平成16(行ウ)75等 所得税更正処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年5月17日 名古屋地方裁判所 棄却 租税
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判決文本文50,449 文字)

- 1 -平成16年(行ウ)第75号平成17年(行ウ)第38号所得税更正処分等取消請求事件主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,上記第75号事件の原告らに生じた費用と両事件被告らに生じた費用の3分の1を第75号事件原告らの負担とし,上記第38号事件の原告に生じた費用と両事件被告らに生じた費用の3分の1を第38号事件原告の負担とし,参加により生じた費用と両事件被告らに生じたその余の費用を参加人の負担とする。 事実 及び理由第1原告らの請求(第75号事件) 被告熱田税務署長が,平成15年3月7日付けでした原告Aの平成11年分の所得税の更正処分のうち,納付すべき税額457万9600円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分のうち1万2000円を超える部分をいずれも取り消す。 被告熱田税務署長が,平成15年3月7日付けでした原告Bの平成11年分の所得税の更正処分のうち,納付すべき税額マイナス11万6400円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 被告熱田税務署長が,平成15年3月7日付けでした原告Cの平成11年分の所得税の更正処分のうち,納付すべき税額56万5300円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 被告熱田税務署長が,平成15年3月7日付けでした原告Dの平成11年分の所得税の更正処分のうち,納付すべき税額3万7200円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 被告熱田税務署長が,平成15年3月7日付けでした原告Eの平成11年分- 2 -の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 被告熱田税務署長が,平成15年3月7日付けでした原告Fの平成11年分の所得税の更正処分及び 告Eの平成11年分- 2 -の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 被告熱田税務署長が,平成15年3月7日付けでした原告Fの平成11年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 被告熱田税務署長が,平成15年3月7日付けでした原告Gの平成11年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 名古屋東税務署長が,平成15年3月7日付けでした原告Hの平成11年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 (第38号事件)千種税務署長が,平成15年10月28日付けでした原告Iの平成12年分の所得税の更正処分のうち,納付すべき税額5641万8029円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 第2事案の概要本件は,原告らが,その所有する土地を参加人名古屋市に売却した対価について,それぞれ租税特別措置法(平成12年法律第13号による改正前のもの。 「措置法」という。)33条の4第1項の「収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除」の規定(本件特例)が適用されるものとして確定申告をしたところ,被告熱田税務署長ら所轄税務署長から,原告らの上記土地の売却は本件特例の対象とならないとして更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたので,これらの処分(ただし,確定申告額(修正申告額)を超える部分)の取消しを求めた抗告訴訟である。 前提事実(証拠を摘示した事実のほかは争いがない)(第75号事件関係)(1) 当事者ア原告Aら(ア) 第75号事件の原告ら8名(「原告Aら」という。)は,別紙「a町の物件目録」1記載の土地(a町の土地1)を以下の共有持分割合で共- 3 -有していた者である。 原告A ア原告Aら(ア) 第75号事件の原告ら8名(「原告Aら」という。)は,別紙「a町の物件目録」1記載の土地(a町の土地1)を以下の共有持分割合で共- 3 -有していた者である。 原告A15万4700分の1万9530原告B15万4700分の1万9310原告C15万4700分の1万9310原告D15万4700分の1万9310原告E15万4700分の1万9310原告F15万4700分の1万9310原告G15万4700分の1万9310原告H15万4700分の1万9310(イ) 原告Aは,別紙「a町の物件目録」2,3記載の各土地(a町の土地2,3,なお同土地1を含めて「a町の各土地」という。)を所有していた者である。 イ被告熱田税務署長ら被告熱田税務署長は,原告Hを除く原告Aらの所得税の納税地を所轄する税務署長である。 被告名古屋東税務署長事務承継者名古屋北税務署長は,原告Hの転居に伴い,その納税地を所轄する税務署長であった名古屋東税務署長から事務を承継したものである。 ウ原告ら補助参加人名古屋市原告ら補助参加人名古屋市(「参加人」又は「名古屋市」という。)は,都市計画法(都計法)56条1項及び87条の3の規定に基づきa町の各土地及び別紙「b町の物件目録」1ないし3記載の各土地を買い取った地方公共団体である。 (2) 原告Aらによる参加人への土地譲渡の経緯アa町の各土地の都市計画公園の事業予定地指定名古屋市長は,都計法20条に基づき,昭和53年5月24日,a町の- 4 -各土地を含む近隣地域につき都市計画決定(名古屋都市計画公園5・5・36氷上公園)をし,平成10年5月25日にa町の土地1を(同日付名古屋市告示第173号),平成11年6月3日にa町の土地2及び3を(同日付名古屋市告示第207号)それぞれ 古屋都市計画公園5・5・36氷上公園)をし,平成10年5月25日にa町の土地1を(同日付名古屋市告示第173号),平成11年6月3日にa町の土地2及び3を(同日付名古屋市告示第207号)それぞれ事業予定地に指定した。 イ原告Aらによる建築許可申請(ア) 原告Aらは,a町の土地1について平成10年11月27日付けで,都計法53条1項に基づき,名古屋市長に対し,建築許可申請書を提出したが,名古屋市長は,同年12月4日付けで,都計法55条1項に基づき建築を許可しなかった(甲イ4号証,6号証)。 (イ) 原告Aは,a町の土地2について平成11年10月6日付けで,都計法53条1項に基づき,名古屋市長に対し,建築許可申請書を提出したが,名古屋市長は,同月12日付けで,都計法55条1項に基づき,建築を許可しなかった。なお,a町の土地3については上記許可申請書に記載されていなかった(甲イ5号証,7号証)。 ウ原告Aらによるa町の各土地の買取申出(ア) 原告らは,平成10年12月7日付けで,名古屋市長に対し,都計法56条1項に基づき,a町の土地1を時価(1億2130万2000円)で買い取るよう求め,土地買取申出書を提出した(甲イ8号証)。 (イ) 原告Aは,平成11年10月15日付けで,名古屋市長に対し,都計法56条1項に基づき,a町の土地2及び3を,それぞれ時価(a町の土地2につき5683万2000円,同土地3につき777万6000円)で買い取るよう求め,土地買取申出書を提出した(甲イ9号証)。 エ事前協議(ア) 名古屋市長は,平成11年1月25日付けでa町の土地1の買取りについて,事前協議に関する書面(「租税特別措置法施行規則14条第7項第5号の9に規定する書類の発行を予定している事業に関する説明- 5 -書」と題する書面。「事前協議説明 でa町の土地1の買取りについて,事前協議に関する書面(「租税特別措置法施行規則14条第7項第5号の9に規定する書類の発行を予定している事業に関する説明- 5 -書」と題する書面。「事前協議説明書」という。)を「事前協議の特例適用上の検討表(5000万円控除用)措置法33条・33条の4」と題する書面(「検討表」という。)等を添付して,被告熱田税務署長に提出し,事前協議の申出をした(甲イ10号証,12号証)。 (イ) また,名古屋市長は,平成11年11月15日付けでa町の土地2及び3の買取りについて,事前協議に関する書面を,上記(ア) 同様,被告熱田税務署長に提出し,事前協議の申出をした(甲イ11号証,13号証)。 (ウ) 被告熱田税務署長は,名古屋市長に対し「譲渡所得等の課税の特例の適用に関する確認について」と題する書面(「a町の各土地に関する確認書」という。)を,a町の土地1につき平成11年2月12日付けで,同土地2及び3につき平成11年11月30日付けでそれぞれ交付した(甲イ14号証,15号証)。 (エ) 参加人は,被告熱田税務署長との事前協議を経て,租税特別措置法施行規則(平成11年6月30日大蔵省令67号による改正前のもの。 「措置法施行規則」という。)15条2項に定める「公共事業用資産の買取り等の申出証明書」「公共事業用資産の買取り等の証明書」及び「都市計画法第53条第1項の許可をしなかった旨の証明書」(これらを合わせて「a町の各土地に関する証明書」という。)を発行した。 オ売買契約の成立と代金の支払(ア) 参加人は,平成11年2月1日,原告Aらとの間で,a町の土地1を代金1億2130万2000円で買い取る旨の売買契約を締結し,同月19日,上記原告らに対し,上記代金を支払った。 (イ) また,参加人は,同年11月30日,原 月1日,原告Aらとの間で,a町の土地1を代金1億2130万2000円で買い取る旨の売買契約を締結し,同月19日,上記原告らに対し,上記代金を支払った。 (イ) また,参加人は,同年11月30日,原告Aとの間で,a町の土地2を代金5683万2000円で,同土地3を代金777万6000円でそれぞれ買い取る旨の売買契約を締結し,同年12月22日,原告Aに- 6 -対し,上記代金を支払った。 (3) 原告Aらに対する更正処分等の経緯ア原告Aらによる確定申告と納税原告Aらは,平成11年分の所得税につき,別表1の各「当初申告」欄記載のとおり,確定申告等をした(なお,原告Hは名古屋東税務署長に対し,その余の原告らは被告熱田税務署長に対し,それぞれ確定申告をした。 また,原告Aは,別表1記載のとおり,2度の修正申告をしている。)。 その際,原告Aらは,それぞれの確定申告書に参加人から交付された措置法施行規則15条2項に定めるa町の各土地に関する証明書を添付し,措置法33条の4第1項に規定する長期譲渡所得の特別控除額を5000万円とする特例(本件特例)の適用を受けられることを前提としていた。 イ第75号事件被告らによる更正等被告熱田税務署長及び名古屋東税務署長は,平成15年3月7日,a町の各土地の譲渡所得について,本件特例の適用がないとして,原告Aらに対し,別表1記載のとおり,更正処分等をした(「原告Aらに対する本件各処分」という。なお,原告Hは,この処分の通知直後に名古屋市e区に転居したため,名古屋北税務署長が事務を承継した。)。 ウ原告Aらによる異議申立て原告Aらによる異議申立て,第75号事件被告らによる異議決定,同原告らによる審査請求及び裁決の経緯は,別表1記載のとおりである。 エ原告Aらによる本訴提起原告Aらは,平成16年12月3日, 申立て原告Aらによる異議申立て,第75号事件被告らによる異議決定,同原告らによる審査請求及び裁決の経緯は,別表1記載のとおりである。 エ原告Aらによる本訴提起原告Aらは,平成16年12月3日,本件裁決を不服として,本訴(第75号事件)を提起した。 (第38号事件)(1) 当事者ア原告I- 7 -原告Iは,別紙b町の物件目録1ないし3記載の各土地(それぞれ「b町の土地1」の例で表記し,合わせて「b町の各土地」という。なお,a町の各土地と合わせて「本件各土地」という。)を所有していた者である。 イ被告国被告国は,原告Iの所得税の納税地を所轄する税務署長である千種税務署長の所属する行政主体である。 (2) 原告Iによる参加人への土地譲渡の経緯アb町の各土地の都市計画公園の事業予定地指定名古屋市長は,都計法20条に基づき,昭和47年12月6日,b町の各土地を含む近隣地域につき都市計画決定(名古屋市都市計画緑地第7号猪高緑地)をし,平成11年6月3日にb町の各土地を事業予定地に指定した(平成11年6月3日付け名古屋市告示第207号,甲イ3号証,甲ロ5号証)。 イ原告Iによる建築許可申請原告Iは,b町の各土地について,平成12年8月9日付けで,都計法53条1項に基づき,名古屋市長に対し,建築許可申請書を提出したが,名古屋市長は,同月16日付けで都計法55条1項に基づき建築を許可しなかった(甲ロ4号証,7号証)。 ウ原告Iによるb町の各土地の買取申出原告Iは,平成12年8月17日付けで,名古屋市長に対し,都計法56条1項に基づき,b町の各土地を時価(b町の土地1につき4499万2200円,同2につき7602万9600円,同3につき2億4581万3000円)で買い取るよう求め,土地買取申出書を提出した(乙ロ6号証の別紙8)。 町の各土地を時価(b町の土地1につき4499万2200円,同2につき7602万9600円,同3につき2億4581万3000円)で買い取るよう求め,土地買取申出書を提出した(乙ロ6号証の別紙8)。 エ事前協議(ア) 名古屋市長は,平成12年9月6日付けでb町の各土地の買取りにつ- 8 -いて,事前協議説明書等を千種税務署長に提出し,事前協議の申出をした。 (イ) 千種税務署長は,名古屋市長に対し,平成12年9月19日付けで「譲渡所得等の課税の特例の適用に関する確認について」と題する書面(「b町の各土地に関する確認書」といい,a町の各土地に関する確認書と合わせて「本件各確認書」という。)を交付した(乙ロ6号証別紙12)。 (ウ) 参加人は,千種税務署長との事前協議を経て,措置法施行規則15条2項に定める「公共事業用資産の買取り等の申出証明書」「公共事業用資産の買取り等の証明書」及び「都市計画法第53条第1項の許可をしなかった旨の証明書」(これらを合わせて「b町の各土地に関する証明書」といい,a町の各土地に関する証明書と合わせて「本件各証明書」という。)を発行した(甲ロ7号証,8号証)。 オ売買契約の成立と代金の支払参加人は,平成12年10月5日,原告Iとの間で,b町の各土地を代金合計3億6683万4800円で買い取る旨の売買契約を締結し,同月26日,原告Iに対し,上記売買代金を支払った。 (3) 原告Iに対する更正処分等の経緯ア原告Iによる確定申告と納税原告Iは,平成12年分の所得税につき,別表2の「当初申告」欄記載のとおり,確定申告等をした。 その際,原告Iは,確定申告書に参加人から交付された措置法施行規則15条2項に定めるb町の各土地に関する証明書を添付し,本件特例の適用を受けられることを前提としていた。また,原告Iは, 告等をした。 その際,原告Iは,確定申告書に参加人から交付された措置法施行規則15条2項に定めるb町の各土地に関する証明書を添付し,本件特例の適用を受けられることを前提としていた。また,原告Iは,平成14年5月27日,千種税務署長に対し,修正申告をした。 イ千種税務署長による更正等- 9 -千種税務署長は,平成15年10月28日,b町の各土地の譲渡所得について,本件特例の適用がないとして,原告Iに対し,別表2記載のとおり,更正処分等をした(「原告Iに対する本件各処分」という。)。 ウ原告Iによる異議申立て原告Iによる異議申立て,千種税務署長による異議決定,原告Iによる審査請求及び裁決の経緯は,別表2記載のとおりである。 エ原告Iによる本訴提起原告Iは,平成17年8月3日,上記裁決を不服として,本訴(第38号事件)を提起した。 被告ら主張にかかる原告らの税額被告ら主張に係る原告らの税額は,別表3ないし11記載のとおりである。 関連法令等の抜粋(1) 措置法(長期譲渡所得の課税の特例)31条1項個人が,その有する土地若しくは土地の上に存する権利(略)で,その年1月1日において所有期間が5年間を超えるものの譲渡(略)をした場合には,当該譲渡による譲渡所得については,所得税法22条及び89条並びに165条の規定にかかわらず,他の所得と区分し,その年中の当該譲渡に係る譲渡所得の金額(同法33条3項に規定する譲渡所得の特別控除額の控除をしないで計算した金額とし,5項2号の規定により適用される同法69条から71条までの規定の適用がある場合には,その適用後の金額とする。以下35条までにおいて「長期譲渡所得金額」という。)から長期譲渡所得の特別控除額を控除した金額(同号の規定により適用される同法72条から87条までの規定の適用が 場合には,その適用後の金額とする。以下35条までにおいて「長期譲渡所得金額」という。)から長期譲渡所得の特別控除額を控除した金額(同号の規定により適用される同法72条から87条までの規定の適用がある場合には,その適用後の金額。以下31条の3までにおいて「課税長期譲渡所得金額」という。)に対し,次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金- 10 -額に相当する所得税を課する。 1号課税長期譲渡所得金額が4000万円以下である場合当該課税長期譲渡所得金額の100分の20に相当する金額2号課税長期譲渡所得金額が4000万円を超え8000万円以下である場合次に掲げる金額の合計額イ800万円ロ当該課税長期譲渡所得金額から4000万円を控除した金額の100分の25に相当する金額3号課税長期譲渡所得金額が8000万円を超える場合次に掲げる金額の合計額イ1800万円ロ当該課税長期譲渡所得金額から8000万円を控除した金額の100分の30に相当する金額(以下省略)(収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例)33条1項個人の有する資産(略)で次の各号に規定するものが当該各号に掲げる場合に該当することとなった場合(略)において,その者が当該各号に規定する補償金,対価又は清算金の額(略)の全部又は一部に相当する金額をもって当該各号に規定する収用,買取り,換地処分,権利変換,買収,買入れ又は消滅(以下33条の4までにおいて「収用等」という。)のあった日の属する年の12月31日までに当該収用等により譲渡した資産と同種の資産その他のこれに代わるべき資産として政令で定めるもの(以下この款において「代替資産」という。)の取得(略)をしたときは,その者については,その選択により,当該収用等により取得した補償金,対価 の資産その他のこれに代わるべき資産として政令で定めるもの(以下この款において「代替資産」という。)の取得(略)をしたときは,その者については,その選択により,当該収用等により取得した補償金,対価又は清算金の額が当該代替資産に係る取得に要した金額(略)以下である場合にあっては,当該譲渡した資産(略)の譲渡がなかったも- 11 -のとし,当該補償金,対価又は清算金の額が当該取得価額を超える場合にあっては,当該譲渡した資産のうちその超える金額に相当するものとして政令で定める部分について譲渡があったものとして,31条(略)若しくは32条又は所得税法32条若しくは33条の規定を適用することができる。 (省略)3号の3土地等が都市計画法52条の4第1項(略)又は56条1項の規定に基づいて買い取られ,対価を取得する場合(略)(省略)6項第1項又は第2項の規定は,これらの規定の適用を受けようとする年分の確定申告書に,これらの規定の適用を受けようとする旨記載し,かつ,これらの規定による山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他大蔵省令で定める書類を添附しない場合には,適用しない。ただし,当該申告書の提出がなかったこと又は当該記載若しくは添附がなかったことにつき税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合において,当該記載をした書類並びに当該明細書及び大蔵省令で定める書類の提出があったときは,この限りでない。 7項前項に規定する確定申告書を提出する者は,政令で定めるところにより,代替資産の明細に関する大蔵省令で定める書類を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。 (収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除)33条の4第1項個人の有する資産で33条1項各号又は33条の2第1項各号に規定するものがこれらの規定に該当 地の所轄税務署長に提出しなければならない。 (収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除)33条の4第1項個人の有する資産で33条1項各号又は33条の2第1項各号に規定するものがこれらの規定に該当することとなった場合(略)において,その者がその年中にその該当することとなった資産のいずれについても33条又は33条の2の規定の適用を受けないとき(略)は,これらの全部の資産の収用等又は交換処分等(以下この款において「収用交- 12 -換等」という。)による譲渡に対する31条若しくは32条又は所得税法32条若しくは33条の規定の適用については,次に定めるところによる。 1号31条1項に規定する長期譲渡所得の特別控除額は,同条4項の規定にかかわらず,5000万円(当該資産の譲渡に係る長期譲渡所得の金額が5000万円に満たない場合には,当該長期譲渡所得の金額)とする。 (省略)3項第1項の規定は,次の各号に掲げる場合に該当する場合には,当該各号に掲げる資産については,適用しない。 1号第1項に規定する資産の収用交換等による譲渡が,当該資産の買取り,消滅,交換,取りこわし,除去又は使用(以下この条において「買取り等」という。)の申出をする者(以下この条において「公共事業施行者」という。)から当該資産につき最初に当該申出のあった日から6月を経過した日(略)までにされなかった場合当該資産(省略)4項第1項の規定は,同項の規定の適用があるものとした場合においてもその年分の確定申告書を提出しなければならない者については,同項の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書又は同項の修正申告書に,同項の規定の適用を受けようとする旨の記載があり,かつ,同項の規定の適用を受けようとする資産につき公共事業施行者から交付を受けた前項の買取り等の申出があ する年分の確定申告書又は同項の修正申告書に,同項の規定の適用を受けようとする旨の記載があり,かつ,同項の規定の適用を受けようとする資産につき公共事業施行者から交付を受けた前項の買取り等の申出があったことを証する書類その他の大蔵省令で定める書類の添付がある場合に限り,適用する。 (以下省略)(2) 措置法施行規則(収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例)14条7項法33条6項(略)に規定する大蔵省令で定める書類は,次の- 13 -各号の区分に応じそれぞれ当該各号に定める書類とする。 (省略)5号の9都市計画法56条1項の規定に基づいて買い取られる土地等都道府県知事の当該土地等につき同法55条1項本文の規定により同法53条1項の許可をしなかった旨を証する書類及びその買取りをする者の当該土地等を同法56条1項の規定により買取りをした旨を証する書類(以下省略)15条2項法33条の4第4項に規定する大蔵省令で定める書類は,次に掲げる書類とする。 1号法33条の4第3項1号に規定する公共事業施行者(以下この条において「公共事業施行者」という。)の同号に規定する買取り等(以下この条において「買取り等」という。)の最初の申出の年月日及び当該申出に係る資産の明細を記載した買取り等の申出があったことを証する書類2号公共事業施行者の買取り等の年月日及び当該買取り等に係る資産の明細を記載した買取り等があったことを証する書類3号買取り等に係る資産の14条7項各号の区分に応じ当該各号に定める書類(3) 昭和52年6月9日付け国税庁長官「譲渡所得等に係る課税の特例制度の運用に関する協力方について」(直資3-5,なお,各国税局長から知事宛にも同様の依頼が発せられている。乙全3号証,乙イ21号証,丙4号証)個人又は法人の有する土地 「譲渡所得等に係る課税の特例制度の運用に関する協力方について」(直資3-5,なお,各国税局長から知事宛にも同様の依頼が発せられている。乙全3号証,乙イ21号証,丙4号証)個人又は法人の有する土地,建物,漁業権その他の資産が一定の要件を満たす公共事業などのために買取り等(略)をされた場合におけるその買取り等に係る所得に対する所得税又は法人税の課税については,租税特別措置法上各種の特例制度(同法第2章第4節第4款及び第5款又は第3章第6節第- 14 -1款及び第2款に規定する特例をいう。以下同じ。)が設けられていますが,この特例制度の的確かつ円滑な運用を図るためには,事業施行者(略)が資産の買取り等に着手する前に,事業施行者と税務当局が,その資産の買取り等に対する特例制度の適用関係について相互に確認し合い,そのうえで,被買収者に対して課税関係の説明を行うという慣行を確立する必要があると考えます。 ついては,被買収者に対して特例制度の適用がある旨を説明して資産の買取り等を行う事業については,事前に税務当局と接触する時間的余裕がないなど特別の事情がある場合を除き,下記により,国税局又は税務署に対し当該事業の内容を説明し,特例制度の適用関係を事前に確認されるようお願いします。 (省略)記 事業内容の説明は,被買収者に対し資産の買取り等の申出を行う前に行うものとする。 事業内容の説明は,買取り等を予定している資産の所在地を所轄する国税局(略)又は税務署の資産税課(略)又は資産税部門に対して行うものとする。 事業内容の説明は,別添様式による説明書に事業の内容を明らかにする関係書類(図面を含む。)を添付して行うものとする。この場合,当該説明書(当該関係書類を含む。)は正副2部提出すること。 (4) 都計法施行規則(都市計画施設の区 る説明書に事業の内容を明らかにする関係書類(図面を含む。)を添付して行うものとする。この場合,当該説明書(当該関係書類を含む。)は正副2部提出すること。 (4) 都計法施行規則(都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内における建築許可の申請)39条1項法53条1項の許可の申請は,別記様式第10による申請書を提出して行なうものとする。 - 15 -2項前項の申請書には,次の各号に掲げる図書を添附しなければならない。 敷地内における建築物の位置を表示する図面で縮尺500分の1以上のもの 2面以上の建築物の断面図で縮尺200分の1以上のもの その他参考となるべき事項を記載した図書 争点 (1) 本件各土地の参加人への売却による対価について,譲渡所得に関する本件特例を適用しなかった本件各処分は違法か否か(2) 事前協議を経た上でなされた本件各処分は,信義則に反して違法か否か 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1) 本件各土地の参加人への売却による対価について,譲渡所得に関する本件特例を適用しなかった本件各処分は違法か否かについて(被告らの主張)ア本件特例の実体要件について(ア) 本件特例の趣旨について本件特例は,措置法33条1項3号の3所定の都計法56条1項の規定に基づく買取りがあった場合等を前提とした規定であるところ,その趣旨は以下のとおりである。 すなわち,個人の所有する資産が収用対象事業によって買い取られる場合であっても,その資産の収用も「譲渡」の形態の一つであるから,その収用等により交付を受けた金銭(補償金)等は,その収用等のあった日を含む年分の所得税の各種所得の収入金額に算入されることになる。 しかし,このような強制的な譲渡又はその強制力を背景とする買取りは,必ずしも個人の自由な意思に基づ (補償金)等は,その収用等のあった日を含む年分の所得税の各種所得の収入金額に算入されることになる。 しかし,このような強制的な譲渡又はその強制力を背景とする買取りは,必ずしも個人の自由な意思に基づくものではなく,それに対して課税することにより,その個人が従前と同様の生活を維持することを阻害する結果となるなど,その譲渡等に伴い生じた収入金額の全額を課税の- 16 -対象とすることが適当でないことは否定できない。 そこで,措置法は33条以下において一定の要件に該当する場合に課税に対する特例の適用を認めたものである。 したがって,本件特例をはじめとする収用等の特例が認められるのは,措置法33条等に列挙された場合に限定され,法律により個人の資産が強制的に収用されるのと同視される場合に限られる。 (イ) 都計法56条1項の買取りの趣旨都計法53条は,都市計画施設等の区域において建築物を建築する場合には,都道府県知事(指定都市にあっては市長。都計法87条の3。 以下「知事等」という。)の許可を受けなければならないとしつつ,同法54条では,地階を有しない木造2階建ての建築物で容易に移転し又は除却することができるものと認められる場合には,必ず許可をしなければならないとしており,一般市民が通常居住する家屋については,実質的にはその建築は制限されていない。 