主文 本件訴えのうち,以下の訴えを却下する。 (1)請求1(1)アに係る訴えのうち,別紙原告目録記載の原告番号1から20まで,73,82,97の各原告らに係る部分。 (2)請求1(1)イに係る訴え(3)請求2(1)アに係る訴えのうち,同目録記載の原告番号4の原告に係る部分。 (4)請求2(1)イに係る訴え 原告らのその余の訴えに係る請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 平成18年(行ウ)第185号,平成19年(行ウ)第90号,224号,及び平成20年(行ウ)第85号の各事件(以下「A事件」と総称する。)について(1)請求の趣旨ア原告らが被告大阪府に対し,「府立の高等専門学校,高等学校等の職員の評価・育成システムの実施に関する規則」(平成16年大阪府教育委員会規則第12号)及び「府費負担教職員の評価・育成システムの実施に関する規則」(同第13号)に基づく「評価・育成システム実施要領」第4の1に定められた自己申告票の提出義務のないことを確認する。 イ原告らが被告大阪府に対し,平成20年度以降の勤勉手当額について自己申告票を提出しないことを不利益に評価されず,「勤勉手当の成績率の取扱いに関する要領」(平成19年12月20日教委職企第1812号)第5条1項ニ号及び同3項の適用を受けない地位を有すること並びに昇級について自己申告票を提出しないことを不利益に評価されず「府立の高等 専門学校,高等学校等の職員及び府費負担教職員に係る勤務成績に応じた昇級の取扱いに関する要領」(平成18年6月12日教委職企第1243号)第5条1項ニ号及び同3項の適用を受けない地位を有することを確認する。 ウ被告大阪府は,原告らに対して,別紙「各原告の請求額明細表①」合計欄記 る要領」(平成18年6月12日教委職企第1243号)第5条1項ニ号及び同3項の適用を受けない地位を有することを確認する。 ウ被告大阪府は,原告らに対して,別紙「各原告の請求額明細表①」合計欄記載の各金員及び同金員に対する,別紙原告目録記載の原告番号1から18,21から44,48から99までについて平成20年1月29日から,同目録記載の原告番号19,20,45から47,100から105までについて平成20年5月20日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)被告大阪府の本案前の答弁上記原告らの請求の趣旨(1)ア,同イに係る訴えをいずれも却下する。 (3)被告大阪府の本案の答弁上記原告らの請求をいずれも棄却する。 平成20年(行ウ)第16号,99号の各事件(以下「B事件」と総称する。)について(1)請求の趣旨アB事件の原告ら(別紙原告目録記載の原告番号1から20まで)が被告大阪市に対し,「府費負担教職員の評価・育成システムの実施に関する規則」(平成16年大阪府教育委員会規則第13号)に基づく「評価・育成システム実施要領」第4の1に定められた自己申告票の提出義務のないことを確認する。 イ上記原告らが被告大阪市に対し,平成20年度以降の勤勉手当額について自己申告票を提出しないことを不利益に評価されず,「勤勉手当の成績率の取扱いに関する要領」(平成19年12月20日教委職企第1812号)第5条1項ニ号及び同3項の適用を受けない地位を有すること並びに 昇級について自己申告票を提出しないことを不利益に評価されず「府立の高等専門学校,高等学校等の職員及び府費負担教職員に係る勤務成績に応じた昇級の取扱いに関する要領」(平成18年6月12日教委職企第1243号)第5条1項ニ号及び同3項の適用を受けない地位を有する の高等専門学校,高等学校等の職員及び府費負担教職員に係る勤務成績に応じた昇級の取扱いに関する要領」(平成18年6月12日教委職企第1243号)第5条1項ニ号及び同3項の適用を受けない地位を有することを確認する。 ウ被告大阪市は,上記原告らに対して,別紙「各原告の請求額明細表②」合計欄記載の各金員及び同金員に対する別紙原告目録記載の原告番号1から18までについて平成20年2月26日から,同目録記載の原告番号19及び20について平成20年5月25日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)被告大阪市の本案前の答弁上記原告らの請求の趣旨(1)ア,同イに係る訴えをいずれも却下する。 (3)被告大阪市の本案の答弁上記原告らの請求をいずれも棄却する。 平成20年(行ウ)第17号,100号の各事件(以下「C事件」と総称する。)について(1)請求の趣旨C事件原告ら(別紙原告目録記載の原告番号21から47まで)が,別紙原告被告対応目録に記載する各原告欄に対応する各被告に対して,「府費負担教職員の評価・育成システムの実施に関する規則」(平成16年大阪府教育委員会規則第13号)に基づく「評価・育成システム実施要領」第4の1に定められた自己申告票の提出義務のないことを確認する。 (2)上記被告らの本案前の答弁上記原告らの訴えをいずれも却下する。 (3)上記被告らの本案の答弁上記原告らの請求をいずれも棄却する。 第2事案の概要本件は,いずれも大阪府下の公立学校の教員である原告らが,「府立の高等専門学校,高等学校等の職員の評価・育成システムの実施に関する規則」(平成16年大阪府教育委員会規則第12号),「府費負担教職員の評価・育成システムの実施に関する規則」(同第13号)に基づいて定められた「評価・育成システム実施 価・育成システムの実施に関する規則」(平成16年大阪府教育委員会規則第12号),「府費負担教職員の評価・育成システムの実施に関する規則」(同第13号)に基づいて定められた「評価・育成システム実施要領」第4の1に基づいて原告らに自己申告票の提出義務を課すことは,教育に対する不当な支配であり,原告らの教育の自由等を侵害すると主張して,大阪府ほかの被告らに対して提起した訴訟である。 このうち,A事件は,大阪府立高等学校の教員,又は大阪府内の市立学校の教員で市町村立学校職員給与負担法1条及び2条に規定する職員(以下「府費負担教職員」という。)である原告らが,被告大阪府に対して,自己申告票提出義務の不存在の確認(請求ア),自己申告票を提出しないことを昇級の際の昇級号級数及び勤勉手当の成績率の算定の際に不利益に評価されないことの地位を有することの確認(同イ),未払勤勉手当請求権ないし不法行為に基づく未払勤勉手当相当額等の支払(遅延損害金の起算日は訴えの一部変更申立書又は訴状送達の日の翌日)(同ウ)をそれぞれ求めた訴訟である。 B事件は,A事件原告らのうち,大阪市立学校の教員で府費負担教職員である者らが,被告大阪市に対して,上記自己申告票提出義務の不存在の確認(請求ア),自己申告票を提出しないことを昇級の際の昇級号級数及び勤勉手当の成績率の算定の際に不利益に評価されないことの地位を有することの確認(同イ),未払勤勉手当請求権ないし不法行為に基づく未払勤勉手当相当額等の支払(遅延損害金の起算日は訴状送達の日の翌日)(同ウ)をそれぞれ求めた訴訟である。 C事件は,A事件の原告らのうち,大阪府内の市立学校の教員(ただし,大阪市立学校の教員を除く。)で府費負担教職員である者らが,別紙原告被告対応目録記載の各原告に対応する各市に対して,上記自己申告票提出義務 は,A事件の原告らのうち,大阪府内の市立学校の教員(ただし,大阪市立学校の教員を除く。)で府費負担教職員である者らが,別紙原告被告対応目録記載の各原告に対応する各市に対して,上記自己申告票提出義務の不存 在の確認を求めた訴訟である。 前提事実(争いのない事実,顕著な事実,証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,書証番号は特記しない限り枝番を含む。)(1)当事者等ア原告らについて原告らは,いずれも大阪府下の公立学校の教諭であって,後記(2)イの自己申告票を提出していないものである。 (ア)別紙原告目録記載の原告番号48から105(以下,原告番号○というときは同目録記載の番号を指すものとする。)までの原告らは,大阪府教育委員会により任命された大阪府立高等学校の教諭である。原告a(原告番号73),原告b(同番号82)及び原告c(同番号97)は,平成20年3月末に退職した者である。 (イ)原告番号1から20までの原告らは,大阪市教育委員会により任命された大阪市立学校の教諭であり,府費負担教職員である者である。なお,d(原告番号11)は堺市立小学校教諭として採用されたが,現在,大阪市立中学校の教諭である者であり,原告e(同番号4。以下,原告a,原告b及び原告cと併せて「原告aら」という。)は平成20年3月末に退職した者である。大阪市は,地方自治法252条の19第1項の指定都市(以下「指定都市」という。)である。 (ウ)原告番号21から47までの原告らは,大阪府教育委員会により任命された市町村立学校(ただし,大阪市立学校を除く。)の教諭であり,府費負担教職員である者である。 (以上アについて,争いのない事実,弁論の全趣旨)イ教育委員会について(ア)大阪府教育委員会は,府立の高等専門学校,高等学校等の職員及び 除く。)の教諭であり,府費負担教職員である者である。 (以上アについて,争いのない事実,弁論の全趣旨)イ教育委員会について(ア)大阪府教育委員会は,府立の高等専門学校,高等学校等の職員及び府費負担教職員の任命権者であり,府立高等学校等の職員についての勤 務成績の評定を行うものである(地方公務員法(以下「地公法」という。)40条)。 (イ)別紙原告被告対応目録の各被告欄に記載の各市の教育委員会は,大阪府教育委員会の計画の下に,府費負担教職員の勤務成績の評定を行うものである(地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)46条)。 (ウ)大阪市教育委員会は,同市の府費負担教職員の任命権者であり,大阪府教育委員会の計画の下に,同市の府費負担教職員の勤務成績の評定を行うものである(地教行法46条,58条)。 ウ原告らの訴えと被告について(ア)A事件原告らは,大阪府を被告として,①自己申告票提出義務の不存在確認の訴え,②自己申告票を提出しないことを理由に,昇級の際の昇級号級数及び勤勉手当の成績率の算定の際に不利益な評価を受けない地位にあることの確認の訴え(以下「自己申告票未提出を理由に給与上不利益な評価を受けない地位の確認の訴え」という。),③未払勤勉手当等の支払請求に係る訴えを提起した。 (イ)A事件原告の一部であり,大阪市立学校職員であるB事件原告らは,大阪市を被告として,上記(ア)①から③までと同じ訴えを提起した。 (ウ)A事件原告の一部であり,府費負担教職員(大阪市立学校職員である者を除く。)であるC事件原告らは,同原告らが勤務する学校の帰属する各市を被告として,上記(ア)①と同じ訴えを提起した。 (以上ウについて,顕著な事実)(2)本件システムについてア大阪府教育委員会は,従前,「大阪府立 原告らは,同原告らが勤務する学校の帰属する各市を被告として,上記(ア)①と同じ訴えを提起した。 (以上ウについて,顕著な事実)(2)本件システムについてア大阪府教育委員会は,従前,「大阪府立高等学校等職員の勤務評定に関する規則」(昭和33年10月31日大阪府教育委員会規則第9号。乙1)及び「府費負担教職員の勤務評定に関する規則」(同日大阪府教育委 員会規則第10号。乙2。上記「大阪府立高等学校等職員の勤務評定に関する規則」と併せて「旧勤務評定規則」という。)のとおり,教職員の勤務評定について定めていたところ,平成16年4月16日,「府立の高等専門学校,高等学校等の職員の評価・育成システムの実施に関する規則」(平成16年大阪府教育委員会規則第12号。乙7。以下「府立学校職員規則」という。)及び「府費負担教職員の評価・育成システムの実施に関する規則」(平成16年大阪府教育委員会規則第13号。乙8。以下「府費負担教職員規則」といい,府立学校職員規則と併せて「本件システム実施規則」と総称する。)を定めるとともに旧勤務評定規則を廃止して,同年4月から,教職員について新しい評価・育成システム(以下「本件システム」という。)の運用を開始した。 本件システムの運用開始に当たり,大阪府教育委員会教育長は,平成16年4月16日,本件システム実施規則各12条に基づいて,本件システムの実施について必要な具体的事項として,評価・育成システム実施要領(乙9。以下「本件システム実施要領」という。)を制定し,本件システムの実施期間,手続,評価,育成(評価)者及び支援者等,並びに評価の結果の開示等について定めた。また,大阪府教育委員会は,本件システムに対する教職員の理解を深めるために本件システムの実施対象となるすべての教職員に対し後記イからカまでの内容が記 援者等,並びに評価の結果の開示等について定めた。また,大阪府教育委員会は,本件システムに対する教職員の理解を深めるために本件システムの実施対象となるすべての教職員に対し後記イからカまでの内容が記載された「教職員の評価・育成システム手引き①」(甲1,乙12)及び「教職員の評価・育成システム手引き②」(甲2,乙13)を配布した。 (以上アについて,争いのない事実)イ本件システムの概要(ア)本件システムは,府立学校職員に対しては,地公法40条1項に基づく勤務成績の評定方法を定めた制度であり,府費負担教職員に対しては,地教行法46条1項に基づく「計画」として定められた勤務成績の 評定方法である(本件システム実施規則各1条)。 本件システムの目的は,職員の意欲・資質能力の向上,教育活動等の充実及び学校の活性化に資することであり(同規則各1条),その対象は,原則として常勤の一般職に属する職員とされ(同規則各2条),その実施期間は,各年度の4月1日から翌年3月31日までとされ(同規則各3条,本件システム実施要領第3),その実施方法は,職務遂行に係る目標設定,実践,点検・評価,調整・改善の段階について,自己申告及び面談を基本として実施するものとされ(同規則各4条),職員の評価は,毎年1回定期に実施するものとされている(同規則各5条)。 (以上(ア)について,争いのない事実,乙7から9まで)(イ)本件システムの具体的な手続の流れa教職員は,5月中旬ころ,学校教育目標等の組織目標を踏まえ,各自が取り組む目標を設定して自己申告票を作成し,支援者経由で育成(評価)者に提出する(教諭との関係では,教頭が支援者に,校長が育成(評価)者に,それぞれ該当する。後記(ウ)参照。)。 b教職員は,6月中旬ころ,自己申告票を基に育成(評価)者と面談を 由で育成(評価)者に提出する(教諭との関係では,教頭が支援者に,校長が育成(評価)者に,それぞれ該当する。後記(ウ)参照。)。 b教職員は,6月中旬ころ,自己申告票を基に育成(評価)者と面談を行い,設定目標を決定する(以下「目標設定面談」という。)。 c教職員は,9月下旬ころ,目標の進ちょく状況を自己評価し,自己申告票に追記して,支援者経由で育成(評価)者に提出する。 d教職員は,翌年の1月下旬ころ,目標達成状況を自己評価し,自己申告票に追記して,支援者経由で育成(評価)者に提出し,支援者は,教職員の職務遂行状況等について育成(評価)者に意見具申を行う。 e育成(評価)者は,2月下旬ころ,教職員の職務遂行状況について,日常の観察や意見交換,自己申告票の内容等を基に業績・能力の評価及び総合評価を行い,評価・育成シートを作成する。 f育成(評価)者は,3月下旬ころ,教職員との面談において,評価 ・育成シートの記載内容をすべて開示し,評価の結果について説明をする(以下「開示面談」という。)。 g教職員は,2月から3月にかけて,評価の結果等を参考にして,活動内容の改善を検討し,次年度の目標を検討する。 h教職員は,評価の結果について苦情がある場合には,苦情の申出ができる。 i教職員は,12月下旬ころまでに学校運営の改善・充実のため,校長への提言シートを作成・提出し,校長は,上記提言シートの写しを教育委員会に提出する。なお,同シートは,校長の学校運営の状況を把握するための参考資料とされる。 (以上(イ)について,争いのない事実,甲1,乙9,12)(ウ)府立学校の校長の育成(評価)者は大阪府教育委員会教育長であり,教頭以下の職員(府立高等学校の教諭等)の育成(評価)者は校長であり,教諭等の支援者は教頭である。また,各市町村立学校の 12)(ウ)府立学校の校長の育成(評価)者は大阪府教育委員会教育長であり,教頭以下の職員(府立高等学校の教諭等)の育成(評価)者は校長であり,教諭等の支援者は教頭である。また,各市町村立学校の校長の育成(評価)者は各市町村教育委員会教育長であり,教頭以下の府費負担教職員(市町村立小学校や中学校の教諭等)の育成(評価)者は校長であり,教諭等の支援者は教頭である。(本件システム実施規則各6条,乙13)ウ自己申告票の記載内容について自己申告票には,設定目標,進ちょく状況及び目標の達成状況等を記載するものとされており,教諭の場合の書式は,別紙1のとおりであり,主な記載事項は以下のとおりである。 (ア)設定目標についてa「今年度の組織目標」として,自己の目標と関連する各学校ごとに定められている学校教育目標や学年・分掌・教科等の目標を記入する。 b「目標設定区分」欄には,職種ごとの目標設定区分を記入する。校 長と教諭の各目標設定区分とその具体的な例は以下のとおりである。 (校長)目標設定区分具体的な例学校の経営教育課程の編成,生徒指導の方針,進路指導の方針等学校組織の運営学校運営体制,危機・安全管理等人の管理・育成人事配置,人材育成と人材活用,教職員の意識改革,服務管理地域連携と渉外保護者・地域等との連携,開かれた学校作り等(教諭)目標設定区分具体的な例学ぶ力の育成教科等の指導,自立活動(学習指導)自立・自己実現生活指導,進路指導,学級経営,給食指導,児の支援(児童生童会・生徒会指導等徒指導)学校運営校務分掌,各種委員会,学年経営,学科・部経営,開かれた学校づくりc各目標設定区分ごとの目標は,「今年度の組織目標(学校教育目標や学年・分掌・教科等の目標)」を踏まえながら,1年間,重点的に取 校務分掌,各種委員会,学年経営,学科・部経営,開かれた学校づくりc各目標設定区分ごとの目標は,「今年度の組織目標(学校教育目標や学年・分掌・教科等の目標)」を踏まえながら,1年間,重点的に取り組むべきものを設定する。 d「内容・実施計画」欄には,設定した目標の内容とともに,目標を達成するために何をするのか(実施計画)を具体的に記入する。 (イ)進ちょく状況について進ちょく状況の申告時における自己評価として,「□計画以上に進んでいる□概ね計画どおり進んでいる□計画どおり進んでいない」の いずれかの□にレ印でチェックし,「進ちょく状況及び課題」欄について具体的に記入する。 (ウ)目標の達成状況について達成状況の申告時における自己評価として,「□上回っている□概ね達成している□達していない」のいずれかの□にレ印でチェックし,「達成状況」欄及び「今後の課題」欄についても具体的に記入する。 エ面談について(ア)目標設定面談は,自己申告票に記載された個人目標等について面談者と意見交換を行うことにより,教職員一人ひとりの具体的な職務の内容や仕事上の課題について相互理解を深めるとともに,1年間取り組むべき目標を確定することを目的とする。 (イ)開示面談は,評価の結果について説明を受け,面談者とともに1年間の教育活動等を振り返ることにより,今後の活動内容の改善や次年度の目標設定に活かすことを目的とする。 (ウ)上記面談においては,教職員が日ごろ,仕事を進めていく上で感じていることや校長の学校運営等で感じていることについて,率直な意見交換,話合いをするものとされている。 オ評価について育成(評価)者は,教職員の職務遂行状況の観察や意見交換,自己申告票の内容等に基づき,児童生徒・保護者・同僚職員等の意見,支援者の意見具申 見交換,話合いをするものとされている。 オ評価について育成(評価)者は,教職員の職務遂行状況の観察や意見交換,自己申告票の内容等に基づき,児童生徒・保護者・同僚職員等の意見,支援者の意見具申等を参考に評価を行うものとされ,その評価は,業績評価と能力評価及びこれらの結果に基づく総合評価とされ,その具体的内容は以下のとおりである。 (ア)業績評価a評価の対象業績評価は,設定された個人目標の達成状況を評価の対象とし,絶 対評価を行う(なお,目標達成に至る取組については,能力評価として評価する。)。 b評価の方法目標ごとの達成状況については,達成状況が設定された目標に比べて「上回っている」,「概ね達成している」,「達していない」のいずれかを判断する。目標達成状況に係る判断が教職員と育成(評価)者との間で異なる場合は,育成(評価)者がその理由を評価・育成シートの備考欄に記載する。 業績の評価は,目標ごとの達成状況の判断を基に,以下のかっこ内の基準(業績評価基準)で5段階評価を行う。 5段階評価については,A(目標を上回っている),B(概ね目標を達成している),C(目標に達していない)の3段階を基本にして,目標を大きく上回る,著しく高い業績であると判断される場合をS,目標を大きく下回り,著しく低い業績であると判断される場合をDとする。 また,すべての目標が「上回っている」と判断され,目標全体としても評価基準の「目標を大きく上回る,著しく高い業績である」と判断される場合はS,逆にすべての目標に「達していない」と判断され,目標全体としても評価基準の「目標を大きく下回り,著しく低い業績である」と判断される場合はDとし,育成(評価)者はその理由を所見欄に記載する。 (イ)能力評価a評価の対象能力評価は,日常の業務の遂行を通じ も評価基準の「目標を大きく下回り,著しく低い業績である」と判断される場合はDとし,育成(評価)者はその理由を所見欄に記載する。 (イ)能力評価a評価の対象能力評価は,日常の業務の遂行を通じて発揮された能力(態度・行動)を絶対評価し,職務全般の取組が評価の対象となる。 b評価の方法 職種に応じて設定された評価要素ごとの着眼点及び着眼点の例を参考にして,「十分発揮している」,「概ね発揮している」,「発揮していない」のいずれかを判断し,評価基準に則して,5段階評価を行う。5段階評価は,「A」,「B」,「C」の3段階を基本にして,著しく高い能力を発揮している場合は「S」,反対に著しく低い能力しか発揮していない場合は「D」とする。 能力評価の評価基準並びに上記着眼点及び着眼点の例は,別紙2「能力評価の評価基準等」記載のとおりである。 すべての要素が「十分発揮している」で「極めて高い能力が発揮されている」と判断される場合はS,すべての要素が「発揮していない」で「能力が著しく発揮されていない」と判断される場合はDとし,育成(評価)者はその理由を所見欄に記載する。 (ウ)総合評価総合評価は,業績評価と能力評価を基に以下のかっこ内の基準に則して,5段階の絶対評価を行う。5段階評価は,業績評価と能力評価を総合して,S(非常に高い評価),A(高い評価),B(概ね平均的な評価),C(低い評価),D(非常に低い評価)とされている。 総合評価については,業績評価と能力評価がともにD(S)の場合に,D(S)とし,育成(評価)者はその理由を所見欄に記載する。 (以上ウからオまでについて,争いのない事実,甲1,2,乙12,13)カ苦情の申出について(ア)開示面談において,評価結果について説明を受けた教職員は,その結果について育成(評価)者の見解と (以上ウからオまでについて,争いのない事実,甲1,2,乙12,13)カ苦情の申出について(ア)開示面談において,評価結果について説明を受けた教職員は,その結果について育成(評価)者の見解と相違があり,当事者間での話合いでは解決が見込まれない場合,苦情審査会に対して,苦情の申出をすることができる。 苦情の申出及びその取扱いは,評価結果に対する教職員と評価者との 共通認識の形成に寄与することにより,学校における信頼関係の醸成を図るとともに,評価の公正性・公平性に資することを目的とする(評価結果に対する苦情の申出及びその取扱いに関する要綱2条)。 (イ)苦情審査の手続についてa苦情の申出があった場合,苦情審査会の会長は,調査員に対し,申出事案に関する調査を命じることができる。 b調査員は,苦情の申出をした職員(以下「申出者」という。)及び評価者に対して,申出事案に関する調査を行い,申出者又は評価者は,申出事案についての内容又は評価理由を説明しなければならず,調査員は,その結果を会長に報告する。 