【DRY-RUN】○ 主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 ○ 事実 控訴人訴訟代理人は、「原判決を取消す。被控訴人藤沢税務署長が控訴人の昭和四 七年分所得税について昭和四九年三月三〇日付でした更
○ 主文本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 ○ 事実控訴人訴訟代理人は、「原判決を取消す。被控訴人藤沢税務署長が控訴人の昭和四七年分所得税について昭和四九年三月三〇日付でした更正を取消す。被控訴人国税不服審判所長が昭和五一年五月二八日付で控訴人に対してした各裁決のうち過少申告加算税昭和四六年分金八三一万円及び昭和四七年分一、六三四万四、四〇〇円の各賦課部分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら訴訟代理人は、主文と同旨の判決を求めた。 当事者双方の事実上の主張及び証拠の関係は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。 (控訴人の主張)一所得税法施行令(以下、施行令という。)二六条三項一号に規定する「株式の公開」とは、有価証券市場で公開される売買を含む趣旨と解すべきである。けだし、公開会社は、株式を公開して証券取引市場での流通性を与えるために証券取引所に上場の申請をするものであるから、右上場前の準備工作たる株の売出だけを株式の公開というのでは意味がない。本件株式の譲渡は、値付玉であるところ、値付玉は、株式が証券取引市場に新規上場された際に、市場始め値の昂騰を防止し、需給関係における株式の供給不足を緩和するために放出されるものであり、通常の株式売買と同視することは誤りである。値付玉の特色を列挙すれば、次のとおりである。すなわち、 1 値付玉は、新規に株式を証券取引所に上場する許可条件として、証券取引所の適正な運営を目的としだ公共の利益のために譲渡されるのであつて、恣意的な通常の売買とは譲渡の動機において異なる。 2 通常の売買は、前に目安となる株価が常に存在するが、値付玉の譲渡の前にはそのような目安となる市場の価格はない。始め値決定まで 渡されるのであつて、恣意的な通常の売買とは譲渡の動機において異なる。 2 通常の売買は、前に目安となる株価が常に存在するが、値付玉の譲渡の前にはそのような目安となる市場の価格はない。始め値決定までに気配価格が推移するが、その気配価格は始め値決定までの試行価格であつて、有価証券届出書に記載される売出または募集価格が種々の思考過程を経て決定されるのと全く同様のものであり、届出書に価格の記載される売出は、市場価格とかい離する不合理不公正があるが、値付玉は市場の実勢価格であるだけの違いである。 3 値付玉の譲渡の前置条件として、募集または売出のいずれかによる有価証券届出書の大蔵大臣への届出が行なわれた後の最初の証券市場での譲渡である。通常の売買は届出書がないか、または始め値決定後の取引であることにおいて差異がある。 4 東京証券取引所規則「新規上場銘柄の始め値の決定方法」による譲渡は値付玉のみに適用され、値付後の通常の取引には適用されないことで差異がある。 5 右「新規上場銘柄の始め値の決定方法」を適用した株式の譲渡は、証券取引法(以下、証取法という。)二条四項に規定する売出の定義の要件を充たすが、通常の取引所での取引は同条同項の要件を充たすことはない。 6 上場開始時に買申込が多くて値付玉が不足する場合は、値付玉の範囲で始め値の決定を行ない、買注文数の総額に対する値付玉の割合を、買注文者の買注文数量に乗じて買付確定数量とする場合もある。なお、東京店頭市場に新規に上場する場合で準備した値付玉数が不足する場合は、買申込価格の高い順に一人一、〇〇〇株宛初値で譲渡する。この場合の始め値は、高い価格の申込者から順序正しく値付玉数をあてはめ、値付玉数の最後の一、〇〇〇株の属する価格帯の価格となる。このようなことは通常の市場取引では生じない。 したがつて、通 譲渡する。この場合の始め値は、高い価格の申込者から順序正しく値付玉数をあてはめ、値付玉数の最後の一、〇〇〇株の属する価格帯の価格となる。このようなことは通常の市場取引では生じない。 したがつて、通常の取引所での株式の売買と値付玉の譲渡では画然と区分ができる。そして、値付玉としての株式の譲渡は、その放出の目的、理由、その機能と役割、拠出者などの点を綜合すれば、発行市場における株式の公開売出とみるのが正当である。 二施行令二六条三項一号が引用する証取法二条四項に規定する「株式の売出し」には、値付玉を含むものと解すべきである。すなわち、 1 同条四項所定の「不特定且つ多数の者」とは、売出の勧誘の対象が多数で、応募の結果も多数であることをいい、多数であれば不特定であることを要しないのである。また、「均一の条件」とは、公衆に対し応募の条件が同等に与えられている場合をいい、売出の価格、期間、申込の方法等について差異を設けないことと解されているのであつて、売出に際して売出価格を一定額以上とし、申込価格の多額のものから順次決定するという条件をつけても、また、売出期間の始期、終期について別段の定めがなくとも、「均一の条件」に該当すると解されている。さらに、「勧誘する」とは、新聞広告、ポスター、立看板、通信文等を利用して不特定多数の者に均一の条件で特定の有価証券の売出の意思を発表して売付の申込をし、買付の申込を勧誘することであつて、店頭における売買取引とは明確な差異があると解されている。また、「売出し」は公募でなければならないのであつて有価証券がその後においても広く一般公衆の手に流布される可能性がある場合をいうものと解される。 2 右のような見解のもとに値付玉の譲渡についてみると、それは前記東京証券取引所規則により行われるのであつて、上場日前の新聞広告に 広く一般公衆の手に流布される可能性がある場合をいうものと解される。 2 右のような見解のもとに値付玉の譲渡についてみると、それは前記東京証券取引所規則により行われるのであつて、上場日前の新聞広告による新規上場告示により当該銘柄の上場を知つた不特定多数の買注文の数量と指値の相乗関係に上場許可条件で拠出を承諾した値付株の数量の合致点を見出し、合致する価格が始め値となり、その価格ですべてが譲渡されるのである。そして、始め値による売付は、申込方法、売渡し方法、売値、支払方法等の重要事項について、公衆に平等の機会と条件が与えられるもので、応募の条件に差異はない。また、売付を受けた者かり、広く一般大衆の手に流布されることが確実な譲渡であるから、私募ではなく公募である。 三施行令二八条二項三号に規定する「株式の譲渡」には、冷し玉(値付玉)の譲渡も含まれると解されているから、同令二六条三項一号の「株式の譲渡」も同様に解すべきである。右の解釈は、大蔵省の政府委員が国会答弁中でも、そのように述べ、そのような解釈の下に右規定の括弧書が追加挿入され、かつ大蔵省の行政指導がなされてきたものであり、したがつて、同令二六条三項一号の公別売出も値付玉を含み、それが新規上場の際の株式の譲渡において発行株式数の二五パーセント未満の場合は、非課税となるのが当然である。 四なお、値付玉の譲渡が施行令二六条三項一号の規定する株式の譲渡に当るものと解すべきことは、株式の公開の場合に譲渡される株式の譲渡益の非課税についての規定の整備を図るために昭和五四年に一部改正された所得税法施行令二六条三項一号及び三号ならびに同年に制定された租税特別措置法施行令二五条の四、第一項一号及び三号の各規定を参照してみれば容易に判明する。 五原判決九枚目裏三行目の「憲法第八四条に違反する。」とある 六条三項一号及び三号ならびに同年に制定された租税特別措置法施行令二五条の四、第一項一号及び三号の各規定を参照してみれば容易に判明する。 五原判決九枚目裏三行目の「憲法第八四条に違反する。」とあるのを「租税法を変更しないで、新に租税を課す結果を是認する解釈を前提とするものであるところ、右のような解釈は憲法八四条に照らして許されない。」と改める。 六控訴人の請求にかかる国税不服審査請求事件においては、本件の過少申告加算税については、審判の対象とならなかつた。そのため、控訴人はその審判手続において、国税通則法六五条二項に規定する「正当な理由」を主張する機会を与えちれなかつた。