- 1 -判決日平成18年9月26日事件番号平成17年(ワ)第7168号損害賠償請求事件主文 被告Yは,原告X1に対し,110万円及びこれに対する平成17年4月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告Yは,原告X2に対し,110万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告Yは,原告X3に対し,110万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 XらのYに対するその余の請求をいずれも棄却する。 Xらの被告足立区に対する請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,これを100分し,その1を被告Yの,その余はXらの負担とする。 この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1請求 被告らは,原告X1に対し,連帯して,1億3196万8656円及びこれに対する平成17年4月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは,原告X2に対し,連帯して,2789万8108円及びこれに対する平成17年4月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは,原告X3に対し,連帯して,2657万8108円及びこれに対する平成17年4月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要- 2 -本件は,訴外Aの相続人である原告らが,被告足立区の小学校に警備員として勤務していた被告Yが,同じ小学校に教諭として勤務していたAを殺害した上,その遺体を約26年間にわたって自宅の床下に隠していたとして,被告Yに対しては民法709条の不法行為責任に基づき,被告足立区に対しては民法715条の使用者責任ないし国家賠償法1条に基づく責任さらには安全配慮義務違反による たって自宅の床下に隠していたとして,被告Yに対しては民法709条の不法行為責任に基づき,被告足立区に対しては民法715条の使用者責任ないし国家賠償法1条に基づく責任さらには安全配慮義務違反による債務不履行責任に基づき,連帯してAの逸失利益等及び原告らの慰謝料等の支払を求めた事案である。 前提となる事実(1)当事者等アA(昭和24年7月4日生)は,昭和53年8月14日当時,被告足立区の設置する足立区立N小学校(以下「N小学校」という)において,。 図工教諭として勤務していた。 イ(ア)原告X1は,Aの母である。 ,,,,なお原告X1は平成17年2月23日札幌家庭裁判所において後見開始の審判を受け,原告X2がその成年後見人に選任された。 ,,,,。 (イ)また訴外BはAの父であるが昭和57年5月3日死亡した(ウ)原告X2及び原告X3は,各々原告X1の長男及び次男であり,A。 ,(,,の弟に当たるAには原告ら3名の外に相続人はいない甲6甲7弁論の全趣旨。 )ウ被告Yは,昭和48年4月,被告足立区において学校警備の職務を行う職員として採用され,以降平成3年3月まで,N小学校において警備員として勤務していたが,平成7年3月,被告足立区を退職した(乙1。 )被告Yは,平成16年7月下旬ころまで,東京都足立区Ma丁目b番c(「」。)(,)。 号所在の自宅以下本件自宅というに居住していた甲8乙1エ被告足立区は,地方自治法281条の規定に基づく特別区として,N小学校を設置・管理し,教育事務を行う地方公共団体である。 - 3 -(2)被告YによるAの殺害及び隠匿被告Yは,昭和53年8月14日,N小学校において勤務中,同じくN小学校に勤務していたAを殺害し(以下「本件殺 し,教育事務を行う地方公共団体である。 - 3 -(2)被告YによるAの殺害及び隠匿被告Yは,昭和53年8月14日,N小学校において勤務中,同じくN小学校に勤務していたAを殺害し(以下「本件殺害行為」という,その後,。)Aの遺体を本件自宅の床下に穴を掘り埋めた。 (3)自首被告Yは,平成16年8月21日,警視庁O警察署に出頭してAの殺害及び隠匿を申告し自首したところ,同月22日,本件自宅の床下から白骨化した遺体及びAの所持品が発見され,その後DNA鑑定が実施された結果,同年9月29日,それがAの遺骨であることが確認された(甲12ないし甲20。 )(4)仮差押え原告X2及び原告X3は,平成16年10月7日,被告Yに対する,不法行為に基づく損害賠償請求権を請求債権として,本件自宅の土地についての被告Yの持分につき,仮差押決定(以下「本件仮差押え」という)を得た。 (甲51。 )(5)本件訴訟の提起原告らは,平成17年4月11日,本件訴訟を提起した。 争点及びこれに対する当事者の主張(1)本件殺害行為に関する不法行為に基づく損害賠償請求権は,民法724条後段所定の20年の経過により消滅したか(争点1。 )(原告らの主張)ア民法724条の適用制限について(ア)信義則違反,権利の濫用に当たること民法724条後段は,除斥期間を定めたものではなく,消滅時効を規定したものと解すべきであり,信義則・権利濫用による適用制限に服するというべきである。 - 4 -,,仮に同条後段が除斥期間を規定したものであると解されるとしてもそれをもって演繹的に信義則違反・権利の濫用による適用制限の主張を許さないという結論を導くのは相当でなく,同条後段による保護を与えることが相当でない特段の事情が認められる場合には,除斥期間経過の それをもって演繹的に信義則違反・権利の濫用による適用制限の主張を許さないという結論を導くのは相当でなく,同条後段による保護を与えることが相当でない特段の事情が認められる場合には,除斥期間経過の主張は信義則違反ないし権利の濫用に当たるとして,その適用が制限されるべきである。 本件においては,被告Y自らがAを殺害した上,その後約26年間にわたって遺体を本件自宅に隠し続けて,原告らの権利行使を妨げ続けたものである。 また,被告足立区においても,このような被告Yを雇用していたことに加え,Aの失踪当時,あくまでAの措置・処分を中心として調査を行うのみで,調査を早々に終了させるなど,事実関係の解明に消極的であったこと,事件発覚後も遺族である原告らに対し,何らの報告や謝罪もなく,本件訴訟においても事実関係の調査や書証の提出に極めて消極的である。 このような被告らについて,民法724条後段による保護を与えることが相当でない特段の事情があることは明らかであるから,被告らの除斥期間経過の主張は,信義則違反ないし権利の濫用に当たるというべきである。 (イ)正義・衡平の原理,条理さらに,除斥期間制度の趣旨を前提としても,なお,除斥期間制度の適用の結果が,著しく正義,衡平の理念に反し,その適用を制限することが条理にもかなうと認められる場合には,除斥期間の適用を制限できると解すべきである。 本件において,被告Yの隠匿行為や,被告足立区の消極的な態度に照らすと,除斥期間を適用することは著しく正義,衡平の原理に反してお- 5 -り,その適用を制限することが条理にかなう。 (ウ)時効ないし除斥期間の停止最高裁判所平成10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1087頁においては,不法行為の被害者が,不法行為の時から20年を経過する前6か月内において, なう。 (ウ)時効ないし除斥期間の停止最高裁判所平成10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1087頁においては,不法行為の被害者が,不法行為の時から20年を経過する前6か月内において,同不法行為を原因として心神喪失の状態にあるのに法定代理人を有しなかった場合,その後当該被害者が後見開始の審判を受け,後見人に就職した者がその時から6か月内に損害賠償請求権を行使したなどの特段の事情があるときは,民法158条の法意に照らし,同法724条後段の効果は生じないと解するのが相当である旨判示している。これは,加害者自身の行為により権利行使が妨げられてきた場合には,同法724条後段の効果は生じないという趣旨であるところ,本件においては,被告Yの隠匿行為及び被告足立区の不誠実な対応により,原告らの権利行使が妨げられていたものであるから,同条後段の適用は制限されるべきである。 イ民法724条後段の20年の起算点について(ア)被告Yの行為は,①Aを殺害した行為,②遺体を自宅の床下に埋め,,た行為③遺体を埋めた土地上で生活を続けた行為に分けられるところ①Aを殺害した行為が不法行為に該当することは言うまでもない。さらに,②遺体を自宅の床下に埋めた行為及び③遺体を埋めた土地上で生活を続けた行為についても,被告Yが,犯行の発覚を免れるために遺体を埋め直したり,本件自宅に殊更に他人を寄せ付けないようにしていたことや区画整理事業による立ち退きにも最後まで応じようとしなかった経緯からすれば,時間的・場所的にも非常に近接している①Aを殺害した行為の発覚を免れる目的で行ったものであることは明らかであり,上記②及び③の各行為が密接不可分の関係にあるとともに,①Aを殺害した行為と同様,不法行為に該当する。 - 6 -したがって,上記①ないし③の各行為は れる目的で行ったものであることは明らかであり,上記②及び③の各行為が密接不可分の関係にあるとともに,①Aを殺害した行為と同様,不法行為に該当する。 - 6 -したがって,上記①ないし③の各行為は,全て一連の不法行為と評価すべきである。 この点,被告らは,③遺体を埋めた土地上で生活を続けた行為は,単に従前と同様にその土地上で日常生活をしているにすぎず,何ら不法行為に該当するものではない旨主張する。しかしながら,被告Yは,自己の犯行の発覚を恐れ,他者を容易に本件自宅内に立ち入らせないようにするため,本件自宅の周囲に有刺鉄線を張ったり,防犯カメラを設置するなど,異様な状況を作出していたことからすれば,③遺体を埋めた土地上で生活を続けた行為も,遺体の隠匿の重要な要素であるというべきであり,①Aを殺害した行為及び②遺体を自宅の床下に埋めた行為と一体となった継続的不法行為の要件を充足していることは明らかである。 継続的不法行為においては,当該不法行為の終了時点を起算点とすべきであるから,民法724条後段の20年の期間経過の起算点は,被告YがAの遺体の上での生活を終了した平成16年8月22日というべきである。 (イ)万一,上記の①Aを殺害した行為のみが不法行為であり,②遺体を自宅の床下に埋めた行為及び③遺体を埋めた土地上で生活を続けた行為が不法行為になり得ないと解すべきであるとしても,不法行為に基づく損害賠償請求は,加害行為の存在だけでなく,加害行為により損害が発生することにより初めて成立しその行使が可能となり,蓄積進行性の健康被害の事案である最高裁判所平成16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁においても,損害の発生を待たずに除斥期間の進行を認めることは,被害者にとって著しく酷である一方,加害者にとっては,自らの行為により 判所平成16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁においても,損害の発生を待たずに除斥期間の進行を認めることは,被害者にとって著しく酷である一方,加害者にとっては,自らの行為により生じ得る損害の性質からみて,相当期間経過後に損害賠償請求を受けることを予期すべきであることから,民法724条後段に規定される20年の期間も,当該損害の全部又は一部が発- 7 -生した時から進行するとされている。 しかるところ,被告Y自らが殺害行為を隠匿して損害の顕在化を妨害したような本件の場合において,殺害行為の時点から除斥期間の進行を認めることは,蓄積進行性の健康被害の事案以上に,著しく被害者である原告らにとって酷であるし,また加害者である被告Yも,損害賠償請求を受けることは当然予期できたものということができる。 したがって,本件における期間は,本件の損害が顕在化した時点,すなわち発見された遺骨がAのものであるとDNA鑑定によって確認された平成16年9月29日,あるいは早くとも本件自宅から遺体が発見された同年8月22日から進行するというべきである。 ウその他,民法715条の使用者責任の根拠は,報償責任及び危険責任の法理に基礎付けられた代位責任であると解されることから,被用者が責任,。 ,を負う場合には原則として使用者も責任を負うべきであるしたがって時効の適用が問題となる場面において,時効の援用の相対効を前提としつつも,なお被用者が責任を負う場合には,使用者は,被害者に対して積極的に協力したなどの特段の事情のない限り,代位責任を負い,民法724条後段の効果は生じないというべきである。 エ以上のことから,本件殺害行為に関する不法行為に基づく損害賠償請求権は,未だ消滅していない。 (被告らの主張),,以下のとおり本件殺害行為に関する 条後段の効果は生じないというべきである。 エ以上のことから,本件殺害行為に関する不法行為に基づく損害賠償請求権は,未だ消滅していない。 (被告らの主張),,以下のとおり本件殺害行為に関する不法行為に基づく損害賠償請求権は被告YのA殺害時あるいは遺体隠匿時から既に20年が経過していることか,。 ら民法724条後段の除斥期間の経過によって消滅したというべきであるア民法724条の適用制限について民法724条後段の規定は,同条前段の3年の時効が,損害及び加害者を知ったときという被害者の主観的事情によって左右され,これらの事情- 8 -を被害者が知らなければ消滅時効の起算点が定まらないという点に鑑み,そのような状態を一定の期間で確定させるため,被害者の認識いかんを問わず,画一的に法律関係の確定を図ろうとするものである。そのような趣旨からすれば,同条後段は除斥期間を定めたものと解されるから,信義則・,。 権利濫用という個別的事情によってその適用が制限されるものではないさらに,本件においては,原告らの主張するような信義則,権利濫用及び正義・衡平の原理あるいは条理によって,除斥期間の適用が制限されるような事実関係にもない。殊に,被告足立区は,直接加害行為に及んだものではなく,またAを隠匿するなどして原告らの権利行使を妨げる状況を作出したわけではない以上,除斥期間の適用の制限を受けることは,およそない。 イ民法724条後段の20年の起算点について(ア)原告らは,被告Yの行為につき,①Aを殺害した行為,②遺体を自宅の床下に埋めた行為,③遺体を埋めた土地上で生活を続けた行為は一連の不法行為であると主張し,除斥期間の起算点は,上記③の行為終了時すなわち本件自宅からAの遺体が発見された時点である旨主張する。 しかしながら,②遺体を自宅の 体を埋めた土地上で生活を続けた行為は一連の不法行為であると主張し,除斥期間の起算点は,上記③の行為終了時すなわち本件自宅からAの遺体が発見された時点である旨主張する。 