c苦情審査会は,苦情申出書,調査員の調査及び第三者の意見書に基づき,申出事案に係る評価結果が事実に基づき,評価基準等に照らし,評価されているかどうかを審査し,会長は,審査結果を速やかに申出者及び評価者に通知する。 (以上カについて,甲1,2,乙10から13まで)(3)給与制度と自己申告票との関係についてア大阪府下教職員の給与制度とその変更について大阪府下教職員の給与制度のうち給料に係る昇給については,「職員の給与に関する条例」(昭和40年大阪府条例第35号)及び「職員の給料に関する規則」(昭和41年大阪府人事委員会規則第1号)において,勤勉手当については,「職員の期末手当,勤勉手当及び期末特別手当に関する条例」(昭和39年 40年大阪府条例第35号)及び「職員の給料に関する規則」(昭和41年大阪府人事委員会規則第1号)において,勤勉手当については,「職員の期末手当,勤勉手当及び期末特別手当に関する条例」(昭和39年大阪府条例第45号)及び「職員の期末手当,勤勉手当及び期末特別手当に関する規則」(昭和39年大阪府人事委員会規則第3号)において,それぞれ定められていたところ,平成17年度に,各教職員の勤務成績を給与により反映させることを目的とした改正がされ,いずれも平成18年3月28日に公布された(乙22,31,32,52, 53。上記各条例又は規則の改正後のものをそれぞれ「給与条例」,「給料規則」,「勤勉手当条例」及び「勤勉手当規則」という。)。 各改正の内容は,次のとおりである。 イ昇給制度について(ア)昇給制度の変更について大阪府教育委員会は,従前の給与条例及び給料規則が改正されたことに伴い,勤務成績に基づいた昇給制度を導入した。すなわち,従前は,普通昇級が年1回に1号級行われ,特別昇給として昇級時期の短縮が行われていたが,上記改正によって,普通昇級と特別昇給とを統一し,従前の1号級を4分割した上で,以下のとおり,勤務成績に基づいて昇級号級数を決定するものとした。(争いのない事実,甲3,乙25)(イ)給与条例及び給料規則の定めについてa府立学校職員及び府費負担教職員の昇級は,毎年1月1日に任命権者(大阪市立学校の職員のうち府費負担教職員については,大阪府教育委員会。)が定める期間におけるその者の勤務成績に応じて行うものとされている(給与条例5条5項,給料規則22条)。 b職員の上記昇級は,当該職員の勤務成績について,その者の職務について監督する地位にある者の証明を得て行わなければならず(給料規則23条),職員を昇級させるか否か及び昇 条5項,給料規則22条)。 b職員の上記昇級は,当該職員の勤務成績について,その者の職務について監督する地位にある者の証明を得て行わなければならず(給料規則23条),職員を昇級させるか否か及び昇級させる場合の昇級号級数は,上記任命権者が定める期間の全部を良好な成績で勤務した職員の昇級号級数を4号級とすることを標準として,給料規則で定める基準に従い決定する(給与条例5条6項)。 c職員の勤務成績に応じて決定される昇級の区分(以下「昇級区分」という。)は,上記勤務成績の証明に基づき,当該職員が以下に掲げる職員のいずれに該当するかに応じ,以下のそれぞれに対応する昇級区分に決定するものとする(給料規則24条3項)。 ①勤務成績が極めて良好である職員第1号区分②勤務成績が特に良好である職員第2号区分③勤務成績が良好である職員第3号区分④勤務成績がやや良好でない職員第4号区分⑤勤務成績が良好でない職員第5号区分d昇級号級数は,上記の昇級区分に応じて,以下に定める号級数とする(給料規則24条1項本文)。ただし,以下によることができない場合にあっては,あらかじめ人事委員会と協議して昇級号級数を決定することができる(同項ただし書)。 昇級区分第1号区分第2号区分第3号区分第4号区分第5号区分昇級の号級6号級5号級4号級2号級 数3号級2号級2号級1号級 なお,この表に定める上段の号級数は,給与条例5条7項の適用を受ける職員(55歳に達した日の属する会計年度の末日を超えて在職する職員等)以外の職員に,下段の号級数は同項の適用を受ける職員に適用する。 (ウ)昇級取扱要領の定め大阪府教育委員会は,大阪府立学校職員及び府費負担教職員について,給与条例5条5項及び給料規則24条1項の規定に基づく勤務 段の号級数は同項の適用を受ける職員に適用する。 (ウ)昇級取扱要領の定め大阪府教育委員会は,大阪府立学校職員及び府費負担教職員について,給与条例5条5項及び給料規則24条1項の規定に基づく勤務成績に応じた昇級の取扱いとして,「府立の高等専門学校,高等学校等の職員及び府費負担教職員に係る勤務成績に応じた昇級の取扱いに関する要領」(平成18年6月12日教委職企第1243号。乙23。以下「昇級取扱要領」という。)を定めた。その概要は以下のとおりである。 a勤務成績の判定期間は,昇級日(毎年1月1日)の属する年度の前年度の4月1日から翌年の3月31日までである(昇級取扱要領2条)。 b給料規則23条に規定する勤務成績の証明は,本件システムの総合評価の結果(以下「評価結果」という。)をもって行う(同要領3条)。 c給料規則24条1項ただし書に基づき人事委員会との協議により定めた昇級号級数は,以下のとおりとする(同要領4条1項)。 昇級の区分第1号区分第2号区分第3号区分第4号区分第5号区分昇級の号級5号級5号級4号級3号級昇級しない数3号級3号級2号級1号級昇級しないなお,この表に定める上段の号級数は,給与条例5条7項の適用を受ける職員(55歳に達した日の属する会計年度の末日を超えて在職する職員等)以外の職員に,下段の号級数は同項の適用を受ける職員に適用する。 d給料規則24条3項各号に掲げる職員は,本件システムの評価結果に基づき,以下のとおり決定する(同要領4条2項)。 昇級区分対象職員第1号区分勤務成績が極めて良好である職員前年度の評価結果がSであった職員第2号区分勤務成績が特に良好である職員前年度の評価結果がAであった職員第3号区分勤務成績が良好である職員前年度の評価結果がBであった職員 めて良好である職員前年度の評価結果がSであった職員第2号区分勤務成績が特に良好である職員前年度の評価結果がAであった職員第3号区分勤務成績が良好である職員前年度の評価結果がBであった職員第4号区分勤務成績がやや良好でない職員前年度の評価結果がCであった職員第5号区分勤務成績が良好でない職員前年度の評価結果がDであった職員e自己申告票を提出していない教職員の取扱いについて 自己申告票を提出しないことから前年度の評価結果のない職員(以下「自己申告票未提出者」という。)については,昇級しない(同要領5条3項本文,1項2号)。ただし,平成18年度自己申告票未提出者及び前年度の自己申告票未提出の職員のうち前々年度に自己申告票を提出した職員(初回の自己申告票未提出者)に係る昇級号級数については,3号級とする(同要領5条3項ただし書)。 (以上(イ)(ウ)について,乙23,50)ウ勤勉手当について(ア)勤勉手当の支給制度の変更大阪府教育委員会は,従前の勤勉手当条例職員及び勤勉手当規則が後記(イ)のとおり改正されたことに伴い,勤勉手当の成績率(勤勉手当算定の基礎となる職員の勤務成績による割合。以下同じ)について,勤務成績に基づいた成績率とする制度を導入した。すなわち,平成17年度が0.70月分の成績率,平成18年度が0.725月分の成績率で一律であったものを総合評価Bの者を標準(0.735月分(ただし,後記(ウ)の改正前は0.71月分))として,勤務成績に応じて成績率を決定するようにした。なお,期末手当の支給については,従前と同じである。(争いのない事実,甲3,乙25,80)(イ)勤勉手当条例及び勤勉手当規則の定めについてa勤勉手当は,6月1日及び12月1日(以下「基準日」という。)にそれぞれ在職する職員に対し 同じである。(争いのない事実,甲3,乙25,80)(イ)勤勉手当条例及び勤勉手当規則の定めについてa勤勉手当は,6月1日及び12月1日(以下「基準日」という。)にそれぞれ在職する職員に対し,任命権者(大阪市立学校の職員のうち府費負担教職員については,大阪府教育委員会。)が定める期間におけるその者の勤務成績に応じて,支給する(勤勉手当条例3条1項)。 b勤勉手当の額は,勤勉手当基礎額に,上記任命権者が人事委員会規則で定める基準に従って定める割合を乗じて得た額とする(勤勉手当 条例3条2項)。上記基準は,職員の勤務期間による割合に職員の勤務成績による割合(成績率)を乗じて得た割合とされている(勤勉手当規則8条)。 c再任用職員以外の職員の成績率は,当該職員の職務について監督する地位にある者による勤務成績の証明に基づき,当該職員が以下のいずれに該当するかに応じ,それぞれに対応する割合の範囲内において,各任命権者が定める(勤勉手当規則12条1項)。ただし,各任命権者は,以下に定める成績率によることができない場合にあっては,あらかじめ人事委員会と協議して,別段の取扱いをすることができる(同項ただし書)。 (a)勤務成績が特に優秀な職員100分の81以上100分の145以下(b)勤務成績が優秀な職員100分の76以上100分の81未満(c)勤務成績が良好な職員100分の71(d)勤務成績が良好でない職員100分の71未満(ウ)勤勉手当取扱要領について大阪府教育委員会は,勤勉手当条例3条及び勤勉手当規則12条等に基づき,「勤勉手当の成績率の取扱いに関する要領」(平成19年5月28日教委職企第1199号。乙26。なお,同要領は,平成19年12月20日教委職企第1812号により改正されており,同改正後のものを以下「勤勉 勉手当の成績率の取扱いに関する要領」(平成19年5月28日教委職企第1199号。乙26。なお,同要領は,平成19年12月20日教委職企第1812号により改正されており,同改正後のものを以下「勤勉手当取扱要領」という。乙80)を定めた。その概要は以下のとおりである。 a勤勉手当条例3条1項に規定する任命権者が定める期間は,基準日 の属する年度の前年度の4月1日から翌年3月31日まで(以下「評定期間」という。)とする(勤勉手当取扱要領2条)。 b勤勉手当規則12条1項に基づく勤務成績の証明は,評定期間における本件システムの総合評価の結果(以下「評価結果」という。)に基づいて行う(同要領3条)。 c再任用職員以外の職員の,職員の区分及び成績率は以下のとおりである(同要領4条1項)。 成績率職員の区分対象会員特定幹部職員以特定幹部職員外の職員勤務成績が特に前年度の評価結果2X+100分の73.5 2Y+100分の93.5優秀な職員がSであった職員勤務成績が優秀前年度の評価結果X+100分の73.5Y+100分の93.5な職員がAであった職員勤務成績が良好前年度の評価結果100分の73.5100分の93.5な職員がBであった職員勤務成績がやや前年度の評価結果100分の68.5100分の88.5良好でない職員がCであった職員勤務成績が良好前年度の評価結果100分の63.5100分の83.5でない職員がDであった職員なお,XとYについては,大阪府教育委員会が前年度の評価結果を勘案し,一定の範囲内で配分可能となる率を毎年度設定するとされている。 d自己申告票未提出者の勤勉手当について自己申告票未提出者(基準日以前6箇月以内の期間において懲戒処分を受けた者を除く。)の成績率は,100分の63.5(特 なる率を毎年度設定するとされている。 d自己申告票未提出者の勤勉手当について自己申告票未提出者(基準日以前6箇月以内の期間において懲戒処分を受けた者を除く。)の成績率は,100分の63.5(特定幹部 職員にあっては83.5)とする(同要領5条3項本文,1項2号)。 ただし,前年度に自己申告票を提出しなかった職員のうち前々年度に自己申告票を提出した職員に係る成績率については,100分の68. 5(特定幹部職員にあっては100分の88.5)とする(同要領5条3項ただし書)。 (以上(ウ)について,乙26,80) 争点 [本案前の争点](1)法律上の争訟性(A事件の請求ア及びイ,B事件の請求のア及びイ,C事件の請求)(2)確認の利益(同上)(3)被告適格(A事件の請求ア及びイ。ただし,原告番号1から47までの原告らに係るものに限る。)(4)請求の特定(A事件及びB事件の各請求イ)[本案の争点](5)本件システムの違法性(A,B及びC事件の各請求)(6)勤勉手当請求権の存否(A事件及びB事件の各請求ウ)(7)慰謝料請求権の存否とその額(同上) 争点に対する当事者の主張(1)争点(1)(法律上の争訟性)について[原告らの主張]ア自己申告票提出義務の不存在確認の訴え(A事件及びB事件の各請求ア並びにC事件に係る訴え)について「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)とは,当事者間の具体的な法律関係ないし権利義務の存否に関する争いであって,法律の適用により終局的に解決できる性質を有する紛争をいう。本件訴えにおいて,原告らは, 本件システム実施規則各4条及び本件システム実施要領第4の1に基づいて,各校長に対して自己申告票を提出する義務がないことの確認を求めるものであるから,本件訴えは,当事者間の具体的な法律関 は, 本件システム実施規則各4条及び本件システム実施要領第4の1に基づいて,各校長に対して自己申告票を提出する義務がないことの確認を求めるものであるから,本件訴えは,当事者間の具体的な法律関係ないし権利義務の存否に関する争いというべきである。 イ自己申告票未提出を理由に給与上不利益な評価を受けない地位の確認の訴え(A事件及びB事件の各請求イに係る訴え)について原告らは,本件訴えにおいて,昇級取扱要領や勤勉手当取扱要領の無効確認を求めているのではなく,上記各要領に定められた自己申告票未提出者に対する給与上の不利益な評価を受けない地位を有することの確認を求めているのであるから,本件訴えは,具体的事件として法律上の争訟に当たる。 [被告らの主張]ア自己申告票提出義務の不存在確認の訴えについて(ア)本件システム実施要領は,大阪府教育委員会が地公法40条1項,同法46条等の法律の規定に基づいて制定した本件システム実施規則の各委任規定に基づいて定められたものであり,同要領は,本件システム実施規則を補充し,内容的に一体をなす広義の法令といえる。そうだとすれば,原告らは,本件システム実施規則及び本件システム実施要領の施行により,職務命令等の特段の措置なく法律上当然に自己申告票の提出義務を負うというべきである。 そうすると,自己申告票提出義務の不存在の確認を求める訴えは,法令の規定が憲法その他法律に違反することを理由として当該法令の規定によって当然に生じる法律上の義務が存しないことの確認を求めるもの,ひいては,法令の規定が憲法その他の法律に違反し無効であることの確認を求めるものであるから,当事者間に具体的事件としての法律上の争訟の存在を欠く不適法な訴えである。 (イ)この点について,原告らは,被告らと原告らとの間で自己申告票の し無効であることの確認を求めるものであるから,当事者間に具体的事件としての法律上の争訟の存在を欠く不適法な訴えである。 (イ)この点について,原告らは,被告らと原告らとの間で自己申告票の提出義務の不存在の確認を求めているのであるから,当事者間の具体的な法律関係ないし権利義務の存否に関する争いが現に存在すると主張する。しかし,本件システム実施要領第4の1がすべての職員を対象として自己申告票の提出義務を定めていることからすれば,同義務の不存在の確認を求める訴えは,当該義務を定めた法規の規定自体が違法無効であることの確認を求めるものにほかならない。そして,このような場合に法律上の争訟性を認めることになれば,およそ法規の規定が届出義務等の作為義務を定めている場合には,当該作為義務の不存在の確認を求めるという請求形式を採ることにより,いかなる場合にも法律上の争訟性が認められることになり,不当である。 [被告大阪府及び被告大阪市の主張]イ自己申告票未提出を理由に給与上不利益な評価を受けない地位の確認の訴えについて上記地位の確認の訴えは,原告らが大阪府教育委員会が定めた行政規則である昇級取扱要領及び勤勉手当取扱要領における特定の規定の適用を受けない地位を有することの確認を求めるもの,ひいては,行政規則が無効であることの確認を求めるものというべきであるから,当事者間に具体的事件としての法律上の争訟の存在を欠く不適法な訴えである。 (2)争点(2)(確認の利益)について[原告らの主張]ア自己申告票提出義務の不存在確認の訴えについて(ア)確認訴訟において,確認の利益の存在が訴訟要件とされているのは,取消訴訟等,判決によって法律関係の変動が予定されている訴訟類型とは異なり,確認判決の場合は,法律関係の変動が予定されていないため,確 確認訴訟において,確認の利益の存在が訴訟要件とされているのは,取消訴訟等,判決によって法律関係の変動が予定されている訴訟類型とは異なり,確認判決の場合は,法律関係の変動が予定されていないため,確認判決をすることが紛争解決のために有効・適切かという観点から確 認訴訟を許容する場合を限定する必要があるからである。 そして,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)は,国民の権利利益の実効的な救済を図るべく改正され,同法4条に「公法上の法律関係に関する確認の訴え」が例示として加えられており,確認の利益について柔軟な解釈をすることが立法者の意思に沿うことからすれば,行政訴訟における確認の利益についても,①確認の対象が原則として現在の法律関係であること,②確認訴訟によることが適切であること,③即時確定の現実的利益(紛争の成熟性)があることが必要であり,かつ,それで足りるものと解すべきである。 (イ)本件システムにおいて,本件システム実施要領第4の1は,「職員は,自己申告票を作成し,育成(評価)者に提出するものとする」と定めていること,昇級取扱要領5条は,自己申告票を提出しない者については「評価結果のない職員」として「昇級しないものとする」とし,勤勉手当取扱要領5条は自己申告票を提出しない者については「評価結果のない職員」とし,勤勉手当の支給における成績率を最低ランクの100分の63.5としていることからすれば,大阪府教育委員会らは,原告らに対して,自己申告票の提出義務を一方的に課しており,上記①は満たす。 また,原告らが被る不利益は,処分に当たらず,差止め訴訟等の抗告訴訟を提起することはできない上に,今後,毎年,発生する給与上の不利益が生じるたびに損害賠償請求をするよりも,その根本原因たる自己申告票提出義務が存在しないことの確認判決を得 ず,差止め訴訟等の抗告訴訟を提起することはできない上に,今後,毎年,発生する給与上の不利益が生じるたびに損害賠償請求をするよりも,その根本原因たる自己申告票提出義務が存在しないことの確認判決を得ることの方が紛争の抜本的解決に資するというべきであるから,上記②も満たす。 そして,紛争の成熟性については,前記行訴法の改正の趣旨からすれば,柔軟に解すべきであり,原告の権利又は法的地位に関する不安が現に存在することで足りると解すべきである。そうすると,原告らは,自 己申告票を提出しないことによって,上記不利益を受けることは確実であり,これを回避する手段は自己申告票提出義務の不存在確認判決を得るほかないから,上記③も満たす。 したがって,自己申告票提出義務の不存在確認の訴えについては,確認の利益が認められるというべきであり,このように解することが,在外選挙権事件判決(最高裁平成17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁)の趣旨にも沿う。 (ウ)この点について,被告らは,長野勤評事件判決(最高裁昭和47年11月30日第一小法廷判決・民集26巻9号1746頁。)を引用し,原告らの訴えは不適法であると主張する。 しかし,長野勤評事件判決は,原告教員らの訴えを実質的には懲戒処分の差止めを求める法定外抗告訴訟としての予防訴訟と解した上で,訴えの利益について厳格な判断をしているところ,本件訴えは,本件システム実施要領に基づく自己申告票の提出義務がないことの確認を求めるものであり,「公法上の法律関係に関する確認の訴え」(実質的当事者訴訟)であって抗告訴訟とは異なる。また,長野勤評事件判決は,教員が行う自己観察表示の内容が校長等の管理職による評価の対象になるものではなかった事案であるのに対して,本件は,教員は校長が定める学校教育目標とのかか 告訴訟とは異なる。また,長野勤評事件判決は,教員が行う自己観察表示の内容が校長等の管理職による評価の対象になるものではなかった事案であるのに対して,本件は,教員は校長が定める学校教育目標とのかかわりで目標設定をすることが求められ,かかる設定目標の達成状況について校長から評価されるのであり,本件における自己申告票提出義務は教育行政による教育の支配そのものと評価できる。 そして,長野勤評事件判決においては,「不利益を受ける可能性」が問題になるにとどまるが,本件では,自己申告票未提出者が給与面で受ける不利益は確定的である。そうすると,本件と長野勤評事件判決は事案を異にする。 また,長野勤評事件判決における原告教員らは,自己観察表示が原告 教員らの沈黙の自由を侵害し,原告教員らの教育の自由に対する不当な支配であるとして訴えたのであるから,かかる権利利益の侵害に対し,実効的な救済を図る見地から実体審理に入り,紛争解決基準を示すことが憲法上要請されていたというべきである。しかるに,同判決は,原告教員らの請求を法定外抗告訴訟としての予防訴訟とみて,厳格な訴えの利益を設定し,却下判決をしており,憲法上の要請に反する。 そして,前記のとおり,行訴法が改正され,「確認の訴え」が明示されるとともに,差止め訴訟の訴えの要件が大幅に緩和されたことからすれば,義務不存在の確認訴訟を懲戒処分の差止めの訴えと考察した上で,これを法定外抗告訴訟としての予防訴訟と処理した長野勤評事件判決はその先例的役割を終えたと評価すべきである。 以上からすれば,本件には,長野勤評事件判決の判断は妥当しない。 イ自己申告票未提出を理由に給与上不利益な評価を受けない地位の確認の訴えについて在外選挙権事件判決は,在外邦人が衆議院の小選挙区選挙及び参議院の選挙区選挙において投票をする の判断は妥当しない。 イ自己申告票未提出を理由に給与上不利益な評価を受けない地位の確認の訴えについて在外選挙権事件判決は,在外邦人が衆議院の小選挙区選挙及び参議院の選挙区選挙において投票をすることができる地位にあることの確認を求めた訴えについて,それが有効適切な手段であると認められる限り,確認の利益を肯定すべきと判示している。このことからすれば,本件において,原告らの自己申告票未提出を理由に給与上不利益な評価を受けない地位の確認を求める訴えは,自己申告票の未提出によって受ける給与上の不利益を回避するための有効適切な手段であり,確認の利益が認められる。 [被告らの主張]ア自己申告票提出義務の不存在確認の訴えについて(ア)具体的,現実的な争訟の解決を目的とする現行訴訟制度の下においては,法令に定める義務の違反に対して将来不利益処分を受けるおそれがあるというだけで,その処分の発動を差し止めるために事前に当該義 務の存否の確定を求めることは許されず,このような訴えについては,義務違反に対する制裁として将来受けるおそれのある不利益処分の確実性及びその内容又は性質等に照らして,当該処分を受けてからこれに関する訴訟の中で事後的に義務の存否を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがあるなど,事前の救済を認めないことが著しく不相当とする特段の事情がない限り,あらかじめ上記の義務の存否の確定を求める法律上の利益は認められないと解すべきである(長野勤評事件判決参照)。 本件において,原告らは,自己申告票の提出義務の不存在の確認を求めるものであるところ,大阪府教育委員会等において,自己申告票が提出されないことを理由にその未提出者に懲戒処分,服務上の措置等の不利益な措置を行う方針は採用されていない。 また,自己申告票を提出しないことから評 るところ,大阪府教育委員会等において,自己申告票が提出されないことを理由にその未提出者に懲戒処分,服務上の措置等の不利益な措置を行う方針は採用されていない。 