令和3(ワ)21013 発信者情報開示請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年1月20日 東京地方裁判所
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令和4年1月20日判決言渡同日原本交付裁判所書記官令和3年(ワ)第21013号発信者情報開示請求事件口頭弁論終結日令和3年11月4日判決 原 告 X同訴訟代理人弁護士臼 坂 富士彦同森島崇行 被告ソフトバンク株式会社 同訴訟代理人弁護士金子和弘 主文 1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載1,2の各情報を開示せよ。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを10分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,原告が被告に対して,氏名不詳者がインターネット上の電子掲示板に原告が著作権を有する写真又は原告を被写体とする写真を含む記事を投稿したところ,各記事は原告の著作権(複製権及び公衆送信権)若しくは肖像権又はそ の両方を侵害しており,同各投稿はいずれも,被告の電気通信設備を経由して行 われており,原告が氏名不詳者に対して損害賠償を請求するためには,上記各投稿の発信者に係る情報が必要であるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき同投稿に係る発信者情報の開示を請求した事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠(明示しない限り枝番号を含 む。)及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)氏名不詳者(同一人物とは限らない。以下,各投稿に係 ある。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠(明示しない限り枝番号を含 む。)及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)氏名不詳者(同一人物とは限らない。以下,各投稿に係る投稿者を「本件投稿者」という。)は,インターネット上の電子掲示板「A」(URLは省略)において,別紙投稿記事目録記載の各投稿(以下,同目録記載1の投稿を「本件投稿1」などといい,全投稿を総称して「本件各投稿」という。)をした。各投 稿の内容は,それぞれ,別紙投稿記事内容目録記載のとおりである(本件投稿1が別紙投稿記事内容目録記載1に対応し,以下同様である。本件投稿1で投稿された写真を「本件写真1」といい,以下本件各投稿で投稿された写真について同じ(本件投稿4については,4枚の写真が投稿されており,左上の写真を「本件写真4-1」,右上の写真を「本件写真4-2」,左下の写真を「本件 写真4-3」,右下の写真を「本件写真4-4」といい,4枚の写真を総称して「本件写真4」という。本件写真1から4を総称して「本件各写真」という。)。 (甲3~5)本件各写真(ただし,本件写真4-3は除く。)は,いずれも原告のブログ又はインスタグラムに掲載された,構図,撮影アングル,露光などの点で工夫さ れた,撮影者の著作物である写真を複製したものである(以下,原告のブログ等に掲載された,本件各写真に対応する写真を本件各写真の番号に応じてそれぞれ「原告写真1」などという。)。本件投稿者は,本件各写真を電子掲示板に投稿することで,公衆送信用記録媒体に本件各写真の情報を蔵置して記録し,自動公衆送信し得るようにした。(甲6~8) 本件各投稿は,被告を経由プロバイダとして被告の電気通信設備を利用して 行われており,被告は,本件投稿者につ 真の情報を蔵置して記録し,自動公衆送信し得るようにした。(甲6~8) 本件各投稿は,被告を経由プロバイダとして被告の電気通信設備を利用して 行われており,被告は,本件投稿者につき,別紙発信者情報目録記載1,2の各情報を保有している。(争いなし) 3 争点に対する当事者の主張 本件投稿1(争点1)(原告の主張) ア著作権侵害原告写真1は,原告が自身の携帯電話で撮影して原告のブログに投稿していた写真である。