昭和43(ネ)965 京急横浜自動車懲戒解雇

裁判年月日・裁判所
昭和44年12月24日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主   文 一、被控訴人A、同Bに対する本件控訴を棄却する。 二、原判決中被控訴人C、同Dに関する部分を左のとおり変更する。  横浜地方裁判所が同庁昭和四〇年(ヨ)第九七五号仮処分申請事件について、昭

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主文 一、被控訴人A、同Bに対する本件控訴を棄却する。 二、原判決中被控訴人C、同Dに関する部分を左のとおり変更する。 横浜地方裁判所が同庁昭和四〇年(ヨ)第九七五号仮処分申請事件について、昭和四一年八月二九日なした仮処分決定は、その第二項中右被控訴人らに関する部分を、控訴人は右被控訴人らに対し、昭和四〇年一一月以降毎月二八日限り別紙債権目録記載の各金員を仮りに支払え、と変更して認可する。 三、訴訟総費用は全部控訴人の負担とする。 事実 控訴代理人は、「原判決を取消す。横浜地方裁判所が同庁昭和四〇年(ヨ)第九七五号地位保全仮処分申請事実について昭和四一年八月二九日為した仮処分決定を取消す。被控訴人らの申請を却下する。訴訟費用は第一、二審とも被申請人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら代理人は、控訴棄却の判決を求めた。 当事者双方の事実上の陳述及び証拠の提出、援用、認否は、左記のほか、原判決事実欄記載のとおりであるから、これを引用する(但し、原判決一一丁表一〇行から一一行にかけて「第一〇号証ないし第一三号証、第二四号証と第三〇号証は各一ないし三」とあるのは、「第一〇号証ないし第一三号証及び第三〇号証は各一ないし三、第二四号証は一ないし四」の誤記であるから訂正する)。 一、本件解雇が解雇権の濫用であるとの被控訴人らの主張に対する控訴人の反駁(原判決八丁裏四行から九丁裏四行までの追加、訂正。 本件解雇が解雇権の濫用であるとの主張を争う。 神自交横浜タクシー支部は、昭和三九年一一月一〇日開催された臨時大会において神自交を脱退して第二組合となつたが、右脱退に反対した被控訴人らを除名し、翌一一日会社に対し、ユニオン・シヨツプ協定により同人らの解雇を要求し、会社においてこれを容れないときはストライキも辞さない勢を示し を脱退して第二組合となつたが、右脱退に反対した被控訴人らを除名し、翌一一日会社に対し、ユニオン・シヨツプ協定により同人らの解雇を要求し、会社においてこれを容れないときはストライキも辞さない勢を示した。そればかりでなく、第二組合は同日以降本件解雇に至るまで、組合員の実力を以て被控訴人らが就労するのを妨害し続けた。会社は、右解雇要求はこれを拒否したものの、被控訴人らを強いて就労させれば、同人らと第二組合員との間に傷害事件が発生する虞もあつたので、会社は同人らをその承諾を得たうえ、協約に定める待期扱にした。 被控訴人らと第二組合員との対立抗争は、組合の内部分裂に由来するものであつたから、会社が第二組合員らの被控訴人らに対する就労妨害行為を実力で排除しようとすれば、会社は、圧倒的多数を擁し、かつ、前記のような勢を示している第二組合ないしその所属する神奈川ハイヤー・タクシー労働組合と真向から対立することを余儀なくされ、かくては被控訴人らの属する蒔田営業所の存廃を賭ける結果になるのであつて、かゝる危険を冒すことは会社として到底耐えられるところではない。そこで会社は、被控訴人らと第二組合の双方に対し、両者が話合のうえ右対立抗争を解決すべく斡旋方を申入れ交渉を重ねたのであるが、双方に拒否された。このような事情の許においては、会社としては被控訴人らを待期扱としたままでおく以外に、とるべき適切な方法はなかつたのである。 一方、被控訴人らとしては、前記のような事情にある以上、自らも妨害を排除して就労するよう努力すべきものであるにかかわらず、同人らは、会社の前記申入れにも耳を藉さず、前後一九回に及ぶ会社との交渉においても、ただ会社による妨害の排除を求めるのみであつた。従つて、同人らは、もはや就労する意思を有しなかつたものというほかない。 叙上の諸事情を綜 れにも耳を藉さず、前後一九回に及ぶ会社との交渉においても、ただ会社による妨害の排除を求めるのみであつた。従つて、同人らは、もはや就労する意思を有しなかつたものというほかない。 叙上の諸事情を綜合すれば、会社としては、被控訴人らが待期扱とされたため収入が減少したことに藉口して相当期間他で稼働することを認めることは、会社の経営秩序及び生産性の維持の観点からして到底容認し得ないところである。従つて、被控訴人らを懲戒解雇にしたことは当然であつて、これを目して解雇権の濫用と非議されるいわれはない。 二、証拠関係(省略) 理由 一、被控訴人ら主張の申請の理由(一)及び(二)記載の事実は当事者間に争いがない。 二、被控訴人らは、まず、控訴人が被控訴人らの懲戒解雇の根拠とした就業規則は、従業員に対する周知方法がとられていないから、無効であると主張する。しかし、成立に争いのない疎乙第二二号証、弁論の全趣旨によりいずれも真正に成立したと認める疎乙第二一、第三二号証に、原審証人Eの証言を綜合すると、会社は昭和二六年頃就業規則を制定し、昭和二九年一月五日これを横浜南労働基準監督署に届出で、爾後被控訴人らの所属する蒔田営業所にも備付け、従業員からの申出によつて随時閲覧できる状態にあつたことが認められ、弁論の全趣旨により真正に成立したと認める疎甲第一四、第三三号証中の記載も右認定を左右するに足らず、他に右認定に反する疎明はないから、就業規則について周知方法を欠くものとはいえない。右主張は理由がない。 三、つぎに、被控訴人らは、本件解雇は、労基法二〇条三項所定の行政官庁の認定を受けてなされていないから無効であると主張する。しかし、右認定を受けることは解雇の効力発生要件でないと解するから、右主張もまた排斥を免れない。 四、控訴人は、被控訴人らには 三項所定の行政官庁の認定を受けてなされていないから無効であると主張する。しかし、右認定を受けることは解雇の効力発生要件でないと解するから、右主張もまた排斥を免れない。 四、控訴人は、被控訴人らには、会社の就業規則三一条四号、一〇号及び一三号に該当する所為があつたと主張するので判断する。 