平成29(ワ)11188 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年8月24日 大阪地方裁判所
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判決文本文23,895 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して1億円及びこれに対する平成29年11月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 本件事案の概要本件は,原告が,学校法人X(以下「X」という。)から平成27年12月頃に受注した小学校の新築工事に係る請負契約の締結に際し,Xの理事長であった被告A及びその妻の被告Bにおいて,Xには,当時,上記請負契約の報酬を支払う能力がなく,同報酬を支払う意思もないのに,これがあるかのように装い,原告を欺罔して上記請負契約を締結させたことが不法行為(詐欺)に当たる旨主張して,後にXが経営破たんしたことにより回収不能になった請負報酬債権等の一部である1億円について共同不法行為に基づく損害賠償請求及びこれに対する不法行為日の後の日である平成29年11月23日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)ア原告は,土木,建築工事の請負等を目的とする株式会社である。 イ被告Aは,平成23年2月11日から平成29年3月16日までの間,Xの理事長であった。 被告Bは,被告Aの妻であり,平成14年7月に理事に就任 し,平成17年4月から平成23年2月までの間,Xの理事長であった。(乙14【4頁】) Xは,昭和46年3月18日に設立された学校法人であり,平成27年当時,大阪市a区内において し,平成17年4月から平成23年2月までの間,Xの理事長であった。(乙14【4頁】) Xは,昭和46年3月18日に設立された学校法人であり,平成27年当時,大阪市a区内において,Yの名称で私立幼稚園(以下「Y幼稚園」という。)を設置・運営していたほか,大阪府豊中市b町c番地(以下「本件土地」という。)において,Zの仮称で私立小学校(以下「本件小学校」という。)の開設を準備していた。(甲1,2,16) 有限会社キアラ建築研究機関(以下「キアラ建築」という。)は,建築設計及びインテリアデザインの設計等を目的とする特例有限会社であり,Cは,その取締役である。Dは,キアラ建築に勤務し,Cとともにキアラ建築の共同代表の役職にある。 (甲50【1頁】,弁論の全趣旨) キアラ建築は,Xから本件小学校の新築工事について,設計及び監理等の業務を請け負っていた。 エ株式会社高等教育総合研究所(以下「高総研」という。)は,教育関係のコンサルタント業を営む会社であり,Eは,その代表者である。(甲51【1頁】)(2) 原告は,Xとの間で,平成27年12月頃,原告を請負人,Xを注文者として,以下の内容で,本件小学校の新築工事について,請負契約を締結した(以下「本件請負契約」という。)。なお,本件請負契約の報酬額については,15億5520万円であるか7億5600万円(いずれも消費税込み)であるか,争いがある。 工事名称 Z 新築工事工事場所本件土地工期着手平成27年12月3日 完成日平成29年1月31日引渡日平成29年1月31日(3) 原告は,平成29年3月上旬までに,本件請負契約に係る工事の殆どを完成させた。(甲16 完成日平成29年1月31日引渡日平成29年1月31日(3) 原告は,平成29年3月上旬までに,本件請負契約に係る工事の殆どを完成させた。(甲16,弁論の全趣旨)(4) Xは,平成29年4月21日,大阪地方裁判所に対し,民事再生手続開始を申し立て,大阪地方裁判所は,同月28日,Xについて再生手続開始決定(大阪地方裁判所平成29年(再)第7号民事再生手続開始申立事件,以下「本件再生手続」という。)をし,同日,弁護士であるFを管財人に選任し,以後,F管財人がXの財産管理を行っている。F管財人は,平成29年10月19日,本件再生手続において,大阪地方裁判所に対し,Xの再生債権について,元本及び再生手続開始決定日の前日までの利息・遅延損害金の合計のうち,20万円以下の部分については免除率0パーセント,20万円を超える部分については免除率97パーセントとし,再生手続開始決定日以後の利息・遅延損害金については,全額を免除する内容の再生計画案を提出した。(甲16,甲21)(5) Xは,本件小学校の開校に当たり,次のとおりの補助金等を取得することを見込んでいた。 ア国土交通省が所管し,一般社団法人木を活かす建築推進協議会(以下「木活協」という。)が事業者となり,先導的な木質化建築事業を実施する建築主等に対して交付されるサステナブル建築物等先導事業(木造先導型)補助金(以下「サステナブル補助金」という。)の補助限度額として,6194万4800円イ大阪国際空港の教育施設等騒音防止対策事業に基づく空調等設備機器の費用に対する助成金(以下「騒音防止対策事業助成金」という。)として,1億4800万円 ウなお,国,大阪府,大阪市その他の公益法人等が設ける助成金に関し に基づく空調等設備機器の費用に対する助成金(以下「騒音防止対策事業助成金」という。)として,1億4800万円 ウなお,国,大阪府,大阪市その他の公益法人等が設ける助成金に関し,本件小学校の建設費用に対して交付される「私学助成金」という名称の助成金は存在しない。 (甲19の1及び2,甲49【22頁】,甲51【別紙8】,弁論の全趣旨) 3 本件の争点(1) 本件請負契約の報酬額(争点1)(2) 被告Aの不法行為の成否(争点2)ア被告Aの欺罔行為の有無イ被告Aの故意の有無(3) 被告Bの被告Aとの共同不法行為の成否(争点3)ア被告Bの欺罔行為の有無イ被告Aとの共謀の有無(4) 原告の損害の発生及び金額(争点4) 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点1(本件請負契約の報酬額)(原告の主張)ア本件請負契約の報酬額については,15億5520万円(消費税込み。以下同じ。)とする契約書(甲3,以下「15億契約書」という。)と,7億5600万円(消費税込み。以下同じ。)とする契約書(甲4,以下「7億契約書」という。)の2通が存在するが,15億契約書には,Xが私学助成金を利用する予定の工事については,別途に大阪府私立学校審議会(以下「私学審議会」という。)提出用に工事請負契約書を作成するが,工事の内容は15億契約書が最終合意である旨記載されている。また,原告とXとの間の平成27年12月22日付け覚書(甲5,以下「本件覚 書」という。)には,本件請負契約の内容は15億契約書のとおりであるが,別途に私学審議会提出用に7億契約書を作成する旨記載されている。 イまた,本件再生手続において,F管財人は,原告の届け出た本件請負 う。)