令和2(ワ)22071 特許権に基づく損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年2月18日 東京地方裁判所
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令和4年2月18日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2年(ワ)第22071号特許権に基づく損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和3年12月24日判決 原告甲被告株式会社ユーグレナ同訴訟代理人弁護士志甫治宣同市川浩行同訴訟代理人弁理士秋山 敦 同福 士 智恵子同角渕由英 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,300万円及びこれに対する令和2年9月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨本件は,発明の名称を「角栓除去用液状クレンジング剤」とする特許第6271790号の特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)の特許権者である原告が,被告に対し,別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という。)が本件特許の特許請求の範囲の請求 項1記載の発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属し,被告によ る被告製品の製造,販売及び販売の申出が本件発明の実施に当たるとして,民法709条に基づき,本件特許権の侵害による損害金300万円及びこれに対する平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下,書証番号は特 記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者原告は,本件発明の発明者であり(甲1),被告は,微細藻類の ない事実並びに後掲証拠(以下,書証番号は特 記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者原告は,本件発明の発明者であり(甲1),被告は,微細藻類の研究開発,生産を行い,これを利用した化粧品,食品等の製造販売等を業とする株式会社である。 (2) 本件特許ア原告は,平成26年11月25日(優先日平成25年12月3日,優先権主張国日本国)を出願日とする特許出願(特願2014-237308号)の一部を分割して平成27年5月24日に出願した特許出願(特願2015-105028号)の一部を更に分割して,平成29年4月2日に 本件特許に係る特許出願(特願2017-73338号)をし,平成30年1月12日,本件特許権の設定登録(請求項の数1)を受けた(甲1ないし3,乙3)。 イ本件特許について,原告は,平成31年1月26日付けで,本件特許の明細書(以下「本件明細書」という。)の【0038】に「本発明の第2 のタンパク質抽出剤は,界面活性剤を含まなくともよい。また,本発明の第2のタンパク質抽出剤には,従来使用されてきた対象物質の分離等のためのエマルション等に含まれる界面活性剤よりも少ない量(例えば,タンパク質抽出剤の体積全体に対して0.1%~10%)の界面活性剤が含まれていてもよい。具体的には,タンパク質抽出剤(液状化粧品)全量に対 して10体積%以下,好ましくは8体積%以下,より好ましくは5体積% 以下,さらに好ましくは4体積%以下の界面活性剤が含まれていてもよい。 下限としては,特に制限はないが,例えば,0.1体積%以上を挙げることができる。第2のタンパク質抽出剤としては,疎水性の性質が強い界面活性剤,親水性の性質が強い界面活性剤のいずれのものであっても 。 下限としては,特に制限はないが,例えば,0.1体積%以上を挙げることができる。第2のタンパク質抽出剤としては,疎水性の性質が強い界面活性剤,親水性の性質が強い界面活性剤のいずれのものであっても,界面活性剤としての配合使用が許容される。」と記載されているのを,「本発明 の第2のタンパク質抽出剤は,界面活性剤を含まなくともよい。また,本発明の第2のタンパク質抽出剤には,界面活性剤が含まれていてもよい。 第2のタンパク質抽出剤としては,疎水性の性質が強い界面活性剤,親水性の性質が強い界面活性剤のいずれのものであっても,界面活性剤としての配合使用が許容される。」に訂正することを求める旨の訂正審判の請求 がされ,同年4月8日,特許庁は,本件明細書を原告の上記請求のとおり訂正することを認める旨の審決をし(以下「本件訂正審決」という。),同月18日,本件訂正審決は確定した(甲3。以下「本件明細書」というときは,本件訂正審決による訂正後のものを指す。また,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された段落番号及び図面については,単に【000 1】,【図1】などと記載する。)。 (3) 本件発明ア本件発明に係る特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲の請求項1(本件発明)の記載は,以下のとおりである。 【請求項1】オクチルドデカノールと,リモネン,スクアレン,及びスクアランからなる群から選ばれる1種類以上の炭化水素と,界面活性剤(但し,界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるも のを除く。)と, を含む角栓除去用液状クレンジング剤。 イ本件発明の構成要件の分説本件発明は,以下の構成要件に分説することができる(以下,各構成要件につき,頭書の記号に従って「構成要件A」などという。)。 を含む角栓除去用液状クレンジング剤。 イ本件発明の構成要件の分説本件発明は,以下の構成要件に分説することができる(以下,各構成要件につき,頭書の記号に従って「構成要件A」などという。)。 A オクチルドデカノールと, B リモネン,スクアレン,及びスクアランからなる群から選ばれる1種類以上の炭化水素と,C 界面活性剤(但し,界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)と,D を含む角栓除去用液状クレンジング剤。 (4) 被告製品ア被告は,令和元年5月から,業として,被告製品の製造,販売及び販売の申出をしている。 イ被告製品は,角栓除去用液状クレンジング剤であり,油剤が全量の約●(省略)●%,界面活性剤が全量の約●(省略)●%配合されている。具 体的には,被告製品には,油剤として,リンゴ酸ジイソステアリル,パルミチン酸エチルヘキシル,トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル,トウモロコシ胚芽油,パルミチン酸イソプロピル,ジカプリリルエーテルが配合されているほか,界面活性剤であるジオレイン酸ポリグリセリル-10,ジカプリン酸ポリグリセリル-6及びオレイン酸ポリグリセリル- 2が合計約●(省略)●体積%配合されている。さらに,被告製品には,高級アルコールであるオクチルドデカノールが●(省略)●体積%,炭化水素であるスクワラン(スクアランと同義である。)が●(省略)●体積%含まれている。(乙1,弁論の全趣旨)ウ被告製品は,構成要件Cを充足する。 3 争点 (1) 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)(2) 無効の抗弁の成否(争点2)ア新規性欠如(争点2-1)イ進歩性欠如(争点2-2)ウサポート要件違反(争点2-3) ) 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)(2) 無効の抗弁の成否(争点2)ア新規性欠如(争点2-1)イ進歩性欠如(争点2-2)ウサポート要件違反(争点2-3) (3) 権利濫用の抗弁の成否(争点3)(4) 損害の発生及びその額(争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について(原告の主張) (1) 被告製品の構成被告製品は,以下の構成を有する(以下,各構成要素につき,頭書の記号に従って「構成a」などという。)。 a オクチルドデカノールと,b スクアランと, c 界面活性剤と,d を含む角栓除去用液状クレンジング剤。 (2) 被告製品の構成要件充足性構成aないしdを構成要件AないしDと対比すると,構成aは構成要件Aを,構成bは構成要件Bを,構成dは構成要件Dを充足する。また,構成c が構成要件Cを充足することに争いはない。したがって,被告製品は,本件発明の構成要件AないしDを全て充足するから,本件発明の技術的範囲に属する。 (3) 被告の主張についてア被告は,構成要件A及びBについて,所定量の「オクチルドデカノール」 及び「スクアラン」を含有する必要があるとの限定解釈をするべきであり, 単にオクチルドデカノール及びスクアランを含む角栓除去用液状クレンジング剤であるというのみでは本件発明の技術的範囲に属さないと主張する。 しかし,特許請求の範囲の請求項1の文言に照らすと,本件発明は,「オクチルドデカノール」及び「スクアラン」の含有量について何ら限定を加えるものではなく,液状クレンジング剤に配合された成分全体に よって角栓を除去する作用を奏すれば,構成要件A及びBを充足する 「オクチルドデカノール」及び「スクアラン」の含有量について何ら限定を加えるものではなく,液状クレンジング剤に配合された成分全体に よって角栓を除去する作用を奏すれば,構成要件A及びBを充足するものというべきである。 また,【0061】には,「第2タンパク質抽出剤を液状化粧品に使用した場合の各成分の含量としては,液状化粧品の製品形態とした場合に好適な量を示すものであり,実際の使用態様において,これより薄い濃度 にて使用することを許容するものである。」,「水を含有する態様の第2のタンパク質抽出剤(液状化粧品)において,炭化水素の配合量は,水への溶解度以上の量である。第2の高級アルコールの配合量は,炭化水素の体積に対し,1体積%以上から炭化水素の体積の2倍以下(200体積%以下)の範囲内の量である。」と記載されている。この点,炭化水素 であるスクアランは水に溶けないから,わずかでも液状化粧品に含まれれば,水への溶解度以上の量であることになる。そして,オクチルドデカノールの含有量は,そのスクアランの1体積%以上で足りる。したがって,被告製品におけるスクアラン及びオクチルドデカノールの含有量に関する被告の主張を前提としても,被告製品は,スクアランの含有量 が0より多い●(省略)●体積%であって,オクチルドデカノールの含有量がスクアランの1体積%以上である●(省略)●体積%であるから,本件発明の技術的範囲に属することとなる。 そうすると,被告製品が本件発明の特許請求の範囲に記載された成分を含有し,かつ,角栓を除去する効果を有する液状クレンジング剤である 以上,被告製品は本件発明の技術的範囲に属すると認められるから,被 告の上記主張には理由がない。 