成立に争いのない甲第三〇号証の一ないし三、前顕疎甲第三三号証、弁論の全趣旨によりいずれも真正に成立したと認める疎乙第二五号証の一ないし六、第二六号証の一ないし三に前示証人Eならびに原審及び当審証人Fの各証言を綜合すると、被控訴人らは別紙稼働目録(一)記載のとおり、申請外岡本シヨールーム及びみずほタクシーに雇われて働き、前者からは日当一、二〇〇円を、後者からはその日の稼ぎ高の三五パーセントにあたる金員(約三、〇〇〇円)を夫々得たことが認められ、これに反する疎明はない。 就業規則三一条一〇号が懲戒解雇事由の一として「会社の承認を得ないで在籍のまま他に雇入れられたとき」と定めるのは、従業員が就業時間中は勿論のこと就業時間外においても他と継続的な雇傭関係ないしこれに準ずる関係に入るときは、その者の会社に対する誠実かつ完全な労務の給付が困難となり、経営上支障を来すことから、使用者において企業秩序を維持するため、一律にこれを禁ずる趣旨のものであると解するのを相当とするから、被控訴人らが、右認定のように岡本シヨールーム及びみずほタクシーに雇われて働いたことは、右就業規則条項に該当するものといわなければならない。被控訴人らは、右の稼働は臨時のいわばアルバイトに過ぎないと主張するけれども、その然らざることは既に認定したところから明らかである。なお、被控訴人らが昭和三九年一一月一一日頃以降待期扱とされたことは当事者間に争いがなく、前掲各疎明によれば、会社は同人らに対して するけれども、その然らざることは既に認定したところから明らかである。なお、被控訴人らが昭和三九年一一月一一日頃以降待期扱とされたことは当事者間に争いがなく、前掲各疎明によれば、会社は同人らに対しては、会社の構内ではなく神自交本部で待期することを認めるなど通常の待期扱の場合と異なつた取扱をしていることが認められるけれども、そのことから直ちに、同人らの前記所為が右条項に該当しないものとはいえない。 なお、本件に現れた全疎明によつても、被控訴人らに右の所為のほか、就業規則三一条四号又は一三号に該当する所為があつたことを認めるに足らず、又右の所為が同時に右四号に該当するものとはいえない。 五、そこで進んで、会社が被控訴人らに就業規則三一条一〇号に該当する所為があるとしてなした本件懲戒解雇が、同人ら主張のように解雇権の濫用であるかどうかについて判断する。 前項認定の事実に、前顕疎甲第一四、第三三号証、いずれも成立に争いのない疎甲第三ないし第五号証、第一九ないし第二三号証、第二四号証の一ないし四、第二九号証、疎乙第三、第四号証、第二三号証、当審証人Fの証言により真正に成立したと認める疎乙第三九、第四〇号証、弁論の全越旨によりずれも真正に成立したと認める疎甲第一六ないし第一八号証、第三二号証、疎乙第一号証、第五ないし第一八号証、第三二、第三三号証に、前示原審証人E、原審及び当審証人Fの各証言ならびに弁論の全趣旨を綜合すると(但し、疎乙第三二、第三三号証中の記載及び右各証言のうち後に措信しない部分を除く)、次のとおり認められる。 (一) 被控訴人らを含む約六〇名の会社蒔田営業所の従業員は、従来神自交に加盟し第一組合を組織していたところ、昭和三九年一一月一〇日開催された同組合の臨時大会において、神自交の内部紛争に端を発し、同組合はあくまで神自交に留ま 〇名の会社蒔田営業所の従業員は、従来神自交に加盟し第一組合を組織していたところ、昭和三九年一一月一〇日開催された同組合の臨時大会において、神自交の内部紛争に端を発し、同組合はあくまで神自交に留まるとする被控訴人ら四名と、神自交に反対するその余の者のグループとの二つに分れ、被控訴人ら(但し当時入院中であつた被控訴人Dを除く)は、右大会を継続し役員選任を行なつて、被控訴人Aを同組合支部長に、同Cを同副支部長に、同Dを同書記長に、同Bを同会計部長にそれぞれ選任したとする一方、右後者のグループは即日右Dを除くその余の被控訴人らを組合から除名したとして紛議を生ずるに至つた。そうして、右後者のグループは直ちに第二組合を結成し、この組合が第一組合を承継したものであるとの見解の下に、会社に対しユニオン・シヨツプ協定に従い右Dを除く被控訴人らの解雇を要求し、これが容れられないにおいてはストライキも辞さない勢を示した(なお、第二組合は被控訴人Dについては、同年一二月九日除名のうえ、同様会社に対し解雇を要求した。)。 (二) 右第二組合員らは、さらに、同年一一月一一日から右営業所周辺においてピケツトラインをはり、右D(当時公傷で入院中)を除く被控訴人らが就労するのを実力で阻止するの挙に出た。この事態をみた右営業所長Fは、右被控訴人らを強いて就労させれば、同人らと第二組合員との間で傷害事件の発生等の大事に至る虞があり、また、右被控訴人らを就労させることによつて会社と第二組合との間には紛議を生ずる可能性があることを考慮し、一方被控訴人らと第二組合との間の対立抗争は遅くとも二週間後には解決するものとの予想の下に、即日独断で右被控訴人らに対し爾後待期扱にする旨申渡して就労させない措置をとり、後刻会社首脳部に報告して諒承を得た。なお、被控訴人Dに対しても同様の事態が とも二週間後には解決するものとの予想の下に、即日独断で右被控訴人らに対し爾後待期扱にする旨申渡して就労させない措置をとり、後刻会社首脳部に報告して諒承を得た。なお、被控訴人Dに対しても同様の事態が予想されたので、同人の就労が可能となつた同年一二月中旬頃同様の措置がとられることになつた(右認定の事実のうち被控訴人らが待期扱とされたことは当事者間に争がない。)。 (三) 会社は、被控訴人らと第二組合の関係が不明確であつてユニオン・シヨツプ協定の効力の及ぶ範囲に疑問があるとして、前記解雇要求を容れなかつた。これに対し第二組合はストライキには出なかつたが、昭和四〇年四月頃まで実力により被控訴人らの就労阻止を続け、その後は同人らが前示営業所構内に立入ることは認めたものの、同人らの解雇に至るまで同人らの就労を認めないとの姿勢を崩さなかつたので、会社は同人らを引続き待期扱のまま推移せしめた。 (四) ところで待期扱というのは、昭和三九年四月二〇日成立した、会社と従業員の所属する組合との間の協約により設けられた制度で、行政処分により運転免許を停止されたため、或は、当日の配車の都合等のため、出勤日であるにかかわらず乗務できない従業員に対し、社内で待期を命じたうえ、社内外において会社の指示する作業に従業させ、基本給、諸手当のほか、歩合給にかえて一日八時間につき二〇〇円の待期手当を給するものである。