平成19(ワ)4864 損害賠償請求事件(通称 西日本電信電話定年制)

裁判年月日・裁判所
平成21年3月25日 大阪地方裁判所
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判決文本文38,168 文字)

主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告は,原告Aに対し,722万6138円及びこれに対する平成19年5月18日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 被告は,原告Bに対し,651万9092円及びこれに対する平成19年5月18日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 被告は,原告Cに対し,722万6138円及びこれに対する平成19年5月18日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 被告は,原告Dに対し,946万1514円及びこれに対する平成20年5月8日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 被告は,原告Eに対し,946万1514円及びこれに対する平成20年5月8日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 被告は,原告Fに対し,946万1514円及びこれに対する平成20年5月8日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 被告は,原告Gに対し,946万1514円及びこれに対する平成20年5月8日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2事案の概要等 事案の概要本件は,被告に雇用されていた原告らが,被告において定年とされていた60歳を迎え,退職することになったところ,被告が高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年雇用安定法」という。)9条1項に基づいて原告らについて,定年後の継続的雇用を確保すべき義務を負っていたにも関わらず,同義務に違反して何らの措置も採らなかったうえ,被告の合理化政策に反対し たH労組の組合員でもある原告らを報復的意図をもって定年退職させた等として,被告に対し,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求として,原告らが継続勤務(甲事件 うえ,被告の合理化政策に反対し たH労組の組合員でもある原告らを報復的意図をもって定年退職させた等として,被告に対し,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求として,原告らが継続勤務(甲事件原告らは63歳まで,乙事件原告らは64歳まで)したとすると,各原告らが得られたであろう賃金相当額及び各弁護士費用50万円並びに各遅延損害金の支払を求める事案である。 前提事実(ただし,文章の末尾等に証拠等を掲げた部分は証拠等によって認定した事実,その余は当事者間に争いのない事実)(1)当事者アW公社は,昭和60年4月1日,N株式会社等に関する法律(以下「N株式会社法」という。)に基づき民営化され,N株式会社が設立された。 その後,組織の再編が行われ,持株会社であるN株式会社が発足したが,N株式会社法の一部を改正する法律(平成11年法律第98号)により分割再編成され,西日本地域(関西,東海,北陸,中国,四国,九州,沖縄地区)の地域通信事業等を承継する株式会社として同年7月1日,同会社から独立した態様で被告が設立された。 なお,N株式会社は,同分割再編成により自らは事業を行わないで,被告を含む地域会社の保有する株式総数を保有し,地域会社による適切かつ安定的な電気通信役務の提供を確保する等の純粋持株会社として存続することとなった。 イ原告らは,いずれも公社に採用され,その後,N株式会社を経て,被告の従業員となった者である。 なお,被告の従業員で労働組合員となりうる者の約99%は,I労組に所属しているが,原告らは,少数派組合であるH労組に所属している。 (2)被告(前身時代を含む。)における定年制度とキャリアスタッフ制度についてアN株式会社は,平成4年4月1日,60歳定年制を導入した。 イN株式会社は,平成10年12月25日,公的年 。 (2)被告(前身時代を含む。)における定年制度とキャリアスタッフ制度についてアN株式会社は,平成4年4月1日,60歳定年制を導入した。 イN株式会社は,平成10年12月25日,公的年金制度の改正により定年と年金受給年齢とのギャップが生じたこと,少子高齢化社会の到来による退職者の増加に対応して有スキル者の確保の要請及び高年齢者の雇用確保の要請に応えるべく,キャリアスタッフ就業規則を制定し,定年退職する従業員に対する再雇用制度(後記のキャリアスタッフ制度と同様のもの)を創設し,平成11年4月1日から導入した。 ウ被告は,平成11年7月1日,設立されたところ,その就業規則において,定年を満60歳,定年退職日を定年に達した日以後の最初の3月31日とした上で,キャリアスタッフ就業規則を定めて被告を定年退職した者又は被告から転籍し,転籍先で定年退職した者を以下の(ア),(イ)の条件で定年退職後に期間を定めて被告に雇用する制度(以下「キャリアスタッフ制度」という。)を引き続き導入した。 (ア)雇用期間雇用期間は毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間とし,当該雇用期間は,被告の業務上の必要性及び本人の希望により,後記(イ)の雇用終了日に至るまで更新することができる。 なお,選考は,再雇用対象者のうち,会社の指定する業務,勤務場所において勤務可能で,健康に問題がないと認められる者から選考する。 また,一雇用期間の欠勤日数が一定の日数を超えたとき並びに健康状態に問題があると認められたときは更新されない。 (イ)雇用終了日定年退職後に被告に雇用される者(キャリアスタッフ)の雇用終了年齢は,次の①ないし④の区分に応じて当該各区分に定める年齢とし,雇用終了日は,雇用終了年齢に達した日以後の最初の3月31日とする。 a)昭和16年4月1 雇用される者(キャリアスタッフ)の雇用終了年齢は,次の①ないし④の区分に応じて当該各区分に定める年齢とし,雇用終了日は,雇用終了年齢に達した日以後の最初の3月31日とする。 a)昭和16年4月1日以前生まれの者満62歳b)昭和16年4月2日から昭和18年4月1日生まれの者満63歳 c)昭和18年4月2日から昭和20年4月1日生まれの者満64歳d)昭和20年4月2日以後生まれの者満65歳(証拠略)(3)事業構造の変更についてア被告は,設立以降,経営状況の改善に取り組んできたところ,平成13年4月,N株式会社が発表した「N株式会社グループ3ヵ年計画」を踏まえ,事業改革案として「雇用形態の多様化」を発表し,事業構造を変更(「営業系地域会社」,「設備系地域会社」及び「共通系地域会社」とする複数の会社〔以下,同各地域会社を総称して「地域会社」という。〕を設立し,被告の業務の相当部分を地域会社に業務委託する。)することとした。 イ被告は,同年10月末ころ,I労組との間で上記「雇用形態の多様化」を踏まえた構造改革案について合意した。 ウそこで,被告は,同事業構造の変更方針に従って平成14年5月ころまでに,株式会社J,株式会社K(両会社は被告が全額出資して設立した会社である。),株式会社L(同社はN株式会社が全額出資して設立した会社である。)とともに全額を出資して各地に地域会社を設立し,業務委託を実施した。 (証拠略)(4)被告の雇用形態等選択制度とキャリアスタッフ制度の廃止について被告は,平成14年1月4日,上記(3)の事業構造の変更に伴い,被告における雇用形態及び処遇体系等につき,平成15年3月31日の時点において51歳以上となる社員等(対象者)に対して選択時期を同年1月4日から同月31日までとして,以下のア, 業構造の変更に伴い,被告における雇用形態及び処遇体系等につき,平成15年3月31日の時点において51歳以上となる社員等(対象者)に対して選択時期を同年1月4日から同月31日までとして,以下のア,イの内容を含む制度(以下「本件制度」という。)に基づいてその選択を求めた。その際,被告において,原告らに特定の選択肢を強制したり,選択しないよう強制させたような事情はなかった。 なお,本件制度は,I労組と合意の上,実施された。 本件制度は,キャリアスタッフ制度の枠組みを基本としたものであり,その後,主に各年度末(毎年各3月31日)の時点で50歳となる者等を対象とし,その間に一時金型が廃止される等の変更が行われたものの,現在まで存続している。他方,キャリアスタッフ制度は,その主な業務であった定型的・反復的業務のほとんどが地域会社へ移管されたことを受けて,平成14年4月30日をもって廃止された。 ア雇用形態及び処遇体系等の通知(ア)平成15年3月31日の時点において51歳以上である者は,平成14年1月4日から同月31日までの間に,後記イの雇用形態及び処遇体系等を選択し,被告が定める者に対し,通知しなければならない。 (イ)平成15年3月31日の時点において51歳以上である者が後記イの雇用形態及び処遇体系等を選択及び通知しない場合は,後記イ(ウ)の60歳満了型を選択したものとみなす。 イ選択する雇用形態及び処遇体系等(ア)繰延型a)平成15年3月31日の時点において51歳以上である者が平成14年4月30日に被告を退職し,同年5月1日に地域会社に再雇用され,60歳定年制により60歳まで勤務した後,61歳以降は最長65歳までキャリアスタッフ制度と同様の枠組み(更新を含む。)で,契約社員として地域会社に再雇用される。勤務地が一定の府・県内 に再雇用され,60歳定年制により60歳まで勤務した後,61歳以降は最長65歳までキャリアスタッフ制度と同様の枠組み(更新を含む。)で,契約社員として地域会社に再雇用される。勤務地が一定の府・県内に限定され,労働者は,その範囲内で勤務地を選択できる。 b)所定内給与が20%ないし30%低下するが,激変緩和措置として,地域会社における退職手当及び(61歳以降の)契約社員期間において給与加算を行い,雇用保険等,公的給付や企業年金の支給との組み合わせを行う。 (イ)一時金型雇用形態としては上記(ア)a)と同様であるが,所定内給与が20%ないし30%低下することに対する激変緩和措置については,地域会社における退職手当及び平成14年4月30日の被告退職時に一時金(給与減額分×60歳までの残年数の約半額)として支給する。 (ウ)60歳満了型a)被告の本社及び支店において当該本社及び支店の業務に従事し,又は地域会社以外の被告の関連会社に出向し,60歳まで勤務する。 なお,キャリアスタッフ制度が廃止されるため,60歳を超えた再雇用はなくなる。 b)被告の就業規則に基づく転用・配置換え等又は出向により,市場性の高い地域を中心として,勤務地を問わず(全国への広域配転)成果業績に応じて高い収入を得る機会を追求する意欲を持った者に応える。 