平成18(行ク)22 文書提出命令申立

裁判年月日・裁判所
平成19年3月30日 名古屋地方裁判所 却下
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判決文本文10,753 文字)

- 1 -平成19年3月30日決定平成18年(行ク)第22号文書提出命令申立事件(本案事件・平成18年(行ウ)第12号滞納処分取消請求事件)主文本件申立てをいずれも却下する。 理由 第1申立て処分行政庁は,下記各文書を当裁判所に提出せよ。 申立人が処分行政庁に対し平成11年7月1日付でした法人県民税及び法人事業税に関する修正申告(「第2回修正申告」という。)に係る各税について,平成13年1月から同16年10月まで(最終月以外毎月14万6900円)の分割納付を認めた際の処分行政庁の稟議書(「本件文書1」という。) 上記1の分割納付の金額を増額(最終月以外毎月21万円)した際の処分行政庁の稟議書(「本件文書2」という。) 申立人が処分行政庁に対し平成10年12月2日付けでした法人県民税及び法人事業税に関する修正申告(「第1回修正申告」という。)に係る各税について,既に決定されていた分割納税額(最終月以外毎月19万3000円)を最終月以外毎月21万円に増額変更し,最終月分を減額変更することについての稟議書(「本件文書3」という。) 申立人に対する本件第1回,第2回各修正申告に係る徴収金整理事務の実施状況や,申立人その他の関係人との交渉経過を記載した,滞納総括票その他の名称を付した書面(「本件文書4」という。)第2事案の概要本案事件は,申立人が,愛知県東新県税事務所長(同所長の権限は,平成14年4月1日に処分行政庁に承継されたが,その前後を問わず「処分行政- 2 -庁」という。)から,申立人の法人県民税・法人事業税の加算金・延滞金に基づいてされた滞納処分(電話加入権等の差押え,本件処分)は,処分行政庁と申立人との間に延滞金・加算金の免除合意ないし処分行政庁による免除がなされたのに,これに反して行われたもので 加算金・延滞金に基づいてされた滞納処分(電話加入権等の差押え,本件処分)は,処分行政庁と申立人との間に延滞金・加算金の免除合意ないし処分行政庁による免除がなされたのに,これに反して行われたもので,公法上の信義則に違反するもので違法であるとして,その取消しを求める抗告訴訟である。 本件は,申立人が処分行政庁に対し,本件文書1ないし4の各文書について文書提出命令の申立てをするものであるが,本件文書4のうち「本件第1回,第2回各修正申告に係る徴収金整理事務の実施状況」を記載した書面は,処分行政庁作成に係る「整理状況」と題する文書がこれにあたるところ,相手方はその一部を黒塗りした写しを原本として乙11号証として提出したが,申立人は黒塗りのない整理状況と題する文書の原本の提出を求めるものである。なお,「滞納額総括表」は,申立人が別に申し立てた文書提出命令(平成19年(行ク)第5号)に対し,相手方が任意に提出した乙12号証に該当し,本件申立ての対象には含まれない。 前提事実(一件記録により認められる事実)( ) 当事者等 申立人は,愛知県名古屋市内等に支店を設置して,消費者金融業を営む者である。 処分行政庁は,その所轄する地域内の県税に関し加算金の賦課決定処分や滞納処分を行う権限を有する官庁であり,相手方は,処分行政庁が所属する地方公共団体である。 ( ) 修正申告 申立人は,平成10年12月2日,処分行政庁に対して,平成4事業年度(平成3年10月1日から平成4年9月30日までの事業年度。他の年度もこの例により表記する。)から平成10事業年度までの法人県民税及び法人事業税につき修正申告した(第1回修正申告)。 - 3 -申立人は,平成11年7月1日,処分行政庁に対して,平成4事業年度から平成10事業年度までの法人県民税及び法人事業税 までの法人県民税及び法人事業税につき修正申告した(第1回修正申告)。 - 3 -申立人は,平成11年7月1日,処分行政庁に対して,平成4事業年度から平成10事業年度までの法人県民税及び法人事業税につき修正申告した(第2回修正申告)。 ( ) 加算金決定 処分行政庁は,平成11年10月28日,平成4事業年度から平成9事業年度の法人事業税につき重加算金を,平成10事業年度の法人事業税につき過少申告加算金及び重加算金を決定した。 ( ) 法人県民税及び法人事業税の納付 申立人は,平成16年7月5日までに,上記各修正申告で増額した法人県民税及び法人事業税を完納した。 ( ) 本件処分 処分行政庁は,平成16年11月18日付けで,申立人の滞納金(法人事業税ないし法人県民税の延滞金,過少申告加算金及び重加算金)を徴収するため,申立人の所有する財産を差し押さえる本件処分をした。 ( ) 審査請求 申立人は,平成17年1月12日,愛知県知事に対して,本件処分の取消しを求める審査請求をしたが,愛知県知事は,同年8月24日,同審査請求を棄却する裁決をした。 ( ) 本訴提起 申立人は,平成18年2月22日,本件処分の取消しを求める本訴を提起した。 本案事件の争点申立人と処分行政庁の間に延滞金・加算金の免除合意ないし処分行政庁による免除があったか,そして,本件処分は公法上の信義則に反する違法なものとして取り消されるべきか。 第3本件申立てについての当事者の主張- 4 -(申立人) 立証の必要性等( ) 処分行政庁が納税者の権利義務に変更を与える場合に所要の手続をして いる事実を立証するため,本件各本税の延納申請に対し,その可否の決定を決裁権者に求め,その事績を明らかにしておくため作成された本件文書1及び2の提出を求める。 更を与える場合に所要の手続をして いる事実を立証するため,本件各本税の延納申請に対し,その可否の決定を決裁権者に求め,その事績を明らかにしておくため作成された本件文書1及び2の提出を求める。 第1回修正申告増額分の分割納付額の変更経緯に関する相手方の主張が誤りであることを立証するため,分割納付額変更の可否の決定を決裁権者に求め,その事績を明らかにしておくため作成された本件文書3の提出を求める。 本訴全般について申立人の主張が正当であることを立証するため本件文書4の提出を求める。 ( ) 相手方は,本件文書4の整理状況と題する文書の原本に記載された内容 は,処分行政庁の公的見解ではないから,これを取り調べる必要はないと主張するが,処分行政庁の徴収担当者が整理状況と題する文書の原本にどのような記載をしていたかは,本案の争点判断について必要な事実である。 文書の存在法人県民税及び法人事業税の分納及び分納額の変更を認めるという行政処分を行うに当たっては,末端の徴税吏員が稟議書を作成し,処分行政庁ないしその委任を受けた決裁権者の決裁を得ることが必須である。したがって,愛知県東新県税事務所の担当者が,申立人に対し,上記県民税及び事業税の分納を認めた以上,本件文書1ないし3はいずれも存在しているはずである。 仮に,稟議書が存在しないのであれば,分割納付の権限が末端の徴税吏員に委譲されていることになる。 文書提出義務の原因文書所持者の文書提出義務の原因は,主位的に民訴法220条1号を,予- 5 -備的に同条3号,4号を主張する。 ( ) 民訴法220条1号該当性 相手方は,本件文書4の文書提出命令の申出に対し,整理状況と題する文書の一部を黒塗りにした乙11号証を提出した上で,その第4準備書面において乙11号証を積極的に引用して主張し 220条1号該当性 相手方は,本件文書4の文書提出命令の申出に対し,整理状況と題する文書の一部を黒塗りにした乙11号証を提出した上で,その第4準備書面において乙11号証を積極的に引用して主張しているから,乙11号証の作成のもととなった整理状況と題する文書の原本は,民訴法220条1号所定の「引用文書」にあたり,同号による文書提出義務を負う。 なお,相手方は,乙11号証の黒塗り部分があるのは正当な理由に基づくものであると主張するが,民訴法220条1号の提出義務については,民訴法191条,197条1項1号を類推適用をすべきではない。また,整理状況と題する文書の黒塗り部分に記載されている事項は,いずれも民訴法191条,197条1項1号所定の公務上の秘密には当たらない。 ( ) 民訴法220条3号該当性 本件各文書が民訴法220条3号に該当することは明白である。 なお,相手方は,民訴法191条,197条1項1号の趣旨に照らし,同法220条3号に基づく文書提出義務を負わないと主張するが,整理状況と題する文書の秘密性の程度及び開示の必要性に照らすと,相手方の主張は失当である。 ( ) 民訴法220条4号該当性 本件文書4は民訴法220条4号のイないしホのいずれにも該当せず,同号の提出義務がある。 ア4号イ,ハ,ホ非該当性本件文書4が4号イ,ハ,ホに該当しないことは,法文の規定上明白である。 イ4号ロ非該当性(ア) 当事者が自ら引用した文書を所持することにより提出義務を負うと- 6 -きには,守秘義務があるものでも提出義務は免れない。また,民訴法220条4号所定の秘密を実質秘と解すべきことは確定した判例であるところ,租税の賦課徴収に関する記録は,訴訟当事者となっている納税者が自己に関する記録の公開を希望すれば,これを秘密にする必要も 法220条4号所定の秘密を実質秘と解すべきことは確定した判例であるところ,租税の賦課徴収に関する記録は,訴訟当事者となっている納税者が自己に関する記録の公開を希望すれば,これを秘密にする必要もない。 公務員が作成する文書で公務員が組織的に用いるものは,4号ニのかっこ書きによって提出義務を負うから,4号ロにも該当しない。 処分行政庁の監督官庁である愛知県知事が,4号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べるのは,民訴法223条4項各号(国の安全が害されるおそれ,犯罪の予防等に支障を及ぼすおそれ)のおそれがある場合に限られる。 したがって,本件文書4は民訴法220条4号ロに該当しない。 (イ) 相手方は,本件文書4について,乙11号証の黒塗り部分のうち,処分行政庁による申立人の資産調査に関する情報が記載されている部分は,公務員の職務上の秘密に該当し,これを開示すれば申立人の財産隠匿を容易にして徴税事務に支障を来すから,民訴法220条4号ロに該当し,文書提出義務を負わない旨主張する。 しかし,税務当局が納税者の資産調査をする権限を有し,実際に資産調査をすることは納税者にとって常識であるから,これを隠す必要も理由もない。また,徴税吏員が徴収事務処理上得た情報を他人に漏らすことは地方税法でも禁止されているが,本件のように納税者本人の財産状況等の調査結果を納税者本人が要求した場合に明らかにすることは当然であって,漏らしてはならない秘密に当たらない。 そして,納税者には金融機関から調査があった旨の通知があることが通常であること,昔とは異なり別口預金が横行しているわけではないことに照らすと,預金調査をしたことが納税者に知れると財産の隠- 7 -匿を容易にすることはない。 (ウ) 相手方は,本件文書4について,乙11号証の黒塗り部分のうち,他の道府県 いるわけではないことに照らすと,預金調査をしたことが納税者に知れると財産の隠- 7 -匿を容易にすることはない。 (ウ) 相手方は,本件文書4について,乙11号証の黒塗り部分のうち,他の道府県の申立人に対する滞納整理状況に関する情報(担当者の個人名を含む。)が記載されている部分は,公務員の職務上の秘密に該当し,これを開示すれば他の自治体との信頼関係が破壊され,今後の情報収集,ひいては徴税事務の遂行に著しい支障を生じるから,民訴法220条4号ロに該当し,文書提出義務を負わない旨主張する。 しかし,納税者にとって関係のある税務当局がお互い連絡を取り合って課税することは常識となっているから,これを隠す必要も理由もない。 そして,この文書の提出によって公共の利益を害することはないから,公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれはない。 ウ4号ニ非該当性本件文書4は,専ら文書の所持者の利用に供するための文書ではなく,公務員が職務上組織的に用いるものであり,本件文書4は民訴法220条4号ニに該当しない。 (相手方) 文書の不存在本件文書1ないし3はいずれも存在しない。処分行政庁担当者が課税徴収権者である処分行政庁に対し,申立人主張にかかる事項について稟議した事実はない。処分行政庁が分割納付金を受納することは行政処分には当たらず,処分行政庁において稟議書を作成する義務もないから,それが存在しないのは当然である。 本件文書4の任意提出と立証の必要性等本件文書4は,整理状況と題する文書と滞納額総括表と題する文書を指すものと思料されるので,前者の写しを乙11号証,後者を乙12号証として提出- 8 -した。