のみならず、被控訴人国税不服審判所長は、その裁決において、過少申告、加算税について、何らの判断を示さず、また、これについて棄却の裁決もしていない。したがつて、右の部分に関する審査請求事件は、依然同審判所に係属しているものというべきであるから、右部分について一部棄却の裁決があつたものとして取扱うことは許されない。 (被控訴人藤沢税務署長の主張)一控訴人の主張第一項は争う。 一般に株式の公開という場合に、従来同族的、閉鎖的に株式が所有されてきた会社の株式を新規に証券取引所に上場することを意味している場合が多い。しかし、またその新規上場の準備のために上場前に公開売出をすることを意味する場合もある。問題は、施行令二六条三項一号が「株式の公開の方法により行う株式の譲渡」の「株式の公開」にいかなる定義を与えているかであるが、それは、「証券取引法第四条第一項(募集又は売出の届出)の規定により大蔵大臣への届出をし・・・・・・証券取引法第二条第四項に規定する株式の売出しをいう」と明確に定義を与えているとおり、上場前の公開を指すものである。また、値付玉が公開株式の新規上場の促進のため より大蔵大臣への届出をし・・・・・・証券取引法第二条第四項に規定する株式の売出しをいう」と明確に定義を与えているとおり、上場前の公開を指すものである。また、値付玉が公開株式の新規上場の促進のために果す機能があることは否めないが、問題は、新規上場を円滑に進めるという政策目的と税の公平負担の原則との調和点をどこに設定するかということにある。株式を譲渡する場合に、それが値付玉ないし冷し玉としての譲渡であるか、営利目的の譲渡であるかは、譲渡者の内心の意思の問題で他からこれを適確に判定することは必ずしも容易でない。また、その双方の目的が混在していることも多いと思われる。政策目的を重視する余り値付玉、冷し玉についての課税上の取扱いを安易にするならば、それは租税負担の公平を害することになる。施行令はこの調和点として二六条三項二号の規定を設けているのであつて、同条以外の値付玉についてまで非課税とする趣旨ではない。 二控訴人の主張第二項は争う。 値付玉は、一応数量が予定されるとはいつても、それは一般株式のなかに混在し刻々に推移する気配に支配されて売価が定まり、しかも始め値をつける段階で全株式が売却されるか、一部の株式が売却されるに過ぎないか、あるいは全然売却されないでしまうか、さらに、また全株式のはかに値付玉が追加されて共に売却されることになるか、必ずしも明らかではないのである。そして、始め値をつける段階で売れ残つた値付玉は、その後引き続いて市場で売却され得るのである。一般には始め値をつける段階で植付玉の全部が売られる例が多いようであるが、値付玉というものの性質上必らずしも全部が売られることなく、その一部だけが売られたり、全然売られなかつたりすることもあり得るといわなければならないのである。そのような性質の値付玉の価格を均一の価格とすることはできない 性質上必らずしも全部が売られることなく、その一部だけが売られたり、全然売られなかつたりすることもあり得るといわなければならないのである。そのような性質の値付玉の価格を均一の価格とすることはできないものと考える。 また、株式の新規上場にあたつて、浮動株主作りのために公開売出(証取法二条四項)か公開募集(同条三項)のいずれかの手段が採用されるのであるが、それらはいずれも均一の条件でなされる。そして、上場前の公開売出の価格または公開募集の場合の払込額と値付玉の価格が岡一であることはほとんどなく、後者の方がかなり高いのが通常であるが、上場前に公開売出が行われたような場合には(本件の場合は公開募集が行われた。)、一つの公開売出について上場前の公開売出の均一価格と上場後の値付玉の均一価格と二つの均一価格が成立することになるのである。 この点からみても、値付玉の売買が均一の条件による公開売出に該当し、非課税の取扱を受くべきであるとする控訴人の主張が誤りであることが明らかである。 三控訴人の主張第三項は争う。 そもそも、施行令二八条二項三号の「株式の公開の方法により行なう株式の譲渡」には値付玉を含めるものと解する余地がないのである。すなわち、値付玉の譲渡は証取法二条一二項に規定する有価証券市場における株式の譲渡である。そして、右有価証券市場における株式の譲渡はすべて施行令二八条二項一号によつて同条一項二号の株式の譲渡から外されているのである。したがつて、値付玉の譲渡を改めて同条二項三号に含める必要はないのである。もし、値付玉について同項三号の括弧書きと同様の趣旨で発行済株式の総数の一〇〇分の二五以上の株式の譲渡を同条一項二号の譲渡として課税すべきものとするならば、その旨を同条二項一号に括弧書きしなければならない筋合であつて、同項三号の括弧書きではその目的 で発行済株式の総数の一〇〇分の二五以上の株式の譲渡を同条一項二号の譲渡として課税すべきものとするならば、その旨を同条二項一号に括弧書きしなければならない筋合であつて、同項三号の括弧書きではその目的は達せられないのである。 以上のとおり、同令二八条二項三号の「公開の方法により行なう株式の譲渡」に値付玉の譲渡が含まれるとする見解は成立するに由ないものであり、政府委員がこのような趣旨の国会答弁をする筈もないのである。 (被控訴人国税不服審判所長の主張)控訴人は、その主張の国税不服審査請求事件において過少申告加算税が審判の対象となつたことがなかつたから、国税通則法六五条二項の正当事由を主張する機会が与えられなかつたと主張する。しかし、国税不服審判所長は審査請求事件において過少申告加算税賦課の当否を判断するについては、審査請求人の主張をまつまでもなく、同法六五条二項の正当理由の有無を審理すべきことは当然であるが、そうだからといつて審査請求人に特にその点についての主張をさせなければならないというわけのものではなく、他の資料によつて同加算税賦課の要件が充足されていることが認められるならば、これに基づいて判断して差支えないのであるから、この点についての違法はない。また、控訴人は、過少申告加算税について判断ないし裁決がないから、同加算税にかかる審査請求事件は国税不服審判所に係属していると主張する。しかし、重加算税と過少申告加算税は全くその性質を同じくし、その賦課決定は、同一の修正申告又は更正に対する加算税であるかぎり処分としての同一性を有するものであり、重加算税として高い割合の加算税が賦課された場合は、その中に単なる過少申告加算税たるべき部分が包含されていると解すべきである。したがつて、重加算税の取消を求める審査請求の審理において過少申告の事実は認めら 税として高い割合の加算税が賦課された場合は、その中に単なる過少申告加算税たるべき部分が包含されていると解すべきである。したがつて、重加算税の取消を求める審査請求の審理において過少申告の事実は認められるが、仮装隠ぺいの事実が認められないと判断した場合には、国税不服審判所長は過少申告加算税額を超過する部分について原処分の一部を取消し、残余の部分について審査請求を棄却すべきものである。被控訴人はこの見解の下に本件裁決を行い、その趣旨は裁決書中の3判断(1)重加算税の賦課決定処分についての項に記載してあり、控訴人主張の如き違法はなく、過少申告加算税にかかる審査請求事件が国税不服審判所に係属していることもない。 (証拠の関係)(省略)(被控訴人藤沢税務署長に対する請求について)一控訴人の主張にかかる原判決事実摘示第二の「原告の請求原因」一及び二の1の事実は、当事者間に争いがない。 二控訴人は、その所有にかかる殖産住宅相互株式会社の本件株式一六万五、〇〇〇株(以下、本件株式という。)は、同会社がその発行する株式を東京証券取引所第二部に上場するに際し、当該上場日である昭和四七年一〇月二日に値付玉として同証券取引所において譲渡したものであるから、右株式の譲渡は施行令二六条三項一号に該当し、その譲渡益は非課税であるから、右譲渡に課税した本件更正は違法であると主張するので検討する。 1 本件株式が東京証券取引所においで譲渡された昭和四七年一〇月二日当時における施行令二六条三項一号は、非課税とされる株式の譲渡につき、「株式の公開(証券取引法第四条第一項(募集又は売出しの届出)の規定による大蔵大臣への届出をし、かつ、証券業協会の定める規則に従つてその承認を受けた同法第二条第九項(定義)に規定する証券会社-中略-を通じてする証券取引法第二条四項に規定する は売出しの届出)の規定による大蔵大臣への届出をし、かつ、証券業協会の定める規則に従つてその承認を受けた同法第二条第九項(定義)に規定する証券会社-中略-を通じてする証券取引法第二条四項に規定する株式の売出しをいう。