イ被告は,構成要件Dの(構成要件AないしC)「を含む角 る液状クレンジング剤である 以上,被告製品は本件発明の技術的範囲に属すると認められるから,被 告の上記主張には理由がない。 イ被告は,構成要件Dの(構成要件AないしC)「を含む角栓除去用液状クレンジング剤。」とは,専らオクチルドデカノールが角栓除去効果に有効的に寄与することが必要であると解釈すべきであるところ,被告製品による角栓除去の作用は界面活性剤によるものであるから,被告製品は構成 要件Dを充足しないと主張する。 しかし,化粧品に使用される界面活性剤によりタンパク質を除去又は洗浄することが困難であることは,当業者においては技術常識に属するものである。すなわち,界面活性剤は油を水に乳化させるなど界面を活性化させる作用を有するにすぎず,界面活性剤自体が角栓を除去する作用 を有するものではない。角栓の除去に寄与するのは油性成分であり,その中にはオクチルドデカノール及びスクアランが含まれる。したがって,角栓除去の作用は界面活性剤によるものであるとする被告の主張には,技術的な誤りが含まれる。 加えて,被告製品の広告(甲6)には,オクチルドデカノール及びスク アランなどの油性成分が角栓の除去に寄与していることが記載されている一方,界面活性剤が角栓を除去する旨は全く記載されていない。このことは,被告製品による角栓除去の作用はオクチルドデカノール及びスクアランによるものであることを被告自身が認めていることにほかならない。 したがって,被告の上記主張には理由がない。 (被告の主張)(1) 本件発明の構成要件の解釈ア本件明細書の記載【0011】には,「本発明に係る液状化粧品は,下記有効成分を所定 量にて含有してなるタンパク質抽出剤の一態様を指すものである。」と記 載されてい 要件の解釈ア本件明細書の記載【0011】には,「本発明に係る液状化粧品は,下記有効成分を所定 量にて含有してなるタンパク質抽出剤の一態様を指すものである。」と記 載されているところ,【0037】には,「本発明の第2のタンパク質抽出剤は,上記第1の高級アルコールとは異なる第2の高級アルコールと,炭化水素と,をタンパク質抽出作用の有効成分として含んでなるものである。」と記載されている。 また,【0060】には,「炭化水素の含有量が全量に対して3体積%を 下回ると,化粧品として実用的な範囲を上回る量を使用しなければならなくなるため,好適ではない。」,「第2の高級アルコールの含有量が炭化水素に対して1体積%を下回ると,化粧品として実用的な範囲を上回る量を使用しなければならなくなるため,好適ではない。」と記載されている。 さらに,実施例20の結果に関する【0199】には,「液状化粧品は,全量に対して3体積%以上99体積%以下の25℃にて液体である炭化水素と,炭化水素に対して1体積%以上200体積%以下の炭素数20の第2の高級アルコールと,全量に対して0~10体積%の界面活性剤と,を含む構成とした場合であっても,タンパク質抽出が可能であるこ とが示された。」と記載されている。 イ本件特許の審査過程本件特許の審査の過程において提出された「早期審査に関する事情説明書」(乙4)には,「本願の実施形態は,界面活性剤を必要的に用いることはせず,オクチルドデカノールを必要的に用います。この構成の差に より,本願によれば効率よく角栓を除去できる液状クレンジング剤を提供することが可能になるという効果を奏します。」と記載されている。 ウ構成要件A,B及びDの解釈(ア) 前記ア及びイの記載に照らすと, 本願によれば効率よく角栓を除去できる液状クレンジング剤を提供することが可能になるという効果を奏します。」と記載されている。 ウ構成要件A,B及びDの解釈(ア) 前記ア及びイの記載に照らすと,①本件発明は,全量に対して3体積%以上99体積%以下の25℃にて液体である炭化水素と,炭化水素 に対して1体積%以上200体積%以下の炭素数20の第2の高級アル コールを含むものである必要がある。したがって,構成要件Aの「オクチルドデカノール」については,その配合量が炭化水素に対して1体積%以上200体積%以下であることが必要であると解釈すべきであり,構成要件Bの「リモネン,スクアレン,及びスクアランからなる群から選ばれる1種類以上の炭化水素」については,その配合量が全量に対し て3体積%以上99体積%以下であることが必要であると解釈すべきである。そうすると,単にオクチルドデカノールやスクアランを含む角栓除去用液状クレンジング剤というのみでは,本件発明の技術的範囲に属さないというべきである。 また,同記載に照らすと,②本件発明は,角栓除去のためにオクチル ドデカノールを必要的に用いるものであるというべきである。したがって,構成要件Dの「(注:構成要件AないしC)を含む角栓除去用液状クレンジング剤。」については,専らオクチルドデカノールが角栓除去効果に有効的に寄与することが必要であると解釈すべきであり,構成要件AないしCを含有する製品全体として角栓除去効果があるクレンジン グ剤を意味するものではないというべきである。 (イ) これに対し,原告は,【0061】の「炭化水素の配合量は,水への溶解度以上の量である」との記載及び炭化水素であるスクアランの溶解度が0(ゼロ)であることを根拠として,スクアランの全体に対す (イ) これに対し,原告は,【0061】の「炭化水素の配合量は,水への溶解度以上の量である」との記載及び炭化水素であるスクアランの溶解度が0(ゼロ)であることを根拠として,スクアランの全体に対する量は0より多ければよい旨を主張する。 しかし,【0061】は,「第2のタンパク質抽出剤を液状化粧品として使用する場合」に関する記載であるところ,その一つ前の段落である【0060】では,上記の場合について,水を含有する態様か否かを区別することなく,「炭化水素の含量としては(中略)3体積%以上含まれていることが好適である」と記載されており,【0061】には,【0 060】の上記記載を排斥する文言はない。また,【0060】の記載 によれば,一定量以上の炭化水素及び第2の高級アルコールを含有していないと,化粧品として実用的な範囲を上回る量を使用しなければならないこととなり,「液状化粧品を提供する」という本件発明の目的(【0006】)を果たせなくなる。したがって,【0061】の「炭化水素の配合量は,水への溶解度以上の量である」との記載は,炭化水素が3体 積%以上含まれていることを前提とするものと理解するのが合理的であって,スクアランの全体に対する量が0より多ければよいとの結論を導くものではない。 また,【0011】及び【0037】に存在する前記アの記載に照らすと,本件発明が提供しようとする「タンパク質を抽出できる液状化粧 品」(【0006】)は,第2の高級アルコールであるオクチルドデカノールと炭化水素であるスクアランを有効成分として「所定量」(【0011】)含むものといえるから,本件発明の上記目的を果たすためには,炭化水素及び第2の高級アルコールが所定の量以上の量を含有している必要があると解釈すべきである。 有効成分として「所定量」(【0011】)含むものといえるから,本件発明の上記目的を果たすためには,炭化水素及び第2の高級アルコールが所定の量以上の量を含有している必要があると解釈すべきである。 以上によれば,原告の上記主張は理由がない。 (2) 被告製品の構成要件充足性まず,前記(1)ウ(ア)①についてみると,被告製品におけるスクアランの配合量は●(省略)●体積%であり,「全量に対して3体積%以上」という本件発明における所定の配合量を下回る。また,オクチルドデカノールの配合 量は「炭化水素に対して1体積%以上」であるところ,上記のとおり炭化水素の含有量は「全量に対して3体積%以上」である必要があるから,オクチルドデカノールの全量に対する配合量は0.03体積%以上である必要がある。しかし,被告製品におけるオクチルドデカノールの配合量は●(省略)●体積%であり,本件発明における所定の配合量を下回るものであるから, 被告製品は構成要件A及びBを充足しない。 次に,前記(1)ウ(ア)②についてみると,被告製品におけるオクチルドデカノール及びスクアランの配合量は上記のとおり微量であり,このような配合量を前提に,オクチルドデカノール及びスクアランの作用によってタンパク質を抽出しようとすると,化粧品として実用的な範囲を上回る量,具体的には約●(省略)●リットル(被告製品●(省略)●本分)もの被告製品を使 用せざるを得ないこととなる。被告製品にオクチルドデカノールが少量ながら配合されているのは,専らマーケティングの側面から被告製品に配合されている●(省略)●を十分かつ安定的に溶解させる目的を達するためであって,角栓を除去する目的を達するために配合されているものではない。被告製品による角栓除去の作用は,前記 側面から被告製品に配合されている●(省略)●を十分かつ安定的に溶解させる目的を達するためであって,角栓を除去する目的を達するために配合されているものではない。被告製品による角栓除去の作用は,前記前提事実(4)イのとおり被告製品に配合 された界面活性剤によるものである。したがって,被告製品においてオクチルドデカノールが角栓除去効果に有効的に寄与しているとは認められないから,被告製品は,構成要件Dを充足しない。 (3) 小括以上のとおり,被告製品は,構成要件A,B及びDを充足しないから,被 告製品は本件発明の技術的範囲に属さない。 2 争点2(無効の抗弁の成否)について(1) 争点2-1(新規性欠如)について(被告の主張)ア株式会社バイオリンクの製品紹介に関するウェブページ(乙5)を引用 例とするもの(ア) 平成25年8月11日に公開されていた,株式会社バイオリンクの製品紹介に関するウェブページ(乙5。以下「乙5ウェブページ」という。)には,「セルソアンクレンジングオイルオリーブオイルベースの洗い流し専用クレンジングオイル」と記載された製品が掲載されてお り,同製品の内容成分として,ポリソルベート85,オクチルドデカノ ール及びスクワランが挙げられている。そして,同製品のセールスポイントとして,「毛穴の中までスルッと入り込み,落ちにくいメイクも毛穴の汚れもすっきりきれいに落とします。角栓やメラニンを含む古い角質や酸化した汚れもすっきり。」と記載されている。 以上によれば,乙5ウェブページには,以下の発明が記載されている と認められる。 乙5a オクチルドデカノールと,乙5b スクワランと,乙5c ポリソルベート85と,乙5d を含む角栓を除去可能なオイルベースの ジには,以下の発明が記載されている と認められる。 乙5a オクチルドデカノールと,乙5b スクワランと,乙5c ポリソルベート85と,乙5d を含む角栓を除去可能なオイルベースのクレンジングオイル。 (イ) ポリソルベート85は界面活性剤(乳化剤)に相当するものであり,オイルベースのクレンジングオイルは,液状クレンジング剤に相当する。 したがって,本件発明と乙5ウェブページに記載された発明とは,以下の点で一致する。 「オクチルドデカノールと,スクアラン(スクワラン)と,界面活性 剤と,を含む液状クレンジング剤。」なお,乙5ウェブページには,構成要件Cのうち,界面活性剤の含有量を「全量に対して0~10体積%であるものを除く。」とする部分についての明確な記載がない。