令和5年(ラ)第45号仮処分命令申立て却下決定に対する抗告事件令和6年3月15日大阪高等裁判所第11民事部決定 主文 本件抗告を棄却する。 抗告費用は抗告人らの負担とする。 理由 第1 抗告の趣旨 1 原決定を取り消す。 2 相手方は、抗告人らに対し、福井県三方郡美浜町丹生66号川坂山5番地3において、美浜発電所3号機を運転してはならない。 第2 事案の概要等(以下、特記しない限り略語は原決定の例による。) 1 事案の要旨本件は、相手方が設置し、運用している発電用原子炉施設である美浜発電所3号炉(本件発電所)について、本件発電所から一定距離の範囲内に居住する抗告人らが、本件発電所は運転開始から40年以上経過して老朽化し、特に地震に対する安全性を欠いている上、避難計画にも不備があるから、その運転中に放射性物質を環境中に大量に放出する重大事故を起こし、抗告人らの人格権が侵害される具体的危険があると主張して、人格権に基づく妨害予防請求権としての本件発電所の運転差止請求権を被保全権利として、本件発電所の運転を仮に差し止める仮処分命令の申立て(以下「本件申立て」という。)をした事案である。 原審が本件申立てを却下したところ、抗告人らが即時抗告をした。 なお、抗告人らのうち抗告人Hは当審係属中に死亡し、同人に係る本件の手続はこれにより当然に終了した。 2 前提事実 前提事実は、原決定「理由」の第3に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は原決定「理由」の第4に、原審における当事者の主張は同第5に記 前提事実は、原決定「理由」の第3に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は原決定「理由」の第4に、原審における当事者の主張は同第5に記載のとおりであるから、これを引用する。 当審における抗告人らの主張は、即時抗告申立書及び抗告審準備書面~に、相手方の主張は答弁書及び抗告審主張書面~にそれぞれ記載のとおりであるから、これらを引用する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、本件申立ては理由がないものと判断する。 その理由は、2のとおり原決定を補正し、3のとおり説明を付加するほか、原決定「理由」の第6に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 原決定の補正 原決定82頁9行目から11行目までを次のとおり改める。 「以上によれば、抗告人らのその余の主張を踏まえて検討しても、相手方の行った中性子照射脆化評価及び原子力規制委員会の審査に不合理な点はなく、中性子照射脆化によって抗告人らの人格的利益が侵害される具体的危険が存在すると認めることはできない。」 原決定85頁15行目から22行目までを次のとおり改める。 「また、抗告人らは、原子力発電所の設計等や、相手方の耐震安全性評価において、安全率が設定されていないことを問題にするが、前記(1)アのとおり、新規制基準が使用を認めているJEAG4601-1987等の基準に従った耐震安全性評価において、抗告人らが主張する設計時に考慮すべき不確かさは十分に考慮されているといえる。このことを踏まえると、新規制基準や相手方の耐震安全性評価に不合理な点はなく、安全率が設定されていないからといって本件発電所の安全性に問題があるということはできない。抗告人ら のその余の主張も、前記判断を左右 規制基準や相手方の耐震安全性評価に不合理な点はなく、安全率が設定されていないからといって本件発電所の安全性に問題があるということはできない。抗告人ら のその余の主張も、前記判断を左右しない。」 原決定87頁10行目の「X線回析法」を「X線回折法」と改める。 原決定95頁1行目及び4行目から5行目にかけての各「本件発電所の敷地」をいずれも「本件発電所建屋の基盤敷地」と改める。 原決定95頁18行目から97頁26行目までを次のとおり改める。 「原子力規制委員会は、平成24年12月7日に開催された地震等基準検討チームの第3回会合において、新規制基準の検討事項の一つに「活断層がサイトの至近距離にある場合の不確かさを考慮した地震動評価」を挙げ、有識者らに諮った。その冒頭で、原子力規制庁の担当官から、「背景事情として、敦賀発電所においては基準地震動策定の検討用地震となっている浦底断層の露頭が1号機及び2号機の約250mの至近距離にあるが、同浦底断層など活断層がサイトの至近距離にある場合の地震動評価には、①現在の断層モデルを用いた手法の枠組みで評価できない現象、効果等が存在する可能性がある、②断層モデルを用いた手法を用いる場合、震源断層モデル等の設定が地震動評価に及ぼす影響が顕著に表れやすいと考えられるため、既存の調査、評価手法による設定の適用性を再検討する必要があるという問題意識を持っている。」旨の説明がされ、「震源断層モデル等の不確かさの考慮をより総合的に実施するための考え方か、地震動評価そのものに工学的な判断を加味した考え方を検討してはどうか。」との問題提起がされた。なお、同会合では、上記説明と同内容の背景事情や検討課題、敦賀原子力発電所の地震発生層の評価概要図が記載され、同図に、「上端深 学的な判断を加味した考え方を検討してはどうか。」との問題提起がされた。なお、同会合では、上記説明と同内容の背景事情や検討課題、敦賀原子力発電所の地震発生層の評価概要図が記載され、同図に、「上端深さは4kmとされているが、原子力保安院意見聴取会では、地表面まで断層が露頭していることから、地震発生層上端深さはもっと浅いのではないかと指摘されている。」旨が付記された資料及び同日付けで作成された「(骨子素案)発電用軽水型原子炉施設の地震及び津波に関わる新安全設計基準〈前回からの修正版〉」と題 する書面が配布された。