また,自己申告票を提出しないことから評価結果のない教職員が受ける給与上の不利益な取扱いは,本来権利として得られるべきものが得られないという意味での法律上の不利益ではない。すなわち,本件システムにおいて,評価者は,教職員の提出する自己申告票に基づいて業績評価と別途行われる能力評価とを合わせて総合評価を行い,この総合評価が職員の勤務成績の判定基準とされているところ,教職員が自己申告票を提出しない場合には,評価者において業績評価及び総合評価をすることができず,その結果として,給与上不利益な取扱いを受けるにすぎず,自己申告票未提出者に対する制裁的な意味合いはなく,このような不利益を法律上のものということはできない。これを法律上の不利益と解するとすれば,教職員は,勤務成績の評価結果の有無にかかわらず,従来の年功的な給与制度上の取扱いと同様に当然に昇級及び一定額以上の勤勉手当の支給を受ける法律上の権利があるというに等しく,これは給与構造の改革を目的とした給与条例等の改正部分を違法無効と主張するこ とにほかならず,失当である。 そして,原告らが本件システムにより受ける不利益と主張しているのは,その給与上の不利益であり,このような金銭上の不利益が事後的に回復し難い重大な損害に当たらないことは明らかであり,また,そのような不利益が継続したところで回復し難い損害に当たらないことも明らかである。 以上からすれば,自己申告票提出義務の不存在確認の訴えは,確認の利益を欠く。 (イ)この点について,原告らは,長野勤評事件判決の判断は本件に妥当しないと主張する。しかし,本件システムの評価過程は,評価 からすれば,自己申告票提出義務の不存在確認の訴えは,確認の利益を欠く。 (イ)この点について,原告らは,長野勤評事件判決の判断は本件に妥当しないと主張する。しかし,本件システムの評価過程は,評価の透明性が確保されたものであり,その設定目標も具体的で客観評価が可能な設定目標であることからすれば,自己申告票の提出義務は,長野勤評事件判決以上にこれを最大限に拡大して解釈するのでなければ,その提出者の有する世界観,人生観,教育観等の表明を命じたものと解することはできないというべきである。 また,原告らは,在外選挙権事件判決を引用して,原告らに確認の利益が認められると主張する。しかし,同判決は,選挙権が侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができない性質のものであることを重視して,その確認の利益を肯定した事案であり,長野勤評事件判決の判断枠組みと同じものと解すべきである。そして,本件において,原告らが主張する自己申告票の提出義務の履行により侵害されるとする精神的利益,あるいは,給与上の不利益は,この不利益自体認め難い上に,在外選挙権事件判決が判示する「侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができない性質のもの」に該当しないことは明らかであるから,原告らの主張は失当である。 [被告大阪府及び被告大阪市の主張] イ自己申告票未提出を理由に給与上不利益な評価を受けない地位の確認の訴えについて法令規定と一体となった特定の行政規則の規定の適用を受けない地位を有することについて,あらかじめ訴訟をもって確認を求めることは許されず,このような訴えは,事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がない限り,法律上の利益を認めることができないというべきである。 本件において,原告らが主張する給 を求めることは許されず,このような訴えは,事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がない限り,法律上の利益を認めることができないというべきである。 本件において,原告らが主張する給与上の不利益は事後的に回復が可能であり,上記特段の事情は認められないから,自己申告票未提出を理由に給与上不利益な評価を受けない地位の確認を求める利益は認められない。 (3)争点(3)(被告適格)について[原告らの主張]ア自己申告票提出義務の不存在確認の訴えについて府費負担教職員の勤務成績の評定は,大阪府教育委員会の定める計画の下に各市町村教育委員会において行われるが(地教行法46条),各市町村教育委員会は,大阪府教育委員会の「計画」の下に「勤務成績の評定」を行うことができるにとどまり,自己申告票の提出義務を具体的に定めるのは大阪府教育委員会である。このことからすれば,府費負担教職員の自己申告票提出義務の存否の確定は,大阪府教育委員会の属する地方公共団体である大阪府との間で行われるべきであり,府費負担教職員である原告番号1から47までの原告らの自己申告票提出義務の不存在確認の訴えの被告適格は,大阪府にあるというべきである。 イ自己申告票未提出を理由に給与上不利益な評価を受けない地位の確認の訴えについて大阪市の府費負担教職員との関係においても,自己申告票の提出義務は,大阪府教育委員会が制定した本件システム実施規則及び本件システム実施 要領に基づくものである。このことからすれば,昇級及び勤勉手当取扱要領の適用を受けない地位それ自体は,大阪府教育委員会の属する大阪府との間において確認する必要があるから,大阪市の府費負担教職員である原告番号1から20までの原告らが自己申告票未提出を理由に給与上不利益な評価を受けない地位の確認を求める訴え 育委員会の属する大阪府との間において確認する必要があるから,大阪市の府費負担教職員である原告番号1から20までの原告らが自己申告票未提出を理由に給与上不利益な評価を受けない地位の確認を求める訴えの被告適格は,大阪府にあるというべきである。 [被告大阪府の主張]ア自己申告票提出義務の不存在確認の訴えについて地教行法46条1項によれば,府費負担教職員の勤務評定は,大阪府教育委員会の計画の下に,市町村教育委員会が行うとされている。したがって,府費負担教職員の勤務評定の実施主体は市町村教育委員会であり,府費負担教職員である原告番号1から47までの原告らの自己申告票提出義務の不存在確認の訴えの被告適格は,各市町村にあるというべきである。 イ自己申告票未提出を理由に給与上不利益な評価を受けない地位の確認の訴えについて地教行法58条1項は,指定都市の県費負担教職員の任免,給与の決定等に関する事務は,当該指定都市の教育委員会が行うと定めており,大阪市の府費負担教職員の給与の決定等に関する事務は,大阪市教育委員会が行う。そうだとすれば,昇級及び勤勉手当取扱要領の規定を適用して上記原告らの昇給額又は勤勉手当額を決定する権限を有するのは,大阪市教育委員会であり,大阪府教育委員会にその権限はない。また,指定都市の府費負担教職員の自己申告票提出義務が生じるのは,当該指定都市の教育委員会が大阪府教育委員会の計画の下に府費負担教職員の勤務評定を実施する権限を有することにより生じるのであり,大阪府教育委員会が本件システム実施要領等を策定したことにより生じるのではない。 以上からすれば,大阪市の府費負担教職員である原告番号1から20ま での原告らの自己申告票未提出を理由に給与上不利益な評価を受けない地位の確認の訴えの被告適格は,大阪市教育委員会が属する地 い。 以上からすれば,大阪市の府費負担教職員である原告番号1から20ま での原告らの自己申告票未提出を理由に給与上不利益な評価を受けない地位の確認の訴えの被告適格は,大阪市教育委員会が属する地方公共団体である大阪市にあるというべきである。 (4)争点(4)(請求の特定)について[被告大阪府及び被告大阪市の主張]自己申告票未提出を理由に給与上不利益な評価を受けない地位の確認を求める原告らの訴えは,原告らが具体的にどのような評価の排除を求めているかが不明確であるから,請求内容の特定を欠く不適法な訴えである。 [原告らの主張]被告らの主張は争う。 (5)争点(5)(本件システムの違法性)について[原告らの主張]ア自己申告票提出義務の法的根拠がないこと(ア)本件システム実施規則各4条は,「システムは,職務遂行に係る目標設定,実践,点検・評価,調整・改善の段階について,自己申告及び面談を基本として実施する」と定めているが,一般に法律上の義務を課す形式になっておらず,教職員が同条を根拠に自己申告票を提出する法的義務を負うと解することはできない。 (イ)本件システム実施要領第4の1は,「職員は,自己申告票を作成し,育成(評価)者に提出するものとする」と定めているが,本件システム実施要領は,本件システムの実施に関する要領を定めたものにすぎず,規則による明示的な委任のない限り,教職員に新たな義務を課す定めを設けることはできない。そして,本件システム実施規則には,そのような委任の定めはない以上,本件システム実施要領を根拠として教職員に自己申告票の提出義務が課されていると解することもできない。 (ウ)この点について,被告らは,本件システム実施規則各12条が, 「この規則に定めるもののほか,システムの実施について必要な事項は,教育長 票の提出義務が課されていると解することもできない。 (ウ)この点について,被告らは,本件システム実施規則各12条が, 「この規則に定めるもののほか,システムの実施について必要な事項は,教育長が別に定める。」との委任規定を受けて,本件システム実施要領第4の1が定められたと主張する。しかし,多数の教職員に対し一律に法的義務を課すことは重大であり,自己申告票の提出義務についての定めを教育長に委任することは許されないというべきである。また,本件システム実施規則は,そのシステムの内容を規定した上で,システムの実施期間(同各3条),一次評価者の設置(同各6条2項),支援者の設置(同条3項),苦情の申出方法(同各8条)について教育長に対する個別的な委任規定を定めた上で,本件システム実施規則各12条が定められていることからすれば,同条は,本件システムの細目的事項について,教育長に委任したものと解すべきであり,自己申告票提出義務というシステムの根幹となる事項まで,委任していると解することはできず,被告らの主張は失当である。 イ憲法23条違反について小,中,高等学校の教員にも,憲法23条により,教授の自由が一定範囲において保障されると解されるところ,本件システムは,教育長から評価を受けている校長が,各学校において教育目標を定め,その教育目標の達成に向けて各教員の目標を自己申告させるという形をとっていることから,評価者である校長の指揮が各教員の具体的な教育内容にまで及び,かつ,給与額にも反映されるため,各教員の教授の自由を著しく圧迫する点において憲法23条に違反する。 ウ教育基本法(平成18年法律120号による改正前のもの。以下「旧教育基本法」という。)10条,教育基本法16条違反について(ア)憲法26条1項は,子供の学習権を保障するために 3条に違反する。 ウ教育基本法(平成18年法律120号による改正前のもの。以下「旧教育基本法」という。)10条,教育基本法16条違反について(ア)憲法26条1項は,子供の学習権を保障するために教員の教育の自由と各学校の教育自治を保障していると解され,教育基本法16条も「教育は不当な支配に服することなく」と定めており,教員の自主性, 教育の人間的主体性,真理教育の自主性,教育の専門的自律性,教育の自主的責任性,教員の協働性を法的に保障していると解される。 そして,旧教育基本法の改正の際の国会答弁からすれば,同法の改正の前後において「不当な支配」の意義・内容は異ならないと解すべきである。 (イ)以上を前提にすれば,本件システムは,以下のとおり,「不当な支配」に該当するというべきである。 a本件システムは,教育行政のトップたる教育長によって校長が評価されることを前提として,校長が定めた教育目標に従って,各教員が個人目標を立て,かつ,それを自己申告し,校長との面談という圧力の下で目標が決定され,その決定された目標を達成しているか否かの点検及び評価も自己申告し,それに対して,評価者たる校長が5段階評価をして,それがすべて給与額に直結するという制度であり,教育行政による教員の自主性を否定するものである。 b本件システムにおいては,大阪府教育委員会が校長に対し教育活動の内容を含む校長の考えを自己点検票という形で提出させ,これを基に校長の自己申告票の目標設定がされることとされている点からすれば,学校の基本的教育方針自体が大阪府教育委員会の意向によって設定されているというべきであり,行政機関が直接学校の教育方針を支配しているといえる。 c本件システムは,「目標の設定」から「開示面談」に至るすべての過程において,教員の活動を,各校長の設 よって設定されているというべきであり,行政機関が直接学校の教育方針を支配しているといえる。 c本件システムは,「目標の設定」から「開示面談」に至るすべての過程において,教員の活動を,各校長の設定した「学校教育目標」に従属させるものであることからすると,本件システムで評価されるためには,生徒の実態と懸け離れた学校教育目標に従い,生徒の実態と乖離した教育活動をしなければならず,教育実践がゆがめられる。 d教育活動は,業績評価になじまず,業績評価,能力評価及び総合評 価について明確な基準もないことからすれば,本件システムにおいても必ず不合理な評価がされ,校長等の管理職による恣意的な評価が入り込む余地が大きく,ひいては,権力をもって教員を政治的に支配する事態を発生させ,学校教育を一方的に支配することにもなる。 eこの点について,被告らは,評価結果の開示とそれに対する苦情申出の制度があることから,不当な支配には当たらないと主張する。しかし,大阪府教育委員会事務局内に設置される苦情審査委員会の構成員は,教育監等であり,第三者性は確保されていないこと,事実誤認の申立てに対する事実調査も行っていないこと,苦情申立てに対する判断の理由も示されないこと,現に苦情申立てが認められた事例はないことからすれば,苦情審査委員会は,評価の客観性,納得性,公正性等を担保するものとしては機能せず,被告らの主張は失当である。 エ憲法26条違反について子供の教育を受ける権利や学習権を尊重するためには,校長の定める学校教育目標は子供たち自身の意思や子供にとっての必要性が十分に反映されていなければならないが,本件システムにおける設定目標は,現実の子供の状態や子供にとっての必要性等を全く反映しておらず,上から設定される目標という形をとっており,子供の等しく教育を が十分に反映されていなければならないが,本件システムにおける設定目標は,現実の子供の状態や子供にとっての必要性等を全く反映しておらず,上から設定される目標という形をとっており,子供の等しく教育を受ける権利を考慮していない。加えて,本件システムにおいては,校長が定める教育目標に適合的でない子供は,まともな教育を受けられないなど,格差と差別を生む。 また,教育目標を自己申告し,その目標について評価・点検を受けるという本件システムは,教育活動における教育目標を固定化し,子供に対する柔軟な教育実践を阻害する危険性があり,本件システムは,子供の教育を受ける権利を侵害するというべきである。そして,このような子供の教育を受ける権利の侵害を防ぐためには,教員は自己申告票を提出しないことによって,子供を守るほかなく,子供の教育を受ける権利を侵害しないた めには,自己申告票を提出しないことが教員の義務とすらいえる。したがって,教員は,憲法26条を根拠として,自己申告票を提出しないことが許されるというべきであり,自己申告票の提出を義務付ける本件システムは憲法26条に違反する。 オ学校教育法37条4項違反について学校教育法37条4項は,校長の権限を「校務をつかさどり,所属職員を監督する。」と規定し,同法制定前の旧国民学校令において存在した校長と他の教員との間の権力的指揮命令関係を撤廃していることからすれば,かかる権力的指揮命令関係を定める本件システムは,学校教育法37条4項に違反する。 カ教育基本法9条(旧教育基本法6条)違反について教育基本法9条2項は,教員は,「その使命と職責の重要性にかんがみ,その身分は尊重され,待遇の適正が期せられるとともに,養成と研修の充実が図られなければならない。」と定めている。これは,教員の職責が社会的に重要である ,教員は,「その使命と職責の重要性にかんがみ,その身分は尊重され,待遇の適正が期せられるとともに,養成と研修の充実が図られなければならない。」と定めている。これは,教員の職責が社会的に重要であることから,その身分や待遇には特別な保障がされなければならないとの趣旨であり,このような教員の特別な身分保障からすれば,教員の教育活動に対する指導助言は許されるが,具体的な服務違反ではない教育活動を理由として不利益処分を課することは許されないというべきである。しかるに,本件システムは,自己申告票の提出の強制とそれをしないことを理由とする給与上の不利益を課しており,教員の上記特別の身分保障を侵害しており,本件システムは,教育基本法9条2項に違反する。 キILO・ユネスコ教員の地位に関する勧告違反について(ア)同勧告6項は,「生徒の教育および福祉に対して個人的及び共同の責任感を要求する」と規定しているところ,この学校教育における共同性は,円滑な教育を進めるに当たって不可欠なものである。しかるに,本件システムは,教員に校長の定める目標に従属する形での教育目標の 設定を強制しており,これによって当該目標に直接関係のない教育が軽視され,その分野の教育がおろそかになり,一部の教育が差別的に評価されることにより,共同性が崩壊する危険がある。したがって,本件システムは,同勧告6項に違反する。 (イ)また,同勧告63項は,「一切の視学,あるいは監督制度は,教員がその職業上の任務を果たすのを励まし,援助するように計画されるものでなければならず,教員の自由,創造性,責任感をそこなうものであってはならない。」とし,同勧告64項は,「(1)教員の仕事を直接評価することが必要な場合には,その評価は客観的でなければならず,また,その評価は教員に知らされなければな ,責任感をそこなうものであってはならない。」とし,同勧告64項は,「(1)教員の仕事を直接評価することが必要な場合には,その評価は客観的でなければならず,また,その評価は教員に知らされなければならない。(2)教員は,不当と思われる評価がなされた場合に,それに対して異議を申し立てる権利をもたなければならい」としているが,本件システムは,「教育の自由,創造性,責任感」を損なう結果をもたらすこと,評価について客観性が保証されていないこと,苦情を申し立てる方法はあるが第三者機関への申立てではなく透明性や公平さ,適正さの保証はないことからすれば,同勧告63項及び64項に違反する。 (ウ)同勧告115項は,教員の給与について,社会に対する教育の機能の重要性等から適正な待遇を要求しており,同勧告116項は,「教員は教員団体との合意によって定められた給与表に基づいて給与を支給されるものとする。」とし,同勧告124項は,「給与決定を目標としたいかなる勤務評定制度も関係教員団体との事前協議及びその承認なしに採用し,あるいは適用されてはならない」と定めている。そして,原告らが加入している労働組合は本件システムによる給与への反映はやむなく認めているが,自己申告票未提出者の昇級停止,勤勉手当削減については同意しておらず,本件システムは,同勧告115項,116項及び124項に違反する。 ク憲法19条違反について本件システムは,教員にトップダウン式の目標設定をさせ,それに従属させるという形の管理強化システムであり,教育の特質に反する。そして,このような反教育的な効果を回避しようとする教員は,自己申告票の提出に良心の呵責に責められるほどの抵抗を感じるものであり,これに対して給与の不利益をもっての強制は明らかな違法であり,本件システムは,憲法19条の 育的な効果を回避しようとする教員は,自己申告票の提出に良心の呵責に責められるほどの抵抗を感じるものであり,これに対して給与の不利益をもっての強制は明らかな違法であり,本件システムは,憲法19条の良心の自由に反する。 ケ憲法31条違反について自己申告票未提出者が受ける給与上の不利益は,懲戒処分と同一視できるほどのものであるところ,これは自己申告票未提出者に対する政治的処罰であり,懲戒処分を事務処理の形で加えるものである上,不利益の程度が過重であり,憲法31条に定める実体的デュー・プロセス・オブ・ローの原則に反する。 また,本件システムにおける給与面での不利益な取扱いは,法律上の根拠もなく,人事委員会との協議もなく一方的に定められており,憲法31条に反する。 本件システムは,大阪府教育委員会の検討委員会への諮問,それに基づく報告,報告を踏まえた試験的実施,試行実施のいずれの段階においても勤務評定と位置付けられていなかったところ,本件システムの実施開始の1か月前に勤務評定と位置付けられた。加えて,従来,自己申告票の提出は自主的なものとされていたが,本件システム実施後,その不提出は服務規律違反として給与上の不利益が課されるようになり,給与上の不利益も当初は単年度だけの効果とされていたのが翌年度以降にも影響を及ぼすようなものになった。このような本件システムの導入の経緯に照らせば,本件システムには手続上の違法があり,憲法31条に反する。 コ地公法40条1項,地教行法46条及び地公法24条等違反について (ア)教育公務員は,その職務たる教育の目標が「人格の完成を目指す」という高度に抽象的なものであり,教育活動の再帰性,不確実性及び無境界性という特徴からすれば,教育公務員の勤務成績の評定は,教育基本法や学校教育法に定める教育の目的等に資 標が「人格の完成を目指す」という高度に抽象的なものであり,教育活動の再帰性,不確実性及び無境界性という特徴からすれば,教育公務員の勤務成績の評定は,教育基本法や学校教育法に定める教育の目的等に資することが保証されたものでなければならない。しかるに,自己申告票で設定される個人目標が教育基本法等の定める教育の目的に資するか否かを客観的に判断する基準は存在しない以上,自己申告票を評価の主軸に据える本件システムにおいて,教育公務員に対する客観的な勤務評定をすることは不可能であり,本件システムは,不合理である。 また,本件システムは,教職員の資質向上を目的としているが,教職員の資質なるものが明らかでない以上,教職員としての資質向上に資するための評定を客観的に行うことはできず,不合理である。 (イ)地公法40条1項は,「職員の執務」を勤務成績の評定の対象としていることからすれば,教育公務員に対する勤務評定は,教育活動全般を対象に行わなければならない。しかるに,本件システムにおいて,教職員の評価は,自己申告票で設定していない教育活動に対してはされず,教育活動全般を評価の対象としていないこと,自己申告票未提出者は教育活動をしているにもかかわらず勤務評定をしないとされていることからすれば,本件システムは地公法40条1項ないし地教行法46条に違反する。 (ウ)地公法24条3項は,「職員の給与は,生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定めなければならない」とする。そして,人事院規則9-8第37条2項は,職員の昇級区分は,勤務成績の証明に基づき,勤務成績に応じて,AからEまでの昇級区分を定めているところ,「給実甲第326号の一部改正について(通知)」(平成18年2月1日付け。甲19)及 び「給 員の昇級区分は,勤務成績の証明に基づき,勤務成績に応じて,AからEまでの昇級区分を定めているところ,「給実甲第326号の一部改正について(通知)」(平成18年2月1日付け。甲19)及 び「給与における成績主義の推進について(通知)」(同日付け。甲20)によれば,国家公務員の昇級区分における下位(D,E)に区分される事由は,注意,指導等を受けたにもかかわらず,勤務成績が良好でないことを示す明白な事実が見られた職員及び停職処分,減給処分又は戒告処分を受けた職員であるとされている。他方,本件システムにおいて,業績評価Cは,自己申告票で設定した個人目標をやや下回る場合,Dは著しく低い能力しか発揮していない場合とされている。これらに照らせば,本件システムは,勤務成績が良好でないことを示す明白な事実がなくても,自己申告票で設定された個人目標に到達しないと判断された場合には,下位の評価になるのであり,これは,国家公務員の場合との均衡を欠き,地公法24条3項の趣旨を没却するというべきである。 