しかし,界面活性剤の含有量を10体積%より多くすることは,本件特許の優先日時点において公知又は周知の技 術となっていたから,実質的には,上記部分も乙5ウェブページに記載されていたといえ,本件発明との相違点とは認められない。 また,構成要件Dに「角栓を除去可能な」と記載されている部分について,オクチルドデカノール,スクアラン(スクワラン)及び界面活性剤を含む液状クレンジング剤が角栓除去作用を発揮することは自明の事 項である。 以上によれば,本件発明は乙5ウェブページに記載された発明であると認められる。 イエムディ化粧品販売株式会社の製品の配合成分表に関するウェブページ(乙6)を引用例とするもの(ア) 平成25年6月5日に公開されていた,エムディ化粧品販売株式会 社の製品の配合成分表に関するウェブページ(乙6。以下「乙6ウェブページ」という。)には,「レセプトⅡ クレンジングミルク」の成分名として,オクチル に公開されていた,エムディ化粧品販売株式会 社の製品の配合成分表に関するウェブページ(乙6。以下「乙6ウェブページ」という。)には,「レセプトⅡ クレンジングミルク」の成分名として,オクチルドデカノール,ポリソルベート40及びスクワランが記載されている。 以上によれば,乙6ウェブページには,以下の発明が記載されている と認められる。 乙6a オクチルドデカノールと,乙6b スクワランと,乙6c ポリソルベート40と,乙6d を含むクレンジングミルク。 (イ) ポリソルベート40は界面活性剤(乳化剤)に相当するものであり,クレンジングミルクは,液状クレンジング剤に相当する。したがって,本件発明と乙6ウェブページに記載された発明とは,以下の点で一致する。 「オクチルドデカノールと,スクアラン(スクワラン)と,界面活性 剤と,を含む液状クレンジング剤。」なお,乙6ウェブページには界面活性剤の含有量に関する明確な記載がないが,この点が本件発明との相違点とは認められないこと,オクチルドデカノール,スクアラン(スクワラン)及び界面活性剤を含む液状クレンジング剤が角栓除去作用を発揮することは,前記ア(イ)のとおり である。 以上によれば,本件発明は乙6ウェブページに記載された発明であると認められる。 ウ Amazonの「デイライトシェイクシェイククレンジング」という製品の販売ウェブページ(乙7)を引用例とするもの(ア) 平成20年9月14日に公開されていた,Amazonの「デイラ イトシェイクシェイククレンジング」という製品の販売ウェブページ(乙7。以下「乙7ウェブページ」という。)には,商品説明として「「デイライトシェイクシェイククレンジング」は…クレンジング イトシェイクシェイククレンジング」という製品の販売ウェブページ(乙7。以下「乙7ウェブページ」という。)には,商品説明として「「デイライトシェイクシェイククレンジング」は…クレンジングオイルです。」と記載され,全成分表示に,ポリソルベート80,スクワラン及びオクチルドデカノールが記載されている。 以上によれば,乙7ウェブページには,以下の発明が記載されていると認められる。 乙7a オクチルドデカノールと,乙7b スクワランと,乙7c ポリソルベート80と, 乙7d を含むクレンジングオイル。 (イ) ポリソルベート80は界面活性剤(乳化剤)に相当するものであり,クレンジングオイルは,液状クレンジング剤に相当する。したがって,本件発明と乙7ウェブページに記載された発明とは,以下の点で一致する。 「オクチルドデカノールと,スクアラン(スクワラン)と,界面活性剤と,を含む液状クレンジング剤。」なお,乙7ウェブページには界面活性剤の含有量に関する明確な記載がないが,この点が本件発明との相違点とは認められないこと,オクチルドデカノール,スクアラン(スクワラン)及び界面活性剤を含む液状 クレンジング剤が角栓除去作用を発揮することは,前記ア(イ)のとおり である。 以上によれば,本件発明は乙7ウェブページに記載された発明であると認められる。 エ新規性欠如に関する小括以上によれば,本件発明は乙5ウェブページないし乙7ウェブページに おいて実質的に開示されていたから,新規性が認められず,特許法29条1項3号により特許が受けられないものであって,特許法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。よって,原告の本件特許権の行使は特許法104条の3第1項により認められない れず,特許法29条1項3号により特許が受けられないものであって,特許法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。よって,原告の本件特許権の行使は特許法104条の3第1項により認められない。 (原告の主張) ア乙5ウェブページには,内容成分として,ポリソルベート85,オクチルドデカノール及びスクワラン以外の物質が記載されている。これに対し,本件発明は,内容成分として,オクチルドデカノールと,スクアラン等の所定の炭化水素と,界面活性剤3種類が特定されている。したがって,内容成分が上記の3種類に特定されているか否かという点において,本件発 明は乙5ウェブページに記載された発明と相違する。 また,乙5ウェブページには界面活性剤の含有量に関する記載が存在しないのに対し,本件発明は,界面活性剤の含有量が「0~10体積%のものを除く。」として特定されている。したがって,界面活性剤の含有量が特定されているか否かという点においても,本件発明と乙5ウェブペ ージに記載された発明とは相違する。 以上によれば,乙5を引用例とする被告の新規性欠如の主張は理由がない。 イ被告は,本件発明と乙5ウェブページないし乙7ウェブページに記載された発明との間に実質的相違点はないと主張するが,このような「実質的」 との表現は,相違点の存在を認めていることを意味する。したがって,こ れらを引用例とする被告の新規性欠如の主張は理由がない。 (2) 争点2-2(進歩性欠如)について(被告の主張)前記(1)(被告の主張)のとおり,乙5ウェブページには乙5aないし乙5dが,乙6ウェブページには乙6aないし乙6dが,乙7ウェブページに は乙7aないし乙7dが,それぞれ開示されている。 この点,乙5ウェブページないし おり,乙5ウェブページには乙5aないし乙5dが,乙6ウェブページには乙6aないし乙6dが,乙7ウェブページに は乙7aないし乙7dが,それぞれ開示されている。 この点,乙5ウェブページないし乙7ウェブページには,構成要件Cに記載された「界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く」との構成が明確に記載されていない。しかし,優れた角栓除去作用や使用感を発揮させるために,界面活性剤の含有量を10質量%(なお,質量%と体 積%はほぼ同義とみることができる。)より多くするとの技術思想については,特開2006-225266号公報(乙9の1。以下「乙9の1公報」という。),特開2009-143878号公報(乙9の2。以下「乙9の2公報」という。)及び特開2002-241260号公報(乙9の3。以下「乙9の3公報」という。)に記載されており,本件特許の優先日時点にお いて既に公知又は周知の技術となっていた。そして,当業者であれば,液状クレンジング剤における角栓の除去効果や使用感を良好なものとするために,オクチルドデカノールと,スクアランと,界面活性剤を含む液状クレンジング剤において,上記の公知又は周知の技術を参酌して,界面活性剤の含有量を10体積%より多くすることには明白な動機付けがあった。 したがって,当業者は,乙5ウェブページないし乙7ウェブページのいずれかを主引用例とし,これに副引用例として乙9の1公報ないし乙9の3公報を組み合わせることにより,本件発明に容易に想到することができた。 そうすると,本件発明には進歩性が認められず,特許法29条2項により特許が受けられないもので,特許法123条1項2号に該当し,無効とすべ きものである。よって,原告の本件特許権の行使は,特許法104条の3第 性が認められず,特許法29条2項により特許が受けられないもので,特許法123条1項2号に該当し,無効とすべ きものである。よって,原告の本件特許権の行使は,特許法104条の3第 1項により,認められない。 (原告の主張)前記(1)(原告の主張)アのとおり,本件発明は,内容成分として,オクチルドデカノールと,スクアラン等の所定の炭化水素と,界面活性剤の3種類が特定されている点において,乙5ウェブページに記載された発明と相違 する。 この点,当業者において,角栓除去効果をもたらす物質の組合せを特定するためには,相当多数の試行錯誤を経なければならず,当業者が乙5ウェブページの記載に接したとしても,本件発明によって特定された上記3種類の組合せに想到することは容易ではない。 さらに,乙9の1公報ないし乙9の3公報には,「界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く」ことについての示唆も動機付けもない。かえって,これらの公報の記載には界面活性剤を0ないし10体積%含有するものも含まれているから,被告が主張する主引用例に副引用例として乙9の1公報ないし乙9の3公報を組み合わせることには阻害要因がある。 以上によれば,当業者が乙9の1公報ないし乙9の3公報の記載に接したとしても,本件発明に想到することは容易ではないから,本件発明について進歩性欠如は認められない。 (3) 争点2-3(サポート要件違反)について(被告の主張) 【0005】ないし【0007】の記載にかんがみると,本件発明は,皮膚に負担をかけ,荒れ等を生じさせ得る界面活性剤を使用していないか,又は界面活性剤の使用量がごく少量である方法により,タンパク質を抽出できる液状化粧品を提供することを課題としているといえる(なお,【 膚に負担をかけ,荒れ等を生じさせ得る界面活性剤を使用していないか,又は界面活性剤の使用量がごく少量である方法により,タンパク質を抽出できる液状化粧品を提供することを課題としているといえる(なお,【0006】の「タンパク質を抽出できる液状化粧品を提供すること」との記載は,【0 005】の「界面活性剤を使用していないか,又は,界面活性剤の使用量が 極少量である方法が求められていた。」という従来技術に対する課題を前提とするものであると解される。)。 しかるに,本件発明は,10体積%より多い,多量の界面活性剤を含有する液状クレンジング剤を含むものであるから,当業者は,本件発明の特許出願時の技術常識に照らし,本件発明における界面活性剤の使用量がごく少量 であると認識することはできず,上記課題を解決できると認識することはできない。加えて,10体積%より多い,多量の界面活性剤を含有する液状クレンジング剤は,皮膚に負担をかけ,荒れ等を生じさせ得ることから,本件発明には,上記課題を解決することができないものを含んでいる。 また,【0060】及び実施例20に関する【0195】ないし【019 9】に記載されているのは,前記1(被告の主張)(2)のとおり,オクチルドデカノールを少なくとも0.03体積%以上,スクアランを少なくとも3体積%以上含有する場合のみであり,これらの量を下回るオクチルドデカノール及びスクアランが含有された場合にも同様にタンパク質を抽出できることは,実施例を含め,本件明細書には何ら示されていない。