計画の上で、特に他の議会の議員との交流や意見交換の機会は設けられておらず、また、実際にも、右の連携、協力に結びつくような他の議会の議員らとの交流は行われなかったこと、参加した議員自身が、本件野球大会は野球の試合をすること自体が主で、他の議会の議員との交流は付随的なものであると認識していたこと、懇親会も、参加した新潟県議会の議員だけで行われたことが認められるのであるから、本件野球大会への参加の態様・実態は、野球の試合をすることに尽きるのであって、他の議会の議員との交流はもともと期待されていなかったし、また、期待できるような状況でもなかったものというべきである。 (2) 被控訴人らは、参加議員は、本件野球大会に参加することにより、各種スポーツ施設(いずれも国体会場である舞洲アリーナや住之江公園野球場等)を体感し得るのであり、視察旅行をしなくても施設の視察ができる点で合理的であると主張する。そして、前記の事実によれば、被控訴人らは、本件野球大会に参加し、右野球場において練習及び試合に参加するとともに、開会式にも出席しており、また、証拠(乙一二)によれば、議長会は、実際の会場となる施設や競技の運営の状況について、自ら選手として体験するとともに、周辺の体育施設を視察することにより、その経験を自らの属する地方公共団体における類似施設の整備や維持管理、競技大会の運営についての施策に生かすことが期待できるとの見解を表明していることが認められる。 スポーツ大会の進行方法やスポーツ施設等を自ら選手として体験することが、議員として将来の国体の実施 、競技大会の運営についての施策に生かすことが期待できるとの見解を表明していることが認められる。 スポーツ大会の進行方法やスポーツ施設等を自ら選手として体験することが、議員として将来の国体の実施やスポーツ振興施策を検討する上での見識の涵養に全く無関係であると断ずることはできないが、新潟県において開催されることが予定されている国体は、本件野球大会が開催された平成九年から一〇年以上も先のことであるのみならず、選手体験が見識の涵養につながり、スポーツ関連施策に生かされることになるかどうかは、参加議員の主観によって大きく異なることであって、一概にそのようにいえるかは疑問がある上、本件野球大会に参加した議員は、すべて新潟県議会スポーツ議員連盟野球部会の部員であって(被控訴人A本人)、選手としての体験はごく一部の野球をする議員だけのもので、他の議員と共有する機会もないと推認されるのであり、結局のところ、選手体験がスポーツ振興施策に役立つ度合いは極めて低いものといわざるを得ない。 スポーツ施設の視察の点については、前記第二の二に掲記した証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件野球大会の参加に際し、施設の見学等のための参加者の日程又は行事計画は設けられておらず、実際にも行われなかったことが認められるのであるから、本件野球大会への参加による施設の視察という意味での実態はなかったものといわざるを得ない。 3 以上に述べた本件野球大会の主催者、目的、参加者の日程、行事計画、参加の態様・実態等を総合すると、本件野球大会は、公的団体である議長会が主催者として関与し、国民体育大会協賛を標榜してはいるが、これに参加するに当たって、被控訴人らが主張するような、地方公共団体のスポーツ振興策を検討する上での見識の涵養等の参加目的を達成することに向けられた参加者の日程、行事計 育大会協賛を標榜してはいるが、これに参加するに当たって、被控訴人らが主張するような、地方公共団体のスポーツ振興策を検討する上での見識の涵養等の参加目的を達成することに向けられた参加者の日程、行事計画とはなっておらず、また、参加した被控訴人らの実際の行動も、右参加目的に沿ったものとは言い難いものであり、結局のところ、参加議員が自ら野球の試合をすることが目的であって、参加した野球部の部員である被控訴人ら相互の親睦とレクリエーションの域を出るものではないと評価せざるを得ず、また、被控訴人らも右の事情を承知した上で、本件派遣決定に加わり、右大会に参加したものと推認されるのである。したがって、本件派遣決定は、議会の機能を果たすために合理的な必要性があるものと認めるのは困難であり、派遣の目的・動機、態様等に照らして著しく妥当性を欠き、裁量権を逸脱した違法があるというべきである。 そうすると、新潟県議会議長のした被控訴人らに対する旅行命令及び右命令に基づいてされた旅費の支出は、違法な本件派遣決定に基づいてされたもので法律上の原因を欠くというべきであるから、被控訴人らは、受領した旅費相当額を新潟県に返還すべき義務がある。 三結論以上によれば、控訴人らの本件請求はいずれも理由があるので認容すべきである。 よって、右と異なる原判決は相当でなく、本件控訴は理由があるから、原判決を取り消した上、本件請求をいずれも認容することとして、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第一一民事部裁判長裁判官瀬戸正義裁判官河野泰義裁判官大島崇志は退官のため署名押印をすることができない。 裁判長裁判官瀬戸正義 裁判長 裁判官瀬戸正義

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