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- 1 -主文 原告らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。事実及び理由 第1請求被告A及び同Bは,つくば市に対し,連帯して金1億2656万8031円及びこれに対する平成9年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。第2事案の概要本件は,つくば市の住民である原告らが,平成8年度において不納欠損処理(以下「本件処理」という。)がなされた市税債権合計1億2656万8031円について,かつてつくば市長の職にあった被告A及びかつてつくば市財務部長の職にあった被告Bが,滞納者に対する督促や財産の差押え等の時効中断措置を怠ったことなどに起因して,つくば市が本件処理に係る税額相当の損害を被ったと主張して,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下で引用する法令は全て同8年ないし9年当時のものである。)242条の2第1項4号に基づき,つくば市に代位して,被告らに対し,つくば市に,不法行為に基づく損害賠償として,連帯して1億2656万8031円及びこれに対する平成9年4月1日(本件処理の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める住民訴訟である。前提事実(当事者間に争いがない事実等)(1)当事者ア原告ら原告ら及び選定者らは,いずれもつくば市に居住する住民である。イ被告等(ア)被告Aは平成8年11月17日から同16年11月26日までつく- 2 -ば市長の職にあった者である。被告Bは,同9年5月1日以降,つくば市財務部長の職にあった者である(現在はその職にはない。)。(イ)被告ら補助参加人つくば市(以下「補助参加人つくば市」という。)は,被告らのために本件訴訟に参加した補助参加人である。被告ら参加人つくば市長(以下「参加人つくば (現在はその職にはない。)。(イ)被告ら補助参加人つくば市(以下「補助参加人つくば市」という。 までつく- 2 -ば市長の職にあった者である。被告Bは,同9年5月1日以降,つくば市財務部長の職にあった者である(現在はその職にはない。)。(イ)被告ら補助参加人つくば市(以下「補助参加人つくば市」という。)は,被告らのために本件訴訟に参加した補助参加人である。被告ら参加人つくば市長(以下「参加人つくば (現在はその職にはない。)。(イ)被告ら補助参加人つくば市(以下「補助参加人つくば市」という。)は,被告らのために本件訴訟に参加した補助参加人である。被告ら参加人つくば市長(以下「参加人つくば市長」という。また,補助参加人つくば市と参加人つくば市長を合わせて「参加人ら」という。)は,行政事件訴訟法43条1項,23条1項の規定により本件訴訟に参加した行政庁である。(2)本件処理つくば市においては,平成9年3月31日,当時の財務部長が,市税債権に係る不納欠損処理(本件処理)を行った。つくば市議会は,同年12月18日,本件処理に係る不納欠損額として合計1億2656万8031円を計上した平成8年度つくば市一般会計歳入歳出決算を認定した(丙3ないし6,22)。上記認定に係る不納欠損額1億2656万8031円の内訳は下記のとおりである。記市民税(個人)554件7158万8691円市民税(法人)52件2856万4200円固定資産税279件1963万5340円軽自動車税441件112万0500円特別土地保有税1件565万9300円合計1327件1億2656万8031円(3)住民監査請求等ア原告らは,平成10年2月20日,つくば市監査委員らに対し,本件処- 3 -理に係る市税債権が時効により消滅した原因は,つくば市長及び同市財務部長が,その徴収を怠り,また,時効中断等の措置をとらないまま漫然と本件処理を行ったことにあり,これによりつくば市に同税額相当の損害が発生したとして,つくば市長及び同市財務部長に対して連帯してこれを弁済するよう請求すること等を求める住民監査請求を行った(甲1の①,②,以下「本件監査請求」という。)。つくば市監査委員らは,本件監査請求を受理して監査を実施した上で,同年4月16 連帯してこれを弁済するよう請求すること等を求める住民監査請求を行った(甲1の①,②,以下「本件監査請求」という。)。つくば市監査委員らは,本件監査請求を受理して監査を実施した上で,同年4月16日付けで,つくば市長及び同市財務部長が不当に市税の徴収を怠っていたとは認められないなどとして,これを棄却し(甲2),同月17日,その結果を原告らに通知した。 監査請求を受理して監査を実施した上で,同年4月16 連帯してこれを弁済するよう請求すること等を求める住民監査請求を行った(甲1の①,②,以下「本件監査請求」という。)。つくば市監査委員らは,本件監査請求を受理して監査を実施した上で,同年4月16日付けで,つくば市長及び同市財務部長が不当に市税の徴収を怠っていたとは認められないなどとして,これを棄却し(甲2),同月17日,その結果を原告らに通知した。イ原告らは,平成10年5月1日,つくば市監査委員らに対し,本件処理に係る市税債権が時効により消滅した原因は,つくば市長及び同市財務部長が,地方税法331条に違反して滞納者の財産を差し押さえなかったことにあり,これによりつくば市に同税額相当の損害が発生したとして,つくば市長及び同市財務部長に対して連帯してこれを弁済するよう請求すること等を求める住民監査請求を行った(甲3)。つくば市監査委員らは,同年5月13日付けで,この住民監査請求について,本件監査請求と請求者及び請求内容が同一であることを理由として却下し,そのころ,その結果を原告らに通知した(甲4)。ウ原告らは,平成10年5月15日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。(4)関係法令ア地方税法(ア)市町村民税に係る督促及び滞納処分納税者(特別徴収の方法によって市町村民税を徴収される者を除く。以下同様とする。)又は特別徴収義務者が納期限までに市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しない場合においては,市町村の徴税吏員は,- 4 -納期限後20日以内に,督促状を発しなければならない(地方税法329条1項本文)。市町村民税に係る滞納者が,督促を受け,その督促状を発した日から起算して10日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないときは,市町村の徴税吏員は,当該市町村民税に係る地方団体の徴収 者が,督促を受け,その督促状を発した日から起算して10日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないときは,市町村の徴税吏員は,当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき,滞納者の財産を差し押えなければならない(地方税法331条1項1号)。