なお、会社は被控訴人らについては、叙上のように第二組合員により就労が阻止されている事情を考慮し待期場所も前記営業所ではなく神自交本部とした。 (五) 被控訴人らは、歩合給にかえて待期手当を支給されるのみでは収入の減少が著しいとして、会社に対し、第二組合の阻止を排除して就労させるか、或は、平均賃金を支払うよう求めて前後一九回にわたり交渉を重ねたが、会社は、就労阻止 にかえて待期手当を支給されるのみでは収入の減少が著しいとして、会社に対し、第二組合の阻止を排除して就労させるか、或は、平均賃金を支払うよう求めて前後一九回にわたり交渉を重ねたが、会社は、就労阻止は組合内部の問題に由来するのであるから組合同志で話合のうえ解決すべきものであるとの態度をとり、右交渉及び三十数回にわたる第二組合との交渉において、右趣旨を繰返し述べ、両者の間の話合について斡旋の労をとることにはやぶさかでないという以上に特に積極的な態度をとつたり、具体的な措置に出たりすることをしなかつた。これは、会社としては、被控訴人ら四名を就労させるときは、右第二組合ないしその上部団体をして態度を硬化せしめることになり、この組合又は上部団体と会社との対立抗争が激化すること必定であり、かくては、前記蒔田営業所はもとより会社全体の命運を賭ける結果になりかねないことを虞れたからであつた。 (六) 被控訴人らは、一方で右のように会社と交渉を重ねながら、他方既に認定したように昭和三九年一二月中旬頃から他で稼働するに至つた。 かように認めることができ、疎乙第三二、第三三号証中の記載及び証人E、同Fの各証言のうち右認定に反する部分は措信せず、他に右認定に反する疎明はない。 右認定の事実に基づいて按ずるに、第二組合員の被控訴人らに対する就労阻止は、許されないものであるのみならず、会社に対しても、その業務妨害に外ならないから会社は当然これが排除を求め得るものである。ただ、排除の時期と方法は、諸般の情勢を考慮して、会社が経営者としての叡智により決すベきところである。 しかし、本件の場合被控訴人らを乗務せしめないで待期させるベき場合に該当しないこと前認定のとおりであるから、会社がこの措置に出たことは失当といわなければならないけれども、前記のように第二組合員が実力によ し、本件の場合被控訴人らを乗務せしめないで待期させるベき場合に該当しないこと前認定のとおりであるから、会社がこの措置に出たことは失当といわなければならないけれども、前記のように第二組合員が実力により被控訴人らの就労を阻止するという突発異常の事態に対処して当面の緊張を緩和し傷害事故等の発生を未然に防止するため応急臨時の方法として待期させることにしたのはその当時としてはやむを得なかつたものといわねばならない。ところが、右対立の状態は当初の予想に反し早期に解決する見込がたたず、会社としては、被控訴人らを就労させるのは得策でないとの情勢判断をしていたのであるから、被控訴人らが待期により蒙るべき不利益を可及的に補填すベきことを考慮すベきであつたといわなければならない。殊に、被控訴人らは控訴人に対し、就労させるか或は平均賃金の支払を求めて交渉を重ねていたのであるからなおさらのことである。しかるに、会社にはこれを考慮した事蹟のみるべきものなく、ただ、被控訴人らと第二組合に対し話合による解決を求めるのみで荏苒日を過したことは適切なものであつたとはいえない。 一方、会社の前記就業規則三一条一〇号の趣旨は前に認定したとおりであるが、本件においては被控訴人らは待期扱とされ、本来の業務に就き得なかつたのであるから、同人らが既に認定したように他で稼動したとしても、右就業規則の意図した生産性の維持という目的に直接には相反することがなかつたものというべきである。 他方、被控訴人らが会社に対し就労させるよう要求を重ねるのみで自らの努力により局面の打開を図ろうとはせず、待期扱となつた一か月後には早くも会社に無断で他で稼動するに至つたことは経営秩序を紊るもので軽率失当の譏を免れないけれども、会社が同人らに対する待期扱という不当の措置を是正するの挙に出ないまゝ、待期扱 扱となつた一か月後には早くも会社に無断で他で稼動するに至つたことは経営秩序を紊るもので軽率失当の譏を免れないけれども、会社が同人らに対する待期扱という不当の措置を是正するの挙に出ないまゝ、待期扱による不利益を緩和するためにした被控訴人らの前記所為を就業規則条項に該当するとしてこれを懲戒解雇したことは、徒らに同人らの非を責めるにのみ急なものであつて、酷に失するといわざるを得ない。 従つて、被控訴人らに対する本件解雇は解雇権の濫用であつて無効であり、同人らは会社の従業員たる地位を有するものというべきである。 六、最後に保全の必要性について判断する。 (一) 前顕疎甲第三二、第三三号証、弁論の全趣旨によりいずれも一応真正に成立したと認める疎甲第三一、第三四号証によれば、被控訴人らはいづれも会社から受領する賃金を唯一の生計の資とする労働者であり、他に生活を支えるに足る資産等を有しないことが一応認められる。このような労働者が、解雇により従業員たる地位を失い、賃金の支給を絶たれることは生活の方途を失うことであつて、ために、本案判決の確定を待つては回復することのできない著しい損害を蒙る虞のあることはみやすい道理である。控訴人は、(1)被控訴人らは容易に他で就業し会社で働いた場合以上の収入を得ることができるものであり、また、(2)現に同人らは他で稼働して相当の収入を得ているから保全の必要性は存しないと主張するが、被控訴人らは会社のした本件解雇を争つているのであるから、(1)の事実はそれだけで直ちに本件仮処分の必要性を喪わしめるとはいえないばかりでなく、これを肯認するに足る疎明もないし、また、弁論の全趣旨によりいずれも真正に成立したと認める疎乙第三一、第三六号証の各一ないし三、第三四、第三五、第三七、第三八号証によると、被控訴人らが本件解雇後である昭和 肯認するに足る疎明もないし、また、弁論の全趣旨によりいずれも真正に成立したと認める疎乙第三一、第三六号証の各一ないし三、第三四、第三五、第三七、第三八号証によると、被控訴人らが本件解雇後である昭和四〇年一〇月頃から昭和四一年一一月頃までの間他で稼働したことが認められるけれども、それだけでは未だ本件仮処分の必要性がないものとすることはできない。 (二) ところで、前顕疎乙第三一、第三六号証の各一、二、第三四、第三五、第三八号証によると、被控訴人A、同C、同Dは、本件解雇後である昭和四〇年一一月から昭和四一年一一月までの間別紙稼働目録(二)のとおり前示みずほタクシーで稼動し、右目録記載の賃金(なお、被控訴人Aについては同記載の休業補償費も含む。)