仮に撮影者が原告でなかったとしても原告の携帯電話で撮影されているのであるから,著作権は原告に黙示的に移転している。 本件投稿1では,原告写真1が複製,公衆送信されており,原告の著作権 が侵害されていることは明らかである。 イ肖像権侵害本件投稿1は,原告の顔ないし容姿が写った本件写真1を掲載し,これに原告の容姿を嘲笑,揶揄する文言が付されたものである。 原告は,あくまで一般私人であり,その肖像を無断で使用されることを 受忍しなければならないような社会的地位にはない。原告は,第三者に写真の転載を許諾したことはない。本件投稿1は,原告を嘲笑する内容から始まるスレッドにおいて,本件写真1に原告を揶揄する文言を付して同スレッドに投稿されたものであり,肖像の使用につき,正当な目的も必要性もなく,原告に対する個人攻撃の手段として掲載されている。原告が原 告写真1を自らインターネット上に公開していたことを考慮しても,本件投稿1の態様での掲載に対してまで肖像権を放棄しているというべきではなく,社会生活上の受忍限度を超えるといえるから,原告の肖像権侵害は明白である。 (被告の主張) ア著作権侵害 原告写真1について,原告が撮影したことは明らかではないから ではなく,社会生活上の受忍限度を超えるといえるから,原告の肖像権侵害は明白である。 (被告の主張) ア著作権侵害 原告写真1について,原告が撮影したことは明らかではないから,原告が著作権を有することが明らかであるとはいえず,原告の複製権及び公衆送信権が侵害されたことが明らかであるとはいえない。 イ肖像権侵害本件写真1は,原告が自らブログにアップロードした原告写真1を複製し たものであり,原告がみだりに自己の容姿が撮影されたわけではなく,原告が不特定多数の者が閲覧することが予定されたSNSサイト上に同写真を公開したのであるから,これが用いられたことによって原告の肖像権が侵害されたことが明らかとはいえない。 本件投稿2(争点2) (原告の主張)原告写真2は,原告が自らのスマートフォンで撮影した写真である。本件投稿2では,原告写真2が複製,公衆送信されており,原告の著作権が侵害されていることは明らかである。 被告は引用の抗弁を主張するが,「Xさんも4℃の時代があったんだね ー。」という感想を述べるために原告のインスタグラムの記事を転載する必要はなく,また,感想が短文であり,原告の記事が十分な大きさをもっていることからすると,明らかに引用元が主であり,目的上正当な範囲での引用とはいえない。そもそも,本件投稿2は,単にスレッドにおける中傷活動を面白がって,原告への誹謗中傷投稿への新たな材料を投下することに目的があ り,引用制度によって保護すべき新たな表現活動とはいえない。 なお,ハッシュタグは,必ずしも拡散意図を示すものではない。 (被告の主張)原告写真2は,原告が自ら撮影したものであるか明らかではないから,原告が著作権を有することが明らかであるとはいえず,原告の複製 シュタグは,必ずしも拡散意図を示すものではない。 (被告の主張)原告写真2は,原告が自ら撮影したものであるか明らかではないから,原告が著作権を有することが明らかであるとはいえず,原告の複製権及び公衆 送信権が侵害されたことが明らかであるとはいえない。 また,本件投稿2では,原告写真2が掲載されている原告のインスタグラムの写真及び投稿記事をそのまま引用しており,引用部分の区分が明瞭であり,本件投稿2の投稿者が感想を述べるために同インスタグラムの内容をそのまま引用することは,目的上正当な範囲である。そして,本件投稿2には,「X‘」の投稿であること及び「久々三連♡」との原告の投稿部 分もそのまま表示されているから,出所は原告のインスタグラムであることが分かり,原告は同インスタグラムにおいてハッシュタグを付けて拡散を意図しており,転載を禁止していないことからしても,本件投稿2は著作権法上の「引用」に当たるといえる。 よって,本件投稿2が著作権を侵害することが明らかであるとはいえな い。 本件投稿3(争点3)(原告の主張)本件投稿3は,本件写真3を掲載した上で,原告の顔が三日月型であると嘲笑し,「鼻にいれてるのクッキリ」などと鼻を整形しているかのように 揶揄する内容であり,原告の肖像権を侵害している。 その他の事情については,イと同様である。 (被告の主張)イの主張と同様である。 本件投稿4(争点4) (原告の主張)ア著作権侵害原告写真4は,いずれの写真も原告が自らのスマートフォンを用いて撮影した写真である。本件投稿4では,原告写真4が複製,公衆送信されており,原告の著作権が侵害されていることは明らかである。 イ肖像権侵害 本 が自らのスマートフォンを用いて撮影した写真である。本件投稿4では,原告写真4が複製,公衆送信されており,原告の著作権が侵害されていることは明らかである。 イ肖像権侵害 本件投稿4は,「整形前に比べてマシになって」などと原告の容姿を揶揄する内容の何者かによるツイッター投稿のスクリーンショットを転載する投稿であり,原告の容姿を揶揄する投稿を拡散しこれに加担する投稿である。 その他の事情については,イと同様である。 (被告の主張)ア著作権侵害原告が自ら撮影したことは明らかではなく,原告の著作権を侵害したことが明らかであるとはいえない。 イ肖像権侵害 イの主張と同様である。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件投稿1)について甲8号証及び弁論の全趣旨によれば,原告写真1は原告によって撮影されたことが認められる。 よって,原告写真1の著作権は原告が保有していると認められ,著作権法上の権利制限事由の存在など著作権侵害の成立を阻却する事由の存在を基礎付ける事実も認められず,本件投稿1は,原告の複製権,公衆送信権を侵害することが明らかであると認められる。 2 争点2(本件投稿2)について 甲8号証及び弁論の全趣旨によれば,原告写真2は,原告によって撮影されたことが認められる。 続いて,著作権法32条1項所定の引用が成立するか否かについて検討する。 本件投稿2は,電子掲示板の「インスタX‘-2X‐21」というタイトルのスレッドの748番目の投稿である。 同スレッドの冒頭には, 「通称X“。実際は思いっきり芋くさい面長顔のそのへんにいる凡顔おばさん。 それをアプリで別人加工し盛れる自撮りが大好き。(顔に映る実像をどうやって脳内変換し 同スレッドの冒頭には, 「通称X“。実際は思いっきり芋くさい面長顔のそのへんにいる凡顔おばさん。 それをアプリで別人加工し盛れる自撮りが大好き。(顔に映る実像をどうやって脳内変換しているのか教えてくれw)主な収入源は詐欺ステマ。フォロワーを騙しても心痛むことなくブランド品を買い漁りたいがためにステマステマステマのオンパレード。(ステマをしないと エルメスもカルティエも買えません!)上品ぶっていても発言される内容は口が悪いし何様発言が多くてほんとイタイ・・・・・・・・・・・・・・・・突っ込みどころ満載なおもしろX“さんのファンスレをぜひ楽しんでw」 との記載があり,スレッド自体が原告の容姿を中傷,揶揄すること等を目的として設けられたものと認められ,実際に同スレッドでは,もっぱら原告の容姿への中傷,揶揄が投稿され,本件投稿2はその中で行われたことが認められる。本件投稿2は,原告がインスタグラムに投稿した原告写真2を複製して本件写真2として掲げ,その下に,「Xさんも4℃の時代があったんだねー」とのコメントを付 したものであり,本件投稿者が現在の原告のイメージに沿わないと考えて,原告を更に揶揄するために投稿したものであると認められる。 仮に上記コメントと合わせて批評の目的で原告写真2が引用されたととらえられたとしても,原告が特定のブランド品を使用していた時期があったという簡単なコメントのために他者が著作権を有する写真を利用する必要はなく,原告写 真2の利用が引用の目的上正当な範囲内で行われたものであるとは認められない。 よって,原告写真2の著作権は原告が保有していると認められ,著作権法32条1項所定の要件を満たす適法な引用も成立せず,他に著作権侵害の成立を阻却する事由の存在を基礎付ける るとは認められない。 よって,原告写真2の著作権は原告が保有していると認められ,著作権法32条1項所定の要件を満たす適法な引用も成立せず,他に著作権侵害の成立を阻却する事由の存在を基礎付ける事実も認められないから,本件投稿2は,原告の複 製権,公衆送信権を侵害することが明らかであると認められる。 3 争点3(本件投稿3)について人の肖像は,個人の人格の象徴であるから,当該個人は,人格権に由来するものとして,これをみだりに利用されない権利を有する。