には,本件請負契約の内容は15億契約書のとおりであるが,別途に私学審議会提出用に7億契約書を作成する旨記載されている。 イまた,本件再生手続において,F管財人は,原告の届け出た本件請負契約の報酬残金,追加工事分の土壌対策工事の請負報酬,汚染土壌を撤去するための損害賠償請求権等,すべてその内容を認めて再生債権認否書に記載しており,管財人も,本件請負契約の報酬額が15億5520万円であることを認めている。 さらに,被告Aは,本件再生手続における役員の損害賠償請求権の査定の裁判において,本件請負契約の報酬額が15億5520万円であることを前提とした回答をしており,刑事裁判手続においても,本件請負契約の報酬額が14億4000万円(消費税別。消費税込み15億5520万円)であることを認めている。 ウしたがって,本件請負契約の報酬額は,本件請負契約の締結に際して作成された15億契約書のとおり,15億5520万円である。 (被告の主張)ア本件請負契約については,7億契約書と15億契約書のほかに,23億8464万円(消費税込み。以下同じ。)とする契約書(甲35,乙3,以下「23億契約書」という。)が存在するところ,23億契約書にも「この工事請負契約書の条項に定めるものが最終合意されたものである」旨の記載があるから,15億契約書が正式な契約書であるとはいえない。また,本件覚書についても,「私学助成金利用予定の工事」等という趣旨不明の記載があるから,その記載内容は信用できない。 イ F管財人が本件請負契約の報酬額を15億5520万円である と認めていることは本件とは無関係である。 被告Aが,本件再生手続における役員の損害賠償請求権の査定の裁判において提出した回答は,原告の請求債権額が過大であることを指摘した ある と認めていることは本件とは無関係である。 被告Aが,本件再生手続における役員の損害賠償請求権の査定の裁判において提出した回答は,原告の請求債権額が過大であることを指摘したものであり,本件請負契約の報酬額が15億5520万円であると認める趣旨ではない。 ウしたがって,本件請負契約の報酬額は,Xが私学審議会に提出した7億契約書のとおり,7億5600万円である。 (2) 争点2(被告Aの不法行為の成否)(原告の主張)ア被告Aの欺罔行為の有無被告Aは,平成27年12月頃に本件請負契約を締結するに際し,原告代表者に対し,Xには本件請負契約の報酬額である15億5520万円を支払う意思も能力もないのに,これを秘して,「工事代金の半分は私学助成金で支払う」等と実際には存在しない私学助成金が支給される旨の虚偽の事実を告げるなどし,原告をして,Xには,上記請負報酬全額の支払能力及び支払意思がある旨誤信させ,もって上記請負報酬額で本件請負契約を締結させた。 被告Aが,原告代表者に対し,私学助成金で支払う旨を告げたことは,15億契約書及び本件覚書に,Xが「私学助成金」を利用する予定の工事について別途7億契約書を作成する旨の記載があること,本件請負契約の報酬の支払時期について,私学助成金を受け取る関係で完成引渡後4か月後の支払条件が必要であると言われたため,報酬の半分の支払時期が工事完成引渡から4カ月後と通常とは異なり原告に不利な条件となっていること,キアラ建築のCは,本件訴訟における証人尋問におい て,被告Aと,Xのコンサルタント業務を担っていた高総研の代表であるEから,開業してから1,2か月後に私学助成金として7億円くらいが出るという話が出た旨を証言していること等からも明 て,被告Aと,Xのコンサルタント業務を担っていた高総研の代表であるEから,開業してから1,2か月後に私学助成金として7億円くらいが出るという話が出た旨を証言していること等からも明らかである。 a 本件請負契約の締結後である平成28年3月31日におけるXの財務状況は,総資産額が11億6722万3589円とされている。しかし,その大部分は幼稚園など事業継続に不可欠で売却することが出来ない不動産であり,現預金は1億9639万1448円に過ぎず,幼稚園運営に不可欠な経費支払分を除けば,学校建設に充てられる自己資金は殆ど無かった。 bXは,平成28年10月12日,株式会社りそな銀行(以下「りそな銀行」という。)との間で金銭消費貸借契約を締結し,10億円の融資枠を確保していたが,りそな銀行の融資枠を全額使い切っても,請負報酬全額を支払うには約4億円の資金が不足する状況にあった。 c さらに,Xは,大阪府私立小学校及び中学校の設置認可等に関する審査基準(以下「本件審査基準」という。)を満たすために,学校法人の校地取得及び校舎建築にかかる金銭の借入後において,当該学校法人の純資産額に対する前受金を除く総負債額の割合が30パーセント以下である必要があったところ,Xの平成28年3月31日時点の純資産額は11億6722万3589円,前受金を除く総負債額は2億8283万2797円であり,この時点で借入金額は純資産額の24.2パーセントに達していた。そして,Xは,平成28年10月12日,りそな銀行から,前記の10億円の融資枠の 範囲で3億1100万円を借り入れた結果,その純資産額は14億7822万3589円,総負債額が約6億円となり,負債比率が40パーセントを超えることとなった。したがって,X の融資枠の 範囲で3億1100万円を借り入れた結果,その純資産額は14億7822万3589円,総負債額が約6億円となり,負債比率が40パーセントを超えることとなった。したがって,Xは,実際には,前記の10億円の融資枠さえ使い切ることができない状況にあった。 d 被告らは,本件請負契約の報酬額について,真実の報酬額は7億5600万円であると主張しているところ,このように主張していること自体,Xには,それ以上の報酬を支払う意思も能力もなかったことの証左であるといえる。 イ被告Aの故意の有無前記アの通り,本件請負契約締結時において,Xには,本件請負契約の報酬額である15億5520万円を支払う意思も能力もなかったのであり,被告Aは,これを知りながら,前記アの欺罔行為を行っているのであるから,詐欺の故意があることは明らかである。 (被告らの主張)ア被告Aの欺罔行為の有無 a 本件請負契約の報酬額は7億5600万円であるから,被告Aのとおり,本件請負契約締結時に,「工事代金の約半分である7億5600万円は私学助成金で支払う」なのとおり,本件請負契約締結時において,Xに同額の支払能力及び支払意思はあった。 b 仮に,本件請負契約の報酬額が15億5520万円であっのとおり,本件請負契約締結時において,Xに同額の支払能力及び支払意思はあったし,本件請負契約の報酬額は,資材価格変動の影響や工事の経過次第で上下す ることがあり,協議により減額される余地もあった。 被告Aは,「工事代金の約半分である7億5600万円は私学助成金で支払う」などと述べたことはないし,本件請負契約の報酬の支払時期について,私学助成金を受け取る関係で,完成引渡後4か月後の支払条件が必要であ ,「工事代金の約半分である7億5600万円は私学助成金で支払う」などと述べたことはないし,本件請負契約の報酬の支払時期について,私学助成金を受け取る関係で,完成引渡後4か月後の支払条件が必要である等と述べたこともない。