(イ)時効の中断及び停止地方税の徴収権の時効は,納付又は納入に関する告知,督促若しくは交付要求の各処分に係る部分の地方団体の徴収金につき,その処分の効力が生じた時に中断する(地方税法18条の2第1項)。 その督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないときは,市町村の徴税吏員は,当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき,滞納者の財産を差し押えなければならない(地方税法331条1項1号)。(イ)時効の中断及び停止地方税の徴収権の時効は,納付又は納入に関する告知,督促若しくは交付要求の各処分に係る部分の地方団体の徴収金につき,その処分の効力が生じた時に中断する(地方税法18条の2第1項)。イ地方自治法出納長又は収入役は,毎会計年度,政令の定めるところにより,決算を調製し,出納の閉鎖後3箇月以内に,証書類その他政令で定める書類とあわせて,普通地方公共団体の長に提出しなければならない(地方自治法233条1項)。普通地方公共団体の長は,決算及び上記の書類を監査委員の審査に付し,さらに,監査委員の審査に付した決算を監査委員の意見を付けて次の通常予算を議する会議までに議会の認定に付さなければならない(同条2項,3項)。普通地方公共団体の長は,決算を議会の認定に付するに当たっては,当該決算に係る会計年度における主要な施策の成果を説明する書類その他政令で定める書類を併せて提出しなければならない(同条5項)。ウつくば市財務規則(以下「財務規則」という。)等(丙1,32)(ア)歳入徴収者市長,地方自治法の規定により歳入の徴収事務を委任された者,及び,- 5 -財務規則3条の規定(財務に関する事務については,つくば市事務決裁規程(以下「事務決裁規程」という。)に従い,専決するものとしている。)によりこの事務を専決する権限を与えられた者を歳入徴収者という(財務規則2条(3))。つくば市財務部長は,つくば市事務決裁規程3条1項(2)及び(3)により, )に従い,専決するものとしている。)によりこの事務を専決する権限を与えられた者を歳入徴収者という(財務規則2条(3))。つくば市財務部長は,つくば市事務決裁規程3条1項(2)及び(3)により,収入(3000万円を超えるもの)の調定(寄附金を除く。),市民税及び資産税の賦課額の決定及び更正,市民税等及び固定資産税の減免並びに滞納処分の実施などの歳入の徴収事務を専決する権限を与えられた者であり,財務規則2条(3)にいう歳入徴収者に該当する。(イ)督促及び滞納処分歳入徴収者は,納入期限までに納入しない納入義務者に対し当該納期限後20日以内に督促状により督促しなければならない(財務規則44条1項)。 3000万円を超えるもの)の調定(寄附金を除く。),市民税及び資産税の賦課額の決定及び更正,市民税等及び固定資産税の減免並びに滞納処分の実施などの歳入の徴収事務を専決する権限を与えられた者であり,財務規則2条(3)にいう歳入徴収者に該当する。(イ)督促及び滞納処分歳入徴収者は,納入期限までに納入しない納入義務者に対し当該納期限後20日以内に督促状により督促しなければならない(財務規則44条1項)。歳入徴収者は,強制徴収により徴収できる債権について,債務者が督促状において指定された履行期限までに債務を履行しないときは,徴収吏員を指定して滞納処分を行わせなければならない(財務規則45条1項前段)。(ウ)不納欠損処理歳入徴収者は,既に調定した歳入について法令の規定に基づき時効の完成又は徴収権の消滅により歳入の欠損処分をすべきものがあるときは,歳入不納欠損調書を調整し,市長の決裁を受けなければならない(財務規則46条1項)。(エ)決算資料財務部長は,各部等の長が作成・提出した当該年度に係る歳入歳出決算事項別明細書及び主要事業執行結果説明書を精査するとともに,上記イにいう当該決算に係る会計年度における主要な施策の成果を説明する- 6 -書類を作成しなければならない(財務規則116条3項)。争点 (1)被告Bに対する訴えの適法性(2)被告らについてつくば市に対する不法行為が成立するか否か。(3)被告らの不法行為による損害の有無及び額 争点に関する当事者の主張(1)争点(1)(被告Bに対する訴えの適法性)について (2)被告らについてつくば市に対する不法行為が成立するか否か。(3)被告らの不法行為による損害の有無及び額 争点に関する当事者の主張(1)争点(1)(被告Bに対する訴えの適法性)について(被告ら及び参加人らの主張)本件処理は,被告Bがつくば市財務部長に就任した平成9年5月1日よりも前に既に時効が完成していた案件について,それを財務会計に反映させるために同年3月31日に行われたものであるが,時効完成時に財務部長の職になかった被告Bは,時効が問題となる市税債権につき滞納処分を実施すべき法的義務を負わないから,同人が地方自治法242条の2第1項4号に基づく住民訴訟の被告となることはない。また,決算の調整については収入役等が行うものであり(同法233条1項),その後,収入役から提出された決算及び付属書類を監査委員の審査に付し(同条2項),監査委員の審査に付した決算に監査委員の意見を付けて議会の認定に付するのは,いずれも市長とされているのであるから(同条3項),決算を議会の認定に付するのは被告Bの職務ではなく,同人について,不納欠損処理を含む決算を議会の認定に付した行為を問題とすることは法的に誤っている。 ては収入役等が行うものであり(同法233条1項),その後,収入役から提出された決算及び付属書類を監査委員の審査に付し(同条2項),監査委員の審査に付した決算に監査委員の意見を付けて議会の認定に付するのは,いずれも市長とされているのであるから(同条3項),決算を議会の認定に付するのは被告Bの職務ではなく,同人について,不納欠損処理を含む決算を議会の認定に付した行為を問題とすることは法的に誤っている。したがって,被告Bに対する訴えは,住民訴訟の類型に該当しないことが明らかであり不適法である。(原告らの主張)原告らは,後述の(2)(原告らの主張)イ(イ)のとおり,被告Bが平成9年5月1日に財務部長に就任して事務の引継ぎを受けた後,不当な本件処理を- 7 -是正・訂正せずに徴税行為を怠った点を問題としているのであるから,被告Bも本件の被告とすることができる。また,本件処理に関してつくば市議会において質問がなされた際に,総括的な部分については市長である被告Aが,具体的な部分については財務部長である被告Bが,それぞれ答弁して 件の被告とすることができる。また,本件処理に関してつくば市議会において質問がなされた際に,総括的な部分については市長である被告Aが,具体的な部分については財務部長である被告Bが,それぞれ答弁しているところ,被告Bが自らの責任の存在しない案件について答弁する理由はないから,財務部長たる被告Bが議会認定の原案作成責任者であることは明らかであり,被告Bも財務部長として,地方自治法242条の2第1項4号に基づく住民訴訟の被告となる。