平成30(ワ)10157 独占的通常実施権に基づく損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年5月22日 東京地方裁判所
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令和元年5月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第10157号独占的通常実施権に基づく損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成31年3月20日判決原告株式会社テスコム 同訴訟代理人弁護士柳澤圭一郎松井彬田村洋三平井佑希同補佐人弁理士保立浩一 被告株式会社NSC(以下「被告NSC」という。)被告株式会社ジャパンディスプレイ(以下「被告JDI」という。)被告ら訴訟代理人弁護士高橋雄一郎 被告ら訴訟代理人弁理士林佳輔望月尚子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告らは,原告に対し,連帯して3億3000万円及びこれに対する平成30年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告らの負担とする。 3 仮執行宣言 第2 事案の概要 1 本件は,発明の名称を「フラットパネルディスプレイの製造方法,フラットパネルディスプレイ用のガラス基板の外面機械研磨装置」とする発明に係る特許権(特許番号第3741708号。以下「本件特許権」又は「本件特許」という。また,特許請求の範囲請求項の符号に従って同各請求項に係る発明を レイ用のガラス基板の外面機械研磨装置」とする発明に係る特許権(特許番号第3741708号。以下「本件特許権」又は「本件特許」という。また,特許請求の範囲請求項の符号に従って同各請求項に係る発明を 「本件発明1」などといい,本件発明1,2,7及び8を総称して「本件各発明」という。)の独占的通常実施権者である原告が,被告らによるフラットパネルディスプレイの製造方法は本件発明1及び2の技術的範囲に属し,被告NSCの使用する装置は本件発明7及び8の技術的範囲に属すると主張し,本件発明1及び2については被告らが共同して原告の独占的通常実施権を侵害し, 本件発明7及び8については被告NSCが同権利を侵害したとして,被告らに対し連帯して損害賠償金3億3000万円(一部請求)及びこれに対する不法行為の後の日である平成30年4月17日(本訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣 旨により認定することができる事実。なお,本判決を通じ,証拠を摘示する場合には,特に断らない限り,枝番を含むものとする。)(1) 当事者ア原告は,半導体製造装置の製造,販売を目的とする株式会社である。 イ被告JDIは,液晶ディスプレイの製造・販売等を行う会社である。 被告NSCは,ガラスの加工等を行う会社である。 (2) 原告の独占的通常実施権原告は,平成21年6月23日,甲地所在の株式会社ジィディに対し,本件特許権を譲渡するとともに,同社から,同日,本件特許権の独占的通常実施権の許諾を受けた。(甲2) (3) 本件特許権 本件特許権の概要は,以下のとおりである ジィディに対し,本件特許権を譲渡するとともに,同社から,同日,本件特許権の独占的通常実施権の許諾を受けた。(甲2) (3) 本件特許権 本件特許権の概要は,以下のとおりである。 登録番号特許第3741708号発明の名称フラットパネルディスプレイの製造方法,フラットパネルディスプレイ用ガラス基板の外面機械研磨装置優先日平成16年6月3日(優先権主張国:日本,特願20 04-166256)出願日平成16年12月17日登録日平成17年11月18日(4) 本件特許の特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲(請求項の数12)のうち請求項1,2,7及 び8の記載(本件各発明)は,以下のとおりである(下線部は,平成17年9月26日受付に係る手続補正書(乙10)により補正された部分。なお,同手続補正後の本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書等」という。)。 ア請求項1 「一方又は双方がガラス基板である一対の基板の少なくとも一方に電極を形成する電極形成工程と,電極形成工程の後に一対の基板をシール材を介して貼り合わせ内部を封止する封止工程と,封止工程の後に,ガラス基板である一方又は双方の基板の外面を機械的に研磨して厚さを薄くする外面機械研磨工程とを含むフラットパネルディスプレイの 製造方法であって,前記外面機械研磨工程は,前記ガラス基板の外面の材料を溶出させる溶出液を前記外面に向けて噴射することで自重による加速度より大きな加速度を付けて溶出液を前記外面に吹き付けて前記外面を衝撃し,前記一方又は双方の基板を,溶出液を噴射するノズルの噴射孔に対し て相対的に機械的に移動させながら,溶出液により前記外面を溶かし 度を付けて溶出液を前記外面に吹き付けて前記外面を衝撃し,前記一方又は双方の基板を,溶出液を噴射するノズルの噴射孔に対し て相対的に機械的に移動させながら,溶出液により前記外面を溶かし 出し溶出液による衝撃の物理的作用を利用して研磨する工程であり,前記溶出液による前記外面の衝撃の際の圧力は,0.5kg/cm²~3.5kg/cm²の範囲であることを特徴とするフラットパネルディスプレイの製造方法。」イ請求項2 「前記溶出液は,フッ酸であることを特徴とする請求項1記載のフラットパネルディスプレイの製造方法。」ウ請求項7「フラットパネルディスプレイ用のガラス基板の外面を機械的に研磨して厚さを薄くする外面機械研磨装置であって, 内部で外面機械研磨処理が行われる処理チャンバーと,処理チャンバー内の所定位置に前記ガラス基板を保持する基板保持具と,前記外面の材料を溶出させる溶出液を前記基板保持具に保持された前記ガラス基板の当該外面に向けて噴射する噴射孔を有するノズ ルと,ノズルに溶出液を供給する溶出液供給系とを備えており,前記溶出液供給系は,自重による加速度より大きな加速度を付けて溶出液を前記外面に吹き付けて前記外面を衝撃し,衝撃による物 理的作用を利用して前記外面を研磨できる圧力で溶出液を前記ノズルに供給するものであり,さらに,溶出液が噴射される前記一方又は双方の基板を,ノズルの噴射孔に対して相対的に機械的に移動させる移動機構を備えており, 前記溶出液供給系は,前記ノズルの噴射孔から前記溶出液が噴射 されて前記ガラス基板の外面を0.5kg/cm2~3.5kg/cm2の範囲の圧力で衝撃するよう前記ノ 構を備えており, 前記溶出液供給系は,前記ノズルの噴射孔から前記溶出液が噴射 されて前記ガラス基板の外面を0.5kg/cm2~3.5kg/cm2の範囲の圧力で衝撃するよう前記ノズルに前記溶出液を供給するものであることを特徴とする外面機械研磨装置。」エ請求項8「前記溶出液は,フッ酸であることを特徴とする請求項7記載の外面 機械研磨装置。」(5) 本件各発明の構成要件の分説本件各発明をそれぞれ構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「構成要件1A」などという。)。 ア本件発明1 1A 一方又は双方がガラス基板である一対の基板の少なくとも一方に電極を形成する電極形成工程と,1B 電極形成工程の後に一対の基板をシール材を介して貼り合わせ内部を封止する封止工程と,1C(1) 封止工程の後に,ガラス基板である一方又は双方の基板の外面 を機械的に研磨して厚さを薄くする外面機械研磨工程と1C(2) を含むフラットパネルディスプレイの製造方法であって,1D(1) 前記外面機械研磨工程は,前記ガラス基板の外面の材料を溶出させる溶出液を前記外面に向けて噴射することで自重による加速度より大きな加速度を付けて溶出液を前記外面に吹き付けて前記外面 を衝撃し,1D(2) 前記一方又は双方の基板を,溶出液を噴射するノズルの噴射孔に対して相対的に機械的に移動させながら,1D(3) 溶出液により前記外面を溶かし出し溶出液による衝撃の物理的作用を利用して研磨する工程であり, 1E 前記溶出液による前記外面の衝撃の際の圧力は,0.5kg/c m²~3.5kg/cm²の範囲であることを特徴とする よる衝撃の物理的作用を利用して研磨する工程であり, 1E 前記溶出液による前記外面の衝撃の際の圧力は,0.5kg/c m²~3.5kg/cm²の範囲であることを特徴とする1F フラットパネルディスプレイの製造方法。 イ本件発明22G 前記溶出液は,フッ酸であることを特徴とする請求項1記載のフラットパネルディスプレイの製造方法。 ウ本件発明77A フラットパネルディスプレイ用のガラス基板の外面を機械的に研磨して厚さを薄くする外面機械研磨装置であって,7B 内部で外面機械研磨処理が行われる処理チャンバーと,7C 処理チャンバー内の所定位置に前記ガラス基板を保持する基板 保持具と,7D 前記外面の材料を溶出させる溶出液を前記基板保持具に保持された前記ガラス基板の当該外面に向けて噴射する噴射孔を有するノズルと,7E ノズルに溶出液を供給する溶出液供給系とを備えており, 7F 前記溶出液供給系は,自重による加速度より大きな加速度を付けて溶出液を前記外面に吹き付けて前記外面を衝撃し,衝撃による物理的作用を利用して前記外面を研磨できる圧力で溶出液を前記ノズルに供給するものであり,7G さらに,溶出液が噴射される前記一方又は双方の基板を,ノズ ルの噴射孔に対して相対的に機械的に移動させる移動機構を備えており,7H 前記溶出液供給系は,前記ノズルの噴射孔から前記溶出液が噴射されて前記ガラス基板の外面を0.5kg/cm2~3.5kg/cm2の範囲の圧力で衝撃するよう前記ノズルに前記溶出液 を供給するものであることを特徴とする外面機械研磨装置。 