20む27620.3.26大阪地裁棄却 主文 本件証拠開示命令請求を棄却する。 理由 第1本件証拠開示命令請求の趣旨と当事者の主張等 証拠開示請求の前提となる弁護人の予定主張弁護人は,検察官が証拠調べ請求した乙号証のうち,いずれも「犯行状況等」を立証趣旨とする3通の供述調書,すなわち,乙3号証(被告人の平成19年9月14日付け警察官調書〔乙4号証の前に録取されたもの〕),乙4号証(被告人の警察官に対する同日付け弁解録取書),乙5号証(被告人の同月15日付け警察官調書)について任意性を争い,乙3号証に関しては,「被告人は,平成19年9月14日午前中,A警察署に任意同行を求められ,同日午前から午後にかけてB警察官らによる取調べを受けた際,取調警察官から執拗,追及的かつ威嚇的な尋問が行われ,強度の心理的圧迫を受けたものであって,同調書はこのような取調べにおいて作成されたものであるから,明らかに任意性に疑いがある」旨主張し,また,乙4号証,5号証については,「上記のような同月14日の違法な取調べの影響が遮断されないまま行われた他の警察官の取調べにより作成されたものであるから同様に任意性に疑いがある」旨主張している。 弁護人による本件証拠開示命令請求の趣旨及び理由の要旨弁護人作成の証拠開示命令請求書に記載のとおりであるが,要するに,本件証拠開示命令請求に係る「被告人に係る取調官作成の取調べメモ(手控え),備忘録」(なお,弁護人は,第4回公判前整理手続期日において,後記一小決定の趣旨を踏まえて,請求対象を「被告人に係る取調官作成の取調べメモ(手控え),備忘録〔但し,いずれも平成19年9月15日以前の取調べに関するもの〕」に減縮した。以下,これを「本件開示請求証拠」という。)は,弁護人の前記予定主張に関連し,開示の必要性 成の取調べメモ(手控え),備忘録〔但し,いずれも平成19年9月15日以前の取調べに関するもの〕」に減縮した。以下,これを「本件開示請求証拠」という。)は,弁護人の前記予定主張に関連し,開示の必要性・相当性も認められるから,刑事訴訟法316条の20第1項により検察官が開示をしなければならない証拠であるのに,検察官は「『取調警察官が,犯罪捜査規範第13条の規定に基づき,取調べにおいてその供述内容や取調べの状況等を記録した備忘録であって,捜査機関において保管中のもの』の存否につき,警察に照会を行ったところ,『該当するものは存在しない。』旨の回答であったことから,開示には応じられない。」と回答しているので,その開示命令を求めるというものである。 なお,弁護人は,上記請求書中で,本件開示請求証拠が現存し,かつ,これを容易に開示し得る理由として,警察官は,犯罪捜査規範13条に基づき,被疑者らの取調べを行った場合には,取調べの経過等を記載したメモ,備忘録等を作成することを義務付けられており,ことに本件の場合は,被告人が従前の否認から自白に転じたのであるから,当然,上記メモ類を作成しているし,かつ,検察官においても,捜査資料全件送致の原則からして,容易にこれを入手し得ることを挙げている。 検察官の主張の概要以上の本件証拠開示命令請求に対し,検察官は,平成20年3月6日付け意見書において,要旨,本件開示請求証拠が現存するとする弁護人の主張は独断にすぎない,取調べメモ等について警察には送致義務がなく,検察官においても,手持ち証拠ではない警察官の取調べメモ等については,その調査をして存否や内容を確認すべき立場にはないから,警察にその有無を照会した上でその回答を前提として対応すれば足りる,警察が犯罪捜査規範13条に該当する取調べメモは存在しないと回答してい いては,その調査をして存否や内容を確認すべき立場にはないから,警察にその有無を照会した上でその回答を前提として対応すれば足りる,警察が犯罪捜査規範13条に該当する取調べメモは存在しないと回答している以上,その判断を尊重すべきであって,本件証拠開示命令請求に理由がないことは明らかであると主張している。 第2当裁判所の判断そこで,当裁判所は,本件証拠開示命令請求後,公判前整理手続期日を開いて当事者双方から更なる意見聴取を行うとともに,双方の同意を得て,検察官に対し,その保管する検察官作成の電話聴取書2通(いずれも上記取調べメモが存在しないという警察の回答を記載したもの),本件主張関連証拠開示の前提として任意性が争われている乙3~5号証,既に開示済みの警察官作成の捜査報告書2通(平成20年9月14日と15日の被告人に対する取調べ状況を取調警察官が上司に報告する内容のもの)の提示を求め,その内容を精査した。 