なお,勤務地は,府・県内に限定されないが,この点は,従来,全社員が業務上の必要性に基づき対象とされていた。 (証拠等略)(5)再選択の機会について被告は,業務運営体制が平成18年7月に「N株式会社西日本グループの新たな業務運営体制」となることに伴い,支店機能が地域会社へ大幅に移行する等,事業環境が著しく変化することを踏まえて,以下のア記載の対象者に対してこれに先立つ同年1月16日から同年2月10日までの間 新たな業務運営体制」となることに伴い,支店機能が地域会社へ大幅に移行する等,事業環境が著しく変化することを踏まえて,以下のア記載の対象者に対してこれに先立つ同年1月16日から同年2月10日までの間,以下のイ,ウの内容により雇用形態及び処遇体系等の再選択の機会を設けた。その際,被告において,原告らに特定の選択肢を強制したり,選択しないよう強制させたような事情はなかった。 ア対象者平成14年1月31日までの間に既に本件制度に定める上記(4)イ(ウ)の 60歳満了型を選択及び通知している者(本件制度に定める上記(4)ア(イ)に基づき60歳満了型を選択したとみなされた者を含む。)で,平成17年3月31日の時点において51歳以上59歳以下の者イ雇用形態及び処遇体系等の選択・通知等(ア)上記アの対象者は,平成18年2月10日までの間に,後記ウの雇用形態及び処遇体系等を選択し,被告が定める者に対し,通知しなければならない。 (イ)上記アの対象者が後記ウの雇用形態及び処遇体系等の選択及び通知しない場合は,後記ウ(イ)の60歳満了型を選択したものとみなす。 ウ選択する雇用形態及び処遇体系等(ア)退職・再雇用型a)上記アの対象者が,被告を退職し,地域会社に再雇用され,60歳定年制により60歳まで勤務した後,契約社員として地域会社に再雇用され,65歳までの雇用を実現する。 b)勤務地が府・県内に限定される一方で,所定内給与が20%ないし30%低下するが,地域会社における退職手当及び雇用保険等,公的給付や企業年金の支給の組み合わせにより対応する。なお,激変緩和措置は設定しない。 (イ)60歳満了型上記(4)イ(ウ)と同旨(証拠等略)(6)原告らの選択状況及び退職扱いについてア被告は,原告らに対し,平成14年4月,構造改革に伴 。なお,激変緩和措置は設定しない。 (イ)60歳満了型上記(4)イ(ウ)と同旨(証拠等略)(6)原告らの選択状況及び退職扱いについてア被告は,原告らに対し,平成14年4月,構造改革に伴ってキャリアスタッフ制度が廃止になること,60歳満了型を選択すれば,同制度が廃止されるため,60歳を超えての雇用がなくなることについて説明をした。 さらに,被告は,平成18年の雇用形態及び処遇体系等の再選択の際, 原告らの所属するH労組に上記(5)で認定した再選択の内容について説明をした。 原告らは,上記いずれの機会においても,いずれの雇用形態を選択するか,明示的に被告に通知をしなかったため,上記(4)ア(イ)及び(5)イ(イ)にしたがって被告から60歳満了型を選択したとみなされた。 イ原告Aは,平成19年2月11日,原告Bは,平成18年7月2日,原告Cは,同年9月28日,それぞれ満60歳に達し,平成19年3月31日の経過をもって,被告を定年退職したものと扱われた。 また,原告Dは,同年11月29日,原告Eは,同年9月10日,原告Fは,同年4月22日,原告Gは,同年7月31日,それぞれ満60歳に達し,平成20年3月31日の経過をもって,被告を定年退職したものと扱われた。 (証拠等略)(7)高年雇用安定法の改正について高年雇用安定法は,平成16年法律第103号(同年6月11日公布)によって改正され(以下「本件改正」という。),同改正後の高年雇用安定法9条(以下,高年雇用安定法というときは特に断らない限り同改正後のものをいう。)は,平成18年4月1日施行された。 高年雇用安定法9条1項は,65歳未満の定年の定めをしている事業主が,その雇用する高年齢者(55歳以上の者〔同法2条1項,同法施行規則1条〕)の65歳(ただし,同法附則4条1項により 日施行された。 高年雇用安定法9条1項は,65歳未満の定年の定めをしている事業主が,その雇用する高年齢者(55歳以上の者〔同法2条1項,同法施行規則1条〕)の65歳(ただし,同法附則4条1項により段階的な施行が定められているため,平成18年4月1日から平成19年3月31日までの間は62歳,平成19年4月1日から平成22年3月31日までの間は63歳,平成22年4月1日から平成25年3月31日までは64歳)までの安定した雇用を確保するため,次のアないしウの措置のいずれかを講じなければならない旨定めている。 ア当該定年の引上げイ継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度)の導入ウ当該定年の定めの廃止(証拠等略)(8)厚生年金の支給開始年齢の引き上げについて厚生年金の支給開始年齢について,平成6年11月9日号外法律第95号による厚生年金保険法の改正により,平成13年以降,老齢厚生年金の支給開始年齢が60歳から65歳まで段階的に引き上げることとされた(乙25)。 (9)高年雇用安定法9条1項1号及び3号の措置について被告は,高年雇用安定法9条1項1号及び3号に該当する定年の引上げ及び定年の廃止の各措置を実施していない。 (10)被告による高年雇用安定法の説明について被告は,本件制度について,高年雇用安定法と直接関連づけて上記(4)(5)の各選択時も含めて原告らに説明をしたことがない。 (11)原告らの雇用継続の求め平成19年3月23日,甲事件原告らは,被告に対し,キャリアスタッフ制度と同条件による雇用の継続を求めたが,被告は,同月31日をもって,原告らを定年退職したものとして,その後における雇用継続の措置をとっていない。 争点 (1)高年雇用安定法9条の アスタッフ制度と同条件による雇用の継続を求めたが,被告は,同月31日をもって,原告らを定年退職したものとして,その後における雇用継続の措置をとっていない。 争点 (1)高年雇用安定法9条の私法的効力について(争点1)(2)被告が高年雇用安定法9条1項2号の措置を採っているといえるか(本件制度が高年雇用安定法9条1項2号の「継続雇用制度」に合致するか否か)(争点2)(3)被告が原告らを定年による退職扱いとし,その後の継続雇用措置をとらな いことが債務不履行ないし不法行為に該当するか否か(争点3)(4)原告らの損害の有無・内容について(争点4) 争点に対する当事者の主張(1)高年雇用安定法9条の私法的効力について(争点1)(原告)高年雇用安定法9条には以下のとおり私法的効力があり,したがって,事業主と労働者間の法律関係について,事業主に私法上の義務を課すものである。 ア高年雇用安定法9条の趣旨等高年雇用安定法9条の趣旨は,公的老齢年金の支給開始年齢の引上げに伴い雇用生活と年金生活の間に空白期間が生じないようにするとともに,高年齢者の豊富な職業経験や知識を生かすため高年齢者が現に雇用されている企業において継続して働き続けることを可能とする環境を創出するべく,労働者側との合意の上で何らかの延長制度を認めた場合(同条2項)でない限り,労働者から雇用継続の意思表示があれば使用者は雇用を延長しなければならないということにある。 イ高年雇用安定法9条の私法的強行性このような趣旨で規定された高年雇用安定法9条は,以下の理由から公法上の義務として事業主に同条に定めたしかるべき措置を義務づけただけでなく,私法的強行性,具体的には事業主と労働者との間の雇用契約関係においても同条に従ったしかるべき措置をとるべきことを義務づけ 公法上の義務として事業主に同条に定めたしかるべき措置を義務づけただけでなく,私法的強行性,具体的には事業主と労働者との間の雇用契約関係においても同条に従ったしかるべき措置をとるべきことを義務づけたものというべきであって,事業主が同条に定める定年の引上げか,当該定年の定めの廃止をとらなかった場合には事業主において労働者らの定年後の雇用をその希望に従い,継続雇用を確保すべき義務を負うことを明らかにしたものである。 (ア)同条1項で定める義務内容は明確であり,事業主に具体的な作為・ 不作為を命じていること(イ)同条1項は,公的老齢年金の支給開始時期と企業の退職時期との間に空白時期を生じさせないという趣旨に基づくもので,労働者の生存権を保障するものであって,憲法27条2項の要請を受けたものであること(ウ)高年雇用安定法の改正経緯,具体的には,65歳までの再雇用を事業主の努力義務とする規定がおかれて以来,10年以上を掛けて,次第に強化,拡充されながら依然として事業主の努力義務とされてきたところ,本件改正により,同条1項において高年齢者雇用確保措置として3つの措置の「いずれかを講じなければならない」として事業主の努力義務から義務規定への変更が行われたことウ高年雇用安定法9条による事業主の義務事業主は,高年雇用安定法9条の私法的強行性に基づいて,同条項に違反した場合には債務不履行及び不法行為上の責任を負うというべきである。 (被告)高年雇用安定法9条は,以下のとおり私法的効力がなく,したがって,事業主と労働者間の法律関係について,事業主に私法上の義務を課すものではない。 ア法が事業主に具体的な作為・不作為を命じている場合においても,そのことから直ちに事業主と労働者間において,私法的効力を認めるとするには論理の飛躍がある。 主に私法上の義務を課すものではない。 ア法が事業主に具体的な作為・不作為を命じている場合においても,そのことから直ちに事業主と労働者間において,私法的効力を認めるとするには論理の飛躍がある。 イ高年雇用安定法9条1項2号が定める高年齢者雇用確保措置たる継続雇用制度の具体的内容は何ら一義的に定まるものではなく,同法が事業主に求めている具体的な作為内容は一義的に定まっていない。 ウそもそも高年雇用安定法は,事業主のみならず国や地方公共団体も名宛人として,種々の施策を要求しており,事業主と個別労働者との関係を前 提とする規定も努力義務規定が多い(15条,19条等)ほか,義務規定に反した場合にも罰則の制裁はなく,違反した場合の私法上の効果についても定めを置かず,厚生労働大臣による指導,助言及び勧告による緩やかな履行確保措置のみが規定されているに過ぎない。以上のことからして,高年雇用安定法は憲法27条2項ではなく,同条1項に由来する労働市場の法に属する公法的性格の法と解すべきである。 エ個々の使用者及び労働者間の労働条件の最低基準を画することを目的とした労働基準法(以下「労基法」という。)でさえ,同法違反の場合の私法的効力については,明文を定め,その場合の契約の効力や無効となった場合の補充的効力を規定しているところ,高年雇用安定法には私法的効力に関する規定がなく,同法違反の場合に私法的効力を認める明文規定も補充的効力に関する規定も存しないのであるから,同法違反に対して,私法的強行性を付与するものでないことは明らかである。 なお,公法的措置が十分でないから,私法的効力が認められるというのは論理が逆転している。 (2)被告が高年雇用安定法9条1項2号の措置を採っているといえるか(本件制度が同条1項2号の「継続雇用制度」に合致するか否か 十分でないから,私法的効力が認められるというのは論理が逆転している。 (2)被告が高年雇用安定法9条1項2号の措置を採っているといえるか(本件制度が同条1項2号の「継続雇用制度」に合致するか否か)(争点2)(原告)被告は,以下のとおり高年雇用安定法9条1項に則った雇用継続措置をとっていない。 ア被告の雇用形態選択制度(本件制度)について被告は,定年の引上げ(高年雇用安定法9条1項1号),定年の定めの廃止(同項3号)を行っていないところ,本件制度は,以下のとおりその内容等に照らし,同項2号で定める継続雇用制度に当たらない。したがって,被告は,同条1項各号のいずれの措置も採っていないといわなければならない。 (ア)本件制度の目的及び同制度が同条とは無関係であること50歳を超える従業員が本件制度の下で65歳までの就労が可能となるのはa)繰延型,b)一時金型を選択し,被告を退職して地域会社で再雇用を受けるという転籍のみしか選択肢がない。同制度は,従業員の雇用確保というより,高年雇用安定法とは無関係に50歳を超える従業員を自社から他社へ放逐する手段として導入されたと見ざるを得ず,被告の事業構造変更(合理化)の一環として,被告における50歳を超える従業員の排除すなわち人件費コストの引下げを目的として行われたものである。同制度は同条とは関係がなく,かえって,高年齢者の安定した雇用の創設という同条の趣旨に反する内容となっている。 (イ)転籍が同条1項2号が定める継続雇用制度にあたらないこと本件制度で採用している労働者の地域会社での再雇用は,労働者を一旦被告から退職させた上で行われるもので,転籍に当たる。 ところで,同号が予定する継続雇用制度は,「現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する 労働者を一旦被告から退職させた上で行われるもので,転籍に当たる。 ところで,同号が予定する継続雇用制度は,「現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」と定義されており,「定年後も引き続いて雇用する」との文言からすると,定年に到達した労働者を子会社等に転籍させることは,従前の会社との間で雇用関係がなくなることから,同号が予定する継続雇用制度には該当しないというべきである。 また,高年雇用安定法の立法過程や同法の構造からすると,同号は,他社での再雇用を継続雇用に含めて考えていないことが推測される。このことは,平成11年に策定された「第9次雇用対策基本計画」において,「65歳定年制の普及を目指しつつ」も,当面は,「再雇用による継続雇用,あるいは,他企業への再就職という方策も視野に入れておく必要がある」とされており,転職を含む「他企業への再就職」という概念が「継続雇用」と区別して使用されていることからも明らかであり, 同法4条が,事業主に対し,雇用する高年齢者等の再就職を援助する旨の努力義務を課しており,転籍が実質的にみて別会社への再就職を意味することからしても明らかである。 したがって,本件制度は,転籍であるという点からも,同法9条1項2号が定める継続雇用制度には該当しない。 (ウ)本件制度の不合理性について本件制度は,以下のとおり労働者にとって,選択することが実質的に極めて困難な労働条件を提示するものであって,合理的な範囲を逸脱する内容となっている。 本件制度において,労働者が60歳を超えて雇用されることを希望する場合には,繰延型又は一時金型を選択した上で,20%ないし30%の賃金の低下を甘受しなければならず,かかる賃金の低下が生活に及ぼす影響は深刻である。 しかも,繰延型又は一 て雇用されることを希望する場合には,繰延型又は一時金型を選択した上で,20%ないし30%の賃金の低下を甘受しなければならず,かかる賃金の低下が生活に及ぼす影響は深刻である。 しかも,繰延型又は一時金型を選択して60歳を超える年齢まで就労したとしても,その場合における所得金額が60歳満了型を選択した場合に比べて,格段に低くなるという事態も想定される。 以上のような本件制度内容は,労働者に継続雇用制度を選択させないという合理的な範囲を逸脱したものとなっている。 また,本件制度は,労働者が地域会社に再雇用され,60歳定年制により地域会社に60歳まで勤務した後,契約期間1年間の契約社員として再雇用され,以後,65歳まで更新するという制度であるところ,かかる再雇用は,転籍先での継続雇用であり,労働者が希望すれば61歳以降も必ず更新される制度とはなっておらず,同条1項2号が定める継続雇用制度の趣旨に合致しているとは言い難い。 本件制度は,以上のような点からも,同号が定める継続雇用制度に該当しない。 イ雇用形態選択の機会の提供をもって高年雇用安定法に適合しているといえないことについて(ア)本件制度に基づく雇用形態選択の機会を提供することの意味本件制度は,上記のとおり高年雇用安定法9条1項2号が定める継続雇用制度には該当しないのであるから,本件制度に基づき雇用形態選択の機会の提供をしたからといって同号に適合する措置をとったとはいえない。 (イ)同号に関連した説明のないことと本件制度の継続雇用制度該当性本件制度は,上記ア(ア)記載のとおり被告の事業構造変更の一環として創設されたものであり,高年雇用安定法を念頭においたものではなかった。そのため,本件制度が同号が定める継続雇用制度に該当するというためには,少なくとも被告が原告らに対し同号と 業構造変更の一環として創設されたものであり,高年雇用安定法を念頭においたものではなかった。そのため,本件制度が同号が定める継続雇用制度に該当するというためには,少なくとも被告が原告らに対し同号との関連性について説明した上で,本件制度が同号に従った制度であること及び60歳満了型(みなされた場合を含む。)を選択した場合の効果を十分説明する必要があった。 しかし,原告らは,被告から,本件制度に基づいて選択を求められた際を含めて本件制度について同号との関連性ないしそれを前提とした説明は一度も受けていない。本件制度は,この点においても,同号で定める継続雇用制度に該当しない。 (ウ)本件制度に対する再選択の実施と本件制度の継続雇用制度該当性被告は,本件改正による高年雇用安定法が施行される前の平成18年1月16日から同年2月10日までの間に,第2回目の雇用形態及び処遇体系等の再選択を実施したが,上記(イ)記載のとおり原告らに対して,同制度について,同号との関連性ないしそれを前提とした説明をしていない。 そのため,原告らを含めて被告の労働者は,本件改正に伴う高年雇用安定法の施行までに,あるいは遅くとも原告らの定年までに同号に則った制度が作られるだろうと通常考えた。したがって,原告らに上記雇用形態選択の機会が与えられたとしても,その時点では同号を踏まえた選択のしようがなく,自己の意思に基づいて同条項に定める雇用継続の利益を放棄したとはいえないし,被告がその義務を履行していたともいえない。 また,本件改正による同法施行後においても,原告らに雇用形態等を選択する機会を与えておらず,本件制度は,こうした運用方法の点においても,同号で定める継続雇用制度には該当しない。 結局,原告らは,一度も継続雇用の機会を与えられることなく,定年退職させられて 等を選択する機会を与えておらず,本件制度は,こうした運用方法の点においても,同号で定める継続雇用制度には該当しない。 結局,原告らは,一度も継続雇用の機会を与えられることなく,定年退職させられてしまった。 (エ)厚労省Q&A等の記載ないし同記載と本件制度との関係について厚生労働省(以下「厚労省」という。)等作成の「改正高年齢者雇用安定法パンフレット」(乙12)及び厚労省のホームページ等に掲載されている改正高年齢者雇用安定法Q&A(以下,合わせて「厚労省Q&A等」という。)には,緊密性(子会社との間に密接な関係があること)及び明確性(子会社において継続雇用を行うことが担保されていること)という基準を満たしていれば,同法9条1項2号で定める継続雇用制度に当たる旨記載している。 しかし,厚労省Q&A等は,一行政庁たる厚労省等の見解を示したものに過ぎず,裁判規範ではないし,そもそも高年雇用安定法の有権的な解釈でもなく,何らの法的拘束力もない。同見解は,転籍を継続雇用制度として容認している点で,高年雇用安定法の構造や同法9条の文言に十分留意したものとはいえず,正しい解釈ではない。 仮に厚労省Q&A等の記載に従うとしても,本件制度は,そこで示さ れた緊密性及び明確性を満たしていない。現在,地域会社は,今後,N株式会社から自立していくことが重要な課題とされている。さらに,被告は,原告らに対し,高年雇用安定法の改正後に被告の雇用形態選択制度がどのような意味や効果を持つかについて十分な説明や判断資料を提供することなく原告らに選択させたものであった。少なくとも,本件制度は,厚労省基準にも合致していない。 (被告)被告は,以下のとおり高年雇用安定法9条1項で定める雇用継続措置をとっている。 ア本件制度について(ア)転籍について本件制度は, くとも,本件制度は,厚労省基準にも合致していない。 (被告)被告は,以下のとおり高年雇用安定法9条1項で定める雇用継続措置をとっている。 ア本件制度について(ア)転籍について本件制度は,地域会社への転籍を前提とするものであるところ,転籍による雇用確保も高年雇用安定法9条1項2号で定める「継続雇用制度」に適合する。 a)同号は,同号で定める継続雇用制度の具体的内容を明らかにしておらず,同制度における雇用の主体についても,当該高年齢者が勤めていた会社に限定していない(一定の要件をみたす場合,雇用されていた企業以外の企業に雇用される場合も該当しうる。)。このことは,本件改正の際,法案を担当した厚労省等の見解からも明らかである。 b)高年雇用安定法が同一企業での継続雇用のみならず,同一企業グループも含んだ広い範囲での継続雇用制度の実現を図っていることは,昭和63年6月17日に閣議決定された第六次雇用対策基本計画以降の立法過程において,一貫して同一企業と同一企業グループが並列的に並べられていることから容易に判断しうる。また,本件制度の下において繰延型及び一時金型を選択した者は被告を退職して地域会社に再雇用されるところ,元の企業の意向を受けて,元の企業と一定の関 係のある企業へ移籍する転籍の場合と,何らの関係のない企業への再就職の場合と同列で判断することは相当でない。 したがって,仮に同法4条の「再就職」という概念に転籍が含まれるとしても,転籍を前提とする雇用確保措置が直ちに同法9条1項2号で定める継続雇用制度に該当しないということにはならない。 (イ)本件制度が同号で定める継続雇用制度に合致すること本件制度は,以下のことからしても高年雇用安定法9条の趣旨に合致し,同条1項2号の継続雇用制度に該当している。 a)同条の趣旨は ならない。 (イ)本件制度が同号で定める継続雇用制度に合致すること本件制度は,以下のことからしても高年雇用安定法9条の趣旨に合致し,同条1項2号の継続雇用制度に該当している。 a)同条の趣旨は,企業の実情に応じた継続雇用制度を許容し,労使間での合意を尊重する点にあり,同法に合致した制度か否かの判断は,高齢者のための雇用確保機能の有無等によるべきである。 b)被告は,極めて厳しい経営状況のため,事業構造そのものを大きく転換させる必要があったところ,本件制度は,平成14年5月当時,努力義務を定めた高年齢者雇用確保措置を先取りし,かつ,被告の従業員の約99%で組織されるI労組との合意に基づいて導入されたものである。 