平成13刑(わ)3528 業務上横領被告

裁判年月日・裁判所
平成14年7月12日 東京地方裁判所
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判決文本文5,171 文字)

平成13年刑(わ)第3528号業務上横領被告事件 主文 被告人aを懲役2年に,被告人bを懲役1年6月に処する。 この裁判が確定した日から,被告人aに対し4年間,被告人bに対し3年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 【犯行に至る経緯】 1 被告人aは,公認会計士としてa公認会計士事務所を経営していたもの,被告人bは,a公認会計士事務所職員として同事務所の事務に従事していたもの,cは,d労働組合を実質的な経営母体とし,dの共済事業の電子計算機による事務処理の受託等を業とする株式会社eの代表取締役専務に平成2年10月に就任して同社の業務全般を統括していたものであり,fは,昭和62年1月に株式会社eに入社し,平成3年10月には同社総務部総務課長として,平成6年4月からは同社総務部副部長としていずれの時期も同社の金銭出納及び経理処理等を統括していたものであり,gは,株式会社eに平成3年9月に入社し,本件各犯行時には総務部経理課主任として同社の金銭出納及び経理処理等の事務を担当していたもので,被告人bとはかねてからの友人であったものであり,c,f及びgの3名は,いずれも株式会社eの現金及び金融機関に開設した同社の預金口座の預金を業務上預かり保管していたもの,hは,a公認会計士事務所の顧客であり,金融業等を営む株式会社iを実質的に経営するとともに,医療機器・機械工具等の輸出入及び販売等を目的とする株式会社jの代表取締役であったものである。 2 cは,平成2年10月に株式会社e代表取締役専務に就任した後,個人的なゴルフや海外旅行を会社資金で頻繁に繰り返したり,使途を明らかにしないで会社から現金を持ち出したりするなどし,こうした費用や使途不明金については,f及びgらが仮払金として経理処理するなどしていた。 また,株式会社eにおいては,役員らが, したり,使途を明らかにしないで会社から現金を持ち出したりするなどし,こうした費用や使途不明金については,f及びgらが仮払金として経理処理するなどしていた。 また,株式会社eにおいては,役員らが,かねてから会社資金を使って個人名義での株取引を行っていたが,平成2年ころから株価が下落して損失を出すようになると,そうした株取引の資金も仮払金として処理していた。 cは,仮払金の増大を防ぐため,平成4年ころ以降,fに対し,「おまえさんたちは,経理のプロなんだから,何とかできるだろう。」などと話して,cらの個人的用途のための資金をねん出することを指示し,fは,第三者の協力を得て架空仕入等を計上するといった方法で会社資金から裏金を作ろうと考え,平成5年2月か3月ころ,その旨gに相談した。gはこれを受け,裏金作りの具体的方法として,欠損を出している会社(以下「協力会社」という。)に架空の仕入費用を支払ったこととして現金を送金した上,そのうち協力会社等に支払う報酬を差し引いた残りを自分たちに返還させて,これをいわゆるB勘定として管理して裏金を作ることとし,公認会計士事務所職員であった被告人bに協力会社を探してくれるように依頼し,被告人bは被告人aに協力会社探しへの協力を求め,被告人aは,顧客の中から上記株式会社i及び株式会社jを経営するhを選んで協力会社となることを依頼し,hはこれに応じることとした。 こうした経緯で,株式会社eの仮払金の清算や,cら役員,f及びgの個人名義での株取引資金やcらの海外旅行費等の個人的用途の支払いに充てる目的で裏金作りが行われるようになった。 (罪となるべき事実)被告人両名は,c,f,g及びhと共謀の上,ほしいままに,上記のようなcら役員やfらの個人的な用途の支払いに充てるため,第1 平成6年12月8日ころ,東京 れるようになった。 (罪となるべき事実)被告人両名は,c,f,g及びhと共謀の上,ほしいままに,上記のようなcら役員やfらの個人的な用途の支払いに充てるため,第1 平成6年12月8日ころ,東京都新宿区kl丁目m番n号所在の株式会社o銀行k支店において,c,f及びgが業務上預かり保管中の同支店に開設された株式会社e名義の普通預金口座の預金から,東京都中央区pq丁目r番s号所在の株式会社t銀行p支店に開設された株式会社i名義の当座預金口座に1133万円を振込送金し,第2 平成7年1月11日ころ,前記o銀行k支店において,c,f及びgが業務上預かり保管中の同支店に開設された株式会社e名義の普通預金口座の預金から,前記t銀行p支店に開設された株式会社i名義の当座預金口座に1030万円を振込送金し,第3 平成7年2月16日ころ,前記o銀行k支店において,c,f及びgが業務上預かり保管中の同支店に開設された株式会社e名義の普通預金口座の預金から,前記t銀行p支店に開設された株式会社i名義の当座預金口座に1030万円を振込送金し,第4 平成8年8月15日ころ,前記o銀行k支店において,c,f及びgが業務上預かり保管中の同支店に開設された株式会社e名義の普通預金口座の預金から,同支店に開設された株式会社u名義の普通預金口座を経由して,東京都港区vw丁目x番y号所在の株式会社z銀行v支店に開設された株式会社j名義の当座預金口座に1030万円を振込送金し,もって,合計4223万円を横領した。 【証拠の標目】(省略)【法令の適用】(中略)なお,本件各犯罪行為の公訴時効について付言する。 被告人両名は,業務上占有者の身分を有しないものであるから,両名に対しては,上記のとおり,業務上横領罪の共同正犯が成立するが,単純横領罪の刑を科すること 本件各犯罪行為の公訴時効について付言する。 被告人両名は,業務上占有者の身分を有しないものであるから,両名に対しては,上記のとおり,業務上横領罪の共同正犯が成立するが,単純横領罪の刑を科することとなる。 そこで,被告人両名の各犯罪行為に関する公訴時効について,単純横領罪の刑によるとすれば,その公訴時効は5年の期間をもって完成することとなり,本件の起訴日である平成13年11月9日にはいずれの犯罪行為も公訴時効が完成していることとなるので,このような場合の公訴時効について業務上横領罪と単純横領罪のいずれの刑によるべきかが問題となるが,時効制度が時の経過により犯罪の社会的影響が減少することを中核としていることからして,公訴時効の基準は生じた社会的現象としての犯罪におくべきものと解され,刑事訴訟法252条が必要的減軽事由がある場合でもなお法定刑の最高限を基準として時効期間を定めるとしているのも,このような趣旨に基づくものであると解される。したがって,被告人両名について業務上横領罪の共同正犯が成立する以上,その公訴時効については,業務上横領罪の刑によるものと解するのが相当である。 そうすると,被告人両名に対する本件各公訴事実の公訴時効は7年の期間をもって完成するから,本件各起訴の時点においてその公訴時効はいずれも完成していないと認められる。 (量刑の理由) 1 本件は,公認会計士である被告人a,その事務所職員である被告人bが,dを実質的な経営母体としてdの共済事業の電子計算機による事務処理等の受託を業とする株式会社eの代表取締役専務c,同社総務部副部長f及び同社総務部経理課主任g並びに協力者hと共謀の上,前後4回にわたり,同社の銀行預金から合計4223万円を業務上横領したという事案である。 2① cは,判示の経緯で仮払金が増大していったこ 部長f及び同社総務部経理課主任g並びに協力者hと共謀の上,前後4回にわたり,同社の銀行預金から合計4223万円を業務上横領したという事案である。 2① cは,判示の経緯で仮払金が増大していったことから,その増大を防ぐため,個人的資金調達をfに指示した。そして,これを受けたf及びgは,会社資金を協力会社に送金し,協力会社の報酬等を差し引いた残りを自分たちに返還させるという方法で裏金を作ることとして,被告人bに協力会社探しを依頼した。この依頼を受けて,被告人両名は,hの協力を得ることとし,こうして,cら役員,f及びgの個人的な株取引資金やcらの海外旅行費等個人的用途に充てることを目的として本件各犯行が敢行されたものである。