しかしながら,②遺体を自宅の床下に埋めた行為は,先行する①Aを殺害した行為と関連性を有するとしても,それぞれ個別に不法行為が成立するものである以上,独立に除斥期間は進行するというべきである。 また,②遺体を自宅の床下に埋めた行為が,①Aを殺害した行為の発覚を免れる目的のためになされたものであると言い得ても,③遺体を埋めた土地上で生活を続けた行為は,単にその土地上で従前と同様に生活をしているだけであって,そもそも不法行為が成立することはない。 したがって,上記①ないし③の各行為を一連の不法行為ということはできず,除斥期間の起算点は,不法行為と言い得る①Aを殺害した行為あるいは②遺体を自宅の床下に埋めた行為の各時点というべきである。 - 9 -(イ)さらに,仮に,原告らの主張するとおり,民法724条後段に規定される20年の除斥期間が「損害」が顕在化した時点から進行するも,のと解することができるとしても,本件においては,既に損害が顕在化していたが,単に原告らがその事実を知らなかったというにすぎず,損害の発生が顕在化していることには変わりがない。 (2)本件殺害行為につき,被告足立区には安全配慮義務違反が認められるか(争点2。 )(原告らの主張)被告足立区は,その所属する公務員であったAに対し,公務遂行のために設置すべき場所,設備若しくは器具等の設置管理又は公務員が被告足立区若しくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理に当たって,公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務,すなわち安全配慮義務を負う。 しかるところ,被告Yは,N小学校において,子どもたち しくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理に当たって,公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務,すなわち安全配慮義務を負う。 しかるところ,被告Yは,N小学校において,子どもたちのランドセルを窓から放り投げる,職員に殴りかかりそうになるなど,職員との間でトラブルを起こしており,また,警備中にこん棒を所持したり,ペットの猿を連れたりするなど,異様な行動をとっていたことからも明らかなとおり,警備員としての資質に欠けていただけでなく,当該学校に勤務する職員や児童らに対して危害を加える可能性は十分にあった。 したがって,被告足立区は,Aの生命・身体に生じていた危険を回避するために,被告Yについて,職員らとのトラブルに関する事実調査や,被告Yへの注意・勧告,配置転換等を行い,Aに対して危害が加えられないよう,人事上の処置をすべき義務を負っていたというべきである。それにもかかわらず,当該学校の学校長や教頭は,被告Yに対して何らの注意も行うことはなかったのであり,その結果,被告YによってAが殺害されたものである。 したがって,被告足立区は,Aに対して,安全配慮義務違反に基づく損害- 10 -賠償責任を負うものというべきである。 (被告足立区の主張)被告Yが警備中にこん棒を持っていたとしても,警備員として問題のある行為とはいえない。また,仮にランドセルを投げたり,警備中にペットを連れていたことがあったとしても,そのことをもって職員や児童に危害を加える可能性があったといえるものでもない。また,職員は単に殴りかかられそうになったにすぎず,これらの行為から,被告足立区が,被告Yの危険性を予測し,Aの生命・身体に危害が加えられないようにすべき措置を採るべき義務を負っていたとはいえない。 ,。 したがって被告足立区のAに対する安全配慮義務 らの行為から,被告足立区が,被告Yの危険性を予測し,Aの生命・身体に危害が加えられないようにすべき措置を採るべき義務を負っていたとはいえない。 ,。 したがって被告足立区のAに対する安全配慮義務違反の事実は存しない(3)安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権につき消滅時効が完成しているか(争点3。 )(被告足立区の主張)仮に,被告足立区のAに対する安全配慮義務違反が認められたとしても,安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権の消滅時効は,権利行使が可能な時点から10年であるところ,本件における消滅時効の起算点は,Aが殺害された昭和53年8月14日であり,その時点からの10年の期間の経過によって,既にかかる請求権の消滅時効は完成している。なお,原告らはAの遺体が発見されるまでは権利行使が不可能であった旨主張するが,かかる事情は事実上の障害に基づくものにすぎないから,上記起算点に影響を及ぼさない。 ,,,。 したがって被告足立区は本件訴訟において上記消滅時効を援用する(原告らの主張)本件においては,原告らの被告足立区に対する権利行使は,DNA鑑定により本件自宅から発見された遺骨がAのものであることが判明した平成16年9月29日,あるいは早くとも殺害の事実が発覚して遺体が発見された同- 11 -年8月22日に可能となったもので,それまでは,被告足立区に対する権利行使をなすことが不可能であった。そして,最高裁判所平成15年12月11日第一小法廷判決・民集57巻11号2196頁においても,権利行使が現実に期待できない特段の事情が存在する場合には,その間,消滅時効は進行しないと解されているところである。 そのため,本件の安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点は,同年9月29日あるいは同年8月22日というべきであり 場合には,その間,消滅時効は進行しないと解されているところである。 そのため,本件の安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点は,同年9月29日あるいは同年8月22日というべきであり,本件において,未だ消滅時効は完成していない。 被告YがAの遺体を隠匿し続けた行為が,原告らに対する独立の不法行(4)為を構成するか(争点4。 )(原告らの主張)上記のとおり,被告Yが,Aの殺害行為の発覚を免れるために遺体を埋め直したりしていること,本件自宅の周囲をトタンで囲んだり,防犯カメラを設置するなど殊更に他人を寄せ付けないようにしていたこと及び区画整理事業による立ち退きにも最後まで頑強に応じようとしなかったことからすれば,被告YがAの遺体を隠匿し,同遺体を埋めた土地上で生活を続けた行為については,それ自体独立した不法行為を構成するというべきである。 そして,近親者は,死者に対して,敬愛追慕の情を抱き,死者を懇ろに弔い埋葬したいという宗教的感情を有しており,その死体が他者によって損壊されることによって被る精神的苦痛は社会生活上無視できないものである。 そのため,かかる感情は,法的保護に値するものである。 したがって,被告YがAを殺害後,その遺体を隠匿し続けた行為は,遺族である原告らに対する不法行為を構成する。 (被告らの主張)ア被告Yは,従前と同様,本件土地上で日常生活をしていたにすぎず,その行為は,Aの殺害という事実の発覚を免れる目的としてなされたとは言- 12 -い難い。したがって,被告YにおいてAの遺体を埋めた土地上で生活を続けた行為が,独立に不法行為を構成することはない。 そもそも,刑法上,死体遺棄罪は,いわゆる状態犯であるとされ,法益侵害の発生によって犯罪は終了するとされており,その後,法益侵害状態が存続しても,犯罪とは 為が,独立に不法行為を構成することはない。 