を得たことが認められる。ところで、使用者の責に帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得た場合、使用者は労働者に解雇期間中の賃金を支払うにあたり、右利得金額を賃金額から控除することを得るが、その限度は平均賃金の四割の範囲内にとどめらるべきものであるから、右の事実は、右被控訴人らの賃金仮払の仮処分の必要性を勘案するについて考慮さるべきものである。けだし、右認定の賃金の額及び稼働日数からすれば、右被控訴人らの得た賃金は右の利得に外ならず、また、被控訴人Aについての右休業補償費もその実質において賃金にかわるものであるからである(なお、前顕疎乙第三七号証によると被控訴人Cは昭和四〇年九月頃から昭和四一年六月頃まで、同Bは昭和四〇年一〇月頃から昭和四一年一一月頃までそれぞれ申請外神奈川富士電機月販株式会社に雇傭されていた事実が一応認められるが、果して幾許の収入を得ていたかは遂に疎明されないのでこの点は考慮しない。)。 なお、いずれも成立に争いのない疎甲第一〇ないし第一三号証の各 士電機月販株式会社に雇傭されていた事実が一応認められるが、果して幾許の収入を得ていたかは遂に疎明されないのでこの点は考慮しない。)。 なお、いずれも成立に争いのない疎甲第一〇ないし第一三号証の各一ないし三によると、被控訴人らはいずれも昭和四〇年一〇月分(同年九月二一日から一〇月二〇日までの分であることは当事者間に争いがない。)まで賃金を支払われていたことが疎明されるから、同年一一月分(その支払期日が毎月二八日であることも当事者間に争いがない。)から仮払を命ずれば足りる。 (三) してみれば、被控訴人らについては、仮りに控訴会社(京急横浜タクシー株式会社が本訴の係属中である昭和四二年一〇月一七日控訴会社と合併したことは本件記録添付の商業登記簿謄本により明らかである。)の従業員たる地位を定め、かつ、控訴人をして昭和四〇年一一月以降毎月二八日限り、それぞれ別紙債権目録記載の各金員を仮払せしめることを命ずるを以て相当とする。 七、叙上説示のとおりであるから、横浜地方裁判所が同庁昭和四〇年(ヨ)第九七五号仮処分申請事件について昭和四一年八月二九日なした仮処分決定は、右認定の限度において認可さるべきものであるところ、原判決中被控訴人C及び同Dに関する部分は右と一部趣旨を異にするのでこれを変更し、また被控訴人A及び同Bに対する控訴はこれを棄却することとし、なお訴訟費用は全部訴訟人の負担として主文のとおり判決する。 (裁判官岡部行男川上泉大石忠生)(別紙)債権目録<17631-001><17631-002>(賃金目録および稼動目録(一)(解雇前)、(二)省略)〔参考資料〕仮処分異議事件横浜地方昭和四一年(モ)一八六七号昭和四三年四月一五日判決申請人 A 外三名被申請人東急横浜自動車株式会社 主文 当裁判所が、 (二)省略)〔参考資料〕仮処分異議事件横浜地方昭和四一年(モ)一八六七号昭和四三年四月一五日判決申請人 A 外三名被申請人東急横浜自動車株式会社 主文 当裁判所が、昭和四〇年(ヨ)第九七五号仮処分申請事件について、昭和四一年八月二九日なした仮処分決定は、その第二項中申請人A、同C、同Dに関する部分を次のように変更して、その余と第一項を認可する。 被申請人は、申請人A、同C、同Dに対し昭和四〇年一一月以降毎月二八日限り、別紙債権目録記載の各金員をそれぞれ仮に支払え。 訴訟費用は被申請人の負担とする。 事実 申請代理人は、「主文第一項掲記の仮処分決定を認可する。」との判決を求め、被申請代理人は、「主文第一項掲記の仮処分決定は、これを取消す。申請人らの本件仮処分申請を却下する。訴訟費用は申請人らの負担とする。」との判決および仮執行の宣言を求めた。 申請代理人は、申請の理由として次のとおり述べた。 (一) 被申請会社(但し合併前の商号京急横浜タクシー株式会社、以下会社という)は、ハイヤー、タクシー業を営み、申請人Aは昭和二八年八月五日、同Cは同年五月一八日、同Dは昭和二九年一二月二六日、同Bは同月五日から、いずれも自動車運転者として会社に雇傭され、賃金は前月二一日以降当月二〇日までを一ケ月分として、毎月二八日に別紙賃金目録記載のとおりの平均賃金をそれぞれ支給されていた。 (二) 会社は昭和四〇年一〇月二一日申請人らを会社の就業規則第三一条第四号(不正行為をして従業員としての体面を汚したとき)、第一〇号(会社の承認を得ないで在籍のまま他に雇入れられたとき)、第一三号(その他前各号に準ずる程度の不都合な行為があつたとき)に各該当するとして、懲戒解雇に処し同日以降申請人らを従業員として扱わない。 ( 会社の承認を得ないで在籍のまま他に雇入れられたとき)、第一三号(その他前各号に準ずる程度の不都合な行為があつたとき)に各該当するとして、懲戒解雇に処し同日以降申請人らを従業員として扱わない。 (三) 本件懲戒解雇は次の理由で無効である。 (1) 会社の就業規則は、従業員に周知されていないから、就業規則としての効力発生要件を欠く無効なものであり、この就業規則に基く本件解雇は無効である。 (2) 本件解雇にあたり、会社は労働基準法第二〇条第三項に定める除外認定申請を行なつていないから、右解雇は無効である。 (3) 申請人らは就業規則所定の懲戒解雇事由に該当する行為はしていない。 すなわち、就業規則第三一条第一〇号の定める「他に雇入れられたとき」とは他と継続的雇傭関係に入つた場合を指称するもので、臨時のアルバイト的なものは、これに含まれないと解すべきである。ところで、申請人らは申請外みずほタクシー株式会社や同関本シヨールームで運転手として働いたことはあるが、それは臨時のもので、不定期に働き、その都度日当を得ていたにすぎない。しかもその間、申請人らは会社から待機扱いにされていたため就労できなかつたのであるから、非番の日に働けば勤務に影響するということは勿論なく、また右待機扱いは通常行なわれている待機扱いとは異なつており、会社の定めた場所で申請人らは待機していなければならないということもない。 また申請人らは就業規則第三一条第四号、第一三号に該当するような行為は行なつていないし、右みずほタクシーなどにおける稼動が右条項に該当しないことは明らかである。 (4) 仮に右みずほタクシーなどにおける稼動が就業規則第三一条第一〇号に該当するとしても、左に述べる事情の下においては、解雇権の乱用というべきであり、本件解雇は無効である。