この点について, 本件特許の出願時における技術常識に照らしても,当業者が,液状クレンジング剤がオクチルドデカノール及びスクアランを含むだけで,上記の所定量を含有していない場合にもタンパク質を抽出できる旨を合理的 本件特許の出願時における技術常識に照らしても,当業者が,液状クレンジング剤がオクチルドデカノール及びスクアランを含むだけで,上記の所定量を含有していない場合にもタンパク質を抽出できる旨を合理的に推測することは困難である。したがって,本件特許は,発明の詳細な説明によって裏付けられた範囲を超える発明を含んでいる。 以上によれば,本件発明に係る本件特許の請求項1の記載は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載と適合しないものであり,本件特許は,特許法36条6項1号所定の要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるといえるから,特許法123条1項4号に該当し,無効とすべきものである。よって,原告の本件特許権の行使は,特許法104条の3第1項により, 認められない。 (原告の主張)【0002】ないし【0005】には,本件発明が,界面活性剤を使用していないか,又は使用量がごく少量である分離方法が求められていたという認識に端を発するというものである旨の記載がある。そして,【0006】には,本件発明が,こうした認識に端を発したものであって,「タンパク質 を抽出できる液状化粧品を提供することを目的とする」ものであることが記載されているにすぎない。したがって,本件明細書のこれらの記載からは,本件発明が,界面活性剤を使用していないか又は界面活性剤の使用量がごく少量であることを課題とするものであることは読み取れない。しかも,【0006】には「上記課題を解決するためになされたものであり,」との記載 があったところ,出願の段階においてこれを削除しているから,そのような出願経過からしても,本件発明の課題について被告の主張のとおりに理解することはできない。 また,前記1(原告の主張)(3)アのとおり,【0061】 願の段階においてこれを削除しているから,そのような出願経過からしても,本件発明の課題について被告の主張のとおりに理解することはできない。 また,前記1(原告の主張)(3)アのとおり,【0061】には,液状化粧品に含まれるオクチルドデカノール及びスクワランの含有量が少なくてもよ いことが記載されている。さらに,本件発明における角栓除去効果については,本件明細書に,実施例13として記載されており,これによれば,第2のタンパク質抽出剤Aにはスクワランとオクチルドデカノールが含まれているところ,第2のタンパク質抽出剤Aは角栓のある皮膚に対する洗浄効果すなわち角栓除去効果が市販の石けんより高かったことが明らかにされている。 このように,前記(被告の主張)にいう「所定量」を含有していない場合にもタンパク質を抽出できる旨が,本件明細書の発明の詳細な説明によって裏付けられている。 したがって,本件特許の特許請求の範囲の記載は,本件明細書によってサポートされているから,被告の主張は理由がない。 3 争点3(権利濫用の抗弁の成否)について (被告の主張)本件特許と,登録番号を特許第6120423号とする特許(以下「別件特許」という。)は,前記第2の2(2)のとおり,同一の原出願(特願2015-105028号)からの分割出願である。別件特許の出願手続において,原告は,その解決すべき課題を「界面活性剤を使用していないか,又は,界面活性 剤の使用量が極少量である方法が求められていた」とし,オクチルドデカノールと炭化水素であるスクアランを組み合わせて用いることで,界面活性剤を使用していないか,又は界面活性剤の使用量をごく少量(全量に対して0ないし10体積%)とできることを特徴と主張し,別件特許に係る特許権を取得した。 るスクアランを組み合わせて用いることで,界面活性剤を使用していないか,又は界面活性剤の使用量をごく少量(全量に対して0ないし10体積%)とできることを特徴と主張し,別件特許に係る特許権を取得した。 その一方で,原告は,本件特許の出願手続において,界面活性剤を多量に含ん でいても角栓の除去が阻害されることはなく,むしろ角栓を効率的に除去できることは明白であるなどと,別件特許の出願手続での主張と相反する主張をして,本件特許権を取得した。 原告の以上のような本件特許権の取得経過に照らせば,本件特許権を行使することは,権利の濫用というべきである。 (原告の主張)争う。 4 争点4(損害の発生及びその額)について(原告の主張)被告は,1年以上にわたって被告製品を製造等しているところ,原告が当該 製造等に対し受けるべき金銭の額すなわち本件特許の実施料は300万円を下らない。よって,原告は,被告に対し,民法709条に基づき,特許法102条3項により算定された損害金300万円及びこれに対する不法行為後の日である令和2年9月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を求める。 (被告の主張) 被告が1年以上にわたって被告製品を製造等している事実は認め,その余の事実は不知,法的主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件明細書の記載事項等(1) 本件明細書の記載事項 本件明細書の「発明の詳細な説明」には,以下の記載がある(甲1,3)。 ア 【技術分野】【0001】本発明は,液状化粧品に関する。詳しくは,皮膚に付着したタンパク質洗浄用の液状化粧品に関する。 イ 【背景技術】【0002】皮膚の汚れにはタンパク質等が含まれている。この汚れを落とすには, は,液状化粧品に関する。詳しくは,皮膚に付着したタンパク質洗浄用の液状化粧品に関する。 イ 【背景技術】【0002】皮膚の汚れにはタンパク質等が含まれている。この汚れを落とすには,タンパク質を皮膚表面から抽出する作用を有する化粧品等が使用される。 このような化粧品として,例えば,溶液中から少なくともタンパク質を 抽出する作用を有する液状化粧品が挙げられる。 溶液中の対象物質(例えば,タンパク質等)を分離又は抽出等するための方法としてはエマルションを利用した方法が挙げられる。 【0003】対象物質の分離等のためのエマルションを利用した方法としては,例え ば,油層中の逆ミセル内部の水層に対象物質を分離等する方法,乳化型液膜抽出による方法,多層乳化したエマルションを転層させて対象物質を分離等する方法等が挙げられる。 ウ 【発明が解決しようとする課題】【0005】 しかし,溶液中の対象物質を分離等するために使用されて来た従来の方 法は,いずれも,界面活性剤の使用を前提としていた。他方,界面活性剤は,皮膚に負担をかけ,荒れ等を生じさせ得るため,界面活性剤を使用していないか,又は,界面活性剤の使用量が極少量である方法が求められていた。 【0006】 本発明は,タンパク質を抽出できる液状化粧品を提供することを目的とする。 エ 【課題を解決するための手段】【0007】本発明者は,所定の高級アルコールと,脂肪酸又は炭化水素とを少なく とも含むタンパク質抽出剤によれば上記課題を解決できる点を見出し,本発明を完成するに至った。具体的に,本発明は下記のものを提供する。 【0008】[1]オクチルドデカノールと, リモネン,スクアレン,及びスクアランからなる群から きる点を見出し,本発明を完成するに至った。具体的に,本発明は下記のものを提供する。 【0008】[1]オクチルドデカノールと, リモネン,スクアレン,及びスクアランからなる群から選ばれる1種類以上の炭化水素と,を含む角栓除去用液状クレンジング剤。 [2]界面活性剤をさらに含む請求項1に記載のクレンジング剤。 オ 【発明の効果】【0009】本発明によれば,タンパク質を抽出できる液状化粧品が提供される。 カ 【発明を実施するための形態】【0011】 以下,本発明の実施形態について説明する。なお,本発明は以下の実施 形態に限定されない。 また,本発明において「タンパク質を抽出できる液状化粧品」とは,タンパク質を抽出する作用を有する液状化粧品を指す。本発明に係る液状化粧品は,下記有効成分を所定量にて含有してなるタンパク質抽出剤の一態様を指すものである。本明細書においては,本発明に係る液状化粧 品を,「タンパク質抽出剤」という場合がある。 本発明において「タンパク質抽出剤」とは,本発明に係る有効成分を含有してなる組成物を指すものである。 また,本発明において,「タンパク質を抽出する」とは,抽出対象物(つまり,タンパク質)を,皮膚等から分離することを指す。具体的に, 「タンパク質の抽出」には,皮膚等からのタンパク質の洗浄(抽出対象物であるタンパク質を皮膚等から抽出して,タンパク質抽出剤と共に水等で洗い流すこと),及び/又は,皮膚等からのタンパク質の除去という意味が含まれる。 また,本発明において「液状化粧品」とは,室温(19℃~25℃)に おいて液状である化粧品を指す。 【0013】本発明において「界面活性剤」とは,溶媒中でミセル構造をとり得る両親媒性分 また,本発明において「液状化粧品」とは,室温(19℃~25℃)に おいて液状である化粧品を指す。 【0013】本発明において「界面活性剤」とは,溶媒中でミセル構造をとり得る両親媒性分子を指す。 【0037】 本発明の第2のタンパク質抽出剤は,上記第1の高級アルコールとは異なる第2の高級アルコールと,炭化水素と,をタンパク質抽出作用の有効成分として含んでなるものである。 【0038】本発明の第2のタンパク質抽出剤は,界面活性剤を含まなくともよい。 また,本発明の第2のタンパク質抽出剤には,界面活性剤が含まれてい てもよい。 第2のタンパク質抽出剤としては,疎水性の性質が強い界面活性剤,親水性の性質が強い界面活性剤のいずれのものであっても,界面活性剤としての配合使用が許容される。 【0039】 第2のタンパク質抽出剤は,抽出対象液に直接添加して単独で用いることが可能であるが,好ましくは,第1の抽出工程後に得られたタンパク質含有層(以下,「第1のタンパク質含有層」ともいい,この層には,タンパク質,水性溶媒,炭素数15以上の高級アルコール,及び脂肪酸が含まれ得る)に添加して用いることが好適である。この場合,第1の タンパク質含有層に含まれ得る夾雑物(細胞膜等)を分離できるので,タンパク質をより効率的に抽出できる。 なお,第2のタンパク質抽出剤は,第1の抽出工程を行っていない抽出対象液に直接接触させて,抽出工程を行うことも可能である。以下,本明細書では,「第1のタンパク質含有層」を「抽出対象液」と読み替え て,第2のタンパク質抽出剤を使用することも可能である。 【0044】(第2の高級アルコール)第2の高級アルコールは,後述する炭化水素と組み合わせることで,下記の作 象液」と読み替え て,第2のタンパク質抽出剤を使用することも可能である。 【0044】(第2の高級アルコール)第2の高級アルコールは,後述する炭化水素と組み合わせることで,下記の作用によって,第1のタンパク質含有層からタンパク質を抽出で きると考えられる。