このうち乙11号証については,整理状況と題する文書の記載のうち処分行政庁が守秘義務を負う部分を黒塗りした上,その写しを原本として提出した。 乙11号証,後者を乙12号証として提出- 8 -した。このうち乙11号証については,整理状況と題する文書の記載のうち処分行政庁が守秘義務を負う部分を黒塗りした上,その写しを原本として提出した。 整理状況と題する文書は,徴収担当者と滞納者の折衝状況等が記載されているものであるが,ここに記載されている徴収担当者の意見は,徴収対策の検討段階のものであり,処分行政庁の公的見解ではない。したがって,整理状況と題する文書の原本は,本案事件の争点として申立人が主張する第1回修正申告に係る延滞金及び第2回修正申告に係る延滞金及び加算金を,処分行政庁と申立人との免除合意又は処分行政庁の一方的処分により免除したとする事実を明らかにするものではなく,証拠として取り調べる必要性はない。 民訴法220条1号非該当性相手方は,本案事件の準備書面で引用した部分については,乙11号証ですべて開示しており,整理状況と題する文書で黒塗りした部分は,これを上記準備書面において引用したことも,相手方の主張を基礎づけるため当該部分の内容に言及したこともない。したがって,整理状況と題する文書の原本は民訴法220条1号の文書にあたらない。 また,当該黒塗りの部分には,公務員の職務上の秘密が記載されており,民訴法220条4号ロに該当するから,民訴法220条1号に基づく文書提出義務を負わない。 民訴法220条3号非該当性整理状況と題する文書の原本のうち乙11号証の黒塗り部分に相当する部分は,上記のとおり民訴法220条4号ロに該当するから,民訴法191条,197条1項1号の各規定の趣旨に照らし,処分行政庁は文書の提出を拒むことができる。したがって,民訴法220条3号に基づく文書提出義務を負わない。 民訴法220条4号非該当性(同号ロ該当性)( ) 処分行政庁が金融機関等 趣旨に照らし,処分行政庁は文書の提出を拒むことができる。したがって,民訴法220条3号に基づく文書提出義務を負わない。 民訴法220条4号非該当性(同号ロ該当性)( ) 処分行政庁が金融機関等に対して行った申立人の預金調査等の資産調査に - 9 -関する記載は,申立人が滞納している第1回修正申告に係る延滞金及び第2回修正申告に係る延滞金及び加算金を,滞納処分等により徴収するために調査したものであるから,公務員の職務上の秘密に当たる。そして,当該資産調査に関する情報を申立人に開示すると,申立人の財産の隠匿を容易にし,処分行政庁が行う滞納処分等の徴収事務の遂行に著しい支障を生じることは必然である。 したがって,資産調査に関する情報の部分は,民訴法220条4号ロに該当する。 ( ) 他の道府県の申立人に対する滞納整理状況に関する情報(担当者名を含 む。)は,これら各地方公共団体に共通する滞納者の徴収金の確保のために,相手方以外には情報を開示しないという信頼の下に各地方公共団体の徴収担当者から処分行政庁の徴収担当者が情報提供を受け,それを記録したものであるので,公務員の職務上の秘密に当たる。 そして,このような情報を相手方が開示すれば,申立人が他の道府県の徴収担当者に接触し,それらの地方公共団体の担当者の意見でしかない事項を持ち出して,担当者に未納の延滞金及び加算金の免除を執拗に迫ることや,その言質を密かに録音して法廷で公開することが予想される。そのような事態になれば他の道府県との信頼関係は著しく損なわれ,今後愛知県は他の道府県から情報を得られなくなり,処分行政庁を含む愛知県の徴税事務の遂行に著しい支障を来すことは必然である。 したがって,当該情報に関する部分は,民訴法220条4号ロに該当する。 ( ) 民訴法223条3項は,監督官庁 られなくなり,処分行政庁を含む愛知県の徴税事務の遂行に著しい支障を来すことは必然である。 したがって,当該情報に関する部分は,民訴法220条4号ロに該当する。 ( ) 民訴法223条3項は,監督官庁が民訴法220条4号ロに該当する旨の 意見を述べるときは理由を示さなければならないと規定しているだけで,その理由は特に制限されない。 ( ) よって,整理状況と題する文書の原本のうち乙11号証の黒塗り部分に相 当する部分は,民訴法220条4号ロに該当するから,処分行政庁は同条同- 10 -号による文書提出義務を負わない。 