以下この節において同じ。)の方法により行なう株式の譲渡」との規定を設けていた。右規定によれば、株式の公開の方法により行う株式の譲渡には、「大蔵大臣への届出」と「均一の条件」による売出の双方が要件とされているものと解されるのである。そして、右双方の要件を充足する株式の譲渡として、証券取引所上場前における株式の公開売出がこれに該当すること、これに対し、値付玉を除く株式上場後における通常の相場による売買がこれに該当しないことは異論のないところである。 2 控訴人は、本件株式の譲渡は、値付玉であつて、その目的、性質、機能等からみて、株式の公開先出に当ると解すべきであると主張するので、まず、値付玉が「均一の条件」による売出に当るかどうかについて検討する。 いわゆる値付玉は、株式が証券取引市場に新規上場された際に、市場始め値の昂騰を防止し、需給関係における株式の供給不足を緩和する目的と機能を有し、かつ、その拠出(売り委託)も上場する証券取引所の要請によりなされるものであつて、その目的、機能からすれば、純然たる営利のみを目的とした上場後における通常の株式の売買と若干趣きを異にするところがあることは、所論のとおりである。しかし、値付玉は、上場前の公開売出とも異るものである。すなわち、上場前の株式の公開売出は、所定の方法によつて売出価格及び数量が公開売出に先立つて予め決定され、これを有価証券売出の一つの条件として不特定多数Q人に一様に勧誘されることになつているのであつて、その目的は浮動株主に関する上場要件を作り出すためであるのに対し、値付玉は 出に先立つて予め決定され、これを有価証券売出の一つの条件として不特定多数Q人に一様に勧誘されることになつているのであつて、その目的は浮動株主に関する上場要件を作り出すためであるのに対し、値付玉は、売買価格はもとより、売買数量も予め定められておらず、値付玉の売買は、上場開始後、幹事証券会社が気配の状況を勘案して、どの程度の数量をどの段階で売り出すかが決められるのである。そのため、値付玉の場合は、予定数量の全部が同時に同一価格で売却されることもあれば、時を異にし価格及び数量を異にして売却されることも当然生ずるのであつて、この点において値付玉の取引そのものは売出条件の均一性を有するとはいえず、値付玉の前記存在理由及び機能を考慮に入れても、上場前の株式の公開売出とは趣きを異にするものである。 これを本件についてみれば、いずれも成立に争いのない甲第九号証、同第一六、第二〇号証の各一、二、乙第四号証によれば、本件株式の発行会社である殖産住宅相互株式会社は昭和四七年八月から九月にかけて上場前の株式公開を公募によつて行つたのであるが、その際の募集株式数量は九四〇万株であり、募集価格は一、二五〇円と予め定められていたこと、そして、右公募は野村証券株式会社の買取引受により行われたこと、また、右株式の新規上場に当り東京証券取引所から要請された値付玉は総数二〇〇万株で、そのうち控訴人の拠出分は一一万株であつたこと、しかして、同年一〇月二日の上場当日における同株式の値動きをみると、午前九時五二分買気配二、五〇〇円、同一〇時一五分買気配二、五二〇円、同一〇時二七分買気配二、五四〇円、同一〇時三七分買気配二、五六〇円、同一〇時四五分買気配二、五八〇円と刻々と価格が変動して午前一〇時五三分公募価格の二倍を超える二、五八〇円で売買が成立し始め値が決定したものであるこ 配二、五四〇円、同一〇時三七分買気配二、五六〇円、同一〇時四五分買気配二、五八〇円と刻々と価格が変動して午前一〇時五三分公募価格の二倍を超える二、五八〇円で売買が成立し始め値が決定したものであること、そして、午前中に成立した株数は七一三万八、〇〇〇株であつたこと、当日午後は、一時三八分に買気配二、六二〇円で始まり、二、六五〇円から二、六九〇円の間で売買が成立し、成立株数は五七万一、〇〇〇株であつたこと、控訴人が同日野村証券株式会社に売却委託をした本件株式は前記値付玉一一万株を含めて総数一六万五、〇〇〇株であつたことが認められ、右認定に反する証拠はない。 右によれば、控訴人が値付玉として主張する株式一六万五、〇〇〇株のうち、五万五、〇〇〇株は値付玉でないことが明らかであるばかりでなく、その余の一一万株の値付玉も、その売却委託をうけた野村証券株式会社が市場価格の変動の状況に応じて、これを売却したことが推認されるのであるから、たまたま本件株式が同一の市場価格で売買がなされたとしても、これをもつて均一の売出価格で売出しがなされたとみることはできないし、また、値付玉が上場当日の相場の異常な過熱及び株式の供給不足の調整機能を果したであろうことを考慮にいれても、値付玉だけが特別の価格で売却されたというのではなく、当日成立した市場価格(しかもその価格は上場前の価格の二倍を超える価格である。)で、値付玉以外の株式とともに売却されたものであるから、値付玉の取引が相場による売買に該当しないとは到底いえないのであり、かつまた、右値付玉の売却に営利性が伴うことも否定することができないのである。 そうだとすれば、値付玉の譲渡は、結局、証券取引所上場後の有価証券市場においてする株式の売買というほかなく、これを上場前の発行市場における株式の公開売出と同一視することは ことができないのである。 そうだとすれば、値付玉の譲渡は、結局、証券取引所上場後の有価証券市場においてする株式の売買というほかなく、これを上場前の発行市場における株式の公開売出と同一視することはできず、また、施行令二六条三項一号が引用する証取法二条四項に規定する「均一の条件」による売出に当るとは認め難いのである。 控訴人は、当審において、証取法二条四項に規定する「不特定多数の者に対する均一の条件による売出」の意義に照らし、かつ、値付玉の譲渡の実態をみれば、右譲渡は同条所定の株式の売出に該当すると主張し(前記控訴人の主張ニ1、2)、あるいは本件株式は不特定多数人に均一値段で譲渡され、買受人は、東京証券取引所の定める規則に従つて均一の条件で代金の決済と株券の引渡しを行つたものであるから本件譲渡は、証取法二条四項に規定する株式の売出に該当する旨主張する(原判決事実摘示第四の二(二))。 しかし、値付玉の価格なるものは、結局において、証券市場の相場によつて形成されるものであり、しかも、その価格は、値付玉以外の株式とともに売注文と買注文によつて決定されるものであつて、値付玉についての売出価格なるものはそもそも存在しないものであること、さらに、値付玉は、上場後の相場の変動に伴いその売却の時期によつてそれぞれ価格が変化するものであつて、たまたま控訴人所有の本件株式が同一の値段で売買か成立したとしても、これをもつて、均一の条件で売出される株式とは認め難いこと及び相場によつて形成された値付玉の価格と上場前の株式の公開募集又は売出による価格との間には同一性を欠いているから、両者を同一の株式の公開売出の範疇に属するものとは認められないこと等前記認定の事実関係に照らせば、控訴人の右主張も採用するに由ないものといわねばならない。 3 ところで、株式の公開の方法に いるから、両者を同一の株式の公開売出の範疇に属するものとは認められないこと等前記認定の事実関係に照らせば、控訴人の右主張も採用するに由ないものといわねばならない。 3 ところで、株式の公開の方法により行う株式の譲渡の他の要件の一つである「大蔵大臣への届出」についてみると、本件株式の譲渡が行われた当時において右の届出が必要とされたのは、上場前における株式の募集又は売出のみであることは、証取法四条、五条、有価証券の募集又は売出に関する大蔵省令(昭和四六年六月一日大蔵省令三二号)八条の各規定に照らして明らかである。控訴人は、右大蔵大臣への届出は当該売出につき大蔵大臣への届出がなくとも、それ以前に当該株式の募集又は売出のいずれかにつき一回大蔵大臣への届出があれば足りるものと解すべきであり、したがつて、本件株式の譲渡については右の届出をしていることとなる旨主張する(原判決事実摘示第四の二の2(一)ないし(三))が、右届出の対象は上場前の発行市場における株式の募集又は売出であること前記のとおりであつて、上場後有価証券市場においてする値付玉の譲渡について右届出を要するとの法的根拠は見出しえないのであるから、右主張自体採用することができない。 