平成14(行ウ)52 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成15年3月31日 名古屋地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文22,846 文字)

主文 1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,Aに対して,2106万5100円を請求せよ。 第2 事案の概要本件は,犬山市の住民である原告らが,同市が都市基盤整備公団(以下「公団」という。)との間で締結した業務委託契約が,地方自治法(以下「法」という。)234条2項,地方財政法(以下「地財法」という。)4条1項などに違反した違法なものであり,同契約に基づく委託代金の支払も違法であると主張して,法242条の2第1項4号に基づき,同市の市長(執行機関)である被告に対して,公金を支出した市長個人に同代金相当額の損害賠償を請求することを求めた住民訴訟である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実)(1) 原告らは犬山市の住民であり,被告は,犬山市を代表する執行機関である。 (2) 犬山市犬山駅西地区(名鉄犬山駅西南にあって,愛知県犬山市大字犬山字富士見町地内を含む別紙図面の赤線で囲まれた地域。約3.044ヘクタール。以下「駅西地区」という。)を含む中心市街地は,かつては城下町として文化,経済の中心であったが,近年はモータリゼーションの進展等に伴い,にぎわいが失われつつあったところ,平成11年8月,大型ショッピングセンターの「ユニー犬山店」が閉店したことをきっかけとして,平成12年1月21日,「犬山駅西再整備事業(以下「本件事業」という。)推進協議会」(以下「駅西推進協議会」という。)が組織された。 (3) 犬山市は,平成12年7月,公団に対し,「犬山駅西地区市街地再開発事業基本計画策定業務」を委託した(以下「基本計画策定委託契約」という。)。 (4) 次いで,犬山市は,平成12年8月,駅西 (3) 犬山市は,平成12年7月,公団に対し,「犬山駅西地区市街地再開発事業基本計画策定業務」を委託した(以下「基本計画策定委託契約」という。)。 (4) 次いで,犬山市は,平成12年8月,駅西地区にある犬山市庁舎の建て替えを検討するため,「犬山市新庁舎建設事業推進協議会」(以下「新庁舎推進協議会」という。)を組織した。 (5) 犬山市は,平成13年2月,駅西推進協議会の意向を踏まえて,「犬山駅西地区再整備の提案」(以下「再整備の提案」という。乙3)を作成,公表し,公団も,同月末ころ,基本計画策定委託契約に基づく成果物として,報告書(以下「基本計画報告書」といい,その内容を「基本計画」という。乙10)を作成し,犬山市に引き渡した。 (6) 犬山市は,平成13年3月,新庁舎推進協議会の提案を受けて,犬山駅東南方向にある橋爪・五郎丸地区を新庁舎の候補地とする「犬山市新庁舎建設基本構想」(以下「新庁舎基本構想」という。乙2)を発表し,さらに,同月,「犬山市中心市街地活性化基本計画」(乙1)を策定した。 (7) 平成13年3月期の犬山市議会において,一部議員から,本件事業に対する反対意見が出され,これとともに,犬山市が公団との間で締結することを予定していた「犬山駅西地区再整備事業事業化検討業務の委託に関する協定(以下「本件委託契約」という。)」に関する予算の削減を求める修正動議が提出されたが,修正案は議会において否決された。 (8) 地元の商店街をもって組織された「協同組合犬山駅前通り発展会」(以下「発展会」という。)は,平成13年7月10日,犬山市議会に対し,市庁舎の他地区への移転に反対する旨の要望書を提出した(甲9)。 (9) 犬山市は,平成13年8月20日,公団との間で,委託代金を2106万5100円(消費税等を含む。)と定めて,本件委 議会に対し,市庁舎の他地区への移転に反対する旨の要望書を提出した(甲9)。 (9) 犬山市は,平成13年8月20日,公団との間で,委託代金を2106万5100円(消費税等を含む。)と定めて,本件委託契約を随意契約の方式で締結した(甲3)。 (10) 公団は,平成14年3月20日,本件委託契約に基づく業務を完了し,同月27日,犬山市の検査を受けた後,成果物として「13-犬山駅西地区再整備事業事業化検討調査業務報告書」(以下「本件報告書」という。乙8)を引き渡した。 そして,犬山市は,同年4月15日,前記委託代金を公団に支払った(以下「本件支出」という。)。 (11) 原告らは,平成14年7月19日,犬山市監査委員に対して,前記委託代金相当額を犬山市に返還するよう求める住民監査請求を行ったが,同委員は,同年9月13日,請求人らの請求は理由がないとの決定を行い,そのころ,原告らに通知した。 2 争点(1) 本件委託契約及び本件支出は,地財法4条1項に反するか。 ア基本計画策定委託契約との重複の有無イ本件事業の実現可能性の有無ウ地権者らの同意形成を外部委託することの是非(2) 本件委託契約は,法施行令167条の2の定める随意契約の要件を満たさず,法234条2項に反するか。 3 当事者の主張の要旨(1) 争点(1)について(原告ら)本件委託契約は,以下のとおり,必要性のないものであり,本件支出は,必要最少限度の支出とはいえず,地財法4条1項に反し,その原因となる本件委託契約も違法である。 ア基本計画策定委託契約との重複について犬山市は,平成12年7月,公団との間で,委託代金約1500万円との約定で基本計画策定委託契約を締結し,平成13年2月末,地元及び地権者の一部から出されていた要望を踏まえ 定委託契約との重複について犬山市は,平成12年7月,公団との間で,委託代金約1500万円との約定で基本計画策定委託契約を締結し,平成13年2月末,地元及び地権者の一部から出されていた要望を踏まえた本件事業の内容等についての専門家の検討結果を内容とする基本計画報告書を得ていた。ここに記載された基本計画は,犬山市庁舎の全面移転を前提とするものであったところ,本件委託契約は,基本計画を推進するため,その事業化についての調査検討を委託するものである。 この点につき,被告は,本件事業を実施する場合,どのようなプランが最良なのかという点を含めて幅広い視点で検討することを目的として本件委託契約を締結したものであると主張するが,そのようなものでないことは,本件報告書が「平成13年度検討目的」として「昨年度の基本計画をタタキ台として」事業化の検討を進めることであると述べていること,その内容が基本計画報告書の引き写しであることからも明らかである。 したがって,本件委託契約は,屋上屋を重ねるものであり,何らの必要性がないものである。 