エ本件発明88A 前記溶出液は,フッ酸であることを特徴とする請求項7記載の で衝撃するよう前記ノズルに前記溶出液 を供給するものであることを特徴とする外面機械研磨装置。 エ本件発明88A 前記溶出液は,フッ酸であることを特徴とする請求項7記載の外面機械研磨装置。 (6) 原告の主張する被告の製造方法及び装置(なお,被告の製造方法及び装置の認定は構成要件充足性の判断によることになるので,ここでは原告の主張 を記載している。)ア被告らの製造方法原告は,被告らが以下の製造方法(以下「被告方法」という。)により,フラットパネルディスプレイを製造していると主張する(なお,各項末尾の括弧内は実際の行為者である。)。 (ア) 請求項1に関して1a 一方又は双方がガラス基板である一対の基板の少なくとも一方に電極を形成する電極形成工程と,(被告JDI)1b 電極形成工程の後に一対の基板をシール材を介して貼り合わせ内部を封止する封止工程と,(被告JDI) 1c(1) 封止工程の後に,ガラス基板である一方又は双方の基板の外面を機械的に研磨して厚さを薄くする外面機械研磨工程と(被告NSC)1c(2) を含むフラットパネルディスプレイの製造方法であって,(被告JDI) 1d(1) 前記外面機械研磨工程は,前記ガラス基板の外面の材料を溶出させる溶出液をシャワー配管のノズルから前記外面に向けて噴射することで自重による加速度より大きな加速度を付けて溶出液を前記外面に吹き付けて前記外面を衝撃し,(被告NSC)1d(2) 搬送シャフトを用いてローラ上のガラスを水平方向に移動させ, 溶出液をガラス基板に噴射し,(被告NSC) 1d(3) 化学反応によりガラスを溶かす作用を有するフッ酸をシャワ ) 搬送シャフトを用いてローラ上のガラスを水平方向に移動させ, 溶出液をガラス基板に噴射し,(被告NSC) 1d(3) 化学反応によりガラスを溶かす作用を有するフッ酸をシャワーから噴射することによりガラス基板を研磨する工程を有し,(被告NSC)1e 前記溶出液による前記外面の衝撃の際の圧力は,0.5kg/cm²~3.5kg/cm²の範囲であることを特徴とする(被告NS C)1f フラットパネルディスプレイの製造方法。(被告JDI)(イ) 請求項2に関して2g 前記溶出液は,フッ酸であることを特徴とする請求項1記載のフラットパネルディスプレイの製造方法。 イ被告装置原告は,被告NSCは,以下の構成を備えた「枚葉式ケミカル研磨装置」(以下「被告装置」という。甲3,4)を使用していると主張する。 (ア) 請求項7に関して 7a フラットパネルディスプレイ用のガラス基板の外面にフッ酸を噴射することで研磨して厚さを薄くする処理装置であって,7b 内部で処理が行われる処理チャンバーと,7c 処理チャンバー内の所定位置に前記ガラス基板を保持するローラと, 7d ガラス外面を溶出させるフッ酸を前記基板保持具に保持された前記ガラス基板の当該外面に向けて噴射する噴射孔を有するノズルと,7e ノズルにフッ酸を供給する溶出液供給系とを備えており,7f 前記溶出液供給系は,自重による加速度より大きな加速度を 付けてフッ酸を前記外面に吹き付けて前記外面を衝撃し,衝撃 による物理的作用を利用して前記外面を研磨できる圧力でフッ酸を前記ノズルに供給するものであり,7g さらに,フッ酸が噴射される基板を,ノズルの噴射孔に対して相対的 記外面を衝撃し,衝撃 による物理的作用を利用して前記外面を研磨できる圧力でフッ酸を前記ノズルに供給するものであり,7g さらに,フッ酸が噴射される基板を,ノズルの噴射孔に対して相対的に移動させるローラを備えており,7h 前記溶出液供給系は,前記ノズルの噴射孔から前記フッ酸が 噴射されて前記ガラス基板の外面を1〜1.2kg/cm2の圧力で衝撃するよう前記ノズルに前記溶出液を供給するものであることを特徴とする処理装置。 (イ) 請求項8に関して8a 前記溶出液は,フッ酸であることを特徴とする処理装置。 (7) 被告らの行為被告JDIは,国内に所有する工場においてフラットディスプレイパネルを製造しており,その過程のうち,ガラス基板の薄型化処理を被告NSCに委託している。 3 争点 (1) 被告方法が本件発明1及び2の技術的範囲に属するか(争点1)ア構成要件1Cの充足性(争点1-1)イ構成要件1Dの充足性(争点1-2)ウ構成要件1Eの充足性(争点1-3)(2) 被告装置が本件発明7及び8の技術的範囲に属するか(争点2) ア構成要件7Aの充足性(争点2-1)イ構成要件7Cの充足性(争点2-2)ウ構成要件7Fの充足性(争点2-3)エ構成要件7Hの充足性(争点2-4)オ構成要件8Aの充足性(争点2-5) (3) 共同不法行為等の成否(争点3) (4) 被告NSCによる間接侵害の成否(予備的主張)(争点4)(5) 損害発生の有無及びその額(争点5)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(構成要件1Cの充足性)について〔原告の主張〕 被告NSCの行為は,構成要件1C(1)の (5) 損害発生の有無及びその額(争点5)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(構成要件1Cの充足性)について〔原告の主張〕 被告NSCの行為は,構成要件1C(1)の「封止工程の後に,ガラス基板である一方又は双方の基板の外面を機械的に研磨して厚さを薄くする外面機械研磨工程と」との要件を充足する。 「機械的に研磨」及び「機械研磨」の意義については,本件明細書等の段落【0014】に「「機械研磨」とは,吹き付け圧力という溶出液の物理的な作 用を利用した研磨であるという意味と,研磨の際にガラス基板1が機械的に移動するという意味とを併せ持つ。」と説明されているところ,同段落にいう「吹き付け圧力という溶出液の物理的な作用」とは,物理的な力のみによって研磨を行うという意味ではなく,単にエッチング液(フッ酸などの溶出液)にガラス基板を浸漬したり,散布することとは異なるということを意味している。 本件明細書等の段落【0015】及び【0017】には,「ノズル4から噴射された溶出液Lにより衝撃された外面は,溶出液Lに溶かし出され,かつ溶出液Lの衝撃により流出していく。これにより外面が機械研磨され,ガラス基板1の厚さ(ひいては貼り合わせパネル10全体の厚さ)が薄くなる。」(段落【0015】),「新鮮な溶出液Lが次々に供給される他, 外面の材料が溶け込んだ溶出液Lが衝撃により次々に流出していくので,効率よく且つ均一性よく機械研磨が行える。外面のガラスの組成や結晶状態に不均一な箇所があっても,物理的作用を併用しているため,充分均一に機械研磨が行える。」(段落【0017】)と記載されている。これらの記載によれば,請求項1にいう「機械研磨」,「外面を衝撃」等の語は,溶出 液を外部に排出するに足りる程度の るため,充分均一に機械研磨が行える。」(段落【0017】)と記載されている。これらの記載によれば,請求項1にいう「機械研磨」,「外面を衝撃」等の語は,溶出 液を外部に排出するに足りる程度の圧力で溶出液を供給することを意味 し,その具体的な圧力が構成要件1Eの規定する「0.5kg/cm2〜3.5kg/cm2」である。 被告方法及び被告装置における衝撃圧力は約1.2kg/cm2程度であり,構成要件1Eに規定する圧力の範囲内で溶出液を供給していることから,吹き付け圧力という溶出液の物理的な作用(溶出液の衝撃)を利用し た機械研磨であるということができる。 したがって,被告方法は,構成要件1Cを充足する。 〔被告らの主張〕被告方法は,「ガラス基板である一方又は双方の基板の外面を機械的に研磨して」いないので,構成要件1C(1)を充足しない。 原告は「機械研磨」とは,ガラスが溶け込んだ溶出液を流出させるために物理的作用を利用するということを意味すると主張するが,この解釈は「機械的に研磨」という文言の通常の意義に反する。本件明細書等の段落【0035】,【0036】及び【0037】によれば,本件発明1では溶出液の流出のみではなく,衝撃によるガラスの研磨作用を利用していると解すべきである。 被告NSCによるガラス基板の薄型化処理は,ガラス基板に薬液を噴霧してガラス基板外面を溶かし出すというものであるが,ガラス基板に薬液を噴霧する際に,薬液が基板外面に接するときの圧力は構成要件1Eの数値範囲の下限の数値の700分の1程度以下である(乙1)。被告NSCの方法にかかるガラス基板の薄型化処理は,フッ酸を噴霧することでガラス基板表面 をフッ酸で濡らし化学的にエッチング処理をするものであり,「機械的に研磨して 1程度以下である(乙1)。被告NSCの方法にかかるガラス基板の薄型化処理は,フッ酸を噴霧することでガラス基板表面 をフッ酸で濡らし化学的にエッチング処理をするものであり,「機械的に研磨して厚さを薄くする外面機械研磨」(構成要件1C(1))は行っていないので,同構成要件を充足しない。 2 争点1-2(構成要件1Dの充足性)について〔原告の主張〕 被告NSCは,シャワー配管されたスイング式のノズルからフッ酸を噴射し て散布しており(甲5),「前記ガラス基板の外面の材料を溶出させる溶出液を前記外面に向けて噴射することで自重による加速度より大きな加速度を付けて溶出液を前記外面に吹き付けて前記外面を衝撃し」ているということができるので,構成要件1D(1)を充足する。 また,被告NSCは,搬送シャフトを用いてローラ上のガラスを水平方向に 移動させ,溶出液をガラス基板に噴射する方法を使用しているが(甲4,6),この方法は,「一方又は双方の基板を,溶出液を噴射するノズルの噴射孔に対して相対的に機械的に移動させ」るものであるということができるので,構成要件1D(2)を充足する。 