そのような事実が無いからこそ,被告Aは,後に15億契約書に記載された「私学助成金を利用予定」という文言について訂正を申し入れ,原告もキアラ建築もこの申し入れを受けて,「私学助成金を利用する予定の工事」「私学審議会提出用に工事請負契約書を作成」等の事実に反する文言が削除された契約書(乙11,以下「修正15億契約書」という。)が作成されたのである。 そもそも,請負報酬額が7億円である旨の契約書を提出し,その全額に相当する7億円が支給される助成金などあり得ず,そのような話を被告Aがするはずがない。仮に,工事代金の半額を私学助成金で支払う旨の話があったのであれば,原告が真実の契約書であると主張する15億契約書の「最終残金」の支払時期の約定に,「但し私学助成金受領時」等と記載しているはずであるが,そのような記載はない。 aXが,本件小学校の設置,運営に向けて動き出した当時,内閣総理大臣であったGの妻であるHは,Xを度々訪れ,平成27年9月5日,本件小学校の名誉校長に就任することが決まった。本件請負契約締結時には,同人らをはじめとする多数の政治家・文化人・有識者からの支援,民間事業者からの寄付・献金,金融機関からの潤沢な融資や多くの入学希望者からの金員の支払が見込まれていたのであり,その他にも, ソフトバンクから約3.9億円が入金される予定であり,サステナブル補助金として6194万4000円,騒音防止対策事業助成金として1億4800万円の支払が受けられる予定であった。 本件小学校の設 トバンクから約3.9億円が入金される予定であり,サステナブル補助金として6194万4000円,騒音防止対策事業助成金として1億4800万円の支払が受けられる予定であった。 本件小学校の設置計画が頓挫した原因は,平成29年2月から3月にかけての社会情勢の変化によるものであって,被告らが,本件請負契約締結時に予想し得ないものであった。 b 実際にも,Xは,平成28年10月12日,りそな銀行から10億円の融資枠を確保していたし,そもそも,本件小学校の開校の計画は,設置認可適当の答申を受けた後も,私学審議会と協議・打合せをしながら進められていったのであり,本件審査基準の自己資本比率規制に反すれば直ちに設置認可取り消しとなるような硬直的な仕組みのものではなかった。 また,本件土地価額は13億円であるから,Xの総資産額は13億円増加したはずである。 イ被告Aの故意の有無Xは,実際に,本件小学校を設立した上で,これを運営する予定であったのであり,被告Aが,Xが支払能力を欠くにもかかわらず,原告に仕事を依頼し,報酬を踏み倒す意図で本件請負契約を締結するはずがない。 したがって,前記アのとおり,被告Aには原告代表者に対する欺罔行為がないから,被告Aの詐欺の故意も認められない。 (3) 争点3(被告Bの被告Aとの共同不法行為の成否)(原告の主張)ア被告Bの欺罔行為の有無被告Bは,Xの創業者の娘であり,平成14年7月に理事に就 任し,平成17年4月から平成23年2月までXの理事長の地位にあった。そして,被告AがXの理事長となった後も,Xが経営するY幼稚園の副園長等として運営に携わっていた。また,被告Bは,15億契約書を含む,Xの多数の重要な契約書について,被告Aの指示の下,Xの押印をし,印鑑を自ら AがXの理事長となった後も,Xが経営するY幼稚園の副園長等として運営に携わっていた。また,被告Bは,15億契約書を含む,Xの多数の重要な契約書について,被告Aの指示の下,Xの押印をし,印鑑を自ら管理していた。このように,被告Bは,被告Aと協力してXの事業を行ってきたのであり,本件請負契約においても,事前の折衝や契約締結に立ち会い,補助金が減額されたことに腹を立て,Cを担当から外すよう指示し,さらに,これ以上補助金が減らされないように発言し,大声で報酬の減額の交渉を行うことがあり,被告Aと同等に契約の締結や資金の捻出に影響力を行使していた。 そして,平成27年12月10日の打合せの席上で,被告Aが,原告に対し,本件請負契約の報酬について「最終の残金は私学助成金で支払う」旨告げた際,被告Bは,被告Aの発言が虚偽であることを知りながら,これに異を唱えず,「平成29年5月末までには最終残金は支払える」との発言をし,完成・引き渡しから4か月後に残代金を支払うことの了解を与えた。 イ被告Aとの共謀の有無上記アの経過からすれば,被告Bは,被告Aと意を通じて行動し,被告Aと共謀の上,原告代表者を欺罔したといえる。 (被告らの主張)ア被告Bの欺罔行為の有無被告BがXの印鑑を日常的に管理していたことや,Xの重要な契約書の作成の際,被告Aに代わって押印していたという事実はない。 被告Aと同様に,被告Bも,原告代表者に対し,本件請負契約 の報酬について,「最終の残金は私学助成金で支払う」と述べたことはない。 イ被告Aとの共謀の有無被告Aは,原告に対する欺罔行為及び詐欺の故意がないから,被告Bも,被告Aと詐欺を共謀した事実はない。 (4) 争点4(原告の損害の発生及び金額)( 被告Aとの共謀の有無被告Aは,原告に対する欺罔行為及び詐欺の故意がないから,被告Bも,被告Aと詐欺を共謀した事実はない。 (4) 争点4(原告の損害の発生及び金額)(原告の主張)原告は,被告らから欺罔された結果,本件請負契約を締結してその工事の殆どを完成させたから,原告は,本件請負契約の報酬のほか,見積漏れの追加工事や関連する土壌対策工事,さらには,工事現場の廃棄物処理等の撤去のための費用及び遅延損害金として,Xに対し,少なくとも,以下の債権額の合計である16億2567万9683円の請求権を有するに至ったが,Xの経営破たんにより,本件再生手続において,仮に再生計画案が認可されたとしても,その97パーセントの額である15億7690万9292円は回収不能になった。また,再生計画案が認可されずに本件再生手続が破産手続に移行した場合には,さらに多くの部分が回収不能になることは明らかである。したがって,原告は,少なくとも上記15億7690万9292円の損害を負ったから,被告らに対し,上記損害の一部請求として,1億円を請求する。 ア請負報酬債権 14億8277万7349円 本件請負契約に基づく報酬債権の残金10億8864万0000円 本件請負契約の見積漏れの鉄骨工事の追加報酬債権(追加変更工事部分)3億0071万7349円 平成29年1月12日付け土壌対策工事請負契約に基づく請負報酬債権9342万0000円イ損害賠償債権 1億2258万0000円原告は,本件請負契約に係る工事に関連し,平成29年3月頃に新たな産業廃棄物等の処理が必要になったが,原告の要請により工事を中断し 害賠償債権 1億2258万0000円原告は,本件請負契約に係る工事に関連し,平成29年3月頃に新たな産業廃棄物等の処理が必要になったが,原告の要請により工事を中断したところ,原告が,豊中市から請負業者の義務として産業廃棄物を撤去するよう指導を受けたことによる,原告が産業廃棄物を撤去するために必要な費用相当額の損害額。 