4 そこで、以下、控訴人のその余の主張について判断する。 (一) 控訴人は、値付玉が通常の株式の売買と異る所以を縷々主張する(前記控訴人の主張一1ないし6)が、値付玉に、所論のような特色があるといつても、それをもつて直ちに値付玉が施行令二六条三項一号所定の「株式の公開の方法により行なう株式の譲渡」に該当するといえないことは、前記説示のとおりであるから、右主張も失当というべきである。 (二) 控訴人は、証取法二条四項に規定する売出の範囲と同法四条一項に規定する売出の範囲は、前者が後者より広く、値付玉の譲渡は前者の売出 、前記説示のとおりであるから、右主張も失当というべきである。 (二) 控訴人は、証取法二条四項に規定する売出の範囲と同法四条一項に規定する売出の範囲は、前者が後者より広く、値付玉の譲渡は前者の売出に含まれると主張する(原判決事実摘示第四の二(一))が、証取法二条四項は、同法にいう「有価証券の売出し」の定義を規定し、同法四条一項は、右売出の手続として大蔵大臣への届出を必要とする旨と届出を必要としない「売出し」の範囲を売出価額の総額の点から規定しているのであつて、右両条文にいう「売出し」の範囲に広狭があると解すべきいわれはなく、また、値付玉を二条四項に含めるべきであるとの主張も、値付玉が同条所定の要件を充足しないものであること前記のとおりである以上、右主張も採用の限りでない。 (三) 控訴人は、施行令二八条二項三号に規定する「株式の譲渡」には、冷し玉(値付玉)の譲渡も含まれると解されているから、同令二六条三項一号の「株式の譲渡」も同様に解すべきであると主張する(前記控訴人の主張三)。しかし、値付玉の譲渡は、上場後における株式の相場による売買であること前記のとおりであるから、施行令二八条二項一号の株式の譲渡に当り、したがつて、同条二項三号の株式の譲渡に当らないことは、この点に関する被控訴人藤沢税務署長の主張(前記同被控訴人の主張三)のとおりである。したがつて、これに反する控訴人の見解には左祖し難い。 ところで、控訴人は、右見解が大蔵省の公的見解に由来するものであると主張するので、この点について触れてみる。なるほど、成立に争いのない甲第一〇号証の九(参議院大蔵委員会昭和四六年二月一八日会議録)によれば、昭和四六年三月三一日に一部改正される予定の施行令二八条二項三号の改正問題につき、大蔵省証券局長が政府委員として証券取引行政の観点から、「上場後 参議院大蔵委員会昭和四六年二月一八日会議録)によれば、昭和四六年三月三一日に一部改正される予定の施行令二八条二項三号の改正問題につき、大蔵省証券局長が政府委員として証券取引行政の観点から、「上場後の株式数が少ないため浮動株主を数多く作り出すためには、冷し玉的なものを含めて二〇パーセント前後の株式を公開放出することが望ましく、・・・・・・二五パーセントまでの公開は引き続き非課税ということにすれば、望ましい公開を妨げることにはならないであろう。」との趣旨の説明をしていることが認められ、また、成立に争いのない甲第二九号証によれば、昭和四六年版大蔵省証券局年報の中に、昭和四六年の施行令二八条二項三号の改正について、「株式の公開上場」あるいは「株式の公開・上場」という用語を用いて、上場前の株式の売出と上場後における株式の譲渡とを峻別せずに、発行済の株式総数の二五パーセント未満の株式の譲渡益は非課税である旨説明している記述のあることが認められる。しかし、成立に争いのない甲第二八号証によれば、昭和四六年五月財団法人大蔵財務協会発行の「改正税法のすべて」と題する解説書には、施行令二八条二項三号の「株式の公開の方法による譲渡」とは、「証券取引法の規定による大蔵大臣への届出をし、かつ、証券業協会の定める規則に従つてその承認をうけた証券業協会を通じてする株式の譲渡」であると定義づけが行われていること、そして同規定括弧書改正の背景として、右の株式の譲渡が無制限に非課税とされていることが、国会等において強い批判の対象となつていることを挙げ、「このような制度が株式の上場の促進に役立つていることも事実だが、負担公平の観点と証券市場の育成という政策目的とをかね合わせながらも、やはり異例の株式の上場についてまでこれを非課税とすることは適当でないとして、今回改正が行わ の促進に役立つていることも事実だが、負担公平の観点と証券市場の育成という政策目的とをかね合わせながらも、やはり異例の株式の上場についてまでこれを非課税とすることは適当でないとして、今回改正が行われた。」と説明していることが認められる。 そうだとすれば、施行令二八条二項三号の「株式の譲渡」とは、「上場前の株式の公開募集又は売出による株式の譲渡」であることが大蔵省課税当局の見解として明確にされているというべきである。したがつて、大蔵省証券局関係者の国会答弁及びその発行する年報において、用語が不用意につかわれたため、誤解を招きやすく、あるいは不適切と考えられるところがあつたからといつて、これをもつて控訴人の前記主張を支持する大蔵省の公的見解とみるのは相当でない。 また、甲第一四号証は、「株式譲渡益課税のしくみ」と題する図解メモであつて、弁論の全趣旨によれば、日本証券業協会の作成にかかるものとしてその成立の真正が認められるところ、右書証には、「事業譲渡に類似する株式の譲渡」〈所得税法施行令第二八条〉に対する課税については、「公開の方法による譲渡」は「非課税」であるが、「特殊関係者が総株数の25%以上を譲渡した場合」は「課税(譲渡所得)」されること、また、「取引所又は店頭市場を通ずる譲渡」については、「冷し玉等以外のその他の取引と合わせ五〇回二〇万株に該当するかどうか調べる」こととし、「該当」の場合は「課税(全額)」、「非該当」の場合は「非課税」なる旨の図解(括弧書部分は図解の字句のままである。)がなされているけれども、「冷し玉等」とあるのは、施行令二六条三項二号所定の株式の売買を指すものと解する余地があるうえ、右図解メモには、冷し玉(値付玉)が「公開の方法による譲渡」に含まれる旨の記載はみられないのであるから、右書証をもつて値付玉の譲渡が施行 条三項二号所定の株式の売買を指すものと解する余地があるうえ、右図解メモには、冷し玉(値付玉)が「公開の方法による譲渡」に含まれる旨の記載はみられないのであるから、右書証をもつて値付玉の譲渡が施行令二八条二項三号の「株式の譲渡」に含まれるとの公的見解を明らかにしたものと認めることはできず、甲第一〇号証の一ないし八及び九(但し、前記摘示部分を除く。)、同第二二号証の一ないし三及び当審証人Aの証言によつても、控訴人の前記主張を証するに足りず、他に大蔵省当局が国会答弁あるいば通達等の行政指導を通じて値付玉を非課税とする旨を明らかにしたことを認めるに足りる証拠はない。 (四) なお、控訴人は、値付玉の譲渡が施行令二六条三項一号所定の株式の譲渡に当る根拠として、昭和五四年に一部改正された所得税法施行令二六条三項一号及び三号ならびに同年制定された租税特別措置法施行令二五条の四の一項一号及び三号の各規定を挙示するが、右各規定を参照してみても、値付玉の譲渡が右改正前の施行令二六条三項一号の「株式の譲渡」に当ると解すべき根拠を見出しえない。 また、控訴人は、値付玉の譲渡を含む「株式の公開の方法により行なう株式の譲渡」の非課税を規定した施行令二六条三項一号の規定が改正されないのに、被控訴人藤沢税務署長において、証取法四条一項の改正により施行令の右規定が改正されて値付玉の譲渡が「株式の公開の方法により行なう株式の譲渡」に該当しなくなつたとして、本件更正をしたのは、租税法を変更しないで新たに租税を課す解釈を是認するものであるところ、右のような解釈は憲法八四条に照らして不法なものとして許されないと主張する。しかし、値付玉は上場後の有価証券市場において売買されるものであつて、そもそも証取法四条一項の届出の対象である上場前における株式の譲渡の関知するところでないと解 法なものとして許されないと主張する。しかし、値付玉は上場後の有価証券市場において売買されるものであつて、そもそも証取法四条一項の届出の対象である上場前における株式の譲渡の関知するところでないと解するものであること前記のとおりである。したがつて、値付玉の譲渡に対する課税については、右規定の改正によりなんら影響がないというべきであるから、控訴人の右主張はその前提においてすでに失当というべきである。 