そもそも,刑法上,死体遺棄罪は,いわゆる状態犯であるとされ,法益侵害の発生によって犯罪は終了するとされており,その後,法益侵害状態が存続しても,犯罪とはみなされないものである。そうすると,民法上の不法行為も,死体遺棄行為それ自体によって完了するというべきであり,その後の隠匿状態は何ら継続的な不法行為を構成するものではない。 実際にも,本件の死体の隠匿行為は,犯人だけが遺体の場所を知っているという意味では,山中に死体を遺棄する行為と変わらない。そして,一般に殺害後の死体遺棄行為は,殺人が行われたことの発覚を免れるためになされるものであることからすれば,本件における被告Yの行為は,他の死体遺棄行為と本質的な差異はないというべきであるから,Aの遺体を隠し続けたことのみで,継続的な不法行為が成立し,長期間にわたって不法行為責任が問われるのは不当というべきである。 イ仮に,かかる隠匿行為が継続的な不法行為に当たるとしても,Aの死亡により,既に損害は発生しているというべきであって,上記隠匿行為及びその継続により,原告らに法的に保護されるべき損害が生じているとはいえない。 ウしたがって,被告YがAの遺体を隠匿し続けたことは,何ら不法行為を構成するものではない。 ⑸原告らの損害(争点5)(原告らの主張)アAの損害(ア)死亡による逸失利益(1億3829万5343円)Aが,昭和53年8月14日,当時29歳で被告Yによって殺害されて以降,本訴提起の前年である平成16年(55歳)までの間の収入の- 13 -,()合計は各年度の賃金センサス女子大卒労働者の産業計・企業規模計をもとにして計算すると,1億4003万0200円となる。 その後,Aは56歳(平成17年)から少なくとも67歳まで12年間就 ,()合計は各年度の賃金センサス女子大卒労働者の産業計・企業規模計をもとにして計算すると,1億4003万0200円となる。 その後,Aは56歳(平成17年)から少なくとも67歳まで12年間就労可能であり,平成16年(55歳)の賃金センサス(女子大卒労働者の産業計・企業規模計)をもとにすると,その間,年間649万1400円の収入を得られるはずであった。そして,56歳から67歳までの12年間に対応するライプニッツ係数は,8.8632,Aは独身女性であったため,その生活費控除を30パーセントとするのが相当である。 そうすると,Aの逸失利益としては,1億3829万5343円となる。 (140,030,200+6,491,400×8.8632)×0.7=138,295,343円(イ)死亡慰謝料(1500万円),,理不尽にも29歳という若年で殺害され命を奪われたAの慰謝料は1500万円を下らない。 イ損害賠償請求権の相続Aの両親である原告X1及びBは,本件当時,上記アの損害1億5329万5343円の2分の1に当たる7664万7671円を各々相続したところ,昭和57年に父であるBが死亡したことにより,Bの相続分のうち,その妻である原告X1は,その2分の1に当たる3832万3835円を,その子である原告X2及び原告X3は,各々その4分の1に当たる1916万1917円をそれぞれ相続した。 そのため,結局のところ,Aの被告らに対する損害賠償請求権につき,原告X1は1億1497万1506円,原告X2及び原告X3は各々1916万1917円をそれぞれ相続した。 ウ原告ら固有の損害- 14 -(ア)慰謝料a原告X1には民法711条に基づく固有の慰謝料が発生している。 そして,原告X2及び原告X3とAの間には,Aが両名の世話を親同様に行っ 続した。 ウ原告ら固有の損害- 14 -(ア)慰謝料a原告X1には民法711条に基づく固有の慰謝料が発生している。 そして,原告X2及び原告X3とAの間には,Aが両名の世話を親同様に行っていたことなどに照らせば,同条に規定する者と実質的に同視できる身分関係が存在したというべきであり,原告X2及び原告X3にも,同条類推に基づく固有の慰謝料が発生しているというべきである。 bまた,原告らは,かけがえのない家族を奪われただけではなく,約26年間もの長きにわたりAの捜索を懸命に続けたところ,Aの遺体が被告Yの自宅の床下に埋められ,その上で被告Yが生活していたという異常な事態に直面させられた。そのため,原告らには,民法710条,民法709条に基づき,固有の慰謝料が発生しているというべきである。 cそして,原告らの固有の慰謝料としては,各原告につき500万円を下らない。 (イ)葬儀関係費用原告X2の支出した,Aの葬儀関係費用としては,120万円が相当である。 (ウ)弁護士費用原告らにおいて負担すべき弁護士費用は,原告X1については1199万7150円,原告X2については253万6191円,原告X3については241万6191円が相当である。 エまとめ以上のことから,原告らが被告らに対して有する損害賠償請求権は,原告X1については1億3196万8656円,原告X2については2789万8108円,原告X3については2657万8108円となる。 - 15 -(被告らの主張)ア原告らの主張する損害及びその額につき,争う。 イ殊に,Aの逸失利益につき,60歳で定年退職した後は,定年前と同額,,の収入が得られることはあり得ない以上61歳から67歳までの期間は賃金センサスのうち女子労働者平均賃金をもとに計算するべきである。 した 逸失利益につき,60歳で定年退職した後は,定年前と同額,,の収入が得られることはあり得ない以上61歳から67歳までの期間は賃金センサスのうち女子労働者平均賃金をもとに計算するべきである。 したがって,本訴提起の前年である平成16年(55歳)まで及び56(. 歳から60歳で退職するまでの5年間この期間のライプニッツ係数は4),,3294は原告の主張するとおりの年間収入により計算するとしても61歳から67歳までの7年間は,女子労働者平均賃金である349万0300円の年間収入(この期間のライプニッツ係数は8.8632)をもとに計算すべきである。 そうすると,Aの逸失利益としては,1億2877万0872円が相当である。 (140,030,200+6,491,400×4.3294+3,490,300×(8.8632-4.3294))×0.7=128,770,872円ウまた,原告らの主張する被告足立区に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求について,Aと被告足立区との間の雇用関係ないしこれに準ずる法律関係の当事者でない原告らには,債務不履行に基づく固有の慰謝料請求権が発生することはない。 第3当裁判所の判断 本件に関する経緯として,証人C,証人D及び被告Yの各陳述書(甲52ないし甲54,丙1ないし丙5,証人C,証人D及び原告X2の各尋問の結果)及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。 (1)被告Yについて,,,,被告Yは昭和11年3月4日北海道小樽市に生まれ本件殺害行為時- 16 -42歳であった。 被告Yは,昭和29年3月,北海道立P高等学校Q課程を卒業し,製缶会社で働くなどしていたが,昭和36年1月11日には,自衛隊に入隊した。 その後,自衛隊で勤務する 為時- 16 -42歳であった。 被告Yは,昭和29年3月,北海道立P高等学校Q課程を卒業し,製缶会社で働くなどしていたが,昭和36年1月11日には,自衛隊に入隊した。 その後,自衛隊で勤務する傍ら,R大学法学部通信教育課程に入学し,その,,,際刑務官採用試験を受験し合格したため昭和38年11月28日からは。 ,,千葉刑務所で法務事務看守として勤務することとなったそして被告Yは北海道に一旦戻るなどしたが,再び上京して,妻Eの実家のアパートに下宿,,。 ,しつつタクシー運転手として勤務し昭和45年にはEと結婚したEは被告足立区の給食調理職として勤務していたところ,被告Yは,その紹介で被告足立区の職員採用試験を受験して合格し,昭和48年4月1日以降,学校警備主事としてN小学校で勤務することとなった。 被告Yは,職場において,教室の戸締まり等をめぐって,教員との間で軋轢を生じ,校長室で教員と言い合いになるけんかをしたり,放課後に課外活動をしている生徒のランドセルを校庭に放り出したりすることがあったほか,巡回中に,こん棒を所持したり,ペットの猿を連れているという行動がみられ,教職員からも敬遠される存在であった。 (2)AについてAは,昭和24年7月4日,北海道小樽市に生まれ,本件殺害行為時,29歳であった。Aは,S大学を卒業後上京し,昭和47年以降,N小学校で図工科専科教諭として勤務していた。 (3)本件殺害行為当時(昭和53年8月14日)のN小学校における教職員の登校状況(乙1,乙5の1,2,乙6)本件殺害行為当時,N小学校は夏季休業中であり,教頭をはじめ数名の教職員及び被告Yが登校していた。また,Aは,同月12日にヨーロッパへの研修旅行から帰国し,同月14日は,学校で仕事をするため,午前9時ころから登校していた。 夏季休業中であり,教頭をはじめ数名の教職員及び被告Yが登校していた。また,Aは,同月12日にヨーロッパへの研修旅行から帰国し,同月14日は,学校で仕事をするため,午前9時ころから登校していた。 - 17 -(4)本件殺害行為及び遺体の隠匿行為ア被告Yは,昭和53年8月14日午後4時半ころ,N小学校において勤務中,その1階給食室前廊下において,同じく同小学校に勤務していたAの首を絞めて殺害した(なお,被告Yは,陳述書(丙1ないし丙5)において,本件殺害行為に至る経緯及び動機につき縷々供述するが,かかる供述を裏付ける客観的な証拠はない上,それ自体必ずしも首肯し難いものであることからすれば,本件においては,被告YがAを殺害したという以上に,その経緯及び動機を認定すべき的確な証拠はない。 。)イそして,被告Yは,勤務し終えるまで,その遺体を毛布でくるんだ上ロープで縛り,自己所有の乗用車のトランクに乗せて隠し,翌15日,その。 ,遺体を本件自宅の1階南側に位置する6畳和室の床下に遺棄したさらに被告Yは,同月16日,その遺体を再度ビニールシートでくるんだ上でロープで縛り,本件自宅の床下に穴を掘って埋めた。 (,,)(5)本件殺害行為後の関係者の行動甲1甲2乙4の1ないし乙5の2Aは,給料日である同月15日,日直であった17日,プール当番であった22日,さらに日直であった同月23日にも登校しなかったことから,同日,学校としては,Aの北海道の実家に連絡するとともに,校長及び他の教職員が校舎内を捜索したほか,Aのアパートを訪ねるなどした。しかしながら,学校としては,Aに関する何らの手がかりもつかめず,そのまま警視庁O警察署に連絡し,また教育委員会に報告した。 そして翌24日には,Aの実家から,北海道S警察署に対して捜索願が どした。しかしながら,学校としては,Aに関する何らの手がかりもつかめず,そのまま警視庁O警察署に連絡し,また教育委員会に報告した。 そして翌24日には,Aの実家から,北海道S警察署に対して捜索願が出される一方で,Aの叔父が来校し,学校から経過に関する説明を受けた。また,同年9月11日及び16日には,Aの父親が上京し,Aのアパートの周辺を捜索し,警察に赴き状況を聴いたり捜索を依頼し,さらに学校とも経過等について話し合った。さらに,同年10月25日,再び父親が上京し,学校を訪問するとともに,Aの荷物を整理した。 - 18 -さらに,原告らは,Aにつき,拉致被害者に関する特定失踪者問題調査会にも連絡するなどした。 (6)本件殺害行為後の被告Yの生活状況ア本件自宅は,妻Eの所有する土地及び被告Yが10分の1,妻Eが10分の9の持分を有する建物からなるところ,被告Yは,妻Eとともに,本件殺害行為以前から平成16年7月下旬ころまでの間,本件自宅において生活していた(丙4。なお,本件自宅の周囲は,高いブロック塀で囲ま)れ,その上に有刺鉄線が張り巡らされ,監視カメラやサーチライトが設置されるなど,容易に人が近付き難い状況を呈しているが,被告Yが本件自宅にこのような工作物等を設置したのは,本件殺害行為の後であり,さらに平成6年ころに,本件自宅が東京都市計画事業・T地区区画整理事業の,()。 対象地に指定されて以降このような行為をエスカレートさせた甲2イ本件自宅の状況(甲11,甲12)(ア)本件自宅の周囲の状況a本件自宅は,その北側及び西側が道路に面し,その東側は人家と接していたが(丙4,平成16年8月22日時点においては,区画整)理事業のため,周辺の他の建物は解体途中であり実際に住んでいる人家等は少数であった。 また,本件 西側が道路に面し,その東側は人家と接していたが(丙4,平成16年8月22日時点においては,区画整)理事業のため,周辺の他の建物は解体途中であり実際に住んでいる人家等は少数であった。 また,本件自宅の周囲は,以下のように,ブロック塀のみならず,アルミ製の目隠し,ビニール製の色付き波トタン,有刺鉄線等で囲まれるなど,低いところでも高さ約1.80メートルの仕切が設けられているため,その内部の様子を外部から容易に覗き見ることはできない状態となっている。 b本件自宅の北側西部分(別図1の①部分)には,庭と道路を隔てる形で高さ約2.27メートルの鉄製の門扉が設けられており,その上部には,高さ約0.64メートルの有刺鉄線が張られている。そして- 19 -その東隣(別図1の②部分)には,蛇腹式の門扉及びその内側には高さ約1.76メートルの雨戸が3枚設けられ,その上部には,高さ約0.63メートルないし約0.81メートルの薄水色のビニール製波トタンが付されている。 また,本件自宅の北西角及び西側北部分(別図1の③部分)には,庭に面する形で高さ約1.10メートルのブロック塀があり,その上部には高さ約1.10メートルのアルミ製の目隠し様のフェンスが,さらにその上部には,高さ約0.64メートルの有刺鉄線が張られている。 ,(),. そして本件自宅の西側南部分別図1の④部分には高さ約1,,. 80メートルのブロック塀がありその上部には低いところで約046メートル,高いところで約1.11メートルの高さの薄青色のビニール製波トタンが設けられている。 本件土地の南側部分(別図1の⑤部分)には,高さ約0.46メートルのブロックが積まれ,その上部には,約1.80メートルの高さの外面ピンク色の鉄製板が設けられている。 さらに,本件自宅の東側部分 る。 本件土地の南側部分(別図1の⑤部分)には,高さ約0.46メートルのブロックが積まれ,その上部には,約1.80メートルの高さの外面ピンク色の鉄製板が設けられている。 さらに,本件自宅の東側部分(別図1の⑥部分)には,高さ約1. 80メートルの白色のビニール製波トタンあるいは高さ約2.30メートルの薄青色のビニール製波トタンが設けられている。 (イ)本件自宅の出入口の状況本件自宅には,北側(別図1の①部分)に門扉が設けられているところ,その門扉の中央部分にはシリンダー捻外締錠の設備があり,加えてその錠の鍵穴を隠すように施錠設備が付けられている。 (ウ)本件建物の玄関の状況北側の門扉(別図1の①部分)を入った奥には,2枚の引き戸の玄関戸が据え付けられているが(別図1の⑦部分,その中央部分には捻子)- 20 -締り錠の設備があり,その鍵穴は,さらにカード式の鍵を解錠しなけれ。 ,,ば開かないよう二重ロックになっている加えて玄関の引き戸のうち東側の戸及びそれに接する柱には,シリンダー彫込鎌錠の設備が2つ設けられている。 ,,,,また玄関の上部には外灯に加えサーチライトが設置されておりまた玄関正面には,赤外線カメラも設置されている(丙4。 )(エ)その他本件自宅の建物の南側壁面には,サーチライトが設置されている。 (7)自首に至る経緯平成6年ころ,本件自宅を含む土地が,区画整理事業の対象地に指定されたところ,被告Yは,用地の買収に応じることを頑なに拒んでいたが,周囲の住居の立ち退きが進む中,本件自宅からの立ち退きを余儀なくされた(甲2。 )そのため,被告Yは,平成16年7月下旬ころ,本件自宅から千葉県U郡所在の妻Eが所有する土地建物に転居するとともに(甲8,甲57,区画)整理事業に伴う本件自宅の解体の際に,Aの れた(甲2。 )そのため,被告Yは,平成16年7月下旬ころ,本件自宅から千葉県U郡所在の妻Eが所有する土地建物に転居するとともに(甲8,甲57,区画)整理事業に伴う本件自宅の解体の際に,Aの遺体が発見されることもやむなしと考え,同年8月21日,Aの殺害及び隠匿行為につき警視庁O警察署に出頭して自首した。 なお,被告Yは,現在,千葉県V市に居住している。 (8)遺体の発見状況(甲12ないし甲21)平成16年8月22日におけるAの遺体の発見状況は,以下のとおりである(別図2参照。 )すなわち,Aの遺体が埋められていた本件自宅の1階南側6畳和室の畳の下には,防虫シート及び昭和62年9月2日付けの新聞紙が敷かれ,その上には一面にビニールシートが被せられていた。そして,床板は,釘と木ネジ,. ,で固定されておりその床板から約023メートルで土砂面となるところ- 21 -. ,,床板から約105メートルの位置にA名義のキャッシュカードをはじめ財布や化粧品一式及び衣類等が入れられたビニール袋が埋められていた。 そして,床板から約1.15メートルの位置に,ロープで縛られたビニールシートが埋められており,そのビニールシートの中には,Aの遺骨や腐敗したロープ,着衣片,ビニール袋,ビニールテープ片等が包まれた毛布がロープで縛られた状態で発見された。 (9)原告らの対応原告らは,Aの遺体が発見されたとの連絡を受け,原告X2は,本件自宅を訪れ,その状況を確認するなどした。また,原告らは,Aの遺骨を火葬し(甲5,平成16年10月9日,N小学校の元同僚の教諭等が中心となり)通夜が行われ,翌10日,内輪だけの葬式が催された。 争点1(本件殺害行為に関する不法行為に基づく損害賠償請求権は,民法724条後段所定の20年の経過により消滅したか)に の教諭等が中心となり)通夜が行われ,翌10日,内輪だけの葬式が催された。 争点1(本件殺害行為に関する不法行為に基づく損害賠償請求権は,民法724条後段所定の20年の経過により消滅したか)について。 (1)被告Yによる本件殺害行為が不法行為を構成することは論ずるまでもないが,これに基づく損害賠償請求権は,被告YがAの殺害行為を完了した昭和53年8月14日を起算点として,原告らが本件仮差押えを行い被告Yに対して権利行使を行った平成16年10月7日の時点において,既に20年が経過していることから,民法724条後段の規定により,法律上当然に消滅したものと言わざるを得ない。 ,,(2)原告らは民法724条後段の規定は消滅時効を定めたものであるとしあるいは除斥期間を定めたものであるとしても,被告らの側に信義則違反ないし権利濫用に当たる事情がある場合には,これを援用ないし主張することはできないとし,あるいは正義・衡平の原理から,裁判所がこれを適用することが制限されるべきであると主張し,本件においては,Aを殺害した被告Y自身が,その発覚を免れるために,Aの遺体を本件自宅の床下に隠匿し続けたために,原告らの権利行使が不可能であったという特別の事情があるこ- 22 -とから,民法724条後段の規定の適用が制限ないし排除されるべきであると論ずる。 (3)アしかしながら,民法724条後段の20年の期間は,被害者側の認識の如何を問わず,一定の時の経過によって法律関係を確定させるため請求権の存在期間を画一的に定めたものであり,除斥期間の性質を有するものであるから,裁判所は,当事者の主張がなくとも,除斥期間が経過している場合は,請求権が消滅したものと判断すべきであり,除斥期間を適用することが信義則に反するとか権利の濫用であるなどの主張は,主張 のであるから,裁判所は,当事者の主張がなくとも,除斥期間が経過している場合は,請求権が消滅したものと判断すべきであり,除斥期間を適用することが信義則に反するとか権利の濫用であるなどの主張は,主張自体失当となるものと解される(最高裁判所平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2209頁参照。したがって,これに反する原告)らの主張は採用しない。 イ原告らは,最高裁判所平成10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1087頁に依拠して,本件において除斥期間の適用が制限されるべきであると主張するが,同判決の事案は,不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6か月内において,その不法行為を原因として心神喪失の常況にあるにもかかわらず,法定代理人を有しなかった場合において,その後当該被害者が後見開始の審判を受け,被害者の後見人に就職した者がその時から6か月内に損害賠償請求権を行使したなど特段の客観的事情があるときは,民法158条の法意に照らし,同法724条後段の効果は生じないとするものであって,その射程は限定されているものと解される。したがって,原告らが主張するように,加害者自身の行為により権利行使が妨げられてきた場合には,民法724条後段の効果は生じないという趣旨を一般化したものということはできず,本件において,上記判例の射程は及ばないというほかはない。 ⑷ア次に,原告らは,本件殺害行為に関する除斥期間の起算点について,被告Yの行為は,①Aを殺害した行為,②遺体を自宅の床下に埋めた行為,- 23 -③遺体を埋めた土地上で生活を続けた行為からなるところ,これらの各行為は継続した一連の不法行為であるとし,本件の除斥期間は,上記③の行為の終了時から起算されるべきであると主張する。 当裁判所も,後述のとおり,遺体を 地上で生活を続けた行為からなるところ,これらの各行為は継続した一連の不法行為であるとし,本件の除斥期間は,上記③の行為の終了時から起算されるべきであると主張する。 当裁判所も,後述のとおり,遺体を遺棄する行為あるいは遺体を隠匿する行為が殺害行為とは別個の不法行為を構成する余地があり,殊に,本件においては,被告Yによる遺体の隠匿行為は,継続的不法行為の性質を有し,かつ全体として一体評価が可能であると解するものである。 しかしながら,殺害による不法行為と遺体の隠匿による不法行為とは,事実経過としては一連のものであるとしても,両者は法益侵害の性質及び程度を大きく異にするものであるから,一体的に評価することは困難であるし,既に完了した重い法益侵害行為に引き続き軽い法益侵害行為が継続していることを理由として,前者の不法行為についての除斥期間の起算点を遅らせることは,法的安定性の観点から定められた除斥期間の制限の趣旨にも反するものと解される。 したがって,原告らの主張は採用することができない。 