これは、基準地震動の策定に関するものであったが、その中に本件特別考慮規定に相当する規定案はなく、検討事項として「・活断層がサイトの至近距離にある場合に、現状の地震動評価では再現が難しいような現象、効果等が存在する可能性を踏まえ、地震動評価における震源断層モデル等の不確かさの考慮をより総合的に実施するための考え方を検討するか。または、地震動評価そのものに工学的な判断を加味した考え方を検討するか。」、「・活断層がサイトの至近距離にある場合に、地震動評価に及ぼす影響が特に大きいと考えられる震源断層モデル等の設定について、調査・評価の限界も踏まえ、工学的判断を含めた設定の考え方を検討するか。」との点が掲げられていた。 (甲32の1〔2、38、39頁〕、122、163、乙164)上記の会合において、地震等基準検討チームのB氏は、原子力規制庁の担当官からの説明と問題提起を受けて、「数km以内、例えば1kmとか2km以内のサイトについては、物理モデルとして波動論的な計算手法が破綻する領域になっている。」、「不均一さもどの程度の大きさを持っているのかわからない。」、「それでも安全性を審査しなければならないのであれば、恐らく ついては、物理モデルとして波動論的な計算手法が破綻する領域になっている。」、「不均一さもどの程度の大きさを持っているのかわからない。」、「それでも安全性を審査しなければならないのであれば、恐らく今我々が持っている手法が破綻をしかけているようなところなので、その不確実さを定量的に上乗せして初めて説得できる値を作ることができる。」などと述べた。C委員が、「震源に非常に近づいてくると、我々、よくわかっていない領域である。」、「このようなときには実は適切な手法がない。」などとB氏の発言を引き取り、他の有識者からは、厳しい耐震設計を要求すべきである旨の意見が出された。 (甲32の1〔47、49~61頁〕)原子力規制委員会は、平成24年12月27日に開催された地震等基準検討チームの第5回会合において、「(骨子素案)発電用軽水型原子炉施設の地震及び津波に関わる新安全設計基準〈前回からの修正版〉」と題する書面(以下、同日付けの骨子素案を単に「骨子素案」という。)を配布した。骨 子素案には、「⑦内陸地殻内地震について選定した検討用地震のうち、敷地内に活断層の露頭がある等、震源が敷地に近接している場合は、上記⑥の各種の不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価し、十分な裕度を考慮して基準地震動Ssを策定すること」との本件特別考慮規定の案が記載されており、⑦について、「いわゆる敷地内、あるいは敷地近傍に活断層の露頭があるなど、震源が敷地に近接している場合の取扱いについて、基準地震動策定について留意すべき事項として記載した」旨の説明が行われた。(甲166〔25頁〕、乙165)」骨子素案に対しては、D氏が、震源として考慮する活断層の露頭やそれに伴う副次的なものが敷地の中にある場合については地盤の安定性の箇所に関連する記述がある た。(甲166〔25頁〕、乙165)」骨子素案に対しては、D氏が、震源として考慮する活断層の露頭やそれに伴う副次的なものが敷地の中にある場合については地盤の安定性の箇所に関連する記述があること、また、基準地震動評価における地震発生層の上端深さを考えると、ここの記述で重要なのは、震源断層が敷地に近い場合の基準地震動の保守的な評価であるため、「敷地内に活断層の露頭がある等」を削除し、「敷地に近接する」を「敷地に近い」にすべきであるとの意見書(甲124)を提出した。さらに、D氏は、平成25年1月15日に開催された地震等基準検討チームの第6回会合において、「要求しているのは震源断層、基準地震動なので、やはり地震発生層等の深さの関係、そういうことを考えると、地震動の要求事項としてはこのような文章の方がよい。」との意見を述べた。(甲89〔44頁〕)原子力規制委員会は、同月22日に開催された地震等基準検討チームの第7回会合において、骨子素案につき、「⑥内陸地殻内地震について選定した検討用地震のうち、震源が敷地に極めて近い場合は、震源として想定する断層の形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係、並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討するとともに、これらの検討結果を踏まえた評価手法の適用性に留意の上、上記⑤の各種の不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価し、震源が敷地 に極めて近い場合の地震動の特徴に係る最新の知見を踏まえても十分な裕度を考慮して基準地震動Ssを策定すること」と修正した案を示し(甲88)、その後、若干の修正を経て、本件特別考慮規定が定められた。」 原決定110頁25行目から116頁15行目までを削る。 3 付加説明 司法審査の在り方(判断の枠組 示し(甲88)、その後、若干の修正を経て、本件特別考慮規定が定められた。」 原決定110頁25行目から116頁15行目までを削る。 3 付加説明 司法審査の在り方(判断の枠組み)について(争点1)本件における司法審査の判断枠組みについては、原決定「理由」の第6の1を引用して説示したとおりであり、まず、相手方において、本件発電所の安全性に関し、原子力規制委員会が本件発電所の審査に用いた具体的審査基準に不合理な点がないこと並びに原子力規制委員会のした適合性判断について、その調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落がないなど、不合理な点がないことを主張、疎明する必要があるが、相手方が上記主張、疎明を尽くした場合には、抗告人らにおいて、本件発電所の安全性に欠ける点があり、抗告人らの生命、身体等の人格的利益が侵害される具体的危険が存在することについて、主張、疎明する必要があるというべきである。 