さらに,シャワーによりガラス基板の外面に薬液を噴射する方法として,シ ャワーから化学反応によりガラスを溶かす作用を有するフッ酸を噴射してガラス基板を研磨する場合,ガラス基板上に噴射されたフッ酸は衝撃により流出するので,被告NSCが用いる方法は,「溶出液により前記外面を溶かし出し溶出液による衝撃の物理的作用を利用して研磨する工程であ」り,構成要件1D(3)を充足する。 〔被告らの主張〕前記のとおり,被告NSCによるガラス基板の薄型化処理において,ガラス基板に薬液を噴霧する際に,薬液が基板外面に接するときの であ」り,構成要件1D(3)を充足する。 〔被告らの主張〕前記のとおり,被告NSCによるガラス基板の薄型化処理において,ガラス基板に薬液を噴霧する際に,薬液が基板外面に接するときの圧力は構成要件1Eの数値範囲の下限の数値の700分の1程度以下であるから,被告方法は「大きな加速度を付けて溶出液を前記外面に吹き付けて前記外面を衝撃し,」 との構成(構成要件1D(1))及び「溶出液による衝撃の物理的作用を利用して研磨する工程」(構成要件1D(3))を備えていない。 3 争点1-3(構成要件1Eの充足性)について〔原告の主張〕被告NSCの用いる方法によるフッ酸の噴射圧力は,「0.5kg/cm² ~3.5kg/cm²の範囲である」ので構成要件1Eを充足する。 (1) 被告NSCは,株式会社いけうち(以下「いけうち」という。)製のワンタッチタイプのノズル(型式:1/4MISJJX 050 PP(FEPM),吐出流量:約4L/min,吐出タイプ:フルコーン(充円錐)。以下「本件ノズル」という。甲7)を使用しているところ,同社作成のスプレーノズル流量線図(甲8)によれば,毎分4リットルの吐出量の場合,溶出液 の吐出圧力は約0.12MPaである。1MPaは10.1972kgf/cm²であるから,被告NSCの用いる方法によるフッ酸の噴射圧力は,次のように算出される。 10.1972kgf/cm²×0.12=1.223664kgf/cm²これは,被告NSCがガラス基板に対してフッ酸を噴射する際の圧力であ るが,ノズルからフッ酸が噴射される際の圧力と,噴射によってガラス基板に加わる衝撃の圧力はほとんど変わらない。 したがって,被告NSCは構成要件1Eの「溶出液による 射する際の圧力であ るが,ノズルからフッ酸が噴射される際の圧力と,噴射によってガラス基板に加わる衝撃の圧力はほとんど変わらない。 したがって,被告NSCは構成要件1Eの「溶出液による前記外面の衝撃の際の圧力は,0.5kg/cm²~3.5kg/cm²の範囲」に該当する製造方法を用いているということができる。 (2) これに対し,被告らは,ガラス基板の外面に液滴が到達すれば液滴はガラス基板外面上で横方向に広がり,広がった面積分だけ圧力は緩和されると主張するが,本件ノズルから噴射される薬液は,噴射口からシャワー状に噴射されるものであり,ガラス基板に到達するまでに空気中の気体分子と衝突するものの,慣性の法則に従って運動を続ける。ノズルによってシャワー噴霧 をした場合,薬液の粒は噴射圧力を概ね維持しつつガラス基板に衝突するので,ノズルからフッ酸が噴射される際の圧力と,噴射によってガラス基板に加わる衝撃の圧力はほとんど変わらないことになる。 (3) ガラス基板の外面を均一に研磨するためには,各液滴によるガラス基板の衝撃は「面状」になる必要があるが,これを達成するため,被告NSCはノ ズルをスイングさせている。ノズルをスイングさせると,各液滴の到達位置 が変化(スキャン)するから,ガラス基板の表面を面状に衝撃することができる。また,本件明細書等に開示されているように基板をノズルに対して相対的に移動させることによっても面状に衝撃することができる。各液滴の到達位置が変わっても,各液滴の運動エネルギーは変わらないから,結局,一定の時間内において,ガラス基板の外面はノズルの噴射圧力とほぼ同等の圧 力で面状に薬液の衝撃を受けることになる。 (4) 被告らは,構成要件1Eの「kg/cm2」という単位で示 いから,結局,一定の時間内において,ガラス基板の外面はノズルの噴射圧力とほぼ同等の圧 力で面状に薬液の衝撃を受けることになる。 (4) 被告らは,構成要件1Eの「kg/cm2」という単位で示される「圧力」は1平方センチメートルあたりの平均の圧力を意味していると主張するが,「kg/cm2」という単位は,平均値を求めているのではなく,ある特定の箇所に加えられている単位面積当たりの力を表してい る。例えば,1cm2のうちの一部にのみ圧力が加えられているとした場合に,その圧力の大きさを1cm2全体で除して1cm2当たりの平均的な力の大きさによって表されるわけではない。 このことは,本件特許の特許請求の範囲の記載及び本件明細書等の記載からも明らかである。すなわち,請求項1の「溶出液による前記外面 の衝撃の際の圧力は,」との文言及び請求項7の「前記溶出液供給系は,前記ノズルの噴射孔から前記溶出液が噴射されて前記ガラス基板の外面を0.5kg/cm²~3.5kg/cm²の範囲の圧力で衝撃する」との文言によれば,同各請求項にいう「圧力」は,溶出液がガラス基板の外面に接触し,衝撃する際の圧力を意味すると解するのが自然で ある。 また,前記のとおり,本件明細書等の段落【0015】及び【0017】によれば,ノズルから噴射された溶出液の衝撃は,溶出液で外面の材料が溶け込んだ溶出液を流出させるために加えられるものであるが,このことからしても,本件発明1Eの「衝撃の際の圧力」は,溶出液が ガラスを衝撃するそのスポットの衝撃圧力を意味すると解すべきであ る。 (5) 原告の行ったプレスケールによる実験(甲12。以下「甲12実験」という。)においては,ノズル側の噴射圧力を0.2MPaとし,被告NSCの主張するガ 意味すると解すべきであ る。 (5) 原告の行ったプレスケールによる実験(甲12。以下「甲12実験」という。)においては,ノズル側の噴射圧力を0.2MPaとし,被告NSCの主張するガラス基板とノズルとの距離190mmとほぼ同じである200mmの距離において,水道水で感圧シートを2分間衝撃した 際の圧力を測定した。 甲12実験の結果,0.05MPa(約0.5kg/cm2)まで測定可能な感圧シート(5WL)を使用した場合には,測定上限を超えスケールアウトしたことから,より高い圧力を測定することができる感圧シート(4WL)を使用して実験を行ったところ,0.8kg/cm2程度の衝撃圧力で あることが明らかになった。ここにフッ酸と水道水の比重の違いを考慮すれば,フッ酸を使用する被告NSCの処理方法,処理装置の場合には,衝撃圧力は約1kg/cm2(0.8×1.2=0.96)程度であると考えられる。 これに対して,被告らは,甲12実験の信用性が低いとして,①感圧シ ートのごく一部で色を確認するのは誤りであり,一様の圧力がかかる全体で色を対比しなければならない,②甲12実験では,食品ラップによるラミネート加工による圧力が加わっている上,ラミネートしたまま水圧をかけているためずりの力が加わっている,③噴霧による圧力を測定するのであれば,同じ感圧シートで噴霧エリアと噴霧エリア外を区画し,両者の色の違 いを確認する必要がある,④フッ酸の比重が大きいからといって,衝撃圧力が比例的に大きくなるわけではない,⑤プレスケールは1 回のみの押圧がなされたときの圧力を測定するものであり,噴霧圧力のように,無数の水滴が連続して到達する,いわば断続圧(連打圧)を測定するものではないなどの点を指摘する。 しかし,上記 回のみの押圧がなされたときの圧力を測定するものであり,噴霧圧力のように,無数の水滴が連続して到達する,いわば断続圧(連打圧)を測定するものではないなどの点を指摘する。 しかし,上記①については,この被告NSCの指摘は,結局,「衝撃圧 力」の解釈の相違に基づくものであり,構成要件1Eの「衝撃の際の圧力」とは,溶出液が当たった箇所に加わった力であるから,感圧シート全体の色ではなく,溶出液が衝撃した個々の赤い点の色を対比すべきである。 上記②については,「ずりの力」による発色であれば,このような点 状の発色ではなく,擦ったような面状の発色となるはずであるが,甲12別紙5の2枚目(4LW)の拡大写真では個々の赤い点が観察されている。同別紙1枚目(5LW)の写真では,そのほぼ全面においてスケールアウトしているため,中心付近では観察しにくいが,その周辺部分を見ると多数の赤い点が観察されていることがわかる。このような点状 の発色は,水滴が感圧シートを衝撃したことによって生じたものである。 上記③については,乙3の実験においても,水を噴射した領域のみが変色しており,これによれば,プレスケールの変色が水の噴射によるものであることは明らかである。 上記④については,物体がぶつかって衝撃する力が質量(比重)に比例するのは当然であり,同⑤については,被告らが行った乙3の実験でも,例えば図25と図26を比較して見ると,噴射時間が5秒でも2分でも,発色点は同程度に発色しているのであり,その発色点の数が異なるにすぎない。 以上のとおり,被告らの指摘は,いずれも理由がない。 (6) 原告は,被告らによる上記(5)の指摘も踏まえ,プレスケールを用いて瞬間圧を測定するため,噴射時間を5秒とする実験(甲1 。 以上のとおり,被告らの指摘は,いずれも理由がない。 (6) 原告は,被告らによる上記(5)の指摘も踏まえ,プレスケールを用いて瞬間圧を測定するため,噴射時間を5秒とする実験(甲19。以下「甲19実験」という。)を行った。同実験は,(ⅰ)食品ラップではなく,ジップバッグにプレスケールを入れて,2箇所をテープで台紙に固 定し,内部の空気を吸引して密着させることで,よりしっかりと被覆を 固定し,(ⅱ)水を噴射する領域と噴射しない領域とを区画するため,プレスケールの上に,スペーサで浮かした塩ビ板を配置して,略半分の領域を覆い,(ⅲ)プレスケールの発色の程度の評価については,目視によるのではなく,プレスケールの販売会社である富士フイルム株式会社(以下「富士フイルム」という。)が公式に配布しているプレスケール解 析用のソフトウェアにより行うなどの方法により行った。