すなわち,第1のタンパク質含有層には,タンパク質,水性媒体,第1の高級アルコール及び脂肪酸等が分散していると考えられるところ,炭化水素が加えられると,第1のタンパク質含有層中の分散状態が崩れ,水性媒体を含む層,並びに,第1の高級アルコール,脂肪酸,及び炭化水素を含む層に分離する。他方,第2の高級アルコー ル中の疎水基(オレイル基等)が第1のタンパク質含有層中のタンパク 質と結合する。次いで,炭化水素の液滴が,第2の高級アルコールと結合したタンパク質と反発しあう。その結果,タンパク質以外の夾雑物の含有量がより少ない第2のタンパク質含有層が形成される。 【0045】第2の高級アルコールとしては,第1の高級アルコールよりも第1の タンパク質含有層中のタンパク質と結合しやすいものを使用することが好適であり,第1の高級アルコールとは異なるものを使用する。具体的には,第2の高級アルコールは,炭素数18以上の高級アルコールである。 【0046】 他方,第2の高級アルコールの炭素数が多すぎると,後述する炭化水素が水性溶媒中で液滴を形成し難いため好ましくない。第2の高級アルコールの炭素数は,好ましくは炭素数50以下,さらに好ましくは炭素数40以下,特に好ましくは炭素数20以下である。 【0047】 第2の高級アルコールとしては,高級アルコールの炭素鎖にタンパク質が結合しやすいという点で分岐構造中に水酸基を有する炭素数18以上の分岐 に好ましくは炭素数20以下である。 【0047】 第2の高級アルコールとしては,高級アルコールの炭素鎖にタンパク質が結合しやすいという点で分岐構造中に水酸基を有する炭素数18以上の分岐状高級アルコールが好ましい。分岐構造中に水酸基を有する分岐状高級アルコールとしては,高級アルコールの炭素鎖とタンパク質との結合を阻害しないという点で分岐構造中の炭素数が少ないものが好ま しい。 具体的には,水酸基から分岐部分までの炭素原子数が1以下である分岐状高級アルコールが好ましい。水酸基から分岐部分までの炭素原子数が1以下である分岐状高級アルコールとしては,オクチルドデカノール(炭素数20)等が挙げられる。 【0048】 例えば,水酸基から分岐部分までの炭素原子数が「1」である高級アルコールとして,下記式2で表されるオクチルドデカノールを例示できる。 【0049】【化2】 【0050】第2の高級アルコールとしては,オクチルドデカノールが好ましい。 第2の高級アルコールは1種であってもよく,2種以上を組み合わせて使用してもよい。 【0051】(炭化水素)炭化水素としては,炭素原子及び水素原子のみからなる化合物であれば特に限定されないが,第1のタンパク質含有層の分散状態を崩し,水性媒体を含む層,並びに,第1の高級アルコール及び脂肪酸を含む層に 分離しやすいという点で,炭素数が10以上の炭化水素が好ましい。特に,高融点の炭化水素を液化させるための熱によってタンパク質が変性することを避けるという点で,25℃で液体である炭化水素が好ましい。 25℃で液体である炭化水素としては,具体的には,リモネン(炭素数10),スクアレン(炭素数30),スクアラン(炭素数30),流動パラ を避けるという点で,25℃で液体である炭化水素が好ましい。 25℃で液体である炭化水素としては,具体的には,リモネン(炭素数10),スクアレン(炭素数30),スクアラン(炭素数30),流動パラ フィン(炭素数20以上)等が挙げられる。炭化水素は1種であってもよく,2種以上を組み合わせて使用してもよい。 【0052】第2のタンパク質抽出剤中の第2の高級アルコール及び炭化水素の組み合わせとしては,第1のタンパク質含有層を少なくとも2層に分離しやすいという点でオクチルドデカノール及びリモネンが特に好ましい。 【0053】 第2のタンパク質抽出剤中の第2の高級アルコールと炭化水素との比率は,タンパク質の量や性質に応じて適宜調整でき,例えば,質量比で第2の高級アルコール/炭化水素=2/1~1/100,好ましくは2/1~1/10,より好ましくは2/1~2/3,特に好ましくは1/1~2/3であることが好適である。 【0054】第2のタンパク質抽出剤には,本発明の目的を害さない限り,公知の添加剤(界面活性剤,炭素数18未満の高級アルコール等)を添加してもよい。添加剤の添加量は得ようとする効果等に応じて適宜設定できる。 また,有効成分以外の他成分として,リノール酸のように炭素骨格中に 2以上の不飽和結合を有する脂肪酸を含むものであっても良い。 【0060】(液状化粧品としての第2のタンパク質抽出剤)第2のタンパク質抽出剤を液状化粧品として使用する場合,「炭化水素」の含量としては,タンパク質抽出剤(液状化粧品)の「全量」に対して 3体積%以上含まれていることが好適である。好ましくは「全量」に対して5体積%以上,より好ましくは7.5体積%以上,さらに好ましくは10体積%以上,一層好ましくは12. )の「全量」に対して 3体積%以上含まれていることが好適である。好ましくは「全量」に対して5体積%以上,より好ましくは7.5体積%以上,さらに好ましくは10体積%以上,一層好ましくは12.5体積%以上,より一層好ましくは15体積%以上,さらに一層好ましくは17.5体積%以上,特一層好ましくは20体積%以上含まれていることが好適である。炭化水 素の濃度が低い場合には,タンパク質抽出剤(液状化粧品)をより多く 使用することにより,タンパク質の抽出は可能である。しかし,炭化水素の含有量が全量に対して3体積%を下回ると,化粧品として実用的な範囲を上回る量を使用しなければならなくなるため,好適ではない。 第2のタンパク質抽出剤を液状化粧品として使用する場合,「第2の高級アルコール」の含量としては,「炭化水素」の体積に対して1体積%以 上含まれていることが好適である。好ましくは「炭化水素」の体積に対して10体積%以上,より好ましくは50体積%以上含まれていることが好適である。第2の高級アルコールの濃度が低い場合には,タンパク質抽出剤(液状化粧品)をより多く使用することによりタンパク質の抽出は可能である。しかし,第2の高級アルコールの含有量が炭化水素に 対して1体積%を下回ると,化粧品として実用的な範囲を上回る量を使用しなければならなくなるため,好適ではない。第2の高級アルコール含量の上限としては,「炭化水素」の体積に対して200体積%以下,好ましくは100体積%以下が好適である。 【0061】 第2のタンパク質抽出剤を液状化粧品として使用する場合,水を含有する態様及び水を含有しない態様という,2つの態様がある。以下に,各態様について説明する。 なお,ここで,第2タンパク質抽出剤を液状化粧品に使用し ク質抽出剤を液状化粧品として使用する場合,水を含有する態様及び水を含有しない態様という,2つの態様がある。以下に,各態様について説明する。 なお,ここで,第2タンパク質抽出剤を液状化粧品に使用した場合の各成分の含量としては,液状化粧品の製品形態とした場合に好適な量を 示すものであり,実際の使用態様において,これより薄い濃度にて使用することを許容するものである。 ・水を含有する態様水を含有する態様の第2のタンパク質抽出剤(液状化粧品)において,炭化水素の配合量は,水への溶解度以上の量である。第2の高級アルコ ールの配合量は,炭化水素の体積に対し,1体積%以上から炭化水素の 体積の2倍以下(200体積%以下)の範囲内の量である。第2のタンパク質抽出剤に炭化水素及び第2の高級アルコール以外の成分を配合する場合には,上記の炭化水素及び第2の高級アルコールの配合量の条件を満たし,かつ,該成分の配合量に相当する分だけ,炭化水素の体積を減らすように調整する。 ・水を含有しない態様水を含有しない態様の第2のタンパク質抽出剤(液状化粧品)において,炭化水素の配合量は,第2のタンパク質抽出剤全体に対して3体積%以上99体積%以下である。第2の高級アルコールの配合量は,炭化水素の体積に対し,1体積%以上から炭化水素の体積の2倍以下(2 00体積%以下)の範囲内の量である。第2のタンパク質抽出剤に炭化水素及び第2の高級アルコール以外の成分を配合する場合には,上記の炭化水素及び第2の高級アルコールの配合量の条件を満たし,かつ,該成分の配合量に相当する分だけ,炭化水素の体積を減らすように調整する。上記の処方により化粧品を調整すると,該化粧品の性状は常温で液 体となる。 【0064】本発明のタンパク質抽 かつ,該成分の配合量に相当する分だけ,炭化水素の体積を減らすように調整する。上記の処方により化粧品を調整すると,該化粧品の性状は常温で液 体となる。 【0064】本発明のタンパク質抽出剤は,タンパク質を簡便に抽出できるため,皮膚に付着したタンパク質を抽出洗浄することが可能な液状化粧品(「タンパク質洗浄用の液状化粧品」)として好適に使用できる。 本発明に係るタンパク質抽出剤は,具体的には,トイレタリー製品等の液状化粧品(クレンジング剤,シャンプー,ボディーソープ,ハンドソープ,マッサージオイル,先顔剤,等)として好適に使用できる。特に好ましくは,クレンジング用の液状化粧品として好適に使用できる。 【0065】 また,本発明のタンパク質抽出剤は,界面活性剤等を含まなくとも, 優れたタンパク質抽出効果を奏する。したがって,本発明のタンパク質抽出剤によれば,皮膚への負担を低減しつつ,所望の洗浄効果が得られる。本発明のタンパク質抽出剤には,液状化粧品に配合される公知の添加剤(界面活性剤,防腐剤,保湿剤,香料,エンモリメント成分等)が含まれていてもよい。添加剤の種類や量は,本発明の目的を阻害しない 範囲で適宜選択できる。 【0071】本発明のタンパク質抽出剤をクレンジング剤として使用する場合,例えば,下記の方法を実施することが好ましい。まず,皮膚等において,タンパク質を抽出したい部位(汚れを洗浄したい部位)に本発明のタン パク質抽出剤を塗布し,軽く揉む等してマッサージする。塗布前に,該部位は水で濡らしてもよいが,濡らさなくともよい。マッサージ後,該部位を水で濡らし,さらにマッサージした後,水で本発明のタンパク質抽出剤を洗い流す。洗い流す際に,本発明のタンパク質抽出剤によって皮膚等の表面 濡らしてもよいが,濡らさなくともよい。マッサージ後,該部位を水で濡らし,さらにマッサージした後,水で本発明のタンパク質抽出剤を洗い流す。洗い流す際に,本発明のタンパク質抽出剤によって皮膚等の表面のタンパク質が抽出され,かつ,皮膚等から除去される。 水による洗浄後,石けんや洗顔剤等によって皮膚等をさらに洗浄してもよい。 【0072】第1のタンパク質抽出剤及び第2のタンパク質抽出剤を併用する場合,第1のタンパク質抽出剤を塗布後に洗い流す前に,第2のタンパク質抽 出剤を第1のタンパク質抽出剤が塗布された部位に塗布してマッサージした後,洗い流すことが望ましい。 キ 【実施例】【0073】以下,実施例により本発明をさらに詳しく説明するが,本発明はこれら に限定されるものではない。なお,下記の試験はいずれも室温(19℃ 以上25℃以下)で行った。また,下記表中において,「wt%」は質量%を,「vоl%」は体積%をそれぞれ示す。 【0138】[実施例12] 第1のタンパク質抽出剤又は第2のタンパク質抽出剤による抽出-1 本発明の第1のタンパク質抽出剤又は第2のタンパク質抽出剤を使用して,以下の通り,抽出対象液から抽出対象物(タンパク質)を抽出した。 【0139】1.