主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役2年6月及び罰金100万円に処する。 原審における未決勾留日数中300日をその懲役刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 山形地方検察庁で保管中の大麻(令和4年領第230号符号1、2、5ないし20、24、25、34ないし38、48、49、51、52、54ないし57、59-2、59-3及び338)並びに麻薬(同領第234号符号1及び2)を没収する。 理由 1 本件は、被告人が、①共犯者らと共謀の上、マンション室内において、営利の目的で大麻である植物片約796.043グラム及び大麻である液体約76.6グラム(以下「本件大麻液体」という。)を所持し(原判示第1の1)、②被告人方において、大麻である植物片約0.966グラム及び麻薬を含有する紙片約0.057グラムを所持した(原判示第1の2)とされる事案である。本件控訴の趣意は、弁護人寺島哲作成の控訴趣意書に記載されたとおりであり、論旨は、量刑不当であって、被告人を懲役2年6月及び罰金100万円に処した原判決の量刑は重過ぎて不当であり、懲役刑の執行を猶予するとともに、罰金刑を科さない、あるいは、減額すべきである、というのである。 2 論旨に対する判断に先立ち、職権をもって調査するに、原判決は、法令の適用の項をみると、原判決別紙番号2記載の大麻濃縮物(以下「本件大麻濃縮物」という。)及びその容器(カートリッジ及びガラス容器。以下、これらを併せて「本件容器」という。)について、原判示第1の1の本件大麻液体の従物として、大麻取締法24条の5第1項本文によりこれを没収しているが、その説示は、「別紙番 リッジ及びガラス容器。以下、これらを併せて「本件容器」という。)について、原判示第1の1の本件大麻液体の従物として、大麻取締法24条の5第1項本文によりこれを没収しているが、その説示は、「別紙番号2記載の山形地方検察庁で保管中の大麻濃縮物は、第1の1の罪に係る大 麻(大麻である液体)で犯人の所持するものであるから、大麻取締法24条の5第1項本文によりこれを没収する。なお、第1の1において摘示した大麻である液体の重量は鑑定により消費された分であり、この重量には別紙番号2記載の容器に残存している大麻濃縮物の重量を含まないが、第1の1において摘示した大麻である液体の従物として、その容器及び容器に残存している大麻濃縮物も併せて没収することとする。」というものである。 しかし、まず、原判示第1の1の本件大麻液体に係る公訴事実及び原判決が認定した罪となるべき事実は、本件大麻濃縮物の入った本件容器から鑑定の際に取り出された本件大麻液体の所持であって、本件大麻濃縮物の所持は犯罪事実とはされていない。この点について、検察官は、当審公判期日において、本件大麻濃縮物についても訴因を構成している旨の釈明をするが、「大麻を含有する液体約76.6グラム」との公訴事実の記載や、「大麻である液体約76.6グラム」との罪となるべき事実の記載からは、本件大麻液体(約76.6グラム)に加えて本件大麻濃縮物の所持が起訴されていると読み取ることはできないし、原審検察官が、原審第3回公判期日に行われた原判示第1の1の事実に係る冒頭陳述において、被告人3名が、ベッド上のレールチャック式ポリ袋、白色箱、テーブル上の「A」と記載されたレールチャック式アルミ袋、冷蔵庫の「70ml」などと記載されたビーカー内に大麻を含有する液体合計約76.6グラムを所持していたと主張し、論告に ック式ポリ袋、白色箱、テーブル上の「A」と記載されたレールチャック式アルミ袋、冷蔵庫の「70ml」などと記載されたビーカー内に大麻を含有する液体合計約76.6グラムを所持していたと主張し、論告において、被告人が密売拠点において所持していた大麻は、液体が約76.6グラム(鑑定時に採取し得た量)と主張していることからも、上記約76.6グラム以外の大麻(本件大麻濃縮物)について起訴したと理解することはできない。また、本件大麻液体は、既に鑑定のために全量消費されているから、これを没収することはありえない。 そして、鑑定のために採取されて分離された本件大麻液体と、もともとこれが入っていた本件容器内に残存している本件大麻濃縮物との間には、常用に供するために附属させられたとの関係はないのであるから、主物と従物の関係にあると はいえない。また、本件容器についてみると、原判決において没収が言い渡された本件容器内には、鑑定のために本件大麻液体を採取してもなお、容器内の大麻濃縮物は粘性が高く全てを取り除くことが困難だったことから(原審甲214)、それ自体の所持が犯罪を構成し得る程度の大麻濃縮物が相当量残存しているとうかがわれ、現にその大麻濃縮物の保管の用に供されているのであるから、本件容器が鑑定のために採取されて分離され、消費された本件大麻液体との関係で従物であるとして没収することもできないというべきである(したがって、本件容器を本件大麻液体の所持に係る犯行供用物件として没収するのであれば、容器内に残存している大麻濃縮物が取り除かれていることが前提となるし、没収の根拠条文も大麻取締法24条の5第1項本文ではなく、本件大麻液体の所持に係る犯行供用物件として刑法19条1項2号、2項によるべきである。