ウ遅延損害金 前記アの債権に対する平成29年3月11日から同年4月27日まで約定遅延損害金である年10分の割合による金員1949万9537円 前記イの債権に対する平成29年3月10日から同年4月27日までの民法所定の年5分の割合による遅延損害金82万2797円(被告らの主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件小学校の開設の計画ア Xは,被告Bの父であるIが昭和46年3月18日に設立した学校法人であり,Iが昭和25年4月に開設したY幼稚園の運営等を行っていた。被告Aは,被告Bと婚姻後,Xでの学校経営等に関与するようになり,平成7年にIが死亡した後,被告BもX での学校経営に関与するようになった。(甲16,乙13の1【6頁】,乙14【2頁】,弁論の全趣旨)イ被告Aは,長年に亘り,Xの事業として小学校を開設することを希望していたところ,平成25年6月に,国有地であった本件土地が公募により売却されることになったことから,被告Aは,本件土地を賃借して本件小学校を開設することを計画した。(甲16)(2) キアラ建築の関与による本件小学校の建築計画等ア Xは,遅くとも平成25年10月頃までに,本件小学校の設 被告Aは,本件土地を賃借して本件小学校を開設することを計画した。(甲16)(2) キアラ建築の関与による本件小学校の建築計画等ア Xは,遅くとも平成25年10月頃までに,本件小学校の設計業者の選定を始め,キアラ建築は,同年12月頃,Xに対し,3階建ての校舎の企画書を提案し,その工事予算については,10億円程度になると想定される旨を説明した。キアラ建築は,その後もXの要望に応じて,別の提案をするなどしたが,同年の夏頃までに,最初の企画書の提案に近い形の提案になり,Cは,当時,被告らに対し,本件小学校の建築費用が10億円程度になる旨説明していた。(甲49【2頁,3頁,12頁】,弁論の全趣旨)イ Xは,平成26年7月8日,キアラ建築との間で,本件小学校の設置,運営にかかる建築設計・監理業務委託契約(消費税込み3456万円)及び開発業務委託契約(消費税込み864万円)を締結した。(甲49【5頁,別紙1,別紙2】)ウキアラ建築は,同年秋頃,建設業者4社から,本件小学校の建築費用についての概算見積りを取ったところ,各社の見積額は,いずれも15億円ないし20億円程度となった。Cは,その旨を被告らに報告したところ,被告らは,その金額が高額であることに不満の意向を示していた。(証人C,甲49【12ないし14頁】,弁論の全趣旨) (3) 本件小学校の設置認可申請等ア Xは,遅くとも平成26年3月頃から,高総研のEの助言を得ながら,本件小学校の設置認可申請の準備を行った。(甲51【1頁,2頁】,弁論の全趣旨)イ Xは,同年10月31日,私学審議会に対し,本件小学校にかかる認可申請を行った。その際の設置計画は,校舎建設費用の見積金額は4億円で,Xは,自己資金2億3900万円,事業収支3000万円,新設 イ Xは,同年10月31日,私学審議会に対し,本件小学校にかかる認可申請を行った。その際の設置計画は,校舎建設費用の見積金額は4億円で,Xは,自己資金2億3900万円,事業収支3000万円,新設時寄付金収入2億8700万円の合計5億5600万円で開設資金を準備できるとするものであった。 これは,本件審査基準では,既設の小中高校を設置していない学校法人が私立学校を設置する場合,借入金額が校地取得費及び校舎建築費の3分の2以下であること,当該借入後において,学校法人の総資産額に対する前受金を除く総負債額の割合が30パーセント以下であり,かつ,学校法人の負債に係る各年度の償還額が当該年度の帰属収入の20パーセント以下であることなどの本件審査基準を満たす必要があったところ,本件審査基準を踏まえたEの助言によるものであった。(甲16,甲36,甲49【9頁】,弁論の全趣旨)ウ私学審議会は,平成27年1月27日,本件小学校についての前記イの認可申請につき,認可適当とした。(甲16,乙16)(4) 本件土地の定期借地契約の締結国は,Xが本件小学校の開設について認可適当との答申を受けたことを踏まえ,平成27年2月,Xに対し,本件土地を貸し出した後に売却することを了承し,Xは,同年5月29日,国との間で,貸付期間を平成27年6月8日から平成37年6月7日までの10年間,貸付料2730万円(年額,当初3年間)の定期借地契約及 び同借地期間内に本件土地を買い取ることができる国有財産売買予約契約をそれぞれ締結した。(甲16)(5) 平成27年当時の本件小学校に関する報道Xは,平成27年8月1日付けの産経新聞のニュースサイトの記事において,その経営に係るY幼稚園が教育勅語を園児に教えるなどの独自の教育方針を取 (5) 平成27年当時の本件小学校に関する報道Xは,平成27年8月1日付けの産経新聞のニュースサイトの記事において,その経営に係るY幼稚園が教育勅語を園児に教えるなどの独自の教育方針を取っていること,当時のG内閣総理大臣の妻がその教育方針に共感を示していたこと,Xが小学校の経営に乗り出していることなどが報道された。(乙7の1)(6) 本件請負契約の締結に至る経緯アキアラ建築は,平成27年5月頃から,本件小学校の建設に係る請負業者の選定を本格化させており,複数の建設業者から工事費用についての概算見積りを取っていた。原告は,同年11月5日,概算見積額を15億5520万円とする見積書を提出したが,他社は19億円ないし20億円の見積書を提出した。(甲23,甲49【56ないし58頁】,弁論の全趣旨)イ被告Aは,Cと相談した上,同月末頃までに,本件小学校の建設に係る請負業者として,最も安価な見積書を提出した原告を選定することに決定した。(甲49【56ないし58頁】,弁論の全趣旨)ウその後,原告代表者,被告ら,Cは,本件請負契約の締結に向けて打合せを行っていたところ,Eは,本件請負契約の報酬額について,私学審議会に対する本件小学校の認可申請の際に校舎建設費用の見積金額は4億円である旨を説明していたこととの整合性を求めた。 原告代表者,被告ら,Cは,平成27年12月10日の打合せにおいて,本件請負契約について,15億5520万円の正式な 契約書と私学審議会に提出するための7億5600万円の契約書を別に作成すること,請負報酬の支払方法について,平成28年度末に支払う額は7億円までとし,報酬の総額を20パーセント,20パーセント,10パーセント,50パーセントの分割で支払うこと等を確認した。(甲49 すること,請負報酬の支払方法について,平成28年度末に支払う額は7億円までとし,報酬の総額を20パーセント,20パーセント,10パーセント,50パーセントの分割で支払うこと等を確認した。