イ本件事業の実現可能性について(ア) 本件事業が前提とする基本計画は,土地区画整理法及び都市再開発法に基づく事業を基本的内容としているところ,土地区画整理組合の設立認可には,地権者の3分の2以上の同意が必要である(土地区画整理法18条)。 ところが,基本計画及びこれを前提として策定された再整備の提案に対しては,地権者の大半に強い反対意見があり,地元の商店街で組織されている発展会も,平成13年7月10日に犬山市庁舎の移転に強く反対する要望書を提出している。このように,基本計画について地権者らの基本的コンセンサスを欠く状況の下では,事業の具体化のための検討等を委託しても,将来,基本計画の大幅見直しや計画の中止等という事態に する要望書を提出している。このように,基本計画について地権者らの基本的コンセンサスを欠く状況の下では,事業の具体化のための検討等を委託しても,将来,基本計画の大幅見直しや計画の中止等という事態になれば,その検討作業は全く無駄なものとなってしまう可能性が大きいし,仮に,基本計画に沿って犬山市が本件事業を進めようとしても,いずれ土地区画整理組合の設立自体が不可能となり,事業は初期の段階で頓挫する蓋然性があることは明らかである。 (イ) また,本件事業における建物整備については,都市再開発法の定める市街地再開発事業の手法によることを予定しているが,基本計画による事業対象区域は,同法3条3号,4号所定の要件を満たしていない。 すなわち,同条3号は,「土地の利用状況が著しく不健全」であることを要件とするが,これは,施行区域内に十分な公園がなく子供たちにとって遊ぶ場所がほとんどないとか,施行区域内の道路では自動車の通過交通が頻繁であるにもかかわらず歩道が全くなく,買い物,通学,通勤に際し危険度が高いというように,必要な公共施設を欠いている場合をいうところ,対象区域である駅西地区は,住宅街ではないから,公園等を必要とせず,自動車の通過が頻繁な駅前道路には両側に歩道が設置され,他に交通頻繁な道路はなく,密集市街地でもないから,「利用状況が著しく不健全」な区域とはいえない。 また,同条4号は,「当該区域内の土地の高度利用を図ることが,当該都市の機能の更新に貢献すること」を要件としているところ,ここでの都市機能更新とは,都市を構成する各部分の機能更新をいうが,ユニー犬山店の撤退は,駅西地区の店舗は採算が取れないという市場原理に基づくものであって,さらに市役所が移転すれば,駅西地区の集客能力はますます低下し,犬山駅西口にテナントビルを整備する等の枠組みを用 ー犬山店の撤退は,駅西地区の店舗は採算が取れないという市場原理に基づくものであって,さらに市役所が移転すれば,駅西地区の集客能力はますます低下し,犬山駅西口にテナントビルを整備する等の枠組みを用意したところで,採算が取れないことは明らかである(このことはユニー犬山店閉鎖後のビルへのテナント募集が芳しくなかったことからも裏付けられる。)。したがって,駅西地区の都市機能は,市役所の移転によって低下することが避けられず,テナントビル整備等の再開発をしても,都市機能の更新にはつながらない。また,本件報告書は,B病院の建て替えが都市機能の更新に貢献すると述べるが,現状でもB病院の建物は十分に機能しており,その建て替えが都市機能の更新につながらないことは明らかであるし,そもそも一民間病院の近代化は,これを経営する医療法人自らが行うべきである。 ウ地権者の同意形成を外部委託することについて本件委託契約は,地権者の同意形成を公団に委託するものであるが,都市再開発を実施するに際し,住民に情報を提供し,住民間の討論を組織し,意見調整を行うことは,地方公共団体自身の業務であって,外部事業者に業務委託することは許されない。 (被告)原告らの主張は,以下のとおり,主張自体失当である。 ア基本計画策定委託契約との重複について本件委託契約は,公団からの基本計画報告書の成果も参考にして,基本計画を基に,仕様書(甲4)記載の整備区域の可変性,土地区画整理事業及び都市再開発事業の区域の可変性,全体事業の成立性,一体施行の事業スケジュール等の具体的事項について,事業化の検討を委託することを内容とするものであり,本件報告書も,基本計画の問題点を整理した上で,地権者意向を踏まえた整備計画及び事業費の抑制方策を基本方針 事業スケジュール等の具体的事項について,事業化の検討を委託することを内容とするものであり,本件報告書も,基本計画の問題点を整理した上で,地権者意向を踏まえた整備計画及び事業費の抑制方策を基本方針として,そのために必要な検討を行っているものである。 原告らは,本件委託契約が調査検討の対象とする事業内容は,基本計画と同様,犬山市庁舎の全面移転を前提とする点で確定しているかのごとく主張するが,本件事業は,その内容が確定されているわけではない。本件委託契約は,本件事業を行う場合には,どのようなプランで行うのが最良なのか,多くの地権者の合意できる可能性の高いプランはどのようなものか等の点を含め,幅広い視点で具体的に検討することを目的として締結されたものである。 したがって,本件委託契約は,基本計画策定委託契約と重複するものではない。 イ本件事業の実現可能性について(ア) 本件事業を実施する場合には,土地区画整理法及び都市再開発法等の活用が柱となるが,その際には,可能な限り,地権者の同意を得ることが望ましい。確かに,発展会は市庁舎の移転に反対する旨の要望書を提出しているが,同会も本件事業そのものに反対しているものではない。市庁舎は,庁舎そのものの老朽化,狭あい,耐震性能などの諸問題を抱えており,その移転は,全市民の問題であって駅西地区の地権者だけがその決定権を有しているものでもない。 また,地権者の3分の1の反対があれば,土地区画整理組合の設立はできないが,土地区画整理事業や都市再開発事業は,組合施行の方法に限られるものではなく,種々の施行者による方法もあるから,法的に不可能ということはない。そもそも,明日にでも土地区画整理事業や都市再開発事業が始まるというものでもない。本件委託契約は,駅西地区の将来の再整備事業を行うために,種々の具体的問題につい るから,法的に不可能ということはない。そもそも,明日にでも土地区画整理事業や都市再開発事業が始まるというものでもない。本件委託契約は,駅西地区の将来の再整備事業を行うために,種々の具体的問題について検討を行う目的のものであり,これによって得られた成果は,貴重かつ重要なものである。 (イ) 客観的にみて土地の利用状況が著しく不健全であれば,都市再開発法3条3号の要件に該当するというべきであり,原告ら主張のような例示の場合に限られるものではない。また,「公共施設」は,原告らが理解する内容のようなものではない。 