高経年化の問題について(争点2ア)ア抗告人らは、本件発電所は過酷な環境下で長期間運転されてきたから、照射脆化(中性子照射脆化)、金属疲労及び腐食といった金属材料の経年劣化の影響を避けられず、トラブルや故障が増加するリスクがあるところ、経年劣化事象を抽出することには限界があり、新規制基準は高経年化対策として不十分である旨主張する。 そこで判断すると、本件発電所は運転期間40年を超えるものであるから、使用されている材料等設備の経年劣化が懸念されることは否定できない。そのため、原子力規制委員会も、40年の運転期間を満了した原子力発電所について、長期間の運転に伴い生じる原子炉その他の設備の劣化状況を踏まえ、安全性を確保するための基準として同委員会で定める基準に 適合しているときに 0年の運転期間を満了した原子力発電所について、長期間の運転に伴い生じる原子炉その他の設備の劣化状況を踏まえ、安全性を確保するための基準として同委員会で定める基準に 適合しているときに限り延長を認可することができる(40年ルール)ものとしたのである。 そして、新規制基準の下で実施された本件発電所の運転期間延長認可申請に係る特別点検及び劣化状況評価の状況は原決定第3の5イのとおりであり、その具体的内容及び結果は次のとおりである(乙53〔6頁以下〕、191)。 特別点検の要求事項及び点検結果a 原子炉容器母材及び溶接部(炉心領域の100%)につき、中性子照射脆化に着目し、超音波探傷試験により欠陥の有無を、一次冷却材ノズルコーナー部につき、疲労に着目し、渦流探傷試験により欠陥の有無を、炉内計装筒(全数)につき、応力腐食割れに着目し、溶接部は目視確認、管内部は渦流探傷試験により欠陥の有無をそれぞれ確認した。 その結果、有意な欠陥は認められなかった。 b 原子炉格納容器原子炉格納容器鋼板(接近できる点検可能範囲の全て)につき、腐食に着目し、目視試験により塗膜状態を確認した。 その結果、有意な塗膜の劣化や腐食は認められなかった。 c コンクリート構造物コンクリートにつき、強度低下及び遮蔽能力低下に着目し、コアサンプルにより強度、遮蔽能力、中性化、塩分浸透、アルカリ骨材反応を確認した。 その結果、コンクリート構造物の健全性に影響を与えるおそれのある劣化は認められなかった。 劣化状況評価a 低サイクル疲労 一次系の配管等は運転-停止に伴う加熱-冷却の熱サイクルにより繰り返し応力を受 ある劣化は認められなかった。 劣化状況評価a 低サイクル疲労 一次系の配管等は運転-停止に伴う加熱-冷却の熱サイクルにより繰り返し応力を受けること、容器と配管の接続部等、応力集中の大きい部位でも加熱-冷却の繰り返しによる疲労割れが発生する可能性があることから、今後の熱サイクル回数(過渡回数)の予測を実績の1. 5倍以上になるよう設定して健全性評価を行った。その結果、評価対象部位のすべてにおいて疲労累積係数は、評価基準値(許容値)である1を下回った。 b 原子炉容器の中性子照射脆化原子炉の運転に伴い、原子炉容器の材料である低合金鋼が中性子照射を受けることにより靭性(粘り強さ)が低下することから、①加圧熱衝撃試験及び②上部棚吸収エネルギー評価(原子炉運転状態の温度領域において原子炉容器母材の粘り強さ(吸収エネルギー)が68Jを上回るかの確認)を行った。 その結果、①原子炉容器の耐力の指標となる破壊靭性値は応力拡大係数(重大事故時等に亀裂を進展させようとする力)を上回ること、②上部棚吸収エネルギー評価の結果は125Jであり基準値を上回ったことが確認された。 c 照射誘起型応力腐食割れ原子炉の炉内構造物は、運転に伴う中性子照射量が一定の値を超えた場合に応力腐食割れが発生する可能性があることから、発生予測方法に基づき、ステンレス鋼であり中性子照射量が大きい炉内構造物であるバッフルフォーマボルトにつき損傷予測を行った。その結果、運転開始後60年時点の損傷予測本数は管理損傷ボルト本数(全体の20%)以下であった。 d 2相ステンレス鋼の熱時効 一次冷却材管、弁・ポンプのケーシング 、運転開始後60年時点の損傷予測本数は管理損傷ボルト本数(全体の20%)以下であった。 d 2相ステンレス鋼の熱時効 一次冷却材管、弁・ポンプのケーシングに使用されている2相ステンレス鋼は、原子炉の運転に伴い長期間高温にさらされると材料の靭性(粘り強さ)が低下することから、原子炉施設で使用されている2相ステンレス鋼の熱時効(靭性低下)について、欠陥を想定した亀裂進展評価及び不安定破壊評価を行った。その結果、初期欠陥を想定して60年後の亀裂の進展を想定しても亀裂は貫通まで至らないこと(亀裂進展評価)及び貫通欠陥を想定しても欠陥が拡大することはないこと(不安定破壊評価)が確認された。 e 電気・計装品の絶縁低下ケーブル等の電気・計装設備は使用環境や重大事故時等の熱・放射線により絶縁性能が低下する可能性があることから、熱及び放射線を照射するなどの方法で健全性試験が実施された。その結果、電気計装設備は運転開始後60年まで有意な絶縁低下が発生しないと評価された。 f コンクリート構造物の強度低下及び遮蔽能力低下コンクリートは、熱、放射線、中性化、塩分浸透、機械振動、アルカリ骨材反応、凍結融解等の経年劣化事象により強度が低下する可能性があることから、コンクリートコアより中性化領域を測定し、中性化の進行を予測する等の方法により劣化事象の評価を行った。その結果、コンクリートの中性化深さは運転開始後60年目においても鉄筋が腐食し始める深さにならず、中性化以外の劣化事象についても設計強度を下回らなかった。 