主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 第1事件(1) Y1は,X1に対し,4089万1265円及びこれに対する平成24年8月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) Y1は,X2に対し,4089万1265円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 第2事件(1) Y2は,X1に対し,4089万1265円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) Y2は,X2に対し,4089万1265円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告らが,コンサートの企画等を業とする被告らに対し,実質的に被告らが主催する音楽イベントの会場付近において,原告らの娘であるX3が落雷により死亡した事故について,被告らにはX3を落雷の危険から保護すべき義務の違反ないし債務の不履行等があったと主張して,共同不法行為又は債務不履行に基づき,原告らそれぞれにつき4089万1265円及びこれに対する平成24年8月18日(上記落雷事故の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(被告らは連帯)を求めた事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがない事実又は掲記の証拠等により容易に認定できる事実)(1) 当事者(甲2ないし4,丙10) ア X1はX3の実父であり,X2はX3の実母である。 イ Y1は,コンサート・イベントの企画・製作・運営等を目的とする株式会社である。 ウ Y2は,コンサートの企画,製作及び興業等を目的とする株式会社である。 実父であり,X2はX3の実母である。 イ Y1は,コンサート・イベントの企画・製作・運営等を目的とする株式会社である。 ウ Y2は,コンサートの企画,製作及び興業等を目的とする株式会社である。 (2) X3による本件公演のチケット購入等(甲8,9,丙14の2)ア X3は,平成24年8月18日に長居公園(同公園の概況は別紙1のとおり)内の第1陸上競技場で開催される「a-nationstadium.fes.Charge・Go・ウィダーinゼリー」なる名称の野外コンサート(以下「本件公演」という。)のチケットを購入していた。 イ本件公演に付随して,長居公園内の第2陸上競技場ではグッズ販売等(開場予定時間11時。以下,時刻については24時制で表記する。)が行われており,長居陸上競技場の南西エリア(別紙2,F―1地点)では飲食ブースが設けられていた。 ウ被告らは,来場者の導線について,過去に長居公園で行った本件公演と同種のイベントの経験を踏まえ,別紙4のとおり想定していた。 (3) X3の写真撮影(甲13,34の16・17,弁論の全趣旨)X3は,同日13時53分,別紙2B-2地点付近において,写真(甲13,34の16・17。別紙3は甲13の写真(以下「本件写真」という。)の写しである。)の撮影を行った(以下「本件写真撮影」という。)。 (4) 落雷事故の発生とX3の死亡(甲1,乙27,弁論の全趣旨)X3は,同日14時10分頃から同15分頃までの間,長居公園内の南西樹林の付近(別紙2B-1地点)において,落雷を受けるという事故(以下「本件落雷事故」といい,本件落雷事故の現場を「本件落雷事故現場」という。)に遭い,同同月19日6時49分頃,心停止後脳症により死亡した。 2 争点及び争点に関す いて,落雷を受けるという事故(以下「本件落雷事故」といい,本件落雷事故の現場を「本件落雷事故現場」という。)に遭い,同同月19日6時49分頃,心停止後脳症により死亡した。 2 争点及び争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)(被告らの注意義務違反及び債務不履行の有無)【原告らの主張】ア被告らについての保護義務の存在(ア) 本件落雷事故発生直前のX3の行動X3は,本件写真撮影後,本件写真に写っている行列の最後方に並んでいたところ,急な豪雨や落雷が発生し,落雷から逃れようと逃げ惑っている最中に本件落雷事故に遭ったものである。 (イ) 被告らの保護義務Ⅰ 被告らは,9800円もの高額な入場料を対価として,チケット購入者だけでも5万4000人もの観客の来場が見込まれ,ひとたび警備を怠るときは大規模な事故が発生し,多くの人命が失われることが明らかな本件公演を実質的に主催していたこと,Ⅱ 本件落雷事故当時,第1陸上競技場及び第2陸上競技場は既に開場しており,本件公演は開催されていたといえること,Ⅲ X3は,本件落雷事故の発生直前,被告らがメイン導線上に設置したカラーコーンに従って形成されていた行列に並んでいたこと等からすれば,被告らは,被告らが設置した導線上の来場者及び導線付近(本件写真撮影現場及び本件落雷事故現場を含む。)に存在する来場者に対し,その生命及び身体を保護する義務を負い,X3に対しても,条理上の保護義務又は本件公演参加契約に付随する安全配慮義務として,落雷からその生命及び身体を保護する義務を負っていた。 イ予見可能性今日においては,科学技術の発達により雷の予測は困難でなくなっており,気象庁が発表する注意報・警報や雷ナウキャスト(気象庁が発表する雷発生の 保護する義務を負っていた。 イ予見可能性今日においては,科学技術の発達により雷の予測は困難でなくなっており,気象庁が発表する注意報・警報や雷ナウキャスト(気象庁が発表する雷発生の可能性や雷の激しい地域の分布及び1時間先までの予報)の解析値からは,どんなに遅くとも本件落雷事故当日の13時50分には,長居 公園付近で落雷があることは相当の確度で予測可能であった。 ウ結果回避義務違反(ア) 準備段階の結果回避義務違反被告らには,本件公演の準備段階において,雷の基礎知識,具体的な避難場所,誘導方法,そのためのスタッフの配置等を記載したマニュアルを作成し,スタッフ全員に周知すべき注意義務及び債務を負っていたにもかかわらず,落雷事故が発生した場合の抽象的な対処方法を記した警備計画書を作成するのみで,他に何らの準備をしなかった点で注意義務違反及び債務不履行が存する。 (イ) 本件公演当日の結果回避義務違反被告らには,本件落雷事故当日13時50分には長居公園内の落雷事故を予見できた以上,遅くとも13時55分頃には,X3を含む来場者らに対し,長居公園の放送設備や拡声器等を用いて,第2陸上競技場内又は地下駐車場への避難誘導をする注意義務及び債務を負っていたにもかかわらず,X3に対する避難誘導をしなかった点で注意義務違反及び債務不履行が存する。 (ウ) 救命救護義務違反被告らには,本件落雷事故の発生を直ちに把握し,119番通報をしたうえ,X3に対し心臓マッサージやAED等の救命措置を,遅くとも本件落雷事故当日14時19分までに行う注意義務・債務を負っていたにもかかわらず,X3に対する救命救護措置を一切行わなかったという注意義務違反・債務不履行が存する。 【被告らの主張】 も本件落雷事故当日14時19分までに行う注意義務・債務を負っていたにもかかわらず,X3に対する救命救護措置を一切行わなかったという注意義務違反・債務不履行が存する。 【被告らの主張】原告らの主張は争う。 ア保護義務について(ア) 本件落雷事故発生直前のX3の行動 本件写真撮影時から本件落雷事故の間,長居公園内において,途中で列外に出た場合に最後尾に並び直さなければならないような行列は存在しなかった。 X3は,本件写真撮影後,写真撮影場所付近で休憩していたところ,突然の雨を避けるため,長居公園南西樹林内の樹木の下で雨宿りをし,その際に本件落雷事故に遭ったものである。 (イ) 被告らの保護義務について被告らとX3の間には何らの指揮監督関係もなかったこと,本件落雷事故現場を管理していたのはZという被告らとは別の団体であったこと,本件落雷事故現場には本件公演参加者以外にも多数の長居公園の利用者が存在していたこと,本件落雷事故当時,被告らが設定した導線上に行列は形成されておらず,X3も上記導線上にはいなかったこと等からすれば,被告らはX3に対する保護義務は負っていなかったというべきである。 イ予見可能性について本件落雷事故の直前に降雨が始まり,降雨開始後ほぼ最初の落雷により本件落雷事故が発生したことからすれば,被告らには本件落雷事故発生に係る予見可能性が存在しなかった。 ウ結果回避義務違反について(ア) 準備段階の結果回避義務違反について被告らは,本件公演について,数か月にわたり綿密な計画を立て,警察の許可を経た上で実施したのであるから,準備段階における被告らの結果回避義務違反が問題となる余地はない。 (イ) 本件公演当日の結果回避義務違 件公演について,数か月にわたり綿密な計画を立て,警察の許可を経た上で実施したのであるから,準備段階における被告らの結果回避義務違反が問題となる余地はない。 (イ) 本件公演当日の結果回避義務違反について本件落雷事故現場のある長居公園は,約20万坪の広大な敷地を有し,一般市民に開放されたた公園であり,管理者もZであったから,被告ら において,避雷針の設置や誘導表示等の恒常的な落雷対策は不可能であった。そして,X3の避難場所として考えられる地下駐車場は,大阪市道路公社が管理しており,被告らに管理権限はなく,本件落雷事故が天候悪化後まもなく発生したことからすれば,被告らには結果回避可能性も存在しなかったといえる。 (ウ) 救命救護義務違反について原告らの主張は争う。 (2) 争点(2)(損害の発生及びその金額)【原告らの主張】被告らの注意義務違反・債務不履行により,原告らには以下のとおり各4089万1265円の損害が発生した。 ア X3に生じた損害(ア) 治療関係費 23万9140円(イ) 葬儀費用 150万0000円(ウ) 遺体搬送料 31万6300円(エ) 死体検案書作成費用 1万1700円(オ) 死亡による逸失利益 4428万0615円355万9000円(賃金センサス平成23年女性学歴計全年齢平均賃金)×0.7(生活費控除率)×17.7741(22歳の就労可能年数45年のライプニッツ係数)(カ) 死亡慰謝料 2200万0000円(キ) 原告らそれぞれの損害各3417万3877円上記(ア)ないし(カ)の合計に,原告らそ 能年数45年のライプニッツ係数)(カ) 死亡慰謝料 2200万0000円(キ) 原告らそれぞれの損害各3417万3877円上記(ア)ないし(カ)の合計に,原告らそれぞれのX3に係る相続割合2分の1を乗じた金額イ原告ら固有の慰謝料各300万0000円ウ弁護士費用 原告ら合計743万4775円であり,原告らそれぞれについて,371万7388円(円未満切上げ)である。 エ総計原告らそれぞれの損害は,上記アないしウの合計である4089万1265万円となる。 【被告らの主張】原告らの主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実上記前提事実,本件証拠(甲1ないし3,8,9,10,11,13ないし15,26,34の16・17,47の1,48,49,乙2の4,5の1・2,6の1・2,19,27,甲9,丙8の1ないし10,9の1ないし5,14の2,15の1・2,17,18,20,Y2代表者本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実を認定できる。 (1) 本件公演の概要,被告らの警備体制等(甲9,乙5の1・2,27,丙8の1ないし10,9の1ないし5,20,被告代表者本人)ア本件公演の概要等(ア) 本件公演の概要及び観客動員数等a 本件公演は,Y1が企画(アーティストの選定や公演内容の決定)し,Y2がY1から委託を受けて運営(会場手配・設営,警備,宣伝活動)する,複数のアーティスト等による野外コンサートであった。 b 本件公演の観客動員数は,5万3891人であった。 (イ) 本件公演の会場及び開場時間等a 本件公演の会場及び開場時間等本件公演の会場は第1陸上競技場であり,開場予定時間 b 本件公演の観客動員数は,5万3891人であった。 (イ) 本件公演の会場及び開場時間等a 本件公演の会場及び開場時間等本件公演の会場は第1陸上競技場であり,開場予定時間は13時30分,開演予定時間は15時30分,終演予定時刻は20時30分で あった。 b 付随するイベント等本件公演に付随し,第2陸上競技場では,グッズ販売等(開場予定時間11時)が行われており,第1陸上競技場の南西エリア(別紙2,F―1地点)では飲食ブースが設けられていた。 イ長居公園の管理関係及び被告らによる警備体制(ア) 長居公園の管理者長居公園(総面積約65.7ha,植物園部分を除き約41.5ha)は,都市公園法に定める都市公園であり,Zが指定管理者として管理を行っていた。 (イ) Y2の得た利用許可Y2は,本件公演の開催に先立ち,Zから,第1陸上競技場及び第2陸上競技場のほか,大型車両の運送経路・駐車場所・仮設トイレ設置場所・控え室のために第1陸上競技場の周囲の外周走路等(以下「本件許可施設等」という。)につき利用許可を得たが,本件落雷事故現場は本本件許可施設等の外であった。本件落雷事後現場から,より近い会場である第2陸上競技場までの直線距離は二百数十メートルであり,徒歩での所要時間は約3分程度である。 (ウ) 地下駐車場長居公園内には,カードリーダーに駐車券を挿入することにより入場が可能になる地下駐車場があるが,同駐車場は大阪市道路公社が管理しており,被告らは利用許可等を得ていなかった。 (エ) 被告らの警備体制等a 被告らが想定していた観客の導線被告らは,来場者の導線について, 市道路公社が管理しており,被告らは利用許可等を得ていなかった。 (エ) 被告らの警備体制等a 被告らが想定していた観客の導線被告らは,来場者の導線について,過去に長居公園で行った本件公演と同種のイベントの経験を踏まえ,別紙4のとおり想定していた。 b 救護本部,警備員本件公演の開場時におけるスタッフの配置は別紙5のとおりである。 (オ) 被告らによる天候の把握被告らにおいて,当日の天候把握のための責任者等は定められておらず,被告ら従業員等が各自天候等を確認することとされていた。 (カ) 警備計画書a 作成経緯(a) Y2は,本件公演を開催するに際し,警備計画書(甲9。以下「本件警備計画書」という。)を作成し,関係者に配布した。 (b) 本件警備計画書は,本件公演と同種の公演を被告らが初めて開催した平成14年以降,関係機関(警備会社,関係交通機関,警察,消防署)との間の協議により受けた指摘を踏まえ,毎年改訂されていた。 Y2は,平成21年から,本件公演と同種の公演の会場として第1陸上競技場を使用しており,同年には警察と10回以上の打ち合わせを行い,本件公演についても,平成24年7月13日に,警察との間で打ち合わせを行った。 b 落雷に関するマニュアルの内容本件警備計画書(甲9)には,落雷発生時の対処について,次のとおりの記載がある。 「 9 落雷発生時万一,急な落雷が発生した場合,決定機関の判断により本部から状況及び対処法を指示する。 Ⅰ 直ぐに収まり,公演続行可能であれば,海上気象台にその後の 「 9 落雷発生時万一,急な落雷が発生した場合,決定機関の判断により本部から状況及び対処法を指示する。 Ⅰ 直ぐに収まり,公演続行可能であれば,海上気象台にその後の天候・落雷の状況を確認し,その後の落雷に備え,各係員を避難経路へ配置し,その後の状況に備える。 Ⅱ 落雷が収まらず,避難の必要がある場合は,公演を中断し,アナウンサーを舞台に出し,各係員の指示に従い避難することを説明させ,各避難経路(別紙)より混乱の無いよう,順次場外へ退出させる。避難の際も,できるだけ背の高いものや水溜りなどには近寄りすぎることなく,安全な距離を保ち,できるだけ低い姿勢で避難を促し,安全な建物の中に入るよう呼びかける。」ウ被告らが利用可能なアナウンス設備被告らが利用可能なアナウンス設備は,第1陸上競技場のアナウンス設備(同競技場内の周辺に対してもアナウンスが可能である。)及び第2陸上競技場のアナウンス設備(同競技場周辺に対してアナウンスするような設備ではない。)である。 (2) X3の本件公演のチケット購入(甲8,弁論の全趣旨)ア X3は,本件公演に係る一般指定席のチケットを9800円で購入し,これにより,Y1に対し,本件公演を第1陸上競技場の「LEFT―1011列9番」の座席で鑑賞する権利を取得した。 イ同チケットには,主催者からの注意事項として,会場内で係員の指示及び注意事項に従わない場合には入場を断わる場合があること,開演中の入場も制限する場合があること,会場内で係員の指示及び注意事項に従わず生じた損害及び事故については,主催者は一切責任を負わないことがそれぞれ記載されている。 (3) 本件公演当日(甲1,13,14,34の16・17, あること,会場内で係員の指示及び注意事項に従わず生じた損害及び事故については,主催者は一切責任を負わないことがそれぞれ記載されている。 (3) 本件公演当日(甲1,13,14,34の16・17,丙15の1,18,被告代表者本人,弁論の全趣旨)(以下,(3)においては,特に断らない限り年月日は平成28年8月18日をいう。)ア本件公演開場以前(ア) カラーコーンの設置 a 本件公演当日の長居公園の開放状況本件公演の当日,長居公園は,本件公演参加者以外の一般の利用者にも開放されており,実際にも,長居公園には,本件公演参加者以外の利用者も存在していた。 bY2によるカラーコーンの設置Y2は,長居公園に来場する一般の利用者に対する配慮の観点から,被告らが想定していた来場者の導線に沿う形で,概ね別紙4のa地点からb地点の数メートル手前までの間及びa地点からc地点の数十メートル手前の間にカラーコーンを設置した。 