また,5秒の噴射と比較するために,噴射時間を2分とする実験も行った。 甲19実験の結果,5秒でも0.5kg/cm2(0.050MPa)を超える衝撃圧力で水滴が衝撃していることが明らかになり,5秒噴射と2分噴射とでは,発色領域の広狭に相違はあるものの,最大値 (甲19の別紙3の各領域の「4」の数値で示される値)は,5秒噴射の場合でも2分噴射の場合でも,いずれも0.5kg/cm2(0.050MPa)前後であり,大きな差はなかった。 また,甲19実験の結果,水を噴射した領域では強い発色が観察されるのに対し,水を噴射していない領域ではほとんど発色は見られなかっ た。 (7) 本件特許に近い技術分野においても,衝撃圧力という用語は,原告が主張するような意味で用いられている。 すなわち,甲21の1~3は,ウォータージェット技術 れなかっ た。 (7) 本件特許に近い技術分野においても,衝撃圧力という用語は,原告が主張するような意味で用いられている。 すなわち,甲21の1~3は,ウォータージェット技術に関する文献である。ウォータージェットは,液体(水)が対象面を衝撃する際の圧 力を利用するものであって,その点において本件特許と共通するところ,同各文献では,感圧フィルムを用いた衝撃圧力の測定が実施されている。これによれば,当業者にとっての「衝撃圧力」とは,水滴が表面を衝撃する力を意味するものであり,感圧シートによって圧力を測定し得るものであるということができる。 (8) 以上のとおり,被告方法は構成要件1Eを充足する。 〔被告らの主張〕被告NSCの用いる方法によるフッ酸の噴射圧力は,「0.5kg/cm²~3.5kg/cm²」よりはるかに小さいので,構成要件1Eを充足しない。 (1) 被告NSCによるガラス基板の薄型化処理は,ガラス基板に薬液を噴霧してガラス基板外面を溶かし出すというものであるが,ガラス基板に薬液を噴 霧する際に,薬液が基板外面に接するときの圧力は「0.5kg/cm2~3.5kg/cm2」の範囲よりはるかに小さく,最大でも0.00071kg/cm2程度(構成要件Eの数値範囲の下限である0.5kg/cm2の700分の1程度以下)である(乙1)。これは構成要件1Eの数値よりもはるかに低い数値である。 また,乙3は,いけうち乙地工場において,打力分布データ測定装置を用い,本件ノズルを使用し,ノズルとガラス基板の距離を190mm,噴霧角度を65~70°,ノズル吐出圧力を0.15及び0.2MPaにそれぞれ設定し,円錐形状に薬液を噴霧することにより行った実験(以下「乙3実 件ノズルを使用し,ノズルとガラス基板の距離を190mm,噴霧角度を65~70°,ノズル吐出圧力を0.15及び0.2MPaにそれぞれ設定し,円錐形状に薬液を噴霧することにより行った実験(以下「乙3実験」という。)であるが,これによれば,ガラス基板上の圧力(打力)は最大で も0.9×10-2N/cm2(≒0.0009kg/cm2)であったことが確認された。この実測値は,乙1の参考資料4~6のデータやスプレーイングシステムスジャパン合同会社による理論式の結果(乙3の参考資料2)とも大きな差はない。 (2) 原告はノズルからフッ酸が噴射される際の圧力と,噴射によってガラス基 板に加わる衝撃の圧力はほとんど変わらないことを前提として,被告方法は構成要件1Eを充足すると主張するが,この前提は誤りである。 すなわち,本件ノズルは,円錐形状に薬液のシャワー噴霧を行うものであるが,ノズル吐出口の直径は約3mm,吐出口の面積は約7mm2であり(配管の直径は約7mmであり断面積は約38mm2),ノズルの先端とガラ ス基板との間には190mmの距離がある。薬液は65~70°の噴霧角度 (噴角)に広がって円錐形に噴霧されるので,ノズルから190mm離れたガラス基板上に噴霧される領域は直径約242~約266mmの円形領域となり,その面積は約4万5973~約5万5543mm2である。 このように,本件ノズルは「均等な流量分布で円形全面噴霧」(乙2の2頁3行)をするものであり,液滴の分布は一様に広がりながらガラス基板の 外面に到達するのであるから,その分薬液の単位面積当たりの圧力は大幅に低減する。 (3) 原告は,被告NSCは本件ノズルをスイングさせていると主張するが,被告NSCはスイングによってこの範囲の噴 到達するのであるから,その分薬液の単位面積当たりの圧力は大幅に低減する。 (3) 原告は,被告NSCは本件ノズルをスイングさせていると主張するが,被告NSCはスイングによってこの範囲の噴霧領域に噴霧しているわけではない。同被告が用いている方法においては,ノズルをスイングさせないでも液 滴が霧状に広がり,ノズルから190mm離れたガラス基板上に噴霧される領域は,直径約242mm(噴霧圧力が0.1MPa,噴角が65°の場合)~約266mm(噴霧圧力が0.2MPa,噴角が70°の場合)の円形であり,噴霧領域の面積は,約4万5973mm2(噴霧圧力が0.1MPa,噴角が65°の場合)~約5万5543mm2(噴霧圧力が0.2MPa, 噴角が70°の場合)である。 (4) 原告は,構成要件1Eの「圧力」を個々の液滴が到達したピンポイントの領域での瞬時的な力であると理解しているが,同構成要件の「kg/cm2」という単位で示される「圧力」は1cm2当たりの(時間的にも平面的にも)平均の圧力を意味しており,ピンポイントの領域にかかる瞬時的な力を意味 しているわけではない。 仮に,「kg/cm2」という単位で示される構成要件Eの「圧力」をもって,ピンポイントの領域にかかる瞬時的な力を意味するというのであれば,そのような極めて特殊な用例であることの説明やその測定方法にかかる説明が本件明細書等においてされていてもしかるべきであるが,そのような説明 は本件明細書等には存在しない。 むしろ,本件明細書等の段落【0034】には,「この際,各ノズル4の各噴射孔41と外面との距離(図3にdで示す)は重要な要素である。距離dがあまり大きくなると,送液ポンプ54による送液圧力をかなり高くしなければ,上 等の段落【0034】には,「この際,各ノズル4の各噴射孔41と外面との距離(図3にdで示す)は重要な要素である。距離dがあまり大きくなると,送液ポンプ54による送液圧力をかなり高くしなければ,上記範囲内の圧力で外面を衝撃することができなくなってしまい,実用的に難しくなる。」と記載されている。距離dが重要な要素であるとさ れているのは,距離dが大きくなると衝撃を与える面積が大きくなり圧力が弱まるからであり,これは単位面積当たりの平均の圧力が問題とされていることを示している。 また,構成要件1Eにおける「衝撃」の対象は「外面」であるから,衝撃の対象は「面状」であって,微細なスポット(点状)ではない。そして,本 件発明1及び7は,ガラス基板の研磨において「平坦性の点で充分な品質が確保できない」(段落【0007】)という課題を解決するものであり,発明の効果は「さらに高い平坦性を確保」(段落【0009】)することにあるところ,「平坦性を確保」するためには,「衝撃の際の圧力」が加えられる部分が微小な点状(スポット状)の押圧箇所では足りず,ガラス基板表面 の全面である必要がある。 さらに,原告が「瞬時圧力」を問題にする点も誤りである。すなわち,本件明細書の【0033】には「貼り合わせパネル10の外面上の各点のうち,各ノズル4の各噴射孔41に対して最短距離にある点において衝撃圧力が高くなり過ぎる場合,溶出液Lの噴射中に貼り合わせパネル10を前後に移動 させることで,時間平均した各点での衝撃圧力を均一にできる。これにより,機械研磨後の外面の平坦性をさらに高めることができる」と記載され,「衝撃圧力」が「時間平均」されたものであることが示されている。 (5) 原告が根拠とする甲12実験は,以下のとおり,信用性が低い。 の外面の平坦性をさらに高めることができる」と記載され,「衝撃圧力」が「時間平均」されたものであることが示されている。 (5) 原告が根拠とする甲12実験は,以下のとおり,信用性が低い。 第1に,甲12実験では,富士フイルム株式会社の感圧シート(プレスケ ール)が用いられているところ,感圧シートのごく一部で色を確認するのは 誤りであり,一様の圧力がかかる全体で色を対比しなければならないが,標準色見本の濃度0.2は,原告実験後の感圧シートの全体の色には対応していない。 第2に,富士フイルムの感圧シート(プレスケール)はわずかな圧力にも敏感に反応するうえ,ずりの力にも弱いので,縁止めをして使用する必要が あるが,甲12実験では食品用ラップによるラミネート加工による圧力が加わっている上,ラミネートしたままで水圧をかけてずりの力を加えているのにあえて縁止めをしていない。 第3に,噴霧による圧力を測定するのであれば,同じ感圧シートで噴霧エリアと噴霧エリア外を区画し,両者の色の違いを確認する必要があるが,同 実験では,噴霧エリア内外を区画することなく実験を行っている。 第4に,原告は,水よりも比重の大きいフッ酸のほうが,比重に比例して衝撃力が大きくなると主張しているが,液滴の吐出圧力が同じならば吐出される液滴の運動量は比重にかかわらず同じであるから,液体の比重が大きいからといって,衝撃圧力が比例的に大きくなるわけではない。 第5に,プレスケールは1回のみの押圧がなされたときの圧力を測定するものであり,噴霧圧力のように,無数の水滴が何度も連続して到達する,いわば断続圧(連打圧)を測定するものではない。この点について,プレスケールを製造販売する富士フイルムの担当者は,被告NSCからの照会に対し,「プレス のように,無数の水滴が何度も連続して到達する,いわば断続圧(連打圧)を測定するものではない。この点について,プレスケールを製造販売する富士フイルムの担当者は,被告NSCからの照会に対し,「プレスケールは基本的に「一度きりの加圧」を測定することを前提した製 品になります。」と回答している(乙3参考資料4)。 (6) 甲19実験についても信用性が低い。 