g 耐震安全性評価炭素鋼配管のエルボ部、配管径変化部等の内部の流体が偏流する部位で、流速、温度条件等により配管の腐食が発生する流れ加速型腐食等が評 ても設計強度を下回らなかった。 g 耐震安全性評価炭素鋼配管のエルボ部、配管径変化部等の内部の流体が偏流する部位で、流速、温度条件等により配管の腐食が発生する流れ加速型腐食等が評価されたが、上記流れ加速型腐食を考慮しても耐震上の許容応 力を下回り、それ以外の耐震安全性評価項目についても要求事項を満足するとの結果であった。 h 耐津波安全性評価浸水防護施設につき、日常的な点検を実施し、施設の安全性を確保することにより、津波が発生した場合においても機能することが確認された。 以上の事実によれば、新規制基準は、抗告人らが懸念する中性子照射脆化、金属疲労及び腐食といった金属材料の経年劣化の問題を十分に考慮し、上記のような特別点検及び劣化状況評価を求めているといえる。また、上記特別点検等は、高経年化対策実施ガイドが高経年化技術評価の実施に当たり利用を認める社団法人日本原子力学会作成のPLM基準2008版(乙188)に基づき、着目すべき経年劣化事象と部位の組合せを抽出して行われているところ、その点検項目や基準等について不合理な点は見当たらない。 抗告人らは、原子炉圧力容器内のステンレス製構造物につき、浴びる中性子の量が桁外れに大きいから照射脆化の問題がある旨主張する。しかし、一件記録によれば、相手方は、炉内構造物につき、予防保全の観点から、最も照射誘起型応力腐食割れが発生しやすい部位であるバッフルフォーマボルトを含む一式を最新設計のものに取替え済みであり、その際ボルトの形状を変更することでボルトに発生する応力を低減するなど、耐応力腐食割れ性の向上を図っていると認められる。取替え後のバッフルフォーマボルトについて、運転期間延長認可申請の際に照射誘起応力腐食割れに対 形状を変更することでボルトに発生する応力を低減するなど、耐応力腐食割れ性の向上を図っていると認められる。取替え後のバッフルフォーマボルトについて、運転期間延長認可申請の際に照射誘起応力腐食割れに対する安全性を有することが確認されたことは上記のとおりであり、経年劣化を考慮した耐震安全性評価時には、バッフルフォーマボルトが大きく損傷したと仮定した上での基準地震動に対する制御棒挿入性評価が行われ、制御棒が規定時間内に原子炉内に挿入されることが確認されている。(乙1 86の2〔3.7.15~3.7.17〕、192〔24・26頁〕、196〔14・15頁〕、乙220〔39・40頁〕)イ抗告人らは、令和5年10月に高浜原子力発電所3号機で蒸気発生器の伝熱管2本に減肉やひびが見付かったことが発表されたこと(甲194)に関連し、同3号機では外面減肉と応力腐食割れが繰り返し発生しており、原子力発電所の蒸気発生器には腐食事象の原因が常に存在する旨主張する。 しかし、この点については、本件発電所では、平成16年8月に二次系配管の減肉の見落としによる重大事故が発生したことを踏まえ、3回の定期検査以内に全数を再度点検する、減肉傾向が認められるもので余寿命10年未満のものについては、原則数回の定期検査で耐食性に優れた材料に取り替えるなどの高経年化対策がとられていると認められる。 (乙191)ウ抗告人らは、原子炉の冷却機能は電気によって水を循環させることによって維持されるから、電気又は水のいずれかが一定時間断たれると炉心損傷を伴う大事故になるのは必定であるところ、本件発電所の主給水ポンプは耐震性がSクラスとされていないため基準地震動に満たない地震動によって損壊又は故障する可能性があり、その場合、給水を補助給水システムに切り替えるには複 は必定であるところ、本件発電所の主給水ポンプは耐震性がSクラスとされていないため基準地震動に満たない地震動によって損壊又は故障する可能性があり、その場合、給水を補助給水システムに切り替えるには複数の工程を踏む必要があるが、従業員は強い精神的緊張を強いられるし、本件発電所は稼働期間が40年以内の発電所と比較すると機器の起動不能や誤作動等が格段に多く生じるから炉心損傷前に確実に冷却に至る安全性が確保されているとはいえない旨を主張する。 そこで判断すると、本件発電所の主給水ポンプが機能喪失した場合のバックアップ体制については、原決定第3の2イのとおりであり、補助給水ポンプが自動起動して蒸気発生器に給水する(乙19〔添付書類十、10-2-22・23〕)と認められるから、主給水ポンプの機能が喪失した場合に直ちに従業員らによる手動の作業が必要となるわけではないし、補助給水ポンプについては、運転開始後60年時点で基準地震動に対する 耐震安全性を有することが確認されている(乙186の2〔3.1.1~〕)。 そして、主給水ポンプが機能を喪失し、補助給水系も機能を喪失した場合には、従業員らが手動での作業を試みることになる可能性はあるが、この場合について相手方は、炉心の著しい損傷を防止するため、短期対策として充てん/高圧注入ポンプ及び加圧器逃し弁を用いた高圧注入系によるフィードアンドブリード、長期対策として充てん/高圧注入ポンプ及び余熱除去ポンプによる再循環並びに余熱除去ポンプによる炉心冷却を整備している(乙19〔添付書類十、10-7-2~5、16〕)。これ以外にも、相手方は、外部電源が機能喪失し、更に非常用電源設備の機能が喪失した場合等、炉心の著しい損傷に至る事故シーケンスを想定し、対策を講じており、これらの過程において、機 2~5、16〕)。これ以外にも、相手方は、外部電源が機能喪失し、更に非常用電源設備の機能が喪失した場合等、炉心の著しい損傷に至る事故シーケンスを想定し、対策を講じており、これらの過程において、機器の起動不能や誤作動が格段に多く生じるという具体的なおそれは見いだせない。また、上記対策の有効性評価については、原子力規制委員会により新規制基準に適合していると確認されている(乙55の2〔155頁以下〕)。