抽出対象液の構成卵白0.5mlをリン酸バッファ5ml中に溶かし,抽出対象液を得た。 【0140】2.第1のタンパク質抽出剤の調製(第1のタンパク質抽出剤A)第1のタンパク質抽出剤(オレイン酸:オレイルアルコール=2:1(体積比)) 9ml リン酸バッファ 0.5mlグルタミン酸 0.1g(第1のタンパク質抽出剤B)第1のタンパク質抽出剤(イソステアリン酸:イソステアリルアルコール :1(体積比)) 9ml リン酸バッファ 0.5mlグルタミン酸 0.1g(第1のタンパク質抽出剤B)第1のタンパク質抽出剤(イソステアリン酸:イソステアリルアルコール=2:1(体積比)) 9ml リン酸バッファ 0.5mlアスパラギン酸 0.1g上記を試験管内で混合及び撹拌して第1のタンパク質抽出剤A又はBを調製した。 【0141】 3.第2のタンパク質抽出剤の調製 (第2のタンパク質抽出剤A)第2のタンパク質抽出剤(スクワラン:オクチルドデカノール=2:1(体積比)) 9mlリン酸バッファ 0.5mlグルタミン酸 0.1g (第2のタンパク質抽出剤B)第2のタンパク質抽出剤(流動パラフィン:オクチルドデカノール=2:1(体積比)) 9mlリン酸バッファ 0.5mlアスパラギン酸 0.1g 上記を試験管内で混合及び撹拌して第2のタンパク質抽出剤A又はBを調製した。 【0149】[実施例13] 第1のタンパク質抽出剤又は第2のタンパク質抽出剤による抽出-2 実施例12において調製した第1のタンパク質抽出剤A及びB,第2のタンパク質抽出剤A及びB,並びに市販の石けんを使用し,角栓のある皮膚に対する洗浄効果を比較した。 その結果,石けんと比較して,本発明のタンパク質抽出剤はいずれも高い洗浄効果を示した。そのなかでも,第1のタンパク質抽出剤Aによ る洗浄効果が最も高く,次いで,第1のタンパク質抽出剤Bによる洗浄効果が高かった。 第1のタンパク質抽出剤と第2のタンパク質抽出剤とを併せて使用する場合,第1のタンパク質抽出剤Aを用いてマッサージし,その後第2のタンパク質抽出剤Aを用いてマッサージする組み 浄効果が高かった。 第1のタンパク質抽出剤と第2のタンパク質抽出剤とを併せて使用する場合,第1のタンパク質抽出剤Aを用いてマッサージし,その後第2のタンパク質抽出剤Aを用いてマッサージする組み合わせが,他の組み 合わせより洗浄力が高かった。 したがって,本発明のタンパク質抽出剤は,クレンジング剤として好ましく使用できる。上記のタンパク質抽出剤の洗浄効果は,グルタミン酸やアスパラギン酸等の,タンパク質の凝集抑制剤の作用によって,タンパク質が抽出剤中に分散しやすくなり,タンパク質凝集体の生成や,該凝集体の洗浄部位への付着を抑制できたことによるものと推察された。 【0150】[実施例14] 第1の高級アルコール及び第2の高級アルコールの作用本発明に係るタンパク質抽出剤の抽出工程のメカニズムを探るため,第1のタンパク質抽出剤における第1の高級アルコールの作用を確認した。 また,第2のタンパク質抽出剤における第2の高級アルコールの作用を 確認した。 【0151】1.抽出対象液の構成豆乳(株式会社紀文食品製,豆乳中にはタンパク質(不溶性)が含まれる) 0.5ml リン酸バッファ(SIGMA社製,商品名「Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline」) 4.5ml上記を試験管内で混合及び撹拌した後,得られた溶液にクマシーブリリアントブルーG250を加え,タンパク質を青色に着色し,抽出対象液を得た。 【0165】[実施例16] 液状化粧品第2のタンパク質抽出剤を「界面活性剤を含む液状化粧品」(実際の化粧品に準じた態様)にした場合において,タンパク質抽出作用が発揮されるかを確認した。 1.抽出対象液の構成 実施 2のタンパク質抽出剤を「界面活性剤を含む液状化粧品」(実際の化粧品に準じた態様)にした場合において,タンパク質抽出作用が発揮されるかを確認した。 1.抽出対象液の構成 実施例14の抽出対象液と同様である。 【0166】2.第1のタンパク質抽出剤の調製下記の4種類の抽出剤を調製した。なお,抽出剤の調製に用いた各化合物としては,上記実施例に記載のものを用いた。 (第1のタンパク質抽出剤-i )オレイン酸 2mlオレイルアルコール 1ml(第1のタンパク質抽出剤-ii)オレイン酸 2ml イソステアリルアルコール 1ml第1のタンパク質抽出剤-iii)イソステアリン酸 2mlオレイルアルコール 1ml(第1のタンパク質抽出剤-iv) イソステアリン酸 2mlイソステアリルアルコール 1ml【0167】3.第1の抽出工程抽出対象液(3ml)に,第1のタンパク質抽出剤のいずれか1種 (各3ml)を添加した後,溶液を撹拌し,20分間静置した。 【0168】4.液状化粧品の調製表7~10に記載の組成となるように,各化合物を試験管内で混合及び撹拌して液状化粧品を調製した。なお,液状化粧品の調製に用いた高 級アルコール,脂肪酸,炭化水素,エタノール,及び界面活性剤として は,上記実施例に記載のものを用いた。 【0169】5.抽出工程(表7)「第1のタンパク質抽出剤-i」(オレイン酸2ml,オレイルアルコ ール1ml)を使用した第1の抽出工程で得られた溶液の上層の液体(3ml)に,表7に記載の液状化粧品(試料16-1~試料16-4)のいずれか1種(各3ml)を添加した後,溶液を撹拌し,1時間静置した ル1ml)を使用した第1の抽出工程で得られた溶液の上層の液体(3ml)に,表7に記載の液状化粧品(試料16-1~試料16-4)のいずれか1種(各3ml)を添加した後,溶液を撹拌し,1時間静置した。 【0170】 【表7】 【0171】(表8)また,「第1のタンパク質抽出剤-ii」(オレイン酸2ml,イソステ アリルアルコール1ml)を使用した第1の抽出工程で得られた溶液の上層の液体(3ml)に,表8に記載の液状化粧品(試料16-5~試料16-8)のいずれか1種(各3ml)を添加した後,溶液を撹拌し,1時間静置した。 【0172】 【表8】 【0173】(表9)また,「第1のタンパク質抽出剤-iii」(イソステアリン酸2ml,オ レイルアルコール1ml)を使用した第1の抽出工程で得られた溶液の上層の液体(3ml)に,表9に記載の液状化粧品(試料16-9~試料16-12)のいずれか1種(各3ml)を添加した後,溶液を撹拌し,1時間静置した。 【0174】 【表9】 【0175】(表10) また,「第1のタンパク質抽出剤-iv」(イソステアリン酸2ml,イソステアリルアルコール1ml)を使用した第1の抽出工程で得られた溶液の上層の液体(3ml)に,表10に記載の液状化粧品(試料16-13~試料16-16)のいずれか1種(各3ml)を添加した後,溶液を撹拌し,1時間静置した。 【0176】【表10】 【0177】4.結果 上記のとおり,第2のタンパク質抽出剤を,実際の液状化粧品の組成に準じた溶液(界面活性剤を含む溶液)とした場合においても,抽出対象液からのタンパク質の抽出が可能であることが示された。 具体 上記のとおり,第2のタンパク質抽出剤を,実際の液状化粧品の組成に準じた溶液(界面活性剤を含む溶液)とした場合においても,抽出対象液からのタンパク質の抽出が可能であることが示された。 具体的には,親水性の性質が強い界面活性剤(Tween80)又は疎水性の性質が強い界面活性剤(Span80)のいずれの界面活性剤 を液状化粧品に配合した場合であっても,タンパク質抽出作用は問題なく発揮されることが示された。特に,疎水性の性質が強い界面活性剤(Span80)は,タンパク質の抽出作用に影響を与えにくい界面活性剤であることが示された。 また,エタノール存在下であっても,第2のタンパク質抽出作用は問 題なく発揮されることが示された。 【0178】[実施例17] 液状化粧品第1のタンパク質抽出剤を「2以上の不飽和結合を有する脂肪酸を含む液状化粧品」(実際の化粧品に準じた一態様)にした場合において,タ ンパク質抽出作用が発揮されるかを確認した。 【0179】1.抽出対象液の構成実施例14の抽出対象液と同様である。 【0180】 2.液状化粧品の調製表11に記載の組成となるように,各化合物を試験管内で混合及び撹拌して液状化粧品を調製した。なお,液状化粧品の調製に用いた高級アルコール,脂肪酸,炭化水素,エタノール,及び界面活性剤としては,上記実施例に記載のものを用いた。 なお,不飽和結合を2つ有する脂肪酸としては,リノール酸(和光純薬工業株式会社製)を用いた。 【0181】3.抽出工程抽出対象液(3ml)に,表11に記載の液状化粧品(試料17-1 ~試料17-8)のいずれか1種(各3ml)を添加した後,溶液を撹拌し,20分間静置した。結果を表11に示した。 【0 工程抽出対象液(3ml)に,表11に記載の液状化粧品(試料17-1 ~試料17-8)のいずれか1種(各3ml)を添加した後,溶液を撹拌し,20分間静置した。結果を表11に示した。 【0182】【表11】 【0184】[実施例18] 液状化粧品第2のタンパク質抽出剤を「2以上の不飽和結合を有する脂肪酸を含む液状化粧品」(実際の化粧品に準じた一態様)にした場合において,タ ンパク質抽出作用が発揮されるかを確認した。 【0185】1.液状化粧品の調製表12に記載の組成となるように,各化合物を試験管内で混合及び撹拌して液状化粧品を調製した。なお,液状化粧品の調製に用いた高級ア ルコール,脂肪酸,炭化水素,エタノール,及び界面活性剤としては,上記実施例に記載のものを用いた。 【0186】2.抽出工程実施例17における試料17-4(【0182】の【表11】参照。第 1のタンパク質抽出工程後の溶液)を使用した第1の抽出工程で得られた溶液の上層の液体(3ml)に,表12に記載の液状化粧品(試料18-1~試料18-8)のいずれか1種(各3ml)を添加した後,溶液を撹拌し,1時間静置した。 【0187】 【表12】 【0188】3.結果上記のとおり,第2のタンパク質抽出剤を,2以上の不飽和結合を有 する脂肪酸を含む液状化粧品(リノール酸を含む溶液)とした場合においても,抽出対象液からのタンパク質の抽出が可能であることが示された。 また,界面活性剤の配合量としては,疎水性の性質が強い界面活性剤(Span80)と親水性の性質が強い界面活性剤(Tween80) を合わせて合計8体積%とした場合であっても,タンパク質抽出が可能であることが の配合量としては,疎水性の性質が強い界面活性剤(Span80)と親水性の性質が強い界面活性剤(Tween80) を合わせて合計8体積%とした場合であっても,タンパク質抽出が可能であることが示された(試料18-5~試料18-8)。 【0189】[実施例19] 液状化粧品第1のタンパク質抽出剤を「脂肪酸及び高級アルコールを様々な濃度 で含む液状化粧品」(実際の化粧品に準じた一態様)にした場合において,タンパク質抽出作用が発揮されるかを確認した。 【0190】1.抽出対象液の構成豆乳(株式会社紀文食品製,豆乳中にはタンパク質(不溶性)が含ま れる) 1mlリン酸バッファ(SIGMA社製,商品名「Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline」) 9ml上記を試験管内で混合及び撹拌した後,得られた溶液にクマシーブリリアントブルーG250を加え,タンパク質を青色に着色し,抽出対象 液を得た。 