第4当裁判所の判断 本件文書1ないし3の存否について申立人は,本案事件における法人県民税及び法人事業税の分納許可やその額の変更は行政処分であって,処分行政庁内部で稟議及び決裁が行われるものであるとして,その稟議文書に該当する本件文書1ないし3の文書提出命令を求めるが,相手方はそれらは行政処分ではなく,稟議の事実もないとして,当該文書は存在しないと主張しているので検討する。 ( ) 甲1号証,3号証,乙11号証によれば次の事実が認められる。 ア申立人は,平成10年12月22日,第1回修正申告による増額分の法人県民税・法人事業税の納付方法に関して,手形等の担保を提供することはできないが,納付誓約書を差し入れるので,24回の分納として欲しい旨申し出た。これに対し,処分行政庁の担当者Aは,申立人に納付誓約書の様式をファックスで送信した上,その顛末を整理状況と題する文書に記載して,上司のB課長,C課長補佐,D主査の供覧に付した。 また,上記Cは,平成11年1月11日,申立人から納付誓約書が到達したので,その旨を整理状況と題する文書に記載した上,これをB課長の供覧に付し,納付誓約書に受付印を押して申立人に返送した。 イ申 また,上記Cは,平成11年1月11日,申立人から納付誓約書が到達したので,その旨を整理状況と題する文書に記載した上,これをB課長の供覧に付し,納付誓約書に受付印を押して申立人に返送した。 イ申立人は,同年8月25日,第2回修正申告による増額分の法人県民税・法人事業税の分納と加算金・延滞金の減免を申し出,その分納に関する納付誓約書が同年12月15日処分行政庁に郵送されたので,担当者Eは,その経過を整理状況と題する文書に記載した上,F課長の供覧に付し,納付誓約書に受付印を押して申立人に返送した。 ( ) 上記の事実経過が認められるところ,納税猶予に関する地方税法15条に よれば,分納の期間は1年以内とされており,同法16条1項では,50万円を超える地方税を猶予する場合には特別の事情がない限り担保を徴さなけ- 11 -ればならないと規定されていることに照らしてみると,上記納付誓約書の提出による分納は,いずれも地方税法所定の行政処分たる納税猶予処分であるとは解されない。 そして,納付誓約書の提出を受けて分納とした経過は上記のとおり担当者において整理状況と題する文書に記載して上司の供覧に付していることが認められるところ,なお稟議書を作成して決裁を受けた経過があることを推認すべき事情はみあたらない。それは分割納付額の増額の経緯についても同様である。 ( ) したがって,本件文書1ないし3が存在すると認めることはできず,これ らの提出を求める本件申立部分は理由がない。 本件文書4の整理状況と題する文書について( ) 相手方は,上記文書は,処分行政庁の公的見解が記載されたものではない から,取調べの必要性がないと主張するが,それが仮に担当者限りの認識や意見あるいは検討段階の不確定な意見等の記載であるとしても,原告主張の事実に関する立証 政庁の公的見解が記載されたものではない から,取調べの必要性がないと主張するが,それが仮に担当者限りの認識や意見あるいは検討段階の不確定な意見等の記載であるとしても,原告主張の事実に関する立証資料として価値がないとはいえないから,証拠としての必要性を否定することはできない。 ( ) 民訴法220条1号の引用文書に当たるか 申立人は,相手方はその準備書面において乙11号証を引用しているから,民訴法220条1号により,乙11号証の原本である整理状況と題する文書を黒塗り部分のない原本として提出すべきである旨を主張する。 しかし,乙11号証は,申立人が本件文書4の提出命令の申立てを行ったため,相手方が,それに任意に応じる趣旨で,本件文書4にあたる整理状況と題する文書について,相手方が公務員の職務上の秘密に関する記載部分として提出すべきでないと思料する部分を黒塗りした上,その写しを原本として提出したものであり,もともと相手方において整理状況と題する文書の存在を自己の主張の根拠として積極的に言及し,引用した経緯により提出した- 12 -ものではなく,したがって相手方の準備書面中でも,一部を黒塗りした乙11号証の記載の限度でこれを引用するに止めており,黒塗りにかかる部分の内容は引用していないのであるから,当該部分を含む整理状況と題する文書の原本が引用文書に当たるということはできない。 