c カラーコーン設置の趣旨被告らは,本件公演参加者が上記カラーコーンの内側を歩いて第1陸上競技場や第2陸上競技場に向かうことを想定していたが,これらの会場には,被告らが想定していた導線以外からも入場することが可能であった。 (イ) エコバック等の配布等被告らは,10時半頃から,大阪市営地下鉄御堂筋線長居駅(以下「長居駅」という。)3号出入口及び長居公園北口において,エコバック等の配布を開始した。 (ウ) 第2陸上競技場の開場被告らは,10時40分頃,第2陸上競技場を開場した。同開場以前には,第2陸上競技場南側外周付近に行列ができていた。 イ本件公演開場後本件落雷事故発生までの出来事(ア) 第1陸上競技場の開場被告 ,第2陸上競技場を開場した。同開場以前には,第2陸上競技場南側外周付近に行列ができていた。 イ本件公演開場後本件落雷事故発生までの出来事(ア) 第1陸上競技場の開場被告らは,13時23分頃,第1陸上競技場を開場した。 (イ) X3の長居公園への入場,本件写真撮影等X3は,13時32分,本件公演に参加するために,長居駅で電車を 降りた。 X3は,その後,長居公園に入場し,13時53分,本件写真撮影を行った。 (ウ) 長居公園における降雨・落雷の開始a 長居公園においては,14時頃から,強い雨が降り始め,雷鳴も聞こえるようになった。 b 長居公園付近において,14時7分頃から8分頃,最初の落雷が発生した。 (エ) 被告らによる第2陸上競技場の解放被告らは,14時から14時10分頃,第2陸上競技場内にいた客に対しては同競技場の軒下,コンコース,未使用の諸室を解放し,第2陸上競技場外(自由広場と第2陸上競技場の間の通路)にいた者に対しては,第2陸上競技場コンコースを開放し,14時10分頃,被告らが配置した警備員において避難誘導を行った。 (オ) 本件落雷事故の発生X3は,14時10分頃から15分頃までの間に,本件落雷事故に遭った。本件落雷現場付近は樹林となっており,外周道路を挟んで反対側の歩道(カラーコーンの設置されていた歩道)までの距離は,約22メートルであった。 ウ本件落雷事故後の被告らの避難誘導措置等(ア) 第1陸上競技場音響設備によるアナウンス被告らは,14時18分頃,第1陸上競技場にある音響設備を用いて,競技場西側周辺に居る人々に対し,「予報では30分程で雨・雷が収まる予定です。スタンドコンコース内にてお待ち下さい。」「屋 ナウンス被告らは,14時18分頃,第1陸上競技場にある音響設備を用いて,競技場西側周辺に居る人々に対し,「予報では30分程で雨・雷が収まる予定です。スタンドコンコース内にてお待ち下さい。」「屋根のあるところでお待ちください」等のアナウンスを行った。 (イ) 第1陸上競技場の開放 被告らは,14時30分頃,本件公演の入場券の有無を問わず,第1陸上競技場を避難場所として解放し,周辺にいた人々に対して避難誘導を行った。 (ウ) 長居公園設備によるアナウンス被告らは,14時50分頃,第1陸上競技場の管理事務所内のアナウンス設備を用いて,第1陸上競技場の周辺に向けて,「係員の指示に従って建物内にお入りください。」とのアナウンスを行った。 エ被告らにおける本件落雷事故の把握(ア) Y1Y1は,14時30分頃,本件落雷事故の存在を把握したものの,X3の死亡の事実については,X3の死亡後に,報道により認識した。 (イ) Y2Y2は,本件公演開演の時点で,長居駅付近及び長居公園において落雷が発生し,緊急搬送された者が存在することは把握していたものの,正確な負傷者数,けがの程度,搬送された人の属性(本件公演の参加予定者か否か)は把握しておらず,本件落雷事故の存在及び同事故によりX3が死亡した事実を,X3の死亡後に報道により認識するに至った。 (4) 本件公演当日の天候に係る情報(甲26,乙5の1・2)ア雷予報大阪市においては,平成24年8月17日から継続して雷注意報が発表されており,平成24年8月18日13時48分には大雨,雷,洪水注意報が,平成24年8月18日14時09分には大雨(浸水害),洪水警報及び雷注意報がそれぞれ発表されていた。 イ雷ナウキャ 発表されており,平成24年8月18日13時48分には大雨,雷,洪水注意報が,平成24年8月18日14時09分には大雨(浸水害),洪水警報及び雷注意報がそれぞれ発表されていた。 イ雷ナウキャストの予報(ア) 気象庁は,平成22年5月27日から,「雷ナウキャスト」という名称で,雷発生の可能性や雷の激しい地域の分布及び1時間先までの 予報を同庁のホームページで公開していた。 