このように、本件発電所については、想定し得る機能喪失の組合せについて炉心損傷を生じさせないための方策は採られていると認められ、その有効性を確認した原子力規制委員会の判断にも不合理な点は見当たらない。また、相手方は重大事故等への対策要員として常時少なくとも49名を確保している(乙19〔373頁〕)から、深夜も含めて、事故対策に充てるべき人員は確保されているといえる。重大事故等発生時における人員の役割分担や要員配置等の体制についても、これを単に整備するだけでなく、実際に設備や資機材を配置して電源供給、給水活動を行う訓練を夜間や休日も含めて実施していると認められる(美浜発電所原子炉施設保安規定13条)(乙185、審尋の全趣旨)。 エ抗告人の主張を踏まえ検討しても、新規制基準が定める高経年化対策につき、その評価対象機器・構造物や評価方法等において、不合理な点は見いだせない。そして、本件発電所の高経年化の問題については、新規制基 準の下、劣化が生じやすい部位は早期の取替えを行うなどの取扱いがされており、特別点検によって運転に懸念を生じさせるような劣化等は認められないと確認されている。したがって、新規制基準及びこれに基づく相手方の対応が高経年化対策として不十分である旨の抗告人らの主張は採用できない。 原子炉建屋の変位のおそ させるような劣化等は認められないと確認されている。したがって、新規制基準及びこれに基づく相手方の対応が高経年化対策として不十分である旨の抗告人らの主張は採用できない。 原子炉建屋の変位のおそれのない地盤への設置の有無について(争点2ア)ア抗告人らは、解釈別記1第3条3項が耐震重要施設は将来活動する可能性のある断層等(後期更新世(約12~13万年)以降の活動が否定できない断層等)の露頭がないことを確認した地盤に設置するよう求めていることに関連し、本件発電所の敷地内破砕帯は後期更新世以降の活動が否定できないから、将来活動する可能性のある断層等と評価すべきである旨主張する。 しかし、様々な調査を尽くしたが後期更新世以降の活動の可能性が推定できない場合に機械的に「将来活動する可能性のある断層等」に当たるとされるものではないことは原決定を引用の上説示したとおりである。 イまた、抗告人らは、新規制基準では敷地につき三次元的な地下構造を把握することが求められているのに相手方は三次元反射法地震探査を実施しておらず、これでは敷地内破砕帯をもれなく把握することができないとも主張する。 そこで判断すると、解釈別記2第4条5項4号は、基準地震動の策定に当たっての調査に関し、地震波の伝播特性に係る考慮事項として、「①敷地及び敷地周辺の地下構造(深部・浅部地盤構造)が地震波の伝播特性に与える影響を検討するため、敷地及び敷地周辺における地層の傾斜、断層及び褶曲構造等の地質構造を評価するとともに、地震基盤の位置及び形状、岩相・岩質の不均一性並びに地震波速度構造等の地下構造及び地盤の減衰 特性を評価すること。なお、評価の過程において地下構造が成層かつ均質と認められる場合を除き、三次元的な地下構造により検討すること、②上 性並びに地震波速度構造等の地下構造及び地盤の減衰 特性を評価すること。なお、評価の過程において地下構造が成層かつ均質と認められる場合を除き、三次元的な地下構造により検討すること、②上記①の評価の実施に当たって必要な敷地及び敷地周辺の調査については、地域特性及び既往文献の調査、既存データの収集・分析、地震観測記録の分析、地質調査、ボーリング調査並びに二次元又は三次元の物理探査等を適切な手順と組合せで実施すること」を定めている。相手方は、地震動評価に関し三次元反射法地震探査を実施していないが、これは、相手方が本件発電所の敷地及び敷地周辺の地下構造を評価するに当たり、浅部地盤に関して試掘坑内弾性波試験、二次元反射法地震探査等、深部地盤に関して微動アレイ観測等の各種調査を実施した上、地下構造は水平成層かつ均質であると評価した、すなわち上記除外事由があると判断したためと認められる(乙55の2〔12・13頁〕)。原子力規制委員会は上記地下構造の評価につき解釈別記2に適合すると認めており、その判断に不合理な点は見当たらない。 震源極近傍敷地の問題について(争点2イ)抗告人らは、本件特別考慮規定は浅部断層が発する短周期地震動に対する考慮を求めるものであるとの理解の下、「震源が敷地に極めて近い場合」とは、敷地から断層までの最短距離が数km以内を意味すると解するべきであり、本件発電所の敷地と断層との最短距離は白木―丹生断層との間は概ね500m、C断層との間は概ね2kmで、白木-丹生断層及びC断層が活動すると本件発電所敷地は深部断層からの地震動に加え、浅部断層からの短周期地震波に襲われるおそれがあるから、本件発電所は上記各断層との関係で震源極近傍に当たる旨主張する。 そこで判断すると、まず、本件特別考慮規定にいう 層からの地震動に加え、浅部断層からの短周期地震波に襲われるおそれがあるから、本件発電所は上記各断層との関係で震源極近傍に当たる旨主張する。 そこで判断すると、まず、本件特別考慮規定にいう「敷地」が敷地全体と原子炉建屋基盤のいずれを指すのかとの点について、敷地内及び敷地周辺の地質・地質構造調査に係る審査ガイド(乙275)は、「敷地内」や「敷地 周辺」、「敷地極近傍」といった文言を用いる一方、「重要な安全機能を有する施設の地盤」、「原子炉建屋等構造物の基礎地盤」等の文言も使用し、敷地と施設基盤を区別しているから、少なくとも同ガイドの「敷地」との文言は原子炉施設の敷地全体との意味で用いられていると解される。もっとも、本件特別考慮規定が原子炉の安全性確保の観点から設けられたものであることからすれば、同規定の「敷地」は原子炉建屋基盤をいうものと解するのが合理的であるから、これを前提として以下検討する。 