さらに言えば、原判決の没収の主文の表示では、そもそも 、没収の根拠条文も大麻取締法24条の5第1項本文ではなく、本件大麻液体の所持に係る犯行供用物件として刑法19条1項2号、2項によるべきである。さらに言えば、原判決の没収の主文の表示では、そもそも本件容器が没収の対象とされていることが明示されているとはいえない(その意味で、法令の適用の項との間に理由齟齬がある。)。加えて、本件で罪となるべき事実を構成する本件大麻液体については没収の対象となっておらず、主物を没収しないにもかかわらず、主物の処分に従うとされる従物のみを没収することについても疑問がある。)。 そうすると、本件大麻濃縮物及び本件容器(法令の適用の項)を没収した原判決には、没収に関する法令の適用を誤った違法があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、全部破棄を免れない。なお、検察官は、当審において、原判示第1の1のうち、大麻を含有する液体に係る部分の公訴事実を「大麻を含有する液体約76.6グラム及び容器154個に付着した液体大麻若干量を所持した」とする旨の訴因変更請求をし、当裁判所はこれを許可したが、事実認定に影響を及ぼさない専ら付随処分に関する法令適用の誤り及び理由齟齬を理由として原判決を破棄する場合において、事後審である控訴審が、追加変更された訴因について審理、判断をすることはできないというべきであるから上記結論は左右されない。 3 そこで、刑事訴訟法397条1項、378条4号、380条により原判決を破棄し、同法400条ただし書を適用して、当裁判所において被告事件について更に判決する。 原審が認定した罪となるべき事実(ただし、原判示第1の1の事実中、「大麻である液体」は公訴事実のとおり「大麻を含有する液体」とするのが適切であった。)、原判決が掲げる法令(科刑上の一罪の処理、刑種の選択及び併合罪の となるべき事実(ただし、原判示第1の1の事実中、「大麻である液体」は公訴事実のとおり「大麻を含有する液体」とするのが適切であった。)、原判決が掲げる法令(科刑上の一罪の処理、刑種の選択及び併合罪の処理を含む。)を適用し、その処断刑期及び所定金額の範囲内で被告人を懲役2年6月及び罰金100万円に処し、刑法21条を適用して原審における未決勾留日数中300日をその懲役刑に算入し、その罰金を完納することができないときは、同法18条により金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置し、山形地方検察庁で保管中の大麻(令和4年領第230号符号1、2、5ないし20、24、25、34ないし38、48、49、51、52、54ないし57、59-2及び59-3)は、原判示第1の1の罪に係る大麻(大麻である植物片)で犯人の所持するものであり、同保管中の大麻(同領号符号338)は、原判示第1の2の罪に係る大麻で犯人の所有するものであるから、いずれも大麻取締法24条の5第1項本文により、同保管中の麻薬(同領第234号符号1及び2)は、原判示第1の2の罪に係る麻薬で犯人の所有するものであるから、麻薬及び向精神薬取締法69条の3第1項本文によりこれらを没収することとして、主文のとおり判決する。 量刑の理由について付言する。本件は、①共犯者らと共謀の上敢行した大麻の営利目的所持及び②自己使用目的での大麻及び麻薬所持からなる事案である。量刑判断の中心となる①の所持に係る大麻の量は、植物片約796グラム、液体約76グラムと多量であって、共犯者らとともにソーシャルネットワーキングサービスを通じた販売によって多額の利益を得る中での犯行で、被告人自身も月額30万円以上の報酬を得ており、安易な動機経緯に酌むべきところは見当たらない。 弁護人が主張するように、共犯者らと ワーキングサービスを通じた販売によって多額の利益を得る中での犯行で、被告人自身も月額30万円以上の報酬を得ており、安易な動機経緯に酌むべきところは見当たらない。 弁護人が主張するように、共犯者らとの関係では被告人がやや従属的な立場にあっ たことを踏まえてもその刑事責任は重く、自己使用目的での大麻及び麻薬所持の犯情も芳しくないのであって、前科がないことを考慮しても執行猶予を付することは相当でない。加えて、営利目的所持の犯行が経済的に見合わないことを知らしめるため、相応額の罰金刑も併科することが相当であり、その余の一般情状を考慮しても、上記刑は免れない。 (原審における求刑懲役5年及び罰金100万円並びに原判決と同旨の没収)令和6年1月30日仙台高等裁判所第1刑事部 裁判長裁判官渡英敬 裁判官梶直穂 裁判官鏡味薫
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