ウ地権者の同意形成を外部委託することについて本件事業のように権利関係の複雑な地区における事業化を検討するに際し,事業内容そのものの検討とともに,採算性等についても,専門家の意見に耳を傾け,地元の要望や地権者の意向をも踏まえて,事業計画の策定をすべきことは当然であるところ,犬山市は,その一環として,本件委託契約を締結したのであって,何ら違法ではない。 (2) 争点(2)について(原告ら)法234条2項は,地方公共団体が請負等の契約を締結しようとする場合には,原則として一般競争入札により行うことを義務づけ,例外的に政令で定める要件を満たす場合に限り随意契約によることを認めているところ,以下のとおり,随意契約の方式によった本件委託契約は,法施行令167条の2の定める要件を満たさない。 ア被告は,公団が随意契約によらねば本件委託契約の締結ができないことを理由に,その性質又は目的が競争入札に適しない旨主張するが,公団が随意契約によらねばならないことは,あくまで公団側の事情にすぎないから,このことは何ら本件委託契約が競争入札に適しないことの根拠とならない。そもそも都市基盤整備公団法28条は,民業を圧迫することを 随意契約によらねばならないことは,あくまで公団側の事情にすぎないから,このことは何ら本件委託契約が競争入札に適しないことの根拠とならない。そもそも都市基盤整備公団法28条は,民業を圧迫することを避けるのが基本的趣旨である。しかも,公団が手掛けた都市再開発事業は,JR稲沢駅前の旧国鉄操車場跡地やJR勝川駅前の再開発事業のように,見通しの甘さから各地で失敗している。 イまた,被告は,公団が法律に基づく特殊法人であり,資本金は政府,地方公共団体の出資によるものであることから,資力,信用について全く心配がないと主張するが,公団は,1兆8654億円の債務超過の状態にあり,近い将来において廃止が予定されているなど,資力・信用共にない。 代金についても,十分な積算を行い,地方公共団体にとって有利な価格で締結すべきところ,本件委託契約においては,これらが尽くされているとはいえない。 ウ民間であっても,都市再開発事業のノウハウと実績を有する業者は少なくなく,むしろ,競争入札によって民間の業者に委託した方が,地方公共団体にとって有利な価格が実現する可能性が高いというべきである。 (被告)公団は,都市基盤整備公団法に基づき,都市地域等における居住環境の向上,都市機能の増進を目的として,国等の出資により設立されている特殊法人であり,十分な資力,信用を有する法人である。しかも,市街地再開発事業について,①直接施行,②再開発組合又は地方公共団体との協調施行の双方の事例を合わせると,全国で111地区の実績を有しており,多くのノウハウを蓄積していることに照らすと,本件委託契約において犬山市が仕様書によって期待する成果をもたらすことが現実に可能な技術,経験等を持ち合わせた組織であることは明らかである。 しかるところ,公団は,地方公共団体等の委託を受けて初めて業務を行う 契約において犬山市が仕様書によって期待する成果をもたらすことが現実に可能な技術,経験等を持ち合わせた組織であることは明らかである。 しかるところ,公団は,地方公共団体等の委託を受けて初めて業務を行うことができ(都市基盤整備公団法28条),入札に参加することはできないと解されている。そのため,公団に業務を委託しようとすれば,随意契約の方法をとるしかないところ,被告は,公団に業務を委託することが,その目的を達成する上で,より妥当であり,犬山市の利益に適うと判断して,本件委託契約を締結したのであり,法施行令167条の2第1項2号の「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当するから,法234条2項に反しない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件委託契約及び本件支出は,地財法4条1項に反するか。)について(1) 一般に,地方公共団体が,都市部の再開発もしくは土地区画整理等の事業を実施するには,ある程度の長期的な予測に基づいて,一定の目標を設定し,それを施行する地域を確定し,それにふさわしい手法,実施形態等を選択することを要する。そのためには,どのような目標が適当か,どのような内容にすべきか,対象地域をどのように定めるか,地権者等の意向をどのように反映させるか,どのような施行方法によるか等について,事前に十分な調査・検討を尽くすことが必要であることはいうまでもない。そして,地方公共団体自らが,上記の各事項について調査・検討することができるのは当然であるが,事柄の性質によっては,専門的知見を有する外部の団体等に調査・検討を委託することができるし,あるいは,かかる方法がむしろ適切と考えられる場合もあり得る。その場合,地方公共団体は,しかるべき団体等に調査・検討業務を委託する旨の契約を締結することになる。 ところで,法13 ることができるし,あるいは,かかる方法がむしろ適切と考えられる場合もあり得る。その場合,地方公共団体は,しかるべき団体等に調査・検討業務を委託する旨の契約を締結することになる。 ところで,法138条の2は,普通地方公共団体の執行機関が,その事務を誠実に管理・執行すべき義務を負う旨定め,同法2条14項は,その事務を処理するに当たって,最少の経費で最大の効果を挙げるべきことを定めている。また,地財法4条1項は,地方公共団体の経費は,その目的を達するために必要かつ最少の限度を超えて支出してはならない旨規定している。これらは,いずれも地方公共団体の財政の健全化確保という趣旨から規定されたものと考えられるところ,法2条16項,17項の法意に照らすと,単に会計事務担当職員に対して訓示的に事務の在り方を示すにとどまるものではなく,地方公共団体にとって不必要あるいは過大な経費負担をもたらす契約が締結された場合には,その契約締結行為は違法と評価されることがあり得るというべきであり,その程度が更に著しく,当該契約の法的効力を否認しなければ前記各法条の趣旨を没却すると考えられる場合には,当該契約は無効となり,したがってその履行としての公金の支出も違法と判断されることがあり得ると解するのが相当である。 もっとも,いかなる契約が不必要であるのか,あるいは過大な経費負担をもたらすというべきかは,第一次的には,当該地方公共団体が,意図した行政目的実現の見地から,当該契約の目的,性質,給付内容,締結に至った経緯等を総合的に考慮して判断すべきものであるから,上記のように違法であるとの評価をするためには,その裁量権の範囲を逸脱し,あるいはこれを濫用したと認められる場合に限られるというべきである。 