その結果に基づく当裁判所の認定・判断は,以下のとおりである。 二つの最高裁決定と残された問題点本件においても当事者がその主張の当然の前提として論じているとおり,最高裁第三小法廷は,平成19年12月25日付け決定(裁判所時報1451号35頁)において,要旨,以下のとおり説示した(以下「三小決定」という。)。 (1)証拠開示命令の対象となる証拠は,必ずしも検察官が現に保管している証拠に限られず,当該事件の捜査の過程で作成され,又は入手した書面等であって,公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官において入手が容易なものを含む。 (2)公務員がその職務の過程で作成するメモのうち,専ら自己が使用するために作成したもので,他に見せたり提出することを全く想定していないものについては,証拠開示命令の対象とするのは相当でない。 (3)しかし,犯罪捜査規範 過程で作成するメモのうち,専ら自己が使用するために作成したもので,他に見せたり提出することを全く想定していないものについては,証拠開示命令の対象とするのは相当でない。 (3)しかし,犯罪捜査規範13条は,警察官が被疑者の取調べを行った場合には,同条により備忘録を作成し,これを保管しておくべきものとしているのであるから,取調警察官が,同条に基づき作成した備忘録であって,取調べの経過その他参考となるべき事項が記録され,捜査機関において保管されている書面は,個人的メモの域を超え,捜査関係の公文書ということができ,これに該当する備忘録については,当該事件の公判審理において,当該取調べ状況に関する証拠調べが行われる場合には,証拠開示の対象となり得る。 そして,これに引き続き,最高裁第一小法廷も,平成20年2月26日付け決定において,上記三小決定を踏まえ,上記備忘録のうち任意性が争われている供述調書の最終の作成日までの取調べに関するものに限定して証拠開示命令を発した東京高裁決定に対し検察官が行った特別抗告を棄却した(以下「一小決定」という。)。三小決定に対しては検察官側の抵抗が強いようであった(一小決定の原原審では,検察官は,三小決定は違法であり変更されるべきであるとまで主張していた。)が,これに引き続き,同決定を踏襲する一小決定が出されたことにより,三小決定の説示内容はほぼ確定判例に近い位置付けを得たことになり,今後は,裁判所のみならず,警察・検察においても,両最高裁決定を当然の前提に証拠開示の運用を行っていかねばならないこととなった。 ただ,三小決定は,次のような問題点も残している。すなわち,同決定によれば,前記(3)の説示にあるとおり,「取調警察官が,犯罪捜査規範13条に基づき作成した備忘録であって,取調べの経過その他参考となるべき事項が記録さ 次のような問題点も残している。すなわち,同決定によれば,前記(3)の説示にあるとおり,「取調警察官が,犯罪捜査規範13条に基づき作成した備忘録であって,取調べの経過その他参考となるべき事項が記録され,捜査機関において保管されている書面」(以下,取調警察官が取調べの経過その他参考となるべき事項を記録し作成した備忘録を「取調べメモ」といい,このうち犯罪捜査規範13条に基づき作成された備忘録であって捜査機関において保管されている書面を「13条該当取調べメモ」という。)が証拠開示の対象とされることとなったが,犯罪捜査規範13条は,「警察官は,捜査を行うに当り,当該事件の公判の審理に証人として出頭する場合を考慮し,および将来の捜査に資するため,その経過その他参考となるべき事項を明細に記録しておかなければならない。」と抽象的に規定しているのみで,その記録がされる備忘録の様式やその作成時期・頻度等については何ら規定がなく(この点,犯罪捜査規範の権威ある注釈書である刑事法令研究会編『逐条解説犯罪捜査規範(新版第2訂)』(平成14年刊)25頁は,同条の注釈として,「この記録はあくまでも警察官のメモとして保存すべきものであって,他の捜査上の簿冊等の作成とは別個のものとして考えられているのであるが,もちろん,これらの簿冊をメモに利用しても差し支えない。」