すなわち従前申請人らを含む 4) 仮に右みずほタクシーなどにおける稼動が就業規則第三一条第一〇号に該当するとしても、左に述べる事情の下においては、解雇権の乱用というべきであり、本件解雇は無効である。すなわち従前申請人らを含む会社従業員は、全国自動車交通労働組合連合会神奈川地方自動車交通労働組合(以下神自交という)に加入し、その下部組織である神自交横浜タクシー支部(以下第一組合という)を組織していた。ところが昭和三九年一一月一〇日の第一組合臨時大会の際、神自交からの脱退が決議され、脱退者らは、脱退に反対した申請人A、同C、同Bらを第一組合の名において、組合の内部統制に違反したことを理由に除名した(申請人Dに対しては後日第二組合の名で除名。)。しかしながら、単一組合である神自交からの第一組合の脱退ということはあり得ないから右脱退は個人的なものにすぎず、申請人らは依然として第一組合員である。そこで申請人らは第一組合の大会を続行し、申請人Aを支部長に、同Cを副支部長に、同Dを書記長に、同Bを執行委員に各選出した。他方脱退者らは新たに組合を結成し、神奈川県ハイヤー、タクシー労働組合に加入して同組合横浜タクシー支部(以下第二組合という)と称した。第二組合員らは申請人らを敵視し、昭和三九年一一月一二日以降会社の入口にピケを張り申請人らの就労を妨害して来た。しかるに会社は右妨害行為を排除しようとはしないで、申請人らと第二組合員らとの紛争を避けるためとの理由でその頃申請人らを待機扱いにして賃金中歩合給などの支給を停止した。その後申請人らは止むを得ず会社の指示に従つていたが、再三会社に対し、第二組合員らの妨害行為を排除して就労させるよう申し入れた。しかし会社は、組合内部の問題であるから、お互いに話し合つて解決してくれと答えるのみで、第二組合員らに対し、その妨害行為を排除するための 、第二組合員らの妨害行為を排除して就労させるよう申し入れた。しかし会社は、組合内部の問題であるから、お互いに話し合つて解決してくれと答えるのみで、第二組合員らに対し、その妨害行為を排除するための積極的な手段は何もとらなかつた。申請人らは待機扱いにされて賃金が月額三万円程度となり、生活が困窮するため止むを得ず前掲アルバイトを行なつたものである。 してみると、会社は自らの責に帰すべき事由によつて申請人らをして他社でのアルバイトを余儀なくさせたものであるから、右アルバイトを理由として申請人らを懲戒解雇に処することは許されないと云わなければならず、本件解雇は解雇権の乱用である。 (5) 本件解雇は、会社が申請人らの所属する神自交を嫌忌し、第一組合の壊滅を図る目的のもとになされたものであり、更には申請人らに対する差別待遇であるから、不当労働行為として無効である。 会社は労働組合として活発な活動を行なう神自交ひいては第一組合を嫌い、第一組合員に神自交から脱退するように働きかけ、第一組合の分裂を策して来たが、申請人らに対する第二組合員らの就労妨害にも、拱手傍観するばかりで消極的な態度に終始し、申請人らの就労請求を無視して来た。しかも申請人らが、実力をもつて第二組合らの妨害為行を排除するように申出た際も、会社は申請人らが就労を強行すれば解雇するとほのめかす有様で、就労妨害者に対する懲戒処分はもとより、説得すらなさず、妨害行為が行われなくなつて来た昭和四〇年五月二七日以降も、第二組合員らが就労妨害をする可能性のあることに藉口して、申請人らの就労を拒否し続けて来た。 そしてこの間、会社は申請人らに対し昭和四〇年度夏期一時金の支給をなさず、従業員の慰安旅行にも参加させず、定期健康診断さえも拒否するという差別待遇を行なつた。 斯る経過に照せば、本件解 て来た。 そしてこの間、会社は申請人らに対し昭和四〇年度夏期一時金の支給をなさず、従業員の慰安旅行にも参加させず、定期健康診断さえも拒否するという差別待遇を行なつた。 斯る経過に照せば、本件解雇は会社が第一組合の役員である申請人らを企業外に放逐し、第一組合の壊滅を図るためのものであつて、更には申請人らに対する不当な差別待遇としてなしたというべきである。 (四) 以上の理由により、申請人らに対する本件解雇は無効であり、申請人らは依然として、会社に対する雇傭契約上の権利を有する地位にあるところ、申請人らはいずれも会社から支給されている賃金のみによつて家族との生計を維持している賃金労働者であつて、他に何らの資産もなく、本件解雇につき提起すべき本案判決の確定を待つていては回復し難い損害を蒙むる虞があるから、右地位の保全と解雇の日以降毎月二八日限り、別紙賃金目録記載のとおりの各平均賃金の支払を求める。 被申請代理人は、申請の理由に対し次のとおり答弁した。 (一) 申請の理由(一)および(二)の各事実は認める。 (二) 同じく(三)の本件懲戒解雇が無効であるとの主張は争う。本件解雇は次に述べるように、就業規則に基く正当なものである。 (1) 会社は就業規則を昭和二六年頃作成し、昭和二九年一月五日横浜南労働基準監督署に届出ており、各営業所毎に事務所にその写を備えつけ常時閲覧できる状態にしてある。 (2) 本件懲戒解雇に際し、会社が労働基準法第二〇条第三項の定める除外認定の申請をしなかつたことは認める。 (3) 会社は、申請人らを就業規則第三一条第四号、第一〇号、第一三号により、懲戒解雇処分にした。すなわち申請人らは、会社に在籍中であつた昭和三九年一二月から同四〇年七月までの間、会社の承認を得ずに、別紙稼働目録(一)記載のとおり他で稼働した。申請人ら 号、第一三号により、懲戒解雇処分にした。すなわち申請人らは、会社に在籍中であつた昭和三九年一二月から同四〇年七月までの間、会社の承認を得ずに、別紙稼働目録(一)記載のとおり他で稼働した。申請人らの右行為は就業規則の右各規定に該当する。 タクシー運転手が非番の日に他で働き疲労を残したまま勤務につけば交通事故の原因となるので、会社は交通事故の発生を未然に防ぐために、非番の日に他で働くことを禁止している。しかも申請人らは非番の日ばかりでなく、出番の日にも他で働いている。申請人らは待機扱いになつていたのであるから、勤務時間中は定められた場所で待機していなければならない。従つて出番の日に他で働くことは、職場を離脱して他で働き賃金を二重に得ていたことになる。 (4) 本件解雇が権利乱用であるとの主張は争う。 神自交横浜タクシー支部は、昭和三九年一一月一〇日開催された臨時大会において、神自交を脱退し(後日第二組合に名称変更)脱退に反対した申請人らを除名処分にした。