ア解釈別記2中の本件特別考慮規定及びこれについての地震ガイドの記載内容は前記引用に係る原決定「理由」欄第3の5アa⑤(原決定23頁)及び同b⑦(同25・26頁)のとおりである。 本件特別考慮規定は冒頭で地表に変位を伴う断層全体を考慮するよう求めており、同規定は震源極近傍において、震源断層(深部断層)だけのモデルではなく、浅部断層も含めた断層全体について適切な震源モデル設定を行うよう求めているものと解される。 そして、本件特別考慮規定が設けられた際の地震等基準検討チームにおける議論及び検討の状況は当審において補正の上引用した原決定「理由」の第6の5ウ(本決定前記2)記載のとおりである。これによれば、その議論の経緯、すなわち震源がサイトに極めて近い場合について何らかの基準を設けることができるかが検討事 の上引用した原決定「理由」の第6の5ウ(本決定前記2)記載のとおりである。これによれば、その議論の経緯、すなわち震源がサイトに極めて近い場合について何らかの基準を設けることができるかが検討事項となった背景は、敦賀原子力発電所では耐震設計上考慮する活断層である浦底断層の露頭が1号機及び2号機から約250mの至近距離にあり、同断層は基準地震動Ssを策定する際の検討用地震の対象となるためであったと解されること、検討活断層がサイトの至近距離にある場合に現状の地震動評価では再現が難しい現象、効果等が存在するかどうか自体明らかでないことを前提に議論が開始されたこと、原子力規制委員会において作成した骨子素案には、敷地極近傍の例として「敷地内に活断層の露頭がある等」との表現が用いられていたが、より慎重な意見を有す る有識者もあったことから議論を経て骨子素案から上記表現が削除され、本件特別考慮規定には定量的な距離が記載されなかったことといった事情が認められる。以上に鑑みると、本件特別考慮規定は、震源がサイトの至近距離にある場合に現状の地震動評価では再現が難しい現象が生じるかどうかについて専門的知見が集積されていない状況下で、具体的基準を示すことができるかどうか検討されたものの、極近傍とすべき場合ないし距離について専門家の意見がまとまるには至らず、これについては、具体的審査時における最新の科学的知見を踏まえた原子力規制委員会の個別具体的な判断に委ねたものと解するのが相当である。 その後、平成28年に発生した熊本地震について、震源極近傍でも現行のレシピによる地震動評価は可能との研究結果が令和3年までに示された(乙304〔15頁、18頁〕)。さらに、令和4年5月26日に実施された検討会において最新知見のスクリーニングとして熊本地震につ 行のレシピによる地震動評価は可能との研究結果が令和3年までに示された(乙304〔15頁、18頁〕)。さらに、令和4年5月26日に実施された検討会において最新知見のスクリーニングとして熊本地震について議論がされた際、既に審査を終了している原子力発電所(本件発電所はこれに当たる。)について極近傍に当たるといった見解が示されたことはなかった。 上記特別考慮規定の趣旨に加え、その後の熊本地震で得られた知見等に照らしても、相手方が本件発電所の検討用地震について、「震源が敷地に極めて近い場合」に当たると判断しなかったことは不合理ではないし、原子力規制委員会が相手方に対し本件特別考慮規定の適用について検討させなかったことも不合理ではないということができる。 イこれに対して、抗告人らは上記主張に沿う疎明資料としてI作成の意見書(甲184の1、204。以下、これらを併せて「I意見書」という。)を提出する。I意見書は、「震源が敷地に極めて近い場合」とは、浅部断層の影響を無視できない場合を指し、浅部断層は長周期のみならず短周期の地震波を出す可能性があるから、震源が敷地に極めて近い場合に該当するかどうかは、上記可能性を考慮した上で、それでもなお原子力発電所への影響が小 さいとみなせるかどうかによって判断すべきであるとするものである。しかし、これに対しては、浅部断層ではそもそも拘束圧が低く、断層両面の固着度が緩いため深部アスペリティの影響で破壊を生じたとしても破壊を加速するエネルギーが供給されず、その結果断層両面はゆっくり滑るのでその滑りは長周期地震動の生成や断層変位表出には寄与するが、短周期地震動の生成には寄与できない旨の意見書(乙304)が相手方から提出されており、I意見書の見解を直ちに採用することはできない。また、浅部断層において 地震動の生成や断層変位表出には寄与するが、短周期地震動の生成には寄与できない旨の意見書(乙304)が相手方から提出されており、I意見書の見解を直ちに採用することはできない。また、浅部断層において短周期地震動が生成される可能性があるとしても、本件特別考慮規定がその点のみを特に考慮するよう求める規定であるとは考え難い。本件特別考慮規定は、その記載ぶりや策定までの議論状況からすれば、震源近傍での観測記録自体が少なく、そこで発生する事象等が把握できていないことを前提として、敷地が震源の極近傍に当たる場合(その判断が具体的審査時における最新の科学的知見を踏まえた原子力規制委員会の個別具体的な判断に委ねられていることは上記のとおりである。)には、表出する地表変位の影響が原子力施設にとって無視できないほど大きい場合を想定しつつ、浅部断層も含めた断層全体について適切な震源モデルを設定し、多角的にかつ十分な余裕を考慮して検討を行うよう要請するものと解される。 なお、上記地表変位の点について、相手方は、地殻変動により地盤の傾斜が生じる断層としてC断層及び白木-丹生断層を選定し、地殻変動による最大傾斜がどの程度のものになるかを検討している。その結果、影響の大きいC断層(不確かさを考慮し、断層の傾斜角を55°とした場合)でも、その活動に伴い生じる原子炉格納施設及び原子炉補助建屋の傾斜は最大1/5200であり(乙25、305)、原子力規制委員会が定めた基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価に係る審査ガイド(乙26)が目安とする1/2000を下回ることを確認している。