以下,かかる見地から,本件委託契約及び本件支出の違法性の有無について検討 であるとの評価をするためには,その裁量権の範囲を逸脱し,あるいはこれを濫用したと認められる場合に限られるというべきである。 以下,かかる見地から,本件委託契約及び本件支出の違法性の有無について検討する。 (2) 前記前提事実及び証拠(甲3,4,9,10,16,乙1ないし3,6の1及び2,7ないし11)並びに弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア犬山市は,元々,国宝の犬山城のある名鉄犬山駅の西側地域を中心に発展してきた町であり,中でも犬山城周辺は,犬山文化ともいうべき町衆文化を築き上げた中心地であって,現在も歴史を感じさせる町並みが残っている。しかし,近年,犬山駅の西側は,その東側に新興住宅街ができたこと,犬山城以外の観光施設がいずれも同駅の東側にあること,基盤整備の立ち後れがあることなどから,住環境としての魅力が低下し,人口は減少傾向にあり,商業活動も沈滞傾向で,商店街としての魅力が乏しくなりつつあった。 駅西地区においては,その北西部分にB病院があり,その南には大型ショッピングセンターのユニー犬山店があり,その更に南に犬山市庁舎があったが,同地区においても,上記の傾向は免れず,シャッターが閉まった廃業店舗が目立つようになり,平成11年8月29日には,ユニー犬山店が閉店した。 イそこで,犬山市は,平成12年1月21日,衰退した駅西地区の再開発が必要であるとの観点から,土地開発公社が買い取ったユニー犬山店の跡地の活用を中心課題として,駅西推進協議会を組織した。同協議会は,本件事業の計画の策定及び整備の推進について必要な事項を協議するため設置された協議会であり(乙6の2),同協議会の委員には,犬山議会議長,同副議長,犬山商工会議所の代表者,発展会の代表者5名,地域住民の代表者4名が含まれていた(乙6の1)。 さらに,犬山 議するため設置された協議会であり(乙6の2),同協議会の委員には,犬山議会議長,同副議長,犬山商工会議所の代表者,発展会の代表者5名,地域住民の代表者4名が含まれていた(乙6の1)。 さらに,犬山市は,同年4月25日,駅西地区を含む中心市街地約94・7ヘクタールの活性化を図るため,犬山市中心市街地活性化推進協議会(以下「中心市街地推進協議会」という。)を設置し,同協議会は,6回の幹事会,11回の連絡協議会,意識調査,検討会,意見交換会等を開催した。 ウ他方,犬山市は,既存の犬山市庁舎の規模・機能は共に限界を超え,耐震性の点からも問題があるとして,平成12年4月,新庁舎建設事業に関わる計画策定について必要な事項を調査・研究するためのワーキンググループを設置した。 そして,犬山市の同年3月期市議会において,新庁舎建設等の案件が検討され,市庁舎を現在の場所で建て替えるか,あるいは郊外に移転するかを十分に調査する必要があるとして,調査のための予算が承認されたことから,犬山市は,同年7月,公団との間で,基本計画策定委託契約を締結した。その契約書添付の仕様書に記載された委託業務の内容は,以下のとおりである。 ① 都市計画に係る検討② 施設建築物の概略計画の検討③ 住宅に係る計画の検討④ 地区施設に係る概略設計の検討⑤ 施設需要調査⑥ 権利変換計画の概略の検討⑦ 事業スケジュールの概略の検討⑧ 資金計画の概略の検討エその後,新庁舎建設に向けた検討を深めるため,平成12年8月,新庁舎推進協議会が組織された。同協議会は,同月9日から平成13年3月21日までの間,合計8回の会議を開き,現地見学も行った上で,新庁舎は,長期的な展望の下に,犬山市の自治と文化のシンボルとしての内容を持ち,新しいまちづくりにつながる,市民が誇ることのできる魅力的な 1日までの間,合計8回の会議を開き,現地見学も行った上で,新庁舎は,長期的な展望の下に,犬山市の自治と文化のシンボルとしての内容を持ち,新しいまちづくりにつながる,市民が誇ることのできる魅力的な都市空間を作り出すものでなければならず,しかも,社会の変化に対応しつつ行政の簡素化,効率化に資するものであるとともに,21世紀における市民共有の財産として,幅広い市民に親しまれ,長期間にわたり積極的に活用される良質さを備えたものにすることが必要であるという観点から,「行政・情報・防災・交流の総合拠点として新しいまちづくりの核となるシティホール」との理念をまとめ,これを基に,現状の市庁舎敷地が狭あいなため,その機能が複数に分散していること,緊急防災時などに対応できるスペースがないことなどの理由により,新しい敷地の確保が必要であると判断して,建設候補地として11地区を検討した。そして,新庁舎推進協議会は,平成13年2月,新庁舎を犬山駅の南東方向に位置する橋爪・五郎丸地区に移転することを犬山市に提案し,同年3月,犬山市は,同地区を最終候補地とする新庁舎基本構想をまとめた(乙2)。 オ駅西推進協議会は,7回の協議会,6回の勉強会等を開催して,再整備基本計画の調査区域の協議,駅西地区に求められる機能等の検討を行った。犬山市は,平成13年2月,同協議会の検討結果を踏まえて,再整備の提案を作成,公表した(乙3)。 同提案は,駅西地区は犬山城や城下町への入り口らしくないこと,ユニー犬山店の閉鎖によって買い物が不便になり,にぎわいがないこと,道路が整備されていないこと,緑が少ないこと,老朽化した建物が多いことなどが現状の問題点であると指摘し,駅前から市庁舎周辺までを含めた駅西地区を,中心市街地に暮らす人たちの生活を支え,地域の情報や文化を発信する地区として, と,緑が少ないこと,老朽化した建物が多いことなどが現状の問題点であると指摘し,駅前から市庁舎周辺までを含めた駅西地区を,中心市街地に暮らす人たちの生活を支え,地域の情報や文化を発信する地区として,商業・医療・公益などの「生活拠点」としての機能を再構築し,併せて国際観光都市犬山の玄関として,歴史的・文化的資産の蓄積を生かしたまちづくりを行うことを提言している。その提言には,駅西地区の北西部分に生活文化・観光及び地域密着商業施設を置くにぎわいゾーンを,犬山駅に連なる北東部分に駐車場ゾーンを,にぎわいゾーンの南側に公益・市民サービス地区を,その更に東南側付近に医療・福祉・公益・居住機能を置くやすらぎゾーンをそれぞれ配置したイメージ図が添付されている。 カ犬山市は,平成13年3月,中心市街地推進協議会の検討結果を踏まえて,基本計画を策定した(乙1)。同計画は,「歩いて暮らせるまち・歩いて巡るまち」をビジョンとして示し,中心市街地を6つのゾーンに分けて,それぞれの将来像のイメージを描いている。そのうち,駅西地区については,「まちの生活を支えるゾーン」として,駅前の利便性を生かした「公益・市民サービス機能」や「駐車場機能」を有し,地域密着型商業施設や新しい生活文化を創り出す「にぎわい」があり,医療・福祉・居住等のやすらぎのあるまちとしてイメージされている。 