翌一一日会社に対しユニオンシヨツプ協定により申請人らの解雇を要求し同日以降本件解雇に至るまで、申請人らの就労を妨害した。申請人らの就労を強行すれば、傷害事件が発生する虞もあつたので、会社は、申請人らを、その承諾を得た上で待機扱いにした。申請人らと第二組合員らとの抗争は組合の内部分裂に端を発したものであり、本来当事者間で話し合い解決すべき筋合のものである。それでも会社は両者の間を斡旋すべく、積極的に交渉を続けた。申請人らとも前後一九回にわたつて交渉したが、申請人らはただ会社による妨害排除を求めるのみで、話し合いには応じなかつた。また会社が第二組合員らの妨害行為を実力で排除しようとすれば、会社は神奈川県ハイヤー、タクシー労働組合と真向から対立することになり、闘争的な同組合と抗争することになれ で、話し合いには応じなかつた。また会社が第二組合員らの妨害行為を実力で排除しようとすれば、会社は神奈川県ハイヤー、タクシー労働組合と真向から対立することになり、闘争的な同組合と抗争することになれば、蒔田営業所の存廃をも賭けなくてはならなくなり、会社にかかる危険をおかすことまで要求するのは無理である。会社は申請人らを就労させるためにあらゆる努力をした上で申請人らを待機扱いにしたものであり、斯る措置は止むを得ざるものであつた。従つて右措置をとつたことについて会社がその責を負うものではない。 (5) 本件解雇が不当労働行為であるとの主張は争う。 会社は第一組合の分裂や壊滅を図つたことはない。第二組合員らとの紛争を解決するため、会社はあらゆる努力をしたのであるが、両者の聞き入れるところとはならず止むを得ず申請人らを待機扱いにしたが、第二組合員らの就労妨害は本件解雇まで継続した。 会社が申請人らに夏季一時金の支給をしなかつたのは、申請人らには査定の対象となる営業収入がなかつたからである。また従業員の慰安旅行も各組合毎に行なわれているものであつて、会社は申請人らに「旅行を計画してきたら相談にのろう。」と云つたが、申請人らが計画しなかつたものであり、健康診断にしても会社の構内で行なわれたため、第二組合員らによつて会社へ入ることを阻止されている申請人らは、これをうけることができなかつたものであり、会社が差別待遇をしたのではない。 (三) 申請人らに保全の必要性があるとの主張を争う。 すなわち単に申請人らが賃金労働者で他に資産を有しないとの理由のみで仮処分の必要性を認めることは到底首肯し難い。会社外で一時職を求め、会社において得ていたのと同程度の収入を確保することが不可能若しくは著しく困難であり、生活を維持していくことができないという客観的事情が認 の必要性を認めることは到底首肯し難い。会社外で一時職を求め、会社において得ていたのと同程度の収入を確保することが不可能若しくは著しく困難であり、生活を維持していくことができないという客観的事情が認められて、始めて仮処分の必要性は肯定されるべきである。申請人らはタクシー運転手として多年の経験を有し、容易に他に就職し、会社で得ていたのと同程度の収入を得ることができるのであるから申請人らに仮処分の必要性があるとは云えない。 仮に、本件解雇が無効で、申請人らが会社に対して賃金請求権を有していても、申請人D、同A、同Cは、本件解雇後である昭和四〇年一一月頃から同四一年一〇月頃までの間、別紙稼働目録(二)のとおりみずほタクシーで稼働して賃金などを得ている。使用者の責に帰すべき事由によつて履行不能となつた場合に、労務の給付を免れた労務者が、その間他に就職して得た収入は民法第五三六条第二項但書にいう自己の債務を免れたことより得た利益に該当し、その金額は、労務者が使用者より受くべき賃金から控除されるべきである。そこで本件においても、申請人Dらが前記稼働によつて得た金員は、会社から受くべき賃金額からこれを控除すべきである。 (疏明関係)省略 理由 (一) 申請の理由(一)および(二)の事実については当事者間に争いがなく本件記録によれば、京急横浜自動車株式会社は、昭和四二年一〇月一七日京急横浜タクシー株式会社を合併し、同社の権利義務を承継した事実が認められる。 (二) 先ず、申請人らは、会社の就業規則は、従業員に周知徹底されていないから、効力発生要件を欠く無効なものであると主張するけれども、成立に争いのない疏乙第二二号証および弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる同第二一号証、第三二号証ならびに証人Eの証言によれば、会社は昭和二 要件を欠く無効なものであると主張するけれども、成立に争いのない疏乙第二二号証および弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる同第二一号証、第三二号証ならびに証人Eの証言によれば、会社は昭和二六年頃就業規則を作成し、同二九年一月五日横浜南労働基準監督署に届出て、以後蒔田営業所にも備えつけ、従業員からの申出によつて常時閲覧できる状態になつていたことが認められるから、たとえ申請人らが未だ閲覧していなかつたとしても、周知方法を欠いたとは云えない。 更に申請人らは、会社は本件解雇にあたり、除外認定申請をしなかつたから、解雇は無効であると主張し、会社が除外認定申請をしなかつたことについては当事者間に争いがない。然し、労働基準法第二〇条第一項但書の所謂除外事由があれば、行政官庁の除外認定はなくとも解雇の効力は発生すると解すべきである。従つて申請人らの右各主張は、いずれも採用できない。 (三) 次に申請人らに、就業規則所定の懲戒解雇事由が存するか否かについて検討する。 先ず、申請人らが、就業規則第三一条第一〇号に該当する行為をしたかについて考える。 申請人らが会社によつて昭和三九年一一月一一日頃待機扱いにされたことは当事者間に争がなく、弁論の全趣旨によつて真正に成立したものと認められる疏甲第一四号証ないし第一八号証、同第三三号証、同じく疏乙第二五号証の一および三ないし六、同第二六号証の一、二、証人E、同Fの各証言によれば、会社はその際、申請人らに対し勤務表に従つて出番の日には一旦会社に来て出勤を確認してもらい、その後は神自交本部で待機するように指示したが、申請人らは待機扱いにされ収入が減つたので、生活費を補うために別紙稼働目録(一)記載のとおり、関本シヨールームやみずほタクシーで働き、関本シヨールームからは日当一、二〇〇円を、みずほタクシ したが、申請人らは待機扱いにされ収入が減つたので、生活費を補うために別紙稼働目録(一)記載のとおり、関本シヨールームやみずほタクシーで働き、関本シヨールームからは日当一、二〇〇円を、みずほタクシーからはその日の稼ぎ高の三五%(約三、〇〇〇円)を報酬として受領しなお申請人A、同C、同Bは出番の日にもみずほタクシーで働いた事実が認められ、右認定を左右するに足りる疏明はない。 