(2)争点(2)(不法行為の成否)について(原告らの主張)被告らには,①本件処理に係る市税債権につき本件処理前後を通じて時効中断措置をとらずに消滅時効を完成させた点,②十分な審査を行わずに違法に本件処理を行い,その違法を是正・訂正しないままこれを議会の認定に付した点について不法行為が成立する。ア本件処理前後を通じた時効中断措置に関する不法行為(被告ら両名について)(ア)被告らの違法行為a地方税法329条1項は,納税者又は特別徴収義務者が納期限までに市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しない場合においては,市町村の徴税吏員は,納期限後20日以内に督促状を発しなければならないとし,また,同法331条は,市町村民税に係る滞納者が督促状を発した日から起算して10日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないときは,市町村の徴税吏員は,滞納者の財産を差し押さえなければならないとしている。 は特別徴収義務者が納期限までに市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しない場合においては,市町村の徴税吏員は,納期限後20日以内に督促状を発しなければならないとし,また,同法331条は,市町村民税に係る滞納者が督促状を発した日から起算して10日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないときは,市町村の徴税吏員は,滞納者の財産を差し押さえなければならないとしている。これらの地方税法の規定からすると,被告らには,滞納者の財産の差押えを行うべき義務が課されているというべきであり,仮に分納誓- 8 -約等の時効中断を行った場合であっても,最終的な時効完成が迫ってきた時には,何の法律上の措置も履行しないまま漫然と消滅時効を完成させることは許されない。b というべきであり,仮に分納誓- 8 -約等の時効中断を行った場合であっても,最終的な時効完成が迫ってきた時には,何の法律上の措置も履行しないまま漫然と消滅時効を完成させることは許されない。b被告らが,件数にして1327件,総額1億2656万8031円という多額の市税につき本件処理を行うに至ったのは,同法329条に違反して督促状を発しなかったか,又は,督促状を発したとしても,同法331条に違反して滞納者の財産に対する差押えを怠ったことが原因である。被告らは,滞納者に対して,督促状・催告状を発付したもの,あるいは一度でも時効中断措置を行ったことがあるものについては,もはや消滅時効が完成しても違法・不当ではないとの認識の下に,十分な財産調査も行わないまま,漫然と時効を完成させていたのである。また,つくば市においては,取立基準に関するマニュアルが存在しないが,これは徴税行為が,担当者及び指揮監督者等の恣意的な裁量によって不公正に運用されていた事実を示すものである。c被告ら及び参加人らは,被告Aが責任を負うのが不合理な案件として,別紙2「既時効完成等案件一覧」のとおり,時効完成時期の違いにより,①職務に就いた段階で既に時効が完成していた案件(合計2555万8810円),②時効完成が間近に切迫していたため遅滞なく手続をとったとしても間に合わなかった案件(合計1060万2329円)及び③実は時効が完成していなかった案件(合計5318万0551円)を挙げている(総計8934万1690円)が,仮にこの数字が正しいとしても,本件処理に係る税額1億2656万8031円と3722万6341円の差があるところ,この3722万6341円については,被告Aの市長就任後において,かつ,徴税処理期間を経過した後に時効が完成したものであるから,被告Aは わなかった案件(合計1060万2329円)及び③実は時効が完成していなかった案件(合計5318万0551円)を挙げている(総計8934万1690円)が,仮にこの数字が正しいとしても,本件処理に係る税額1億2656万8031円と3722万6341円の差があるところ,この3722万6341円については,被告Aの市長就任後において,かつ,徴税処理期間を経過した後に時効が完成したものであるから,被告Aは 2656万8031円と3722万6341円の差があるところ,この3722万6341円については,被告Aの市長就任後において,かつ,徴税処理期間を経過した後に時効が完成したものであるから,被告Aはこれを賠- 9 -償する責任を負う。また,②のうち,被告Aが市長職を引き継いだ時点において既に滞納整理事務に着手していた案件が含まれている可能性があるが,これについては,必要な事務処理期間として2箇月を要しないのであるから,被告Aが賠償責任を負うことも考えられる。さらに,被告ら及び参加人らは,執行対象財産を有しない案件,過分な費用が発生する案件などについて被告らに損害賠償責任はないと主張するが,徴税事務は本来裁量を許さない羈束行為であるから,個別的な資産調査・費用の積算を行わずに,一律に不納欠損処理を行うことは許されない。(イ)故意又は過失被告Aは,つくば市長として市税を賦課徴収する事務を管理・執行する権限を有していたのであるから,例え徴税事務に直接携わっていなかったとしても,徴税担当者が違法行為を行うのを阻止すべき指揮監督上の義務を負っており,故意・過失によってこれに違反して徴税担当者による違法行為を阻止しなかった場合には,つくば市に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負うのである。本件においては,平成8年度に不納欠損処理額が急増したにもかかわらず,その原因を追究することもなく,これを阻止するための指揮監督を怠り,大量の不納欠損処理を許すこととなったのであるから,その責任は重大であり,故意又は過失が認められることは明らかである。被告Bも財務部長でありながら,少なくとも,1年数箇月にわたって徴税行為を怠り,督促・差押え等により徴税可能な案件についても徴税不能としたものであり,故意又は過失が認められることは明らかである。イ本件 も財務部長でありながら,少なくとも,1年数箇月にわたって徴税行為を怠り,督促・差押え等により徴税可能な案件についても徴税不能としたものであり,故意又は過失が認められることは明らかである。 明らかである。被告Bも財務部長でありながら,少なくとも,1年数箇月にわたって徴税行為を怠り,督促・差押え等により徴税可能な案件についても徴税不能としたものであり,故意又は過失が認められることは明らかである。イ本件 も財務部長でありながら,少なくとも,1年数箇月にわたって徴税行為を怠り,督促・差押え等により徴税可能な案件についても徴税不能としたものであり,故意又は過失が認められることは明らかである。イ本件処理に関する不法行為(ア)本件処理に関する不法行為(被告Aについて)不納欠損処理を行う際には,各案件について債権回収のために最大の- 10 -努力が行われていたにもかかわらず,その回収の見込みが完全に失われたこと,その経緯・事情が何人にも明らかに正当と言えるものであることを確認しなければならない。また,これらの事情が確認できない場合には,不当な怠慢又は懈怠に関する主体又は管理者に対して,回収不能となった債権を責任に応じて弁済させなければならない。