令和2(ワ)9357 所有権に基づく妨害排除請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年10月26日 大阪地方裁判所
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判決文本文9,761 文字)

- 1 - 主文 1 被告は、原告に対し、別紙物件目録記載1の土地上の構造物(庇及び立体看板)を撤去せよ。 2 原告は、被告に対し、別紙物件目録記載2の土地につき、平成16年6月30日取得時効を原因とする所有権移転登記手続をせよ。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、これを5分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 本訴被告は、原告に対し、別紙物件目録記載1及び2の土地上の壁及び構造物(庇及び立体看板)を撤去せよ。 2 反訴主文第2項同旨 第2 事案の概要 1 事案の要旨(請求の根拠)⑴ 本件の本訴は、原告が、被告に対し、原告が所有する別紙物件目録記載1の土地(以下「本件土地1」という。)及び同目録記載2の土地(以下「本件土地2」といい、本件土地1と併せて「本件各土地」という。)上に被告 が所有する別紙物件目録記載3の建物(以下「本件建物」という。)の外壁及び構造物(庇及び立体看板)が別紙図面1のとおり存在して本件各土地の所有権を妨害していると主張して、本件各土地の所有権に基づく妨害排除請求として上記外壁及び構造物の撤去を求める事案である。 ⑵ 本件の反訴は、被告が、原告に対し、本件建物を所有することにより、そ の外壁の直下にある本件土地2を占有し、その所有権を短期取得時効により- 2 - 取得したが、原告が本件土地2につき所有権移転登記を経由していると主張して、本件土地2の所有権に基づく妨害排除請求として本件土地2につき所有権移転登記手続を求める事案である。 2 前提事実(証拠等をかっこ内に掲記した事実以外は争いがない。)⑴ 当事者等 ア 本件土地2の所有権に基づく妨害排除請求として本件土地2につき所有権移転登記手続を求める事案である。 2 前提事実(証拠等をかっこ内に掲記した事実以外は争いがない。)⑴ 当事者等 ア原告は、不動産賃貸業等を目的とする株式会社である(弁論の全趣旨)。 イ金龍株式会社は、昭和63年4月18日に設立されたラーメン店の経営等を目的とする株式会社である。その代表取締役は丙であり、その取締役はその子である丁である(甲22)。 ウ被告は、平成16年4月23日に設立されたラーメン店の経営等を目的 とし、「リバー道頓有限会社」を商号とする有限会社であったが、平成25年8月2日に現商号に商号変更し、株式会社に移行した。その代表取締役は丁である。被告は、平成16年6月30日、金龍株式会社から「金龍ラーメン」の屋号によるラーメン店事業の譲渡を受けた(被告代表者、弁論の全趣旨)。 ⑵ 関係不動産の状況ア金龍株式会社は、平成3年10月31日、別紙物件目録記載3の一棟の建物(以下「本件建物全体」という。)に存する本件建物及びこれに隣接する家屋番号bc丁目o番dの専有部分(以下、本件建物と併せて「本件店舗」という。)並びに本件店舗の敷地に当たる地番d番kの土地(以下「本 件隣地」という。)及び地番d番hの土地(以下、本件隣地と併せて「本件敷地」という。)の所有権を売買により取得し、本件店舗においてラーメン店を営んでいた(甲2、4、乙1、弁論の全趣旨)。 イ金龍株式会社は、平成16年6月30日、被告に対し、本件店舗及び本件敷地を売り、以後、現在に至るまで、被告が本件店舗を所有してラーメ ン店を営んでいる(甲2、4、乙1、弁論の全趣旨)。 - 3 - ウ原告は、平成25年7月3日、売買により分筆前 本件敷地を売り、以後、現在に至るまで、被告が本件店舗を所有してラーメ ン店を営んでいる(甲2、4、乙1、弁論の全趣旨)。 - 3 - ウ原告は、平成25年7月3日、売買により分筆前の本件各土地の所有権を取得し、その所有権移転登記を経由した(甲1、23、弁論の全趣旨)。 なお、本件土地2(別紙図面1及び2のF2、F7、K55、K56及びF2を結ぶ直線に囲まれた部分)は、令和4年11月11日、本件土地1を含む一筆の土地(地番d番eの土地)から分筆された(甲23、乙1 9、弁論の全趣旨)。 エ本件隣地は、本件土地2の東側に隣接しているところ、本件土地2と本件隣地との境界(以下「本件境界」という。)