以上の次第であるから、本件更正には控訴人主張の違法は存しないというほかない。 (被控訴人国税不服審判所長に対する請求について)当裁判所も控訴人の同被控訴人に対する本訴請求は理由がないものと判断する。その理由は、控訴人の当審における主張につき、次のとおり判断を付加するほかは、原判決理由欄記載のとおりである(原判決一九枚目表二行目から同二五枚目裏二行目まで)から、これを引用する。 1 控訴人は、本件国税不服審査請求事件の審理手続において、過少申告加算税が審判の対象とされず、そのため、控訴人は、同手続において、国税通則法六五条二項に規定する「正当な理由」を主張する機会を与えられなかつた旨主張する。しかしながら、国税審判所長が重加算税の賦課決定につき審査請求をうけた場合においては、当該修正申告又は更正に関し国税通則法六五条及び六八条一項所定の各要件の存否を審理し、その結果に基づき過少申告税の額及び重加算税の額を算定し、その合計額が原処分における税額を下回るときは、裁決において原処分中その超える税額部分を取消し、残余の部分については審査請求を棄却すべきものである(この点に関する詳細な判断については、前記引用の原判決理由第二の二1に記載のとおりである。)から、重加算税の賦課決定の取消を求めた本件審査請求の審理手続において過少申告加算税も当然審理の対象にな (この点に関する詳細な判断については、前記引用の原判決理由第二の二1に記載のとおりである。)から、重加算税の賦課決定の取消を求めた本件審査請求の審理手続において過少申告加算税も当然審理の対象になるものというべきであり、したがつて、右審理手続において、控訴人が右「正当の理由」の存在自体を違法理由として主張するのであれば、自らこれをなすべきであると解するのが相当である。しかるところ、同被控訴人が控訴人のなす右「正当の理由」の主張、立証につき審理の機会を与えなかつたことについては、これを認めるべき証拠はない。したがつて、控訴人の右主張は採用の限りでない。 2 控訴人は、本件各裁決が過少申告加算税についてなんらの判断も示さず、また棄却の裁決もしていないから、右部分に関する審査請求事件は、依然同審判所に係属しているものというべきである旨述べているが、本件各裁決が昭和四六、四七両年分共重加算税の額を減額するとともに過少申告加算税の額を増額して、右両加算税の合計額と本件各賦課決定による税額との差額部分を取消し、その余の控訴人の審査請求を棄却したものと解すべきことは、前記引用の原判決理由欄記載のとおりであるから、控訴人の右主張は到底採用できない。 (結論)よつて、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。 (裁判官渡辺忠之糟谷忠男渡辺剛男)(原裁判等の表示)○ 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一原告 1 被告藤沢税務署長が原告の昭和四七年分所得税について昭和四九年三月三〇日付でした更正を取り消す。 2 被告国税不服審判所長が昭和五一年五月二八日付で原告に対してした各 当事者の求めた裁判一原告 1 被告藤沢税務署長が原告の昭和四七年分所得税について昭和四九年三月三〇日付でした更正を取り消す。 2 被告国税不服審判所長が昭和五一年五月二八日付で原告に対してした各裁決のうち過少申告加算税昭和四六年分八三一万円及び同四七年分一六三四万四四〇〇円の各賦課部分を取り消す。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。との判決二被告ら 1 被告国税不服審判所長の本案前の申立て(一) 原告の被告国税不服審判所長に対する訴えを却下する。 (二) 訴訟費用は原告の負担とする。との判決 2 被告らの本案についての申立て主文と同旨の判決第二原告の請求原因一原告の昭和四六年分及び同四七年分所得税について、原告がした各確定申告及び各修正申告、昭和四七年所得税に係る修正申告に対して被告藤沢税務署長(以下「被告税務署長」という。)がした更正、昭和四六年分所得税の修正申告に係る過少申告加算税及び重加算税の賦課決定、昭和四七年分所得税の修正申告及び更正に係る重加算税の各賦課決定並びに右更正及び各賦課決定に対してした原告の審査請求について被告国税不服審判所長(以下「被告審判所長」という。)がした各裁決の経緯は、別表記載のとおりである。 二被告税務署長がした前記更正(以下「本件更正」という。)は、以下に述べるとおり違法であるから、原告は、その取消しを求める。 1 原告は、殖産住宅相互株式会社(以下「殖産住宅」という。)がその発行する株式を東京証券取引所第二部に上場するに際し、当該上場日である昭和四七年一〇月二日原告所有の殖産住宅の株式一六万五〇〇〇株(以下「本件株式」という。)を値付玉として同証券取引所において譲渡し(以下「本件譲渡」という。)、その譲渡益は、三億九二四八万九八七二円であつたところ、被告税務署長は、右譲渡益を原告の雑所 〇〇株(以下「本件株式」という。)を値付玉として同証券取引所において譲渡し(以下「本件譲渡」という。)、その譲渡益は、三億九二四八万九八七二円であつたところ、被告税務署長は、右譲渡益を原告の雑所得として本件更正をした。 2 しかしながら、本件譲渡は所得税法施行令(以下「施行令」という。)第二六条第三項第一号に掲げる株式の譲渡に該当し、その譲渡益は非課税であるから、右譲渡益に課税した本件更正は違法である。 三被告税務署長がした前記各賦課決定(以下「本件各賦課決定」という。)に対する原告の審査請求について被告審判所長がした前記各裁決(以下「本件各裁決」という。)のうち過少申告加算税昭和四六年分八三一万円及び同四七年分一六三四万四四〇〇円の各賦課部分は、以下に述べる理由により違法であるから、原告は、その取消しを求める。 1 被告審判所長は、本件各裁決において、昭和四六年分に係る重加算税の賦課決定の全額、昭和四七年分に係る重加算税の賦課決定のうち九八〇六万一九〇〇円につき隠ぺい又は仮装の事実があつたとは認めちれないとして違法としながら、過少申告加算税相当額昭和四六年分八三一万円、同四七年分一六三四万四四〇〇円を超える部分のみを取り消したに過ぎず、本件各裁決により、被告審判所長が、違法な重加算税の賦課決定を取り消して、新たに過少申告加算税の賦課決定をしたのと同様の効果を生じている。 しかしながら、重加算税の賦課決定と過少申告加算税の賦課決定とはその要件を異にする別異の処分であり、被告審判所長は租税の賦課徴収の権限を有しないのであるから、同被告が過少申告加算税の賦課決定をしたのと同様の結果となる本件各裁決は違法である。 2 仮に審査請求手続における審理の結果重加算税の賦課決定が違法とされた場合、過少申告加算税相当額を超える部分のみを取り消すことが 加算税の賦課決定をしたのと同様の結果となる本件各裁決は違法である。 2 仮に審査請求手続における審理の結果重加算税の賦課決定が違法とされた場合、過少申告加算税相当額を超える部分のみを取り消すことが許されるとしても、原告の過少申告については国税通則法(以下「通則法」という。)第六五条第二項に規定する「正当な理由」が存在したのにかかわらず、右「正当な理由」の存否につき判断を示さず、過少申告加算税相当額を超える部分のみ取り消した本件各裁決は違法である。 3 本件更正は違法であるから、昭和四七年分の裁決のうち右更正を前提としてされた過少申告加算税一四七一万八三七五円の賦課部分も違法である。 第三被告税務署長の答弁一請求原因に対する認否請求原因一及び二の1の事実は認めるが、同二の2の主張は争う。 二被告税務署長の主張本件譲渡は、以下に述べるとおり施行令第二六条第三項第一号に規定する「株式の公開の方法により行なう株式の譲渡」に該当しない。 1 (一)本件譲渡は、証券市場における通常の株式の売買であり、証券取引法(以下「証取法」という。)第二条第四項に規定する有価証券の売出しに該当する株式の売出しとは全く別異の取引形態である。 (二) 右株式の売出しは、売出価格、売出期間等の条件が均一でなければならず、また売出数量もあらかじめ定められて、不特定多数の者に対して一様に勧誘されるものでなければならない(証取法第二条第四項)。しかるに、本件譲渡の売買価格は、あらかじめ定められたものでなく、株式の需要と供給の推移に伴つて必然的に価格も変動しその需給の均衡がとれた結果成立した市場価格であり、また売出数量もあらかじめ定められていないのであるから、本件譲渡は、条件の均一性を欠くものである。 