しかし,知事等は,事業の円滑な遂行のために特に必要がある場合には,事業予定地の指定をすることにより,一般市民が居住する家屋であっても,建築を許可しないことができ(都計法55条1項),その反面として当該土地の買取り請求に応じなければならないこととされている(同法56条1項)。 このような買取り義務は,公有地の拡大の推進に関する法律(公拡法)が都市計画区域内の土地について買取りの協議に応じる義務を課して 取り請求に応じなければならないこととされている(同法56条1項)。 このような買取り義務は,公有地の拡大の推進に関する法律(公拡法)が都市計画区域内の土地について買取りの協議に応じる義務を課しているに止まることと比較して,明らかに重いものである。 以上によれば,都計法56条1項に基づく買取りは,土地の利用に相当な制限を受ける地権者の救済と公共事業の円滑な遂行のために設けられた制度であり,当該地権者の置かれた状況にかんがみれば,事業施行者等に買取りを求めるほかには財産権行使の余地がほとんどないといえ- 17 -るのであって,その買取りは,収用等と同様に個人の完全な自由意思による取引とはいい難く,強制的に実現するのと同視し得るものである。 したがって,このような都計法56条1項の要件を形式的にも実質的にも完全に充たした買取りの場合こそ,措置法上の本件特例の適用を認めるに足りる状況があるといえる。 (ウ) 都計法56条1項の要件について一般に都計法55条1項所定の事業予定地の指定がされたからといって,それだけでは,従前の土地の利用形態を変更しなければならないものではなく,具体的に建築物の建築を予定しその許可を求めたにもかかわらず不許可となった場合に,土地利用の制限が具体化することになる。 そのような具体的な制限を受けることとの均衡を保つという都計法56条1項の上記趣旨に照らせば,同項の規定に基づく買取りは,土地所有者が具体的な建築物を建築する意思の下に建築許可の申請を行い,これに対して不許可の処分がなされたことが必要というべきである。 したがって,都計法56条1項の規定に基づく買取りによる譲渡について,本件特例が適用されるためには,具体的な建築物を建築する意思を伴う同法53条の建築許可申請がされたにもかかわらずこれが不許可となり,知事等に 都計法56条1項の規定に基づく買取りによる譲渡について,本件特例が適用されるためには,具体的な建築物を建築する意思を伴う同法53条の建築許可申請がされたにもかかわらずこれが不許可となり,知事等に土地の買取りを求めるほかに財産権の行使の余地がないという状況が存在することが必要であると解すべきである。 そもそも,土地上に具体的な建築物を建築する意思も計画もなかった地権者が,外形上,建築許可申請を行い,これが不許可とされたに過ぎない場合には,上記不許可によって,当該土地の利用に関して何ら具体的な支障を来すことはないのであって,このような場合を,都計法56条1項の「建築物の建築が許可されない」ことにより「その土地の利用に著しい支障を来すことになる」ものということはできないし,このような場合に地権者からなされた土地の買取り請求が,それによって土地- 18 -を事業施行者等に買い取ってもらう以外に利用方法がないという強制的な契機の下でなされたものと評価することはできない。 このことは,およそ行政法規において申請に基づく許可・不許可について規定している場合には,実質的な申請に係る権利・法律関係の実現を目指す具体的な意思を有する者からの申請を予定しているのが通常であることからも明らかである。 したがって,具体的な建築物を建築する意思を欠く建築許可申請は,およそ都計法が予定しているものではない。 (エ) 都計法56条1項と本件特例の適用要件について以上のとおり,都計法56条1項の買取りは,事業予定地内であるために第三者に対する有償譲渡に制限があり(同法57条),かつ居住用家屋の建築さえ許可されない(同法55条1項本文)などの制限を受ける地権者の救済と公共事業の円滑な遂行のために設けられた制度であり,この場合の地権者は,自ら買取りを申し出たとしても, ),かつ居住用家屋の建築さえ許可されない(同法55条1項本文)などの制限を受ける地権者の救済と公共事業の円滑な遂行のために設けられた制度であり,この場合の地権者は,自ら買取りを申し出たとしても,知事等に買取りを求めるほかには財産権行使の余地がほとんどない状況,すなわち,収用と同様に個人の完全な自由意思による取引とはいい難く,強制的に実現したと同視し得る利益状況にあるといえるから,同法56条1項の要件を完全に満たした買取りとして,本件特例の適用を認めるに足りる状況にあるといえる。 したがって,本件特例の適用において,同項の買取りの要件を緩和し,実際に建築が許可されなかったことが必要ないと解することは妥当ではなく,かかる要件を欠いたまま土地の買取りがされたとしても,同項に規定する「建築物の建築が許可されない」ことによって「その土地の利用に著しい支障をきたすこととなる」ものとは認められない。その場合には,措置法33条1項3号の3に規定する都計法56条1項の規定に基づいて買い取られた場合に該当しないから,本件特例の適用はないと- 19 -いうべきである。 そして,このことは,納税者が確定申告書に本件特例の適用を求めて必要な確認書等の添付書類を添付していたとしても同様である。 すなわち,事業施行者が添付書類を発行し,添付書類のそろった申告書が提出されたとしても,所轄税務署長には税法上の特例の適用を認めるか否かの判断権限があるから,課税に関して何ら権限のない事業施行者が,添付書類を発行する旨の判断をしたからといって,所轄税務署長がこれに法的に拘束されて必ず税法上の優遇措置を認めなければならないとすることはできない。 イ原告らの具体的な建築意思の有無について(ア) 同一図面の反復使用について都計法施行規則39条2項は,都計法53条1項の規 れて必ず税法上の優遇措置を認めなければならないとすることはできない。 イ原告らの具体的な建築意思の有無について(ア) 同一図面の反復使用について都計法施行規則39条2項は,都計法53条1項の規定に基づく建築許可申請書に建築図面等の添付を義務づけているところ,原告らが,参加人に提出した建築許可申請書に添付された建築図面は,参加人が用意したものであり,同一の建築図面が他の地権者による建築許可申請書にも添付されていた。 (イ) 建築不許可通知の懈怠について本件では,建築許可申請に対する不許可処分がされているところ,一般にこのような不利益処分をした行政庁は,不服申立期間との関係などから,処分の通知書の送達を記録しておくのが通常であるにもかかわらず,そのような記録がなされていた事実を認めるに足りる証拠は提出されていない。 (ウ) 買取りに係る手続の形骸化について本件における建築許可申請,不許可処分等は,以下のとおり,本件特例の適用要件を充足するかのような外形を作出するために行われた便宜的・形式的なものに過ぎない。 - 20 -a買取申出書の提出参加人は,まず最初に地権者から買取申出書の提出を受ける(仮受付)ものとされていた。 しかし,その仮受付のための買取申出書(丙22号証)には,仮のものであるとの記載はなく,参加人が,このような買取申出書の提出について,地権者の具体的かつ詳細な売り申し込みがあったものとして受け付けていたことが明らかである。 b事業予定地の指定本来,都計法55条1項の規定による事業予定地の指定は,現に市街化が著しく進行している地域若しくは事業施行までに著しく進行すると予想される地域において,将来5年ないし10年以内に事業化が見込まれる都市計画施設等に重点を置いて行うものとされており,反対運動や予算の都合を考慮 している地域若しくは事業施行までに著しく進行すると予想される地域において,将来5年ないし10年以内に事業化が見込まれる都市計画施設等に重点を置いて行うものとされており,反対運動や予算の都合を考慮して事業予定地を指定することは都計法の予定するところではない。 しかし,参加人は,上記のような都計法55条1項の趣旨を逸脱し,地権者からの買取申出書に対して予算措置を行い,予算が付いた時点で買取りについて地権者に連絡し,その後その土地について事業予定地の指定をした上(点指定方式),その告示を行っていたものである。 c小括以上のように,原告らと参加人との間では,原告らの買取申出書の「仮受付」及び参加人からの予算措置ができた旨の連絡により,土地の買取りが行われることが既定方針となっていたものである。 したがって,本件では,事業予定地の指定に始まるその後の建築許可申請,不許可処分,買取申出といった用地買収手続は,正に都計法56条1項の規定に基づく買取りであるかのような外形を作出するために形式だけが整えられたものであって,その実質があるとはいえな- 21 -いから,同項の趣旨・目的を著しく逸脱していることは明らかである。 ウ原告Aらについて(ア) 原告Aらには,a町の各土地に建築物を建築する意思は全くなく,当初から参加人への売却を意図しており,参加人の職員の指示に従って建築許可申請書を提出したに過ぎない。このように建築意思がなかったことは,原告Aの供述からも明らかである(乙イ4号証)。 現に,建築許可申請書に添付された建築図面は,参加人の職員が事前に用意していたものから当該土地の面積に応じて適合するものを選択していたものであり,原告Aらが建築を予定した建築物の建築図面ではなかった上,他の地権者が添付したものと同じであった(乙イ6号証)。 (イ) 意していたものから当該土地の面積に応じて適合するものを選択していたものであり,原告Aらが建築を予定した建築物の建築図面ではなかった上,他の地権者が添付したものと同じであった(乙イ6号証)。 (イ) 以上のとおり,原告Aらには,a町の各土地に建築物を建築する意思がなかった以上,都計法56条1項にいう「建築物の建築が許可されないときはその土地の利用に著しい支障をきたすこととなる」との要件該当性がなく,本件特例の適用は認められない。 エ原告Iについて(ア) 買取申出書の提出原告Iは,平成10年12月2日付けで参加人に対し,土地買取申出書(丙22号証)を提出し,b町の各土地を含む10筆の土地を参加人に対して売り渡すことを申し出ている。 すなわち,原告Iは,すでに平成10年12月には,b町の各土地の売却を希望し,参加人に買い取られる順番を待っていたのであるから,平成12年8月9日に建築許可申請書を提出した時点において,上記各土地について,具体的な建築物の建築意思を有していたとは認められない。 (イ) 参加人への無償貸与参加人は,都市計画公園緑地として計画決定されながらも,未買収の- 22 -民間樹林地等を使用貸借によって借り受け,そこに必要最小限の施設設備を設けた上で,公園として早期供用する「オアシスの森づくり事業」を行っているところ「いたかの森」は同事業の一環であり,現在は猪高緑地の一部となっている。 原告Iは,平成10年ころ,参加人から説明を受け,b町の各土地を「いたかの森」の敷地の一部として無償で使用させることに同意しており,また,建築許可申請書を提出したのも「いたかの森」の工事開始直前であるから,原告Iが上記の各土地上に具体的な建築物を建築する意思を有していたとは認められない。 オ結論以上のとおり,原告らの土地の買取りに関 可申請書を提出したのも「いたかの森」の工事開始直前であるから,原告Iが上記の各土地上に具体的な建築物を建築する意思を有していたとは認められない。 オ結論以上のとおり,原告らの土地の買取りに関し,建築許可申請書に添付すべき建築図面を参加人が用意していること,建築許可申請に対する不許可処分の通知がされていないこと,仮の買取申出書の提出から始まる公園用地買収手続は,都計法56条1項の規定に基づく買取りであるかのような外形を作出するためだけに行われていることなどの諸事情からすれば,原告らは,具体的な建築物の建築意思を伴って建築許可申請を行っていたとは認められない。 したがって,本件各土地の買取りについて,同項に規定する「建築が許可されないときはその土地の利用に著しい支障をきたすこととなる」とは認められないから,措置法33条1項3号の3に規定する「都市計画法56条1項の規定に基づいて買い取られ」た場合には該当せず,本件特例の適用はないというべきである。 したがって,原告らに対する本件の更正処分等は適法である。 (原告Aらの主張)ア措置法33条の4第1項の趣旨措置法33条の4は,収用という方法ではなく,公共事業の推進に協力- 23 -した土地所有者に譲渡所得税の点で大きな特例を与えることにより,協力しようとする土地所有者を増加させ,事業遂行を容易にするとの観点で規定されている。そして,この特例は,都市開発資金の貸付制度と相まって,事業遂行の実効性をさらに高めている。 このような課税の特例制度は,収用対象事業の本旨を理解しこれに協力する任意売買の場合に適用されることにより,同事業への協力者を増加させ,ひいては事業の円滑な施行をもたらす点に重要性があるのであって,課税の特例制度は,事業を促進するために,強制的な収用ではなく任意に事業へ協 の場合に適用されることにより,同事業への協力者を増加させ,ひいては事業の円滑な施行をもたらす点に重要性があるのであって,課税の特例制度は,事業を促進するために,強制的な収用ではなく任意に事業へ協力する者に対して正当な補償をするために適用されるものと解すべきである。 したがって,措置法33条の4は,強制的に資産を取得するのと同視し得る場合に限定して適用されるものではない。 イ主位的主張(都計法56条1項に基づく買取制度の適用に当たり,建築許可申請は不要であること)について都計法56条1項による土地の買取りにおいて,本件特例が適用されるためには,事業予定地内の土地所有者が,現実に建築許可申請をすることは必要ではなく,かかる申請につき不許可処分がされたことも不要である。 同項は「建築物の建築が許可されないとき」と規定しており「建築物の建築が許可されなかったとき」とは規定していないのであるから,建築許可を実際に申請したことは要件ではないのであって,建築許可の申請をしたかどうかが問題となることはなく,建築物の建築の意思の有無も問題になる余地はない。 参加人がすべての地権者から都計法53条1項の許可申請書の提出を求めたのは,手続の明確化を必要としたからにすぎない。 また,本件のように,事業予定地の指定をした参加人が建築を許可しない方針を厳然と維持しているような場合,原告Aらが建築許可を申請する- 24 -までもなく,都計法において原則的に認められた範囲内の建築物を建築することができないことは予見できるのであり,その土地の利用に著しい支障が生じていることは明らかである。 そして,原告Aらのように,広大な面積を有する土地で,自己利用の必要のない場合には,住宅程度の利用が保障されたからといって何ら財産権の保障にならないことは明らかであるから,土地の とは明らかである。 