申請人らは、右稼働はいわゆるアルバイト的なものである、あるいは非番の日の稼働が出番の日の勤務に影響をおよぼさない本件の待機扱いは通常の場合と異なるから会社の定めた場所で待機しなければならないものではないと主張するが、たとえ本件待機扱いが通常の場合と異なつていたとしても、申請人らは賃金を得ているのであるから、その反対給付としての労務の提供をなすべき義務があり出勤日には会社が指定した場所で待機すべきは当然であつて、この日に他で稼働することが許されるいわれがなく、また前記疏明事実によれば、申請人らの非番の日の稼働も不定期とは云え、その日は長時間そこの従業員と同様に働いていたことが窺われるから、これが出番の日の勤務に全く悪影響をおよぼさないとみることはできない。そうすると申請人らの右主張は採用の限りでなく、申請人らの前記稼働は就業規則第三一条第一〇号に該当するものと云わざるを得ない。会社は、本件解雇にあたり、就業規則第三一条第四号、第一三号をも適用しているが、申請人らの前記行為がその条項に該当するものとは認められず、ほかに右各号に該当する事実の存在につき疏明がない。 (四) 申請人らは、申請人らの前記行為が就業規則所定の懲戒解雇事由に該当したとしても、前記行為をなすに至つた事情を考慮すれば、本件解雇は解雇権の乱用であると主張するので判断する。成立に争いのない疏甲第七号証ない らは、申請人らの前記行為が就業規則所定の懲戒解雇事由に該当したとしても、前記行為をなすに至つた事情を考慮すれば、本件解雇は解雇権の乱用であると主張するので判断する。成立に争いのない疏甲第七号証ないし第九号証、同第一〇号証ないし第一三号証の各一ないし三、同第一九号証ないし第二三号証、同第二四号証の一ないし四、同第二九号証、同第三〇号証の一ないし三および疏乙第二号証、同第二三号証ならびに弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる疏甲第一四号証ないし第一八号証、同第二五号証、同第三二号証ないし第三四号証および疏乙第八号証ないし第二一号証、同第二五号証の一ないし六、同第二六号証の一ないし三、同第三二号証、同第三三号証ならびに証人F、同Eの各証言(但し疏乙第三二号証、同第三三号証および各証言中後記措信しない部分は除く)によれば次の事実が認められる(但し争いのない事実を除く。)。 会社には蒔田、富岡、関内の三営業所があり、昭和三九年一一月当時各営業所毎に別個の労働組合が存した。申請人らは蒔田営業所の労働組合員であるが、同営業所の労働組合は昭和三九年一一月頃までは一組合だけであつて、約六〇名の組合員全員が単一組合である神自交に個人加入して横浜タクシー支部と称していた。 ところで神自交は、組合規約において支部にも支部大会の開催支部細則の制定、支部に特有な事項についての団体交渉などの権限を認めていたところ、昭和三九年一一月一〇日第一組合の臨時大会が開かれ、神自交の内紛にからみ、申請人らを除く組合員全員が神自交から集団脱退をした。その際脱退に同調しない申請人A、同C、同Bを除名するという事態が発生し、脱退者らは会社と第一組合間に存したユニオンシヨツプ協定に基き、右申請人らを解雇するように会社に迫つた。然し右申請人らは、神自交が単一組合である以上神 人A、同C、同Bを除名するという事態が発生し、脱退者らは会社と第一組合間に存したユニオンシヨツプ協定に基き、右申請人らを解雇するように会社に迫つた。然し右申請人らは、神自交が単一組合である以上神自交からの脱退者は最早第一組合員でないものと考え、入院加療中で大会に参加していなかつた申請人Dを除く申請人らで大会を継続し、申請人Aを第一組合支部長に、同Cを副支部長に、同Dを書記長に、同Bを会計部長にそれぞれ選出した。 地方脱退者らは第二組合を結成したが、これは第一組合の名称を変更したにすぎないとの見解のもとに、同月一一日頃から申請人らの就労をピケなどにより妨害する行為に出た。更に同年一二月九日申請人Dをも除名して、申請人らの解雇を執拗に会社に迫つた。 会社は、第二組合に対し申請人らの解雇要求を拒否したものの、第一組合と第二組合との紛争に巻きこまれることを避け、第二組合員らの就労妨害を排除することをしないで妨害も約二週間くらいでおちつくものとの見通しを立て同年一一月一一日以降申請人らを待機扱いにし、いずれも別紙賃金目録記載の平均賃金の七割五分ないし八割に相当する待機手当を支給した。然し申請人らは、待機手当のみでは生計の維持にも事欠くので、会社に対し就労妨害行為を排除して申請人らを就労させるよう求め、平均賃金の支給を請求した。ところが会社は、申請人らと第二組合員との抗争は神自交の内部分裂に端を発した組合内部の問題であるから、当事者間で話し合い解決すべき性質のものであるとの立場を維持し続け、単に話し合いの斡旋を双方に申し入れたのみで、積極的に申請人らを就労させるべく努力しなかつた。 そこで申請人らは、待機手当による減収分を補うため昭和三九年一二月中旬頃から同四〇年七月頃までの間、稼働目録(一)記載のとおり関本シヨールームなどにおいて臨時運転手 を就労させるべく努力しなかつた。 そこで申請人らは、待機手当による減収分を補うため昭和三九年一二月中旬頃から同四〇年七月頃までの間、稼働目録(一)記載のとおり関本シヨールームなどにおいて臨時運転手として稼働するようになつた。以上の事実が認められ右認定に反する疏乙第三二号証、同第三三号証および証人F、同Eの各証言の部分は、これを措信しないし、その他右認定を左右するに足りる疏明はない。 右認定事実に基いて考える。第二組合員らが実力で申請人らの就労を阻止することは当然許されないし、また会社従業員である申請人らに対する就労妨害はとりも直さず会社に対する業務妨害行為であつて、会社は第三者的立場にあるものではない。そこで会社としては単に双方に対し話し合つて解決するように斡旋するだけではなく、もつと積極的に就労妨害を排除すべきであるのに拘らず、第二組合と正面衝突することを避け、二週間もしたら第二組合員らの就業妨害もおちつくものと見通しをたて、申請人らを待機扱いにしたまま、漫然と時を過し傍観者的態度をとり続けた。