2 株式の売出しについては、当該売出しに関しての大蔵大臣への届出(証 た結果成立した市場価格であり、また売出数量もあらかじめ定められていないのであるから、本件譲渡は、条件の均一性を欠くものである。 2 株式の売出しについては、当該売出しに関しての大蔵大臣への届出(証取法第四条第一項)並びに当該売出しに際しての目論見書の作成(同法第一三条第一項)及び交付(同法第一五条第二項)が義務付けられているが、本件譲渡については、右売出しの届出並びに目論見書の作成及び交付の事実がない。 第四被告税務署長の主張に対する原告の認否及び反論一被告税務署長の主張は争う。 二原告の反論 1 (一)証取法第二条第四項に規定する売出しから証券市場を経由した取引を除く旨の規定はない。そして、右売出しの範囲は、同法第四条第一項に規定する売出しの範囲よりは広いと解すべきであり、施行令第二六条第三項第一号において証取法第二条第四項に規定する株式の売出しと規定したのは、右株式の売出しに本件譲渡のような値付玉の譲渡を含める意図であつたからである。 (二) 本件株式は、不特定多数人に均一値段で譲渡され、買受人は、東京証券取引所の定める規則に従つて均一の条件で代金の決済と株券の受渡しを行なつたのであるから、本件譲渡は、右株式の売出しに該当する。 2 (一)施行令第二六条第三項第一号に規定する株式の公開の要件である証取法第四条第一項の規定による大蔵大臣への届出は、以下に述べるように、当該売出しにつき大蔵大臣への届出がなくても、それ以前に当該株式の募集又は売出しのいずれかにつき一回大蔵大臣への届出があれば足るものと解すべきである。 (1) 施行令第二六条第三項第一号の規定が施行された昭和四一年当時の証取法第四条第一項の規定は、有価証券の募集又は売出しは、発行者が有価証券に関して届け出ていなければすることができない旨の規定であり、いつたん募集による有価 項第一号の規定が施行された昭和四一年当時の証取法第四条第一項の規定は、有価証券の募集又は売出しは、発行者が有価証券に関して届け出ていなければすることができない旨の規定であり、いつたん募集による有価証券届出書の届出の効力が発生している場合にはその後にする売出しについては届出の必要はなかつたところ、その後昭和四六年に証取法第四条第一項の規定が改正され、当該募集又は売出しに関して届出を要することになつたのであるが、それに伴つて施行令第二六条第三項第一号の規定が改正されることはなかつた。 (2) 右のように施行令第二六条第三項第一号の規定は、募集について届出の効力が発生していれば、その後の売出しについて届出がなくても、当該売出しによる譲渡益を非課税とする規定であつたのであるから、証取法の改正により当然に非課税範囲が変更となるものではなく、非課税の範囲を変更、特に縮少するには施行令の改正を行なわなければならない。 (3) そして、証取法の右改正後において売出しが施行令第二六条第三項第一号にいう株式の公開に該当するための要件として当該売出しに関して届出が必要とするように非課税範囲を変更するためには、同号を改正して「募集」の文言を削除しなければならないのに、そのような改正は行なわれていない。 (二) 本件株式の発行者である殖産住宅は、昭和四七年八月八日証取法第四条第一項の規定による大蔵大臣への募集による有価証券届出を了し、同年九月一一日有価証券届出書の訂正届出書を提出した。 (三) よつて、本件譲渡については、施行令第二六条第三項第一号に規定する大蔵大臣への届出をしていることとなる。 3 施行令第二八条第二項第三号に規定する「株式の公開の方法により行なう株式の譲渡」には冷し玉(値付玉)の譲渡も含まれると解されているから、施行令第二六条第三項第一号に規定 出をしていることとなる。 3 施行令第二八条第二項第三号に規定する「株式の公開の方法により行なう株式の譲渡」には冷し玉(値付玉)の譲渡も含まれると解されているから、施行令第二六条第三項第一号に規定する「株式の公開の方法により行なう株式の譲渡」にも値付玉の譲渡が含まれると解すべきである。 4 値付玉の譲渡を含む「株式の公開の方法により行なう株式の譲渡」の非課税を規定した施行令第二六条第三項第一号の規定が改正されないのに、被告税務署長において、証取法第四条第一項の前記改正により施行令の右規定が改正されて値付玉の譲渡が「株式の公開の方法により行なう株式の譲渡」に該当しなくなつたとして、本件更正をしたことは、憲法第八四条に違反する。 第五原告の反論に対する被告税務署長の認否及び反論一原告の反論1の主張は争う。 証取法第二条第四項は有価証券の売出しの定義を規定し、岡法第四条第一項は売出しについての手続を規定したもので、両規定の売出しの意味が異なることはなく、その内容範囲に大小の差異はない。 二原告の反論2のうち、(二)の事実は認めるが、(一)及び(三)の主張は争う。 施行令第二六条第三項第一号の規定が証取法第四条第一項を引用するに当たり「募集又は売出しの届出」とかつこ書きを付したのは、証取法第四条の見出しをそのまま引用したに過ぎず、株式の公開の要件として募集についての届出で足るとしたものではない。 もし、施行令第二六条第三項第一号の規定が証取法第四条第一項の改正後も「株式の公開」の要件を改正前と同一にする趣旨であれば、施行令の右規定をその趣旨に改正すべきものであつたのであり、施行令の改正が行なわれなかつたことは施行令の右規定にいう「株式の公開」の要件を改正後の証取法に従つて定めることとしたものに外ならない。そして、証取法の右改正後も施行令が株 べきものであつたのであり、施行令の改正が行なわれなかつたことは施行令の右規定にいう「株式の公開」の要件を改正後の証取法に従つて定めることとしたものに外ならない。そして、証取法の右改正後も施行令が株式の公開の方法による株式の売買による譲渡益を非課税としていること自体には変更はなく、ただ証取法上その株式の売出しの実施手続が厳しくなつただけである。 三原告の反論3及び4の主張は争う。 第六被告審判所長の答弁一本案前の主張本件各賦課決定に対する原告の審査請求について被告審判所長がした本件各裁決は、本件各賦課決定によつて賦課した加算税の一部を取り消したに過ぎず、新たに過少申告加算税の各賦課決定をしたのではない。よつて、被告審判所長が過少申告加算税の各賦課決定をしたとして、その処分の取消しを求ぬる原告の訴えは、存在しない処分の取消しを求める不適法な訴えである。 二請求原因に対する認否請求原因一の事実は認めるが、同三の主張は争う。 三被告審判所長の主張税務署長がした重加算税の賦課決定について国税不服審判所長が過少申告加算税の要件は充足しているが隠ぺい又は仮装の事実は認められないと判断した場合には、同所長は、右賦課決定のうち過少申告加算税相当額を是認してこれを超える部分だけを取り消すべきである。その理由は、以下に述べるとおりである。すなわち、 1 過少申告加算税も重加算税も共に申告納税義務の解怠に対して課される行政上の制裁であり、両者は同質のものであつて、重加算税の賦課決定の要件である隠ぺい又は仮装の事実が否定されれば過少申告加算税が残ることになるのは当然のことである。なお、通則法第六八条第一項は、「過少申告加算税に代え」重加算税を課すると規定しているが、この「代え」という文言は、加算税の率が変わることを表現したに過ぎないと解すべきである。 は当然のことである。なお、通則法第六八条第一項は、「過少申告加算税に代え」重加算税を課すると規定しているが、この「代え」という文言は、加算税の率が変わることを表現したに過ぎないと解すべきである。 2 通則法第六九条が各種の加算税をそれぞれその額の計算の基礎となる税額の属する税目の国税としていることも右の見解を裏付けるものといえる。 3 重加算税を賦課決定した後隠ぺい又は仮装の事実が認められないとされた場合に、右賦課決定を全部取り消した上、改めて過少申告加算税を賦課決定しなければならないとすることは、いたずらに手続を煩雑にするもので、納税者にとつても何の利益もないことである。 したがつて、本件各裁決が、昭和四六年分に係る重加算税の賦課決定の全額、昭和四七年分に係る重加算税の賦課決定のうち九八〇六万一九〇〇円につき隠ぺい又は仮装の事実があつたとは認められないとして違法とした上、過少申告加算税相当額昭和四六年分八三一万円、同四七年分一六三四万四四〇〇円を超える部分のみを取り消したことに、違法はない。 