同予報における,雷の活動度の分類は以下のとおりである。 活動度1 雷可能性あり(1時間以内に落雷の可能性がある)活動度2 雷あり(電光が見えたり雷鳴が聞こえる。または,現在は発雷していないが,間もなく発雷する可能性が高くなっている)活動度3 やや激しい雷(落雷があること)活動度4 激しい雷(落雷が多数発生していること)(イ) 雷ナウキャストにおいては,平成24年8月18日13時50分の時点において,長居公園は活動度1と解析されており,平成24年8月18日13時50分を基準時とする平成24年8月18日14時,14時10分,14時20分,14時30分における長居公園の予想解析結果は,活動度1あるいは活動度2であった。 ウ長居公園の管理者であるZは,同社が長居公園の管理を開始した平成20年度以降,長居公園内において人的・物的被害を伴う落雷事故が発生したという事実は把握していなかった。 2 争点(1)(被告らの注意義務違反・債務不履行の有無)について(1) 本件公演の計画段階の注意義務違反及び債務不履行の有無Y2は,上記1(1)イ(カ)bで認定したとおりの本件警備計画書を作成し,関係者に配布しているところ,原告らは,被告らには,本件公演の準備段階において,雷の基礎知識,具体的な避 履行の有無Y2は,上記1(1)イ(カ)bで認定したとおりの本件警備計画書を作成し,関係者に配布しているところ,原告らは,被告らには,本件公演の準備段階において,雷の基礎知識,具体的な避難場所,誘導方法,そのためのスタッフの配置等を記載したマニュアルを作成し,スタッフ全員に周知すべき注意義務・債務を負っていたにもかかわらず,落雷事故が発生した場合の抽象的な対処方法が記載された本件警備計画書を作成するのみで,他に何らの準備をしなかった点で注意義務違反及び債務不履行が存すると主張する。 確かに,一般論としていえば,本件公演のような大規模なイベントを主催 している被告らは,落雷事故の発生が抽象的には予見可能である以上,警備計画策定時の具体的な事情に照らし落雷事故に対する適切な警備体制を構築する義務を負っていたと認められる。 しかしながら,落雷は,本来的に,いつ,どこで,どのような態様で発生するのかが具体的,詳細に予測できないものであり,落雷への具体的な対策は,その時点における天候状況や落雷状況に合わせ,臨機応変に対処すべき事項であるといえるから,警備計画策定時のマニュアルの内容も,ある程度包括的な指針を示したものにならざるを得ないといえる。実際にも,被告らは,平成21年から,長居公園において,本件公演と同種の公演を開催しているところ,過去に落雷に関係する事故等が発生した事実はうかがわれないのであり,そのような実情を踏まえれば,被告らにおいて,本件警備計画書以上に具体的かつ詳細な警備計画書を作成しなかった点をもって直ちに注意義務違反があるとは認めがたいというべきである。 また,被告らは,被告らが本件公演と同種の公演を初めて開催した平成14年以降,関係機関(警備会社,関係交通機関,警察,消防署)との間で協 て直ちに注意義務違反があるとは認めがたいというべきである。 また,被告らは,被告らが本件公演と同種の公演を初めて開催した平成14年以降,関係機関(警備会社,関係交通機関,警察,消防署)との間で協議を行うとともに,平成21年には警察と10回以上の打合せを行い,本件公演についても,平成24年7月13日にも警察と打合せを行った上で,本件警備計画書を作成した(上記1(1)イ(カ))ところ,これらの協議や打合せの過程において,関係機関から本件警備計画書の落雷に関する警備計画が不十分であるとの指摘を受けたとの事情もうかがえない。 以上によれば,被告らの本件公演の落雷に関する準備が,警備計画策定時の具体的な事情に照らし,それ自体において不適切なものであり,注意義務違反又は債務不履行を構成するとまでは認められない。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (2) 本件公演当日の注意義務違反についてア原告らは,本件公演の主催者である被告らは,条理上の義務又は本件公 演参加契約に付随する安全配慮義務として,被告らが想定していた来場導線図に記載された導線上又はその付近にいたX3に対して,落雷から生命及び身体を保護する義務を負っていたと主張する。 