(甲49【59頁】,甲52【9ないし12頁,別紙2】)(7) 15億契約書,7億契約書,覚書の作成と前払金の支払ア原告は,Xとの間で,平成27年12月22日,以下の内容の15億契約書,7億契約書,覚書を作成した。15億契約書及び7億契約書の日付は,地鎮祭が行われた同月3日とされた。(甲3ないし5,甲49【58,59頁】,甲52【15頁】)15億契約書(平成27年12月3日付け)工事場所本件土地工期着手平成27年12月3日完成日平成29年1月31日引渡日平成29年1月31日請負報酬 15億5520万円(消費税込み)請負報酬の支払前払(契約時) 1億5552万円(平成27年12月25日)部分払(上棟時) 3億1104万円(平成28年6月30日)完成払(竣工事) 3億1104万円(平成29年1月31日)最終残金 7億7760万円(平成29年5月31日) その他発注者と受注者との間の本工事請負契約書の内容については,この工事請負契約書の条項に定めるものが最終合意されたものである。 なお,工事請負契約書(本工事契約書)で合意された工事のうち,発注者が私学助成金を利用する予定の工事については,別途に私学審議会提出用に工事請負契約書を作成するものとするが,工事の内容はこの工事請負契約書(本工事契約書)が最終 書)で合意された工事のうち,発注者が私学助成金を利用する予定の工事については,別途に私学審議会提出用に工事請負契約書を作成するものとするが,工事の内容はこの工事請負契約書(本工事契約書)が最終合意である。 (甲3) 7億契約書(平成27年12月3日付け)工事場所本件土地工期着手平成27年12月3日完成日平成29年1月31日引渡日平成29年1月31日請負報酬 7億5600万円(消費税込み)請負報酬の支払前払(契約時) 7560万円(平成27年12月25日)部分払(上棟時) 1億5120万円(平成28年6月30日)完成払(竣工事) 1億5120万円(平成29年1月31日)最終残金 3億7800万円(平成29年5月31日)(甲4) 本件覚書(平成27年12月22日付け)平成27年12月22日締結のZ新築工事の契約書について,「2 工事請負契約書(本工事契約書)請負代金額金1,555,200,000円」が甲と乙との間で合意された工事請負契約の内容であるが,甲が私学助成金を利用予定の工事について,別途に「1 私学審議会提出用の工事請負契約書請負代金額金756,000,000円」を作成するものとし,その趣旨を明らかにするために,この覚書を作成する。 (甲5)イ原告は,平成27年12月22日,Xに対し,本件請負契約の報酬のうちの前払金(契約時)として1億5552万円の請求書を送付し,Xは,同日,同額を原告名義の口座に振り込む方法により支払った。(甲24,26,33の1)(8) 修正15億 ,本件請負契約の報酬のうちの前払金(契約時)として1億5552万円の請求書を送付し,Xは,同日,同額を原告名義の口座に振り込む方法により支払った。(甲24,26,33の1)(8) 修正15億契約書の作成ア被告Aは,平成28年1月13日の打合せにおいて,原告に対し,15億契約書に原告の実印を押印し直すよう求め,その際,15億契約書の第7項のうち「なお,工事請負契約書(本工事契約書)で合意された工事のうち,発注者が私学助成金を利用する予定の工事については,別途に私学審議会提出用に工事請負契約書を作成するものとするが,工事の内容はこの工事請負契約書(本工事契約書)が最終合意である。」との私学助成金に係る記載部分を削除するよう申し入れた。(原告代表者,甲52【19頁・別紙6】,乙11)イ原告とXは,その後,私学助成金に係る上記記載部分を削除した修正15億契約書(平成27年12月3日付け)を作成した。 (原告代表者,甲52【19頁・別紙6】,乙11) (9) サステナブル補助金等と23億契約書ア Xは,平成27年7月頃,木活協に対し,本件小学校の建築に係る事業について,工事見積額を約22億円(消費税別),補助金の申請額を約1億2000万円としてサステナブル補助金を申請していた。木活協は,同年9月4日,上記申請について,サステナブル補助金の補助限度額を6194万4000円としてこれを採択した。(甲49【54,55頁,別紙6,7】)イ Xは,平成28年1月当時,サステナブル補助金として6194万4000円(消費税込み),大阪国際空港教育施設等騒音防止対策事業助成金として1億4800万円(消費税込み)の交付を受けることを見込んでいたが,上記各補助金全額の交付を受けるために請負報酬額を22億円(消費税別)とす み),大阪国際空港教育施設等騒音防止対策事業助成金として1億4800万円(消費税込み)の交付を受けることを見込んでいたが,上記各補助金全額の交付を受けるために請負報酬額を22億円(消費税別)とする請負契約書及び見積書の提出が必要であった。(甲50【21ないし28頁,別紙4,5,6】,証人D)ウ原告は,同月20日頃,Xとの間で,本件請負契約の報酬額について,23億8464万円(消費税込み)とする23億契約書(平成27年12月3日付け)を作成した。(甲35,49【66,67頁,別紙11】,52【78ないし81頁,別紙8】,乙3)エ木活協は,Xに対し,サステナブル補助金として,平成28年3月22日に4829万8000円を,平成29年2月21日に815万円を,それぞれ交付した。(乙16)(10) 本件土地の売買契約被告Aは,平成28年2月頃までに,本件土地上で本件小学校の建設工事のための杭打ち作業中に地下3メートルより下の地中から廃材等が見つかり,Xが廃材などの撤去工事や土壌改良を行ったと して,国に対して,有益費1億3176万円の償還を請求するとともに,国に安価での本件土地の購入を申し入れるなどし,国は,同年4月,Xに対し,上記有益費を支払った。 国は,同年6月20日,Xに対し,本件土地を1億3400万円(評価額9億5600万円から本件土地の地中から発見されたとするゴミの撤去費用8億1900万円を控除した額。)で売却した。 上記売買契約には,一定の条件のもとで,国が1億3400万円で本件土地の買戻しをすることができる旨の買戻特約が付されていた。 (甲2,6,16)(11) 原告に対する銀行からの融資原告は,平成28年3月29日,りそな銀行との間で,本件請負契約の報酬の最終残金が支払われるまでの とができる旨の買戻特約が付されていた。 (甲2,6,16)(11) 原告に対する銀行からの融資原告は,平成28年3月29日,りそな銀行との間で,本件請負契約の報酬の最終残金が支払われるまでのつなぎ融資として,契約期間を平成29年5月31日までとして,極度額7億円の定額貸付条項付相対型コミットメントライン契約を締結した。(甲47,48,弁論の全趣旨)(12) Xの資産及び銀行からの融資等ア Xの平成28年3月31日時点の総資産額は11億6722万3589円(本件請負契約にかかる建設仮勘定3億2311万6028円を含む。)であり,そのうち,現金預金の合計は1億9639万1448円であった。また,前受金を除く総負債額は,2億8283万2797円であった。