そして、一件記録上、C断層及び白木-丹生断層につき、地震発生時に大規模な地表変位を発生させ得る断層であること を示す的確な資料は見当たらないから、本件発電所が近傍の断層を震源とする地震 て、一件記録上、C断層及び白木-丹生断層につき、地震発生時に大規模な地表変位を発生させ得る断層であること を示す的確な資料は見当たらないから、本件発電所が近傍の断層を震源とする地震により無視できない地表変位の影響を受けるとは認め難い。したがって、本件発電所につき、「震源が敷地に極めて近い場合」としなかった相手方及び原子力規制委員会の判断に不合理な点はない。 以上のとおりであるから、I意見書の内容を踏まえて検討しても、抗告人らの主張を採用することはできない。 ウ抗告人らは、地震調査研究推進本部地震調査委員会強振動評価部会による熊本地震の観測記録に基づく強振動評価手法の検証についての中間報告(甲174)は強振動予測手法に課題のある「断層ごく近傍」を地表最短距離で数km以内と認識していたことが分かるし、学者の研究においても「断層の極近傍」は断層面から数kmの距離などとして定義されている旨の主張もする。しかし、これらは研究者らがその研究テーマに取り組む中で示した将来的な検討課題や定義にとどまるから、これらの研究ないし報告があることをもって、本件特別考慮規定にいう「敷地極近傍」を敷地から数kmの距離であると解釈することはできない。上記判断は、断層と敷地との最短距離で計測した場合の白木―丹生断層及びC断層との各距離を前提としたとしても左右されるものでない。 使用する経験式の適切性について(争点2イ)抗告人らは、相手方が地震規模の認定に用いる経験式、とりわけ松田式には、検討に用いている地震の活断層の長さ等の数値が確定していない、資料数が少なすぎるなどの問題があること、経験式の使用に当たってはばらつきを考慮すべきことを主張する。 そこで判断すると、松田式は日本の内陸部で発生した14の地震のデータ が確定していない、資料数が少なすぎるなどの問題があること、経験式の使用に当たってはばらつきを考慮すべきことを主張する。 そこで判断すると、松田式は日本の内陸部で発生した14の地震のデータに基づき活断層の長さと地震の規模との関係を示す経験式で、強振動予測に使用することができる経験式として広く知られており、気象庁が平成15年にマグニチュードの算出方法を改訂し、松田式の元データである14個のマ グニチュードも再評価したところ、松田式との偏差は小さくなり、より整合することが確認されるなど、最新の科学的知見を踏まえても合理的なものとして信頼性を有しており、基準地震動の策定に用いる経験式として不適切なものであるとはいえないことは原決定を引用の上説示したとおりである。 そして、相手方は、本件発電所敷地周辺の地表地震断層を調査し、活断層の活動の痕跡がないことが明確に確認できる箇所を特定した上、そこまで活断層を延長することで活断層の長さを保守的に評価していると認められるから、この点においても、相手方が基準地震動の検討に松田式を用いたことが不適切とはいえない。 次に、ばらつきの問題について検討すると、地震ガイド(令和4年6月改正前のもの)(甲25)によれば「不確かさ」の文言は地震動評価の章を始め随所で繰り返され、基準地震動の策定に係る審査フロー図でも不確かさを考慮するよう明示的に求められている一方、「ばらつき」については、敷地ごとに震源を特定して策定する地震動の章の検討用地震の選定に関する「3.2.3 震源特性パラメータの設定」の項目(2)において、経験式を用いて地震規模を設定する場合の経験式の適用範囲に関し考慮すべきものとして言及されるにとどまっている。かかる地震ガイドにおける各文言の使われ方や位置づけから タの設定」の項目(2)において、経験式を用いて地震規模を設定する場合の経験式の適用範囲に関し考慮すべきものとして言及されるにとどまっている。かかる地震ガイドにおける各文言の使われ方や位置づけからすれば、地震ガイドが基準地震動策定の過程で、各種の不確かさを考慮することに加えて、経験式が有するばらつきを地震モーメント(Mo)の値を上乗せするなどの方法で考慮するよう求めているとみることは困難である。地震等検討小委員会でそのようなことを求める議論がされた状況もうかがわれない(乙176~178)。令和4年6月の改正で地震ガイドからばらつき条項が削除されたことも、経験式におけるデータのばらつきは不確かさの考慮によって対応し得るとの原子力規制委員会の考え方を示すものと解される。 そして、相手方は、地震動評価を行う際、松田式や入倉・三宅式へ代入する値ないしその根拠となる断層の長さ、断層上端・下端長さ等につき保守的な設定をしていると認められるから、これにより経験式の有するばらつきの問題も相応に考慮されているといえる。 したがって、抗告人らの主張は採用できない。 繰り返し地震の考慮の問題について(争点2イ)抗告人らは、若狭地方の活断層の多くは共役断層(同一の応力下で互いに90度程度斜交した断層面が形成され、断層のずれの向きが互いに逆向きを示すもの)で、過去には昭和2年の北丹後地震で2つの断層が同時に活動した例(甲180)があるから、本件発電所が存在する敦賀半島においても、一つの活断層の活動によって地下の応力が変化し、周囲の活断層の活動が誘発される現実のおそれがあるのに、現在の新規制基準は1回の基準地震動によって機器が塑性変形することを許容するものであるから、本件発電所が新規制基準の要求を満たしていたと 化し、周囲の活断層の活動が誘発される現実のおそれがあるのに、現在の新規制基準は1回の基準地震動によって機器が塑性変形することを許容するものであるから、本件発電所が新規制基準の要求を満たしていたとしても短期間に連続して基準地震動級の地震に襲われた場合に過酷事故の発生を防止することができないとして、このように繰り返し地震を想定していない新規制基準は不合理である旨主張する。 