と述べており,メモの様式自体,あまり厳格なものを求められていないことが窺われる。),記録の対象に「その他参考となるべき事項」と漠然たる内容が含まれていることもあって,理念的には三小決定のように13条該当取調べメモの開示を命じることは容易であったとしても,実際上,警察に保管されている各種のメモ類の中からどれが13条該当取調べメモに当たるのかを選別し判定することは必ずしも容易な作業ではないように思われる。ことに 開示を命じることは容易であったとしても,実際上,警察に保管されている各種のメモ類の中からどれが13条該当取調べメモに当たるのかを選別し判定することは必ずしも容易な作業ではないように思われる。ことに,上記のとおり13条該当取調べメモは特定の様式を求められていないだけに,「その他参考となるべき事項」にどこまでの事項を含めるかの判断いかんでは,判定者によって13条該当取調べメモの範囲が大きく異なってくる可能性も否定できない。そうすると,誰がその最終判断を行うかが極めて重要な意味を持ってくるのであり,その解釈いかんでは,証拠開示命令において単に13条該当取調べメモの開示を命じただけでは開示対象不特定ゆえに違法となる場合が出てこようし,また,本件事案のように警察・検察が「13条該当取調べメモは存在しない。」との回答している場合に,裁判所として具体的にどのような手続を行うべきか―メモ類の提示を求めて裁判所が自ら13条該当性を判断しなければならないか,それとも捜査官側の判断をそのまま前提するだけでよいかなど―という具体的な手続選択にも違いが出てくる可能性がある。 取調べメモに関する犯罪捜査規範13条該当性の判断権者等に関する二つの考え方そして,捜査機関が保管する取調べメモその他のメモ類が犯罪捜査規範13条に基づく備忘録に該当するか否かの判断を最終的に誰が行うのかについては,大別して次の二つの考え方が成り立ち得るように思われる。 第1の考え方は,弁護人が証拠開示命令請求書の中で主張するように,第一次的には警察・検察がこれを判断するとしても,証拠開示に紛議が生じた場合には,最終的に,裁判所が,裁定請求に基づき,これを判断すべきであるとするものである。この考え方に従えば,本件のように検察官が13条該当取調べメモは存在しないと回答した場合でも,裁判所は,検 た場合には,最終的に,裁判所が,裁定請求に基づき,これを判断すべきであるとするものである。この考え方に従えば,本件のように検察官が13条該当取調べメモは存在しないと回答した場合でも,裁判所は,検察官に対し,検察官が保管し又は警察から容易に入手し得る取調べメモ類の一覧表の提示を命じ,あるいは,これらメモ類自体の提示を命じて,個々のメモが犯罪捜査規範13条に基づくものと認められるか否かを判断した上,これに該当すると認めたものについては,それを具体的に特定して開示命令を発することになるとするのが,その自然な帰結といえよう。 これに対し,第2の考え方は,検察官が前記意見書の中で主張するように,取調べメモ類が犯罪捜査規範13条に該当する備忘録であるかどうかは,最終的に捜査官において判断が可能な事柄であるから,裁判所は,特段の事情のない限り,その判断を尊重すべきであって,本件のように検察官が13条該当取調べメモが存在しないと回答している場合には,速やかに裁定請求を棄却すべきであるとするものである。 上記問題に関する当裁判所の見解この問題に関しては,当裁判所は,上記第2説が妥当であると考える。その理由は,以下に述べるとおりである。 (1)まず,犯罪捜査規範13条は,もともと,警察官の作成する捜査書類の証拠能力が公判で争われたりして,当該警察官が公判での証言を求められる場合のことを慮り,その際,捜査経過等の証言を行う可能性のある事項につき記憶を喚起することができるよう,明細な記録を備忘録に残すことを求めるものである(前掲『逐条解説犯罪捜査規範(新版第2訂)』24頁。そのため,同書25頁は,「いったん記載した記録は,不用意に訂正したり,書き換えたりしないよう注意して,保管しておかなければならない。」としている。)。 このような同規範13条に趣旨に鑑 訂)』24頁。そのため,同書25頁は,「いったん記載した記録は,不用意に訂正したり,書き換えたりしないよう注意して,保管しておかなければならない。」としている。)。 