は、別紙図面1及び2のF2とF7とを結んだ直線である(ただし、被告は、本訴係属後、令和5年3月7日受付の準備書面を提出するまで、本件境界はその直線よりも西側で ある旨主張していた。)。 別紙図面1及び2のとおり、本件土地2の直上には本件建物の2階外壁が存在する。また、本件土地1のうち別紙図面2のK56、B、C、D、E、K54(F)、K53及びK56を結ぶ直線に囲まれた部分(以下、当該部分及び本件土地2を併せて「本件係争部分」という。)には本件建物の 庇(以下「本件庇」という。)及び龍の形をした立体看板(以下「本件立体看板」という。)の尾の部分が存在している(乙11、19、弁論の全趣旨)。 ⑶ 被告による短期取得時効の援用被告は、令和4年5月24日、原告に対し、同日付け準備書面により、本件係争部分につき、短期取得時効を援用する旨の意思表示をした(当裁判所 に顕著)。 3 争点及び争点に対する当事者の主張⑴ 被告が本件係争部分を占有していたか(本訴抗弁、反訴請求原因)。 ア被告 を援用する旨の意思表示をした(当裁判所 に顕著)。 3 争点及び争点に対する当事者の主張⑴ 被告が本件係争部分を占有していたか(本訴抗弁、反訴請求原因)。 ア被告被告は、平成16年6月30日から平成26年6月30日経過時までの 間、本件店舗において24時間営業のラーメン店を営み、本件庇の下に座- 4 - 敷テーブルを設置し、常時、客にラーメンを提供して本件係争部分を排他的に支配し、占有していた。 イ原告本件庇及び本件立体看板は空中の工作物であり、被告がこれにより本件係争部分を排他的に占有しているとはいえない。また、本件土地2の直上 にある本件建物の2階外壁は、昭和63年8月24日以降、本件建物の構造部分である外壁に上貼りして増設されたものであり、被告がこれにより本件土地2を排他的に占有していたとはいえない。 また、本件係争部分は、通路として一般の通行の用に供せられ、被告は、本件係争部分への第三者の立入りを制限したり、排除したりするような壁 や仕切りを設けることがなかったから、本件係争部分を排他的に支配しようとする意思がなく、被告は、本件係争部分を占有していたとはいえない。 被告訴訟代理人は、令和元年頃、上記通路につき、本件各土地と本件隣地を一部ずつ提供して設置したとの認識を示し、原告が本件係争部分を排他的に占有しているものではないことを自認していた。 ⑵ 被告が本件係争部分を所有すると信じたことについて過失がなかったか(本訴抗弁、反訴請求原因)。 ア被告被告は、平成16年に本件建物を購入するに当たり、不動産鑑定を行ったが、その不動産鑑定評価書(乙1。以下「本件評価書」という。)におい て、本件建物が本件各土地側に越境していることによる 告被告は、平成16年に本件建物を購入するに当たり、不動産鑑定を行ったが、その不動産鑑定評価書(乙1。以下「本件評価書」という。)におい て、本件建物が本件各土地側に越境していることによる減価がされなかった。 また、本件評価書添付の昭和63年当時の建物図面(付属資料5-2)上、本件建物全体の2階の東西の辺長は7.68mとされ、現況平面図(乙2、3)における本件建物全体の東西の辺長7.584mと近似するため、 本件建物全体は昭和63年から現在まで大きさに変化がない。そして、本- 5 - 件評価書添付の別の建物図面(付属資料5-1)によれば、本件建物全体は本件各土地側に越境していなかった。 したがって、被告が本件係争部分を所有すると信じたことについて過失がなかった。 イ原告 本件庇及び本件立体看板は、本件各土地側に越境していると容易に判断することができるが、被告は、本件建物を購入するに当たり、本件建物が本件各土地側に越境しているか否かを調査していなかった。 また、被告主張の本件建物全体の東西の辺長は、本件建物の2階外壁を含むものであるところ、本件評価書添付の建物図面(付属資料5-2)に おける本件建物全体の東西の辺長は、同添付の地積測量図(付属資料4-1ないし3)における本件敷地の東西の辺長よりも長いことが明らかであり、本件建物全体が本件各土地側に越境していることを示している。また、本件土地2の直上にある本件建物の2階外壁は、金龍株式会社が構造部分である壁に上貼りして増設したものであるが、金龍株式会社代表者の子で ある被告代表者も、そのことを認識していたはずである。 したがって、被告が本件係争部分を所有すると信じたことについて過失がある。 ⑶ 本訴請求についての権利濫用( 金龍株式会社代表者の子で ある被告代表者も、そのことを認識していたはずである。 したがって、被告が本件係争部分を所有すると信じたことについて過失がある。 ⑶ 本訴請求についての権利濫用(本訴の抗弁)ア被告 被告は、本件建物の外壁、本件庇及び本件立体看板の現況を知りながら、本件各土地を買ったこと、上記外壁、本件庇及び本件立体看板による原告の不利益はない一方、これらを撤去するための費用は高額に上り、本件立体看板の撤去によりラーメン店のブランドイメージが低下し、本件庇の下にある3つのテーブルの座席(全座席の3分の1)が失われるなど被告の 不利益が甚大であることからすると、本訴請求は権利の濫用に当たる。 - 6 - イ原告原告は、本件各土地及びその周辺の土地を所有し、これらの土地上に建物を新築することを予定しており、原告が本件各土地の使用を制限されることの不利益は大きい。また、原告は、かねてから、被告に対し、本件各土地の使用について苦情を申し入れていた。他方、被告は、本件建物の購 入時に、その外壁、本件庇及び本件立体看板が越境していることを知り得たから、その撤去費用を負担することは不合理でない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実証拠(後掲書証、甲24、乙21、原告代表者、被告代表者)及び弁論の全 趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 金龍株式会社は、平成4年頃、本件店舗の外壁に本件立体看板を設置し、丁は、同年12月頃、本件立体看板が設置されたことを認識した。また、丁は、平成9年頃から、金龍株式会社の店舗を管理するなど、ラーメン店事業に関与するようになった(乙18の1及び2、乙22)。 ⑵ 丁は、被告が設立された平成16年 ことを認識した。また、丁は、平成9年頃から、金龍株式会社の店舗を管理するなど、ラーメン店事業に関与するようになった(乙18の1及び2、乙22)。 ⑵ 丁は、被告が設立された平成16年4月23日、その代表取締役に就任した。被告は、その頃、大和不動産鑑定株式会社に対し、本件店舗及び本件敷地の同月1日時点の価格について、鑑定評価を依頼し、同年6月14日頃、不動産鑑定士作成の本件評価書を受け取った(乙1)。 本件評価書の本文中には、本件店舗の配置には難がない旨の記載があり(1 3頁)、本件店舗の越境による減価がされたことをうかがわせる記載がない。 また、本件評価書の添付の地積測量図(付属資料4-1ないし3。戊土地家屋調査士が昭和63年8月1日及び平成3年7月22日に作成したもの)上、本件敷地北側の東西の辺長は7.527mである一方、本件評価書添付の建物図面(付属資料5-1ないし3。上記土地家屋調査士が昭和63年8月2 4日に作成したもの)上、本件建物全体の2階北側の東西の辺長は7.68- 7 - mである(付属資料5-2)が、本件建物全体は本件敷地の西側に越境していない(付属資料5-1)。 ⑶ 被告は、平成16年6月30日、金龍株式会社からラーメン店事業の譲渡を受けるのに伴い、本件庇及び本件立体看板が設置された状態で本件店舗及び本件敷地の所有権を取得し、金龍株式会社に代わって本件店舗を24時間 営業のラーメン店として使用及び占有するようになった。被告は、その後、平成26年6月30日経過時までの間、本件庇及び本件立体看板が設置された状態で本件店舗を24時間営業のラーメン店として使用及び占有していた。 本件庇は、上部と下部に分かれ、本件店舗の外壁に取り付けられた構造になっている。本件店舗に来店した客は、本件庇 看板が設置された状態で本件店舗を24時間営業のラーメン店として使用及び占有していた。 本件庇は、上部と下部に分かれ、本件店舗の外壁に取り付けられた構造になっている。本件店舗に来店した客は、本件庇の直下の土地に荷物を置くな どして使用することがあり、被告は、天候や季節によっては、本件庇の端に透明のビニールカーテンを開いて外部と隔離することがあったが、そのカーテンを閉じたままにすることがあり、本件店舗の南側の飲食店に来店する者などは、本件庇の直下の土地を通行することがあった(乙1の添付資料6、乙2、3、5)。 ⑷ 原告は、平成25年9月5日までに、売買により、本件各土地及びその周辺の土地の所有権を取得した(甲13ないし18、21)。原告は、その頃から、被告に対し、本件立体看板が本件各土地側に越境している旨指摘し、苦情を述べるようになった。被告は、令和2年1月24日頃、被告訴訟代理人を通じ、原告に対し、本件店舗は本件境界から約50cm後退させて建築さ れている旨の認識を示した(甲7)。 ⑸ 原告は、本件各土地及びその周辺の土地上に建物を建築することを予定している。 2 争点⑴(被告が本件係争部分を占有していたか。)