キ公団は,基本計画策定委託契約に基づいて,上記各協議会に対して資料を随時提供してきたが,平成13年2月末,それをまとめた成果物として,基本計画報告書(乙10)を作成し,犬山市に引き渡した。 同報告書は,「第1章現況および基礎的条件調査」,「第2章概略整備構想の策定」,「第3章施設計画策定」,「第4章事業計画の検討」,「第5章今後の検討課題」の5章にわたる本文と,「生活文化・観光ゾー は,「第1章現況および基礎的条件調査」,「第2章概略整備構想の策定」,「第3章施設計画策定」,「第4章事業計画の検討」,「第5章今後の検討課題」の5章にわたる本文と,「生活文化・観光ゾーンの提案」及びイメージパース6枚,合計70頁から構成されている。その内容は,第1章においては,駅西地区及び周辺の状況を実地調査し,地権者ヒアリング,商業需要調査及び住宅需要調査を行った上で,駅西地区の約3万0400平方メートルを計画対象地区に設定するとともに,地域の土地建物権利関係を明らかにし,第2章においては,駅西地区の開発コンセプト(中心市街地の生活を支えるまち)に基づき,その実現に必要な機能として,①商業の再構築,②行政サービス機能の整備,③医療・福祉機能の充実,④居住機能の整備,⑤都市環境整備の5項目を整備目標とすべきことを提案した上,事業手法としては,計画対象地区全域で土地区画整理事業を施行し,一部の地区で市街地再開発事業を施行する,いわゆる一体的施行を提案し,第3章においては,道路や公園の基盤施設整備計画と,地域商業棟,医療・福祉棟,駐車場棟,住宅棟から成る施設建築物の概略計画(規模,配置等)を提示し,第4章においては,土地区画整理事業と市街地再開発事業について,対象面積を基にした具体的な収支計算の試算と分析結果を提示し,第5章においては,基盤施設整備上及び事業成立上の課題を要約して提示している。 ク平成13年3月期の犬山市議会において,一部議員から,本件事業についての反対意見が出され,これとともに,本件委託契約に関する予算の削減を求める修正動議が提出されたが,修正案は議会において否決され,本件委託契約に係る予算原案が可決された。 ケ新庁舎推進協議会は,平成13年度になって,基本構想を踏まえた事業計画の検討を公開で行い,市 める修正動議が提出されたが,修正案は議会において否決され,本件委託契約に係る予算原案が可決された。 ケ新庁舎推進協議会は,平成13年度になって,基本構想を踏まえた事業計画の検討を公開で行い,市民の意見を求めるべく,平成14年7,8月,市内の4地区で市民会議を開催するなどの活動を行った。これらの活動の集大成として,同協議会は,同年9月18日,犬山市に対して事業計画への提案を行っている。 コ基本計画報告書の公表を受けて,駅西地区の地権者らは,平成13年5月25日,駅西地区のまちづくりを検討することを目的として「駅西を考える会」を設立した。同会は,勉強会を重ねる中でワークショップによる整備計画づくりを企図し,後記のとおり,公団の参加も得て,同年8月から作業を本格化させ,合計12回の会合を経てワークショップ案をまとめた。 他方,駅西地区の地元商店街で組織する発展会は,平成13年7月10日,犬山市議会議長あてに,市庁舎の他地区への移転に反対する旨の要望書を提出した(甲9)。同要望書には,「市庁舎建替えによる移転はあくまで駅西再整備事業の中で考えていくことを再三提言して参りました。しかし,市庁舎建替え問題が単独プロジェクトとして扱われる様になると市庁舎のみの理想像を実現する手順に従えば新天地への移転の答えに到達するのは必然でありましょう。現在,我が犬山市はその中心市街地をいかに活性化させるかに直面しており,特に駅前地区の商業も含めた再開発の方法にはその命運がかけられております。…犬山市庁舎移転が既成の事実のごとく報じられたりましてや私どもが移転に賛成しているとの噂が伝わるなど論外で犬山市庁舎移転には断固として反対を表明いたします。」と記載されている。 サ犬山市は,平成13年8月20日,公団との間で,業務に要する費用(委託費)の金額を金210 ているとの噂が伝わるなど論外で犬山市庁舎移転には断固として反対を表明いたします。」と記載されている。 サ犬山市は,平成13年8月20日,公団との間で,業務に要する費用(委託費)の金額を金2106万5100円,委託期間を協定締結日の翌日から平成14年3月20日までとそれぞれ定めて,本件委託契約を締結した。その協定書添付の仕様書に記載された委託業務の概要は,以下のとおりである。 (ア) 業務委託名犬山駅西地区再整備事業事業化検討業務(イ) 業務内容① 権利者の合意形成の支援ⅰ 権利者の会等への支援権利者の会の内容,資料等の検討及び作成,視察先の選定を行う。また,権利者の会にオブザーバー参加し,専門的事項の助言等を行う。 ⅱ 権利者へのアンケート調査の実施② 事業化検討平成12年度に策定した基本計画を基に,権利者の意向等を斟酌し,事業化検討を行う。 ⅰ 事業全体の具体化検討a 整備区域の可変性検討権利者の意向等による整備区域を検討する。 b 区画整理事業及び再開発事業の区域の可変性検討権利者の意向等による区画整理事業及び再開発事業区域を検討する。 c 全体事業の成立性の検討整備区域,区画整理及び再開発事業区域の変更に伴う事業成立性を検討する。併せて,民間活力の導入による事業手法を検討する。 d 一体施行の事業スケジュール等の検討区画整理事業,再開発事業の一体施行を進めていくための調査,都市計画決定,事業計画認可等の事業スケジュールを検討す ,民間活力の導入による事業手法を検討する。 d 一体施行の事業スケジュール等の検討区画整理事業,再開発事業の一体施行を進めていくための調査,都市計画決定,事業計画認可等の事業スケジュールを検討する。 e 都市計画内容の検討法定事業を実施する場合の都市計画関係事項の検討を行う。 ⅱ 施設建築物の具体化検討ⅲ 権利者対応策及び権利変換モデルの作成ⅳ 今後の課題整理シ公団は,本件委託契約に基づき,駅西を考える会等を通して意見を収集,分析した上で,平成14年3月20日,委託された業務を完了し,同月27日,成果物として本件報告書を犬山市に引き渡した。 同報告書は,「第1章調査実施基本方針」,「第2章ワークショップ計画案の検討」,「第3章まちづくり構想の策定」,「第4章施設建築物計画の検討」,「第5章事業計画の検討」,「第6章今後の検討課題」の6章,合計78頁から成り,その冒頭の「はじめに」には,「本調査は,平成12年度に実施した「…基本計画策定業務」を受けて事業推進のための検討調査を行ったものである。…基本計画は,犬山市が,まちづくりを進める立場で,権利者や市民に対して議論のたたき台を提供しようとして検討したものである。