しかし、一件記録によっても、若狭地方の活断層の多くが共役断層であるために、本件発電所に短期間に連続して基準地震動に相当する地震動が発生する現実的なおそれがあるとの抗告人らの主張を裏付ける的確な資料は見当たらない。また、断層が連動する可能性自体は否定できないとしても、設置許可基準規則4条3項のいう基準地震動に対する「安全機能が損なわれるおそれがないもの」とは、機器・配管系については、塑性ひずみが生じる場合であっても、その量が小さなレベルに留まって破断延性限界に十分な余裕を有し、その施設に要求される機能に影響を及ぼさないことをいうなど、十分な保守性を確保するよう求めており(甲26〔137・138頁〕)、地震動が複数回繰り返されたとしても容易に破断しないだけの強度が要求されていると解される。そして、 相手方が本件発電所の安全上重要な設備につき、応力が繰り返しかかることにより機能喪失に至ることがないよう、保守的な疲労評価を実施し、原子力規制委員会にその妥当性についての確認を得ていると認められることは上記したとおりである。 なお、原子力規制庁と大学等との共同研究において、令和5年8月までに地震動による繰り返し荷重が影響する設備である配管系につき実機の配管要素(エルボ、同径ティ、異径ティ)を約1/5.6に縮小した試験体を用いた振動試験を実施したところ、小レベル( 、令和5年8月までに地震動による繰り返し荷重が影響する設備である配管系につき実機の配管要素(エルボ、同径ティ、異径ティ)を約1/5.6に縮小した試験体を用いた振動試験を実施したところ、小レベル(設計レベル)の振動試験で設計上の許容繰り返し回数と加振回数の比が1を大きく上回り約10となることが確認されており(乙320、321)、このことに照らしても、新規制基準は一定程度の地震動の繰り返しにも耐え得る安全性を満たすための基準となっているということができ、その内容に不合理な点はない。 したがって、この点についても抗告人らの主張を採用することはできない。 避難計画について(争点3)抗告人らは、国内法令は第1から第5までの防護レベルによって原発の安全性を確保していてそれぞれの防護レベルは独立して有効に機能する必要がある(深層防護)ところ、本件発電所については、第5の防護レベル(災害対策基本法及び原子力災害対策特別措置法による避難計画等)に、美浜町からおおい町への避難経路となる国道27号線及び若狭梅街道は片道一車線で土砂災害警戒区域と近接するなど、大地震発生時には道路が複数箇所で寸断される可能性があるにもかかわらず代替経路が定められていない、地震による原発事故では家屋の倒壊や度重なる強い揺れのため屋内退避は不可能なのに屋内退避を定めている、放射性ヨウ素による内部被ばくの影響を低減させるためには放射性ヨウ素が摂取される前の24時間以内又は直後という適時のタイミングで安定ヨウ素剤を服用する必要があるが、地域住民が適時に安定ヨウ素剤を服用できる体制が整っていないといった看過し難い不備があり、 令和6年1月1日に発生した能登半島地震の被害状況に照らしても、地震による原発事故が発生すれば、住民らは屋内退避をする 素剤を服用できる体制が整っていないといった看過し難い不備があり、 令和6年1月1日に発生した能登半島地震の被害状況に照らしても、地震による原発事故が発生すれば、住民らは屋内退避をすることができず、避難経路の寸断のために避難することもできず孤立し、放射性物質が漂う屋外で被ばくを強いられることになるから、周辺住民の生命、身体が侵害される具体的危険がある旨主張する。 そこで判断すると、本件は、人格権に基づく妨害排除請求権を被保全権利として、相手方が原子炉設置変更許可処分、運転期間延長認可処分等に基づいて本件発電所を運転するという本来行使できる権利を直接制約することが認められるかどうかを判断する民事保全の手続であるから、抗告人らの申立てが認められるためには、前記3で説示したとおり、人格権に対する直接的な侵害行為、すなわち本件発電所自体が安全性に欠け、その運転に起因する放射線被ばくにより、周辺住民の生命、身体に直接的かつ重大な被害が生ずる具体的危険性があると一応認められることを要するというべきである。 ところが、原審及び当審における抗告人らの主張を踏まえ検討しても、上記判断のとおり、本件において、放射性物質が本件発電所の外部に放出される事態が発生する具体的危険があることについて疎明があるとはいい難いから、仮に重大事故が発生した場合における避難計画の不備につき検討するまでもなく、抗告人らの主張は採用できない。設置許可基準規則が深層防護の考え方を踏まえて策定されたものであることは上記判断を左右するものでない。 4 結論以上のとおり、本件発電所について、その運転中に放射性物質を環境中に大量に放出する重大事故を起こし、抗告人らの人格権が侵害される具体的危険があると一応認めるに足りず、被保全権利の疎明があるということはできない り、本件発電所について、その運転中に放射性物質を環境中に大量に放出する重大事故を起こし、抗告人らの人格権が侵害される具体的危険があると一応認めるに足りず、被保全権利の疎明があるということはできない。 よって、その余の点について判断するまでもなく、原決定は相当であり、本件抗告は理由がないから棄却することとして、主文のとおり決定する。 令和6年3月15日 大阪高等裁判所第11民事部 裁判長裁判官長谷川浩二 裁判官原司 裁判官大河三奈子 (別紙当事者目録は掲載省略)
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