そこで検討すると,落雷の発生は,被告らが管理又は支配できる事象ではないこと,また,本件落雷場所が本件許可施設等から相当の距離があったことからすれば,野外における落雷に対する回避措置は,もっぱら各人が自己の責任で行うべきものといわざるを得ず,被告らが,X3に対し,上記のような義務を負っていたと認められるのは,当該場所についての利用・管理等の状況,先行行為を含む両者の関係,予見可能性の有無・その具体性,結果回避措置の容易性・可能性,期待可能性,被侵害利益の重大性等の諸般 務を負っていたと認められるのは,当該場所についての利用・管理等の状況,先行行為を含む両者の関係,予見可能性の有無・その具体性,結果回避措置の容易性・可能性,期待可能性,被侵害利益の重大性等の諸般の事情を総合考慮して,被告らに対し,X3を落雷の危険から保護する義務を負わせることが相当といえる客観的状況が存在する場合に限られると解される。 イ被告らとX3の関係(ア) X3による本件公演のチケット購入についてX3は,本件公演のチケットを購入していた(上記1(2)ア)が,これにより被告らが負担する債務の内容は,もっぱら本件公演を開催し,X3を指定された座席で鑑賞させること及び鑑賞行為自体に付随する役務を提供するというものにとどまり,チケットを購入したとの事実から直ちに上記以外の債務が導かれるものではない。 また,本件落雷事故は,本件公演の開演前に,利用許可がされた本件許可施設等の外で発生したものである(前提事実(4),上記1(1)イ(イ))ところ,上記チケットには,本件公演開始前に,本件公演の会場外におけるX3の行動を制限する内容の記載は見出せないし,その他本件許可施設等の外においてX3の生命身体を被告らが保護する義務を負うことを相当とするような記載もない(上記1(2)イ)。 そうすると,X3が本件公演のチケットを購入したとの事実は,被告らが上記のような義務を負うことを直ちに基礎づけるものではない。 (イ) 被告らによる導線の設定及びカラーコーンの設置について前記認定のとおり,長居公園は,本件公演当日,一般の利用者にも開放されており,実際にも,長居公園内には一般の利用者も存在していたほか(上記1(3)ア(ア)),本件落雷現場は,上記のとおり本件許可施設等の外にあり,会場からも相当の距離があっ ,一般の利用者にも開放されており,実際にも,長居公園内には一般の利用者も存在していたほか(上記1(3)ア(ア)),本件落雷現場は,上記のとおり本件許可施設等の外にあり,会場からも相当の距離があった(より近い第2陸上競技場から直線距離でも二百数十メートル離れていた。)。 被告らは,本件公演当日,被告らが想定していた来場者の導線に沿う形でカラーコーンを設置し(上記1(3)ア(ア)),本件公演の来場者の多くが上記カラーコーンの内側を歩いて第1陸上競技場や第2陸上競技場に向かうことを想定していたが,これらの会場には,被告らが想定していた導線以外からも入場することが可能であった(上記1(3)ア(ア))。また,被告らが配置した係員が,来場者に対し,上記導線に従って列を作り又はそこを通行するよう誘導していたとも認められない。そうすると,被告らは,上記各会場への来場者の多くが導線ないしカラーコーンの内側を通過して本件会場に向かうことを想定していたとはいえるものの,来場者の入場について,上記導線上を通行し又は列を作る方法に限定していたとか,それ以外の方法による入場が事実上困難な状況であったとまでは認められない。 そして,本件においては,X3が本件落雷事故直前に上記導線上に並んで会場に入場しようとしていたことを認めるに足りる的確な証拠はないが,仮にそのような事実があったとしても,上記各事情に照らせば,導線の設置等の事実から直ちに被告らがX3を落雷から保護すべき義務を負っていたとは認められないというべきである。 ウ予見可能性の有無・程度 本件公演当日の注意報や警報の発令状況(上記1(4)ア),雷ナウキャストによる解析の結果(上記1(4)イ)及び長居公園においては,同年8月18日14時頃以降から,強い雨が降り始め,雷鳴も聞こえ 本件公演当日の注意報や警報の発令状況(上記1(4)ア),雷ナウキャストによる解析の結果(上記1(4)イ)及び長居公園においては,同年8月18日14時頃以降から,強い雨が降り始め,雷鳴も聞こえるようになっていること(上記1(3)イ(ウ))からすれば,被告らは,遅くとも14時頃には,長居公園内において,落雷事故が発生することについて予見が可能な状態にあったと認められる。 