ところが,被告Aは,本件処理に際して,部下が起案・審議して提出した書類(丙22)に整合性のない不実の記載があったにもかかわらず,これを漫然と決裁して,真実を記載した整合性のある書類を整えさせることを怠った。また,不納欠損事由を厳正に審査するために必要な内容(丙14の摘要欄のようなもの)が記載された書類がないのに,これを整えさせることもなく,本件処理を決裁した。そして,以上のような事情から,不納欠損処理をするのが適正か否かを審査するのに十分な書類が整っていなかったのに,更なる調査を実施させたり,債権回収又は責任者に対する弁済請求を行ったりすることを怠ったのである。以上のとおり,被告Aは,違法に本件処理を行ったものである。さらに,被告Aは,決裁者として責任を負うべき本件処理に関して決裁していないのである(甲5)から,不作為による不法行為責任を負う。(イ)本件処理を是正・訂正しなかった点に関する不法行為(被告ら両名について)被告らは,本件処理について,事後的に不納欠損処理をする要件を備えてい (甲5)から,不作為による不法行為責任を負う。(イ)本件処理を是正・訂正しなかった点に関する不法行為(被告ら両名について)被告らは,本件処理について,事後的に不納欠損処理をする要件を備えているか否かを確認しないまま漫然と議会の認定に付したものであり,これにより徴税可能な案件についても徴税不能とした。 不法行為(被告ら両名について)被告らは,本件処理について,事後的に不納欠損処理をする要件を備えてい (甲5)から,不作為による不法行為責任を負う。(イ)本件処理を是正・訂正しなかった点に関する不法行為(被告ら両名について)被告らは,本件処理について,事後的に不納欠損処理をする要件を備えているか否かを確認しないまま漫然と議会の認定に付したものであり,これにより徴税可能な案件についても徴税不能とした。(ウ)被告らの故意又は過失徴税事務は裁量を許さない羈束行為であり,これを怠った場合には原則として違法であるから,被告らが多額の滞納額につき十分な手続を経ずに漫然と本件処理により徴税不能としていたことについては,同人ら- 11 -の故意又は過失が認められる。(被告ら及び参加人らの主張)ア本件処理前後を通じた時効中断措置に関する不法行為(被告ら両名について)原告らの主張においては,本件処理についてその全体件数及び全体金額が主張されているだけであり,各案件についての納税者,税目,納期限,時効完成日及び不納欠損額が何ら示されておらず,請求原因に足りる具体的・個別的な主張がなされていない。したがって,原告らの主張はそれ自体失当というべきものであるが,不法行為の要件に即して検討してみても,以下のとおりの問題がある。(ア)被告らによる侵害行為の不存在被告Aがつくば市長の職に就いたのは平成8年11月17日であり,事務引継があったのは同月26日であったから,別紙2のとおり,①その就任時点で既に時効が完成していた案件については時効完成という所与の事実を前提として,②時効完成が間近に接近している案件については,時効を未然に防ぐことが技術的に困難であるためこれも時効完成に至ることを前提として,それぞれ会計上の不納欠損処理をせざるを得なかったものである。なお,滞納整理事務の実際に照らすと,最終催告者の検討から財産の差押登記の通知をするまで あるためこれも時効完成に至ることを前提として,それぞれ会計上の不納欠損処理をせざるを得なかったものである。なお,滞納整理事務の実際に照らすと,最終催告者の検討から財産の差押登記の通知をするまで,少なくとも62日程度を要するので,時効完成が2か月以内に切迫していた案件については,遅滞なく手続を取っても間に合わなかったと評価するのが相当であるから,これを時効完成が間近に切迫していた案件として評価したものである。 れも時効完成に至ることを前提として,それぞれ会計上の不納欠損処理をせざるを得なかったものである。なお,滞納整理事務の実際に照らすと,最終催告者の検討から財産の差押登記の通知をするまで,少なくとも62日程度を要するので,時効完成が2か月以内に切迫していた案件については,遅滞なく手続を取っても間に合わなかったと評価するのが相当であるから,これを時効完成が間近に切迫していた案件として評価したものである。また,被告Bについては,財務部長の職に就いたのは平成9年5月1日であるから,同Aと同様侵害行為は存在しない。(イ)違法性の不存在- 12 -a徴税事務を含めた市の事務遂行枠組み決定に関する裁量の存在租税の免除等租税実体法の局面においては,徴収側の裁量を観念することができないとしても,租税徴収を行う具体的な人員配置,予算編成及びそれに伴う滞納手続の現実的側面においては,他の自治体事務(民生,衛生,農林,商工,土木,消防,教育,議会及び総務等)との兼ね合いからくる自治体裁量が認められるべきである。そもそも行政事務に用いることのできる人的・物的財産は限られており,市は地方公共団体として,その事務を処理するに当たって最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない(地方自治法2条13項)。これを無視して他の行政事務を削減してでも,一律にあらゆる滞納債権の完全な徴収を図ることは,それによって得られる利益を上回る損失を発生させることとなり,地方自治法の趣旨にもとる結果となるのである。つくば市においては,議会の承認のもと,行政の合目的な判断に基づいて各部門に各人員が配置されており,税務の徴収部門には全職員1395人のうち14人が配置されている。こうした人員配置や予算配分を前提として各種の徴税事務を行っているが,そこには規 目的な判断に基づいて各部門に各人員が配置されており,税務の徴収部門には全職員1395人のうち14人が配置されている。こうした人員配置や予算配分を前提として各種の徴税事務を行っているが,そこには規模・人員に応じた徴収の限界が存在するため,あらゆる滞納債権を完全に回収しきることは不可能であり,若干消滅時効に至る債権が存在することも致し方ないことである。したがって,結果的に消滅時効に至る債権が存在したとしても,限りある人員・予算の範囲内において,必要かつ合理的な措置がとられている限りは,その徴税事務を違法と評価することはできないのである。 配分を前提として各種の徴税事務を行っているが,そこには規模・人員に応じた徴収の限界が存在するため,あらゆる滞納債権を完全に回収しきることは不可能であり,若干消滅時効に至る債権が存在することも致し方ないことである。したがって,結果的に消滅時効に至る債権が存在したとしても,限りある人員・予算の範囲内において,必要かつ合理的な措置がとられている限りは,その徴税事務を違法と評価することはできないのである。