なお,書証の提出にあたり,文書の一部を除外して提出することは,それが隠蔽等の不当な手段によってなされるなどの事情がなければ,それ自体が許されないとする理由はなく,相手方が除外部分の提出を必要とするときは,当該部分の文書提出命令を申し立て,裁判所の判断を受けることで足るものである。 ちなみに,申立人は民訴規則143条2項にも言及しているが,この規定は,写しを原本 が除外部分の提出を必要とするときは,当該部分の文書提出命令を申し立て,裁判所の判断を受けることで足るものである。 ちなみに,申立人は民訴規則143条2項にも言及しているが,この規定は,写しを原本として提出された書証について,その写しの基となった原本の提出を命じることができる趣旨を含むものではないことが明らかである。 ( ) 民訴法220条3号の利益文書又は法律関係文書として提出義務があるか 整理状況と題する文書が民訴法220条3号の利益文書又は法律関係文書に該当するとしても,後述するとおり,そのうち乙11号証で黒塗りにされた部分に相当する部分は,民訴法220条4号ロの公務員の職務上の秘密に該当する文書で,公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあると認められるから,同法197条1項1号,191条の各規定の趣旨に照らし,処分行政庁は,その提出を拒むことができるものと解するのが相当である(最高裁判所平成16年2月20日第二小法廷決定・集民213号541頁参照)。 ( ) 民訴法220条4号の除外事由があるか ア乙11号証及び当裁判所が民訴法223条6項に基づくいわゆるインカメラ手続により整理状況と題する文書の原本の提示を受けた結果によれば,整理状況と題する文書の乙11号証の黒塗り部分中には,処分行政庁が本件処分を行うについて行った申立人の資産調査の状況に関する記載,及び処分行政庁の担当者が他の道府県の地方税事務担当者から聴取した申立人- 13 -の滞納金等の取扱状況等に関する情報や担当者の氏名等の記載があり,これらは公務員の職務上の秘密に関する事項であると認められる。 上記各記載のうち,処分行政庁において行った申立人の資産調査の状況が開示されると,申立人に対する今後の滞納処分の円滑な執行について障害が生じるなど,公務の遂行に著しい支 する事項であると認められる。 上記各記載のうち,処分行政庁において行った申立人の資産調査の状況が開示されると,申立人に対する今後の滞納処分の円滑な執行について障害が生じるなど,公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるというべきであり,また,処分行政庁の担当者が他の道府県の地方税事務担当者との間で行った申立人の滞納金等の取扱状況に関する情報や意見の交換状況が開示されると,相互の信頼関係が損なわれ,今後の円滑な情報交換や情報収集に障害となることが予想され,処分行政庁の徴税事務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあると認められる。 なお,申立人は,民訴法220条4号ニのかっこ書きにより,公務員が組織的に用いるものは除外事由から除外され民訴法220条4号で提出義務が認められているから,その場合は民訴法220条4号ロにも該当しないと主張するが,そのような解釈を同号ロの公務秘密文書について行う合理的な理由は見出し難いというべきである。 イそうすると,本件文書4の整理状況と題する文書のうち乙11号証で黒塗りにされた部分に相当する部分は,いずれも,民訴法220条4号ロに該当するから,所持者は同号による提出義務を負わず,したがって処分行政庁は,本件文書4に該当する整理状況と題する文書の提出義務を負うものではないというべきである。 結論 よって,本件申立てはいずれも理由がないから却下する。 平成19年3月30日名古屋地方裁判所民事第9部- 14 -中村直文裁判長裁判官前田郁勝裁判官尾河吉久裁判官

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