について⑴ 本件土地2の占有 本件土地2の直上には本件建物の2階外壁が存在するところ(前提事実⑵- 8 - エ)、前記1⑶のとおり、被告は、平成16年6月30日から平成26年6月30日経過時までの間、本件店舗及び本件敷地を所有し、本件店舗をラーメン店として使用及び占有していたのであるから、被告は、本件建物の2階外壁の直下に相当する部分及び同部分から北側道路(K56とF2を結ぶ直線)に接続する長方形部分を、本件敷地と一体の本件店舗の敷地として、排他的 に支配していたものと評価でき 告は、本件建物の2階外壁の直下に相当する部分及び同部分から北側道路(K56とF2を結ぶ直線)に接続する長方形部分を、本件敷地と一体の本件店舗の敷地として、排他的 に支配していたものと評価できる。すなわち、被告は、上記期間、本件係争部分のうち本件土地2を占有していたと認められる。 これに対し、原告は、本件建物の2階外壁は、昭和63年8月24日以降、本件建物の構造部分に上貼りして増設されたものであり、被告が同外壁により本件土地2を排他的に占有していたとはいえない旨主張する。 しかし、上記のとおり増設されたことを認めるに足りる的確な証拠はない上、本件建物の2階外壁は本件店舗と一体の構造物となっていることが認められる(乙20、被告代表者)から、原告の上記主張は、その前提を欠き、採用できない。 ⑵ 本件係争部分のうち本件土地2を除く部分 本件係争部分のうち本件土地2を除く部分についてみるに、同部分の直上にある本件立体看板及び本件庇は、その設置の経緯(前記1⑴)及び構造(前記1⑶)などからして、本件店舗の主要構造部分とみることはできない。 また、前記1⑶のとおり、本件店舗に来店した客は、平成16年6月30日から平成26年6月30日経過時までの間、上記部分を使用することがあ ったが、同部分は常に外部と隔離されていたわけではなく、第三者が同部分を通路として使用することがあった。 以上を踏まえると、被告が上記部分を排他的に支配していたと評価することは困難である。すなわち、被告は、上記期間、同部分を占有していたと認められない。 3 争点⑵(被告が本件係争部分を所有すると信じたことについて過失がなかっ- 9 - たか。)について前記2⑴のとおり、被告は本件土地2を占有していたと認められるから、 。 3 争点⑵(被告が本件係争部分を所有すると信じたことについて過失がなかっ- 9 - たか。)について前記2⑴のとおり、被告は本件土地2を占有していたと認められるから、被告が本件土地2を所有すると信じたことについて過失がなかったかを検討する。 前記1⑵のとおり、被告は、本件店舗の占有を開始するに先立ち、本件店舗及び本件敷地の価格について鑑定評価を依頼し、不動産鑑定士作成の本件評価 書を受け取ったが、本件評価書の本文中には、本件店舗の配置には難がない旨の記載があり、本件店舗の越境による減価がされておらず、本件評価書添付の建物図面上、本件建物全体は本件敷地の西側(本件各土地側)に越境していなかった。また、前記1⑴のとおり、被告代表者である丁は平成9年頃から金龍株式会社のラーメン店事業に関与していたが、その時点で、金龍株式会社が本 件各土地の所有者から本件店舗の越境を指摘されたことをうかがわせる証拠もない。 前記1⑷のとおり、原告は、本件各土地を取得した頃から、被告に対し、本件立体看板が越境している旨を指摘していたものの、本件店舗の越境までは指摘していなかった。 確かに、前記1⑵のとおり、本件評価書添付の地積測量図上、本件敷地北側の東西の辺長は7.527mである一方、本件評価書添付の建物図面上、本件建物全体の2階北側の東西の辺長は7.68mと、本件敷地よりも長いから、本件建物全体が本件敷地から若干越境している可能性を疑うことができる。しかし、上記建物図面上、本件建物全体が本件各土地側に越境していないのは上 記のとおりである。そして、上記地積測量図及び建物図面を作成した戊土地家屋調査士は、昭和63年8月1日に本件隣地の共有者と本件各土地の所有者とが境界確認立会書を作成するに当たり、本件 のは上 記のとおりである。そして、上記地積測量図及び建物図面を作成した戊土地家屋調査士は、昭和63年8月1日に本件隣地の共有者と本件各土地の所有者とが境界確認立会書を作成するに当たり、本件建物全体と本件隣地及び本件各土地との位置関係を示す別紙図面(乙4の資料C)及び実測平面図(乙4の資料D)を作成しているところ、これらの図面上、本件建物全体の外壁は本件各土 地側(西側)にはみ出しておらず、反対側道路(東側)にはみ出している(乙- 10 - 4)。