実際の徴収状況を見ても,本件で問題とされている税目(市民税(個人及び法人),固定資産税,軽自動車税及び特別土地保有税)に- 13 -ついては,別紙3「全体の概要」のとおり,いずれも,①一旦不納欠損処理されたものの時効未完成であることが判明したので,市において復活処分を行った案件,②不納欠損処理当時,実体法上も時効が完成していたもののうち,時効が完成するまでの間に,督促状を発付したうえ催告等の時効中断措置をとったため,市として滞納者に対する必要な処分をとったものといえる案件,③不納欠損処理当時,実体法上も時効が完成していたもののうち,時効が完成するまでの間に,催告ほか時効中断措置を講じたことが現在客観的な資料によって裏付けられていないものの,督促状を発付したため,市として滞納者に対する必要な処分を行ったものといえる案件,④不納欠損処理当時,実体法上も時効が完成していたもののうち,時効が完成するまでの間に,督促状を発付した事実が現在客観的な書面によって裏付けることができないものの(督促状の発付は実際にはなされているが,市町村合併後の事務統一時の混乱のために一部書類が残存しない等の事情により,書類 督促状を発付した事実が現在客観的な書面によって裏付けることができないものの(督促状の発付は実際にはなされているが,市町村合併後の事務統一時の混乱のために一部書類が残存しない等の事情により,書類上の確認ができないものにすぎない。),催告ほか時効中断措置をとったから,市として滞納者に対する必要な処分を行ったといえる案件,又は,⑤実際には督促状が発付されているが,市町村合併後の事務統一時の混乱のために一部書類が残存しない等の事情により,書類上時効中断措置の確認ができないものの,その金額が僅少であるために,不納欠損処理のやむなきに至ったことについて管理者としての法的責任が生ずる余地はないものと考えられる案件のいずれかに該当するのであり,当該徴税事務の懈怠はなく,これを違法と評価することはできない。 行ったといえる案件,又は,⑤実際には督促状が発付されているが,市町村合併後の事務統一時の混乱のために一部書類が残存しない等の事情により,書類上時効中断措置の確認ができないものの,その金額が僅少であるために,不納欠損処理のやむなきに至ったことについて管理者としての法的責任が生ずる余地はないものと考えられる案件のいずれかに該当するのであり,当該徴税事務の懈怠はなく,これを違法と評価することはできない。b少額債権への対処滞納債権を回収するために必要な費用は,別紙4「滞納整理事務費用」のとおり,1件当たり10万1062円であるところ,別紙5- 14 -「平成8年度不納欠損段階別一覧」のとおり,これを下回る滞納案件については,得られる税収よりも過分の費用が発生することになる。このように,徴収に要する費用がその効果を上回る案件については,ある程度の督促作業が行われている限り,不納欠損処理もやむを得ないというべきである。(ウ)故意又は過失被告Aは,つくば市長として同市を統轄・代表し,その事務を管理・執行する立場にあり,徴税事務に直接携わる者ではないから,当該案件につき時効完成に向けて職員に対して特段の指示をしたとか,情実に基づいた取扱いをするよう指示した等の特段の事情がない限り,必要な予算や人員を配置することを通じて徴税事務を遂行したことをもって,管理監督者としての責任は果たしたものと評価すべきである。つくば市においては,議会の承認の う指示した等の特段の事情がない限り,必要な予算や人員を配置することを通じて徴税事務を遂行したことをもって,管理監督者としての責任は果たしたものと評価すべきである。つくば市においては,議会の承認の下,徴税部門にも適正な人員・予算が配分されていたのであるから,被告Aに故意・過失はない。被告Bにおいて,時効未完成である特定案件について,特別に完成したものと扱うようにと職員に対して特段の指示をしたとか,情実に基づいた取扱いをするように指示をした等の特段の事情の認められない本件においては,財務部長としての責任が果たされているものと評価すべきであり,本件処理を含む決算を修正しなかった点について,故意や過失を認めるべきではない。イ本件処理に関する不法行為本件処理に関する一連の措置を問題とする点については,監査請求の対象とされていない新規の違法事由を主張するものであるから,本件において審理の対象とされるべきではない。 取扱いをするように指示をした等の特段の事情の認められない本件においては,財務部長としての責任が果たされているものと評価すべきであり,本件処理を含む決算を修正しなかった点について,故意や過失を認めるべきではない。イ本件処理に関する不法行為本件処理に関する一連の措置を問題とする点については,監査請求の対象とされていない新規の違法事由を主張するものであるから,本件において審理の対象とされるべきではない。また,この点を別としても,以下のとおりの問題がある。(ア)被告らによる違法な加害行為の不存在- 15 -本件処理に関する一連の行為は,侵害行為といえるような行為性を有していない。すなわち,不納欠損調整行為,不納欠損決裁行為,不納欠損を含む決算を議会の認定に付する行為及び欠損処理内容を修正しなかった行為は,いずれも不納欠損に関する会計上の行為であるが,不納欠損処理は,納税義務が消滅した場合や,租税債権の確保の見込みがなくなった場合に,既に調定された歳入を表示するために実施される措置であり,自治体の内部行為にすぎない。また,これに関する一連の事務手続も,地方自治体の会計上の内部的帳簿手続の問題であり,納税義務を消滅させたり,租税債権を放棄したりする効果を有するものではない。したがって,不納欠損処理に関する一連の行為により地 する一連の事務手続も,地方自治体の会計上の内部的帳簿手続の問題であり,納税義務を消滅させたり,租税債権を放棄したりする効果を有するものではない。したがって,不納欠損処理に関する一連の行為により地方自治体の権利が侵害されることは観念し得ないから,これについて不法行為が成立する余地はない。(イ)故意又は過失a被告Aについて前記ア(ウ)のような被告Aの立場に照らせば,徴税事務の結果報告については,一見して明らかに不合理な内容を含むものでない限り,調整決算等が提出されたものについては,監査委員の審査を経て議会の認定に付することをもって,管理者としての責任は果たされていると評価すべきである。本件においては,本件処理に当たって,一見して明らかに不合理な内容は見られなかったから,被告Aに故意・過失を認めるべきではない。b被告Bについて決算の調整や決算を議会の認定に付する行為は,財務部長の職務ではないから,この点について被告Bの故意・過失を観念する余地はな- 16 -い。また,決算の修正をしなかった点については,多数の職員を擁する組織体の管理職であるという財務部長の立場に照らし,市長である被告Aと同様に考えるべきであり,消滅時効が完成したとして提出を受けた主要事業執行結果報告書をもとに,歳入歳出決算見込み調査概要を収入役及び市長に報告することをもって,職務上の責任が果たされたものと評価すべきであり,被告Bに故意・過失を認めることはできない。 余地はな- 16 -い。また,決算の修正をしなかった点については,多数の職員を擁する組織体の管理職であるという財務部長の立場に照らし,市長である被告Aと同様に考えるべきであり,消滅時効が完成したとして提出を受けた主要事業執行結果報告書をもとに,歳入歳出決算見込み調査概要を収入役及び市長に報告することをもって,職務上の責任が果たされたものと評価すべきであり,被告Bに故意・過失を認めることはできない。