甲19の別紙1の図1は「5LW 5秒噴射」の写真であるが,「プレスケール」超微圧用5LWで5秒間噴霧した実験後の写真である乙3の図25と対比すると,甲19実験の写真は過剰に発色している。これは,実験者が 5秒を大幅に超えて噴射させたか,強大な噴射圧力に設定したかのいずれかであると考えられる。 また,甲19実験の結果において,仮に,部分的にでも「0.050Mpaを超えるスポット」が存在するとしても,そのようなスポットが存在することから直ちに構成要件1Eが充足するものではない。 (7) 噴霧圧力の測定に関し,乙3実験で使用された噴霧圧力測定装置は,昭和36年以来スプレーノズルを開発し製造販売し続けてきたいけうちで用いられている装置であり,同測定装置による測定のように,1cm×1cmの正方形など一定の面積の測定領域をもって噴霧圧力を測定することは,業界における標準的な測定方法である(乙3,4)。 同様に,昭和32年以来スプレーノズルの製造をし続けてきた株式会社共立合金製作所(以下「共立合金製作所」という。)は「衝突力分布測定装置」による測定を行っているが(乙6参考資料1),その測定方法は,「スプレーに対して受圧センサーを移動させ,スプレーの衝突力分布を求める」というものであり,受圧領域は一定の幅ないし径を有することが示されている (乙 るが(乙6参考資料1),その測定方法は,「スプレーに対して受圧センサーを移動させ,スプレーの衝突力分布を求める」というものであり,受圧領域は一定の幅ないし径を有することが示されている (乙6,参考資料1参照)。この測定方法は,いけうちの測定方法とほぼ同一であり,業界における標準的な測定方法といってよい。 原告は,本件各発明に近い技術分野における圧力の測定方法として,甲21の1~3を挙げるが,これらの技術は非常に高い衝撃圧力が加えられるものであり,本件各発明とは全く異なる技術である。 (8) 以上のとおり,被告方法は,構成要件1Eを充足しない。 4 争点2-1~2-5(構成要件7A,7C,7F,7H及び8Aの充足性)について(1) 争点2-1(構成要件7Aの充足性)について〔原告の主張〕 被告装置は,前記1〔原告の主張〕のとおり,「フラットパネルディス プレイ用のガラス基板の外面を機械的に研磨して厚さを薄くする外面機械研磨装置」であるから,構成要件7Aを充足する。 〔被告NSCの主張〕被告装置は,前記1〔被告らの主張〕のとおり,「ガラス基板の外面を機械的に研磨」するものでも,「外面機械研磨装置」でもないので,構成 要件7Aを充足しない。 (2) 争点2-2(構成要件7Cの充足性)について〔原告の主張〕構成要件7Cは「処理チャンバー内の所定位置に前記ガラス基板を保持する基板保持具」というものであるが,被告装置は,ローラにガラス 基板を置いて,ローラで水平方向に搬送する構造を備えているから(甲6),構成要件7Cを充足する。 この点,被告NSCは,構成要件7Cの「基板保持具」は「垂直に立てて保持する」必要があると主張するが,請求項7には, で水平方向に搬送する構造を備えているから(甲6),構成要件7Cを充足する。 この点,被告NSCは,構成要件7Cの「基板保持具」は「垂直に立てて保持する」必要があると主張するが,請求項7には,「処理チャンバー内の所定位置にガラス基板を保持する」と記載されているにすぎず, その保持の態様や方向を限定しているものではない。このことは,垂直にガラス基板を保持する態様に限定した従属項である請求項9の記載と対比しても明らかである。 〔被告NSCの主張〕構成要件7Cの「基板保持具」は,本件明細書等の段落【0020】によ れば,「基板保持具3は,貼り合わせパネル10をほぼ垂直に立てて保持する部材」であるので,「基板保持具」は「垂直に立てて保持する」必要があるが,被告装置の構成7cの「ローラ」は「垂直に立てて保持する」機能を有しないので,構成要件7Cの「基板保持具」に該当しない。 (3) 争点2-3(構成要件7Fの充足性)について 〔原告の主張〕 被告装置は,前記2〔原告の主張〕のとおり,ガラス基板の「外面を衝撃し,衝撃による物理的作用を利用して前記外面を研磨できる圧力で溶出液を前記ノズルに供給するもの」なので,構成要件7Fを充足する。 〔被告NSCの主張〕被告装置は,前記2〔被告らの主張〕のとおり,ガラス基板の「外面を 衝撃」するものでも,「衝撃による物理的作用を利用して前記外面を研磨できる圧力で溶出液を前記ノズルに供給するもの」でもないので,構成要件7Fを充足しない。 (4) 争点2-4(構成要件7Hの充足性)について〔原告の主張〕 前記3〔原告の主張〕のとおり,被告装置におけるフッ酸の噴射圧力は「0.5kg/cm²~3.5kg/cm²の範囲である」の 点2-4(構成要件7Hの充足性)について〔原告の主張〕 前記3〔原告の主張〕のとおり,被告装置におけるフッ酸の噴射圧力は「0.5kg/cm²~3.5kg/cm²の範囲である」ので,被告装置は,構成要件7Hを充足する。 〔被告NSCの主張〕前記3〔被告らの主張〕のとおり,被告装置においてガラス基板に薬液が 噴霧する際の,薬液が基板外面に接するときの圧力は最大でも0.00071kg/cm2程度であるので,被告装置は,構成要件7Hを充足しない。 (5) 争点2-5(構成要件8Aの充足性)について〔原告の主張〕被告装置は,上記(1) 〔原告の主張〕のとおり,「請求項7記載の外面 機械研磨装置」なので,構成要件8Aを充足する。 〔被告NSCの主張〕被告装置は,上記(1)〔被告NSCの主張〕のとおり,「請求項7記載の外面機械研磨装置」ではないので,構成要件8Aを充足しない。 5 争点3(共同不法行為等の成否)について 〔原告の主張〕 (1) 被告JDIの工場と被告NSCの工場とは,ガラス基板を搬送するコンベアで接続された一連一体のものであり,被告JDIの工場で封止工程が行われた状態のガラス基板はそのままコンベアで被告NSCの工場に搬送され,研磨工程が行われる。そして,被告NSCの工場での研磨工程が終わると,そのままコンベアで被告JDIの工場に戻り,フラットパネルディスプレイ 製品となり,梱包されるという工程を経る。本件において,被告NSCが研磨したガラス基板が被告JDI以外の者に納品されることはなく,被告らはそれぞれ本件発明1及び2の構成要件の一部を行い,合わせると全ての構成要件が充足される。 (2) 上記(1)の事情によれば,被告JDIと被告NSC 告JDI以外の者に納品されることはなく,被告らはそれぞれ本件発明1及び2の構成要件の一部を行い,合わせると全ての構成要件が充足される。 (2) 上記(1)の事情によれば,被告JDIと被告NSCの行為は相互に関連し ており,客観的に見て両被告が一体として本件発明1及び2を実施しているものと評価できる。仮に共同の特許権侵害に主観的な意思の共同が必要であるとしても,以上のような事情に照らせば,被告らが相互の行為を十分に知悉し,それを利用してフラットパネルディスプレイの製造を行なっていると認められるので,被告らは主観的にも意思を共同して特許権侵害に及んでい るということができる。 したがって,被告らはそれぞれ共同不法行為者として損害賠償責任を負う。 (3) 本件において,本件発明1及び2の作用効果を享受しているのは,フラットパネルディスプレイを製造している被告JDIであり,被告NSCは被告JDIの手足として研磨作業に従事しているにすぎない。このため,全体と して見れば,被告JDIが本件発明1及び2に係るフラットパネルディスプレイの製造方法を使用していると評価できる。被告JDIが被告NSCに構内外注するに当たっては,フラットパネルディスプレイの研磨方法について詳細な説明を受けていることは,取引通念上明らかである。 他方,被告方法において,研磨の工程は特徴部分の1つであって,当 該工程を担当する被告NSCの役割も重要である。そうすると,研磨工 程を行なっている被告NSCもフラットパネルディスプレイの製造方法である被告方法を使用していると評価し得るので,被告らは,いずれも,本件発明1及び2の実施主体となる。 〔被告らの主張〕被告JDIは複数の事業所を有しており,そのうち一部の事業所においては 方法である被告方法を使用していると評価し得るので,被告らは,いずれも,本件発明1及び2の実施主体となる。 〔被告らの主張〕被告JDIは複数の事業所を有しており,そのうち一部の事業所においては 被告JDIの事業所敷地内に被告NSCの工場が存在するが,被告JDIは被告NSCに対して工場スペースを賃貸しているにすぎず,これらは一連のコンベアでつながっているわけではない。その他の複数の事業所においてはその敷地内に被告NSCの工場は存在せず,被告JDIは遠隔にある被告NSCの工場にトラックによる陸送を利用して製品を発送している状況にある。 共同で侵害行為を行っていると評価するには,単に客観的行為が関連しているだけでは足りず,他人の行為を利用して共同して実施する意思があることが必要である。被告らは,相互に資本関係も技術的な提携関係も存在せず,相手方の製造工程を知り得る立場にないため,共同不法行為は成立しない。 6 争点4(被告NSCによる間接侵害の成否) 〔原告の主張〕仮に,本件特許1及び2に係る特許侵害について,被告らによる共同不法行為が成立しないとしても,被告NSCには間接侵害(特許法101条4号,5号)が成立する。 (1) 被告NSCが生産し被告JDIに提供しているスリミング処理済みのガラ ス基板は,本件発明1及び2の方法の実施にのみ用いられる物であり,被告NSCの行為は特許法101条4号の間接侵害行為に該当する。 (2) 本件発明1及び2はフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板の研磨処理(スリミング処理)の方法を特徴とするものであり,被告NSCが被告JDIに提供しているスリミング処理済みのガラス基板は,本件発明1及 び2の「課題の解決に不可欠なもの」に当たる。