(甲15)イ Xは,同年10月12日,りそな銀行との間で,極度額10億円,最終元本返済日を平成55年8月31日とする金銭消費貸借契約を締結した。(乙8の1)ウ Xは,平成28年10月14日,りそな銀行との間で,前記イ記載のりそな銀行のXに対する貸金返還請求権を被担保債権とし て,国が本件土地の買戻し権を行使した際の,Xの国に対する売買代金債権につき,りそな銀行のために質権を設定する旨の合意をした。(乙8の2)エ Xは,同日,りそな銀行から,3億1100万円を借り入れ,原告に対し,3億1104万円を支払った。(甲27,33の2,38)(13) 本件土地の土壌対策工事等原告は,平成29年1月12日,Xとの間で,本件土地の土壌対策工事等について,報酬額9342万円(税込価格)で請負契約を締結し,本件小学校の完成及び引渡しについて,同月31日から同年3月25日に変更することを合意した。(甲7,22)(14) 平成29 工事等について,報酬額9342万円(税込価格)で請負契約を締結し,本件小学校の完成及び引渡しについて,同月31日から同年3月25日に変更することを合意した。(甲7,22)(14) 平成29年2月以降の本件小学校に関する報道等ア Xは,本件小学校の開校を平成29年4月1日の予定としていたが,同年2月に国有地であった本件土地の売却代金が公開されると,報道機関から,本件土地の売買代金の廉価性の指摘が相次ぎ,併せて,Xの独特の教育方針や当時のG内閣総理大臣の妻が本件小学校の名誉校長に就任予定であったことなどが連日報道されて社会問題化し,その後,Xを巡る補助金受給の不正疑惑等も報道されるようになった。 そして,同年3月23日には,被告Aが国会に証人喚問されるなどし,Xを取り巻く状況は一変した。(甲16,弁論の全趣旨)イ被告Aは,同年3月10日,原告に対し,本件請負契約にかかる工事の中止を要求し,大阪府に対し,本件小学校の設置許可申請を取り下げた。(甲12,16)(15) 原告のXに対する請求等ア原告は,平成29年3月頃,Xに対し,本件請負契約の報酬の 一部として,以下の記載のある,3億1104万円の請求書(同月2日付け)を送付した。 請負代金額 14億4000万円既受金額 4億3200万円(甲25)イ Xは,同月13日,原告に対し,前記(13)の土壌対策工事等が完成したことを確認した旨の確認書を交付した。(甲13)(16) 本件再生手続ア Xは,平成29年4月21日,大阪地方裁判所に対し,本件再生手続に係る民事再生手続開始及び保全管理命令の各申立てをし,大阪地方裁判所は,同日付けでF管財人を保全管理人に選任し,同月28日午前10時,本件再生手続が開始された。 原告は,本件再 し,本件再生手続に係る民事再生手続開始及び保全管理命令の各申立てをし,大阪地方裁判所は,同日付けでF管財人を保全管理人に選任し,同月28日午前10時,本件再生手続が開始された。 原告は,本件再生手続において,同年6月26日,原告が本件で損害として主張する債権(合計16億2567万9683円)について届出を行い,管財人は,同年8月3日,原告が本件で損害として主張する上記債権全額について認める認否書を提出した。 (甲16,20,28,32)イ被告Aは,同年10月28日,本件再生手続において,大阪地方裁判所に対し,原告の再生債権届出書(甲28)に本件請負報酬債権の残金が10億8864万円と記載されていることについて,10億8864万円から材木代金1億円を控除した,9億8864万円となる旨回答した。(甲30) 2 争点1(本件請負契約の報酬額)について(1) 前記認定事実(6),(7)によれば,本件請負契約については,平成27年12月22日という同一の日に,15億契約書,7億契約書,覚書という3通の文書が作成されており,いずれも文書の成立の真 正に争いはないところ,これらの文書が作成された経過については,同月10日の原告代表者,被告ら,Cの打合せにおいて,請負報酬額が15億5520万円であることを前提に,私学審議会に提出するために7億契約書を作成する必要があることが確認された上で,同月22日に15億契約書,7億契約書,覚書の3通の文書が作成され,同日に作成された15億契約書と7億契約書との関係を明らかにするために,15億契約書及び覚書には,私学審議会提出用に7億契約書を作成するが,本件請負契約の内容は15億契約書のとおりである旨記載されたことが認められる。 また,証人C及び証人Dの証言並びに原告代表 5億契約書及び覚書には,私学審議会提出用に7億契約書を作成するが,本件請負契約の内容は15億契約書のとおりである旨記載されたことが認められる。 また,証人C及び証人Dの証言並びに原告代表者の供述において,本件請負契約の報酬額が15億5520万円であることについては一致しているところ(原告代表者,証人C,証人D),前記認定事実(2),(6),(7),(12)によれば,被告らは,当初は,工事費用として10億円程度を想定していたものの,その後,複数の建設業者から15億円から20億円程度の概算見積りを受けており,平成27年10月時点での見積額も,原告以外の他社は19億円ないし20億円であったのに対し,原告の見積額が15億5520万円と最も安価であったことから,原告が本件小学校建設の請負業者として選定されたという経過が認められることに加え,Xは,原告に対し,15億契約書に記載された請負報酬の支払予定に従い,契約時の前払金として平成27年12月22日に1億5552万円,上棟時の部分払金として平成28年10月14日に3億1104万円の支払をしていたことが認められるから,かかる事実経過と整合する,証人C及び証人Dの上記証言内容並びに原告代表者の上記供述内容には信用性があるというべきである。 加えて,前記認定事実(16)のとおり,本件再生手続において,管 財人も再生債権について,本件請負契約の報酬額が15億5520円を前提とした認否をしている。 以上によれば,本件請負契約の報酬額は,15億契約書のとおり,15億5520万円であると認められる。 (2)ア被告らは,本件請負契約の報酬額は,7億契約書のとおり7億5600万円である旨主張する。 しかし,被告Aは,本件請負契約の報酬の額について,7億5600万円というのは私 と認められる。 (2)ア被告らは,本件請負契約の報酬額は,7億契約書のとおり7億5600万円である旨主張する。 しかし,被告Aは,本件請負契約の報酬の額について,7億5600万円というのは私学審議会に申告している金額であり,絶対にこれ以上は金額を上げられない旨供述する一方,15億契約書について,自ら押印したことを認め,同額で契約することを認識していた旨供述した上,結局,いずれの契約書も正しい契約書であるなどと供述し,請負報酬の額については曖昧な供述に終始していること(被告A),被告Bについても,本件請負契約の報酬の額について,7億円であると供述する一方,15億契約書と7億契約書のいずれが本当の契約なのか分からないと供述していること(被告B),前記認定事実(16)のとおり,被告Aが,本件再生手続において,再生債権額に関し,裁判所に対してした回答は,本件請負契約の報酬額が15億5520万円であり,その残金が10億8864万円であることを前提とするものであることなどに照らして,被告らの上記主張は採用することができない。 