c)本件制度は,被告と資本関係等の密接な関係を有する地域会社において,キャリアスタッフ制度と同様の枠組みで被告に雇用されていた者が希望すれば,地域会社において原則として65歳まで雇用されるという仕組みを導入したものであって,「高年齢者が希望すれば,65歳まで安定した雇用が確保される仕組みであれば,継続雇用制度を導入していると解釈される。」,「高年齢者が雇用されていた企業以外の企業であっても,両者一体として一つの企業と考えられる場合であって,65歳まで安定した雇用が確保されると認められる場合には,改正高年雇用安定法9条が求める継続雇用制度に含まれるものであると解釈できます」(乙12)とする厚労省見解に合致し,そこで要件 とされた「緊密性」の要件を具備している。 また,地域会社で雇用された者は,健康に問題がある場合及び欠勤日数が一定日数を超えた場合を除き,地域会社において65歳まで継続雇用を行うことを担保されており,これまでの運用において,業務上の必要性がないとして雇用更新が拒否されたこともないのであるから,「明確性 が一定日数を超えた場合を除き,地域会社において65歳まで継続雇用を行うことを担保されており,これまでの運用において,業務上の必要性がないとして雇用更新が拒否されたこともないのであるから,「明確性」の要件も具備している。 d)平成14年の構造改革当時,雇用形態選択の対象である従業員の98.4%が自らの意思で退職・再雇用型(繰延型と一時金型の両者を含む。)を選択していることからしても,本件制度は十分機能しているものである。 (ウ)本件制度の合理性についてa)高年雇用安定法9条1項2号は,継続雇用制度について,「現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」と規定するのみで,労働条件について何ら制限を設けていない。また,本件改正に先立って厚生労働大臣宛に建議された労働政策審議会の「今後の高年齢者雇用対策について」と題する報告書の記載,厚労省Q&A等の記載からしても,継続雇用制度の導入を促進するに際し,その具体的内容について,一律にかくあるべしとすることは適当でなく,各企業が自社の実情に応じて,労使協議の上,柔軟に制度設計することに委せる趣旨の報告をし,一定の労働条件の保障を求めておらず,賃金等の雇用条件は企業の裁量に委ねられていることは明らかである。 b)原告らが主張するような「合理的な範囲」といった抽象的な基準で法違反の有無を問うことは法的安定性を著しく損なうものである。 本件制度における繰延型及び一時金型には,勤務地の限定,給与水準の低下に対する激変緩和措置という利点があるのに対し,60歳満 了型には配置転換の可能性があるのであって,60歳満了型と退職・再雇用型の各場合の総所得のみに着目して労働条件を比較することは相当ではなく,配置転換の可能性や激変緩和措置の導入,勤務地の限 満 了型には配置転換の可能性があるのであって,60歳満了型と退職・再雇用型の各場合の総所得のみに着目して労働条件を比較することは相当ではなく,配置転換の可能性や激変緩和措置の導入,勤務地の限定等が異なる等についても検討して判断されるべきであるところ,本件制度は,高年雇用安定法9条1項2号に反していないし,退職・再雇用を選択した場合の労働条件の内容が合理的な範囲を逸脱しているともいえない。 c)同条2項は,一定の場合に継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めることを認めており,希望したとしても継続雇用制度の対象としないことを容認しているのであるから,高年齢者が希望すれば必ず有期契約が更新される制度を導入するまでの義務はない。 なお,地域会社では,高年齢者から希望があった場合,健康上に問題がないこと,欠勤日数が一定日数を超えないことの2要件のみで,有期契約の更新に応じている。 イ本件制度における選択の機会と高年雇用安定法の適合性について(ア)説明時期について高年雇用安定法は,継続雇用制度の選択時期について何ら規定しておらず,被告が50歳の従業員に雇用形態・処遇体系の選択をさせたことをもって違法ということはできない。 (イ)60歳での退職が原告らの意思に基づくこと被告では,50歳となる社員に対し,65歳までの雇用を実現することができる退職・再雇用の途(繰越型,一時金型)と,原状のままで60歳の定年まで勤務する「60歳満了型」を選択させている。しかるところ,原告らは,平成14年の雇用形態の選択の際,雇用形態を選択するかの意思表示をしなかったため,被告から60歳満了型を選択したとみなされた。 また,被告は,平成18年1月16日から同年2月10日までの間に60歳満了型既選択社員に対し,雇用形態の再選択の機会を設けた 表示をしなかったため,被告から60歳満了型を選択したとみなされた。 また,被告は,平成18年1月16日から同年2月10日までの間に60歳満了型既選択社員に対し,雇用形態の再選択の機会を設けたが(乙6),原告らは,この時も退職・再雇用型を選択していない。 したがって,被告は,本件制度に基づいて,原告らに雇用選択の機会を与えており,原告らは,自らの意思で,65歳まで勤務できる退職・再雇用の途を選択することなく,60歳で定年退職となる「60歳満了型」を選択したというべきであって,被告に同法9条1項2号違反はない。 (ウ)厚労省の見解等について厚労省Q&A等は,本件改正による高年雇用安定法の改正内容を立案し,本件改正の成立と施行に責任を負う主務官庁たる厚労省等が作成し,その有権的解釈を明確にしたものというべきである。したがって,立法者の意思として十分尊重されるべきである。 (3)被告が原告らを定年による退職扱いとし,その後の継続雇用措置をとらないことが債務不履行ないし不法行為に該当するか否か(争点3)(原告)ア高年雇用安定法9条1項違反について(ア)被告は,原告らから60歳定年を迎えるに当たって,高年雇用安定法に基づいて雇用継続を求めたが,同法9条1項各号のいずれの措置もとらず,原告らに60歳定年規定を適用して一方的に退職扱いをした。 (イ)被告の同行為は同条に違反する行為であって,債務不履行ないし不法行為が成立する。 イその他の理由について被告が,同条1項各号のいずれの措置も採らず,原告らに60歳定年規定を適用して一方的に退職扱いした行為は,以下の理由からも債務不履行ないし不法行為が成立する。 (ア)被告の上記行為は,一定年齢到達または高年齢を理由とする解雇と同視できる。このような措置が同項の雇用確保措置の導入 扱いした行為は,以下の理由からも債務不履行ないし不法行為が成立する。 (ア)被告の上記行為は,一定年齢到達または高年齢を理由とする解雇と同視できる。このような措置が同項の雇用確保措置の導入を行わずに行われた場合,客観的に合理的な理由を欠くものであるから,解雇権濫用による不法行為が成立する。 (イ)原告らは,本件改正に伴う高年雇用安定法の施行により,被告によって新たな継続雇用制度またはキャリアスタッフ制度と同様の制度が導入されるとの正当な期待権を有していたものである。被告の上記ア(ア)で記載した行為は,原告らの同期待権を侵害するもので,不法行為が成立する。 (ウ)被告の就業規則は,その合理的補充解釈により希望者全員を65歳まで勤務延長する旨の継続雇用制度が導入されているものと解されるところ,被告の上記ア(ア)で記載した行為は,同就業規則によって認められる被告の継続雇用義務を果たさないもので,債務不履行ないし不法行為が成立する。 (エ)被告は,雇用継続を含む職場環境整備・配慮義務を負っているところ,被告の上記ア(ア)で記載した行為は,かかる義務に違反するもので,債務不履行ないし不法行為が成立する。 ウ被告の報復的意図(不当な意図・目的)について被告は,本件制度による合理化をしようとしたところ,H労組の組合員である原告らが繰延型ないし一時金型のいずれの選択もしない行動をとったことを好ましからざる行動とし,報復的意図の下に定年後の雇用継続をせずに失職させたものである。 (被告)ア高年雇用安定法9条1項違反の成否について(ア)高年雇用安定法は,事業主と労働者との間の雇用契約等を規律する私法的効力を有さず,また,本件制度自体も同法9条1項2号で定める 継続雇用制度に沿うものである。 (イ)したがって,被告が本件制度に 年雇用安定法は,事業主と労働者との間の雇用契約等を規律する私法的効力を有さず,また,本件制度自体も同法9条1項2号で定める 継続雇用制度に沿うものである。 (イ)したがって,被告が本件制度に基づいて原告らに対してとった行為には債務不履行ないし不法行為が成立する余地はない。 イその他の理由について(ア)被告が,本件制度に基づいて,原告らに60歳定年規定を適用して退職扱いとした行為について,解雇というべき事情はなく,したがって,解雇権の濫用という法理を認める余地がない。 (イ)原告らは,以下のとおり雇用延長ないし再雇用について合理的な期待を有していない。 被告は,原告らが60歳を超えても雇用が継続されるかのような期待を抱かせるような言動は一切しておらず,そもそも原告らは,自らの意思により65歳までの雇用が実現できる退職・再雇用を選択しなかった。 原告らは60歳で定年退職となることは覚悟していたはずである。 しかも,原告らの属するH労組は,法改正を十分認識した上で,団体交渉の際にも法改正についてしばしば言及している(例えば,平成17年12月26日の被告と原告らの属するH労組間の団体交渉の際,他組合に対して本件改正を受けて雇用形態・処遇体系の再選択をすると被告が説明したと聞いているとの同労組からの問に対し,被告は,本件制度が同法に抵触するとは考えていない旨回答し,平成18年1月10日,同月19日,同年2月13日のいずれの団体交渉の際も,本件制度が法的に何ら問題のない旨を繰り返し説明している。なお,原告A及び原告Cは,団体交渉に参加したことがある。)のであって,同法改正の趣旨について説明がなかったといえる筋合いにない。原告らは,そもそも本件制度に反対であって,本件制度が高年雇用安定法9条に合致していないから反対したのではない,すなわ ある。)のであって,同法改正の趣旨について説明がなかったといえる筋合いにない。原告らは,そもそも本件制度に反対であって,本件制度が高年雇用安定法9条に合致していないから反対したのではない,すなわち,本件制度内容を熟知した上で,結果的に60歳満了型を選択したものである。 したがって,原告らは,雇用延長ないし再雇用について合理的な期待を有していない。 (ウ)原告らは,上記(イ)記載のとおり本件改正の施行以前から本件改正について知っており,被告から本件改正についての説明がなかった等と主張するのは不当である。原告らは,本件改正に関わらず,本件制度自体に反対して,被告に対して同制度に基づく選択の意思表示をしなかったものである。 (エ)被告は,本件改正の施行時以降,原告らに雇用形態等を選択する機会を与えていないが,同改正後の平成18年1月16日から同年2月10日の間,原告らを含む60歳満了型既選択社員(これを選択したとみなされる者を含む。)に対し,再選択を実施した。しかし,原告らは,その際も退職・再雇用型(繰延型又は一時金型)を選択しなかったところ,本件制度が高年雇用安定法の継続雇用義務に対応したものである旨の説明を受けていたことや,また,H労組を通じて同再選択の機会を付与されていた。