このような同規範13条に趣旨に鑑みれば,最終的に,当該事件に関し各種の備忘録が保管されている場合であっても,その備忘録が同条に基づいて作成されたか否かは,その作成を担当した警察官が判断すべきものであって,第三者たる裁判所が客観的に判断するような性質のものではないと解するのが自然な考え方ではないかと思われる。そして,以上の点は,被疑者の取調べに際し作成された取調べメモに関しても,そのまま妥当し得るものである。 (2)実際的に考えても,前記第1説に従うと,今後,取調べメモに関し当事者間で紛議が生じる都度,裁判所は,裁定判断に先立ち,警察・検察に対し,関連するメモ類一切の提示を求めて,それが13条該当取調べメモに当たるか否かを判断せざるを得ないことになるが,捜査過程の全貌を把握しておらず,かつ,被告人の供述経過や供述内容についても証拠に基づき具体的に接していない裁判所が,そのような判断を容易に行い得るものとは考えられないし,また仮に検察官に対し被告人の供述調書や捜査書類の広範な提示を求めればそれが可能だとしても,裁判所が,いかに裁定請求に対する判断のために必要であるとはいっても,公判前整理手続段階から,捜査関係書類の中味を詳細に検分することが,裁判員制度の施行に向けての今後の実務の在り方として望ましいものとは到底考えられないのである。 (3)加えて,三小決定は,原審が,開示対象となる取調べメモを具体的に特定することなく(なお,同事件では,検察官が取調べメモの存否についてすら釈明を拒んでいたため,およそ個々の取調べメモを特定することが不可能な状況にあった。),一般的に「被 なる取調べメモを具体的に特定することなく(なお,同事件では,検察官が取調べメモの存否についてすら釈明を拒んでいたため,およそ個々の取調べメモを特定することが不可能な状況にあった。),一般的に「被告人の取調べに係るA警部補作成の取調べメモ(手控え),備忘録等」の開示を検察官に命じたのに対し,「(原決定は)取調官であるAが,犯罪捜査規範13条の規定に基づき,被告人の取調べについてその供述内容や取調べの状況等を記録した備忘録であって,捜査機関において保管中のものの開示を命じたものと解することができ,このように解すれば原決定を是認することができる。」として特別抗告を棄却しているが,仮に前記第1説に立てば―前記のとおり検察官が釈明を拒んでいるという特殊事情があったことを前提としても―このような三小決定の処理は開示命令対象不特定の誹りを免れないはずであって,最高裁があえてそのまま特別抗告を棄却したのは,前記第2説に立脚しているものと解するのが素直な理解ではないかと思われる。 (4)ただ,以上のように解すると,三小決定がせっかく13条該当取調べメモについて証拠開示の対象となることを認めたにもかかわらず,その該当性判断を捜査官に委ねたのでは,結局,本件のような消極的な回答しか得られないことが多くなって,三小決定の画期的な判断も画餅に帰してしまうのではないかとの批判が寄せられるかもしれない(現に,本件弁護人はその趣旨の主張を行っている。)。 しかしながら,これは,後に行われるべき取調警察官の証人尋問に際し,捜査官側が「13条該当取調べメモは存在しない。」などという回答を行ったという事実が,その証言の信用性評価において大きな影響を及ぼす可能性があることを看過した議論であるといわざるを得ない。犯罪捜査規範は,警察法12条に基づいて制定された国家公安委員会規則 う回答を行ったという事実が,その証言の信用性評価において大きな影響を及ぼす可能性があることを看過した議論であるといわざるを得ない。犯罪捜査規範は,警察法12条に基づいて制定された国家公安委員会規則であり,「警察官が犯罪の捜査を行うに当って守るべき心構え,捜査の方法,手続その他捜査に関し必要な事項」を定めた規範であって(同規範1条),都道府県警察も拘束する,いわば警察官の「憲法」ともいうべき存在であるが,ことに同規範13条は,検察官による将来の適正・円滑な公判立証のためにも,犯罪捜査に携わる警察官にとっては必ず遵守することが求められる規定である。