また,人事院規則10-2の定め及び国家公務員との均衡からすれば,地方公務員としての教育公務員に対する勤務評定は,人事の公正な基礎の一つとするために,教職員の執務,すなわち教育活動について勤務成績を評定し,これを記録することであり,当該教育公務員に割り当てられた教育活動や責任に対する実績を教育基本法等の目的に照らして評定し,また,教育活動に関連してみられた教育公務員の性格,能力及び適性を公正に示すものでなければならないというべきである。しかるに,本件システムは,自己申告票を提出しない教育公務員については,評定できないとして勤務成績の評定を行わないとし,合理的な理由なく,国家公務員と異なる取扱いをしており,地公法24条3項の趣旨に反する。 (エ)地公法13 己申告票を提出しない教育公務員については,評定できないとして勤務成績の評定を行わないとし,合理的な理由なく,国家公務員と異なる取扱いをしており,地公法24条3項の趣旨に反する。 (エ)地公法13条は,職員に適用される基準の一つとして,平等取扱の原則を定めていることからすれば,任命権者が教職員の勤務成績を評定し,その結果に応じた措置をする場合,「人種,信条,性別,社会的身分若しくは門地」によって差別することはできない。そうすると,自己申告票を提出しない教育公務員は,人格的な確信である「信条」等に基 づいて自己申告票を提出していない以上,自己申告票未提出者を不利に扱う措置は,信条を理由とする合理的な理由のない差別であり,地公法13条に反する。 (オ)昇級取扱要領5条3項は,自己申告票未提出者について昇級しないものと定めており,自己申告票未提出者の昇級について,その勤務成績の証明によらずに決定するものであり,これについての授権は大阪府教育委員会及び同教育長にされていない。そうすると,同項は,教職員の給与等は条例で定めるとした地公法24条6項,地教行法42条及び職員の昇級に関して必要な事項は人事委員会規則で定めるとした給与条例5条11項に違反するというべきである。また,勤務成績の証明によらずして,昇級を決定するものであり,給料規則23条,給与条例5条5項,地公法40条1項に違反するというべきである。 勤勉手当取扱要領5条3項は,自己申告票未提出者の勤勉手当の成績率について,当該職員の勤務成績の証明によらずして,その成績率を定めるものであり,これについての授権は大阪府教育委員会及び同教育長にされていない。そうすると,同項は,地公法24条6項,地教行法42条,職員期末手当等条例5条11項に違反するというべきである。また,勤務成績の証明 これについての授権は大阪府教育委員会及び同教育長にされていない。そうすると,同項は,地公法24条6項,地教行法42条,職員期末手当等条例5条11項に違反するというべきである。また,勤務成績の証明によらずに勤勉手当を決定するものであり,地公法40条1項,勤勉手当条例3条1項,勤勉手当規則12条1項に違反するというべきである。 サ比例原則違反について本件システムは,自己申告票に記載されなかった分野の業績評価を拒否し,自己申告票未提出者の能力評価を勤務評定(総合評価)に反映することも拒否し,総合評価の最低区分であり,懲戒処分対象者を予定している総合評価Dと同様に取り扱っているところ,このような扱いは,自己申告票の作成提出が職務の一環であるとしても,過大な制裁ないし不利益を課 すものであり,比例原則に反するというべきである。 [被告らの主張]ア自己申告票提出義務の法的根拠について地教行法46条は,府費負担教職員の勤務成績の評定は,府教育委員会の計画の下に市町村教育委員会が行うものとし,地公法40条は,任命権者は,職員の執務について勤務成績の評定を行うと定めており,これらの規定を受けて本件システム実施規則が定められている。そして,本件システム実施規則各4条は,本件システムは,職務遂行に係る目標設定,実践,点検・評価,調整・改善の段階について,自己申告及び面談を基本として実施すると規定し,同規則各12条は,この規則に定めるもののほかシステムの実施について必要な事項は,教育長が別に定めるとし,この規定を受けて教育長は,本件システム実施要領第4の1において,職員は自己申告票を作成し,育成(評価)者に提出するものとすると定めている。したがって,職員が自己申告票を提出することは,本件システム実施規則及び本件システム実施要領に基づく法律上の の1において,職員は自己申告票を作成し,育成(評価)者に提出するものとすると定めている。したがって,職員が自己申告票を提出することは,本件システム実施規則及び本件システム実施要領に基づく法律上の義務というべきである。 イ憲法23条違反について旭川学テ事件判決(最高裁昭和51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁)は,「普通教育における教師に完全な教授の自由を認めることは,とうてい許されない」とし,「教師間における討議や親を含む第三者からの批判によって,教授の自由にもおのずから抑制が加わることは確かであり,これに期待すべきところも少なくないけれども,それによって右の自由の濫用等による弊害が効果的に防止されるという保障はなく,憲法が専ら右のような社会的自律作用による抑制のみに期待していると解すべき合理的根拠は全く存在しない」としている。そうだとすれば,教師に完全な教育の自由が認められることを前提とする原告らの主張はそれ自体失当である。 ウ教育基本法16条(旧教育基本法10条)違反について(ア)旭川学テ事件判決は,教育に対する行政権力の不当,不要な介入は排除されるべきであるとしても,許容される目的のために必要かつ合理的と認められるそれは,たとえ教育の内容及び方法に関するものであっても,不当な支配には当たらないとしている。そうすると,教育公務員に対する勤務評定制度は,地方公共団体の公務の民主化及び能率化を目的とし,教職員に対する人事行政を公正かつ適正に行うためのものであって,明らかに憲法に適合し,「不当な支配」には当たらない。むしろ,上記判決からすれば,地方公務員としての地位身分を有し,公教育に携わる府立学校職員及び府費負担教職員の教育活動にかかわる事項について地公法40条1項に基づく勤務評定の実施を除外すべき合理的 むしろ,上記判決からすれば,地方公務員としての地位身分を有し,公教育に携わる府立学校職員及び府費負担教職員の教育活動にかかわる事項について地公法40条1項に基づく勤務評定の実施を除外すべき合理的理由はない。 また,教育基本法16条1項は,旧教育基本法10条を全面的に改正し,教育が不当な支配に服することなく同法及び他の法律の定めるところにより行われるべきこと,教育行政が国と地方公共団体との役割分担・相互協力の下に公正かつ適切に行われるべきことを明記している。これは,改正後の教育基本法及び他の法律の定めるところにより国又は地方公共団体が行う教育行政が,教育に対する「不当な支配」にはなり得ないことをより明確にしたものと解すべきであり,本件システムは「不当な支配」に当たらない。 これらに加えて,本件システムにおいては,評価結果の開示とそれに対する苦情申出の制度が定められており,その構成,手続に客観性,合理性があり,評価の信頼性,納得性を確保する機能が果たされており,本件システムは不当な支配には当たらない。 (イ)この点について,原告らは,教職員の教育活動が各校長の設定した学校教育目標に従属させられており,教育がゆがめられ,これが教育に 対する不当な支配に当たると主張する。しかし,校長が個人の設定目標に関して学校教育目標との整合,統合を求めるのは,教育活動の充実・改善,学校の活性化を図るために「目標の共有化」を目指すからであり,教職員の統制と支配を目的とするものではないから,原告らの主張は失当である。 エ憲法26条違反について本件システムは,教職員が,自己申告票を提出することにより,子供たちの思いを受け止め,自らの役割や子供たちの状況を踏まえて教育活動の目標を主体的に設定し,1年間重点的にその目標の達成に向けて取り組むことを目的 は,教職員が,自己申告票を提出することにより,子供たちの思いを受け止め,自らの役割や子供たちの状況を踏まえて教育活動の目標を主体的に設定し,1年間重点的にその目標の達成に向けて取り組むことを目的としたものであり,これが子供の教育を受ける権利の侵害に当たらないことは明白であり,憲法26条に反しない。 オ学校教育法37条4項違反について本件システムは,地公法40条1項,地教行法46条に基づく勤務成績の評定制度を兼ね備えた人材育成システムとして制定されたものであり,育成(評価)者としての校長の役割も,校長自身が被育成(評価)者であることも,制度上明定されている。そして,府立学校職員及び府費負担教職員も地方公務員であり,上司の職務上の命令に従う義務があること(地公法32条)からすれば,本件システムが権力的指揮命令関係を定めたものであるとする原告らの主張は失当である。 カ教育基本法9条(旧教育基本法6条)違反について本件システムは,教育基本法9条の趣旨に基づき,教職員の意欲,能力,資質の向上,学校の活性化,教育活動等の充実を目指し,教職員のより積極的な職責の遂行を全うするために定められた制度であり,本件システムにおける自己申告制度も保護者,地域社会の願いである教職員一人ひとりの主体的,自主的な目標設定に基づいた意欲的な教育活動,資質能力の向上,職責の遂行を促すためのものであり,本件システムは,同条の趣旨に 沿うというべきである。また,教育公務員についての特例を定めた教育公務員特例法には,教育公務員に対する勤務評定制度及び自己申告制度の適用を除外したり,教育公務員の勤務評定の結果をその昇級や勤勉手当の成績率に反映させることを禁じた規定はないことからすれば,教育公務員について,一般職の地方公務員と同様に,地公法に定める勤務評定を実施し, 除外したり,教育公務員の勤務評定の結果をその昇級や勤勉手当の成績率に反映させることを禁じた規定はないことからすれば,教育公務員について,一般職の地方公務員と同様に,地公法に定める勤務評定を実施し,かつ,給与条例等の規定に基づき,その評価結果を昇級や勤勉手当の成績率に反映させることは何ら違法ではない。 キILO・ユネスコ教員の地位に関する勧告違反について同勧告は,道義的に尊重されることがあるのは別として,国内法的効力を有しないことからすれば,本件システムの違法事由にはなりえず,原告らの主張はそれ自体失当である。 ク憲法19条違反について自己申告票の記載事項は,自主的に設定する個人目標並びに進ちょく状況及び達成状況に関する自己評価であることからすれば,これを最大限に拡大解釈しても,教職員個人の世界観,人生観,教育観等の表明を命じたものといえないことは明白であり,自己申告票の提出義務が憲法19条の良心の自由を侵害することはない。 ケ憲法31条違反について(ア)自己申告票未提出者が受ける給与上の不利益は,自己申告票を提出しないために評価結果がないという事実に対し条例等の規定が適用されることから生じる当然の法的効果であることからすれば,このような不利益をもって大阪府教育委員会が行う不利益処分ないし事実上の懲戒処分とはいえない。 (イ)原告らは,本件システムにおける給与面での不利益な取扱いは法律上の根拠がなく,人事委員会との協議もなく,一方的に定められていると主張する。しかし,自己申告票未提出者に対する給与上の不利益は, 昇級取扱要領等の法的根拠に基づくものである。そして,勤務成績の証明がないために昇級区分を判定できず,その昇級号級数等を決定するために大阪府教育委員会が人事委員会と協議する必要性も法的義務もないことからすれば, の法的根拠に基づくものである。そして,勤務成績の証明がないために昇級区分を判定できず,その昇級号級数等を決定するために大阪府教育委員会が人事委員会と協議する必要性も法的義務もないことからすれば,原告らの上記主張は失当である。 (ウ)原告らは,自己申告票未提出者が受ける給与面での不利益の程度は,停職という重い懲戒処分を受けた場合以上の不利益であると主張する。 しかし,自己申告票未提出者が未提出を続けた場合に受ける取扱いは,給与条例等の法令が適用されることによって生じる法的効果である上,自己申告票未提出者が不利益を被るのは,法的に義務付けられた自己申告票の提出につきその機会を正当な理由なく自ら放棄したことによるものであることからすれば,上記取扱いは適法というべきである。 コ地公法40条1項,地教行法46条及び24条3項等違反について(ア)原告らは,本件システムが自己申告票に設定していない教育活動に対する評価をせず,教育活動全般を対象とすべき勤務成績の評定の趣旨に反すること,教育活動をしている自己申告票未提出者の勤務評定を拒否し,給与上不利益な取扱いをすることが地公法40条に違反すると主張する。 しかし,勤務評定制度をどのようなものにするかは任命権者である教育委員会の裁量であるから,原告らの上記主張は失当である。そして,原告らが主張する教職員の教育活動全般の評価なるものが,評価基準をあいまいにし,教育活動全般の評価を目指すことで実際には客観的,合理的な評価ができないままに終わるのに対して,本件システムは,目標による管理を基本にして,他者の意見を参考に自ら点検する自己評価と校長等による評価を行うことによって,教職員の資質能力の向上と教育活動の充実を図ることができる。また,本件システムは,教職員の職務全般を視野に置いた上で,1年間重点的 を参考に自ら点検する自己評価と校長等による評価を行うことによって,教職員の資質能力の向上と教育活動の充実を図ることができる。また,本件システムは,教職員の職務全般を視野に置いた上で,1年間重点的に取り組むべき目標を設定する ものであり,教職員の職務の一部のみを対象として実施するものではなく,自己申告票の設定目標以外についてもその評価の対象としている。 そして,自己申告票未提出者に対する給与上の不利益の法律上の根拠については,前記のとおりである。 以上からすれば,原告らの前記主張は失当である。 (イ)原告らは,本件システムにおける昇級区分が国家公務員の昇給区分より,下位の評価になることから,地公法24条3項に反すると主張する。しかし,原告らが主張する国家公務員の昇級区分は,現在,試行段階にある目標による管理ないし自己申告に基づく評価結果によるものではなく,これとは全く別の方法によるものであることからすれば,これらを直ちに比較することは相当でなく,原告らの主張は失当である。 (ウ)原告らは,自己申告票未提出者の勤務成績の評定をしないのは,合理的な理由なく国家公務員と異なる取扱いをするものであり,地公法24条3項に反すると主張する。しかし,両制度は異なる以上,これを比較するのは相当でない。また,教職員によって勤務成績の評定の手法が異なることは,職員全体の統一的な評価を妨げ,評価結果が全体として公正,適正なものとなるのを妨げることにも照らせば,任命権者は,自己申告票未提出者に対し,統一的に定められた本件システム以外の他の手法によって勤務成績の評定を行う法律上の義務はないというべきである。以上からすれば,自己申告票未提出者に対する本件システムの取扱いは適法である。 (エ)原告らは,自己申告票未提出者についての昇級及び勤勉手当の成績率 評定を行う法律上の義務はないというべきである。以上からすれば,自己申告票未提出者に対する本件システムの取扱いは適法である。 (エ)原告らは,自己申告票未提出者についての昇級及び勤勉手当の成績率に関する取扱いは,地公法13条に定める平等原則に反すると主張する。しかし,任命権者が正当な理由なく自己申告票を提出しなかった者に対し,統一的に定められた本件システム以外の方法で勤務評定を行う義務があるとはいえないことは前記のとおりであるから,自己申告票未 提出者に対する給与条例等の取扱いは,平等原則に反しない。 (オ)原告らは,昇級取扱要領5条3項が自己申告票未提出者の昇級についてその勤務成績の証明によらずに決定しており,違法であると主張する。しかし,職員を昇級させる場合には,「職員の勤務成績についてその者の職務について監督する地位にある者の証明」を得なければならないこと(給料規則23条)からすれば,当該職員が勤務成績の証明を得られない場合には,昇級させることができないというべきである。そうだとすれば,自己申告票未提出者は,自己申告票を提出しないために勤務成績の証明を得られず,その結果として,昇級できないにすぎず,給料規則23条に従った取扱いであり適法というべきであり,原告らの主張は失当である。 また,原告らは,昇級取扱要領5条3項と同様に,勤勉手当取扱要領5条3項が自己申告票未提出者についてその勤務成績の証明によらずに決定しており,違法であると主張する。しかし,勤勉手当の成績率については,「当該職員の職務について監督する地位にある者による勤務成績の証明」に基づくことが必要であること(勤勉手当規則12条)からすれば,当該職員が勤務成績の証明を得られない場合には,勤勉手当の成績率を算定することができず,最小の成績率にせざるをえないのであ 成績の証明」に基づくことが必要であること(勤勉手当規則12条)からすれば,当該職員が勤務成績の証明を得られない場合には,勤勉手当の成績率を算定することができず,最小の成績率にせざるをえないのであり,これは勤勉手当規則12条に基づいた措置であり,適法というべきである。なお,自己申告票未提出者に対して,成績率をゼロとすることは,期間率を含めて勤勉手当の割合をゼロとすることになり,相当でないこと,勤勉手当は精勤に対する報償として能率給としての性格を有していることから,自己申告票未提出者については,勤務成績の証明は得られないものの,100分の63.5という成績率を適用することとしたものである。したがって,原告らの主張は失当である。 サ比例原則違反について 自己申告票未提出者は,職務の一環である自己申告票の提出を正当な理由なく違法に拒否し,その結果,自らの意思で業績評価及び総合評価を受ける機会を放棄したものであること,任命権者に本件システムに基づく方法以外で勤務評定をしなければならない法律上の義務があるとは解せないことからすれば,自己申告票未提出者が被る不利益が比例原則に反するとはいえない。 (6)争点(6)(勤勉手当支給請求権の存否)について[原告らの主張]勤勉手当取扱要領5条3項及び同条1項2号は無効というべきであり,これを前提とすると,原告らに対する成績率は,自動的に同要領5条1項本文による「良好な成績で勤務したとみなして」の成績率(B評価相当の100分の68.5(改正前は100分の66)になる。そうすると,原告らは,これに基づく未払額相当(100分の68.5と100分の63.5の差額(同要領の改正前は成績率100分の66と100分の63.5との差額)の勤勉手当支給請求権を有するというべきであり,具体的には,各原告ごとに 未払額相当(100分の68.5と100分の63.5の差額(同要領の改正前は成績率100分の66と100分の63.5との差額)の勤勉手当支給請求権を有するというべきであり,具体的には,各原告ごとに別紙「各原告の請求額明細表①」及び同②の各原告に対応する「未払勤勉手当額」欄記載の各金額の未払勤勉手当請求権を有するというべきである。 仮に,原告らに勤勉手当支給請求権が認められないとしても,原告らは,被告大阪府ないし被告大阪市に対して,上記未払勤勉手当相当額を損害とする不法行為に基づく損害賠償請求権を有する。 [被告大阪府及び被告大阪市の主張]原告らの主張は争う。 原告らが主張する勤勉手当支給請求権は,勤勉手当条例,同規則及び勤勉手当取扱要領の各規定に基づく手続により,原告らの職務について監督する地位にある者による勤務成績の証明がされ,これに基づいて,原告らの任命権者が原告らに対する具体的な勤勉手当額の支給を決定することによって初 めて発生するものであり,職員が何らかの勤務をしたというだけで,法律上当然に特定の成績率によって算定された額の勤勉手当支給請求権が発生すると解することはできない。 (7)争点(7)(慰謝料請求権の存否)について[原告らの主張]被告大阪府ないし被告大阪市は,本件システムが違法であるにもかかわらず,自己申告票の提出を義務であると主張して,その提出を強要し,提出しない場合には教育活動に対する圧力や本件システムによる昇級停止,勤勉手当減額という一生にわたる不利益を加えており,これらの不法行為により,原告らは,日々精神的苦痛を受けているところ,これらの苦痛を慰謝するためには,各原告に対し,少なくとも10万円の慰謝料が支払われるべきである。 [被告大阪府及び被告大阪市の主張]原告らの主張は争う。 本件システムは,適法で 受けているところ,これらの苦痛を慰謝するためには,各原告に対し,少なくとも10万円の慰謝料が支払われるべきである。 [被告大阪府及び被告大阪市の主張]原告らの主張は争う。 本件システムは,適法であり,原告らは,正当な理由なく自己申告票の提出を拒否していることからすれば,原告らが主張する慰謝料請求権には何ら法的根拠がない。 第3争点に対する判断 自己申告票提出義務の不存在確認の訴えに係る本案前の争点について(1)法律上の争訟性及び確認の利益の有無についてアA事件及びB事件の各請求ア並びにC事件に係る訴えは,原告らが被告らに対して,自己申告票の提出義務がないことの確認を求める訴えであるところ,これらの訴えは,「公法上の法律関係に関する確認の訴え」(行訴法4条後段)に当たる。 確認の訴えは,確認の対象となり得るものが形式的には無限定である上,判決には既判力が認められるのみであるから,紛争について,権利の確認 という解決手段が有効適切に機能するかという実効性及び解決を必要とする紛争が現実に存在するかという現実的必要性の観点から,確認の利益の存在が必要であると解すべきである。そして,確認の利益を必要とする趣旨がこのようなものであることからすれば,確認の利益があるといえるためには,原告の権利又は法的地位に危険,不安が現に存し,その危険,不安を除去するために確認の訴えが必要かつ適切な手段といえることが必要であると解すべきである。 もっとも,公法上の法律関係の確認の訴えは,機能的には,後に予想される不利益処分等の予防的不作為訴訟の性質を有している場合もあり,そうした場合には,当該不利益処分等がされるのを待ってその適否を争わせることが合目的的であり,個人の権利救済にとってもそれで支障がないこともあり得る。また,一定の不利益処分の予防に いる場合もあり,そうした場合には,当該不利益処分等がされるのを待ってその適否を争わせることが合目的的であり,個人の権利救済にとってもそれで支障がないこともあり得る。また,一定の不利益処分の予防については,処分の差止めの訴えが法定され,かかる訴えが認められるためには,一定の処分等がされることにより重大な損害を生ずるおそれがあることが必要とされており(行訴法37条の4第1項),公法上の法律関係の確認の訴えが将来の一定の処分の差止めの訴えと実質的に同視できるような場合には,差止め訴訟において「重大な損害」が要件とされていることとの均衡を図る必要もある。 そこで,公法上の法律関係の確認の訴えにおいて,確認の利益が認められるためには,行政の活動,作用等により,原告の有する権利又は法的地位に対する危険,不安が現に存し,これを行政過程がより進行した後の時点で事後的に争うより,現在,確認の訴えを認めることが当事者間の紛争の抜本的な解決に資し,有効適切といえることを要するものと解すべきである。 イ以上を前提に,原告らに自己申告票提出義務の不存在の確認を求める利益があるか否かを検討する。 (ア)地公法40条1項は,「任命権者は,職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い,その評定の結果に応じた措置を講じなければならない。」とし,地教行法46条は,「県費負担教職員の勤務成績の評定は,地方公務員法第40条第1項の規定にかかわらず,都道府県委員会の計画の下に,市町村委員会が行うものとする。」と定める。そして,地教行法14条1項は,「教育委員会は,法令又は条例に違反しない限りにおいて,その権限に属する事務に関し,教育委員会規則を制定することができる」とし,これを受けて定められた本件システム実施規則各4条は,「システムは,職務遂行に係る目標設定 又は条例に違反しない限りにおいて,その権限に属する事務に関し,教育委員会規則を制定することができる」とし,これを受けて定められた本件システム実施規則各4条は,「システムは,職務遂行に係る目標設定,実践,点検・評価,調整・改善の段階について,自己申告及び面談を基本として実施する」とし,同規則各6条は,小学校,中学校及び高等学校の教諭の育成(評価)者は,校長とすると定めており,これらの規定によれば,小学校,中学校及び高等学校の各教諭は,各所属学校の校長に対して,自己申告の義務及び面談に応じる義務があると解することができる。