イまた,被告らは,23億契約書にも「この工事請負契約書の条項に定めるものが最終合意されたものである」旨の記載があるから,同様の記載があることをもって15億契約書が正式な契約書であるとはいえない旨主張する。 しかし,被告ら自身も本件請負契約の報酬額が23億契約書のとおり23億8464万円であるとは主張しておらず,23億契 約書が正式な契約書であるとは認められないところ,前記認定事実(7)ないし(9)によれば,23億契約書は,本件請負契約が締結された平成27年12月22日の後の平成28年1月20日に,サステナブル補助金及び大阪国際空港教育施設等騒音防止対策事業助成金の見込み額の全額の交付を受けるた ば,23億契約書は,本件請負契約が締結された平成27年12月22日の後の平成28年1月20日に,サステナブル補助金及び大阪国際空港教育施設等騒音防止対策事業助成金の見込み額の全額の交付を受けるために形式的に作成された契約書にすぎないと認められるから,このような23億契約書の記載内容をもって,15億契約書の記載内容の信用性は否定されず,被告らの上記主張を採用することはできない。 3 争点2(被告Aの不法行為の成否)について(1) 被告Aの欺罔行為の有無についてア原告は,被告Aが,本件請負契約を締結するに際し,Xには本件請負契約の報酬額である15億5520万円を支払う意思も能力もないのに,これを秘して,「工事代金の半分は私学助成金で支払う」等と実際には存在しない私学助成金が支給される旨の虚偽の事実を告げるなどして原告を欺罔した旨主張する。 被告Aが「工事代金の半分は私学助成金で支払う」等と告げたか否かについて,証人Cの証言及び原告代表者の供述によれば,被告Aが,本件請負契約締結の際,原告代表者に対し,請負報酬の最終残金である7億7760万円について,同額を私学助成金で支払うという意向を述べたという点について,これに沿う部分がある。また,前記認定事実(7)によれば,原告代表者と被告Aは,本件請負契約の締結に際して作成された15億契約書及び覚書において,「発注者が私学助成金を利用する予定の工事」については,私学審議会提出用に,別途7億契約書を作成することを合意した旨を敢えて記載していること,本件請負契約において,報酬額の半額である7億円以上の金員につ いて,その弁済期が目的物の完成引渡から4か月後になることを原告が了承していることがそれぞれ認められるところ,本件請負契約締結の際に,被告らが本件小学校の開校後 7億円以上の金員につ いて,その弁済期が目的物の完成引渡から4か月後になることを原告が了承していることがそれぞれ認められるところ,本件請負契約締結の際に,被告らが本件小学校の開校後に支払われる私学助成金で報酬を支払う旨の発言がなければ,このような覚書等の記載や弁済期の約定の合意は成立しないものと考えられる。 そうすると,被告Aが,本件請負契約締結の際に,本件請負契約の報酬の半額を私学助成金で支払う旨を告げた事実が認められる。 被告Aは,本件請負契約締結の際,原告代表者に対し,請負報酬の半額について私学助成金が下りる等と告げたことはなく,私学助成金に係る記載部分については内容を理解しないまま15億契約書(甲3)を作成したが,私学助成金など存在しないのであるから,その日のうちに,同契約書の私学助成金の記載のある部分に白紙を乗せて作成した修正15億契約書(乙11)を作成した旨供述する。(被告A,乙18)。 しかし,修正15億契約書が作成された経過については,前記認定事実(7),(8)によれば,被告Aが,15億契約書が作成された平成27年12月22日の後の平成28年1月13日の打合せにおいて,原告に対し,15億契約書に原告の実印を押印し直すよう求めるとともに,私学助成金に係る記載部分を削除するよう申し入れ,原告は,その後,同被告の申入れに従って,私学助成金に係る記載部分を削除した修正15億契約書を作成したことが認められ,係る経過は平成28年1月13日の打合せ議事録(甲52【別紙6】)の記載内容とも整合するから,これとは異なる被告Aの上記供述は採用できない。 ウ原告は,被告Aは,本件請負契約締結時において,当時のXの資産状況からすれば,本件請負契約の報酬額である15億5 ら,これとは異なる被告Aの上記供述は採用できない。 ウ原告は,被告Aは,本件請負契約締結時において,当時のXの資産状況からすれば,本件請負契約の報酬額である15億5520万円を支払う意思も能力もなかった旨主張する。 しかし,前記認定事実(3),(4),(9),(12),(14)によれば,Xは,本件請負契約締結時である平成27年12月22日に,15億契約書に従って請負報酬のうち1億5552万円を支払っていて,最終残金の支払時期である平成29年5月31日までに支払うべき請負報酬の残額は,約14億円であったことが認められるところ,本件請負契約締結の直後の平成28年時点におけるXの資力についてみると,平成28年3月31日時点のXの総資産額は約11億6700万円,うち流動資産は約1億9600万円であり,これに対して前受金を除く総負債額は,2億8283万2797円であったこと,本件小学校の建築等に係る補助金ないし助成金として,2億円程度の交付が見込まれていたこと(ただし,前記認定事実(9)のとおり,サステナブル補助金のうち4829万8000円は平成28年3月22日に交付されているから,同額は前記同月31日時点のXの流動資産約1億9600万円に含まれているものと考えられる。),同年10月12日には,りそな銀行との間で本件土地の担保価値を見込んで極度額を10億円とする金銭消費貸借契約を締結していたことなどの事情が認められる。なお,りそな銀行からの上記融資は,Xが本件請負契約締結後に取得した本件土地の担保価値を見込んでされたものと認められるものの,それ以前においても,Xは,本件土地について,国との間で定期借地契約及び借地期間内に本件土地を買い取ることができる国有財産売買予約契約をそれぞれ締結していて,本 込んでされたものと認められるものの,それ以前においても,Xは,本件土地について,国との間で定期借地契約及び借地期間内に本件土地を買い取ることができる国有財産売買予約契約をそれぞれ締結していて,本件小学校の敷地の権 利関係も安定しており,本件小学校の建築後には,その校舎及び付属建物を含む本件小学校の不動産について相当程度の担保価値が生じることが見込まれたと考えられることからすれば,りそな銀行からの上記融資が,Xが本件請負契約締結後に取得した本件土地の担保価値を見込んでされたものであることはXの本件請負契約の報酬の支払能力の判断には影響しないというべきである。 