【0191】2.液状化粧品の調製表13に記載の組成となるように,各化合物を試験管内で混合及び撹拌して液状化粧品を調製した。なお,液状化粧品の調製に用いた高級ア ルコール,脂肪酸,炭化水素,及び界面活性剤としては,上記実施例に記載のものを用いた。 【0192】3.抽出工程抽出対象液(10ml)を,表13に記載の液状化粧品(試料19- 1~試料19-8)のいずれか1種(各5ml)に添加した後,溶液を撹拌し,20分間静置した。結果を表13に示した。 【0193】【表13】 【0194】4.結果上記のとおり,液状化粧品は,全量に対して3体積%以上99体積%以下の炭素骨格中に1つの不飽和結合を有する脂肪酸又 【0193】【表13】 【0194】4.結果上記のとおり,液状化粧品は,全量に対して3体積%以上99体積%以下の炭素骨格中に1つの不飽和結合を有する脂肪酸又は飽和脂肪酸である炭素数18の脂肪酸と,脂肪酸に対して1体積%以上200体積%以 下の第1の高級アルコールと,全量に対して0~10体積%の界面活性剤と,を含む構成とした場合であっても,タンパク質抽出が可能であることが示された。 【0195】[実施例20] 液状化粧品 第2のタンパク質抽出剤を「脂肪酸及び高級アルコールを様々な濃度で含む液状化粧品」(実際の化粧品に準じた一態様)にした場合において,タンパク質抽出作用が発揮されるかを確認した。 【0196】1.液状化粧品の調製 表14に記載の組成となるように,各化合物を試験管内で混合及び撹拌して液状化粧品を調製した。なお,液状化粧品の調製に用いた高級アルコール,脂肪酸,炭化水素,リン酸バッファ,及び界面活性剤としては,上記実施例に記載のものを用いた。 【0197】 2.抽出工程実施例19における試料19-4(第1のタンパク質抽出工程後の溶液)を使用した第1の抽出工程で得られた溶液の上層の液体(5ml)を,表14に記載の液状化粧品(試料20-1~試料20-8)のいずれか1種(各5ml)に添加した後,溶液を撹拌し,1時間静置した。 【0198】 【表14】 【0199】3.結果上記のとおり,液状化粧品は,全量に対して3体積%以上99体 積%以下の25℃にて液体である炭化水素と,炭化水素に対して1体積%以上200体積%以下の炭素数20の第2の高級アルコールと,全量に対して0~10体積%の界面活性剤と,を含む構成とし 上99体 積%以下の25℃にて液体である炭化水素と,炭化水素に対して1体積%以上200体積%以下の炭素数20の第2の高級アルコールと,全量に対して0~10体積%の界面活性剤と,を含む構成とした場合であっても,タンパク質抽出が可能であることが示された。 (2) 本件明細書による開示 前記(1)の記載事項によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明に関し,以下のとおりの開示があると認められる。 アタンパク質を含む皮膚の汚れを落とすために使用される化粧品として,溶液中からタンパク質を抽出する作用を有する液状化粧品が挙げられるところ,溶液中のタンパク質等の対象物質を分離又は抽出等するために 使用されて来た従来の方法は,いずれも,界面活性剤の使用を前提としており,界面活性剤は,皮膚に負担をかけ,荒れ等を生じさせ得ることから,界面活性剤を使用していないか,又は,界面活性剤の使用量が極少量である方法が求められていた(【0002】ないし【0005】)。 イ 「本発明者」は,所定の高級アルコールと炭化水素とを少なくとも含む タンパク質抽出剤によれば前記アの課題を解決できる点を見出し,「本発明」を完成するに至ったものであり,「本発明」によれば,タンパク質を抽出できる液状化粧品が提供される。(【0006】,【0007】,【0009】)「本発明」の第2のタンパク質抽出剤は,第2の高級アルコールと炭化 水素をタンパク質抽出作用の有効成分として含んでなるものであり,界面活性剤等を含まなくとも優れたタンパク質抽出効果を奏するので,皮膚への負担を低減しつつ,所望の洗浄効果が得られる(【0037】,【0038】,【0065】)。 2 争点2-3(サポート要件違反)について 事案にかんがみ,サポート 効果を奏するので,皮膚への負担を低減しつつ,所望の洗浄効果が得られる(【0037】,【0038】,【0065】)。 2 争点2-3(サポート要件違反)について 事案にかんがみ,サポート要件に関する争点2-3から判断する。 (1) 判断枠組み特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な 説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきであり,明細書のサポート要件の存在は特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である。 (2) 本件発明の課題ア 【0006】には,本件発明の目的が「タンパク質を抽出できる液状化粧品を提供すること」と記載されているにとどまり,界面活性剤の含有の有無や含有量,界面活性剤がタンパク質の抽出に与える作用に関する記載はない。 しかし,本件明細書において,【0006】は,【0005】とともに 「発明が解決しようとする課題」についての記載と位置付けられるところ,【0005】には,「界面活性剤は,皮膚に負担をかけ,荒れ等を生じさせ得るため,界面活性剤を使用していないか,又は,界面活性剤の使用量が極少量である方法が求められていた。」との記載が存在する。そうすると,【0006】に記載された本件発明の目的は,【0005】に 記載された従来技術の課題の解決を踏まえたものと解釈するのが合理的である。 加えて,【0011】には,本件発明に係る る。そうすると,【0006】に記載された本件発明の目的は,【0005】に 記載された従来技術の課題の解決を踏まえたものと解釈するのが合理的である。 加えて,【0011】には,本件発明に係る液状化粧品は,「有効成分を所定量にて含有してなるタンパク質抽出剤の一態様を指すもの」であるとの記載がある。そして,本件発明に対応する「第2のタンパク質抽出 剤」の「有効成分」について,【0037】では,「第2の高級アルコール」及び「炭化水素」が挙げられている一方,界面活性剤は挙げられておらず,かえって,【0038】には,「本発明の第2のタンパク質抽出剤は,界面活性剤を含まなくともよい。」との記載がある。また,上記の「所定量」について,【0060】には,「第2のタンパク質抽出剤を液 状化粧品として使用する場合,「炭化水素」の含量としては,タンパク質抽出剤(液状化粧品)の「全量」に対して3体積%以上含まれていることが好適である。」,「炭化水素の濃度が低い場合には,タンパク質抽出剤(液状化粧品)をより多く使用することにより,タンパク質の抽出は可能である。しかし,炭化水素の含有量が全量に対して3体積%を下回る と,化粧品として実用的な範囲を上回る量を使用しなければならなくなるため,好適ではない。」,「第2のタンパク質抽出剤を液状化粧品として使用する場合,「第2の高級アルコール」の含量としては,「炭化水素」の体積に対して1体積%以上含まれていることが好適である。」,「第2の高級アルコールの濃度が低い場合には,タンパク質抽出剤(液状化粧品) をより多く使用することによりタンパク質の抽出は可能である。しかし, 第2の高級アルコールの含有量が炭化水素に対して1体積%を下回ると,化粧品として実用的な範囲を上回る量を使用しな をより多く使用することによりタンパク質の抽出は可能である。しかし, 第2の高級アルコールの含有量が炭化水素に対して1体積%を下回ると,化粧品として実用的な範囲を上回る量を使用しなければならなくなるため,好適ではない。」との記載がある。 さらに,【0044】には,「第2の高級アルコール」を「炭化水素」と組み合わせることによってタンパク質を抽出できる機序が記載されてい るほか,【0065】には,本件発明の「タンパク質抽出剤は,界面活性剤等を含まなくとも,優れたタンパク質抽出効果を奏する。したがって,本発明のタンパク質抽出剤によれば,皮膚への負担を低減しつつ,所望の洗浄効果が得られる。」との記載が存在する一方,界面活性剤がタンパク質を抽出する作用ないし機序についての記載はない。 以上によれば,本件発明の課題は,単にタンパク質を抽出できる液状化粧品を提供することと解することはできず,界面活性剤を使用していないか又は界面活性剤の使用量がごく少量であってもタンパク質を抽出できる液状化粧品を提供することであると認めるのが相当である。 イ原告は,本件発明の課題は,【0006】記載のとおり,タンパク質を 抽出できる液状化粧品を提供することであると解釈すべき旨を主張するが,前記アで説示したところに照らし,採用することができず,このことは,本件特許の出願経過において,原告が【0006】にあった「上記課題を解決するためになされたものであり,」との記載を削除する補正をした事実によっても左右されるものではない。 (3) 特許請求の範囲の記載前記第2の2(3)のとおり,本件発明の構成要件AないしCの特許請求の範囲の記載は「オクチルドデカノールと,リモネン,スクアレン,及びスクアランからなる群から選ばれる1種類 特許請求の範囲の記載前記第2の2(3)のとおり,本件発明の構成要件AないしCの特許請求の範囲の記載は「オクチルドデカノールと,リモネン,スクアレン,及びスクアランからなる群から選ばれる1種類以上の炭化水素と,界面活性剤(但し,界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)と,」という ものであり,界面活性剤については,角栓除去用液状クレンジング剤の全量 に対して0ないし10体積%であるものを除くとの記載があるものの,オクチルドデカノール及び炭化水素については,含有量に関する記載がない。 (4) 発明の詳細な説明の記載ア 【0037】には,本件発明の第2のタンパク質抽出剤は,第2の高級アルコールと,炭化水素をタンパク質抽出作用の有効成分として含んでな るものである旨が記載されている。また,【0045】ないし【0050】には,第2の高級アルコールとしてはオクチルドデカノールが好ましい旨が記載されている。さらに,【0051】には,炭化水素としてリモネン,スクアレン,スクアラン等が例示されるとともに,炭化水素は1種であってもよく,2種以上を組み合わせて使用してもよい旨の記載がある。 以上によれば,本件発明は,第2の高級アルコールに当たる構成要件Aのオクチルドデカノールと,構成要件Bの「リモネン,スクアレン,及びスクアランからなる群から選ばれる1種類以上の炭化水素」が「有効成分」としてなるタンパク質抽出剤であるといえる。そして,証拠(甲12,13,乙28)によれば,角栓とは,毛穴に詰まった皮脂とタン パク質を含む汚れであり,角層などのタンパク質成分が重層化してなるものであって,角栓の全重量に占めるタンパク質の割合は73.32±14.43%であり,その大半をタンパク質が占めていることが認め パク質を含む汚れであり,角層などのタンパク質成分が重層化してなるものであって,角栓の全重量に占めるタンパク質の割合は73.32±14.43%であり,その大半をタンパク質が占めていることが認められるから,本件発明において,角栓除去の効果を奏する成分は,オクチルドデカノールと,リモネン,スクアレン,及びスクアランからなる群か ら選ばれる1種類以上の炭化水素であると理解することができる。 