その性格上,計画の合理性を優先してつくられたもので,必ずしも権利者意向が十分に反映されたものではなかった。犬山市では,…市役所内部,市議会,…推進協議会,駅西を考える会等に説明し,意見を聞き,今後の進め方について検討を重ねてきた。その結果,…事業費縮減が必要であること,権利者意向を反映したものに改定することが必要な段階に至ったことが指摘された。こうした事情をふまえて,平成13年度には,①権利者意向をふまえた整備計画を検討すること,②事業費を抑制する方向で検討することの二点を基本方針として 定することが必要な段階に至ったことが指摘された。こうした事情をふまえて,平成13年度には,①権利者意向をふまえた整備計画を検討すること,②事業費を抑制する方向で検討することの二点を基本方針として,本調査を実施することとなった。」との記載がある。 その内容は,第1章においては,事業手法について,基本計画報告書の段階から特段の変更がないので,そこで提言したように,地区全体を土地区画整理事業によって基盤整備し,その一部で再開発事業によって建物整備を行う一体的施行を前提とすべきこと,権利者意向については,事業の進捗状況等によって可変的であるため,事業初期の段階で一律に個別ヒアリングを行うことは得策ではないとして,駅西を考える会等を通して意見を収集,分析して計画に反映させる手法を採用したこと,事業成立性については,事業対象区域の検討,工事費等の削減策,民間活力導入制度の紹介と分析などが示されており,第2章においては,平成13年5月25日に発足した駅西を考える会における12回の勉強会に参加して整備計画の検討(ワークショップ)を協同で行った成果であるワークショップゾーニング案(駅西地区の北側部分に地域商業ゾーンを置き,その南側に,自走式駐車場と住宅棟を置き,その南側に緑地公園,更に南側に病院棟,その東側に岩田洗心館の美術館を置くというもの)が図面によって提示され,第3ないし第5章においては,基本計画報告書における開発コンセプトを基に,ワークショップで提案されたコンセプト(FreshTownInuyama)を構成するキーワードを取り入れて,①中心市街地に暮らす人たちの生活拠点を整備する,②国際観光都市犬山の玄関をつくる,③緑と憩いと安らぎのある人が主役のまちをつくる,を基本方針とすべきであり,導入機能については,基本計画報告書で示したものと変わ 暮らす人たちの生活拠点を整備する,②国際観光都市犬山の玄関をつくる,③緑と憩いと安らぎのある人が主役のまちをつくる,を基本方針とすべきであり,導入機能については,基本計画報告書で示したものと変わりはないが,ワークショップでは公園,広場を大きく取りたいとの要求が鮮明になったことを受けて,基盤整備計画及び土地利用計画については,全域に道路を均等に配置する案と道路率を最小にする案の2つのケース(それぞれに派生案あり。)を想定し,それぞれの場合における商業棟の延べ床面積や駐車場台数,道路幅員等を示し,各ケースについて比較検討の上,最適と考えられる案を基に,施設建築物の具体的検討や都市再生土地区画整理事業採択要件及び市街地再開発事業の要件の具体的検証を行い,さらには,資金計画,完了後の土地利用計画,権利変換のモデルを提案し,第6章においては,①犬山市として,事業に対する財政負担について,14億円程度の負担が生じるが,議会も含めて全庁的な合意形成が必要であること,行政財産である市庁舎用地と建物を商業施設等に権利変換することについての事務的な問題点の整理と具体的処理方針について全庁的合意が必要であること,②B病院の取扱い,③減歩率均等化のための方策を検討すること,④事業に伴って発生する商業・公益施設保留床11億円強を管理する認定構想推進事業者(TMO)の設立及び委託について権利者の合意形成や,商業テナントの確保をする必要があることなどを今後の課題として指摘している。 (3) 以上を前提に,まず,本件委託契約が基本計画策定委託契約と重複するものであるかについて判断するに,前記認定事実によれば,犬山市は,平成13年2月に公団から基本計画報告書を得ているところ,同報告書は,対象地区の設定,開発コンセプトと実現すべき機能,採用すべき事業手法,基盤施設整 ついて判断するに,前記認定事実によれば,犬山市は,平成13年2月に公団から基本計画報告書を得ているところ,同報告書は,対象地区の設定,開発コンセプトと実現すべき機能,採用すべき事業手法,基盤施設整備計画と施設建築物の概略計画,これらの事業の収支計算の概略等を含んでおり,本件事業の基本計画の概略を示すものとしては十分な内容となっていることが明らかである。 しかしながら,本件報告書でも自認しているとおり,基本計画は,一定の地権者ヒアリング等を踏まえて作成されたとはいうものの,議論のたたき台を提供するとの性格上,計画の合理性を優先し,地権者意向を十分に反映したものとはいえなかったところ,その公表を受けて,一方ではまちづくりに積極的に関わろうとする地権者らによって駅西を考える会が結成され,活動が開始されたこと,他方では市議会の一部が本件事業の実施に反対する意向を示したり,発展会が市庁舎の移転に反対の意思を表明するなどの動きが見られたことなどから,基本計画を基にしつつも,地権者らの意向等を十分に考慮して本件事業の事業化を検討する必要性が生じたと認められ,実際にも,本件報告書が,駅西を考える会への参加とそこでのワークショップの成果を取り込んで作成されたことは明らかである。 また,前記認定事実によれば,基本計画報告書に記載された内容は概略のものであったことから,それをより具体的に明らかにし,本件事業の成立可能性についてもより精密に検討し,その結果を地権者らに提示する必要があったと認められるところ,実際にも,本件報告書では,基本計画報告書とは異なり,地域全体に道路を均等に配置する案と道路率を最小にする案の2つのケースにおけるそれぞれの商業棟の延べ床面積や駐車場台数,道路幅員等が具体的に示され,その最適と思われる案について具体的な資金計画等が示されてい 道路を均等に配置する案と道路率を最小にする案の2つのケースにおけるそれぞれの商業棟の延べ床面積や駐車場台数,道路幅員等が具体的に示され,その最適と思われる案について具体的な資金計画等が示されている。 これらを総合すれば,本件委託契約は,基本計画策定委託契約を前提としつつも,その後の事情を考慮するとともに,内容をより深化して具体的な検討資料を提示する目的を有していたというべきであるから,両者が重複するものであるとはいえないことは明らかである。 (4) 次に,本件委託契約が対象とした本件事業の実現可能性について判断する。 