(3)争点(3)(損害の有無及び額)について(原告らの主張)ア本件処理に係る税額のうち,大部分が消滅時効の完成を原因とするものであり,つくば市に1億2656万8031円の損害が発生した。被告らが本件処理案件につきそれぞれ差押手続を行っていれば,つくば市には上記損害は発生しなかった ,大部分が消滅時効の完成を原因とするものであり,つくば市に1億2656万8031円の損害が発生した。被告らが本件処理案件につきそれぞれ差押手続を行っていれば,つくば市には上記損害は発生しなかった。イ被告ら及び参加人らは,時効が完成したとして不納欠損処理されたものの中に実際には時効が中断していたものがあったとして復活処分を行ったが,これについては徴税可能であるためつくば市に損害は発生していないと主張する。しかし,納税義務者が不納欠損処理が行われたとして免責を主張したため徴税が不能となったり,また,不納欠損処理による督促等の中断期間に財産等の喪失が進行したことによって差押えが不可能になったりしたとすれば,これらは明らかにつくば市に損害を与えるものであり,不納欠損処理を復活したからといって包括的に損害賠償の余地がないとすることは誤りであり,被告らが免責されるものでもない。(被告ら及び参加人らの主張)原告らの主張は否認ないし争う。原告らは差し押さえるべきであったとす- 17 -る財産を特定して主張しておらず,結局,損害発生の事実及び不法行為との因果関係を主張していないものというほかない。また,この点を別としても,以下の各案件については,損害が発生していない。ア法的に時効が完成していない案件別紙6「時効非完成等案件一覧」のとおり,時効が完成していない案件については,つくば市は依然として滞納者に対する請求が法的に可能であるから,損害が発生したと観念する余地はない。イ責任財産(執行対象財産)がない案件別紙7「執行不能等案件一覧」のとおり,差押えの対象となる財産を有しない等の理由により,回収が不能であった案件については,もともと徴税債権としては無価値であるから,これが時効により消滅したとしても,つくば市に損害は発生しない。 おり,時効が完成していない案件については,つくば市は依然として滞納者に対する請求が法的に可能であるから,損害が発生したと観念する余地はない。イ責任財産(執行対象財産)がない案件別紙7「執行不能等案件一覧」のとおり,差押えの対象となる財産を有しない等の理由により,回収が不能であった案件については,もともと徴税債権としては無価値であるから,これが時効により消滅したとしても,つくば市に損害は発生しない。ま り,差押えの対象となる財産を有しない等の理由により,回収が不能であった案件については,もともと徴税債権としては無価値であるから,これが時効により消滅したとしても,つくば市に損害は発生しない。また,責任財産を有しない滞納者については,差押え等の措置をとったとしても,結局,回収は不能であったはずであるから,徴税事務と損害との間に因果関係はない。ウ不納欠損処理等との関係不納欠損処理自体は何らの法律的効果を有せず,租税債権の放棄等の効果を発生させるものではないから,仮に徴税可能な歳入を誤って不納欠損処理した場合であっても,いつでもこれを復活して徴収することができる。また,時効が完成した案件について不納欠損処理を行うことは,会計上当然の処理であって,当該不納欠損処理を含む決算を議会の認定に付する行為も地方自治法に定められた当然の処理経過であって,これをもって新たに損害を発生させたということはできないから,不納欠損処理を修正しなかった行為が,本件訴訟で問題とされている損害と因果関係を有しないことは明らかである。- 18 -第3当裁判所の判断 争点(1)(被告Bに対する訴えの適法性)について被告ら及び参加人らは,①被告Bがつくば市財務部長に就任した時期からして,同人が本件処理に係る市税債権につき滞納処分等を実施することは不可能であること,②決算を議会の認定に付するのは,財務部長ではなく市長の職務であることなどから,被告Bを本件における被告とすることは許されず,同人に対する訴えは不適法であると主張するが,以下のとおり,被告Bに対する訴えがそれ自体不適法であるということはできない。(1)原告らが,本件監査請求のときから一貫して,被告らによる違法事由として主張するところは,要するに,被告らが本件処理に係る市税債権について,徴税事務 それ自体不適法であるということはできない。(1)原告らが,本件監査請求のときから一貫して,被告らによる違法事由として主張するところは,要するに,被告らが本件処理に係る市税債権について,徴税事務を怠り,差押え等の時効中断措置をとらないまま消滅時効を完成させた点にあるものと解されるが,これは被告らによる市の財産(市税債権)の管理を問題とするものである。 被告らが本件処理に係る市税債権について,徴税事務 それ自体不適法であるということはできない。(1)原告らが,本件監査請求のときから一貫して,被告らによる違法事由として主張するところは,要するに,被告らが本件処理に係る市税債権について,徴税事務を怠り,差押え等の時効中断措置をとらないまま消滅時効を完成させた点にあるものと解されるが,これは被告らによる市の財産(市税債権)の管理を問題とするものである。そして,前記前提事実(4)ウ(ア)のとおり,つくば市財務部長は,滞納処分等につき専決する権限が与えられた職員であるから,市税債権の管理という財務会計上の行為を行う権限を有する職員に該当するということができるが,前記前提事実(1)イ(ア)のとおり,被告Bは,平成9年5月1日以降,このつくば市財務部長の地位にあった者である。これを前提に被告Bによる市税債権管理の可能性についてみると,後記2(2)ア(イ)(別紙8「欠損処理一覧表」)のとおり,被告Bがつくば市財務部長に就任した後においても,本件処理に係る市税債権の中に未だ消滅時効が完成していなかったものが含まれていたことが認められるから,被告Bは,本件処理に係る市税債権について管理行為をおよそなしえない立場にあったものということはできず(原告らが本件監査請求において問題としていた消滅時効の中断措置等を怠ったとされる期間については,本件監査請求に係る請求書(甲1の①,②)の記載上,本件処理前の期間に限られるものと解す- 19 -る余地もあるが,原告らは「歳入となるべき多額の税の徴収を怠ったこと」自体を問題として,対象期間を上記のようには限定せずに本件処理に係る市税債権の管理を問題としていたものと解することも可能であるから,この点を殊更に狭く解釈することは相当ではなく,少なくとも,つくば市議会が本件処理を含む決算を認定した平成9年12月1 本件処理に係る市税債権の管理を問題としていたものと解することも可能であるから,この点を殊更に狭く解釈することは相当ではなく,少なくとも,つくば市議会が本件処理を含む決算を認定した平成9年12月18日までの措置については本件において問題とされる余地がある。),市税債権の管理を行う権限を有する職員という観点から,本件訴訟において被告となりうる立場にあるものというべきである。(2)したがって,決算を議会の認定に付する行為の性質及び権限の所在等について検討するまでもなく,被告Bに対する訴えそのものが不適法となることはない。 