以上のことを踏まえると,原告らは,平成18年2月10日以降に雇用形態等を選択する機会がなかったことを理由として本件制度が同法9条1項2号で定める継続雇用制度に該当しないとはいえない。 (オ)原告らが主張する上記(3)の(原告)の主張イ(ウ)(エ)の各主張は否認ないし争う。 ウしたがって,被告が原告らを退職扱いしたことについて,債務不履行ないし不法行為が成立することはない。 (4)原告らの損害の有無・内容について(争点4)(原告)被告は,高年雇用 認ないし争う。 ウしたがって,被告が原告らを退職扱いしたことについて,債務不履行ないし不法行為が成立することはない。 (4)原告らの損害の有無・内容について(争点4)(原告)被告は,高年雇用安定法9条1項,同法附則4条1項に基づき,少なくともキャリアスタッフ制度と同様の制度を整備して,甲事件原告らについては 63歳まで,乙事件原告らについては64歳まで雇用すべき義務を負っていた。 しかるに,被告は,上記のとおり,原告らを60歳に達した後の3月末をもって退職扱いとした。 したがって,原告らは,被告に対し,債務不履行ないし不法行為により,キャリアスタッフ制度に基づいて被告に継続勤務していれば得られたであろう賃金相当額に弁護士費用を加えた金額の損害を被った。 各原告の損害は,原告A及び同Cについて各722万6138円,(賃金相当額672万6138円,弁護士費用50万円),原告Bについて651万9092円(賃金相当額601万9092円,弁護士費用50万円)乙事件原告らについて946万1514円(賃金相当額896万1514円,弁護士費用50万円)である。 (被告)否認ないし争う。 第3当裁判所の判断 前提事実並びに証拠(証拠等略)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1)定年に関する法的規制及び高年雇用安定法の改正についてア昭和46年10月1日,高年雇用安定法の前身である中高年齢者の雇用の促進に関する特別措置法(以下「特別措置法」という。)が施行された。 イ特別措置法は,昭和61年,同法の一部を改正する法律(昭和61年4月30日法律43号)により高年雇用安定法へと名称変更され,その際,事業主が,その雇用する労働者の定年の定めをする場合には,当該定年が60歳を下回らないよう努力する義務が事業主に課せられた(4条 月30日法律43号)により高年雇用安定法へと名称変更され,その際,事業主が,その雇用する労働者の定年の定めをする場合には,当該定年が60歳を下回らないよう努力する義務が事業主に課せられた(4条)。 なお,これに先立つ昭和60年10月,雇用審議会は,答申第19号を発し,21世紀を展望した今後の高年齢者の雇用・就業の在り方の方向と して,65歳程度までは雇用・就業の場の確保が図られ(・・略・・)るような社会をめざすこと,我が国の雇用慣行からみて同一企業又は同一企業グループにおいて継続して雇用・就業の場の確保を図ることとした。 (証拠等略)。 ウ昭和61年6月6日,「長寿社会対策大綱」が閣議決定され,高齢者の雇用・就業の機会の確保について,60歳定年の定着及び60歳台前半層を含めた高齢者の雇用・就業の場の維持,拡大を積極的に推進し,当面65歳程度までの継続雇用を促進するとされた(証拠等略)。 エ昭和63年6月17日,同年度から昭和67年度(平成4年度)までの5年間を計画期間とする「第六次雇用対策基本計画」が閣議決定され,65歳程度までの継続雇用について,我が国の雇用慣行の長所を生かしつつ,同一企業あるいは同一企業グループ内において高年齢者の雇用を維持し,長年にわたり培われてきた経験や能力を活用することを中心とした仕組みの形成が最も重要であるとして,(・・略・・)60歳定年の定着を図るため,「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に定められた行政指導を講ずること等により,企業に対する指導を強力に実施する。また,65歳まで,同一企業あるいは同一企業グループ内において,定年延長,再雇用,勤務継続等により,継続雇用が行われることを促進する等の一定の対策を進めることとされた(証拠等略)。 オ平成2年3月1日,労働大臣(当時)から諮問を受け 一企業グループ内において,定年延長,再雇用,勤務継続等により,継続雇用が行われることを促進する等の一定の対策を進めることとされた(証拠等略)。 オ平成2年3月1日,労働大臣(当時)から諮問を受けた雇用審議会は,65歳までの雇用機会を確保する方策として,「事業主が雇用を確保する具体的な方法としては,定年の引上げ,再雇用制度,勤務延長制度等,多様な方法を講ずる必要がある。」,「定年退職者ができるだけ失業を経ることなく再就職することができるように,同一企業グループに限らず,高年齢者が培ってきた技能や経験が生かされる職場であれば広く再就職の機会に関するあっせん,情報の提供等の援助に努める必要がある。」等とし, 65歳までの雇用機会を確保する法的整備については,「65歳までの雇用機会を確保する措置に関する規定については事業主の自主的努力を促進する趣旨の規定とすることが適当である。」,「60歳定年達成」「の目標に向けて適切な措置を講ずることが妥当である。」こと等を答申した(答申第21号)。 その後,同答申を踏まえた高年雇用安定法の一部を改正する法律案が国会に提案され,同法律案を審議する平成2年6月5日の衆議院社会労働委員会において,当時の労働省職業安定局高齢・障害者対策部長が,「継続雇用の推進につき,同一企業のみならず,同一企業グループの中で雇用を継続的に確保することも一つの現実的な方法として,労使間の話し合い等で選択できる一つの手段ではないかと考えている。」旨答弁している。また,同月21日の参議院社会労働委員会において,同部長が,「同一企業あるいは同一企業グループ,そういったものを基本に置きながらの継続雇用を進めていくということが一つの基本的な施策としてある。」,「いろんな関連会社への継続雇用の措置を講ずることもありうる。」旨答弁して るいは同一企業グループ,そういったものを基本に置きながらの継続雇用を進めていくということが一つの基本的な施策としてある。」,「いろんな関連会社への継続雇用の措置を講ずることもありうる。」旨答弁している。これらを受けて,高年雇用安定法の一部を改正する法律が成立し,同月29日,同年法律第60号として公布された。 (証拠等略)カ同改正後の高年雇用安定法は,4条の5を新設し,事業主が,60歳以上65歳未満の定年に達した者が当該事業主に再び雇用されることを希望するときは,原則として,その者が65歳に達するまでの間,その者を雇用するように努めなければならない旨規定(継続雇用の努力義務の新設)した。 なお,同規定は,60歳を越えると健康や体力の面等で個人差が拡大するため,事業主に対して,65歳までの雇用を一律に求めることは困難であること,他方で,事業主はその雇用する高年齢者について雇用機会を確 保すべき責務を一般的に有することから,事業主は,定年を定めた場合であっても,定年後の再雇用を希望する定年到達者に関しては,その個々の状況を考慮しつつ定年後も雇用するように努めることが少なくとも必要であることを踏まえて定年後の再雇用の努力義務を設けたものである。 (証拠等略)。 キ平成4年7月10日,同年度から平成8年度までの5年間を計画期間とする「第七次雇用対策基本計画」が閣議決定され,65歳までの継続雇用の推進について,平成5年度までに60歳定年の完全定着を図るとともに,60歳定年を基盤として,働くことを希望する高齢者全員が65歳まで継続して働くことができる雇用システムの確立を図るため継続雇用制度の一層の普及に向けての体制を整える等の方策を図ることとされた(証拠等略)。 ク平成5年12月22日,労働大臣(当時)から諮問を受けた雇用審議会は,6 きる雇用システムの確立を図るため継続雇用制度の一層の普及に向けての体制を整える等の方策を図ることとされた(証拠等略)。 ク平成5年12月22日,労働大臣(当時)から諮問を受けた雇用審議会は,60歳未満定年制を解消するための法的措置を講ずる必要があること,60歳を超える者について多様な形態による雇用・就業機会の確保が図られることが重要であり,そのために同一企業又は同一企業グループ内において定年延長,勤務延長,再雇用等の継続雇用を計画的かつ段階的に進めていくこと等が重要であること等を答申した(答申第23号)。また,中央職業安定審議会は,平成6年1月14日,労働大臣(当時)に対し,65歳までの雇用機会の確保等総合的な高齢者雇用対策の確立について建議を行った。上記答申及び建議を受けて,高年雇用安定法の一部を改正する法律案が作成され,国会の審議を経て同法律が成立し,平成6年6月17日,同年法律第34号として公布された。 同改正後の高年雇用安定法は,事業主がその雇用する労働者の定年の定めをする場合には,当該定年は,原則として,60歳を下回ることができないもの(4条)とそれまでの努力義務から60歳定年の義務化を図った ほか,同改正において,事業主は,その雇用する労働者が,その定年(65歳未満のものに限る。)後も当該事業主に引き続いて雇用されることを希望するときは,当該定年から65歳に達するまでの間,当該労働者を雇用するように努めなければならない旨の規定を維持したまま(4条の2),新たに65歳までの継続雇用制度の導入・改善計画の作成についての労働大臣の指示について定めた。 なお,答申第23号も,60歳以上の雇用に関し,60歳を越えると健康等の個人差が拡大するとともに,就業ニーズも多様化することから,一律に定年延長によるのではなく,多様な形態 臣の指示について定めた。 なお,答申第23号も,60歳以上の雇用に関し,60歳を越えると健康等の個人差が拡大するとともに,就業ニーズも多様化することから,一律に定年延長によるのではなく,多様な形態による雇用・就業の場の確保が図られるようにするため,「同一企業又は同一企業グループ内において65歳までの定年延長,勤務延長,再雇用等の継続雇用を計画的かつ段階的に進めていくことが重要であり,事業主の自主的努力を更に促進するための法的措置を講ずることが適当」としていた。 また,平成6年に老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢を60歳から65歳へと段階的に引き上げることが決定された。 (証拠等略)ケ同4条の2は,その後,平成12年法律第60号によって改正され,65歳未満の定年の定めをしている事業主は,当該定年の引上げ,継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度)の導入又は改善その他の当該高年齢者の65歳までの安定した雇用の確保を図るために必要な措置を講ずるように努めなければならないものと規定した(ただし,同4条の2は,平成14年法律第165条[独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構法の制定に伴う法律改正]により9条とすると改正された。)。 なお,平成12年に老齢厚生年金の報酬部分の支給開始年齢も引き上げることが決定された。 (証拠等略)コ前提事実(8)記載のとおり厚生年金の支給開始年齢について,60歳から65歳まで段階的な引上げが予定される一方,上記ク記載のとおり平成6年法律第34号による高年雇用安定法の改正後,事業主は,原則として60歳を下回る定年の定めをすることができない旨義務付けられたものの,高年齢者の65歳までの雇用については必要な措置を講ずべき努力義務を負うにとどま よる高年雇用安定法の改正後,事業主は,原則として60歳を下回る定年の定めをすることができない旨義務付けられたものの,高年齢者の65歳までの雇用については必要な措置を講ずべき努力義務を負うにとどまっていた。 そのような状況の下,平成15年4月以降,厚生労働省において「今後の高年齢者雇用対策に関する研究会」が開催された。 労働政策審議会は,同年10月以降,同研究会の意見を踏まえて検討を行い,平成16年1月20日,厚生労働大臣に対し,「今後の高齢者雇用対策について(報告)」と題する建議(以下「平成16年建議」という。)を行った。この建議のうち,「65歳までの雇用の確保策」については,別紙65歳までの雇用の確保策のとおりである。 (証拠等略)サ平成16年建議を受けて,高年雇用安定法の一部を改正する法律案が作成され,国会での審議を経て同法律が成立し,平成16年6月11日,同年法律第103号として公布され,高年雇用安定法9条については平成18年4月1日,前提事実(7)のとおり施行された。 (2)本件制度についての説明被告は,平成14年1月に本件制度における雇用形態・処遇体系の選択をする際及び平成18年1月16日から同年2月10日までの再選択の際に,原告らを含む従業員及びH労組に対し,選択を求める雇用形態・処遇体系の内容について説明した。なお,本件制度と高年雇用安定法との関係については,後記(4)のとおりである。 (証拠等略) (3)本件制度における再雇用後の更新状況について本件制度において,繰延型もしくは一時金型を選択し,地域会社に再雇用された者について,その者が希望する場合,一雇用期間における欠勤日数が一定数に達した者や更新時に健康上の問題があるものを除き,基本的に雇用終了年齢に至るまで再雇用されている(乙10,23,弁論の全趣旨 れた者について,その者が希望する場合,一雇用期間における欠勤日数が一定数に達した者や更新時に健康上の問題があるものを除き,基本的に雇用終了年齢に至るまで再雇用されている(乙10,23,弁論の全趣旨)。 (4)原告らの対応状況等原告らが所属するH労組は,平成17年12月26日,同18年1月10日,同月19日,同年2月13日,被告と団体交渉を行い,再選択についても協議した。その際,被告は,同労組から,再選択が本件改正に関係しているのか否かについて質問されたが,再選択について,本件改正を考慮したことは否定しないという意味で全く関係ないわけではないが,本件制度が高年雇用安定法に反していないと考えていることから,業務運営体制の見直しが第一義である旨回答した。 そして,同年1月20日ころ,個々の従業員に対しても再選択について周知された。 しかし,同労組は,被告との団体交渉において,再選択を機に従業員を退職・再雇用に追い込むものである,平成18年4月以降に再選択を実施すべきである等と本件制度そのものについて反対し,同労組の組合員であった原告らも,同労組の態度に呼応するように被告に対して退職・再雇用型の選択をしなかった。 その後,甲事件原告らは,被告に対し継続雇用を求めたが,平成19年3月31日の経過をもって,被告を定年退職したものと扱われた。 また,乙事件原告らは,被告に対し継続雇用を求めたが,平成20年3月31日の経過をもって,被告を定年退職したものと扱われた。 (証拠等略) 前提事実及び上記1で認定した事実を踏まえて各争点について検討する。 (1)高年雇用安定法9条の私法的効力について(争点1)ア原告は,同条には私法的効力があり,したがって,事業主と労働者間の法律関係について,事業主に私法上の義務を課すものである旨主張するところ, 1)高年雇用安定法9条の私法的効力について(争点1)ア原告は,同条には私法的効力があり,したがって,事業主と労働者間の法律関係について,事業主に私法上の義務を課すものである旨主張するところ,以下のことを踏まえると,同主張は理由がなく,かえって,同条は,私人たる労働者に,事業主に対して,公法上の措置義務や行政機関に対する関与を要求する以上に,事業主に対する継続雇用制度の導入請求権ないし継続雇用請求権を付与した規定(直截的に私法的効力を認めた規定)とまで解することはできない。 (ア)同法は,定年の引上げ,継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進,高年齢者等の再就職の促進,定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講じ,もって高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに,経済及び社会の発展に寄与することを目的とし(1条),事業主のみならず国や地方公共団体も名宛人として,種々の施策を要求しており,社会政策誘導立法ないし政策実現型立法として,公法的性格を有している。 (イ)また,上記1(1)で認定した同法の改正経過をみると,60歳を超えると健康や体力の面等で個人差が拡大するため,事業主に対して,65歳までの雇用を一律に求めることは困難であることが指摘され,本件改正に関する平成16年建議も,「継続雇用制度についても,一律の法制化では各企業の経営やその労使関係に応じた適切な対応が取れないとの意見もあることから,各企業の実情に応じ労使の工夫による柔軟な対応が取れるよう,労使協定により継続雇用制度の対象となる労働者に係る基準を定めたときは,当該基準に該当する労働者を対象とする制度を導入することもできるようにすることが適当である」,「企業経営上の極めて困難な状況に直面しているケース等に 制度の対象となる労働者に係る基準を定めたときは,当該基準に該当する労働者を対象とする制度を導入することもできるようにすることが適当である」,「企業経営上の極めて困難な状況に直面しているケース等については,企業の実情を十分に考慮した助言等に止める等その施行に当たっての配慮が必要であ る。」とする等,継続雇用制度の内容を一律に定めておらず,事業主側の事情等も考慮すべきとしている。これを受けて成立した同条1項は,国が事業主に対して公法上の義務を課す形式をとっているほか,同項各号の措置に伴う労働契約の内容ないし労働条件についてまでは規定していない上,同項2号も,継続雇用制度について,「現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。」と定義づけ,多様な制度を含みうる内容の規定となっている。仮に同条項によって事業主に作為義務があるとしても,その作為内容が未だ抽象的で,直ちに私法的強行性ないし私法上の効力を発生させる程の具体性を備えているとまでは認めがたい。 (ウ)そして,同条2項は,一定の場合に継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めることを許容し(したがって,高年齢者が希望したとしても必ず法所定の年齢まで雇用しなければならないものではなく,基準に基づいて選抜を行い継続雇用制度の対象としないことも容認する趣旨),高年雇用安定法の趣旨に反しない限り,各事業主がその実情に応じて柔軟な措置を講ずることを許容しているものと解される。 (エ)しかも,事業主と個別労働者との関係を前提とする同法の規定は,努力義務規定が多く(15条,19条等),義務規定に反した場合の実効確保措置についても厚生労働大臣による助言・指導・勧告というより緩やかな措置に止まり,罰則や企業名公表制度等の制裁までは予定 定は,努力義務規定が多く(15条,19条等),義務規定に反した場合の実効確保措置についても厚生労働大臣による助言・指導・勧告というより緩やかな措置に止まり,罰則や企業名公表制度等の制裁までは予定されていない。 (オ)さらに,同条の直前に規定されている8条は,9条について努力義務が削除された後も定年年齢を65歳まで引き上げることなく従来と同様,60歳を下回らないと義務付けたままになっている上,同法には同条1項の義務に違反した場合について,労基法13条のような私法的効力を認める旨の明文規定も補充的効力に関する規定も存しない。 仮に同条1項の義務を私法上の義務と解すると,同義務内容となる給付内容が特定できないといった解釈上困難な問題を惹起するのみならず,仮に個々の労働者に事業主に対して継続雇用制度の導入請求権があるとした場合,その給付内容をどのように特定するか,その義務の履行を法律上強制することが可能か否か,裁判上強制した場合に実効性を確保しうるか,定年延長ないし定年廃止を事実上強制することが包含する問題性がある(同条1項2号が予定する継続雇用制度は事業主の実情を踏まえた雇用態様が想定されているが,事業主の実情をおよそ無視して能力や意欲等の多様な対象高年齢労働者を何らの制限なくして全て雇用する措置を義務づけるという結論をとることは,高年齢者の安定した雇用の確保の基盤をかえって危うくする危険性がある。)等,多くの困難な実践的解釈上の問題を生じることとなる。 イそうすると,事業主である被告は,原告に対し,同条1項に基づいて私法上の義務として継続雇用制度の導入義務ないし継続雇用義務まで負っているとまではいえない。 (2)被告が高年雇用安定法9条1項2号の措置を採っているといえるか(本件制度が高年雇用安定法9条1項2号の「継続雇用制 て継続雇用制度の導入義務ないし継続雇用義務まで負っているとまではいえない。 (2)被告が高年雇用安定法9条1項2号の措置を採っているといえるか(本件制度が高年雇用安定法9条1項2号の「継続雇用制度」に合致するか否か)(争点2)被告が本件において定年の引上げ及び定年の定めの廃止を行っておらず,高年雇用安定法9条1項1号,3号に該当する措置をいずれも実施していないことは当事者間に争いがない。そこで,被告が実施した本件制度が同項2号の継続雇用制度に該当するか否かについて検討する。 ア高年雇用安定法9条1項2号の継続雇用制度の許容する制度枠組み上記1(1)及び2(1)で認定した高年雇用安定法の上記立法目的,法的性格及び上記認定の高年雇用安定法の改正経緯を踏まえると,同条の趣旨は,高年齢者の60歳以後の安定した雇用を確保するための措置を講じること によって,年金支給開始年齢までの間における高年齢者の雇用を確保するとともに高年齢者が意欲と能力のある限り年齢に関わりなく働くことを可能とする労働環境を実現することにあると解するのが相当である。 ところで,現行9条の改正の基となった平成16年建議の内容や同条の改正経緯,同条1項が同項各号の措置に伴う労働契約の内容等についてまでは規定していないこと,同条2項が一定の場合に継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めることを許容していることを踏まえると,9条は,上記同条の趣旨に反しない限り,各事業主がその実情に応じて多様かつ柔軟な措置を講ずることを許容していると解するのが相当であり,また,同法の雇用確保措置によって確保さるべき雇用の形態は,必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用であることを要せず,労働者の希望や事業主の実情等を踏まえた常用雇用や短時間勤務,隔日勤務等の多様な雇 保措置によって確保さるべき雇用の形態は,必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用であることを要せず,労働者の希望や事業主の実情等を踏まえた常用雇用や短時間勤務,隔日勤務等の多様な雇用形態を含むものと解するのが相当である。 