ア前記認定事実によれば,基本計画報告書及び本件報告書のいずれもが,事業手法として,計画対象地区全域で土地区画整理事業を施行し,一部の地区で市街地再開発事業を施行する,いわゆる一体的施行を提案しているところ,土地区画整理組合の設立認可を受けるには,定款及び事業計画について,施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者及びその区域内の宅地について借地権を有するすべての者のそれぞれ3分の2以上の同意を得なければならない(土地区画整理法14条,18条前段)。 しかるところ,地元商店街で組織する発展会が,平成13年7月10日,犬山市議会議長あてに,市庁舎の他地区への移転に反対する旨の要望書を提出していることは前記認定事実のとおりであり,かつ,事業対象区域内の地権者の大半の者が基本計画に反対しているとの原告らの主張に沿う証拠(甲10)も存在する(もっとも,反対の意見を有しているとされる地権者らは,本訴の原告らに加わってはいない。)。 しかしながら,土地区画整理事業を施行することができるのは,土地区画整理組合に限られるわけではなく,市町村等も施行主体となることができる(土地区画整理法3条3項,52条以下)ところ,その い。)。 しかしながら,土地区画整理事業を施行することができるのは,土地区画整理組合に限られるわけではなく,市町村等も施行主体となることができる(土地区画整理法3条3項,52条以下)ところ,その場合には,上記要件は問題とならないこと,前記認定事実のとおり,上記要望書は,市庁舎建て替え問題が単独プロジェクトとして扱われ,その結果移転の結論が出されることに反対し,その中で市庁舎建て替え問題を本件事業の中で考えて欲しいと述べていることから明らかなように,本件事業自体に反対する趣旨ではないこと,駅西地区は,住環境としての魅力が低下し,人口も減少傾向にあり,商業活動も沈滞気味で,商店街としての魅力が乏しくなりつつあるなど,ユニー犬山店の跡地を含めて,再開発をする必要性が高いところ,地権者らの意向は,提示される再開発計画の内容,資金計画等によって左右されるものであるから,現時点で本件事業に反対しているからといって,これが将来も不変であるとは限らないことなどを考慮すると,本件事業が確定的に実施不可能なものであると断ずることはできない(現に,地権者らによって組織された駅西を考える会が,公団の協力を得るなどして,ワークショップ案をまとめたことは前記のとおりである。)。 イさらに,本件事業の対象地域が都市再開発法の定める要件を充足するかについて判断するに,前記認定事実によれば,本件報告書及び基本計画報告書で検討されている施設建物の建築計画は,都市再開発法の定める市街地再開発事業の手法によることを予定しているところ,同法3条は,その要件として,「当該区域内に十分な公共施設がないこと,当該区域内の土地の利用が細分されていること等により,当該区域内の土地の利用状況が著しく不健全であること。」(3号)及び「当該区域内の土地の高度利用を図ることが,当該都市の 分な公共施設がないこと,当該区域内の土地の利用が細分されていること等により,当該区域内の土地の利用状況が著しく不健全であること。」(3号)及び「当該区域内の土地の高度利用を図ることが,当該都市の機能の更新に貢献すること。」(4号)を定めている。 しかるところ,同条3号の「土地の利用状況が著しく不健全であること」とは,施行区域内に公園や道路などの公共施設が整備されておらず,生活に支障を来している場合や,小規模住宅が密集しているなど,客観的にみて土地の利用状況が好ましくないことが明らかな場合を広く指すと解されるところ,証拠(乙3,8,10)によれば,駅西地区においては,その北側を東西に走る駅前道路には両側に歩道が設置されているものの,ユニー犬山店跡地へのアクセス道路等の地区内区画道路は幅員が狭く,車両の通行に支障を来していること,老朽化した建物が多く存在すること,駅前に位置しながら,大型店舗跡の遊休地が存在していること,以上の事実が認められ,これに照らせば,駅西地区が上記要件を満たすことは明らかというべきである。 また,同条4号の「都市の機能の更新に貢献すること」とは,都市全体でなくともそれを構成する部分の機能が向上することが見込まれることをいうと解されるところ,本件事業においては,駅前地区にふさわしい,地域密着型店舗を整備し,行政サービス機能を持たせ,既存の老朽化した病院を建て替えて,新たなニーズに適応できる態勢を整備し,アクセス道路及び駐車場の整備を行うことなどが提案されていることに照らすと,上記要件を満たすことが明らかである。この点につき,原告らは,市庁舎の移転によって駅西地区の集客能力は更に低下することや,ユニー犬山店閉店後のビルへのテナント募集が芳しくなかったことを理由に,上記要件の充足を否定するが,仮に本件事業の実施に伴い市 原告らは,市庁舎の移転によって駅西地区の集客能力は更に低下することや,ユニー犬山店閉店後のビルへのテナント募集が芳しくなかったことを理由に,上記要件の充足を否定するが,仮に本件事業の実施に伴い市庁舎が移転する事態となっても,これを上回る効果をもたらす事業計画を立案,提示することは可能というべきであるから,上記主張は採用できない。 (5) 最後に,地権者の同意形成を外部委託することの是非について判断するに,前記認定事実のとおり,本件委託契約は,権利者の合意形成の支援を業務内容の一つとしているが,そもそも,事業を推進する地方自治体が,その事業内容を検討するに当たって,関係者の意向聴取及び同意形成の支援を専門的知識を有する外部の者に委託することを禁止する趣旨の法令は見当たらない。 かえって,本件の都市再開発事業のように,関係者の意向を無視しては円滑な実施が期待できない場合,委託された事業内容の調査,検討過程に関係者の意向が反映されていくことは,ある意味では当然のことであって,その結果,関係者の合意が形成されることは,望ましいことではあっても,決して不当なものとはいえない。 (6) 以上のとおり,本件委託契約は,基本計画策定委託契約と重複するものとはいえず,また,調査・検討の対象とした本件事業が実現不可能なものとはいえないので,必要性を欠くものであったと認めることはできず,まして,地権者の意向を踏まえて,実現可能な再開発事業を具体的に探求することを主目的の一つとする本件委託契約を締結することが,被告の裁量権の範囲を逸脱ないし濫用するものであるとは到底認め難いので,そのための本件支出が地財法4条1項に反するとの原告らの主張は採用できない。 2 争点(2)(本件委託契約は,法施行令167条の2の定める随意契約の要件を満たさず,法234条2項 認め難いので,そのための本件支出が地財法4条1項に反するとの原告らの主張は採用できない。 