原告が原処分の残存部分を争うのであれば、被告税務署長を相手方として争うべきで、被告審判所長を相手方としてこれを争うことは、行政事件訴訟法第一〇条第二項に違背する。 第七被告審判所長の主張に対する原告の認否及び反論一第六の一及び三の被告審判所長の主張はいずれも争う。 二原告の反論 1 通則法第六八条第一項で「過少申告加算税に代え」と規定しているのは、過少申告加算税の要件を満たしているが重加算税の要件も満たしている場合は、過少申告加算税の賦課決定を排除して重加算税の賦課決定を選択するように税務署長に命じたものであるから、重加算税の賦課決定の内容に過少申告加算税が含まれるように解釈する余地はない。 2 通則法第六九条は、国家予算の作成と執行に関し、 て重加算税の賦課決定を選択するように税務署長に命じたものであるから、重加算税の賦課決定の内容に過少申告加算税が含まれるように解釈する余地はない。 2 通則法第六九条は、国家予算の作成と執行に関し、予算決算及び会計令第一〇条の規定する「目」について、加算税の所属目を加算税の額の計算の基礎となる税額の属する税目の国税とする旨の規定であつて、財政整理の都合から立法されたものに過ぎない。 3 本件各賦課決定のうち過少申告加算税相当額部分をも取り消されることにより、原告には以下に述べるように利益がある。 (一) 税務署長が選択した重加算税の賦課決定が裁決や裁判で取り消された場合、同署長が右重加算税の計算の基礎となつた税額について代りに過少申告加算税の賦課決定をすることは、現行法上認められていない。 (二) 重加算税の賦課決定が取り消されれば、原告は、重加算税の還付に伴つて還付加算金を受領するが、この場合、仮に新たに過少申告加算税の賦課決定を受けても、直ちに還付された重加算税の中から納付するならば、延滞税等の負担は生じない。 第八証拠関係(省略)○ 理由第一被告税務署長に対する請求について一請求原因一及び二の1の事実は、当事者間に争いがない。 二そこで、本件更正に原告主張の違法が存するか否かについて判断する。 1 原告は、本件譲渡は施行令第二六条第三項第一号に該当し、その譲渡益は非課税であるから、右譲渡益に課税した本件更正は違法であると主張するので、まず、本件譲渡が「証券取引法第二条第四項に規定する株式の売出し」の方法により行なう株式の譲渡に該当するか否かについて検討する。 証取法第二条第四項によれば、同法における「有価証券の売出し」とは、不特定かつ多数の者に対し均一の条件で既に発行された有価証券の売付けの申込みをし、又はその買付けの申込み るか否かについて検討する。 証取法第二条第四項によれば、同法における「有価証券の売出し」とは、不特定かつ多数の者に対し均一の条件で既に発行された有価証券の売付けの申込みをし、又はその買付けの申込みを勧誘することをいうとされている。そして、右にいう「均一の条件」とは、売出価格、申込期間、申込方法等の売出しの条件が同一であることをいうものと解せられるから、有価証券市場等における相場による売買は、右のような条件の均一性を欠き、右「有価証券の売出し」に該当しないものといわねばならない。 ところで、本件譲渡が東京証券取引所における譲渡であることは前記のとおり当事者間に争いがないから、本件譲渡は、有価証券市場における相場による売買である。したがつて、本件譲渡は、「証券取引法第二条第四項に規定する株式の売出し」の方法により行なう株式の譲渡に該当しない。 2 原告は、証取法第二条第四項に規定する売出しの範囲は、同法第四条第一項に規定する売出しの範囲より広く、値付玉の譲渡は、前者の売出しに含まれると主張するが、同法第二条第四項は、同法における「有価証券の売出し」の定義を規定し、同法第四条第一項は、その「売出し」の手続として大蔵大臣への届出を必要とする旨と届出を必要としない「売出し」の範囲を売出価額の総額の点から規定しているに過ぎないものであるから、右二つの条項にいう「売出し」の範囲に広狭があるはずもなく、また、値付玉の譲渡であるかどうかを問わず、およそ有価証券市場における相場による売買である以上、証取法第二条第四項の「売出し」に該当しないものであること前記のとおりであるから、右主張は失当である。 3 原告は、施行令第二八条第二項第三号に規定する株式の譲渡には冷し玉(値付玉)の譲渡も含まれると解されていると主張するが、そのように解されていると認むべき根拠は りであるから、右主張は失当である。 3 原告は、施行令第二八条第二項第三号に規定する株式の譲渡には冷し玉(値付玉)の譲渡も含まれると解されていると主張するが、そのように解されていると認むべき根拠は何もなく、原告独自の見解にすぎない。なお、成立に争いのない甲第一〇号証の六及び九によれば、昭和四六年二月の衆議院及び参議院の大蔵委員会における政府委員等の答弁において、施行令第二八条第二項第三号を改正して現行条文にあるようなかつこ書きを加えることの根拠として、株式を公開した場合公正な価格形成の面から発行済株数の二〇パーセント前後の株が浮動株としてあることが望ましく、そのため右浮動株作出のための「株式の公開の方法により行なう株式の譲渡」には課税しないようにし、他方株式の公開によつて得る異例な譲渡益は譲渡所得として課税対象とするための手法である旨の説明がされていることが認められるが、右説明をもつて「株式の公開の方法により行なう株式の譲渡」に原告主張のように冷し玉(値付玉)の譲渡が含まれる趣旨であると認めることはできない。また、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第一四号証には、株式譲渡益課税のしくみが図解され、事業譲渡に類似する株式の譲渡に対する課税の例外として、取引所又は店頭市場を通ずる譲渡につき冷し玉等以外のその他の取引と合わせ五〇回二〇万株に該当するかどうか調べ、該当なら全額課税、非該当なら非課税である旨の記載があるが、右記載は、施行令第二八条第二項第一号第二号に関する説明に過ぎず、同項第三号に関する説明ではないから、原告の右主張を裏付けるものとはいえない。 4 原告は、値付玉の譲渡の非課税を規定した施行令第二六条第三項第一号の規定が改正されないのに、被告税務署長において値付玉の譲渡は施行令の右規定に該当しないとして本件更正をした ものとはいえない。 4 原告は、値付玉の譲渡の非課税を規定した施行令第二六条第三項第一号の規定が改正されないのに、被告税務署長において値付玉の譲渡は施行令の右規定に該当しないとして本件更正をしたことは、憲法第八四条に違反すると主張する。 しかしながら、そもそも施行令の右規定は、一定の要件の下に「株式の売出し」の方法による株式の譲渡による所得の非課税を規定したもので、本件譲渡のような証券取引所における売買による所得の非課税を規定したものでないことは前記のとおりであるから、原告の右主張はその前提自体失当である。以上の次第であるから、本件更正には原告主張の違法は存しない。 第二被告審判所長に対する請求について一被告審判所長は、原告の同被告に対する訴えは、存在しない処分の取消しを求める不適法な訴えであると主張するので、まず、この点について判断する。 請求原因一の事実は当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第一号証によれば、本件各裁決の主文には、昭和四六年分所得税に係る賦課決定の一部を別紙1のとおり取り消す旨及び昭和四七年分所得税に係る賦課決定の一部を別紙2のとおり取り消す旨記載されていること、別紙1には、この裁決により取り消す加算税の額四一五四万九七〇〇円と、別紙2には、この裁決により取り消す加算税の額八一七一万七五〇〇円とそれぞれ記載されていることが認められる。 右事実によれば、本件各裁決は審査請求に係る本件各賦課決定の一部を取り消したものであると認められ、このように原処分の一部を取り消した裁決は、原処分のうち同裁決により維持された部分については審査請求を理由がないものとして棄却したものと解すべきである。 そして、本件請求の趣旨によれば、原告の被告審判所長に対する訴えは、本件各裁決のうち過少申告加算税昭和四六年分八三一万円及び同四七年分一 審査請求を理由がないものとして棄却したものと解すべきである。 