一方申請人らは会社の態度等からして早急に就労することはできないと判断し、減少した収入を補うために関本シヨールームなどで不定期に稼働したのであるが、会社はその事態招来に対する自己の責任を顧ず、単に稼動の事実だけを捉えて、これによつて申請人らを解雇し、もつて企業の平穏を図ろうとしたものであるとみるのが妥当である。もつとも会社が積極的に第二組合員らの就労妨害を排除しようとすれば、第二組合、更にその上部組織である神奈川ハイヤー、タクシー労働組合と正面から対決することになり、かなりの混乱が生ずるであろうことは一応予測できるが、それなら会社は申請人らと話し合つて何らかの解決方法をみい出すべく努力することが望まれるのに、それをしないで少くとも数の上において することになり、かなりの混乱が生ずるであろうことは一応予測できるが、それなら会社は申請人らと話し合つて何らかの解決方法をみい出すべく努力することが望まれるのに、それをしないで少くとも数の上において弱い立場にある申請人らにこの皺寄せをして、事態の収拾を図ろうとした会社の態度は是認することができない。 そうすると、就業規則第一条第一〇号に基く申請人らに対する懲戒解雇は相当とはいえず、解雇権の乱用であると判断せざるを得ない。 (五) 本件解雇が無効である以上申請人らは会社従業員たる地位にあるから、申請人らに保全の必要性があるか否かについて検討する。 弁論の全趣旨によれば申請人らはいずれも、会社から受領する賃金を唯一の生計の資とする労働者であり、他に生活を支え得る資産などは有しない事実が認められる。賃金のみによつて生活している労働者にとつては、就労を拒否されて賃金の支給を絶たれると生活の途を失い、本案判決の確定をまつては回復することのできない損害を蒙むる虞れのあることは、特に反対の疏明がない限り、これを認めるのが相当であると解する。ところで会社は、申請人らは容易に他で就職し、会社で稼働した場合以上の収入を得ることができ、また現に申請人らはみずほタクシー等で稼働し、相当の収入を得ているから、申請人らに保全の必要性は存しないと主張する。弁論の全趣旨によつて真正に成立したものと認められる疏乙第三四号証、同第三五号証、同第三六号証の一および三、同第三七号証、同第三八号証によれば、申請人らが、昭和四〇年一〇月頃から同四一年一一月頃までの間、継続して或いは間隔をおいてみずほタクシーなどで稼働していた事実が認められるけれども、その後現在に至るまで、他で稼働したと認めるに足りる疏明はないし、また解雇の効力を争つている申請人らが生活に破綻をきたさない程度の継 をおいてみずほタクシーなどで稼働していた事実が認められるけれども、その後現在に至るまで、他で稼働したと認めるに足りる疏明はないし、また解雇の効力を争つている申請人らが生活に破綻をきたさない程度の継続的な安定した職場を容易に得ることができるとも考えられない。してみると本案判決の確定をまつていては、申請人らに回復し難い損害を蒙むる虞れがあると云うべきであり、本件仮処分の必要性は肯認される。 会社は、申請人A、同C、同Dらは本件解雇後他で稼働して収入を得ているから、その金額だけ賃金から控除すべきだと主張するから検討するに、弁論の全趣旨によつて真正に成立したものと認められる疏乙第三一号証の一ないし三、同第三四号証、同第三五号証、同第三六号証の一によれば、申請人D、同A、同Cは本件解雇の後である昭和四〇年一一月以降同四一年一〇月までの間に、みずほタクシーで稼働し、別紙稼働目録(二)記載のとおりの賃金(但し申請人Aは、自動車事故による休業補償費として保険金を受領している。)を得ていた事実が認められ、右認定を左右するに足りる疏明はない。ところで、右賃金はその額および稼働日数に照らせば、副業的な稼働による利得ではなく、或いは解雇がなくとも当然取得し得るなど特段の事情に基いて利得したものともみられない(申請人Aの受領した保険金も、同人がみずほタクシーで稼働していることを前提として支給されたものであり、会社を解雇されなければ取得できなかつたものと考える。)から、右各申請人らは、民法第五三六条第二項但書により、その利得額を会社に償還すべきである。 しかし、会社は労働基準法第二六条に定めるとおり、平均賃金の六割以上を右各申請人に支払う義務があるから、右各申請人の前掲解雇後に利得した賃金は、会社で支払うべき平均賃金の四割を超えない限度で、平均賃金からそれぞれ 労働基準法第二六条に定めるとおり、平均賃金の六割以上を右各申請人に支払う義務があるから、右各申請人の前掲解雇後に利得した賃金は、会社で支払うべき平均賃金の四割を超えない限度で、平均賃金からそれぞれ控除するのが相当であり、会社が本件解雇の翌月である昭和四〇年一一月以降申請人らに対し支払うべき金員は別紙債権目録記載のとおりである(但し円未満切捨。なお申請人らは昭和四〇年一〇月二一日以降毎月二八日限り賃金の支払を求めているが、同年一〇月二八日に支払われる賃金すなわち同年一〇月分の賃金は、同年九月二一日から解雇の前日である同年一〇月二〇日までの稼働賃金であつて、これは成立に争いのない疏甲第一〇号証ないし第一三号証の各三により、申請人らにおいて既に受領済であることが認められるから、申請人らは同年一一月分以降の賃金請求権がある。)。 してみると申請人らの本件仮処分申請のうち、会社に対し、雇傭契約上の権利を有する地位にあることを仮に定め、かつ本件解雇の後である昭和四〇年一一月以降毎月二八日限り別紙債権目録記載のとおり各金員の支払いを求める部分は理由があるからこれを認容し、その余は失当として却下すべきである。 以上原決定第二項中、申請人A、同C、同Dに対し金員の支払いを命じた部分は、当裁判所の判断と一部符号しないところがあるから(同人らは、原決定で認定された金額以上の金員を本件解雇通告後他で稼働することによつて得ている。)主文第二項掲記のとおり変更することとし、その余と第一項を認可し、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条、第九二条を適用して主文のとおり判決する。 (裁判官石橋三一藤原康志新城雅夫)(別紙)債権目録<17631-003>(賃金目録および稼働目録(一)(解雇前)、(二)(解雇後)省略) り判決する。 (裁判官石橋三一藤原康志新城雅夫)(別紙)債権目録<17631-003>(賃金目録および稼働目録(一)(解雇前)、(二)(解雇後)省略)

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