2 争点(2)(本件委託契約は,法施行令167条の2の定める随意契約の要件を満たさず,法234条2項に反するか。)について(1) 法234条2項は,地方公共団体が請負等の契約を締結しようとする場合,政令で定める要件を満たす場合でなければ随意契約の方式によることができない旨定め,これを受けた法施行令167条の2第1項2号は,随意契約の方式によることのできる場合として,「契約の性質又は目的が競争入札に適しない場合」を掲げているところ,これは,契約の内容からして相手方が自ずから特定の者に限定されたり,契約締結を秘密にすることが当該契約の目的達成上必要である場合など,競争入札の方法によることが不可能又は著しく困難な場合だけではなく,当該契約の目的・内容に相応する資力,信用,技術,経験等を有する相手方を選定してその者との間で契約の締結をするという方法をとるのが当該契約の性質に照らし又はその目的を達成する上でより妥当であり,ひいては当該地方公共団体の利益の増進につながると判断される場合もこれに該当するものと解される。そして,右のような場合に該当するか否かは,契約の公正及び価格の有利性を図ることを目的として普通地方公共団体の契約の締結方法に制限を加えている法及び同施行令の趣旨を勘案し,個々具体的な契約ごとに当該契約の種類,内容,性質,目的等諸般の事情を考慮して,当該地方公共団体の契約担当者の合理的な裁量に基づいて判断されるべきものと解される(最高裁判所昭和62年3月20日第二小法廷判決・民集41巻2号189頁参照)。 (2) しかるところ,前記認定事実のとおり,本件委託契約は,権利者の合意形成の支援と,平成12年度に策定された基本計画を基にした事業化検 2年3月20日第二小法廷判決・民集41巻2号189頁参照)。 (2) しかるところ,前記認定事実のとおり,本件委託契約は,権利者の合意形成の支援と,平成12年度に策定された基本計画を基にした事業化検討を行うという業務内容を委託するものであるところ,これを的確に遂行するためには,地権者の率直な意向を聴取し,対象地区の現状を正確に把握し,その問題点と原因を発見・分析し,あるべき将来像を描き,これを実現する方法を精密に検討し,最も合理的な手法を策定・提示するという作業が必要になるが,そのためには,都市の再開発事業に関する幅広い経験と,法的側面及び財務面の双方にわたる十分な専門知識を備えていることが必要不可欠と考えられる(このような経験と専門知識に裏付けられない事業計画は,いかに明るい将来像を描こうとも,絵に描いたもちに終わる可能性が高いことはいうまでもない。)。 そうすると,本件委託契約は,不特定多数の者に入札への参加を求め,競争原理に基づいて契約の相手方を決定することが必ずしも適当でない性質の契約であると解されるところ,公団は,地方公共団体,民間事業者等との協力及び役割分担の下に,都市地域における健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動の基盤整備として居住環境の環境の向上及び都市機能の増進を図るための市街地の整備改善に関する業務を行うことを目的としており(都市基盤整備公団法1条),本件委託契約は,その業務として定める「委託に基づき,市街地の整備改善に必要な調査,調整及び技術提供を行うこと」(同法28条1項10号)の範囲に含まれること,公団は,市街地再開発事業の施行主体たる資格を与えられていること(都市再開発法2条の2第4項,58条以下),現に,直接施行と組合ないし地方公共団体との協調施行の両者を合わせると,全国で111地区の市街地再開 街地再開発事業の施行主体たる資格を与えられていること(都市再開発法2条の2第4項,58条以下),現に,直接施行と組合ないし地方公共団体との協調施行の両者を合わせると,全国で111地区の市街地再開発事業に携わった実績を有し,この数は他の民間業者の追随を許さないものであること(乙4),以上に照らせば,公団は,都市再開発事業に関し,比類のない技術,知識,経験を蓄積していると推認することができる。これに加えて,先行した基本計画策定委託契約の相手方が公団であり,本件委託契約との連続性を確保することが望ましいと考えられること,公団の性格から一般の民間業者に比較して営利性が高いとはいえないことなどを総合的に考慮すると,被告が,本件委託契約の目的を達成する上で,公団に上記業務を委託するのがより妥当であると判断したことは,その合理的裁量の範囲内にあるものと認めるのが相当である。したがって,被告が随意契約の方式によって本件委託契約を締結したことが,法234条2項に反して違法であるとはいえない。 (3) この点について,原告らは,公団が債務超過の状態にあり,将来廃止されることが決定されていること,公団が関与した都市再開発事業の中に,いくつかの失敗例があること,民間業者でも都市計画等の調査業務を行う能力,経験を有すること,適正な積算を経ていないことなどを理由に,法施行令167条の2第1項2号の場合に該当しない旨主張し,これに沿う証拠(甲6,7,11ないし16)もある。 しかし,公団は,国及び地方公共団体等の出資によっているから,債務超過の状態にあり,あるいは将来の廃止が決定されていた(もっとも,甲7によれば,廃止は特殊法人改革に関連して行われるものであり,廃止後も都市再開発事業については新たな独立行政法人に引き継がれることが合意されている事実が認められ 来の廃止が決定されていた(もっとも,甲7によれば,廃止は特殊法人改革に関連して行われるものであり,廃止後も都市再開発事業については新たな独立行政法人に引き継がれることが合意されている事実が認められる。)としても,委託された業務が履行されないおそれは考え難く,現に,6章78頁から成る本件報告書が成果物として提出されており,その内容に照らしても,委託された業務内容を履行したと認められること,原告らが主張する失敗例は,不動産価格の下落が主たる原因と認められるところ,民間の業者によって事業化が行われた場合は,かかる事態が避けられたことを認めるに足りる証拠はないこと,本件報告書の内容,基本計画報告書の内容及び積算の経緯(乙11)に照らせば,本件委託代金が過大であるとは認められないこと,これらを総合すれば,原告らの上記主張は採用できない。 3 結論以上の次第で,原告らの本訴請求は理由がないので棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行訴法7条,民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事9部裁判長裁判官加藤幸雄裁判官舟橋恭子裁判官富岡貴美

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