また,被告NSCが被 ミング処理)の方法を特徴とするものであり,被告NSCが被告JDIに提供しているスリミング処理済みのガラス基板は,本件発明1及 び2の「課題の解決に不可欠なもの」に当たる。また,被告NSCが被告J DIに提供しているスリミング処理済みのガラス基板は,市場において広く取引され,容易に入手できるものではない。 また,被告NSCはフラットパネルディスプレイの製造という方法の発明について本件特許権が存在していることを認識し,また,フラットパネルディスプレイを製造している被告JDIに対し,自らが製造する薄型化処理さ れたガラス基板を供給していたのであるから,当該ガラス基板が本件特許権の実施に用いられることを認識していたということができる。 そして,被告NSCは,被告JDIから構内外注の方法でスリミング処理を委託され,業務として薄型化処理が施されたガラス基板を生産しているので,「業として,その生産…をする行為」をしているということができる。 したがって,被告NSCの行為は特許法101条5号の間接侵害行為に該当する。 〔被告NSCの主張〕方法の発明の間接侵害は,直接行為者の行為が全ての構成要件を充足することが前提となっている。本件においては,被告JDIは本件発明1及び2の構 成要件C,D,E及びGを充足する工程を行っていないので,被告NSCの行為が間接侵害となることはない。 7 争点5(損害発生の有無及びその額)について〔原告の主張〕(主位的主張) 被告らは,共同で原告の独占的通常実施権を侵害したところ,被告NSCは,平成26年12月1日から現在までの間に,丙1地工場,丙2地第二工場,丙3地工場及び丙4地工場において,毎月それぞれ少なくとも単価3500円のフラットパ 的通常実施権を侵害したところ,被告NSCは,平成26年12月1日から現在までの間に,丙1地工場,丙2地第二工場,丙3地工場及び丙4地工場において,毎月それぞれ少なくとも単価3500円のフラットパネルディスプレイを少なくとも2万枚製造し,被告JDIに対して供給した。また,被告NSCは,遅くとも平成28年12月から,丙5地工場 において同様の単価と製造数のフラットパネルディスプレイを製造し,被告J DIに供給した。 被告NSCは,上記の製造及び販売により,少なくとも33億6000万円の利益を得ている(利益率30%)。上記金額は,①単価3500円に製造枚数2万枚(1月当たり)を乗じた金額に,平成27年3月分から平成30年3月分までの36か月分,工場の数(丙1地工場,丙2地第二工場,丙3地工場 及び丙4地工場)である4をそれぞれ乗じた金額の30%(利益率)である30億2400万円,②単価3500円に製造枚数2万枚(1月当たり)を乗じた金額に,丙5地工場の平成28年12月分から平成30年3月分の16か月分を乗じた金額の30%である3億3600万円の総和である。 (予備的主張) 仮に,主位的主張が認められないとしても,原告が本件特許の独占的通常実施権に基づき,被告らに対して本件特許の実施にかかるライセンスを付与する場合,上記の利益額(33億6000万円)の10%である3億3600万円が相当であるので,特許法102条3項,民法709条に基づき,同額が原告の損害額となる。 〔被告らの主張〕いずれも否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件各発明の意義(1) 本件明細書等には,以下の記載がある(甲1)。 【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本願 否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件各発明の意義(1) 本件明細書等には,以下の記載がある(甲1)。 【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本願の発明は,液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ,有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(以下,FPD)の製造に 関する。 【背景技術】【0002】液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのFPDは,コンピュータの表示デバイス用やTV受像器用,携帯電話の表示部用など,各種電子機器に多用されている。最近では,自発光のためバックライトが不要で高 速応答性に優れた有機ELディスプレイの開発が進められており,将来が有望視されている。 このようなFPDに求められている課題の一つに,薄型化がある。薄型化は,搭載される電子機器の薄型化や小型化,軽量化に伴って要求されている。例えば,ノートパソコンや携帯電話では,さらなる薄型化や軽量化 が求められており,これに伴いFPDも薄く軽量なものが求められている。 【0003】FPDの薄型化や軽量化にとって重要な要素は,ガラス基板である。液晶ディスプレイにしろ,プラズマディスプレイにしろ,有機ELディスプレイにしろ,一対のガラス基板を貼り合わせ,その内側面に素子電極を配 した構造を採る。ガラスは比重が重く,また機械的強度を確保する必要性からある程度の厚さが必要となる。従って,ガラス基板の存在がFPDの薄型化や軽量化にとって障害となっている。 【0004】多くのFPDの製造工程では,大きな一対のガラス基板から多数のFP Dを産出する工法が採られている。一対のガラス基板は,産出する各FPD用に区分けがされており,各区域にそれ 0004】多くのFPDの製造工程では,大きな一対のガラス基板から多数のFP Dを産出する工法が採られている。一対のガラス基板は,産出する各FPD用に区分けがされており,各区域にそれぞれ素子電極が形成される。貼り合わせ等の工程が終了した後,一対のガラス基板は各区域に切断され,仕上げの工程に回される。 【0005】 このように一対のガラス基板から多数のFPDを産出する工法は,工程 の集約化が行えるため製造コストが安くできるメリットがあるものの,ガラス基板が大きくなる傾向がある。例えば,液晶ディスプレイの製造プロセスでは,2200mm×1800mm程度の大きなガラス基板が使用される。このように大きなガラス基板を取り扱う場合,ガラス基板をあまり薄くすると,割れやすくなったり,自重で撓んだりすることがある。従っ て,ある程度の厚さが必要になる。 【0006】一方,各区域に切断された後のもの(半製品)や製品となったものの場合,ガラス基板がある程度薄くても,大きさが小さいため問題はない。このようなことから,特開平5-249422号公報の発明では,一対のガ ラス基板の貼り合わせを行った後,一方のガラス基板の外面をエッチングして薄くし,その後,各区域に切断する工法が採用されている。 【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0007】 上記公報では,外面を薄くする際のエッチングについては,具体的内容は殆ど開示されていない。即ち,エッチングは浸漬法によるとの説明はあるものの,どのようなエッチング液を使用し,どの程度の時間浸漬するのか,具体的説明は一切無い。従って,上記公報の開示内容では,当業者の実施能力を持ってしても当該発明を実施することは困難であり,また実施 の,どのようなエッチング液を使用し,どの程度の時間浸漬するのか,具体的説明は一切無い。従って,上記公報の開示内容では,当業者の実施能力を持ってしても当該発明を実施することは困難であり,また実施 できたとしても,FPDによって非常に重要な要素である平坦性の点で充分な品質が確保できないと判断される。 本願の発明は,かかる課題を解決するためになされたものであり,FPDの薄型化を可能にする実用的な技術を提供する技術的意義を有するものである。 【発明の効果】 【0009】以下に説明する通り,本願の請求項1又は7記載の発明によれば,新鮮な(外面の材料が溶け込んでいない)溶出液が次々に供給される他,外面の材料が溶け込んだ溶出液が衝撃により次々に流出していくので,効率良く且つ均一性良く研磨が行える。外面のガラスの組成や結晶状態に不均一 な箇所があっても,物理的作用を併用しているため,充分均一に研磨が行える。このため,研磨後の外面の平坦性を高くでき,産出されるFPDの表示性能も高いものとなる。その上,溶出液による前記外面の衝撃の際の圧力が0.5kg/cm2~3.5kg/cm2の範囲であるので,新鮮な溶出液を充分に供給して研磨が行えるとともに,物理的な作用も充分に利 用できるので,ガラスの組成や結晶状態に不均一な箇所であっても充分研磨でき,さらに高い平坦性を確保できる。 …【発明を実施するための最良の形態】【0010】 以下,本願発明を実施するための最良の形態(以下,実施形態)について説明する。 以下の説明では,FPDの一例として,液晶ディスプレイ(以下,LCD)を採り上げる。 図1は,実施形態に係るFPDの製造方法の概略を示した図である。図 1の方 いて説明する。 以下の説明では,FPDの一例として,液晶ディスプレイ(以下,LCD)を採り上げる。 図1は,実施形態に係るFPDの製造方法の概略を示した図である。図 1の方法は,例えば携帯電話用のLCDの製造方法である。図1に示す方法では,双方がガラス基板である一対の基板1の一方に電極11を形成する電極形成工程と,電極形成工程の後に,一対の基板1をシール材12を介して貼り合わせて内部に液晶13を注入した上で封止する封止工程と,封止工程の後に,双方のガラス基板1の外面を機械的に研磨して厚さを薄 くする外面機械研磨工程とを含んでいる。 【図1】 【0011】図1に示す製造方法では,ほぼ同じ形状大きさの一対のガラス基板1から多数のLCDが産出される。一対のガラス基板1は,産出する各LCD 用に区分けがされており,電極形成等の工程は,それぞれの区域について行われる。 