本件は,会社の役員及び社員が公認会計士らの協力を得て会社資金を私物化した利欲的で身勝手な犯行である。 ② その中で,被告人bは,友人であるgから裏金作りのための協力会社探しを依頼されるや,手数料欲しさもあって,直ちにこれに応じて顧客を有する公認会計士である被告人aに話を持ちかけ,被告人aも顧客の拡大につながることを期待してこの求めに応じ,その結果hの協力を得て本件各犯行が遂行されるに至ったものであり,各犯行の際には,被告人aがhの振り出した小切手を受け取り,これを被告人bに渡して,被告人bがgと共に銀行に赴いてその小切手を換金し,現金を分配したのである。また,被告人両名は,fらがhの経営する協力会社に送金した金額のうちから,裏金作りの都度,相当額の報酬を受け取り,被告人aにおいては合計約262万円,被告人bにおいては合計約235万円を得ているのであって,被告人両名自身も少なくない利益を得ている。 被告人両名は,自己の私利私欲も手伝って,安易に本件各犯行を遂行しているのであり,その動機に酌量の余地はない。また,公認会計 万円を得ているのであって,被告人両名自身も少なくない利益を得ている。 被告人両名は,自己の私利私欲も手伝って,安易に本件各犯行を遂行しているのであり,その動機に酌量の余地はない。また,公認会計士及び会計士事務所の職員という企業の会計処理を忠実に果たさなければならない責任を有する立場にある者が,c,f及びgとhとの仲介役となって,会社の裏金作りの準備及び各犯行に実働隊として果たした役割は大きい。 とりわけ,被告人aについては,本件当時公認会計士という公的に責任ある立場を顧みることなく本件各犯行を遂行したものであって,その非難はいっそう強く妥当するというべきである。 ③ 本件横領額は合計4223万円と極めて多額に上り,株式会社eに多大な損害を与えたもので,その結果は重大である。また,本件は用意周到に準備された計画的犯行であり,犯行の態様も巧妙である。 ④ また,本件は,dを実質的に経営母体とする会社で起きた同社役員,社員らを中心とする多額の業務上横領事件であり,一般に報道されて社会の耳目を集めたものである。被告人らの犯行は,株式会社ユー・ビー・シーのみならずd本部や同組合員らに衝撃を与えているほか,公認会計士の犯行という点においても,社会的に大きな影響を及ぼしている。 ⑤ 以上の事情に照らせば,被告人両名の刑事責任は重いというべきである。 3 しかしながら,他方,本件は,もともとcらを中心とする多額の使い込みが契機となって,c並びに株式会社eの経理を担当するf及びgが裏金作りを企図したもので,本件各犯行の主体は株式会社e側にあると認められること,被告人両名は,いずれも捜査・公判を通じ本件各犯行を素直に認めて反省の態度を示していること,被害弁償の一部として,それぞれ1000万円を支払うことなどを約して被害会社との間で裁判上の和解を成立させ 被告人両名は,いずれも捜査・公判を通じ本件各犯行を素直に認めて反省の態度を示していること,被害弁償の一部として,それぞれ1000万円を支払うことなどを約して被害会社との間で裁判上の和解を成立させ,いずれもすでにその和解金の一部を支払い,今後もこれを完済していくことを誓っていること,被告人両名はいずれも税理士資格を任意に返上したほか,被告人aは,本件を含む不正行為により公認会計士の登録を抹消されたこと,被告人両名の新しい雇用主及び妻が証人として公判廷に出廷し,それぞれの立場から被告人を監督していく旨述べていること,被告人aが道路交通法違反の罰金前科を有するほかは被告人両名には前科前歴がないことなど,被告人両名にはそれぞれ酌むべき事情も認められる。 そこで,以上の事情その他諸般の事情を総合考慮して,被告人両名に対しては,それぞれ,主文の刑を科した上で,いずれもその刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 【求刑被告人a 懲役2年,被告人b 懲役1年6月】平成14年7月12日東京地方裁判所刑事第7部裁判長裁判官小川正持裁判官浅香竜太裁判官渡邉史朗

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