令和4(わ)181 過失運転致死傷被告事件

裁判年月日・裁判所
令和5年4月12日 福島地方裁判所
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判決文本文3,255 文字)

宣告日令和5年4月12日事件番号令和4年第181号事件名過失運転致死傷 主文 被告人を禁錮3年に処する。 この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、令和4年11月19日午後4時46分頃、普通乗用自動車を運転し、福島市a(住所省略)を同市b方面から同市c方面に向かい進行するに当たり、自車を左前方の歩道上に乗り上げさせたのであるから、歩道上の進行は厳に差し控えるべきはもとより、あえて歩道上を進行するのであれば、前方左右を注視した上で、ハンドル・ブレーキを的確に操作して進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、直ちに停止することなく同歩道上を進行した上、ハンドル・ブレーキを的確に操作せず、ブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込んで少なくとも時速約60キロメートルまで加速して進行した過失により、折から同歩道上を右方から左方に向かい歩行中のA(当時42歳)に自車前部を衝突させて同人を跳ね飛ばし、その衝撃により右前方の車道上で信号待ちのため停止していたB(当時46歳)運転の普通乗用自動車後部に前記Aを衝突させて路上に転倒させるとともに、引き続き、同歩道上の右端を車道にはみ出して進行し、前記B運転車両左側部に自車右側部を衝突させ、さらに、その前方で停止していたC(当時35歳)運転の普通乗用自動車左側部に自車右側部を衝突させ、よって、前記Aに重症頭部外傷の傷害を負わせ、即時同所において、同人を同傷害により死亡させるとともに、前記Bに加療約2週間を要する腰椎捻挫、後頚部 交感神経症候群の傷害を、同人運転車両同乗者D(当時77歳)に加療約2週間を要する頚椎捻挫、 所において、同人を同傷害により死亡させるとともに、前記Bに加療約2週間を要する腰椎捻挫、後頚部 交感神経症候群の傷害を、同人運転車両同乗者D(当時77歳)に加療約2週間を要する頚椎捻挫、両上腕骨周囲筋筋損傷の傷害を、前記Cに加療約2週間を要する頚椎捻挫、左肘関節周囲筋筋損傷、右下腿周囲筋筋損傷等の傷害を、同人運転車両同乗者E(当時29歳)に加療約2週間を要する外傷性頭頚部症、腰椎捻挫の傷害をそれぞれ負わせたものである。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略 (量刑の理由) 1 本件事故により、歩行者1名の尊い生命が失われた。亡くなった被害者は、本来安全に歩行でき、かつ自動車が走行してくるとは想定し難い歩道上において、突如として被告人の運転する車両に激突されたものであり、そのときの身体的苦痛や精神的苦痛は計り知れない。亡くなった被害者の夫である被害者参加人が述べるように、被害者は、夫や幼い二人の子とともに、今後も幸せな日常生活が末永く続いていくはずであった。被害者には何の落ち度もないのにもかからず、大切な家族との将来を突然に絶たれた無念さは、察するに余りある。 これらの事情を踏まえると、被害者遺族の処罰感情が峻烈であることはもっともである。本件事故は、当時、歩道において被害者の隣を歩いていた同人の長女の目の前で生じたもので、長女の精神的ショックや悲痛は、想像をはるかに超えるものであったことがうかがえる。長男の習い事が終わったら、いつものように二人の子と3人で自宅に帰ってくると信じて疑わずに妻を見送った被害者参加人の心情に思いを致せば、身につまされる思いである。 また、何の落ち度もない4名もの被害者がそれぞれ加療約2週間を要する傷害を負ったことについても、軽視すべきではない。 以上によれば、被 人の心情に思いを致せば、身につまされる思いである。 また、何の落ち度もない4名もの被害者がそれぞれ加療約2週間を要する傷害を負ったことについても、軽視すべきではない。 以上によれば、被害結果は重大である。 2 被告人は、ハンドル、ブレーキ操作を誤って自車を歩道に乗り上げさせ、そのまま歩道上を約104メートルにわたり走行し続けた上、自車前方に歩行者がいることを認識するや否や、ブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込み、少なくとも時速約60キロメートルまで加速して進行し、本件事故を発生させたものである。ブレーキとアクセルを的確に操作することは、自動車を運転する上で最も基本的な注意義務というべきであるから、被告人の過失は重大である。 3 被告人は、本件当時97歳のいわゆる超高齢者であり、本件事故前から、自宅車庫に駐車する際に自車を電柱と接触させるなどして自車を損傷させることが複数回あったというのであるから、自動車を安全に運転するのに必要な判断能力や運動能力に衰えがあったといえる。長女やケアマネージャーからも、再三にわたり運転をやめるよう注意を受けていたというのであり、一日一回の飲食店での外食等のためという運転の必要性も大きくはなく、タクシー等を利用して外出することが金銭的に困難であったともいい難いことからすれば、そもそも被告人は、元気なうちに運転免許の返納やそれに伴う生活の調整などをして自動車の運転自体を差し控えるべきであった。 もっとも、運転免許の返納が義務化されているわけでもなく、令和2年の運転免許更新時の認知機能検査でも問題がなかったというのであるから、運転自体を差し控えるべきであったという事情を本件事故に至る経緯として考慮するにしても限界がある。自動車が利便性の高い乗物である反面、人の生命身体に大きな危害を加 問題がなかったというのであるから、運転自体を差し控えるべきであったという事情を本件事故に至る経緯として考慮するにしても限界がある。自動車が利便性の高い乗物である反面、人の生命身体に大きな危害を加えかねない危険なものでもあるという基本的な事実に立ち返り、高齢者が自ら自動車を運転せずとも不便を感じることなく生活を送ることができるような社会の構築が望まれる。そして、本件事故の直接の原因であるブレーキペダルとアクセルペダルの踏み間違いに、被告人の判断能力や運動能力の衰えがどの程度影響しているかは証拠上明らかとはいえず、また、被告人は、 自身の衰えを自覚し、日頃、速度を時速20ないし30キロメートルに落として走行する等、被告人なりに安全運転を心がけていたというのである。 被告人に対する非難の程度は、死亡被害者1名の過失運転致死傷の事案の中で、特に高いとまではいえない。 4 以上によれば、被告人の刑事責任は重いが、同種事案に比して殊更に悪質とまではいえず、被告人に対して執行猶予を付する余地がないとはいえない。 5 そこで、その余の情状についてみるに、被告人に有利な事情として、被告人が対人対物無制限の任意保険に加入しており、被害者5名に対して相応の賠償が見込まれること、被告人は本件事故直後から公判に至るまで、記憶の減退はあるものの自らの過失について一貫して認めて、被告人なりの反省の言葉を述べていることが認められる。また、被告人は、当公判廷において、今後は運転しないことを誓約しており、今後の生活状況に照らし、再び自動車を運転することはないといえる。 これらの事情に、特別予防の観点から被告人の年齢や体調も併せて考慮すれば、被告人には、社会内において被害者らに対する贖罪の措置をとらせるのが相当である。 6 以上の理由から、被告人に対し、執 主文 これらの事情に、特別予防の観点から被告人の年齢や体調も併せて考慮すれば、被告人には、社会内において被害者らに対する贖罪の措置をとらせるのが相当である。 以上の理由から、被告人に対し、執行猶予が可能な範囲で最も重い禁錮刑に処したうえで、その刑の執行を猶予することとした。 (求刑禁錮3年6月)令和5年4月12日福島地方裁判所刑事部 裁判長裁判官三浦隆昭 裁判官岩竹遼 裁判官小沼友美

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