そして,本件システム実施規則各12条は,「この規則に定めるもののほか,システムの実施について必要な事項は,府教育長が別に定める。」とし,これを受けて定められた本件システム実施要領第4の1は,上記自己申告義務の細目的事項として,「職員は,自己申告票を作成し,育成(評価)者に提出するものとする。」と定めており,このような定めに照らせば,小学校,中学校及び高等学校の教諭である原告らは,各所属学校の校長に対して,自己申告票を提出することが法的に義務付けられており,原告らが主張する自己申告票の提出義務は,現在の法律関係に関する具体的な義務というべきである。そして,本件システムにおいて,教職員は,自己申告票の作成の際,校長が提示する学校教育目標等に沿った目標を設定することが求められ,校長によってその設定目標とその達成状況の評価(業績評価)がされるものであるところ,原告らの主張に よれば,本件システムは,このような目標設定及びその評価を通して校長の意向を教育内容にまで及ぼしており,教育を不当に支配し,原告らの教育の自由等の憲法上の権利等を侵害する,というのであって,このような原告らの主張を前提とすれば,原告らは,本件システ 価を通して校長の意向を教育内容にまで及ぼしており,教育を不当に支配し,原告らの教育の自由等の憲法上の権利等を侵害する,というのであって,このような原告らの主張を前提とすれば,原告らは,本件システムによって,その具体的な権利が侵害されている状態にあるといえ,他方,被告らは,かかる権利侵害の有無を争っているのであるから,原告らの法的地位に対する不安ないし危険は現に存在しているものというべきである。 (イ)そして,前記(前提事実(3)イ)のとおり,職員の昇級は,毎年1月1日に,任命権者(大阪市立学校の職員のうち府費負担教職員については,大阪府教育委員会)が定める期間におけるその者の勤務成績に応じて行われるところ(給与条例5条5項),大阪府教育委員会は,人事委員会と協議の上,教職員の昇級号級数を本件システムの評価結果と連動させ,前年度の評価結果がSであった職員は,勤務成績が極めて良好である職員として5号級の昇級,前年度の評価結果がDであった職員は,勤務成績が良好でない職員として昇級しないなどの取扱いを定め,自己申告票未提出者については原則として,評価結果がDであった職員と同様に昇級しないものと取り扱うことにしている。また,前記(前提事実(3)ウ)のとおり,職員の勤勉手当は,毎年6月1日及び12月1日にそれぞれ在職する職員に対し,任命権者(大阪市立学校の職員のうち府費負担教職員については,大阪府教育委員会)が定める期間におけるその者の勤務成績に応じて,支給されるところ,大阪府教育委員会は,教職員の勤勉手当の成績率を本件システムの評価結果と連動させ,前年度の評価結果がSであった職員は,成績が特に優秀な職員として,2X+100分の73.5の成績率(ただし,上記Xについては,大阪府教育委員会教育長が前年度の評価結果等を勘案し,一定の範囲内で配 ,前年度の評価結果がSであった職員は,成績が特に優秀な職員として,2X+100分の73.5の成績率(ただし,上記Xについては,大阪府教育委員会教育長が前年度の評価結果等を勘案し,一定の範囲内で配分可能とする率を毎年度設定する。),前年度の評価結果がDであった職員は, 勤務成績が良好でない職員として,100分の63.5の成績率とする取扱いを定め,自己申告票未提出者については,原則として,評価結果がDであった職員と同様に100分の63.5の成績率を適用するものと取り扱うことにしている。 このような本件システムの評価結果と昇級号級数及び勤勉手当の成績率との関係に照らせば,自己申告票未提出者は,自己申告票の提出の有無とは関係なく評価される能力評価の結果にかかわらず,自己申告票の未提出を継続する限り,一切昇級せず,勤勉手当の成績率も勤務成績が良好でない職員と同等の割合になるという給与上の不利益を現に受けているというべきであり,このような給与上の不利益は具体的なものといえる上,このような昇級しないとの取扱いは昇級日前1年間に懲戒処分としての停職処分を受けた者と同じであり(昇級取扱要領4条3項参照),その不利益の程度も小さくないものといえる。そして,このような取扱いは,自己申告票未提出者は,自己申告票の提出義務があるにもかかわらず,それに違反しており,これが服務規律違反に当たると考えられているからであること(乙49)に照らせば,原告らが自己申告票を提出しないことによって被る上記給与上の不利益は,自己申告票を提出する義務があるにもかかわらず,それを提出しないことに起因するものといえる。そうすると,仮に,原告らが主張するとおり,本件システムが違法であり,原告らに自己申告票の提出義務を課す法令上の根拠が認められない結果となれば,原告らに服務規 提出しないことに起因するものといえる。そうすると,仮に,原告らが主張するとおり,本件システムが違法であり,原告らに自己申告票の提出義務を課す法令上の根拠が認められない結果となれば,原告らに服務規律違反があると認めることはできず,これを前提とする上記給与上の不利益な取扱いも許されないものと解することができるのであるから,原告らが上記給与上の不利益な取扱いを除去するために,自己申告票の提出義務がないことの確認を求めることは有効適切な訴えといえる。 確かに,原告らの上記給与上の不利益を回復するためには,未払給料 ないし未払勤勉手当相当額についての給付請求をすることも考えられないではない(A事件及びB事件の各請求ウが正しくこれに当たる。)。 しかしながら,上記給与上の不利益は,原告らが自己申告票の未提出を継続する限り,昇級については年1回,勤勉手当については年2回生じるものであり,このような不利益が生じた都度,原告らが上記給付請求をしなければならないとすれば,迂遠かつ煩瑣な手続を強いられることとなる。他方,このような場合の紛争の争点は,自己申告票の提出義務の存否ないし本件システムが違法か否かでありその争点は明確といえる上,さらに行政過程がより進行した後の時点で事後的に争うことを有効適切とするような他の事情もうかがわれない(むしろ,本件においては,後に何らかの行政過程が進行することは予定されていない。)ことをも併せて考えれば,本件において,自己申告票の提出義務の存否の確認の訴えは,原告らと被告らとの紛争の抜本的な解決に資し,有効適切なものというべきである。 (ウ)以上からすれば,原告らは,自己申告票の提出義務を法令上義務付けられており,これによって原告の現に不安定な地位及び給与上の不利益な地位を除去するためには,現時点において確認の訴 べきである。 (ウ)以上からすれば,原告らは,自己申告票の提出義務を法令上義務付けられており,これによって原告の現に不安定な地位及び給与上の不利益な地位を除去するためには,現時点において確認の訴えを認めることが,紛争の抜本的な解決に資し,有効適切といえる。したがって,原告らの被告らに対する自己申告票提出義務の不存在確認の訴えについて,確認の利益が認められるものと解するのが相当である。 ウこの点について,被告らは,①自己申告票を提出しないことによって,原告らが被る給与上の不利益なるものは,自己申告票を提出しないため,任命権者による成績の証明ができないことの結果であり,自己申告票の提出義務の存否とは関係がないこと,②法令に定める義務の違反に対しては,将来不利益処分を受けるおそれがあるというだけでは,事前に当該義務の存否の確定を求めることは許されず,当該処分を受けてからこれに関する 訴訟において事後的に義務の存否を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがあるなど,事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がない限り,あらかじめ上記の義務の存否の確定を求める法律上の利益を認めることはできないところ(最高裁昭和47年11月30日第一小法廷判決・民集26巻9号1746頁(長野勤評事件判決),最高裁平成元年7月4日第三小法廷判決・判例時報1336号86頁),本件には上記特段の事情が認められないこと,以上の①及び②を理由として,自己申告票提出義務の不存在確認の訴えについて,確認の利益は認められないと主張する。 (ア)まず,上記①について検討するに,上記イ(イ)のとおり,自己申告票未提出者は,自己申告票の提出とは無関係に評価される能力評価の結果にかかわらず,勤務成績が良好でない職員と同様の総合評価Dとして取り扱われ,一切 について検討するに,上記イ(イ)のとおり,自己申告票未提出者は,自己申告票の提出とは無関係に評価される能力評価の結果にかかわらず,勤務成績が良好でない職員と同様の総合評価Dとして取り扱われ,一切昇級はせず,勤勉手当の成績率が100分の63.5として取り扱われるところ,このような給与上の不利益な取扱いがされるのは,上記イ(イ)のとおり,自己申告票未提出者が自己申告票の提出義務に違反しており,これが服務規律違反に当たると考えられているからであり,単に,勤務成績の証明がないことの結果ということはできず,被告らの上記①の主張は採用できない。 (イ)次に,上記②について検討するに,i長野勤評事件判決は,教員らの自己観察表示義務の不存在確認請求を実質的には懲戒処分等の差止めを求めるものであり,予防的な無名抗告訴訟と解した上で,それが許容される要件を示した事案と解するのが相当であるところ,本件は,当事者訴訟としての公法上の法律関係に関する確認の訴えであり,その訴訟類型を異にすること,ii長野勤評事件判決においては,原告(上告人)の訴えを実質的には将来の不利益処分の差止めを求める訴えと理解することが相当な事案であったのに対して,本件の原告らは,現に法令上課さ れている自己申告票提出義務自体から生じる法的地位の不安並びに現在及び将来にわたって生じる給与上の不利益をそれぞれ除去するために自己申告票提出義務の不存在確認を求めているのであり,本件は,長野勤評事件判決とは事案を異にするといえることからすれば,長野勤評事件判決の射程は本件には及ばないと解するのが相当である。 なお,平成16年法律第84号により改正された行訴法(以下「改正行訴法」という。)において,行政庁が一定の処分をすることの差止めを求める差止めの訴えや行政庁に一定の処分を義務付けるこ が相当である。 なお,平成16年法律第84号により改正された行訴法(以下「改正行訴法」という。)において,行政庁が一定の処分をすることの差止めを求める差止めの訴えや行政庁に一定の処分を義務付けることを求める義務付けの訴えが法定抗告訴訟として定められるとともに,国民の権利利益の実効的救済を図る上で,従来ともすれば積極的に利用されずにきた確認訴訟の活用が有効であることを示すために,確認的にではあるが,行訴法4条に「確認の訴え」という文言が追加挿入されている。そして,将来の不利益処分が想定されない本件のような場合において,事案に即して,確認の利益の存否を吟味した上で,確認の訴えという救済手段を認めることは,改正行訴法の趣旨に沿ったものということができる。したがって,被告らの上記②の主張も採用できない。 エ以上より,原告らには,自己申告票提出義務の不存在確認の訴えにつき確認の利益が認められるというべきである。そして,このように,原告らの被告らに対する自己申告票提出義務の不存在確認の訴えについて確認の利益が認められることからすれば,このような訴えが「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)に当たることは明らかというべきである。 (2)自己申告票提出義務の不存在確認の訴えの被告適格について被告大阪府は,自己申告票提出義務の不存在確認の訴えについて,府費負担教職員である原告ら(原告番号1から47まで)の訴えの被告適格を有するのは各市であり,大阪府は被告適格を有しないと主張することから,以下検討する。 ア府費負担教職員(ただし,大阪市立学校の教職員を除く。以下この項において同じ。)である原告ら(原告番号21から47まで)について上記原告らは,A事件において,大阪府を被告として,C事件において,各市を被告として,自己申告票提出義務の不存在確認の く。以下この項において同じ。)である原告ら(原告番号21から47まで)について上記原告らは,A事件において,大阪府を被告として,C事件において,各市を被告として,自己申告票提出義務の不存在確認の訴えを提起している。 (ア)そこで,検討するに,地教行法46条は,「県費負担教職員の勤務成績の評定は,地方公務員法第40条第1項の規定にかかわらず,都道府県委員会の計画の下に,市町村委員会が行うもの」と定めており,本件システムが,府費負担教職員との関係では,上記「計画」に当たることからすれば,府費負担教職員に対する勤務評定(本件システムの実施)は,大阪府教育委員会が定めた本件システム実施規則及び本件システム実施要領に基づいて,各市町村教育委員会が行うものといえる。そして,府費負担教職員規則4条は,「システムは,職務遂行に係る目標設定,実践,点検・評価,調整・改善の段階について,自己申告及び面談を基本として実施する。」と定め,本件システム実施要領第4の1は「職員は,自己申告票を作成し,育成(評価)者に提出するものとする。」と定めていることからすれば,府費負担教職員の教諭である上記原告らは,各市立学校の校長に対して,自己申告票の提出義務を負っているというべきである。そして,この場合の各校長は各市の教育委員会が実施すべき勤務評定の事務を一部分担する者ということができるから,上記原告らは,各市の教育委員会に対して,自己申告票の提出義務を負っているというべきである。したがって,府費負担教職員の自己申告票提出義務の不存在確認の訴えの被告適格は,各市の教育委員会が帰属する行政主体である各市にあると解すべきである。 (イ)また,府費負担教職員は,上記のとおり,大阪府教育委員会ないし大阪府に対して,自己申告票の提出義務自体は負わないものの,地教行 員会が帰属する行政主体である各市にあると解すべきである。 (イ)また,府費負担教職員は,上記のとおり,大阪府教育委員会ないし大阪府に対して,自己申告票の提出義務自体は負わないものの,地教行 法42条は,「県費負担教職員の給与,勤務時間その他の勤務条件については,地方公務員法第24条第6項の規定により条例で定めるものとされている事項は,都道府県の条例で定める」と規定しており,大阪府教育委員会ないし大阪府が府費負担教職員の給与等を決定する権限を有していると解することができる。そうだとすれば,府費負担教職員である上記原告らの前記(1)イ(イ)の自己申告票未提出による給与上の不利益な地位も大阪府教育委員会ないし大阪府との間で生じているというべきであり,大阪府教育委員会ないし大阪府との関係において,上記原告らの自己申告票提出義務が存在しないことの確認がされなければ,上記原告らは,その給与上の不利益な地位を除去することができないというべきである。したがって,上記原告らは,大阪府教育委員会が帰属する行政主体である大阪府との間で自己申告票提出義務の不存在確認をすることによって,その法的利益を確保できるといえ,府費負担教職員の自己申告票提出義務の不存在確認の訴えの被告適格は,大阪府にもあると解すべきである。 (ウ)以上より,府費負担教職員である原告番号21から47までの原告らの自己申告票提出義務の不存在確認の訴えの被告適格は,大阪府及び別紙原告被告対応目録記載の各原告に対応する各市にも認められるというべきである。 イ大阪市立学校の府費負担教職員である原告ら(原告番号1から20まで)について上記原告らは,A事件において,大阪府を被告として,B事件において,大阪市を被告として,自己申告票提出義務の不存在確認の訴えを提起している。 (ア) ある原告ら(原告番号1から20まで)について上記原告らは,A事件において,大阪府を被告として,B事件において,大阪市を被告として,自己申告票提出義務の不存在確認の訴えを提起している。 (ア)そこで,検討するに,地教行法46条,府費負担教職員規則4条及び本件システム実施要領第4の1からすれば,上記アと同様に,大阪市 立学校職員である原告らは,大阪市教育委員会に対して,自己申告票の提出義務を負っているというべきである。そうだとすれば,大阪市教育委員会が帰属する行政主体である大阪市に被告適格があると解すべきである。 (イ)もっとも,地教行法58条は,「指定都市の県費負担教職員の任免,給与の決定,休職及び懲戒に関する事務は,第37条第1項の規定にかかわらず,当該指定都市の教育委員会が行う」と定めていることからすれば,指定都市である大阪市の府費負担教職員の「給与の決定」に含まれる昇級及び勤勉手当額の決定の事務は,大阪市教育委員会が大阪府の定める給与条例,給料規則及び昇級取扱要領並びに勤勉手当条例,勤勉手当規則及び勤勉手当取扱要領に基づいて決定すると解することができ,大阪府教育委員会は,これらを決定する権限を有するとはいえない。そうすると,上記原告らの前記(1)イ(イ)の自己申告票未提出による給与上の不利益な地位も大阪市教育委員会ないし大阪市との間で生じているというべきであり,大阪市立学校の府費負担教職員である上記原告らの自己申告票提出義務の不存在確認の訴えについては,大阪府に被告適格を認める必要はなく,大阪府に被告適格があると解することはできない。 (ウ)以上より,大阪市立学校の府費負担教職員である原告ら(原告番号1から20まで)の自己申告票提出義務の不存在確認の訴えの被告適格は,大阪市のみに認められるというべきであり,大阪府を できない。 (ウ)以上より,大阪市立学校の府費負担教職員である原告ら(原告番号1から20まで)の自己申告票提出義務の不存在確認の訴えの被告適格は,大阪市のみに認められるというべきであり,大阪府を被告とする上記原告らの自己申告票提出義務の不存在確認の訴え(A事件の請求ア)は被告を誤ったものであり,不適法なものというべきである。 自己申告票未提出を理由に給与上の不利益な評価を受けない地位の確認を求める訴えに係る本案前の争点について上記確認の訴えは,原告らが,平成20年度以降,自己申告票未提出を理由に昇級号級数及び勤勉手当の成績率において不利益な評価を受けない地位を有 することの確認を求める訴えであり,このような訴えは,原告らが自己申告票を提出しないことによる給与上の不利益を除去することを目的としたものと解することができる。そして,前記のとおり,原告らが自己申告票を提出しないことによって,給与上不利益に取り扱われるのは,自己申告票を提出しないことが服務規律違反として取り扱われるからであるところ,仮に,原告らが,自己申告票の提出義務がないことの確認判決を得ることができれば,被告大阪府及び被告大阪市は,自己申告票の不提出をもって服務規律違反と取り扱うことはできず,その結果として,原告らは,自己申告票未提出を理由とする給与上の不利益な取扱いを受けないものと解することができる。そうだとすれば,上記給与上の不利益な評価を受けない地位の確認を求める訴えは,自己申告票の提出義務の不存在確認の訴えによって,その目的を達することができ,かかる訴えの方が紛争解決にとってより適切な訴えといえる。したがって,自己申告票未提出を理由に給与上の不利益な評価を受けない地位の確認を求める訴えは,確認の利益を欠く不適法な訴えというべきである。 退職者について 争解決にとってより適切な訴えといえる。したがって,自己申告票未提出を理由に給与上の不利益な評価を受けない地位の確認を求める訴えは,確認の利益を欠く不適法な訴えというべきである。 退職者について原告aらは,いずれも平成20年3月末に退職していること(前提事実(1)ア(ア)(イ))からすれば,原告aらの被告大阪府に対する自己申告票提出義務の不存在確認の訴え及び自己申告票未提出を理由に給与上の不利益な評価を受けない地位の確認を求める訴え,並びに原告eの被告大阪市に対する自己申告票提出義務の不存在確認の訴え及び自己申告票未提出を理由に給与上の不利益な評価を受けない地位の確認を求める訴えは,いずれも訴えの利益を欠く不適法な訴えというべきである。 本案前の争点に対する結論以上より,原告らの訴えのうち,原告番号1から20までの原告ら及び原告aらの被告大阪府に対する自己申告票提出義務の不存在確認の訴え(主文1(1)),原告らの被告大阪府に対する自己申告票未提出を理由に給与上の不利益 な評価を受けない地位の確認を求める訴え(主文1(2)),原告e(原告番号4)の被告大阪市に対する自己申告票提出義務の不存在確認の訴え(主文1(3)),及び原告番号1から20までの原告らの被告大阪市に対する自己申告票未提出を理由に給与上の不利益な評価を受けない地位の確認を求める訴え(主文1(4))は,いずれも不適法な訴えというべきである。 争点(5)(本件システムの違法性)について(1)自己申告票の提出義務が法的義務であるか否か原告らは,自己申告票の提出義務について定めた法令の規定はないから,原告らが求められている自己申告票の提出義務は法的義務ではないと主張する。 しかし,前記(第3の1(1)イ(ア))のとおり,地教行法14条1項を受けた本件システム実 いて定めた法令の規定はないから,原告らが求められている自己申告票の提出義務は法的義務ではないと主張する。 しかし,前記(第3の1(1)イ(ア))のとおり,地教行法14条1項を受けた本件システム実施規則各4条は,「システムは,職務遂行に係る目標設定,実践,点検・評価,調整・改善の段階について,自己申告及び面談を基本として実施する」とし,同規則各6条は,小学校,中学校及び高等学校の各教諭の育成(評価)者は,校長とすると定めており,これによれば,小学校,中学校又は高等学校の各教諭は,各所属学校の校長に対して,それぞれ自己申告の義務及び面談に応じる義務があると解することができる。そして,本件システム実施規則各12条は,「この規則に定めるもののほか,システムの実施について必要な事項は,府教育長が別に定める。」とし,これを受けて定められた本件システム実施要領第4の1は,上記自己申告義務の細目的な実施事項として,「職員は,自己申告票を作成し,育成(評価)者に提出するものとする。」と定めていることからすれば,小学校,中学校又は高等学校の各教諭である原告らは,各所属学校の校長に対して,それぞれ自己申告票の提出が義務付けられているというべきである。これに加えて,地公法32条が「職員は,その職務を遂行するに当たって,法令,条例,地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い,且つ,上司の職務 上の命令に従わなければならない」と定め,本件システム実施要領は上記「規程」に当たると解することができ,原告らはこれに従わなければならないことも併せて考えれば,原告らが各校長に対して負う自己申告票の提出義務は法的な義務と解するのが相当である。したがって,原告らの上記主張は採用できない。 以上を前提に,以下,本件システムが違法か否かについて検討する。 ば,原告らが各校長に対して負う自己申告票の提出義務は法的な義務と解するのが相当である。したがって,原告らの上記主張は採用できない。 以上を前提に,以下,本件システムが違法か否かについて検討する。 (2)認定事実前記(第2の1)前提事実,証拠(後掲)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ア旧勤務評定について(ア)大阪府においては,本件システム実施規則が制定される平成16年まで,旧勤務評定規則に基づいた教職員の勤務成績の評定(以下,旧勤務評定規則に基づくものを「旧勤務評定」という。)が行われていた。 旧勤務評定において,定期評定は,毎年11月1日に実施され,教諭の評定者は校長,調整者は大阪府教育委員会教育長(府費負担教職員については市町村教育員会教育長)とされ,勤務評定の結果は公表しないものとされていた。 (以上について,乙1,2)(イ)校長が教諭の勤務評定に用いる勤務評定書の書式の内容は以下のとおりであり,校長は,以下の着眼点を参考にしながら,各項目について,AからEまでの5段階の評価をし,総評として,所見とAからEまでの5段階の評定をするものとされていた。 