イ原告らは,最高裁判所平成16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁を引用して,除斥期間は,損害が顕在化した時点から進行すべきであるとし,本件においては,被告YがAを殺害後,その遺体を隠匿していたため,被告Yが自首して遺骨が発見されて,はじめて損害が,。 顕在化したのであるからその時点が除斥期間の起算点となる旨主張するしかしながら,上記の判例は,蓄積性の物質による健康被害や遅発性の疾病のように,損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合を前提とするものであるところ,本件殺害行為による損害は,Aの殺害時点において,既に発生しているから,上記判例には当たらず,原則どおり,除斥期間の起算点は加害行為である本件 た後に損害が発生する場合を前提とするものであるところ,本件殺害行為による損害は,Aの殺害時点において,既に発生しているから,上記判例には当たらず,原則どおり,除斥期間の起算点は加害行為である本件殺害行為の時点であると解さざるを得ない。 - 24 -⑸以上からすれば,本件殺害行為に関する不法行為に基づく損害賠償請求権,。 は民法724条後段の除斥期間の経過によって消滅したというべきである 争点2(本件殺害行為につき,被告足立区には安全配慮義務違反が認められるか)及び争点3(安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権につき消滅。 時効が完成しているか)について。 (1)上記2で判示したとおり,被告Yに対する,不法行為に基づく損害賠償請求権は除斥期間の経過により消滅している以上,被告足立区が,原告らに対し,本件殺害行為に関して,民法715条あるいは国家賠償法1条による損害賠償責任を負うことはないのであるが,原告らは,被告Yは,警備員としての資質に欠け,当該学校に勤務する職員や児童らに対して危害を加える可能性があったにもかかわらず,被告足立区が被告Yに対し注意・勧告,配置転換等の措置を講じなかったことは,安全配慮義務に違反したものであって,債務不履行責任を負う旨主張する。 ⑵そこで検討するに,国あるいは地方公共団体は,公務員に対し,国あるいは地方公共団体が公務遂行のために設置すべき場所,施設若しくは器具等の設置管理又は公務員が国あるいは地方公共団体若しくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理に当たって,公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っているものと解される(最高裁判所昭和50年2月25日第三小法廷判決・民集29巻2号143頁参照。 )既に認定したとおり,被告Yが教室の戸締まり等をめぐって教職員と軋轢 るよう配慮すべき義務を負っているものと解される(最高裁判所昭和50年2月25日第三小法廷判決・民集29巻2号143頁参照。 )既に認定したとおり,被告Yが教室の戸締まり等をめぐって教職員と軋轢があったこと,校長室において教職員と言い合いとなるけんかをしたこと,放課後に課外活動をしている生徒のランドセルを校庭に放り出したこと,校内巡回時に,こん棒を所持したり,時には猿を連れていたことなどが認められるところである。 しかしながら,被告足立区が,その公務員であるAに対し,安全配慮義務を負うというためには,被告Yの行状等から,Aの生命,身体等に具体的な- 25 -危険が生じていることにつき,少なくとも認識し得る状況にあったことを要すると解されるところ,上記各事情により,被告YとN小学校の職員との関係が職務上円滑ではなかったことは認められるが,その程度が,被告足立区が,被告Yにより職員の生命及び身体等に具体的な危険が生じていることを認識し得たあるいは認識すべき状況にまで至っていたとはいうことはできない。 したがって,被告足立区は,Aに対する安全配慮義務に違反したものということはできず,その他,これを認めるに足りる的確な証拠はない。 (3)ア上記のとおり,被告足立区は本件殺害行為について安全配慮義務に違反したということはできないが,この点はおくとしても,以下に述べるとおり,安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権は,時効期間の経過によって消滅していると言わざるを得ない。 イすなわち,雇用契約上の付随義務としての安全配慮義務の不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は,民法167条1項により10年と解されるところ,かかる消滅時効は,同法166条1項により,損害賠償請求権を行使し得る時から進行するものとされている。そして,一般に,安,, 求権の消滅時効期間は,民法167条1項により10年と解されるところ,かかる消滅時効は,同法166条1項により,損害賠償請求権を行使し得る時から進行するものとされている。そして,一般に,安,,全配慮義務違反による損害賠償請求権はその損害が発生した時に成立し同時にその権利を行使することが可能となるものと解されるから(最高裁),判所平成6年2月22日第三小法廷判決・民集48巻2号441頁参照本件においても本件殺害行為の時点が消滅時効の起算点となり,被告足立区において時効の援用を行っていることから,仮に被告足立区のAに対する安全配慮義務違反が認められるとしても,それに基づく損害賠償請求権は,消滅時効により消滅しているものと言わざるを得ない。 ウこの点,原告らは,最高裁判所平成15年12月11日第一小法廷判決・民集57巻11号2196頁を引用して,本件においては,被告YによるAの遺体の隠匿によって,その殺害の事実を知り得ず,権利行使が現実に- 26 -期待できないような特段の事情があるとして,その消滅時効の起算点は,権利を行使することが可能となったAの遺体の発見時以降であるべきと主張する。しかしながら,民法166条1項の消滅時効の規定は,その起算点につき,権利者の認識に左右されるものではない上(前掲最高裁判所昭和50年2月25日第三小法廷判決参照,原告らの引用する判例は,権),,利の性質上その行使が期待できない場合についていうものであるところ本件における権利行使の障害は事実上のものにすぎず,法律上あるいは権利の性質上,権利行使の可能性がなかったということはできないから,原告らの主張を採用することはできない。 (4)以上のとおり,原告らの足立区に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求には理由がない。 争点4(被告YがA がなかったということはできないから,原告らの主張を採用することはできない。 (4)以上のとおり,原告らの足立区に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求には理由がない。 争点4(被告YがAの遺体を隠匿し続けた行為が,原告らに対する独立の不法行為を構成するか)について。 (1)ア上記1で述べたとおり,被告Yは,昭和53年8月14日にAを殺害した後に,その遺体を裸にしてロープで縛り,これを毛布に包んでロープで縛った上,さらにそれをビニールシートで覆ってロープで結び,本件自宅の床下に,約1.4メートル余りの穴を掘り,Aの所持品を入れたビニール袋とともに埋め,その上にブロックで掘り炬燵を作り,遺体を隠し,その後,平成16年7月下旬ころまで,約26年間にわたり,Aの遺体を埋めたままの状態で,本件自宅で生活し続けた。