他方,前記認定事実(3)のとおり,大阪府の私立小学校及び中学校の設置認可等に係る本件審査基準では,総資産額に対する前受金を除く総負債額の割合が30パーセント以下である必要があり,私学審議会との関係においては,Xの借入金に一定の制約があることが認められる。しかし,本件小学校が開校した後に本件審査基準を一時的に満たさない状態になったとしても,直ちに本件小学校の経営が成り立たなくなるということもできないことからすると,行政との関係における本件審査基準による制約が,少なくとも私人である原告との関係における,本件請負契約の報酬の支払能力の判断に影響するということはできないというべきである。 加えて,前記認定事実(1),(5),(14),(16)によれば,Xは,長年,幼稚園を経営し,被告Aは,相当期間,学校経営に関与する中で,長年の希望であった小学校を開校する計画を実行に移したものであって,本件小学校の開設に当たっては,当時の総理大臣夫人を名誉校長に迎える内諾を取りつけるなどの話題作りを行うなどして相応の準備もしてきた中で,本件請負契約を締 開校する計画を実行に移したものであって,本件小学校の開設に当たっては,当時の総理大臣夫人を名誉校長に迎える内諾を取りつけるなどの話題作りを行うなどして相応の準備もしてきた中で,本件請負契約を締結してきたのであり,Xが,平成29年3月10日に本件小学校の設置許可申請を取り下げ,同年4月28日に本件再生 手続が開始されることとなったのは,同年2月以降の,本件土地の売買代金の廉価性やXを巡る補助金受給の不正疑惑等にかかる報道がされ,これらが社会問題化したことに起因するものと認められるから,本件小学校の開校及び経営を切望していた被告Aにおいて,本件請負契約を締結した平成27年12月時点において,本件請負契約に係る報酬を支払う意思もなく,これを支払わないままで学校経営を続けることを想定していたとみるのは不合理である。そうすると,被告Aが,本件請負契約締結時において,本件請負契約の報酬である15億5520万円を支払う意思がなかったと評価することも相当ではないというべきである。 以上によれば,Xが,本件請負契約締結時において,本件請負契約の報酬である15億5520万円をその最終残金の支払時期までに調達するだけの資力ないし能力がなかったものと評価するのは相当でないというべきである。 ところで,被告Aは,被告本人尋問において,15億契約書で最終残金の支払時期を本件小学校の完成から4か月後の平成29年5月31日とした理由として,本件小学校の開校式も終わって,子供たちも学ぶ時期になっているから,本件小学校の評価も上がり,寄付金なども入ることが見込まれたからである旨供述するところ,前記認定事実(1)及び(5)のとおり,Xは,長年,幼稚園を経営し,被告Aも相当期間,学校経営に関与する中で,長年の希望であった小学校を開 付金なども入ることが見込まれたからである旨供述するところ,前記認定事実(1)及び(5)のとおり,Xは,長年,幼稚園を経営し,被告Aも相当期間,学校経営に関与する中で,長年の希望であった小学校を開校する計画を実行に移したものであって,本件小学校の開設に当たっては,当時の総理大臣夫人を名誉校長に迎える内諾を取りつけるなどの話題作りを行うなどして相応の準備もしていたことが認められ,上記 のような話題性に照らして,本件小学校が平成29年4月1日に開校した後における相当程度の寄付金があるとの見込みは合理的なものであったとみるのが相当である。 そして,被告Aの上記供述によれば,被告Aが本件請負契約の締結に際し,原告代表者に対して私学助成金が下りる旨の架空の話を持ち出したのは,本件小学校が実際に開校し,運営がされていく中で本件小学校の評価が上昇して相当の寄付金が集まり,小学校の校舎を担保とした借入れが可能となることなどを見込んで,本件小学校の開校後まで弁済期を遅らせることによって,請負報酬の支払をより確実にするための方便であったということができる。 そうすると,被告Aは,請負報酬の支払をより確実にするための方便として請負報酬の半分について私学助成金で支払う旨を告げて資金調達の方法を偽ったものではあるものの,のとおりのXの資力ないし能力を前提にすると,被告Aの上記行為をもって,Xが請負報酬を支払う意思も能力もないのに,これを秘して,請負報酬を支払わないまま本件小学校を建設させてこれを騙取することを企図してされたものと評価することはできない。 エ以上によれば,被告Aが,本件請負契約を締結するに際し,Xには本件請負契約の報酬額である15億5520万円を支払う意思も能力もないのに,これを秘して原告を欺罔した することはできない。 エ以上によれば,被告Aが,本件請負契約を締結するに際し,Xには本件請負契約の報酬額である15億5520万円を支払う意思も能力もないのに,これを秘して原告を欺罔したということはできず,被告Aにおいて,原告に対する欺罔行為があったものとは認められない。 (2) 被告Aの故意の有無について前記(1)のとおり,Xにおいて,本件請負契約締結に際し,請負報 酬額である15億5520万円を支払う意思も能力もなかったものと認めるに足りないのであるから,被告Aにおいて,原告に対する詐欺の故意があったものと認めるに足りない。 (3) 小括以上によれば,被告Aが,本件請負契約の締結に際し,原告に対し,「工事代金の半分は私学助成金で支払う」旨を告げた事実は認められるが,請負報酬の支払をより確実にするための方便として請負報酬の半分について資金調達の方法を偽ったものにとどまり,Xにおいて,請負報酬額である15億5520万円を支払う意思も能力もなかったものと認めるに足りず,被告Aの欺罔行為も詐欺の故意も認められないのであるから,被告Aの原告に対する不法行為(詐欺)は成立せず,原告の同被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求は,その余の点(争点4)について判断するまでもなく理由がない。 4 争点3(被告Bの被告Aとの共同不法行為の成否)について前記3の認定判断のとおり,被告Aの原告に対する不法行為(詐欺)は成立しないところ,原告が主張する被告Bの被告Aとの共同不法行為については,被告Aに原告に対する詐欺が成立することを前提とするものであるから,原告の被告Bに対する不法行為に基づく損害賠償請求についても,その余の争点(争点4)について判断するまでもなく理由がない。 第4 結論以上のとおりであ 成立することを前提とするものであるから,原告の被告Bに対する不法行為に基づく損害賠償請求についても,その余の争点(争点4)について判断するまでもなく理由がない。 第4 結論以上のとおりであって,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第18民事部 裁判長裁判官横田典子 裁判官玉田雅義 裁判官小草啓紀

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