電極形成工程は,ITOのような透明導電膜による透明電極の形成工程,プラズマCVD法により作成した低温ポリシリコン膜等による駆動電極やコモン電極の形成工程が含まれる。各工程には,露光,現像,エッチング 等から成るフォトリソグラフィ工程が含まれる。 【0013】シール工程では,一方のガラス基板1の表面にシール材12が塗布される。シール材12は,産出される各LCDの輪郭に沿って周状に塗布される。シール材12で囲まれた内側に液晶13を所定量滴下する。その後, 必要に応じてスペーサを散布し,他方の基板1を位置合わせしながら被せて所定の位置関係で貼り合わせる。 【0014】 次に,本実施形態の大きな特徴点を成す外面機械研磨工程が行われる。 本実施形態の外面機械研磨工程は の基板1を位置合わせしながら被せて所定の位置関係で貼り合わせる。 【0014】 次に,本実施形態の大きな特徴点を成す外面機械研磨工程が行われる。 本実施形態の外面機械研磨工程は,ガラス基板1の外面の材料を溶出させる溶出液Lを外面に向けて噴射することで自重による加速度より大きな加速度を付けて溶出液Lを外面に吹き付けることで行われる。溶出液Lが吹き付けられる結果,吹き付けによる物理的作用を利用して外面が研磨され る。尚,溶出液Lを単に散布しただけでは自重による加速度しか溶出液Lには付かないので,これとは異なる。 尚,本明細書では,一対の基板の互いに向かい合う面を「内面」とし,それとは反対側の面を「外面」としている。本実施形態の外面機械研磨工程は,貼り合わせた一対のガラス基板(以下,貼り合わせパネル10)の 両方の外面を機械研磨する工程となっている。「機械研磨」とは,吹き付け圧力という溶出液の物理的な作用を利用した研磨であるという意味と,研磨の際にガラス基板1が機械的に移動するという意味とを併せ持つ。 「機械的に移動する」とは,「機械を利用して移動する」との意味である。 尚,「削減」即ち「削って厚さを減らす」という用語と比較すると,研磨 を行うと,必ず表面が削られて厚さが減るので,「研磨」は「削減」の下位概念であり,そのことは自明である。 【0015】図1に示すように,本実施形態では,貼り合わせパネル10を垂直に立てて保持し,その両側に配したノズル4から溶出液Lを噴射させる。溶出 液Lとしては,フッ酸のような強酸が使用される。フッ酸の場合,例えば水100に対して10~50%程度(体積百分率)に希釈して使用される。 衝撃圧力は,貼り合わせパネル10の外面上で0.5kg/cm2~3. 5k は,フッ酸のような強酸が使用される。フッ酸の場合,例えば水100に対して10~50%程度(体積百分率)に希釈して使用される。 衝撃圧力は,貼り合わせパネル10の外面上で0.5kg/cm2~3. 5kg/cm2である。 ノズル4から噴射された溶出液Lにより衝撃された外面は,溶出液Lに 溶かし出され,かつ溶出液Lの衝撃により流出していく。これにより外面 が機械研磨され,ガラス基板1の厚さ(ひいては貼り合わせパネル10全体の厚さ)が薄くなる。 【0017】上述した本実施形態の製造方法によれば,ガラス基板1の外面の材料を溶出させる溶出液Lを外面に向けて噴射することで自重による加速度より 大きな加速度を付けて溶出液Lを外面に吹き付けて外面を衝撃し,溶出液Lによる衝撃という物理的作用を利用して外面を機械研磨しているので,新鮮な溶出液Lが次々に供給される他,外面の材料が溶け込んだ溶出液Lが衝撃により次々に流出していくので,効率よく且つ均一性よく機械研磨が行える。外面のガラスの組成や結晶状態に不均一な箇所があっても,物 理的作用を併用しているため,充分均一に機械研磨が行える。このため,機械研磨後の外面の平坦性を高くでき,産出されるFPD(判決注:誤記につき「FPD」を付加)の表示性能も高いものとなる。 【0034】また,上記装置の構成において,送液ポンプ54による送液圧力は,外 面の溶出液Lによる衝撃圧力が0.5kg/cm2~3.5kg/cm2の範囲になるように設定される。この際,各ノズル4の各噴射孔41と外面との距離(図3にdで示す)は重要な要素である。距離dがあまり大きくなると,送液ポンプ54による送液圧力をかなり高くしなければ,上記範囲内の圧力で外面を衝撃することができなくなってしまい 41と外面との距離(図3にdで示す)は重要な要素である。距離dがあまり大きくなると,送液ポンプ54による送液圧力をかなり高くしなければ,上記範囲内の圧力で外面を衝撃することができなくなってしまい,実用的に難し くなる。また,距離dが小さい場合,衝撃圧力を最適値に保つことは容易となるが,噴射孔41への最短点での衝撃圧力が高くなり過ぎ,均一性の点で問題が生じてくる。衝撃の均一性(即ち,研磨の平坦性)を確保しつつ実用的な構成とするためには,距離dは,5mm以上100mm以下とすることが好ましい。尚,溶出液Lによる研磨が進む過程で噴射孔41か ら外面までの距離は僅かに長くなるが,5mm以上100mm以下は,研 磨を始める際の距離ということである。 【0035】また,衝撃圧力が0.5kg/cm2より小さいと,新鮮な溶出液Lの供給が少なくなるので充分な研磨が行えない他,物理的な作用も充分で無 くなるので,ガラスの組成や結晶状態に不均一な箇所が充分研磨できず,平坦性が低下する問題がある。また,衝撃圧力が3.5kg/cm2より大きいと,ノズル4の噴射孔41から最短点のみが多く研磨されてしまい,この点で平坦性が悪化する。よって,0.5kg/cm2~3.5kg/cm2の範囲の衝撃圧力とすることが好ましい。 【0036】上記装置によれば,溶出液Lの化学的な作用に加え衝撃という物理的な作用も利用して外面の研磨が行われるので平坦性の高い研磨が行える上,ガラス基板1の搬送と機械研磨処理が自動化されているので,生産性も高い。 また,ノズル4の各噴射孔41が均等間隔をおいて設けられており,各噴射孔41から外面までの距離は一定であるので,噴射される溶出液Lに【図3】 自動化されているので,生産性も高い。 また,ノズル4の各噴射孔41が均等間隔をおいて設けられており,各噴射孔41から外面までの距離は一定であるので,噴射される溶出液Lに【図3】 よる衝撃圧力を均一させることが容易で,この点で平坦性の高い研磨処理に貢献できる。 【0041】図7に示すFPDの特徴点は,一対のガラス基板1の両方の外面100が,外面機械研磨処理により研磨されている点である。…この実施形態の FPDの大きな特徴点は,上述したような外面機械研磨処理を行うことにより,外面100が0.1μm以下の平坦性を有している点である。 【0042】平坦性について説明すると,図7に拡大して示すように,外面100の うち,最頂部101と最低部102との距離を平坦性としている。この値は,表面粗さの測定において最大粗さ(Rmax)を測定する場合に相当している。幾つかの会社から最大粗さを測定可能な表面粗さ計が市販されており,その中から適宜選んで上記外面100の平坦性を測定することができる。本願の発明者の研究によると,上述した外面機械研磨処理を行うこと で,一枚のガラス基板1の厚さtを0.5mm以下とした上で,平坦性(Rmax)を0.1μm以下にすることができ,薄型化,軽量化を達成しつつ表示ムラの無い高性能のFPDを提供することができる。尚,このような平坦性は,外面機械研磨処理が行われる前のガラス基板1の外面の平坦【図7】 性と同程度の場合があり,この場合には,外面機械研磨処理によって平坦性が損なわれない,と表現することもあり得る。 【0043】上記の例では,最大粗さを平坦性としたが,中心線平均粗さ(Ra)を平坦性とすること り,この場合には,外面機械研磨処理によって平坦性が損なわれない,と表現することもあり得る。 【0043】上記の例では,最大粗さを平坦性としたが,中心線平均粗さ(Ra)を平坦性とすることもできる。この場合は,外面100の凹凸について平均 の高さを求め,その高さを基準にして各凹凸の高さの差異の絶対値の平均を求める。この場合も,中心線平均粗さ(Ra)を測定できる表面粗さ計が市販されているので,それを用いる。ちなみに,中心線平均粗さの場合,0.03mm以下とすると表示ムラの無いFPDが提供でき,そのような平坦性も上記外面機械研磨処理によって達成できる。 …(2) 以上を総合すると,本件発明1は,①フラットパネルディスプレイの製造方法に関するものであり,②フラットパネルディスプレイのガラス基板の高い平坦性を確保しつつ,その薄型化を可能にするという課題を解決するため,③電極形成工程,封止工程,外面機械研磨工程を含み,外面機械研磨工程において は,ガラス基板の外面の材料を溶出させる溶出液をガラス基板の外面に吹き付けて衝撃することにより,溶出液の化学的な作用に加えて,溶出液による衝撃の物理的作用を利用して研磨するものであって,かつ,当該溶出液がガラス基板の外面を衝撃する際の圧力が0.5kg/cm2~3.5kg/cm2の範囲内にあるものであり,④ガラスを十分に研磨することができ,高い平坦性を 確保することをその効果とするものであると認められる。 2 争点1-3(構成要件1Eの充足性)及び争点2-4(構成要件7Hの充足性)について本件において,争点とされる各構成要件の解釈は,構成要件1E及び7Hの充足性により左右されると解されるので,事案に鑑み,争点1-3(構成要件 1Eの充足性)及び争点 充足性)について本件において,争点とされる各構成要件の解釈は,構成要件1E及び7Hの充足性により左右されると解されるので,事案に鑑み,争点1-3(構成要件 1Eの充足性)及び争点2-4(構成要件7Hの充足性)について判断する。 (1) 構成要件1Eは「前記溶出液による前記外面の衝撃の際の圧力は,0.5kg/cm²~3.5kg/cm²の範囲であること」,同7Hは,「前記ノズルの噴射孔から前記溶出液が噴射されて前記ガラス基板の外面を0. 