そして,原告Aらのように,広大な面積を有する土地で,自己利用の必要のない場合には,住宅程度の利用が保障されたからといって何ら財産権の保障にならないことは明らかであるから,土地の形状により,都計法の定めている建築物の形状ではその土地に相応する利用ができない場合には,建築許可申請をするまでもなく,都計法56条1項の買取りの要件を充足するというべきである。 ウ予備的主張(建築物の建築意思は抽象的なもので足りること)について(ア) 建築意思の内容仮に,現実に建築物の建築の許可申請をすることが必要であるとしても,地権者には,その建築許可申請をする意思さえあれば足り,被告らが主張する具体的な建築意思は不要というべきである。 本件では,参加人がa町の各土地を事業予定地に指定し,これら土地の買取り申請に備えて買取り資金を用意し,建築許可申請があればこれを不許可にするとの方針を採っていたのであるから,不許可を想定しての建築許可申請自体は形式的なもの(形式的な申請意思)とならざるを得ない。 (イ) 参加人の取扱いとの関係参加人は,広く事業予定地の指定をすることによる予算上の不都合を回避するため,買取りに協力する地権者を視野に入れ,予算措置を講ずることができた時点で順に事業予定地に指定するという方針を採用していた。そして,参加人の行政実務では,形式的に地権者に建築許可申請をさせて形式的に不許可決定をし,これらの事実を基に事前協議の提出資料を作成してきたが,このような形式的な処理の下にあっては,地権- 25 -者は上記のような形式的な意思を有していれば足りるのである。 また,このように解さなければ,建築制限があることを認識して,公共の用に供するために任意に買取りに応じた者には本件特例の適用がなく,これに協力せず,買取りに抵抗する者 を有していれば足りるのである。 また,このように解さなければ,建築制限があることを認識して,公共の用に供するために任意に買取りに応じた者には本件特例の適用がなく,これに協力せず,買取りに抵抗する者だけが本件特例の適用を受けて優遇されることになり不合理である。 (ウ) 小括以上によれば,都計法56条1項の買取りの要件としての建築意思は,抽象的な建築意思で足り,これを外形的な書面で表示すれば足りるというべきであって,詳細で具体的な建築図面を添付することまで要請される必要はない。そして,原告Aらは,このような意味での建築意思を有していたものである。 (エ) 被告らの主張に対する反論これに対し,被告らは具体的な建築意思が必要であると主張する。 しかし,仮に,被告らが主張する具体的な建築意思が必要であると解すると,そのような地権者における内心の意思の有無を判断することは不可能である上,そのような意思は,地権者が,参加人に対し,都市計画施設内の土地の具体的な利用方法を照会し,その規制を理解していく中で次第に消滅していかざるを得ない性質のものである。 そのような中で建築許可申請の意思が消滅したとか存在しないと判断されるのでは,都市公園事業を推進する参加人に協力しようと考える市民には本件特例の適用要件は存在しないことになってしまい,不合理である。 また,これまでの経緯において,所轄税務署長が,具体的な建築意思の要否を問題としたことはなく,むしろ,事前協議において,形式的な意思をもって足りることを前提に協議を進めてきており,所轄税務署長においても,これを不要と解していたものと推測される。 - 26 -以上から,参加人は,建築意思について,端的に許可申請をする意思であると解しており,所轄税務署長もこのことを認めていたというべきである。 エ結論以 と解していたものと推測される。 - 26 -以上から,参加人は,建築意思について,端的に許可申請をする意思であると解しており,所轄税務署長もこのことを認めていたというべきである。 エ結論以上によれば,本件特例の適用がないとしてなされた本件各処分は違法であり取り消されるべきである。 (原告Iの主張)ア都市計画施設の区域内の土地に対する建築規制と建築意思について都市計画施設の区域内に土地を有する地権者は,事業予定地の指定があるまでは,一定の建築物の建築は可能である。 しかし,いずれ参加人が予算措置を講じ,事業予定地の指定をすることによって,当該土地が強制的に買収されてしまうおそれがあり,この場合,当該土地で営んできた営業や生活が無意味となってしまう。 したがって,現実的な効果としては,所有地が都市計画区域に指定されてしまうと,仮に事業予定地の指定前であっても地権者が建築物を建築することは事実上不可能になってしまうのである。 以上によれば,地権者が都計法53条1項の建築許可申請をする時点では,地権者の建築意思は潜在的なものとならざるを得ず,このような抽象的な意思しか有しない者であっても,同項の「建築物の建築をする者」に該当すると解すべきである。 このように解さなければ,参加人のように点指定方式を採用する自治体において,用地買収に協力した地権者に本件特例の適用の余地がなくなってしまうという弊害が生じ,ひいては税制上の不公平が生ずることになる。 イ原告Iの建築意思について(ア) 現代社会においては,都市部における土地は,建築物の建築可能性に応じて価格が決定され,建築物の建築が不可能な土地の価値は低くなる。 - 27 -したがって,土地を資産として保有している所有者の意識としては,すべての土地所有者が自ら建築するか,他人に建築可能な土地 じて価格が決定され,建築物の建築が不可能な土地の価値は低くなる。 - 27 -したがって,土地を資産として保有している所有者の意識としては,すべての土地所有者が自ら建築するか,他人に建築可能な土地として売却するとの意思,すなわち「根源的な建築意思」をもっていると評価できる。 そして,所有地に対し,都市計画等の行政上の規制が及ぶと,地権者の上記建築意思は潜在化せざるを得ない。 このような現実を踏まえ,参加人は,地権者に対する行政サービスとして建築図面を用意し,地権者がこれを利用して建築許可申請を行った場合には建築許可を求める意思があるものと取扱い,その後の一連の手続を採っていたものである。したがって,事業施行者である参加人の認定判断が一見明白に誤っている場合以外は,その措置を尊重すべきである。 (イ) 原告Iは,名古屋市d区b町を中心に医療活動等に従事する中,b町の各土地が,同原告が理事長を務める医療法人の中心医療機関と至近距離にあって,他の病院との連絡が可能であり,自然環境の豊かな土地でもあったことから,同各土地に低層の老人ホームを建築したいと長年にわたって考えてきた。しかし,b町の各土地が都計法の建築制限のある土地であったことから,平成5年ころまで,従業員であるKを通じて代替地を探したものの,b町の各土地に匹敵する土地を見つけることができなかった。 そこで,原告Iは,参加人が都市計画を変更する可能性を考慮し,猪高緑地内の所有地について,時期を変えて参加人の買取りに応じてきたものである。 このような原告Iの活動実績や内心の意思から,b町の各土地の売買契約を締結した平成12年10月当時,原告Iが,同土地に低層の老人ホームを建築しようとする意思を有していたことは明らかというべきで- 28 -ある。 ウ参加人における点指定方式の合理 土地の売買契約を締結した平成12年10月当時,原告Iが,同土地に低層の老人ホームを建築しようとする意思を有していたことは明らかというべきで- 28 -ある。 ウ参加人における点指定方式の合理性について参加人は,猪高緑地予定地内の土地の取得に当たって,一定の範囲の土地を「面」として事業予定地の指定(面指定方式)をするのではなく,個々の土地を「点」として指定(点指定方式)しているが,どのように事業予定地を指定して買収するかは,都市計画事業の施行者である参加人の裁量の問題であり,広範囲な土地を事業予定地に指定するのは過度な財産権の規制となり,買取予算が不足するとの事態を回避するとの理由から,点指定方式により買取りをすることは合理性があると認めるのが相当である。 したがって,所轄税務署長は,点指定方式に疑問をもったとしても,すでに税務申告済みの案件については参加人の指定を所与の前提として,本件特例の適用を検討すべきである。 エ結論以上によれば,原告Iが,建築許可申請をする意思,あるいは抽象的な建築意思を有していたことは明らかであって,原告Iに本件特例を適用しなかった本件各処分は違法である。 (参加人の主張)ア都計法56条1項の内容都計法53条は,都市計画施設内での建築物の建築を原則として許可制として一般的な建築の禁止を行う一方,同法54条が当該建築物が都市計画施設への支障を生じさせないものであることを前提に,その建築を許可すべきこととし,更に同法55条が都市計画施設の区域内の土地が事業予定地として指定された場合には,同法54条の規定にかかわらず,その建築物の建築を許可しないことができる旨をそれぞれ規定している。 そして,事業予定地として指定された土地の買取りについて定める同法56条1項は「前条1項本文の規定により建築物の建築が かかわらず,その建築物の建築を許可しないことができる旨をそれぞれ規定している。 そして,事業予定地として指定された土地の買取りについて定める同法56条1項は「前条1項本文の規定により建築物の建築が許可されないと- 29 -きはその土地の利用に著しい支障をきたすこととなることを理由として」当該土地を買い取ると規定している。 このような同項の規定の趣旨は,同法55条の事業予定地の指定の下で,社会通念上の土地の活用の制限を受ける地権者に対する買取補償規定であって,その適用に当たって,建築許可申請及び不許可決定を要すると解すべきではない。 仮に,被告らが主張するように,同法53条の建築許可申請と同法55条の不許可決定が,同法56条1項の買取り手続上必要であると想定されているならば,同項は「前条1項本文の規定により建築物の建築を不許可とされ,かつ,その土地の利用に著しい支障をきたすこととして,当該土地を買い取るべき旨の申出があった場合においては」などと規定しなければならないはずである。 また,同法53条の建築許可申請をする場合の意思自体,地権者の内心の意思であって,何人も判断できるものではなく,都計法の要請する趣旨の達成には,申請の意思があれば足りるのである。 イ都計法53条の建築許可申請には,具体的な建築意思は不要であることについて(ア) 被告らは,都計法56条1項の規定に基づく買取りの前提要件として,具体的な建築意思なるものが必要であると主張する。 しかし,被告らが述べる「具体的な建築意思」の内容・判断基準は不明であり,このような意思を要求することは,現実的な運用とはいえない。 この建築意思の有無については,少なくとも,本件の各買取りの当時において,課税官庁としての統一的な見解は存在せず,事前協議の際に一部の税務担当者が有した個人的な ことは,現実的な運用とはいえない。 この建築意思の有無については,少なくとも,本件の各買取りの当時において,課税官庁としての統一的な見解は存在せず,事前協議の際に一部の税務担当者が有した個人的な見解ないしは疑問程度のものでしかなかったものである。 - 30 -このことは,所轄税務署長と事業施行者との事前協議において使用される検討表には「建築物を建築する意思」を確認するという項目が設けられていないことからも明らかである。 (イ) 参加人は,従前から,都計法53条に定める「建築しようとする者」が有すべき建築の意思は,自らの土地に建築物の建築が許可されるか否かを申請する意思,いわば「申請の意思」であると主張し,それで足りるものとしていた。このことは,同法56条の趣旨や他の条文との関係でも明らかである。 例えば,同法29条以下に規定されている開発行為等の規制の場合,その申請要件は厳格であるのに対し,同法53条の許可申請は格段に簡素であり,このことからも同法53条が厳格で具体的な建築意思を要していないと解されるのである。 以上のとおり,同法53条の建築許可申請には,許可を申請する意思があれば足りるのであって,意思の具体性などではなく,地権者からの許可申請書の提出という客観的な様式行為をもって必要かつ十分なのである。 (ウ) これに対し,被告らは,①建築許可申請書の添付図面を参加人が作成していること,②不許可決定が地権者に通知されていないこと,③仮申出書の提出に始まる事業が外形を作出するにすぎないものであることなどを主張する。 しかし,①,②については行政サービスとしての当不当の問題でしかなく,違法性を帯びるものではない。 また,③については,都計法56条1項に基づく土地の買取り事業の目的・規模などから,参加人としては,事業予定地として広範囲 は行政サービスとしての当不当の問題でしかなく,違法性を帯びるものではない。 また,③については,都計法56条1項に基づく土地の買取り事業の目的・規模などから,参加人としては,事業予定地として広範囲の土地を一度に指定する面指定方式ではなく,個別の筆や地権者等ごとに小規模のまとまりで指定する点指定方式の手法を採用してきたものであり,- 31 -かかる点指定方式は,地権者の財産権を長期にわたり制限することを避け,予算措置を講ずる上で必要かつ適法なものなのである。 そして,このことは名古屋国税局としても違法ではないことを確認していたはずである。 ウ本件の各買取りが都計法56条1項の買取りに当たること都計法56条1項は,同法55条の事業予定地の指定を受ける地権者が被る財産権の制限の補償として,事業施行者に土地買取り義務を課す規定であって,その意味では,同法53条の建築許可申請及び同法55条の不許可決定の事実を,同法56条1項の適用上必須の要件とすることは解釈上誤っており,その点からも,同法53条の建築意思の意義はもはや直接的には重要ではない。 同法53条に規定する「建築しようとする者」が行う申請は,建築が可能かどうかを確認する旨の申請と考えるべきであるが,参加人としては,土地買取りに際して手続上の明確性を考慮し,建築許可申請の受付けと不許可決定を行った上で本件の買取り手続を進めてきたものである。 したがって,本件の各買取りは,同法56条1項の買取りの実体的要件を満たすものであるから,原告らには,本件特例を適用すべきである。 (2) 争点(2) 事前協議を経た上でなされた本件各所分は信義則に反して違法か否かについて(原告Aらの主張)ア事前協議の趣旨について事前協議制度は,課税に関する特例の適用について事後に問題が発生することを未然に防止 議を経た上でなされた本件各所分は信義則に反して違法か否かについて(原告Aらの主張)ア事前協議の趣旨について事前協議制度は,課税に関する特例の適用について事後に問題が発生することを未然に防止するため,事業施行者と所轄税務署長が,その資産の買取り等に対する特例制度の適用関係について相互に確認し合い,その上で被買収者に対して課税関係の説明を行うことを目的とするものである。 そして,この事前協議において検討・確認されるのは,単に当該事業が- 32 -特例の適用の対象となるものか否かにとどまらず,各被買収者について特例の適用があるか否かをも含むものである。 