イ 【0060】には,前記(2)アのとおり,第2のタンパク質抽出剤を液状化粧品として使用する場合,炭化水素の含有量はタンパク質抽出剤の全量に対して3体積%以上含まれていることが好適であり,炭化水素の濃度が低い場合であってもタンパク質抽出剤をより多く使用することによりタ ンパク質の抽出は可能であるものの,炭化水素の含有量が全量に対して3 体積%を下回ると,化粧品として実用的な範囲を上回る量を使用しなければならなくなるため,好適ではない旨,第2の高級アルコールの含有量は,炭化水素の体積に対して1体積%以上含まれていることが好適であり,第2の高級アルコールの濃度が低い場合であってもタンパク質抽出剤をより多く使用することによりタンパク質の抽出は可能であるものの,第2の高 級アルコールの含有量が炭化水素に対して1体積%を下回ると,化粧品として実用的な範囲を上回る量を使用しなければならなくなるため,好適ではない旨が記載されている。 ウ本件明細書に記載された実施例のうち,実施例13(【0149】)は,角栓のある皮膚に対する洗浄効果に関するものであり,第2のタンパク質 抽出剤Aとして,約30体積%のオクチルドデカノールと,約60体積%のスクアラン(スクワラン)を含むものが用いられている(【0141】)。 なお,実施例13の結果と のであり,第2のタンパク質 抽出剤Aとして,約30体積%のオクチルドデカノールと,約60体積%のスクアラン(スクワラン)を含むものが用いられている(【0141】)。 なお,実施例13の結果として,実際に毛穴に詰まった角栓を除去できたことに関する記載や示唆はない。 また,本件明細書に記載されたその余の実施例は,いずれも,角栓のあ る皮膚に関するものではない。 エ本件明細書には,炭化水素の含有量が全量に対して3体積%を下回る場合及び第2の高級アルコールの含有量が炭化水素に対して1体積%を下回る場合において,角栓除去の効果を奏することができるか否かに関する記載や示唆はない。 (5) 検討前記(2)のとおり,本件発明の課題は,界面活性剤を使用していないか又は界面活性剤の使用量がごく少量であってもタンパク質を抽出できる液状化粧品を提供することにあると認められるところ,前記(2)のとおり,本件明細書の特許請求の範囲にはオクチルドデカノール及び炭化水素の含有量に関 する記載がないから,特許請求の範囲の記載上,上記課題を解決するために 必要となるオクチルドデカノール及び炭化水素の含有量について何ら限定はないと理解できる。 しかるに,前記(4)のとおり,本件明細書においては,タンパク質を抽出する効果を奏する有効成分として,第2の高級アルコールであるオクチルドデカノールと,リモネン,スクアレン,及びスクアランからなる群から選ば れる1種類以上の炭化水素が特定されているところ,炭化水素の含有量がタンパク質抽出剤の全量に対して3体積%を下回る場合及び第2の高級アルコールの含有量が炭化水素に対して1体積%を下回る場合には,化粧品として実用的なものではないことが記載されており,かつ,炭化水素及び第2の高級アル 全量に対して3体積%を下回る場合及び第2の高級アルコールの含有量が炭化水素に対して1体積%を下回る場合には,化粧品として実用的なものではないことが記載されており,かつ,炭化水素及び第2の高級アルコールの含有量が上記の数値を下回った場合に角栓を除去する効果を 奏することができるか否かについては何らの記載も示唆もない。 また,本件明細書には,本件発明に係る角栓除去用液状クレンジング剤によって実際に角栓を除去することができた旨の記載は見当たらない。これに加えて,角栓のある皮膚を対象とする実施例13において用いられた,角栓除去用液状クレンジング剤に相当する「第2のタンパク質抽出剤A」に含ま れるスクアラン及びオクチルドデカノールの含有量は,それぞれ,全量の3体積%及び炭化水素(スクアラン)に対する1体積%を大きく上回るものである。 以上によれば,本件発明の特許請求の範囲の記載は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載により,当業者が,本件発明に係る角栓除去用液状クレン ジング剤のうち炭化水素の配合量が全量の3体積%未満又はオクチルドデカノールの配合量が炭化水素の1体積%未満の範囲であっても,角栓除去作用があり,前記(2)の課題を解決できることについて,認識することはできないというべきであり,本件全証拠によっても,本件明細書の発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし上記の本件発 明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認めることはできな い。 (6) 原告の主張についてア原告は,【0002】ないし【0005】の記載は,本件発明をするに至った契機を記載したものにすぎず,【0006】は,こうした認識に端を発して「タンパク質を抽出できる液状化粧品を提供することを目的と」 原告は,【0002】ないし【0005】の記載は,本件発明をするに至った契機を記載したものにすぎず,【0006】は,こうした認識に端を発して「タンパク質を抽出できる液状化粧品を提供することを目的と」 してなされたものであることが記載されているものにすぎない旨を主張する。 しかし,前記(2)アで説示したところによれば,本件発明の課題が単にタンパク質を抽出できる液状化粧品を提供することに限定されると解することはできない。 イ原告は,【0061】には液状化粧品に含まれるオクチルドデカノール及びスクアランの含有量が少なくてもよいことが記載されているから,本件発明が本件明細書の発明の詳細な説明に記載されている旨を主張する。 しかし,【0061】には,第2のタンパク質抽出剤を「液状化粧品」に使用した場合の各成分の含有量について,実際の使用態様において 「好適な量」よりも薄い濃度で使用することを許容する旨が記載されているにすぎず,オクチルドデカノール及びスクアランを「好適な量」含有しない濃度において,タンパク質を抽出する作用及び角栓除去作用を奏することができるかについては,何ら記載も示唆もされていない。したがって,【0061】の記載をもって,本件発明が本件明細書の発明の 詳細な説明に記載されたものであると認めることはできない。 ウ原告は,【0061】には,水を含有する態様の第2のタンパク質抽出剤(液状化粧品)において,炭化水素の配合量は水への溶解度以上の量であり,第2の高級アルコールの配合量は,炭化水素の体積に比し,1体積%以上から200体積%以下の範囲内の量であると記載されているとこ ろ,炭化水素であるスクアランは水に溶けないから,スクアランがわずか でも含まれていればよいことが本件明細書の発明の %以上から200体積%以下の範囲内の量であると記載されているとこ ろ,炭化水素であるスクアランは水に溶けないから,スクアランがわずか でも含まれていればよいことが本件明細書の発明の詳細な説明に記載されている旨を主張する。 しかし,【0061】の直前の段落である【0060】には,第2のタンパク質抽出剤を液状化粧品として使用する場合に,水を含有する態様と含有しない態様とを区別することなく,炭化水素の配合量を定めるこ とが記載されている。そして,これに続く【0061】も,【0060】と同様,第2のタンパク質抽出剤を液状化粧品として使用する場合について説明したものであり,かつ,【0060】の記載内容を排斥する記載はない。そうすると,【0061】は,【0060】の記載のとおり,炭化水素が全量の3体積%以上含まれていることを前提とした記載と解釈 するのが相当である。 エ原告は,本件明細書の実施例13には,スクワランとオクチルドデカノールが含まれる第2のタンパク質抽出剤Aは,角栓のある皮膚に対する洗浄効果,すなわち角栓除去効果が市販の石けんより高かったことが明らかにされているから,その記載により当業者は本件発明の課題が解決できる ことを認識できる旨を主張する。 しかし,実施例13には,角栓のある皮膚に対する洗浄効果の高さについての記載が存在するにとどまり,実際に毛穴に詰まった角栓が除去されたことについては記載されていない。 オしたがって,原告の前記アないしエの主張はいずれも採用することがで きない。 (7) 小括以上によれば,本件特許は特許法36条6項1号に違反するものであり,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから(特許法123条1項4号),原告は,被告に対し,本件特許権を行使 ) 小括以上によれば,本件特許は特許法36条6項1号に違反するものであり,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから(特許法123条1項4号),原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない (同法104条の3第1項)。 3 結論よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求には理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 小川暁 裁判官 佐 々 木亮 (別紙)被告製品目録 クレンジングオイル 製品名 「B.C.A.D.クレンジングクリアオイルa」 全成分リンゴ酸ジイソステアリル,パルミチン酸エチルヘキシル,トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル,トウモロコシ胚芽油,パルミチン酸イソプロピル,ジオレイン酸ポリグリセリル-10,ジカプリン酸ポリグリセリル-6,オレイン酸ポリグリセリル-2,ジカプリリルエーテル,加水分解ユーグレナエキス,酵母エキス,ビフィズス菌培養溶解質,β-グルカン,ヒメフウロエキス,クラドシホンノバエカレドニアエ多糖体,アスコフィルムノドスム/ヒバマタ/ヒジキ/トロロコンブ/レソニアニグレスセンス/ミツイシコンブ/リシリコンブ/ワカメエキス,メ -グルカン,ヒメフウロエキス,クラドシホンノバエカレドニアエ多糖体,アスコフィルムノドスム/ヒバマタ/ヒジキ/トロロコンブ/レソニアニグレスセンス/ミツイシコンブ/リシリコンブ/ワカメエキス,メドウフォームエストリド,加水分解ローヤルゼリータンパク,グリセリン,スクワラン,スフィンゴ糖脂質,DPG,オクチルドデカノール,ザクロ果実エキス,ローズマリー葉エキス,ペンチレングリコール,シイクワシャー果皮エキス,ガーデニアタイテンシス花エキス,BG,オリーブ果実油,アボカド油,アーモンド油,ヤシ油,セイヨウハッカ油,ベルガモット果実油,レモン果皮油,ローズマリー葉油,ヒマワリ種子油,水,トコフェロール,クエン酸オレイン酸グリセリル,フェノキシエタノール以上

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