く,少なくとも,つくば市議会が本件処理を含む決算を認定した平成9年12月18日までの措置については本件において問題とされる余地がある。),市税債権の管理を行う権限を有する職員という観点から,本件訴訟において被告となりうる立場にあるものというべきである。(2)したがって,決算を議会の認定に付する行為の性質及び権限の所在等について検討するまでもなく,被告Bに対する訴えそのものが不適法となることはない。争点(2)(不法行為の成否)について(1)不法行為の成否が問題となりうる措置の範囲についてア原告らは,被告らが,①本件処理に係る租税債権につき本件処理前後を通じて徴税事務を怠り,時効中断措置をとらずに消滅時効を完成させた点,②十分な審査を行わずに違法に本件処理を行い,その違法を是正・訂正しないままこれを議会の認定に付した点について不法行為が成立する旨主張しているが,以下のとおり,このうち,②の点については,本件において原告らがつくば市に生じたと主張する損害との関係から,不法行為の成否を問題とする余地はない。イすなわち,徴収金に係る徴収権が5年間行使されないことによって時効により消滅したときに実施される不納欠損処理(財務規則46条1項)は,既に調定された歳入が徴収し得なくなったことを表示するために行われる会計上の内部的な整理手続であり,それ自体は何らの法的効果を有するものではない。また,地方自治法233条3項に規定する議会による決算の認定は,予算執行結果の確認・検証を行うものにすぎず,不納欠損額を決- 20 -算に表示して議会の認定を受けた場合であっても,当該表示に係る不納欠損額に関する法的権利の消長 定する議会による決算の認定は,予算執行結果の確認・検証を行うものにすぎず,不納欠損額を決- 20 -算に表示して議会の認定を受けた場合であっても,当該表示に係る不納欠損額に関する法的権利の消長に何らの影響も及ぼすものではない。したがって,仮に徴収可能な歳入について誤って不納欠損処理がなされ,当該処理に係る不納欠損額を表示した決算について議会の認定がなされた場合であっても,歳入徴収者は,当該処理に係る徴収権が存在するものとして,いつでもこれを復活して徴収することができるのであり,不納欠損額を表示した決算についての議会の認定,その前提となる不納欠損処理のいずれについても,その判断の誤り自体に起因して直ちにつくば市に損害が生ずるということは想定できない。 について誤って不納欠損処理がなされ,当該処理に係る不納欠損額を表示した決算について議会の認定がなされた場合であっても,歳入徴収者は,当該処理に係る徴収権が存在するものとして,いつでもこれを復活して徴収することができるのであり,不納欠損額を表示した決算についての議会の認定,その前提となる不納欠損処理のいずれについても,その判断の誤り自体に起因して直ちにつくば市に損害が生ずるということは想定できない。結局,不納欠損処理ないしそれを前提とした議会の認定に誤りがある状態で,当該処理ないし認定に係る徴収権が消滅するに至った場合に,その徴収権の消滅を地方公共団体の損害として住民訴訟を提起するに際しては,その消滅原因自体に関する歳入徴収者の措置が問題とされるべきであり,これとは別個に,当該処理ないし認定自体に関する歳入徴収者の措置について不法行為の成否を問題とすることは失当である。本件において,原告らがつくば市に生じたと主張する損害は,要するに,本件処理に係る1億2656万8031円の市税債権が消滅時効により消滅したというものであるが,そのような損害が発生する原因は,被告らが当該市税債権の適正な管理を怠ったという点に尽きるのであり,これとは別個に,当該市税債権の徴収権の消長に何らの影響も及ぼさない本件処理ないし議会の認定に関する措置について不法行為の成否を問題とする余地はない(原告らは,本件処理につき被告Aの決済が経られていない点も問題とするようであるが,上記のとおりである本件処理の性質 本件処理ないし議会の認定に関する措置について不法行為の成否を問題とする余地はない(原告らは,本件処理につき被告Aの決済が経られていない点も問題とするようであるが,上記のとおりである本件処理の性質に照らせば,本件においては,この点についても不法行為の成否を問題とする余地はない。)。ウ以上により,本件においては,被告らによる上記市税債権の管理につい- 21 -て不法行為が成立するか否かが検討されなければならず,また,この点を検討すれば足りる。(2)時効中断措置等に関する不法行為の成否そこで,被告らによる本件処理に係る市税債権の管理の適否について検討すると,以下のとおり,市税債権の管理につき違法な点は認められず,被告らについて不法行為が成立することはない。ア(ア)本件処理に係る市税債権1327件(市民税(個人)が554件,市民税(法人)が52件,固定資産税が279件,軽自動車税が441件,特別土地保有税が1件)のうち,被告Aがつくば市長に就任した平成8年11月17日の時点において既に消滅時効が完成していた案件(以下「時効既完成案件」という。 討すると,以下のとおり,市税債権の管理につき違法な点は認められず,被告らについて不法行為が成立することはない。ア(ア)本件処理に係る市税債権1327件(市民税(個人)が554件,市民税(法人)が52件,固定資産税が279件,軽自動車税が441件,特別土地保有税が1件)のうち,被告Aがつくば市長に就任した平成8年11月17日の時点において既に消滅時効が完成していた案件(以下「時効既完成案件」という。)については,被告らにおいて,何らかの時効中断措置をとることはおよそ不可能であるから,このような案件については,被告らに不法行為が成立する余地はない(なお,被告Bがつくば市財務部長に就任したのは,同時点よりも後である同9年5月1日であるが,本件の証拠上,被告Aの市長就任日から被告Bの財務部長就任日までの間に消滅時効が完成した案件を特定することはできないから,被告両名が各職に就任した時点において確実に消滅時効が完成していた案件(被告Aが市長に就任した時点において消滅時効が完成していた案件)のみを時効既完成案件として,被告両名につき一括して検討することとする。)。また,上記1327件のう 実に消滅時効が完成していた案件(被告Aが市長に就任した時点において消滅時効が完成していた案件)のみを時効既完成案件として,被告両名につき一括して検討することとする。)。また,上記1327件のうち,つくば市議会が本件処理を含む決算を認定した同9年12月18日の時点において,未だ消滅時効が完成していなかった案件(以下「時効非完成案件」という。)については,それまでの期間に時効中断措置をとっていなかったとしても,消滅時効が完成していない以上は,つくば市に何らの損害も生じておらず,その措置を違法であるということはできないから,このような案件について,被- 22 -告らに不法行為が成立することはないというべきである。さらに,証拠(丙15,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,別紙4「滞納整理事務費用」記載のとおり,つくば市においては,督促から滞納整理,催告及び滞納処分に至るまでの滞納整理に関する一連の事務につき,1件当たり平均10万1062円の費用を要していたことが認められるところ,滞納に係る税額が上記平均費用を下回る案件(以下「少額案件」という。)