「A教員としての態度(着眼点) 児童・生徒の指導に熱意をもつてあたつているか。 児童・生徒の自主的態度の育成に努めているか。 以下省略B勤務成績Ⅰ学習指導(着眼点) 学校の教育計画に基づいて,具体的な計画をたて,日々の準備に努めているか。 教材の扱い方,資料,教具の活用を適切に行つているか。 以下省略。 Ⅱ生活指導(着眼点) 学校の生活指導方針に基づいて,具体的な計画をたてているか。 児童・生徒の性格,能力,境遇,悩み等を理解しているか。 以下省略Ⅲ学級経営(着眼点) 学校の教育方針に基づいて 眼点) 学校の生活指導方針に基づいて,具体的な計画をたてているか。 児童・生徒の性格,能力,境遇,悩み等を理解しているか。 以下省略Ⅲ学級経営(着眼点) 学校の教育方針に基づいて,具体的な計画をたてているか。 児童・生徒の日々の心身の状況をはあくして,指導を行なつているか。 以下省略Ⅳ校務の処理(着眼点) 分掌した校務を責任をもつて処理しているか。 計画性をもつて,正確かつ迅速に校務を処理しているか。 以下省略Ⅴ研修(着眼点) 職務に必要な専門的知識,技能を深めるよう努めているか。 以下省略」(以上について,甲43,44)(ウ)旧勤務評定の結果は,人事管理の基礎資料の一つとして,人事異動の資料や指導力不足教員の研修の実施,服務状況を把握するための資料として利用されていた(甲44,証人f)。 イ本件システムの導入の契機(ア)教育改革プログラム大阪府教育委員会は,平成11年4月,教育改革プログラムを策定し,その中で,「教職員の能力開発や勤務意欲の向上を図るため,個人の能力や業績を的確に評価して,人事や給与に反映させる制度について検討を進める」とした(乙77)。 (イ)教職員の資質向上に関する検討委員会の最終報告a大阪府教育委員会は,教職員に対する評価の導入によって教職員の資質向上を図る必要があり,指導力不足教員や問題教員についての議会からの批判もあったことから,平成12年に教職員の資質向上に関する検討委員会を設置し,平成12年7月17日,同委員会に対し,教職員の資質向上方策や指導力不足等教員の資質向上方策についての検討を依頼した。同委員会は,小学校,中学校及び高等学校の校長,私立学校や企業関係者,市町村教育委員会代表,弁護士,並びに学識経験者(大学教授)からなり, や指導力不足等教員の資質向上方策についての検討を依頼した。同委員会は,小学校,中学校及び高等学校の校長,私立学校や企業関係者,市町村教育委員会代表,弁護士,並びに学識経験者(大学教授)からなり,平成13年に「指導力不足等教員の資質向上方策について」をまとめ,平成14年7月に最終報告書「教職員の資質向上方策について」を発表した。(甲26,乙3)b上記最終報告書の概要は以下のとおりである。 (a)学校教育を取り巻く状況国際化をはじめ科学技術や情報化の進展,少子高齢化などの社会 ・経済環境の急激な変化は,家庭や地域社会にも大きな影響を与え,子供たちを取り巻く環境も変化し,子供たちの行動が大人たちに戸惑いを与えることも少なくない。また,家庭や地域の教育力の低下が指摘される中で,保護者や地域社会の学校教育に対するニーズは複雑・多様化し,特に,近年の厳しい経済環境は家庭にも子供たちの生活にもさらなる影響を与えつつある。そして,いじめや不登校,学級崩壊等,早急に解決すべき教育課題や安全管理の面からの学校施設の在り方,管理運営体制が厳しく問われている。さらに,学校週5日制や新学習指導要領が実施される中で,子供たちの生きる力の育成はもとより,学力の向上など学校教育の質が鋭く問われている。 これに対して,教育委員会や学校,校長をはじめとする教職員は,その責任を自覚し,一致協力して,家庭・地域と連携しながら,変化の時代に対応することが求められる。 (b)学校・教職員の現状と課題教職員についても,日々,精力的に取組,成果を上げているものも数多いが,他方,時代や子供の変化に対応しきれていない教職員,経験したことのない子供たちの変容や保護者の多様なニーズを前に多忙感の中で戸惑いを覚え立ち止まってしまったり,課題を一人で抱え込み,思い悩んだりしてい ,時代や子供の変化に対応しきれていない教職員,経験したことのない子供たちの変容や保護者の多様なニーズを前に多忙感の中で戸惑いを覚え立ち止まってしまったり,課題を一人で抱え込み,思い悩んだりしている教職員も少なくない。教育委員会は,学校や教職員に対し支援するとともに,教職員の指導・育成(評価)者である校長はリーダーシップを発揮して,教職員が相互に協力し合う開かれた関係を築き,教職員の個性や特技を活かしながら,もてる意欲や能力を引き出し,高めていかなければならない。 そのためには,学校や教職員の研修ニーズに的確に対応し,成果が実践活動に結びつくような校内・校外の研修制度の充実・改善を 図るとともに,日々の職務を通じて,校長等も含めた教職員の能力開発が図られる人材育成のシステムを構築していくことが求められる。 (c)資質向上方策の基本的な考え方目標・計画策定から実践活動,点検・評価,改善への取組という一連の流れの繰り返しを通して,継続的・体系的に行われる資質向上方策とする。そして,「目標による管理」の考え方を人材育成の基本とし,目標や計画の達成度,その取組の過程を子供や保護者,同僚職員など他者の意見を参考に,自ら点検する自己評価と校長等による評価を行い,教職員の資質能力の向上と教育活動の充実を図るための具体的なシステムを「評価・育成システム」とした。 (以上(a)から(c)までについて,乙3)(d)「評価・育成システム」の基本的な枠組みと内容「評価・育成システム」は,主体的な目標の設定,目標達成に向けての取組,教育活動等の充実・改善,資質能力の向上のための評価,一層の向上・改善へ向けての行動を基本とし,主な内容は,本件システムと同じである(前提事実(2),乙3)。 ウ本件システムの導入までの経緯(ア)大阪府教育委員会は,平成 能力の向上のための評価,一層の向上・改善へ向けての行動を基本とし,主な内容は,本件システムと同じである(前提事実(2),乙3)。 ウ本件システムの導入までの経緯(ア)大阪府教育委員会は,平成14年11月1日から平成15年3月31日まで,①評価・育成システムの導入に向け,検討の参考とすること,②試験的実施を通じて教職員の活動内容の充実・改善や目標設定の契機とするとともに,教職員の意見を学校運営に反映させること,③システムに対する教職員の理解を深めるとともに,校長等の評価・育成能力の向上を図ることを目的として,本件システムの試験的実施をした(乙4)。 (イ)大阪府教育委員会は,平成15年6月5日から平成16年3月31 日まで,本件システムの本格実施に向けて,上記①から③までと同様の目的で,本件システムの試行実施をした(乙5)。 (ウ)大阪府教育委員会は,平成16年3月,上記試験的実施及び試行実施について,実施対象職員,府立学校長及び市町村教育委員会,府政モニター(一般府民)に対し,その実施状況に関する調査等を実施し,「『教職員の評価・育成システム』試行実施のまとめ」を作成,公表した。大阪府教育委員会は,上記まとめにおいて,「2カ年にわたる試行を経て,課題は残るものの,これまでの改善点も踏まえて,システムの基本的手続である自己申告,面談等は定着してきていると考えられる。 また,システムの信頼性を高め,内容的にもより効果のあるものとしていくための充実・改善は引続き行う必要があるが,府民の願いである教職員の意欲・資質向上,学校の活性化という,システムのねらいについては概ね理解が得られ,学校現場においても一定の効果が表れてきていることから,試行から本格的な実施に移行する準備は整ったと考えられる。」とし,平成16年4月から本件システ う,システムのねらいについては概ね理解が得られ,学校現場においても一定の効果が表れてきていることから,試行から本格的な実施に移行する準備は整ったと考えられる。」とし,平成16年4月から本件システムを実施する決定をした。 (乙6,59)(エ)大阪府教育委員会は,本件システムを本格実施するに当たり,平成16年3月18日,府立学校職員及び府費負担教職員を構成員とする各登録職員団体に対し,本件システムの内容等が記載された「『教職員の評価・育成システム』実施(案)の概要」と題する文書を配布した。同文書には,①本件システムの実施根拠が地公法40条及び地教行法46条であり,旧勤務評定規則を廃止し,その実施に関する規則を制定すること,②評価結果については,教職員の意欲・資質能力の向上と学校の活性化を図るため,日々の指導・育成に活用し,また,評価結果を処遇等に活用・反映することを検討し,給与・勤務条件に係る活用等にについては今後協議すること等が記載されていた。(乙48,弁論の全趣 旨)(オ)以上のような経緯を経て,本件システム実施規則は,平成16年4月16日に制定された(前提事実(2)ア,乙59)。 エ給与制度の改革について(ア)公務員制度調査会の答申公務員制度調査会は,内閣総理大臣から平成9年5月に国家公務員制度及びその運用の在り方についての全般的な見直しについて諮問を受け,審議を行ってきたところ,平成11年3月16日付けの「公務員制度改革の基本方向に関する答申」の中で,国家公務員の人事制度について,採用試験の種類等を重視する硬直化した昇進管理や過度の年功的処遇のように制度本来の趣旨に必ずしも十分沿っていない人事運用が慣行的に定着してきた面も見られるとし,その改革の必要性を指摘し,「能力・実績に応じた昇進・昇級」,「能力・実績に 進管理や過度の年功的処遇のように制度本来の趣旨に必ずしも十分沿っていない人事運用が慣行的に定着してきた面も見られるとし,その改革の必要性を指摘し,「能力・実績に応じた昇進・昇級」,「能力・実績に応じた昇進・給与を支える人事評価」の整備が必要であるとした。そして,行政課題の複雑高度化に対応するためには,能力・実績を有する者を適材適所で配置し,その職に見合った適正な給与上の処遇を行っていく必要があり,また,社会の少子・高齢化に対応した雇用期間の長期化を財政的な制約の下で実現していくに当たっても,公務員制度とその運用において,これまでのような年功を重視した処遇を続けることはできず,全体的な給与水準における官民均衡を維持しつつ,各職員の能力・実績に応じた処遇を推進していく必要があるとした。また,昇進管理についても行政課題の複雑高度化と組織のスリム化等に対応するため,年次横並び的な運用を見直し,成績主義の基本原則にのっとった,より厳格な昇進管理を進めるべきであるとし,給与制度についても,職務・職責をより適格に反映する多様な給与制度の在り方を検討し,それぞれの職員の人事管理上の特性を踏まえた処遇を確保することが必要であるとした。(乙74) (イ)教育改革国民会議報告内閣総理大臣の下,平成12年3月に発足した教育改革国民会議は,平成12年12月22日,教育改革に関する17の提案とその実施のための取組がされることを要望した。その中で,学校教育で最も重要なのは一人ひとりの教師であり,個々の教師の意欲や努力を認め,良い点を伸ばし,効果が上がるように,教師の評価をその待遇等に反映させ,教師の意欲や努力が報われ評価される体制をつくる旨の提案が報告された。 (乙76)(ウ)中央教育審議会の答申中央教育審議会は,平成14年2月21日,「今後の教 ,教師の評価をその待遇等に反映させ,教師の意欲や努力が報われ評価される体制をつくる旨の提案が報告された。 (乙76)(ウ)中央教育審議会の答申中央教育審議会は,平成14年2月21日,「今後の教員免許制度の在り方について」(答申)において,教員の資質向上に向けての提案として,「教員がその資質能力を向上させながら,それを最大限に発揮するためには,教員一人一人の能力や実績等が適正に評価され,それが配置や処遇,研修等に適切に結び付けられることが必要である。このため,各都道府県教育委員会等において教員の勤務評価について,公務員制度改革の動向を踏まえつつ,新しい評価システムの導入に向け,早急に検討を開始することを提言する。」と答申した(乙75)。 (エ)人事院は,平成17年8月15日,国会及び内閣に対し,一般職の国家公務員の給与について,下記のとおりの報告,給与の改定の勧告等をした。 記公務員給与は,制度的には,職務・職責に応じた給与を支給することを基本とし,成績に応じて昇級・昇格やボーナスの支給を行うものとしてきたが,現実には,経済成長に伴う給与水準の上昇の下,年功的な処遇が行われてきた。他方,近年,長期低迷が続く経済環境の下で,民間企業では経営の合理化・効率化が求められ,その一環として仕事や成果 に応じた賃金制度を導入する動きが広がっており,公務においても,厳しい財政事情の下,職員の士気を確保しつつ,能率的な人事管理を推進することが求められ,民間と同様に,給与の年功的上昇を抑制し,職務・職責と実績を十分に反映し得る給与システムを構築することが不可欠となっている。そこで,年功的な俸給構造を見直し,勤務実績に応じた処遇をすべきであり,また,新たな人事評価制度を構築し,適正な評価に基づく勤務実績の給与への反映を確保する必要がある。 ことが不可欠となっている。そこで,年功的な俸給構造を見直し,勤務実績に応じた処遇をすべきであり,また,新たな人事評価制度を構築し,適正な評価に基づく勤務実績の給与への反映を確保する必要がある。 (以上について,乙20)(オ)大阪府教育委員会は,平成17年9月21日,府立学校職員及び府費負担教職員を構成員とする各登録職員団体に対し,「教職員の評価・育成システム評価結果の給与反映についての基本的考え方」と題する文書を交付した。その概要は下記のとおりである。 記本件システムがおおむね順調に実施され,その評価結果も全体的におおむね妥当な分布になっており,他方,教職員の勤務成績の給与反映について,平成16年10月の大阪府人事委員会勧告及び平成17年2月の包括外部監査報告において,教職員の勤務意欲の向上を図るために,評価を給与に適切に反映することが求められていることから,真摯な教職員の取組を積極的に顕彰することで,職員全体の士気向上,組織の活性化を図るため,評価結果を給与に反映するのが望ましいが,今後の検討方向としては,平成17年8月の人事院勧告に対する国の対応を注目するほか,平成17年秋に予定されている大阪府人事委員会の勧告内容を見極めて,最終的な方針決定をする。 (以上について,乙49,証人f)(カ)大阪府人事委員会は,平成17年10月,上記(エ)の人事院の勧告等を参考にした上で,大阪府職員の給与等について,下記のとおり,報 告及び勧告をした。 記大阪府においても,人事院が示す方策を参照した上で,号級を4分割した新たな給料表を導入し,普通昇級と特別昇給の統合や昇級期の統一を図り,人事評価の結果に基づく昇級幅の設定を行うなど勤務成績を給与に,よりきめ細かく反映し得る仕組みづくりに早急に取り組み,経験年数を基本とした昇給制度の運 普通昇級と特別昇給の統合や昇級期の統一を図り,人事評価の結果に基づく昇級幅の設定を行うなど勤務成績を給与に,よりきめ細かく反映し得る仕組みづくりに早急に取り組み,経験年数を基本とした昇給制度の運用から勤務成績をより考慮した運用へと改めるように検討すべきである。また,勤勉手当についても,国と同様に勤勉手当の支給に勤務実績をより反映するための措置を講じるべきである。そして,勤務実績の給与への的確な反映は,給与制度における大きな命題であり,かつ,民間企業の状況に照らしても,早急に実施すべき課題であることから,新たな給料表の導入に合わせ,勤務実績の給与への反映を着実に推進する中で,評価制度の運用等の改善に向けた取組に早期に着手し,評価者の意識啓発や被評価者の理解の徹底といった運用面を中心とする改善を講じるべきである。これらの給与への勤務実績への反映は,人事院が平成18年4月1日から新たな昇級制度を運用し,同年6月期の勤勉手当から実施するとし,昇級運用については,平成19年4月1日から実施するとしていることに照らし,大阪府においても,国と同様に,平成18年4月1日から勤務実績を反映した昇給制度の運用を図るとともに,その他の事項についても国と同様の対応を講じるべきである。 (以上について,乙21)(キ)以上のような経緯を経て,大阪府は,平成18年3月31日に従前の給与条例,給料規則,勤勉手当条例及び同規則を改正し,大阪府教育委員会は,同年6月12日に昇級取扱要領及び「勤勉手当の成績率の取扱いに関する考え方」を,平成19年5月28日に改正前の勤勉手当取 扱要領を定めた(乙22から24まで,26,59)。 (ク)中央教育審議会は,平成19年3月29日,「今後の教員給与の在り方について」(答申)において,教員給与をはじめとした処遇の在り 当取 扱要領を定めた(乙22から24まで,26,59)。 (ク)中央教育審議会は,平成19年3月29日,「今後の教員給与の在り方について」(答申)において,教員給与をはじめとした処遇の在り方についての基本的な考え方として,「教員が適切に評価され,教員の士気が高まり,教育活動が活性化されていくためにも,それぞれの職務に応じてメリハリを付けた教員給与にしていくことが必要である。さらに,教員一人一人の能力や業績を評価し,教員に意欲と自信を持たせるよう,適切な教員評価の構築に取組,指導力や勤務実績に優れた教員を適切に評価できるようにし,その実施状況を踏まえつつ,評価結果を任用や給与上の措置などの処遇に適切に反映していくことが必要である。 一方,大多数の教員が懸命に職務に従事している反面,一部に指導力不足教員や不適格教員などが存在することも事実であり,昨今,このような教員に対する国民の視線はますます厳しいものとなっている。このため,教員全体への信頼性を向上させるためにも,このような指導力不足教員等に対しては,研修の実施等人事管理システムを厳格に適用するとともに,相応の処遇とするよう毅然とした対応をすることも必要である。」と答申した。(甲27)オ学校教育目標等について(ア)本件システムにおいて,教諭は,学校教育目標等を踏まえて,その目標を設定するところ,学校教育目標は,学校教育計画の内容を基にして設定されるものであり,校長が「学校教育目標の自己点検票」を利用している場合には,その自己点検票から抽出された目標が学校教育目標になり,上記自己点検票の内容と学校教育計画に記載される内容はおおむね同じ内容である(乙16,証人f,証人g)。 (イ)学校教育計画の概要は以下のとおりである。 校長は,毎年学年始めに,各学校の教育目標を達成するため 検票の内容と学校教育計画に記載される内容はおおむね同じ内容である(乙16,証人f,証人g)。 (イ)学校教育計画の概要は以下のとおりである。 校長は,毎年学年始めに,各学校の教育目標を達成するための年間計 画であり,以下の事項を内容とする学校教育計画を教育委員会に提出する(大阪府立高等学校等の管理運営に関する規則(乙14)5条2項参照)a学校経営の重点b教科指導及び生活指導(特別活動を含む。)の重点c健康管理と指導の重点d教員の研修計画e校務分掌f行事予定表(以上(イ)について,乙14,15)(ウ)学校教育計画の策定に当たっては,前年度の総括と改善計画及び学校協議会の提言を踏まえるものとされ,その策定と総括には,すべての教職員がそれぞれのかかわっている分野で参画し,学校教育目標と計画・方針の共有化を図るものとされており,教職員や地域の保護者等の意見も踏まえた上で,策定されている(甲50,証人f,証人g)。 (エ)校長は,学校教育計画の内容を年度当初に教職員に周知するとともに,それを学校ホームページに掲載するなど広く府民に公開し,開かれた学校運営の推進に努めることとされている(甲50,乙15)。 カ評価者の研修について(ア)大阪府教育委員会は,本件システムにおいて,評価者の評価能力,本件システムの理解及び評価そのものの理解が重要であることから,評価者である校長等の評価に関する理解を深め,評価・育成能力の向上を図るため,府立学校及び市町村立学校の評価者に対する評価・育成者研修を実施している。 (イ)評価・育成者研修は,平成15年以降,毎年実施されており,近年では,年4回実施されるのが通例になっている。平成18年度の評価・ 育成者研修は,第1回及び第2回が「評価育成システムの理解」及び「評価の理解 者研修は,平成15年以降,毎年実施されており,近年では,年4回実施されるのが通例になっている。平成18年度の評価・ 育成者研修は,第1回及び第2回が「評価育成システムの理解」及び「評価の理解と職務遂行状況の把握」について理解を深めるための研修,第3回が外部講師を招いた上で「効果的な日々の指導・助言の方法」をテーマとした「コーチング」についての講義,第4回が「評価の実際」をテーマにした評価方法に関する意見交換や事例演習の実施であった。 (以上カについて,乙6,59,60,65から72まで,証人g)キ評価結果の分布平成16年度から平成18年度まで(ただし,平成16年度については試行実施のもの。)の本件システムに基づく全職員の評価結果の分布(概数)は以下のとおりであり,大阪府教育委員会は,以下の分布をおおむね妥当なものとしている。 (%)年度SABCD平成16年度市町村立学校1.032.064.92.10.0府立学校3.131.763.21.90.1平成17年度市町村立学校0.933.863.81.40.0府立学校2.935.260.61.20.0平成18年度市町村立学校0.940.857.31.00.0府立学校2.638.857.70.80.1(小数点以下第2位を四捨五入)(以上キについて,乙18,49,54)(3)本件システムが違法か否かについてア地方公務員法は,地方公共団体の行政の民主的かつ能率的な運営等を保障することを目的とし(同法1条),公務能率を増進させるために,職員の任用は受験成績その他の能力の実証に基づいて行わなければならないとし(同法15条),勤務実績が良くない場合やその職に必要な適格性を欠 く場合は,降任し又は免職する 能率を増進させるために,職員の任用は受験成績その他の能力の実証に基づいて行わなければならないとし(同法15条),勤務実績が良くない場合やその職に必要な適格性を欠 く場合は,降任し又は免職することができるとし(同法28条1項),能力主義・実証主義を採用しており,これに対応して,地公法40条1項は「任命権者は,職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い,その評定の結果に応じた措置を講じなければならない」とし,勤務評定によって,職員の能力,勤務実績等を適正に把握し,もって能力主義,実証主義に基づいた適正な人事管理を行おうとしている。そして,勤務成績の評定が任命権者の人事管理に属するものであり,その根拠規定である地公法40条1項ないし地教行法46条が勤務成績の評定の方法等について特段の定めもしていないことからすれば,勤務評定の制度の内容をどのようなものにするかは任命権者の裁量にゆだねられていると解すべきである。 そして,教育を通じて国民全体に奉仕する教育公務員に関する特例を定めた教育公務員特例法は,その職務と責任の特殊性に基づき,その任免,給与,分限,懲戒,服務及び研修等について特例を定めるも,勤務評定の方法について特段の定めをしていないことからすれば,教育公務員である府立学校職員及び府費負担教職員についても,地公法40条1項ないし地教行法46条に基づいて勤務評定が行われるというべきであり,その勤務評定制度の内容をどのようなものにするかは,大阪府教育委員会の裁量にゆだねられていると解すべきである。 もっとも,勤務評定は,公正な人事管理を行う基礎とするために,職員の執務について勤務成績を評定し,これを記録するものであることからすれば,勤務評定は,職員が割り当てられた職務と勤務実績を当該職員の職務遂行の基準に照らして評定し,並びに執務 基礎とするために,職員の執務について勤務成績を評定し,これを記録するものであることからすれば,勤務評定は,職員が割り当てられた職務と勤務実績を当該職員の職務遂行の基準に照らして評定し,並びに執務に関連してみられた職員の性格,能力及び適性を公正に示すものでなければならず,人事管理上の責任者の個人的,恣意的な判断が許されないことは当然であり(人事院規則10-2第1条,2条1項参照),これらの観点からみて,当該勤務評定制度が裁量権の範囲を逸脱し,またはその濫用をしたものといえる場合には, 当該制度は違法になるというべきである。 