しかも,取調べの可視化が全く行われていない現段階での警察における取調べに関しては,被疑者らの供述の任意性の立証において,取調警察官の証人尋問が検察官側の立証の核となっていることは多言を要しないところであるが,同規範13条に基づく取調べメモは,このようにして取調警察官が取調べ状況等を証言するに際し,事実に即した具体的で正確な証言を行うために不可欠ともいえる存在であって,取調べの適正化が強く指摘されている現下の情勢(虚偽自白を伴う顕著な冤罪事件が続発したことを受けて,警察庁が―本件捜査から約4か月後のことではあるが―平成20年1月24日「取り調べ適正化指針」を公表したことは周知の事実である。)に鑑みれば,一層,同メモの持つ重要性が認識されるのである。 しかるに,検察・警察の回答によれば,本件の取調警察官らは,本件が児童虐待の色合いを伴う殺人未遂という重大事案であって,しかも,被疑者の供述が逮捕前から短期間に変転している〔提示に係る乙号各証による。〕にもかかわらず,本件の取調べの全期間にわたり,前記のように重要な犯罪捜査規範13条の規定に明らかに反し,13条該当取調べメモを一切作成しなかったというのであ 転している〔提示に係る乙号各証による。〕にもかかわらず,本件の取調べの全期間にわたり,前記のように重要な犯罪捜査規範13条の規定に明らかに反し,13条該当取調べメモを一切作成しなかったというのであるから,そもそも取調警察官らに取調べの適正化を指向する姿勢があったのか,そして,将来行われる可能性のある被疑者の供述の任意性に関する証人尋問に際し,事実に即した具体的で正確な証言を行おうという基本的な心構えを有していたのかについてすら,少なからざる疑念を抱かれる可能性があろう(なお,取調警察官は,個人的メモで記憶を喚起することを予定したと述べるかもしれないが,犯罪捜査規範13条はそのような個人的メモではなく,公的な記録として取調べ経過等の明細な記録を残すことを明確に義務付けているのであって,そのような公的記録を何ら残さないまま,いくら個人的メモが残っていると述べても,そのようなメモの真正や信用性に疑いを持たれることは避け難いように思われる。)。 未だ行われていない証言の評価に関し必要以上の言及をすることは妥当ではないので,ここではこの程度の指摘に止めておくが,いずれにしても,捜査官側が「13条該当取調べメモは存在しない。」などという回答を行っていることは,証拠開示レベルではこれを尊重すべきものがあるにしても,刑事手続を全体として見た場合,およそ軽々に取り扱われる事柄ではないということを指摘しておかねばならない。 証拠開示の必要性に関する補論最後に,本件証拠開示の必要性について,若干触れておく。 当事者の釈明によれば,本件で任意性が問題とされている平成19年9月14日,15日両日の取調べに関しては,取調警察官2名が,それぞれ14日付けと18日付けで被疑者の取調べ状況に関する上司宛の捜査報告書を作成しており,かつ,これらは既に弁護人に開示済であっ 9年9月14日,15日両日の取調べに関しては,取調警察官2名が,それぞれ14日付けと18日付けで被疑者の取調べ状況に関する上司宛の捜査報告書を作成しており,かつ,これらは既に弁護人に開示済であって,提示に係る両報告書を通覧する限り,取調べ状況に関するかなり具体的な記述が存在していることも明らかである。その意味では,弁護人においても,両日の取調べ状況に関しては,各供述調書のほかにも一応の資料を入手できており,取調警察官に対する反対尋問にも対応できるだけの状況にあるのであるから,更なる証拠開示を求めることにはその必要性に疑問が持たれるかもしれない。 ただその一方で,警察・検察の回答内容や検察官の釈明を見る限り,捜査官側では,上記のような捜査報告書を13条該当取調べメモとして位置付けていないことは明らかであり,かつ,一般論としては,たとえこのような捜査報告書が存在していても,その作成の基礎となった13条該当取調べメモやその他の同メモが存在している可能性は否定できないことから,当裁判所は,本件証拠開示の必要性が存在しないという理由ではなく,前「3」に詳述したような理由から,本件証拠開示命令請求は理由がないと判断するに至った次第である。 第3 結論 よって,以上によれば本件証拠開示命令請求は理由がないから,刑事訴訟法316条の26第1項により,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官・杉田宗久,裁判官・新阜真由美,裁判官・内林尚久)
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