そして,当該個人の社会的地位・活動内容,利用に係る肖像が撮影等されるに至った経緯,肖像の利用の目的,態様,必要性等を総合考慮して,当該個人の人格的利益の侵害が社会生活 上受忍の限度を超える場合には,当該個人の肖像の利用は肖像権を侵害するものとして不法行為法上違法となると解される。 本件投稿3は,スレッドタイトル「インスタX‘-2 X‐22」に係る50番目の投稿である(甲5の1)。 同スレッドの冒頭には,本件投稿2についてのスレッドの冒頭と同一の文言が 掲載されており,本件投稿2のスレッドと同様に,スレッド自体が原告の容姿を中傷,揶揄することを目的として設けられたものと認められる(甲2の7。なお,スレッドのタイトルからすると,同様のスレッドが,他に少なくとも21個存在することがうかがえる。)。そして,実際に,同スレッドについての本件投稿3よりも前の投稿も,原告の容姿を中傷,揶揄する投稿が繰り返し行われている。本 件投稿3では,原告の横顔が三日月に似ている,鼻を整形していることが明らかであるとの内容の否定的なニュアンスのコメントを付した上で本件写真3を投稿しており,本件投稿3はもっぱら原告の容姿を揶揄するものであることが認められる。 そうすると, を整形していることが明らかであるとの内容の否定的なニュアンスのコメントを付した上で本件写真3を投稿しており,本件投稿3はもっぱら原告の容姿を揶揄するものであることが認められる。 そうすると,原告が多数のフォロワーを有するインスタグラマーであり,原告 自身が原告写真3を自身のインスタグラムに掲載し,インスタグラムにおいて同写真が広く一般に閲覧されることを想定し,許容していたことを考慮しても,上記のとおり,電子掲示板上のもっぱら原告を中傷し,揶揄することを目的とし,実際に原告の中傷と揶揄であふれているスレッドにおいて,その一環として自身の容姿が写っている本件写真3が掲載されることは,原告の社会生活上の受忍限 度を超えるものであると認めるのが相当である。 よって,本件投稿3は原告の肖像権を侵害することが明らかであると認められる。 4 争点4(本件投稿4)について証拠(甲7,8)及び弁論の全趣旨によれば,少なくとも原告写真4-1,4-2,4-4については,原告によって撮影されたことが認められる。 よって,少なくとも,原告写真4-1,4-2,4-4の著作権は原告が保有していると認められ,著作権法上の権利制限事由の存在など著作権侵害の成立を阻却する事由の存在を基礎付ける事実も認められず,本件投稿4は,原告の複製権,公衆送信権を侵害することが明らかであると認められる。 第4 結論 以上のとおりであって,本件投稿1から4は,いずれも原告の権利を侵害することが明らかであるといえ,被告が同投稿に係る別紙発信者情報目録記載1,2の各情報を保持していることも認められる。他方で,被告が別紙発信者情報目録記載3,4の各情報を保有していることを認めるに足りる証拠はない。よって,原告の請求のうち,別紙発信者情報 情報目録記載1,2の各情報を保持していることも認められる。他方で,被告が別紙発信者情報目録記載3,4の各情報を保有していることを認めるに足りる証拠はない。よって,原告の請求のうち,別紙発信者情報目録記載1,2の開示を請求する部分については認容し,その余はいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 主文 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官佐伯良子 裁判官仲田憲史 別紙発信者情報目録 別紙投稿記事目録記載のIPアドレスを同目録記載の接続日時(JST)に使用し,同目録記載の接続先IPアドレスに接続した契約者に関する以下の情報 1 氏名又は名称 2 住所 3 電話番号 4 メールアドレス以上 別紙投稿記事目録 (記載省略) (記載省略) (記載省略) (記載省略) 別紙投稿記事内容目録 (記載省略) 頭とがってるのは加工じゃないw (記載省略) Xさんも4℃の時代があったんだねー (記載省略) ☽そっくり。そして鼻に入れているのクッキリ (記載省略) 主文 そっくり。そして鼻に入れているのクッキリ。これ本当なら驚きー。

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