本件においても,大阪府教育委員会は,勤務評定制度として本件システムを策定しているところ,同委員会が本件システムの策定に当たって上記裁量権の範囲を逸脱し,またはその濫用をしたといえる場合には,本件システムは違法になるというべきである。なお,府費負担教職員の勤務成績の評定は大阪府教育委員会の計画の下に,各市町村の教育委員会が行うものとされ(地教行法46条),本件システムは,上記「計画」に当たることからすれば,府費負担教職員である原告ら(原告番号1から47まで)との関係においても,大阪府教育委員会が本件システムの策定についてその裁量権の範囲を逸脱し,その濫用をしたといえるか否かを検討すれば足りるというべきである。 そこで,以下,大阪府教育委員会が本件システムの策定についてその裁量権の範囲を逸脱し,その濫用をしたといえるか否かを検討する。 イ本件システムの導入の必要性について前記(認定事実イ(イ))のとおり,近年,社会情勢の変化が家庭や地域社会に大きな影響を与え,子供たちを取り巻く環境も変化し,いじめや不登校,学級崩壊等の教育課題への対応や学校教育の質の向上が強く求められ,教育委員会や学校,校長をはじめとする教職員 変化が家庭や地域社会に大きな影響を与え,子供たちを取り巻く環境も変化し,いじめや不登校,学級崩壊等の教育課題への対応や学校教育の質の向上が強く求められ,教育委員会や学校,校長をはじめとする教職員は,一致協力して家庭・地域と連携しながら,変化の時代に対応することが求められるようになり,他方,教員についても,日々精力的に取り組み,成果を上げている者がいる一方で,時代や子供の変化に対応しきれていない教員や指導力不足教員,問題教員の存在が問題視されていることが認められる。このような学校教育を取り巻く状況や学校・教職員の現状からすれば,大阪府教育委員会においては,教職員の意欲・資質能力の向上,教育活動等の充実及び学校の活性化を図ることができる制度として,本件システムを導入する必要性は高かったといえる。 ウ本件システムの内容の合理性について(ア)前記(前提事実(2)イ(ア)(イ))のとおり,本件システムは,教職員が,年度の初めにかけて学校教育目標等を踏まえ,各自が自ら取り組む目標を設定して自己申告票を作成し,校長に提出し,目標設定面談において設定目標を決定し,年度の終わりにかけて目標達成状況を自己評価し,校長からの評価(業績評価及び能力評価並びに総合評価)を受け,開示面談において評価結果の説明を受けた上で,活動内容の改善と翌年度の目標を検討するというサイクルの下で評価と育成を継続的,体系的に行うことを予定した制度である。 (イ)このような本件システムのサイクルの下で,教職員が年度初めに学校全体の組織目標と適合した自己の目標を自ら設定することは,教職員の自主的,主体的な活動を促すとともに,目標設定面談を通して組織目標の共有化を図ることができ,これにより教職員の組織的な取組の促進が期待できるといえる。特に,各教職員が当該学校の全体と とは,教職員の自主的,主体的な活動を促すとともに,目標設定面談を通して組織目標の共有化を図ることができ,これにより教職員の組織的な取組の促進が期待できるといえる。特に,各教職員が当該学校の全体としての目標や改善点を把握・意識して日々の教育活動を行うことは学校組織を活性化していく上で不可欠の前提となるものといえ,また,当該目標達成に対する教職員の責任感を高めることも期待できるといえる。そして,教職員が,子供・保護者,地域住民や同僚教職員の声を踏まえた上で自己評価をすることにより,その意識改革を促し,さらに,評価結果についての面談を通して,自己の課題を発見・確認し,翌年度へフィードバックすることができ,教職員の自己研さんや能力開発も期待できるといえる。そして,本件システムがこのようなサイクルを継続的,体系的に繰り返す制度であることにも照らせば,本件システムは,教職員の資質向上及び学校の活性化という観点から有用なものとみることができ,これは,旧勤務評定において,その職務の評価が一方的であり,評価結果も人事管理の基礎資料の一部として利用されていたにとどまること(認定 事実ア(ア)(ウ))と比較すれば,その有用性を認めることに合理的な根拠があるというべきである。 (ウ)また,前記前提事実(2)オ及び別紙2によれば,本件システムにおける評価は,教職員の職務遂行状況の観察や意見交換,自己申告の内容等に基づいて,児童生徒・保護者・同僚職員等の意見,支援者の意見具申等を参考にしてされること,評価の対象は,学校教育目標等を踏まえた設定目標との関係での達成度を対象としたもの(業績評価)と日常の教職員の職務活動一般を対象としたもの(能力評価)という異なる二つの観点からのものであること,これは客観的評価になじみやすい業績評価と詳細な評価基準に基づ 達成度を対象としたもの(業績評価)と日常の教職員の職務活動一般を対象としたもの(能力評価)という異なる二つの観点からのものであること,これは客観的評価になじみやすい業績評価と詳細な評価基準に基づく能力評価とを組み合わせたものといえ,これらの評価基準も公表されていることが認められる。これらに照らせば,本件システムは,教職員の職務活動をできる限り幅広い観点から評価するとともに,他方で,評価権者による主観的評価をできる限り排除し,もって,適正,公正,透明な評価を図ろうとする趣旨に出たものといえ,評価方法として合理性があるものと認められる。 (エ)そして,前記前提事実,認定事実及び弁論の全趣旨によれば,①旧勤務評定においては,その結果が非公表とされ,それがどのように活用されているのか外部から明らかでなかったのに対し(認定事実ア(ウ)),②本件システムにおいては,評価結果は被評価者に開示され,評価者はそれに対する説明をしなければならず,S評価及びD評価という基本評価とされるAからCまで以外の評価をする際には所見欄にその理由を記載し,また,教職員の業績評価における目標達成状況の判断(自己評価)と評価者のそれが異なる場合には備考欄にその理由を記載しなければならないこと(前提事実(2)オ),③被評価者は,当該評価に不服がある場合には,苦情審査委員会に対し,苦情申立てができ,また,教職員は,学校の運営の改善・充実のため,校長への提言シートを作成・提出 し,これによって校長の不当な学校運営等について改善の要求ないし提案ができ,これらの苦情申立て及び校長への提言シートの内容は校長が教育長に評価される際の基礎資料にもなり得ること(前提事実(2)イ(イ)i,同(2)カ,弁論の全趣旨)が認められる。これらの事実に照らせば,本件システムは,評定権者の専 への提言シートの内容は校長が教育長に評価される際の基礎資料にもなり得ること(前提事実(2)イ(イ)i,同(2)カ,弁論の全趣旨)が認められる。これらの事実に照らせば,本件システムは,評定権者の専断的,恣意的な人事評価を防ぐための措置をも講じているといえる。 (オ)このように本件システムが教職員の資質向上及び学校の活性化という観点から有用といえる上,評価の適正性,公正性,透明性を図ろうとしているとともに,評価権者の専断,恣意を防ぐための措置をも講じているといえることからすれば,本件システムの内容は,合理的なものというべきである。 エ本件システムの評価結果を給与に反映させることの合理性本件システムは,その評価結果と昇級の際の昇級号級数及び勤勉手当の成績率とを連動させているところ,このように評価結果と給与とを連動させることが大阪府教育委員会の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用といえるか否かを検討する。 (ア)まず,本件システムの評価結果と給与が連動するものとされた経緯についてみるに,前記前提事実及び認定事実によれば,①人事院が平成17年8月15日に一般職の国家公務員の給与について,年功的な処遇を改め,適正な人事評価制度の下の適正な評価に基づく勤務実績の給与への反映を確保する必要があるとの報告・勧告をしたこと(認定事実エ(エ))を受けて,②大阪府教育委員会は,同年9月21日,職員全体の士気向上,組織の活性化を図るため,教職員の勤務成績を給与に反映するとの考え方を発表し(同(オ)),③大阪府人事委員会は,同年10月に上記人事院の報告・勧告と同様に大阪府職員の昇級及び勤勉手当の支給について,勤務実績の給与への的確な反映が必要であるとの報告・勧 告をし(同(カ)),④これらを経て,大阪府議会及び大阪府人事委員会によって,従前の給与条例, 大阪府職員の昇級及び勤勉手当の支給について,勤務実績の給与への的確な反映が必要であるとの報告・勧 告をし(同(カ)),④これらを経て,大阪府議会及び大阪府人事委員会によって,従前の給与条例,給料規則,勤勉手当条例及び勤勉手当規則が改正され,それとともに,大阪府教育委員会によって昇級取扱要領及び勤勉手当取扱要領が定められ,本件システムと昇級号級数及び勤勉手当の成績率が連動するようになったこと(同(キ),前提事実(3))が認められる。このような事実に照らせば,本件システムの評価結果と教職員の給与を連動させた目的は,従前の慣行的に行われていた年功序列的な給与制度を改め,真摯に職務を行っている教職員に対し,その職務に応じた適正な給与上の処遇を与えることによって,職員全体の士気向上,組織の活性化を図ろうとしたものと認めることができ,その目的は合理的なものというべきである。 (イ)そして,前記認定事実によれば,①公務員制度調査会は,平成11年3月の「公務員制度改革の基本方針に関する答申」において,公務員改革の必要性を指摘し,行政課題の複雑高度化に対応するためには,能力・実績を有する者を適材適所で配置し,その職に見合った適正な給与上の処遇を行う必要があり,公務員についても年功的処遇から能力・実績に応じた昇進・給与に改める必要があると答申したこと(認定事実エ(ア)),②教育公務員についても,大阪府教育委員会は,平成11年4月,教育改革プログラムにおいて,教職員の能力開発や勤務意欲の向上を図るため,勤務成績を評価し,それを人事や給与に反映させる制度の検討を提言し(認定事実イ(ア)),③教育改革国民会議は,平成12年12月の報告において,個々の教師の意欲や努力を認め,良い点を伸ばし,効果が上がるようにするために,教師の評価をその待遇等に反映さ 検討を提言し(認定事実イ(ア)),③教育改革国民会議は,平成12年12月の報告において,個々の教師の意欲や努力を認め,良い点を伸ばし,効果が上がるようにするために,教師の評価をその待遇等に反映させる必要があるとの提案をし(認定事実エ(イ)),④中央教育審議会は,平成14年2月の「今後の教員免許制度の在り方について」(答申)において,職員がその資質能力を向上させながら,それを最大限に発揮す るためには,教員が適正に評価され,それが配置や処遇,研修等に適切に結び付けられることが必要であると提言し(同(ウ)),⑤同審議会は,平成19年3月29日の「今後の教員給与の在り方について」(答申)においても,教員に意欲と自信を持たせ,教育活動を活性化していくためには,その職務を評価し,その評価結果を任用や給与上の措置等の処遇に適切に反映していくことが必要であると答申したこと(同(ク))が認められる。これらの事実に照らせば,教職員の職務を適正に評価し,それを給与等の処遇に適正に反映させることは,教職員の意欲や資質能力を向上させるための効果的な方法と考えられていることが認められ,大阪府教育委員会が前記目的(職員全体の士気向上及び組織の活性化を図ること)を実現するために,本件システムの評価結果と昇級号級数及び勤勉手当の成績率を連動させるという方法を採用したことも合理的なものといえる。 (ウ)また,本件システムの評価結果が昇級号級数に対して具体的にどのように反映されるのかについてみると,前記前提事実及び認定事実のとおり,大阪府の一般職の職員も勤務成績に応じて昇級号級数が決定されるところ,この場合,原則として,勤務成績が極めて良好な職員が6号級,特に良好である職員が5号級,良好である職員が4号級,やや良好でない職員が2号級,良好でない職員が0号級 じて昇級号級数が決定されるところ,この場合,原則として,勤務成績が極めて良好な職員が6号級,特に良好である職員が5号級,良好である職員が4号級,やや良好でない職員が2号級,良好でない職員が0号級とされている(前提事実(3)イ(イ))のに対し,教職員の場合には,勤務成績が極めて良好である(S評価)職員が5号級,特に良好である(A評価)職員も5号級,良好である(B評価)職員が4号級,やや良好でない(C評価)職員が3号級,良好でない(D評価)職員が0号級とされていること(同(ウ))からすれば,教職員の勤務成績が昇級号級数に反映される程度は,一般職の他の職員の場合よりも緩やかなものとなるような措置が講じられているといえる。 そして,前記前提事実及び認定事実によれば,①従前の慣行的に行われてきた昇級の際の昇級号級数が1号級であるところ,本件において総合評価Bであれば基本的には従前と同じ1号級(現在の4号級に相当)昇級するものとされており,また,勤勉手当についても,総合評価Bであれば,従前よりも高い成績率の取扱いを受けるところ,本件システムにおいて,平成16年度から平成18年度までの実際の評価結果(総合評価)の分布はSからB評価までが全体の約98パーセント近くを占めており(さらに,全体の約3分の1以上がS及びA評価である。),大阪府教育委員会もこのような評価結果の分布が妥当なものとして是認しており,本件システムは上記のような分布になるように運用することが予定された制度であったといえること(前提事実(3)イウ,認定事実キ),②本件システムは,生活保障的要素の強い期末手当については評価結果と連動させず,精勤に対する報償として支給される能率給としての性格を有する勤勉手当のみ評価結果と連動させていること(前提事実(3)ウ(ア))が認められる 活保障的要素の強い期末手当については評価結果と連動させず,精勤に対する報償として支給される能率給としての性格を有する勤勉手当のみ評価結果と連動させていること(前提事実(3)ウ(ア))が認められる。これらの事実からすれば,本件システムにより評価結果と給与とを連動させるものとした後も,ほとんどの教職員は従前と同様の昇級号級数による昇級をし(約3分の1以上の者は従前以上の昇級号級数による昇級になる。),かつ,従前以上の勤勉手当の成績率となる上,期末手当は従前どおりの支給を受けるものといえる。そうだとすれば,本件システムの評価結果と給与の連動によって経済的な不利益を受ける教職員がいたとしても,その範囲・程度は限定的なものにとどまるというべきである。 このように本件においては,評価結果を昇級号級数及び勤勉手当の成績率へ連動させる程度が緩やかであり,それによって教職員が受ける経済的な不利益の程度も限定的なものであるところ,これは,多面性・専門性を有する職員の職務の特殊性,及び,学校現場においては,個々の 教員だけでなくチームワークによって子供たちへの教育を行っている意識が強いという学校現場の特殊性から,成果主義的な評価といっても,民間企業で行われるような信賞必罰的な形態のものをそのまま持ち込むことが必ずしも適切ではないという考慮を働かせたものということができる。そうだとすれば,本件システムは,教職員の職務の特殊性を考慮しつつ,教職員の給与に成果主義的な要素を導入し,もって,教職員の意欲・士気を向上させ,学校の活性化を図ろうとしたものといえ,制度としての合理性が認められるというべきである。そして,上記のとおり,評価結果を給与に連動させることによって,従前より昇級号級数及び勤勉手当の成績率が小さくなる者が約2パーセント足らずであるのに対し としての合理性が認められるというべきである。そして,上記のとおり,評価結果を給与に連動させることによって,従前より昇級号級数及び勤勉手当の成績率が小さくなる者が約2パーセント足らずであるのに対して,それが大きくなる者が約3分の1以上にもなり,これが大阪府教育委員会において妥当な結果として是認されていることに照らせば,本件システムは,原告らが主張するように教職員を厳しく評価・管理し,それを処遇にマイナスに反映させるのではなく,むしろ意欲・やる気のある教職員を適正に評価し,それを処遇にプラスに反映させることに主眼があるものというべきであり,この点からも本件システムが教職員の育成,資質向上を図ろうとした制度であるといえる。 (エ)以上でみたとおり,評価結果と昇級号級数及び勤勉手当の成績率とを連動させている点については,その程度は緩やかであり,それが教職員に与える影響も限定的であり,他方で,評価結果と昇級号級数等を連動させることによって,教職員の意欲,資質の向上,及び学校の活性化に資するといえること,さらに,前記のとおり本件システムにおける評価方法が合理的なものであることも併せて考えれば,大阪府教育委員会が,本件システムの評価結果と昇級号級数及び勤勉手当の成績率を連動させたことには合理性が認められ,その裁量権の範囲内のものといえる。 オ以上のように,大阪府教育委員会は,本件システムを導入する必要性が あり,その内容及び評価結果の給与への反映も合理的なものであることに加えて,本件システムは,全職員を対象とした5か月間の試験的実施及び1年間の試行実施を行い,それらについての実施状況についての調査を行い,各登録職員団体に対する説明も経た上で導入されており(認定事実ウ),教職員に本件システムを周知する機会を与えているといえること,さらに, 行実施を行い,それらについての実施状況についての調査を行い,各登録職員団体に対する説明も経た上で導入されており(認定事実ウ),教職員に本件システムを周知する機会を与えているといえること,さらに,適正・公正な評価の要となる評価者の能力の向上を図るべく評価・育成者研修も本件システムの導入前から現在に至るまで毎年実施されていること(認定事実カ)も併せて考えれば,本件システムは,勤務評定の制度を定めるに当たり,大阪府教育委員会に認められた裁量権の範囲内のものというべきであり,その裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認めることはできない。 (4)原告らが主張する本件システムの違法事由について原告らは,以下のとおり,本件システムが憲法等に違反すると主張するが,原告らの主張は,以下のとおりいずれも採用できない。 ア憲法23条違反について原告らは,本件システムが教育長から評価を受けている校長が定める学校教育目標の達成に向けて各人の目標を自己申告させる形をとっており,評価者である校長の指揮が各教員の具体的な教育内容にまで及んでおり,原告らの教授の自由を侵害すると主張する。 そこで,検討するに,憲法23条は,学問研究の自由のみならず,その結果を教授する自由を含むことから,小学校,中学校及び高等学校の普通教育の場合においても一定の範囲における教授の自由が保障されるべきものではあるが,普通教育における教師の児童生徒に対する強い影響力及び支配力並びに教育の機会均等という観点から,全国的に一定の水準を確保すべき強い要請があることにかんがみれば,普通教育における教師の教授の自由は相当限定されたものと解するのが相当であり,例えば,教師が公 権力によって特定の意見のみを教授することを強制されないという意味において,また,子供の教育が教師と子供との間の直接 師の教授の自由は相当限定されたものと解するのが相当であり,例えば,教師が公 権力によって特定の意見のみを教授することを強制されないという意味において,また,子供の教育が教師と子供との間の直接の人格的接触を通じ,その個性に応じて行われなければならないという本質的要請に照らし,教授の具体的内容及び方法につきある程度自由な裁量が認められなければならないという意味において保障されるにすぎないというべきである(最高裁昭和51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁参照)。 本件において,前記前提事実,認定事実及び証拠(後掲)によれば,校長が定める学校教育目標は,「学校経営の重点」,「教科指導及び生活指導の重点」,「健康管理と指導の重点」等の学校を運営していく上での年間計画をその内容としており,その内容自体も大きな幅を持った表現で作成される大綱的なものであること(認定事実オ(イ),証人g),教職員が自己申告票に記載する事項も,別紙1の様式の各「目標達成区分」ごとに1年間重点的に取り組むべき目標を設定し,各「内容・実施計画」欄に目標を達成するために何をするのか(実施計画)を具体的に記入するにすぎず(前提事実(2)ウ(ア)),目標設定面談においても校長の指示は指導,助言の範囲にとどまること(前提事実(2)エ(ア),証人f,証人g)が認められる。このような事実からすれば,本件システムが教員に特定の内容を教授することを強制させるようなものとはいえず,また,個々の教職員の教育内容及び方法を不当に拘束するような性質のものともいえない。これらに加えて,学校教育目標は学校教育計画に基づくものであるところ,同計画は前年度の総括と改善計画及び学校協議会の提言を踏まえたものであり,その策定と総括には,すべての教職員がそれぞれのかかわっている分野で参画し 校教育目標は学校教育計画に基づくものであるところ,同計画は前年度の総括と改善計画及び学校協議会の提言を踏まえたものであり,その策定と総括には,すべての教職員がそれぞれのかかわっている分野で参画し,教職員や地域の保護者等の意見も踏まえて作成されるものであり,外部に公表されることが予定されたものであること(認定事実オ)をも併せて考えれば,本件システムにおいて,原告らが校長の定める学校教育目標等に沿って目標を自己申告しなければならないことをもって,原告らの 上記限定された範囲で認められる教授の自由が侵害されるとはいえない。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 イ教育基本法16条(旧教育基本法10条)違反について原告らは,①本件システムが,教育長によって評価される校長が定める,生徒の実態と乖離した教育目標に教諭を従わせ,それを基に自己申告させ,評価し,さらに給与への反映を図るものであり,教育行政による教員の自主性の否定であること,②本件システムが業績評価になじまない教育活動の評価であり,評価基準の明確性を欠き,校長等の管理職による恣意的な評価が介入する余地が大きいことから,本件システムは,教育に対する不当な支配に当たり,教育基本法16条に違反すると主張する。 (ア)本件システムにおいて,上記アのとおり,校長等の定める学校教育目標が学校運営の計画,方針等の大綱的なものであり,個々の教員の教育内容及び方法を不当に拘束するような性質のものとは認め難いことに加えて,学校教育目標が教職員や地域の保護者等の意見を踏まえたものであり,かつ外部に公表されることが予定された内容であることに照らせば,学校教育目標が生徒の実態と乖離したものになると認めることはできない。したがって,本件システムが,生徒の実態と乖離した教育目標を校長が定め,これに 表されることが予定された内容であることに照らせば,学校教育目標が生徒の実態と乖離したものになると認めることはできない。したがって,本件システムが,生徒の実態と乖離した教育目標を校長が定め,これに教諭を従わせるものと認めることはできず,原告らの上記①の主張は採用できない。 (イ)また,旧勤務評定において,その結果が一切公表されておらず,ともすれば,任命権者の主観的で情実の絡んだ評価に陥る危険性があったものであったのに対して,本件システムは,前記のとおり,業績評価と能力評価という二つの異なる観点から教職員の教育活動を幅広く適正に評価しようとしたものであり,その評価結果も開示され,その理由も説明されること,さらに,教職員は,校長等の評価に対する不服申立て及び校長への提言シートを利用することによって,評価結果や校長の学校 運営等について異議や意見を述べることができ,これらは校長自身の評価の考慮要素にもなることからすれば,旧勤務評定と対比する限り,本件システムは評価の客観性,透明性を高めたものといえる。したがって,本件システムの評価基準が明確性を欠き,校長等の恣意的な評価が介入する余地が大きいとまではいえず,原告らの上記②の主張も採用できない。 (ウ)さらに,普通教育における教師の児童生徒に対する強い影響力,支配力,及び全国的に一定の水準を確保すべき強い要請からすれば,普通教育においては,公権力の不当な介入が排除されるべきことは当然であるが,国等が普通教育の特質等を配慮しつつ,許容される目的のため必要かつ合理的と認められる関与ないし介入をすることは,それがたとえ教育の内容及び方法に関するものであっても,許されるというべきである(前掲最高裁昭和51年5月21日判決,最高裁昭和54年10月9日第三小法廷判決・刑集33巻6号503頁参照 ることは,それがたとえ教育の内容及び方法に関するものであっても,許されるというべきである(前掲最高裁昭和51年5月21日判決,最高裁昭和54年10月9日第三小法廷判決・刑集33巻6号503頁参照)。 本件システムにおいて,校長が目標設定面談において個人の設定目標に関して学校教育目標との整合,統合を求めるのは,教育活動の充実・改善,学校の活性化を図るために目標の共有化を目指すことによるものである。そして,当該学校教育目標が大綱的なものにすぎず,教職員や地域住民の意見も踏まえられていることにも照らせば,仮に,目標設定面談の過程において,国等が教育内容及び方法に関与ないし介入する側面があったとしても,それは必要かつ合理的な範囲内のものにとどまるものというべきである。また,前記のとおり,本件システムは,地公法40条及び地教行法46条に基づく合理的な勤務評定制度であるといえることからすれば,本件システムの下で,仮に,教職員に対する評価に付随して,国等が教育内容及び方法に関与ないし介入する側面があったとしても,それも必要かつ合理的と認められる範囲内のものにとどまり, いずれにしても,これらをもって教育内容に対する「不当な支配」に当たるということはできない。 したがって,公権力による教育内容及び方法への関与ないし介入を問題とする原告らの主張も採用できない。 ウ憲法26条違反について原告らは,①学校教育目標が現実の子供の状態を反映していないこと,②本件システムが教育目標を固定化し子供に対する柔軟な教育実践を阻害する危険性があることから,本件システムは憲法26条に違反すると主張する。 しかしながら,学校教育目標は,教職員や地域の保護者等の意見が踏まえられ,外部に公表されることが予定された内容である上,その内容も幅のある大綱的なものであること は憲法26条に違反すると主張する。 しかしながら,学校教育目標は,教職員や地域の保護者等の意見が踏まえられ,外部に公表されることが予定された内容である上,その内容も幅のある大綱的なものであることは,前記アのとおりであり,学校教育目標が現実の子供の状態を反映していないと認めることはできない。したがって,原告らの上記①の主張は採用できない。 また,本件において業績評価の前提となる設定目標は,教職員が自らの役割や子供たちの状況を踏まえて,「学ぶ力の育成」,「自立・自己実現の支援」及び「学校運営」の各目標設定区分ごとに重点的に取り組むべき目標を設定するものであり,それ以外の教育活動を否定する趣旨でないことは当然である上,教職員は,能力評価において,日常の業務遂行一般の評価を受け,この能力評価と業績評価とを踏まえて総合評価されるのであり,教職員の教育活動の評価の対象が設定目標に限定されるわけではないことも併せて考えれば,本件システムにおける目標の設定によって教育目標が固定化され,子供に対する柔軟な教育実践が阻害される危険性があると認めることはできず,原告らの上記②の主張も採用できない。 なお,憲法26条は,1項において「すべて国民は,法律の定めるところにより,その能力に応じて,ひとしく教育を受ける権利を有する」と定 め,2項において「すべて国民は,法律の定めるところにより,その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は,これを無償とする。」と定めており,この規定の背後には,国民各自が,一個の人間として,また,一市民として,成長,発達し,自己の人格を完成,実現するために必要な学習をする固有の権利を有すること,特に,自ら学習することのできない子供は,その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利 し,自己の人格を完成,実現するために必要な学習をする固有の権利を有すること,特に,自ら学習することのできない子供は,その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在していると考えられること(前掲最高裁昭和51年5月21日大法廷判決参照)からすれば,本件システムがこのような子供の学習をする権利に沿ったものであるべきことは当然である。そして,本件システムの目的は,教職員が自己申告票を提出し,自ら目標を立て,その達成に向けて日々の教育活動を行い,それに対する評価を受けることを通して,教職員の意欲・資質能力の向上,教育活動等の充実及び学校の活性化を図ることにあり(前提事実(2)イ(ア)),これらの究極的な目的が子供の教育環境を充実させ,子供の学力・社会の変化への対応力の向上及び豊かな人間性を育むことにあるといえることに照らせば,本件システムは,子供の学習をする権利に沿ったものというべきであり,この点からも原告らの上記主張は採用できない。 エ学校教育法37条4項違反について原告らは,本件システムが校長と他の教員との間の権力的指揮命令関係を定めるものであり,学校教育法37条4項に違反すると主張する。しかしながら,同項の解釈についてはともかくとして,本件システムは,地公法40条ないし地教行法46条に基づく勤務成績の評定についての制度であり,原告らはこれに従わなければならない上(地公法32条参照),本件システムの目的が職員の意欲・資質能力の向上,教育活動等の充実及び学校の活性化にあること(前提事実(2)イ(ア))からすれば,本件システムが違法な権力的指揮命令関係を定めたものともいえず,原告らの上記主張 は採用できない。 オILO・ユネスコ教員の地位に関する勧告違反について原告らは,IL )イ(ア))からすれば,本件システムが違法な権力的指揮命令関係を定めたものともいえず,原告らの上記主張 は採用できない。 オILO・ユネスコ教員の地位に関する勧告違反について原告らは,ILO・ユネスコ教員の地位に関する勧告が法的拘束力を有することを前提にした上で,本件システムが同勧告に違反すると主張する。 しかしながら,同勧告は,国による批准をせずにされるものであり,条約のように締結国を法的に拘束するものと解することはできず,勧告的な効力を有するにとどまると解すべきである。したがって,原告らの主張は,その前提を誤っており,それ自体失当である。 カ憲法19条違反について原告らは,本件システムは,原告らに校長の設定した学校教育目標等に従った目標設定を強制するものであり,良心の自由(憲法19条)を侵害すると主張する。 しかしながら,同条による「思想及び良心」とは,宗教上の信仰に準ずべき世界観,人生観等個人の人格形成の核心をなすものに限られ,一般道徳上,常識上の事物の是非,善悪の判断や一定の目的のための手段,対策としての当不当の判断を含まないと解するのが相当である。 本件システムにおいて,校長が設定する学校教育目標は,教職員や地域の意見が参考とされたものである上,その記載内容も幅のある大綱的なものであること(認定事実オ(イ)(ウ)(エ)),教職員が設定する目標も目標設定区分ごとに当該年度に重点的に取り組むべき目標(例えば,目標設定区分が「学ぶ力の育成」であれば,教科等の指導や自立活動についての具体的な目標等)を記載するにとどまること(前提事実(2)ウ)からすれば,本件システムにおいて,教職員に設定目標を記載させることが,教職員に特定の世界観,人生観等個人の人格形成の核心をなすものの記載を強制するものと認めることはできない。したがって (2)ウ)からすれば,本件システムにおいて,教職員に設定目標を記載させることが,教職員に特定の世界観,人生観等個人の人格形成の核心をなすものの記載を強制するものと認めることはできない。したがって,原告らの上記主張は採用できない。 キ地公法40条1項及び地教行法46条違反について原告らは,①教育公務員の職務は,人格の完成を目指すという高度に抽象的なものであり,再帰性,不確実性及び無境界性という特徴を有することから,自己申告票を主軸に据える本件システムにおいて,教育公務員に対する客観的な勤務評定をすることは不可能であること,②本件システムにおいて,自己申告票未提出者は教育活動をしているにもかかわらず総合評価をされないことから,本件システムは,地公法40条1項ないし地教行法46条に違反すると主張する。 (ア)まず,上記①について検討するに,確かに,教職員の教育活動は,人間を対象とし,人格の完成を目指してその育成を促す営みであり,その職務の範囲も多岐にわたることからすれば,その職務の性質上,勤務評定に当たって,他の一般職の公務員とは異なる考慮が一定程度必要であることは否定できない。しかしながら,前記(第3の5(3)ウ)のとおり,本件システムは,設定目標の達成状況についての教職員の活動の評価(業績評価)と日常の教職員の職務活動一般の評価(能力評価)という異なる二つの観点から,総合評価をしており,教職員の職務活動を幅広く適正に評価しようとしていること,その評価も公表された評価基準に基づき,その結果も開示,説明され,これに対する苦情申立て等の手続もあり,評価の適正性,公正性,透明性を図ろうとしていることに照らせば,本件システムは,教職員の職務を一義的に評価することが困難であるというその職務の特殊性を考慮した上で,その適正性,公正性, 手続もあり,評価の適正性,公正性,透明性を図ろうとしていることに照らせば,本件システムは,教職員の職務を一義的に評価することが困難であるというその職務の特殊性を考慮した上で,その適正性,公正性,透明性を図った勤務評定制度といえる(これは,前記(第3の5(3)ウ)のとおり,旧勤務評定において,ともすれば評価権者の主観的な評価の危険性があったことと比較すれば,より一層明らかである。)。 そうすると,本件システムは,教職員の職務の特殊性を考慮したものといえ,これをもって不合理とまではいえず,原告らの上記①の主張は 採用できない。なお,原告らの上記①の主張は,実質的には,およそ教育公務員に対する勤務評定はできないというに等しいが,地公法40条及び地教行法46条の規定からすれば,教育公務員に対しても何らかの形で勤務評定を行わなければならず,勤務評定を行わないことはかえってこれらの規定に違反するのであるから,上記原告らの主張はおよそ採用できないものである。 (イ)次に,上記②について検討するに,本件システムにおいて,自己申告票未提出者の総合評価はされないところ,確かに,評価者は,自己申告票未提出者に対して,設定目標の達成状況を評価の対象とする業績評価をすることは不可能であったとしても,日常の業務の遂行を評価対象とする能力評価をすることは可能である以上,評価者が自己申告票未提出者に対して一定の総合評価をすることも考えられないではない。 しかしながら,本件システムは,教職員の資質向上と学校の活性化を図るものであると同時に,多数の教職員について統一された勤務評定制度の下で,その評価を客観的,合理的に行うことによって,適正な人事管理の基礎資料を得ることをも当然にその目的としているものと解することができる。しかるに,自己申告票未提出者に対して一定 た勤務評定制度の下で,その評価を客観的,合理的に行うことによって,適正な人事管理の基礎資料を得ることをも当然にその目的としているものと解することができる。しかるに,自己申告票未提出者に対して一定の総合評価をすることになれば,本件システムによらない評価を許容し,教職員によって勤務成績の評定方法が異なることになり,上記の統一された勤務評定制度に基づいた適正な人事管理の基礎資料を取得するという目的を達成することが困難になる。加えて,そのような評価結果が本件システム全体との関係で客観性,適正性,公平性を保てるのか疑問である上,ひいては本件システム全体に対する信頼性に影響を及ぼす可能性も否定できない。そして,勤務評定の在り方をどのようにするかは評価権者の裁量に属する問題であること,自己申告票未提出者は,自らの意思で自己申告票を提出していないこと(なお,自己申告票の提出が原告らの教 授の自由等の憲法上の権利を制約するものでないことは前記のとおりである。)をも併せて考えれば,自己申告票未提出者について,総合評価をしないとの取扱いをすることが不合理とまではいえず,評価権者の裁量権の範囲内のものというべきである。 (ウ)したがって,自己申告票未提出者の総合評価をしないことをもって,地公法40条ないし地教行法46条に違反するということはできず,原告らの上記②の主張は採用できない。 ク自己申告票未提出者に対する給与上の不利益な取扱いについて原告らは,本件システムの評価結果(総合評価)と昇級する際の昇級号級数及び勤勉手当の成績率とが連動しているところ,自己申告票未提出者については,昇級せず,勤勉手当の成績率が100分の63.5(ただし,勤勉手当取扱要領の改正前は100分の61)とされており(昇級取扱要領5条3項本文,勤勉手当取扱要領5条3項本文 己申告票未提出者については,昇級せず,勤勉手当の成績率が100分の63.5(ただし,勤勉手当取扱要領の改正前は100分の61)とされており(昇級取扱要領5条3項本文,勤勉手当取扱要領5条3項本文),これは自己申告票の提出を不当に強制するものであり,違法であると主張する。そこで,検討する。 (ア)昇級取扱要領は,給与条例5条5項及び給料規則24条1項に基づく勤務成績に応じた昇級の取扱いについて定めたものであるところ(昇級取扱要領1条),勤務成績の評定の方法をいかに定めるかが任命権者の裁量に属するものであることからすれば,昇級取扱要領が違法になるのは,かかる裁量権の範囲を逸脱し,又はその濫用をしたといえる場合に限られると解すべきである。そこで,大阪府教育委員会が自己申告票未提出者は昇級しないものとすると定めたこと(昇級取扱要領5条3項本文)が,その裁量権の範囲を逸脱,濫用したものといえるか否かを検討する(なお,大阪市立学校の教職員の任命権者は,大阪市であるが,その勤務評定は大阪府教育委員会の定める計画(本件システム)に基づいて行うこと(地教行法46条),その給与等も大阪府が定める給与条 例,給料規則及び昇級取扱要領に基づいて行われること(前記(第3の1(2)イ(イ)))からすれば,上記教職員との関係でも,大阪府教育委員会における上記裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の有無を検討すれば足りるというべきである。)。 本件において,職員の昇級は当該職員の勤務成績についてその者の職務について監督する地位にある者の証明を得て行わなければならないとされているところ(給与条例5条5項,給料規則23条),前記のとおり,自己申告票未提出者に対して総合評価をしないとの取扱いが不合理とまではいえないことからすれば,自己申告票が未提出のため評価結果のな れているところ(給与条例5条5項,給料規則23条),前記のとおり,自己申告票未提出者に対して総合評価をしないとの取扱いが不合理とまではいえないことからすれば,自己申告票が未提出のため評価結果のない職員について,昇級しないとする取扱いは上記給与条例及び給料規則に沿った取扱いといえる。そして,本件システムにおける総合評価のない者に対して,一定の昇級を認めることになれば,これは自己申告票未提出者に一定の評価結果を与えることにほかならず,かかる結果が不合理であることは前記キ(イ)のとおりである。加えて,前記のとおり教職員に自己申告票の提出義務を課すことが憲法その他の法令に違反すると解することはできず,自己申告票未提出者は職務上の義務を履行していない者として服務規律に違反しているといえることも併せて考えれば,大阪府教育委員会が昇級取扱要領5条3項本文において,自己申告票未提出者について,昇級しないと定めたことが不合理とまではいえず,大阪府教育委員会の裁量権の範囲内のものというべきである。 (イ)また,勤勉手当取扱要領は,勤勉手当条例3条及び勤勉手当規則12条に基づく勤務成績に応じた勤勉手当の成績率の取扱いについて定めたものであるところ,上記(ア)と同様に,勤勉手当取扱要領が違法になるのは,大阪府教育委員会がその裁量権の範囲を逸脱し,又はその濫用をしたといえる場合に限られると解すべきである。 そこで検討するに,自己申告票未提出者に対して総合評価しないとの 取扱いが不合理とまではいえないところ,評価結果のない者に対して,通常の評価結果の者と同等の勤勉手当の成績率の取扱いをすることは,自己申告票未提出者に一定の評価結果を与えることにほかならず,かかる結果が不合理であることは前記キ(イ)のとおりであること,自己申告票未提出者は服務規律に違反し 勉手当の成績率の取扱いをすることは,自己申告票未提出者に一定の評価結果を与えることにほかならず,かかる結果が不合理であることは前記キ(イ)のとおりであること,自己申告票未提出者は服務規律に違反している者といえることからすれば,自己申告票未提出者を一番下の総合評価であるD評価の者と同様に取り扱い,勤勉手当の成績率を100分の63.5とすることも不合理とまではいえず,大阪府教育委員会の裁量権の範囲内のものというべきである。 なお,勤勉手当についても,評価結果がないのであれば,昇級の場合と同様に,勤務成績がないものとして,その成績率をゼロとすることも考えられないではないが,そうすると,勤勉手当が全く支給されないことになり,他方,勤勉手当がいわゆる一時金としての性格を有し,功労報償的意味合いだけでなく,現実には生活保障的意味合いも含むといえなくもないことからすれば,自己申告票未提出者の成績率をゼロではなく,100分の63.5とすることも大阪府教育委員会の裁量権の範囲内のものというべきである。 (ウ)以上からすれば,大阪府教育委員会が昇級取扱要領及び勤勉手当取扱要領において,自己申告票未提出者に対して,昇級をしないものとし,勤勉手当の成績率を100分の63.5と定めたことは適法というべきである。 (エ)原告らの主張についてa原告らは,上記自己申告票未提出者に対する給与上の不利益な措置は,自己申告票の提出の強制に従わない教職員に対する政治的処罰であり,懲戒処分と同視できることから,憲法31条に違反すると主張する。 しかしながら,憲法31条についての解釈はともかくとして,自己 申告票未提出者に対する給与上の不利益な措置が不合理とまではいえないことは前記のとおりであることからすれば,未提出の結果としての給与上の不利益が懲戒処分を受けた ての解釈はともかくとして,自己 申告票未提出者に対する給与上の不利益な措置が不合理とまではいえないことは前記のとおりであることからすれば,未提出の結果としての給与上の不利益が懲戒処分を受けた場合と同様であったとしても,これもって違法な懲戒処分又は政治的処罰と同視できるとはいえず,原告らの上記主張は採用できない。 b原告らは,本件システムの評価結果と給与上の処遇との関係が国家公務員の場合より,不利益な結果をもたらすものであることから,地方公務員の給与と国家公務員の給与との均衡を図った地公法24条3項に違反すると主張する。 しかしながら,原告らが主張する国家公務員の給与制度と本件システムとは,その制度を異にしており,これらを直接的に比較することが適当であるとはいい難い上,本件において,自己申告票未提出者に対する給与上の不利益な措置が不合理とまではいえないことは前記のとおりであることからすれば,本件における自己申告票未提出者の処遇が国家公務員との関係で地公法24条3項違反といえるほどの不均衡があるとはいえず,裁量権の範囲の逸脱,濫用になるともいえない。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 c原告らは,自己申告票を提出しないことは人格的な確信である「信条」に基づくものであることから,これを理由に不利益な取扱いをすることは地公法13条に違反すると主張するが,自己申告票の提出が個人の思想・良心等の問題にならないことは前記カのとおりである上,自己申告票未提出者に対する給与上の不利益な措置が不合理とまではいえないことは前記のとおりであるから,これをもって,信条等に基づく不合理な差別とはいえない。したがって,原告らの上記主張は採用できない。 d原告らは,教育基本法9条1項及び2項によって,教員には特別の 身分保障がされなけれ ら,これをもって,信条等に基づく不合理な差別とはいえない。したがって,原告らの上記主張は採用できない。 d原告らは,教育基本法9条1項及び2項によって,教員には特別の 身分保障がされなければならず,具体的な服務違反ではない教育活動を理由に不利益処分を課することは許されず,自己申告票未提出者に対する給与上の不利益な措置は,教員の上記特別の身分保障を定めた教育基本法9条に違反すると主張する。しかしながら,教育基本法9条1項,2項の解釈はともかくとして,自己申告票未提出者が服務規律に違反している者といえることは前記のとおりであるから,原告らの上記主張はその前提を欠いている。また,本件は,地公法40条ないし地教行法46条に基づいて定められた勤務評定制度であるところ,教育公務員の職務とその責任の特殊性に基づき,その任免,給与,分限,懲戒,服務及び研修等について規定する教育公務員特例法には,上記勤務評定についての規定を排除する趣旨の定めはうかがわれないこと,前記のとおり自己申告票未提出者に対する給与上の不利益な措置が不合理とまではいえないことからすれば,自己申告票未提出者が被る給与上の不利益をもって,教育基本法9条に違反するとはいえず,原告らの上記主張は採用できない。 e原告らは,仮に,自己申告票の作成・提出が職務の一環であるとしても,自己申告票未提出者について,懲戒処分対象者を予定している総合評価Dとして取り扱うことは,過大な制裁又は不利益であって,比例原則に反するとも主張している。しかしながら,本件システムにおいて,自己申告票未提出者について総合評価をしないという取扱いが,評価権者の裁量権の範囲内のものであることは前記(キ(イ))のとおりであり,評価結果の客観性,適正性及び公平性の保持という観点からすれば,結果として,総合評価 ついて総合評価をしないという取扱いが,評価権者の裁量権の範囲内のものであることは前記(キ(イ))のとおりであり,評価結果の客観性,適正性及び公平性の保持という観点からすれば,結果として,総合評価を受けていない者が総合評価の最低ランクDに区分されることも合理性が認められるところである。 このことからすれば,原告ら主張の点も裁量違反とまではいえず,比例原則違反を問題にすることもできないというべきである。 ケ以上からすれば,本件システムが違法であるとはいえない。 争点(6)(勤勉手当支払請求権)及び同(7)(慰謝料請求権)について原告らは,本件システムが違法であることを前提とした上で,未払勤勉手当請求権又は不法行為に基づく損害賠償請求権を有すると主張するが,本件システムが違法であるとはいえないことは,前記のとおりであるから,原告らの上記各請求はその前提を欠き理由がない。 結論 以上より,原告らの訴えのうち,原告番号1から20までの原告ら及び原告aらの被告大阪府に対する自己申告票提出義務の不存在確認の訴え(主文1(1)),原告らの被告大阪府に対する給与上不利益な評価を受けない地位の確認を求める訴え(主文1(2)),原告e(原告番号4)の被告大阪市に対する自己申告票提出義務の不存在確認の訴え(主文1(3)),及び原告番号1から20までの原告らの大阪市に対する給与上不利益な評価を受けない地位の確認を求める訴え(主文1(4)),は,いずれも不適法な訴えであるから却下し,原告らのその余の訴えに係る請求はいずれも理由がないから棄却する(主文2)こととし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官吉田徹裁判官小林康彦 裁判官棚井啓 主文 とし、主文のとおり判決する。 理由 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官吉田徹裁判官小林康彦 裁判官棚井啓
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