この事前協議の結果は,所轄税務署長が自ら被買収者に示すものではないが,制度上,事前協議の結果は,所轄税務署長と事業施行者の相互確認の結果として被買収者に示されるものであるから,所轄税務署長は,自らの公的見解としてこれを無視してよいことにはならないのであって,事前協議を了したとの判断に拘束されるというべきである。 イ事前協議と信義則違反について仮に本件特例の適用について,建築許可申請の際に,被告らが主張する具体的な建築意思が必要であるとしても,これまでの事前協議において,所轄税務署長は参加人に対してそのような指摘をせず,むしろ,参加人の見解やその買取り手法に理解を示し,これを容認してきたものである。 所轄税務署長が,このような取扱いを変更する場合であっても,本件特例の控除額の大きさ,国民の納税義務への影響,事前協議制度の前置といった事情を考慮すべきであり,何らの事前告知をすることなく,過去にさかのぼって課税処分をすべきではない。 事前協議において不備等を指摘することなく,当該事業に本件特例が適用されることを確認した上,参加人に,地権者に対する「事前協議済」との記載のある本件各証明書を かのぼって課税処分をすべきではない。 事前協議において不備等を指摘することなく,当該事業に本件特例が適用されることを確認した上,参加人に,地権者に対する「事前協議済」との記載のある本件各証明書を発行させておきながら,事後,これに課税することは信義則に反し許されないというべきである。 ウ原告Aらへの課税処分が信義則に反すること原告Aらは,参加人が被告熱田税務署長との事前協議を経て,参加人が発行した本件各証明書を受け取り,本件特例の適用があるものと信頼してa町の各土地の売買契約を締結し,平成11年分の確定申告を行ったが,その確定申告から3年を経過した平成15年3月7日になって,本件の各更正処分等がなされたものである。 - 33 -しかし,原告Aらが,事前協議の結果を信頼し,本件特例の適用があるものと信ずることにつき,同人らには何ら責めに帰すべき事由はなく,本件の各処分等は,正義に反するものである。 すなわち,原告Aらは,租税について専門的な知識を有しているわけではなく,参加人の指導に従って,順次署名押印等をして関係書類を作成しただけであり,本件特例の適用はないもののその外形を作出しているとの認識を有していたわけではない。原告Aらは,参加人が適法な手続を指導しているものと信じていたのであって,参加人が建築許可申請に際し,申請の意思で足りるとの方針で指導している以上,それに従うことが問題視されるいわれはない。 また,原告Aらは,参加人から,本件の買取りが,1500万円の特別控除(公拡法に基づく買取りに関する措置法34条の2)が適用になるものであるとの説明を受けておらず,同特例の適用を認識しつつ,本件特例の適用を選択した事情もなく,現時点では,1500万円の特別控除の適用を受けることもできなくなったのである。 エ原告Aらに対する本件各処 るとの説明を受けておらず,同特例の適用を認識しつつ,本件特例の適用を選択した事情もなく,現時点では,1500万円の特別控除の適用を受けることもできなくなったのである。 エ原告Aらに対する本件各処分は,税務当局による見解の変更にほかならず,あらかじめ通知してなすべきものである上,同じ平成11年度分の都計法56条1項に基づく買取りでありながら,課税処分がなされたのは原告Aらのみであって不公平なものとなっており,この点からも違法である。 以上を総合すると,本件の課税処分は信義則に反し違法である。 (原告Iの主張)本件における課税処分は,事前協議制度に基づき,従来と何ら異なることのない手続を経た買取りについて,所轄税務署長が,一度は確認済みであるとの意思表示を行ったにもかかわらず,このような公の証明書を信頼し確定申告を行った一部の納税者に対し,突然,一方的に判断基準を変更し,遡って課税処分をしたものであり,このような行為は,20年以上の長きにわた- 34 -り,事前協議制度の趣旨を理解し,協力してきた事業施行者の信頼や,公共事業への理解と誠実な納税意識を有する納税者の意思を著しく踏みにじるものである。 したがって,本件における各処分は,信義則に反するものである。 (参加人の主張)ア事前協議制度の趣旨・内容事前協議制度は,事業施行者と所轄税務署長が,その資産の買取り等に対する特例制度の適用関係について相互に確認し合い,被買収者に対して課税関係の説明を行うため,所轄税務署長に対し当該事業の内容を説明し,特例制度の適用関係を事前に確認する制度であるところ,事前協議においては,事業予定地の指定をした個々の土地ごとに添付書類等を提出し,課税庁が様式を定めた検討表に基づく検討が実施され,所轄税務署長による質問も適宜なされることになっている。 した ころ,事前協議においては,事業予定地の指定をした個々の土地ごとに添付書類等を提出し,課税庁が様式を定めた検討表に基づく検討が実施され,所轄税務署長による質問も適宜なされることになっている。 したがって,被告らが主張するように,事前協議において事業の適否のみを審査するのであれば,毎回このような審査を実施するはずはなく,事前協議は所轄税務署長として最終的な本件特例の適否を審査・判断する場となっているのである。 イ所轄税務署長との過去のやりとり参加人と所轄税務署長との間の事前協議は,これまで20数年間にわたって運用されてきたが,過去,協議内容が覆されたことはなかった。 また,これまでに,点指定方式による買取り手法や建築意思の有無・程度に関し,個別に所轄税務署の担当者から説明を求められるなどした事例が2件ほど存在しているが,その際も,所轄税務署長からの指導や指摘は一切なく,所轄税務署長において,本件の買取り事業に関し,いわゆる点指定方式による買取り手法や建築意思に関する参加人の考え方が問題視されなかったものと解すべきである。仮に,これらの点についての疑問があ- 35 -ったとしても,それは当時の担当者限りのものという程度であって,事業施行者としては従いようのないものであるというほかない。 また,事前協議において用いられる検討表には「建築物を建築する意思」を確認するとの項目は存在していない。したがって,所轄税務署長は,被告らが主張するような建築意思を都計法56条1項の買取りの要件ではないと考えていたものであり,本件における各課税処分は,従来問題とされなかった「建築意思」なる判断基準を新たに持ち込み,事前協議の結果を覆したものであり,事後の問題の発生を未然に防止するとの事前協議制度の意義を喪失させるものである。 ウ事前協議の結果として発行 れなかった「建築意思」なる判断基準を新たに持ち込み,事前協議の結果を覆したものであり,事後の問題の発生を未然に防止するとの事前協議制度の意義を喪失させるものである。 ウ事前協議の結果として発行された確認書と公的見解(ア) 事前協議を経て発行された確認書の意義事前協議の内容は,上述のとおり,単なる相談,確認などではなく,本件特例の適用について判断しているものであり,その結果,所轄税務署長から事業施行者に発行される「確認書」は,本件特例が原則として適用されることを確認した内容の書類であることは明らかであって,これに基づいて,事業施行者から地権者宛に措置法施行規則15条2項の「証明書」が発行されることも法律上明確である。 したがって,所轄税務署長が,事前協議において,当該公共事業が本件特例の対象となる事業であると判断し,参加人に対し本件各確認書を発行したことは,すなわち,個々の土地に係る買収事業に本件特例の適用があることを明示したことにほかならないのであり,これに基づいて参加人が本件各証明書を発行し,原告らがこれを添付して確定申告を行ったのであって,これらはすべて所轄税務署長による本件各確認書を信じた結果であるから,所轄税務署長が事前協議を経て本件各確認書を発行したことは,公的見解を表示したものにほかならない。 (イ) 事業施行者が発行する「証明書」の意義- 36 -また,本件特例の制度が的確に運用されるかどうかは,ひとえに事業施行者から「証明書」が適正に発行されるか否かにかかっているものと解されており,事前協議も,事業施行者が発行する証明書を想定し,その適切な発行のために実施されているのであって,このことからも,事前協議によって発行される確認書が,公的見解を示したものであることは明らかである。 (ウ) 長年にわたる信頼の保護の必 書を想定し,その適切な発行のために実施されているのであって,このことからも,事前協議によって発行される確認書が,公的見解を示したものであることは明らかである。 (ウ) 長年にわたる信頼の保護の必要性参加人は,後述のとおり,昭和52年からこれまで事前協議制度に協力し,その間,本件特例の適用を否定されたことはない。 このような長年にわたる実績から,参加人も原告らも所轄税務署長が信頼の対象となる公的見解を表示したものとみなし,参加人において原告らが確定申告をする際に必要とされる本件各証明書を発行し,原告らは,他の多くの地権者と同様,本件特例を受けることができるものと信じて確定申告を行ったのである。 エ租税平等原則による信義則(ア) 参加人は,昭和44年以降,都市開発資金の貸付に関する法律に基づく都市開発資金を活用し,氷上公園や猪高緑地を含む主要な都市計画公園・緑地について,都計法56条1項の規定に基づく用地の先行取得を行ってきており,昭和52年度から平成11年度までの23年間,事前協議にも協力してきた。このように事前協議制度は,長年にわたり,参加人と所轄税務署,ひいては納税者との信頼関係の下で運用されてきたものであり,その間の用地買収件数は749件にも上る。 (イ) しかし,例えば,同じ氷上公園内の地権者であっても,本件特例の適用を受けた者と,原告Aらのようにその適用が否定されて課税処分を受けた者がおり,同じ状況の地権者でありながら,法令の解釈が分かれ,課税の取扱いが異なる事態が生じている。 - 37 -(ウ) そもそも課税処分はきわめて厳格に法令により規定されなければならず,また,租税平等原則は,租税は国民の間に担税力に応じて公平に配分されなければならないこと,及び国民は租税法律関係においては合理的な理由なしに差別的に取り扱われな に法令により規定されなければならず,また,租税平等原則は,租税は国民の間に担税力に応じて公平に配分されなければならないこと,及び国民は租税法律関係においては合理的な理由なしに差別的に取り扱われないことを意味している。 したがって,上述のような事態は,租税平等原則の観点から著しく均衡を欠き,不当なものである。 (エ) 最高裁判所昭和62年10月30日第三小法廷判決(裁判集民事152号93頁。「昭和62年最判」という。)は,信義則の適用が制限されるべき反対利益として納税者間の平等,公平の要請を挙げ,租税関係においては,租税平等主義の要請から,特定の個人のみに異なった処遇を与えることは望ましいことではなく,信義則の適用が制限されるべきであると判示している。 これに対し,上述のとおり,本件では,課税処分によって,原告らのみを不利益に扱っている結果となっているのであるから,むしろ信義則が適用されることによって,平等原則が実現される場合であるといえる。 したがって,本件には信義則が積極的に適用されるべきなのである。 オ結論事前協議制度が法的な制度ではないことは参加人も承知しているが,そのことを盾に事前協議の結果を当然に撤回するという,信義則を完全に無視した対応が許されるはずがない。 20数年間にわたって当該制度の運営に協力していた事前協議の相手方の事情を全く無視し,一方的に解釈の変更を行い,本件のような事件を未然に防止するという制度本来の趣旨,目的を誤解した本件における各処分は,信義則に反し違法である。 (被告らの主張)ア租税関係への信義則の適用について- 38 -原告らは,事前協議において所轄税務署長が本件特例の適用を認めながら,適用しないのは信義則に反すると主張する。 しかし,租税法律関係においては,信義則の適用には納税者の信頼を保 ついて- 38 -原告らは,事前協議において所轄税務署長が本件特例の適用を認めながら,適用しないのは信義則に反すると主張する。 しかし,租税法律関係においては,信義則の適用には納税者の信頼を保護しなければ正義に反するような特別な事情が必要であり,このような特別の事情の有無については,課税官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示し,納税者がこれを信頼して行動したところ,のちに上記表示と異なる課税処分が行われたかどうか,また,納税者が課税官庁の上記表示を信頼し行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかの考慮が不可欠である(昭和62年最判)。 本件においては,以下述べるようにそのような特別な事情も認められない。 イ事前協議制度の内容について(ア) 事前協議は,国税庁長官の「譲渡所得等に係る課税の特例制度の運用に関する協力方について」による事実上の制度であり,課税の特例制度の適用を巡る事業施行者と地権者とのトラブルを回避し,公共事業に係る各種の課税の特例制度の的確かつ円滑な運用を図ることを目的として行われるものであって,法律の規定に基づくものではない。 以上のとおり,事前協議は,事実上の制度であるから,税務署等が事業施行者等の証明書の発行を許可するものでも認可するものでもなく,その内容は,事実上の事務打ち合わせに過ぎない。 また,必要に応じて事後の監査をし,個別の適用関係に誤りがないかどうかなどを調査することが予定されており,事前協議の段階で問題がないとされても,後に措置法の適用が否定される場合があり得るのは当然である。 (イ) 事前協議は「租税特別措置法施行規則14条7項5号の9に規定する書類の発行を予定している事業に関する説明書」(事前協議説明書)に- 39 -基づいて行うこととされており,これに添付され 。 (イ) 事前協議は「租税特別措置法施行規則14条7項5号の9に規定する書類の発行を予定している事業に関する説明書」(事前協議説明書)に- 39 -基づいて行うこととされており,これに添付された関係書類を基に当該事業が本件特例適用の対象となる事業であるか否かについて検討を行うこととしている。 (ウ) 本件において,所轄税務署長は,本件各土地につき,名古屋市長から事前協議説明書の提出を受け,措置法施行規則14条7項5号の9に規定する証明書の発行ができる旨記載した本件各確認書を交付した(甲イ10号証の2,14号証)。 しかし,事前協議において示される資料は限定的であり,当該税務署長は,これらの資料が存在することは確認できても,実体を伴うもの,すなわち,都計法の趣旨・目的に沿った適正な手続の下で作成された書類か否かについてまでは確認することができず,税務調査と異なり,これを確認するための資料の提出を求める権限も有していない。