そして、本件請求の趣旨によれば、原告の被告審判所長に対する訴えは、本件各裁決のうち過少申告加算税昭和四六年分八三一万円及び同四七年分一六三四万四四〇〇円の各賦課部分の取消しを求めるというものであるが、その趣旨とするところは、本件各賦課決定のうち昭和四六年分につき過少申告加算税の額八三一万円に相当する部分及び同四七年分につき過少申告加算税の額一六三四万四四〇〇円に相当する部分について、原告の審査請求を理由がないものとして棄却した本件裁決の一部の取消しを求めるものと解することができるから、右訴えは、存在しない処分の取消しを求めるものではなく、適法な訴えというべきである。 なお、被告審判所長は、原告が原処分の残存部分を争うのであれば、被告税務署長を相手方として争うべきで、被告審判所長を相手方として争うことは行政事件訴訟法第一〇条第二項に違背すると主張するが、原告は本件各裁決のうち棄却部分の取消しを求めているのであるから、被告審判所長を相手方としてその取消しを求めるべきであり、また原告の主張する違法理由は、請求原因三の2のうち通則法第六五条第二項に規定する「正当な理由」の存在を主張するかに窺われる部分及び同3が行政事件訴訟法第一〇条第二項に抵触すること後記二の2及び3のとおりであることを除いては、裁決固有の瑕疵を主張するもので、右条項に抵触することはない。 二そこで、本件各裁決のうち原告が取消しを求める部分に原告主張の違法が存するか否かについて判断する。 1 請求原因三の1の主張ば、被告審判所長が本件各裁決において、原処分たる重加算税の賦課決定のうち、その要件を欠くとして違法とした部分の全額を取り消すことなく、過少申告加算税の要件を満たしているとして、過少申告加算税相当額につき審査 所長が本件各裁決において、原処分たる重加算税の賦課決定のうち、その要件を欠くとして違法とした部分の全額を取り消すことなく、過少申告加算税の要件を満たしているとして、過少申告加算税相当額につき審査請求を棄却したことは、重加算税の賦課決定と過少申告加算税の賦課決定とはその要件を異にする別異の処分であり、被告審判所長は租税の賦課徴収の権限を有しないことからすれば、同被告が過少申告加算税の賦課決定をしたのと同様の結果となるもので、違法であると主張するものである。 しかしながら、過少申告加算税と通則法第六八条第一項の規定による重加算税とは、その名称は異なるが、いずれも申告納税方式による国税について過少な申告を行なつた納税者に対する行政上の制裁として課されるもので、ただ重加算税は隠ぺい又は仮装という不正手段を用いた悪質な過少申告に対して特別に重い負担の行政上の制裁を課することとしたのであるから、両者は全くその性質を同じくするものであるし、他方その税額算定の手法を見ても、両者はいずれも修正申告又は更正により新たに納付すべきこととなつた税額をその算定の基礎として、これに一定の割合を乗じて算定するのであり、ただ重加算税は課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の隠ぺい又は仮装という要件が加わることにより単なる過少申告に対する場合よりもその割合を高率としているに過ぎない。したがつて、同一の修正申告又は更正に係る加算税である限り、過少申告加算税を賦課されるにしても、重加算税を賦課されるにしても処分としての同一性を有するというべきで、重加算税として高い割合の加算税が賦課された場合は、その中に単なる過少申告加算税たるべき部分が包含されていると解するのが相当であり、また、通則法第六八条第一項、同法施行令第二八条第一項により、加算税の税額計算の基礎となるべき 算税が賦課された場合は、その中に単なる過少申告加算税たるべき部分が包含されていると解するのが相当であり、また、通則法第六八条第一項、同法施行令第二八条第一項により、加算税の税額計算の基礎となるべき税額のうち隠ぺい又は仮装されていない事実に基づくことが明らかである税額につき過少申告加算税が課され、その余の税額につぎ重加算税が課される場合には、過少申告加算税の賦課決定と重加算税の賦課決定の二個の処分がされるものとみるべきではなく、一個の加算税賦課決定がされるものと解すべきである。無申告加算税額又は不納付加算税額については重加算税額との併課につき定めのあつた国税通則法施行前はしばらくおき、現行法上このように解するにつき支障となるような条項は見当たらない。もつとも、通則法第六八条第一項は「過少申告加算税に代え」と規定しており、原告は、右は過少申告加算税を排除して重加算税の賦課決定を選択するよう税務署長に命じたものであると主張するが、必ずしもそのように解さねばならないとする根拠はなく、右規定は、隠ぺい又は仮装した事実に基づく過少申告に対しては加算税の額の計算の基礎となる税額に乗ずべき割合につき一〇〇分の三〇の割合を選択ずべきことを命じたものと解し得るのであつて、右文言は前記解釈を覆えすに足りるものではない。 以上によれば、過少申告加算税の賦課決定、重加算税の賦課決定、さらには通則法第六八条第一項、同法施行令第二八条第一項によりされた過少申告加算税と重加算税の賦課決定につき審査請求を受けた国税不服審判所長は、当該修正申告又は更正に関し通則法第六五条及び第六八条第一項所定の各要件の存否を審理し、その結果に基づき過少申告加算税の額及び重加算税の額を算定し、その合計額が原処分における税額を下回るときは、裁決において原処分中その超える税額部分を取り消し、 六八条第一項所定の各要件の存否を審理し、その結果に基づき過少申告加算税の額及び重加算税の額を算定し、その合計額が原処分における税額を下回るときは、裁決において原処分中その超える税額部分を取り消し、残余の部分については審査請求を棄却すべきことに帰着する。 以上のとおり解すべきであり、これを本件について考察すれば、本件各裁決が昭和四六、四七両年分共重加算税の額を減額すると共に過少申告加算税の額を増額して、右増減額後の両加算税の額の合算額と本件各賦課決定により納付すべき税額との差額部分を取り消し、その余の原告の審査請求を棄却したものであること前記一のとおりであつて、右各裁決に原告主張の違法はないというべきである。 2 原告は、原告の過少申告については通則法第六五条第二項に規定する「正当な理由」が存在したのにかかわらず、右「正当な理由」の存否につき判断を示さず、過少申告加算税相当額を超える部分のみ取り消した本件各裁決は違法であると主張する。 しかしながら、前掲乙第一号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件各賦課決定に対する審査請求において過少申告につき隠ぺい又は仮装の事実がないことのみを主張し、右「正当な理由」の存することについては全く主張していなかつたものと認められる。このような場合、被告審判所長が裁決に当たり右「正当な理由」の存否につき判断を示さなくても違法ということはできない。また、もし原告が右「正当な理由」の存在自体を違法理由として主張するのであれば、それは結局原処分たる賦課決定(裁決によつて維持された部分)に存する違法をいうに帰着し、裁決固有の違法理由に当たらないから、行政事件訴訟法第一〇条第二項により、裁決の取消しを求めるについてはこれを違法理由とすることはできず、主張自体失当である。 3 原告は、本件更正は違法であるから、昭和四 有の違法理由に当たらないから、行政事件訴訟法第一〇条第二項により、裁決の取消しを求めるについてはこれを違法理由とすることはできず、主張自体失当である。 3 原告は、本件更正は違法であるから、昭和四七年分の裁決のうち右更正を前提としてされた過少申告加算税一四七一万八三七五円の賦課部分も違法であると主張する。 しかしながら、右違法理由は、結局原処分たる賦課決定(裁決によつて維持された部分)に存する違法をいうに帰着し、裁決固有の違法理由に当たらないから、行政事件訴訟法第一〇条第二項により、裁決の取消しを求めるについてはこれを違法理由とすることはできず、主張自体失当である。以上の次第であるから、本件各裁決のうち原告が取消しを求める部分につき原告の主張する違法理由はいずれも失当である。 第三結論よつて、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。 別表
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