については,人員及び予算に限りがあることを前提に,徴税事務又は行政事務の全体を適正かつ効率的に遂行しなければならないというつくば市における地方行政の実状(つくば市においては,全職員1395名のうち,14名が税務の徴収部門に配置されていた。 する一連の事務につき,1件当たり平均10万1062円の費用を要していたことが認められるところ,滞納に係る税額が上記平均費用を下回る案件(以下「少額案件」という。)については,人員及び予算に限りがあることを前提に,徴税事務又は行政事務の全体を適正かつ効率的に遂行しなければならないというつくば市における地方行政の実状(つくば市においては,全職員1395名のうち,14名が税務の徴収部門に配置されていた。)に照らせば,徴収に要する労力・費用を無視してでも必ず全額を徴収すべきとすることは不可能を強いるものであるから,徴税のために実施される措置として合理的と認めるに足りる程度の措置(なお,差押えについては,対象財産が存在しない案件についてはそもそも実施することが不可能であるし,対象財産が存在する案件についても,優先する担保権や租税債権等の存在により,実施しても徴 程度の措置(なお,差押えについては,対象財産が存在しない案件についてはそもそも実施することが不可能であるし,対象財産が存在する案件についても,優先する担保権や租税債権等の存在により,実施しても徴収不能に終わる場合も多いことが想定されるから,各案件の実状に応じて実施されるべきものであり,全案件について必ず実施しなければならないというわけではない。)が講じられている限りは,仮に当該案件に係る市税債権について差押え等が実施されることのないまま消滅時効が完成するに至ったとしても,徴税事務の監督者たる被告らに不法行為が成立することはないというべきである。(イ)これを本件についてみると,証拠(丙9ないし13,15,28,証人C)によれば,本件処理に係る市税債権1327件(市民税(個人)が554件,市民税(法人)が52件,固定資産税が279件,軽自動車税が441件,特別土地保有税が1件)のうち,別紙8「欠損処- 23 -理一覧表」記載のとおり,市民税(個人)のうち105件,市民税(法人)のうち9件,固定資産税のうち27件及び特別土地保有税1件の合計142件(同別紙において網掛けとなっている案件)を除く1185件(市民税(個人)のうち449件,市民税(法人)のうち43件,固定資産税のうち252件,軽自動車税441件)については,いずれも,時効既完成案件,時効非完成案件又は少額案件に該当する事実が認められる。そして,証拠(丙9ないし12,15,証人C)によれば,上記1185件のうち,少額案件にのみ該当する案件については,いずれも,督促状の発付若しくは文書,電話又は訪問による催告等の徴税に向けられた措置がとられていた事実が認められ,徴税のために実施される措置として合理的と認めるに足りる程度の措置が講じられていたものといえる上,滞納者の所在 完成案件,時効非完成案件又は少額案件に該当する事実が認められる。そして,証拠(丙9ないし12,15,証人C)によれば,上記1185件のうち,少額案件にのみ該当する案件については,いずれも,督促状の発付若しくは文書,電話又は訪問による催告等の徴税に向けられた措置がとられていた事実が認められ,徴税のために実施される措置として合理的と認めるに足りる程度の措置が講じられていたものといえる上,滞納者の所在 くは文書,電話又は訪問による催告等の徴税に向けられた措置がとられていた事実が認められ,徴税のために実施される措置として合理的と認めるに足りる程度の措置が講じられていたものといえる上,滞納者の所在が不明となったことが徴収不能に至った原因となっている案件も多いことがうかがわれる(証人C)から,結局,上記1185件全てに関して,徴税事務の監督者である被告らが違法にその管理を怠っていたということはできず,不法行為が成立することはないというべきである。イまた,本件処理に係る市税債権1327件のうち,時効既完成案件,時効非完成案件又は少額案件のいずれにも該当しない142件(市民税(個人)のうち105件,市民税(法人)のうち9件,固定資産税のうち27件及び特別土地保有税1件。別紙8において網掛けとなっている案件。)については,証拠(丙9ないし11,13ないし15,29ないし31,証人C)によれば,別紙9「個別案件一覧表」記載のとおり,督促状の発付,文書,電話又は訪問による催告,交付要求若しくは資産調査等の徴税に向けられた相応の措置が講じられたにもかかわらず,滞納者に関し,勤務先,住居又は所在の不明,生活の困窮,倒産,所得の有無の不明若しく- 24 -は死亡などの事情があったため,結果的に徴収が著しく困難な状態に陥っていたことが認められる。このように,徴税に向けられた相応の努力が払われたにもかかわらず,事案ごとの個別事情により徴収が著しく困難な状態に至っていた案件については,限りある人員及び予算の中で適正かつ効率的に徴税事務又は行政事務を遂行しなければならないというつくば市における地方行政の実状に照らせば,さらに差押え等の措置が実施されることのないまま消滅時効が完成するに至ったとしてもやむを得ないものというべきであるから,当該案件につき ければならないというつくば市における地方行政の実状に照らせば,さらに差押え等の措置が実施されることのないまま消滅時効が完成するに至ったとしてもやむを得ないものというべきであるから,当該案件につき消滅時効が完成したことをもって,直ちに徴税事務の監督者たる被告らが違法にその管理を怠っていたということはできず,この点について不法行為が成立することはないというべきである。 うべきであるから,当該案件につき ければならないというつくば市における地方行政の実状に照らせば,さらに差押え等の措置が実施されることのないまま消滅時効が完成するに至ったとしてもやむを得ないものというべきであるから,当該案件につき消滅時効が完成したことをもって,直ちに徴税事務の監督者たる被告らが違法にその管理を怠っていたということはできず,この点について不法行為が成立することはないというべきである。したがって,時効既完成案件,時効非完成案件ないし少額案件のいずれにも該当しない142件全てに関して,被告らがその管理を違法に怠っていたということはできず,不法行為が成立することはない。よって,被告らがつくば市に対して不法行為を行った事実を認めることはできないから,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求は理由がない。第4 結論 以上の次第で,原告らの請求は理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。水戸地方裁判所民事第1部裁判長裁判官志田博文- 25 -裁判官中川正充裁判官佐藤康憲
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