所轄税務署長としては,従来,都計法56条1項の買取りには地権者に具体的な建築意思が必要であるとの見解の下,参加人から提出される建築許可申請書や建築不許可処分の通知書などによってこれを確認してきたが,全く建築する意思のない者から形式的に建築許可申請書を提出させていたことや,参加人が建築図面を用意して建築許可申請を促すという便宜を図っていたことは,通常予想し得ないことであった。 また,参加人は,事前協議において,実際の買収の年の前年以前に地権者が買取申出書(仮受付)を提出しているなどという公園用地買収の一連の手続について,所轄税務署長には明らかにしておらず,事前協議説明書には,参加人が準備して使い回していた建築図面も添付されていなかったため,建築図面の内容を確認することもできなかった。このように参加人は,買取り手続の 税務署長には明らかにしておらず,事前協議説明書には,参加人が準備して使い回していた建築図面も添付されていなかったため,建築図面の内容を確認することもできなかった。このように参加人は,買取り手続のすべてを明らかにしなかったことから,当該税務署長が,参加人に対し,その運用の当否について明確に指摘できなかったものであって,ましてやそれを承認していた事実も認められな- 40 -い。 さらに,所轄税務署長が名古屋市長に交付した本件各確認書には「各被買収者について特例の適用ができる旨を通知するものではありません」と記載し,本件特例の対象となるか否かについて最終的な判断をしたものではない旨を明確に表記している(乙イ22号証の別紙10)。 (エ) このように,事前協議は,主にその事業が措置法適用の対象となるか否かについて事実上の事務打ち合わせをするものに過ぎず,個別の租税法の適用関係について判断したものではなく,所轄税務署長が信頼の対象となる公的見解を表示したものではないから,信義則に反するとの主張には理由がない。 ウ所轄税務署長による参加人への指摘について事前協議の目的は,将来発生するかも知れないトラブルの防止にあり,そのため協議することにあるが,所轄税務署長は,平成7年9月及び平成10年11月に,参加人に対して都計法の運用についての問題点を指摘したことがある。 しかし,参加人は自ら所管すべき都計法の運用に関する指摘を受け入れず,その責任を果たさなかった。 エ公的見解の表示について(ア) 原告らは,事前協議において特例の適用を確認し,本件各確認書を参加人に対して発行したことが,原告らに対し公的見解を表明したことになり,これを覆す課税処分は信義則に違反すると主張する。 しかし,本件各確認書の発行は,所轄税務署長から事業施行者である参加人に事 参加人に対して発行したことが,原告らに対し公的見解を表明したことになり,これを覆す課税処分は信義則に違反すると主張する。 しかし,本件各確認書の発行は,所轄税務署長から事業施行者である参加人に事前協議の結果を通知するものであって,地権者に対して所轄税務署長の公的見解を表示するものではない。 (イ) 事前協議の結果,所轄税務署長が事業施行者に確認書を発行するが,確認書には「不動産等の譲受けの対価の支払調書」の合計表に「事前協- 41 -議済み」と赤書きするよう依頼する注意書きが記載されている。これは,文字どおり支払調書合計表に赤書きするよう依頼するもので,事業施行者が発行する証明書に「事前協議済み」と赤書きされることを想定しているものではない。 したがって,本件の買取りに係る証明書に「事前協議済み」と表示されていたり,事前協議の確認書の写しが交付されたとしても,それは参加人の独自の判断で行われたものであり,所轄税務署長が公的見解を表示したと評価されるものではない。 オ原告らは,本件各処分が租税平等主義等に反し,信義則にも反するものであるなどと主張する。 しかし,課税の平等とは,課税の根拠となる法を適用すべき者に対して等しく適用することであるから,法の適用を免れる者があったとしても,そのことにより他の者に対して法を適用し更正等をすることが平等に反することにはならない(最高裁判所平成10年4月10日第二小法廷判決・税務訴訟資料231号508頁)。 以上によれば,原告ら以外の者が本件特例の適用を認められていようと,税務調査を受けて本件特例の適用を否定される更正処分を受けていようと,そのことにより,原告らに対する本件の各処分が平等原則違反として違法となることはない。 カ結論以上によれば,本件において事前協議を了し,本件各確認書が発行さ 否定される更正処分を受けていようと,そのことにより,原告らに対する本件の各処分が平等原則違反として違法となることはない。 カ結論以上によれば,本件において事前協議を了し,本件各確認書が発行されていることをもって,公的見解が表示されたことにはならないし,所轄税務署長が当該確認書と異なる処分をしたからといって,本件に信義則の法理が適用されるものでもない。 第3争点に対する判断 争点(1) 本件各土地の参加人への売却による対価について,譲渡所得に関す- 42 -る本件特例を適用しなかった本件各処分は違法か否かについて(1) 本件特例の趣旨及び適用要件等についてア措置法33条ないし33条の4は,個人の有する資産が33条1項各号又は33条の2第1項各号のいずれかに該当する場合には,その所有権等の移転が,土地収用法等の規定に基づいて強制的になされるものであること,そして,収用等によって生じた所得の全額に課税をすると,対象者の再投資が困難となり,その生活維持に支障を生じさせる恐れがあることなどにかんがみ,これらの不都合を調整するため,所得の計算上収用等に係る資産の譲渡等がなかったものとみなし,あるいは長期譲渡所得の金額から5000万円を控除することなどの特例措置を定めたものと解される(乙全4号証)。 そして,本件特例(措置法33条の4第1項1号,33条1項3号の3)も,次のとおり,都計法56条1項の規定に基づく買取りが強制収用と同視すべき事情にあることにかんがみ,長期譲渡所得の金額から5000万円を控除するとの特例措置の適用を定めたものと解される。 すなわち,都計法53条1項本文は,将来における都市計画施設の整備に関する事業の円滑な実施を担保することを目的として,都市計画施設の区域内における建築物の建築を知事等の許可を要するものと 解される。 すなわち,都計法53条1項本文は,将来における都市計画施設の整備に関する事業の円滑な実施を担保することを目的として,都市計画施設の区域内における建築物の建築を知事等の許可を要するものとし,同法54条において,一定の建築物の建築行為については許可しなければならないものとし,地権者による土地の活用をある程度許容しているが,同法55条1項本文において,知事等が,当該土地につき,近く都市計画事業が行われる区域であることなどを理由として事業予定地に指定することによって,同予定地内の土地については,同法54条の規定に適合する建築物の建築許可申請があっても,これを許可しないことができるとしている。 そして,これらの規定を受けて同法56条1項は「事業予定地内の土地の所有者から,前条1項本文の規定により建築物の建築が許可されないと- 43 -きはその土地の利用に著しい支障をきたすことになることを理由として,当該土地を買い取るべき旨の申出があった場合においては,特別の事情がない限り,当該土地を時価で買い取るものとする」と定めて知事等に買取義務を課し,これによって,土地の利用について著しい支障を来すこととなる地権者の救済を講じ,公共事業の円滑な遂行との調整を図っている。 このような都計法の各規定の内容及び構成に照らしてみると,同法56条1項に基づく買取りは,地権者が,都市計画施設の区域内においても本来許容されるべき建築物を現実に建築する計画・意図を有し,その建築の許可申請をしたものの,事業予定地として指定された結果,これが不許可とされ,土地の利用に著しい支障を来すこととなった場合の代償措置として行われるものであって,その実質において強制的に収用される場合と同視できる状態が存在することを前提とするものと解される。 したがって,本件特例が適用され しい支障を来すこととなった場合の代償措置として行われるものであって,その実質において強制的に収用される場合と同視できる状態が存在することを前提とするものと解される。 したがって,本件特例が適用されるためには,上記の前提状況が現実に存在することが必要であって,外形上は都計法56条1項の規定に基づく買取りの形式による譲渡であっても,その実態が強制的な収用によるものとは同視できず,事業施行者と個人との間で任意に譲渡がなされたものと認められる場合には,本件特例適用の前提を欠くものといわなければならない。 イ(ア) これに対し,原告らは,本件特例の適用は必ずしも上記の場合に限るものではなく,むしろ任意に公共事業に応じ,協力する者にこそ本件特例を適用すべきである旨主張するが,措置法は,強制的な収用が行われない特定土地区画整理事業等の公共事業においては,2000万円以下の特別控除の限度でこれを認めるに止めている(34条,34条の2参照)など,資産の譲渡が強制的になされたか否かによって特例措置の内容を区別していることが明らかであるから,原告らの上記主張はこのような措置法の規定内容ないし構成とも相容れず,法律上の根拠を欠くも- 44 -のというべきであって,採用することができない。 (イ) また,原告ら及び参加人は,前記のとおり,地権者からの都計法56条1項の規定に基づく買取りについて,①同法53条所定の建築許可申請や不許可決定が必要ではなく,②仮にその必要があるとしても,具体的な建築計画や建築の意思を要せず,建築許可申請をする意思(申請意思)を有していれば足ると解すべきである旨主張する。 しかしながら,同法56条1項は,買取りの要件として「前条1項本文の規定により建築物の建築が許可されないとき」と規定し,その文言からすれば,建築許可申請と,これに ば足ると解すべきである旨主張する。 しかしながら,同法56条1項は,買取りの要件として「前条1項本文の規定により建築物の建築が許可されないとき」と規定し,その文言からすれば,建築許可申請と,これに対する不許可決定がなされることを前提にしていると解するのが自然であり,また,同法55条1項ただし書は,土地の買取りの申出に応じない場合には建築許可申請を許可しなければならないと規定していることにも照らしてみると,これらはいずれも建築許可申請が実際になされることを前提とする規定と解するのが合理的である。 そして,建築許可の申請,許可の基準,不許可の場合の効果等について規定している同法53条以下の規定や,建築許可の申請について申請書の様式やそれに添付すべき建築物の図面等を定めた都計法施行規則39条等の規定を検討してみても,これらが現実に建築物を建築する計画も意図も有しない地権者からの建築許可申請を予定して定められたものとは容易に解されない上,建築許可申請を不許可とした場合であっても,「特別の事情」によっては知事等が買取りを拒否することもできるのであって,その場合には,知事等に不許可処分を撤回し,新たに建築許可処分をすべき義務が生ずると解されていること(丙2号証)を考慮しても,建築許可申請には,現実に建築物を建築する計画・意図が必要と解するのが自然かつ合理的というべきである。 したがって,原告ら及び参加人の上記①②の主張はいずれも採用する- 45 -ことができない。 (2) 参加人による本件各土地の都計法56条1項に基づく買取りについて前記「前提事実」欄記載の各事実に,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 ア参加人の公園用地の取得について(ア) 我が国では,高度経済成長の時代に都市部において劣悪な市街地が無秩 欄記載の各事実に,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 ア参加人の公園用地の取得について(ア) 我が国では,高度経済成長の時代に都市部において劣悪な市街地が無秩序に拡散するスプロール現象を呈したため,都市の健全な発展と秩序ある整備,立ち遅れの著しい生活環境施設の計画的整備を推進する必要が生じた。そのため,昭和43年に都計法が抜本的に改正され,すべての都市計画施設について建築制限が課されることになるとともに,都市計画施設で知事等の指定した区域(事業予定地)内等においては,都市計画事業の円滑化を図るため,建築物の建築について,軽易な建築物の建築等を許可すべきものとする都計法54条の特例として,建築物の建築を全面的に禁止することが認められ(同法55条),これに対し,所有者から土地の買取りの申出がなされたときは,当該土地を買い取るべきものとされた(同法56条1項。甲イ19号証,乙イ2号証,乙ロ3号証,丙2号証)。 他方,都計法の改正と相前後して,国が重要な公共施設の整備を行う地方公共団体に対し,必要な用地の先行取得に要する費用を貸し付ける都市開発資金制度が創設され,都計法56条1項に基づく土地の買取りは,上記制度の対象事業となっていた(甲イ19号証)。 (イ) 参加人は,上記都計法の改正が行われた昭和43年に「名古屋市将来計画・基本計画」をとりまとめ,公園緑地計画の課題として,周辺部に計画している大公園や緑地用地の先行取得につとめ,その整備を積極的に推進することを掲げ,今後の整備計画として市街化の波及に先行して積極的に用地確保を図るものとし,資金の面では,都市開発資金などを- 46 -活用するほか,施設整備には民間資金の導入を考慮するものとし,その後,街づくりにおける緑化の重要性を打ち出した構想や計画を 極的に用地確保を図るものとし,資金の面では,都市開発資金などを- 46 -活用するほか,施設整備には民間資金の導入を考慮するものとし,その後,街づくりにおける緑化の重要性を打ち出した構想や計画を策定するなどしていた(丙16号証ないし18号証,26号証,27号証,29号証)。 (ウ) 以上のような情勢を踏まえ,参加人では,周辺部で計画している大規模な公園・緑地について,市街化の波及に先立って積極的に用地の確保を図るものとし,昭和44年以降,東山公園(取得開始は昭和44年度),相生山緑地(同昭和45年度),猪高緑地(同昭和47年度),荒池緑地(同昭和49年度)及び氷上公園(同平成9年度)に限定して,必要に応じて都計法55条による事業予定地の指定をし,買取り申出による土地の買取りを行っていた(甲イ19号証,20号証,丙16号証p4,証人Mp27)。 (エ) 参加人は,昭和44年に東山公園の一部,同45年に相生山緑地の一部の土地について,ある程度広い面積をまとめて事業予定地に指定する,いわゆる面指定方式によって買取りに臨んだところ,予定地住民らの反対運動が起こったこと,また,多くの地権者からの買取り申出が一時期に集中した場合には,市の予算上,これに対応できないことから,その後,個々の土地(特定の筆)ごとに事業予定地の指定をする,いわゆる点指定方式によって買取りを進めてきた(丙16号証p4,証人Lp3)。 (オ) 参加人における都計法56条1項に基づく土地の買取り事務は,およそ以下のように行われていた。 aすなわち,①参加人による土地の買取りを希望する地権者が,参加人に対し,仮受付として土地買取申出書を提出し,②参加人が,当該土地を購入する予算措置を講ずることができた時点で当該土地について事業予定地の指定・告示をし,③地権者に対してその旨 する地権者が,参加人に対し,仮受付として土地買取申出書を提出し,②参加人が,当該土地を購入する予算措置を講ずることができた時点で当該土地について事業予定地の指定・告示をし,③地権者に対してその旨連絡をして都計法53条1項の規定に基づく建築許可申請書の提出を促し,④提- 47 -出された建築許可申請に対し,市長が同法55条1項の規定に基づき建築不許可決定をし,⑤地権者から,同法56条1項の規定による土地買取申出書の提出を受けた上,⑥当該土地の所轄税務署長との事前協議に臨み,所轄税務署長から確認書の交付を受けて,地権者に対し証明書を発行するという手順によるものであった(甲イ20号証,乙イ5号証,6号証,乙ロ10号証,証人Lp11,証人Mp1~3)。 b仮受付としての土地買取申出書や建築許可申請書は,地権者が持参することもあったが,地権者の代理人として地元の不動産業者が参加人の担当部局の窓口に持参することもあった(乙イ6号証)。 参加人では,都計法53条1項に基づく建築許可申請書に添付すべき建築図面として,あらかじめ5,6種類の図面を用意して冊子として担当課内に備え置き,地権者が提出した建築許可申請書にどのような図面を添付するかは,担当職員が,当該土地の面積等に応じて適当と思われるものを任意に選択していた(乙イ6号証,乙ロ10号証,証人Lp9,12,17,証人Mp3,20,21,23,24)。 建築許可申請に対する不許可決定の通知は,参加人の職員が地権者に代わって受領し,当該土地の売買契約締結時に交付したり,契約締結後に公共事業用資産の買取り等の証明書を郵送する際に同封していた(乙イ6号証,14号証,乙ロ10号証)。 イ原告Aらについて(ア) a町の各土地(f番3,f番1,f番7)は,もともと1筆の土地(f番の土地)であり,原告A 等の証明書を郵送する際に同封していた(乙イ6号証,14号証,乙ロ10号証)。 イ原告Aらについて(ア) a町の各土地(f番3,f番1,f番7)は,もともと1筆の土地(f番の土地)であり,原告Aらの先祖伝来の土地で,一時は墓地公園用地として指定されたこともあったが,付近住民の反対で取り止められた(甲イ1号証の2,21号証,乙イ16号証)。f番の土地は,昭和40年から平成7年までの間に,順次8筆の土地(f番1ないしf番8)に分筆された(甲イ1号証の1・2,21号証,乙イ24号証の1- 48 -・2)。 (イ) 原告Aは,a町の各土地を利用して,介護センターのような社会的に有用な施設を建設したいと希望していたが,具体的な計画までは立てておらず,同土地の一部を参加人に無償で貸与していた(甲イ21号証,乙イ4号証,証人Np3)。 その後,a町の各土地が公園用地に指定されており,その利用・処分が困難であると聞き,参加人に問い合わせてその指定の事実を知り,なお担当者から,建築物の建築は制限されているが,他に譲渡するのであれば参加人が買い取る意向であること,そして,その対価に対する課税については本件特例が適用されるとの教示を受けた(甲イ21号証,乙イ4号証,証人Mp22)。 そこで,原告Aは,原告Aらを代表して,a町の各土地を参加人に売却する意向を参加人に伝えたところ,参加人側から,買取代金の予算を手当てするので待っていてほしい旨告げられた。 (ウ) その間,平成7年12月12日に分筆されたf番8,f番6の各土地については,平成8年と平成10年に,道路用地として名古屋市土地開発公社に買い取られた。なお,この買取りについては公拡法に基づく買取りに関する措置法34条の2の規定による1500万円の特別控除が適用された(甲イ1号証の1・2,21号証, 用地として名古屋市土地開発公社に買い取られた。なお,この買取りについては公拡法に基づく買取りに関する措置法34条の2の規定による1500万円の特別控除が適用された(甲イ1号証の1・2,21号証,乙イ24号証の1・2,28号証ないし31号証)。 参加人は,a町の土地1について,平成10年5月25日に事業予定地の指定をし,原告Aらは,同土地について同年11月27日付けで,都計法53条1項に基づき名古屋市長に対する建築許可申請書を提出したが,同年12月4日付けで建築不許可決定がなされた。そして,原告Aらは,同月7日付けで名古屋市長に対し,同土地の買取申出書を提出し,参加人は,平成11年2月1日,これを買い取った(甲イ1号証の- 49 -1,2号証,4号証,6号証,8号証)。 さらに,参加人は,a町の土地2及び同3について,平成11年6月3日に事業予定地の各指定をし,原告Aは,a町の土地2について同年10月6日,都計法53条1項に基づき,名古屋市長に対する建築許可申請書を提出した。なお,同申請書には,「新築,増築,改築又は移転の別」欄への記載やa町の土地3についての記載はなされていなかった。 名古屋市長は,同月12日付けでa町の土地2についてのみ建築不許可決定をした。これに対し,原告Aは,同月15日,名古屋市長に対しa町の土地2及び3の買取申出書を提出し,同年11月30日,参加人はこれらを買い取った(甲イ1号証の2・3,3号証,5号証,7号証,9号証,乙イ7号証の1)。 (エ) 上記の各建築許可申請書に添付された建築図面は,いずれも参加人の職員が用意し,a町の各土地の面積・形状に合うものを適宜選択して添付したものであり,原告Aは,所有者ないし共有者の代表として上記各建築許可申請の手続を行った際,建築許可申請書にこれらの図面が添付されるこ 用意し,a町の各土地の面積・形状に合うものを適宜選択して添付したものであり,原告Aは,所有者ないし共有者の代表として上記各建築許可申請の手続を行った際,建築許可申請書にこれらの図面が添付されることを知らなかった(甲イ21号証,乙イ6号証,弁論の全趣旨)。 ウ原告Iについて(ア) 原告Iは,医療法人の理事長であり,平成元年ころから国の医療政策が変更され,高齢者の在宅医療が推進されるようになったことに対応するため,平成7年以降,看護ステーション,グループホーム,リハビリセンター等を開設するなどしてきた(甲ロ11号証,12号証)。 原告Iは,b町の各土地が,面積も広い一団の土地であったため,都計法による利用制限がなければ,同土地に在宅医療用の複数の施設を併設・運営し,質の高い医療サービスを提供したいと考えていたが,具体的な計画までは立てておらず,参加人に対する建築等の申し入れもして- 50 -いなかった(甲ロ12号証,乙ロ8号証,9号証の1)。 (イ) 原告Iは,個人資産の管理を関連法人の従業員であるKに委ねており,Kは,原告Iから資産管理を任されていた同原告の妻Jと相談しながら,原告Iが猪高緑地内に所有する土地の参加人への売却手続を担当してきた(乙ロ9号証の1)。 原告Iは,上記のとおり猪高緑地として都市計画決定がされている区域内に複数の土地を所有しており,昭和54年以降平成10年8月までの間に,参加人からの要請に応じて順次売却してきたが,b町の各土地を利用して医療関係施設を建築する希望を持っていたことから,同各土地の売却を控えてきた(甲ロ12号証ないし16号証,乙ロ8号証,9号証の1)。 (ウ) 参加人は,平成10年に猪高緑地内の民有地を無償で借りることにより早期に雑木林の保全及び活用を図る「オアシスの森づくり事業」を展開するこ 12号証ないし16号証,乙ロ8号証,9号証の1)。 (ウ) 参加人は,平成10年に猪高緑地内の民有地を無償で借りることにより早期に雑木林の保全及び活用を図る「オアシスの森づくり事業」を展開することを決め,同市担当職員が,Kに対し,予算の関係上猪高緑地内の原告Iの所有地を買い取ることができないので,これらの土地の無償使用を許諾してくれるよう求めた。Kは,原告Iの指示の下,参加人に対し,上記事業計画に基づく工事を進めることに同意する旨の念書を差し入れ,参加人による無償使用の申し入れを応諾した(乙ロ9号証の2,11号証ないし14号証)。 (エ) 参加人の担当職員は,Kに対し,上記無償使用の件と併せて,猪高緑地内の土地につき,買収の予算措置を講じることができ次第連絡するので,土地の買取りに関する書類を提出してほしいと申し入れた。Kは,Jと相談の上,同年12月2日付けで土地買取申出書を提出し,b町の各土地を含め,原告Iが猪高緑地内に所有していたすべての土地(10筆)の買取りを申し出た(乙ロ8号証,9号証の1,丙22号証)。 (オ) 名古屋市長は,平成11年6月3日,b町の各土地を事業予定地とし- 51 -て指定した。Kは,参加人の担当職員から,b町の各土地を買い取る旨の連絡を受け,同市職員の指示に従って,原告I名義の建築許可申請書を作成し,平成12年8月9日付けで提出した。名古屋市長は,同月16日これを不許可とした(甲ロ4号証,5号証,乙ロ4号証の1・2,6号証,8号証)。 原告Iは,同月17日付けで同市長に対し,都計法56条1項の規定に基づき,b町の各土地の買取申出書を提出し,同年10月5日,参加人との間で,b町の各土地の売買契約を締結した(甲ロ5号証,9号証,乙ロ6号証,7号証,9号証の1)。 原告Iが参加人に提出した建築許可申請書に添 町の各土地の買取申出書を提出し,同年10月5日,参加人との間で,b町の各土地の売買契約を締結した(甲ロ5号証,9号証,乙ロ6号証,7号証,9号証の1)。 原告Iが参加人に提出した建築許可申請書に添付した図面は,参加人の職員が適宜用意したものであった(乙ロ8号証,9号証の1)。 (3) 本件各土地の売買に対する本件特例の適用の有無についてア以上の認定事実によれば,参加人は,かねてよりその施策として周辺部における比較的大規模な公園・緑地の開発を進めており,国の都市開発資金制度を利用するなどして用地の先行取得を行ってきたが,広範囲の土地をまとめて事業予定地に指定するいわゆる面指定方式によった場合に生じやすい地区住民の反対運動を回避したり,買取りのために必要な予算措置を分散させるなどして,用地の確保を円滑に進めることを目的として,あらかじめ都市計画施設の区域内の地権者が買収に応ずる意思を有しているか否かを個別に確認し,その意思がある地権者から買取りの申出を受けた上,買収資金の予算措置を講じた時点で,都計法55条1項に基づき当該地権者の所有する土地を事業予定地に指定し,これを地権者に連絡して同人に本件特例の適用を受けさせるべく,同法53条1項の規定に基づく建築許可申請をするよう指導し,これを不許可とした上,都計法56条1項により参加人が買い取るという,いわゆる点指定方式による運用を長期間にわたって行ってきたものと認められる。 - 52 -そして,原告らからの本件各土地の買取りも,参加人の上記の運用に沿って行われたものであることが明らかである。 このような参加人の運用は,外形上,都計法56条1項の規定に従った土地の買取りとなってはいるものの,地権者が現実に計画していた建物の建築申請をしたが,それが不許可となったために土地の利用に著しい支障を ような参加人の運用は,外形上,都計法56条1項の規定に従った土地の買取りとなってはいるものの,地権者が現実に計画していた建物の建築申請をしたが,それが不許可となったために土地の利用に著しい支障をきたすことになったという実態があるわけではなく,上述したとおり本件特例が予定している強制的に土地を収用される場合と同視すべき状況にあるとは認められない。 このように参加人による都計法53条以下の手続による本件各土地の買取りが形式的に同条以下の手続によって行われたにすぎないものであったことは,原告Aが平成11年10月6日に提出した建築許可申請書にはa町の土地3に関する記載がなかったにもかかわらず,同土地も参加人が買い取っている事実にも現れているということができる。 本件特例は,前述のとおり,資産の譲渡が強制的に行われる場合に,当該所有者の生活を維持することを目的として設けられたものであることにかんがみると,上記のとおり実質的に強制的な譲渡と同視することができない実態にある本件各土地の参加人への譲渡について,本件特例を適用することはできないというべきである。 イこれに対して,原告Aらは,上記建築許可申請に際して,建築物を建築する意思を有していた旨主張するが,既に判示したとおり,原告Aらは,a町の各土地において介護センターのような施設を建築したいとの希望を持っていたものの,それはなお具体的な計画として企画されるまでに至っていたとは認められず,したがって,上記建築許可申請時において,建築物を建築する具体的な意思を有していたとは認められない。 また,原告Iは,b町の各土地に低層の老人ホームを建築する計画を有していた旨主張するが,上記認定事実によれば,原告Iは,建築許可申請- 53 -の約2年前の平成10年ころには,b町の各土地を参加人に売却するとの b町の各土地に低層の老人ホームを建築する計画を有していた旨主張するが,上記認定事実によれば,原告Iは,建築許可申請- 53 -の約2年前の平成10年ころには,b町の各土地を参加人に売却するとの意思を表明していたほか,その後も同各土地を参加人に無償で貸与していたのであり,低層の老人ホームを建築する具体的な計画を立てた状況のもとで上記建築許可申請をしたものとは認められない。 ウ原告ら及び参加人は,都市計画施設の区域内にある本件各土地は,実質的には事業予定地の指定がなされるまでもなく地権者らによる建物の建築が事実上不可能になり,建築許可申請をする時点ではその意思は潜在的,抽象的なものにならざるを得ないこと,都計法56条1項の規定の文言は,必ずしも建築許可申請及び不許可決定を要するとは解されず,参加人が実施してきたいわゆる点指定方式による買取りの運用は地権者に対する過剰な負担を軽減し,自治体の予算措置上の便宜にも資するものであることなどを指摘し,原告らの参加人に対する本件各土地の売却は本件特例の適用を受けるべきものである旨主張する。 しかし,これらの主張は,都計法56条1項の買取りに関する上記の諸規定の文言や手続きの構成及びそれらの趣旨,そして本件特例の趣旨目的等,既に判示したところに照らしてみると,これらを法律解釈として採用することは困難というほかはない。 エ以上のとおりであって,参加人による原告らの本件各土地の買取りによる対価について,本件特例の適用はないというべきである。 争点(2) 事前協議を経た上でなされた本件各処分は,信義則に反して違法か否かについて(1) 事前協議の内容とその運用について前記「前提事実」欄記載の各事実に,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると以下の事実が認められる。 ア国税庁長官及び各国税局長は て違法か否かについて(1) 事前協議の内容とその運用について前記「前提事実」欄記載の各事実に,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると以下の事実が認められる。 