5kg/cm2~3.5kg/cm2の範囲の圧力で衝撃する」という構成を含むものであり,いずれも,ノズルから噴射された溶出液がガラス 基板の外面を衝撃する際の圧力が「0.5kg/cm²~3.5kg/cm²」の範囲内であることをその内容とするものである。 (2) 原告は,構成要件1E及び7Hの「圧力」の数値の意義について,1cm2当たりの平均の圧力ではなく,溶出液がガラスを衝撃するそのスポットの衝撃圧力を意味すると理解すべきであると主張する。 しかし,構成要件1E及び7Hの「圧力」の単位は「kg/cm2」であり,これは,通常の意味としては,ある程度の面積を有する面に所定の時間にわたり作用する力の大きさを単位面積当たりの大きさに換算したものと解するのが自然である。 また,本件明細書等には,構成要件1E及び7Hの「圧力」の意義や測定 方法に関する明確な定義は存在しないものの,段落【0034】には,「この際,各ノズル4の各噴射孔41と外面との距離(図3にdで示す)は重要な要素である。距離dがあまり大きくなると,送液ポンプ54による送液圧力をかなり高くしなければ,上記範囲内の圧力で外面を衝撃することができなくなってしまい,実用的に難しくなる。」との記載が存 は重要な要素である。距離dがあまり大きくなると,送液ポンプ54による送液圧力をかなり高くしなければ,上記範囲内の圧力で外面を衝撃することができなくなってしまい,実用的に難しくなる。」との記載が存在する。液滴の大 きさや衝撃力は距離により変化するものではないので,上記明細書の記載は,上記各構成要件の「圧力」が単位面積当たりの作用力の大きさであることを示唆するものということができる。 (3) これに対し,原告は,本件明細書等の段落【0015】及び【0017】における,ノズルから噴射された溶出液の衝撃により外面の材料が溶け出し, 溶出液が衝撃により流出していく旨の記載を根拠として,構成要件1E及び 7Hの「圧力」は,溶出液がガラスを衝撃するそのスポットの衝撃圧力を意味すると主張する。しかし,上記記載は,構成要件1E及び7Hの「圧力」の測定について特定の方法によるべきことを含意するものではなく,同記載をもって,同各構成要件の「圧力」が,ガラスを溶出液が衝撃するそのスポットの衝撃圧力を意味すると解することはできない。 また,原告は,甲21の1~3に依拠し,本件特許出願当時,本件特許に近い技術分野においても,原告が主張するような意味で「圧力」という用語が用いられていたと主張する。しかし,甲21の1は,「気中ウォータージェットピーニング技術」であって,約1000MPaの非常に高い衝撃圧力が生じるものであり,甲21の2及び3も,高速液体噴 流による洗浄・ピーニングに関する技術及び漁船等に付着した貝などを除去するための高圧噴流ノズルに関する技術であって,本件特許のようなガラスの基板の研磨に関する技術分野とは異なる技術分野であり,そこで想定されている「圧力」の大きさも異なるというべきである。 るための高圧噴流ノズルに関する技術であって,本件特許のようなガラスの基板の研磨に関する技術分野とは異なる技術分野であり,そこで想定されている「圧力」の大きさも異なるというべきである。 むしろ,本件ノズルと同種のノズルを昭和30年代から製造している いけうち(乙4)においては,その測定に当たり,1cm×1cmの正方形の圧力受領域を有する「受圧プレート」が使用されていると認められ(乙3),また,いけうちと同様に長年にわたりスプレーノズルを製造している共立合金製作所においても,一定の面積の受圧部を使用していることが認められる(乙5参考資料1)。これによれば,本件特許出願当 時,ノズルから噴射された溶出液がガラス基板の外面を衝撃する際の圧力の測定方法としては,一定面積を有する面に所定の時間にわたり作用する力の大きさを単位面積当たりの大きさに換算することが標準的であったというべきである。 (4) 原告は,本件ノズルを製造したいけうちの作成したスプレーノズル流量線 図(甲8)などに基づき,被告NSCの用いる方法又は装置におけるフッ酸 の噴射圧力は約1.224kgf/cm²であるとした上で,ノズルからフッ酸が噴射される際の圧力と噴射によってガラス基板に加わる衝撃の圧力はほとんど変わらないので,被告方法は構成要件1E及び7Hを充足すると主張する。 しかし,証拠(乙1資料4~6,乙2)によれば,本件ノズルは,ノズル 吐出口の直径は約3mm,吐出口の面積が約7mm2であり,ノズルの先端とガラス基板との間には190mmの距離があり,薬液は65~70°の噴霧角度(噴角)に均等な流量分布で広がって円錐形に噴霧されるので(乙2の1頁左上写真参照),ノズルから190mm離れたガラス基板上に噴霧される領域 には190mmの距離があり,薬液は65~70°の噴霧角度(噴角)に均等な流量分布で広がって円錐形に噴霧されるので(乙2の1頁左上写真参照),ノズルから190mm離れたガラス基板上に噴霧される領域は,ノズルの噴霧圧力が0.1~0.2MPaの場合,直径約24 2~約266mmの円形領域となり,その面積は約4万5973~約5万5543mm2であると認められる。 このように,本件ノズルは,65~70°の噴霧角度に広がり均等な流量分布で円錐形に噴霧されるものであり,液滴の分布は一様に広がりながらガラス基板の外面に到達するのであるから,その分薬液の単位面積当たりの圧 力は大幅に低減するというべきである。 そうすると,ノズルからフッ酸が噴射される際の圧力と噴射によってガラス基板に加わる衝撃の圧力がほとんど変わらないことを前提とし,被告方法が構成要件1E及び7Hを充足するとの原告の主張は理由がない。 (5) 原告は,富士フイルムの感圧シート「プレスケール」を使用した甲12実 験に基づき,被告方法による場合の衝撃圧力は約1kg/cm2程度であると主張する。 しかし,同実験は,感圧シートがその表面に加えられた圧力に応じて発色することを利用し,その発色の程度を標準チャートの標準色見本と比較対照することで,シート表面に加えられた圧力の大きさを測定するものであるが, 証拠(乙3資料3及び4)によれば,プレスケールは,発色剤層のマイクロ カプセルが圧力によって破壊され,その中の無色染料が顕色剤に吸着して化学反応により赤く発色することを発色の原理とするものであり,基本的に一度のみの加圧をすることを前提としたものであって,液体の噴射を一定時間継続すると,同じ箇所に複数回加圧することとなり,実際の圧力よりも測定圧力 く発色することを発色の原理とするものであり,基本的に一度のみの加圧をすることを前提としたものであって,液体の噴射を一定時間継続すると,同じ箇所に複数回加圧することとなり,実際の圧力よりも測定圧力が高くなる可能性があるものと認められる。そうすると,プレスケール を使用して2分間衝撃した甲12実験の結果が,被告方法によるガラス基板上の圧力を正確に表しているということはできない。 これに対し,原告は,追加的に甲19実験を行い,水の噴射時間を5秒にした場合であっても0.5kg/cm2を超える発色が観察され,2分間噴射した場合であっても,発色している領域は広くなるものの,圧力の最大値 は大差なかったと主張する。 しかし,被告が行った乙3実験(プレスケールを使用し,微圧用4LW及び5LWでそれぞれ5秒及び2分噴霧した実験)によれば,噴霧時間によって,単にプレスケールの変色の範囲が異なるのみならず,色の濃度も異なっていることがうかがわれ,さらに,前記のとおり,一度のみの加圧をするこ とを前提とするプレスケールは継続的な液体の噴射による衝突圧力を測定するには必ずしも適さないことも考えると,プレスケールを使用して噴霧による基板上の圧力を正確に測定することは困難といわざるを得ない。 そうすると,甲19実験の結果をもってしても,被告方法による場合の基板上の圧力が構成要件1Eの規定する数値の範囲内にあるということはでき ない。 (6) 証拠(乙3)によれば,被告らは,いけうち乙地工場において同社の装置を利用した上で,本件ノズルとガラス基板との距離を190mmとし,噴霧角度を65~70°,ノズル吐出圧力を0.15及び0.2MPaにそれぞれ設定し,円錐形状に薬液を噴霧することにより実験(乙3実験)を 利用した上で,本件ノズルとガラス基板との距離を190mmとし,噴霧角度を65~70°,ノズル吐出圧力を0.15及び0.2MPaにそれぞれ設定し,円錐形状に薬液を噴霧することにより実験(乙3実験)を行った ところ,ガラス基板上の圧力(打力)は最大でも0.9×10-2N/cm2 (≒0.0009kg/cm2)であり,構成要件1E及び7Hの数値の下限を大幅に下回る結果を得たことが認められる。 前記判示のとおり,ノズルから噴射された溶出液がガラス基板の外面を衝撃する際の圧力の測定方法としては,いけうちの測定方法はその技術分野において標準的なものということができ,本件特許に係る特許請求の範 囲及び本件明細書等の記載とも整合的な方法であることにも照らすと,乙3実験の信用性は高いということができる。 (7) 以上によれば,被告NSCの用いる方法及び装置におけるフッ酸の噴射圧力が「0.5kg/cm²~3.5kg/cm²の範囲」内にあるということはできないので,被告方法は構成要件1Eを,被告装置は構成要件7Hを充 足しない。そうすると,被告方法が本件発明1の,被告装置が本件発明7のそれぞれ技術的範囲に属するということはできない。 また,請求項2は請求項1の,請求項8は請求項7のそれぞれ従属項であるから,被告方法は本件発明2の,被告装置は発明8の技術的範囲に属しない。 3 結論以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,原告の請求は理由がないので棄却することとし,よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 今野智紀 裁判官 細井直彰は,転官のため署名押印することができない。 裁判長裁判官 佐藤達文

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