したがって、本件各土地の共有者及び本件隣地の所有者は、昭和63年8月当時、本件建物全体が本件隣地から本件各土地側にはみ出していないと認識していたと推認でき、その後、本件店舗及び本件隣地の所有権を取得した被告が同様の認識を有することは、不合理とはいえない。 なお、本件店舗の床にはおおむね別紙図面1及び2のF2とF7を結ぶ直線 に沿ってレール上の金属が敷かれているが(乙6、原告代表者)が、この金属が本件境界を示すものとして設置されたことや、被告において上記金属が本件境界を示すものであると認識していたことを認めるに足りる証拠はない。かえって、前記1⑷のとおり、被告は、令和2年1月24日頃、本件店舗は本件境界から約50cm後退させて建築されている旨の認識を示し、本訴提起後も、 本件境界が上記直線よりも西側にある旨主張していたこと(前提事実⑵エ)は、被告に上記金属が本件境界を示すものであるとの認識がなかったことをうかがわせる。したがって、上記金属の西側に本件建物の2階外壁が存することにより、その外壁が本件各土地側に越境していることを被告が認識すべきであったとはいえない。また、被告が本件店舗の占有を開始するに当たり、本件庇及び 本件立体看板が本件各土地側に越境している とにより、その外壁が本件各土地側に越境していることを被告が認識すべきであったとはいえない。また、被告が本件店舗の占有を開始するに当たり、本件庇及び 本件立体看板が本件各土地側に越境していることを認識し、又は認識し得たとしても、そのことにより、本件店舗の2階外壁の越境まで認識し得たともいえない。 そうすると、被告が、本件建物の2階外壁が本件敷地から本件各土地側に越境していないこと、すなわち、自らが占有する本件土地2を本件敷地と一体と して所有していると信じたことは不合理でなく、被告に本件土地2が他人の所有する土地であるか否かについて調査すべき義務があったとはいえない。 したがって、被告が本件土地2を所有すると信じたことについて過失はなく、被告は、短期取得時効により本件土地2の所有権を取得したと認められる。 4 争点⑶(本訴請求についての権利濫用)について 前記2及び3のとおり、本件土地2を除く本件係争部分について被告の取得- 11 - 時効は成立しないから、本件庇及び本件立体看板は原告の本件土地1の所有権を妨害するものとして、原告は、被告に対し、それらの撤去を請求することができる。 確かに、被告は、本件庇及び本件立体看板を撤去することになると、本件庇の直下の部分をラーメン店として使用できなくなり、本件立体看板に代わる看 板を設置する必要が生じ、そのために一定の費用を支出することになると推認できる。しかし、その費用の金額について被告の主張立証がない。また、本件各土地及びその周辺の土地は、大阪市を代表する繁華街にあるところ(当裁判所に顕著)、前記1⑸のとおり、原告は上記土地の所有権を取得して建物を建築することを予定しているのであるから、本件庇及び本件立体看板により、上記 土地の一体としての使用収益 あるところ(当裁判所に顕著)、前記1⑸のとおり、原告は上記土地の所有権を取得して建物を建築することを予定しているのであるから、本件庇及び本件立体看板により、上記 土地の一体としての使用収益が妨げられており、その不利益は大きい。 したがって、本訴請求は権利の濫用に当たるとまではいえない。 第4 結論よって、原告の本訴請求は、本件土地1の所有権に基づく妨害排除請求として本件庇及び本件立体看板の撤去を求める限度で理由があり、被告の反訴請求 は全部理由があるから、主文のとおり判決する。なお、原告の申し立てた仮執行宣言については、相当でないからこれを付さない。 大阪地方裁判所第25民事部 裁判官小川嘉基 - 12 - (別紙)物件目録 1 所在大阪市a区bc丁目地番 d番e地目宅地 地積 10.24㎡上記土地のうち別紙図面1のK56、K55、E2、E1及びK56を結んだ範囲 2 所在大阪市a区bc丁目地番 d番f 地目宅地地積 0.40㎡3(一棟の建物の表示)所在大阪市a区bc丁目 d番地g、d番地h、d番地i、d番地j、d番地k、d番地l、d番地m、d番地n 構造木造スレート葺4階建床面積 1階142.97㎡2階138.33㎡3階114.52㎡4階 10.21㎡ (専有部分の建物の表示)家屋番号 bc丁目 d番k種類店舗・物置構造木造スレート葺2階建床面積 1階12.46㎡ 4階 10.21㎡ (専有部分の建物の表示) 家屋番号 bc丁目 d番k 種類 店舗・物置 構造 木造スレート葺2階建 床面積 1階12.46㎡ 2階12.46㎡ (別紙図面1ないし2の掲載省略)

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