イ本件制度が高年雇用安定法9条1項2号に該当すること(ア)本件制度の導入経緯と高年雇用安定法9条1項2号該当性について原告らは,本件制度が被告の業務改革の一環として51歳以上の労働者を排除することを目的として行われたものであり,高年雇用安定法9条と無関係であるばかりか,その趣旨に反するものであるとして,本件制度が同条1項2号の継続雇用制度に該当しない旨主張する。 しかし,本件全証拠によるも,被告が本件制度によって51歳以上の労働者をことさらに排除する目的を有していたとまで認めることはできない。かえって,本件制度は,キャリアスタッフ制度の枠組みを基本としたものであるところ,キャリアスタッフ制度は公的年金制度の改正により定年と年金受給年齢とのギャップが生じたことと少子高齢化社会の到来による退職者の増加に対応して有スキル者の確保の要請及び高年齢者の雇用確保の要請に応えるべく,N株式会社ないし被告において,定 年退職する従業員に対する再雇用制度として創設されたものであって,高年雇用安定法の上記趣旨に沿うものである。 そうすると,原告らの上記主張はその余の点について判断するまでもなく,理由がない。 (イ)地域会社での再雇用(転籍)について同条1項2号で定める継続雇用制度は,上記アで説示したとおり同法の趣旨に反しない限り,各事業主がその実情に応じて多様かつ柔軟な措置を講ずることを許容していると解されるところ,同法の雇用確保措置によって確保さるべき雇用の形態も,上記アで説示したとおり必ずしも労働者の希望 しない限り,各事業主がその実情に応じて多様かつ柔軟な措置を講ずることを許容していると解されるところ,同法の雇用確保措置によって確保さるべき雇用の形態も,上記アで説示したとおり必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用であることを要せず,労働者の希望や事業主の実情等を踏まえた常用雇用や短時間勤務,隔日勤務等の多様な雇用形態を含むものと解される。 また,上記1(1)で認定した高年雇用安定法の改正経緯を踏まえると,60歳を超える者の雇用確保については一貫して,多様な形態による雇用・就業機会の確保が図られることが重要であり,そのために同一企業又は同一企業グループ内において定年延長,勤務延長,再雇用等の継続雇用を計画的かつ段階的に進めていくこと等が重要であるとされ,それを踏まえて同法9条が規定されたものであって,そのことからすると,少なくとも,同一企業のみならず同一企業グループにおいて継続して雇用・就業の場の確保を図ることも高年雇用安定法の目的を達する方法・手段として想定していたことは明らかであり,同条1項2号で定める継続雇用制度に,転籍の方法による雇用継続がおよそ含まれないと解することはできない。 もっとも,同条1項2号の上記趣旨及び同号が「事業主に対してその雇用する高年齢者の安定した雇用を確保するために同項各号に定める措置を講じなければならない。」としていることを総合すると,事業主が 転籍型の継続雇用制度を採用する場合,特段の事情でもない限り,事業主と転籍先との間で少なくとも同一企業グループの関係とともに転籍後も高年齢者の安定した雇用が確保されるような関係性が認められなければならないと解するのが相当である。 そこで,本件であるが,本件制度では,被告を退職した後に再雇用される予定の別会社たる地域会社(転籍先)は,いずれも被 た雇用が確保されるような関係性が認められなければならないと解するのが相当である。 そこで,本件であるが,本件制度では,被告を退職した後に再雇用される予定の別会社たる地域会社(転籍先)は,いずれも被告あるいは,被告が全額出資して設立した会社及びN株式会社が全額出資して設立した会社がさらに全額出資して設立した会社であり(上記前提事実(3)),資本的な密接性が認められるのみならず,再雇用に関する就業規則を制定して,一雇用期間における欠勤日数が一定数に達した者や更新時に健康上の問題があるものを除き,基本的に再雇用されることとし,現にそのように運用されているというのであるから,本件制度は,事業主と転籍先との間に同一企業グループの関係とともに転籍後も高年齢者の安定した雇用が確保されるような関係性が認められるといえ,本件制度が地域会社における再雇用制度であることをもって同条1項2号に反するとはいえず,かえって,同号で定める継続雇用制度に適合する制度であるといえる。 (ウ)原告らの上記第2の4(2)ア(ウ)の主張ついて原告らは,本件制度のうち,最終,65歳までの継続雇用が可能となる繰延型,一時金型は,60歳を超えて継続雇用された場合に得られる賃金額が60歳満了型を選択した場合よりも低くなる,あるいは労働者が希望すれば必ず更新される制度となっていない等の不合理性があり,高年雇用安定法9条1項2号の継続雇用制度に該当しない旨主張する。 しかし,高年齢者の雇用は事業主に相応の負担を生じさせるものであること,また,同条1項2号で定める継続雇用制度は上記のとおり各事業主の実情に応じた柔軟な措置が許容されることを踏まえると,労働条 件が低下することや無条件に年金支給開始年齢までの雇用が保障されていないことをもって直ちに同号で定める継続雇用制度に該当しな 事業主の実情に応じた柔軟な措置が許容されることを踏まえると,労働条 件が低下することや無条件に年金支給開始年齢までの雇用が保障されていないことをもって直ちに同号で定める継続雇用制度に該当しないとまで直ちにはいえない。 そして,繰延型又は一時金型における賃金の低下については,平成16年建議において「65歳までの雇用確保に当たっては,今後の労働力供給動向を踏まえた人材の確保,雇用・就業ニーズの多様化や厳しい経営環境の中での総コスト管理の観点からも,労使間で賃金,労働時間,働き方等について十分に話し合い,賃金・労働時間・人事処遇制度の見直しに取り組むことが必要である。」と指摘されており,立法段階において,各企業の実情を考慮すること,殊に限られた経営資源の中で65歳までの雇用確保を求める場合,賃金減額や労働時間の短縮を検討することも必要との認識があったと解されること,地域会社における退職金等において一定の措置が採られていること,勤務地も限定的なものとなり,かつ,雇用保険等,公的給付や企業年金の支給との組み合わせ等により,多様な生活スタイルに応えるものとなっていると評価しうることを総合考慮すると,総所得が低下する場合があるとしても,そのことのみをもって直ちに同号で定める継続雇用制度に反するとまではいえない。 また,希望すれば必ず更新される制度となっていないとしても,上記のとおり直ちに同継続雇用制度に該当しないとはいえないのみならず,地域会社での定年後の雇用期間はキャリアスタッフ制度と同様に一雇用期間における欠勤日数が一定数に達した者や更新時に健康上の問題があるものを除き,基本的に雇用終了年齢に至るまで再雇用(更新)される扱いとなっており,上記(2)アで説示した同法9条の趣旨に反するとまではいえず,かえって,同号で定める継続雇用制度に適 康上の問題があるものを除き,基本的に雇用終了年齢に至るまで再雇用(更新)される扱いとなっており,上記(2)アで説示した同法9条の趣旨に反するとまではいえず,かえって,同号で定める継続雇用制度に適合する制度であるといえる。 (エ)原告らの第2の4(2)イの各の主張ついて a)同イ(ア)の主張ついて本件制度は,高年雇用安定法9条1項2号の継続雇用制度に適合していることは上記ア及びイの(ア)ないし(ウ)で認定説示したとおりである。そうすると,原告らの上記第2の4(2)イ(ア)の主張は理由がない。 b)高年雇用安定法の説明をしていないことについて原告らは,被告から本件制度について高年雇用安定法9条を前提とした説明は一度も受けなかったとして,本件制度が同条1項2号の継続雇用制度に該当しない旨主張する。 確かに,被告から原告らに対して,本件制度について同法との関係等を踏まえた説明はなされていない。しかし,高年雇用安定法上,同法と当該事業主が採用している継続雇用制度との関係を具体的に説明すべき義務を明定した規定はない。また,本件制度がその客観的な内容を理由として同法9条1項2号で定める継続雇用制度に該当することは上記イの(ア)ないし(ウ)で認定説示したとおりであるところ,被告は,本件制度の対象となる従業員に対し,雇用形態及び処遇体系の選択を求める際,選択内容である雇用形態や処遇の内容(労働条件等)について具体的に説明しており,それ以上に本件制度と同法との関係について,その当否は別として,説明をすべき義務まではなかったと解するのが相当である。 そうすると,原告の上記主張は理由がない。 c)本件改正に伴う高年雇用安定法の施行後,雇用形態等の選択の機会がなかったことについて原告らは,被告が本件改正を伴う高年雇用安定法の施行後において 。 そうすると,原告の上記主張は理由がない。 c)本件改正に伴う高年雇用安定法の施行後,雇用形態等の選択の機会がなかったことについて原告らは,被告が本件改正を伴う高年雇用安定法の施行後においても原告らに対し雇用形態等を選択する機会を与えなかったとして,本件制度が同条1項2号で定める継続雇用制度に該当しない旨主張する。 しかし,継続雇用に関する希望を聴取する時期は高年雇用安定法に明定されておらず,基本的には事業主側の裁量に任されているところ,被告は,上記前提事実(4)(5)で記載したとおり,平成14年1月ころ及び平成18年1月ないし2月に被告の労働者に対し,雇用形態や処遇体系等を説明した上でその選択の機会を設けており(平成18年4月1日の本件改正施行後において原告らに対し雇用形態等選択の機会を設けていないことについて当事者間に争いはない。),その際,被告において,原告らに特定の選択肢を強制したり,選択しないよう強制させたような事情も存しないので,継続雇用の希望聴取時期に関して被告に裁量違反を認めることができないし,被告に本件改正に伴う高年雇用安定法の施行後に改めて原告らにその選択する機会を設けなければならない義務までは認めることはできない。 そうすると,原告らの上記主張は理由がない。 (オ)労使の協議・工夫による制度であること本件制度は,被告の労働者の99%近い従業員が加入するI労組の合意が得られたものであり,現にこれら労働者により雇用形態等の選択がされて十分機能しており,労使の協議・工夫による制度と評価でき,この点でも同法9条の趣旨に反した制度とはいえず,かえって,それに適合した制度というべきである。 (3)被告が原告らを定年による退職扱いとし,その後の継続雇用措置をとらないことが債務不履行ないし不法行為に該当するか否か 旨に反した制度とはいえず,かえって,それに適合した制度というべきである。 (3)被告が原告らを定年による退職扱いとし,その後の継続雇用措置をとらないことが債務不履行ないし不法行為に該当するか否か(争点3)ア原告らの第2の4(3)イ(ア)記載の主張について原告らの退職は,定年による退職であって,被告による解雇ではなく,したがって,解雇権濫用法理の適用の前提を欠いている。