ア国税庁長官及び各国税局長は,昭和52年,関係者に対し「譲渡所得等に係る課税の特例制度の運用に関する協力方について」との文書を発し,- 54 -措置法における各種の課税の特例制度に関し,事業施行者と納税者との間に問題が発生することを防止するため,事業施行者と所轄税務署長等が事前に協議し,その公共事業等が,課税の特例に該当するか否かを確認し合う事前協議制度の確立についての協力を要請した(乙全3号証,乙イ21号証,丙4号証,13号証,14号証)。 参加人は,これに応じて,事業施行者として公共事業等に伴い収用等を行う場合に,事前協議として所轄税務署長に買取り内容を説明し,本件特例の適用関係について確認をして,当該税務署長から送付される確認書を受領した上,買取り対象土地の所有者に対して「事前協議済」と記載した証明書等を発行する取扱いを久しく行ってきた(丙13号証)。 イ参加人が事業施行者として都計法56条1項の規定に基づく買取りをする際の事前協議の相手方税務署長は,猪高緑地の場合は千種税務署長,氷上公園の場合は被告熱田税務署長であった(丙15号証)。 参加人の担当職員が事前協議の際に税務署に持参する書類は,「租税特別措置法施行規則14条7項5号の9に規定する書類の発行を予定している事業に関する説明書」(事前協議説明書)と「事前協議の特例適用上の検討表」(検討表)であり,事前協議説明書には,①買取土地に係る事業予定地指定告示の写し,②建築許可申請書の写し,③建築不許可通知書の写し,④位置図,⑤土地買取申出書の写し,⑥一筆ごとの明細等を添付していた(乙イ22号証,34号証,35 には,①買取土地に係る事業予定地指定告示の写し,②建築許可申請書の写し,③建築不許可通知書の写し,④位置図,⑤土地買取申出書の写し,⑥一筆ごとの明細等を添付していた(乙イ22号証,34号証,35号証,丙15号証,証人Mp9)。 しかし,参加人の担当職員は,事前協議に当たって,所轄税務署の担当者に対し,事業予定地の指定や建築許可申請に先立って,仮受付として土地の買取申出書の提出を受けていることや,建築許可申請書に添付される建築図面が許可申請者の作成にかかるものではなく,参加人において用意しているものから適宜のものを添付していることなど,参加人における都計法56条1項に基づく土地の買取り事務の具体的な運用の内容(上記1- 55 -(2)ア(オ)記載の運用の実態)を説明したことはなく,また,上記建築図面を事前協議の資料として所轄税務署に提出したこともなく,所轄税務署においても,上記の参加人の運用実態の詳細を把握していなかった(証人Mp23,24)。 ウ所轄税務署の担当職員は,これらの提出を受けた書類を基に,検討表に従って特例の適用の可否を検討した上,上司の決裁を経て,当該税務署長名で「譲渡所得等の課税の特例の適用に関する確認について」と題する書面(確認書)を参加人に送付していた(乙イ22号証,35号証)。 被告熱田税務署長が発行した確認書には,事前協議の申出のあった事業が措置法施行規則14条7項5号の9に規定する書類の発行をすることができる事業に該当することのほか,この事業のために買取り等をした資産について提出する「不動産等の譲受けの対価の支払調書」の合計表には,必ず「税務署と事前協議済」と赤書きすることとの注意書きが記載されていた。また,確認書の裏面には,留意事項として,①買収資産が棚卸資産に該当する場合,②事業施行者以外の者が発行 調書」の合計表には,必ず「税務署と事前協議済」と赤書きすることとの注意書きが記載されていた。また,確認書の裏面には,留意事項として,①買収資産が棚卸資産に該当する場合,②事業施行者以外の者が発行する証明書が必要な場合にその証明書が発行されなかった場合,③最初の買取申出から6か月を経過した日までに買取り等がなされなかった場合等には本件特例の適用がないことが例示されていた。 千種税務署長が発行した確認書には,上記と同様に「不動産等の譲受けの対価の支払調書」の合計表に赤書きすることや,買収資産が棚卸資産に該当する場合に本件特例の適用がない旨が記載されていた。 (甲イ14号証,15号証,乙イ22号証,35号証,丙11号証,12号証,24号証,25号証,証人Mp10)エ参加人は,以上のような事前協議を経て,所有者から土地を買い取り,所有者に対し,本件特例の適用を受けるために必要とされる証明書として,①都市計画法53条1項の許可をしなかった旨の証明書,②公共事業用資- 56 -産の買取り等の申出証明書,③公共事業用資産の買取り等の証明書を発行して交付してきたが,上記②及び③の各証明書の欄外又は摘要欄には「事前協議済」と赤書きをしていた。 また,参加人は,不動産等の譲受けの対価の支払調書及びその合計表を作成し,所轄税務署に提出していた。 (甲ロ7号証,8号証,丙7号証の1ないし3,8号証の1ないし3,証人Mp12,13,証人O第12回口頭弁論p22)。 原告らは,名古屋市長から,上記①ないし③の各証明書の発行を受け,これを確定申告書に添付して確定申告をした(弁論の全趣旨)。 オ千種税務署の担当職員は,平成7年9月ころ,参加人による東山公園の土地の都計法56条1項の規定に基づく買取りに関し,地権者からの同法53条1項の規定に基づく建築許可申請が した(弁論の全趣旨)。 オ千種税務署の担当職員は,平成7年9月ころ,参加人による東山公園の土地の都計法56条1項の規定に基づく買取りに関し,地権者からの同法53条1項の規定に基づく建築許可申請が毎年夏ころに集中していること,事業予定地の指定は事業の実施予定がある地域として指定する(面指定方式)ものと考えられるところ,参加人では建築を不許可として買い取る予定の個々の土地を対象として指定している(点指定方式)ことに疑問を感じ,名古屋国税局資産税課に参加人の運用の適否を確認するよう要請した(乙イ36号証,37号証,証人O第11回口頭弁論p6以下)。 これを受けて同資産税課の審理係長(当時)のOが参加人の担当者から事情を確認したところ,同担当者から,いわゆる点指定方式や建築許可申請が夏期に集中する点については,土地を買い取るための予算措置の都合や地元住民とのトラブルを回避する必要に配慮しての運用であって,都計法上も違法ではないとの説明を受けた。また,Oは,建築許可申請書に添付されている建築図面を見せてもらったところ,それが非常に簡素なものであったことから,参加人において地権者が建築物を建築する意思を有しているか否かをどのように確認しているか疑問を感じ,その旨質問したところ,参加人の担当職員から,建築図面は地権者から提出されたものであ- 57 -り,地権者が建築する意図を有していることは確認可能であって,費用負担の関係上,地権者に建築業者が作成するような建築図面の提出まで求めることはできないとの説明を受けた。Oは,以上の結果を踏まえ,他の担当者と協議した上,千種税務署に対しては,現時点で参加人の運用が違法であるとはいえないので,証明書の発行できる事業として確認書を発行するよう指示した(乙イ36号証,37号証,丙16号証,証人Lp5,6,証 協議した上,千種税務署に対しては,現時点で参加人の運用が違法であるとはいえないので,証明書の発行できる事業として確認書を発行するよう指示した(乙イ36号証,37号証,丙16号証,証人Lp5,6,証人O第12回口頭弁論p3以下)。 カまた,千種税務署の事前協議の担当職員は,平成10年11月4日,参加人の担当職員に対し,猪高緑地の土地の買取りに係る事前協議に関し,当該事例の土地所有者が最近自宅を新築したばかりであり,更に猪高緑地内の土地に建築物を建築するはずがないとの疑問から,その買取り手続について説明を求めた。これに対して参加人の担当職員は,平成11年1月6日,地権者本人が建築許可申請書を提出し,これを不許可としたため買い取るものである旨を説明し,その旨を記載した書面を提出した。その後,千種税務署長から参加人に対し,建築許可申請が適正に行われた場合に限るとの発行条件を付記した確認書が送付された(丙12号証,13号証,証人Mp16)。 (2) 事前協議を経た上でなされた本件各処分は信義則に反し違法か否かについて原告らは,上記のとおり参加人が所轄税務署長と事前協議を行って本件特例が適用されることを確認し,また所轄税務署長から参加人にその旨の確認書が交付され,原告らは参加人から事前協議済みとの記載がなされた上記各証明書の交付を受け,本件特例の適用があるものと信頼して確定申告をしたものであり,被告熱田税務署長らが上記の事前協議や確認書を交付したことと相容れない本件各処分をしたのは信義則に反して違法である旨主張する。 ア信義誠実の原則は,法の一般的原理として行政上の法律関係にも適用さ- 58 -れるものと解して差し支えないが,納税者間の平等,公平が要請される租税法律関係の特質にかんがみると,信義則の適用によって課税処分が違法として取り消 原理として行政上の法律関係にも適用さ- 58 -れるものと解して差し支えないが,納税者間の平等,公平が要請される租税法律関係の特質にかんがみると,信義則の適用によって課税処分が違法として取り消されるのは,租税法規の適用における納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしても,なお当該課税処分に係る課税を免れさせて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえる特別の事情が存する場合に限られるというべきである(昭和62年最判参照)。 イ本件についてこれを検討してみると,既に判示したとおり,所轄税務署の担当者らは,参加人が,予め買取申出書を提出するなどして参加人への売却を予定し,したがって同土地について具体的な建築意思を有しない土地所有者から土地を買い取るため,形式的に建築許可申請書の提出を受けたり,その申請書に添付すべき建築図面も参加人において用意した複数の図面から,適当なものを添付して,それを複数の建築許可申請において使い回すなど,都計法56条1項の買取手続が本来予定しない実質的な任意売買の方法によって買取手続を進めていることについて,事前協議の場その他において参加人側から説明を受けておらず,その実体を把握していなかったと認められるから,所轄税務署長らが本件特例の適用に関する従前の取扱いの方針を変更したり,上記の事前協議やそれに基づく確認書を交付したのとは相容れない立場から本件各処分をしたものとは認められない。 なお,所轄税務署の担当者らは,参加人における公園用地の買取りが,いわゆる点指定の方法によっており,具体的な建築意思のない所有者からの買取りが行われているのではないかとの疑問を持ち,それを参加人の担当者に問い合わせた経過があることは上述したとおりであるが,参加人における都計法56条1項の買取手続が上記のとおり形骸化しており,同 の買取りが行われているのではないかとの疑問を持ち,それを参加人の担当者に問い合わせた経過があることは上述したとおりであるが,参加人における都計法56条1項の買取手続が上記のとおり形骸化しており,同法の予定する実質的内容と乖離するものになっている実態を把握し,認識するに至っていたとは認められない。 また,上記確認書は,所轄税務署長から事業施行者である参加人にあて- 59 -られたものであり,参加人に対し「不動産等の譲受けの対価の支払調書」の合計表に「事前協議済」と赤書きするよう依頼するものであって,参加人が地権者に発行する証明書に「事前協議済」と記載することを依頼したものとは解されない。そして,上記確認書(乙イ22号証)には,「各被買収者について特例の適用ができる旨を通知するものではありません」とも記載されており,これらの諸点に照らせば,確認書の参加人への交付や同書面の「事前協議済」との記載の依頼が,参加人から土地所有者に交付される上記証明書に記載されることを予定していたり,本件特例の適用について所轄税務署長らの納税者に対する何らかの公的見解を表明し,これを伝達する趣旨を含むものと解するのは困難というべきである。 ウ上述したところに照らしてみると,上記の事前協議がなされたことや確認書が参加人に交付されたことは,所轄税務署長らが行った本件各処分について信義則違反を問うべき特別の事情に当たるとはいえないから,原告らの上記主張は採用できない。 エまた,原告らは,原告らと同様の手続で参加人に土地を売却し,本件特例の適用を受けた他の地権者の中には,更正処分等を受けていない者がいるとして,本件各処分は租税平等原則に反する違法なものであるとも主張するが,課税庁が本件特例適用の可否について前提となるべき事実関係を把握した時期,内容いかんによって 更正処分等を受けていない者がいるとして,本件各処分は租税平等原則に反する違法なものであるとも主張するが,課税庁が本件特例適用の可否について前提となるべき事実関係を把握した時期,内容いかんによって,本件特例の適用を受けられない者が,誤ってその適用を受けた経過があるとしても,それを理由に,自己に対しても本来受けられない本件特例の適用をしないのは平等原則に違反する旨を主張するのが正当でないことは明らかであり,その適用をしなければ正義に反するということはできないから,原告らの上記の主張も採用できない。 以上に判示したとおり,本件各土地の参加人への売却の対価については本件特例は適用されないと解されるところ,これを前提として,原告らの所得税に- 60 -ついて計算すると(他の金額は,当事者間に争いのない確定申告のものを用いる。),別表3ないし11のとおりとなるから,これと同額の本件各更正処分はいずれも適法である。 また,本件各処分を巡る上述の諸点に照らして検討してみると,原告らに対して過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるともいえないから,国税通則法65条4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。したがって,原告らに対する各過少申告加算税賦課決定処分もいずれも適法というべきである。 第4結論よって,原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却し,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法61条,65条1項本文,66条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部中村直文裁判長裁判官前田郁勝裁判官片山博仁裁判官- 61 -(別紙)a町の物件目録(省略)b町の物件目録(省略)以上 郁勝裁判官片山博仁裁判官- 61 -(別紙)a町の物件目録(省略)b町の物件目録(省略)以上

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