しかしながら,上記の注意報・警報の発令は本件落雷事故発生の抽象的可能性の存在を示すに過ぎず,少なくとも平成20年度以降は,長居公園において人的物的被害を伴う落雷事故の発生はうかがわれないこと(上記1(4)ウ)からすれば,被告らにおいて,本件落雷事故発生を具体的に予見できたとまでは認められないといわざるをえない。 エ結果回避措置の容易性・期待可能性本件落雷事故現場は,本件許可施設等の外にあり,被告らの管理下にあったとは認められず,被告らは,長居公園全体にまでアナウンスが可能な設備が利用可能な状態にはなかった(上記1(1)ウ)ことからすれば,被告らが,長居公園全体に避難誘導を一度に行うという手段を採ることは不可能であったというほかはなく,被告らが本件落雷事故現場付近にいる来場者に対して避難誘導を行おうとすれば,拡声器等を持参したスタッフを本件落雷事故現場付近に派遣するという方法によらざるを得なかったといえる。 被告らが本件落雷事故発生前に行った避難誘導等は,第2陸上競技場及びその周辺にいた来場者に対するものであった(上記1(3)イ(ウ))ところ,被告らにおいて,落雷が具体的にいつどこで発生するのかについて具体的に予見することはできない以上,被告らが,利用可能なアナウンス設備を用いて誘導措置を講じるにあたり,本件許可施設等内にいる来 ころ,被告らにおいて,落雷が具体的にいつどこで発生するのかについて具体的に予見することはできない以上,被告らが,利用可能なアナウンス設備を用いて誘導措置を講じるにあたり,本件許可施設等内にいる来場者 に対する避難誘導措置を優先的に行ったとしても,当時の客観的状況に照らし,合理性を欠く措置であったとはいえない。 そうすると,被告らにおいて,落雷事故の発生が可能となった14時頃から,本件落雷事故発生までの約10分から15分の間に,第2陸上競技場から相当の距離がある本件落雷現場付近にいたX3に対する避難誘導等の措置を採ることが容易であり,かつ期待可能性が高度であったとは認められない。 オ総合考慮以上のとおり,被告らについて,X3を落雷の危険から保護すべき義務を基礎づけるような管理状況や先行行為等があったとはいえず,被告らの本件落雷事故発生に関する予見可能性の程度も具体的なものではなく,被告らにおいてX3に対する避難誘導等の措置を採ることが容易かつ高度に期待可能であったとは認められない。加えて,X3の年齢に照らせば,落雷の兆候が見られる場合に樹木の下に避難することが危険であるとの一般的知見を前提に,自らの判断で危険回避の措置を採ることを期待することも可能であったというべきであるから,以上の点を総合すれば,本件落雷事故が発生した場合に想定される被侵害利益が人の生命・身体という極めて重大な法益であることを考慮しても,被告らにX3を落雷の危険から保護する義務を負わせることを相当すべき客観的状況が存在したとは認められない。 したがって,被告らが本件落雷現場においてX3を落雷の危険から保護すべき義務を負っていたと認めることはできない。 (3) 救命救護義務違反についてその他,原告らは,X3に対す い。 したがって,被告らが本件落雷現場においてX3を落雷の危険から保護すべき義務を負っていたと認めることはできない。 (3) 救命救護義務違反についてその他,原告らは,X3に対する救命救護義務違反を主張するが,被告らにおいて,X3に対し,落雷から保護すべき義務を負っていたと認められないことは既に認定説示のとおりであり,X3が本件落雷事故に遭ったとの事実から直ちに被告らに救命救護義務が発生するということはできない。また, 救命救護義務は,落雷事故発生の事実の認識を前提とするものと解されるところ,上記認定のとおり,被告らは,本件落雷事故の当時,X3が本件落雷事故に遭ったこと自体を認識していなかったのであるから,かかる義務を認めるべき前提を欠くといわざるを得ず,ほかに被告らに救命救護義務が存したことを認めるに足りる事情も存しない。 よって,被告らがX3に対し救命救護義務違反を負っていたとは認められない。 (4) まとめ以上によれば,被告らにおいて,本件落雷事故につきX3に対する注意義務違反又は債務不履行があったとは認められない。 第4 結論以上の次第で,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第3民事部裁判長裁判官長谷部 幸 弥裁判官玉 野 勝 則裁判官内 田 健 太
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