被告Yは,その間,本件自宅の周囲をブロック塀の外,ビニール製の波トタンやアルミ製の目隠し板さらには有刺鉄線で覆うとともに,何重にも鍵を付け,監視カメラやサーチライトを設置するなど,本件自宅に外部から近付き難い状況を作出してきたものである。以上のとおり,被告Yは,Aの殺害の発覚を免れようという意図のもと,外部からAの遺体に容易に近付けない状況とし,その遺体を自らの占有下に置いて排他的に管理し続けてきたものということが- 27 -できる。このことは,畳の下から発見された新聞がAを殺害して約9年経過後の昭和62年9月2日付けのものであるなど,殺害後も,被告Yが遺体の隠匿状況を気に掛けていたことがうかがわれることからも,裏付けられるところである。 イしかるところ,遺骨は本来遺族が故人を弔うために,遺族の下に置かれるべきものであり,このため遺族には遺骨に対する権利が認められ,他人に対してその引き渡しを求めることができるものであ ころである。 イしかるところ,遺骨は本来遺族が故人を弔うために,遺族の下に置かれるべきものであり,このため遺族には遺骨に対する権利が認められ,他人に対してその引き渡しを求めることができるものである。したがって,故なく遺骨を自らの占有下に置いて,遺族から故人を弔い,偲ぶ機会を奪う行為は,遺族が故人に対して有する敬愛・追慕の念を侵害し,精神的苦痛を与えるものとして,それ自体として不法行為を構成するものというべきである。 本件においては,既に述べたとおり,被告Yは,Aを殺害後,26年余りの間,遺骨を自らの排他的管理下において隠匿し続けることにより,原告ら遺族から死者を弔いその遺骨を祀る機会を奪い,その感情を侵害したのであるから,本件殺害行為とは別個の不法行為に当たるものと認められる。そして,このような被告Yの不法行為は,一つの意思に貫かれた等質の権利侵害行為の継続であって,さらに損害も累積的に拡大していくものであるから,このような態様及び損害の性質を勘案すると,全体の隠匿行為を一体的に評価すべきものといえる。そうすると,これらの加害行為の終了時点である遺体発見時を除斥期間の起算点とすべきであり,隠匿開始から遺体発見時までの全期間の権利侵害行為に対する損害賠償請求権について,未だ除斥期間の経過によって消滅していないというべきである。 (2)ア被告らは,被告YがAの遺体を埋めた時点で遺体の遺棄行為は完了しており,たまたま遺棄した場所が自宅の床下であったにすぎず,殺害前と同様に本件自宅において日常生活をし続けた行為は,何ら不法行為に当たらない旨主張し,被告Yも,陳述書(丙4)において,本件自宅の周囲に- 28 -ブロック塀,トタンを設置したり,有刺鉄線を設けたりしたのは,隣家とのトラブルを防止するため,放火犯と思われる不審者あるいは野良猫 し,被告Yも,陳述書(丙4)において,本件自宅の周囲に- 28 -ブロック塀,トタンを設置したり,有刺鉄線を設けたりしたのは,隣家とのトラブルを防止するため,放火犯と思われる不審者あるいは野良猫の侵入を防ぐためであるなどと供述する。 しかしながら,被告Yの供述は,被告Yが本件自宅の周囲をトタン等で覆い始めたのは,いずれも本件事件以降であること(丙4,ブロック塀)やトタンにも益して,サーチライト,監視カメラ及び有刺鉄線をも設置するのは明らかに不自然であることに照らして,にわかに措信することができない。また,既に認定したとおり,被告Yは,単にAの遺体の遺棄場所を本件自宅の床下にしたというにとどまらず,これを自らの排他的な管理下に置く意思が明らかにうかがわれるのであるから,自らの行為により遺族らに対する権利侵害を継続したものとして,不法行為責任を免れないものというべきである。 したがって,被告らの主張は採用することができない。 イ被告らは,刑法上において,死体遺棄罪は状態犯とされ,遺棄後の隠匿行為は何ら犯罪は成立しないとし,本件における不法行為も,殺害行為及び死体遺棄行為によって完了し,その後の隠匿状態は,何ら不法行為を構成するものではない旨主張する。しかしながら,損害の填補を主たる目的とする民法上の不法行為の制度は,刑法とはその目的を異にするものであり,本件においては不法行為規範により保護に値する遺族の利益が侵害され続けていることは既に述べたとおりであり,被告らの主張には理由がないものと言わざるを得ない。 さらに,被告らは,本件の遺体の隠匿行為は,実質的には山中に死体を遺棄する行為と変わらないにもかかわらず,本件においてのみ,かかる隠匿行為をもって継続的な不法行為が成立し,長期間にわたって不法行為責任が問われるのは不当である旨主張 行為は,実質的には山中に死体を遺棄する行為と変わらないにもかかわらず,本件においてのみ,かかる隠匿行為をもって継続的な不法行為が成立し,長期間にわたって不法行為責任が問われるのは不当である旨主張する。しかしながら,当裁判所も遺体を山中に遺棄する行為が不法行為を構成することを否定するものではない- 29 -から,両者の扱いに均衡を失することはない。仮に,所論が除斥期間の適用に差が生じることを指摘するものであるとしても,本件の遺体の隠匿行為と山中に遺棄する行為とでは,不法行為者が遺体を自らの排他的支配下に置いて隠匿行為を継続するか否かという行為態様に差があり,これに伴い除斥期間の起算点に違いが生じることは何ら不合理ではない。 (3)なお,被告Yの上記隠匿行為は,殺害行為とは別個の不法行為であり,,,その職務に関してなされたものと認めることはできないから被告足立区が被告Yの隠匿行為という不法行為に関して,民法715条,国家賠償法1条による損害賠償責任を負うということはできない。 争点5(原告らの損害)について本件においては,Aは,約26年もの間,本件自宅の床下に無残な状態で放置されていたものである。 原告らは,Aの母あるいは兄弟という近親者であり,被告YによるAの殺害後約26年もの間,Aの遺体に対面して同人を弔うこともできず,その遺骨を祀り,故人を偲ぶことすら叶わなかったものであり,Aに対する敬愛・追慕の情を著しく侵害されたことは明らかである。この間の原告らの遺族の心情は,,,原告X2がAが汚い土の中に26年間も埋められて苦しかっただろうと思いきれいな墓に一刻も早く遺骨を納めたいと感じたこと,Aが無残な姿で埋められていたことから,いくら骨だけの姿になっていようとも,せめてきれいな着物を着せてやりたいと棺の中に新しい着物を入 だろうと思いきれいな墓に一刻も早く遺骨を納めたいと感じたこと,Aが無残な姿で埋められていたことから,いくら骨だけの姿になっていようとも,せめてきれいな着物を着せてやりたいと棺の中に新しい着物を入れたことなどを供述していることからも察して余りがあるというべきである。 本件における遺体の隠匿態様,隠匿期間など本件における一切の事情を勘案すると,原告らの精神的苦痛に対する慰謝料は,原告ら各自についてそれぞれ100万円と認めるのが相当である。 さらに,弁護士費用については,各自について10万円が不法行為と相当因果関係を有する損害であると認める。 - 30 - 結論 以上によれば,本件においては,原告らが,被告Yに対して,各自110万円を求める限度で理由があるからこれらを認容し,原告らのその余の請求については理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第45部裁判長裁判官永野厚郎裁判官西村康一郎裁判官佐野文規
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