また,高年雇用安定法9条1項2号の義務違反があったとしても直ちに私法上の違法行為と解することができない上,本件制度は,同号で定める継続雇用制度とい える。そうすると,原告らのこの点に関する主張は理由がない。 イ原告らの第2の4(3)イ(イ)記載の主張について確かに,被告は,キャリアスタッフ制度を復活させていない。しかし,被告が同制度を復活させなかったとしても,本件制度が存在する(ただし,50歳の時点で処遇形態等の選択をさせ,その後選択の機会を与えない場合,当否の問題がなくはないものの,本件では再選択の機会があることから,少なくとも違法とは言い難い。)以上,高年雇用安定法に違反することはなく,原告らは,平成14年及び平成18年の雇用形態・処遇体系の選択の際,その内容について知らされていたにもかかわらず,いずれの時にも本件制度それ自体に反対して選択をせず,従前どおり60歳満了型を選択したとみなされ,60歳で退職したと扱われたものであって,60歳を超えても継続して雇用される旨の説明を受けていたような事情は認められない。また,本件全証拠によるも,原告らが主張するような新たな継続雇用制度等が導入されるとの期待を抱いていたとまで認めることができない。 そうすると,原告らが,本件改正に伴い高年雇用安定法が施行された後にキャリアスタッフ制度と同様の新たな制度が導入され,定年 続雇用制度等が導入されるとの期待を抱いていたとまで認めることができない。 そうすると,原告らが,本件改正に伴い高年雇用安定法が施行された後にキャリアスタッフ制度と同様の新たな制度が導入され,定年後も雇用が継続すると期待したとしても,独自の見解に基づく主観的な期待というほかなく,法的保護に値する期待権侵害の違法をいう原告らの主張は理由がない。 ウ原告らの第2の4(3)イ(ウ)記載の主張について本件制度は,上記認定説示したとおり高年雇用安定法9条に違反するものとはいえないところ,本件全証拠によっても,第2の4(3)イ(ウ)で原告らが主張するような解釈をするのを相当とすべき事由は認められない。かえって,被告の就業規則の合理的補充解釈により,希望者全員を65歳まで勤務延長する旨の継続雇用制度が導入されているものと解することは, 事業主の実情をおよそ無視し,また,多様な対象高年齢労働者の能力や意欲等も何ら考慮することなく全て雇用する措置を義務づけることに等しく,高年齢者の安定した雇用の確保の基盤をかえって危うくしかねない等,多くの困難な問題を生じることとなることは上記2(1)ア(オ)で説示したとおりである。 そうすると,原告らのこの点に関する主張も理由がない。 エ原告らの第2の4(3)イ(エ)記載の主張について本件制度は,高年雇用安定法9条1項2号で定める継続雇用制度に該当するほか(仮に同条項に反したとしても直ちに私法上の債務不履行責任ないし不法行為責任を基礎付けるものではないことは上記のとおりである。),本件全証拠によっても被告に職場環境整備・配慮義務違反ないし不法行為責任を基礎付ける事実を認めるに足る証拠はない。 そうすると,この点に関する原告らの主張も理由がない。 オ原告らの第2の4(3)ウ記載の主張について本件全証拠によっ 整備・配慮義務違反ないし不法行為責任を基礎付ける事実を認めるに足る証拠はない。 そうすると,この点に関する原告らの主張も理由がない。 オ原告らの第2の4(3)ウ記載の主張について本件全証拠によっても被告が原告らに対する報復的意図の下に雇用継続をせずに失職させたと認めるに足る証拠もない。 そうすると,この点に関する原告らの主張も理由がない。 (4)まとめ以上によれば,被告は,高年雇用安定法9条1項2号で定める継続雇用制度に該当する本件制度を実施しており,被告が同号に反して何らの措置も採っていないとはいえず,同号の違反を理由として被告に債務不履行及び不法行為が成立するとはいえない。 その他,被告が原告らに60歳定年規定を適用して退職扱いした行為について,債務不履行ないし不法行為を基礎づける事実は認められない。 第4 結論 以上の次第で,その余の点(損害)について判断するまでもなく,原告らの 請求はいずれも理由がないから,棄却することとして主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第5民事部中村哲裁判長裁判官中山誠一裁判官足立堅太裁判官 別紙65歳までの雇用の確保策高齢者雇用を進めるには,年齢にかかわりなく意欲と能力のある限り働き続けることを可能とする環境の整備が必要であるが,厳しい雇用失業情勢の中では中高年齢者は一旦離職すると再就職は困難であり,また,未だ円滑な企業間の労働移動も可能とはなっていない。 これまで,65歳までの雇用確保措置の導入については労使による自主的な努力がなされてきたところであるが,厳しい経済情勢もあって,近年においてはその実施状況が必ずしも進んでいないことや,既に年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられつつあること等も踏まえると,高齢者のそれまでの豊富な職業経験や知識を最大限活かす上 勢もあって,近年においてはその実施状況が必ずしも進んでいないことや,既に年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられつつあること等も踏まえると,高齢者のそれまでの豊富な職業経験や知識を最大限活かす上でも,今後各企業において,労使の工夫を凝らしながら,意欲と能力のある限り少なくとも65歳までは働き続けることが可能となる取組をさらに求めていくこととすべきである。 意欲と能力のある限り年齢にかかわりなく働くことができる社会の実現を目指すという観点に立てば,本来は定年制も含め年齢による雇用管理を全面的に禁止すること(年齢差別禁止)も考えられるが,定年制をはじめ年齢という要素が未だ大きな役割を担っており,年齢に代わる基準が確立されていない我が国の雇用管理の実態にかんがみれば,直ちに年齢差別禁止という手法をとることは,労働市場の混乱を招くおそれがあり困難である。 また,年金の支給開始年齢を念頭に,法定定年年齢(60歳)を65歳に引き上げることも方策の1つとして考えられるが,経済社会の構造変化等が進む中で厳しい状況が続く企業の経営環境等を考慮すれば,65歳までの雇用確保の方法については個々の企業の実情に応じた対応が取れるようにするべきであり,直ちに法定定年年齢を65歳に引き上げることは困難である。 したがって,我が国の雇用管理の実態や企業の経営環境等も踏まえた上で,意 欲と能力のある限り65歳までは働き続けることが可能となる取組をさらに求めるためには,法定定年年齢60歳は維持した上で,定年の定めをしている事業主は,65歳までの雇用の確保に資するよう,当該企業の定年年齢の引上げ又は継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。)の導入を行わなければならないこととすることが適 う,当該企業の定年年齢の引上げ又は継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。)の導入を行わなければならないこととすることが適当である。 この場合,各企業の実情に応じて職種等の別に定年年齢を定める等の工夫を行うことも有効であると考えられる。 継続雇用制度についても,一律の法制化では各企業の経営やその労使関係に応じた適切な対応が取れないとの意見もあることから,各企業の実情に応じ労使の工夫による柔軟な対応が取れるよう,労使協定により継続雇用制度の対象となる労働者に係る基準を定めたときは,当該基準に該当する労働者を対象とする制度を導入することもできるようにすることが適当である。 なお,事業主が労使協定をするため努力をしたにもかかわらず協議が不調に終わった場合には,高齢者雇用に係る継続雇用制度の対象となる労働者に係る基準を作成し就業規則等に定めたときは,当該基準に該当する労働者を対象とする制度を導入することを施行から一定の期間認めることが適当である。その期間については高年齢者の雇用確保の状況,社会経済情勢の変化等を考慮して政令で定めることとし(具体的には当面施行から3年間,中小企業は5年間),その後の上記の状況の変化,特に中小企業の実情等を踏まえ,当部会の意見を聴いて見直すこととする。 また,各企業が5年,10年先を見据えて計画的に取り組むことも可能となるよう,定年又は継続雇用制度の対象年齢については直ちに65歳までとするのではなく,年金(定額部分)支給開始年齢に合わせて2013年(平成25年)までに段階的に引き上げていくこととすべきである。また,制度の導入等についての準備期間も考慮し,その施行については2006年4月からとすることとし, 具体的には,2006年4月から2 成25年)までに段階的に引き上げていくこととすべきである。また,制度の導入等についての準備期間も考慮し,その施行については2006年4月からとすることとし, 具体的には,2006年4月から2007年3月までは62歳,2007年4月から2010年3月までは63歳,2010年4月から2013年3月までは64歳,2013年4月からは65歳とすることが適当である。 さらに,65歳までの雇用確保に当たっては,今後の労働力供給動向を踏まえた人材の確保,雇用・就業ニーズの多様化や厳しい経営環境の中での総コスト管理の観点からも,労使間で賃金,労働時間,働き方等について十分に話し合い,賃金・労働時間・人事処遇制度の見直しに取り組むことが必要である。また,労働者自身も絶えず自らの体力,能力,適性の維持・向上に努めるとともに,早い段階から定年後も見据えた職業生活設計を行うことが必要である。 なお,労使が真摯に協議した結果として直ちに制度を実施しないことを合意しているケースや,企業経営上の極めて困難な状況に直面しているケース等については,企業の実情を十分に考慮した助言等に止める等その施行に当たっての配慮が必要である。 また,中小企業団体が実施する継続雇用制度の導入等についての普及,啓発活動や,制度の導入前後におけるコンサルタント等を活用した支援事業に対して,政府としても,積極的に協力,支援することが必要である。 本項目については,労働者代表委員から,継続雇用制度の対象となる労働者の基準を就業規則で定めることについては,事業主が一方的かつ恣意的に対象者を選別することを可能とするおそれがあり,その点について懸念があるとの意見があった。また,雇用主代表委員から,経営への影響が大きいこと,年金支給開始年齢までを雇用でつなげることは,社会的なコスト負担を企業に転 ことを可能とするおそれがあり,その点について懸念があるとの意見があった。また,雇用主代表委員から,経営への影響が大きいこと,年金支給開始年齢までを雇用でつなげることは,社会的なコスト負担を企業に転嫁するものであること,持続的な経営のためには若年層の雇用とのバランスを保つことが必要であること,中小企業の場合,高齢者向けの職域拡大等には制約があること等から継続雇用制度の一律義務化ではなく,企業の実態に合わせた自主的な取組に委ねるべきとの意見があった。

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